委員会活動報告 - Japanese Society for Artificial Organs

平成 24 年度日本人工臓器学会
委員会活動報告
あるとの申し送りがあった。7 月 13 日に開催された同委員会に
<庶務・会則委員会>
おいて,今期も評議員申請基準へ同項を規定することを委員会
として確認し,7 月 31 日に開催された第 3 回理事会で承認され
1. 会員異動報告(2012 年 8 月 31 日現在)
名誉会長…………………………………… 21 名
名誉会員…………………………………… 18 名
特別会員…………………………………… 86 名
た。
【業績基準該当箇所 抜粋】
また,日本人工臓器学会定款施行細則第 10 条の 1 項および 2
功労会員…………………………………… 14 名
項の条件をそなえているものとする(2006 年 12 月 1 日以前より
正 会 員………………………………… 2,682 名
本会正会員であり,かつ会費を完納していること。2012 年 12
学生会員…………………………………… 55 名
月 1 日現在で満 66 歳未満であること)。原則 6 年間の正会員歴
合 計………………………………… 2,876 名
を要するが,学生会員歴はその 2 分の 1 を正会員歴として置き
賛助会員…………………………………… 26 社
換えることが出来る。
2. 名誉会長,名誉会員,特別会員の推戴について
施行細則の変更は,施行細則 第 45 条により,理事会および
名誉会長として,川村明夫先生,工藤龍彦先生,名誉会員と
総会の議決を必要とするため,11 月 22 日開催の社員総会へ以
して,葛西眞一先生,特別会員として,河村剛史先生,高浜龍彦
下の変更案を提出することとなった。
先生,高本眞一先生,水谷登先生が推戴された。
定款施行細則 新旧対照表
3. 選挙管理委員会に関わる定款施行細則の変更について
法人化に伴い,役員任期が 3 年から 2 年に変更された。理事・
監事選挙時において,被選挙権のない理事が不在となることが
生じたため,施行細則上の不備として,委員会・理事会で議論
現行規定
第 10 条 選 出 評 議 員 候 補 者 第 10 条 選 出 評 議 員 候 補 者
を重ね,以下のとおり改訂することが承認された。施行細則の
変更は,施行細則 第 45 条により,理事会および総会の議決を
必要とするため,11 月 22 日開催の社員総会へ以下の変更案を
提出することとなった。
定款施行細則 新旧対照表
現行規定
変更後
変更後
になるための審査
になるための審査
を受けることがで
を受けることがで
き る 者 は, 審 査 の
き る 者 は, 審 査 の
前 年 の 12 月 1 日 現
前 年 の 12 月 1 日 現
在 に お い て, 次 の
在 に お い て, 次 の
各号の資格をすべ
各号の資格をすべ
て満足していなけ
て満足していなけ
ればならない。
ればならない。
第 25 条
第 25 条
5 選挙管理委員会の委員
5 選挙管理委員会の委員
長( 以 下, 選 挙 管 理 委
長( 以 下, 選 挙 管 理 委
会員であり,かつ,
会員であり,かつ,
員 長 と 略 記 )は, 本 条
員 長 と 略 記 )は, 本 条
会費を完納してい
会費を完納してい
第 3 項第 1 号の選挙管理
第 3 項第 1 号の選挙管理
ること。
ること。なお,学生会
委員をもって充てる。
(1)引 き 続 き 6ヵ 年
(1)引 き 続 き 6ヵ 年
以 上, 当 法 人 の 正
以 上, 当 法 人 の 正
委員をもって充てる。
員歴はその2分の1を
但し,選挙管理委員長が理
正会員歴として置き換
事候補者となった場合には,
えることが出来る。
選挙管理委員長は,理事
(塩野 元美)
候補者以外の委員を理事
長が委嘱する。
<財務委員会>
2011 年度決算では,当期収入合計 82,400,454 円,当期支出合
4. 評議員選出に関わる定款施行細則の変更について
計は 82,665,228 円で,当期収支差額が 264,774 円の赤字となり
本年は評議員選出年度となる。前期(2010 ∼ 2011 年度)評議
ました。正会員の会費納入率は 91%と昨年度の 89%と比較し
員選出委員会において,前期の業績基準に規定されていた「学
て良好ですが,事務局の協力のもとにさらに納入率を上げるた
生会員歴はその 2 分の 1 を正会員歴として置き換えることがで
め の 努 力 が 必 要 で あ る と 考 え て い ま す。 支 出 に つ い て は,
きる」との項目ついて,本会施行細則への反映も検討すべきで
Journal of Artificial Organs が Impact Factor(IF)を獲得してか
238
人工臓器 41 巻 3 号 2012 年
ら,会誌刊行費がかなり必要となりました。特に 2011 年度は,
てはすでに申請を義務付けているが,さらに Author および
前年度の増ページ分の追加費用の支払いが必要となり,会誌刊
Reviewer へのチェック質問事項を追加して IRB 承認のチェック
行費が見かけ上著しい増加となっています。また,学術大会の
強化を行っている。また,COI に関しては,学会としての COI
活性化を図る目的から,大会援助金については 2010 年度より
指針および指針運用規則の策定が進められ,編集委員会として
400 万円に引き上げ,これを維持しています。
も こ れ ら の 指 針 お よ び 規 則 に 則 っ て,和 文 誌 も 含 め て
広告収入は景気の低迷を反映してあまり期待できる状況では
Certification Form に全著者の COI 開示を含むかたちとする方針
ありませんが,昨年度に引き続き,会員数の増加に伴い会費収
で準備を進めた。
入が増加していることは喜ばしいことです。2010 年度から消
和文誌「人工臓器」については,過去 1 年間で通常号 Vol.40
費税の納入が新たに必要となり,租税公課(都民税均等割およ
No.3 と Vol.41 No.1 の 2 号,および大会抄録号(Vol.41 No.2)の計
び消費税)として 160,300 円を支出することになりました。予
3 冊を発行し,編集委員会では通常号 2 冊の編集作業を行った。
算組みの段階では 244 万円の赤字を覚悟していましたが,49 回
Vol.41 No.1 では「植込型補助人工心臓の時代を迎えて(監修:
大会長の秋葉隆先生のご努力によって大会援助金の一部を返納
西村隆編集委員)」という特集を組み,人工心臓の専門家による
して頂き,赤字額を大幅に縮小することができました。ここに
最新情報の提供を行った。
感謝申し上げます。
和文誌の電子化への取り組みとして,Vol.37 No.1 から科学技
厳しい財政状況を鑑みて,理事・評議員ならびに多くの会員
術振興機構(JST)による電子ジャーナル化事業「J-STAGE」への
の先生方のご協力を得ながら,引き続き緊縮財政で学会運営を
