(H27第7回) (PDF:436KB) - 生涯学習ほっかいどう

道民カレッジ「ほっかいどう学」大学インターネット講座
転ばぬ先の“筋肉”~骨格筋を鍛えて健康寿命を延ばそう~
講師:北海道医療大学
リハビリテーション科学部
宮﨑 充功 准教授
◆北海道という特性
・私たちが暮らす北海道という土地には「積雪寒冷地」という特性がある。
・雪が降り始め、雪が降り終わる 3 月くらいまでの年間の 3 分の 1 に及ぶ期間、外での活動、ウォ
ーキングなどの活動が難しくなる。
・ヒトの体は動く量が少なくなる、不活動な状態が長く続くと体の機能が弱ってしまい、路面が凍
っていると滑りやすい環境になり、人の体を動かすのに不具合がでてくる。
・ある研究では冬の間の高齢者の入院期間が長くなる傾向にある。
・運動不足や、人間の活動が活発ではない状態が続いてしまうと逆に体の筋肉の量が減るだけでは
なく、体脂肪が増え血糖値のコントロールが難しくなるという体への変化が出てくる。
・このような変化は、特に高齢者の場合は気づかないうちに徐々に体の機能が衰え筋肉の量が減っ
ていくと言われている。
・こうした年齢を重ねることによって起こる、筋肉の量と筋力の減少のことを「加齢に伴う加齢性
筋肉減弱症」
、英語で「サルコぺニア」と呼ぶ。
◆サルコペニアとは
・日本語で「加齢性の筋肉減弱症」ラテン語の肉・筋肉を
表す「sarco」と、減少・消失を意味する「pen
ia」という言葉を組み合わせたもの。
・加齢によって筋肉量が減っていき発揮できる力がどんど
ん下がってしまう症状をいう。
・体の筋肉の量が減る、骨格筋の量が減るということ。
・最終的にはバランス能力の低下や、転びやすい・からだを支えにくいというように変化していく。
・当然、転倒の危険性などが増えるので、最終的には要介護状態の進行や寝たきりの状態にもつな
がりかねない。
・仕組みをよく知ればサルコぺニアの進行を止めたり、発症を防いだりすることも可能になる。
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◇ 講座の内容 ◇
・今回の講義では、サルコぺニアの重要なカギを握る「筋肉=骨格筋」の仕組みについて解説する
とともに、我々の体を健康であり続けるためにはどのような取り組みをしたらよいのかについて
考えていく。
◆牛の体の部位
・一般的に筋肉はそうした体を動かすときに使われ
る体の部分を指す場合が多い。
・牛の体の模式図を示している。ロースやバラ、ランプな
どの比較的なじみの深い赤身のお肉、それ以外にも内臓
系のお肉、ハラミやハツ、コリコリなどと呼ばれるよう
なホルモン焼きに使われるような肉の種類もある。
・これらは味や食感は違うが、すべてまとめて筋肉と呼ん
でいる。
・基本的にはわれわれ人間の体の場合も同じ。
◆3 つの筋肉
・人間の体を構成する筋肉と呼ばれる組織は大きく分けて 3
種類ある。
・1 つ目が、胃腸を動かしたり血管の収縮を促すための「平
滑筋(へいかつきん)」
。
・2 つ目は心臓の筋肉。血液を全身に送り出すポンプの役割
をする「心筋(しんきん)」
。
・3 つ目は手足を動かしたり足腰を支えたりする「骨格筋(こ
っかくきん)」
。
・平滑筋・心筋・骨格筋と 3 種類あり、それぞれ特徴は違う
が、どれも筋肉に分類される体の部位である。
◆人の体の筋肉の数
・人の体にはどれくらいの筋肉があるのか。我々の体の中には、およそ 400 種類以上の筋肉がある
と言われている。
・特に成人の場合は華奢な体つきの方でも体重の 3 割程度、がっちりした体格の方では、
体重の 5 割を超す量が骨格筋で占めている。
・それくらい骨格筋は人の体の中で最も大きく、最も重い臓器である。
◆「使用性肥大」と「廃用性萎縮」
・骨格筋の大きな特徴として、使えば使うほど大きく、強くなることを「使用性肥大」という。
・一方、骨格筋を使わずにいると、どんどんやせ細り、筋肉の発揮する力が弱くなる。
