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「朝顔」 熊本県 天草一郎
目 次
随 想 食をめぐる日本の環境……………………………… <大迫一史>…
解 説 シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用(第31回)
脱酸素低温発酵法による新たなヨーグルト製造法 <堀内啓史>…
解 説 シリーズ解説:食品産業における環境対策(第3回)
温室効果ガス排出量の見える化「カーボンフットプリント」の動向
………………………………………… <稲葉 敦>…
肺魚のため息 皇室と生物学−ナチュラリストの系譜− <多紀保彦>…
海外技術・マーケット情報
調理法が野菜の抗酸化活性に与える影響………………………………… 460
2009年に向けた食品製造業のトレンド調査……………………………… 463
新・原産地表示の利点と問題点…………………………………………… 465
2009年の食品および素材の傾向予測……………………………………… 468
新しいEUの添加物規制… …………………………………………………… 470
時間−温度モニターラベルを用いたロブスター輸送…………………… 471
機能性を生かしたパッケージデザイン…………………………………… 472
日持ちする牛乳……………………………………………………………… 474
442
444
450
457
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業界トピックス:『コーヒーの需要動向に関する基本調査』にみる
コーヒーの最新飲用事情…
連載エッセー:食の遠近画法 最終的決断……………………<五明紀春>…
特別レポート:日本における清涼飲料,ビール系酒類市場
─平成21年の上半期を振り返って─…<醸造産業新聞社 編集部>…
特別解説:母乳によるビフィズス菌増殖メカニズムの解明および
鍵となるヒトミルクオリゴ糖成分の製造技術の開発…<北岡本光>…
業界の話題………………………………………………………………………………
今月の統計………………………………………………………………………………
技術用語解説:易開封性包装容器……………………………………………………
最近の技術雑誌から……………………………………………………………………
野菜・果物を巡って(第八話) 夏には西瓜(すいか)を… …<吉田企世子>…
477
478
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499
503
FOOD
&
PACKAGING
缶詰技術研究会 http://kangiken.net/
随 想
食をめぐる日本の環境
─とくに期限表示について─
おお
さこ
かず
ふみ
大 迫 一 史
(東京海洋大学 准教授)
近頃の人,食品の期限表示
ているのが現状である。私は現職に至る以前には
私は東京海洋大学において食品の貯蔵に関する
公立の研究所において民間企業に対してこれらの
授業を担当させてもらっている。この授業の中で
指導を行っていた。対象となる食品が全て水産加
賞味期限,あるいは消費期限の設定法に関する話
工食品であったこともあり,基本的には一定の保
をするのであるが,このときに,食品の賞味期限
存条件(温度等)において経日的に一般生菌数を
や消費期限に対する意識について学生に尋ねると
測定し,腐敗に達したときの3分の2の期間を保
賞味期限に対する意識が非常に強いことに驚く。
存期限とするように指導していた。むしろ,2,
食品の種類にもよるが,例えば賞味期限が冷蔵で
3ヵ月冷蔵保存しても腐敗もしないし,呈味も変
1週間と書いてある食品であれば,2,3日冷蔵
化しないといった食品については保存期限を1ヵ
庫に置き忘れていたものは食べず,すぐさま捨て
月などとしていた。これは,2,3ヵ月も家庭に
てしまうようである。私などは,2,3日冷蔵庫
おいて冷蔵保存する場合,実験室において完全に
に放置していたものでも臭いを嗅ぎ,少し食べて
守られている一定条件とは異なり,冷蔵庫の開閉
みて大丈夫そうであったら平気で食べる。
頻度などの完全な予測が不可能な要因により食品
賞味期限と消費期限の違いについては,賞味期
の劣化が速まることへの危惧があるためだが,そ
限は「おいしく食べることができる期限。ただし,
れ以上に,消費者が購入して消費するまでに時間
この期限を超えた場合であっても,これらの品質
がかかると商品の回転数が悪くなり販売に影響す
が保持されていることがあるものとする」。一方,
ることへの危惧が大きいからである。すなわち,
消費期限は「定められた方法により保存した場合
このようにして設定された保存期限であれば,
「冷
において,腐敗,変敗その他の品質の劣化に伴い
蔵(10℃)で20日」とあっても,2,3日経過し
安全性を欠くこととなるおそれがないと認められ
たところで大きな問題は無いのである。
る期限」とされており,一般に劣化が速い食品に
昔の人,食品の期限表示
おいては消費期限が適用される。すなわち,少な
私の父方の祖母は90歳代半ばであるが非常に元
くとも賞味期限と表示されているものについては,
気で,現在も独り暮らしをしている。この祖母は
それを過ぎた場合においてもそれを食べたところ
食品の期限表示をほとんど気にしない。また,現
で健康上被害を及ぼすとは限らない。
在は亡くなっている祖父母についても食品の期限
食品の期限表示の設定法
表示を気にしていた記憶は無い。これは,私の祖
賞味期限や消費期限の設定に関して基本的には
父母が田舎に住んでいて加工食品そのものを購入
法的な根拠は無く,食品メーカーの責任に任され
する機会があまり無いこともあるが,自らの五感
食品と容器
442
2009 VOL. 50 NO. 8
を駆使して食べても大丈夫かどうかを判断してい
を摂ると数日は下痢に悩まされるようである。私
るためである。さすが戦中戦後の日本が飢餓の状
が勝手に推測するに,この理由は日本の食品が微
態にあって生き抜いて来た人達であると感心する。
生物学的に非常にクリーンで,これに体が慣れて
すなわち,食品,とくに加工食品に接する際,食
しまい,東南アジアの母国に帰り,そうでない食
品の包装を開けて,まず丹念にカビが無いか変色
品を摂取したときにお腹をこわす。あるいは,そ
していないかを見る。次に,少し手でつまんで指
もそも彼らが母国にいたときは食品を摂取する前
でこすり,臭いを嗅ぐ。そして少し口に入れて大
に,過去の日本人がかつてそうであったように注
丈夫であると判断すればそれを食べる。本学の学
意深く安全性を確認出来ていたものが,日本の安
生が期限表示のみを見て,それが期限前であれば
全な食品を食べているうちに注意深さが失われて
何も疑わずにパクつくのとは大きな違いである。
その能力が低下してしまい,母国に帰ったときに
私は,期限表示が多少過ぎたものであっても臭い
そうでない食品をパクついてしまう。
を嗅ぎ,少し食べてみて大丈夫そうであったら平
いずれにしても,微生物学的に非常にクリーン
気で食べるが,これは祖父母の影響である。ただ,
な日本の食品に慣らされた人間が,そうでない食
私の場合時々判断を誤って腹痛を起こすことがあ
品が多い環境に置かれた場合,非常に弱いことを
るが・・・。
示唆している。
最近よく思うこと
食品製造者の責任と消費者の責任
近頃の学生を見ていて最近よく思うことがある。
賞味期限にせよ,消費期限にせよ,大部分の製
表示された食品の保存期限に対して何も疑問を感
造者はこれらの設定については,最低限,購買者
じていないのではなかろうか。自らの生命にかか
の健康を損ねるようなことがないように努めてい
わる食に関して他人任せで果たして良いのだろう
るのは誰しも理解するところである。一部の企業
か。人間にはそもそも,食品を摂取するにあたり,
の不注意により,食品に対する安全性が疑問視さ
これに対して安全かそうでないかは五感(本能)
れるようなご時世になった昨今では尚更のことで
を通じて判断出来る能力が備わっている筈である。
あろう。一方で,消費者も食品の安全性に対して
これを表示されている数字を忠実に守ることによ
自ら判断できるだけの能力を有するべきであると
り失っているように思えてならない。最低でも,
思う。少なくとも,自分が口にする食品が,腐っ
自らが口にするものに対しては自らが安全かどう
ていないかどうか程度の判断は本来本能的に備わ
かの判断は出来るべきではなかろうか。
っている筈であり,この能力を人間が失ってはな
話は少し変わるが,私の研究室は大所帯で20名
らないものと考える。言い換えると,消費者自身,
の学生がいるが,このうち3名は外国人である。
自らの生命を維持する手段としての食品の摂取に
いずれも東南アジアの発展途上国からの留学生で,
対し,可能な限り責任を持つことが必要だと思う。
私も彼らの母国を訪れたことがあるが,日本と比
極論になるが,世界の人口が増大している現状
較して食品の衛生状態は極めて悪いようである。
の中,近い将来に世界的な食糧難の時代がいずれ
私は普段から腐敗しかけたものを口にすることに
やって来るであろう。そのような時代にあっては
よりお腹を鍛えている(?)こともあってか経験
場合により,栄養となりそうなものであれば何で
したことが無いが,一般に日本人は加熱していな
も口にしなくてはならないことがあるかも知れな
い食品や生水(なまみず)をこれらの国で摂取す
い。そのときに巷に溢れる安全な食品に飼いなら
ると腹痛を起こすと言われる。実際に私の研究室
された日本人が,生命を維持するための食につい
の外国人学生でさえ,一部は母国に帰国して食事
て,これの安全性を自ら判断できるだろうか。
食品と容器
443
2009 VOL. 50 NO. 8
シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用(第31回)
○解説○
脱酸素低温発酵法による 新たなヨーグルト製造法
〜伝統的なヨーグルトを科学することで誕生した新たな発酵方法〜
ほ り う ち・ ひ ろ し
九州大学大学院農学
研究科修士課程修了。
明治乳業株式会社入
社。食品開発研究所
・発酵乳G
堀 内 啓 史
てから発酵することで発酵時間を短縮できること
○ 要 約 ○
を見出した(脱酸素発酵法)。また,「脱酸素発酵
一般に,ヨーグルトは2種の乳酸菌Lactobaci-
法」を「低温発酵」*3と組み合わせる(脱酸素低
llus delbrueckii subsp.bulgaricus(ブルガリア
温発酵法)ことで,まろやかなヨーグルトの製造
菌 ) とStreptococcus thermophilus( サ ー モ フ ィ
に成功し,現在,工業生産において実用化してい
*1
ルス菌)の共生作用 で乳を発酵させて生産する。
これらの乳酸菌は,通性嫌気性菌であり,酸素の
る。
○ は じ め に ○
存在下でも活発に生育する。そのため,従来,酸
素がヨーグルトの発酵に及ぼす影響について着目
日本では,1950年にヨーグルトの本格的な工業
した研究は殆ど無かった。そこで,我々は,ヨー
生産が開始されて以来,着実に市場が拡大してき
ほとん
*2
グルト乳酸菌であるLB81乳酸菌 を用いて,酸
ている。最近10年間でみるとヨーグルトの市場は,
素が発酵に及ぼす影響についての研究を行った。
消費者の健康志向を背景に2倍近い伸びを示し,
結果,LB81乳酸菌は,発酵中に培地(乳)の溶
現在,約3000億円の巨大な市場となっている。
存酸素を減少させ,およそ0ppmに到達した後,
日本におけるヨーグルトの歴史は,奈良時代に
活発な増殖を開始することが明らかとなった。こ
「酪(らく)」といわれる酸凝固した牛乳が始まり
のことにより,あらかじめ乳中の溶存酸素を減じ
とされている。しかし,これは,朝廷に献上され
*1
共生作用:ブルガリア菌とサーモフィルス菌の間には共生関係があり,混合培養すると,それぞれ単独培養に比べ
乳酸生成速度が高まる。ただし,菌株によっては,共生関係が成立しないこともある。
*2
LB81乳酸菌:ブルガリア菌2038株とサーモフィルス菌1131株を混合した乳酸菌スターターの名称。
*3
低温発酵:通常,ヨーグルトは40〜45℃程度で発酵する。我々は,これより低い発酵温度を「低温発酵」と定義し
た。
食品と容器
444
2009 VOL. 50 NO. 8
脱酸素低温発酵法による新たなヨーグルト製造法
るような極上品で,ほんの一部の人だけが口にで
ේᢱ⺞ว
きたものであった。ヨーグルトが一般庶民の口に
㸢
Ვ䇭⩶
㸢
੃㉄⩶䍛䍞䍎䍞䍎ᷝട
‐੃䇮⣕⢽☳੃䇮䊋䉺䊷䇮╬
届くようになったのは,明治時代も半ばになった
㸢
ころである1)。
ኈེలႯ
㸢
⊒䇭㉂
㸢
಄䇭ළ
㪋㪇䌾㪋㪌㷄
一方,世界に目を向けると,ヨーグルトをはじ
第1図 一般的なヨーグルトの製造工程
めとする発酵乳の歴史は古く,約7000年前といわ
つぼ
○素焼きの壺で作る
ヨーグルト○ れている。ブルガリアのあるバルカン半島や,ト
ルコあたりが発祥の地とされているが,中東やモ
ンゴル,北欧等でも独自に発酵乳が誕生し,伝統
ヨーグルトの本場ブルガリアには,素焼きの壺
食として育まれてきた。そして,それぞれの地域
で作る昔ながらの伝統的なヨーグルトがある(写
の気候・風土条件によって,伝統的な発酵乳の製
真1)。絞りたての牛乳を煮立てて人肌くらいに
1)
造法は定まっていったようである 。
冷ましてから,素焼きの壺に入れ,前日作ってお
近代的なヨーグルトの製造工程も伝統的な方法
いたヨーグルトを種菌(スターター)として加え
と大きくは変わらず,基本的に乳の充分な殺菌,
る。その壺を布で包んで保温して放置すると,発
純粋培養した乳酸菌の植え付け,発酵温度の管理
酵してヨーグルトになっていく。発酵中に素焼き
1)
といった手順によるものであった 。しかし,我々
の壺が牛乳から水分を吸収し,牛乳が濃縮され,
は,ブルガリアの伝統的なヨーグルトを科学する
さらに,壺の表面からその水分が蒸発する際に気
ことで,ヨーグルトの新たな発酵技術「脱酸素低
化熱を奪うため「低温発酵」となる。このように
温発酵法」の開発に成功した。本稿では,この新
して作られたヨーグルトは,なめらかでコクがあ
発酵技術について紹介する。
り,非常においしい。そこで,この伝統的なヨー
グルトを工業的に再現しようと試みた。
○ブルガリアの
伝統的なヨーグルト○
まず,実験室にて伝統的なヨーグルトを再現す
るところから検討を開始した。43℃に加温した牛
一般に,工業的なヨーグルトは,第1図に示し
乳を素焼きの壺に注ぎ,スターター(LB81乳酸菌)
たような連続的な製造工程によって作られる。す
を加え,43℃の培養庫にて発酵させた。結果,時
なわち,牛乳,脱脂粉乳,バター,等を混合溶解
間と共に牛乳の温度は低下し,発酵終了時には37
したヨーグルトミックスを殺菌し,ヨーグルト乳
酸菌であるブルガリア菌とサーモフィルス菌(ス
てん
ターター)を添加し,紙容器等に充填してから40
〜45℃で発酵させる。発酵は,所定の乳酸酸度(濃
度)になるまで行い,冷却によって発酵を止める。
無脂乳固形分10%程度のヨーグルトの場合,乳酸
酸度0.7%程度(PH : 約4.7)まで発酵する。
写真1 素焼きの壺で作るブルガリアの
伝統的なヨーグルト
食品と容器
445
2009 VOL. 50 NO. 8
シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用
℃程度になっていた(第2図)。また,発酵終了後,
“濃縮した牛乳”は,牛乳,脱脂粉乳,バター,
牛乳は約1.2倍に濃縮されていた。したがって,
等を原料として容易に再現できた。
この伝統的なヨーグルトは,
“濃縮した牛乳”を「低
○低温発酵○
温発酵」させることで工業的に再現できると考え
次に,「低温発酵」について検討した。「低温発
られた。
੃᷷㩿㷄㪀
酵」は,非常になめらかな組織のヨーグルトを作
㪋㪐
り出すことができるメリットがある反面,発酵に
㪋㪊
長時間を要するデメリットがある。通常,ヨーグ
㪊㪎
ルトの発酵は,乳酸菌の乳酸生成が最も活発な40
〜45℃で行う(通常発酵)が,37℃程度で「低温
㪊㪈
᳓
発酵」を行うと,発酵の進行は著しく遅延する。
᳓
LB81乳酸菌を用いた「低温発酵」では,「通常発
㪉㪌
㪈㪐
㪇
㪍㪇
㪈㪉㪇
㪈㪏㪇
㪉㪋㪇
酵」に比べて発酵時間が約40分間長くなった(第
㪊㪇㪇
⊒㉂ᤨ㑆䋨ಽ䋩
3図)。これは,工業的大量生産を行う場合の生
第2図 素焼きの壺で発酵させた牛乳の発酵中の温度変化
産性を大きく低下させる。よって,「低温発酵」
0.8
を工業化するためには,発酵時間を短縮させる新
0.7
たな発酵法の確立が不可欠であった。
○脱酸素発酵法○
乳酸酸度(%)
0.6
43℃通常発酵
0.5
ヨーグルトの発酵過程における乳中の溶存酸素
0.4
0.3
と乳酸菌の挙動に着目して研究した。結果,乳酸
0.2
菌を添加する前の乳中の溶存酸素濃度は43℃で7
37℃低温発酵
0.1
ppm程度であったが,乳酸菌を添加後,まず乳中
0
30
60
90
120
150
180
210
240
の溶存酸素濃度低下が認められ,0ppm程度に下
発酵時間(分)
第3図 低温発酵による発酵時間の遅延
がった後に乳酸の生成が活発になることが分かっ
た(第4図)。なお,培養(発酵)中に溶存酸素
8.0
濃度が0ppmまで低下する現象は,ブルガリア
6.0
㪇㪅㪎㪇
菌,サーモフィルス菌の単菌培養時,混合培養時
5.0
㪇㪅㪍㪇
4.0
㪇㪅㪌㪇
3.0
㪇㪅㪋㪇
2.0
㪇㪅㪊㪇
1.0
㪇㪅㪉㪇
0.0
ともに認められたが,乳酸菌を加熱して死滅させ
ると認められなかった。
:■
:○
ṁሽ㉄⚛Ớᐲ㩿㫇㫇㫄㪀
7.0
੃㉄㉄ᐲ㩿㩼㪀
੃㉄㉄ᐲ㩿㩼㪀
㪇㪅㪐㪇
㪇㪅㪏㪇
このことから,溶存酸素がヨーグルトの発酵を
阻害すると推察した。そこで,あらかじめ乳中の
溶存酸素濃度を減らし,嫌気状態としてから発酵
㪇㪅㪈㪇
0
30
60
90
120 150 180 210
することで,発酵時間を短縮できると考え,検討
⊒㉂ᤨ㑆䋨ಽ䋩
した。その結果,通常,7ppm程度ある溶存酸素
第4図 ヨーグルト発酵中の溶存酸素
濃度変化と乳酸酸度変化
食品と容器
濃度を4ppm以下に減らすことで発酵時間を短
446
2009 VOL. 50 NO. 8
脱酸素低温発酵法による新たなヨーグルト製造法
縮できることが分かった。LB81乳酸菌を用いた
この現象について考察を加えた。第7図は,
「脱
ヨーグルトの発酵時間は,溶存酸素濃度を低下さ
酸素低温発酵法」(37℃),
「通常発酵」(43℃),
「低
せない通常の発酵と比べて,43℃で約30分間短縮
温発酵」(37℃)で発酵させた時の発酵中の乳酸
された(第5図)。乳中の溶存酸素濃度を減らし
酸度変化を示したものである。一般的に無脂乳固
てから発酵するこの方法を「脱酸素発酵法」と命
形分10.0%程度の発酵乳では,カードと呼ばれる
名した。
ヨーグルトの組織形成が乳酸酸度0.4%付近から始
まる(ヨーグルトが固まり始める)。我々は,発
○脱酸素低温発酵法○
酵終了の乳酸酸度を0.7%としているので,乳酸酸
この「脱酸素発酵法」の発酵時間短縮効果によ
度0.4%から0.7%に到達するのに要する時間が,ヨ
り,
「低温発酵」の工業化が可能となった。この「低
0.8
温発酵」と「脱酸素発酵法」を組み合わせた製法
0.7
を「 脱 酸 素 低 温 発 酵 法 」 と 命 名 し た( 特 許 第
0.6
乳酸酸度(%)
3644505号,第3666871号,第3968108号)。
○伝統的なヨーグルトの
工業的再現○
43℃脱酸素発酵
(溶存酸素を低減)
0.5
0.4
0.3
43℃通常発酵
0.2
「脱酸素低温発酵法」を用いて,
“濃縮した牛乳”
0.1
(溶存酸素処理無し)
0
30
60
に相当する組成に調整したヨーグルトミックス
120
150
180
210
第5図 「脱酸素発酵法」による発酵時間短縮効果
(無脂乳固形分10.0%,乳脂肪分4.5%程度)を発酵
させたところ,素焼きの壺で作ったような,なめ
ේᢱ⺞ว
らかでコクのあるヨーグルトとなった。「脱酸素
㸢
㸢
Ვ䇭⩶
㸢
ኈེలႯ
‐੃䇮⣕⢽☳੃䇮䊋䉺䊷䇮╬
低温発酵法」の開発により,ブルガリア伝統の素
㸢
⣕㉄⚛ಣℂ
੃㉄⩶㩇㩊㨺㩊㨺ᷝട
㸢
䋴㫇㫇㫄એਅ
焼きの壺で作るヨーグルトの風味・物性を工業的
㸢
に再現することに成功した。第6図にその製造工
程を示す。
⊒䇭㉂
㪊㪎㷄
಄䇭ළ
第6図 「脱酸素低温発酵法」による ヨーグルトの製造工程
○ヨーグルトのカード形成時間○
ㅢᏱ⊒㉂䋨㪋㪊㷄䋩
ૐ᷷⊒㉂䋨㪊㪎㷄䋩
⣕㉄⚛ૐ᷷⊒㉂䋨㪊㪎㷄䋩
⊒㉂⚳ੌὐ
「低温発酵」がなめらかな組織のヨーグルトを
0.8
0.7
作り出せる理由は,「低温発酵=長時間発酵」で
㪌㪇ಽ
0.6
੃㉄㉄ᐲ㩿㩼㪀
あるため,じっくり時間をかけて発酵が進むため
であると考えられる。しかし,
「脱酸素低温発酵法」
は,短時間の発酵にもかかわらず,「低温発酵」
0.5
0.4
㪎㪇ಽ
0.3
と同等以上のなめらかさをもったヨーグルトを作
0.2
り出せることが分かった。なお,食感のなめらか
0.1
さは,物理的測定結果と官能評価を指標として判
䍔䍎䍢䍼ᒻᚑ㐿ᆎὐ
定した。
食品と容器
90
発酵時間(分)
㪐㪇ಽ
0
30
60
90
120 150 180 210
240
⊒㉂ᤨ㑆䋨ಽ䋩
第7図 ヨーグルトのカード形成時間
447
2009 VOL. 50 NO. 8
シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用
ーグルトの組織を作る時間(カード形成時間)と
ド形成時間に分けて示すものである。「脱酸素低
いえる。このカード形成時間が長い程, ヨーグ
温発酵法」のカード形成時間は,発酵時間180分間
ルトの組織は緻密でなめらかになると考えられる。
中90分間,
「通常発酵」は180分間中50分間,
「低温発
カード形成時間は,
「脱酸素低温発酵法」で90分間,
酵」では,220分間中70分間である。「脱酸素低温
ち
「通常発酵」,で50分間,低温発酵で70分間となっ
発酵法」は,全体の発酵時間に占めるカード形成
ており,「脱酸素低温発酵法」のカード形成時間
時間の割合が高く,これが,短時間の発酵であり
が最長であることが認められた。
ながら,緻密さとなめらかさをもったヨーグルト
第8図は,発酵時間を乳酸酸度0.4%未満のカー
の組織を作り出せる要因であると考えられる。
ド形成前時間(ヨーグルトが液状の状態)とカー
㪈㪊㪇
ㅢᏱ⊒㉂䋨㪋㪊㷄䋩
○硬さとなめらかさの両立○
「脱酸素低温発酵法」を適用したヨーグルトは,
㪌㪇
“流通の衝撃でも崩れにくい,しっかりとした硬
㪈㪌㪇
ૐ᷷⊒㉂䋨㪊㪎㷄䋩
さをもったヨーグルト組織(カード)”と“なめ
㪎㪇
らかな食感”を両立していることが特長として挙
げられる。これら2つの特性は,どちらも商品価
⣕㉄⚛
ૐ᷷⊒㉂䋨㪊㪎㷄䋩
㪐㪇
㪇
㪐㪇
㪍㪇
㪈㪉㪇
値の観点から重要であるが,従来の発酵技術で,
㪈㪏㪇
㪉㪋㪇
これらを両立させることは不可能であった。一般
⊒㉂ᤨ㑆䋨ಽ䋩
䍔䍎䍢䍼ᒻᚑ೨ᤨ㑆
的に,カードが硬いと食感のなめらかさは失われ,
䍔䍎䍢䍼ᒻᚑᤨ㑆
食感のなめらかさが増すとカードの硬さが低下す
第8図 発酵時間に占めるカード形成前時間と
カード形成時間の割合
るからである。理論の解明は今後の課題であるが,
ࠆ߆ࠄߢ޽ࠆ‫ޕ‬ℂ⺰ߩ⸃᣿ߪ੹ᓟߩ⺖㗴ߢ޽ࠆ߇‫ޔ‬
「脱酸素低温発酵法」は,発酵時間
の短縮以外に,本来は相反する品質
特性を両立させることができる画期
的な製法といえる(写真2)。
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写真2 ヨーグルトの組織に及ぼす発酵法の影響
○低脂肪・無脂肪ヨーグ
ルトへの「脱酸素低温発
酵法」の応用○ 近年,ダイエット志向の高まりを
背景に低脂肪・無脂肪をコンセプトと
したヨーグルトの需要が高まってき
ている。しかし,ヨーグルトは脂肪分
を減らすとコクが無くなる欠点があ
るのと,ホエイオフ(ヨーグルトカ
写真3 「脱酸素低温発酵法」により実現したおいしい低脂肪 ヨーグルトおよび無脂肪(脂肪ゼロ)ヨーグルト商品
食品と容器
448
ード表面にホエイが浮いてくるこ
と)の量が増える問題がある。この
2009 VOL. 50 NO. 8
脱酸素低温発酵法による新たなヨーグルト製造法
改善に「脱酸素低温発酵法」が有効であった。す
菌とサーモフィルス菌の共生作用による発酵は,
なわち,先述した通り,
「脱酸素低温発酵法」で作ら
酸素の存在下においてもスピーディーに進行する
れるヨーグルトは,組織が緻密になるが,これに
からである。しかし,今まで殆ど注目されてこな
より,脂肪が増したようなコクのある風味となり,
かった“ヨーグルト乳酸菌に対する酸素の影響”
ホエイオフ量も大幅に減ることが分かった。この
に着目したことで,新しいヨーグルトの発酵技術
利点を応用し,我々は従来には無い“おいしい低
を確立することができた。「脱酸素低温発酵法」は,
脂肪ヨーグルト”および“おいしい無脂肪ヨーグ
現在,4つの市販ヨーグルト商品に応用している
ルト”を実現することができた(写真3)。
が,今後,さらに本技術を応用したヨーグルト商
品を展開し,ヨーグルト市場の活性化に寄与した
○おわりに○
いと考える。
従来,ヨーグルトの製造において,発酵開始時
参 考 文 献
に乳の溶存酸素濃度をコントロールして発酵時間
を操作する(短縮する)という発想はなかった。
1)発酵乳の文化譜 中央法規出版(1996)
それは,ヨーグルトスターターであるブルガリア
別刷り合本をご利用下さい
食品加工における微生物・酵素の利用
<伝統食品編>
本誌Vol.47 No.11よりVol.49 No.12まで24回にわたって連載してまいりました“シリーズ解説 食品加工における
微生物・酵素の利用”の別刷り合本です。食品製造と微生物の関りは微生物の存在を認識するよりもはるか以前
に始まる。近年,これらの技術はバイオ先端技術を始めとする最新の科学技術によって,その合理性と精微さが