収載・公開を行っている。J-STAGE は journal@rchive とともに
行っていく必要があります。しかしながら,学会の生命線でも
J-STAGE3 へ移行し,より利用しやすくなるとともに,和文誌「人
ある JAO の IF 維持・上昇のために,今後も継続的に編集費用を
工臓器」(1972 年∼)およびその前身である「日本人工臓器学会
手厚くしていく必要があると考えています。また,学術大会の
雑 誌 」(1963 ∼ 1971 年 )の 全 て の 収 載 を 完 了 し た。 ま た,
活性化のために援助金 400 万円を維持していきます。来年度も
J-STAGE への収載は「特集」や「最近の進歩」などの論文に限定
予定収支差額が赤字の予算組みとなりますが,これからも,皆
しているため,昨年からその他の記事や会員向け情報を含めた
様方のご理解を頂きながら,学会としてのアクティビティを拡
全頁の PDF ファイルを学会ホームページに掲載し,閲覧が可能
大していけるような健全な財務運営に努めてまいります。
となっている。
(小野 稔)
(巽 英介)
<編集委員会>
<教育・臨床工学(代謝)委員会>
英文誌 Journal of Artificial Organs では,過去 1 年間で Vol.14
日本人工臓器学会教育・臨床工学(代謝)委員会は学会委員
No.4 ∼ Vol.15 No.3 の 4 冊を発行し,合計で Original Ar ticle 40
以外に広く人工の臓器について学んでもらうために,高校生と
編,Review Paper 4 編,Minireview 1 編,Case Repor t 10 編,
その家族を対象に体験実習型の人工臓器セミナー日本人工臓器
Brief Communication 7 編,Chairperson’s Comment 1 編,
学会「高校生のための人工臓器セミナー」を開催した。参加者
Obituar y 4 編,合計 67 編を掲載し,総頁数は 428 頁であった。
は中高予備校生 13 名(14 歳∼ 18 歳),その保護者 4 名だった。
電子投稿査読システム Editorial Manager は導入 7 年目に入り,
内容は,呼吸・代謝・循環の3つの領域にわたり,東京女子医
投稿の簡便化,査読作業の効率化・迅速化,郵送費削減などに
科大学臨床工学科・臨床工学部と早稲田大学先端医科学セン
役立っている。投稿から受理までの平均日数は 174 日であった。
ター (TWIns)の協力で下記のプログラムで実施した。
また,昨年から開始された Online First により,2011 年の投稿受
〇開会のご挨拶 秋葉 隆
理から出版までの平均期間は 34 日と,冊子版の 156 日から大幅
第 1 部:講義 第 1 病棟 第 4 会議室【3F】(13:35 ∼ 14:20)
に短縮された。
・1 − A 人工腎臓 石森 勇
一 方,本 年 6 月 に Thomson Reuters 社 の Jour nal Citation
・1 − B 人工呼吸器 酒井基広
Repor ts for 2011 が公表され,JAO の 2011 年の Impact Factor
・1 − C 人工心臓 五十嵐利博
(IF)は 1.593 であった。これは 2010 年の 1.488 から上昇してお
−休憩−
り,収載後 3 年目の IF として優れた値を獲得することができた
第 2 部:体験実験① 第 1 病棟 透析室【2F】
(14:40 ∼ 15:40)
ものと考える。IF 獲得に伴って JAO への投稿数は顕著に増加し
・2 − A 人工腎臓 石森 勇
ているが,必ずしも優れた論文のみが増えている訳ではなく,
・2 − B 人工呼吸器 酒井基広
reject の割合も増加している。2012 年の採択率は 60%台となり,
−休憩−
数年前と比較して明らかに低下しつつある。会員諸氏には,今
体験実験② 東京女子医科大学・早稲田大学提携先端
生命医科学研究教育施設
後とも優れた論文を本誌にご投稿頂くとともに,JAO ならびに
(16:05 ∼ 16:35)
他誌への投稿時の JAO 掲載論文の積極的な引用をお願いした
い。
・2 − C 人工心臓 五十嵐利博
二重投稿などへの対策としては,新たに CrossCheck の利用
〇閉会のご挨拶 峰島三千男
を開始した。Certification Form でのヘルシンキ宣言遵守につい
参加した高校生らからは,
「実物に触れて感動した」「将来,
人工臓器 41 巻 3 号 2012 年
239
この領域に進めれば」などの声が聞かれた。詳細は本学会誌に
3. 体外循環技術認定士資格更新について
講義指導をお願いした冨澤康子監事から報告の予定である。
1 回目更新申請者数:65 名
(秋葉 隆)
<教育・臨床工学(体外循環)委員会>
委員:西 村 元 延( ※ 委 員 長 )安 野 誠,大 畑 俊 裕,小 野 稔,
2 回目更新申請者数:24 名
3 回目更新申請者数:16 名
4 回目更新申請者数:10 名
4. 4 学会 1 研究会合同 第 4 回人工心臓管理技術認定士認定試
見目恭一,塩野元美,徳永滋彦,戸田宏一,冨澤康子,
験について
中谷武嗣,西中知博,正井崇史,益田宗孝,松宮護郎,
1)認定委員会:
百瀬直樹,山崎健二,吉田 靖
日本胸部外科学会 荒井裕国
1. 第 28 回教育セミナーについて
日本胸部外科学会 塩野元美
1)会期・場所
日本心臓血管外科学会 許 俊鋭(委員長)
平成 24 年 7 月 21 日(土)・22 日(日)
日本心臓血管外科学会 益田宗孝
東京女子医科大学・弥生記念講堂
日本人工臓器学会 西村元延
2)テーマ:「人工臓器」
日本人工臓器学会 冨澤康子
3)参加者について
日本体外循環技術医学会 吉田 靖
日本体外循環技術医学会 百瀬直樹
参加者数:日本人工臓器学会
会員
50 名(賛助会員招待 10 名含)
日本臨床補助人工心臓研究会 中谷武嗣
非会員 43 名
日本臨床補助人工心臓研究会 戸田宏一
日本体外循環技術医学会 502 名
2)試験委員会:
4)次回は平成25 年7 月13日(土)
・14 日(日)に予定している。
許 俊鋭(東京大学)(委員長)
2. 4 学会合同 第 26 回体外循環技術認定士認定試験について
松宮護郎(千葉大学)
1)認定委員会:
小野 稔(東京大学)
日本胸部外科学会 荒井裕国
戸田宏一(国立循環器病研究センター病院)
日本胸部外科学会 塩野元美
中谷武嗣(国立循環器病研究センター病院)
日本心臓血管外科学会 許 俊鋭
西中知博(東京女子医科大学)
日本心臓血管外科学会 益田宗孝
3)会期・場所
日本人工臓器学会 西村元延(委員長)
平成 24 年 7 月 22 日(日) 12:30 より(セミナー終了後)
日本人工臓器学会 冨澤康子
12:30 ∼ 13:30 筆記試験 東京女子医科大学 臨床講
堂Ⅰ・Ⅱ
日本体外循環技術医学会 吉田 靖
12:30 ∼ 14:50 口頭試問 東京女子医科大学 弥生記
日本体外循環技術医学会 百瀬直樹
念講堂地下会議室
2)試験委員会:
