菓子様製剤;グミ製剤;チョコレット;口腔内崩壊錠;苦味マスキング

テーマ 患者ベネフィットを追及した実用化製剤の研究
薬学部 実践薬学分野 並 木 徳 之
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絡
先
ホ ー ム ペ ー ジ
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キーワード
菓子様製剤;グミ製剤;チョコレット;口腔内崩壊錠;苦味マスキング;プレミクスト注射剤
研究のアピールポイント
苦い薬でも患者さんが楽に服用できるように、お菓子のグミを応用したグミ製剤やチョコレート風
味の口腔内崩壊錠であるチョコレットなど患者ベネフィットを追及した製剤を開発している。
研究の目的・概要
【目的】 患者本位の医療が尊重されるなか、患者自身が主体的に医療を選択する時代となった。この
潮流は医薬品にとっても無縁ではなく、本年4月から処方箋様式が再変更されたことにともない、医
師が処方した同じ成分の医薬品であるならば、患者自身が製剤や銘柄を選択できる時代が現実に到来
し、医療を取り巻く環境は未だかつてない大きな変革の渦に巻き込まれようとしている。今こそ患者
が良質の医薬品を選別できるように、確実な治療効果と安全性を併せ持つ製剤を開発し臨床に提供す
る必要性あると再認識している。治療効果を左右する要因は数多くあるが、まずは患者が適正に薬剤
を使用できるように、患者ベネフィットを追及した製剤を開発してコンプライアンスを向上させるこ
とからはじめる必要があると考える。最も調剤頻度が高い製剤が内服薬であることを考えると、患者
ベネフィットを追及した製剤は飲みやすさを追及した製剤に他ならない。苦い薬を服用するのは患者
自身にとって辛いことであるが、苦い薬を子供に服用させる母親の苦労は昔も今も変わらない。そこ
で苦い薬であっても楽に服用でき確実な治療効果へとつなぐ第一歩とするために、菓子を応用した実
用化製剤の研究開発を行っている。
【グミ製剤の開発】 グミとは、砂糖、水飴などの糖質を煮詰めたシロップにゲル化剤としてゼラチン
を加えた後、冷却固化して得られる乾燥ゼリー菓子のことで、これに薬物を添加しゲル化して調製し
た製剤がグミ製剤である。グミ製剤は苦い薬でも楽に咀嚼して服用できるように考案された患者ベネ
フィットを追求した製剤で、お菓子の様で、お菓子のグミとは異なる“お菓子な薬”である。このため
医薬品としての有効性、安全性、安定性を高い精度で検証する必要がある。1993年から研究を開始
し試行錯誤の結果、1997年に製造方法を確立した。その
後、一般紙(朝日、産経新聞など)に紹介されたことを契
機に製品化が企画され、有効性、安全性、安定性、およ
び、含有薬剤の拡大について研究を行ってきた。有効性
についてはイヌによる血中濃度推移から、安全性につい
てはハムスターの頬袋を用いた組織学的評価から検討を
行い、安定性については変色、および結晶析出を回避す
る方策を講じ、また基剤に改良を加えて含有薬剤の選択
肢を広げることに成功した。しかしながら、2001年に端
を発したBSE(牛海綿状脳症)が社会問題にまで発展したことから、牛由来のゼラチンを原料としてい
たグミ製剤の開発は2003年に一時中止することになった。ところがグミ製剤に対する臨床からの開発
継続の要望は根強く、2年後の2005年には研究開発が再開され、2006年に豚由来のゼラチンを用いた
グミ製剤の調製に成功した。現在、アセトアミノフェン、ロキソプロフェンNa、イブプロフェンなど
の解熱鎮痛剤をはじめとし、バルプロ酸Naなどの抗てんかん薬を含有するグミ製剤の処方、および
製造方法を確立するに至っている。口腔内崩壊錠(OD錠)に比べ、概して高含有量の薬剤を製剤化で
きる特徴がある。
【チョコレットの開発】 苦い薬でも楽に服用できる菓子様製剤の第二弾としてチョコレート風味の
OD錠であるチョコレットの研究を2002年から開始し、2005年にレバミピド・チョコレットの製造に
成功した。また苦味マスキングにフレーバーと甘味料の
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コラボレーションが効果的であることを、電子嗅覚シス
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テムで確認するとともに臨床薬理試験でも検証した。こ
の知見を応用して、チョコレットは2007年にランソプラ
ゾールOD錠「タイヨ−」として製品化されている。また
チョコレットのノウハウを活かして、他のOD錠の製品
化プロデュースを手掛け、実際に患者に好評なOD錠を
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数社から上市し臨床へ提供するに至っている。
産学連携について
これまでに、明治製菓、エーザイ、大塚製薬、大塚製薬工場と共同研究を行い、現在、大塚製薬工場、
アステラス製薬のアドバイザリーとして産学連携に取り組んでいる。特許出願3件。
未来のビジョン
実生活のこんな場面に活用できます
患者ベネフィットを追及した製剤の研究は、患者に優しい患者本位の医療を目指す現代トレンドに
即した研究と考えている。苦い薬を楽に服用できる製剤は、考えてみれば大人であっても子供であっ
ても誰しも望む究極の製剤である。最近になって苦味マスキングに微粒子コーティングなどのハイテ
ク技術も導入されるようになってきたが、人は臭いで考える生物である以上、フレーバーで苦みを不
快と感じさせない技術にも傾注される。菓子様製剤のグミ製剤、チョコレットは製造方法も簡便で、
特殊な設備投資も必要ないことから、応用の選択肢の広い実用化製剤である。
将来はこうなる!こうなって欲しい!
OD錠はPLCM(Product Life Cycle Management)対策に極めて効果的な実用化製剤であり、最近に
なってやっと臨床に定着してきた。嚥下困難救済はもちろんであるがコンプライアンスや安全性の観
点からOD錠の臨床評価も多様化し、今後、2010年の新薬特許切れにともなって加速的に上市される
ことが予測される。そこでチョコレットのノウハウを、OD錠の開発に活かして欲しいと考えている。
一方注射剤においては、治療薬剤と輸液とが合体したプレミクスト注射剤が安全性、経済性の観点か
らその真価を発揮すると考えられ、意欲的に製品化プロデュースを行いたい。