【HDBギャラリー視察】 シンガポールでは、1960 年に住宅開発庁(HDB:Housing & Development Board)が設 置され、住宅及びその周辺の住環境の整備が進められてきた。現在、シンガポール人の約 85% がHDB住宅に暮らし、そのうち約 90%が住宅を所有している。 今回訪問したHDBギャラリーでは、HDBが進めてきた公共住宅政策の背景、住宅の変遷、 コミュニティ形成や環境対策に関する展示が、映像や音声を含む展示により説明されている。 また、今回の訪問では説明者によるガイドツアーに参加したが、事前の予約により当該ツアー の利用が可能であり、HDBの政策について幅広く情報収集が可能である。 シンガポールでは都市計画に基づいてHDBフラットの建設が行われており、居住区域には 学校や商業施設、公園、交通機関が計画的に配置・建設され、暮らしやすい住環境づくりが進 められている。また、多民族国家であるシンガポールのコミュニティ形成のための取組として、 中華系やマレー系などの住民が同一のHDB内に居住するようにフラットが割り振られており、 共有スペース等における住民間の交流が促進されている。 HDBは従来型の住宅の建設や販売だけでなく、古くなった公団のリノベーションや、高齢 者向けのスタジオ・アパート(1~2LDKの住宅)の建築、事業所を兼ねた住宅の設置を行 うなど、国民のライフスタイルの変化に合わせた整備が行われているとのことであった。 こうしたハード面の整備に加えて、多くの国民が住宅購入可能となるよう、資金面での環境 整備も行われている。国民がHDBフラットを購入する場合、中央積立基金(CPF)制度に より、収入の一定額を毎月積み立てて住宅購入資金とすることとされている。また、併せて政 府からの補助金も利用可能とのことである。一方、HDBフラットの購入には、収入上限が設 けられており、高所得層は購入できないこととされている。また、年齢・家族条件が設けられ ており、既婚者であれば 21 歳から住宅購入が可能だが、未婚者の場合は 35 歳以上とならなけ れば購入できない。政府による結婚(家族を 持つこと)の奨励の一環として住宅購入の優 遇も位置付けられているとのことであった。 今回のギャラリー訪問では、シンガポール におけるHDB住宅の建設が極めて計画的に、 都市計画や交通政策等と一体として行われて いることが印象的であった。また、日本にお ける公営住宅整備はセーフティネットとして の機能が中心であるのに対して、シンガポー ルの住宅政策は全国民を対象に住宅供給が進 められていることから、政策決定における視 映像等によりHDBの政策の概要を把握 点の違いを実感するものであった。 できる (HDB ギャラリー訪問時聞き取り等による) (吉本所長補佐 鹿児島県派遣)
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