日本人工臓器学会 西村元延(委員長)
4)試験について
日本人工臓器学会 冨澤康子
受験者数:24 名
日本人工臓器学会 西村 隆
合 格 者:20 名(合格率 83.3%)
(西村 元延)
日本体外循環技術医学会 安野 誠
日本体外循環技術医学会 関口 敦
<診療報酬対策委員会>
日本体外循環技術医学会 百瀬直樹
日本体外循環技術医学会 吉田 靖
平成 24 年度診療報酬改定が行われ,難易度が C・D・E の手
3)会期・場所
術について,
「外保連試案第 8 版」の技術度・協力者数・時間に
平成 24 年 7 月 22 日(日)
12:30 より(セミナー終了後)
基づき,約 1,200 項目の手術について,難易度 C・D は最大で
12:30 ∼ 14:30 筆記試験 東京女子医科大学 30%,難易度 E は最大で 50%を原則として引き上げが行われた。
臨床講堂Ⅰ・Ⅱ 中央校舎 4 階
高い専門性を有する検査や,症状等に応じた植込み型の医療機
14:50 ∼ 16:40 口頭試問 東京女子医科大学 器の調整,稀少疾患に対する外来管理等の医療技術,先進医療
弥生記念講堂地下会議室
新規技術(23 件),特定保健医療材料に係る技術料等(22 件)が
4)試験について
新設された。人工弁の再手術は 50%引き上げ,非拍動流補助人
受験者数:159 名
工 心 臓 保 険 償 還 で は,初 日 58,500 点,2 ∼ 30 日(1 日 に つ き )
合 格 者:148 名(合格率 93.1%)
5,000 点,31 ∼ 90 日(1 日につき)2,780 点,91 日目以降(1 日に
最 高 点:90 点(100 点満点)
つき)1,500 点が新設された。また,非拍動流型補助人工心臓
最 低 点:50 点
の適応条件から日本臓器移植ネットワークへの登録要項が削除
平 均 点:75.5 点
された。
240
人工臓器 41 巻 3 号 2012 年
自己検査用血液凝固分析器(高度管理医療機器・特定保守管
公明性を維持した状態で適正に推進させ,人工臓器の開発およ
理医療機器)に関して,植込型補助人工心臓(非拍動流型)を装
び人工臓器を用いた治療の進歩に貢献することにより社会的責
着する患者自身による自己測定が保険適用となった。
務を果たすことにある。
(山崎 健二)
本指針の核心は,日本人工臓器学会会員に対して COI につい
ての基本的な考えを示し,日本人工臓器学会が行う事業に参加
<政策検討委員会>
し発表する場合,COI 状態を適切に自己申告によって開示させ
厚生労働省の心臓移植基準検討作業班において,心臓移植適
ることにある。
応年齢上限を原則「60 歳未満」から「65 歳未満」へ引き上げるこ
本指針は日本人工臓器学会が関わるすべての事業における活
とが決定された。今後,厚労省の臓器移植委員会で了承を得た
動に対して適用される。特に,日本人工臓器学会の学術大会,
後に適用される。これにより,現在ブリッジユースとして認め
シンポジウム及び講演会で発表を行う研究者,および,日本人
られている植込み型補助人工心臓の適応年齢も「65 歳未満」に
工臓器学会の機関誌,論文,図書などでの発表を行う研究者に
引き上げられる見込みである。
は,本指針の遵守が求められる。
(西村 元延)
(山崎 健二)
<研究推進委員会>
<国際委員会>
2010 年 12 月に製造販売承認を得た植込型補助人工心臓 2 機
1. AAAO(Asia Pacific Academy for Artificial Organs)について
種は,2011 年 4 月より保険収載され,臨床応用可能となった。
3 年ごとに AAAO 講演会を開催することを委員会提案として
その使用の門戸は移植実施施設のみならず,重症心不全治療に
理事会に提出した。そのための学会積立金(33 万円 / 年)の予算
積極的な施設に開かれた。今後,補助人工心臓治療の適応拡大
計上をお願いした。2013 年の JSAO-IFAO Congress 後,3 年ごと
に向けて,補助人工心臓治療関連学会協議会などを通じてさら
に AAAO 講演会を JSAO,IFAO(日本開催時)で交互に開催する
なる活動を続けてゆく必要がある。
予定である。許俊鋭 IFAO 大会長のご厚意により ISRBP-JSAO-
1. 平成 24 年度(第 2 回)植込型補助人工心臓実施施設・実施医
IFAO 合同大会での AAAO 講演会を 2013 年 9 月 28 日(土)16 時
認定において植込型 LVAD 実施施設 11 施設,実施医 27 名が
∼ 18 時の 2 時間枠で開催することになった。今後,人選を進め
新たに認定され,日本臨床補助人工心臓研究会ホームペー
る。合わせて,中谷武嗣先生(IFAO Secretar y Treasurer)に
ジに掲載された。
AAAO に対する IFAO からの経済援助について検討をお願いし
2. 植込型補助人工心臓保険償還改定報告について
た。
①管理料の改定で,植込型 LVAD 装着 91 日目以後の管理料が在
2. ASAIO(サンフランシスコ)年次大会 JSAO セッションにつ
宅安全管理を目的に 200 点 / 日→ 1,500 点 / 日に増額された。
いて
② JOTN 登録条項が今回の保険改定で無くなったことが報告さ
富 永 隆 治 理 事 長 に 2012 年 7 月 14 日 8:00 か ら の General
れた。今後,各植込型 LVAD 実施施設と心臓移植実施施設と
Session 1: International Issues in Artificial Organs Development
の連携強化,心臓移植適応検討委員会の充実,植込型 LVAD
で“JSAO Update”をご発表いただき非常に好評であった。
実施施設更新条件の中に治療成績を盛り込むことなどの必要
3. ESAO 年次大会の JSAO presentation について
性が検討されている。
2012 年 9 月 26 日∼ 29 日にドイツのロストックで ESAO 年次
3. 平成 25 年度(第 3 回)植込型補助人工心臓実施施設・実施医
認定
大会があり,JSAO presentation として,以下の先生方に発表し
ていただいた。また,次回 IFAO 大会長の許俊鋭先生(東京大学)
①申請の締め切りは,平成 24 年 12 月 3 日(月)必着
による JSAO-ISAO Joint Congress のリーフレット配布,ポス
②認定 5 年後の実施施設・実施医認定更新条件について検討中
ター掲示,閉会式での大会紹介があった。
発表者:松田兼一先生(山梨大学)
,西中知博先生(東京女子医科
である。
(西村 元延)
大学)
,阿部裕輔先生(東京大学)
,増澤 徹(茨城大学)
4. 第 50 回日本人工臓器学会大会について
<利益相反(COI)委員会>
富永隆治大会長のご厚意により,第 50 回日本人工臓器学会大
今年度,利益相反委員会では,臨床研究の利益相反に関する
会に Asia & Pacific Symposium“Current Advances of Artificial
