インタビューフォーム

日本標準商品分類番号 87625
2016 年 6 月改訂(第 2 版)
医薬品インタビューフォーム
日本病院薬剤師会の IF 記載要領 2013 に準拠して作成
劇薬
処方箋医薬品注)
(エルビテグラビル/コビシスタット/エムトリシタビン/
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩配合錠)
注)注意-医師等の処方箋により使用すること
剤
形
錠剤(フィルムコーティング錠)
製 剤 の 規 制 区 分
劇薬,処方箋医薬品(注意-医師等の処方箋により使用すること)
規
1 錠中に,エルビテグラビル 150 mg,コビシスタット 150 mg,
エムトリシタビン 200 mg 及びテノホビル アラフェナミドフマル
酸塩 11.2 mg(テノホビル アラフェナミドとして 10 mg)を含有
格
一
・
含
般
量
名
製造販売承認年月日
薬価基準収載年月日
発
売
年
月
日
開発・製造販売(輸入)・
提 携 ・ 販 売 会 社 名
和名:エルビテグラビル/コビシスタット/エムトリシタビン/
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩配合錠
洋名:Elvitegravir, Cobicistat, Emtricitabine, Tenofovir Alafenamide
Fumarate
製 造 販 売 承 認 年 月 日:2016 年 6 月 17 日
薬 価 基 準 収 載 年 月 日:2016 年 6 月 29 日
発
売
年
月
日:2016 年 7 月 8 日
製 造 販 売 元:日 本 たば こ産 業株 式会 社
販
売
元:鳥 居 薬 品 株 式 会 社
提
携:G i l e a d S c i e n c e s , I n c .
医薬情報担当者の連絡先
問 い 合 わ せ 窓 口
鳥居薬品株式会社 お客様相談室
TEL:0120-316-834
FAX:03-3231-6890
医療関係者向けホームページ
http://www.torii.co.jp(医療関係者の皆様へ)
本 IF は,2016 年 6 月改訂の添付文書の記載に基づき作成しました。
最新の添付文書情報は,独立行政法人 医薬品医療機器総合機構ホームページ
http://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/0001.html にてご確認ください。
IF 利用の手引きの概要
―日本病院薬剤師会―
1. 医薬品インタビューフォーム作成の経緯
医療用医薬品の基本的な要約情報として医療用医薬品添付文書(以下,添付文書と略す)がある。医療現
場で医師・薬剤師等の医療従事者が日常業務に必要な医薬品の適正使用情報を活用する際には,添付文書
に記載された情報を裏付けるさらに詳細な情報が必要な場合がある。
医療現場では,当該医薬品について製薬企業の医薬情報担当者等に情報の追加請求や質疑をして情報を補
完して対処してきている。この際に必要な情報を網羅的に入手するための情報リストとしてインタビュー
フォームが誕生した。
昭和 63 年に日本病院薬剤師会(以下,日病薬と略す)学術第 2 小委員会が「医薬品インタビューフォー
ム」
(以下,IF と略す)の位置付け並びに IF 記載様式を策定した。その後,医療従事者向け並びに患者向
け医薬品情報ニーズの変化を受けて,平成 10 年 9 月に日病薬学術第 3 小委員会において IF 記載要領の改
訂が行われた。
さらに 10 年が経過し,医薬品情報の創り手である製薬企業,使い手である医療現場の薬剤師,双方にと
って薬事・医療環境は大きく変化したことを受けて,平成 20 年 9 月に日病薬医薬情報委員会において IF
記載要領 2008 が策定された。
IF 記載要領 2008 では,IF を紙媒体の冊子として提供する方式から,PDF 等の電磁的データとして提供す
ること(e-IF)が原則となった。この変更にあわせて,添付文書において「効能・効果の追加」,「警告・
禁忌・重要な基本的注意の改訂」などの改訂があった場合に,改訂の根拠データを追加した最新版の e-IF
が提供されることとなった。
最新版の e-IF は,
(独)
医薬品医療機器総合機構の医薬品情報提供ホームページ
(http://www.info.pmda.go.jp/)
注 1)
から一括して入手可能となっている。日本病院薬剤師会では,e-IF を掲載する医薬品情報提供ホームペ
ージが公的サイトであることに配慮して,薬価基準収載にあわせて e-IF の情報を検討する組織を設置して,
個々の IF が添付文書を補完する適正使用情報として適切か審査・検討することとした。
2008 年より年 4 回のインタビューフォーム検討会を開催した中で指摘してきた事項を再評価し,製薬企業
にとっても,医師・薬剤師等にとっても,効率の良い情報源とすることを考えた。そこで今般,IF 記載要
領の一部改訂を行い IF 記載要領 2013 として公表する運びとなった。
2. IF とは
IF は「添付文書等の情報を補完し,薬剤師等の医療従事者にとって日常業務に必要な,医薬品の品質管理
のための情報,処方設計のための情報,調剤のための情報,医薬品の適正使用のための情報,薬学的な患
者ケアのための情報等が集約された総合的な個別の医薬品解説書として,日病薬が記載要領を策定し,薬
剤師等のために当該医薬品の製薬企業に作成及び提供を依頼している学術資料」と位置付けられる。
ただし,薬事法注 2)・製薬企業機密等に関わるもの,製薬企業の製剤努力を無効にするもの及び薬剤師自
らが評価・判断・提供すべき事項等は IF の記載事項とはならない。言い換えると,製薬企業から提供さ
れた IF は,薬剤師自らが評価・判断・臨床適応するとともに,必要な補完をするものという認識を持つ
ことを前提としている。
[IF の様式]
① 規格は A4 版,横書きとし,原則として 9 ポイント以上の字体(図表は除く)で記載し,一色刷りと
する。ただし,添付文書で赤枠・赤字を用いた場合には,電子媒体ではこれに従うものとする。
② IF 記載要領に基づき作成し,各項目名はゴシック体で記載する。
③ 表紙の記載は統一し,表紙に続けて日病薬作成の「IF 利用の手引きの概要」の全文を記載するものと
し,2 頁にまとめる。
[IF の作成]
① IF は原則として製剤の投与経路別(内用剤,注射剤,外用剤)に作成される。
② IF に記載する項目及び配列は日病薬が策定した IF 記載要領に準拠する。
③ 添付文書の内容を補完するとの IF の主旨に沿って必要な情報が記載される。
④ 製薬企業の機密等に関するもの,製薬企業の製剤努力を無効にするもの及び薬剤師をはじめ医療従事
者自らが評価・判断・提供すべき事項については記載されない。
⑤「医薬品インタビューフォーム記載要領 2013」
(以下,
「IF 記載要領 2013」と略す)により作成された
IF は,電子媒体での提供を基本とし,必要に応じて薬剤師が電子媒体(PDF)から印刷して使用する。
企業での製本は必須ではない。
[IF の発行]
①「IF 記載要領 2013」は,平成 25 年 10 月以降に承認された新医薬品から適用となる。
② 上記以外の医薬品については,
「IF 記載要領 2013」による作成・提供は強制されるものではない。
③ 使用上の注意の改訂,再審査結果又は再評価結果(臨床再評価)が公表された時点並びに適応症の拡
大等がなされ,記載すべき内容が大きく変わった場合には IF が改訂される。
3. IF の利用にあたって
「IF 記載要領 2013」においては,PDF ファイルによる電子媒体での提供を基本としている。情報を利用す
る薬剤師は,電子媒体から印刷して利用することが原則である。
電子媒体の IF については,医薬品医療機器総合機構の医薬品医療機器情報提供ホームページ 注 1)に掲載場
所が設定されている。
製薬企業は「医薬品インタビューフォーム作成の手引き」にしたがって作成・提供するが,IF の原点を踏
まえ,医療現場に不足している情報や IF 作成時に記載し難い情報等については製薬企業の MR 等へのイ
ンタビューにより薬剤師等自らが内容を充実させ,IF の利用性を高める必要がある。
また,随時改訂される使用上の注意等に関する事項に関しては,IF が改訂されるまでの間は,当該医薬品
の製薬企業が提供する添付文書やお知らせ文書等,あるいは医薬品医療機器情報配信サービス等により薬
剤師等自らが整備するとともに,IF の使用にあたっては,最新の添付文書を医薬品医療機器情報提供ホー
ムページで確認する。
なお,適正使用や安全性の確保の点から記載されている「臨床成績」や「主な外国での発売状況」に関す
る項目等は承認事項に関わることがあり,その取扱いには十分留意すべきである。
4. 利用に際しての留意点
IF を薬剤師等の日常業務において欠かすことができない医薬品情報源として活用して頂きたい。しかし,
薬事法注 2)や医療用医薬品プロモーションコード等による規制により,製薬企業が医薬品情報として提供
できる範囲には自ずと限界がある。IF は日病薬の記載要領を受けて,当該医薬品の製薬企業が作成・提供
するものであることから,記載・表現には制約を受けざるを得ないことを認識しておかなければならない。
また製薬企業は,IF があくまでも添付文書を補完する情報資材であり,今後インターネットでの公開等も
踏まえ,薬事法注 2)上の広告規制に抵触しないよう留意し作成されていることを理解して情報を活用する
必要がある。
(2013 年 4 月改訂)
注1) 現(独)医薬品医療機器総合機構ホームページ(http://www.pmda.go.jp/)
注2) 現 医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律
目次
I. 概要に関する項目······························ 1
10.製剤中の有効成分の定量法 ··················· 11
1.開発の経緯 ········································· 1
11.力価 ················································ 11
2.製品の治療学的・製剤学的特性 ················ 1
12.混入する可能性のある夾雑物 ·················· 11
II. 名称に関する項目 ····························· 3
13.治療上注意が必要な容器に関する情報······ 11
1.販売名 ··············································· 3
14.その他··············································· 11
2.一般名 ··············································· 3
V. 治療に関する項目 ····························12
3.構造式又は示性式 ································ 3
1.効能又は効果 ····································· 12
4.分子式及び分子量 ································ 4
2.用法及び用量 ····································· 13
5.化学名(命名法) ··································· 4
3.臨床成績 ·········································· 14
6.慣用名,別名,略号,記号番号 ················· 5
VI. 薬効薬理に関する項目 ····················29
7.CAS 登録番号 ····································· 5
1.薬理学的に関連ある化合物又は化合物群 ·· 29
III. 有効成分に関する項目 ······················ 6
2.薬理作用 ·········································· 29
1.物理化学的性質 ··································· 6
VII. 薬物動態に関する項目····················32
2.有効成分の各種条件下における安定性········ 7
1.血中濃度の推移・測定法 ······················· 32
3.有効成分の確認試験法 ·························· 9
2.薬物速度論的パラメータ ························· 37
4.有効成分の定量法 ································ 9
3.吸収 ················································ 38
IV. 製剤に関する項目 ···························10
4.分布 ················································ 39
1.剤形 ·················································10
5.代謝 ················································ 42
2.製剤の組成 ········································10
6.排泄 ················································ 45
3.懸濁剤,乳剤の分散性に対する注意 ··········10
7.トランスポーターに関する情報 ···················· 45
4.製剤の各種条件下における安定性 ·············10
8.透析等による除去率 ····························· 46
5.調製法及び溶解後の安定性 ···················· 11
VIII. 安全性(使用上の注意等)に関する項目 ·47
6.他剤との配合変化(物理化学的変化) ········ 11
1.警告内容とその理由·······························47
7.溶出性 ·············································· 11
2.禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)······· 47
8.生物学的試験法 ·································· 11
3.効能又は効果に関連する使用上の注意とその理由 ····· 48
9.製剤中の有効成分の確認試験法 ·············· 11
4.用法及び用量に関連する使用上の注意とその理由 ····· 48
5.慎重投与内容とその理由 ························48
12.効能又は効果追加,用法及び用量変更追加等
6.重要な基本的注意とその理由及び処置方法 ······48
の年月日及びその内容 ·························· 85
7.相互作用 ···········································56
13.再審査結果,再評価結果公表年月日及びその内容 ··· 85
8.副作用 ··············································65
14.再審査期間 ······································· 85
9.高齢者への投与 ···································73
15.投薬期間制限医薬品に関する情報 ··········· 85
10.妊婦,産婦,授乳婦等への投与 ················73
16.各種コード ········································· 85
11.小児等への投与 ···································74
17.保険給付上の注意 ······························· 85
12.臨床検査結果に及ぼす影響 ····················74
XI. 文献 ···········································86
13.過量投与 ···········································74
1.引用文献 ·········································· 86
14.適用上の注意 ·····································74
2.その他の参考文献 ································ 89
15.その他の注意 ·······································75
XII. 参考資料 ····································90
16.その他 ················································75
1.主な外国での発売状況·························· 90
IX. 非臨床試験に関する項目 ·················76
2.海外における臨床支援情報 ···················· 90
1.薬理試験 ···········································76
XIII. 備考 ·········································93
2.毒性試験 ···········································77
その他の関連資料··································· 93
X. 管理的事項に関する項目 ··················84
1.規制区分 ···········································84
2.有効期間又は使用期限 ·························84
3.貯法・保存条件 ···································84
4.薬剤取扱い上の注意点 ··························84
5.承認条件等 ········································84
6.包装 ·················································84
7.容器の材質 ········································84
8.同一成分・同効薬 ································85
9.国際誕生年月日 ··································85
10.製造販売承認年月日及び承認番号 ··········85
11.薬価基準収載年月日 ····························85
I. 概要に関する項目
1. 開発の経緯
抗 HIV 治療ガイドライン[平成 27 年度厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業(エイズ対策政策研
究事業) HIV 感染症及びその合併症の課題を克服する研究班 2016 年 3 月改訂]において,初回治療で推
奨される抗 HIV 療法は,2 剤の核酸系逆転写酵素阻害薬をバックボーンに,非核酸系逆転写酵素阻害薬,
低用量リトナビル併用プロテアーゼ阻害薬又はインテグラーゼ阻害薬のいずれかとの組み合わせが提唱さ
れている。抗 HIV 療法では,長期間にわたり血漿中 HIV-1 RNA 量を検出限界以下に抑制し続けることが目
標であり,抗ウイルス効果の維持のために,服薬アドヒアランスを高く保つことが重要である。近年では,
1 日 1 回 1 錠の投与で治療が可能な配合錠が開発され,服薬回数と服薬錠数の軽減が図られ,服薬アドヒア
ランス維持の観点から,重要な治療オプションとなっている。
ゲンボイヤ配合錠(以下,本剤)は,Gilead Sciences, Inc.(Gilead 社)により開発されたインテグラーゼ阻
害薬であるエルビテグラビル,薬物動態学的増強因子(ブースター)のコビシスタット,シチジン誘導体
のヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬であるエムトリシタビン及びアデノシン誘導体のヌクレオチド系逆転
写酵素阻害薬であるテノホビル アラフェナミドフマル酸塩の 4 成分の固定用量を含有する配合錠であり,
1 日 1 回 1 錠の服用にて,HIV-1 感染症の治療が可能である。
テノホビル アラフェナミドは HIV-1 の逆転写酵素を阻害する核酸アナログであるテノホビルの新規のプロ
ドラッグであり,Gilead 社により創製された。テノホビル アラフェナミドは,スタリビルド配合錠に含ま
れているテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩と比較して,10 分の 1 程度の投与量で,ウイルス感染標的
細胞内における活性代謝物濃度はより高く,一方で血漿中におけるテノホビル濃度はより低いことが確認
されている。このことから,テノホビル アラフェナミドでは,テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩と
同様の抗ウイルス活性を示すとともに,テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩で懸念される腎臓や骨に対
する影響の低減が期待され,開発されてきた。
本剤は,米国において 2015 年 11 月に承認され,Gilead 社より Genvoya®の商品名で販売されている。国内
では,日本たばこ産業株式会社が導入・開発を行い,米国における承認申請資料を基に,2016 年 3 月に申
請を行い,同年 6 月に承認を取得した。
2. 製品の治療学的・製剤学的特性
1) 本剤は,HIV インテグラーゼ阻害薬であるエルビテグラビル,薬物動態学的増強因子であるコビシスタッ
ト,シチジン誘導体のヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬であるエムトリシタビン及びテノホビル アラ
フェナミドフマル酸塩の 4 成分を含有する抗 HIV 薬である。(3 頁)
2) 抗 HIV 薬による治療経験のない HIV-1 感染症患者を対象にテノホビル アラフェナミド 10 mg 及びテノホ
ビル ジソプロキシルフマル酸塩 300 mg を投与した臨床試験では,テノホビル アラフェナミド投与時に
おける血漿のテノホビル曝露量はテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩投与時に比べ,約 90%低く,一
方,ヒト末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell:PBMC)におけるテノホビル二リン酸の組織
内濃度はテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩投与時に比べ約 4 倍高かった
1)
。このことから,テノホ
ビル アラフェナミドはテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩に比べ,テノホビル ジソプロキシルフマ
ル酸塩で懸念される,腎臓や骨に対する影響の低減化及び抗 HIV 活性の増強が示唆された。(17,21 頁)
3) 本剤は,クレアチニンクリアランスが 30 mL/min 以上 70 mL/min 未満の成人 HIV-1 感染症患者を対象とし
た臨床試験(292-0112 試験)の成績に基づき,クレアチニンクリアランスが 30 mL/min 以上の患者に対し
ても用量調節することなく,1 日 1 回 1 錠の服用で有効性,安全性が確認された。(13,26 頁)
-1-
)(12,14-16 頁)
4) 有効性(未治療及び既治療成人患者においてウイルス学的効果が示された。
 抗 HIV 薬による治療経験 がない成人 HIV-1 感染症患者 1,733 例を対象とした二重盲検比較試験
(292-0104/0111 試験)において,ウイルス学的効果(血漿中 HIV-1 RNA 量が 50 copies/mL 未満)が認め
られた患者の割合は,本剤投与群において投与後 48 週時で 92.4%(800/866 例)
,投与後 96 週時で 86.6%
(750/866 例)であり,対照群(スタリビルド配合錠投与群)と比較して本剤の非劣性が示された。
 抗 HIV 薬によりウイルス学的抑制の得られている HIV-1 感染症患者 1,436 例を対象とした非盲検比較試験
(292-0109 試験)では,投与後 48 週時において本剤投与群の 97.2%がウイルス学的効果を維持しており,
対照群(エムトリシタビン/テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩ベースレジメン投与群)と比較して
本剤の優越性が示された。
5) 安全性(65,67,74 頁)
 日本人を含む抗 HIV 薬による治療経験がない HIV-1 感 染症患者を対象とした,本剤 の臨床試験
(292-0104/0111 試験)の投与後 96 週時において,866 例中 367 例(42.4%)に副作用が認められた。主な
副作用は,悪心,下痢,頭痛等であった。
また,抗 HIV 薬による治療経験があり,ウイルス学的に抑制されている HIV-1 感染症患者を対象とした,
本剤の臨床試験(292-0109 試験)の投与後 48 週時において,959 例中 204 例(21.3%)に副作用が認めら
れた。主な副作用は,下痢,悪心等であった。
 抗 HIV 薬による治療経験がない 12 歳以上 18 歳未満で,体重 35 kg 以上の小児 HIV-1 感染症患者 48 例を
対象とした非盲検試験(292-0106 試験)において,有害事象による中止例は認められず,高い忍容性が示
された。
 重大な副作用として,腎機能不全,腎不全,急性腎不全,近位腎尿細管機能障害,ファンコニー症候群,
急性腎尿細管壊死,腎性尿崩症又は腎炎等の重度の腎機能障害があらわれることがあるので,定期的に検
査を行う等,観察を十分に行い,臨床検査値に異常が認められた場合には,投与を中止する等,適切な処
置を行うこと。特に腎機能障害の既往がある患者や腎毒性のある薬剤が投与されている患者では注意する
こと。
また,乳酸アシドーシスがあらわれることがあるので,このような場合には,投与を中止する等,適切な
処置を行うこと。
-2-
II. 名称に関する項目
1. 販売名
(1) 和名
ゲンボイヤ®配合錠
(2) 洋名
Genvoya® Combination Tablets
(3) 名称の由来
海外における商品名「Genvoya」の表音から命名した。
Genvoya:
Next generation treatment; voya is derived from voyage, able to take this treatment far into the patient’s future
because it is so safe
2. 一般名
(1) 和名(命名法)
エルビテグラビル(JAN)/コビシスタット(JAN)/エムトリシタビン(JAN)/テノホビル アラフェ
ナミドフマル酸塩(JAN)
(2) 洋名(命名法)
Elvitegravir(JAN)/Cobicistat(JAN)/Emtricitabine(JAN)/Tenofovir Alafenamide Fumarate(JAN)
(3) ステム
エルビテグラビル:
インテグラーゼ阻害薬:-tegravir
コビシスタット:
酵素阻害薬:-stat-又は-stat
エムトリシタビン:
ヌクレオシド系抗ウイルス又は抗腫瘍薬,シタラビン又はアザラビン誘導体:-citabine
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:
抗ウイルス薬:-vir
3. 構造式又は示性式
構造式:エルビテグラビル:
コビシスタット:
-3-
エムトリシタビン:
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:
4. 分子式及び分子量
エルビテグラビル:
分子式:C23H23ClFNO5
分子量:447.88
コビシスタット:
分子式:C40H53N7O5S2
分子量:776.02
エムトリシタビン:
分子式:C8H10FN3O3S
分子量:247.25
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:
分子式:(C21H29N6O5P)2·C4H4O4
分子量:1,069.00
5. 化学名(命名法)
エルビテグラビル:
6-[(3-Chloro-2-fluorophenyl)methyl]-1-[(2S)-1-hydroxy-3-methylbutan-2-yl]-7-methoxy-4-oxo-1,4dihydroquinoline-3-carboxylic acid「IUPAC 命名法による」
コビシスタット:
1,3-Thiazol-5-ylmethyl {(2R,5R)-5-[(2S)-2-(3-methyl-3-{[2-(1-methylethyl)-1,3-thiazol-4-yl]methyl}ureido)-4(morpholin-4-yl)butanamido]-1,6-diphenylhexan-2-yl}carbamate「IUPAC 命名法による」
エムトリシタビン:
4-Amino-5-fluoro-1-[(2R,5S)-2-(hydroxymethyl)-1,3-oxathiolan-5-yl]pyrimidin-2(1H)-one「IUPAC 命名法によ
る」
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:
1-Methylethyl N-[(S)-{[(1R)-2-(6-amino-9H-purin-9-yl)-1-methylethoxy]methyl}phenoxyphosphinoyl]-Lalaninate hemifumarate「IUPAC 命名法による」
-4-
6. 慣用名,別名,略号,記号番号
エルビテグラビル:
略
号:EVG
記号番号:JTK-303,GS-9137
コビシスタット:
略
号:COBI
記号番号:GS-9350
エムトリシタビン:
同意語:cis- (-)-FTC,(-)-FTC
略
号:FTC
記号番号:GS-9019,TP-0006
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:
同意語:GS-7340 hemifumarate
略
号:TAF fumarate
記号番号:GS-7340-03(テノホビル アラフェナミドフマル酸塩)
GS-7340(テノホビル アラフェナミド)
7. CAS 登録番号
エルビテグラビル:697761-98-1
コ ビ シ ス タ ッ ト:1004316-88-4
エムトリシタビン:143491-57-0
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:1392275-56-7
(参考)テノホビル アラフェナミド:379270-37-8
-5-
III. 有効成分に関する項目
1. 物理化学的性質
(1) 外観・性状
エルビテグラビル:白色~微黄色の粉末
コ ビ シ ス タ ッ ト:白色~微黄色の固体
エムトリシタビン:白色~帯黄白色の粉末
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:白色~灰白色又は白色~くすんだ黄赤色の粉末
(2) 溶解性
エルビテグラビル(20°C):
溶媒
溶解度(mg/mL)
日本薬局方の表現
ジメチルスルホキシド
693
溶けやすい
N,N-ジメチルホルムアミド
647
溶けやすい
テトラヒドロフラン
260
溶けやすい
アセトニトリル
33
やや溶けにくい
メタノール
16
やや溶けにくい
エタノール(95)
14
やや溶けにくい
2-プロパノール
7
溶けにくい
水
0.0003
ほとんど溶けない
溶媒
溶解度(mg/mL)
日本薬局方の表現
アセトニトリル
> 200
溶けやすい
ジクロロメタン
> 200
溶けやすい
ジメチルスルホキシド
> 200
溶けやすい
メタノール
> 200
溶けやすい
水
0.1
ほとんど溶けない
ヘプタン
0.005
ほとんど溶けない
コビシスタット(20°C):
エムトリシタビン(25°C):
溶媒
溶解度(mg/mL)
日本薬局方の表現
水
112
溶けやすい
メタノール
113
溶けやすい
0.1N HCl
170
溶けやすい
0.1N NaOH
115
溶けやすい
アセトニトリル
4
溶けにくい
酢酸イソプロピル
0.3
極めて溶けにくい
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩(20°C):
溶媒
溶解度(mg/mL)
日本薬局方の表現
メタノール
189
溶けやすい
エタノール(99.5)
69.6
やや溶けやすい
2-プロパノール
27.7
やや溶けにくい
水(pH 3.8)
21.7
やや溶けにくい
アセトン
9.16
溶けにくい
アセトニトリル
2.30
溶けにくい
トルエン
0.14
極めて溶けにくい
-6-
(3) 吸湿性
エルビテグラビル:室温下で保存した結果,吸湿性は認められなかった。
コ ビ シ ス タ ッ ト:室温下で保存した結果,相対湿度 60%以上で吸湿性が認められた。
エムトリシタビン:室温下で保存した結果,吸湿性は認められなかった。