明らかにされつつあるが,本書は<伝統食品編>として,微生物を利用した伝統的な発酵食品について専門の方々
に解説をしていただいた。ご希望の方は下記あてにお申し込み下さい。
B5版/本文183ページ 定価2,000円(消費税込み,送料別)
《内容》監修に当たって,Ⅰ 総論:発酵と微生物(日本大学生物資源科学部教授 農学博士 春見隆文)/Ⅱ 醸造食品:しょうゆ概論,しょうゆトピックス(㈶日本醤油技術センター技術第1部部長 田上秀男)/味噌という
発酵食品(新潟県味噌工業協同組合連合会顧問 農学博士 今井誠一)/味噌の機能性(新潟県農業総合研究所食
品センター主任研究員 渡辺 聡)/納豆-最近の研究-(共立女子大学家政学部食品加工学研究室助手 三星沙
織・同家政学部教授 農学博士 木内 幹)/漬物(発酵漬物)
(東京都立食品技術センター副参事研究員 農学
博士 宮尾茂雄)/Ⅲ 酪農製品:発酵乳・乳酸菌飲料(明治乳業株式会社食品開発研究所 野路久展・河合良尚)
/チーズ(チーズの多様性と乳酸菌由来酵素)
(日本獣医生命科学大学応用生命科学部教授 博士(農学) 阿久澤
良造)/バター(発酵バター)概論(小岩井乳業株式会社小岩井工場乳製品製造部部長 杉田忠彦)/Ⅳ 酒精飲料:
ビール小史(1),ビール小史(2)ビール・発泡酒・第3のビール(キリンビール株式会社醸造研究所 川崎正人)
/清酒 概論,清酒の機能性(日本酒造組合中央会理事 農学博士 蓮尾徹夫)/焼酎(1)歴史,製法,焼酎(2)
焼酎の世界(鹿児島大学農学部生物資源化学科焼酎学講座教授 鮫島吉廣)/ワインの科学(1)ワイン造りの基
礎知識,ワインの科学(2)ブドウ栽培とワイン造り(山梨大学大学院医学工学総合研究部ワイン科学研究センタ
ー教授 農学博士 高柳 勉)/蒸留酒と微生物(1)ウイスキー・ブランデーの基礎知識と微生物,蒸留酒と微
生物(2)蒸留酒の貯蔵・熟成・ブレンダー,蒸留酒と微生物(3)酒の世界(蒸留酒)と微生物・その楽しみ方(サ
ントリー株式会社品質保証本部品質保証推進部部長 冨岡伸一)/Ⅴ パン類:製パン技術とパン酵母(㈳日本パ
ン技術研究所常務理事所長 博士(農学) 井上好文)/冷凍生地製パン法と冷凍耐性パン酵母(
(独)農業・食品産
業技術総合研究機構食品総合研究所微生物利用領域酵母ユニット長 博士(農学) 島 純)/米粉を利用した製
パン技術(
(独)農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所食品素材科学研究領域糖質素材ユニット 主任研
究員 興座宏一)
缶 詰 技 術 研 究 会 電話 03(3663)7251 ファックス 03(3663)7253
先月号の「シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用(第30回)“乳酸菌による保健効果”」の著者の氏
名およびプロフィール欄に誤りがありました。下記のように訂正し,謹んでお詫び申し上げます。
P380 (誤)阿部 伸 →(正)阿部 申, 小田宗宏氏のプロフィール欄(誤)明治乳業? →(正)明治乳業㈱
食品と容器
449
2009 VOL. 50 NO. 8
シリーズ解説:食品産業における環境対策(第3回)
□解説□
温室効果ガス排出量の見える化
「カーボンフットプリント」の動向
い な ば ・ あ つ し
東京大学化学工学博士課程修了。
公害資源研究所(現・産業技術総
合研究所)入所。米国商務省標準
局火災研究所,オーストリア国際
応用システム研究所,客員研究員。
資源環境技術総合研究所(現・産
業技術総合研究所)企画室長。同
ライフサイクルアセスメント研究
センター長を経て,現在,工学院
大学工学部環境エネルギー化学科
教授。工学博士
稲 葉 敦
ライフサイクルの一部分だけが表示されることが
□1.はじめに(カーボンフット
プリントとLCA)□
多かった。たとえば,最近話題になることがある
「フードマイレージ」は商品の「輸送」の部分だ
最近,日用品や食品などの商品にCO2排出量を
けに着目している。しかし,カーボンフットプリ
表示する「カーボンフットプリント」が話題にな
ントは,商品のライフサイクル全体のCO2排出量
1)
っている 。2007年に英国,フランスで試行販売
を表示する。
が始まった。日本でも2008年7月に「CO2の見え
製品の使用段階だけでなく,その製品の組み立
る化」の具体例としてカーボンフットプリントを
て工程や部材や素材の製造,その原料になる資源
推進することが閣議決定され,これを受けて経済
の採掘工程,また,使用後に製品が廃棄される工
産業省が支援事業を開始した。食品加工企業や日
程まで,すなわち「ゆりかごから墓場まで」の環
用品企業,スーパーマーケット等の小売り業,包
境への排出物や資源の消費量を計算する方法は
装材料メーカー等30社が参加し,2008年12月のエ
「ライフサイクルアセスメント(LCA)」として
コプロダクツ展で40種類54品目の試行品を展示し
知られ,電機製品や自動車などの大手企業は,自
た。2009年1月以降3月までの期間に,その商品
社製品の環境負荷物質の排出量や資源消費量を10
の一部が試験的に販売された。
年ほど前から環境報告書で公表している2),3)。ま
カーボンフットプリントは,
「CO2の見える化」
たその計算方法は,ISO-14040(2006)とISO-14044
と言われているが,CO2だけではなく地球温暖化
(2006)として既に国際標準化され,日本工業規格
に関するCH4,N2Oなどいわゆる「地球温暖化
(JIS)にもなっている2),3)。
ガス」の排出量を,IPCC(気候変動に関する政
さらに,LCAの結果を公開するラベルをタイ
府間パネル)の報告書に示された地球温暖化係数
プⅢのエコラベルと言う。タイプⅢのエコラベル
を用いてCO2量に換算して表す。本稿ではこの換
の具体的な実施方法はISO-14025(2006)として
算された量を「CO2排出量」と簡単に記す。
国際標準規格になっている。ヨーロッパではEPD
従来の「CO2の見える化」では,商品・製品の
食品と容器
(Environmental Product Declaration)という呼
1
450
2009 VOL. 50 NO. 8
温室効果ガス排出量の見える化「カーボンフットプリント」の動向
称で実施され,日本でも「エコリーフ」という呼
が求められている。タイプⅢのエコラベルの国際
称で(社)産業環境管理協会が実施している。エ
標準規格であるISO-14025(2006)に従えば,同
コリーフでは,複写機等の工業製品を中心に既に
じ種類の商品は,同じ算定規則に則ってCO2排出
約450の製品について,地球温暖化ガスの排出量
量を計算しなければならない。この算定規則を「プ
だけではなく,酸性化に関するSOxの排出量やさ
ロダクトカテゴリールール(PCR)」という。日
まざまな資源消費量が計算され,インターネット
本は,カーボンフットプリントの普及にむけて,
4)
上で開示されている 。
PCRの作成方法を含む実施制度が議論されている
エコリーフなど従来のLCAは,①地球温暖化
段階にある。
だけでなくオゾン層の破壊や酸性化,富栄養化な
本稿では,カーボンフットプリントに関する最
ど多くの環境側面を見ることを目的として,さま
近の動向を紹介する(第1図,2図,3図参照)。
ざまな環境負荷物質や資源消費量を計算しようと
□2.海外の動向と国際標準化□
し,②複写機などビジネスに使われる工業製品を
中心に実施され,③インターネットやパンフレッ
(1)各国の状況5),6)
トでLCAの結果を示すことが行われて来た。し
英国では政府出資によるカーボントラスト社7)
かし,カーボンフットプリントでは,①CO2を中
が行うプロジェクトに,テスコ社を含む約20社が
心とする地球温暖化ガスの排出量だけに着目し,
参加し合計約75品目についてのパイロットプロジ
②スーパーマーケットなどで売られている食品や
ェクトが実施されている。計算のルールは,2008
日用品が主な対象であり,③商品に直接表示する
年10月に,カーボントラスト社,英国規格協会
こと,が特徴的である。
(BSI),環境食糧農林省(DEFRA)が協働で発
表した「PAS2050」8)に従う。また同時に,表示
「カーボンフットプリント」の計算方法は従来
のLCAと同じである。しかし,LCAの結果を直
接表示してスーパーマーケット等で消費者に見せ,
地球温暖化ガスの排出量が少ない商品を消費者が
購入することを期待すること,換言すれば消費者
の行動変化により持続可能な社会の構築を目指す
という視点が明確にされたことが従来にはない新
しさである。消費者のこの行動変化が,製造者を
地球温暖化ガス排出量が少ない製品の開発に向か
ねら
わせるという繰り返しの効果を狙っている。
従来のLCAは,自社製品の環境情報を開示す
ることを目的とし,環境報告書などで情報開示さ
第1図 イギリスでのカーボンフットプリントの実施例
れて来たので,他社の製品との比較を意識するこ
[ウオーカー社のポテトチップス。サイズの違う商品に
はサイズ毎に異なった量が表示(右:75 g , 左 107 g)
されている。この(下向き矢印)のマークは第一フェ
ーズで使用された。数値は削減量ではなく排出量の絶
対値を示している]
とが少なかった。しかし,カーボンフットプリン
トは店頭で商品に直接表示されるので,製品間で
の比較が行われやすいという特徴を持っている。
したがって,実務としての公正・公平な実施方法
食品と容器
451
2009 VOL. 50 NO. 8
シリーズ解説:食品産業における環境対策
に関する要件を示す文書9)が発表されている。こ
算定方法が異なっている。カジノ社はそれぞれの
れらの文書は,カーボンフットプリントの最も先
プロセスのCO2 排出量を積算するLCAを基礎と
行する事例として各国で参照されている。
した方法で計算しているが,一方のルクレール社
フランスでは,大手小売業のカジノ社とルクレ
は産業統計を基に製品ごとのCO2 排出量を算定
ール社が異なる方法で試行している。カジノ社は,
している。たとえば,PETボトルのミネラルウ
2008年6月からプライベートブランドの食品8品
オーターであれば,どの企業の製品でも同じCO2
目から試行を始め,全製品に広げるとしている。
排出量が表示される。消費者による企業の選択で
ルクレール社は,フランス北部の2店舗で,2008
はなく,商品の購買に伴うCO2排出量を気づかせ
年4月から2万点の商品のCO2 排出量を値段札
ることを中心にしているものと思われる。
に表示を行い,レシートにその排出量合計を印字
ドイツでは,化学メーカーであるBASFやドラ
する取組みを行っている。
ッグストアチェーンのdm-dorogerie marktなど
フランスのこの二つの実施例は,CO2排出量の
10社がコンサルティング会社であるThema1,
Öko­Institut
(Institute for Applied Ecology),Pots­
dam Institute for Climate Impact Research
(PIK)と組み,トイレットペーパー,加工食品,
接着剤,コーヒーなどを対象に,カーボンフット
プリントの算定ルールを検討している。
この他,韓国,スイス,タイ,中国,ニュージ
ーランド,カナダ,アメリカ(州レベル)等でも
カーボンフットプリントの実施が検討されてい
る5)。
第2図 イギリスでのカーボンフットプリントの実施例
商品本体への表示として見ると,2009年5月現
[テスコ社のオレンジジュースへの表示例。(黒い足
跡)のマークは最近使用されている。注意書き付きで
排出量の絶対値を示している。]
在では,英国,フランスが試行販売を実施中であ
り,日本も限定した期間であるが試験販売を経験
したところである。他の国々は,計算方法の検討,
ケーススタディーの実施,
報告書等での公表等の段階
にある。
(2)国際標準規格化の動
向
英国での事実が先行する
中で,2008年6月にISO-14001
など環境マネジメントの国
際標準規格を発行して来た
࿑㧟㧧ࠛࠦࡊࡠ࠳ࠢ࠷ 2008㧔2008 ᐕ 12 ᦬ 11 ᣣ㨪13 ᣣ㧕ߢዷ␜ߐࠇߚ⚻ᷣ↥ᬺ⋭ߩࡊࡠࠫࠚ
第3図 エコプロダクツ2008(2008年12月11日〜13日)で展示された経済産業省の
プロジェクトによる試行例と使用されたマーク
食品と容器
452
ISO/TC207の 総 会 が コ ロ
ンビアのボコタで開催され,
2009 VOL. 50 NO. 8
温室効果ガス排出量の見える化「カーボンフットプリント」の動向
CO2 排出権取引等の基礎になるプロジェクト等
用している。さらにPartⅠに記載すべきこととし
のCO2排出量の計算方法を議論して来たSC7でカ
て,カットオフルール,配分(アロケーション)
ーボンフットプリントの国際標準化の新たな作業
の取り扱い,商品の製造機械等のCO2排出量を算
提案がなされた。11月までの各国の投票の結果,
定に含めるかどうか,木材製品によるCO2の貯蔵
賛成多数で新規格の作業開始が可決され,2009年
量を算定に含めるかどうかなどが今後も継続して
1月にマレーシアで行われた会合で規格化の作業
議論されることになった。日本では話題になるこ
が始まった。2011年頃に新たな国際標準規格が発
とが少ないが,森林伐採による農地の開墾など土
行される見通しである。
地利用の変化によるCO2 排出量の算定方法も大
この国際標準規格化の作業に対応するために,
きな課題となっている。また,グリーン電力証書
2008年7月に約30の工業会と約10名の有識者から
のような再生可能電力のCO2 排出量を算定に含
ごろ
10)
なる国内委員会が設置された 。この国内委員会
めることの是非も議論されている。グリーン電力
の議論を経て,日本の意見が国際標準規格化の作
は,サプライチェーンの一部としてCO2排出量の
業に投入される。
算定に含めるべきという意見と,CO2排出量を小
現在提案されているカーボンフットプリントの
さくする目的で購入しているのだからカーボンオ
国際標準規格は,地球温暖化ガスの計算方法(Pa­
フセットの一部であり,これを認めないという意
rt1:Quantification)とラベルの運用方法(Pa­
見がある。経済産業省の「カーボンフットプリン
rt2:Communication)の二つの部分からなる。
ト制度のあり方(指針)
」は前者の立場を,英国の
前者は,既に発行されているLCAの国際標準規
PAS2050は後者の立場を取っている。
格であるISO-14040(2006)と14044(2006)を基
□3.国内の動向□
礎とし,後者はこれも既に発行されているタイプ
Ⅲラベルの規格であるISO-14025(2006)を基礎
(1)省庁の活動
とすることになっている。
2008年6月9日に発表されたいわゆる福田ビジ
本年(2009年)1月にマレーシアで行われた会
ョンの中で「CO2の見える化」の具体例として政
合では,PartⅠの計算方法が主に議論された。商
府が推進することが示され10),これを受けて経済
品のライフサイクル全体でCO2 排出量を計算す
産業省,環境省,農林水産省がそれぞれ委員会を
ること,カーボンオフセットは計算に含めないこ
設置して「CO2の見える化」を検討している11)。
と,データの品質はPart1で記述するがその詳細
中でも経済産業省は活発であり,2008年度に「カ
はPartⅡのPCRの一部として記述することなどが
ーボンフットプリント制度の実用化・普及推進研
大方の合意を得た。また,地球温暖化係数には
究会」と「CO2排出量の算定・表示・評価に関す
IPCCで公表されている地球温暖化係数(GWP)
るルール検討会(通称「ルール検討会」)」の二つ
の100年係数を使用する合意を得たが,最新の
でカーボンフットプリントの試行を実施した。
IPCC4次報告書を基礎とするか,京都議定書に
前者には,食品加工企業や日用品企業,スーパ
使われている第2次報告書を基礎とするかで意見
ーマーケット等の小売り業等30社が参加し,2008
が分かれている。英国はPAS2050で前者を用い,
年12月のエコプロダクツ展で各社の数種の製品に
日本は後述するように経済産業省の「カーボンフ
ついて地球温暖化ガスの排出量を表示した商品を
ットプリント制度のあり方(指針)」で後者を使
展示した。その商品を第1表に示す。これらの商
食品と容器
453
2009 VOL. 50 NO. 8
シリーズ解説:食品産業における環境対策
第1表 経済産業省のプロジェクトによる実施で「エコプロダクツ2008」においてカーボンフットプリントが表示され
た試行商品
企業名
製品
コクヨファニチャー(株)
オフィス用デスク・いす
コクヨ S&T(株)
コクヨストアクリエーショ
ン(株)
イオン(株)
ノート、ファイル、のり
日本生活協同組合連合会
(株)西友
ライオン(株)
(株)紀文フードケミファ
中央化学(株)
企業名
日本テトラパック(株)
(株)丸井グループ
製品
飲料用紙パック
ビジネスシャツ
陳列什器
ネスレ日本(株)
インスタントコーヒー
米、野菜、電池
パナソニック(株)
食品用ラップフィルム
東芝ライテック(株)
掃除用品
カゴメ(株)
電球形蛍光ランプ
電球形蛍光ランプ、電球形
LED ランプ
トマトジュース
歯磨き剤
サッポロビール(株)
缶ビール
豆乳飲料
(株)ファミリーマート
ミネラルウォーター
食品容器
カルビー(株)
ポテトチップス
(株)シジシージャパン
緑茶飲料
大日本印刷(株)
包装容器
ユニ・チャーム(株)
紙オムツ
味の素(株)
冷凍食品
東洋製罐(株)
飲料用金属缶
日本ハム(株)
ハム、ウインナー、ピザ
日清食品(株)
インスタントラーメン
ユニー(株)
鶏卵、トイレットペーパー
(株)日清製粉グループ本社 乾麺
(株)ローソン
おにぎり
(株)セブン&アイ HLDGS
花王(株)
うどん
シャンプー
ら研究を続けており,農水産物や加工食品だけで
なく,それらを調理した焼き魚やハンバーグなど
「カーボンフットプリント制度のあり方(指針)」
の献立のCO2排出量を計算している12),13),14)。経済
産業省の活動でもこの食品研究会の活動や,前述
商品種別算定基準制定規定
したエコリーフの活動が参考になっている。
後者のルール検討会は事業者による利益誘導を
排除するため委員はいわゆる有識者により構成さ
れ,カーボンフットプリントのあるべき姿を示す
とともに,企業による試行状況を反映させつつ算
商品別算定基 準
プロダクトカテゴリールール(PCR)
定ルールを検討した。その結果が,「カーボンフ
ットプリント制度のあり方(指針)」として2009
第4図 日本のカーボンフットプリントの製品別プロ
ダクトカテゴリールール(PCR)の体系。それぞれの
年2月にとりまとめられた。この指針は4月に日
商品のカーボンフットプリントは、「カーボンフットプ
本工業規格のTS(テクニカルスペシフィケーシ
リント制度のあり方(指針)」と「商品種別算定基準制
ョン)として発行された。
定規定」に合致するように定められるPCRにしたがっ
また,この指針をさらに具体化し,すべての商
て計算される。(経済産業省による作図)
品に適用する計算規則を明確にするために,同じ
品のうち米,野菜,Yシャツ,ビール等が消費者
く2009年2月に経済産業省により「商品種別算定
の反応を調べるために,2009年1月以降3月まで
基準制定規定」が定められた(第4図参照)。今
の期間に,一部の店舗で試行的に販売された。
後どのような商品も,この既定で定められた基本
我が国では,食品のLCAについては,日本LCA
的事項を満足するように定められるPCRを定め,
学会の中に設置された「食品研究会」が2005年か
それに則ってカーボンフットプリントを実施する
食品と容器
454
2009 VOL. 50 NO. 8
温室効果ガス排出量の見える化「カーボンフットプリント」の動向
ことになる。
とになる。
商品寿命が短く,また多品種がある日用品や食
□4.カーボンフットプリント
制度の今後□
品のPCRの作成では,シリーズ化された同じよう
な種類の商品に適用でき,さらに,商品の軽微な
カーボンフットプリントは,前述したようにま
変更に迅速に対応できるPCRを考える必要がある。
だ試行段階であり,具体的な実施方法はまだ定ま
さらに,計算方法を検証する方法もまだ決まって
っていない。しかし,カーボンフットプリントの
いない。中小の企業が多い食品や日用品の企業が
新しい国際標準規格は,LCAの結果を開示するタ
実施しやすい体制を作ることが必要である。
イ プ Ⅲ エ コ ラ ベ ル の 国 際 標 準 規 格(ISO-14025
プログラムホルダーは上述したように,PCRの
(2006)
)に従う方向で議論されている。また,経
制定と管理を行う。また,カーボンフットプリン
済産業省の試行制度の方向もこれに合致している。
トの実施者がサプライチェーンのデータを取得す
タイプⅢエコラベルの国際標準規格によれば,カ
ることが困難である時に一般的データとして使用
ーボンフットプリントの実施は,まず新たな商品
する「二次データ」を整備・管理し,カーボンフ
にカーボンフットプリントの実施を希望する企業
ットプリントの実施者に提供する。カーボンフッ
が,カーボンフットプリントを発行する機関また
トプリントが消費者に信頼され,また実施者が簡
は団体(これをプログラムホルダーと呼ぶ)に
便に実施することができる制度にするためには,
PCRの作成を提案することから始まる。日本では
「2次データ」の整備が欠かせない。今後の整備
プログラムホルダーが未だ決まっていないので,
を進める必要がある重要な課題である。
2009年度は経済産業省の事業を受託した(社)産
□5.おわりに
カーボンフットプリントの背景□
業環境管理協会がプログラムホルダーの役割を果
たすことになる。
プログラムホルダーはこれを受けて,関連する
最初に述べたように,カーボンフットプリント
業界団体にその提案を伝え,またインターネット
は英国で始まった。この背景は,2002年に南アフ
等を使ってPCRの作成に参加する企業を募集する。
リカ・ヨハネスブルグで行われたWSSD(いわゆ
その後,その応募者からなるワーキンググループ
る地球サミット)に遡ることができる。日本では
が結成され,このワーキンググループが「商品種
紹介が遅れているが,この会合では「持続可能な
別算定基準制定規定」を見ながらPCRを作成する。
消費と生産への転換を促進するための10カ年計
ワーキンググループへの応募がなければ,希望す
画」が採択された。1992年のブラジル・リオデジ
る一社だけでPCRを作成することになる。公平性
ャネイロの地球環境サミットで合意された生産活
を保つという意味で,公募のプロセスが重要視さ
動による「持続可能な発展」から,消費を通じて
れている。
の持続可能性が強調されたことが特徴的である。
こうして作られたPCRは,プログラムホルダ
これを具体化するための専門家会合が2003年にモ
ーが用意した委員会でその妥当性が審議される。
ロッコのマラケシュで最初に行われ,その後「マ
この委員会によりPCRが承認されれば,それぞ
ラケシュプロセス」として,UNEP(国連環境プ
れの企業がこのPCRに則ってカーボンフットプ
ログラム)が中心となって継続,推進している15)。
リントを計算し,それぞれの商品に表示するこ
カーボンフットプリントは,消費者の製品選択と
食品と容器
455
さかのぼ
2009 VOL. 50 NO. 8
シリーズ解説:食品産業における環境対策
製品の使用状況の変化を期待する「持続可能な消
謝辞
費」の大きな流れの中の一つの活動と考えること
本稿は,筆者が編著者である(株)工業標準調査
ができる。欧州を中心として,地球の持続性を目
会の単行本「カーボンフットプリント」(参考文
指した「持続可能な消費」という大きな流れがあ
献1))および日本LCA学会誌(参考文献11))と
ることを今後も注視していきたい。
一部が重複している。引用を許可してくださった
それぞれの関係の皆様に感謝します。
参 考 文 献
1)稲葉 敦編著:「カーボンフットプリント」,工業
調査会(2009)
uk/publications/publicationdetail.htm?productid=
CTC744
2)「LCAシリーズ LCAの実務」,稲葉敦監修,
(社)
10)石原慎太郎,環境管理,Vol.44,No.12,1091-1096
産業環境管理協会編,丸善(2004)
(2008)
3)「LCAシリーズ LCA概論」,伊坪徳宏・田原聖隆・
11)稲葉 敦:
「カーボンフットプリントの現状と展望」
,
成田暢彦共著,稲葉敦・青木良輔監修,(社)産業
日本LCA学会誌,5,(2),220-228(2009)
環境管理協会編,丸善(2007),
12)日 本LCA学 会 食 品 研 究 会 平 成19年 報 告 書, 日 本
4) エ コ リ ー フ;( 社 ) 産 業 環 境 管 理 協 会;http://
LCA学会事務局(2008)
www.jemai.or.jp/ecoleaf/
13)日 本LCA学 会 食 品 研 究 会 平 成18年 報 告 書, 日 本
5)中庭知重,環境管理,Vol.44,No.12,1110-1119(2008)
LCA学会事務局(2007)
6)経済産業省,「カーボンフットプリント制度のあり
14)津田淑江・久保倉寛子・辻本進・上田玲子・大家
方(指針)」(2009)
千恵子,
モデルメニューによる日本の食事のLC-CO2
7) カ ー ボ ン ト ラ ス ト 社;http://www.carbontrust.
評価,日本LCA学会誌,Vol.3,No.3,p157-167(2007)
co.uk/News/presscentre/seven-new-companies-
15)小澤 寿輔,稲葉 敦:「持続可能な消費と生産」へ
carbon-count.htm
の取り組みと研究,日本LCA学会誌,Vol.3,No.3,
8)カーボントラスト社;www.bsigroup.com/PAS2050
pp.144-149(2007)
9)カーボントラスト社;http://www.carbontrust.co.