指針および運用規則を策定した。その概要は下記のごとくであ
Organs”を設けて頂いた。
る。詳細については,和文誌「人工臓器」およびホームページを
5. 学会 Journal への大会会告の相互掲載について
参照していただきたい。
ESAO 年次大会にて,各 Society の Annual meeting 会告をお互
日本人工臓器学会は,その活動において社会的責任と高度な
いの雑誌に掲載することについて提案があり,理事会,編集委員
倫理性が要求されていることに鑑み,
「臨床研究の COI に関す
会でのご検討をお願いした。
る指針」(以下,本指針と略す)を策定する。その目的は,日本
(増澤 徹)
人工臓器学会が会員の COI 状態を適切にマネージメントするこ
とにより,研究結果の発表やそれらの普及,啓発を,中立性と
人工臓器 41 巻 3 号 2012 年
241
<医療産業促進委員会>
<新科学技術・未来プロジェクト委員会>
【委員会名称と設置目的】
議題
名称:理事会審議を受けて,委員会名称を「医療産業促進委
1. TPP(Trans Pacific Partnership)と人工臓器
員会」と決定した。
設置目的:わが国におけるヘルスケア産業では,臨床現場が
新科学技術・未来プロジェクト委員会
求める良い医療機器を早く安く提供しようとしても,薬事承認
山家智之(委員長),山根隆志,阿部裕輔,岡本英治,福長一義,
審査,保険収載や Product Liability(PL)のハードルが高く,健全
中村真人,石原 謙(日医総研)
な経済活動が阻害されていると言わざるを得ない。国内薬事法
の枠の中で,いわばボランティア活動を行っているわが国のヘ
基本的にどのような事項が TPP の交渉に入るか,現時点では
ルスケア産業が,枠を越えて健全な経済活動ができるようにす
不明なので,賛成か反対か表明するのは時期が早いとはいえる。
るためには,薬事承認事例や国際市場などを調査し,どのよう
しかしながら,添付した日医総研のシンクタンク報告にある
な学会活動・支援活動があるべきか,どのような提言を行うべ
ように,アメリカからの要請と言って,日本の利益団体の要請
きかを含め,さまざまな側面からの企業委員の声を学会に反映
がアメリカ経由で帰ってくる交渉が散見され,TPP 交渉,日米
する場としたい。
交渉と言いながら,実は,日日交渉である側面が大きく,まずは,
【活動報告】
国民にとって,メーカーにとって,社会にとって,含有して日
第 1 回委員会
本全体の利益がいかにあるべきか,大枠の議論が必要になる。
2011 年 11 月 23 日(水)12:30 ∼(1 時間)慶応義塾大学矢上校
ちなみに条約,とは,文書による国家間の合意であり,国内
にて,設置趣旨の確認。引き続き,協賛行事。
法的効力を持つと解釈され,現状では条約が法律に優先すると
第 2 回委員会
解釈されている。
2011 年 11 月 27 日(日)14:30 ∼(1 時間)学会大会会場(日本
TPP に限らず,アメリカは,日本に非関税障壁の撤廃を要求
都市センター)第 4 室にて,H23 年度活動方針の検討。
してくる。米国通商代表部では,毎年「外国貿易障壁報告書」を
第 3 回委員会
提出している。2011 年度版では,医療機器に関しては外国平均
2012 年 3 月 16 日(金)11:30 ∼(2 時間)慶応義塾大学三田校
価格調整ルールの廃止または改正,医薬品に関しては新薬創出
北館にて,H24 年度活動方針の検討。引き続き協賛行事。
加算の恒久化と加算率の上限撤廃,市場拡大再算定ルールの廃
日本人工臓器学会大会(2012 年 11 月 22 ∼ 24 日アクロス福岡)
止または改正を列挙している。
での OS 計画
1)国民皆保険と TPP
当委員会から,学会は社会や企業に役立つ活動を行うという
誰もが認める最重要なポイントである。
指針を具体化するため,
日本は国民皆保険で,全国民が安価な医療を受けることがで
A)日本人工臓器学会大会において,ワークショップ「人工臓
きる。が,アメリカでは,オバマ政権があれだけ頑張っても,
器の溶血試験をいかにするか」(薬事審査での位置づけ)
現在,無保険者 4,500 万人といわれている。
をアカデミア主体の講師陣(6 名)で組み,試験の再現性,
現時点では,政府は,国民皆保険は守ると答申を出していま
絶対・相対評価,薬事での位置づけ等について議論を行
すが,
「増税はしない,沖縄基地は最低でも県外,マニフェスト
い,記録に残すこととした。
は守る」と言ってきた公約がどうなったかは,ご存じの通り。
B)同大会において,パネル「企業から学会への期待と学会か
アメリカ側は,今のところは日本の皆保険に介入する交渉はな
ら行政への期待」(レギュラトリーサイエンスを含む)を
いと言っているが,貿易交渉では「日本の保険制度」も,重要な
企業主体の講師(2 名)にアカデミア(2 名)を加えて実施す
交渉事項に入っているようである。
ることとした。
現時点ではどう交渉が動くかわからないが,これが動くとす
委員構成: べての制度設計は,一からやり直しとなるだろう。
山根隆志 (国)神戸大学【委員長】
2)医薬品と TPP
板垣一郎
東レ(株)
基本的にアメリカでは新薬は日本より高く,ジェネリックは
押山広明
テルモ(株)
安価。
神谷勝弘
泉工医科工業(株)
参考までに,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)最先発
小西義昭 (株)日機装技術研究所
のニューロタン(ロサルタン)50 mg, 米国では2.41 $(188 円),
佐藤正喜
ジェネリック 0.18 $(14 円),日本では先発 143 円,ジェネリッ
東洋紡績(株)
末岡明伯 (株)メディカルユーアンドエイ
ク 86 円。
筒井康弘 (株)東海メディカルプロダクツ
TPP で,要求される可能性があるとすれば,単純には,新薬(最
前田裕之 (株)ジェイ・エム・エス
近は画期的なものはあまりないが…)の価格は上がり,ジェネ
増田利明
リックは価格が下がる計算。
ニプロ(株)
増澤 徹 (国)茨城大学【担当理事】
起こり得るとすれば,日本で売られているジェネリックの価
(山根 隆志)
242
格設定が高すぎて非関税貿易障壁として TPP の交渉対象にな
人工臓器 41 巻 3 号 2012 年
り,ジェネリックはどんどん切り下げられ,アメリカから安価
ベター。
な後発薬がどっと輸入される理論。
安く済ませるにはアメリカの方がベター。
ただし,日本の医療費における薬剤費が多すぎるという意見
TPP として交渉されるとすれば,アメリカから安価な人工心
も強く,日本の医療費削減のためには,TPP があった方がいい
臓がダンピングで来て,日本の人工心臓の会社を焼け野原にし
という意見も成り立つ。
てからゆっくり値上げするという戦略は,当然,あり得る。
3)人工弁,ペースメーカと TPP
逆に日本の医療費全体を抑制するために,透析と人工心臓を
残念ながら,国産の人工弁とペースメーカは存在しない。す