・使わないで放ってどんどん筋肉が痩せ細って弱くなることを、使わないで出てきた変化というこ
とで「廃用性の筋萎縮」と呼ぶ。
・宇宙飛行士の体の機能が落ちるというのも、多くの部分が廃用性の筋萎縮に起因すると言われて
いる。
・さらには病院や家で寝たきりになっている方がどんどん体の機能が落ちていってしまうのも筋肉
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を使わない結果、弱くなってしまう廃用性の筋萎縮が原因である。
・骨格筋がどのように働いているのか模型を見ながら説明をする。
・これは人の左腕の筋肉の模型。二の腕にある上腕二頭筋があるが、これは肩のあたりからひじの
関節をはさんで腕の前の部分=前腕の骨にくっついている。
・筋肉の大きな特徴の一つとしては、必ず関節を挟んで異なる骨から異なる骨にくっついているの
が、大きな特徴の一つである。
・例えばこの上腕二頭筋の場合、この筋肉が動くと…ひじの関節を挟んで腕の前側の骨を動かすと
いうことになる。
・結果、関節を挟んだ骨と骨の相対的な位置関係が変わる…つまり肘が曲がるという運動につなが
っていく。
・我々の体の運動というのはこの骨格筋が収縮した結果、発生する関節の運動によって引き起こさ
れるものだと言われている。
◆骨格筋のパワー
・骨格筋が発揮することのできる力というのは非常に特徴があり、筋肉を輪切りにした時の大きさ
によって発揮できる筋肉の力が決まると言われている。
・ただし筋肉を輪切りにした時の面積あたりの発揮できる力というのは、男女や加齢による差はな
い。
・つまり一定の面積あたりに発揮できる力は誰でも変わりはない。
・体の中で骨格筋が発揮する力を維持していくためには、全身の骨格筋の量・大きさを維持してい
くことが非常に重要になる。
◆骨格筋の大きさを調節する
・骨格筋の大きさを調整するには、仕組みを理解していくことが重要である。
・特に骨格筋はヒトの全身のたんぱく質量の 5 割以上を保管している「保管庫」としての役割を持
っている。
・日常生活の中では筋肉の大きさは劇的に変わらない。
・見た目にはそれほどの大きな変化を示さないが、実は細胞レベルで見た場合、骨格筋のタンパク
質の代謝…タンパク質の合成と分解のバランスのことを意味するが、たんぱく質は「24 時間 365
日」、常に合成と分解を繰り返している。
◆筋タンパク質の合成と分解のバランス
・タンパク質の合成と分解のバランスによって筋肉の大きさ
が規定されることを模式図で表したもの。
・例えば運動やご飯を食べて栄養を摂取するのは骨格筋のタ
ンパク質を合成する刺激になる。
・一方で関節を動かさない状態を続け、ストレスやご飯を食
べない飢餓の状態。これはタンパク質の分解を進めていく
ような刺激になる。
・たんぱく質がつくられる合成と、壊していく分解のバラン
スとの差。
・この合成と分解のバランス=出納バランスが合成のほうに大きく傾いた場合最終的に筋肉のタン
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パク質が増えていくことになる。
・筋肉の肥大、筋肉の量・骨格筋の量が増えていくことになる。
・一方で、タンパク質の分解が過剰な状態で続くとどんどん筋肉を構成するたんぱく質が減ってい
くことになり、最終的に骨格筋の萎縮につながる。
・激しいスポーツや筋力トレーニングをするとタンパク質の合成も分解もどちらも高いレベルまで
上がってしまう。
・最終的にたんぱく質の合成のほうが上回っていくために骨格筋が肥大していくということになる。
・逆にバランスがマイナスに傾いてしまった場合タンパク質の分解が優位な状態が続くことになる
ので筋肉が萎縮していってしまう。
・寝たきりや運動不足の状態がここでは当てはまる。
◆成人の骨格筋量の変化
・加齢に伴う筋肉の量の低下を模式図で示したもの。
・グラフを見ると、成人の骨格筋の量=体の中の筋肉
の量はだいたい 20 歳を超えたくらいがピークで、