食品と容器
456
2009 VOL. 50 NO. 8
皇室と生物学
-ナチュラリストの系譜-
た
き
やす
ひこ
多 紀 保 彦
( 東 京 水 産 大 学 名 誉 教 授 )
邸には両陛下と秋篠宮ご一家がご滞在中で,久し
■■■豊かな海づくり
振りに舟を漕いでみるかと陛下がおっしゃって海
全国豊かな海づくり大会という催しがある。毎
に出されたのだという。長いブランク期間ももの
年,天皇・皇后両陛下が稚魚を放流されるあのイ
かは陛下の櫓さばきは確かなもの,殿下も漕がれ
ベントだといえば,どなたもご存じだろう。全国
たがお父上のようにうまくはいかなかったという。
都道府県のもちまわりで,昭和56年の大分県には
御用邸の艇庫には,これより大きい和船が保管
じまり昨年の新潟県で28回を数える。
されている。船名を「なじま」という。葉山周辺
その大会が今年は東京で開かれ,会場は東京海
の海岸で素潜りや簡易潜水器によって昭和天皇の
洋大学の品川キャンパス(海洋科学部)というこ
研究標本を採集した船である。陛下はこの舟には
とになった。品川駅東口から徒歩5分の運河沿い
お乗りにならなかったが,「葉山丸」などもう少
という立地から,ここでは放流はなしだ。
し大型の船には乗り込んで自ら採集をなさった。
ここはもとの東京水産大学,わが母校であり職
船には“すごくお強い”という。
場でもあったところだ。世界的な魚類学者である
昭和天皇はヒドロ虫類(ヒドロゾア)の研究を
天皇陛下は,学会ご出席のため何回もこのキャン
ライフワークとされた。保育社や丸善からこの類
パスにお越しになられている。そこで海洋大では,
についての多くの著書を出版され,33種もの新種
この秋の大会に先立って“天皇陛下の魚類学ご研
を記載されている。また,陛下のご採集標本は多
究”という特別展示を7月いっぱいおこない,7
くの研究者にとって貴重な研究材料となった。そ
月20日の海の日には「皇室と生物学ご研究」とい
の一例は私の大学の同級生,入村精一君だ。蛇尾
うタイトルで私が講演をすることになった。
類(クモヒトデ)の研究者である彼は,陛下の標
ここではその内容をかいつまんでご紹介するこ
本をもとに「相模湾蛇尾類」
(生物学御研究所編)
とにする。
を執筆している。おそばの人によると,クモヒト
デのよい標本が採集されると,“入村が喜ぶだろ
■■■ヒドロ虫
うな”といつも陛下はおっしゃっていたそうだ。
“葉山の御用邸の海岸に櫓漕ぎの和船が置いて
■■■ハゼ
あったが,あれは皇室の舟なのか”——この春,
人からこう聞かれて秋篠宮殿下に伺ったところ,
誰しもがご存じのように,今上(明仁)天皇は
それはたしかに御用邸の舟だった。そのとき御用
ハゼ分類の権威である。東京オリンピックの前年,
食品と容器
457
2009 VOL. 50 NO. 8
1963年(昭和38年)の第1作を皮切りに,この類
先を紹介せよ,というご意向が伝えられた。
について論文を34編,図鑑などを13編執筆なさっ
ところが当時はヴェトナム戦争が終結してまも
ている。記載された新種は8種を数える。
なくのころ,先方の機関と連絡がつきにくい。最
陛下についてここでとくにご紹介したいエピソ
終的には日本大使館のご尽力でハノイ大学の動物
ードは,ヴェトナム産ハゼの新種の記載にまつわ
学資料館に保管されることになったのだが,なぜ
る話である。1974年,私はヴェトナム南部のカン
陛下がヴェトナムに標本を贈られたいのか,陛下
トー大学農学部でメコンデルタの魚類調査をして
のご研究のパートナーである目黒勝介侍従からそ
おり,ハゼ標本の一部は陛下(当時は皇太子殿下)
の理由をうかがって私はうなった。“日本の動植
に送らせていただいていた。そんな標本のなかに
物種の大部分は過去に欧米の研究者によって新種
未記載の種類があって,陛下はそれを新種として
として記載されたもので,タイプ標本のほとんど
記載する論文を発表された。
は欧米の博物館にある。いま日本の研究者は,自
ある生物を新種として記載するとき,そのもと
分の眼でその標本を精査するチャンスが少なく苦
となる標本をタイプ標本(模式標本)という。文
労している。ヴェトナムの人たちに将来おなじ苦
章や数字による形態記載は,いくら細かくても実
労をしてもらいたくないからである”と。私は東
物にはかなわない。よく似た種の比較検討に頭を
南アジアの魚類が専門だが,まさにおなじ経験を
なやますような場合,究極の基準となるのはタイ
していた。自腹を切ってパリ,フランクフルト,
プ標本であり,博物館などで大切に保管される。
ロンドンと博物館をまわったものである。
正真正銘の1個体をホロタイプといい,それ以外
今年の3月,私は久し振りにカントー大学を訪
の指定標本をパラタイプという。陛下の論文でも
問した。水産学部の先生たちがまず話題に出した
数個体がタイプ標本に指定されて国立科学博物館
のは,ヴェトナムに贈られた標本の話,陛下の思
で登録・保管されることになったが,帰国後のあ
いをよく理解してくれていてうれしかった。
るとき東宮御所から連絡が入り,私の標本をパラ
■■■ナマズとニワトリ
タイプとしてヴェトナムに寄贈したいので,送り
陛下の次男であら
れる秋篠宮殿下は,
ナマズの殿下として
知られているが,幼
少のころから生きも
のがお好きで,あれ
はまだ幼稚園のころ
だったか,東宮御所
の渡り廊下でカメを
歩かせていた光景を
いまでもおぼえてい
る。
殿下とナマズとの
本格的出会いは東南
アジアのタイ,学習
院大学に入学された
殿下が自然・文化研
タイ北部での採集風景。中央は秋篠宮殿下,右端は筆者
食品と容器
458
究会の仲間と訪れた
2009 VOL. 50 NO. 8
バーンパイン離宮でのことだった。バンコックの
解説の末尾には執筆者「紀宮清子」とある。清子
北数十キロにあるこの美しい宮殿は広いお濠に囲
さんはご結婚までの7年間,山階鳥類研究所の非
まれていて,お濠端では魚の餌の食パンを売って
常勤の研究助手をなさっており,皇居や赤坂御用
いる。食パンは3,4斤もある塊,池のコイにお
地でのカワセミについての研究論文も出しておら
麩をやる感覚で殿下がちぎって与えようとしたら,
れる。因みにこの研究所の総裁は秋篠宮殿下だ。
そのまま投げこんでくださいという。そこで塊を
皇居は大都会のなかに残された貴重な自然であ
放りなげたところ,水中から大きな魚が現れてパ
る。そこにはタヌキまですんでいて,陛下は宮内
クッとひと呑みにした。魚はパンガシウスという
庁や科学博物館の職員との共著論文で,その糞調
ナマズ類の一種で,なんでも並はずれたものがお
査をもとにタヌキの頭数や食性の解析をされてい
好きな殿下はいっぺんに魅了されてしまった。
る。タヌキには“ため糞”といって一定の場所で
殿下は学習院卒業のあと留学して動物学を専攻
排泄する習性があり,糞場には1匹だけの個人用
されることになった。だが学習院では文科系の政
トイレもあれば複数使用の公衆トイレもあるとい
治学科の学生なので,私が課外のご指導をするこ
う。だからこれを調べれば何頭ぐらいがいてなに
とになった。東宮御所の敷地内にプレハブの研究
を食べているかがわかるわけだ。調査は丸1年,
室をつくり,週に1〜2回,夜学の先生のごとく
月に4〜5回もおこなわれたが,陛下は毎回熱心
通ったものだ。研究対象はメコンオオナマズ,全
にため糞場を見て回られたという。結果から見る
長3メートル,体重250キロに達する世界最大級
と,皇居の吹上御苑には少なくとも6頭がすんで
の淡水魚である。メコン河にのみ生息するが,稚
いて,親子づれもいるらしい。食べているのは木
魚は見つからず生態は不明,種の分類すら不確か
の実から昆虫,鳥まで,まさに雑食性である。
な謎の魚だった。だがタイ水産局の人工授精プロ
ご一家のこのようなお姿をみると,そこに通奏
ジェクトで子供がとれるようになり,殿下やタイ
低音のように流れるナチュラリストとしての思い
の研究者による仔稚魚の形態観察によって,独立
を感じずにはいられない。
の種であることが判明した。
■■■ナチュラリスト
メコンの主のようなこの魚には,いろいろな漁
労儀礼がついてまわる。生きものと人とのかかわ
東京農大調査隊の一員としてマダガスカルに滞
り——民族生物学あるいは生きもの文化史——に
在していた若いころ,南部の町であるフランスの
思い入れの深い殿下は,この漁労儀礼について実
老婦人の家に招かれることが何回かあった。海を
地調査をされ論文を書いておられる。
見渡すひとり住まいのその居間には,そこここに
殿下は最近はニワトリの研究にも力を入れ,そ
貝殻が並べられていた。彼女にとって貝のコレク
の業績で学位(理学博士)を受けられているが,
ションは趣味以上のものなのだった。籐椅子のか
ここでも家禽化の過程を生物学と民俗学の両局面
たわらのマガジンラックには,雑誌“ナショナル・
から追求されている。
ジオグラフィック”が置かれていた。フランス語・
英語のチャンポンで貝の話を聴きながら,そこに
■■■カワセミとタヌキ
なにかヨーロッパ文化の底力といったものを感じ
天皇家の第3子にして長女である紀宮清子内親
させられたものだった。
王は,秋篠宮殿下のご学友黒田慶樹さんと結婚さ
昭和天皇から黒田清子さんへと続く皇室の自然
れて,いまは黒田清子さんであることはどなたも
史への探求心,ナチュラリストとしての系譜は,
ご存じだろう。だがこの清子さんが鳥類の研究者
これぞ日本文化の底力であり,国家の品位を顕す
であることは,あまり知られていないようだ。
ものだろう——私は講演をこう締めくくった。人
平凡社刊「日本動物大百科」の第3巻「鳥類」
びとは頷いてくださったようだった。
の51〜52ページを開くと,カワセミの項がある。
食品と容器
459
2009 VOL. 50 NO. 8
調理法が野菜の抗酸化活性に与える影響
Journal of Food Science(U.S.A)H97(’09・3)
文献 №5479
はじめに
(一日5皿分の野菜や果実の摂取を推奨)プログ
遊離酸素(oxidative-free radicals)は,我々の
ラムの動機となった。さらに,野菜は非常に低カ
体内で生じる正常な反応による副産物である。こ
ロリーで,通常新鮮な状態で消費されるが,加工
れらの反応には,熱量の発生,脂肪の分解,スト
処理後にも消費される。
レス下でのカテコールアミン反応などがある。
しかしながら,調理法は野菜のテクスチャーや
果実や野菜は活性酸素を捕捉する抗酸化物質を
栄養価に影響を与える。野菜は種々の親水性およ
含む。がんやその他の疾病を予防する作用は,一
び親油性の抗酸化成分を含むため,種々の方法を
般には野菜に含まれる豊富な栄養抗酸化物質だけ
用いて抗酸化活性を推定することは重要である。
でなく,フラボノイドのような非栄養抗酸化物質
ほとんどの野菜は,調理された後に消費される。
にも含まれる。フラボノイドはヒトの健康にとっ
このため,一般的な家庭料理によって,野菜や果
て多くの有益な効果をもつものである。
実の抗酸化活性やフリーラジカル捕捉能に何が起
野菜や果実を多く摂取するライフスタイルは,
こるかを知ることは重要である。
がんのリスクを低減させることから,
“5-a-day”
目的
そく
最近の消費者は,食品の機能性に影響する過激
第1表 調理法と調理に用いた時間(分)
な調理法を避ける傾向がある。この文献は,野菜
調 理 法
野 菜
煮沸
圧力
調理
アーティチョーク
10
4
3
アスパラガス
17
5
ビート
24
ソラマメ
20
ブロッコリー
の抗酸化活性やラジカル捕捉能を高い値で残すた
鉄板
焼き
油揚
げ
20
13
10
4
39
18
12
5
2.5
30
15
8
5
4
30
14
10
16
5
2
49
20
15
メキャベツ
22
5
2
35
18
14
ニンジン
23
5
3
35
17
10
カリフラワー
17
5
2.5
34
20
13
ラマメ,ブロッコリー,メキャベツ,ニンジン,
セロリ
20
4
3
20
20
10
ナス
16
4
3.5
38
10
10
カリフラワー,セロリ,ナス,ニンニク,ミドリ
ニンニク
20
4
2.5
30
12
8
ミドリマメ
21
4.5
3
35
15
15
セイヨウニラネギ
15
3
2
30
12
8
ダンソウおよびズッキーニ。
トウモロコシ
47
10
2
40
10
7
タマネギ
20
5
3.5
35
17
12
試薬
エンドウマメ
12
4
4
25
10
6
ピーマン
20
5
4.5
47
−
17
ホウレンソウ
13
3
2
14
18
12
フダンソウ
20
3
3.5
30
15
10
水で洗浄した後,研究室で調理した。野菜のサン
ズッキーニ
20
4.5
4
24
15
10
プル(3.5kg)を7つに分割(500g)し,一部を
食品と容器
電子レン 天火
ジ加熱 焼き
めの最適な調理法を決定し,その機能性を改善し
ようと試みるものである。調理は,後述する6つ
の方法で実施された。
材料と試験方法
材料
アーティチョーク,アスパラガス,ビート,ソ
マメ,セイヨウニラネギ,トウモロコシ,タマネ
ギ,エンドウマメ,ピーマン,ホウレンソウ,フ
クロマトグラフグレードを使用した。
サンプルの調製
野菜は不可食部分を分離して小片にカット後,
460
2009 VOL. 50 NO. 8
第2表 脂質過酸化ラジカル捕捉能のロス率(%)
野 菜
調 理 法
煮 沸
A
−
–6.7 ± 1.56 z
圧力調理
天火焼き
アーティチョーク
アスパラガス
ビート
ソラマメ
ブロッコリー
メキャベツ
カリフラワー
ニンジン
セロリ
ナス
ニンニク
ミドリマメ
セイヨウニラネギ
トウモロコシ
タマネギ
エンドウマメ
  5.0 ± 0.85 b c
  9.7 ± 0.69 b c
32.7 ± 2.65 f g
33.0 ± 1.67 f g
55.0 ± 1.08 i j
33.9 ± 1.45 f g
21.2 ± 1.17 d
−
32.5 ± 1.38 f g
40.0 ± 2.54 h
36.1 ± 2.06 g h
23.1 ± 1.95 d e
−
60.5 ± 1.42 j
−
−
−
−
−
19.6 ± 1.16 e
  6.8 ± 0.60 c
10.5 ± 1.09 d
37.4 ± 1.66 d e
−
38.9 ± 2.19 d e f 31.8 ± 0.84 f
36.7 ± 0.61 d
36.4 ± 1.06 f g
43.7 ± 1.37 f g
31.7 ± 1.92 f
34.3 ± 1.57 d
11.2 ± 1.09 d
–6.4 ± 2.24 z
–8.7 ± 2.11 x y
38.9 ± 1.15 d e f 19.9 ± 1.41 e
–12.4 ± 2.00 x
25.9 ± 2.36 d
43.3 ± 1.78 e f
34.6 ± 1.77 f g
–8.6 ± 1.06 x y
26.4 ± 2.00 d
−
10.1 ± 0.44 c d
34.5 ± 1.04 d
38.7 ± 0.86 g
ピーマン
27.9 ± 0.69 c f
24.5 ± 1.23 d
ホウレンソウ
フダンソウ
ズッキーニ
31.6 ± 1.81 f g
10.8 ± 1.09 c
51.2 ± 1.35 j
18.3 ± 1.39 d
−
49.5 ± 0.51 g
−
–6.0 ± 1.71 y z
–8.0 ± 1.93 x y
47.5 ± 1.72 h
電子レンジ
加熱
−
−
22.0 ± 1.55 d
10.4 ± 0.72 c
34.2 ± 0.60 e
40.3 ± 1.50 f g
56.7 ± 1.55 h
42.2 ± 0.96 g
30.7 ± 2.10 e
–6.7 ± 2.34 z
−
33.0 ± 0.44 e
36.3 ± 1.68 e f
  8.5 ± 1.38 z
−
34.7 ± 1.05 e f
–9.8 ± 3.15 z
−
–6.4 ± 1.81 z
36.2 ± 1.11 e f
鉄板焼き
油揚げ
−
  –7.0 ± 2.18 y z
−
   8.0 ± 1.42 d e f
  –6.5 ± 1.66 y z
  35.1 ± 1.32 g
  11.8 ± 0.78 e f
  13.7 ± 2.04 f
−
−
−
–14.6 ± 3.06 x
   9.1 ± 2.56 d e f
−
  –5.6 ± 1.25 y z
  34.7 ± 1.16 g
−
  6.5 ± 1.08 b c
21.4 ± 0.88 e f
11.8 ± 1.15 c d
15.6 ± 1.03 d e
42.4 ± 0.83 i
23.9 ± 0.47 f
11.1 ± 1.47 c d
18.9 ± 3.28 e f
–8.4 ± 3.15 z
15.5 ± 1.79 d e
−
30.7 ± 2.44 g
  9.5 ± 1.74 c d
34.6 ± 1.20 g h
38.2 ± 1.40 h i
   6.6 ± 2.29 d e
–10.0 ± 1.50 x y
–10.2 ± 1.34 x y
42.9 ± 1.40 i
  13.1 ± 1.59 e f
  7.8 ± 1.54 b c
−
60.9 ± 1.71 j
注1)統計的有意差は分散分析で分析した 注2)異なる英文字はグループ間に有意差があることを示す 注3)A(−)はロスが検出されなかったことを示す
注4)マイナスの値は抗酸化活性が増加したことを示す
コントロールとして,4℃で冷蔵保存した。残り
均質化し,−20℃で貯蔵した。
は種々の調理を行った。
生および調理された野菜は,それらのフリーラ
調理法
ジカル捕捉能を評価するため,脂質過酸化,ヒド
ロキシラジカルおよびTrolox等量抗酸化能
(TEAC)
(1)煮 沸(boiling):ステンレススチールの鍋を
用 い, 各 野 菜(500g) を 沸 騰 水(1000㎖ )
を分析した。
に加え,やわらかくなるまで加熱した。
結果
フリーラジカル捕捉分析
(2)電 子レンジ加熱(microwaving):野菜500g
を水を加えずガラス皿の上に乗せ,家庭用電
脂質過酸化ラジカルの捕捉を指標とした抗酸化
子レンジで加熱した。
活性の分析:第2表に種々の調理を受けた野菜に
存在する抗酸化活性の減少率を示す。
(3)圧 力 調 理(pressure-cooking): 野 菜500gを
圧力鍋で調理した。
煮沸:この調理法は生鮮品に対して,最も抗酸
(4)油 揚げ(flying):野菜サンプル500gを精製
化活性の低下が大きい。最もロスが多いのはエン
オリーブオイル(169℃)が入ったフライパ
ドウマメ,カリフラワー,ズッキーニでロス率は
ンに入れ,サンプルがぱりっとなるまで撹拌
50%以上であった。30〜50%のロス率はホウレン
した。
ソウ,ニンニク,ブロッコリー,メキャベツ,ニ
かくはん
ンジン,セイヨウニラネギ,ミドリマメであった。
(5)鉄 板焼き(griddling):野菜を厚手のフライ
パンに入れ,油を入れずに加熱した。
ナス,タマネギ,アーティチョークは変化なく,
(6)天火焼き(baking)
:家庭用オーブンで焼いた。
その他は5〜30%のロスであった。アスパラガス
各野菜の調理法と調理時間を第1表に示す。
は抗酸化活性が増加した。
調理後,野菜は室温で数分冷却し,その後粉砕,
圧力調理:ほとんどの野菜で25〜50%の抗酸化
食品と容器
461
2009 VOL. 50 NO. 8
活性のロスが認められた。ソラマメとホウレンソ
ニンニク,トウモロコシは変わらず,ミドリマメ,
ウは5〜25%のロスであった。フダンソウ,ビー
フダンソウ,ホウレンソウ,アスパラガス,ブロ
ト,タマネギ,アーティチョーク,アスパラガス
ッコリー,タマネギは有意に増加した。
は変化なく,ナスは抗酸化活性が有意に増加し
油揚げ:最もロスが大きいのはズッキーニ(50
た。
%以上)セイヨウニラネギ,タマネギ,エンドウ
天火焼き:抗酸化活性のロスが最も大きいのは,
マメ,メキャベツ,ピーマンは30〜50%のロスで
ニンジン,メキャベツ,セイヨウニラネギ,カリ
あった。残りの野菜は5〜30%のロスであった。
フラワー,エンドウマメ,ズッキーニで30〜50%
フダンソウ,アーティチョーク,ミドリマメは変
の間で低下した。その他の野菜(タマネギ,ソラ
わらず,ナスのみが生鮮サンプルより抗酸化活性
マメ,セロリ,ビート,ニンニク)は5〜30%の
が増加した。
ロスであった。アーティチョーク,アスパラガス,
まとめ
ブロッコリー,ピーマンは変化なく,ミドリマメ,
アーティチョークのみが,すべての調理法の後
ナス,トウモロコシ,フダンソウ,ホウレンソウ
にも非常に高い抗酸化活性を維持していた。最も
は抗酸化活性が有意に増加した。
活性の低下が大きいのは,煮沸および電子レンジ
電子レンジ加熱:最もロスが大きいのはカリフ
加熱後のカリフラワー,煮沸後のエンドウマメ,
ラワー(50%以上)で,ほとんどの野菜は抗酸化
煮沸および油揚げ後のズッキーニであった。
活性が30〜50%低下した。一方,ソラマメは10%,
この研究結果は,種々の調理法が野菜の抗酸化
ビートは22%低下した。アーティチョーク,アス
活性に与える影響の情報を提供するデータベース
パラガス,ニンニク,タマネギ,ホウレンソウは
として,また我々が食べる野菜の抗酸化活性を維
変わらず,ナス,トウモロコシ,ピーマン,フダ
持する調理法を推奨することで,食品産業の発展
ンソウは抗酸化活性が増加した。
を促すかもしれない。しかし,in vivo(生体内)
鉄板焼き:メキャベツとエンドウマメが35%抗
において,化学物質の効率に与える調理の影響の
酸化活性が低下した。残りの野菜が5〜30%低下
さらなる研究が将来実施されることが望まれる。
し,アーティチョーク,ビート,セロリ,ナス,
(十時正義)
講習会のご案内
MRC 食品膜技術講習会 in Tokyo 2009
◇日 時:2009年8月6日(木)〜8月7日(金)
◇場 所:㈶日本食品分析センター
〒151-0062 東京都渋谷区元代々木町52-1
Tel.03-3469-7131(小田急線代々木八幡駅,
地下鉄千代田線代々木公園駅下車徒歩5分)
◇主 催:食品膜・分離技術研究会(MRC)
◇共 催(予定)
:化学工学会,日本膜学会,石油学会
◇参加費:◎テキスト持参者:会員=30,000円/人,
非会員=35,000円/人。◎テキスト購入者:会員
=37,000円/人,非会員=42,000円/人
◇参加申し込みおよび問い合わせ
MRC本部事務局:〒332-0015 川口市川口1-1-3-3211
TEL&FAX 048-224-3336(事務局 渡辺敦夫)
e-mail:[email protected]
◇プログラム
8月6日(木)(10:00〜18:55)
◎膜技術および関連技術の総合学習
渡辺敦夫(MRC)
◎膜技術の基礎Ⅰ(膜技術を使いこなす基礎知識
食品と容器
を講義する) 伊東 章(東京工業大学)
◎膜技術の基礎Ⅱ(膜技術を使いこなす基礎知識
を講義する)
渡辺敦夫(MRC)
横山文郎(日本ピュアウォーター)
◎Q&Aアワー
◎情報交換交流会
8月7日(金)(9:20〜16:30)
◎無機膜の性質と無菌化ろ過
原田三郎(トライテック)
◎食品加工への膜利用(無菌化濾過以外)
◎メンブレンバイオリアクター
渡辺敦夫(MRC)
◎電気透析の原理と応用例
◎乳業における膜利用
伊藤光太郎(雪印乳業)
◎膜の洗浄とメンテナンス
田辺忠裕(シラサギサニテイションラボ)
◎Q&Aアワーand総合討論
司会:渡辺敦夫
462
2009 VOL. 50 NO. 8
2009年に向けた食品製造業のトレンド調査
Food Processing(U.S.A)26(’09・1)
文献 №5458
食品製造業界において食品の安全性確保が最優
者が62%,重要度は低下したと答えた回答者が18
先課題であることに変わりはないが,景気後退を
%であった。
受けて食品加工業者は2009年に向けて戸惑いを感
依然として安全第一
じている。
8年連続で今回も食品の安全性が最重要な関心
昨年の今頃(2007年末)は業界動向調査に回答
事項となった。食中毒,アレルギー誘発物質の記
した飲料・食品加工業者のほぼ77%が2008年に少
載漏れに加え,過去2年間中国製食品の添加物汚
なくとも5パーセントの生産増加を予想していた
染が問題となったためだ。
が,今年は景気後退の中で態度を一変させている。
前年までの調査と同様に,食品の安全性と衛生
生産増加率を3%にまで下げても2009年にこの増
を向上させる鍵は従業員の訓練であるという食品
加率を予想する回答者はわずか56%に留まってい
加工業者の認識は変わっていない。実際,訓練に
る。その一方で,回答者の43%が,2009年に向か
焦点を当てている食品加工業者が84%という数字
って楽観的であると答え,悲観視しているのはわ
は2008年の89%と比べて大きな落ち込みではない。
ずか22%であった。
HACCP対応も昨年の57%に対して今回は51%
9種類の項目(第1表)について回答者に優先
であった(第2表参照)。
順位をランク付けしてもらい,それを点数で算定
「経済状況が工場の操業にどの様な影響を与え
したところ,例年通り食品の安全性が優先順位第
ているか」との質問に対しては半数の回答者が「そ
1位,エネルギー問題が2年連続で第2位となっ
れ程の影響はない」と答え,残りの半数は生産の
た。労務問題は再び第3位となり2006年以来エネ
減少(42%),レイオフ(23%),工場閉鎖(6%)
ルギー問題と労務問題が第2位と第3位の間で拮
と答えている。
抗している。
あるマッシュルーム生産会社の工場長は,キャ
昨年注目された「調達と原材料」および「環境
ッシュフロー
問題」を優先するとした回答者は今年若干増加し
が1つの大き
たが順位を押し上げるまでにはいたらなかった。
な試練だとし
書き込み回答の中では「原材料コスト」を懸念す
たが,それと
る問題としてあげたものが最多であった。
は別に中国,
現下の経済が工場の操業やその他会社の経営に
その他の諸国
具体的にどう影響しているかについては,経済的
の品質の劣る
エネルギー問題
(調達先、コスト)
労働問題
(求人、訓練、配転、削減)
重圧にもかかわらず最も多かった回答は「それほ
原材料が米国
どでもない」あるいは「大きな変化はない」とい
の食品流通の
うものであった。しかも,経済の落ち込みによっ
中に入り込ん
て「グリーン化(環境対応)の推進」の重要性が
できて食品製
低下することはなかった。環境持続性のための努
造業界の大き
力がますます重要になってきていると答えた回答
な懸念の種と
きっ
食品と容器
463
かぎ
第1表 2009年に向けた製造上
の優先順位
ランク付 第1位に挙げた
け平均 投票率(%)
食品の安全性
7.4
37
6.49
13
5.93
10
調達と原材料
5.53
11
環境問題
5.46
  7.1
自動化
4.88
  7.3
物流
4.50
  2.3
統合の脅威
4.13
  6.5
工場の安全確保
4.13
  5.1
2009 VOL. 50 NO. 8
なることを心配
飲料加工業界は
しており,
USDA
期待したとおり
とFDAが中国か
の恩恵を受けて
らの輸入に目を
いる訳ではない。
つぶり政治のダ
2008年初頭から
ブルスタンダー
7カ月に及ぶオ
21%
ドが問題を複雑
イル価格の急激
9.5%
5.9%
にしていると不
第2表 食品の安全性向上
のための対応
従業員の訓練
HACCP の計画
衛生設備の改善
害虫管理の改善
微生物の迅速な検出
その他の微生物
検出システム
その他
なし
83%
51%
51%
38%
25%
満を述べている。
第3表 現下の経済状況に
どう対処しているか
人員削減
31%
工場の閉鎖・統合
12%
8.4%
な上昇は価格構
賃金カット
米国・カナダでの生産
のアウトソーシング
海外での生産のアウト
ソーシング
大きな変化はない
造に衝撃を与え
業績が伸びている
27%
3.8%
3.1%
40%
「現在の経済状況に会社としてどう対処してい
たが,今回の価格急落はまだ原材料価格や運送費
るか」との質問に対しては40%が大きな変更はな
に反映されていないと言う。
いとし,27%は事業が拡大すると回答している。
カーボン対策については今年も方向は変わらな
しかしながら,31%はレイオフを実施,その他の
かった。「現下の経済状況を踏まえ,2009年のグ
回答の中には賃金カット,事業統合,アウトソー
リーン化を会社としてどの程度重視しているか」
シングを行う,という回答もあった(第3表)。
との設問に対して,62%の回答者が2008年にも増
2009年の生産増加を見込んでいるとした回答が
して重要となると答えている。経済の落ち込みか
過半数を占め,30%が前年並みと回答したが,昨
ら企業の余裕がそがれると想定したが,これまで
年はわずか3%に過ぎなかった先行きの生産減少
のようには重要視しないと答えたのはわずか18%
を予想する回答が,今回は13%に上った(第4表)。
に留まった。その一方,回答者の2/3以上が
2008年半ばのオイルの高騰以前のこの時期に実
2009年に工場の代替エネルギー対応(太陽光,風
施した調査では,加工業者の内の11社を除くすべ
力,バイオディーゼル)を実施する計画はないと
てがエネルギーのコストに「大いに」あるいは「あ
答えているが,グリーン計画のすべてが消えてし
る程度」の懸念を持っていると回答した。約25社
まった訳ではない。食品加工業者が資本投下しよ
を除くすべてが2007年のエネルギーコストの上昇
うとしている主なエリアは太陽光発電だ。その他
によって「ある程度」あるいは「ひどく」打撃を
の戦略としてはエネルギーの節減,風力発電,バ
受け,55%はエネルギーコストの上昇が予想を超
イオ燃料(バイオディーゼル,廃棄物焼却熱回収,
えていた,としていた。
メタンガス回収等)がある。
今回の調査結果も同様に,86%の回答者が「あ
設備をより環境に優しいグリーンなものにする
る程度」あるいは「ひどく」影響を受け,エネル
ためにエネルギー関係以外に行っている唯一の大
ギーコストの上昇が予想を超えていたとの回答が
きな対策はリサイクリングだ。回答のいくつかは
61%に上った。
照明器具の更新,包装材の簡素化あるいは廃止,
複数の回答を可としたエネルギーコスト対応に
さらには紙面によるコミュニケーションの廃止を
ついての質問では,回答は前回調査とほぼ同じで
進めているというものもあった。
エネルギーの節約が68%,エネルギー使用状況の
優先順位第3位の労務問題はこれまでとは焦点
監査が35%,リサイクリングが23%であった。ま
の当て方に変化が生じている。2007年末は移民の
た,ほぼ19%が代替エネルギーを検討している。
問題,その前の年は良質な労働力の確保が大きな
2008年前半のオイル価格の高騰はエネルギー価
懸念の種であったが,この2つの問題は依然懸念
格が工場の稼動ということだけでなく食品加工事
として残されているものの労務関係の今年最大の
業のほとんどあらゆる面に一体となってかかわっ
懸念はレイオフであった。
ていることを見せつけた。このところのオイル価
逆に前向きな面を見ると,回答者の52%が2009
格の急落は誰しも歓迎すべきところだが,食品・
年を通して現在の従業員を維持する計画と答えて
食品と容器
464
2009 VOL. 50 NO. 8
おり,回答者の6人に1人は要員を増加する計画
第4表 2009年の工場生産はどのように変わるか
んどの回答者が「ほぼ同じ」と答えている。変化
2009 年
20%以上増加........................12%
10 ~ 19%増加.....................21%
3~9%増加........................24%
ほぼ横ばい.............................30%
3 ~9%減少.........................7%
10 ~ 19%減少.....................3%
20%以上減少........................2%
しているとした回答者の間では技術部門が減少し,
36%の企業が来年に賃金の増額を計画していると
調査開発部門が増加する傾向があるようだ。技術
いう点である。昨年の42%からは若干減少したも
部門は減少が16%,増加が14%,調査開発部門は
のの,賃金を減らすという回答は昨年の13%より
増加が20%,減少が14%であった。
少ない9%に過ぎなかった。
労務関係で最も驚かされる結果となったのは,
を持っている。21%は人員削減を想定,その内の
8%は要員解雇,14%は新規採用の抑制によると
している。
技術部門,調査開発部門の双方で3年前と比べ
て現在の要員数はどうかとの質問に対して,ほと
2008 年の調査結果
20%以上増加................20%
10 ~ 19%増加.............26%
5~9%増加................32%
ほぼ横ばい.....................20%
5~9%減少................1%
10 ~ 19%減少.............0.3%
20%以上減少................2%
(桜田三郎)
新・原産地表示の利点と問題点
Food Technology(U.S.A)42(’09・3)
文献 №5474
衣類,電気製品,玩具その他に続き,農産物に
同法は2004年9月30日に成立したが,各団体か
も原産地表示が求められている。
らの圧力やロビー活動のため施行は2度延期され
このことは論争を巻き起こし,消費者保護団体
た。唯一の例外は天然/養殖魚介類で,2005年4
が 原 産 地 表 示(country-of-origin labeling:COOL)
月から原産地表示が義務化されている。2008年の
を食品の出自にこだわる消費者に重要な情報を提
農地法案(食料・保全・エネルギー法)では鶏,
供するものと評価すれば,一方でメーカーや小売
ヤギ肉,朝鮮人参,ピーカンナッツ,マカデミア
店が冷ややかな反応を示し,原産地表示の義務づ
ナッツが原産地表示義務品目リストに加えられた。
けはコストを増大させ,利益を損なうとしている。
最新施行法は本年(2009年)1月15日に連邦官報
本稿では関連法案を紹介すると共に,消費者側
(Federal Register:FR)に登録され,同20日よ
と業界側の言い分を分析する。
り農務省の管轄下に置かれている。2月20日には
なぜCOOLを実施するのか?