はずすという選択もあり得ないわけではない。
べて輸入なので,日本人の健康寿命は,欧米の医療メーカと輸
アメリカと日本の私的な医療保険だけに認められるという交
入業者次第であるという側面があり,東日本大震災の様な極端
渉も,起こり得る選択肢になる。
な局面では生命予後に直結する。
6)混合診療と人工臓器
よく知られているように,人工弁,ペースメーカとも極端な
新しい医療機器開発には混合医療が望ましいという説はあ
内外価格差がある。欧米には過当競争も価格競争も大量生産の
る。
効果もあり価格が低めの設定になっているので,TPP で問題に
日本医師会では(批判もあるが)混合医療が全面解禁されれ
なるとすれば,日本の高価格が患者や保健医療の問題になり,
ば,新しい医療を保険診療する必要がなくなり,保険医療の範
ある種の非関税障壁を形成しているので,切り下げを求められ
囲が次第に縮小し,患者負担が増えていき,欧米の医療保険に
ることはあり得る。
吸収されていくスキームになるので,全面解禁には反対してい
人工弁,ペースメーカの保険価格切り下げは,中間マージン
る。
の医療機器輸入会社の経営は圧迫することはあり得るが,制限
いまだ明らかではない側面の方が多いが,TPP は人工臓器や
のある保険医療の伸びを考えれば福音にもなり得る。
医療だけでなく,全面的な日本の制度設計にかかわるので引き
4)透析と TPP
続き情報収集が必要と思われる。
日本では皆保険で,透析は高額医療の対象で,月 10 万以上患
者負担はかかりようがない体制。
2. 文部科学省科学研究費において,来年度科研費より,
「人間
アメリカでは透析は私的保険の範囲。また,メディケア,メ
医工学」の項目の中に,
「人工臓器学」のパートを独立させ
ディケイドの対象外の患者は,透析を受ければ,自動的に破産
ている。これまでは,再生医学と同じ項目なので,インパ
するほどの医療費になる。
クトファクター勝負でなかなかたいへんだったが,次年度
TPP で要求されるとしたら,保険診療の範疇から高額な透析
からは「人工臓器」で独自の勝負ができる予定である。たく
費用を外し,私的保険の範囲にすることで,アメリカの(または
さんの応募があれば採択の枠も広がるため,会員の皆様に
日本の)私的医療保険会社にお金を払わないと,透析が受けら
はよろしくお願いしたい。
れないという形はあり得る。
ただし,日本の医療保険の制度設計は明らかに破たんしてい
るといえないわけではないので,保険制度全体の経済を守るた
めに,
「胃ろう」などと並んで,
「透析」が目の敵になる可能性は
決してそう低くはない。
5)補助人工心臓と TPP
日本は世界で唯一,国民皆保険の下で,心臓移植と植込型補
助人工心臓の保険収載が認められている? (アメリカは無保
険者 4,500 万人,ドイツも皆保険ではない,カナダ,フランスが
状況不明,他の国家は人工心臓の症例数がほとんどないので計
算できない?)
日本では,EVAHEART ™と DuraHeart® が 1,810 万,アメリカ
(山家 智之)
では 8 ∼ 10 万ドル,植込み後の管理料に,日本は月 40 万,アメ
<情報広報委員会>
リカは州によってメディケア,メディケイドの対応が異なり,
補助人工心臓の本体価格も,病院と会社の交渉で決まり,大量
1. 平成 24 年度事業報告
に導入して大安売りもあり得る体制。
ⅰ)ホームページの管理
現状では,日本の人工心臓の方が保険請求総額としては大き
①平成 20 年 4 月 28 日から現在のホームページ(HP)に切り替
くなっている。が,アメリカでは術後フォローが保険の収載範
え,4 年以上問題なく運用してきた。週日のアクセス件数は,
囲かどうか統一されていないので,術後のフォローは電話一本
運用開始当初は 150 件 / 日程度であったが,現在は 370 件 / 日
かかってくるだけで,人工心臓が止まったらそこまでという病
となり,ニュースソースとして会員に恒常的に利用されてい
院も多い。
る(昨年に比較すると若干減少している)。アクセス解析によ
したがって,現状では,患者の命を守るためには日本の方が
る,地域ごとのアクセス件数,人工臓器関連トピックの抽出,
人工臓器 41 巻 3 号 2012 年
243
(非会員による)投機的な動きなどの動向調査も行った。
②英文 HP を立ち上げて 2 年が経過したが,これについてもアク
IFAO joint meeting の年になる。世界中から情報を集め,日本人
の叡智・技術力を加え,優れた医療機器をつくることが本学会
の活性化につながる。
セス件数の着実な増加を認めている。
(富永
③平成 23 年 1 月から ESAO,ASAIO,IFAO へのリンクボタンを
和文・英文 HP の表紙ページに設置したが,これも確実に利
用されている。
④和文誌編集部(学研メディカル秀潤社)から入手した 41 巻 1
号まで,HP 上に掲載している(J-STAGE と同じ)。
治)
<学会活性化(循環系)ワーキンググループ>
植込型補助人工心臓の保険償還ならびに管理料改定が行わ
れ,実施施設申請も増加しており,今後循環系領域では臨床面
⑤次世代 HP の構築
での活性化が期待される。ステントグラフトの臨床応用が企業
既にページの構築を終了した(次項参照)。
ベースで発展が見られ,同様に臨床面での活性化が期待され,
2. 平成 25 年度事業計画
学術総会での企画を考慮する必要がある。カテーテル人工弁の
ⅰ)次世代 HP の運用
本邦で適応が期待される中で,各種の人工弁も複数導入されて
動画配信,オンラインカンファレンス,動画アーカイブのリ
おり,いくつかの臨床領域で話題が豊富になりつつある。
トリーブ(過去の動画の取り出し)が可能なサイト(無料)を取
前年度のワーキンググループ(WG)内での検討を継続して行
り込んで,情報の更なる利用促進を図っている。既に,会員専
う方針としているが,総会会期中に WG 委員会開催予定である。
用ページおよび,動画配信ができる機能まで追加する作業を終
(塩野 元美)
了した。近々,試験的に動画を配信する。ただし,サイトには
賛助会員以外の医薬系企業のバナー広告が組み込まれること,
オンラインでの入会機能を削除できない(学会では現在これを
<学会活性化(広領域)ワーキンググループ>
<学会活性化(代謝系)ワーキンググループ>
認めていないので,申請者には個別に断り状を書いている)こ
1. 平成 24 年度事業報告
と,などの問題点があり,本格的な運用の前にこれらをクリア
本学会では代謝系研究者,広領域研究者の会員数が余り多く
する必要がある。
ないことから,学会活性化(広領域)ワーキンググループを学会
ⅱ)HP の管理運営
活性化(代謝系)ワーキンググループと合同で企画し,今後の具
次世代 HP の構築により,管理がさらに複雑化しているので,
体策を立案した。
専門職による管理体制について検討する。
①学生や若手研究者をこの分野にリクルートすることも視野に
(山下 明泰)
入れて,若手のための「優秀賞」を各大会で開催してもらえる