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:
25°C,相対湿度 5%から 95%保存において,重量増加は 1.0%未満であり,吸湿性は認められなかった。
(4) 融点(分解点)
,沸点,凝固点
エルビテグラビル:融点:約 163°C
コ ビ シ ス タ ッ ト:融点:ガラス転移温度 35°C,約 200°C(分解)
エムトリシタビン:融点:約 155°C
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:融点:約 132°C
(5) 酸塩基解離定数
エルビテグラビル:pKa=6.6
コ ビ シ ス タ ッ ト:pKa=1.8,2.5,6.4
エムトリシタビン:pKa=2.65
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:pKa=3.96
(6) 分配係数
エルビテグラビル:Log D=4.5(pH 6.8)
コ ビ シ ス タ ッ ト:4.3(1-オクタノール/pH 8.5 のリン酸塩緩衝液)
エムトリシタビン:-0.43(オクタノール/水)
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:1.6(1-オクタノール/pH 7 のリン酸塩緩衝液)
(7) その他の主な示性値
エムトリシタビン:
旋光度:-137.9°(1% w/v メタノール 25°C)
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:
旋光度:-52.0°(酢酸 20°C)
2. 有効成分の各種条件下における安定性
エルビテグラビル:
試験項目:性状(外観)
,純度試験(類縁物質,光学純度),水分,熱分析,定量法
保存期間
保存形態
25°C・60% RH
(長期保存試験)
保存条件
60 ヵ月
ポリエチレン袋(密閉)
+高密度ポリエチレン容器
変化なし
40°C・75% RH
(加速試験)
6 ヵ月
ポリエチレン袋(密閉)
+高密度ポリエチレン容器
変化なし
総照度 120 万 Lux・hr 以上,
総近紫外放射エネルギー
200 W・hr/ m2 以上(苛酷試験)
-
ガラス製ペトリ皿,
石英製の蓋
-7-
結果
光による影響は認められなかった。
コビシスタット原薬※:
試験項目:性状(外観)
,純度試験(類縁物質,光学異性体)
,水分,定量法
保存条件
保存期間
保存形態
結果
24 ヵ月
ポリエチレン袋(密閉)
+高密度ポリエチレン容器
6 ヵ月まで経時的な水分量の増加が認めら
れたが,規格の範囲内であり,6 ヵ月以降,
変化は認められなかった。その他の品質特
性については,変化を示さなかった。
25°C・60% RH
(加速試験)
6 ヵ月
ポリエチレン袋(密閉)
+高密度ポリエチレン容器
1 ヵ月まで経時的な水分量の増加が認めら
れたが,規格の範囲内であり,1 ヵ月以降,
変化は認められなかった。その他の品質特
性については,変化を示さなかった。
総照度 120 万 Lux・hr 以上,
総近紫外放射エネルギー
200 W・hr/ m2 以上(苛酷試験)
-
ガラス製ペトリ皿,
石英製の蓋
5°C
(長期保存試験)
光による影響は認められなかった。
※コビシスタット・二酸化ケイ素混合物
エムトリシタビン:
試験項目:性状(外観)
,純度試験(類縁物質,光学純度),水分,定量法
保存条件
保存期間
保存形態
結果
25°C・60% RH
(長期保存試験)
24 ヵ月
エチレン酢酸ビニル
コポリマー袋(密閉)
+高密度ポリエチレン容器
変化なし
40°C・75% RH
(加速試験)
6 ヵ月
エチレン酢酸ビニル
コポリマー又は
ポリエチレン袋(密閉)
+高密度ポリエチレン容器
変化なし
総照度 180 万 Lux・hr 以上,
総近紫外放射エネルギー
224 W・hr/ m2 以上(苛酷試験)
-
石英製ペトリ皿
光による影響は認められなかった。
(主な分解物)FTU
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:
試験項目:性状(外観)
,融点,純度試験(類縁物質),水分,粉末 X 線回折測定,定量法
保存条件
保存期間
保存形態
結果
5°C
(長期保存試験)
24 ヵ月
ポリエチレン袋(密閉)
+高密度ポリエチレン容器
分解物の増加が認められたが,規格の範囲
内であった。
25°C・60% RH
(加速試験)
6 ヵ月
ポリエチレン袋(密閉)
+高密度ポリエチレン容器
分解物の増加が認められたが,規格の範囲
内であった。
総照度 120 万 Lux・hr 以上,
総近紫外放射エネルギー
200 W・hr/ m2 以上(苛酷試験)
-
ガラス製ペトリ皿,
石英製の蓋
(主な分解物)テノホビル モノエステル体
-8-
光による影響は認められなかった。
3. 有効成分の確認試験法
エルビテグラビル:
① 紫外可視吸収スペクトル
② 赤外吸収スペクトル
(臭化カリウム錠剤法)
260 nm 付近に吸収の極大を示す。
3,410 cm-1,2,968 cm-1,1,707 cm-1,1,612 cm-1,1,461 cm-1,1,258 cm-1 付近に吸収を
認める。
コビシスタット原薬※:
① 紫外可視吸収スペクトル
② 赤外吸収スペクトル
(薄膜法)
③ 二酸化ケイ素の定性反応
240 nm 付近に吸収の極大を示す。
3,285 cm-1 ,2,957 cm-1 ,1,714 cm-1 ,1,631 cm-1 ,1,525 cm-1 ,1,246 cm-1 ,1,116 cm-1
付近に吸収を認める。
濃黄色を呈する。
※コビシスタット・二酸化ケイ素混合物
エムトリシタビン:
① 赤外吸収スペクトル
(臭化カリウム錠剤法)
3,420 cm-1,1,694 cm-1,1,625 cm-1,1,520 cm-1,1,092 cm-1 付近に吸収を認める。
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:
① 紫外可視吸収スペクトル
② 赤外吸収スペクトル
(臭化カリウム錠剤法)
261 nm 付近に吸収の極大を示す。
1,746 cm-1,1,662 cm-1,1,608 cm-1,1,489 cm-1,1,303 cm-1,1,201 cm-1,1,154 cm-1,
1,102 cm-1 付近に吸収を認める。
4. 有効成分の定量法
エルビテグラビル:液体クロマトグラフィー法
検出器
カラム充填剤
A
移動相
B
紫外吸光光度計(測定波長:260 nm)
オクタデシルシリル化シリカゲル
水・アセトニトリル・ギ酸・トリエチルアミン
アセトニトリル・ギ酸・トリエチルアミン
コビシスタット原薬※:液体クロマトグラフィー法
検出器
カラム充填剤
移動相
A
B
紫外吸光光度計(測定波長:245 nm)
ドデシルシリル化シリカゲル
酢酸アンモニウム 3.1 g を水 2,000 mL に溶かし,トリエチルアミン 2 mL を正確に加える。
この液に酢酸を加えて pH 4.60±0.05 に調整する。
アセトニトリル・トリエチルアミン
※コビシスタット・二酸化ケイ素混合物
エムトリシタビン:液体クロマトグラフィー法
検出器
カラム充填剤
A
移動相
B
紫外吸光光度計(測定波長:282 nm)
オクタデシルシリル化シリカゲル
酢酸アンモニウム・酢酸・アセトニトリル
アセトニトリル・メタノール・酢酸
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:液体クロマトグラフィー法
検出器
カラム充填剤
A
移動相
B
紫外吸光光度計(測定波長:260 nm)
オクタデシルシリル化シリカゲル
リン酸塩緩衝液・テトラヒドロフラン・アセトニトリル
リン酸塩緩衝液・テトラヒドロフラン・アセトニトリル
-9-
IV. 製剤に関する項目
1. 剤形
(1) 剤形の区別,外観及び性状
販売名
ゲンボイヤ®配合錠
下面
上面
側面
外形
サイズ
剤形区別/性状
長径 約 19.2 mm,短径 約 8.7 mm,重量 約 1,080 mg
錠剤/緑色のフィルムコーティング錠
(2) 製剤の物性
該当しない
(3) 識別コード
GSI-510(上面に「GSI」
,下面に「510」と記載)
(4) pH,浸透圧比,粘度,比重,無菌の旨及び安定な pH 域等
該当しない
2. 製剤の組成
(1) 有効成分(活性成分)の含量
1 錠中に,エルビテグラビル 150 mg,コビシスタット 150 mg,エムトリシタビン 200 mg 及びテノホビル
アラフェナミドフマル酸塩 11.2 mg(テノホビル アラフェナミドとして 10 mg)を含有
(2) 添加物
二酸化ケイ素,クロスカルメロース Na,ヒドロキシプロピルセルロース,乳糖,セルロース,ラウリル
硫酸 Na,ステアリン酸 Mg,ポリビニルアルコール(部分けん化物),青色 2 号,マクロゴール,三二酸
化鉄,酸化チタン,タルク
(3) その他
該当しない
3. 懸濁剤,乳剤の分散性に対する注意
該当しない
4. 製剤の各種条件下における安定性
(1) 各種条件下における安定性
試験項目:性状(外観)
,純度試験(分解生成物),水分,溶出性,定量
試験区分
長期保存
試験
保存条件
25°C,60% RH
30°C,75% RH
保存期間
30 ヵ月
18 ヵ月
加速試験
40°C,75% RH
6 ヵ月
-20°C
50°C
苛酷試験
4日
60°C
白色蛍光ランプ及び
近紫外蛍光ランプ
総照度 120 万 Lux・hr 以上及び
総近紫外放射エネルギー
200 W・hr/m2 以上となるまで照射
- 10 -
保存形態
高密度ポリエチレン瓶
+シリカゲル乾燥剤
高密度ポリエチレン瓶
+シリカゲル乾燥剤
高密度ポリエチレン瓶
+シリカゲル乾燥剤及び
ポリエチレン袋(密閉)
+高密度ポリエチレン容器
シャーレ(開放)
結果
変化なし
変化なし
変化なし
変化なし
(2) 無包装状態での安定性
試験項目:純度試験(分解生成物)
,水分,定量
保存条件
25°C,60% RH
30°C,75% RH
保存期間
保存形態
6 週間
シャーレ(開放)
結果
変化なし
経時的に水分値が上昇し,2 週間で規格を逸脱した。
5. 調製法及び溶解後の安定性
該当しない
6. 他剤との配合変化(物理化学的変化)
該当しない
7. 溶出性
方法:日局 溶出試験法のパドル法により試験を行う。
回転数 毎分 100 回転
試験液 ポリソルベート 80 の pH 5.5 の 0.05 mol/L クエン酸塩緩衝液溶液(1→50)1,000 mL
分析法 液体クロマトグラフィー
結果:エルビテグラビルの 60 分間の溶出率は 85%以上であった。コビシスタット,エムトリシタビン及
びテノホビル アラフェナミドの 20 分間の溶出率はそれぞれ 85%以上であった。
8. 生物学的試験法
該当しない
9. 製剤中の有効成分の確認試験法
液体クロマトグラフィー
10. 製剤中の有効成分の定量法
液体クロマトグラフィー
11. 力価
該当しない
12. 混入する可能性のある夾雑物
特になし
13.注意が必要な容器・外観が特殊な容器に関する情報
該当しない
14. その他
特になし
- 11 -
V. 治療に関する項目
1. 効能又は効果
HIV-1 感染症
<効能・効果に関連する使用上の注意>
1. 以下のいずれかの HIV-1 感染症患者に使用すること。
①抗 HIV 薬による治療経験がない患者
②ウイルス学的失敗の経験がなく,切り替え前 6 ヵ月間以上においてウイルス学的抑制(HIV-1
RNA 量が 50 copies/mL 未満)が得られており,エルビテグラビル,エムトリシタビン又はテ
ノホビルに対する耐性関連変異を持たず,本剤への切り替えが適切であると判断される抗 HIV
薬既治療患者
2. 本剤による治療にあたっては,患者の治療歴及び可能な場合には薬剤耐性検査(遺伝子型解析ある
いは表現型解析)を参考にすること。
(解説)
効能又は効果
エルビテグラビル(EVG,E),コビシスタット(COBI,C),エムトリシタビン(FTC,F)及びテノホビ
ル アラフェナミド(TAF)フマル酸塩を含有するゲンボイヤ配合錠(以下,本剤)は,抗 HIV 薬による治
療経験がない HIV-1 感染症患者を対象とした第 III 相臨床試験(292-0104/0111 試験)及び抗 HIV 薬による
治療経験があり,ウイルス学的に抑制されている HIV-1 感染症患者を対象とした第 III 相臨床試験(292-0109
試験)の成績において有効性及び安全性が示された。このことから,本剤の効能・効果を HIV-1 感染症と
した([
「本項 3. 臨床成績」の項]参照)
。
効能・効果に関連する使用上の注意
1. 本剤の第 III 相臨床試験(292-0104/0111 試験及び 292-0109 試験)において投与された患者背景を考慮し
て,使用上の注意を設定した(
[「本項 3. 臨床成績」の項]参照)。
2. HIV は変異しやすいウイルスであり,抗 HIV 薬による治療において抗 HIV 薬の効果が減弱する変異(耐
性変異)を来すことがある。耐性変異の種類により,抗 HIV 薬の効果が不十分となる場合があるため,
治療を開始するにあたって,患者の治療歴を聴取し,可能な場合には薬剤耐性検査(遺伝子検査あるい
は表現型解析)を行うことが重要となる。
- 12 -
2. 用法及び用量
通常,成人及び 12 歳以上かつ体重 35 kg 以上の小児には,1 回 1 錠(エルビテグラビルとして 150 mg,
コビシスタットとして 150 mg,エムトリシタビンとして 200 mg 及びテノホビル アラフェナミドとして
10 mg を含有)を 1 日 1 回食後に経口投与する。
<用法・用量に関連する使用上の注意>
1. 本剤は,エルビテグラビル,コビシスタット,エムトリシタビン及びテノホビル アラフェナミド
フマル酸塩の 4 成分を含有した配合錠である。これらの成分を含む製剤と併用しないこと。また,
テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を含む製剤についても併用しないこと。
2. 投与開始時に,クレアチニンクリアランスが 30 mL/min 以上であることを確認すること。また,本
剤投与後,クレアチニンクリアランスが 30 mL/min 未満に低下した場合は,投与の中止を考慮する
こと。
(解説)
用法及び用量
TAF は,HIV-1 の逆転写酵素を阻害するヌクレオチド類似体であるテノホビル(TFV)の新規の経口プロド
ラッグである。血漿中で TAF は安定であり,効率的にリンパ球等の PBMC に移行し,PBMC 内のカテプシ
ン A により TFV に代謝される。このことから,既存の TFV プロドラッグであるテノホビル ジソプロキシ
ルフマル酸塩(TDF)の投与時と同等以上の抗ウイルス活性を示すために必要な TAF の投与量は,TDF よ
りも少なくなり,TFV の血漿中濃度も低く抑えることが可能となった。
TAF の用量については,HIV-1 感染症患者を対象とした第 I 相臨床試験(120-0104 試験)の成績から,10 mg
(TAF フマル酸塩として 11.2 mg)と設定した([「本項 3. 臨床成績 (4) 探索的試験」の項]参照)
。
一方,本剤は,スタリビルド配合錠(EVG/COBI/FTC/TDF:STB)に含有されている TDF を TAF に置き換
えた新たな配合錠である。このことから EVG,COBI 及び FTC の用量については,STB の承認用量を用い
て,EVG 150 mg,COBI 150 mg 及び FTC 200 mg とした。
本剤の小児における用法については,12 歳以上 18 歳未満かつ体重 35 kg 以上の抗 HIV 薬による治療経験が
ない HIV-1 感染症患者を対象とした第 II/III 相臨床試験(292-0106 試験)の成績から,本剤を 1 回 1 錠,1
日 1 回食後に経口投与することとした([
「本項 3. 臨床成績 (5) 検証的試験 4) 患者・病態別試験」の項]
参照)。
用法・用量に関連する使用上の注意
1. EVG,COBI,FTC 及び TAF フマル酸塩については,本剤にこれら成分を含有しており,過量投与とな
るため,本剤と併用することを制限した。
2. 投与開始時のクレアチニンクリアランス値については,Cockcroft-Gault 計算式から算出するクレアチニ
ンクリアランスが 30 mL/min 以上 70 mL/min 未満の HIV-1 感染症患者を対象とした第 III 相臨床試験
(292-0112 試験)の成績から設定した(
[「本項 3. 臨床成績 (5) 検証的試験 4) 患者・病態別試験」の
項]参照)
。
- 13 -
3. 臨床成績
(1) 臨床データパッケージ(2009 年 4 月以降承認品目)
◎:評価資料,-:非検討又は評価の非対象
Phase
試験番号
対象
第I相
292-0101
海外臨床試験
健康成人:40 例
-
◎
◎
第I相
292-0103
海外臨床試験
健康成人:34 例
-
◎
◎
第I相
292-0110
海外臨床試験
健康成人:43 例
-
-
◎
第I相
236-0105
海外臨床試験
健康成人:24 例
-
-
◎
第I相
120-0107
海外臨床試験
健康成人:59 例
-
-
-
第I相
SBX5-1
国内臨床試験
健康成人:12 例
-
◎
◎
第I相
120-0104
海外臨床試験
HIV-1 感染症成人患者:38 例
◎
◎
◎
第 II 相
292-0102
◎
◎
◎
無作為化二重盲検実薬対照試験。本剤の有効性及
び安全性を STB と比較検討する。
第 II/III 相
292-0106
◎
◎
◎
非盲検非対照試験。小児患者(12 歳以上 18 歳未
満かつ体重 35 kg 以上)に本剤を投与した場合の
有効性及び安全性を評価する。
第 III 相
292-0104
◎
◎
◎
無作為化二重盲検実薬対照試験。本剤の有効性及
び安全性を STB と比較検討する。
第 III 相
292-0111
◎
◎
◎
無作為化二重盲検実薬対照試験。本剤の有効性及
び安全性を STB と比較検討する。
第 III 相
292-0109
◎
◎
◎
◎
◎
◎
第 III 相
292-0112
海外臨床試験
HIV-1 感染症成人
未治療患者:170 例
海外臨床試験
HIV-1 感染症小児患者:
48 例
海外臨床試験
HIV-1 感染症成人
未治療患者:867 例
海外臨床試験
HIV-1 感染症成人
未治療患者:866 例
海外臨床試験
HIV-1 感染症成人
既治療患者:1,436 例
海外臨床試験
軽度から中等度の腎機能障害
がある HIV-1 感染症成人患者:
既治療 242 例,未治療 6 例
有効性 安全性
薬物
動態
概要
無 作 為 化 非 盲 検 反 復 投 与 試 験 。 E/C/F/TAF
150/150/200/25 mg,E/C/F/TAF 150/150/200/40 mg
及び STB 投与時の相対的 BA を検討する。
無作為化非盲検反復投与 2 期クロスオーバー試
験。本剤投与時と EVG,COBI,FTC 及び TAF
の各製剤投与時の生物学的同等性を検討する。
無作為化非盲検単回投与 3 期クロスオーバー試
験。本剤投与時の TAF の PK に対する食事の影響
を検討する。
無作為化非盲検単回投与 3 期クロスオーバー試
験。STB 投与時の EVG,COBI,FTC 及び TFV
の PK に対する食事の影響を検討する。
無作為化部分盲検単回投与 4 期クロス オーバー
試験。TAF 投与時の QTc への影響を検討する。
無作為化非盲検単回投与 3 期クロスオーバー試
験。本剤投与時の各成分の PK に対する食事の影
響を検討する。
無作為化部分盲検 10 日間反復投与試験。TAF 単
剤の抗ウイルス効果を TDF 及びプラセボと比較
する。
無作為化非盲検実薬対照試験。TDF 含有レジメン
から本剤に切り替えた場合に,TDF 含有レジメン
継続時との非劣性を検証する。
非盲検非対照試験。軽度から中等度の腎機能障害
を有する患者(クレアチニンクリアランスが
30 mL/min 以上 70 mL/min 未満)に本剤を投与開
始又は切り替えた場合の腎機能パラメータへの
影響を評価する。
(2) 臨床効果
1) 292-0104/0111 試験 2):抗 HIV 薬による治療経験がない成人 HIV-1 感染症患者を対象とした本剤と STB の
比較試験
抗 HIV 薬による治療経験がない成人 HIV-1 感染症患者 1,733 例を対象とし,本剤投与群(866 例)と STB
投与群(867 例)に 1:1 に無作為に割り付ける多施設共同二重盲検試験を実施した。試験開始時の患者の
平均年齢は 36 歳,85.0%が男性,56.7%が白人,25.2%が黒人及び 10.4%がアジア人であった。試験開始時
の平均 CD4 陽性 T リンパ球数は,427 cells/mm3,血漿中 HIV-1 RNA 量の平均値は 4.53 log10 copies/mL で
あった。試験開始時の CD4 陽性 T リンパ球数が 200 cells/mm3 以下の患者は 13.2%,血漿中 HIV-1 RNA 量
が 100,000 copies/mL 超の患者は 22.6%であった。
本試験における主要評価項目として,FDA が定義した Snapshot 解析アルゴリズムを用いて,投与後 48 週
時の血漿中 HIV-1 RNA 量が 50 copies/mL 未満であった症例比率を評価し,STB 投与群との非劣性を検証
- 14 -
した。事前の取り決めとして,有効率の差の 95%信頼区間(confidence interval:CI)の下限が–12%を下回
らない場合に,本剤投与群が STB 投与群と非劣性であると定義した。本試験の結果,投与後 48 週時の血
漿中 HIV-1 RNA 量が 50 copies/mL 未満であった症例の比率は,
本剤投与群で 92.4%,STB 投与群で 90.4%,
有効率の差は 2.0%(95% CI:–0.7%~4.7%)であり,事前に設定した非劣性の基準を満たしたことから,
本剤は STB に対し非劣性であることが示された。投与後 48 週時及び 96 週時の結果を示す。
投与後 48 週時及び 96 週時のウイルス学的効果(292-0104/0111 試験)
48 週
ウイルス学的成功例:HIV-1 RNA 量< 50 copies/mL
投与間差(95%信頼区間)
ウイルス学的失敗例
96 週
本剤投与群
(866 例)
STB 投与群
(867 例)
本剤投与群
(866 例)
STB 投与群
(867 例)
800(92.4%)
784(90.4%)
750(86.6%)
739(85.2%)
2.0%(-0.7%~4.7%)
1.5%(-1.8%~4.8%)
31(3.6%)
35(4.0%)
39(4.5%)
35(4.0%)
20(2.3%)
23(2.7%)
16(1.8%)
15(1.7%)
無効による投与中止
2(0.2%)
3(0.3%)
6(0.7%)
6(0.7%)
他の理由による投与中止及び
最終血漿中 HIV-1 RNA 量≧50 copies/mL
8(0.9%)
8(0.9%)
15(1.7%)
13(1.5%)
新たな抗 HIV 薬の追加
1(0.1%)
1(0.1%)
2(0.2%)
1(0.1%)
35(4.0%)
48(5.5%)
77(8.9%)
93(10.7%)
8(0.9%)
14(1.6%)
11(1.3%)
21(2.4%)
21(2.4%)
31(3.6%)
52(6.0%)
64(7.4%)
6(0.7%)
3(0.3%)
14(1.6%)
8(0.9%)
血漿中 HIV-1 RNA 量≧50 copies/mL
ウイルス学的データ欠測例
有害事象又は死亡による投与中止
他の理由による投与中止及び
最終血漿中 HIV-1 RNA 量<50 copies/mL
データ欠測だが,治験薬投与は継続
例数(%)
投与開始から投与後 96 週時までの血漿中 HIV-1 RNA 量が 50 copies/mL 未満であった症例比率の推移
(Missing = Failure)を以下に示す。
血漿中 HIV-1 RNA 量が 50 copies/mL 未満であった症例比率の推移(292-0104/0111 試験)
投与後 48 週時の CD4 陽性 T リンパ球数の平均変化量は,本剤投与群で 231 cells/mm3,STB 投与群で
210 cells/mm3 であった。また,投与後 96 週時の CD4 陽性 T リンパ球数の平均変化量は,本剤投与群で
280 cells/mm3,STB 投与群で 266 cells/mm3 であった。
- 15 -
投与後 48 週時及び 96 週時の CD4 陽性 T リンパ球数の変化量(292-0104/0111 試験)
投与群間差
本剤投与群
(866 例)
STB 投与群
(867 例)
P値
有効率の差 a(95% CI)
CD4 陽性 T リンパ球数の
投与後 48 週時
231 ± 181.2
210 ± 171.1
0.014
21(4, 38)
変化量(cells/mm3)
投与後 96 週時
280 ± 194.0
266 ± 194.6
0.140
15(-5, 34)
a 最小二乗平均の差(95% CI 法)
2) 292-0109 試験 3):FTC/TDF を含むレジメンによりウイルス学的に抑制されている成人 HIV-1 感染症患者
を対象とした,本剤への切り替えと前治療継続との比較試験
ウイルス学的失敗の経験がなく,FTC/TDF を含むレジメンにより,切り替え前 6 ヵ月間以上においてウイ
ルス学的抑制(HIV-1 RNA 量が 50 copies/mL 未満)が得られている成人 HIV-1 感染症患者 1,436 例を対象
とし,本剤へ切り替える群(本剤投与群,959 例)と FTC/TDF を含むレジメンの継続投与群(前治療継続
群,477 例)に 2:1 に無作為に割り付ける多施設共同二重盲検試験を実施した。試験開始時の患者の平均
年齢は 41 歳,89.3%が男性,67.2%が白人,18.9%が黒人及び 6.5%がアジア人であった。
本試験における主要評価項目として,FDA が定義した Snapshot 解析アルゴリズムを用いて投与後 48 週時
の血漿中 HIV-1 RNA 量が 50 copies/mL 未満であった症例比率を評価し,前治療継続群との非劣性を検証
した。事前の取り決めとして,有効率の差の 95% CI の下限が–12%を下回らない場合に本剤投与群が前治
療継続群と非劣性であると定義した。
本試験の結果,投与後 48 週時の血漿中 HIV-1 RNA 量が 50 copies/mL 未満であった症例の比率は,本剤投
与群で 97.2%,前治療継続群で 93.1%,有効率の差は 4.1%(95% CI:1.6%~6.7%)であり,事前に設定し
た非劣性の基準を満たしたことから,本剤は前治療の継続に対し非劣性であることが示され,さらに,本
剤投与群の前治療継続群に対する優越性についても確認された。
投与後 48 週時の結果を示す。
投与後 48 週時のウイルス学的効果(292-0109 試験)
本剤投与群(959 例)
FTC/TDF を含むレジメンの継続投与群
(477 例)
932(97.2%)
444(93.1%)
ウイルス学的成功例:HIV-1 RNA 量< 50 copies/mL
投与間差(95%信頼区間)
ウイルス学的失敗例
4.1%(1.6%~6.7%)
10(1.0%)
6(1.3%)
血漿中 HIV-1 RNA 量≧50 copies/mL
6(0.6%)
4(0.8%)
無効による投与中止
1(0.1%)
0
他の理由による投与中止及び
最終血漿中 HIV-1 RNA 量≧50 copies/mL
1(0.1%)
0
新たな抗 HIV 薬の追加
ウイルス学的データ欠測例
有害事象又は死亡による投与中止
他の理由による投与中止及び
最終血漿中 HIV-1 RNA 量<50 copies/mL
データ欠測だが,治験薬投与は継続
2(0.2%)
2(0.4%)
17(1.8%)
27(5.7%)
10(1.0%)
6(1.3%)
7(0.7%)
20(4.2%)
0
1(0.2%)
例数(%)
3) 薬剤耐性
抗 HIV 薬による治療経験のない HIV-1 感染症患者:
292-0104/0111 試験において,ウイルス学的失敗と判定された被験者のうち,投与後 96 週時又は早期に試
験中止となった時点の血漿中 HIV-1 RNA 量が 400 copies/mL を超えた被験者から分離した HIV-1 を解析し,
19 例(2.2%,19/866 例)の遺伝子型及び表現型解析結果が得られた。遺伝子型解析結果から,10 例(1.2%,
10/866 例)において,EVG,FTC 又は TFV の主要耐性関連変異が一つ以上認められた。認められた変異
は,逆転写酵素領域の M184V/I(9 例)
,K65R/N(2 例)及び K70R(1 例)
,インテグラーゼ領域の T66A/I/V
(2 例)
,E92Q(4 例)
,Q148R(1 例)及び N155H/S(2 例)であった。また,表現型解析結果から,EVG
- 16 -
に対する感受性が野生株に対して 10.9 倍から 101 倍低下した HIV-1 分離株が 7 例(0.8%,7/866 例)に,
FTC に対する感受性が野生株に対して 28 倍から 117 倍超低下した HIV-1 分離株が 8 例(0.9%,8/866 例)
に,TFV に対する感受性が野生株に対して 3 倍低下した HIV-1 分離株が 1 例(0.1%,1/866 例)に認めら
れた。
抗 HIV 薬による治療経験があり,ウイルス学的に抑制されている HIV-1 感染症患者:
292-0109 試験において,投与後 48 週時で遺伝子型及び表現型解析の対象となった被験者に耐性変異は認
められなかった。
(3) 臨床薬理試験:
1) 忍容性試験:
SBX5-1 試験 4)日本人健康成人被験者 12 例を対象に,本剤を投与した際の,EVG,COBI,FTC,TAF 及び
TFV の薬物動態に対する食事の影響を評価する,第 I 相・無作為化・非盲検・クロスオーバー試験を実施
した。その結果,日本人健康成人被験者に本剤を投与した時の安全性に問題は認められなかった(
[「VII. 薬
物動態に関する項目 1. 血中濃度の推移・測定法 (3) 臨床試験で確認された血中濃度 1) 単回投与試験 ①
日本人における成績」の項]参照)
。
2) 薬力学的試験:
該当資料なし
3) QT/QTc 評価試験:
120-0107 試験 5)
TAF の QTc への影響を検討するために,外国人健康成人(59 例)を対象として,第 I 相,無作為化,部
分盲検,単回投与,4 期クロスオーバー(TAF 100 mg,TAF 125 mg,モキシフロキサシン 400 mg(実薬対
照)及びプラセボ)試験を実施した。この結果,TAF は QTc に影響を及ぼさなかった。
(4) 探索的試験
1) TAF の用量設定
120-0104 試験 6):
HIV-1 感染症患者を対象として,TAF 8 mg,25 mg 及び 40 mg を 1 日 1 回 10 日間単剤投与した場合の
目的
短期間での抗ウイルス効果を,血漿中 HIV-1 RNA 量のベースラインから投与 11 日目までの時間加重平
均(DAVG11)を指標に,プラセボ又は TDF 300 mg と比較検討する。
試験デザイン
対象
主な登録基準
第 I 相・無作為化・部分盲検・実薬及びプラセボ対照試験
成人 HIV-1 感染症患者(計 38 例)
血漿中 HIV-1 RNA 量が 2,000 copies/mL 以上の者,CD4 陽性 T リンパ球数が 200 cells/mm3 以上の者,ス
クリーニングの前 90 日以内に抗レトロウイルス療法(治験薬を含む)を受けていない者。
試験方法
TAF 8 mg,25 mg,40 mg,TDF 300 mg 又は TAF のプラセボ 1 日 1 回,10 日間投与。
主要評価項目
血漿中 HIV-1 RNA 量のベースラインから投与 11 日目までの時間加重平均(DAVG11)
主な副次評価項目
安全性,TAF 及び TFV の血漿中及び細胞中濃度,ウイルス学的効果,TFV の PBMC 中濃度と抗ウイル
ス効果の関係性(PK/PD),TAF 及び TDF の骨及び腎バイオマーカーに対する影響。
- 17 -
本試験における血漿中 HIV-1 RNA 量の DAVG11 を下表に示した。TAF の抗ウイルス活性は投与量の増
加に伴い増強したが,TAF 25 mg 投与群と TAF 40 mg 投与群の抗ウイルス活性は同程度であった。また,
TAF 8 mg 投与群の抗ウイルス活性は,TDF 300 mg 投与群と同程度であることが示された。すべての TAF
投与群における安全性プロファイルは,TDF 300 mg 投与群と同程度であった。これらのことから,TAF
単剤投与時の至適用量は,TDF 投与時と同等以上の抗ウイルス活性が期待され,かつ最大薬効が期待
できる 25 mg と設定した。
血漿中 HIV-1 RNA 量の DAVG11(120-0104 試験)
結果
DAVG
(log10 copies/mL)
8 mg(9 例)
平均値±S.D.
-0.67±0.265
95% CI
TAF
25 mg(8 例) 40 mg(8 例)
-0.94±0.254
-1.14±0.226
TDF 300 mg
(6 例)
プラセボ
(7 例)
-0.45±0.340
0.13±0.391
(-0.88, -0.47) (-1.15, -0.72) (-1.33, -0.95) (-0.81, -0.09) (-0.23, 0.49)
Median
-0.76
-0.94
-1.08
-0.48
-0.01
Min, Max
-0.97, -0.24
-1.31, -0.54
-1.46, -0.84
-0.94, 0.11
-0.08, 1.01
0.001
0.001
0.001
0.038
-
0.22
0.017
0.006
-
-
0.003
0.13
-
-
-
0.075
-
-
-
-
p-value vs.
プラセボ
p-value vs.
TDF 300 mg
p-value vs.
TAF 40 mg
p-value vs.