農務長官T.VILSACK氏が3月16日よりCOOL施行の
COOLは決して新しいものではない。約80年前,
旨を発表した。
1930年関税法は米国に輸入されるすべての加工製
COOLは食品安全には触れず,むしろ小売に際
品は原産地を表示するよう定めている。2002年,
してのラベル表示に関するプログラムと位置づけ
下院は1946年の農産物販売法を改正し,農地安
られるため,「輸入/国産食品はFDAおよび農務
全・地方投資法にCOOL条項を追加した。同改正
省食品安全検査局(FSIS)の食品安全基準に適
は2002年農地法案としても知られる。これは小売
合しなければならない(FR:2008a)」。
店に,消費者に対して牛,羊,豚肉の原産地およ
消費者保護団体では,COOL施行は消費者の勝
び部位,天然/養殖魚介類,青果物,落花生の原
利だとしている。「2008年メキシコ産ハラペーニ
産地を示すよう義務づけた。
ョやセラーノの場合のように,特定の輸入食品に
食品と容器
465
2009 VOL. 50 NO. 8
関して安全性が問題となれば,消費者はその食品
揚げしたものでなければならない。国外加工の
を避けることができる」とConsumer Reports誌
度合いが高いものは認められない。輸入後国内
発 行 の 非 営 利 団 体Food Policy Initiatives for
で加工していないものは「○○国産」,輸入後
Consumers UnionのJ.HALLORAN氏は言う。
に国内で加工したものは「○○国産,米国加工」
しかし,より重要なのは,そうした事態になれ
とする。COOLでは天然・養殖の区別も表示義
ば,消費者は特定の食品というより特定の地域か
務としている。
らの輸入品を避けるという事実であり,国内の生
◆混合食品:原産地が異なる「単一」品を小売用
産者・小売業者への反発は最小限に抑えられる
にまとめて包装したものを指す。冷凍豆/ニン
結 果 に な る と ア メ リ カ 消 費 者 連 合(CFA)のC.
ジンの袋詰めは該当するが,豆とニンジンを混
WALDROP氏は指摘する。
ぜたものは該当しない。ラベルには原産国名を
原産地を知ることは,輸入品を避けることと同
すべて表記する。肉製品は含まれない。
義ではない。「ニュージーランド産羊肉,オラン
COOLは加工品を対象としない。加工品とは「性
ダ産トマトなど,輸入品を特に好む消費者もいる。
質が変化」するまで加熱,燻煙,塩漬,調理,ま
一方で国産品だけを買いたがる消費者もおり,い
たは他の原産地表示義務品,リスト除外品と結合
ずれにとっても法改正後のラベル表示は重要な情
させた食品をいう。ただし,水・塩・砂糖を使用
報源だ」とHALLORAN氏は言う。
して食べやすくしたものは加工品とはされない。
正しい表示
ミートローフ,コンビーフ,カツレツ,ソーセー
新法の下,青果物等の場合は生育地が原産地で
ジ,味付け豚肉,鶏笹身フライ,ローストピーナ
あり,魚介類も同様に「ワシントン産リンゴ」「ア
ツ,魚介スティック,フルーツカップ,ミックス
ラスカ産サーモン」と地名を表記すればよい。し
ベジタブル,ドレッシング添えミックスサラダ等
かし肉類の場合は事情が異なる。家畜の誕生から
は加工品とされる。
加工までは異なる場所で行われることが多い。以
この加工品の定義はあまりに広く,本来は原産
下に原産地表示義務品目の表示方法を列記する
地表示をすべき食品の多くが表示を免れ,COOL
(FR 2009a)。
の重大な欠陥だとWALDROP氏は言う。「農務省では
くん
◆青果物,ナッツ,朝鮮人参:生育/収穫地を原
“roasting”を加工と解釈しており,落花生,ピー
産地とする。国産品は州,地方,地域名まで表
カンナッツ,マカデミアナッツの95%に原産地表
示するのが望ましい。例:
「米国産」
「米国生育」
示がない。また“curig”,
“smoking”も同様なため,
「○○国産」
豚肉の60%に同表示がない。冷凍青果物,ミック
と
◆畜肉切り身:国内で誕生・肥育・屠殺した家畜,
スサラダも2種類以上の原産地表示義務品が結合
国内の野生動物,2008年7月15日以前に国内に
して新しい食品を構成するとされるため,原産地
存在した家畜は「米国産」,国外で誕生,国内
表示のないものが多い。消費者は混乱する。よく
で肥育・屠殺した家畜は「米国/○○国産」と
似た製品の一方には表示があり,もう一方にはな
する。国名の表記は順不同である。国外で誕生・
い。しかもその理由がわからない」と同氏は言う。
肥育,国内で屠殺した家畜は「○○国/米国産」,
Consumers Unionは農務省に意見書を提出,
国外で誕生・肥育・屠殺した家畜は「○○国産」
「加工」の定義が「広すぎる」として応用をやめ
とする。
るよう求めた。「農業販売促進局(AMS)に対し,
ひき
◆挽肉:家畜の出自が数カ国にわたる場合が多い
加工品と定義される食品に関する規制をもっと柔
ため,すべての国名を表記する。
軟に運営するよう,逆に原産地表示の免除につい
ては規制を強めるよう要求する」と言う。
◆魚介類:「米国産」ラベルを付けるには,養殖
の場合は産卵・生育・水揚げ・加工を国内で行
法の遵守
い,天然の場合は海域内または米国籍の船で水
COOLでは小売業者が消費者に対する原産地表
食品と容器
466
2009 VOL. 50 NO. 8
示義務を負い,原産地情報を検証するため生産者
が表示の価値を決め,実行に移した」と全米肉牛
から記録の提供を受ける。原産地および生産方法
生産者・牛肉協会のH.VAUGHAN氏は言う。当局に
(天然か養殖か)表示のしかたは包装に直接印刷
よる原産地表示の強制は販売プログラムの強制に
するほか記号,ポスター,ステッカー,帯,紐,
等しいとして,政府が食品販売に干渉すべきでは
札など様々である。農務省が違反を発見した場合
ないと警告する。
は1件当たり1,000ドル以下の罰金が科せられる。
食品の原産地表示は消費者団体が主張するとこ
しかしすべての小売業者に法遵守義務があるわけ
ろの知る権利に貢献するかもしれないが,そもそ
ではなく,生鮮農産物法(PACA)免許を持つ小
も消費者が情報提供を望んだのか疑問を呈する声
売業者のみが対象となる。精肉店,魚市場,飲食
もある。「COOLの下院通過以前,市場において
店等は除外される。PACA免許は青果物を販売し,
消費者が肉製品の原産地を知りたがっていたとい
1年当たりの仕入れ費用が23万ドルを超える小売
う証拠はほとんどない」とDOPP氏。消費者の関心
業者に交付される。
はむしろ,食品の安全性・価格・質に向いていた
小売業者および食肉・加工業者の責任は重大で
と同氏は言う。
あり,COOLが収益に与える影響を注視せざるを
一方のWALDROP氏は,COOLが強制力を持つこ
得ない。農務省ではCOOL実施後最初の1年にか
とに賛同する。「特定の地域から来た特定の食品
かる費用を26億ドルと見積もっている。内訳は始
に疑念を抱いた場合,原産地表示があれば当該食
動に1億2,600万ドル,記録保持に年間4億9,900
品を避けることができる。COOL施行以前,この
万ドルである(FR 2008b,2009b)。
件に関して消費者は暗闇の中に置かれていた」。
家畜を原産地によって分類することは正確な表
COOLの未来
示のために欠かせないが,そのための費用が農務
今や多くの食品がCOOL義務の対象となった。
省の見積もりから抜けていると指摘する声もある。
加工食品の素材も同様の進化を遂げるだろうか?
「アメリカ国内で販売・加工される家畜・精肉は
2007年,中国産のメラミン汚染乳製品がペットフ
多様な地に由来するため,食肉加工業者の負担は
ードに使用されたことが明らかになって初めて,
非常に大きい。家畜のみならず食品流通システム
アメリカの消費者は食品安全基準の低い国から輸
全体にわたる肉製品の分類にかかる費用は膨大
入される食品素材の多さに気付いた。遠からず,
だ」と米食肉協会(AMI)のM.DOPP氏は言う。
食品素材にも原産地表示義務が課される日が来る
WALDROP氏はCOOLがコスト高だという論調に
かもしれない。「メーカーの食材調達方法は非常
は否定的である。「2008年農地法案で改正が行わ
に複雑であり,長い闘いになるだろう」とWALDROP
れ,加工・小売業者にも遵守しやすくなっている。
氏は言う。
現在手持ちの記録から原産地を割り出すこともで
本稿中インタビューに応じた各氏は,COOLは
き,小売業者に科す罰金も軽減された」。事実,
食品安全のための仕組みではなく,ある国の食品
農務省は同法改正により,原産地が複数にわたる
が他の国より安全などということを示すものでも
製品の表示方法規制を緩和し,家畜も2008年7月
ないと口を揃える。アメリカの現行法規には厳格
15日以前に国内に存在していれば「米国産」との
な食品安全指針を伴うものが多い中で,COOLは
表示を認めると主張している。ただし,上記家畜
情報を提供する以外の何物でもないが,オーガニ
について,同省は原産地情報記録の有効性に関し
ック志向,ユダヤ/イスラム教徒消費者の中には
懸念を表明した。なお,同法違反の罰金は1万ド
異なる受け止め方をする向きもあるようだ。
ルから1,000ドルに引き下げられた。
COOLを評価するにしろ欠点を非難するにしろ,
AMI等は早くから,当局から強制されるもの
本稿に登場した機関も消費者も食品業界も,政府
より費用を抑えられるとして自主的な原産地表示
と協力して移り変わりを潤滑にし,必要と判断す
を支持してきた。「生産者・加工/小売業者自身
れば法改正を行うべきである。
ひも
食品と容器
そろ
467
(力丸みほ)
2009 VOL. 50 NO. 8
2009年の食品および素材の傾向予測
Cereal Foods World(U.S.A)15(’09・1−2)
文献 №5463
2009年の世界の食品トレンドについて,業界の
いる。多くの企業が環境配慮の緊急必要性を意識
専門家や市場調査会社,食通,ジャーナリストに
するようになっている。
よる傾向予測を以下に要約する。
天然甘味料ステビア
価格
南米の植物ステビアに由来するショ糖や果糖を
Food Channel社は,2009年のトレンドは「価格」
含まない天然のゼロカロリー甘味料が最近FDA
であり,消費者は予算を捻出するか,出費を減ら
によってGRAS認証された。近々,Coca Cola社
すか,自分で料理をするかにかかわらず財政的に
のZero Calorie Sprite Greenを含め,ステビア甘
納得できる選択をすると言う。Information Resou-
味料を使った多くの製品を見かけるかも知れない。
rces社は,「消費者は,すべての所得階層で節約
Cargill 社とCoca Cola社が共同開発したステビア
のためPBを志向している」と言う。PB食品は有
甘味料Truvia rebianaは,1包みでティースプー
名ブランドの同等品に比べ平均30%安く,消費者
ン2杯分の砂糖の甘さを持つと言う。今後この新
のPB志向はうなずける。
甘味料の人気が爆発的に出る可能性がある。その
簡単に調理できる(パッケージ)食品
他のステビア甘味料としてWhole Earth Sweetener
2009年のトレンドの第1位は簡単に調理できる
Company社のPureViaやWisdom Natural Brand
食品である。Food Marketing研究所はアメリカ
社のSweetLeafがある。
人の71%が外食が減り,家で料理する頻度が増え
花のフレーバー
たと言い,Epicurious.comは,最も検索の多いキ
花のフレーバーも2009年のトレンドの1つにあ
ーワードは「チキン」や「パスタ」などの平凡な
げられる。Datamonitor社のトップトレンドリス
素材だと言う。Mintel社は,不景気に関連づけて
トに「花の力」が入っている。Foodprocessing.
「憂鬱なとき,簡単に調理できる食品が欲しくな
comも,飲料は人工フレーバーから天然フレーバ
る」と言う。Food Channel社のTop Trends for
ーに移行していると言い,「フレーバーのトレン
2009のトレンド第1位は「電子レンジ料理」であ
ド」としてバニラビーンやレモングラス,クロー
る。Toledo Blade誌は,
「53%の消費者は半年前よ
ブ,カルダモン,ラベンダー,ジンジャー,オレ
り『あり合わせ料理』が多くなった」と言う。
ンジ,レモンピールをあげている。Mintel社も「天
環境への配慮
然の素晴らしい香りは必ずヒットする」と言う。
2009年は間違いなくエコ定着の年になる。多く
各社は2009年のフレーバー予測として特に,柿,
の消費者は環境に関心を持ち,エコバッグを使用
スターフルーツ,サボテン,ラベンダーをあげている。
し,「生分解可能」「100%オーガニック」「リサイ
新しいスーパーフルーツ:ワイルドベリー,タ
クル材使用」などの表示を探して,より環境に優
ートチェリー,バオバブ
しい製品を選択する。Food Channel社は,環境
ブルーベリーやクランベリー,チェリーなど黒
に配慮している企業の例に,Kraft社の「廃棄物
っぽいベリーはビタミンやミネラルが豊富で抗酸
をバイオ燃料に変換」やBen & Jerry社の「アメ
化健康効能が知られている。Journal of Agricul-
リカ初の気候変動に影響しない冷凍庫」をあげて
ture and Food Chemistry 誌に発表された研究に
ねん
うつ
食品と容器
468
2009 VOL. 50 NO. 8
よると,25種の供試フルーツのなかでブルーベリ
2006年〜2007年のグルテンフリーの新製品は2004
ーは総フェノール量,活性酸素吸収能,細胞抗酸
年〜2005年の2倍になったとDatamonitor社は言
化活性が最も高い。Mintel社は,バオバブが2009
う。従来穀物ベースのクッキーやパスタ,アイスク
年のスーパーフルーツになる可能性があると言う。
リームコーン,シリアルも,現在グルテンフリーで
EUが食品新素材として認可したバオバブの乾燥
味の良い製品を見つけることができる。この分野が
フルーツパルプはシリアルやスムージーなどに使
まだ大きく成長する可能性があることは,General
用されている。他の注目すべきスーパーフルーツ
Mills社が同社のシリアル製品Rice Chexの大麦モ
にアサイやゴージベリー,マンゴスチンがある。
ルトシロップを糖蜜に代替したことで明白である。
みつ
Datamonitor社は最新のもっとも素晴らしいベリ
広告代理業のJWT社は,グルテンフリー食品は
ーはMaqui Superberryだと言う。このベリーは
「シック」で「ヘルシー」と思われていると言う。
アントシアニンやポリフェノール,活性酸素吸収
健康ナッツ
能が高く,他のベリー類の4〜30倍ある。
アーモンドやクルミ,ピーナツ,ピカン,カシ
チェリーも人気があり,文献によると,tart
ューナッツなど個々の好みはともかく,ナッツ類
cherryはコレステロールを下げ,炎症を低減し,
は2009年の新素材と予測される。ナッツに対する
体重と体脂肪を減らすと言う。また,Datamonitor
消費者の認識は,
「太る」素材からビタミンや繊維,
社は,紫や黒ニンジンも注目すべき新素材だと言
タンパク質,オメガ−3を含有する「健康に良い」
う。これらは抗酸化物が豊富でニンジンの色素は
素材へ変化している。Datamonitor社の調査でも
心臓疾患やがん防止効果の可能性があり,新製品
ナッツ製品の販売が増加している。ナッツ類はコ
の数は2003年の5倍あると言う。
レステロールやがんの抑制だけでなく,フレーバ
グルテンフリー食品
ーやテクスチャーも付与する。
グルテンフリー食品はニッチから主流になった。
(川原健二)
講習会のご案内
第1回 MRC 食品乾燥・包装技術講習会 in Tokyo 2009
◇日 時:2009年9月15日(火)〜9月16日(水)
◇場 所:㈶日本食品分析センター
〒151-0062 東京都渋谷区元代々木町52-1
Tel.03-3469-7131(小田急線代々木八幡駅,
地下鉄千代田線代々木公園駅下車徒歩5分)
◇参加費:◎テキスト持参者:会員=30,000円/人,
非会員=37,000円/人。◎テキスト購入者:会員
=33,150円/人,非会員=40,150円/人
(8/25迄の申し込みは早割り扱いで−5,000円/人)
◇参 加申し込みおよび問い合わせ(e-mail,FAX) 食品膜・分離技術研究会(MRC)本部事務局
:〒332-0015 川口市川口1-1-3-3211
TEL&FAX 048-224-3336(事務局 渡辺敦夫)
e-mail:[email protected]
◇プログラム
9月15日(火)
(10:00〜11:40)1.講師自己紹介等および食品
包装技術講習会〜 2.食品乾燥の意義 3.食
品乾燥の基礎的理論〜
講師:土田 茂
(12:40〜14:00)5.乾燥食品の製造の実際 講師:土田 茂
食品と容器
(14:05〜15:05)6.食品乾燥の周辺技術 講師:渡辺敦夫
(15:20〜16:30)7.乾燥食品の品質管理と保存
技術 講師:土田 茂
(16:30〜16:55)総合討論 土田・渡辺
(17:00〜19:00)情報交換 交流会 9月16日(水)
(9:30〜10:40)1.講師自己紹介等および食品
包装技術講習会〜 2.包材メーカーと食品製造業・
食品流通業〜 講師:石谷孝佑
(10:55〜12:00)6.食品包装学 7.食品包装
の切り口別の分類 8.包装の機能と包材の機能
性 9.「商品の品質」〜
講師:石谷孝佑
(13:00〜14:30)10 .食品の変質要因と条件 11.食品の水分活性とは〜 12.食品の水分活性
と変質要因,品質保持技術〜
講師:石谷孝佑
(14:45〜16:15)20 .包装による酸化防止の事例
21.非酵素的渇変 22.ガス置換包装 23.防湿
包装 24.ピンホールの〜
講師:石谷孝佑
(16:25〜16:45)総合討論
石谷・渡辺
469
2009 VOL. 50 NO. 8
新しいEUの添加物規制
The World of Food Ingredients(Neth.)31(’09・2)
文献 №5468
食品添加物(香料,酵素,添加物)とその許認
酸化剤,膨張剤,着色剤,甘味料,等について安
可に関する欧州委員会の4つの規制法案は2006年
全性,技術的ニーズ,消費者の利益という観点か
7月28日に公表されて以来,様々な修正を加えた
らEUにおける食品添加物認可の一般原則を規定。
後,2008年7月8日に欧州議会で採択され,同12
また,添加物の表示要件ほかについても規定して
月より施行された。
いる。さらに,加盟各国における暫定的許認可の
規制の最終的な目標は,安全で健康的な食品の
ため規制共通化の移行期間を2年と定めている。
自由な流通を確保し,人々の健康づくりに寄与す
新規制:欧州委員会としては最終的に現行のす
ることにあるが,添加物と香料に関してはEUの
べての規制を廃し,立法化システムの簡便化,規
現行規定を改善するもので,酵素については初め
制の一本化を図ることを目指している。新規制で
てEU全域レベルでの規定を設けるものとなって
は食品添加物を機能別に26のカテゴリーに分け,
いる。
それぞれについてポジティブリストを設けている。
委員会では対象となる素材のリストを作成し,
食品添加物というものの定義は現行法規と同じ
このリストに載ったものについてのみ許認可を行
で,「それ自体を食品として消費するのではなく,
うこととしており,今後メーカーならびに関係業
それを食品に添加することで,その食品の一構成
者は直接欧州委員会に認可申請を行うことができ
要素となるもの」としている。
るようになる。また,遺伝子組み換え食品・飼料
拡大範囲:新規制では食品中に使われている添
も対象としており,添加物,香料,酵素に遺伝子
加物だけでなく,添加物,香料および酵素の生産
組み換え品が含まれる場合,当該ポジティブリス
に使われる添加物にまで対象を広げている。対象
トにこれが入るまでは,施行済みの法令1829/2003
外となるのは,加工助剤および栄養素として使わ
にもとづく認可を義務づけると共に,その表示も
れる物質,食品添加物として使われる酵素等であ
求める内容となっている。
る。新規制へのスムースな移行のため,酵素およ
1)EU共通認可手続き
び香料に含まれる添加物も2011年1月までは対象
前述のごとくEUのポジティブリストに載った
外としている。
ものに限ってEU域内での流通を許すというのが
コミトロジー:今回の新規制の最も重大な点は,
目的で,リストはいわゆる「精査を伴う規制手続
フードチェーンと動物の保健に関する常任委員会
き」(精査を伴うコミトロジー(comitology))と
においていわゆる「精査を伴うコミトロジー」に
いう方式によって欧州委員会が作る。
よって各種添加物をEUのポジティブリストに入
リストへの登録を申請するにあたって機密保持
れたことである。すなわち,欧州委員会は加盟27
を要する情報については,その旨を裏付ける資料
カ国の専門家の援助を受けて所定の議決要件によ
を提出し,その可否について認定を受けることに
りその方法を定め,欧州議会はこれを精査する権
なっている。
限を有している。従来,EUのポジティブリスト
2)食品添加物に関する新しいEUの規制
採択や修正には欧州議会や理事会等々の諮問など
現行法規:「指令89/107/EEC」が乳化剤,抗
食品と容器
数々の手続きを経なければならず,その結果数年
470
2009 VOL. 50 NO. 8
を要していたことを考えると極めて大きな変化で
色剤,人体への影響などについての表示も求めて
ある。例えば,既にリスト入りしているある食品
いるが,当面対象としている着色剤としてはサン
添加物についてその製造方法や素材が変わったり,
セットイエロー,キノリンイエロー,タルトラジ
あるいはナノテクノロジーによってその粒子の大
ン等々がある。
きさが変わるなどした場合,従来ならそれは新し
新しい規制の下では,添加物のメーカーおよび
い添加物とみなされ,新規にリストに加えなけれ
ユーザーは欧州委員会の要請があった場合その添
ばならなかったが,既に現行規制の範囲に属して
加物に関する技術的情報等の報告を義務づけられ
いる素材から作られるものである場合は新たに許
ている。また,加盟国は毎年添加物の摂取レベル
認可を得る必要がなくなった。
を監視しその結果を欧州委員会に報告するシステ
添加物の再評価:許認可済みの添加物を新リス
ムを維持しなければならない。移行期間中の措置
トに入れるにあたって移行期間中の措置も規定さ
として,新しいリストが完成するまでは現行EU
れており,これらの添加物の再評価の必要性や優
規定の付属書を適宜修正して対応することとして
先順位,タイムリミットも定めている。
おり,新しい食品添加物は当面現行法の適用を受
また,新しい規制の付属書においては食品の着
ける。
(大池静男)
時間滞留していたことを突き止めた。改善後,ロ
ブスターはフランスの水が沸騰しているポットの
時間−温度モニターラベルを
用いたロブスター輸送
中を見るまで生きていた。
PakSense社のラベルは「Triscuitクラッカーく
らいの大きさ」で食品グレードのプラスチックバ
Food Engineering(U.S.A.)17(’
09・4)
文献 № 5489
ッ グ に 入 る とSchug Carneros Estate Winery社
のオフィスマネージャー兼IT責任者のL.PRITCHETT
時間−温度モニターラベルは腐りやすい商品の
女史は言う。同女氏は荷物の乱暴な取り扱いによ
低温流通システムの品質保証に役立つ。
って,返品になったり顧客を失ったりするのを防
East Coast Seafood社(マサチューセッツ州)
ぐため,1年前にこのラベルの使用を始めた。同
のT.PAWLOWSKI氏は,ヨーロッパへ輸送した活ロブ
社の輸送部はタグのコーナーを曲げてタグを起動
スターが通関前にほとんど死んでしまうという問
させ,発送品のケースやパレットにバッグを貼付
題を抱えていた。同社の品質管理部長のLYNN氏は,
する。卸売り顧客はラベルの品質保証価値を認め
誰かが途中で低温輸送容器を降ろしていると考え
ていると同女史は言う。Schug社は,パレットカ
た。同社は毎日数千ポンドの品質の良いロブスタ
バーの有効性判断や貯蔵庫の状態判断など作業の
ーをボストンのLogan空港やニューヨークのJFK
能率化を図るためにもこのラベルを利用している。
空港経由でヨーロッパへ輸送しており,どこで問
ラベルの近くに付けた大きいオレンジステッカ
題が起こったかを特定するのが難しかった。そこ
ーと返信アドレスを書いて切手を貼った封筒のお
で,各バッチ1匹,ロブスターのハサミに時間と
陰で,約8割のラベルがSchug社へ戻ってくると
温度を記録できるマイクロチップをゴムバンド留
女史は言う。記録されたデータと輸送ルートを比
めして,積み荷がヨーロッパに着くと直ちに地上
較することによって,コンテナ船がいつパナマ運
の同社社員が読み取り器で時間と温度データを取
河を通過したか,いつ日本海へ入ったか分かる。
り込み,Excelのスプレッドシートにダウンロー
この技術は,腐りやすいものにラベルを要求す
ドしてPAWLOWSKI氏の元へE-mailした。同氏は即座
る小売業者の後押しを得ているとPakSense社は
に,ロブスターがマイアミ国際空港の滑走路で長
言う。
食品と容器
ちょう
は
471
(合田芳宏)
2009 VOL. 50 NO. 8
機能性を生かしたパッケージデザイン
Food Processing(U.S.A)49(’09・3)
文献 №5471
革新的なパッケージデザインが従来にない機能
器とライスの蒸し器の役割をする。ソースを電子
を提供し,店頭で消費者の注意を引き付ける容器
レンジで温めパスタやライスに掛ければ食べる準
開発の力になっている。
備は完了で,わずか3.5〜5分で調理できる。そ
トレー,複合容器,ボトル,紙カートン,ブリ
れぞれの素材が別々に分けられているので,新鮮
キ缶,エアゾール缶などの新バージョンが登場し,
な風味が味わえると言う。外側のタブ型容器はポ
商品の装いを新たにして市場に送り出されている。
リプロピレン樹脂の射出成形品で中身が消費者に
ConAgra Foods社はHealthy Choice Fresh
見えるようになっている。このタブ型容器とグリ
Mixers用に見栄えが良く,貯蔵も利用も簡単な