ように準備を進めこととした。特に優秀なものについては,
<将来計画・学会活性化委員会>
「優秀論文」として和文誌に原著を掲載する機会を与えること
設立以来 50 年を経た日本人工臓器学会は医療機器研究・開
を含めて,積極的な対応を行う。なお,これらの具体化策に
発の総合学会として最も古く,いくつかの専門学会を派生させ
ついては「学会活性化(代謝)ワーキンググループ」と共同歩
てきた。本委員会は日本人工臓器学会の将来的在り方を考え,
調を取ることとした。
同時に活性化のための方策を検討するために作られた。下部組
織として学会活性化ワーキンググループが循環系,代謝系,広
②広報活動が重要なので,情報広報委員会で計画中の次世代
ホームページシステムを利用した情報発信を企画する。
領域の各分野に作られ,それぞれの担当理事を中心に,いかに
2. 平成 25 年度事業計画
したら学会が活性化するか具体的な案を練っていただいてい
①上記「1. ①」については,次期大会長にも働きかけを行い,で
る。従って,本委員会活動は主に理事会の席上で行われた。学
きれば理事が全員で審査に当たるように配慮する。「論文」掲
会の活動性の一つの指標として,会員数の増加があげられる。
載は多額の費用が発生するため,再考を余儀なくされたが,
減少した臨床医を増やし,体外循環技術認定士,透析技術認定
士,看護師といったメディカルスタッフの新規参入を促すこと
が重要と考えられる。このためには日本人工臓器学会員である
何らかの形で活字化に協力する体制を整える。
②スマートフォンの利用者が増えているので,ホームページの
携帯サイトの充実を情報広報委員会にお願いする。
ことそのものが資格認定につながる仕組みづくりが必要であ
(山下 明泰,松田 兼一)
る。昨年 4 月から保険償還が認められた植込型人工心臓の実施
医認定に,本学会会員であることを要件としていただき,臨床
<大会あり方委員会>
医の増加が期待された。昨年度は思ったほどの増加は無かった
今回第 50 回大会を担当してつくづく思ったことは応募演題
が,認定施設の増加によって今後の会員増加が期待される。研
数の少なさであった。応募する施設も限定されている。参加人
究費配分の再生医療への傾斜が今後ますます加速されると予想
員に関してもまだ終わってはいないが多くは望めなさそうにな
される中,本学会も再生医療とのハイブリット化を考えざるを
い。学生等の参加費無料の入場者を増やすことにも意味はある
得ない状況にある。アイデアはいくつもあるはずだ。また学会
とは考えるが大会運営上は難しい。今回は理事をはじめ多くの
が発信する情報が高度で有用であれば,それだけでも人は集ま
先生方に無理を言ってシンポジウム,パネル,あるいはワーク
る。この意味から国際交流は欠かせない。次年度は JSAO −
ショップを組織して頂き演者を集めていただいた。だがこの手
244
人工臓器 41 巻 3 号 2012 年
法は長くは続かない。身の丈に合った大会を企画する時期に来
代謝領域では「Acetate-free blood purification can impact
ているのではあるまいか。会場は 3 会場,これにポスターと展
improved nutritional status in hemodialysis patients」 と
示会場を入れる程度で良い。定常流ポンプ研究会,膜型肺研究
「Continuous monitoring of glucose levels in the hepatic vein and
会や臨床補助人工心臓研究会といった大会に付随して行われて
systemic circulation during the Pringle maneuver in beagles」の 2
いる研究会を大会に組み込んでしまうことも考慮すべきであ
編が推薦された。
る。ほとんどテーマが重複しており,同じ演者が同じことを 2
広領域は該当なしとなった。
度発表することもまれではない。それぞれに設立された経緯が
各領域の論文賞選考委員会にて,上記 4 論文を本年度の論文
あり,難しい問題もあるかと思うが,小異を捨てて大同団結し
賞として選定し,理事会に報告した(選考の詳細については,各
ていただきたい。透析の分野では今回日本透析医学会とのジョ
領域選出委員会報告を参照)。
イントシンポジウムを企画したが今後も続けていくべきであ
2011 年度から候補論文の範囲を自薦・他薦されたものに限
る。日本経済は今後しばらく好転することはない。研究費も削
定するのではなく,本学会員の論文であれば選考対象としてい
減される方向にある。なお一層締め付けは強化される。この中
る。なお,非会員の論文も少なからずあり,論文受理の時点で,
で例外は再生医療で,人工臓器学会もこの方向に向かわざるを
会員になると論文賞の選考対象になることを投稿者に通知し,
得ない。臓器再生は人工臓器の究極の形である。今回もいくつ
対象論文の拡大に努めている。詳細については前付の会告「日
かのセッションに組み入れたが,まだまだ不足である。大会は
本人工臓器学会平成 25 年度論文賞候補論文の選考について」を
学会の事業の中で最も大きく重要なものであることは言うまで
参照されたい。
もない。皆さんの叡智を集めた面白くも意義あるものであって
なお,技術賞・Grant については従来通りである。
(米川 元樹)
ほしい。
(富永
治)
<医療安全委員会>
<論文賞(循環系)選出委員会>
論文賞候補論文(循環系)
昨今の人工心肺等の医療事故を鑑み,命に関わる人工臓器の
多くに関わる基幹学会として,医療安全に関する委員会の設置
著 者 名:M a s a h i k o A n d o , Yo s h i a k i T a k e w a , T a k a s h i
の必要であるとのことから,7 月 31 日に開催された 2012 年度第
Nishimura, Kenji Yamazaki, Shunei Kyo, Minor u
3 回理事会にて,同委員会の設置が決定され,委員を下記の通り
Ono, Tomonori Tsukiya, Toshihide Mizuno, Yoshiyuki
決定した。
Taenaka, Eisuke Tatsumi
委 員 長
塩野元美(日本大学)
副委員長
冨澤康子(東京女子医科大学)
委 員
金子岩和(東京女子医科大学)
論文題名:A novel conterpulsation mode of rotary left ventricular
assist devices can enhance myocardial perfusion
掲 載 誌:J Artif Organs 2011;14:185-191
北野達也(星城大学)
【選考理由】
田林晄一(東北厚生年金病院)
本論文は,自己心の拍動周期に合わせて定常流ポンプの回転
筒井達夫(筑波大学)
数をコントロールできるコントローラを開発し,それを用いて
富永隆治(九州大学)
定常流にカウンターパルセーションを組み合わせ,心筋潅流に
西田 博(東京女子医科大学)