TAF 25 mg
2) EVG,COBI 及び FTC 配合時における TAF の用量設定
120-0104 試験に続いて,TAF 25 mg を EVG 150 mg,COBI 150 mg 及び FTC 200 mg と配合した製剤
(E/C/F/TAF 150/150/200/25 mg)を用いた第 I 相臨床試験(292-0101 試験)を実施したところ,TAF 曝露
量は,TAF 25 mg 単剤投与時と比較して約 2.5 倍高いことが示された。TAF は,P-糖蛋白(P-gp)の基質
であることから,P-gp 阻害作用を有する COBI との併用投与によって TAF 曝露量が上昇したと考えられ
た。これを受けて,TAF の含有量を 10 mg に処方変更した製剤(E/C/F/TAF 150/150/200/10 mg)を用いた
第 I 相臨床試験(292-0103 試験)を実施した。その結果,TAF 曝露量は,FTC 200 mg+TAF 25 mg 投与時
と同程度であることが確認された。
以上の結果から,以降の臨床試験で用いる E/C/F/TAF に含有する TAF の用量を 10 mg と設定した。
①292-0101 試験 7):
目的
試験デザイン
対象
主な登録基準
健康成人被験者を対象として,STB 及び TAF 単剤投与時との比較により,EVG,COBI,FTC 及び TAF
を含有する 2 種類の E/C/F/TAF 製剤(製剤 1 及び 2)を投与した際の EVG,COBI,FTC,TAF 及び TFV
の相対的バイオアベイラビリティを検討する。
第 I 相・無作為化・非盲検・クロスオーバー・反復投与・複数コホート試験
健康成人(計 40 例)
18 歳以上,45 歳以下の健康な男性又は妊娠及び授乳をしていない女性。
BMI が 19 kg/m2 以上,30 kg/m2 以下の者。
試験方法
コホート 1:E/C/F/TAF 150/150/200/25 mg(製剤 1)
,E/C/F/TAF 150/150/200/40 mg(製剤 1),STB 又は
TAF 25 mg を 1 日 1 回,12 日間投与。
コホート 2:E/C/F/TAF 150/150/200/25 mg(製剤 2)
,E/C/F/TAF 150/150/200/40 mg(製剤 2),STB 又は
TAF 25 mg を 1 日 1 回,12 日間投与。
主要評価項目
E/C/F/TAF 配合錠,STB 又は TAF 単剤で投与した場合の EVG,COBI,FTC 及び TFV の相対的バイオ
アベイラビリティ。
主な副次評価項目
安全性
- 18 -
E/C/F/TAF の製剤 1 及び 2 を投与した結果,TAF 25 mg 含有製剤は,いずれも TAF 25 mg 単剤投与時と
比較して,TAF の AUClast 及び Cmax は 220~230%に増加し,TFV の AUCtau 及び Cmax はそれぞれ 300%及
び 370%に増加した。また,STB 投与時と比較した場合,TFV の AUCtau 及び Cmax はそれぞれ 23%及び
14%に減少した。なお,E/C/F/TAF の製剤 1 及び 2 を投与した時の EVG,COBI 及び FTC の曝露量は,
いずれも STB 投与時と同程度であった。
TAF 及び TFV の薬物動態パラメータ(292-0101 試験)
E/C/F/TAF 製剤
比較製剤
幾何最小二乗平均値の
比
(%)(90% CI)
TAF PK パラメータ(コホート 1:製剤 1)
E/C/F/TAF 25 mg(19 例)
TAF 25 mg(19 例)
-
AUClast(ng•hr/mL)
552.1(40.5)
242.4(42.4)
221.78(199.99, 245.95)
Cmax(ng/mL)
506.9(54.2)
215.4(55.0)
222.62(187.11, 264.87)
TAF PK パラメータ(コホート 2:製剤 2)
E/C/F/TAF 25 mg(18 例)
TAF 25 mg(18 例)
-
AUClast(ng•hr/mL)
558.7(28.6)
244.9(34.0)
230.93(205.52, 259.50)
Cmax(ng/mL)
472.4(57.4)
210.8(43.7)
223.01(188.40, 263.97)
TFV PK パラメータ(コホート 1:製剤 1)
結果
AUCtau(ng•hr/mL)
Cmax(ng/mL)
Ctau(ng/mL)
E/C/F/TAF 25 mg(19 例)
STB(19 例)
-
834.9(17.6)
3,737.3(22.3)
22.62(21.39, 23.91)
65.9(50.9)
444.7(28.9)
14.02(12.20, 16.11)
73.2(25.1)
38.93(36.54, 41.47)
28.1(20.3)
E/C/F/TAF 25 mg(19 例)
TAF 25 mg(19 例)
-
834.9(17.6)
273.4(23.5)
306.92(290.34, 324.45)
Cmax(ng/mL)
65.9(50.9)
16.3(24.8)
367.68(319.98, 422.50)
Ctau(ng/mL)
28.1(20.3)
9.4(25.9)
301.52(283.03, 321.22)
AUCtau(ng•hr/mL)
TFV PK パラメータ(コホート 2:製剤 2)
E/C/F/TAF 25 mg(18 例)
STB(18 例)
-
897.8(12.7)
4,089.6(21.7)
22.47(21.11, 23.91)
Cmax(ng/mL)
71.9(57.3)
505.3(27.1)
13.54(11.62, 15.77)
Ctau(ng/mL)
31.3(15.0)
81.6(22.2)
39.13(36.46, 41.99)
AUCtau(ng•hr/mL)
AUCtau(ng•hr/mL)
E/C/F/TAF 25 mg(17 例)
TAF 25 mg(18 例)
-
897.8(12.7)
300.3(13.4)
299.23(281.25, 318.37)
Cmax(ng/mL)
71.9(57.3)
17.5(15.1)
370.45(318.17, 431.34)
Ctau(ng/mL)
31.3(15.0)
10.5(16.7)
300.33(279.91, 322.24)
(注)各パラメータの平均値(変動係数)を示した。
②292-0103 試験 8):
目的
試験デザイン
対象
主な登録基準
EVG+COBI 及び FTC+TAF 投与時との比較により,本剤を投与した際の EVG,COBI,FTC,TAF 及
び TFV の薬物動態及び相対的バイオアベイラビリティを検討する。
第 I 相・無作為化・非盲検・クロスオーバー・反復投与・複数コホート・単一施設試験
健康成人(計 34 例)
18 歳以上,45 歳以下の健康な男性又は妊娠及び授乳をしていない女性。
BMI が 19 kg/m2 以上,30 kg/m2 以下の者。
試験方法
コホート 1:E/C/F/TAF 150/150/200/10 mg 又は EVG 150 mg+COBI 150 mg を 1 日 1 回,12 日間投与。
コホート 2:E/C/F/TAF 150/150/200/10 mg 又は FTC 200 mg+TAF 25 mg を 1 日 1 回,12 日間投与。
主要評価項目
本剤又は各成分の単剤を投与した場合の EVG,COBI,FTC,TAF 及び TFV の薬物動態及び相対的バイ
オアベイラビリティ。
主な副次評価項目
安全性及び忍容性
- 19 -
本剤投与時の TAF の AUClast 及び Cmax は,FTC 200 mg+TAF 25 mg 投与時に対して,それぞれ 91.42%,
98.68%であり同程度であった。同様に TFV の AUCtau 及び Cmax は,FTC 200 mg+TAF 25 mg 投与時に対
して,それぞれ 123.63%,114.16%であり同程度であった。
また,本剤投与時の EVG 及び COBI の曝露量は,EVG 150 mg+COBI 150 mg 投与時と,また,FTC の
曝露量は FTC 200 mg+TAF 25 mg 投与時と同程度であった。
TAF,TFV,EVG,COBI 及び FTC の薬物動態パラメータ(292-0103 試験)
E/C/F/TAF 製剤
TAF
PK パラメータ
本剤(19 例)
AUClast(ng•hr/mL)
250.2(24.7)
Cmax(ng/mL)
176.9(35.1)
TFV
PK パラメータ
AUCtau(ng•hr/mL)
本剤(19 例)
比較製剤
FTC 200 mg+TAF 25 mg
(19 例)
幾何最小二乗平均値の比
(%)(90% CI)
-
278.2(28.8)
91.42(84.12, 99.35)
179.5(33.9)
98.68(84.57, 115.13)
FTC 200 mg+TAF 25 mg
(19 例)
-
324.2(15.4)
265.9(22.2)
123.63(116.97, 130.67)
Cmax(ng/mL)
19.6(13.9)
19.2(76.0)
114.16 (97.52, 133.64)
Ctau(ng/mL)
11.4(17.8)
9.2(23.5)
125.37(117.72, 133.51)
比較製剤
幾何最小二乗平均値の比
(%)(90% CI)
結果
E/C/F/TAF 製剤
EVG
PK パラメータ
AUCtau(ng•hr/mL)
Cmax(ng/mL)
Ctau(ng/mL)
COBI
PK パラメータ
AUCtau(ng•hr/mL)
Cmax(ng/mL)
Ctau(ng/mL)
FTC
PK パラメータ
AUCtau(ng•hr/mL)
本剤(14 例)
EVG 150 mg+COBI 150 mg
(14 例)
-
22,067.1(26.3)
23,099.2(22.7)
94.87(91.51, 98.36)
1,943.5(23.9)
2,161.0(27.0)
90.32(85.07, 95.89)
422.2(54.4)
418.6(42.2)
本剤(14 例)
EVG 150 mg+COBI 150 mg
(14 例)
97.83(88.39, 108.27)
-
11,209.8(27.4)
10,931.2(25.5)
102.00(98.10, 106.06)
1,560.7(26.1)
1,489.4(23.2)
104.07(99.41, 108.94)
34.6(85.5)
26.7(62.1)
本剤(19 例)
FTC 200 mg+TAF 25 mg
(19 例)
116.43(102.05, 132.83)
-
12,352.6(13.5)
10,520.9(13.8)
117.57(113.72, 121.55)
Cmax(ng/mL)
1,947.0(21.2)
1,788.8(19.2)
108.99(102.81, 115.55)
Ctau(ng/mL)
107.4(25.8)
87.5(20.6)
121.26(114.66, 128.24)
(注)各パラメータの平均値(変動係数)を示した。
- 20 -
(5) 検証的試験
1) 無作為化並行用量反応試験
該当資料なし
2) 比較試験
①292-0104/0111 試験:
試験目的
試験デザイン
対象
抗 HIV 薬による治療経験がない成人 HIV-1 感染症患者を対象として,本剤の有効性及び安全性を STB
と比較検討する。
第 III 相・無作為化・二重盲検・多施設共同・実薬対照試験
抗 HIV 薬による治療経験がない成人 HIV-1 感染症患者(292-0104 試験:計 867 例,292-0111 試験:計
866 例)
主な登録基準
・抗レトロウイルス療法の治療経験がない者
・成人 HIV-1 感染症患者で HIV-1 RNA 量が 1,000 copies/mL 以上である者
・クレアチニンクリアランスが 50 mL/min 以上である者
主な除外基準
・HCV 抗体陽性の者
・HBsAg 陽性の者
試験方法
主要評価項目
主な副次評価項目
主要評価
・本剤投与群:本剤及び STB のプラセボを 1 日 1 回食後投与
・STB 投与群:STB 及び本剤のプラセボを 1 日 1 回食後投与
投与期間:144 週間(主要有効性評価は投与後 48 週時)
・投与後 48 週時の血漿中 HIV-1 RNA 量が 50 copies/mL 未満であった症例の比率
・ベースラインから投与後 48 週時における大腿骨近位部及び腰椎の骨密度の変化率
・ベースラインから投与後 48 週時における血清クレアチニン値の変化量
[「本項 3. 臨床成績」の項]参照
<有害事象及び副作用>
投与後 96 週時までの副作用発現頻度は,本剤投与群では 42.4%(367/866 例),STB 投与群では 45.9%
(398/867 例)であった。重篤な副作用は,本剤投与群で 5 例(紅斑性皮疹 1 例,血液量減少性ショッ
ク 1 例,腹痛 1 例,ブドウ球菌皮膚感染 1 例,肩回旋筋腱板症候群 1 例),STB 投与群で 2 例(免疫再
構築炎症反応症候群 1 例,胆石症 1 例)であった。その他,有害事象,重篤な有害事象,治験薬投与の
中止に至った有害事象及び死亡した症例数の割合は,本剤投与群及び STB 投与群で同程度であった。ま
た,死亡例は本剤投与群で 2 例(梗塞性脳卒中 1 例,アルコール中毒 1 例),STB 投与群で 3 例(心停
止 1 例,急性心筋梗塞 1 例,娯楽的な薬物及びアルコール過量投与 1 例)認められたが,副作用と判定
されたものはなかった。
投与後 96 週時の有害事象及び副作用の要約
本剤投与群(866例)
結果
有害事象
Grade 2以上の有害事象
Grade 3以上の有害事象
副作用
Grade 2以上の有害事象
Grade 3以上の有害事象
重篤な有害事象
重篤な副作用
治験薬投与の早期中止に至った有害事象
死亡
807(93.2%)
507(58.5%)
106(12.2%)
367(42.4%)
99(11.4%)
13(1.5%)
97(11.2%)
5(0.6%)
10(1.2%)
2(0.2%)
STB投与群(867例)
823(94.9%)
478(55.1%)
101(11.6%)
398(45.9%)
95(11.0%)
9(1.0%)
87(10.0%)
2(0.2%)
20(2.3%)
3(0.3%)
例数(%)
<腎に関する安全性>
腎機能に関する臨床検査値パラメータとして,血清クレアチニン,クレアチニンクリアランス,蛋白尿
の定量評価[尿蛋白/クレアチニン比(UPCR),尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR),尿中レチ
ノール結合蛋白(RBP)/クレアチニン比及び尿中 β-2 マイクログロブリン(β-2MG)/クレアチニン
比]を評価した。その結果,STB 投与群と比較して本剤投与群では,血清クレアチニン及びクレアチニ
ンクリアランスの変化量が有意に小さかった。また,本剤投与群では,UPCR,UACR 及び尿中 β-2MG
/クレアチニン比がベースラインから低下し,STB 投与群では上昇した。
- 21 -
投与後 96 週時の腎臓関連の主要な臨床検査パラメータ
本剤投与群(866例)
例数
STB投与群(867例)
値
例数
P値c
値
血清クレアチニンa(mg/dL)
771
0.04±0.114
756
0.07±0.127
<0.001
クレアチニンクリアランスb(mL/min)
770
-2.0(-12.4, 9.4)
753
-7.5(-17.4, 2.9)
<0.001
b
UPCR (%)
765
-9.1(-39.6, 36.0) 748
UACRb(%)
767
-5.2(-35.7, 30.1) 743
4.9(-32.7, 60.0) <0.001
尿中RBP/クレアチニン比b(%)
772
13.8(-18.8, 66.1) 745
74.2(10.4, 192.2) <0.001
765 -32.1(-61.0, 4.2) 738
尿中β-2MG/クレアチニン比b(%)
a
ベースラインからの平均変化量±S.D.
b
ベースラインからの変化量の中央値(Q1,Q3)
c
Wilcoxon rank sum test
33.5(-27.8, 230.7) <0.001
16.2(-22.5, 81.5) <0.001
ベースラインからのクレアチニンクリアランスの推移
結果
<骨に関する安全性>
大腿骨近位部及び腰椎の骨密度を測定した。その結果,大腿骨近位部及び腰椎のいずれにおいても,骨
密度のベースラインからの変化率は,スタリビルド配合錠投与群と比較して本剤投与群の方が有意に小
さかった。また,スタリビルド配合錠投与群と比べ,本剤投与群の方が,骨密度のベースラインからの
変化率について 3%を超える減少が認められた被験者が少なく,3%を超える増加が認められた被験者が
多かった。
投与後 96 週時の骨密度の主な指標
大腿骨近位部 DXA 解析
骨密度の変化率の平均値±S.D.(%)
本剤投与群
(866 例)
STB 投与群
(N=716)
(N=711)
-0.672±3.8887
本剤 vs. STB
P値a
LSM の差
(95% CI)
-3.275±3.9668
p<0.001
2.604
(2.196, 3.012)
―
―
(867 例)
骨密度変化カテゴリー別の被験者割合:
骨密度の 3%を超える減少(%)
22.9
56.4
骨密度の 3%を超える増加(%)
11.6
5.6
(N=722)
(N=714)
-0.960±3.7227
-2.792±3.9156
腰椎 DXA 解析
骨密度の変化率の平均値±S.D.(%)
骨密度変化カテゴリー別の被験者割合:
骨密度の 3%を超える減少(%)
26.2
48.0
骨密度の 3%を超える増加(%)
a
Wilcoxon rank sum test
11.2
5.9
- 22 -
p<0.001
1.832
(1.437, 2.228)
ベースラインからの大腿骨近位部及び腰椎における骨密度の推移
大腿骨近位部
腰
椎
結果
②292-0109 試験:
試験目的
試験デザイン
抗 HIV 薬による治療経験があり,ウイルス学的に抑制されている成人 HIV-1 感染症患者を対象として,
TDF を含むレジメンから本剤へ切り替えた時の有効性,安全性及び忍容性を評価する。
第 III 相・無作為化・非盲検・多施設共同・実薬対照試験
対象
抗 HIV 薬による治療経験があり,ウイルス学的に抑制されている成人 HIV-1 感染症患者(計 1,436 例)
主な登録基準
・STB,エファビレンツ(EFV)/FTC/TDF,アタザナビル/リトナビル(ATV/r)+FTC/TDF 又は ATV/COBI
+FTC/TDF による治療を試験開始前の最終来院日の 6 ヵ月以上前から継続している者
・スクリーニング時の 6 ヵ月以上前から血漿中 HIV-1 RNA 量が検出限界未満であり,スクリーニング時
に 50 copies/mL 未満である者
・クレアチニンクリアランスが 50 mL/min 以上である者
主な除外基準
・HCV 抗体陽性の者
・HBsAg 陽性の者
試験方法
主要評価項目
主な副次評価項目
主要評価
・本剤投与群:
本剤を 1 日 1 回食後投与
・TDF を含むレジメンの継続投与群:
前治療薬(STB,EFV/FTC/TDF,ATV/r+FTC/TDF,ATV/COBI+FTC/TDF)を継続投与
投与期間:96 週間(主要有効性評価は投与後 48 週時)
・投与後 48 週時で血漿中 HIV-1 RNA 量が 50 copies/mL 未満であった被験者の割合を指標に,本剤への
切り替え投与時の有効性の,TDF を含むレジメンの継続投与時の有効性に対する非劣性の評価
・ベースラインから投与後 48 週時における大腿骨近位部及び腰椎の骨密度の変化率
・ベースラインから投与後 48 週時における血清クレアチニン値の変化量
・投与後 96 週時における有効性,安全性,忍容性の継続性
[「本項 3. 臨床成績」の項]参照
<有害事象及び副作用>
投与後 48 週時までの副作用発現頻度は,本剤投与群では 21.3%(204/959 例),前治療継続群では 15.9%
(76/477 例)であった。重篤な副作用は本剤投与群で認められず,前治療継続群で 2 例(急性胆嚢炎 1
例,後天性ファンコニー症候群)であった。その他,有害事象,重篤な有害事象,治験薬投与の中止に
至った有害事象及び死亡した症例数の割合は本剤投与群及び前治療継続群で同程度であった。また,死
亡例は本剤投与群で 4 例(敗血症性ショック 1 例,肺腺癌 1 例,突然死 1 例,心筋炎 1 例)認められた
が,副作用と判定されたものはなかった。
結果
投与後 96 週時の有害事象及び副作用の要約
本剤投与群
(959例)
前治療継続群
(477例)
828(86.3%)
399(83.6%)
480(50.1%)
84(8.8%)
228(47.8%)
54(11.3%)
204(21.3%)
76(15.9%)
55(5.7%)
4(0.4%)
33(6.9%)
9(1.9%)
65(6.8%)
35(7.3%)
0
2(0.4%)
治験薬の投与中止に至った有害事象
9(0.9%)
12(2.5%)
死亡
4(0.4%)
有害事象
Grade 2以上の有害事象
Grade 3以上の有害事象
副作用
Grade 2以上の副作用
Grade 3以上の副作用
重篤な有害事象
重篤な副作用
- 23 -
0
例数(%)
<腎に関する安全性>
腎機能に関する臨床検査値パラメータとして,血清クレアチニン,クレアチニンクリアランス,蛋白尿
の定量評価(UPCR,UACR,RBP/クレアチニン比及び尿中 β-2MG/クレアチニン比)を評価した。
その結果,前治療薬にブースターを含むレジメンから本剤の投与に切り替えた群では,前治療継続群と
比較して,血清クレアチニン及びクレアチニンクリアランスの変化量が有意に小さくなったが,前治療
薬にブースターを含まないレジメンから本剤の投与に切り替えた群では,前治療継続群と比較して,血
清クレアチニン及びクレアチニンクリアランスの変化量は有意に大きくなった。また,本剤の投与に切
り替えた群では,UPCR,UACR,尿中 RBP/クレアチニン比及び尿中 β-2MG/クレアチニン比がベー
スラインから低下し,前治療継続群では上昇した。
投与後 48 週時の腎臓関連の主要な臨床検査パラメータ:前治療(EFV/FTC/TDF)
本剤投与群(251例)
前治療継続群(125例)
血清クレアチニンa(mg/dL)
値
例数
値
243
0.10±0.122
113
0.02±0.089
<0.001
-9.0(-16.9, 0.4)
113
-3.0(-10.3, 3.5)
<0.001
クレアチニンクリアランス (mL/min) 243
b
結果
P値c
例数
UPCRb(%)
241
-13.8(-37.5, 22.2) 113
UACRb(%)
240
-16.3(-43.7, 22.5) 116
5.4(-18.7, 52.8) <0.001
尿中RBP/クレアチニン比b(%)
242
-22.5(-53.8, 12.6) 115
24.4(-21.2, 61.9) <0.001
237
-42.7(-72.1, 10.9) 114
尿中β-2MG/クレアチニン比b(%)
a
ベースラインからの平均変化量±S.D.
b
ベースラインからの変化量の中央値(Q1,Q3)
c
van Elteren test
18.9(-23.7, 77.9) <0.001
7.2(-14.6, 45.9) <0.001
投与後 48 週時の腎臓関連の主要な臨床検査パラメータ:前治療(ATV/r 又は ATV/COBI+FTC/TDF)
本剤投与群(402例)
前治療継続群(199例)
P値c
値
値
例数
例数
血清クレアチニンa(mg/dL)
394
クレアチニンクリアランスb(mL/min) 394
0.01±0.119
180
0.04±0.103
0.003
0.6(-7.2, 8.9)
179
-3.3(-10.6, 3.8)
<0.001
UPCRb(%)
392
-27.9(-52.5, 2.6)
186
9.1(-21.4, 45.7) <0.001
UACRb(%)
389
-19.0(-46.6, 15.4)
190
12.5(-26.8, 61.0) <0.001
尿中RBP/クレアチニン比b(%)
394
-41.8(-68.9, -11.3) 186
11.3(-20.9, 74.7) <0.001
388
-66.4(-86.9, -29.3) 184
尿中β-2MG/クレアチニン比b(%)
a
ベースラインからの平均変化量±S.D.
b
ベースラインからの変化量の中央値(Q1,Q3)
c
van Elteren test
15.0(-36.9, 81.9) <0.001
投与後 48 週時の腎臓関連の主要な臨床検査パラメータ:前治療(STB)
本剤投与群(306例)
前治療継続群(153例)
例数
血清クレアチニンa(mg/dL)
302
クレアチニンクリアランスb(mL/min) 301
値
例数
値
P値c
-0.02±0.108
150
0.03±0.108
<0.001
2.0(-5.2, 9.6)
149
-3.7(-10.3, 3.7)
<0.001
13.7(-14.1, 69.0) <0.001
UPCRb(%)
302
-16.2(-43.8, 20.5)
149
UACRb(%)
299
-17.7(-45.0, 23.8)
147
7.7(-27.3, 63.1) <0.001
尿中RBP/クレアチニン比b(%)
299
-28.6(-60.3, 2.9)
148
27.4(-14.5, 126.1) <0.001
294
-43.3(-74.5, 1.9)
尿中β-2MG/クレアチニン比b(%)
a
ベースラインからの平均変化量±S.D.
b
ベースラインからの変化量の中央値(Q1,Q3)
c
van Elteren test
145
20.8(-33.9, 140.2) <0.001
- 24 -
ベースラインからのクレアチニンクリアランスの推移(292-0109 試験)
<骨に関する安全性>
大腿骨近位部及び腰椎の骨密度を測定した。その結果,前治療継続群と比較して本剤投与群では,大腿
骨近位部及び腰椎ともに骨密度の改善が認められた。また,前治療継続群と比べ,本剤投与群の方が,
骨密度のベースラインからの変化率について 3%を超える減少が認められた被験者が少なく,3%を超え
る増加が認められた被験者が多かった。
結果
投与後 48 週時の骨密度の主な指標(292-0109 試験)
本剤 vs. 前治療継続
本剤投与群
前治療継続群
LSM の差
P値a
(959 例)
(477 例)
(95% CI)
大腿骨近位部 DXA 解析
(N=869)
(N=428)
1.807
-0.340±2.8280
p<0.001
骨密度の変化率の平均値±S.D.(%) 1.468±2.7136
(1.488, 2.126)
骨密度変化カテゴリー別の被験者割合:
3.2
12.6
骨密度の 3%を超える減少(%)
21.4
7.5
骨密度の 3%を超える増加(%)
腰椎 DXA 解析
(N=881)
(N=436)
2.000
-0.443±4.1387
p<0.001
骨密度の変化率の平均値±S.D.(%) 1.557±3.8441
(1.549, 2.452)
骨密度変化カテゴリー別の被験者割合:
7.9
19.3
骨密度の 3%を超える減少(%)
33.0
13.3
骨密度の 3%を超える増加(%)
a
Wilcoxon rank sum test
ベースラインからの大腿骨近位部及び腰椎における骨密度の推移
大腿骨近位部
腰
- 25 -
椎
3) 安全性試験
該当資料なし
4) 患者・病態別試験
①腎障害の影響
ゲンボイヤ配合錠:
軽度から中等度の腎機能障害がある HIV-1 感染症患者を対象として,投与後 24 週時における本剤の腎
機能パラメータに対する影響を評価する第 III 相臨床試験(292-0112 試験 9))を実施した。
本剤を投与した場合の有効性及び安全性プロファイルについて,腎機能が正常の HIV-1 感染症患者と
異なる点は認められなかった。また,ベースライン時のクレアチニンクリアランスが 50 mL/min 以上/
未満で被験者を層別した場合に,本剤の投与開始後のクレアチニンクリアランスの推移に違いは認めら
れなかった。
ベースラインからのクレアチニンクリアランスの推移(292-0112 試験)
エルビテグラビル及びコビシスタット:
クレアチニンクリアランスが 15 mL/min 以上 30 mL/min 未満の重度の腎機能障害を有する被験者(非
透析患者)における,EVG 150 mg 及び COBI 150 mg 投与時の EVG 及び COBI の AUC は,クレアチニ
ンクリアランスが 90 mL/min 超の被験者に対し,それぞれ約 25%低下及び約 25%上昇した。
エムトリシタビン:
クレアチニンクリアランスが 30 mL/min 未満の重度の腎機能障害を有する被験者における FTC の Cmax
及び AUC は,クレアチニンクリアランスが 80 mL/min 超の被験者に対し,それぞれ約 30%及び約 200%
上昇した。
テノホビル アラフェナミド:
クレアチニンクリアランスが 15 mL/min 以上 30 mL/min 未満の重度の腎機能障害を有する被験者(非
透析患者)における TAF の Cmax 及び AUC は,クレアチニンクリアランスが 90 mL/min 超の被験者に
対し,それぞれ 79%及び 92%上昇し,TFV の Cmax 及び AUC は,それぞれ 179%及び 474%上昇した。
- 26 -
②肝障害の影響
エルビテグラビル及びコビシスタット:
中等度の肝機能障害(Child-Pugh 分類クラス B)を有する被験者における,EVG 150 mg 及び COBI 150 mg
投与時の EVG 及び COBI の AUC は,肝機能正常被験者に対し,EVG では 35%上昇したが,COBI で
は変化は認められなかった。
エムトリシタビン:
肝機能障害を有する被験者における薬物動態は検討していない。しかし,FTC は肝臓の薬物代謝酵素
によりほとんど代謝されないため肝機能障害の影響は受けにくいと考えられる。
テノホビル アラフェナミド:
軽度の肝機能障害(Child-Pugh 分類クラス A)を有する被験者における,TAF の Cmax 及び AUC は,肝
機能正常被験者に対し,それぞれ 11%及び 8%低下し,TFV の Cmax 及び AUC は,それぞれ 3%及び 11%
低下した。また,中等度の肝機能障害(Child-Pugh 分類クラス B)を有する被験者における,TAF の
Cmax 及び AUC は,肝機能正常被験者に対し,それぞれ 19%及び 13%上昇し,TFV の Cmax 及び AUC は,
それぞれ 12%及び 3%低下した。いずれの成分においても,重度の肝機能障害(Child-Pugh 分類クラス
C)を有する被験者における薬物動態は検討していない。
③小児
ゲンボイヤ配合錠:
抗 HIV 薬による治療経験がない小児 HIV-1 感染症患者 48 例(12 歳以上 18 歳未満で体重 35 kg 以上)
を対象に,本剤を投与した際の薬物動態,安全性,忍容性及び抗ウイルス活性を評価する第 II/III 相臨
床試験(292-0106 試験 10))を実施した。
小児被験者に本剤を投与した際の EVG,FTC 及び TFV の曝露量は,成人被験者と同程度であった。小
児被験者における COBI 曝露量は,成人被験者と比較して低値であったが,薬物動態学的増強効果が
期待できる曝露量の範囲内であった。また,TAF の曝露量についても成人被験者と比較して低値であ
ったが,その曝露量の分布の範囲は,本剤の有効性及び安全性が確認されている成人被験者を対象と
した第 III 相試験(292-0104/292-0111 試験)における TAF の曝露量の分布の範囲内であった。
本試験における投与後 24 週時のウイルス学的成功率(血漿中 HIV-1 RNA 量が 50 copies/mL 未満)は
91.3%であり,成人患者に投与した場合と同様の有効性が確認された。安全性については良好な忍容性
が確認され,小児患者特有の副作用は認められなかった。また,本剤の投与後 24 週時の腰椎,及び頭
部を除く全身の骨密度 Z スコア(身長・年齢により補正)に変化が認められなかったことから,小児
患者の骨形成に影響を及ぼさないと考えられた。
EVG,COBI,FTC,TAF 及び TFV の薬物動態パラメータ比(292-0106 試験)
EVG
COBI
FTC
TAF
TFV
AUCtaua)
105.78(94.66, 118.21)
78.95(68.68, 90.75)
117.08(106.68, 128.49)
70.72(56.12, 89.11)
87.60(81.23, 94.47)
Cmax