ーンに着色したふたはBerry Plastics社が,ソー
高 機 能 容 器 を 開 発 し た。Healthy Choice Fresh
スのトレーはRexam社が供給している(写真1)。
Mixersは事務所の机で昼食を取る勤労者向けに
PB商品を扱う企業も商品の魅力を高めようと
開発した常温貯蔵で主食に供する食材である。
新しい容器の開拓を進めている。スーパーマーケ
机の中から取り出して短時間で簡単に用意でき,
ットのTarget社は広口の再封可能な複合容器を
味が良く健康にも良い素材を用いたランチを求め
用い,同社のPB商品Archer Farmsを発売した。
る消費者のニーズにマッチしている。この容器は
容器とオーバーキャップはSonoco社が供給して
ドライパスタやライスを保持する外側のタブ型容
いる。細長い容器の内面は,食品への接触が認可
器,ソースを入れた内側のトレー,ミシン目が設
されているので内袋は不要で省資源になる。
けられたふた,ミシン目を塞いでシールするフレ
容器天面には金属蒸着フィルムがヒートシール
キシブルラベルで構成されている。
され,ヒンジつきのオーバーキャップが嵌合され
利用するときは,まずレトルト処理されたソー
ている。容器は多層構造でバリア性がある。
スが入ったトレーをタブ型容器から取り出し,調
さらなる利点として,パッケージは従来のパッ
理手順が印刷された天面のラベルを剥がして充填
ケージより扱いやすく,取り出しやすい。シール
ラインのところまで水を注ぎ電子レンジで加熱す
を剥がした後,オーバーキャップの透明なドーム
る。ミシン目が設けられたふたがパスタ用のろ過
を通して中身の残量が確認できる。中身が同量で
ふさ
かん
は
も従来のボックス型容器より店頭の棚に収まりや
すいという利点もある(写真2)。
ファッション性の高いガラスびん
ガラスびん分野では,アルコール飲料用ボトル
でデザイン革新が進んでいる。Dr Pepper Snapple
Groupはデザイン会社のIgnited Mindsと共同で
カクテル飲料Rose's Mojito用に奇抜なボトルを開
発した。容量21オンスの背の高いボトルは陳列棚
で隣同士がお互いにぴったりと重なり合うように
写真1 ConAgra Foods社のHealthy Choice Fresh
Mixersボックスランチ
食品と容器
並べられている。色とりどりのカクテルが曇りガ
472
2009 VOL. 50 NO. 8
ラスを通して
見えるように
なっており,
前面と背面に
は透明な感圧
は
ラベルが貼ら
れていて肩部
は木の葉模様
のエンボス加
工が施されて
いる。ボトル
写真3 1920年代のシガレットケースを思わせる
ファッション性の高いミント容器
の開発には
菓子メーカーのOral Fixation社はOral Fixation
Vitro Packaging社が協力した。従来のボトルと
Mintsにファッション性の高い個性的なパッケー
は重心位置が異なるが中身を容易に注ぎだすこと
ジを採用した。
高品質のミントはスライドカバー付
ができ,かつ店頭の貴重なスペースを節減できる
きの小さな金属トレーに収納されている。カバー
という機能性を備えている。
には,二人の人がお互いにミントを渡している画
人目を引くパッケージ
像のブランドロゴが深くエンボス加工されている。
デザートや菓子類の高級品を取り扱う企業の間
ミントには9つのフレーバーがあり,ブリキ容
では,外観の美しさと開けやすさを備えた容器が
器の内側に手詰めされ,フレーバーを表す図柄を
求められる。Filthy Food社はチルド・チョコレ
印刷したパーチメント紙(羊皮紙)がミントをカ
ートデザートのプレミアム品に人目を引く紙カー
バーしている。この容器は1920年代のシガレット
トンを採用してる。ふたを取ると折りたたまれた
ケースを思わせるエレガントなデザインで,厚さ
板紙部分が開いて皿の役目をする。ほとんどが背
がわずか6mmなので容易にジーンズのポケット
丈が低く暗い配色の英国の他のチルド・デザート
に入れて持ち運べる。また,片手で開け閉めでき,
商品と異なり,Filthy Food社は背の高い細身で
空になった後もクレジットカードや名刺を入れる
明るい配色の紙カートンを使用している。カート
のに利用できる(写真3)。
ンの表面はひと肌のようなソフトな手触りで,官
写真2 Target社が採用したシリ
アル用コンポジット容器
(桜田三郎)
能的で優雅である。
講習会のご案内
第41回講演会 医薬品情報管理・伝達技術の現状と将来
◇開催日時:平成21年9月10日
(木)9:30〜16:45
◇主催:創包工学研究会
◇場所:きゅりあん 小ホール(1F)
(品川区立総合区民会館)
〒140-0011 東京都品川区東大井5−18−1
JR京浜東北線大井町駅中央東口下車徒歩1分
◇申込先:創包工学研究会
〒101-0047 東京都千代田区内神田1-18-11
東京ロイヤルプラザ 217号
TEL&FAX:03-3291-3219
Mail:[email protected]
◇参加費:1名につき25,000円(含む 講演要旨集代金)
◇参加費振込先:ゆうちょ銀行
振替口座 00170-7-743086 名義 創包工学研究会
食品と容器
◇演題および演者
◯欧米医薬品業界の製品包装の進化と行政の取り組み
㈶流通システム開発センター 黒沢 康雄
◯RSS/RSS合成シンボルの最新技術動向
㈱東研 豊浦 基雄
◯RSSコードと検証 −検証の現状と問題点−
ムナゾウ㈱ 宗像 恒憲
◯ICタグによる医薬品トレーサビリティ(仮題)
交渉中
◯医療機関における医薬品コード情報の利活用
国立成育医療センター 相良 眞一
○販売包装単位でのカラーCコードのテスト印刷及び
読取検証
GIDソリューションズ㈱ 佐藤 正彦
473
2009 VOL. 50 NO. 8
日持ちする牛乳
Food Engineering & Ingredients(U.S.A.)6(’09・2-3)
文献 №5475
乳製品業界では,これまで主にパスツリゼーシ
ある。賞味期限の延長のために,後述の技術的に
ョンあるいはUHT
(Ultra-High-Temperature)
加熱
異なる幾つかの方法で製造される。
殺菌処理で製造した飲用牛乳を消費者に提供して
乳製品業界にとっての好機
きた。しかしながら,最近10年間で,賞味期限を
ESL牛乳加工メーカーに有益な点は,賞味期限
伸ばしたESL(Extended Shelf Life)牛乳の消費
の延長による①販売地域の拡大(ヨーロッパのあ
が世界市場で着実に伸びている。装置メーカーは
るメーカーでは,ESL牛乳加工の導入により,販
ESL牛乳の需要増加をいち早く認識し,今やESL
売地域が50%以上拡大した例もある)②生産ライ
牛乳の生産ラインに必要な一連の装置を単独メー
ン稼働数の削減③腐敗による製品廃棄や消費者か
カーで提供可能である。ESL牛乳の未来は明るく,
らの製品回収の削減などが挙げられる。また特産
成長が伸び悩んでいる乳製品業界に希望の光を与
品としてESL牛乳にプレミア価格が付く場合もあ
えている。
る。その例として,英国でArla Foods社が製造
生乳は,微生物的安全性および賞味期限を保証
するCravendaleブランドのESL牛乳がある。
するために加熱殺菌工程が必要である。EU規制
ヨーロッパでの飲用牛乳の市場規模は横這いか
(EU legislation)で決められている生乳熱処理法
わずかに減少傾向にあるが,その中でESL牛乳の
として,パスツリゼーションと同等と見なされる
シェアは急速に伸びている。一概にヨーロッパ市
72−75℃,10−45秒間のHTST
(High Temperature-
場全体の正確なシェアの数値を示すのは困難であ
Short Time)処理や現在最もよく用いられている
る。英国とスカンジナビア諸国の消費者は,フレ
135−145℃, 2−5秒間のUHT処理がある。パス
ッシュなパスツリゼーション処理牛乳を好み,そ
ツリゼーション処理牛乳は,通常“fresh”牛乳とし
のシェアは飲用牛乳売り上げの85%近くを占める。
て販売され,冷蔵保存で賞味期限が10日未満と比
一方,フランスやスペインではUHT牛乳のシェ
較的短いが,生乳の持つ風味と栄養価をほとんど
アが圧倒的に高い。ヨーロッパでESL牛乳のシェ
保っている。一方,UHT処理牛乳は,常温で少なく
アが最も高い(20−25%)のはドイツである。一
とも半年間は保存可能であるが,わずかに加熱臭
方,英国,オランダやオーストリアでは着実に
があり,一部のビタミン含量も低下している。
ESL牛乳のシェアが伸びている。米国や日本でも,
ESL牛乳は,上記2種の処理牛乳の中間に位置
ESL牛乳の市場規模が拡大しており,今や飲用牛
するものである。すなわち賞味期限は少なくとも
乳市場の大半を占めるまでになっている。今後
20日(ある製品では,60日間)でパスツリゼーシ
ESL導入の可能性が最も高いものは,フレーバー
ョン処理牛乳に近い風味と栄養価を持つ。国際的
牛乳,栄養強化牛乳,有機牛乳や液状ヨーグルト
に合意されたESL牛乳の定義は今のところないが,
などの付加価値のある高価格製品である。ヨーロ
一般に同一冷蔵保存・流通条件でパスツリゼーシ
ッパの多くの乳製品業者は,ESL技術を業界の成
ョン処理牛乳よりも長い賞味期限を有するものと
長と革新の起爆剤になると期待している。
定義される。ESL牛乳の特徴はまさに賞味期限の
技術的問題解決手段の選択
長さとUHT処理牛乳に対する風味等の優位性で
ESL牛乳加工の最も重要な工程は,最初の生乳
食品と容器
ば
474
2009 VOL. 50 NO. 8
殺菌工程である。この工程で,生乳由来のサルモ
る技術である。遠心分離よりも大幅な細菌数の減
ネラなどの病原菌の殺滅および賞味期限を延長す
少を達成できる。ヨーロッパの多くのブランド
るために,腐敗の原因となる生乳由来の細菌数を
ESL牛乳は,この技術を用いて製造されており,
パスツリゼーション処理に比べさらに低下させる
4℃保存で25−30日あるいはそれ以上の賞味期限
必要がある。特にESL牛乳腐敗の主原因である細
を達成している。精密ろ過には,一般的に孔径0.8
菌の耐熱性芽胞をいかに殺滅あるいは除去するか
−2.0μmのセラミック限外ろ過膜が用いられる。
が重要である。この問題を解決するには,以下の
乳脂肪分はろ過できないので,あらかじめ分離し
3つの主要な方法がある。
UHT処理を行う。脱脂乳を限外ろ過膜処理して,
1.高温加熱処理
細菌細胞と芽胞を99.5%以上除去し,HTSTパス
過熱水蒸気噴射による直接加熱法が最もよく使
ツリゼーション処理後にUHT処理済みの乳脂肪分
われている。典型的処理は,約70℃まで予備加温
を再添加する。細菌細胞や芽胞が濃縮された限外
した生乳を瞬時に120−145℃に昇温し0.5−4.0秒
ろ過保留物は,UHT処理後再び牛乳に添加して
間保持した後,製品劣化を最小限に抑えるために
再利用するか廃棄される。セラミック膜以外にも,
70−80℃に急速冷却する。オランダのNIZO食品
ドイツのGEA TDS社が開発したろ過方式がある。
研究機構は,生乳を瞬時(0.1秒以内)に150−200
この方法は平均孔径が0.3μmの予備ろ過および孔
℃の高温まで昇温できるISI(Innovative Steam
径0.2μmの主ろ過用のポリプロピレンフィルター
Injection)法を開発している。ISI法は,耐熱性の
より構成されたカートリッジを使用する。
細菌細胞
芽胞殺菌に極めて効果的であると共に従来のUHT
や芽胞はフィルターに捕捉され保留物を生じない。
処理に比べ風味への影響がほとんどないと言われ
衛生管理が重要
ている。熱交換器による間接加熱法も利用されて
病原菌と腐敗菌の加熱殺菌や物理的分離は,
おり,
その際には125℃,
2秒間処理が一般的である。
ESL技術の中核であるが,賞味期限の延長を確実
2.細菌遠心分離と加温処理
なものとするには,処理牛乳の再汚染を防ぐ衛生
細菌遠心分離(Bactofugation)は,90年代にESL
管理が極めて重要である。一般に,処理牛乳は衛
牛乳加工に使用された最初の技術であり,現在も
生管理された充填作業ラインに入る前に,無菌の
使われてはいるが,次第に新技術に取って代わら
貯蔵タンクに保管される。
ESL牛乳加工には,
UHT
れている。遠心式牛乳脂肪分離装置を改良した
製品と同様な充填工程が利用される。また包装資
Bactofugeは,最初にチーズ用生乳からチーズ褐変
材も,通常,充填前に過酸化水素や紫外線を用い
腐敗の原因となる細菌芽胞を除去するために使用
て滅菌される。ESLとUHT工程の主な相違点は,
された。そして90年代になり,飲用牛乳にもこの
ESL牛乳は,処理後の急速冷却と製品流通段階で
技術が適用されるようになった。この装置は,遠
の一貫した適切な低温管理が必要なことである。
心力により,密度の違いを基に乳中粒子を分離す
メーカーは今やESL装置システムを提供できる
るもので,生乳中の細菌芽胞を95%まで除去,ま
ESL技術の重要性をいち早く認識したTetra Pak
た細菌数を90%まで減少させることが可能である。
社,
Krones社やAPV/Elopak社などの大手メーカ
この遠心分離操作後に従来のHTSTパスツリゼー
ーは,
ESL装置を売り出している。ヨーロッパに
ション処理を行うことで,牛乳の賞味期限をさら
おけるESL技術の先駆的メーカーは,ESL牛乳用
に5−15日延長できる。細菌細胞や芽胞を含む遠
のPure-Lacシ ス テ ム を 共 同 開 発 し たElopak社 と
心分離残 渣は,UHT処理後再び牛乳に添加して
APV社である。
Pure-Lacシステムは,
APVの過熱水
再利用するか廃棄される。
蒸気噴射による直接加熱技術とElopak社の衛生管
3.精密ろ過と加温処理
理の行き届いた充填・包装技術を組み合わせた
遠心分離と同様に,精密ろ過は賞味期限を延長
ESL牛乳製造のための一貫した生産ラインである。
するために生乳から細菌と芽胞を物理的に分離す
原料生乳の品質にもよるが,
10℃で14−45日の賞
そく
てん
ざんさ
食品と容器
475
2009 VOL. 50 NO. 8
し て い る( 第 1 図 )。Tetra
Pak社はESL製造ラインに必
要なすべての装置を提供可
能な唯一のメーカーである
と宣伝している。
発展の潜在性
ESL牛乳生産量の増加は,
加工業者にこの技術の優位
Tetra Therm Aseptic VTIS
性をさらに強化する新たな
工夫を促している。その例と
して,充填工程前に熱感受性
成分を添加できるようにす
る冷却充填システムの利用
Tetra Centri
Tetra Alcross
第1図 Tetra Pak社製の3種のESL加工処理装置
が あ る。Krones PET-Asept
システムのようないわゆる
無菌冷却充填(ACF: Aseptic
味期限達成が可能である。他にESL市場に特化し
Cold Filling)システムは,無菌充填環境を作り
た専用装置メーカーも出てきている。GEA TDS
出すためのクリーンルーム技術を活用して設計さ
社は,ESL加工用に①過熱水蒸気噴射による直接
れたモジュールである。充填前に包装資材が滅菌
加熱装置,②新たに開発したチューブ型熱交換器
され,また先進の断熱技術が充填中の製品温度管
を用いた間接加熱装置,③セラミック膜を用いた
理に用いられている。加工処理後,牛乳は充填前
精密ろ過装置,④カートリッジ型精密ろ過装置の
に急速冷却され5℃以下に保たれる。ACFシス
異なる4つのオプションを提供している。最近の
テムの導入は,PETボトルのような熱感受性包
装置メーカーは,ESL加工生産メーカーの要望に
装資材のESL牛乳への適用を可能にし,また加工
応えるためにモジュール型の装置を提供する傾向
処理と充填操作の間に香気成分や栄養成分さらに
がある。その理由は,複数の装置メーカーからの
はプロバイオティクスまでも添加可能にする。こ
装置を組み込んで一貫した製造ラインを作り上げ,
の技術は乳加工業者に,フレーバー牛乳,栄養強
しかも作業中の適切な衛生管理状態を保つ困難さ
化牛乳,健康機能性を持たせた製品などの付加価
を回避するためである。
Krones社は,
VarioClean
値の高い商品開発の道を開くものである。
CIPシステムのような周辺装置と組み合せ可能な
法規制に関して考慮すべき問題がある。ESL牛
Vario-FlashおよびVarioAsept加熱処理充填シス
乳をパスツリゼーション処理牛乳と同等とするの
テムのモジュールを提供している。
か食品安全の観点からESL牛乳を分けて規制すべ
Tetra Pak社はESLに対して
「包括的視野に基づ
きであるかの問題である。加工業者は,欧州委員
く」システムインテグレーション構想を打ち出し
会および国家当局が前者の考え方を採用すること
た。2005年に3SLコンセプトとして実現し,特定
を望んでいる。表示問題も存在する。すでにESL
の製品に対して最適の製造ラインが組み立てられ
牛乳に対する“pure”や“fresh”という用語の使用
るように高温加熱,細菌遠心分離および精密ろ過
に対する不満やこれら用語の使用が消費者に誤解
技術の3種すべての加工処理装置
(Tetra Therm
を与えるとの批判がある。これらの問題の納得い
Aseptic VTIS,Tetra CentriおよびTetra Alcross)
く解決ができれば,ヨーロッパの乳製品業界が強
および3種の充填/包装(Tetra Top,Tetra Rex
く望んでいるESL加工のさらなる進展が図られる
およびTetra Brik)システムをオプションで提供
であろう。
食品と容器
476
(川本伸一)
2009 VOL. 50 NO. 8
業
界
ト
ピ
◇『コーヒーの需要動向に関する基本調査』にみ
るコーヒーの最新飲用事情
社団法人全日本コーヒー協会が隔年実施する
『コーヒーの需要動向に関する基本調査』(2008
年)の報告書がまとまった。これによると「1週
間当たりのコーヒー飲用杯数」は10.60杯(1日
ば
換算1.51杯)と前回(2006年10.59杯)に比べ横這
ひしめ
いだった。しかし競合飲料の犇く中,またターゲ
ット人口が減少する中,総需要量(試算)は週当
たり1.3%増の11億2800万杯となり,依然として
コーヒー市場が堅調に推移していることが裏付け
られた。なお10.60杯の種類別内訳は,インスタ
ントコーヒーが4.51杯(前回4.38杯),缶コーヒー
2.05杯(1.38杯),リキッドコーヒー 0.82杯(0.70杯)
はそれぞれ増加したが,レギュラーコーヒーは
3.21杯(3.70杯)と唯一減少した。以下,最新飲
用事情を総括した。
【コーヒーの飲用実態】調査実施は昨年10月11
日~ 25日。対象は全国の中学生から79歳までの
男女個人(個別面接調査・留置併用)で回収数は
3322件。結果分析の前に,まず調査対象のターゲ
ット人口を類推しておかなければならない。コー
ヒーのターゲット人口を12 ~ 69歳とすると,そ
の人口は1億620万人。2年で50万人減った。ま
た団塊世代の60歳以上への移行に伴って,40 ~
59歳の人口は約97万人減少,反対に60 ~ 79歳は
144万人増加した。
し
【コーヒーの嗜好率と飲用率】コーヒー全般の
嗜好率(好きな率)は,お茶類のペットボトル
(86.6%)や同リーフティー(83.0%)に次いで
第3位(79.3%)。また飲用率(よく飲む+時々飲
む)は87.8%。前回の2位から1位にランクアップ。
この結果,飲用人口は9326万人と推定。週当たり
平均飲用杯数は10.60杯で,横這いだがターゲッ
ト人口が減少した中,需要量は11億2800万杯で前
回比1.6%増加。要因は人口が増えた60歳以上の需
けん
要の伸びが牽引した。
【性・年齢別の飲用杯数】29 ~ 59歳男女の飲用
量の多い傾向は変わらない。一方で中・高校生の
女性は低下傾向が継続。男性18 ~ 24歳では週当
たり1.44杯増加した。飲用杯数の分布では,25〜
59歳は男女とも11杯以上を飲用する人が多い。
中・高校生では男女ともノンユーザー(1ヶ月の
飲用がゼロ)が4割以上だが,18歳以上になると
食品と容器
477
ッ
ク
ス
男女ともその割合は大幅に減少する。
【種類別コーヒーの飲用率】4タイプ別のシェ
アはインスタントが42.5%,レギュラー 30.3%,
缶19.3%,リキッド7.7%。レギュラーコーヒーが
シェアを4.6ポイントも落とした最大の理由は「職
場・学校」での飲用機会が減少したことによる。
【缶コーヒーの飲用状況・購入状況】主に飲用
する缶コーヒーのタイプは,「ミルク・クリーム
入り加糖」が47.1%と半数を占め,次いで「同無糖」
が12.8%,「 ブ ラ ッ ク 加 糖 」11.3%,「 同 無 糖 」
28.8%。2002年以降は「ミルク・クリーム入り加糖」
の減少傾向が続いている。年代別はどの層も「ミ
ルク・クリーム入り加糖」の割合が最も大きいが,
缶コーヒーのメインユーザー(18 ~ 59歳)の男
性は,「ブラック無糖」を主に飲む人が3割以上
を占めている。飲用場所(複数回答)では,お店・
自販機等(56・1%),職場・学校(48.7%),自
宅(26.5%)。飲用動機では「手軽に飲める」「ど
こでも買える」が多く,利便性が大きな動機付け
となっている。
【缶コーヒーの売れ筋商品】缶コーヒーに対す
る“味の好み”を,「味わい」「苦味」「酸味」「味
のバランス」と4タイプ別に評価した。味わいで
は,
「ややコクがある」(33.2%),
「マイルドな味」
(29.0%),「ややマイルドな味」(22.9%),「コク
がある味」(14.8%)の順。マイルド派とコク派の
割合は半々だった。苦味では,
「やや苦味が強い」
(41.4%),「やや苦味が弱い」(35.2%),「苦味が
弱い」(17.3%),「苦味が強い」(6.3%)。苦味は敬
遠される傾向にある。酸味に対しては,「やや酸
味が弱い」(44.4%)と「酸味が弱い」(41.3%)で
85%を占め,「やや酸味が強い」(11.7%),「酸味
が強い」(2.6%)は少数派。味のバランスは,「や
やバランスがよくクセがない味」(43.8%),「バラ
ンスがよくクセがない味」(23.2%),「やや豆の特
徴が強い味」(25.1%),「豆の特徴が強い味」(7.9
%)。クセがない味が比較的好まれている傾向が
判明した。この結果,「ややコクがある味わい」
で「強くも弱くもない苦味」で「酸味をあまり感
じさせず」に「クセがない味のバランス」。味の
好みに関する最大公約数で仕上げた缶コーヒーが
売れ筋となる可能性は高く,一つの確率論の根拠
に値する貴重な調査報告である。
(コーヒージャーナリスト 狭間 寛)
2009 VOL. 50 NO. 8
食の遠近画法
連載エッセー
いが,常軌を逸することが少なくない。一般に,
結果をもたらすにはその原因があるが,その原因
最終的決断
ご
みょう
とし
にはまたその原因がある。こうして,論理的に原
因は無限に遡及することが可能である(因果律の
はる
五 明 紀 春
無限後退)。正常な判断力を持つ人は,直接的原
(女子栄養大学教授)
因にのみ留め,それ以上の原因究明をしないのが
通勤途中,欅の街路樹にロープを掛けて数人の
普通である。それは究極原因の究明は困難である,
作業員がとりついていた。電線の邪魔を除くため
というより,それによって予期しない事態が起こ
の枝下ろしはよく見る光景である。しかし,あれ
ることを恐れるからである。爪が伸びるから,と
よあれよという間に大きな枝まで切り落とし出し
指を切り落とすことになりかねないことを知って
た。おやっと思っているうちにいきなり根元にチ
いるからである。
ェーンソーを当てたのには驚いた。一抱えほども
実際,根本解決,最終解決と称して,人類史は
ある大木である。馴染みの欅は,平らな切り口だ
おびただしい惨劇を繰り広げて来た。落ち葉が邪
けを晒して,数十年の生涯にあっけなく幕を下ろ
魔だからと,街路樹を片端からなぎ倒すに似た例
した。ほんの数えるほどもない間にである。
は枚挙に暇がない。
作業員に訳を訊くと,
「落ち葉対策です」という。
二十世紀最大の蛮行であるナチス・ドイツによ
ならば掃除をすればよい,という理屈は通らなか
る民族浄化政策は約600万人のユダヤ人を犠牲に
ったらしい。あらためて,今まで随所で同様の場
した。「ユダヤ人問題の最終解決」と称し,その
面に出遭ったことに思い当たった。いつの間にか,
殲滅を図ったとされる。ユダヤ人の存在を諸悪の
並木がきれいに切り倒されて,のっぺりと明るい
究極原因とし,その根絶によってすべての物事が
道路に変わってしまっていた,という経験をお持
解決するとしたのである。邪魔なもの,目障りな
ちの方も少なくないであろう。概して,道路清掃
ものを完全排除するという考えは,ユダヤ人に留
に金がかかるため,ということのようだ。
まらず,シンティ・ロマ人,ポーランド人,セル
清掃経費を削減するために,欅を切り倒してし
ビア人,ロシア人,スラブ人などにもその犠牲を
まうのは,文字通り抜本対策には違いない。それ
及ぼした。
なら,税金を使って,わざわざ街路樹など植えな
カンボジアのポル・ポト政権は,「腐ったリン
ければよかった,というのは後知恵である。が,
ゴは箱ごと捨てなくてはならない」と唱えて,国
少し変である。爪が伸びるから面倒だ,と言って,
民を「旧人民」と「新人民」に分け,新参者の「新
指を切り落としてしまうことにどこか似てはいな
人民」を粛清,その犠牲は300万人に及んだとも
いであろうか。いっそ指などなくても良い,とい
される。つい,30年前のことである。
う飛躍にもつながりかねない。
ほんの10年前に終息したユーゴスラビア紛争
交通事故が多発するからと,車を廃止する。酒
(1991−2000)では,せまいバルカン半島の中で
飲み運転が跡を絶たないからと,居酒屋を閉鎖す
クロアチア人,セルビア人はじめ全ての民族が
る。いずれも根源対策には違いない。筋は通って
「民族浄化」を叫び,互いに加害者となり,ま
いるが,どこか変である。そう言えば,筆者が学
た被害者となった。その犠牲者は推定350万人と
生時代,紛争のモトになるからと,学生の集まる
いうから,たった10年の間にすさまじい相互殺
広場を花壇に変えてしまったことも思い出される。
戮が繰り広げられていたことになる。異分子を
○
抹殺すれば,すべてが解決するとでも考えたの
物事を根本から解決する,と言えば聴こえはい
食品と容器
であろうか?