及ぼす影響を検討した実験的研究である。定常流ポンプにカウ
西村元延(鳥取大学)
ンターパルセーションを組み合わせるという発想の新規性,
吉田 靖(労働者健康福祉機構大阪労災病院)
brige-to-recover y などへの臨床応用の可能性を含めた研究の将
米川元樹(社会医療法人北楡会札幌北楡病院)
来性,および困難が予想される実験から仮説どおりの結果をひ
今後の活動・詳細については,ホームページ,学会誌,社員
きだした努力が高く評価された。以上より,本論文は,2011 年
総会等で随時報告予定である。
度の循環系論文賞に相応しいものと考える。
(塩野 元美)
著 者 名:Fumiaki Kuwabara, Akihiko Usui, Yoshimori Araki,
<選奨委員会>
Yuji Narita, Sinichi Mizutani, Hideki Oshima Yuichi
本年度も循環領域(委員長:西村元延),代謝領域(委員長:
松田兼一),広領域(委員長:山家智之)の 3 領域で,
「Journal of
Ueda
論文題名:P a t h o g e n e s i s o f p a r a v a l v u l a r l e a k a g e a s a
Ar tificial Organs(以下,JAO)」に掲載された論文のうちから,
complication occurring in the late phase after surgery
掲 載 誌:J Artif Organs 2011;14:201-208
それぞれ論文賞を選考した。
循環領域では「A novel counter pulsation mode of rotary left
【選考理由】
ventricular assist devices can enhance myocardial perfusion」と
本 論 文 は,著 者 ら の 施 設 に お け る 17 年 間 の paravalvular
「Pathogenesis of paravalvular leakage as a complication
leakage による手術症例について検討したものである。再手術
occurring in the late phase after surgery」の 2 編が推薦された。
の適応は心不全症状と高度の溶血であり,対象症例数は 8 例と
人工臓器 41 巻 3 号 2012 年
245
少ないものの,その発生原因について詳細に検討されている。
明であった。本論文はビーグル犬を用い,肝静脈,門脈及び
その結果,大動脈弁位では縫合糸の緩みが最も多い原因であっ
内頚静脈に血糖測定センサーを留置し,肝動脈及び門脈クラ
たが,僧帽弁位では前交連部における組織の断裂,valve-on-
ンプによる各血糖値変化を人工膵臓を用いて連続的に測定し
valve str ucture が多かった。症例数は少ないものの,弁置換術
た。その結果クランプ中に肝臓内の血糖値が増加し,クラン
後遠隔期におこる paravalvular leakage の原因に関する新しい知
プ解除と共に肝臓内の糖が一気に全身に放出される現象を捉
見を示しており,今後の心臓弁膜症治療に役立つものと考えら
えることができた貴重な論文である。この結果を今後どのよ
れる。以上より,本論文は,2011 年度の循環系論文賞に相応し
うに臨床に応用するか不明であるとの指摘があったものの,
いものと考える。
新規性や人工膵臓の新しい応用であることを考慮すると,本
【選考経過】
論文は論文賞論文に十分値すると判断した。
本 年 度 の 論 文 賞 対 象 論 文,す な わ ち Jour nal of Ar tificial
【選考経過】
Organs に掲載された会員による original article は,循環系のも
論文賞論文は本来 1 編に絞る必要があるが,上記両論文にお
のは 8 編であった。このうち基礎系の論文が 5 編,臨床系の論
いては腎臓・肝臓と対象臓器が異なる上に,臨床研究・基礎研
文が 3 編で,おのおの上記の論文が最高の評価を得た。基礎系
究と研究対象も異なることから甲乙付けがたく,どちらの論文
で最高評価を得た論文,臨床系で最高評価を得た論文,いずれ
も論文賞に該当するとの結論に至った。そのため,本年度は代
が論文賞にもっともふさわしいか議論したが,最終的には甲乙
謝系からは 2 編の論文を論文賞として理事会に推薦することと
つけがたしという意見で一致し,当該 2 論文が論文賞候補論文
なった。
(松田 兼一)
と決定された。
(西村 元延)
<論文賞(代謝系)選出委員会>
<論文賞(広領域)選出委員会>
日時:2012 年 6 月 30 日(土)15:00 ∼ 16:00
論文賞(代謝系)選出委員会は平成 24 年 6 月 28 日に開催され,
場所:東北大学加齢医学研究所
候補論文を選出した。
出席:○山家智之,阿部裕輔,岡本英治,山根隆志,福長一義,
白石泰之
本年度の代謝系候補論文は 3 編であった。慎重に審査の結果,
本年度の論文賞(代謝系)は以下の 2 論文を理事会に推薦するこ
基礎研究論文 2 編に対して論文賞(広領域)の選考を行った。
ととなった。
本論文賞は,新たな研究の方法論を示して学会に貢献し,学術
1. M a t s u y a m a K , To m o T, K a d o t a J . A c e t a t e - f r e e b l o o d
的に新たな地平を開いたものについて選出されるべきであると
purification can impact improved nutritional status in
の考えから,対象 2 論文に対して,これまでの研究の方法論と
hemodialysis patients .J Artif Organs 2011;14(2):112-9
の違いについて議論がなされ,本年度は該当なしとなった。
(山家 智之)
2. Yatabe T, Kitagawa H, Kawano T, Munekage M, Okabayashi T,
Ya m a s h i t a K , H a n a z a k i K , Yo k o y a m a M . C o n t i n u o u s
monitoring of glucose levels in the hepatic vein and systemic
<技術賞・Grant 選出委員会>
circulation during the Pringle maneuver in beagles. J Artif
技術賞・Grant 選出委員会は平成 24 年 6 月 28 日に開催され,
Organs 2011;14(3):232-7
本年度の技術賞・Grant を選考した。
技術賞
【選考理由】
1. 本論文は慢性維持透析における新しい透析液として注目を集
めている acetate free dialysate(AFD) の臨床的有用性を血液
【選考経過および採択理由】
本年度の技術賞には 3 件の応募があり,慎重に審査を行った