108.05(97.87, 119.30)
78.60(69.71, 88.62)
113.44(103.49, 124.35)
77.71(59.88, 100.85)
91.50(83.93, 99.75)
Ctrough
69.31(52.79, 91.01)
60.41(39.13, 93.26)
97.49(83.42, 113.94)
-
86.94(79.73, 94.81)
(注)症例数は24例,
各パラメータの小児患者と成人被験者との幾何最小二乗平均値の比(%)及び90% CIを示した。成人被験者の成績は
292-0102試験及び292-0103試験を用いた。
a) テノホビル アラフェナミドはAUClastを示した。
- 27 -
投与後 24 週時の腰椎,及び頭部を除く全身の骨密度 Z スコアの変化量(292-0106 試験)
例数
ベースライン
ベースラインからの変化量
腰椎骨密度 Z スコア
21
-0.84±1.201
-0.08±0.391
頭部を除く全身の骨密度 Z スコア
20
-0.44±1.007
-0.10±0.256
(注)平均値±標準偏差(身長・年齢により補正)
(6) 治療的使用
1) 使用成績調査・特定使用成績調査(特別調査)
・製造販売後臨床試験(市販後臨床試験)
該当資料なし
2) 承認条件として実施予定の内容又は実施した試験の概要
[「X. 管理的事項に関する項目 5. 承認条件等」の項]参照
- 28 -
VI. 薬効薬理に関する項目
1. 薬理学的に関連ある化合物又は化合物群
エルビテグラビル:
インテグラーゼ阻害薬(ラルテグラビルカリウム,ドルテグラビルナトリウム)
コビシスタット:
薬物動態学的増強因子(リトナビル)
テノホビル アラフェナミド及びエムトリシタビン:
核酸系逆転写酵素阻害薬(テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩,ジドブジン,ジダノシン,サニル
ブジン,ラミブジン,アバカビル硫酸塩)
2. 薬理作用
(1) 作用部位・作用機序
エルビテグラビル:
エルビテグラビルは,HIV-1 インテグラーゼの阻害薬である。インテグラーゼの阻害により,HIV-DNA
の宿主 DNA への組み込みを抑え,HIV-1 プロウイルスの形成及びウイルス増殖を阻止する。エルビテ
グラビルは,ヒトトポイソメラーゼ I 及び II をいずれも阻害しない 11)。
コビシスタット:
コビシスタットは,CYP3A の選択的な阻害薬である 12)。
エムトリシタビン:
エムトリシタビンは,シチジンの合成ヌクレオシド誘導体であり,細胞内酵素によりリン酸化されエ
ムトリシタビン 5'-三リン酸となる 13)。エムトリシタビン 5'-三リン酸は HIV-1 逆転写酵素の基質である
デオキシシチジン 5'-三リン酸と競合すること及び新生ウイルス DNA に取り込まれた後に,DNA 鎖伸
長を停止させることにより,HIV-1 逆転写酵素の活性を阻害する 14)。哺乳類の DNA ポリメラーゼ α,β,
ε 及びミトコンドリア DNA ポリメラーゼ γ に対するエムトリシタビン 5'-三リン酸の阻害作用は弱い。
テノホビル アラフェナミド:
テノホビル アラフェナミドは,テノホビルのホスホンアミド酸プロドラッグ(2'-デオキシアデノシン
一リン酸誘導体)である。テノホビル アラフェナミドは,血漿中の安定性が高く,細胞内透過性を有
し,末梢血単核球及びマクロファージ中のカテプシン A により加水分解を受けて細胞内にテノホビル
を送達する。その後細胞内酵素によりリン酸化を受け,テノホビル二リン酸となる
15)
。テノホビル二
リン酸は,HIV-1 逆転写酵素の基質であるデオキシアデノシン 5'-三リン酸と競合すること及び DNA に
取り込まれた後に DNA 鎖伸長を停止させることにより,HIV-1 逆転写酵素の活性を阻害する。哺乳類
の DNA ポリメラーゼ α,β 及びミトコンドリア DNA ポリメラーゼ γ に対するテノホビル二リン酸の阻
害作用は弱い 16)。
(2) 薬効を裏付ける試験成績
1) 抗ウイルス作用(in vitro)
エルビテグラビル,エムトリシタビン及びテノホビル アラフェナミドを細胞培養系で評価した結果,相
乗的な抗ウイルス活性が認められた。また,コビシスタットを加えてもエルビテグラビル,エムトリシタ
ビン及びテノホビル アラフェナミドの抗ウイルス活性は維持された。
エルビテグラビル:
ヒト T リンパ芽球様細胞,単球/マクロファージ及び末梢血リンパ球初代培養細胞を用いて,HIV-1
の実験室株及び臨床分離株に対するエルビテグラビルの抗ウイルス活性を評価した。エルビテグラビ
ルの 50%阻害濃度(EC50 値)は 0.02~1.7 nM の範囲であった 17)。
- 29 -
コビシスタット:
コビシスタットは,HIV-1,HBV 及び HCV に対する抗ウイルス活性を有さず,またエルビテグラビル,
エムトリシタビンあるいはテノホビルの抗ウイルス活性に対する拮抗作用は認められなかった 18)。
エムトリシタビン:
ヒト T リンパ芽球様細胞株,MAGI-CCR5 細胞株及び末梢血単核球初代培養細胞を用いて,HIV-1 の実
験室株及び臨床分離株に対するエムトリシタビンの抗ウイルス活性を評価した。エムトリシタビンの
EC50 値は,0.0013~0.64 μM の範囲であった 19),20)。
テノホビル アラフェナミド:
ヒト T リンパ芽球様細胞株,単球/マクロファージ及び末梢血リンパ球初代培養細胞を用いて,HIV-1
の実験室株及び臨床分離株に対するテノホビル アラフェナミドの抗ウイルス活性を評価した。テノホ
ビル アラフェナミドの EC50 値は,0.1~15.7 nM の範囲であった 21)。
2) 薬剤耐性(in vitro)
エルビテグラビル:
In vitro 試験で誘導されたエルビテグラビルに対する感受性が低下した HIV-1 分離株には,インテグラ
ーゼの T66A/I,E92G/Q,S147G 及び Q148R が主要変異として認められた。また,主要変異が認めら
れた HIV-1 分離株には,D10E,S17N,H51Y,F121Y,S153F/Y,E157Q,D232N,R263K 及び V281M
も認められた。
エムトリシタビン:
エムトリシタビンに対する感受性低下は,HIV-1 逆転写酵素の M184V/I 変異と関連が認められた 22)。
テノホビル アラフェナミド:
テノホビル アラフェナミドに対する感受性が低下した HIV-1 分離株では,K65R 変異が発現しており,
K70E 変異も一過性に認められた 23)。
3) 交差耐性
エルビテグラビル耐性の HIV-1 分離株はエムトリシタビン又はテノホビルに対して交差耐性を示さず,エ
ムトリシタビン又はテノホビル耐性の HIV-1 分離株はエルビテグラビルに対して交差耐性を示さなかった。
エルビテグラビル:
エルビテグラビル耐性ウイルスは,変異の種類及び数に応じて,インテグラーゼ阻害薬であるラルテ
グラビルに対して様々な程度の交差耐性を示す。T66I/A 変異を持つウイルスはラルテグラビルに対す
る感受性を維持しているが,その他のほとんどのエルビテグラビル耐性ウイルスはラルテグラビルに
対する感受性が低下した。エルビテグラビル又はラルテグラビル耐性変異を持つウイルスはドルテグ
ラビルに対する感受性を維持した。
エムトリシタビン:
核酸系逆転写酵素阻害薬の間で交差耐性が認められた。エムトリシタビン耐性の M184V/I 変異を有す
る HIV-1 株は,ラミブジンに対して交差耐性を示した。また,アバカビル,ジダノシン及びテノホビ
ルの投与により in vivo で出現した K65R 変異を有する HIV-1 株では,エムトリシタビンに対する感受
性の低下が確認された。
- 30 -
テノホビル アナフェナミド:
K65R 及び K70E 変異を持つ HIV-1 株は,アバカビル,ジダノシン,ラミブジン,エムトリシタビン及
びテノホビルに対する感受性の低下を示すが,ジドブジンに対する感受性を維持する。T69S 二重挿入
変異又は K65R を含む Q151M 複合変異を持ち,核酸系逆転写酵素阻害薬に多剤耐性を示す HIV-1 は,
テノホビルに対する感受性の低下を示した。
(3) 作用発現時間・持続時間
該当資料なし
- 31 -
VII. 薬物動態に関する項目
1. 血中濃度の推移・測定法
(1) 治療上有効な血中濃度
該当資料なし
(2) 最高血中濃度到達時間
[「本項 1. 血中濃度の推移・測定法 (3) 臨床試験で確認された血中濃度」の項]参照
(3) 臨床試験で確認された血中濃度
1) 単回投与試験
① 日本人における成績 24)
健康成人男性 12 例に本剤 1 錠を普通食
(413 kcal,20%が脂肪由来)
摂取直後に単回経口投与した時の EVG,
COBI,FTC,TAF 及び TFV の血漿中濃度推移及び薬物動態パラメータを示す。
単回経口投与時の EVG,COBI,FTC,TAF 及び TFV の血漿中濃度推移
平均値
単回経口投与時の EVG,COBI,FTC,TAF 及び TFV の薬物動態パラメータ
EVG
COBI
FTC
TAF
TFV
tmax(hr)
4.0(3.0 - 5.0)
2.5(2.0 - 5.0)
2.0(1.0 - 4.0)
1.0(0.3 - 2.0)
2.0(1.0 - 3.0)
Cmax(μg/mL)
2.5±0.4
1.1±0.3
2.8±0.7
0.16±0.08
0.01±0.00
t1/2(hr)
6.0±1.3
3.2±0.8
13.1±3.1
0.42±0.06
42.5±4.2
AUCinf(μg・hr/mL)
32.3±7.9
6.9±2.9
14.2±2.8
0.15±0.03
0.29±0.05
平均値±標準偏差,12 例(テノホビル アラフェナミド t1/2 のみ 3 例),tmax:中央値(最小値-最大値)
- 32 -
② 外国人における成績 25)
健康成人 10 例に本剤 1 錠を普通食(400 kcal,13%が脂肪由来)摂取直後に単回経口投与した時の EVG,
COBI,FTC,TAF 及び TFV の血漿中濃度推移及び薬物動態パラメータを示す。
単回経口投与時の EVG,COBI,FTC,TAF 及び TFV の血漿中濃度推移
平均値
単回経口投与時の EVG,COBI,FTC,TAF 及び TFV の薬物動態パラメータ
EVG
COBI
FTC
tmax(hr)
4.0(3.0 - 12.0)
2.8(2.0 - 5.0)
1.5(1.0 - 3.0)
Cmax(μg/mL)
2.5±10.7
0.8±0.4
2.4±0.5
0.26±0.10
0.01±0.00
t1/2(hr)
4.4±1.1
3.7±1.4
29.2±8.8
0.49±0.095
47.7±9.3
AUClast(μg・hr/mL)
30.5±13.2
5.6±3.2
12.3±2.1
0.23±0.07
0.23±0.04
AUCinf(μg・hr/mL)
31.1±12.9
5.7±3.2
12.6±2.1
0.24±0.07
0.34±0.05
平均値±標準偏差,10 例,tmax:中央値(最小値-最大値)
- 33 -
TAF
TFV
0.75(0.25 - 1.50) 1.3(0.3 - 2.0)
2) 反復投与試験
① 外国人の健康成人における成績 25)
健康成人 8 例に本剤 1 錠を食直後に 1 日 1 回反復経口投与した時の定常状態における EVG,COBI,FTC,
TAF 及び TFV の血漿中濃度推移及び薬物動態パラメータを示す。
反復経口投与時の EVG,COBI,FTC,TAF 及び TFV の血漿中濃度推移
平均値
反復経口投与時の EVG,COBI,FTC,TAF 及び TFV の薬物動態パラメータ
EVG
COBI
FTC
TAF
TFV
tmax(hr)
4.0(1.5 - 4.4)
2.8(1.5 - 4.0)
1.5(0.8 - 2.5)
0.5(0.5 - 2.0)
1.1(0.5 - 18.0)
Cmax(μg/mL)
3.7±1.2
1.5±0.5
2.7±0.4
0.32±0.14
0.02±0.01
0.41±0.15
AUCtau(μg・hr/mL)
35.8±10.2
10.6±4.2
14.8±3.4
0.29±0.08*
t1/2(hr)
4.0±0.9
4.1±1.5
36.5±5.6
0.5±0.1
49.0±5.2
Ctau(μg/mL)
0.56±0.22
0.03±0.01
0.10±0.04
NC
0.01±0.00
平均値±標準偏差,8 例,tmax:中央値(最小値-最大値),*:AUClast ,NC:未算出
② 外国人の HIV-1 感染症患者における成績 26)
HIV-1 感染症患者を対象に本剤 1 錠を食直後に 1 日 1 回反復経口投与した第 II 相試験における EVG,
COBI,FTC,TAF 及び TFV の定常状態における薬物動態パラメータを示す。
反復経口投与時の EVG,COBI,FTC,TAF 及び TFV の薬物動態パラメータ
EVG
COBI
FTC
TAF
TFV
tmax(hr)
3.9(1.5 - 12.0)
3.0(1.5 - 5.0)
1.5(0.5 - 4.0)
1.0(0.3 - 3.0)
3.0(0.8 - 8.0)
Cmax(μg/mL)
2.1±0.7
1.5±0.4
2.1±0.4
0.23±0.15
0.02±0.00
t1/2(hr)
6.9±1.2
3.2±0.7
6.5±0.9
0.6±0.3
48.1±31.2
AUCtau(μg・hr/mL)
22.8±7.9
9.5±3.2
11.7±1.9
0.23±0.11*
0.33±0.05
Ctrough(μg/mL)
0.29±0.18
0.02±0.02
0.10±0.04
NC
0.01±0.00
平均値±標準偏差,19 例(EVG,FTC の t1/2 は 18 例,TFV の t1/2 は 15 例),
tmax:中央値(最小値-最大値)
,*:AUClast ,NC:未算出
- 34 -
3) 腎機能障害患者
エルビテグラビル及びコビシスタット 27):
クレアチニンクリアランスが 15 mL/min 以上 30 mL/min 未満の重度の腎機能障害を有する被験者(非
透析患者)における,EVG 150 mg 及び COBI 150 mg 投与時の EVG 及び COBI の AUC はクレアチニン
クリアランスが 90 mL/min 超の被験者に対し,それぞれ約 25%低下及び約 25%上昇した。
エムトリシタビン 28):
クレアチニンクリアランスが 30 mL/min 未満の重度の腎機能障害を有する被験者における,FTC の Cmax
及び AUC は,クレアチニンクリアランスが 80 mL/min 超の被験者に対し,それぞれ約 30%及び約 200%
上昇した。
テノホビル アラフェナミド 29):
クレアチニンクリアランスが 15 mL/min 以上 30 mL/min 未満の重度の腎機能障害を有する被験者(非
透析患者)における,TAF の Cmax 及び AUC は,クレアチニンクリアランスが 90 mL/min 超の被験者に
対し,それぞれ 79%及び 92%上昇し,TFV の Cmax 及び AUC は,それぞれ 179%及び 474%上昇した。
4) 肝機能障害患者
エルビテグラビル及びコビシスタット 30):
中等度の肝機能障害(Child-Pugh 分類クラス B)を有する被験者における,EVG 150 mg 及び COBI 150 mg
投与時の EVG 及び COBI の AUC は,肝機能正常被験者に対し,EVG で 35%上昇したが,COBI では
変化は認められなかった。
エムトリシタビン:
肝機能障害を有する被験者における薬物動態は検討していない。
テノホビル アラフェナミド 31):
軽度の肝機能障害(Child-Pugh 分類クラス A)を有する被験者における,TAF の Cmax 及び AUC は,肝
機能正常被験者に対し,それぞれ 11%及び 8%低下し,TFV の Cmax 及び AUC は,それぞれ 3%及び 11%
低下した。また,中等度の肝機能障害(Child-Pugh 分類クラス B)を有する被験者における,TAF の
Cmax 及び AUC は,肝機能正常被験者に対し,それぞれ 19%及び 13%上昇し,TFV の Cmax 及び AUC は,
それぞれ 12%及び 3%低下した。なお,いずれの成分においても,重度の肝機能障害(Child-Pugh 分類
クラス C)を有する被験者における薬物動態は検討していない。
(4) 中毒域
該当資料なし
(5) 食事・併用薬の影響
1) 食事の影響
① 日本人における成績 24)
健康成人男性 12 例に本剤 1 錠を空腹時に単回経口投与した場合,普通食(413 kcal,20%が脂肪由来)摂
取時と比較して EVG の Cmax 及び AUCinf は,それぞれ 57%及び 50%低下し,COBI,FTC,TAF 及び TFV
の Cmax 及び AUCinf は同程度であった。一方,軽食(高蛋白栄養ドリンク:250 kcal,32%が脂肪由来)摂
取時と普通食摂取時との比較では,いずれの成分も Cmax 及び AUCinf は同程度であった。
- 35 -
EVG の血漿中濃度推移
平均値
② 外国人における成績 32),33)
健康成人 39 例に本剤 1 錠を空腹時に単回経口投与した場合,軽食(373 kcal,20%が脂肪由来)摂取時と
比較して EVG の Cmax 及び AUCinf は,それぞれ 18%及び 26%低下し,COBI 及び FTC の Cmax 及び AUCinf
は同程度であった。TAF の Cmax 及び AUCinf は,それぞれ 47%上昇及び 13%低下し,TFV の Cmax 及び AUCinf
は,それぞれ 19%上昇及び 12%低下した。一方,高脂肪食(800 kcal,50%が脂肪由来)摂取時と比較し
た場合,空腹時では,EVG の Cmax 及び AUCinf は,それぞれ 36%及び 46%低下し,COBI の Cmax 及び AUCinf
は,それぞれ 32%及び 21%上昇し,FTC の Cmax 及び AUCinf は同程度であった。TAF の Cmax 及び AUCinf
は,それぞれ 58%上昇及び 15%低下し,TFV の Cmax 及び AUCinf は,それぞれ 19%上昇及び 11%低下した。
EVG の空腹時,軽食摂取時及び高脂肪食摂取時の血漿中濃度推移を示す。
EVG の血漿中濃度推移
平均値
2) 併用薬の影響
[「VIII. 安全性(使用上の注意等)に関する項目 7. 相互作用」の項]参照
- 36 -
(6) 母集団(ポピュレーション)解析により判明した薬物体内動態変動要因
エルビテグラビル 34):
580 例のデータを用いた母集団薬物動態解析を実施したが,EVG の薬物動態に対して臨床的に意義の
ある変動要因は見いだされていない。
コビシスタット 35):
504 例のデータを用いた母集団薬物動態解析を実施したが,COBI の薬物動態に対して臨床的に意義の
ある変動要因は見いだされていない。
テノホビル アラフェナミド 36):
1,193 例のデータを用いた母集団薬物動態解析を実施したが,TAF の薬物動態に対して臨床的に意義の
ある変動要因は見いだされていない。
2. 薬物速度論的パラメータ
(1) 解析方法
エルビテグラビル 34)
コビシスタット 35)
テノホビル
アラフェナミド 36)
580 例から本剤若しくは COBI でブーストした EVG 経口投与後の血漿中濃度デー
タ 7,783 点を収集し,2-コンパートメントモデルを仮定し,NONMEM プログラム
により解析した。
504 例から本剤若しくは COBI でブーストした EVG 経口投与後の血漿中濃度デー
タ 9,584 点を収集し,1-コンパートメントモデルを仮定し,NONMEM プログラム
により解析した。
1,193 例から本剤経口投与後の血漿中濃度データ 3,966 点を収集し,2-コンパート
メントモデルを仮定し,NONMEM プログラムにより解析した。
(2) 吸収速度定数
該当資料なし
(3) バイオアベイラビリティ
該当資料なし
(4) 消失速度定数
該当資料なし
(5) クリアランス
該当資料なし
(6) 分布容積
該当資料なし
(7) 血漿蛋白結合率
エルビテグラビル:
ヒト血漿蛋白に対する結合率は 1 ng/mL~1.6 µg/mL の濃度範囲において濃度に依存せず 98~99%であ
った。エルビテグラビルの血液中濃度/血漿中濃度比は 0.73 であった 37)。
- 37 -
コビシスタット:
ヒト血漿蛋白に対する結合率は 97~98%であり 38),血液中濃度/血漿中濃度比は 0.5 であった 12)。
エムトリシタビン:
ヒト血漿蛋白に対する結合率は,0.02~200 µg/mL の濃度範囲において濃度に依存せず 4%未満であっ
た。
テノホビル アラフェナミド:
テノホビル アラフェナミドのヒト血漿蛋白に対する結合率は 77~86%であった 39)。
テノホビル:
テノホビルのヒト血漿蛋白に対する結合率は 0.7%未満であった 40)。
3. 吸収
該当資料なし
[「本項 1. 血中濃度の推移・測定法 (3) 臨床試験で確認された血中濃度」の項]参照
<参考>
エルビテグラビル 41):
(in vitro 試験における結果)LLC-PK1 ブタ腎臓細胞単層膜を用いて実施した試験では,エルビテグラビ
ルの膜透過性は,低透過性の対照物質であるマンニトールよりも高かった。in vitro の MDR1 発現細胞に
おいて,エルビテグラビルの極性輸送が示されたが,in vivo においてラット及びイヌでは排出によるバ
イオアベイラビリティの低下は確認されなかった。
(ラット及びイヌにおける成績)ラット及びイヌを用いてエルビテグラビル及び
14
C-エルビテグラビル
の単回投与薬物動態試験を実施した(ラット:1~10 mg/kg,イヌ:1~10 mg/kg)。ラットではバイオア
ベイラビリティは中程度(30~35%)で,総放射能のバイオアベイラビリティと近かった(41%)。イヌ
においても,経口投与後の吸収は速やかであり,バイオアベイラビリティは中程度(26~33%)で,総
放射能のバイオアベイラビリティと同程度であった(41%)。
コビシスタット 41):
(in vitro 試験における結果)Caco-2 細胞単層膜において,コビシスタットは頂端膜側から基底膜側への
膜透過性が高く,排出は認められなかった。
(ラット,イヌ及びサルにおける成績)ラット,イヌ及びサルを用いて単回投与薬物動態試験を実施し
た(ラット:5 mg/kg,イヌ:5 mg/kg,サル:6 mg/kg)。いずれの動物種においても,経口投与後のバイ
オアベイラビリティは低度又は低・中程度であったが(ラット:33%,イヌ:11%,サル:7.3%)
,この
原因として高い初回通過効果である可能性がある。
エムトリシタビン 41):
(マウス,ラット及びカニクイザルにおける成績)マウス,ラット及びカニクイザルを用いてエムトリ
シタビンの単回投与薬物動態試験を実施した。これらの動物種では,エムトリシタビン 10~600 mg/kg
を投与した際の吸収は速やかかつ良好で,経口バイオアベイラビリティは 58~97%であった。
テノホビル アラフェナミド 42):
(in vitro 試験における結果)Caco-2 細胞単層膜において,テノホビル アラフェナミドの膜透過性は濃
度依存性があり,本剤投与により消化管腔で達すると考えられる高濃度時に排出の飽和が認められた。
また,P-gp 阻害剤(シクロスポリン A)により排出の阻害が認められた。
(マウス,ラット,イヌ及びサルにおける成績)マウス 43)及びラット 44)に単回経口投与,イヌ 45)に単
回経口投与及び静脈内投与し,テノホビル アラフェナミド及び/若しくはテノホビルの薬物動態を評価
- 38 -
した。ラットにおいて,血漿中にテノホビル アラフェナミドは検出されず,テノホビルとして検出され
た。その他の動物種(マウス,イヌ,サル)においては,テノホビル アラフェナミドの曝露が確認され
た。また,サル(Rhesus)46)に単回経口投与したとき,血漿中テノホビル アラフェナミド及びテノホ
ビル濃度は投与後,速やかに上昇した。PBMC 中テノホビル濃度の消失は,血漿中テノホビルの消失に
比べ,緩やかであった。In vitro における濃度依存的な膜透過性の結果と相関し,イヌにおけるバイオア
ベイラビリティは用量と共に上昇した。イヌに 10 mg/kg 投与した場合のバイオアベイラビリティは
14.3%であった。胆管ろうイヌに 14C-テノホビル アラフェナミド 15 mg/kg を経口投与したときの尿及び
胆汁中への排泄率より,少なくとも 41%が吸収されると考えられた。
4. 分布
(1) 血液-脳関門通過性
該当資料なし
<参考>
エルビテグラビル:
(ラットにおける成績)雄のアルビノラットに対して
C-エルビテグラビルを 3 mg/kg 経口投与した結
14
果,投与後 0.5 時間の CNS 組織(大脳,小脳)において認められた濃度(0.015~0.021 µg/g)は,血漿
中濃度(1.181 µg/g)の約 1~2%以下であった 47)。雄又は雌のアルビノラットに対して 14C-エルビテグラ
ビルを 10 mg/kg 経口投与した結果,投与後 1 時間の CNS 組織(脳及び脊髄)において認められた濃度
[雌雄:定量限界(0.105 µg/g)未満]は,血液中濃度(雄:0.692 µg/g,雌:2.225µg/g)の約 5~15%未
満であった。また,ラットにリトナビルを前投与(エルビテグラビル投与の 20 及び 2 時間前に 20 mg/kg
を経口投与)した場合においても脳内移行に変化は認められなかった(雌雄共に定量下限未満) 48)。
コビシスタット:
(ラットにおける成績)14C-コビシスタットを雄のアルビノラット及び有色ラットに 10 mg/kg 経口投与
した結果,投与後 1 時間の CNS 組織(脳及び脊髄)において認められた濃度(アルビノ:0.0477 µg/g
若しくは定量下限未満,有色ラット:定量下限未満及び 0.0466 µg/g)は,血漿中濃度(アルビノ:1.060
µg/g,有色ラット:1.840 µg/g)の約 4.5%未満及び 2.5%未満であった 49)。
エムトリシタビン:
(サルにおける成績)サル(4 例)に 14C-エムトリシタビン 200 mg/kg を単回経口投与したとき,投与後
1 時間の CNS 組織[脳及び脳脊髄液(CSF)]において認められた濃度(2.2~2.4 µg/g)は,血漿中濃度
(77 µg/g)の約 3%であった。
(ラットにおける成績)ラット(26 例)に 14C-エムトリシタビン 200 mg/kg を単回経口投与したとき,
投与後 1 時間の CNS 組織において認められた濃度(1.1~5.4 µg/g)は,血漿中濃度の約 2~10%であっ
た。
テノホビル アラフェナミド:
(マウスにおける成績 50))14C-テノホビル アラフェナミド 100 mg/kg をアルビノマウス及び有色マウス
に単回経口投与したとき,投与後 1 時間の CNS 組織(大脳,小脳,脳髄質及び脊髄)において認められ
た濃度(アルビノ:0.833~1.94 µg/g,有色:定量下限(0.490 µg/g)未満~0.661 µg/g)は,血液中濃度
(アルビノ:14.5 µg/g,有色:9.27 µg/g)の 13.3%以下及び 7.1%以下であった。
(ラットにおける成績 51))14C-テノホビル アラフェナミド 5 mg/kg をアルビノラット及び有色ラットに
経口投与したとき,投与後 0.25 時間の CNS 組織(大脳,小脳,脳髄質及び脊髄)の濃度は定量下限(0.0456
µg/g)未満であり,血液中濃度(アルビノ:1,070 µg/g,有色ラット:1,260 µg/g)の 0.01%未満であった。
- 39 -
(2) 血液-胎盤関門通過性
該当資料なし
<参考>
(サルにおける成績
52)
)テノホビル 30 mg/kg/日を妊娠 111,115,127,134,140 及び 150 日目に皮下投
与したとき,投与後 30 分の胎児と母体の血清中テノホビル濃度の比は 0.17±0.07(平均値±標準偏差)で
あり,テノホビルの胎児への移行が認められた。
(3) 乳汁への移行性
エルビテグラビル及びコビシスタットのヒト乳汁への移行は不明であるが,エムトリシタビン及びテノホ
ビルのヒト乳汁への移行が報告されている 41)。
<参考>
エルビテグラビル 41):
(ラットにおける成績)ラットにおける出生前/出生後の発生毒性試験の一部として,ラット乳汁中へ
のエルビテグラビルの排泄を評価した(30~2,000 mg/kg/日)。授乳 14 日目の乳汁中エルビテグラビル濃
度が母動物への投与量に依存して増加し,母動物への投与 30 分後のエルビテグラビルの乳汁/血漿比は
0.1 であったことから,血漿から乳汁への移行が認められた。
コビシスタット 41):
(ラットにおける成績)ラットにおける出生前/出生後の発生毒性試験の一部として,ラット乳汁中へ
のコビシスタットの排泄を評価した(10~75 mg/kg/日)。授乳 10 日目の投与後 2 時間の乳汁検体からコ
ビシスタットが検出され,乳汁/血漿比は 1.3~1.9 であった。
エムトリシタビン:
該当資料なし
テノホビル アラフェナミド:
(ラットにおける成績)テノホビル アラフェナミドの乳汁中への移行は確認されていないが,テノホビ
ル ジプロキシルフマル酸塩を 50~600 mg/kg/日経口投与時の乳汁中のテノホビルの濃度は血漿中濃度
の~23.5%であり,テノホビルの乳汁への移行が認められた。
(4) 髄液への移行性
該当資料なし
[「本項 4. 分布 (1) 血液-脳関門通過性」の項]参照
(5) その他の組織への移行性
該当資料なし
<参考>
エルビテグラビル 41):
(ラットにおける成績)雄又は雌のアルビノラットに対して
C-エルビテグラビルを 3 mg/kg 又は
14
10 mg/kg 経口投与した結果,放射能は高血流臓器(肝臓,副腎,腎臓,心臓,肺及び膵臓)に速やかに
分布し,眼及び脳への分布は相対的に少なかった。組織内放射能濃度は,血漿中濃度とほぼ並行して低
下し,投与後 96 時間までに検出できないレベル又は微量となった。組織/血漿中濃度比は,肝臓及び消
化管を除き,概ね 1 未満であった。
ラットにリトナビルを前投与(エルビテグラビル投与の 20 及び 2 時間前に 20 mg/kg を経口投与)する
- 40 -
と,エルビテグラビル由来の組織内放射能濃度は血漿中濃度と並行して上昇したが,分布パターンは変
化しなかった(特にエルビテグラビルの脳内移行は認められなかった)
。
コビシスタット 41):
(ラットにおける成績) 14C-コビシスタットをアルビノラット及び有色ラットに経口投与した結果,放
射能はほとんどの組織に速やかかつ広範に分布した。概して,放射能は腺組織と排泄臓器で高値を示し
た。放射能濃度が特に高かった組織は消化管を除いて,肝臓,副腎,腎臓及び下垂体であった。また,
眼,脊髄・脳,骨及び副生殖器の放射能濃度は低かった。脳,脊髄及び精巣における放射能濃度は低く,
血液‐脳関門及び血液‐精巣関門の通過性は極めて低いことが示唆された。
有色ラットの放射能分布パターンはアルビノラットと非常によく似ていたが,眼のぶどう膜では有色ラ
ットの方が高濃度であった。また,有色部の皮膚では,白色部と比べて高濃度の放射能が検出されたこ
とから,コビシスタットとメラニンが結合することが示唆された。組織内放射能濃度は血漿中濃度とほ
ぼ並行して低下した。有色ラットのメラニン含有組織では,放射能の滞留時間が長かったが,濃度の低
下が認められ,組織との結合は可逆的であることが確認された。
エムトリシタビン 41):
(サルにおける成績)サル(4 例)に 14C-エムトリシタビン 200 mg/kg を単回経口投与したとき,投与後
1 時間の 22 組織のすべてに放射能は検出され,血漿中に比べ高濃度に存在したのは腎臓,肝臓,腸管で
あった。
(ラットにおける成績)有色ラット(6 例)及びアルビノラット(20 例)に 14C-エムトリシタビン 200 mg/kg
を単回経口投与したとき,検討した 54 組織のすべてに放射能は検出された。多くの組織において放射能
濃度は,血漿中濃度とほぼ同様の推移を示し,投与後 1 時間で最大濃度に達した後,投与後 8 時間まで
に検出不可能な濃度まで低下し,投与後 72 時間には体内に残存する放射能は認められなかった。血漿中
に比べ高濃度に存在したのは腎臓,肝臓,腸管であった。なお,有色ラットとアルビノラットとの間に
組織分布の差は認められなかった。
テノホビル アラフェナミド:
(マウスにおける成績 50))14C-テノホビル アラフェナミド 100 mg/kg をアルビノマウスに単回経口投与
したとき,投与後 1 時間までにほとんどの組織中放射能濃度は最高に達した。放射能濃度が特に高かっ
た組織は消化管を除いて,肝臓,胆嚢,膀胱,腎皮質,腎臓,腎髄質,横隔膜であった。また,精巣,