478
2009 VOL. 50 NO. 8
○
を優生学理論によって大規模に実験しているの
一次予防は健康維持・増進(疾病未然防止),
だ。
二次予防は早期発見・早期治療,三次予防は再発
○
防止とは,よく知られている。定期健診の普及に
日本は,世界最大の食料純輸入国である一方,
よって,二次予防が徹底し,早期発見された人が
大量の食料を食べ残し,廃棄していることも周知
病院に駆け込む。知らぬが仏の時代ではなくなっ
である。資源浪費・環境負荷の大問題を抱えてい
た。ために医療費が激増して,医療保険システム
る。現在も国民一人当たりの供給熱量と摂取熱量
が破綻に瀕していることもまた常識である。しか
の差が拡大を続けている。2005年度には供給熱量
し,これも平均寿命の記録更新の代償といえなく
2,573kcal摂取熱量1,851kcalで,エネルギーベース
もない。
のロス率は約30%となっている。食品廃棄物に占
近年,導入された特定健診・保健指導は,一次
める一般家庭発生は55%である(2004農水省調
予防と二次予防の中二階での予防策と言えるだろ
査)。食料廃棄物リサイクル(有機肥料加工)は
う。病院玄関の前で,検査値の増悪を食い止める
半分以下である。
社会プロジェクトであろうが,これによる医療費
食品の大量廃棄には,「消費期限」(おおむね5
抑制効果は未知数である。
日以内)「賞味期限」(5日以上で数ヶ月)の「食
したがって,一次予防が医療費抑制の根本策と
品足きり制度」がその背景になっていることにつ
いうことになる。「健康人を病人にしない」とい
いては大方異論はないと思われる。期限を過ぎた
うことであるから,治療よりも教育が重視される
食品は,食品衛生法,JAS法で「食品として扱わ
ことになる。食事・運動・休養など生活スタイル
れない」ということであれば,これらを食品ロス
全般について,行動変容を促し,生活習慣病を未
に含めないという論も一応成り立つが,しかし,
然に防止するわけである。長年染みついた悪習を
これは理屈である。
是正することは,何事であれ困難であることは言
良くも悪くも,機械的に食品を大量に抹殺する
うまでもない。10年がかりの一次予防の国家プロ
システムの上に現代人の食生活は成り立っている,
ジェクト『健康日本21』の失敗は,行動変容を余
というほかない。食品の適否を個人の判断に委ね
儀なくされる前,すなわち生活習慣形成期の子供
るリスクを解消するには,こうして,日常的に食
のうちに「正しい習慣」の習得を論理必然的に要
品を強制的に「浄化」せざるをえない。食卓から,
請することになった。食育基本法,栄養教諭など
期限過ぎの「異分子」は目障りなものとして粛清
は,この失敗プロジェクトの帰結とも言える。
されなければならない。
しかし,「正しい習慣」のみで,疾病を未然に
食の安全を確保するためには「惻隠の情」は禁
防止し,医療費抑制を達成できるのか,との疑問
物である。根本的かつ最終的解決こそ,真の解決
が残る。生活習慣病には,種々の遺伝子が関与し,
だと現代人は考える。その代償として,食品の大
大いに個人差のあることが,近年,ますます明ら
量廃棄を甘受しているわけである。
かになってきている。塩分の血圧効果も遺伝子支
○
配を受けているとすれば,個人の遺伝子プロフィ
物事の「最終的解決」(浄化)には,予期せぬ,
ールに基づく予防策に行き着くだろう。となると
しかも途方もない代償が必要のようである。これ
同じ国民でも医療コストの高い人と低い人がいる
は何も人類史の悲劇に限らない。最近のコンビニ
ことになる。しかし,これ以上のいわば「ゼロ次
弁当の「値引き問題」は,そのような代償のいく
予防」にまで踏み込むと常軌を逸したことになり
らかを軽減する苦肉の試みでもある,と解釈した
かねない。実際,ナチス・ドイツは「ゼロ次予防」
い。
食品と容器
479
2009 VOL. 50 NO. 8
特別レポート
日本における清涼飲料,ビール系酒類市場
-平成21年の上半期を振り返って-
る傾向が強まった。国産ミネラルウオーターはサ
清涼飲料の最新市場動向
ントリー〈天然水〉が好調な動きとなったが,そ
市場全体2%減,ミネラルウオーター・茶系低
れ以外は伸び率を鈍化させたり,マイナスに転じ
迷
たブランドも多い。コカ・コーラ社の国産〈いろ
上半期(1~6月)の清涼飲料市場は2%減で
はす〉が話題に。一方,輸入は総じてマイナス。
着地した。景気後退の影響を受け,消費低迷や価
茶系飲料は〈お~いお茶〉がプラスも,
〈伊右衛門〉
格下落の影響を受けつつも,好調な動きを続けた
〈生茶〉はマイナスで,市場全体でもマイナスと
炭酸飲料が市場を牽引した。一方,ここ数年飲料
低迷が目立つ。紅茶飲料は〈午後の紅茶〉〈リプ
市場を支えてきたミネラルウオーターや茶系飲料
トン〉〈紅茶花伝〉ともプラスで着地。また,缶
は低迷した。今上半期の販売動向をみると,例年
コーヒーは激戦,〈ボス〉〈ワンダ〉〈ファイア〉
以上に上位ブランドへの集約が進んだ。三番手以
がプラスだが,「圧倒的な勝者はいない。秋以降
下のブランドは一時的に棚に入ったとしても定着
の激戦は避けられそうにない」(CVS飲料担当)。
が難しい状況が続いた。CVSやスーパーでも「回
ここでは上半期の各月の市況を振り返るとともに,
転数のいい」上位商品に依存する棚割りとなった
現在の缶コーヒー市場動向を展望する。
店が多くみられ,下位商品には厳しい状況となっ
1月:市場全体は2%増,缶コーヒー微糖好調
た。また,流通からの価格対応要請も増加傾向に
1月の清涼飲料市場は前年比2%増。平均気温
あり,特売時価格は軟化傾向もみられた。カテゴ
は比較的高かったものの,缶コーヒーをはじめホ
リー別では,炭酸飲料は「ゼロ製品」が牽引,コ
ット飲料が出荷を伸ばした。緑茶ブランドのほう
ーラ飲料や透明炭酸の主要ブランドの好調さに加
じ茶,玄米茶などが寄与し,無糖茶市場も好調な
え,他メーカーも「伸長カテゴリーで手を打つ」
でだしとなった。メーカー別では昨年末に流通へ
姿勢がみられたことからラインアップが拡充され
の押し込みの反動が一部メーカーにみられたこと
けん
第1表 平成21年1~6月の主要各社の清涼飲料出荷実績前年対比(単位:%)
業界平均
サントリー
1月
2月
3月
4月
5月
6月
102
96
98
101
97
99
102
99
101
104
102
102
キリン
ビバレッジ
104
94
99
98
91
90
1~2月累計
1~3月累計
1~4月累計
1~5月累計
1~6月累計
99
98
99
98
98
101
101
102
102
102
99
99
99
97
95
伊藤園
アサヒ飲料
109
101
97
105
105
109
107
97
100
110
100
104
大塚
グループ
92
90
105
90
90
97
104
101
102
103
104
102
101
104
103
103
91
96
94
93
94
ポッカ
カルピス
102
98
100
109
99
107
117
88
98
103
95
114
コカ・コーラ
合計
100
96
96
101
95
99
100
100
102
101
102
100
99
101
99
102
98
97
98
97
98
注)コカ・コーラ合計は醸造産業新聞社推計。
食品と容器
480
2009 VOL. 50 NO. 8
から,伸び率にバラツキがでた。カルピス17%増,
ダ〉5%増,〈ファイア〉3%増,〈ボス〉は2%
伊藤園9%増,アサヒ飲料7%増の伸びが目立っ
減,〈ジョージア〉は前年割れ。キリンビバレッ
た。緑茶ブランドの〈お~いお茶〉〈伊右衛門〉
ジ〈世界のキッチンから〉は「とろとろ桃のフル
はともにプラス,ほうじ茶や玄米茶への注力が緑
ーニュ」が年間販売となり,ブランド全体でも上
茶の低迷をカバーした。缶コーヒーはリニューア
半期通じ好調な動きを続けた。
ルした〈ジョージア〉,〈ボス〉は「ショートブレ
3月:市場2%減,ミネラルウオーター不調続
イク」,〈ワンダ〉は「ジェットカフェ」,〈ファイ
く
ア〉の糖類ゼロの「クリアリッチ」が新製品とし
3月の清涼飲料市場は2%減。各社基幹商品の
て発売,新年早々話題が豊富で,他のカテゴリー
販促への注力を強める中,新製品はある程度動い
を牽引した。市場を牽引している微糖製品の競合
たものの,ミネラルウオーターや無糖茶の低迷が
関係がさらに過熱,複数アイテムを投入するメー
目立った。各社の実績では伸び率最大は大塚製薬
カーも散見され,ブランド同士の競合とともに,
の5%増,他メーカーは前年並み前後の動きにな
棲み分けも注目された。カルピスは乳性飲料の新
った。ミネラルウオーターはトップメーカーのサ
製品投入とホット飲料〈ほっとレモン〉が好調に
ントリーは19%のプラスとなったものの,他社は
推移し大幅増となった。乳製品など自社の強い分
マイナス。輸入ブランドは国産の500㎖PETの拡
野に注力,中堅メーカーの新たな生き残る道がみ
大・攻勢がいぜん続き,「価格に頼らず,いかに買
えてきた。ミネラルウオーターは国産は堅調も輸
ってもらうか」というブランド価値の再構築が急
入は苦戦,昨年来の「移り香」の影響をずっと引
務。ブレンド茶は各社販促時期の差があり,出荷
きずったままの上半期の推移となった。
量にバラツキがあったが,「家で作れない強みが
す
2月:日数減・天候響き,市場は4%減と低調
発揮できている」と流通各社からは好感触を得た。
2月の清涼飲料市場は前年比4%減。前年が閏
無糖茶全体ではマイナスの推移。炭酸飲料はコー
年だったため,日数の減少や稼働日減となった影
ラのゼロ製品が好調な動きで,数字を下支えした。
響に加え,下旬の天候不順もあり,大きな減少と
缶コーヒーは微糖製品が安定的な数字を叩きだす
なった。新製品やリニューアル商品の発売時の変
中,スタンダードは大きくマイナス。「ゼロ」の
更により,ブランドの浮き沈みが生じた。「景気
缶コーヒー,新製品群はおおむね好調。砂糖ゼロ
後退による職域自販機の苦戦に加え,天候不順も
の「食後の余韻」を発売した〈ボス〉,主力製品
影響し,自販機の数字が上がらない」(中堅メー
全体がプラスの〈ワンダ〉,「手摘み完熟豆」を発
カー)との声が多かった。上半期通じて,職域に
売した〈ファイア〉が好調だった。
限らず自販機稼働率が低迷した。カテゴリー別で
4月:メーカー出荷差大,市場計1%増
は緑茶がリニューアル時期のズレもあり,主要ブ
4月の清涼飲料市場は1%増。メーカー間で出
ランドにマイナスが目立った。アサヒ飲料の新製
荷の差が大きく,2ケタ増から2ケタ減までバラ
品〈香る緑茶・いぶき〉はCVSでも「タイミング
ついた出荷となった。割と気温が高い日が続いた
良く商品を提供できた」(アサヒ飲料)ことから,
ことやゴールデンウィークの好天予報に「月末の
全体でも92万箱と好調なスタートを切ったものの,
出荷が順調に動いた」
(メーカー関係者)。メーカ
上半期での同社の緑茶の上乗せは10万箱程度に過
ー別ではアサヒ飲料が10%増,ポッカコーポレー
ぎない。ミネラルウオーターは輸入品が伸び悩む
ションが9%増と昨年と比べて大きく伸ばした一
中,国産はサントリー〈天然水〉が25%増と際だ
方,大塚グループ,サッポロ飲料は2ケタ減。カ
った伸びを示した。500㎖PETの積極的な展開と
テゴリー別では炭酸飲料は主要ブランドがプラス,
特売頻度の増加が市場でのシェア拡大に寄与した
〈コカ・コーラ〉
〈ペプシ〉のコーラ飲料や〈三ツ矢
ようだ。缶コーヒーは製品発売のタイミングによ
サイダー〉が23%増と大きな伸びを示すなど好調
り差があるもののおおむね堅調に動いた。〈ワン
な推移となった。国産ミネラルウオーターは大容
うるう
食品と容器
たた
481
2009 VOL. 50 NO. 8
量PETの価格競争が続き,「商品間で大きく差が
より,店頭価格の下落や特売頻度の増加がみられ
でている。一部商品の価格攻勢が際だっている」
た。2ℓPET130円台も特売時にはみられ,その
とのメーカー関係者の声も。輸入は〈ボルヴィッ
対応にメーカーは追われた。特に緑茶はPBの影
ク〉〈クリスタルガイザー〉〈エビアン〉の3ブラ
響もしだいに大きくなりつつあり,ブランドを崩
ンドの1ℓPETの共同販促がスタート,同一カ
さないために,伊藤園のように〈茶の間〉という
テゴリーでの異なるブランドの共同販促に注目が
新たなブランドで対応する姿もでてきた。PBの
集まった。アサヒ飲料〈スポベジ〉が初動月42万
広がりは特に茶系飲料やミネラルウオーターでは
箱と好調なスタートとなったのが目立った。ただ,
影響が大きいが,炭酸飲料はブランドへの支持が
上半期では一時的に数字がでた商品はあったが,
大きく,影響は軽微なようでカテゴリー差がみら
どのスポーツ飲料も持続しなかった。
れる。炭酸飲料は「ゼロ戦争」はコーラ飲料の〈コ
5月:稼働日減影響大きく,3%減と低調
カ・コーラゼロ〉vs〈ペプシネックス〉だけでな
5月の清涼飲料市場は稼働日が1,2日程度減
く,透明炭酸の〈三ツ矢サイダー・オールゼロ〉
少したメーカーが多く,各社の出荷数量に大きな
や〈ファンタ・ゼロサイダー〉も発売され,透明
開きがでて3%減。ゴールデンウィーク前半こそ
炭酸にも拡大,若年層の飲み物から大人へとどこ
好調に動いたものの,GW後半の天候不順以降低
まで炭酸市場の飲用層を広げられるか,注目され
調な動きとなった。天候は小雨高温で推移したも
ている。
のの,中旬以降は天候の移り変わりが激しく,各
缶コーヒー秋商戦へ,「しきり直し」
社数字を伸ばすのに苦労した。特に職域自販機は
嗜好飲料の中で最大ボリュームの缶コーヒー市
「数字が減るだけでなく,その自販機の売上げが
場は上半期微減で着地した。例年勝ち組と負け組
ゼロになった」(メーカー関係者)事例もあるこ
にはっきり分かれる傾向がみられるが,今年は「圧
とから,メーカー出荷への影響が大きくでている。
倒的な勝者はいない」(CVS関係者)のが特徴。
店頭価格との差や100円自販機の影響も少なから
確かに〈ボス〉〈ファイア〉〈ワンダ〉は数字を伸
ず受けている。炭酸飲料は好調な動きを続けてい
ばし,〈ジョージア〉〈ルーツ〉は落とした。新製
るが,CVS店頭などでは徐々に棚取りの厳しさを
品群の投入で「数字上前年をカバーできたに過ぎ
増している。コーラ飲料に加え,
〈三ツ矢サイダー〉
ない」というのが各社の本音だ。だからといって,
が「オールゼロ」を発売,大きな話題に。徐々に
新規ブランドの参入障壁が下がったかといえばそ
広がってきた炭酸飲料の棚の中での競合関係が厳
うではない。今秋も既存ブランドの激戦が予想さ
しさを増している。ミネラルウオーターはサント
れる。各社秋に向け,リニューアルが予定され,
リーはプラスで推移したが,他はマイナス基調が
この動向次第で上半期の優位だったブランドも一
続き,「ミネラルウオーター全体が上向きになる
気にひっくり返される状況といえる。微糖を中心
のは猛暑頼みしかない」
(大手メーカー関係者)と
とした商品群が主戦場になることは昨年同様変わ
の声も。緑茶飲料は各社注力しているが,「濃い
らないが,各社ブランドの軸となる商品のスタン
味わい」の停滞や2ℓPETの激しい価格競争に
ダード(砂糖・ミルク入り)の勢いに翳りがみえ
加え,「不況によるPBとの価格差がボディーブロ
ており,その再構築が急務。確かに健康志向や商
ーのように利いてきている」という。伊藤園が中
品露出でも微糖や「ゼロ」の商品群が増えている。
旬に発売した2ℓPETの〈茶の間〉が話題に。
しかし,ブランド全体の価値を消費者に伝えるブ
6月:一部で決算月の押し込みも1%減
ランドの軸での勝敗が棚に残るためには重要とな
6月は市場全体は1%減。中旬までは大きなマ
っている。今秋の缶コーヒー商戦は〈ファイア〉
イナスとなっていたメーカーもあったが,最終的
発売10周年など話題も豊富で,主要カテゴリーを
には新製品や一部決算月の「押し込み」もあり下
巡る戦いに注目が集まる。
し
かげ
げ幅を最小限にとどめた。不況に伴う消費低迷に
食品と容器
482
2009 VOL. 50 NO. 8
第2表 平成21年上半期のビール系酒類課税数量
ビール系酒類の最新市場動向
はじめに
ビール
昨年の上半期は18年ぶりの価格改定が実施され,
数量(㎘)
前年比(%)
国産
1,345,241
94.5
輸入
4,486
84.9
計
しかも実施日はキリンビールが2月1日,アサヒ
国産
発泡酒
ビールが3月1日,サッポロとサントリー(缶製
輸入
計
品除く)が4月1日というように,各社で時期・
新ジャンル
内容が異なるという異例な形で行われたため,そ
総計
の影響が随所に現れた。今年の月々の前年比にも,
昨年の価格改定に伴う出荷増や実施後の出荷減な
ごろ
どの裏返しが表れ,5月頃まで実勢を示さない前
1,349,727
94.5
599,130
87.2
633
1,103.0
599,763
87.3
800,813
127.4
2,750,303
100.2
ビール÷総計
49.1%(52.1%)
発泡酒÷総計
21.8%(25.0%)
新ジャンル÷総計
29.1%(22.9%)
注)ビールはビール酒造組合,発泡酒は発泡酒の税制を考える
会が発表。新分野商品は発泡酒の税制を考える会が参考と
して発表。カッコ内は前年。
年比が続いた。6月までで昨年の価格改定の影響
は吸収され,やっと前年比がそのまま実際の動き
第3表 平成21年上半期の各社別ビール系酒類課税数量
を示すようになった。上半期の出荷は,5社の課
アサヒ
税数量ベースでは前年同期比0.2%の増加となっ
たが,オリオンを除く4社の販売ベースでは0.7
%の減少。公式な数字は課税数量となるが,業界
キリン
では販売ベースの0.7%減の方が実勢に近いと考
える向きが大勢だ。
景気低迷背景に新ジャンル急伸
サッポロ サントリー オリオン
上半期の動向(課税数量前年比)を分野別にみ
ると,ビール5.5%減,発泡酒12.7%減,新ジャン
ル27.4%増となっており,新ジャンルの伸びが突
出している。一昨年,昨年の上半期も「ビールと
発泡酒マイナス,新ジャンルプラス」の様相とな
っていたが,今年の新ジャンルの伸び率は一昨年
(1.5%増),昨年(7.2%増)とは比べものになら
ないほど高い。
5社合計
一昨年が終わった時点では,「各分野の位置づ
けはほぼ固まった」といわれたが,昨年の途中か
ら新ジャンルの伸びが目立つようになった。その
背景には,景気悪化に伴う消費者の生活防衛意識
ビール
発泡酒
新ジャンル
合
計
ビール
発泡酒
新ジャンル
合
計
ビール
発泡酒
新ジャンル
合
計
ビール
発泡酒
新ジャンル
合
計
ビール
発泡酒
新ジャンル
合
計
ビール
発泡酒
新ジャンル
合
計
数量(㎘) 前年比(%) シェア(%)
671,117
94.2
49.7
168,016
96.3
28.0
174,820
124.0
21.8
1,013,953
98.7
36.9
362,241
95.3
26.8
351,902
93.2
58.7
317,140
127.8
39.6
1,031,283
102.5
37.5
189,217
92.0
14.0
21,178
50.8
3.5
122,119
145.5
15.2
332,514
100.4
12.1
116,621
98.2
8.6
52,675
61.1
8.8
180,450
119.3
22.5
349,746
98.2
12.7
10,531
92.9
0.8
5,992
82.9
1.0
6,284
148.7
0.8
22,807
100.1
0.8
1,349,727
94.5
100.0
599,763
87.3
100.0
800,813
127.4
100.0
2,750,303
100.2
100.0
の高まりがある。350㎖缶1本当たりのCVS店頭
なった。いわゆる「ビール代替品」ということで
価格は,チェーンによって少し差はあるが,ビー
考えた場合,「少し味に違いはあるが,価格差を
ル215円,発泡酒159円,新ジャンル139円といっ
考えるとこれで十分」という消費者が増えたとい
たところ。発泡酒と新ジャンルの間には小売価格
うことだろう。メーカー各社が,よりおいしい新
で20円の差があり,より低価格を求めるようにな
ジャンル造りに励めば励むほど,ビールや発泡酒
った消費者にとっては,この差は非常に大きいと
からの移行が増えるという,一面で皮肉な現象が
感じるのは当然かもしれない。また,ビール各社
起こっている。
の新ジャンル製造技術や商品開発力は年々高まっ
キリンがアサヒを抜き3年ぶり首位
ており,
「ビールと間違える」商品も出回るように
上半期の各社別課税数量は第3表のとおり。キ
食品と容器
483
2009 VOL. 50 NO. 8
リン,サッポロ,オリオンの3社が前年を上回り,
また,缶製品全体に占める各分野の構成比は新
アサヒ,サントリーの2社が下回った。また,平
ジ ャ ン ル41.2 %( 同33.1 %), ビ ー ル29.4 %( 同
成18年以来,3年ぶりに上半期の数量でキリンが
32.2%),発泡酒29.4%(同34.7%)。昨年上半期
アサヒを上回った。サントリーは昨年に続いてサ
は発泡酒が最も高かったが,今年は新ジャンルが
ッポロを上回り3位だった。
ビールと発泡酒を大きく上回った。この傾向は,
家庭用市場,缶市場とも新ジャンル首位に
景気動向に大きな変化がでないかぎり,変わるこ
醸造産業新聞社が推定した今年上半期の家庭用
とはないとみられる。むしろ,新ジャンルの構成
市場における各分野の構成比は,新ジャンル38.9
比はさらに上昇する可能性が高い。
%(前年30.9%),ビール33.5%(同36.7%),発
新商品,数は増えるも「貢献度」低下
泡酒27.6%(同32.4%)で,昨年上半期はビール
昨年の上半期は,各社の価格改定が実施された
が最も高く,新ジャンルが最も低かったが,今年
ことで,新商品の数は8商品と,一昨年(13商品)
は新ジャンルが1位となった。
より大きく減った。今年は14商品と大きく増え一
昨年の数を上回ったが,この中には地域や期間・
第4表 平成21年上半期の各社主要商品販売数量
前年比
商品名
数量(万箱)
(%)
スーパードライ
5,095
94.0
ザ・マスター
80
―
熟撰
53
52.5
※クールドラフト
296
―
※本生アクアブルー
242
66.5
※スタイルフリー
542
107.9
◎クリアアサヒ
901
184.9
◎アサヒ・オフ
364
―
◎あじわい
40
12.9
ラガー
897
90.4
クラシックラガー
185
86.9
一番搾り
1,605
103.1
一番搾りスタウト
14
82.4
※麒麟淡麗生
1,466
94.2
※淡麗グリーンラベル
782
97.5
※淡麗 W
171
―
※麒麟ゼロ
247
72.0
◎のどごし生
2,067
116.8
◎ストロングセブン
266
―
◎コクの時間
83
―
◎スパークリングホップ
47
23.0
黒ラベル
915
89.5
ヱビス計
454
100.8
※発泡酒計
165
50.5
◎ドラフトワン
319
61.0
◎麦とホップ
529
484.9
プレミアムモルツ
540
112.4
モルツ
360
82.5
※ MD ゴールデンドライ
215
67.8
※豊か
46
―
※ダイエット生
137
69.0
◎金麦
730
154.5
◎ジョッキ生
348
67.9
◎ザ・ストレート
158
―
数量を限定した商品が多く,これらの「限定型新
商品」を除く「通年型新商品」の数はビール1,
発泡酒3,新ジャンル4,合計8で,一昨年上半
アサヒ
期7と大差ない。
今年上半期の新商品の販売数量合計は1,377万
箱(大瓶換算)で,昨年上半期の新商品合計数量
(1,200万箱)を15%上回った。しかし,一昨年
の数量(2,530万箱)を大きく下回った。上半期
のビール系酒類全体の販売数量(4社合計)に占
める新商品の割合をみると,今年は6.5%で昨年
(5.6%)を少し上回ったが,一昨年(11.4%)を
キリン
大きく下回った。数年前から「新商品による需要
喚起効果は弱まる傾向にある」といわれており,
第5表 平成21年上半期の「機能系商品」
サッポロ
発泡酒
メーカー
キリン
キリン
キリン
アサヒ
アサヒ
サントリー
サントリー
7商品合計の上半期販売数量
サントリー
= 2,167 万箱(大瓶換算)
アサヒオフ
アサヒ
スリムス
サッポロ
新ジャンル
2商品合計の上半期販売数量
= 369 万箱
機能系商品合計の上半期販売数量
= 2,536 万箱(前年比 98.8%)
ビール類全体に占める機能系商品構成比
今年= 11.9% 前年= 12.0%
注)数量は大瓶換算。無印はビール,※は発泡酒,◎は新ジャ
ンル。
食品と容器
商品名
淡麗グリーンラベル
淡麗 W
麒麟ゼロ
本生アクアブルー
スタイルフリー
ダイエット生
豊か
484
2009 VOL. 50 NO. 8
昨年,今年と,この見方を裏付ける動きとなった。
規模について
分野別の新商品販売数量は,ビール156万箱(前
は,「 現 状 と
年42万箱),発泡酒521万箱(同546万箱),新ジャ
それほど変わ
ンル700万箱(同610万箱)で,伸びている分野に
らないだろ
各社とも注力していることを反映し,新ジャンル
う」との見方
新商品の数量が最も多い。
が一般的。た
「機能系商品」,前年を若干下回る
だ,新ジャン
昨年,4月からの「特定健診」スタートをきっ
ル規格の機能
かけに「メタボ特需」が発生,各業界から健康を
系商品が増え
切り口とした商品が数多く登場した。ビール系酒
るようなら,
類でも,一昨年に発売された糖質ゼロの発泡酒,
拡大する可能
アサヒ〈スタイルフリー〉が大ヒットしたことか
性はある。
ら,他社からも糖質ゼロ追随商品(いずれも発泡
不景気で安
酒)が登場,「ゼロ戦争」として話題を集めた。
い発泡酒大樽
キリン〈淡麗グリーンラベル〉など従来からの「オ
増加傾向に
フ系」商品と合わせた機能系発泡酒の商品数は8
分野別の容
に 増 え, 機 能 系 発 泡 酒 市 場 は 前 年 比28 % 増 の
器別動向,用
2,518万箱に急拡大した。そのほか,機能系商品
途別動向は第
ではビールのサッポロ〈ビアファイン〉と新ジャ
6,7 表 の と
第6表 平成21年上半期のビール系
酒類容器別構成比
前年比 構成比(%)
(%) 本年
ビール
発泡酒
前年
瓶
91.9
23.9
24.6
缶
93.6
42.4
42.8
大樽
97.7
33.7
32.6
瓶
104.2
0.4
0.3
缶
86.6
95.2
96.0
大樽 104.6
4.4
3.7
瓶
―
0.0
0.0
新ジャンル 缶
127.4
100.0
100.0
大樽
総計
―
0.0
0.0
瓶
92.0
11.8
12.9
缶
102.4
70.7
69.2
大樽
98.0
17.5
17.9
第7表 平成21年上半期のビール系
酒類用途別販売動向
前年比 構成比(%)
(%) 本年
ビール
発泡酒
前年
業務用
96.3
48.8
47.8
家庭用
92.8
51.2
52.2
業務用 105.5
5.1
4.2
94.9
95.8
家庭用
86.5
業務用
―
0.0
0.0
家庭用 127.4
100.0
100.0
96.9
25.1
25.9
家庭用 101.4
74.9
74.1
ンルのサッポロ〈スリムス〉があり,昨年上半期
おり。ビール
の 機 能 系 商 品 全 体 の 販 売 数 量 は10商 品 合 計 で
の用途別では,
2,567万箱だった。
家庭用が新ジ
今年の機能系商品市場は,昨年と様相がやや変
ャンルに押さ
わった。昨年登場した糖質ゼロ発泡酒のうち,サ
れて落ち込みが大きく,業務用も景気低迷で落ち
ッポロ〈ビバライフ〉とサントリー〈ゼロナマ〉
込んだものの,結果的には業務用の構成比が前年
はすでに終売,そして,今年2月にアサヒが「糖
同期より若干上昇した。ビールの容器別でみても,
質70%オフ,プリン体85%オフ」の新ジャンル新
3容器とも前年を下回ったが,構成比は業務用大
商品〈アサヒオフ〉を発売した。昨年は,機能系
樽のみが前年より上昇した。
商品といえばほとんど機能系発泡酒のことを指し
発泡酒では,大樽が前年比4.6%増で構成比も
ていたが,今年は,発泡酒と新ジャンル両規格の
まだ少ないながら若干上昇したことが目立つ。こ
該当商品を合わせてみることが必要となった。機
れは,業務用が低迷する中で,ビールより単価の
能系ビールは,〈ビアファイン〉が終売となり,
安い発泡酒の樽生を売ろうとする動きがでてきた
現在は該当商品はない。
ため。最近,キリンは同社の〈淡麗生〉を飲食店
今年上半期の機能系発泡酒は,6月発売のサン
でも積極的に売っていこうとの方針を打ち出し,
トリー〈豊か〉を合わせ7商品となり,上半期の
TVCMでもそれを訴求する内容で放映するよう
合計数量は2,167万箱。機能系新ジャンルは〈ア
になった。また,飲食店では,「飲み放題」業態
サヒオフ〉〈スリムス〉合計で369万箱。両分野を
店で発泡酒取扱いが増えているとの指摘がある。
合わせた機能系商品全体では2,536万箱で,前年
発泡酒の大樽が増えているのは,これらの要因に
同期と比べ1.2%の減少となった。ビール系酒類
よるものと考えられる。
全体に占める構成比は11.9%で,前年同期(12.0%)
新ジャンル
総計
業務用
たる
(醸造産業新聞社 編集部)
とほとんど同じだった。今後の機能系商品の市場
食品と容器
485
2009 VOL. 50 NO. 8
特別解説
母乳によるビフィズス菌増殖メカニズムの解明
および鍵となるヒトミルクオリゴ糖成分の
製造技術の開発
きたおか・もとみつ
東京大学工学部卒業。
(独)農業・食品産業
技術総合研究機構
食品総合研究所
食品バイオテクノロ
ジー研究領域 酵素
研究ユニット長。
博士(農学)
北 岡 本 光
の健康にとって重要である。母乳栄養乳児におい
1.はじめに
ては,ビフィズス菌は速やかに腸管内に定着し,
そう
昨今,ビフィズス菌という名前をよく耳にする。
ビフィズス菌主体の腸内細菌叢を形成する。この
ビフィズス菌はBifidobacterium属に属するグラ
ようなビフィズス菌主体の腸内細菌叢は,病原性
ム陽性嫌気性細菌の総称で,その大部分はヒトを
微生物の腸内での増殖を防ぐことにより乳児の健
含む動物の腸管内に定着する典型的な腸内細菌で
康状態を保つと考えられている。20世紀初頭にお
ある。ヒト大腸内でビフィズス菌が増加すること
いては人工乳栄養乳児に下痢の頻発など健康上の
は健康に良い影響を及ぼすと考えられており,い
問題が指摘されていた。この原因はビフィズス菌
わゆる腸内善玉菌として有名である。腸内でのビ
が腸内に定着しないため病原性微生物の腸内での
フィズス菌の数を増やすことを目的として,生き
増殖を許してしまうためであると考えられた。そ
たビフィズス菌を含む食品が開発されている。例
のため,乳児のビフィズス菌定着は小児科分野で
えば,ビフィズス菌をヨーグルトスターターとし
重要な研究課題であり,人工栄養乳児の腸内での
て用いることにより,ビフィズス菌を含んだヨー
ビフィズス菌定着について長年研究が行われてき
グルトなどが市販されており,その一部は特定保
た。現在の人工乳にはビフィズス菌増殖因子とし
健用食品の認可を受けている。経口的に摂取する
て種々のプレバイオティクスオリゴ糖が添加され
ことにより健康に良い働きをする生きた微生物あ
ており,健康上の大きな問題は解決した。
るいはそのような微生物を含む食品をプロバイオ
母乳に含まれるビフィズス菌増殖因子について
ティクスと称する。ビフィズス菌は典型的なプロ
も研究が行われてきた。哺乳動物の乳は通常ラク
バイオティクスである。プロバイオティクス微生
トースを主要糖源として含み,それ以外にミルク
物を腸内で増殖させる働きを持つ食品をプレバイ