マーカの変動で証明した唯一の論文である。AFD の有用性は
結果,下記の技術を本年度本学会技術賞として選出した。
これまで in vitro や理論上では示されてはいたが,臨床研究で
・井家益和(株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)
明確に示された論文は存在しなかった。本論文は Leptin や
「自家培養表皮(商品名:ジェイス)」
neuropeptide Y のような栄養マーカの変化から栄養に対する
本技術は,患者自身の数 cm2 程度の皮膚を原材料として,2 ∼
AFD の有用性を,また炎症性サイトカインである IL-6 血中濃
3 週間培養することで,全身を覆う面積の移植用の再生医療製
度の変化と CRP の変化から AFD の抗炎症作用について立証
品である表皮細胞シートを製造するものである。ヒト細胞を用
した貴重な臨床研究論文と考える。症例数や観察期間が不十
いた製品であり,最新の科学水準に則った出荷規格を設定し,
分との指摘があったものの,本テーマにおける臨床研究の困
有効性と安全性を担保することや,生細胞を維持した状態で輸
難さや新規性を考慮すると,本論文は論文賞論文に十分値す
送可能なシステムを開発することなど,種々の課題をクリアし
ると判断した。
製品化を達成したもので,本製品はわが国初の再生医療製品で
2. 本論文は肝切除術における術後高血糖のメカニズムを人工膵
臓を利用して検討した唯一の論文である。肝切除術において
は術中出血量の軽減をはかるため,肝への流入血を遮断して
肝離断を行うが,その後に発生する高血糖のメカニズムは不
246
ある。
Grant
【選考経過】
Grant について本年度は 13 件の申請があり,公示文にあるご
人工臓器 41 巻 3 号 2012 年
とく,
「萌芽的研究を掘り起こし,研究助成を行う」との立場を
「内皮細胞接着性ペプチドで修飾した脱細胞化小口径
Long bypass graft の開発」
踏まえて慎重に審査した。
(米川 元樹)
10 点満点で無記名採点投票を行った結果,上位から 40 点,40
点,36 点,35 点,31 点,31 点,29 点,28 点,26 点,21 点,20 点,
19 点,17 点となった。Grant の対象を何位までとするか検討し
<選出評議員候補者選出委員会>
た結果,35 点と 31 点との間には明確な差があるとの判断に立
定款および施行細則に基づき,平成 25 年 4 月末日をもって,
ち,35 点 を 獲 得 し た 4 位 ま で を 選 出 す る こ と と な っ た。 総
現評議員の任期が満了となることから,選出評議員候補者選出
額 150 万円の研究経費については,Yoshimi Memorial T.M.P.
委員会(以下,評議員選出委員会)が発足した。
Grant(100 万円)として 1 位の 2 名に 50 万円ずつ,Grant-MERA
同委員会は規定により,副理事長が委員長を務め,担当理事
(50 万円)として 3 位に 30 万円,4 位に 20 万円を支給することと
が副委員長となるため,米川副理事長と西村理事が理事会で選
した。
任された。また,循環領域(7 名),代謝領域(5 名),広領域(6 名)
1 位:武居昌宏(千葉大学大学院工学研究科)
の各分野から委員を選任した。
「補助人工心臓内の血中栓子 3D モニタリング法の構築」
7 月 13 日に第 1 回評議員選出委員会を開催し,タイムスケ
1 位:中田孝明(千葉大学医学部附属病院救急部・集中治療部)
ジュールと評議員審査のための業績の基準(案)の策定を主と
「血液浄化膜へ吸着する物質のプロテオーム解析に基づ
して,前期からの申し送り事項の確認,前期業績基準からの変
く新しい敗血症関連蛋白質の探索と膜吸着の実態究明」
更について協議を行った。
3 位:荒川 衛(国立循環器病センター研究所人工臓器部)
以上の協議結果を理事会へ答申し,一部改訂の上,諸手続き
「右心補助を目指した定常流型左室補助人工心臓による
についての承認がなされた。
(米川 元樹)
心拍同期回転数制御システムの開発」
4 位:馬原 淳(国立循環器病センター研究所生体医工学部)
●学会ニュース
《第 12 回日本再生医療学会総会》
〈日本医師会医学賞〉
・ 幹細胞システムにおける細胞分化機構の解明 / 仲野徹(阪
大・病理学)
会 期:2013 年 3 月 21 日(木)∼ 23 日(土)
・ 魚食により摂取される環境汚染物質の健康影響とリスク評価
会 場:パシフィコ横浜
に関する研究 / 佐藤洋(内閣府食品安全委員会)
テ ー マ:10 年後を担う再生医療を目指して
会 長:高戸 毅(東京大学大学院医学系研究科教授)
・ 日本人の虚血性心疾患に関する基礎的・臨床的研究 / 下川
宏明(東北大・循環器内科学)
《日本医学会だより》
・ ABO 血液型不適合腎移植への挑戦―免疫学的禁忌の克服と
2012 年 10 月 No. 48
日本医学会
◆第 143 回日本医学会シンポジウム
臨床応用の普及 / 髙橋公太(新潟大・腎泌尿器病態学)
〈日本医師会医学研究奨励賞〉
・ 新規細胞接着分子システムが動脈硬化を制御する分子機構 /
「がんの一次予防と二次予防」をテーマに,12 月 20 日(木)
13:00 ∼ 17:00,日本医師会館大講堂において開催する。組織
委員は,津金昌一郎,祖父江友孝,浜島信之,斎藤博の各氏。参
加申込みは郵便はがき,FAX,本会 HP(http://jams.med.or.jp/)
にて受付中。参加費無料。プログラムは日本医学会 HP に掲載中。
扇田久和(滋賀医大・分子病態生化学)
・ 腸管上皮培養技術を応用した全腸管組織体外構築の試み /
中村哲也(医歯大・消化管先端治療学)
・ ミトコンドリアダイナミクスによるエネルギー代謝調節機構
の解明からナノ治療へ / 野村政壽(九大・内分泌代謝・糖尿
病内科学)
◆医学賞・医学研究奨励賞の決定
・ 膵臓癌の早期診断法の開発に関する研究 / 谷内田真一(国立
選考委員会を 8 月 29 日(水)に開催し,平成 24 年度の日本医
・ 脳磁計による神経義手制御と ALS 患者への適応 / 栁澤琢史
師会医学賞・医学研究奨励賞の授賞が決定した。
本選考は,日本医師会から日本医学会に委任されており,今
(阪大・脳神経外科学)
・ 社会格差と健康∼行動経済学的アプローチによるメカニズム
年度の推薦数:医学賞 13,奨励賞 40 を審査した。
選考の結果,11 月 1 日(木)の日本医師会設立記念医学大会に
おいて,今年度の医学賞は 4 名,奨励賞は 15 名に授与される。
選考の結果は下記のとおり。
がん研究センター研究所)
解明 / 橋本英樹(東大・公衆衛生学)
・ 東日本大震災被災地における保健医療従事者に対するこころ
のケア及び自殺対策の教育システムの構築を目的とした地域
人工臓器 41 巻 3 号 2012 年
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