大脳,脂肪(白色)
,脊髄,脳髄質での放射能濃度は低かった。14C-テノホビル アラフェナミド 100 mg/kg
を単回経口投与した有色マウスにおいて,眼のぶどう膜の放射能濃度はアルビノマウスより高値を示し
たが,皮膚中濃度において,有色マウスとアルビノマウスに差が認められなかったことから,メラニン
への選択的な結合性はないと考えられた。
(ラットにおける成績 51))14C-テノホビル アラフェナミド 5 mg/kg をアルビノラット及び有色ラットに
経口投与したとき,投与後 0.25 時間までにほとんどの組織中放射能濃度は最高に達した。放射能濃度が
特に高かった組織は,腎皮質,腎臓,腎髄質及び肝臓であった。また,アルビノラットについては,嗅
葉,精嚢,硝子体液,胸腺,眼球,精巣及びハーダー氏腺,有色ラットについては,骨,嗅葉,精嚢,
白色脂肪,筋肉,硝子体液及び眼球での放射能濃度は低かった。眼球において,一時的に放射能濃度が
高値を示したが,投与後 8 時間においては検出下限未満であった。皮膚及び眼球において,有色ラット
とアルビノラットに差が認められなかったことから,メラニンへの結合性はないことが示唆された。
(イヌにおける成績)14C-テノホビル アラフェナミドフマル酸塩 18 mg/kg をイヌに単回経口投与したと
き,放射能は脳,眼球,脳脊髄液を除く全身に分布した。放射能濃度が特に高かった組織は,腎臓,肝
臓,消化管,脾臓,リンパ節及び末梢血単核細胞(PBMC)であった 53)。また,非標識のテノホビル ア
ラフェナミド 15 mg/kg を反復投与後,14C-テノホビル アラフェナミド 15 mg/kg をイヌに単回経口投与
したとき,腎臓,肝臓については,投与後 24 時間まで高い放射能濃度を示し,反復投与時の組織内濃度
は,単回投与時の濃度より高い値を示した 54)。
- 41 -
5. 代謝
(1) 代謝部位及び代謝経路
エルビテグラビル 41):
エルビテグラビルの主要代謝経路は,クロロフルオロフェニル基の水酸化による M1 の生成と,カルボ
ン酸部分のグルクロン酸抱合による M4 の生成である。
M5 ( ジヒドロジオール)
OH
H
M6 ( 酸化+グルクロン酸抱合)
OH
H
O
G
O
O
G
F
O
OH
O
F
Cl
OH
O
O
F
Cl
O
O
Cl
エルビテグラビル
M4 ( グルクロン酸抱合)
M3 ( グルクロン酸抱合)
OH
H
G:グルクロン酸
OH
H
O
O
OH
F
Cl
OH
OH
HO
O
F
M1 ( 酸化)
Cl
O
OH
H
O
O
M2 ( 酸化)
OH
H
O
O
OH
F
OG
H
O
OH
HO
O
F
Cl
M7 ( 酸化+グルクロン酸抱合)
Cl
OH
O
O
M8 ( 酸化)
コビシスタット 41):
コビシスタットの主要代謝経路は,イソプロピル部分のメチン酸化(M31),メチル尿素の隣接部分での
開裂(M26)
,カルバミン酸エステルの開裂(M21)及びモルホリンの開環と脱エチル化(M39)である。
これらの経路と他の酸化的代謝経路の組み合わせも認められた。また,コビシスタットのグルクロン酸
抱合体は検出されていない。
OH
NH
O
N
O
H
N
N
H
N
N
H
O
S
O
S
N
M 39
(モルホリンの開環と脱エチル化)
O
O
N
N
O
HO
N
N
N
H
S
O
H
N
O
M 31
O
O
N
H
O
S
N
N
S
N
N
O
H
N
N
H
N
H
O
O
O
S
HN
N
コビシスタット
N
H
H
N
O
O
N
H
O
M 26
(メチル尿素の隣接部分での開裂)
(イソプロピル部分のメチン酸化)
O
N
O
N
N
S
N
H
H
N
O
M 21
(カルバミン酸エステルの開裂)
- 42 -
NH2
S
N
エムトリシタビン 55):
健康成人 5 例を対象とし,エムトリシタビン製剤(200 mg 1 日 1 回,空腹時)反復投与後,14C-エムト
リシタビン 200 mg を単回経口投与したところ,投与量は尿中(86%)と糞便中(14%)に完全に回収さ
れた。いずれも未変化体が主な成分であり,
投与量の 13%が 3 種の推定代謝物として尿中に回収された。
エムトリシタビンの代謝は,チオール部分の酸化による 3’-スルホキシドジアステレオマーの生成(M1
及び M2,投与量の 9%)とグルクロン酸抱合による 2’-O-グルクロニドの生成(M3,投与量の 4%)か
ら成る。その他の代謝物は確認されていない。
NH2
F
N
O
N
O
S+
O-
NH2
OH
F
N
O
M1
N
‹
及び
NH2
O
F
S
N
M2
NH2
F
O
N
N
OH
エムトリシタビン
O
O
N
S
O
S+
M3
G
O
G:グルクロン酸・
-
OH
テノホビル アラフェナミド 56):
テノホビル アラフェナミドは,速やかにテノホビルへと代謝される。テノホビルは,細胞内で活性本体
であるテノホビル二リン酸に代謝され,また,プリン体代謝経路によりアデニン,ヒポキサンチン,キ
サンチンを介して尿酸へと代謝される。
NH2
N
N
NH2
OG
N
N
N
O
O
N
O
OH
N
O
N
O
P
O
NH2
HO
P
N
NH
NH
O
O
N
N
O
O
O
N
O
O
P
M21
M19
NH
O
NH2
NH2
HO
N
N
N
N
N
N
O
N
O
N
O
OH
P
O
O
P
NH
NH
O
O
O
O
M17
テノホビル アラフェナミド
N
HO
NH2
NH2
NH2
N
N
N
N
N
N
O
N
O
P
N
O
N
O
OH
OH
P
NH
N
O
N
O
OH
P
NH
NH
O
OH
O
O
M16
O
M22,M23
O
M18
M28
NH2
O
N
N
N
H
M33(アデニン)
NH2
N
NH2
N
N
N
N
O
N
O
OH
N
P
NH
N
O
O
O
OH
P
N
OH
O
O
N
H
テノホビル
N
M8(ヒポキサンチン)
O
NH2
NH
N
N
N
O
NH
N
N
N
O
O
N
OH
P
N
O
HO
O
OH
P
OH
OH
M46
N
O
H
N
NH
NH
O
OH
M14
N
M11
- 43 -
N
H
N
H
O
M7(キサンチン)
H
N
O
N
H
N
H
NH2
O
N
H
N
H
O
M27B(尿酸)
O
M27A(アラントイン)
(2) 代謝に関与する酵素(CYP450 等)の分子種
エルビテグラビル:
肝ミクロソーム及び CYP アイソザイムを用いた in vitro 試験において,エルビテグラビルは主に CYP3A
により代謝され,また UGT1A1/3 により,グルクロン酸抱合を受けた 57)。
コビシスタット:
肝ミクロソーム及び CYP アイソザイムを用いた in vitro 試験において,コビシスタットは主に CYP3A に
より代謝され,一部 CYP2D6 で代謝された 12)。また,in vivo 試料中に,グルクロン酸抱合体は検出され
なかった 58)。
エムトリシタビン:
in vitro 試験及び in vivo 試料中で,代謝物はほとんど検出されなかった 55),59)。
テノホビル アラフェナミド:
経口投与後,末梢血単核球及びマクロファージのカテプシン A 及び肝細胞のカルボキシルエステラーゼ 1
によりテノホビルに代謝され,その後,テノホビル二リン酸に代謝された 60),61),62)。In vitro 試験におい
て,テノホビル アラフェナミドは CYP3A でわずかに代謝された 63)。
(3) 初回通過効果の有無及びその割合
該当資料なし
(4) 代謝物の活性の有無及び比率
エルビテグラビル:
代謝物の活性の有無:
ヒト T リンパ球系細胞(MT-2)株に感染させた HIV-1/IIIB に対するエルビテグラビル,代謝物 M1 及
び M4 の抗ウイルス作用(EC50)は,それぞれ 0.6,5.6 及び 4 nM であった 64)。
代謝物の比率:
リトナビル併用(ブースト)下で 14C-エルビテグラビルを投与したところ,投与量の 6.7%が主にグル
クロン酸抱合体(代謝物 M4)及び酸化体のグルクロン酸抱合体(M7 等)として尿中に回収され,未
変化体のエルビテグラビルは検出されなかった 65)。
コビシスタット:
該当資料なし
エムトリシタビン:
代謝物の活性の有無:該当資料なし
代謝物の比率:[「本項 5. 代謝 (1) 代謝部位及び代謝経路」の項]参照
テノホビル アラフェナミド:
代謝物の活性の有無:細胞内での代謝物であるテノホビル二リン酸が活性本体
代謝物の比率:該当資料なし
(5) 活性代謝物の速度論的パラメータ
エルビテグラビル
該当資料なし
コビシスタット
該当資料なし
エムトリシタビン
該当資料なし
テノホビル アラフェナミド
[「本項 2. 薬物速度論的パラメータ」の項]参照
- 44 -
6. 排泄
(1) 排泄部位及び経路
<参考>
エルビテグラビル:
健康被験者に 14C-EVG をリトナビル 100 mg でブーストして投与したところ,
投与量の 94.8%が糞中に,
6.7%が尿中に排泄された 37)。
コビシスタット:
健康被験者に COBI 150 mg を 6 日間反復投与した後に 14C-COBI を経口投与したところ,投与量の 86.2%
が糞中に,8.2%が尿中に排泄された 13)。
エムトリシタビン:
健康被験者に FTC 200 mg を反復投与した後,14C-FTC を単回投与したところ,投与量の 86%は尿中に,
14%は糞中に回収された。腎クリアランスが推定クレアチニンクリアランスを上回ったことから,糸球
体ろ過と尿細管への能動輸送の両方による腎排泄が示唆された 66)。
テノホビル アラフェナミド:
健康被験者に 14C-TAF を単回投与したところ,投与量の 47.2%が糞中に,36.2%が尿中に排泄された。そ
の主成分は TFV であり,糞中の 99%,尿中の 86%を占めた。また,投与量の 1.4%が TAF として尿中に
排泄された 67)。TFV は腎臓での糸球体ろ過と尿細管への能動輸送の両方により排泄された。
(2) 排泄率
[「本項
6. 排泄 (1) 排泄部位及び経路」の項]参照
(3) 排泄速度
該当資料なし
<参考>
細胞内における薬物動態(in vivo)
エルビテグラビル:該当資料なし
コビシスタット:該当資料なし
エムトリシタビン 68):
健康成人 5 例を対象とし,エムトリシタビン製剤(200 mg 1 日 1 回,空腹時)反復投与後,14C-エムト
リシタビン 200 mg を単回経口投与したところ,定常状態でのヒト末梢血単核球(PBMC)中のエムトリ
シタビン 5’-三リン酸の細胞内半減期は平均 39 時間であった。
テノホビル アラフェナミド:
テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩の活性体であるテノホビル二リン酸の細胞内半減期は休止期及
びフィトヘモアグルチニンで活性化させたヒト末梢血単核球(PBMC)において,それぞれ約 50 時間及
び約 10 時間であった 15)。
7. トランスポーターに関する情報
<参考>
エルビテグラビル:
エルビテグラビルは,P-gp,BCRP,OATP1B1 及び OATP1B3 の基質である 69)。また,P-gp,BCRP,OATP1B3
及び MATE1 に対する阻害作用が認められた(IC50 値:それぞれ,69.7,88.9,0.44 及び 2.0 µM)70)。
- 45 -
コビシスタット:
コビシスタットは,P-gp,BCRP,OATP1B1,OATP1B3 及び OCT2 の基質である 71)。また,P-gp,BCRP,
BSEP,OATP1B1,OATP1B3,MATE1,MATE2-K,OCT1,OCT2,OCTN1,MRP1,MRP2 及び MRP4 に
対する阻害作用が認められた(IC50 値:それぞれ,36,59,6.5,3.5,1.88,1.87,33.5,14.7,14.4,2.49,
45-90,45-90 及び 20.7 µM)72)。
エムトリシタビン:
エムトリシタビンは,OAT3 の基質である 73)。
テノホビル アラフェナミド:
テノホビル アラフェナミドは,P-gp,BCRP,OATP1B1 及び OATP1B3 の基質である 74)。
テノホビルは,OAT1,OAT3 及び MRP4 の基質である 75)。また,OAT1 に対する弱い阻害作用が認められ
た(IC50 値:33.8 µM)76)。
8. 透析等による除去率
該当資料なし
<参考>
エルビテグラビル:
エルビテグラビルは血漿蛋白結合率が高いため,血液透析又は腹膜透析によって十分に除去される可能性
は低い。
コビシスタット:
コビシスタットは血漿蛋白結合率が高いため,血液透析又は腹膜透析によって十分に除去される可能性は
低い。
エムトリシタビン:
エムトリシタビン製剤 200 mg の投与から 1.5 時間以内に血液透析を開始し,3 時間透析することによりエ
ムトリシタビンの投与量の約 30%が除去された(血液流量 400 mL/min,透析液流量 600 mL/min)。
テノホビル アラフェナミド:
テノホビル製剤 300 mg 単回投与時の血液透析による除去率は 54%で,血液透析患者にテノホビル製剤
300 mg を単回投与した時には 4 時間の血液透析により投与量の約 10%が除去された。
- 46 -
VIII. 安全性(使用上の注意等)に関する項目
1. 警告内容とその理由
【警告】
B 型慢性肝炎を合併している患者では,本剤の投与中止により,B 型慢性肝炎が再燃するおそれがある
ので,本剤の投与を中断する場合には十分注意すること。特に非代償性の場合,重症化するおそれがあ
るので注意すること。
(解説)
本剤の含有成分である FTC 及び TAF フマル酸塩は,いずれも B 型肝炎ウイルス(HBV)に対し抗ウイルス
作用を有している。海外では,HBV と HIV-1 の重複感染患者において,FTC あるいは TAF フマル酸塩の類
似薬である TDF を含有する製剤の投与中止後に B 型慢性肝炎が悪化した症例の報告がある。また,進行し
た肝疾患又は肝硬変を有する患者では,治療後の肝炎増悪は肝代償不全に至ることがあるため,投与中止
は綿密な観察のもと,慎重に行わなければならない。特に,非代償性肝疾患を有する患者で投与中止後に
肝炎が重症化するおそれがある。
HBV と HIV-1 の重複感染患者において,本剤による治療を中止した場合は,少なくとも投与中止後数ヵ月
は患者の臨床所見及び臨床検査値等を注意深く観察する必要がある。
2. 禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
(1) 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
(2) 次の薬剤を投与中の患者:カルバマゼピン,フェノバルビタール,フェニトイン,ホスフェニトイ
ン,リファンピシン,セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort:セント・ジョーンズ・ワート)含
有食品,ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩,エルゴタミン酒石酸塩,エルゴメトリンマレイン酸塩,
メチルエルゴメトリンマレイン酸塩,アスナプレビル,バニプレビル,シンバスタチン,ピモジド,
シルデナフィルクエン酸塩(レバチオ),バルデナフィル塩酸塩水和物,タダラフィル(アドシルカ),
ブロナンセリン,アゼルニジピン,リバーロキサバン,トリアゾラム,ミダゾラム,テラプレビル
(「相互作用」の項参照)
(解説)
(1) 既存の抗ウイルス化学療法剤と同様に,一般的留意事項として設定している。抗 HIV 薬による治療経
験がない HIV-1 感染症患者を対象とした,本剤の第 III 相臨床試験(292-0104/0111 試験)の投与後 96
週時において,本剤が投与された 866 例中に,発疹(15 例,1.73%)及びそう痒症(4 例,0.46%)等の
皮膚過敏症症状が発現している。また,抗 HIV 薬による治療経験があり,ウイルス学的に抑制されて
いる HIV-1 感染症患者を対象とした,本剤の第 III 相臨床試験(292-0109 試験)の投与後 48 週時におい
て,本剤が投与された 959 例中に,発疹(2 例,0.21%)等の皮膚過敏症症状が発現している。
このような症状を発現したことのある患者では,本剤の投与により重篤な過敏症が発現する可能性があ
るため,
「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」には,本剤を投与しないこと。
(2) [本項 7. 相互作用の項]参照
- 47 -
3. 効能又は効果に関連する使用上の注意とその理由
[「V. 治療に関する項目」の項]参照
4. 用法及び用量に関連する使用上の注意とその理由
[「V.. 治療に関する項目」の項]参照
5. 慎重投与内容とその理由
慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(1) 重度の腎機能障害のある患者[エムトリシタビンの血中濃度が上昇する(
「薬物動態」の項参照)
。]
(2) 重度の肝機能障害のある患者[エルビテグラビルの血中濃度が上昇する可能性がある(
「薬物動態」
の項参照)。
]
(解説)
(1) FTC は主に尿中に排泄されることから,重度の腎機能障害を有する患者においては,FTC の血中濃度
が上昇する。このことから,重度の腎機能障害を有する患者には慎重に投与すること。また,ツルバ
ダ配合錠(FTC/TDF:TVD)の国内の使用経験において急性腎不全及びファンコニー症候群等を発現
した症例が報告されているが,その中には腎疾患の既往,合併のある患者が含まれている。
なお,[V. 治療に関する項目」 2. 用法及び用量 <用法・用量に関連する使用上の注意>]及び[本
項 6. 重要な基本的注意とその理由及び処置方法 (6) ],及び[本項 8. 副作用 (2) 重大な副作用と初
期症状 1)]も参照すること。
(2) 海外臨床試験(183-0133 試験)において,中等度の肝機能障害(Child-Pugh 分類クラス B)を有する被
験者に EVG 及び COBI を投与した結果,健康被験者と比較して COBI の血中濃度に変化は認められな
かったが,EVG の AUCtau*)が 35%上昇したとの報告がある。重度の肝機能障害(Child-Pugh 分類クラス
C)を有する HIV-1 感染症患者においても,本剤の投与により EVG の血中濃度が上昇する可能性があ
るため,慎重に投与すること。
*) AUCtau:投与間隔における AUC
6. 重要な基本的注意とその理由及び処置方法
(1) 本剤の使用に際しては,患者又はそれに代わる適切な者に次の事項についてよく説明し同意を得た
後,使用すること。
1) 本剤は HIV 感染症の根治療法薬ではないことから,日和見感染症を含む HIV 感染症の進展に伴う
疾病を発症し続ける可能性があるので,本剤投与開始後の身体状況の変化についてはすべて担当
医に報告すること。
2) 本剤の長期投与による影響については現在のところ不明であること。
3) 本剤による治療が,性的接触又は血液汚染等による他者への HIV 感染の危険性を低下させるかど
うかは証明されていないこと。
4) 担当医の指示なしに用量を変更したり,服用を中止したりしないこと。
5) 本剤は併用薬剤と相互作用を起こすことがあるため,服用中のすべての薬剤を担当医に報告する
こと(「相互作用」の項参照)
。また,本剤で治療中に新たに他の薬剤を服用する場合,事前に担
当医に相談すること。
- 48 -
(解説)
本剤の使用に際しては,次の事項について患者又はそれに代わる適切な方によく説明し,同意を得た後に
使用すること。
1) 既存の抗 HIV 薬と同様に一般的留意事項として設定している。本剤投与により,血漿中 HIV-1 RNA 量
の減少及び CD4 陽性 T リンパ球数の増加が認められているが,HIV-1 感染症に対する根本治療ではない
ため,AIDS 関連疾患が発症又は進行する場合がある。そのため,これらの発症及び病勢進行を早期に
発見し,適切な対処ができるよう患者の身体状態の異常や変化に十分注意する必要がある。
2) 本剤の第 III 相臨床試験(292-0104/0111 試験及び 292-0109 試験)では,投与後 48 週又は 96 週時の有効
性及び安全性について検討されており,さらに長期の試験が継続して行われている。しかしながら,現
時点で 96 週を超える本剤の長期投与における有効性と安全性に関する結論は得られていない。
3) 本剤を含む抗 HIV 薬の投与による HIV の完全な除去は確認されていない。血漿中 HIV-1 RNA 量が検出
限界以下となり,CD4 陽性 T リンパ球数が増加しても,体内に HIV が存在する可能性があるため,性的
接触又は血液汚染等によって他の人に感染する可能性は否定できない。
4) 決められた用法及び用量を変更又は中止する等,不適切な使用により治療効果の減弱,薬剤耐性 HIV の
発現又は過量投与による本剤の有害事象が発現する可能性がある。本剤の投与に先立ち,患者に対して
必ず医師が指示する用法及び用量を守るよう指導すること。
5) 本剤に含まれる COBI は CYP3A 及び CYP2D6 を阻害し,P-gp,BCRP,OATP1B1,OATP1B3 及び MATE1
を含むトランスポーターを阻害する。そのため,本剤との相互作用が認められている薬剤がある。副作
用の発現や治療効果の減弱を回避するためにも,服用しているすべての薬剤を担当医に伝えるよう指導
すること。また,本剤服用中に新たに服用する薬剤について事前に担当医に相談するよう指導すること。
(2) 本剤は,CYP3A の選択的阻害薬であるコビシスタットを含有するため,主として CYP3A により代
謝される薬剤と併用する場合には,併用薬の血中濃度モニタリングを行う,診察回数を増やす,また,
必要に応じて併用薬の減量を考慮する等,慎重に投与すること(「相互作用」の項及び「薬物動態」
の項参照)。
(解説)
本剤の含有成分である COBI は CYP3A 阻害作用を有するため,CYP3A で代謝される薬剤と併用した場合,
併用薬の血中濃度が上昇し,併用薬に関連した有害事象が発現する可能性がある。そのため,併用薬の血
中濃度のモニタリングを行う,診察回数を増やす等,患者の状態を十分に観察し,また,必要に応じて併
用薬の減量を考慮する等,慎重に投与すること。
(3) 本剤は,HIV-1 感染症に対して 1 剤で治療を行うものであるため,他の抗 HIV 薬と併用しないこと。
また,コビシスタットと類似の薬理作用を有しているリトナビルを含む製剤,及びエムトリシタビン
と類似の薬剤耐性,ウイルス学的特性を有しているラミブジンを含む製剤と併用しないこと。
(解説)
本剤は,EVG,COBI,FTC 及び TAF フマル酸塩の 4 成分を含有しており,抗 HIV 薬による治療経験がな
い HIV-1 感染症患者,あるいは抗 HIV 薬による治療経験があり,ウイルス学的に抑制されている HIV-1 感
染症患者に対して,1 剤で治療を行うことができる。そのため,他の抗 HIV 薬と併用しないこと。リトナ
ビル(RTV)は COBI と同様に CYP3A 阻害作用を有するため,RTV を含む製剤と併用しないこと。また,
FTC とラミブジン(3TC)は化学構造上類似しており,加えて,3TC により選択される HIV-1 逆転写酵素遺
伝子の耐性変異は FTC と同様に M184V/I が主であり,3TC と FTC の薬剤耐性を含むウイルス学的特性は類
似しているため 3TC を含む製剤とも併用しないこと。
- 49 -
(4) エムトリシタビン又はテノホビルを含む核酸系逆転写酵素阻害薬の単独投与又はこれらの併用療法
により,重篤な乳酸アシドーシス及び脂肪沈着による重度の肝腫大(脂肪肝)が,女性に多く報告さ
れているので,乳酸アシドーシス又は肝細胞毒性が疑われる臨床症状又は検査値異常(アミノトラ
ンスフェラーゼの急激な上昇等)が認められた場合には,本剤の投与を一時中止すること。特に肝
疾患の危険因子を有する患者においては注意すること。
(解説)
NRTI に起因すると考えられる乳酸アシドーシスを含むミトコンドリア毒性に関しては多くの文献及び学会
報告がある。
Arenas-Pinto A らは,HIV 感染症患者における乳酸アシドーシスの発現に関する文献調査の結果,検討する
に十分なデータが得られた 90 症例をまとめ,以下のように報告している 77)。
1) 90 症例はすべて NRTI が投与されており,投与薬剤が確認された 83 例中,サニルブジン(d4T)が 51
例,ジドブジン(AZT)が 29 例,ジダノシン(ddI)が 27 例,3TC が 25 例に使用されていた。
2) 患者の約 50%は腹痛,嘔気又は嘔吐を訴えた。
3) 90 例中 53 例で脂肪肝が同時に発現し,うち 36 例は病理的に確認された。
4) 48%は死亡例であった。
5) 6 例に NRTI の再投与が行われ,うち 3 例は乳酸アシドーシスが再発した。
6) 女性では男性の 2.5 倍リスクが高いと推定された。
本剤の含有成分である FTC 及び TFV 二リン酸(TAF フマル酸塩の活性本体)は,ミトコンドリア毒性への
関与が示唆されているミトコンドリア DNA ポリメラーゼ γ に対する阻害活性が他の NRTI に比べて低く,
乳酸アシドーシスを含むミトコンドリア毒性発現のリスクは比較的小さいとされている。しかしながら,
HIV-1 感染症患者を対象とした本剤の臨床試験において乳酸アシドーシスが 1 例報告されているため(2015
年 12 月時点),他剤と同様の注意が必要と考えられる。乳酸アシドーシス,肝毒性が疑われる臨床症状又
はアミノトランスフェラーゼの急激な上昇等の検査値異常に注意し,異常が認められた場合には本剤の投
与を一時中止すること(
[「8. 副作用 (1) 重大な副作用」2)の項]参照)
。
(5) 抗 HIV 薬の多剤併用療法を行った患者で,免疫再構築炎症反応症候群が報告されている。投与開始
後,免疫機能が回復し,症候性のみならず無症候性日和見感染(マイコバクテリウムアビウムコン
プレックス,サイトメガロウイルス,ニューモシスチス等によるもの)等に対する炎症反応が発現
することがある。また,免疫機能の回復に伴い自己免疫疾患(甲状腺機能亢進症,多発性筋炎,ギラ
ン・バレー症候群,ブドウ膜炎等)が発現するとの報告があるので,これらの症状を評価し,必要時
には適切な治療を考慮すること。
(解説)
抗 HIV 治療ガイドライン(平成 27 年度厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業 HIV 感染症及びそ
の合併症の課題を克服する研究班 2016 年 3 月改訂)によると,免疫不全のある HIV 感染者に対して有効
な抗 HIV 治療を開始後,数ヵ月以内に日和見感染症等の疾患が発症,再発,再増悪した場合に免疫再構築
症候群と呼んでいる。免疫再構築症候群の発症頻度は,抗 HIV 治療例全体で 13.0%と報告されており,国
内では帯状疱疹,非結核性抗酸菌症,サイトメガロウイルス感染症,ニューモシスチス肺炎,結核症及び
カポジ肉腫等が頻度の高い免疫再構築症候群の疾患とされている。抗 HIV 療法開始時の CD4 陽性 T リンパ
球数,血漿中 HIV-1 RNA 量と免疫再構築症候群の発症リスクについては文献等 78),79),80)に報告されているが,
未だ一定の見解はでていない。従って,日和見疾患を有する HIV-1 感染症患者において,抗 HIV 療法を開
始する場合は,免疫再構築症候群の発生に常に注意する必要がある。
- 50 -
また,抗 HIV 薬治療による免疫機能の回復に伴い,甲状腺機能亢進症,多発性筋炎,ギラン・バレー症候
群,ブドウ膜炎等の自己免疫疾患が発現するとの報告があることから,これらの自己免疫疾患の発現につ
いて注意する必要がある。
(6) 本剤投与前にクレアチニンクリアランス,尿糖及び尿蛋白の検査を実施すること。また,本剤投与後
も定期的な検査等により患者の状態を注意深く観察し,腎機能障害のリスクを有する患者には血清リ
ンの検査も実施すること。腎毒性を有する薬剤との併用は避けることが望ましい。
(解説)
軽度から中等度の腎機能障害がある HIV-1 感染症患者を対象とした本剤の第 III 相臨床試験(292-0112 試験)
の成績から,Cockcroft-Gault 計算式から算出するクレアチニンクリアランスが 30 mL/min 以上 70 mL/min 未
満の HIV-1 感染症患者に対する有効性及び安全性が確認されている。
抗 HIV 薬による治療経験がない成人 HIV-1 感染症患者を対象とした本剤の第 III 相臨床試験(292-0104/0111
試験)では,腎機能に関する臨床検査値パラメータとして,血清クレアチニン,クレアチニンクリアラン
ス及び蛋白尿の定量評価[尿蛋白/クレアチニン比(UPCR),尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR),
尿中レチノール結合蛋白(RBP)/クレアチニン比及び尿中 β-2 マイクログロブリン(β-2MG)/クレアチ
ニン比]を評価した。この結果,いずれの試験においても本剤投与群では,スタリビルド配合錠(STB)投
与群と比較して,血清クレアチニン及びクレアチニンクリアランスの変化量が有意に小さく,本剤投与群
では UPCR,UACR 及び尿中 β-2MG/クレアチニン比がベースラインから低下したのに対し,STB 投与群
では上昇した。
投与後 96 週時の腎臓関連の主要な臨床検査パラメータ(292-0104/0111 試験)
血清クレアチニン (mg/dL)
a
本剤投与群
STB投与群
(435例)
(432例)
P値c
例数
値
例数
値
771
0.04±0.114
756
0.07±0.127
<0.001
-2.0(-12.4, 9.4)
753
-7.5(-17.4, 2.9)
<0.001
クレアチニンクリアランス(mL/min) 770
b
UPCRb
(%)
765
-9.1(-39.6, 36.0)
748
16.2(-22.5, 81.5)
<0.001
UACRb(%)
767
-5.2(-35.7, 30.1)
743
4.9(-32.7, 60.0)
<0.001
尿中RBP/クレアチニン比b(%)
772
13.8(-18.8, 66.1)
745
74.2(10.4, 192.2)
<0.001
尿中β-2MG/クレアチニン比b(%)
765
-32.1(-61.0, 4.2)
738
33.5(-27.8, 230.7)
<0.001
a
b
c
ベースラインからの平均変化量±S.D.
ベースラインからの変化量の中央値(Q1,Q3)
Wilcoxon rank sum test
- 51 -
ベースラインからのクレアチニンクリアランスの推移(292-0104/0111 試験)
抗 HIV 薬による治療経験があり,ウイルス学的に抑制されている成人 HIV-1 感染症患者を対象とした第 III
相臨床試験(292-0109 試験)においても,腎機能に関する臨床検査値パラメータを評価した。その結果,
前治療薬に薬物動態学的増強因子(ブースター)を含むレジメンから本剤の投与に切り替えた群では,前治
療継続群と比較して,血清クレアチニン及びクレアチニンクリアランスの変化量が有意に小さくなったが,
前治療薬にブースターを含まないレジメンから本剤の投与に切り替えた群では,前治療継続群と比較して,
血清クレアチニン及びクレアチニンクリアランスの変化量は有意に大きくなった。本剤の投与に切り替えた
群では,UPCR,UACR,尿中 RBP/クレアチニン比及び尿中 β-2MG/クレアチニン比がベースラインから
低下し,前治療継続群では上昇した。
投与後 48 週時の腎臓関連の主要な臨床検査パラメータ(GS-US-292-0109 試験)
本剤切り替え投与群(959例)
血清クレアチニンa, c(mg/dL)
前治療継続群(477例)
P値d
例数
値
例数
値
696
0.00±0.115
330
0.03±0.105
<0.001
1.2(-6.6, 9.1)
328
-3.7(-10.5, 3.8)
<0.001
クレアチニンクリアランス (mL/min) 695
b, c
UPCRb
(%)
935
-20.9(-46.9, 15.1)
448
9.6(-17.7, 52.8)
<0.001
UACRb(%)
928
-17.9(-44.9, 21.0)
453
8.5(-24.7, 60.6)
<0.001
尿中RBP/クレアチニン比b(%)
935
-33.4(-63.9, 0.1)
449
18.1(-20.2, 80.3)
<0.001
尿中β-2MG/クレアチニン比b(%)
919
-52.3(-81.5, -9.5)
443
18.7(-31.8, 97.7)
<0.001
a
b
c
d
ベースラインからの平均変化量±S.D.