オリゴ糖と呼ばれる三糖以上のオリゴ糖を含むも
オティクスと呼ぶ。各種のオリゴ糖がプレバイオ
のがある。ヒトミルク(母乳)は,ラクトースを
ティクスとして開発・市販されている。これらオ
60-70g/ℓ,(ヒト)ミルクオリゴ糖を10-20
リゴ糖のターゲットはビフィズス菌および乳酸菌
g/ℓ程度含んでいる1)。牛乳はミルクオリゴ糖
である。
をほとんど含まないために,ミルクオリゴ糖の存
ほ
ふん
ビフィズス菌は,1899年に乳児の糞便中から単
在の有無が母乳と人工乳の大きな違いになる。ラ
離された微生物であり,その腸内への定着は乳児
クトースは乳児の小腸においてラクターゼにより
食品と容器
486
2009 VOL. 50 NO. 8
分解された後に吸収され栄養源として用いられる。
はN-アセチルグルコサミンにガラクトースがそ
ヒトミルクオリゴ糖は,小腸の消化酵素で分解を
れぞれβ1,3あるいは1,4結合した化合物である。
受けず,そのまま大腸に達する。そのため,ヒト
ヒトミルクオリゴ糖のコア構造はラクト-N-ビオ
ミルクオリゴ糖がビフィズス増殖因子として働い
ースⅠ構造を含むタイプⅠ鎖が主流である。ヒト
ていると考えられている。
以外の哺乳動物のミルクオリゴ糖では,ラクト
ビフィズス菌の定着速度のみに注目すれば,母
-N-ビオースⅠ構造を含むオリゴ糖はあまり見ら
乳栄養乳児と人工栄養乳児の間には未だに差が見
れない。浦島らは類人猿を含む霊長類のミルクオ
られるため,人工乳に加えられているプレバイオ
リゴ糖組成中でもタイプⅠ鎖が主流の組成を示す
ティクスオリゴ糖と母乳成分のヒトミルクオリゴ
ものはヒトミルクのみであることを報告してい
糖にはビフィズス菌を増殖させるメカニズムに何
る2)。
らかの違いがあることが考えられる。そのため,
3.ビフィズス菌のラクト-NビオースⅠ代謝経路
ヒトミルクオリゴ糖によるビフィズス菌増殖効果
の分子メカニズムを解明することにより,新たな
プレバイオティクスオリゴ糖を設計できることが
1999年に,乳児の腸管に定着する主要なビフィ
期待される。本稿では,ビフィズス菌のヒトミル
ズス菌の一種であるBifidobacterium bifudum菌
クオリゴ糖代謝経路に関する新しい知見とそれを
体内にβ1,3-ガラクトシル-N-アセチルヘキソサミン
基にした新規なオリゴ糖製造法の開発について解
ホスホリラーゼ(GLNBP)と呼ばれるガラクト-N-
説する。
ビオースおよびラクト-N-ビオースⅠを加リン酸
分解する酵素を持つことが報告された(第2図)3)。
2.ヒトミルクオリゴ糖について1)
ガラクト-N-ビオースはガラクトースがN-アセチ
ヒトミルクオリゴ糖は,非常に複雑な混合物で
ルガラクトサミンにβ1,3結合した構造の二糖で
あり少なくとも130種類以上の分子を含むと言わ
あり,ラクト-N-ビオースⅠと構造が似ている。
れている。母乳の構成成分であるヒトミルクオリ
また,GLNBPは結合位置の異なるN-アセチルラ
ゴ糖は,当然のことながら一般的に試薬等として
ク ト サ ミ ン に は 全 く 作 用 し な い。 筆 者 ら は,
入手することは不可能である。他の哺乳動物のミ
GLNBPを精製し部分アミノ酸配列を調べたとこ
ルクにもミルクオリゴ糖を含むものはあるが,ヒ
ろ,ゲノム配列が公開されていたBifidobacterium
トミルクオリゴ糖とは組成が異なるために代用と
longum NCC2705株の機能未知タンパクである
して使用することはできない。以上のような理由
BL1641と高い相同性を示すことを見いだした4)。
もあり,ヒトミルクオリゴ糖によるビフィズス菌
NCC2705株はネスレ社の保有菌株で公的機関か
増殖メカニズムの詳細は長年の間解明されていな
らの入手ができないため,相同遺伝子を基準株で
かった。
᭴ᚑੑ♧
ヒトミルクオリゴ糖は非常に複
䊤䉪䊃䊷䉴
雑な分子混合物であるが,12種類
䊤䉪䊃-N䊎䉥䊷䉴I
のコア構造の一つにフコースやシ
アル酸が付加した構造として整理
N-䉝䉶䉼䊦
䊤䉪䊃䉰䊚䊮
することができる(第1図)。コア
構造はラクトースの非還元末端側
ୃ㘼න♧
に,ラクト-N-ビオースⅠあるいは
䉲䉝䊦㉄
N-アセチルラクトサミンが付加し
䊐䉮䊷䉴
たものである。ラクト-N-ビオース
ⅠおよびN-アセチルラクトサミン
食品と容器
第1図 ヒトミルクオリゴ糖に含まれる分子構造の模式図
487
2009 VOL. 50 NO. 8
╙䋱࿑䋮䊍䊃䊚䊦䉪䉥䊥䉯♧䈮฽䉁䉏䉎ಽሶ᭴ㅧ䈱ᮨᑼ࿑
HO
OH HO
O
HO
O
HO
HO
O
NHAc
OH
䊤䉪䊃-N-䊎䉥䊷䉴I
O
HO
+
O
O
NHAc
OH
HO
OH HO
OH HO
OH HO
O
HO
OH
O-O P
OO
O
HO
䊥䊮㉄
OH
OO P
OO
OH
䉧䊤䉪䊃-N-䊎䉥䊷䉴
OH
N-䉝䉶䉼䊦
䉫䊦䉮䉰䊚䊮
+
䉧䊤䉪䊃䊷䉴1-䊥䊮㉄
NHAc
OH HO
O
HO
NHAc
OH
N-䉝䉶䉼䊦
䉧䊤䉪䊃䉰䊚䊮
第2図 β1,3-ガラクトシル-N-アセチルヘキソサミンホスホリラーゼ(GLNBP)の反応
あるB. longum JCM1217株からクローニングし,
する3つの遺伝子のコードするタンパクをそれぞ
BL1641相当タンパク(LnpA)がGLNBPPである
れLnpB,LnpC,LnpDと名付けた。LnpB-LnpD
ことを確認した。
の反応を調べたところ,ガラクト-N-ビオースお
LnpAをコードする遺伝子の上流には糖質を菌
よびラクト-N-ビオースⅠをエネルギー獲得系に
体外から菌体内に輸送する装置を形成すると考え
導入するのに十分な酵素をコードしていることが
╙䋲࿑䋮㱎1,3-䉧䊤䉪䊃䉲䊦-N-䉝䉶䉼䊦䊓䉨䉸䉰䊚䊮䊖䉴䊖䊥䊤䊷䉷(GLNBP)䈱෻ᔕ
られるタンパク質群をコードする遺伝子が並んで
判明した。これらの結果から,ビフィズス菌はガ
いた。そのうち糖結合タンパクの結合特性を調べ
ラクト-N-ビオースおよびラクト-N-ビオースⅠを
たところ,ガラクト-N-ビオースおよびラクト-N-
菌体外から特異的に取り込んでエネルギーとして
ビオースⅠに特異性が高いことが示されたため,
利用するための専用装置を持っていることがわか
これらの遺伝子は菌体外に生じたこれらの二糖を
った(第3図)6)。この代謝経路をGNB/LNB経路
菌体内に取り込む働きをするタンパク質をコード
と呼ぶ。
5)
していることがわかった 。LnpAの下流に存在
( )
A
1 kb
BL1638
BL1639 BL1640
BL1641
BL1642
BL1643
BL1644
LnpA
LnpB
LnpC
LnpD
䊤䉪䊃-N-䊎䉥䊷䉴I(LNB) / 䉧䊤䉪䊃-N-䊎䉥䊷䉴(GNB)
4.ラクト-N ビオースⅠ
仮説
GNB/LNB経 路 は
他のオリゴ糖の代謝
( )
B
♧ャㅍⵝ⟎(BL1638-1640)
ATP ADP
LNB + 䊥䊮㉄
GNB
LnpA
GlcNAc
Gal1P + GalNAc
LnpC
UDP-Glc
LnpD
UDP-Gal
䊎䊐䉞䉵䉴⩶
LnpB
ATP ADP
め, ガ ラ ク ト-N-ビ
オースおよびラクト
GlcNAc1P
GalNAc1P
UDP-GlcNAc
LnpD
LnpC
UDP-GalNAc
GlcNAc1P
Glc1P
には役に立たないた
䉣䊈䊦䉩䊷₪ᓧ♽〝䈻
-N-ビ オ ー ス Ⅰ は ビ
フィズス菌の生育環
境中に存在すればビ
フィズス菌の生育に
対して重要な役割を
持つことが考えられ
た。ビフィズス菌の
生育環境である大腸
第3図 ビフィズス菌の菌体内GNB/LNB経路遺伝子(A)および模式図(B)
╙䋳࿑䋮䊎䊐䉞䉵䉴⩶䈱⩶૕ౝGNB/LNB⚻〝ㆮવሶ(A)䈍䉋䈶ᮨᑼ࿑(B)
食品と容器
488
内でのこれらの存在
2009 VOL. 50 NO. 8
を考えると,
まず粘膜に含まれるムチンという糖タ
実用的な製造方法について検討を行った。
ンパク質のもつ糖鎖が考えられた。ムチン糖鎖は
オリゴ糖を食品素材として製造するためには安
ガラクト-N-ビオースを持つことが知られている。
価な原料のみを出発原料として単純な工程で製造
京都大学の山本憲二教授らは,
ムチン糖タンパク質
する必要がある。筆者らは砂糖とN-アセチルグル
からガラクト-N-ビオースを遊離する酵素をビフィ
コサミンを原料とした一段階高収率のラクト-N-
ズス菌から見いだした7)。
そのため,
ビフィズス菌の
ビオースⅠ製造法を考案した。これは,αグルコ
代謝経路の意義の一つは粘膜ムチンを栄養源に利
シドである砂糖を一気にβガラクトシドであるラ
用して大腸内で生育することにあると考えられた。
クト-N-ビオースⅠに変換するという手品のよう
GNB/LNB経路はガラクト-N-ビオースのみな
な方法である。種明かしを第5図に示した。
らずラクト-N-ビオースⅠにも作用する。そこで,
考案した方法では4つの酵素反応を同時に使う。
筆者らは母乳に含まれるヒトミルクオリゴ糖を有
これらの反応を一つの反応液の中で同時に行うこ
力なラクト-N-ビオースⅠ源と考えた。母乳に含
とを考えると,両辺に現れる化合物はリサイクル
まれるヒトミルクオリゴ糖は小腸で消化を受けず
されることにより反応系に少量存在すればよいこ
に大腸に達する。そのため,ビフィズス菌がヒト
とになる。式を合計し両辺に現れる化合物を消去
ミルクオリゴ糖からラクト-N-ビオースⅠを切り
すると,砂糖とN-アセチルグルコサミンを原料と
出す菌体外酵素系を持っていればヒトミルクオリ
してラクト-N-ビオースⅠとフラクトースを生じ
ゴ糖によるビフィズス菌増殖がうまく説明できる
る反応になる。反応を進行させるためには,4酵
ことになる(第4図)。この仮説(ラクト-N-ビオ
素および少量のリン酸およびUDP-グルコースが
ースⅠ仮説)に基づいてビフィズス菌はヒトミル
必要である。
クオリゴ糖のコア構造からラクト-N-ビオースⅠ
実際にこの反応を試してみると,予想通りの反
を切り出すラクト-N-ビオシダーゼという酵素を
応が高収率で進行することがわかった。最終的に
持つことが予言され,実際にB.bifidumがこの酵
ラクト-N-ビオースⅠを約200g/ℓの高濃度に蓄
8)
素を菌体外に持つことが証明された 。その他,
積させることに成功し収率も85%と高かった。反
フコシダーゼ,シアリダーゼの存在も既に証明さ
応には高価なUDP-グルコースを使用しているが,
れ,B.bifidumはヒトミルクオリゴ糖から予想通
使用量は基質の1/600に留まっており,事実上
りラクト-N-ビオースⅠを切り出して利用してい
触媒として作用した。反応を式に書くと一見複雑
ることが示された。
なことをしているような印象を受けるかも知れな
5.ラクト-N-ビオースⅠの
大量生産法9,10)
ラクト-N-ビオースⅠ仮説は,現在
䊐䉮䉲䉻䊷䉷
䊐䉮䉲䉻䊷䉷
のところヒトミルクオリゴ糖によるビ
䊤䉪䊃-N-䊎䉥䊷䉴I
フィズス菌の増殖を説明する最も有力
䉲䉝䊥䉻䊷䉷
な仮説である。仮説が正しければビフ
ィズス菌増殖因子としてはラクト-NビオースⅠで十分であると考えられる。
ラクト-N-ビオースⅠはヒトミルクオ
⩶૕ౝGNB/LNB⚻〝
䊤䉪䊃-N-䊎䉥䉲䉻䊷䉷
はる
リゴ糖そのものと比べると遙かに構造
の単純な二糖であり食品素材として使
用しうる製造方法の開発も十分期待で
きる。そこでラクト-N-ビオースⅠの
食品と容器
䊍䊃䊚䊦䉪䉥䊥䉯♧
䊎䊐䉞䉵䉴⩶
第4図 ヒトミルクオリゴ糖によるビフィズス菌増殖機構の説明
╙䋴࿑䋮䊍䊃䊚䊦䉪䉥䊥䉯♧䈮䉋䉎䊎䊐䉞䉵䉴⩶Ⴧᱺᯏ᭴䈱⺑᣿䋨䊤䉪䊃-N-䊎䉥䊷䉴I઒⺑䋩
(ラクト -N- ビオース I 仮説)
489
2009 VOL. 50 NO. 8
⍾♧
䋫
䉫䊦䉮䊷䉴 䋱-䊥䊮㉄ 䋫
䊥䊮㉄
UDP-䉧䊤䉪䊃䊷䉴
䉫䊦䉮䊷䉴 1-䊥䊮㉄ 䋫
䊐䊤䉪䊃䊷䉴
UDP-䉫䊦䉮䊷䉴 䋫 䉧䊤䉪䊃䊷䉴 1-䊥䊮㉄
UDP-䉫䊦䉮䊷䉴
UDP-䉧䊤䉪䊃䊷䉴
㽲
㽳
㽴
䉧䊤䉪䊃䊷䉴 1-䊥䊮㉄ 䋫 N-䉝䉶䉼䊦䉫䊦䉮䉰䊚䊮
䊤䉪䊃-N-䊎䉥䊷䉴I 䋫
䊥䊮㉄
㽵
䋫 N-䉝䉶䉼䊦䉫䊦䉮䉰䊚䊮
䊤䉪䊃-N-䊎䉥䊷䉴I 䋫
䊐䊤䉪䊃䊷䉴
ว⸘
⍾♧
第5図 4酵素同時反応による砂糖とN-アセチルグルコサミンを原料としたラクト-N-ビオースI製造法の模式図
各反応に用いる酵素は:①スクロースホスホリラーゼ,② UDP- グルコース-ヘキソース 1- リン酸ウリジリルトラン
スフェラーゼ,③ UDP- グルコース 4- エピメラーゼ,④ GLNBP。四反応を同時に行うことを考えると,両辺に現れる
化合物はリサイクルされるため触媒量存在すればよい。
いが,実際は4種類の酵素および基質等の入った
にスケールアップを行うことができる。
反応液を作り一定温度に放置するだけの極めて単
6.ラクト-N-ビオースⅠによる
ビフィズス菌増殖効果
純な操作しか必要としない。
最終的な反応液には目的産物のラクト-N-ビオ
ースⅠ以外に副生成物のフラクトースおよび未反
大量調製に成功したため,ラクト-N-ビオース
╙䋵࿑䋮྾㉂⚛หᤨ෻ᔕ䈮䉋䉎⍾♧䈫N-䉝䉶䉼䊦䉫䊦䉮䉰䊚䊮䉕ේᢱ䈫䈚䈢䊤䉪䊃-N-䊎
応の砂糖,N-アセチルグルコサミンを含んでい
Ⅰを用いた実験を容易に企画することが可能にな
䉥䊷䉴I⵾ㅧᴺ䈱ᮨᑼ࿑䇯
る。反応液にパン酵母を加え発酵させると,フラ
った。筆者らはその第一段階として,腸内細菌に
ฦ෻ᔕ䈮↪䈇䉎㉂⚛䈲䋺㽲䉴䉪䊨䊷䉴䊖䉴䊖䊥䊤䊷䉷䇮㽳UDP-䉫䊦䉮䊷䉴䋭䊓䉨䉸䊷䉴1-䊥䊮㉄䉡䊥䉳䊥䊦䊃䊤䊮
䉴䊐䉢䊤䊷䉷䇮㽴UDP-䉫䊦䉮䊷䉴4-䉣䊏䊜䊤䊷䉷䇮㽵GLNBP䇯྾෻ᔕ䉕หᤨ䈮ⴕ䈉䈖䈫䉕⠨䈋䉎䈫䇮ਔㄝ䈮⃻䉏䉎
クトースおよび砂糖は資化されたが,ラクト-Nよる資化性を調べた11)。通常のオリゴ糖はビフィ
ൻว‛䈲䊥䉰䉟䉪䊦䈘䉏䉎䈢䉄⸅ᇦ㊂ሽ࿷䈜䉏䈳䉋䈇䇯
ビオースⅠおよびN-アセチルグルコサミンはそ
ズス菌や乳酸菌など多くの菌により資化されそれ
のまま反応液に残った。酵母処理後に反応液を濃
らを増殖させる。ラクト-N-ビオースⅠは通常の
縮するとラクト-N-ビオースⅠが選択的に結晶化
オリゴ糖と異なり,多くの乳酸菌には無効であり,
し,N-アセチルグルコサミンと分離することがで
一部のビフィズス菌を選択的に増加させた。大腸
きた(第6図)。10ℓスケールの反応を行い,結
内に生息するビフィズス菌の種類は,乳児から大
晶化操作を行ったところ純度98%以上のラクト
人になるにつれて変化していくが,乳児に多い
-N-ビオースⅠを約1.6 kg得た。単離操作において
B.longum,breve,infantisなどの菌種はラクト-N-
もクロマトグラフィーを一切使っておらず,容易
ビオースⅠにより増殖が見られるのに対し,乳児に
෻ᔕᶧ
㉂Უಣℂ
↢ᚑ‛
䊶䊤䉪䊃-N-䊎䉥䊷䉴I
䊶䊐䊤䉪䊃䊷䉴
ᧂ෻ᔕၮ⾰
䊶⍾♧
䊶N-䉝䉶䉼䊦䉫䊦䉮䉰䊚䊮
䊐䊤䉪䊃䊷䉴䈫⍾♧䉕㒰෰
⚿᥏ൻ
䊤䉪䊃-N-䊎䉥䊷䉴I
N-䉝䉶䉼䊦䉫䊦䉮䉰䊚䊮
䊤䉪䊃-N-䊎䉥䊷䉴I
第6図 ラクト-N-ビオースIの単離
食品と容器
╙䋶࿑䋮䊤䉪䊃-N-䊎䉥䊷䉴I䈱න㔌
490
2009 VOL. 50 NO. 8
少なく大人の主要ビフィズス菌種であるB. adols-
7.まとめ
centis,catenulatumは増殖させない結果が得られ
なぞ
た。このようなビフィズス菌種間での増殖能の違
筆者らは,長年謎とされてきたヒトミルクオリ
いは他のオリゴ糖ではあまり見られない現象であ
ゴ糖によるビフィズス菌増殖メカニズムを説明す
る。ラクト-N-ビオースⅠは他のオリゴ糖と異な
る有力な仮説を提唱した。その中で,ヒトミルク
る特性を示すことから,他のプレバイオティクス
オリゴ糖の増殖メカニズムを説明する鍵となる二
オリゴ糖とは異なる使用法が考えられる。ラクト
糖であるラクト-N-ビオースⅠの実用的な製造法
-N-ビオースⅠ開発の最終目標としては,ビフィ
を開発した。仮説の検証および機能性の解明につ
ズス菌増殖因子として人工乳に添加することによ
いては今後の研究が待たれる。最近になり各種ビ
り人工乳の機能を母乳に近づけることを想定して
フィズス菌のゲノム解析の結果が公開され始め,
いる。
GNB/LNB経路の各ビフィズス菌種での分布も明
かぎ
らかになりつつある。今後ラクト-N-ビオースⅠ
が食品素材として実用化されることを期待しつつ
本稿の結びとする。
参 考 文 献
1)浦島ら:ヒトミルクオリゴ糖の生理作用,ミルク
to-N-biose metabolic pathway in Bifidobacterium longum,
サイエンス,56,155-176(2008)
Appl. Environ. Microbiol., 73, 6444-6449(2007)
2)Urashima T.et al.: Chemical characterization of oligosacc-
7)Fujita, K. et al.: Identification and molecular cloning of a
harides in chimpanzee, bonobo, gorilla, orangutan, and
novel glycoside hydrolase family of core 1 type O-glycan-
siamang milk or colostrum, Glycobiology, 19, 499-508
specific endo-α-N-acetylgalactosaminidase from Bifidobacterium longum, J. Biol. Chem. 280, 37415-37422(2005)
(2009)
3)Derensy-Dron, D. et al.: β-1,3-Galactosyl-N-acetylhexosa-
8)Wada, J. et al.: Bifidobacterium bifidum lacto-N-biosidase,
mine phosphorylase from Bifidobacterium bifidum DSM
a critical enzyme for the degradation of human milk oligo-
20082: characterization, partial purification and relation to
saccharides with a type 1 structure, Appl. Environ. Micro-
mucin degradation, Biotechnol. Appl. Biochem., 29,
biol., 74, 3996-4004(2008)
3-10(1999)
9)Nishimoto, M., Kitaoka, M.: Practical preparation of lacto
4)Kitaoka, M. et al., A novel putative galactose operon invo-
-N-biose I, the candidate of the bifidus factor in human
milk, Biosci. Biotechnol .Biochem., 71, 2101-2104
(2007)
lving lacto-N-biose phosphorylase found in Bifidobacterium longum, Appl.Environ. Microbiol., 71, 3158-3162
10)西本,
北岡:ヒトミルクオリゴ糖に含まれるビフィズ
(2005)
ス因子に迫る:ビフィズス菌によるラクト-N-ビオー
スIの選択的代謝とその製造法,
化学と生物,
46, 522-
5)Suzuki, R., et al.: Structural and thermodynamic analyses
of solute-binding protein from Bifidobacterium longum
524(2008)
specific for core I disaccharide and lacto-N-biose I,
11)Kiyohara, M. et al.: Prebiotic effect of lacto-N-biose I on
J.Biol. Chem., 283, 13165-13173(2008)
Bifidobacterial growth, Biosci. Biotechnol. Biochem., 73,
6)M. Nishimoto, M., Kitaoka, M.,: Identification of N-acetyl-
1175-1179(2009)
hexosamine 1-kinase in the complete lacto-N-biose I/galac-
食品と容器
491
2009 VOL. 50 NO. 8
業界の話題 日本食糧新聞社・食サーチ(http://news.nissyoku.co.jp/)より
業界の話題
食酢に脂肪減少効果 ミツカングループ本社中央
正な比較ができる二重盲検による平行群間比較試
研究所,セミナーでメタボ抑制メカニズムを解説
験であることを高く評価し,「薬を1錠飲むぐら
いに相当する効果は期待できるのではないか」と
(日食 2009/06/15)
ミツカングループ本社中央研究所は3日,都内
メタボ対策としては積極的摂取の方法を支持した。
の港区青山ダイヤモンドホールで「食酢新健康機
−−−以下省略−−−
能の実証内容とそのメカニズム」をテーマにプレ
スセミナーを開催した。中央研究所が食酢を継続
マーガリン,“バター代替”返上へ おいしさ・
的に摂取することで内臓脂肪が有意に低下するこ
機能性再評価
とを臨床試験で初めて実証した内容とメカニズム
08年度(08年4月〜09年3月)のマーガリン類
を紹介し,食酢を日常生活の中で継続摂取するた
市場は,前半のバター不足による代替需要で,家
めのレシピや手作りサワードリンクが提案された。
庭用・業務用ともにバター風味のマーガリンの引
中央研究所の岸幹也チームリーダーは肥満気味
き合いが一気に高まった。後半はバターの需給が
の成人男女175人(うち,有効155人)を対象に二
緩和し,急上昇した輸入価格も落ち着きを見せた
重盲検による平行群間比較試験で,食酢入りドリ
が,今年に入ってもバターに戻らず,引き続きマ
ンクを毎日飲む人(1日15㎖〈酢酸750mg〉群,
ーガリンを使用し続ける動きが見られる。「もう
同30㎖〈同1500mg〉群)と飲まない人(プラセ
バターの代替ではなくなった」(業務用加工油脂
ボ〈同0mg〉群)に分け,12週間後に体重,腹囲,
メーカー)という声も聞かれ,そのおいしさや機
腹部脂肪面積の変化を計測した臨床試験の結果,
能性が再評価されている。
プラセボ群ではいずれも増加が見られたが,体重
マーガリン類のうち,生産量が最も多い業務用
では15㎖群1.17kg減,30㎖群は1.94kg減,腹囲は
では08年度,製菓・製パン向けの練り込みなど汎
同1.43cm減と1.85cm減,腹部脂肪面積は同5.53立
用品は苦戦し,ファットスプレッドを含む生産量
方cmと6.72立方cm減となり,食酢が肥満者に対
は前年を4.8%下回った。その中でも,バター含
して体脂肪低減作用があることを実証した報告を
有のコンパウンドマーガリンやバターの風味を添
行い,「肥満気味,血中中性脂肪が高めの人には,
加したノンコンパウンドマーガリンは各社とも好
食酢を1日当たり15㎖継続摂取することで体重・
調に推移した。特に,パティシエなどが洋菓子で
BMI・体脂肪率・腹囲・腹部脂肪面積・血中中性
もバターの代わりにマーガリンを使い始めている。
脂肪に有意な減少が認められた」と報告した。
例えば,J-オイルミルズのケーキ用練り込みコン
そのメカニズムについては「脂肪が消費に勝っ
パ ウ ン ド マ ー ガ リ ン「 マ イ ス タ ー ソ フ テ ィ ン
ていると蓄積されるが,食酢(有効成分:酢酸)
CP」は,トッピングや練り込むフルーツ・ナッ
を摂取することで合成される脂肪が抑えられて燃
ツが沈下せず,バターの風味と後味,コク味を出
焼が促進される」と,食酢が脂肪合成抑制,脂質
せるのが特徴だ。こうした機能性も再評価されて
燃焼促進の両面から脂肪を減少させる効果がある
いる。その他のメーカー各社も,それぞれの技術
と解説し,過去に実証している高めの血圧低下,
力を発揮したバター風味の新製品を08年に相次ぎ
高めの血中脂質の低下,食後の血糖値上昇を穏や
上市している。
かにする効果と合わせて食酢を継続的に摂取する
またバターの需給は緩和し海外相場は下がって
ことでメタボリックシンドロームの予防・改善に
いるが,国産バターは国内の乳価引き上げに伴い,
有効である可能性を示唆した。
まだ高い。追い打ちをかけて,昨年から続く急激
また,医学的見知から日本大学医学部総合健診
な消費低迷でより安いものが求められていること
センター高橋敦彦医長は,今回の研究について公
も背景にあり,バター代替需要のトレンドは続き
食品と容器
(日食 2009/06/17)
はん
492
2009 VOL. 50 NO. 8
業界の話題
そうだ。
世界的な経済不況の中で国民の食への重要性を
一方,家庭用もバター不足によりバター風味の
重視したこの政策では,正に「食は国防」という
グルメ・リッチタイプや,ケーキ用マーガリンな
考え方に基づき,国策と法律を軸とした体制作り
どが好調な動きを見せた。特に08年度のマーガリ
が行われる。
ン規格の生産量は前年比3.6%増。内食回帰も手
日本はどうか。将来にわたっても懸念されるイ
伝って,バターの代わりに料理に使用し始めた。
ンフルエンザ対策も喉もと過ぎれば……ではない
ファットスプレッドよりも油脂含有率が高く(80
が,マスク着用の可否の問題以前に,情報収集と
%超),いため物などにも活用できるなど,その
解釈が必要である。現実は,海外から嘲笑を買う
使い勝手に消費者が気づいた。
日本のパラノイア(偏執病)状態を日本と諸外国
−−−以下省略−−−
の差異として直視すべきではないだろうか。
のど
ちょう
現に,アメリカは養豚場のガイドライン改善を
食品のグローバル化と新製品開発考(1)「食の
最近数年にわたって行い,大量養豚肥育の改善を
安全」への姿勢明確なオバマ政権
している。日本の獣検疫レベルの高さは世界の研
究者に知られているところだが,食品安全への対
(日食 2009/06/26)
米国のオバマ大統領は5月13日,政府,消費者,
処は欧米との開きが大きい。
食品産業団体など産官学のメンバーで構成された
また,米国は4月8日のWTOの衛生食物検疫
食品安全ワーキンググループを招聘して国民の食
措置に関する委員会を通じて,各国に対して米国
品安全システムについての最新情報および改善に
農務省食品安全検査局が輸入および国内流通する
ついて公聴会を実施し,2010年国家予算において
畜肉,家禽肉,卵製品を連邦畜肉検査法,連邦製
FDA予算の大幅な増額の必要性を説き,採択し
品検査法,連邦卵製品検査法に基づき規制する--
た。大統領は就任後,3月から国務省以下の各省
と通達した。現在は米国農務省動植物検疫局のみ
長官を組織して,21世紀の安全保障への法整備を
が輸入検査を実施しているが,その内容が実行さ
準備していた。
れると今後は米国農務省食品安全検査局が検査を
ワーキンググループは議長にヘルス&ヒューマ
開始するため,原材料の加工施設の認定が問われ,
ンサービス(日本では厚生労働省に当たる)のキ
対象原材料である畜肉,家禽肉,加工卵を使って
ャサリーン・セベリウス長官,副議長にトム・ビ
製造されたすべての食品(それらの肉を少量しか
ルザック農務長官を指名した。この食品安全大改
使用していないものを含む)は,米国農務省食品
革の特徴は,「予防」であり,「危機への迅速な対
安全検査局の検査を受けた施設,または認めた外
応」である。
国の検査システムによって認証された施設で製造
公聴会のオープニングでオバマ大統領は「我々
されたものでない限り,米国への輸入は認められ
は第一に食品汚染を防ぐシステムが必要であり,
なくなり,これらの原材料を使用した食品の米国
信頼できる情報集積のため,さらに精度の高い立
向け輸出が困難になることが予想される。
ち入り検査,そして公法人・団体による有効な規
一方で,先に行われたIFT(食品科学技術者学
制基準を策定しなければいけない」として,突発
会)のオープニングセッションにおける発表で,
事故や大発生(アウトブレーク)およびその拡大・
元ホワイトハウス経済政策担当官のテッド・ブッ
飛散の予防・早期回復への対処を明言し,10年予
シュホルズ氏は最近数年の食品産業について,経
算で食品安全に対して09年比259億円増の1000億
済氷河期の中であるが2010年に日本10%弱,中国
円を予算化した。FDAが食べ物由来の健康被害
30%弱,インド25%弱前後の伸長を予測し,世界
防止監視システムの新スタンダードを開発する。
の中でこの3ヵ国だけの進展が期待可能であろう
へい
食品と容器
きん
493
2009 VOL. 50 NO. 8
業界の話題
と語っている。
らえ,中でもコメのとぎ汁は,リンや窒素などそ
すさまじいスピードで加速するグローバル化と
の原因ともなる物質を多く含むことから,とぎ汁
ともに進展を維持する食品産業は,最大の関心を
の一切出ないことを目指して,このコメを開発し
何に払い,重要・必要事項は何なのか,を知るべ
た。それだけに,通常の精白米の表面にあるこう
きである。日本は食品安全をどんな国策で守ろう
した物質を多く含む「肌糠」を,BG米ではきれ
と考えているのであろうか。
いに除去しており,川や海を汚さない点が最大の
オバマ政権が着々と進行させている国民の食を
特徴だ。
守る姿勢を注視しなければならない。
さらに,これが二酸化炭素削減にもつながって
いる。日本土壌協会が調査した無洗米使用による
エコ特集:BG無洗米,環境保全で注目 CO2 削
環境保全効果をLCA(ライフサイクルアセスメ
減に貢献
(日食 2009/06/29)
ント=製品の評価を原料調達から加工,製造,廃
とがずに炊ける「簡単・便利」で市場を席巻し
棄に至る全過程で生じる環境負荷の分析方法)調
たBG無洗米だが,ここへきて環境保全の側面が
査データによると,BG無洗米の製造時に要する
クローズアップされている。まず,開発目的であ
エネルギーと排出する二酸化炭素は,普通精米を
る,コメのとぎ汁による川や海の水質保全だが,
といでそのとぎ汁を処理するためのエネルギーや
これに加え,無洗米製造時のCO2排出量は普通の
排出する二酸化炭素より少ないことが分かった。
精白米をといでとぎ汁を浄化処理するための排出
具体的数値では,日本人の1人当たりのコメ消費
量より少なく,CO2削減に効果を発揮することが
量を約166gと推計,これを精白米からBG無洗米
判明したためだ。加えて水の節約,副産物の肌糠
に置き換えることによるCO2削減量は3.1g,茶碗
(ぬか)を有機肥料としてコメの栽培に活用でき
1杯(75g)当たりでは1.4g削減となった。
る「リサイクル」
「ゼロエミッション」の観点など,
節水効果も無視できない。全国無洗米協会が首
多様な切り口が出揃った。
都圏の女性を対象に実施した調査結果では,3カ
そこで先般,環境省が立ち上げた,日常生活の
ップ(450g)のコメをとぐのに,4.5リットルと,
中で環境負荷を低減する「エコファミリー」を支
コメの約10倍の水を使用していることが判明し,
援する情報サイトに,「我が家の環境大臣・グリ
このケースで算出すると4人家族で年間240kgの
ーンコンシューマーになろう!」の推奨商品第1
コメを消費した場合,とぎ水バケツ133杯分の節
号としてBG無洗米を取り上げ,サイト上で製法
約となる。
や環境効果,他製法との違いなどを分かりやすく
さらに,副産物の肌糠は,「米の精」の名前で
