高発癌性遺伝性皮膚疾患のDNA診断 診療科 : 皮膚科 適応症 : 基底細胞母斑症候群、Cowden病 主な内容 :癌を発生しやすい皮膚科関連の遺伝病の中に、基底細胞母斑症候群とCowden病(カウデン病)がありま す。基底細胞母斑症候群では、基底細胞癌という皮膚癌が複数発生します。また、手のひらに小陥凹や 顎骨に嚢胞ができます。他の臓器に腫瘍ができることもあります。カウデン病では、歯肉に乳頭腫様の 病変や手足に小さな角化性の丘疹、顔面に外毛根鞘腫などの良性の角化性皮膚腫瘍が複数発生します。ま た、食道から大腸におよぶ消化管ポリポーシスを生じます。乳房、子宮、甲状腺などいろいろな臓器に悪 性腫瘍ができることもあります。 両疾患とも、以前から常染色体優性遺伝形式をとることが知られていましたが、1996年からその翌年 にかけて両疾患の責任遺伝子がわかりました。基底細胞母斑症候群ではPTCHという一つの遺伝子に生 まれ持った異常があり、カウデン病ではPTENという一つの遺伝子に生まれ持った異常があるため、そ れぞれの病気を発症します。したがって、両疾患が疑われる場合には、血液からDNAを抽出し、基底 細胞母斑症候群ではPTCH、カウデン病ではPTEN遺伝子の異常を詳しく調べることで、それらの病 気かどうかの診断を確定することができます。必要な採血量は、5∼10ccと通常の検査とほぼ同じで す。血液から抽出したDNAを使って、PCR-SSCP法という方法で責任遺伝子の異常の有無をスク リーニングした後、異常と思われる部分のDNAの塩基配列を決定しますので、正確な結果が出るまでに 約1-2ヶ月かかります。 現時点では、DNA診断で見つかった遺伝子の異常を根本的に治療することは技術的に不可能です。しか し、両疾患ではいろいろな臓器に腫瘍性病変が発生しますので、なるべく早期に診断を確定し、小児科、 内科、婦人科など他科と連携した定期的な経過観察によって、癌を予防または早期に発見することができ ると考えられます。たとえば、基底細胞母斑症候群では、早期に診断し小児期より日焼け止めなどをうま く使って無防備な日光暴露を避けることで、基底細胞癌の発生を予防できる可能があります。また、お子 さまなど両疾患の親族の方をDNA診断し、早期に遺伝の可能性を否定できれば、将来の発症の心配が全 く無くなります。 このように、このDNA診断は5∼10ccの通常の採血で可能であり、基底細胞母斑症候群とカウデン 病の確定診断に加えて、親族への遺伝の有無を調べることが可能です。
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