ベースラインからの変化量の中央値(Q1,Q3)
前治療薬がATRであった症例を除外して集計
Wilcoxon rank sum test
- 52 -
ベースラインからのクレアチニンクリアランスの推移(292-0109 試験)
*
*
*
中央値±四分位値
*P <0.001(vs. 対照群)Wilcoxon rank sum test
なお,上記のいずれの試験においても,尿細管障害を示唆する副作用は認められていない。
これらの臨床試験成績から,TAF フマル酸塩を含む本剤では,TFV の腎障害リスクは低いと考えている。
しかしながら,TAF フマル酸塩と TDF による,クレアチニンクリアランス及び尿細管マーカーの変化量の
違いがもたらす臨床的意義は現時点で明確ではない。また,COBI によるクレアチニンクリアランスの低下
は,本剤投与時にも認められている。従って,「用法・用量に関連する使用上の注意」として,「投与開始
時にクレアチニンクリアランスが 30 mL/min 以上であることを確認すること。また,本剤投与後,クレアチ
ニンクリアランスが 30 mL/min 未満に低下した場合は,投与の中止を考慮すること。
」としている。これら
を踏まえ,本剤投与中の腎機能モニタリングの一環として,投与前にクレアチニンクリアランス,尿糖及
び尿蛋白を測定し,投与後も定期的な腎機能モニタリングを実施する必要がある。また,腎機能障害のリ
スクを有する患者に対しては,TDF を含む製剤の重要な基本的注意と同様に,上記腎機能検査に加え,血
清リンの検査を実施して十分な観察を行い,異常が認められた場合には投与を中止する等適切な処置を行
う必要がある。
(7) 非臨床試験及び臨床試験において,骨密度の低下と骨代謝の生化学マーカーの上昇が認められ,骨代
謝の亢進が示唆された。また,抗 HIV 薬による治療経験がない HIV-1 感染症患者を対象とした第 III
相臨床試験において,骨密度が低下した症例が認められた。病的骨折の既往のある患者又はその他の
慢性骨疾患を有する患者では,十分な観察を行い,異常が認められた場合には,投与を中止する等,
適切な処置を行うこと。
(解説)
抗 HIV 薬による治療経験がない HIV-1 感染症患者を対象とした第 III 相臨床試験(292-0104/0111 試験)の
結果から,本剤投与時の大腿骨近位部及び腰椎の骨密度低下への影響は,STB 投与時に比較して小さいこ
とが確認された。また抗 HIV 薬による治療経験があり,ウイルス学的に抑制されている HIV-1 感染症患者
を対象とした第 III 相臨床試験(292-0109 試験)の結果では,本剤の投与により,骨密度の改善傾向に加え,
T-score 評価(骨減少症又は骨粗鬆症と診断された被験者数の割合)についても,本剤投与群が 16.6%,対
照群が 5.7%となり,改善傾向が認められた。
しかしながら,本剤の非臨床試験及び臨床試験において,骨密度の低下と骨代謝の生化学マーカーの上昇
が認められ,骨代謝の亢進が示唆されたこと,また,本剤長期投与時の骨への影響に対する情報が十分で
- 53 -
ないことを踏まえ,患者の状態を注意深く観察する必要がある。さらに,HIV 感染者では他の要因でも骨
密度が低下するリスクが高いため,異常が認められた場合には,投与中止する等の適切な処置を行う必要
がある。
ベースラインからの大腿骨近位部及び腰椎における骨密度の推移(292-0104/0111 試験)
腰
大腿骨近位部
椎
ベースラインからの大腿骨近位部及び腰椎における骨密度の推移(292-0109 試験)
大腿骨近位部
腰
椎
(8) アジア系人種におけるエムトリシタビンの薬物動態は十分に検討されていないが,少数例の健康成人
及び B 型慢性肝炎のアジア系人種において,Cmax の上昇を示唆する成績が得られているので,HBV
感染症合併患者を含め,副作用の発現に注意すること。
(解説)
海外の FTC の臨床試験では,FTC 200 mg 単回投与時の Cmax は,アジア系人種(健康成人 3 例)では 3.7 μg/mL
であるのに対し,白人及びヒスパニックではそれぞれ 2.2 μg/mL 及び 2.3 μg/mL であり,1.6 倍の高値を示し
た。また,定常状態の Cmax についても同様の傾向が認められた。
一方,日本人健康成人 6 例を対象としたツルバダ配合錠単回投与時の薬物動態試験では,FTC の薬物動態
は外国人での結果とほぼ同様であった
81)
。しかしながら,日本人での定常状態における薬物動態が検討さ
れていないこと及びアジア系の HIV-1 感染症患者の薬物動態についても十分検討されていないため,副作
用の発現に留意する必要がある。
- 54 -
(9) 抗 HIV 薬の使用により,体脂肪の再分布/蓄積が現れることがあるので,異常が認められた場合に
は適切な処置を行うこと。
(解説)
抗 HIV 薬を長期間投与している患者で,体脂肪の分布異常(腹部内臓脂肪の増加と手足・顔面の皮下脂肪
の減少),脂質代謝異常(高トリグリセリド血症・高コレステロール血症),インスリン抵抗性増大による
耐糖能障害等の代謝異常が生じることがある。
明確な原因は不明だが,脂肪細胞のミトコンドリア DNA 量の減少が認められることから,NRTI によるミ
トコンドリア DNA ポリメラーゼ γ の活性阻害が一因と推測されている。また,PI との関連も示唆されてい
る。抗 HIV 薬投与開始後数ヵ月ほど経てから徐々に明らかとなり,報告・定義によって異なるが,25~75%
の症例に発症するとされている。
体脂肪の再分布/蓄積は,抗 HIV 薬を長期継続する場合に発現する可能性のある副作用であるが,本剤の
第 III 相臨床試験(292-0104/0111 試験及び 292-0109 試験)では副作用として認められていない。脂質代謝
異常としては,高トリグリセリド血症,高コレステロール血症等が認められている。このことから,本剤
を長期間投与する場合には留意する必要がある。
(10) エムトリシタビン製剤の試験において皮膚変色が発現し,その発現頻度は有色人種で高いことが示
唆されている。その原因は現在のところ不明である。
(解説)
海外の FTC の臨床試験において,FTC を投与した 580 例のうち,皮膚変色の副作用が 10 例報告された。皮
膚変色は,白人 329 例中には報告されなかったが,ヒスパニックでは 111 例中 2 例(1.8%)
,黒人では 111
例中 8 例(7.2%)に報告され,有色人種で発現頻度が高い可能性が疑われている。現在のところ皮膚変色
の機序及び有色人種で発現頻度が高かった原因は不明であるが,これまでに得られているデータでは,皮
膚変色は外見上の変化にとどまっている。また,FTC 製剤で報告された皮膚変色は,黒人において報告さ
れているジドブジン投与による皮膚及び爪の色素沈着に類似していることから,ジドブジンによる変化と
共通の機序である可能性も考えられる。
FTC 投与例における皮膚変色の副作用
301A 試験
303 試験
合計
黒人
5/52
(9.6%)
3/59
(5.1%)
8/111
(7.2%)
白人
0/136
アジア系人種
0/3
0/193
0/3
0/329
0/6
ヒスパニック
1/77
(1.3%)
1/34
(2.9%)
2/111
(1.8%)
その他
0/18
0/5
0/23
合計
6/286
4/294
10/580
例数(%)
白阪らは,FTC 又は TVD が投与された HIV 感染症患者 155 例の皮膚変色の発現について以下のように報告
している 82)
1) 3.9%(155 例中 6 例)の患者に色素沈着を確認した。
2) 色素沈着確認時における FTC 又は TVD の投与期間は 124 日(中央値,範囲:7~259 日)であった。
3) 発現個数は 6.5 個(中央値,範囲:1~>50)であった。また,主な発現部位は手掌・手背・足であっ
た。
4) 色素沈着は,個々のサイズが拡大する傾向はなく,主に直径 1~2 mm 程の茶褐色~黒色の円状の色素
斑であった。
- 55 -
5) 重篤度は,Division of AIDS の重篤度グレード分類で全例 Grade 1 であり,治療は必要とせず FTC 又は
TVD の投与中止に至った症例はなかった。
6) FTC 又は TVD 投与中に色素沈着の消失又は一部自然消退を認め,消失・褪色期間は 112 日(中央値,
範囲:28~315 日)であった。
なお,STB の第 III 相臨床試験(236-0102 試験)の投与後 96 週時において皮膚色素過剰が 1 例報告されて
いるが,本剤の臨床試験では,これらの報告はない。
7. 相互作用
エルビテグラビル:
CYP3A で代謝され,CYP2C9 に対する弱い誘導作用を有する 57)。
コビシスタット:
CYP3A 及び一部が CYP2D6 で代謝され,CYP3A 及び CYP2D6 を阻害する 12)。また,OCT2 の基質で
あり 83),P-gp,BCRP,OATP1B1 及び OATP1B3 を含むトランスポーターを阻害する 84)。
テノホビル及びエムトリシタビン:
糸球体ろ過と能動的な尿細管分泌により腎排泄される 66), 85)。
テノホビル アラフェナミド:
カテプシン A60), 61),CYP3A63)及び P-gp86)の基質である。
(1) 併用禁忌とその理由
薬剤名等
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
カルバマゼピン(テグレトール)
エルビテグラビル及びコビシス これら薬剤の CYP3A 及
フェノバルビタール(フェノバール)
タットの血中濃度が著しく低下 び P-gp の誘導作用による
フェニトイン(アレビアチン)
する可能性がある。また,テノホ ため。
ホスフェニトイン(ホストイン)
ビル アラフェナミドの血中濃度
リファンピシン(リファジン)
が低下する可能性がある。
セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort:
セント・ジョーンズ・ワート)含有食品
(解説)
これらの薬剤は CYP3A の誘導作用を有するため,本剤と併用した場合,EVG 及び COBI の代謝が促進され
て血中濃度が著しく低下し,効果の消失や薬剤耐性が生じる可能性がある。また,これらの薬剤は P-gp の
誘導作用も有しており,本剤と併用した場合,TAF の吸収が低下して血中濃度が著しく低下し,効果の消
失や薬剤耐性が生じる可能性がある。従って本剤とこれら薬剤との併用は避けること。
- 56 -
薬剤名等
ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩
(ジヒデルゴット)
臨床症状・措置方法
これら薬剤の血中濃度が上昇し, コビシスタットの CYP3A
重篤な又は生命に危険を及ぼす 阻害作用によるため。
エルゴタミン酒石酸塩(クリアミン)
ような事象(末梢血管攣縮,四肢
エルゴメトリンマレイン酸塩
及びその他組織の虚血等)が起こ
(エルゴメトリン)
機序・危険因子
る可能性がある。
メチルエルゴメトリンマレイン酸塩
(メテルギン)
アスナプレビル(スンベプラ)
アスナプレビルの血中濃度が上
昇し,肝臓に関連した有害事象が
発現し,また,重症化する可能性
がある。
バニプレビル(バニヘップ)
バニプレビルの血中濃度が上昇
し,悪心,嘔吐,下痢の発現が増
加する可能性がある。
シンバスタチン(リポバス)
シンバスタチンの血中濃度が上
昇し,重篤な有害事象(横紋筋融
解症を含むミオパチー等)が起こ
る可能性がある。
ピモジド(オーラップ)
ピモジドの血中濃度が上昇し,重
篤な又は生命に危険を及ぼすよ
うな事象(不整脈等)が起こる可
能性がある。
シルデナフィルクエン酸塩(レバチオ)
これら薬剤の血中濃度が上昇し,
バルデナフィル塩酸塩水和物(レビトラ) 視覚障害,低血圧,持続勃起及び
タダラフィル(アドシルカ)
失神等の有害事象が起こる可能
性がある。
ブロナンセリン(ロナセン)
これら薬剤の血中濃度が上昇し,
アゼルニジピン(カルブロック)
重篤な又は生命に危険を及ぼす
リバーロキサバン(イグザレルト)
ような事象が起こる可能性があ
る。
トリアゾラム(ハルシオン)
これら薬剤の血中濃度が上昇し,
ミダゾラム(ドルミカム)
重篤な又は生命に危険を及ぼす
ような事象(鎮静作用の延長や増
強又は呼吸抑制等)が起こる可能
性がある。
(解説)
本剤の含有成分である COBI は CYP3A を阻害する。CYP3A で代謝されるこれら薬剤と本剤を併用した場合,
代謝が阻害され血中濃度が上昇することで,これら薬剤に関連する重篤な又は生命に危険を及ぼすような
有害事象が発現する可能性がある。従って本剤とこれら薬剤との併用は避けること。
- 57 -
薬剤名等
テラプレビル(テラビック)
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
テノホビルアラフェナミドの抗 テラプレビルのカテプシ
HIV-1活性が低下するため,本剤 ンA活性阻害作用による
の効果が減弱する可能性がある。 ため。
(解説)
TAF は,HIV-1 の逆転写酵素を阻害するヌクレオチド類似体である TFV の新規の経口プロドラッグである。
TAF は血漿中では安定であり,リンパ球等の HIV-1 感染細胞に取り込まれ,カテプシン A にて効率的に TFV
に代謝されて抗 HIV 活性を発揮する。TAF とテラプレビルを併用すると,CD4 陽性 T リンパ球での TAF
の HIV-1 に対する EC50 値が約 24 倍に上昇することが示された。これはリンパ球内でカテプシン A がテラ
プレビルにより阻害され,TAF の TFV への代謝が阻害された結果と考えられる。このことから,HIV/HCV
重複感染患者に本剤とテラプレビルを併用投与すると,TAF の細胞内での活性化及び臨床での抗ウイルス
作用に悪影響を及ぼす可能性がある。従って本剤とテラプレビルとの併用は避けること。
(2) 併用注意とその理由
薬剤名等
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
アミオダロン塩酸塩
これら薬剤の血中濃度が上昇する可 コビシスタットの CYP3A
ベプリジル塩酸塩水和物
能性がある。本剤と併用する場合は, 阻害作用によるため。
ジソピラミド
これら薬剤の血中濃度をモニタリン
リドカイン塩酸塩
グすることが望ましい。
プロパフェノン塩酸塩
キニジン硫酸塩水和物
シクロスポリン
タクロリムス水和物
テムシロリムス
フレカイニド酢酸塩
メキシレチン塩酸塩
クロナゼパム
これら薬剤の血中濃度が上昇する可
エトスクシミド
能性がある。本剤と併用する場合は,
アムロジピンベシル酸塩
患者の状態を注意して観察すること
ジルチアゼム塩酸塩
が望ましい。
フェロジピン
ニカルジピン塩酸塩
ニフェジピン
ベラパミル塩酸塩
パロキセチン塩酸塩水和物
これら薬剤の血中濃度が上昇する可
アミトリプチリン塩酸塩
能性がある。本剤と併用時にこれら薬
イミプラミン塩酸塩
剤を増量する場合は慎重に行い,患者
ノルトリプチリン塩酸塩
の状態を注意して観察することが望
トラゾドン塩酸塩
ましい。
- 58 -
薬剤名等
コルヒチン
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
コルヒチンの血中濃度が上昇する可 コビシスタットの CYP3A
能性があるため,腎機能障害又は肝機 阻害作用によるため。
能障害を有する患者には投与を避け
ること。
フルチカゾンプロピオン酸エステル
フルチカゾンの血中濃度が上昇し,血
(吸入剤,点鼻剤)
清コルチゾール濃度が低下する可能
性がある。長期間併用する場合は,他
剤への変更を考慮すること。
アトルバスタチンカルシウム水和物
アトルバスタチンの血中濃度が上昇
する可能性がある。アトルバスタチン
カルシウム水和物と併用する場合は,
最少量から投与し,安全性を観察しな
がら増量すること。
サルメテロールキシナホ酸塩
サルメテロールの血中濃度が上昇し,
QT 延長,動悸及び洞性頻脈等の心血
管系有害事象の発現リスクが上昇す
る可能性がある。
シルデナフィルクエン酸塩
(バイアグラ)
これら薬剤の血中濃度が上昇し,低血
圧,失神,視覚障害及び持続勃起等の
タダラフィル(シアリス,ザルティア) 有害事象が増加する可能性がある。
クロラゼプ酸二カリウム
これら薬剤の血中濃度が上昇する可
ジアゼパム
能性がある。本剤と併用する場合は,
エスタゾラム
これら薬剤の減量を考慮すること。ま
フルラゼパム塩酸塩
た,患者の状態を注意して観察するこ
ゾルピデム酒石酸塩
とが望ましい。
ボセンタン水和物
これら薬剤の血中濃度が上昇する可
ペルフェナジン
能性がある。本剤と併用する場合は,
リスペリドン
これら薬剤の減量を考慮すること。
ダサチニブ水和物
これら薬剤の血中濃度が上昇する可
ラパチニブトシル酸塩水和物
能性がある。
エベロリムス
ブデソニド
エプレレノン
トルバプタン
エレトリプタン臭化水素酸塩
クエチアピンフマル酸塩
(解説)
これらの薬剤は CYP3A で代謝されるため,本剤と併用した場合,COBI の CYP3A 阻害作用により代謝が阻
害され,これら薬剤の血中濃度が上昇する可能性があることに注意する。
- 59 -
薬剤名等
デキサメタゾン
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
エルビテグラビル及びコビシスタッ デキサメタゾンのCYP3A
トの血中濃度が著しく低下する可能 誘導作用によるため。
性がある。
(解説)
デキサメタゾンは CYP3A を誘導するため,本剤と併用した場合,EVG 及び COBI の代謝が促進されて血中
濃度が低下し,治療効果の消失及び薬剤耐性が生じる可能性があることに注意する。
薬剤名等
クラリスロマイシン
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
クラリスロマイシン及びコビシスタ クラリスロマイシン及び
ットの血中濃度が上昇する可能性が コビシスタットの CYP3A
ある。
阻害作用によるため。
イトラコナゾール
エルビテグラビル,コビシスタット及 これら薬剤及びコビシス
ボリコナゾール
びこれら薬剤の血中濃度が上昇する タットの CYP3A 等阻害
可能性がある。
作用によるため。
(解説)
これらの薬剤は CYP3A を阻害するため,本剤と併用した場合,COBI の CYP3A 阻害作用により,CYP3A
で代謝されるこれら薬剤の血中濃度が上昇する可能性があることに注意する。また,イトラコナゾール及
びボリコナゾールにおいては,EVG の代謝が阻害され,血中濃度が上昇する可能性があることにも注意す
る。
薬剤名等
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
メトプロロール酒石酸塩
これら薬剤の血中濃度が上昇する可 コ ビ シ ス タ ッ ト の
チモロールマレイン酸塩
能性がある。これら薬剤と併用する場 CYP2D6 阻害作用による
合は,患者の状態を注意して観察し, ため。
減量等の措置を考慮すること。
(解説)
これらの薬剤は CYP2D6 で代謝されるため,本剤と併用した場合,COBI の CYP2D6 阻害作用により代謝が
阻害され,これら薬剤の血中濃度が上昇する可能性があることに注意する。
薬剤名等
酒石酸トルテロジン
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
これら薬剤の血中濃度が上昇する可 コビシスタットの CYP3A
デキストロメトルファン臭化水素酸 能性がある。
及び CYP2D6 阻害作用に
塩水和物
よるため。
(解説)
これらの薬剤は CYP3A 及び CYP2D6 で代謝されるため,
本剤と併用した場合,COBI の CYP3A 及び CYP2D6
阻害作用により代謝が阻害され,これら薬剤の血中濃度が上昇する可能性があることに注意する。
- 60 -
薬剤名等
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
マグネシウム/アルミニウム含有制 エルビテグラビルの血中濃度が低下 エルビテグラビルが多価
酸剤
する可能性があるため,2 時間以上間 陽イオンと錯体(キレー
隔をあけて投与することが望ましい。 ト)を形成し吸収が抑制
されるため。
(解説)
健康被験者を対象に,マグネシウム/アルミニウム含有制酸剤と EVG 及び RTV を併用した薬物動態試験
を実施した結果を以下に示す。マグネシウム/アルミニウム含有制酸剤は,本剤と 2 時間以上の間隔をあ
けて投与することが望ましいと考えられる。本剤とマグネシウム/アルミニウム含有制酸剤を併用する場
合は注意すること。
EVG,RTV とマグネシウム/アルミニウム含有制酸剤併用投与時の EVG の薬物動態パラメータの変化
(183-0119 試験,同時投与のみ 183-0103 試験)
薬物動態パラメータ(平均値)
薬物動態パラメータの比
EVG 50 mg+RTV 100 mg
EVG 50 mg+RTV 100 mg
(90% CI)
+マグネシウム/アルミニウム
単回
含有制酸剤 20 mL 単回
EVG 投与 4 時間前マグネシウム/アルミニウム含有制酸剤投与
症例数
-
8
8
Cmax(ng/mL)
94.75(83.90, 107.00)
834.79
881.05
AUC(ng・h/mL)
95.82(88.29, 103.99)
9,731.00
10,155.55
Cmin(ng/mL)
104.30(93.39, 116.50)
200.92
192.63
EVG 投与 4 時間後マグネシウム/アルミニウム含有制酸剤投与
症例数
-
10
10
Cmax(ng/mL)
98.32(88.16,
109.65)
866.23
881.05
AUC(ng・h/mL)
98.20(91.26, 105.66)
9,972.25
10,155.55
Cmin(ng/mL)
99.98(90.14, 110.90)
192.60
192.63
EVG 投与 2 時間前マグネシウム/アルミニウム含有制酸剤投与
症例数
-
11
11
Cmax(ng/mL)
82.23(74.10, 91.26)
724.51
881.05
AUC(ng・h/mL)
84.76(79.04, 90.90)
8,608.06
10,155.55
Cmin(ng/mL)
90.44(82.29, 99.39)
174.22
192.63
EVG 投与 2 時間後マグネシウム/アルミニウム含有制酸剤投与
症例数
-
10
10
Cmax(ng/mL)
78.86(70.71, 87.95)
694.80
881.05
AUC(ng・h/mL)
80.30(74.63, 86.40)
8,155.20
10,155.55
Cmin(ng/mL)
80.48(72.90, 88.85)
155.03
192.63
EVG,マグネシウム/アルミニウム含有制酸剤同時投与
症例数
-
13
24
Cmax(ng/mL)
53.1(46.8, 60.2)
664.1
1,250.6
AUC(ng・h/mL)
55.1(50.4, 60.2)
8,561.5
15,550.7
Cmin(ng/mL)
59.1(52.0, 67.2)
184.4
311.8
- 61 -
薬剤名等
ジゴキシン
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
ジゴキシンの血中濃度が上昇する可 コビシスタットが消化管
能性がある。本剤と併用する場合は, においてP-gpを阻害する
血中濃度のモニタリングを行うこと ため。
が望ましい。
(解説)
健康被験者を対象に,ジゴキシンと COBI を併用した薬物動態試験を実施した結果を以下に示す。ジゴキシ
ン単独投与に比べて,本剤併用時にジゴキシンの血中濃度が上昇する可能性が示された。従って,本剤と
ジゴキシンを併用する場合は注意すること。
COBI とジゴキシン併用投与時のジゴキシンの薬物動態パラメータの変化(216-0112 試験)
症例数
Cmax(ng/mL)
AUC(ng・h/mL)
薬物動態パラメータ(平均値)
COBI 150 mg/日+ジゴキシン 0.5 mg
ジゴキシン 0.5 mg
単回
単回
22
22
2.5
1.7
34.7
31.9
薬剤名等
リファブチン
薬物動態パラメータの比
(90% CI)
-
140.95(128.52, 154.58)
107.73(99.58, 116.55)
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
エルビテグラビル及びコビシスタッ
リ フ ァ ブ チ ン の CYP3A
トの血中濃度が著しく低下し,テノホ
及びP-gp誘導作用,及び
ビルアラフェナミドの血中濃度が低
コ ビ シ ス タ ッ ト の
下する可能性がある。また,リファブ
CYP3A 阻 害 作 用 に よ る
チンの活性代謝物である25-脱アセチ
ため。
ル体の血中濃度が上昇する可能性が
ある。
(解説)
健康被験者を対象に,リファブチンと EVG 及び COBI を併用した薬物動態試験を実施した結果を以下に示
す。EVG 及び COBI とリファブチン併用投与時の EVG の血漿中濃度が,EVG 及び COBI 併用投与時に比べ
低下したことから,リファブチンを本剤と併用する場合は,EVG の血中濃度が低下し,抗ウイルス効果が
得られない可能性があるため,併用には十分に注意すること。
また,EVG 及び COBI とリファブチン併用投与時のリファブチンの血漿中濃度に大きな変化はなく,リフ
ァブチン 25-脱アセチル体代謝物の血漿中濃度が上昇した。リファブチン及びリファブチン 25-脱アセチル
体代謝物の血漿中濃度を基に推定した抗菌活性の総和は EVG 及び COBI の併用に関わらず同程度と考えら
れた。
- 62 -
EVG 及び COBI とリファブチン併用投与時の EVG 及び COBI の薬物動態パラメータの変化(216-0123 試験)
薬物動態パラメータ(平均値)
EVG 150 mg+COBI 150 mg/日
EVG 150 mg+COBI150 mg/日
+リファブチン 150 mg/隔日
EVG の薬物動態パラメータ
症例数
12
12
Cmax(ng/mL)
1,981.26
2,173.93
AUC(ng・h/mL)
17,726.19
22,325.62
Cmin(ng/mL)
133.69
406.97
COBI の薬物動態パラメータ
症例数
12
12
Cmax(ng/mL)
1,877.3
1,642.2
AUC(ng・h/mL)
11,409.7
11,215.2
Cmin(ng/mL)
6.5
22.8
薬物動態パラメータの比
(90% CI)
-
91.14(83.56, 99.40)
79.40(74.10, 85.07)
32.85(26.93, 40.07)
-
未算出
EVG 及び COBI とリファブチン併用投与時のリファブチンの薬物動態パラメータの変化(216-0123 試験)
薬物動態パラメータ(平均値)
薬物動態パラメータの比
EVG 150 mg+COBI 150 mg/日
(90% CI)
リファブチン 300 mg/日
+リファブチン 150 mg/隔日
症例数
-
12
12
Cmax(ng/mL)
108.87(98.48, 120.37)
558.29
512.79
AUC(ng・h/mL)
92.40(82.86, 103.04)
8,301.95
8,984.81
Cmin(ng/mL)
93.90(84.77, 104.01)
70.16
74.72
EVG 及び COBI とリファブチン併用投与時のリファブチン 25-脱アセチル体代謝物の薬物動態パラメータの変化
(216-0123 試験)
薬物動態パラメータ(平均値)
薬物動態パラメータの比
EVG 150 mg+COBI 150 mg/日
(90% CI)
リファブチン 300 mg/日
+リファブチン 150 mg/隔日
症例数
-
12
12
Cmax(ng/mL)
484.43(408.94, 573.85)
146.28
30.20
AUC(ng・h/mL)
625.07(508.37, 768.57)
2,954.91
472.73
Cmin(ng/mL)
494.20(404.20, 604.24)
16.94
3.43
薬剤名等
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
アシクロビル
これら薬剤,テノホビル又はエムトリ 尿細管への能動輸送によ
バラシクロビル塩酸塩
シタビンの血中濃度が上昇し,これら り排泄される薬剤と併用
ガンシクロビル
薬剤又は本剤による有害事象を増強 する場合,排泄経路の競
バルガンシクロビル塩酸塩
する可能性がある。
合により排泄が遅延する
ため。
(解説)
これら薬剤と FTC 及び TFV は腎排泄されるため,本剤と併用した場合,排泄経路の競合により,これら薬
剤,FTC 及び TFV の血中濃度が上昇し,有害事象が発現する可能性があることに注意する。
- 63 -
薬剤名等
エチニルエストラジオール
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
エチニルエストラジオールの血中濃 機序不明。
度が低下する可能性がある。
(解説)
健康被験者を対象に,ノルゲスチメート(国内未承認)及びエチニルエストラジオールと STB を併用した
薬物動態試験を実施した結果を以下に示す。STB とノルゲスチメート(国内未承認)及びエチニルエスト
ラジオールの併用投与時,エチニルエストラジオールの血漿中濃度が低下したことから,エチニルエスト
ラジオールと本剤を併用する場合は注意すること。
STB とノルゲスチメート(国内未承認)及びエチニルエストラジオール併用投与時の
エチニルエストラジオールの薬物動態パラメータの変化(236-0106 試験)
症例数
Cmax(ng/mL)
AUC(pg・h/mL)
Cmin(pg/mL)
薬物動態パラメータ(平均値)
STB 1 錠/日+ノルゲスチメート
ノルゲスチメート
(0.180/0.215/0.250 mg)/日
(0.180/0.215/0.250 mg)/日
+エチニルエストラジオール
+エチニルエストラジオール
0.025 mg/日
0.025 mg/日
13
13
98.6
105.7
775.04
1,050.56
13.7
25.8
薬剤名等
ワルファリンカリウム
臨床症状・措置方法
薬物動態パラメータの比
(90% CI)
-
94.09(85.54, 103.50)
74.97(69.41, 80.98)
56.48(51.88, 61.49)
機序・危険因子
ワルファリンの血中濃度が低下又は 機序不明。
上昇する可能性があるため INR のモ
ニタリングを行うことが望ましい。
(解説)
ワルファリンは治療域が狭く,主として肝薬物代謝酵素 CYP2C9 によって代謝されるが,他の代謝酵素に
も影響される。本剤と併用する場合,ワルファリンの血中濃度が,低下又は上昇する可能性があるため INR
のモニタリングを行うことが望ましい。
- 64 -
8. 副作用
(1) 副作用の概要
抗 HIV 薬による治療経験がない HIV-1 感染症患者を対象とした本剤の海外臨床試験(投与後 96 週時)に
おいて,866 例中 367 例(42.4%)に副作用が認められた。主な副作用は,悪心 90 例(10.4%),下痢
63 例(7.3%),頭痛 53 例(6.1%)等であった。また,抗 HIV 薬による治療経験があり,ウイルス学的
に抑制されている HIV-1 感染症患者を対象とした本剤の海外臨床試験(投与後 48 週時)において,959
例中 204 例(21.3%)に副作用が認められた。主な副作用は,下痢 24 例(2.5%),悪心 22 例(2.3%)
等であった。(承認時)
(解説)
抗 HIV 薬による治療経験がない HIV-1 感染症患者を対象とした第 III 相臨床試験(292-0104/0111 試験)の
投与後 96 週までに認められた副作用,及び抗 HIV 薬による治療経験があり,ウイルス学的に抑制されてい
る HIV-1 感染症患者を対象とした第 III 相臨床試験(292-0109 試験)の投与後 48 週までに認められた副作
用を集計した。
(2) 重大な副作用と初期症状
(1) 重大な副作用
1) 腎不全又は重度の腎機能障害(1%未満)
腎機能不全,腎不全,急性腎不全,近位腎尿細管機能障害,ファンコニー症候群,急性腎尿細管壊
死,腎性尿崩症又は腎炎等の重度の腎機能障害があらわれることがあるので,定期的に検査を行う
等,観察を十分に行い,臨床検査値に異常が認められた場合には,投与を中止する等,適切な処置
を行うこと。特に腎機能障害の既往がある患者や腎毒性のある薬剤が投与されている患者では注意
すること。
2) 乳酸アシドーシス(頻度不明)注)
乳酸アシドーシスがあらわれることがあるので,このような場合には,投与を中止する等,適切な
処置を行うこと。
注) エムトリシタビン又はテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を含有する製剤の臨床試験,製造販売後調査及び自発報告等で報
告された副作用を示した。
(解説)
1) 腎不全又は重度の腎機能障害
本剤の抗 HIV 薬による治療経験がない HIV-1 感染症患者を対象とした第 III 相臨床試験(292-0104/0111
試験)において腎及び尿路障害の有害事象の発現率は,本剤投与群で 7.5%,STB 投与群で 10.8%であっ
た。腎及び尿路障害の副作用の発現率は,本剤投与群で 1.4%,STB 投与群で 3.6%であった。また,本
試験における STB 投与群の 5 例が腎関連の有害事象により投与を中止しており,そのうち 1 例に腎尿細
管障害が認められた。さらに,STB 投与群の 1 例においては,投与は継続されているものの腎尿細管障
害が認められた。これに対して本剤投与群では,腎尿細管障害又は投与中止に至った腎関連の有害事象
は認められなかった。
しかしながら,本剤の軽度から中等度の腎機能障害のある HIV-1 感染症患者を対象とした第 III 相臨床
試験(292-0112 試験)において,重篤な副作用ではないものの,1 例で中止に至った副作用として腎不
全が報告されたことから,以下に記載した。
腎不全を発症した症例は,前治療であるネビラピン+TVD から本剤投与へ切り替えた。本症例のクレア
チニンクリアランスは,ベースライン時において 48.6 mL/min であり,投与 28 日目に 30.0 mL/min まで
- 65 -
低下したため,腎不全と判断された。その後のクレアチニンクリアランスの経過は,投与 55 日目に