50 代のあたりで 5%から 10%程度低下する。
・さらに 50 代を超え 60 代、70 代、80 代となると加
齢に伴う筋肉量の減少は加速度的に進んでいって
80 代では 30~40%程度まで筋肉の量が低下すると
言われている。
・さきほど、加齢に伴う骨格筋の量の減少、肉が減るという意味で「サルコぺニア」と呼ぶと述べ
た。
・この加齢性による筋肉の減弱、サルコぺニアは骨格筋の量が減ってしまうという点では先ほど説
明した廃用性の筋萎縮に非常に似ている。
・しかしながらサルコぺニアの特徴はけがや病気などがない健康な方でも必然的に起きてしまう、
避けることができない状況にある。
・加齢に伴う筋肉量の減少のため誰にでも起きうる可能性がある。
◆生活への影響
・サルコぺニアが発生すると生活に様々な影響が出る。
・その一つが、体の機能が落ちてしまう結果、転倒してしまうという問題であり、現在深刻である。
札幌市で開かれた転倒の予防教室でその様子を取材しました。(VTR)
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◆サルコペニアの発生要因
・サルコぺニアは非常にこわい症状であるが、原因が何なのかは実はよくわかっていないのが現状
である。
・現在のところ考えられているサルコぺニアの原因は、高齢者
の骨格筋量の減少である。
・骨格筋のタンパク質を合成する刺激の絶対量が不足している
ことに加えて、運動や栄養といった
筋肉を大きくする刺激に対する反応性の低下が鈍くなる
・この二つが組み合わさり、最終的に筋肉を壊す方へ体のタン
パク質の代謝のバランスが崩れる。
・これがサルコぺニアの原因の一つなのではないかと考えられ
ている。
◆サルコペニアを防ぐには
・崩れたバランスを解決する方法、それは継続的な運動習慣を身につけること。
・サルコぺニアは、加齢に伴う筋力と筋量の減少を意味する言葉であり病気の名前ではない。
・サルコぺニアが発生した場合「進行」をおさえる効果的な方法は骨格筋量を増やすことである。
◆継続的な運動週間
・継続的な運動習慣を身につけること。
・散歩やウォーキングなどの運動は、運動としての強さはそれほど強く無いが、長時間の継続が可
能な「有酸素運動」と呼ぶ。
・全身の持久力を向上するのには効果的だが、骨格筋量を増やすという意味では効果的な運動とは
言えない。
◆レジスタンス運動
・骨格筋量を効果的に増やすためのポイントは「レジスタンス運動」といって、筋力トレーニング
の習慣を身に着けることが必要。
・たとえ高齢者であっても長期的にレジスタンス運動=筋トレを継続していけば、全身の骨格筋量
を増加させることが可能である。
・きちんとした管理のもとで行えば、たんぱく質の合成速度や骨格筋量の増加率は若い人とほとん
ど変わらないことも報告されている。
・サルコぺニアの症状は大腿部や太もも、ふくらはぎなどの比較的大きな部位の骨格筋に現れやす
いという特徴がある。
・影響を受けやすい大きな骨格筋を中心に筋肉トレーニングを進めていくと効果的である。
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具体的にはどうすればよいのか?
サルコペニア予防の筋肉トレーニングを紹介します。(VTR)
◆健康寿命を延ばすには
・医学的に「健康寿命」という言葉がある。
・健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間のこと。
・この健康寿命と実際の寿命との差を短くすることが、生涯にわたって健康で生き続けるためのポ
イント。
◆まとめ
・継続的な運動習慣を身に着けることが非常に重要になる。
・自分のためそして家族のため、習慣的なレジスタンス運動を生活の中にぜひ取り入れていくこと
が大切である。
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