説明している。
商品化。普通精米の場合,コメのとぎ汁と一緒に
米穀業界は一方,他の食品同様価格競争が激化
流出し,水質汚濁の原因ともなる肌糠だが,BG
している中で,各社とも他社との差別化を模索し
無洗米の場合,有機肥(飼)料としてコメに代表
ている。すでに一定規模以上の卸業者は無洗米加
される農作物の生産や牛の肥育に活用され,廃棄
工設備を保有しており,無洗米の販売だけでは差
物のゼロエミッションの実現とともに,循環型農
別化を図れなくなったのも事実だ。だが,打ち出
業も行われている。
し方や説明方法で差別化を図ることは可能だ。無
この「米の精」と同等の肥料特性を持つ化学肥
洗米はソフトの時代に入った。
料を製造するために必要なエネルギーや,海外か
「BG無洗米」は多様な側面で環境保全に貢献し
ら原料運搬にかかるエネルギーの合計を化学肥料
ている。東洋精米機では,川や海の水質汚濁の原
製造に要するエネルギーと仮定して割り出したほ
因の一つに家庭から流れる生活雑排水にあるとと
か,ほ場実験して環境に与える肥料特性も調査す
わん
そろ
食品と容器
494
2009 VOL. 50 NO. 8
業界の話題
ると,無洗米の製造や肌糠肥料製造に要する消費
ドライコーヒー飲料からの需要が流入してきた。
エネルギー量は,普通精米のとぎ汁浄化に要する
また,容量で200㎖から400㎖,価格では100円
エネルギーや,肌糠同等の化学肥料製造に要する
から200円と幅広く揃い,味覚面でもエスプレッ
エネルギーより少ないことも分かった。
ソを基本としたラテ系からカラメルなどのフレー
また,肌糠肥料は植物に有効に作用する可給態
バー展開,健康志向に対応したノンシュガーなど
窒素に富み,地下水汚染の原因になる無機態窒素
バリエーションが増えていったことも市場拡大に
の含有量が少ないので,化学肥料より地下水汚染
貢献した。
の可能性は低いことも判明した。
08年の市場は約860億円規模で推移している。
早期に1000億円の達成が見込まれていたが,08年
チルドカップコーヒー特集:需要掘り起こしで
にブレーキがかかった。最大の要因は消費の減退
1000億円突破可能 チルドならではの品質・味
による買い控え行動が起きたこと。一般的な店頭
覚追求を
(日食 2009/07/01)
売価190g,120円の缶コーヒーに対して,240㎖
チルドカップコーヒー市場は成長力が鈍化して
で140円での提供となり,ドライと比較して高価
いる。近年2桁成長を続けてきた同市場だが,08
格帯と位置付けられていることから,景況感が逆
年は前年比3%減とマイナスで着地したようだ。
風となり,需要が落ち込んだ。また,このような
主要因は,08年9月以降の景気の悪化が直撃して
環境であるため,チルドカップコーヒーの中でも,
いる。200㎖前後で140円という商品設計がドライ
160円以上の高価格帯の商品群が打撃を受けた。
商品よりも割高感を与えて,購買意欲の冷え込む
09年に入って,プレミアムタイプの苦戦は続く
市場環境では厳しい局面を迎えている。ただし,
が,中心となる商品群は回復基調にある。メーカ
品質や味覚については,多くの消費者から高い支
ー関係者は「これまでチルドカップコーヒーの価
持を得ていることから,これまで取り組んできた
値を理解し,支持していた消費者がヘビーユーザ
“チルドならではの品質と味覚”を追求すること
ーとして,しっかりと定着しているため」と分析
で,市場が回復する可能性は高い。
する。また,食品市場で顕在化する消費者の健康
チルドカップコーヒーは,93年に森永乳業が「マ
志向の高まりが同市場にも波及。カロリーオフや
ウントレーニア」ブランドを発売して以来,順調
ノンシュガーといった商品が他の商品と比べて大
に拡大を続けてきた。05年9月,サントリーが人
きく伸長していることから,健康系の商品開発が
気のカフェショップ「スターバックス」のチルド
活発となりそうだ。一方で,苦戦するプレミアム
カップコーヒーを発表して,注目を集めた。07年,
タイプについては,容量や価格面での見直しなど
コカ・コーラシステムや伊藤園など清涼飲料メー
の立て直しが急務となっている。
カーが参入して,本格的な盛り上がりを見せた。
08年に停滞したとはいえ,潜在需要を掘り起こ
08年にはコーヒーだけでなく,デザート系チルド
すことで市場規模1000億円の突破は可能との見方
カップ飲料が登場し,多面的な広がりを持つよう
が強いことから,各メーカーは,ブランドの鮮度
になった。
感を高めるとともに幅広いアイテムを揃えること
拡大の背景には,冷蔵で流通・販売するため,
で,多様化するニーズに対応していく構えだ。金
ドライ商品にはない鮮度の高さという商品設計と
額,容量,味覚などバリエーションが豊富なカテ
ともに,洗練されたパッケージデザインなどのフ
ゴリーだけに既存品や競合品との差別性を明確に
ァッション性によって,これまでのドライのコー
打ち出していくことが,さらなる成長のポイント
ヒー飲料では取り込めなかった若年層や,女性層
となりそうだ。
けた
を獲得していった。あわせて,缶コーヒーなどの
食品と容器
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今月の統計
(万トン)
第1図 缶びん詰,他生産数量・年別推移(内容重量)
600
500
400
ペットフード
レトルト食品
300
びん詰
(大缶)
200
一般缶詰
(丸缶)
100
飲料缶詰
(丸缶)
注:大缶は18リットル缶,9リットル缶など,業務用として作られる大型缶詰
0
1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年
(万トン)
500
第2図 缶びん詰,他生産数量
400
300
(万トン)
16
第3図 丸缶の品目別生産数量
1998年
14
1998年
2003年
12
2003年
2008年
10
2008年
8
200
6
4
100
2
0
(万トン)
4
0
第4図 大缶の品目別生産数量
3.5
1998年
3
2003年
2.5
(万トン)
6
5
4
2008年
2
第5図 びん詰の品目別数量
1998年
2003年
2008年
3
1.5
2
1
1
0.5
0
食品と容器
0
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今月の統計
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食品と容器
497
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2009 VOL. 50 NO. 8
〜〜〜〜 技術用語解説 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
な細孔やエンボス,傷跡などの加工を施すことに
より,どこからでも手指で容易に切り出すことが
易開封性包装容器
(Easy open packaging)
ぜい
できる。フィルムを微細孔などにより脆化させ,
ぱ
引き裂き伝播抵抗を小さくすることにより易カッ
食品包装分野においてもユニバーサルデザイン
ト性を得るものである。
の考え方が浸透しつつあり,「見やすさ」「開けや
イージーピール包装容器
すさ」「持ちやすさ」などその利便性を付与した
包装後の加工・輸送時において容器の内側から
デザインに消費者の関心が高まっている。その中
は剥がれにくく,一方で開封時には外側からはス
でも易開封機能を付与した開けやすい包装形態が
ムーズに剥がすことができるのがイージーピール
増えつつあるので主なものを紹介する。
包装容器の特徴である。ゼリーや無菌米飯,豆腐
ミシン目による易開封包装容器
など容器に入ったタイプやスナック等のフィルム
菓子・スナックなどの紙器の開封手段の一つと
包装などで使われている。
してミシン目は広く利用されている。最近では,
剥離機構のタイプには,1)シーラント材と被
ユニバーサルデザインの考え方を取り入れて,左
着体の界面で剥離するタイプ,2)シーラント材
右両方から開封できるようにしたものや,開封口
が多層構成で,層間で剥離するタイプ,3)シー
に段差を付けたりエンボス加工を施すことにより
ラント層の内部破壊によって剥離が起こるタイプ
開始位置が触覚的にわかりやすく工夫したものな
などがある。1)は,他の2タイプと比べて耐熱
どが開発されている。また,プラスチック複合フ
性やシールの安定性に劣るが,剥離面に何も残ら
ィルムにミシン目加工を施し,ノッチ(切り込み)
ないため直接口をつけるような用途に好まれる。
なしでも一定の位置で開封を可能とした商品例も
2)は,シール強度が高く,耐レトルト適性があ
ある。
り,外部からの衝撃や落下などにも強い傾向があ
ノッチ,引き裂き糸等を利用した易開封包装容
る。3)は,シールの安定性には最も優れている
器
が,剥離面にシーラント材が凝集破壊した白っぽ
は
はく
ノッチには,切り込みIノッチ,切り欠きVカ
い剥離跡が残ってしまう。それぞれ目的に応じて
ット,鋸 刃状カットなどがある。Iノッチは充填
使われている。シーラント材には,1)EVAや
包装と同時に加工可能であるが,ノッチの長さが
スチレン系ブロック共重合体低融点樹脂,ワック
長すぎると破袋の恐れが生じ,短すぎると開封し
ス,粘着付与材をブレンドしたホットメルトタイ
にくくなる。Vカットは,Iノッチに比べてノッ
プ,2)EVA,PE,PP,スチレン系ブロック共
チの位置が確認しやすい利点があるが,フィルム
重合体などをブレンドしたタイプが一般的である。
のこ
くず
の切り屑が製品に付着混入しないよう注意が必要
である。
参 考 文 献
引き裂き糸を利用したものでは,糸をシーラン
1) 特 許 庁「 標 準 技 術 集 食 品 用 包 装 容 器 」: http://
トフィルムの内側に直線状に固定し,糸を引くと
www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gij
きのせん断力により包材を直線状にカットする。
utsu/syokuhinyou/mokuji.htm
カットテープを利用したものでは,ピロー包装の
2)武石一路「最新 食品用機能性包材の開発と応用」,
背貼り部に特殊なテープを連続的に貼り付け,そ
日本食品包装研究協会編,シーエムシー出版発行,
ば
189-198(2006)
のテープを引っ張ることにより開封するといった
((独)農業・食品産業技術総合研究機構
ものが一般的である。
細孔,傷跡等による易開封包装容器
食品総合研究所 石川豊)
基材フィルム全体またはヒートシール部に微小
食品と容器
498
2009 VOL. 50 NO. 8
最近の技術雑誌から
国
ਈ
内
຿
ᶨ³ᶩ¶¶᷾·±ᶨ'±º¯¸ᶩᶮ
編
ဩ
ɜព៥ɝ特集─機能性食品の最近の動き─私たちの健康
に役立つ機能性食品②
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ɜព៥ɝリコピンの機能性─最近の研究成果を中心に─
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ɜព៥ɝ特集2―食品の理化学分析の標準化―
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ɜព៥ɝ特集─美容食品の開発と展望─
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Ⱦᑬࡄ̍ʸ̉˗ʾʺˎ̉ˆᯨ‫ق‬Ꭻಲʍऐ‫ܬ‬թ‫؂‬ƃᐁᭂᧅ
ɜព៥ɝ市場動向Ⅰ─抗メタボ・ダイエット素材の市場
動向─
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ɜព៥ɝ特別寄稿─充填済み容器内のガス測定における
問題点とその解決法─
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Ɖ´´± ¹±᷾¹²ᶨ'±º¯·ᶩᶮ
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ɜព៥ɝ特集─カビ毒のリスク評価と製造現場でのカビ
対策─
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ɜព៥ɝ特集─機能性食品素材の近況─
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Мᶨၔʊᓁោ᰺ʊʃɣʅᶩ
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Ⱦ෤ᓧ৷ᯨ‫ق‬Ꭻಲʍ᥵፯૮᜖ƃƃƃƃƃƃƃƃӑᄑ‫࠮ح‬
Ⱦ෤ᓧ৷ᯨ‫ق‬ᎫಲʍᎶς
ɜព៥ɝ特集1―小規模施設も取り組める!─大量調理
施設衛生管理マニュアルを基本とした調理施設の衛
生管理
ᯨʇѪ॓ᶬ¶´ᶨ¸ᶩ¹᷾³µᶨ'±ºᶩᶮ
Ⱦɔ‫ށ‬ᨃ៬Ⴞఆឮ᜙ᄉጫႾ˴ˡ˻ʸ́ɕ௑ฬʍ˳ʺ̉˞
ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃ᛼๼ ៝
Ⱦᯨ‫ق‬ʱ૨ɥɸʘʅʍκʊᇽʂʅʚɶɣɔ‫ށ‬ᨃ៬Ⴞఆឮ
᜙ᄉጫႾ˴ˡ˻ʸ́ɕƃƃƃƃƃƃƃƃƃ΀ࢡ լ
ɜព៥ɝ特集─食品流通における衛生管理─食品流通工
程における衛生管理強化とセキュリティー対策/製
造に倣った管理をどう実現するか(準HACCPとして
の対応)
ɜព៥ɝ意外と違っている栄養知識!!/カルシウムは女
性の全世代が不足ぎみ/“やせ志向”につまずく現
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食品と容器
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2009 VOL. 50 NO. 8
最近の技術雑誌から
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ɜព៥ɝ特集―夏本番!飲料&飲料容器2009―
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ɜព៥ɝ「うま味調味料」新たなステージのスタート─
7月25日は「うま味調味料の日」─
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ɜព៥ɝ市場動向Ⅱ─日持向上剤・保存料製剤の市場動
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ɜព៥ɝ特集─水産加工品の技術動向─
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ɜព៥ɝ特集:飲料缶─缶飲料の再評価と可能性─
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ɜព៥ɝBJ SPECIAL─ASEAN飲料レポート1─
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ɜព៥ɝ08年の清涼飲料生産はわずかに減少
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ɜព៥ɝBJ Report 缶コーヒー飲料─安定市場の缶コ
ーヒーと将来性─
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ɜព៥ɝ2009年も拡大基調のコーラ飲料─“ゼロ”効果
で08年は8%の拡大─
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ɜព៥ɝ4年ぶり増,40万・回復した甲類焼酎─低価格
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化懸念のなか公正競争の実現を─
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ɜព៥ɝ缶びん詰,レトルト食品業界の環境問題対応に
関する平成20年度調査結果
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ɜព៥ɝ★消費のトレンド★業務用“樽生”異変の理由
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ɜព៥ɝ缶詰の生産個数変化
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食品と容器
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最近の技術雑誌から
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ɜព៥ɝ特集─菓子∼ニューマーケット創出に向けて─
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ɜព៥ɝ一層の価値訴求を進める植物油業界─相場上昇
を背景に再び値上げ局面に─
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ɜព៥ɝField Report―コカ・コーラ イーストジャパン
プロダクツ㈱茨城工場―SOT缶市場を勝ち抜く新世
代のレトルト缶飲料製造ライン
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ɜព៥ɝ08年度酒類・食品メーカー海外業績の動向─今
後も積極的に事業拡大へ─
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ɜព៥ɝ特別企画―品質管理/微生物検査・成分分析・
官能検査の最新機器―
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ɜព៥ɝ08年度決算に見る量販店の低価格戦略
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ɜព៥ɝ特集 ―液体容器―
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ɜព៥ɝ食品SM,価格対応強化も厳しい結果に─改装の
延期・凍結強いられた百貨店業界─
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ɜព៥ɝ年間特集―食品の品質保証技術―食品の品質保
持に関わる水の役割
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ɜព៥ɝ特集―[飲料製造技術と品質保証]―
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ɜព៥ɝ特集2―東京都における調理冷凍食品のQ&A
―原料原産地表示制度
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ɜព៥ɝ特集―リスク管理の考え方と具体的なシステム
構築∼経営者の意識と食品防御の視点から∼
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食品と容器
501
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最近の技術雑誌から
海
外
Fruit Processing(DEU)Vol.19 May/Jun.(2009)
編
○新しい酵素処理によるリンゴ搾りかすの抽出
Apple Pomace Extraction with New Enzyme
Preparations
M.Jaroslaw et al.………………… 118~120, 122~125
邦文の題名は内容に従って付けてありま
すので,原題と異なる場合があります。
○リンゴ:ノンアルコール飲料素材としての主要果実
Apple
…………………………………………126~127
Food Technology(U.S.A.)Vol.63 Jun.(2009)
The World of Food Ingredients(Neth.)
Apr./May(2009)
○消費者の健康なメニューに関する感性調査
Putting Health on the Menu
○世界の経済不況が調理済み食品市場に及ぼす影響
M.Caranfa and D.Morris………… 28~30, 33~34, 36
Benefiting from the Crisis?
○世界のスナック食品におけるフレーバーの刷新
M.Hilliam… ………………………………………14~16
Flavor Innovations in Global Snack Foods
○原 料および素材製造で資源を効率よく管理する新
C.J.Barroso… ………………………… 38~40, 43~44
戦略
○GRASに認可された新しいフレーバー
Nothing Left to Waste
GRAS Flavoring Substances 24
A.Green……………………………………………22~24
R.L.Smith et al.………………………………… 46~105
○将来の飲料の創造
○世界のソース市場とトレンド
Creating Future Beverages
Different Ways to Get Saucy
R.Wyers………………………………… 26~28, 30~31
D.E.Pszczola ○飲料のためのハイドロコロイドの適用
……………………… 108, 111~112, 114~120
Suspending Drinks
○心臓の健康に良い素材
I.Challen… ………………………………………34~37
Matters of the Heart
○リステリアの脅威の低減
L.M.Ohr Lowering the Listeria Threat
……………………… 123~124, 126, 128, 130
H.R.Hoogenkamp…………………………………41~42
○栄養表示ラベルのためのソフトウエア
○ヘ ルスクレームをサポートするニュートラシュー
Software for Nutrition Labeling チカルテストキット
N.H.Mermelstein……………………… 132, 134~137
Smart Testing Method
○新しくなった大手ブランドのパッケージデザイン
R.Barnhoorn………………………………… 48, 50~52
Food Package Design: The Touchpoint in 2009
○プロバイオティクの効率の強化
A.L.Brody… ……………………………………144~146
Ensuring Probiotic Efficacy International Bottler & Packer(U.K.)
Vol.83 Jun.(2009)
R.A.Matulka and I.Carabin………………………54~57
International Bottler & Packer(U.K.)
Vol.83 May(2009)
○最近のミルク容器の進歩
Milk Packaging Developments
○最近のパレタイザーとデパレタイザー
……………………………………… 28, 30~31
Palletising & Depalletising
The Canmaker(U.K.)Vol.22 Jun.(2009)
…………………… 14, 16~18, 20~22, 24~27
○2009年、世界の金属容器市場
Resilient Business
A.Stupay… ………………………………………65~67
食品と容器
502
2009 VOL. 50 NO. 8
夏と思っていたところ,ある流通業者の話では,
野菜・果物を巡って
現在は夏以外にも流通されているので,真夏にな
る頃には食べ飽きてしまうらしく,以前ほど夏の
消費量は多くないとのことである。何と残念なこ
とであろうか。豊かさとは何なのかと考えさせら
(第八話)
夏には西瓜(すいか)を
れるのである。夏には特に美味しくなる西瓜をそ
の季節に存分に食べてほしいと願うところである。
果実は主に樹木およびこれに類する植物に結実
する実であると定義されているので,西瓜,苺,
メロンなどのような草本科の植物は野菜に分類さ
れることになる。しかし,これらは果物として扱
われるのが一般的で,日本では八百屋でも果物店
でも販売されている。植物学的にはウリ目,ウリ
科に属する。
吉田 企世子
原産地については諸説があるが,熱帯アフリカ
(女子栄養大学名誉教授)
説が強いようである。栽培の起源は古く,エジプ
夏の果物といえば西瓜。これは我が夏の風物詩
トでは4000年も前に始められたという。わが国へ
として郷愁を感じる果物である。その延長で現在
は1570年頃の天正年間に九州に伝来したのが最初
でも西瓜は大好物である。
とされているが明確ではないようである。ポルト
子供時代の夏,食料があまり豊かではなかった
ガル人が安土桃山時代にカボチャと同時に持ち込
頃に大きな葉の陰から姿が垣間見られる西瓜を農
んだという説や,中国(明国の時代)から渡来し
家の畑で見るのはとても嬉しく,魅力的な果物で
たという説などがある。南蛮から渡来したもので
あった。何時頃食べられるのだろうか想像しなが
南瓜(カボチャ),それよりはるかなる西より渡
ら,あぜ道を歩いたものである。夏のおやつは西
来したもので西瓜と名づけられたと記述している
瓜が定番。井戸水に浮かせて冷たくした西瓜を大
書物もある。明治の中期には欧米や中国から多く
きなくし型に切り,お盆にのせて,母親が用意し
の品種が導入され,中でもアイスクリーム,スイ
てくれると兄妹が一斉に廊下に座る。足をぶらぶ
ートサイベリアンなどの品種が日本人の好みに適
らしながら果汁たっぷりの西瓜をほおばり,種を
合し,広く栽培されたようである。これが大和西
ぷいと庭に吹き出す。誰の種が一番遠くに飛ぶか,
瓜のもととなり,昭和になって大和2号が生まれ,
それを競うのがまた楽しいおやつの時間であった。
それが更に改良され,旭大和が生まれたとのこと。
果汁が洋服に垂れてしみをつくることもしばしば
これが現在でも交配の品種として多くの品種に受
であるが,それを気にしながらも食べる方が忙し
け継がれているのである。
く,嬉しい時間であった。その頃の西瓜には当た
現在は品種改良,栽培技術が急速に進歩して,
り外れがあったが,母親がおやつに用意してくれ
沖縄産西瓜や九州のハウス栽培西瓜が春になると
る西瓜は常に美味しかったと記憶している。果皮
一般店頭に並ぶ時代となっている。真冬でも温室
の内側の白色部が厚かったので,その部分を切り
栽培による西瓜が高級品として販売されており,
取り,薄切りにして,塩漬けにするのも母の仕事
こうなると西瓜は庶民の果物というイメージから
であった。これも美味しいおかずの一品となった
はかけ離れた存在である。
のである。現在の西瓜は果皮が薄く白色部が少な
種無し西瓜は昭和17年に木原均先生の研究から
いので,そのような活用はされなくなっている。
生まれたもので,世界的大発見といわれている。
旬という感覚が薄れている今日であるが西瓜は
西瓜の生長点にコルヒチンを作用させると染色体
食品と容器
503
2009 VOL. 50 NO. 8
が倍加して四倍性の品種になることを発見。四倍
やられた西瓜は間違いなく美味しいのだそうであ
性の品種を母として普通の西瓜の二倍性を父とし
る。外観からは判断が困難であろうから特有の嗅
て交配すると三倍性の西瓜が生まれ,この西瓜の
覚を持っているのか。
種を蒔いて種無し西瓜が生まれるということであ
茎についている側(果頂部)と逆側(果底部)
る。
では甘味の強さに差があり,果底部の方が甘いの
ロンドンの店頭で売られている西瓜はラグビー
である。したがって,西瓜を切る場合には縦に切
ボール型の大きな品種と小玉西瓜が一般的であっ
断しないと公平な味にはならない。しかし,それ
た。時には切って売られていることもあるが,こ
以上に果皮側と果肉の中心部との甘味の差が大き
の形式は日本ほど多くはない。日本ではごく一般
いので,この違いはあまり感じられていないよう
的である丸型の大玉西瓜は見られなかった。何度
である。
か求めたが,一度だけ美味しいと感じたのが小玉
西瓜には水分が約90%含まれ,糖分,ミネラル
西瓜であった。
その他の成分はわずか10%の中に含有する程度で
かつて美味しい西瓜を選ぶのにはポンポンと手
ある。糖分の主なものは果糖でこれは甘味が強く,
で叩いて,その音から判断したものであるが,現
砂糖の甘味成分である蔗糖の1.3〜1.7倍の甘味度
在は流通段階で非破壊分析により糖度が測定され,
をもつ。とくに冷蔵して温度が低い場合には甘味
一定の糖度以上のものが選択され流通されるよう
が強くなるのである。したがって,糖分の含量以
である。したがっておおむね味は良好である。
上に甘く感じることになる。含有する栄養素とし
わが国での年間出荷量が最も多いのは熊本県で
て目立つものはないが,赤い果肉にはリコペンが,
あり,次いで千葉,山形,長野,鳥取,茨城県の
黄色の果肉にはカロテンが含まれ,これらは抗酸
順となっている。かつて千葉県で味わった西瓜の
化作用としての機能を有する成分である。水分が
美味しかったこと,また仕事で訪ねた鳥取県で味
多いことは暑い夏の食べ物として大変優れている
わった西瓜の美味しかったことは忘れられない味
ことである。とくに高齢者は意識して西瓜を食べ
となって脳裏に焼きついている。三浦半島でも品
ることを勧めたい。高齢になると喉の渇きをあま
質のよい西瓜が生産されているが,そこの生産者
り感じなくなるので,水分補給が不十分になり,
が嘆いていた話で,カラスは美味しい西瓜を見分
脱水症になることが多いのである。水を飲みたい
けるのが得意なのだそうである。丁度食べ頃なの
と思わないのであれば西瓜から水分を補給するの
で,明朝収穫しようと予定していると翌朝にはす
がよいことである。
でにカラスがついばんでいるとのこと。カラスに
暑中お見舞い申しあげます。さて
踊りの音頭は地域でさまざまで,こども向けの「ドラ
夏といえば夏祭り。特に東北三大
えもん音頭」なども開かれますが,なぜか「炭鉱節」
祭といわれる「青森ねぶた祭:8月
だけは日本全国で使われているように思います。(正)
2日〜8月7日」
「秋田竿灯まつり:
8月3日〜6日」
「仙台七夕まつり:
食 品 と 容 器 第 50 巻 第 8号
8月6日〜8日」は有名です。日程
FOOD & PACKAGING 平成21年8月 1 日発行
をご覧になればお分かりのように,これらの祭りを全部
発行所 缶
見るツアーもたくさん組まれています。
毎年200万〜300万
人の人出があるそうですが,今年は不景気のせいか,
定 価
1部 800円
年間 8,000円
(送 料 共)
予約が少ないそうです。早く景気が回復して,大勢のひ
とが訪れるようになればと願っています。ちなみに,私
はまだこれらの祭りをひとつも見たことはありません。
−禁無断転載−
また,この時期は各地で「盆踊り」「花火大会」も催
されます。私が住む町内でも毎年盆踊りが開催されます。
食品と容器
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十
塚
時
秀
正
夫
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乱丁・落丁本はお取り替えいたします。
2009 VOL. 50 NO. 8