37.2 mL/min,投与 83 日目に 37.2 mL/min であった。本症例はサブスタディであるイオヘキソールクリア
ランスの測定対象であったため,イオヘキソールを用いた GFR 実測値(aGFR)も測定されており,ベ
ースライン時において 34.5 mL/min であったが,投与 28 日目に 19.9 mL/min まで低下していた。イオヘ
キソールを用いた aGFR の結果により投与 83 日目に本剤の投与を中止し,ネビラピン+TVD に変更し
た。その後,本剤切り替え時から 153 日目にクレアチニンクリアランスは 44.4 mL/min まで回復したた
め,本事象は回復したと判断された。なお,本症例はベースライン時に高血圧を合併しており,収縮期/
拡張期の血圧値は,ベースライン時に 150/90 mmHg,投与 6 日目に 144/96 mmHg 及び投与 13 日目に
151/93 mmHg と高値で推移し,投与 28 日目は 126/75 mmHg,投与 55 日目は 129/79 mmHg と低下した。
上記のことから,発現率が 1%未満ではあるものの,腎不全又は重度の腎機能障害について,注意喚起を
行った。
2) 乳酸アシドーシス
本剤の第 III 相臨床試験(292-0109 試験)において,乳酸アシドーシスが 1 例報告されている。本症例
は 40 歳女性で,投与 243 日目に乳酸アシドーシス(非重篤,Grade 2)が発現した。本事象は無処置に
て投与 255 日目に回復した。本剤との因果関係は否定されているものの,核酸系逆転写酵素阻害薬では
乳酸アシドーシスや重度の肝腫大(脂肪肝)が報告されているので,注意喚起を行った。
また国内では,本剤の類薬である TVD で乳酸アシドーシスが 1 例報告されている。報告された症例の
概略を以下に示す。
乳酸アシドーシスが報告された症例概略
性別
年齢
男性
30 歳代
患者
使用理由
(合併症)
HIV-1 感染症
(第 VIII 因子
欠乏症)
(C 型肝炎)
(肝硬変)
副作用
1 日投与量
投与期間
TVD
1錠
262 日間
経過及び処置
乳酸アシドーシス
ロピナビル(LPV)/RTV,3TC 及び d4T を投与し,乳酸アシドー
シスを発現した。そのため,3TC 及び d4T から TVD に変更した。
TVD 投与開始。
投与開始日
クレアチニン 1.22 mg/dL,BUN 10 mg/dL。
投与 230 日目
転倒し,右坐骨骨折のため入院。
投与 252 日目
腰椎圧迫骨折のため他院へ入院。
投与 261 日目
吐血及び下血発現。
投与 262 日目
尿量減少及び呼吸苦が発現。
すべての抗 HIV 薬及びスルファメトキサゾ
ール/トリメトプリム投与中止。
中止 1 日後
本院へ緊急転院。クレアチニン 7.1 mg/dL 認
め , 急 性 腎 不 全 と 診 断 。 ま た , CK 値
2,160 IU/L と上昇しており横紋筋融解症も
認める。アシドーシス状態(PH 7.133,PaO2
122 Torr,PaCO2 32.2 Torr)となり,乳酸値
の上昇も認められたため乳酸アシドーシス
と診断。血液透析により乳酸値は一時的に
低下するも再度上昇。
CK 値 152 IU/L に減少。
中止 4 日後
中止 17 日後
クレアチニン 6.4 mg/dL,BUN 65 mg/dL。
中止 18 日後
血液透析から持続的血液ろ過透析に変更す
るが,肝不全悪化により死亡。担当医師は
乳酸アシドーシスと TVD との関連性を可能
性ありと評価。
併用薬:LPV/RTV,スルファメトキサゾール/トリメトプリム
- 66 -
(3) その他の副作用
下記の副作用があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合は適切な処置を行
うこと。
頻度
2%以上
種類
2%未満
代謝及び栄養障害
食欲減退
精神障害
不眠症,異常な夢
神経系障害
頭痛,浮動性めまい
傾眠
胃腸障害
悪心,下痢,放屁
腹部膨満,嘔吐,腹痛,上腹部痛,便秘,
消化不良
皮膚及び皮下組織障害
発疹
筋骨格系及び結合組織障害
骨減少症,骨粗鬆症
腎及び尿路障害
蛋白尿
一般・全身障害及び投与部位の
疲労
状態
(解説)
本剤の第 III 相臨床試験(292-0104/0111 試験及び 292-0109 試験)における,投与後 96 週時の副作用一覧に
ついては,「(4) 項目別副作用発現頻度及び臨床検査値異常一覧」の項を参照すること。
(4) 項目別副作用発現頻度及び臨床検査値異常一覧
本剤の第 III 相臨床試験(292-0104/0111 試験及び 292-0109 試験)における,投与後 96 週時の副作用一覧を
示す。
副作用一覧(292-0104/0111 試験及び 292-0109 試験)
治療経験があり,ウイルス学的に
治療経験がない HIV-1 感染症患者
対象患者群
抑制されている HIV-1 感染症患者
(292-0104/0111 試験)
(292-0109 試験)
866 例
959 例
安全性解析対象症例数
367 例(42.38%)
204 例(21.27%)
副作用発現症例数
対象患者群
副作用の種類
感染症および寄生虫症
鼻咽頭炎
毛包炎
口腔ヘルペス
陰部ヘルペス
ジアルジア症
インフルエンザ
歯周炎
咽頭炎
ヘルペス性直腸炎
上気道感染
ウイルス感染
赤痢菌感染
白癬感染
梅毒
ブドウ球菌皮膚感染
発現例数(%)
治療経験があり,ウイルス学的に
治療経験がない HIV-1 感染症患者
抑制されている HIV-1 感染症患者
(292-0104/0111 試験)
(292-0109 試験)
2(0.23)
2(0.23)
2(0.23)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.12)
1(0.12)
- 67 -
発現例数(%)
治療経験があり,ウイルス学的に
治療経験がない HIV-1 感染症患者
抑制されている HIV-1 感染症患者
副作用の種類
(292-0104/0111 試験)
(292-0109 試験)
良性,悪性および詳細不明の新生物(嚢胞及びポリープを含む)
1(0.10)
乳頭腫
血液およびリンパ系障害
4(0.46)
5(0.52)
好中球減少症
5(0.58)
リンパ節症
2(0.23)
貧血
2(0.23)
リンパ節炎
1(0.12)
リンパ球増加症
1(0.12)
小球性貧血
1(0.12)
正色素性正球性貧血
免疫系障害
1(0.12)
季節性アレルギー
内分泌障害
1(0.12)
甲状腺腫
1(0.10)
副甲状腺機能亢進症
1(0.12)
甲状腺嚢腫
代謝および栄養障害
13(1.50)
5(0.52)
食欲減退
3(0.35)
6(0.63)
高コレステロール血症
6(0.69)
2(0.21)
食欲亢進
4(0.46)
3(0.31)
脂質異常症
3(0.35)
3(0.31)
ビタミンD欠乏
3(0.35)
2(0.21)
高脂血症
3(0.35)
1(0.10)
高トリグリセリド血症
2(0.21)
肥満
1(0.12)
耐糖能障害
1(0.10)
痛風
1(0.12)
低リン酸血症
1(0.12)
ケトーシス
精神障害
17(1.96)
10(1.04)
不眠症
14(1.62)
12(1.25)
異常な夢
4(0.46)
4(0.42)
悪夢
3(0.35)
3(0.31)
うつ病
4(0.46)
2(0.21)
睡眠障害
3(0.35)
2(0.21)
気分動揺
2(0.23)
1(0.10)
不安
2(0.23)
1(0.10)
リビドー減退
1(0.12)
1(0.10)
初期不眠症
1(0.10)
攻撃性
1(0.10)
激越
1(0.10)
無感情
1(0.10)
錯乱状態
1(0.12)
抑うつ気分
1(0.12)
失見当識
1(0.10)
リビドー消失
1(0.12)
中期不眠症
1(0.12)
気分変化
1(0.10)
パニック発作
1(0.12)
落ち着きのなさ
1(0.10)
感情不安定
対象患者群
- 68 -
対象患者群
副作用の種類
神経系障害
頭痛
浮動性めまい
傾眠
注意力障害
味覚異常
錯感覚
末梢性ニューロパチー
健忘
感覚鈍麻
嗜眠
記憶障害
灼熱感
体位性めまい
頭部不快感
知覚過敏
反射減弱
精神的機能障害
片頭痛
嗅覚錯誤
会話障害
振戦
視野欠損
睡眠の質低下
眼障害
霧視
眼痛
眼刺激
眼乾燥
視力低下
眼充血
視力障害
硝子体浮遊物
硝子体炎
眼そう痒症
眼瞼発疹
耳および迷路障害
回転性めまい
心臓障害
心房細動
動悸
上室性期外収縮
頻脈
血管障害
高血圧
ほてり
高血圧クリーゼ
血液量減少性ショック
呼吸器,胸郭および縦隔障害
鼻漏
咳嗽
呼吸困難
しゃっくり
咽喉刺激感
逆流性喉頭炎
発現例数(%)
治療経験があり,ウイルス学的に
治療経験がない HIV-1 感染症患者
抑制されている HIV-1 感染症患者
(292-0104/0111 試験)
(292-0109 試験)
53(6.12)
26(3.00)
9(1.04)
1(0.12)
4(0.46)
4(0.46)
2(0.23)
1(0.12)
1(0.12)
2(0.23)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
17(1.77)
11(1.15)
6(0.63)
8(0.83)
2(0.21)
2(0.21)
2(0.21)
2(0.21)
2(0.21)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.12)
1(0.10)
1(0.12)
4(0.46)
4(0.46)
2(0.23)
2(0.23)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
2(0.21)
1(0.12)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.12)
4(0.46)
4(0.46)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.10)
2(0.23)
1(0.10)
1(0.12)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.12)
- 69 -
対象患者群
副作用の種類
胃腸障害
悪心
下痢
放屁
腹部膨満
嘔吐
腹痛
上腹部痛
便秘
消化不良
口内乾燥
腹部不快感
胃食道逆流性疾患
軟便
下腹部痛
嚥下障害
排便回数増加
腹部硬直
おくび
硬便
胃炎
歯肉退縮
舌痛
過敏性腸症候群
口唇乾燥
口腔内痛
肛門周囲痛
レッチング
舌潰瘍
歯の障害
肛門性器異形成
空気嚥下
胃腸音異常
肛門直腸不快感
肝胆道系障害
肉芽腫性肝疾患
脂肪肝
肝炎
肝毒性
発現例数(%)
治療経験があり,ウイルス学的に
治療経験がない HIV-1 感染症患者
抑制されている HIV-1 感染症患者
(292-0104/0111 試験)
(292-0109 試験)
90(10.39)
63(7.27)
20(2.31)
14(1.62)
16(1.85)
12(1.39)
11(1.27)
7(0.81)
4(0.46)
7(0.81)
5(0.58)
2(0.23)
3(0.35)
2(0.23)
2(0.23)
2(0.23)
22(2.29)
24(2.50)
17(1.77)
9(0.94)
7(0.73)
3(0.31)
2(0.21)
5(0.52)
6(0.63)
2(0.21)
1(0.10)
2(0.21)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.10)
1(0.12)
- 70 -
対象患者群
副作用の種類
皮膚および皮下組織障害
発疹
ざ瘡
そう痒症
寝汗
脱毛症
接触性皮膚炎
多汗症
全身性皮疹
斑状丘疹状皮疹
蕁麻疹
後天性リポジストロフィー
皮膚炎
ざ瘡様皮膚炎
アレルギー性皮膚炎
皮膚乾燥
過角化
爪変色
光線過敏性反応
紅斑性皮疹
麻疹様発疹
そう痒性皮疹
脂漏性皮膚炎
顔のやせ
苔癬様角化症
筋骨格系および結合組織障害
骨減少症
骨粗鬆症
関節痛
筋肉痛
背部痛
筋痙縮
四肢痛
筋骨格痛
関節障害
関節腫脹
筋萎縮
頚部痛
顎痛
関節周囲炎
肩回旋筋腱板症候群
変形性脊椎症
筋骨格系胸痛
筋骨格硬直
腎および尿路障害
蛋白尿
頻尿
多尿
血尿
尿意切迫
排尿回数減少
尿路の炎症
発現例数(%)
治療経験があり,ウイルス学的に
治療経験がない HIV-1 感染症患者
抑制されている HIV-1 感染症患者
(292-0104/0111 試験)
(292-0109 試験)
15(1.73)
7(0.81)
4(0.46)
3(0.35)
2(0.23)
2(0.23)
2(0.23)
1(0.12)
2(0.23)
1(0.12)
2(0.23)
2(0.21)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.10)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.12)
25(2.89)
6(0.69)
5(0.58)
3(0.35)
3(0.35)
4(0.46)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
11(1.15)
4(0.42)
2(0.21)
4(0.42)
1(0.10)
3(0.31)
1(0.10)
1(0.10)
8(0.92)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.12)
7(0.73)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.12)
- 71 -
対象患者群
副作用の種類
発現例数(%)
治療経験があり,ウイルス学的に
治療経験がない HIV-1 感染症患者
抑制されている HIV-1 感染症患者
(292-0104/0111 試験)
(292-0109 試験)
生殖系および乳房障害
勃起不全
女性化乳房
乳房腫瘤
月経過多
乳頭痛
陰茎痛
腟出血
一般・全身障害および投与部位の状態
疲労
無力症
疼痛
発熱
悪寒
空腹
倦怠感
末梢腫脹
異常感
酩酊感
宿酔
インフルエンザ様疾患
口渇
非心臓性胸痛
臨床検査
血中クレアチニン増加
骨密度減少
腎クレアチニン・クリアランス減少
血中クレアチンホスホキナーゼ増加
体重増加
血中コレステロール増加
リパーゼ増加
低比重リポ蛋白増加
アミラーゼ増加
血中トリグリセリド増加
糸球体濾過率減少
リンパ節触知
肝酵素上昇
傷害,中毒および処置合併症
麦角中毒
サンバーン
腱断裂
関節損傷
3(0.35)
1(0.12)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.12)
1(0.10)
1(0.12)
1(0.10)
44(5.08)
4(0.46)
2(0.23)
4(0.46)
3(0.35)
2(0.23)
1(0.12)
1(0.12)
10(1.04)
2(0.21)
2(0.21)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.10)
1(0.12)
5(0.58)
4(0.46)
3(0.35)
1(0.12)
1(0.12)
4(0.42)
2(0.21)
2(0.21)
2(0.21)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.12)
1(0.12)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.10)
1(0.12)
1(0.10)
1(0.12)
MedDRA/J version(18.0)
(5) 基礎疾患,合併症,重症度及び手術の有無等背景別の副作用発現頻度
該当資料なし
(6) 薬物アレルギーに対する注意及び試験法
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
(抜粋)
(1) 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 72 -
9. 高齢者への投与
本剤の高齢者における薬物動態は検討されていない。本剤の投与に際しては,患者の肝,腎及び心機能
の低下,合併症,併用薬等を十分に考慮すること。
(解説)
高齢者を対象とした本剤の薬物動態試験は実施されていない。また,臨床試験等で高齢者における有効性,
安全性についての検討も行われていないため,一般的な注意を記載した。
一般的に,高齢者では生理機能が低下しているため,本剤の代謝や排泄が遅延し,副作用が増強される可
能性があることから,副作用の症状等について十分に観察しながら慎重に投与すること。
10. 妊婦,産婦,授乳婦等への投与
(1) 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に
のみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立されていない。動物試験(サル)において
テノホビルの胎児への移行が報告されている 87)。
]
(2) 本剤服用中は授乳を中止させること。[テノホビル及びエムトリシタビンのヒト乳汁への移行が報告
されている 88)。なおエルビテグラビル,コビシスタット及びテノホビルアラフェナミドのヒト乳汁へ
の移行は不明である。動物実験(ラット)においてエルビテグラビル及びコビシスタットの乳汁への
移行が報告されている。また,女性の HIV 感染症患者は,乳児の HIV 感染を避けるため,乳児に母
乳を与えないことが望ましい。
]
(解説)
(1) 妊婦又は妊娠している可能性のある女性に対する本剤の安全性は確立されていないため,本剤を使用す
る場合は,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すること。
EVG のラット及びウサギにおける生殖毒性試験では,臨床用量の 0.2~23 倍に相当する用量が投与され
たが,受胎能の障害や胎児への有害な影響は認められなかった。
COBI のラット及びウサギにおける生殖毒性試験では,臨床用量の 1.8~4.3 倍に相当する用量が投与さ
れたが,受胎能の障害や胎児への有害な影響は認められなかった。
FTC のマウス及びウサギにおける生殖毒性試験では,AUC 換算で臨床用量の 60~120 倍に相当する用量
が投与されたが,受胎能の障害や胎児への有害な影響は認められなかった。
TAF フマル酸塩のウサギ及びラットにおける生殖毒性試験では,体表面積換算で臨床用量の 36~71 倍に
相当する用量まで受胎能の障害や胎児への有害な影響は認められなかった。
TAF フマル酸塩の代謝物である TFV を妊娠後 111 日目のアカゲザルに 30 mg/kg/日の用量で皮下投与し
た際,妊娠後 115 日,127 日,134 日,140 日及び 151 日目の母体に対する胎児の血清中 TFV 濃度比は
0.17 ± 0.07(平均 ± 標準偏差)であり,TFV の胎児への移行が認められている。
なお,本剤は FDA の妊娠時の投与における危険度分類基準で,カテゴリーB に位置づけられている。
カテゴリーB:動物生殖試験では胎仔への危険性は否定されているが,ヒト妊婦での対照試験は実施されていない
もの。あるいは,動物生殖試験で有害な作用(又は出生数の低下)が証明されているが,ヒトでの
妊娠初期 3 ヵ月の対照試験では実証されていない,またその後の妊娠期間でも危険であるという証
拠はないもの。
(2) 海外の臨床試験において,FTC 及び TFV のヒト母乳中への分泌が報告されている
。5 例の妊婦に対
18)
し,陣痛発現時にネビラピン 200 mg,FTC 400 mg 及び TDF 600 mg を単回投与し,出産後に FTC 200 mg
- 73 -
及び TDF 300 mg を 1 日 1 回 7 日間投与して,母親の乳汁中及び血中の FTC 及び TFV を測定した。さら
に,乳児における FTC 及び TFV の血中濃度を推測した。その結果,乳汁中の FTC の最高濃度及び最低
濃度は,それぞれ 679 ng/mL 及び 177 ng/mL であった。また,TFV の最高濃度及び最低濃度は,それぞ
れ 14.1 ng/mL 及び 6.8 ng/mL であった。これら乳汁中の濃度(中央値)と母乳量を基に,乳児が授乳時
に摂取する FTC と TFV 量を算出した結果,
母親の 1 日経口投与量のそれぞれ 2%及び 0.03%に相当した。
母乳は HIV 伝播の媒体となり得るため,HIV に感染した母親は授乳しないよう注意する必要がある。ま
た,授乳を受けた乳児において本剤による重篤な副作用を発現する可能性があるため,授乳中の患者に
対して本剤服用中は授乳を中止させるよう指導すること。
11. 小児等への投与
低出生体重児,新生児,乳児,幼児,12 歳未満又は体重 35 kg 未満の小児に対する安全性は確立してい
ない。
(解説)
本剤は,18 歳以上の患者を対象とした臨床試験成績の他に,12 歳以上 18 歳未満で体重 35 kg 以上の HIV-1
感染症患者を対象とした第 II/III 相臨床試験(292-0106 試験)を実施した。本試験の結果から,小児患者に
おいて用量調節は不要と判断されたが,低出生体重児,新生児,乳児,幼児,12 歳未満又は体重 35 kg 未
満の小児における本剤の用法・用量については確立しておらず,有効性及び安全性は確認されていない。
12. 臨床検査結果に及ぼす影響
特になし
13. 過量投与
本剤の過量投与に関するデータは限られている。過量投与時に特有の徴候や症状は不明である。過量投
与時には,本剤の副作用(
「副作用」の項参照)について十分に観察を行い,必要に応じ一般的な対症療
法を行うこと。エムトリシタビン及びテノホビルは血液透析により一部除去される。エルビテグラビル
及びコビシスタットは血漿蛋白との結合率が高いため,血液透析又は腹膜透析による除去は有用ではな
いと考えられる。
(解説)
本剤を過量投与した際の,特有の徴候や症状は不明である。また,本剤の解毒剤は知られていない。
過量投与の場合は,患者の安全性を考慮し,必要に応じて対症療法等の処置を行うこと。
14. 適用上の注意
粉砕時の安定性データは得られていないため,本剤を粉砕して使用しないこと。
(解説)
本剤を粉砕した際の安定性データは得られていないため,本剤を粉砕して投与しないこと。
- 74 -
15. その他の注意
健康被験者あるいは軽度から中等度の腎機能障害を有する被験者の腎機能(GFR)に及ぼすコビシスタ
ットの影響を検討した。イオヘキソールクリアランスは変化がなかったが,血清クレアチニン値を用い
た推算クレアチニンクリアランス及び 24 時間内因性クレアチニンクリアランスはプラセボに比べ最大
で約 28%低下した。なお,健康被験者で腎血漿流量を測定したところ,変化はなかった。
(解説)
健康被験者の腎機能に及ぼす影響について,COBI 150 mg 投与群,TDF 300 mg 投与群,COBI 150 mg 及び
TDF 300 mg 併用投与群,STB 投与群,又はプラセボ群を設定し,それぞれ 30 日間反復投与し検討した
(236-0130 試験)
。投与 15 日目及び投与 30 日目に,イオヘキソールを用いて GFR 実測値(aGFR)を,
血清クレアチニンを用いてクレアチニンクリアランス及び 24 時間内因性クレアチニンクリアランス
(24
時間内因性 CLcr)を,パラアミノ馬尿酸のクリアランスを用いて腎血漿流量及び腎血液流量を算出した。
aGFR は,いずれの群においてもほとんど変化が認められなかった。クレアチニンクリアランス及び 24 時
間内因性 CLcr はプラセボに比べ最大で約 28%低下した。パラアミノ馬尿酸のクリアランスより腎血漿流量
及び腎血液流量を算出したところ,いずれの投与群においても腎血漿流量及び腎血液流量は,ほとんど変
化が認められなかった。
また,腎機能正常者(クレアチニンクリアランス 80 mL/min 以上)及び軽度から中等度の腎機能障害があ
る(クレアチニンクリアランス 50 mL/min 以上 79 mL/min 未満)被験者の腎機能に及ぼす影響について,
COBI 150 mg を 7 日間反復投与し,投与 0 日目,7 日目及び 14 日目に,血清クレアチニンを用いてクレア
チニンクリアランスを,イオヘキソールを用いて aGFR を算出した
89)
。投与 7 日目のクレアチニンクリア
ランスは有意な低下(p<0.05)が認められたが,投与中止により速やかに回復した。一方,aGFR はいずれ
の投与群においても有意な変化は認められなかった。
COBI 投与例における評価時点ごとの GFR のベースラインからの変化
16. その他
該当しない
- 75 -
IX. 非臨床試験に関する項目
1. 薬理試験
(1) 薬効薬理試験(「VI. 薬効薬理に関する項目」参照)
(2) 副次的薬理試験
テノホビルは B 型肝炎ウイルス(HBV)に対し抗ウイルス活性を示す。
HepG2 2.2.15 細胞及び HB611 細胞を用いて野生型 HBV に対するテノホビルの抗ウイルス活性を検討した
ところ,EC50 値はそれぞれ 1.1 μM 及び 2.5 μM であった。テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩はテノ
ホビルに比べさらに強力な抗ウイルス活性を示した(EC50 値=0.02 μM HepG2 2.2.15 細胞)
。
テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を長期間服薬した HBV/HIV 共感染患者において rtA194T 変異が認
められたことから,rtA194T 単独変異又はラミブジン耐性変異(rtL180M,rtM204V)との複合変異を持つ
HBV 株を用いてテノホビルの感受性を検討した。テノホビルの感受性は野生株に対してそれぞれ 1.5 倍又
は 2.4 倍低下した。
アデホビル耐性変異(rtN236T)を有する HBV 臨床分離株を用いてテノホビルの感受性を検討したところ,
テノホビルの感受性は野生株に対して 3.0~4.2 倍低下した。
(3) 安全性薬理試験 90)
エルビテグラビル:
試験項目
動物種
投与経路
投与量
ラット
単回
経口投与
100/300/2,000
mg/kg
HEK293 細胞
in vitro
0.1/1/10 μmol/L
10 μmol/L で hERG 電流の減少(24.3%)が認めら
れた。
モルモット
摘出乳頭筋
in vitro
0.1/1/3 μmol/L
活動電位パラメータに影響なし。
ビーグル犬
単回
経口投与
10/30/100
mg/kg
胃腸管系に
及ぼす影響
ラット
単回
経口投与
100/300/2,000
mg/kg
小腸内の炭末移動率に影響なし。
腎/泌尿器系
に及ぼす影響
ラット
単回
経口投与
100/300/2,000
mg/kg
尿量・尿中電解質(Na+,K+,Cl-)排泄量に影響
なし。
試験項目
動物種
投与経路
投与量
結果
中枢神経系に
及ぼす影響
ラット
単回経口
投与
50/150/500
mg/kg
150 mg/kg 以上で探索行動及び自発運動の減少,
流涎,体温低下,自発運動量の減少が認められた。
HEK293 細胞
in vitro
0.3/1/3/10
μmol/L
各濃度で hERG 電流の減少(各々3.2%,37.1%,
64.2%,89.5%,IC50 値は 1.8 μmol/L)が認められ
た。
HEK293 細胞
in vitro
hERG:0.1~10
hCav1.2:1~30
hNav1.5:
10~100 μmol/L
hERG チャネル,hCav1.2 チャネル,hNav1.5 チャ
ネルの阻害が認められた(IC50 値は各々1.85,5.99,
86.5 μmol/L)。
ウサギ摘出
プルキンエ
線維
in vitro
0.03/0.1/1/10
μmol/L
1 μmol/L 以上で活動電位持続時間(APD60,APD90)
の短縮が認められた。
ウサギ
摘出心臓
in vitro
0.3/1/3/10
μmol/L
1 μmol/L 以上で左室機能低下,単相性活動電位持
続時間の短縮が認められた。
3 μmol/L 以上で QT 間隔の短縮,PR 間隔及び RR
間隔の延長が認められた。
ビーグル犬
単回経口
投与
5/15/45 mg/kg
中枢神経系に
及ぼす影響
心血管系・
呼吸系に
及ぼす影響
結果
一般症状及び行動に影響なし。
血圧,心拍数,心電図,呼吸数,酸素飽和度に影
響なし。
コビシスタット:
心血管系に
及ぼす影響
- 76 -
血圧,心拍数,心電図に影響なし。
試験項目
動物種
投与経路
投与量
ラット
単回経口
投与
50/150/500
mg/kg
動物種
投与経路
投与量
マウス
単回経口
投与
ラット
単回経口
投与
250/500/1,000
mg/kg
覚醒ラット
単回経口
投与
250 mg/kg
麻酔
ビーグル犬
静脈内累積
投与
胃腸管系に
及ぼす影響
マウス
単回経口
投与
10/30/100 mg/kg 小腸内の炭末移動率に影響なし
腎/泌尿器系
に及ぼす影響
ラット
単回経口
投与
10/30/100 mg/kg
尿量,尿中電解質(Na+,K+,Cl-)排泄及び尿 pH
に影響なし。
呼吸系に
及ぼす影響
結果
呼吸数,1 回換気量,分時換気量に影響なし。
エムトリシタビン:
試験項目
中枢神経系に
及ぼす影響
心血管系及び
呼吸系に
及ぼす影響
結果
100/250/500/750 行動,反射,痛覚,直腸温,呼吸数,体重に影響
/1,000 mg/kg
なし。
行動,反射,痛覚,直腸温,呼吸数,体重に影響
なし。
収縮期血圧及び心拍数に影響なし。
1.0/2.5/5.0/10/20 平均血圧,心拍数,心電図(II 誘導),血圧反応,
mg/kg
呼吸数及び分時換気量に影響なし。
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:
試験項目
動物種
投与経路
投与量
結果
ラット
単回経口
投与
100/1,000 mg/kg
一般症状及び行動,自発運動活性に明らかな影響
なし。
HEK293 細胞
in vitro
1/10 μmol/L
hERG 電流の阻害作用なし。
イヌ
単回経口
投与
30/100 mg/kg
血圧,心拍数,心電図に影響なし。
ラット
単回経口
投与
100/1,000 mg/kg
1,000 mg/kg で,胃排出率の低下,炭末移動率の減
少。
ラット
単回経口
投与
100/1,000 mg/kg
腎機能に明らかな有害作用なし。
中枢神経系に
及ぼす影響
心血管系に
及ぼす影響
胃腸管系に
及ぼす影響
腎/泌尿器系
に及ぼす影響
(4) その他の薬理試験
該当しない
2. 毒性試験
(1) 単回投与毒性試験 91)
急性毒性
エルビテグラビル:
動物種
ラット
イヌ
性
雄,雌
雌
投与経路
経口
経口
概略の致死量 (mg/kg)
>2,000
>1,000
主な所見
特記すべき変化なし
1,000 mg/kg で嘔吐
動物種
ラット
性
雄,雌
投与経路
経口
概略の致死量 (mg/kg)
>500
主な所見
特記すべき変化なし
動物種
性
投与経路
最大耐量 (mg/kg)
マウス
雄,雌
経口
100
コビシスタット:
- 77 -
主な所見
300 mg/kg で円背位,活動量の低下,
閉眼及び瀕死状態
エムトリシタビン:
動物種
ラット
マウス
性
雄,雌
雄,雌
投与経路
経口
経口
概略の致死量 (mg/kg)
>4,000
>4,000
主な所見
特記すべき変化なし
特記すべき変化なし
主な所見
1,000 mg/kg で軽度の体重増加抑制
270 mg/kg(雄)で嘔吐,流涎,活動量
の低下,振戦及び衰弱
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:
動物種
ラット
性
雄,雌
投与経路
経口
概略の致死量 (mg/kg)
>1,000
イヌ
雄,雌
経口
>270
(2) 反復投与毒性試験 91)
エルビテグラビル:
動物種
投与期間
/投与経路
投与量
(mg/kg/日)
無毒性量
(mg/kg/日)
マウス
13 週/経口
100/500/2,000
2,000
2,000 mg/kg(雌)で体重増加量の軽度減少
主な所見
ラット
6 ヵ月/経口
100/300/2,000
>2,000
300 mg/kg 以上で流涎,2,000 mg/kg で白色便
100 mg/kg(雄),300 mg/kg(雄)及び 2,000 mg/kg(雌雄)
で盲腸重量の増加
100 mg/kg以上で十二指腸及び空腸の粘膜固有層に軽微か
ら中等度の脂肪滴/脂肪空胞
2,000 mg/kg で高濃度の被験物質への長期間曝露による腺
胃粘膜びらん及び軽度粘膜線維化
イヌ
9 ヵ月/経口
10/30/100
>100
30 mg/kg 以上で上部小腸の粘膜固有層に軽微から軽度の
脂肪滴/脂肪空胞
(以上の変化は 3 ヵ月間の休薬により回
復)
主な所見
コビシスタット:
動物種
投与期間
/投与経路
投与量
(mg/kg/日)
無毒性量
(mg/kg/日)
マウス
3 ヵ月/経口
5/15/50
5
50 mg/kg で肝 CYP2B 及び CYP3A 活性の顕著な上昇
15 mg/kg 以上(雄)で血中 ALT 及び AST 上昇
50 mg/kg(雄)で肝重量増加及び軽微な肝細胞肥大
30
100 mg/kg(雌)で死亡 2 例
100 mg/kg(雄)で体重増加量及び摂餌量の減少
100 mg/kg でヘモグロビン,ヘマトクリット,平均赤血球
容積(MCV)及び平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)の
軽微な減少,100 mg/kg(雄)で赤血球数の軽微な減少,
30 mg/kg(雄)及び 100 mg/kg(雌雄)で血小板数軽度増
加
30 mg/kg 以上で血中 GGT,コレステロール,総蛋白,ア
ルブミン,グロブリン及びカルシウムの軽度増加
100 mg/kg で尿量増加及び尿浸透圧/尿比重低下(抗利尿
ホルモン/アルドステロンは変化なし)
10 mg/kg 以上で血中 TSH 増加,100 mg/kg(雄)で T4 低
下
30 mg/kg(雌)及び 100 mg/kg(雌雄)で肝 CYP1A 及び
CYP3A 活性上昇
100 mg/kg で肝 CYP2C 活性低下(雄)及び上昇(雌)
30 mg/kg 以上で甲状腺及び肝重量の増加
10 mg/kg 1 例(雌),30 mg/kg 1 例(雌)及び 100 mg/kg
(雌雄)で甲状腺濾胞細胞肥大(内 100 mg/kg 1 例で甲状
腺濾胞細胞癌),10 mg/kg 以上で小葉中心性肝細胞肥大
