★ 1. 荏原第一地区 ★ 地域の特徴 活動支援対象は、荏原第一地区にある荏原四丁目町会である。 一部マンションなどの高層住宅も立ち並ぶが、地区内の多くは中低層の住宅である。 東京都都市整備局「地震に関する地域危険度測定調査(第六回)」では、火災危険性 がリスク4と評価され、やや高い結果が示されている。 町会内の有志メンバーで「防災活動推進委員会」を結成し、防災対策を行なっており、 本事業開始前に、家庭での備蓄品奨励と家具の転倒防止対策の二点を重点的に進める ことを柱とした一年間の活動計画を立案している。 写真:荏原四丁目の風景 1 2. 地域の課題 現在活動しているメンバーに加えて、どのように活動の輪を広げるか? 一年間の活動計画は地域の防災対策活動として妥当であるか? リスクが高い火災危険性への対策はどうするか? 3. 活動の方針 地域イベントや訓練を積極的に行ない、活動の輪に入りやすい環境を作る。 町会の全世帯へ防災に関するアンケートを実施し、防災の意識や対策状況を確認したう えで対策内容を決定する。 火災危険性を考慮し、対策内容には初期消火対応を追加する。 4. 活動の流れ 町会全世帯への防災対策アンケートの実施 個別の防災対策の実施 各家庭への 各家庭への備蓄品の整備 各家庭への消火器の整備 家具転倒防止対策の実施 初期消火訓練の実施 2 5. 活動内容 (1) 町会全世帯への防災アンケートの実施(2012 年 4 月) 家具転倒防止器具の設置に関して、「どのような器具を付けたらよいか分からない」 「冷蔵庫のような重いものは動かない」との意見が挙がった。 家庭での備蓄品の準備に関して、女性や高齢者を中心に、 「何を準備したらよいのか分からない」との意見が多く挙がった。 消火器については、購入した時から一度も点検をしていない世帯が多かった。 「家具転倒防止対策」「緊急持出品・災害用備蓄品整備対策」「初期消火対策」の 3 つの対策ともに丌十分であるため、それぞれの対策を進めることとする。 情報提供を町会に求める声が多いため、町会報「町会だより」の発行などを通じて、 積極的に広報・知識啓蒙活動を行なう。 (2) 各家庭への家具転倒防止器具のあっせん・取り付け活動の実施(2012 年 5 月~12 月) 取り付け方法や対象・価格などを基に、5 月からあっせんする家具転倒防止器具を選定 12 月に各世帯に町会報「町会だより」を配布し、家具転倒防止器具のあっせん・取り 付け活動について告知 各世帯に防災活動推進委員会の担当者が戸別訪問、家具転倒防止器具の注文受付を実施 取り付けを求める世帯には、防災活動推進委員会の担当者が訪問し取り付け支援を実施 ☆活動のポイント☆ ① 担当者が戸別訪問し、家具転倒防止器具の注文受付を行なうことで、あっせん率を高 めると共に、担当者の顔や活動を覚えてもらうよう工夫した。 ② 町会よりあっせん費用の 1 割を補助し、この機会に行なうよう促した。 ③ 工務店に勤務する町会役員にも協力を依頼し、家具転倒防止器具の取り付けサポート を実施する体制を整えた。 あっせん実績数 23 世帯へあっせんを行なった。 (突っ張り棒タイプ:17 本、両面テープタイプ:10 個、L型金具タイプ:32 個、家 具の下に敷くタイプ:32 個、粘着タイプ:10 個) 3 (3) 各家庭への災害用備蓄品のあっせん活動の実施(2012 年 5 月~9 月) 防災アンケートの結果を基に、5 月から今年度あっせんする災害用備蓄品を選定 (簡易トイレ、サバイバルブランケット、非常用給水袋) 各世帯に町会報「町会だより」を配布し、災害用備蓄品のあっせんについて告知 各世帯に防災活動推進委員会の担当者が訪問し、災害用備蓄品の注文受付を実施 ☆活動のポイント☆ ① 備蓄されていないものの中から、購入しやすい価格帯のものを優先して選定した。 ② 担当者が戸別訪問し、災害用備蓄品の注文受付を行なうことで、あっせん率を高める と共に、担当者の顔や活動を覚えてもらうよう工夫した。 ③ 町会よりあっせん費用の 1 割を補助し、この機会に行なうよう促した。 あっせん実績数 109 世帯へあっせんを行なった。 (簡易トイレ:89 個、サバイバルブランケット:144 枚、非常用給水袋:174 枚) 写真:あっせんした災害用備蓄品の説明風景 4 写真:配布した「町会だより」 (4) 各世帯への消火器のあっせん活動の実施(2012 年 9 月) 各世帯に町会報「町会だより」を配布し、9 月に消火器のあっせんについて告知 各世帯に防災活動推進委員会の担当者が戸別訪問し、消火器の新規購入や薬剤詰替の 注文受付を実施 ☆活動のポイント☆ ① 担当者が戸別訪問し、直接消火器の注文受付を行なうことで、あっせん率を高めると 共に、担当者の顔や活動を覚えてもらうよう工夫した。 ② 町会よりあっせん費用の 1 割を補助し、この機会に行なうよう促した。 ③ 消火器のあっせんを行なった世帯には、積極的に初期消火訓練への参加呼びかけを行 なうようにした。 ④ 各世帯に消火器が整備された日を防災活動推進委員会側でも把握し、次回の整備時期 にお知らせができるように準備するようにした。 あっせん実績数 91 世帯へあっせんを行なった。 (新規購入:118 本、薬剤詰替:4 本) 写真:地区連絡会の会議風景 写真:配布した「町会だより」 5 (5) 初期消火訓練の実施 9 月と 11 月の 2 回、町会員を対象とした初期消火訓練を実施した。 訓練の内容 消火器の使い方を学ぶ訓練 スタンドパイプの使い方を学ぶ訓練 D 級ポンプを使った放水法を学ぶ訓練 アルファ米とレトルト食品を使った「非常食バイキング」の実施 ☆活動のポイント☆ ① 2 回実施することで訓練に参加しやすいようにした。 ② 訓練へはチームごとの参加とし、説明や体験が受けやすいように 1 チーム 5 名とし た。 ③ スタンドパイプを町会内に設置し、災害時にも使用できる環境を整えた。 ④ 参加者のほとんどが初めて使用するスタンドパイプは消火栓への接続とホースへの 連結をメインに訓練を行ない、放水訓練は D 級ポンプで行なう形にすることで、体 験内容と時間の効率化を図った。 ⑤ 「非常食バイキング」を実施することで、温かいものが提供できると共に、楽しさを 兼ね備えた訓練メニューを考案した。 参加者数 9 月 30 日:102 名、11 月 18 日:120 名 6 写真:初期消火訓練の様子(消火器訓練、スタンドパイプ操作訓練) 6. 活動のまとめ 1.ヒアリングや地域危険度によるリスク分析を基に、年次活動計画を再検討した。 2.町会員全世帯へアンケートを実施し、防災意識と対策の状況を明らかにした。 3.町会の各世帯に訪問し、家具転倒防止器具あっせん・取り付けサポートを行なった。 4.町会の各世帯に訪問し、希望する世帯に災害用備蓄品をあっせんした。 5.町会の各世帯に訪問し、希望する世帯に消火器をあっせんした。 6.9 月と 11 月の計 2 回初期消火訓練を実施した。 ☆取り組みのポイント☆ 消火器の整備を進めた世帯には特に初期消火訓練への参加を呼び掛けるようにする。 消火器の新規購入や交換を行なうようにした世帯は、消火器の操作法習得の目的だけで なく、火災への丌安や初期消火対策への関心が高いことが多いため、初期消火訓練を実 施する際の訓練参加者として積極的呼び掛けることが重要である。 実施率を高めるために各世帯へ繰り返し個別に訪問する。 訓練への参加や防災用品のあっせんなど、様々な地域防災活動の実施率を高めるために は、各世帯へ繰り返し個別に訪問することが非常に有効となる。また担当を少人数で進 めると大きな負担になるため、エリアを分け担当者を決めて進めることが重要である。 少人数でのチーム制で訓練を体験できるようにする。 訓練を受講する人数が多すぎると、体験する時間が短くなってしまったり、説明を聞き 取れなかったりしてしまうため、5 名程度を単位としたチームで訓練を体験できるよう にすると良い。 スタンドパイプによる初期消火対策は地域住民に高い関心を持たせることができる。 多くの地域住民がスタンドパイプに対してあまり馴染みがないため、有効性や取り付け 方法を説明したり、実際に操作法の訓練を行なったりすると、非常に高い関心を持たせ ることができ、地域における初期消火対策の新たなきっかけとなる。 7 7. 防災アドバイザーからの今後の活動に関するアドバイス 地域の初期消火能力のさらなる向上 スタンドパイプや消火器など消火用機器の整備とそれを扱うボランティアの育成など を町会で継続的に進める努力が必要である。 発災対応型訓練のような総合的防災訓練の実施 「共助」の視点から、いざ地震が起きた時に町会全体でどう対応するかの能力を高める には、災害発生と同時に町会独自の災害対策本部の立ち上げや情報収集・連絡活動、消 火隊の配置や生き埋め者の救出人員の確保、災害時要援護者の保護など、主に人材を適 正に配置するような訓練内容の実施が必要である。 避難所運営に関する訓練の実施 避難所運営を検討するにあたり、できるだけ多くの町会員の参加を呼び掛けることによ って、避難してきた町会員からどのように家族や隣近所の住民の安否情報を収集する か、また避難所での情報伝達や食糧・物資の配給等を円滑に運用するために、避難者を どのように組織し、リーダーを育成するかの訓練が必要となる。 8
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