(肝及び甲状腺の変化は,
いずれもミクロソーム酵素誘導
-甲状腺ホルモン・インバランスに対する適応性変化)
(以上の変化は 13 週間の休薬により回復)
ラット
26 週/経口
10/30/100
- 78 -
動物種
イヌ
投与期間
/投与経路
39 週/経口
投与量
(mg/kg/日)
無毒性量
(mg/kg/日)
主な所見
5/10/20
10
20 mg/kg で流涎,嘔吐及び便性状の変化,体重減少
10 mg/kg(雌,投与 26 週目のみ)及び 20 mg/kg(雌雄,
投与 13,26 及び 39 週目)で軽度血小板数増加
20 mg/kg で軽度の血中総蛋白減少(雄),アルブミン減
少(雄),ALP 上昇(雌雄)
20 mg/kg で軽度尿量増加(雌),尿浸透圧/尿比重低下
(雌),ビリルビン尿発現頻度増加(雄)
10 及び 20 mg/kg で肝重量増加及び軽微肝細胞肥大
(以上の変化は 13 週間の休薬により回復)
投与量
(mg/kg/日)
無毒性量
(mg/kg/日)
主な所見
エムトリシタビン:
動物種
投与期間
/投与経路
3,000 mg/kg(雌)で赤血球数低下,MCH,MCV 及び赤
マウス
6 ヵ月/経口
120/600/3,000
600
血球分布幅増加,尿量増加,甲状腺重量増加
(以上の変化は 3 週間の休薬により回復)
ラット
3 ヵ月/経口
120/600/3,000
600
サル
1 年/経口
50/200/500
200
3,000 mg/kg で軽度貧血,下垂体及び甲状腺重量の低値
500 mg/kg(雌)で軽度赤血球数低下,MCH 増加
(以上の変化は 4 週間の休薬により回復)
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:
動物種
投与期間
/投与経路
投与量
(mg/kg/日)
無毒性量
(mg/kg/日)
主な所見
10 mg/kg 以上で軽微~軽度の鼻甲介の気道・嗅粘膜の好
マウス
13 週/経口
10/30/100
<10
中球浸潤,軽微~中等度の嗅上皮の変性(雌雄)
100 mg/kg で軽微な直腸粘膜上皮のアポトーシスの増加
(雌雄)
100 mg/kg で軽微な尿細管上皮細胞の巨核化(雌雄),骨
ラット
26 週/経口
5/25/100
25
密度の変化(雌雄),軽微~軽度の脛骨海綿骨萎縮(雌)
25 mg/kg 以上で骨代謝マーカーの変化(雌雄)
18/12 mg/kg で骨代謝マーカーの変化,体重減少による二
次的な骨成長の変化,
全身状態の悪化に起因したと思われ
る眼球(脈絡膜・毛様体)・肺・脾臓の組織球浸潤:いず
イヌ
9 ヵ月/経口
れの所見も 3 ヵ月間の休薬により消失あるいは軽減
2/6/
2
18 (18→12*)
6 mg/kg 以上で体重減少(雄),軽度な PR 間隔及び QT
間隔の延長(血清中 T3 濃度の顕著な減少に関連する可能
性あり)(雌雄),用量依存的な血液学的及び血液生化学
的パラメータの変化(雌雄),尿細管上皮細胞の変性/好
塩基性変化及び巨核化(雌雄)
*:18 mg/kg 群は,重篤な全身状態の悪化により,雄は投与 45 日目及び雌は 51 日目に用量を 12 mg/kg に変更し,投与を継続した。
(3) 生殖発生毒性試験 91)
エルビテグラビル:
1) 受胎能及び着床までの初期胚発生に関する試験
雌ラット受胎能及び初期胚発生に関する試験
雌ラットに 300,1,000 及び 2,000 mg/kg/日の用量で交配 2 週間前から妊娠 7 日まで反復経口投与し
た結果,受胎能及び初期胚発生への影響は認められなかった。
- 79 -
雄ラット受胎能に関する試験
雄ラットに 300,1,000 及び 2,000 mg/kg/日の用量で交配 4 週間前から交配期間(最大 3 週間)を含
めて反復経口投与した結果,受胎能への影響は認められなかった。
2) 胚・胎児発生に関する試験
ラットを用いた胚・胎児発生に関する試験
妊娠ラットに 300,1,000 及び 2,000 mg/kg/日の用量で妊娠 7 日から 17 日まで反復経口投与した結
果,母動物及び胚・胎児に影響は認められなかった。
ウサギを用いた胚・胎児発生に関する試験
妊娠ウサギに 50,150 及び 450 mg/kg/日の用量で妊娠 7 日から 19 日まで反復経口投与した結果,
母動物において 150 mg/kg/日以上の群で妊娠後期(投与終了後)に体重増加量の抑制及び摂餌量
の減少がみられたが,胚・胎児への影響は認められなかった。
3) 出生前及び出生後の発生並びに母体の機能に関する試験
ラットに 300,1,000 及び 2,000 mg/kg/日の用量で妊娠 7 日から授乳 20 日まで反復経口投与した結果,
母動物及び出生児(F1 世代)に対する影響は認められなかった。
コビシスタット:
1) 受胎能及び着床までの初期胚発生に関する試験
雌雄ラットに 10,30 及び 100 mg/kg/日の用量で交配 4 週間前(雌は 2 週間前)から妊娠 7 日(雌)
まで反復経口投与した結果,100 mg/kg/日群の雌雄動物で体重及び摂餌量の減少が認められたが,受
胎能及び初期胚発生への影響は認められなかった。
2) 胚・胎児発生に関する試験
ラットを用いた胚・胎児発生に関する試験
妊娠ラットに 25,50 及び 125 mg/kg/日の用量で妊娠 6 日から 17 日まで反復経口投与した結果,
125 mg/kg/日群において母動物の体重の減少,体重増加量の抑制,摂餌量の減少,活動量の低下及
び脱毛等が認められた。同用量では,子宮相対重量の減少,生存胎児数の減少,着床後胚死亡率
の増加,胎児体重の減少が認められたが,いずれも母動物の体重減少による二次的な変化と考え
られた。いずれの用量においても催奇形性を示唆する変化は認められなかった。
ウサギを用いた胚・胎児発生に関する試験
妊娠ウサギに 25,50 及び 100 mg/kg/日の用量で妊娠 7 日から 20 日まで反復経口投与した結果,
100 mg/kg/日群において母動物にごく軽度の体重増加量の抑制及び摂餌量の減少が認められたが,
平均体重に溶媒対照群と比較して差は認められなかった。いずれの用量においても胚・胎児発生
への影響は認められなかった。
3) 出生前及び出生後の発生並びに母体の機能に関する試験(幼若動物への直接投与を含む)
ラットに 10,30 及び 75 mg/kg/日の用量で妊娠 6 日から分娩後 20~22 日まで反復経口投与した結果,
母動物では 75 mg/kg/日群において,体重の減少,体重増加量の抑制及び摂餌量の減少が妊娠 6~11
日に認められ,また授乳期間中の体重の低値が認められた。出生児(F1 世代)に対する影響は認め
られなかった。
エムトリシタビン:
1) 受胎能及び着床までの初期胚発生に関する試験
雄ラット受胎能に関する試験
雄ラットに 150,750 及び 3,000 mg/kg/日の用量で経口投与した結果,生殖能,精子検査及び生殖
器官の病理組織学的検査で影響は認められなかった。
マウス受胎能及び着床までの初期胚発生に関する試験
雌雄マウスに 250,500,1,000 mg/kg/日の用量で経口投与した結果,雌雄の受胎能及び初期胚発生
- 80 -
に対して影響は認められなかった。
2) 胚・胎児発生に関する試験
マウスを用いた胚・胎児発生に関する試験
妊娠マウスに 250,500,1,000 mg/kg/日の用量で妊娠 6 日から 15 日まで経口投与した結果,母動
物及び胚・胎児に影響は認められなかった。
ウサギを用いた胚・胎児発生に関する試験
妊娠ウサギに 100,300 及び 1,000 mg/kg/日の用量で妊娠 7 日から 19 日まで経口投与した結果,
300 mg/kg/日以上で母動物の体重減少がみられたが,胚・胎児に影響は認められなかった。
3) 出生前及び出生後の発生並びに母体の機能に関する試験
マウスに 250,500 及び 1,000 mg/kg/日の用量で妊娠 6 日から分娩を経て授乳第 20 日まで経口投与し
た結果,母動物及び出生児(F1 世代)の生存,成長,発達及び生殖能並びにその出生児(F2 世代)
に影響は認められなかった。
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:
1) 受胎能及び着床までの初期胚発生に関する試験
雌雄ラットに 20,80 及び 160 mg/kg/日の用量で雄は交配 4 週間前から交配期間を通じて定期解剖ま
で,雌は交配 2 週間前から交配期間を通じて妊娠 7 日(雌)まで反復経口投与した結果,160 mg/kg/
日の雌雄動物で体重及び摂餌量の減少がみられたが,受胎能及び初期胚発生への影響は認められな
かった。
2) 胚・胎児発生に関する試験
ラットを用いた胚・胎児発生に関する試験
妊娠ラットに 25,100 及び 250 mg/kg/日の用量で妊娠 6 日から 17 日まで反復経口投与した結果,
250 mg/kg/日で母動物の体重及び摂餌量の減少,並びに胎児体重の減少がみられたが,胚・胎児の
生存に影響はみられず,催奇形作用も認められなかった。
ウサギを用いた胚・胎児発生に関する試験
妊娠ウサギに 10,30 及び 100 mg/kg/日の用量で妊娠 7 日から 20 日まで反復経口投与した結果,
100 mg/kg/日で母動物の体重及び摂餌量の減少がみられたが,胚・胎児に対する影響は認められな
かった。
(4) その他の特殊毒性 91)
エルビテグラビル:
1) 免疫毒性
ラット 28 日間試験において雌雄 SD ラットに 0(溶媒)
,300,1,000 及び 2,000 mg/kg/日を反復経口
投与し,SRBC(sheep red blood cell)免疫による抗体産生能及びリンパ球サブセット解析を実施した
結果,免疫毒性を示唆する変化は認められなかった。
2) 遺伝毒性(in vitro,in vivo)
細菌を用いた復帰突然変異,CHL 細胞を用いた染色体異常試験及び in vivo ラット骨髄小核試験を実
施した。染色体異常試験において,S9 非存在下の 6 時間処理で染色体構造異常の軽度な増加(疑陽
性)がみられたが,in vivo 試験であるラット骨髄小核試験の結果は陰性であった。また細菌を用い
た復帰突然変異試験の結果は陰性であった。
3) がん原性(マウス,ラット)
長期がん原性試験において,マウスでは 2,000 mg/kg/日(150 mg/日の治療用量で得られるヒト全身曝
露量の 2.4~3.8 倍)まで,ラットでは 2,000 mg/kg/日(治療用量でのヒト全身曝露量の 12~27 倍)
までを反復経口投与した結果,発がん性は認められなかった。また,マウスでは CYP3A 阻害剤であ
- 81 -
るリトナビルと併用投与することによりエルビテグラビルの曝露量が大幅に増加したことから,マ
ウスの試験において,高用量のエルビテグラビル(2,000 mg/kg/日)とリトナビル(25 mg/kg/日)の
併用投与も行った。その結果,治療用量で得られるヒト全身曝露量の約 14 倍の曝露量(エルビテグ
ラビル)においても,腫瘍発生率の上昇は認められなかった。
4) 局所刺激性及び光毒性
ウサギを用いた皮膚刺激性試験の結果は陰性であり,皮膚刺激性は認められなかった。また in vitro
試験のウシ角膜を用いた混濁度及び透過性試験の結果は陰性であり,眼粘膜刺激性は示さないもの
と考えられた。マウスを用いた光毒性試験の結果は陰性であり,光毒性はなかった。
コビシスタット:
1) 免疫毒性
ラット 4 週間免疫毒性試験の結果,50 mg/kg/日以上を投与した雌では注入抗原[キーホールリンペ
ットヘモシアニン]に対する T 細胞依存性 IgG 抗体産生の低下が示された。同様の変化は,雄では
認められなかった。このほか,一般状態変化,体重増加量/摂餌量の減少,肝臓及び甲状腺の重量
増加,脾臓の胚中心のリンパ枯渇が 50 mg/kg/日及び 150 mg/kg/日群で認められたことから,この試
験での無毒性量は雌雄において 20 mg/kg/日であった。ラット 26 週間及びイヌ 39 週間反復経口投与
毒性試験では,末梢血細胞の免疫表現型検査により,いかなる有害作用も示されなかったことから,
免疫毒性の可能性は低いと考えられた。
2) 遺伝毒性(in vitro,in vivo)
細菌を用いた復帰突然変異試験,マウスリンフォーマ TK 試験及び in vivo ラット骨髄小核試験を実
施した結果,いずれの試験結果も陰性であり遺伝毒性は認められなかった。
3) がん原性(マウス,ラット)
マウス 104 週間強制経口投与がん原性試験(雄 5,15,50 mg/kg/日,雌 10,30,100 mg/kg/日)にお
いて,コビシスタット投与に起因した腫瘍発生率の上昇は認められなかった。最高用量におけるコ
ビシスタットの全身曝露量は,150 mg/日の治療用量で得られるヒト全身曝露量の 9 倍(雄)及び 21
倍(雌)であった。
ラット 104 週間強制経口投与がん原性試験(雄 10,25,50 mg/kg/日,雌 5,15,30 mg/kg/日)では,
雄の 25 及び 50 mg/kg/日及び雌の 30 mg/kg/日で甲状腺濾胞細胞腺腫又は濾胞細胞癌の増加が認めら
れた。本甲状腺濾胞細胞における所見は,ラット特異的に生じる肝ミクロソーム酵素誘導と甲状腺
ホルモンの不均衡による二次的変化であり,ヒトへの外挿性はほとんどないと考えられる。コビシ
スタットは,ラットにおいて PXR を種特異的に活性化することにより肝ミクロソーム酵素を誘導す
るが,この機構による酵素誘導はヒトでは生じない。従って,コビシスタットがヒトにおいて,肝
酵素誘導と甲状腺ホルモンの不均衡による二次的な甲状腺腫瘍を誘発する可能性はほとんどないと
考えられる。最高用量におけるコビシスタットの全身曝露量は,雌雄ともに 1 日有効用量である
150 mg 投与時のヒト全身曝露量の約 2.6 倍であった。
4) 局所刺激性及び光毒性
ウサギを用いた皮膚刺激性試験において軽度の刺激性を示したが,in vitro 試験のウシ角膜を用いた
混濁度及び透過性試験の結果は陰性であり,眼粘膜刺激性は示さないものと考えられた。また,そ
の光化学的特性からみて光毒性の懸念はないと考えられた。
エムトリシタビン:
1) 免疫毒性(ラット)
ラットの 28 日間投与(60,240,1,000 mg/kg/日)における免疫毒性(ヒツジ赤血球に対する特異的
- 82 -
な IgM 抗体にて評価)を検討したところ,ヒツジ赤血球に対する IgM 抗体価に影響は認められなか
った。
2) 遺伝毒性(in vitro,in vivo)
細菌を用いた復帰突然変異試験,マウスリンフォーマ TK 試験及び in vivo 試験のマウス骨髄小核試
験は,いずれも陰性であり遺伝毒性は認められなかった。
3) がん原性(マウス,ラット)
ラットにおける試験(60,200,600 mg/kg/日)及びマウスにおける試験(80,250,750 mg/kg/日)
のいずれにおいても,がん原性は認められなかった。
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩:
1) 局所刺激性及び皮膚感作性(抗原性)
ウサギを用いた皮膚刺激性試験の結果は陰性であり,皮膚刺激性は認められなかった。また in vitro
試験のウシ角膜を用いた混濁度及び透過性試験の結果も陰性であり,眼粘膜刺激性は示さないもの
と考えられた。マウスを用いた皮膚感作性試験(局所リンパ節試験)の結果は陰性であり皮膚感作
性は無かった。
2) 遺伝毒性(in vitro,in vivo)
細菌を用いた復帰突然変異試験,マウスリンフォーマ TK 試験及び in vivo 試験のマウス骨髄小核試
験を実施した結果,いずれの試験結果も陰性であり遺伝毒性は認められなかった。
- 83 -
X. 管理的事項に関する項目
1. 規制区分
製
剤:ゲンボイヤ配合錠
劇薬,処方箋医薬品注)
注)注意-医師等の処方箋により使用すること
有 効 成 分:エルビテグラビル
劇薬
コビシスタット
劇薬
エムトリシタビン
劇薬
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩
劇薬
2. 有効期間又は使用期限
使用期限:2 年 6 ヵ月(外箱及びラベルに表示の使用期限を参照のこと)
3. 貯法・保存条件
乾燥剤を同封した気密容器,室温保存
開栓後は湿気を避けて保存すること
4. 薬剤取扱い上の注意点
(1) 薬局での取扱い上の留意点について
該当しない
(2) 薬剤交付時の取扱いについて(患者等に留意すべき必須事項等)
[「VIII. 安全性(使用上の注意等)に関する項目 6. 重要な基本的注意」の項]参照
患者向医薬品ガイド:作成予定,くすりのしおり:作成予定
(3) 調剤時の留意点について
該当しない
5. 承認条件等
本剤の適応である「HIV-1 感染症」は希少疾病として指定されている。
1.
医薬品リスク管理計画を策定の上,適切に実施すること。
2.
本剤の使用に当たっては,患者に対して本剤に関して更なる有効性・安全性のデータを引き続き収
集中であること等を十分に説明し,インフォームドコンセントを得るよう,医師に要請すること。
3.
現在実施中又は計画中の臨床試験については,終了後速やかに試験成績及び解析結果を提出するこ
と。
4.
再審査期間が終了するまでの間,原則として国内の全投与症例を対象とした製造販売後調査を実施
し,本剤の使用実態に関する情報(患者背景,有効性・安全性(他剤併用時の有効性・安全性を含
む)及び薬物相互作用のデータ等)を収集して定期的に報告するとともに,調査の結果を再審査申
請時に提出すること。
6. 包装
ゲンボイヤ配合錠:30 錠/瓶
7. 容器の材質
プラスチック容器
容器
キャップ
高密度ポリエチレン
ポリプロピレン
- 84 -
8. 同一成分・同効薬
エルビテグラビル:
同一成分薬:なし
同
効
薬:スタリビルド配合錠,アイセントレス錠 400 mg,テビケイ錠 50 mg,トリーメク配合錠
コビシスタット:
同一成分薬:なし
同
効
薬:スタリビルド配合錠,ノービア錠 100 mg
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩及びエムトリシタビン:
同一成分薬:エムトリバカプセル 200 mg
同
効
薬:スタリビルド配合錠,ツルバダ配合錠,コムプレラ配合錠,ビリアード錠,テノゼット
錠,コンビビル配合錠,ジドブジン,ジダノシン,サニルブジン,ラミブジン,アバカビ
ル硫酸塩
9. 国際誕生年月日
2015 年 11 月 5 日
10. 製造販売承認年月日及び承認番号
製造販売承認年月日:2016 年 6 月 17 日
承認番号:22800AMX00409000
11. 薬価基準収載年月日
2016 年 6 月 29 日
12. 効能又は効果追加,用法及び用量変更追加等の年月日及びその内容
該当しない
13. 再審査結果,再評価結果公表年月日及びその内容
該当しない
14. 再審査期間
10 年:2016 年 6 月 17 日~2026 年 6 月 16 日(希少疾病用医薬品)
15. 投薬期間制限医薬品に関する情報
本剤は,投薬(あるいは投与)期間に関する制限は定められていない。
16. 各種コード
販売名
厚生労働省薬価基準収載
医薬品コード
レセプト電算処理コード
HOT(9)番号
ゲンボイヤ®配合錠
6250109F1025
622507701
125077001
17. 保険給付上の注意
該当しない
- 85 -
XI. 文献
1. 引用文献
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:生物学的同等性の検討(社内資料 292-0103)
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:小児 HIV-1 感染症患者を対象とした臨床試験(社内資料 292-0106)
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18)
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Gilead 社
:ゲンボイヤ配合錠を用いた食事の影響の検討(社内資料 SBX5-1)
25)
Gilead 社
:日本人及び白人におけるゲンボイヤ配合錠を用いた薬物動態試験
(社内資料 292-0108)
26)
Gilead 社
:日本人及び白人におけるゲンボイヤ配合錠を用いた薬物動態試験
(社内資料 292-0102)
27)
Gilead 社
:エルビテグラビル及びコビシスタットの腎機能障害患者における薬物動態
に関する検討(社内資料 216-0124)
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Gilead 社
:エムトリシタビンの薬物動態に関する検討(社内資料 FTC-107)
29)
Gilead 社
:テノホビル アラフェナミドの腎機能障害患者における薬物動態の検討
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30)
Gilead 社
:エルビテグラビル及びコビシスタットの肝機能障害患者における薬物動態
に関する検討(社内資料 183-0133)
31)
Gilead 社
:テノホビル アラフェナミドの肝機能障害患者における薬物動態の検討
(社内資料 120-0114)
32)
Gilead 社
:スタリビルド配合錠を用いた食事の影響の検討(社内資料 236-0105)
33)
Gilead 社
:ゲンボイヤ配合錠を用いた食事の影響の検討(社内資料 292-0110)
34)
Gilead 社
:コビシスタットによりブーストされたエルビテグラビルの母集団薬物
動態解析(社内資料)
35)
Gilead 社
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Gilead 社
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:エルビテグラビルの薬物動態に関する検討(社内資料 183-0126)
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:Human renal organic anion transporter 1 (hOAT1) and its role in the nephrotoxi
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Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids. 20 (4-7) : 641-648, 2001
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Arenas-Pinto A, et al.
:Lactic acidosis in HIV infected patients: a systematic review of published cases.
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French MA, et al.
:Immune restoration disease after the treatment of immunodeficient HIV-infected
patients with highly active antiretroviral therapy.
HIV Med. 1(2) : 107-115, 2000
79)
古西 満 他
:免疫再構築症候群の臨床像に関する調査. 厚生労働科学研究費補助金エイ
ズ対策研究事業 HAART 時代の日和見合併症に関する研究.
平成 16 年度総括・分担研究報告書. 84-92, 2005
80)
Robertson J, et al.
:Immune reconstitution syndrome in HIV: validating a case definition and identi
fying clinical predictors in persons initiating antiretroviral therapy.
Clin Infect Dis. 42(11):1639-1646, 2006
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古家英寿 他
:ツルバダ錠(エムトリシタビン/テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩
配合錠)の日本人健康成人男性を対象とした薬物動態試験.
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Shirasaka T, et al.
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J Infect Chemother. 17(5) : 602-608, 2011
83)
Gilead 社
:コビシスタットの薬物動態に関する検討(社内資料 236-2011)
84)
Gilead 社
:コビシスタットの薬物動態に関する検討(社内資料 216-2072)
85)
Gilead 社
:テノホビルの薬物動態に関する検討(社内資料 901/701)
86)
Gilead 社
:テノホビルアラフェナミドの薬物動態に関する検討(社内資料 120-2018)
87)
Gilead 社
:テノホビルの薬物動態に関する検討(社内資料 1278-005)
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Gilead 社
:ゲンボイヤの安全性薬理試験(社内資料)
91)
Gilead 社
:ゲンボイヤの毒性試験(社内資料)
2. その他の参考文献
特になし
- 89 -
XII. 参考資料
1. 主な外国での発売状況
2016 年 4 月現在,以下を含め約 35 カ国で承認されている。
国名
米国
販売名
GENVOYA®
会社名
Gilead Sciences, Inc.
発売年
2015 年
剤形
経口剤:錠剤
含量
1 錠中にエルビテグラビル 150 mg,コビシスタット 150 mg,エムトリシタビン 200 mg 及びテノホビ
ル アラフェナミド 10 mg(テノホビル アラフェナミドフマル酸塩として 11.2 mg)を含有する。
効能又は効果
GENVOYA は,エルビテグラビル(インテグラーゼ阻害薬),コビシスタット(CYP3A 阻害薬),
エムトリシタビン及びテノホビル アラフェナミド(いずれも核酸系 HIV 逆転写酵素阻害薬)の 4 剤
からなる配合錠であり,抗 HIV 療法による治療経験がない成人及び 12 歳以上の小児患者における
HIV-1 感染症治療のための単独治療薬として,もしくは安定した抗レトロウイルス療法を 6 ヵ月以上
受けており,治療失敗歴がなく,GENVOYA の個々の成分に対する既知の耐性関連変異が認められ
ていないウイルス学的に抑制されている患者(HIV-1 RNA 量:50 copies/mL 未満)における継続中の
抗 HIV 療法に代わる単独治療薬として使用する。
用法及び用量
 検査:GENVOYA の投与開始前に B 型肝炎ウイルス感染の有無を確認する検査を行う。
 推奨用法及び用量:1 錠を経口で 1 日 1 回食事とともに服用する。
 腎機能障害患者:クレアチニンクリアランス推定値が 30 mL/min 未満の患者には GENVOYA の投
与は推奨されない。
 肝機能障害患者:重度の肝機能障害の患者には GENVOYA の投与は推奨されない。
国名
欧州
販売名
GENVOYA®
会社名
Gilead Sciences, Inc.
承認年
2015 年
剤形
経口剤:錠剤
含量
1 錠中にエルビテグラビル 150 mg,コビシスタット 150 mg,エムトリシタビン 200 mg 及びテノホビ
ル アラフェナミド 10 mg(テノホビル アラフェナミドフマル酸塩として 11.2 mg)を含有する。
効能又は効果
HIV-1 に感染しており,インテグラーゼ阻害剤,エムトリシタビン又はテノホビルに対する耐性関連
変異を持たない成人及び小児(12 歳以上かつ体重 35 kg 以上)の治療のために使用する。
用法及び用量
1 錠を 1 日 1 回食事とともに服用する。
2. 海外における臨床支援情報
妊婦に関する海外情報(米国,オーストラリアにおける分類)
本邦における使用上の注意「妊婦,産婦,授乳婦等への投与」の項の記載は以下のとおりであり,米国及
びオーストラリアにおける分類とは異なる。
- 90 -
【使用上の注意】
「妊婦,産婦,授乳婦等への投与」
(1) 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場
合にのみ投与すること。
[妊娠中の投与に関する安全性は確立されていない。動物試験(サル)に
おいてテノホビルの胎児への移行が報告されている。
]
(2) 本剤服用中は授乳を中止させること。
[テノホビル及びエムトリシタビンのヒト乳汁への移行が報
告されている。なおエルビテグラビル,コビシスタット及びテノホビル アラフェナミドのヒト乳
汁への移行は不明である。動物実験(ラット)においてエルビテグラビル及びコビシスタットの
乳汁への移行が報告されている。また,女性の HIV 感染症患者は,乳児の HIV 感染を避けるため,
乳児に母乳を与えないことが望ましい。]
分類
米国:FDA Pregnancy Category
B
オーストラリア:An Australian categorisation of risk エルビテグラビル B2
of drug use in pregnancy
コビシスタット B1
エムトリシタビン B1
テノホビル B3
参考:分類の概要
米国:FDA Pregnancy Category
B:Animal reproduction studies have failed to demonstrate a risk to the fetus and there are no adequate and
well-controlled studies in pregnant women.
オーストラリア:An Australian categorization of risk of drug use in pregnancy
B1:Drugs which have been taken by only a limited number of pregnant women and women of childbearing age,
without an increase in the frequency of malformation or other direct or indirect harmful effects on the human fetus
having been observed.
Studies in animals have not shown evidence of an increased occurrence of fetal damage.
B2:Drugs which have been taken by only a limited number of pregnant women and women of childbearing age,
without an increase in the frequency of malformation or other direct or indirect harmful effects on the human fetus
having been observed.
Studies in animals are inadequate or may be lacking, but available data show no evidence of an increased occurrence
of fetal damage.
B3:Drugs which have been taken by only a limited number of pregnant women and women of childbearing age,
without an increase in the frequency of malformation or other direct or indirect harmful effects on the human fetus
having been observed.
Studies in animals have shown evidence of an increased occurrence of fetal damage, the significance of which is
considered uncertain in humans.
小児等に関する記載
本邦における使用上の注意「小児等への投与」の項の記載は以下のとおりであり,米国の添付文書及び
EU の SPC とは異なる。
- 91 -
【使用上の注意】
「小児等への投与」
低出生体重児,新生児,乳児,幼児,12 歳未満又は体重 35 kg 未満の小児に対する安全性は確立してい
ない。
出典
記載内容
米国の添付文書
Pediatric Use:The pharmacokinetics, safety, and virologic and immunologic responses were
(2016 年 3 月)
evaluated in 23 treatment-naïve, HIV-1 infected subjects aged 12 to less than 18 years receiving
GENVOYA through 24 weeks in an open-label trial (Study 106).
Safety and effectiveness of GENVOYA in pediatric patients less than 12 years of age have not
been established.
欧州製品概要
The safety and efficacy of Genvoya in children younger than 12 years of age, or weighing < 35 kg,
(SmPC: Summary of have not yet been established. No data are available.
Product
Characteris-
tics)
(2016 年 4 月)
- 92 -
XIII. 備考
その他の関連資料
なし
- 93 -
GT5-1607H
GEN DB 001A