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ワークショップ報告書
日時:2013 年 12 月 8 日(日)
場所:上智大学四ツ谷キャンパス 10 号館 3-321
題目:言語と社会―フランス語圏における社会的自己形成とフランス語との関係から
各発表のタイトル、発表者の名前・所属
1.古谷遊規(上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科地域研究専攻博士前期課
程 1 年)
「セネガルにおけるフランス語の普及‐フランス語は教育言語として相応しいのか‐」
2.中村依莉子(一橋大学大学院言語社会研究科博士前期課程 2 年)
「ルクセンブルクにおける公用語としてのフランス語とその役割」
3.中村
遥(上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科地域研究専攻博士課程後
期 1 年)
「国家のアイデンティテイと言語―アルジェリアにおけるフランス語の地位」
ワークショップ全体の概要(ワークショップの目的、各発表の概要、討論者からのコメン
ト、ワークショップの成果など)
■ワークショップの目的
本ワークショップでは、在外の言語が一定の権力を持っているある社会の中で、社会側
がその言語とどのような関係を構築し、自らの内に位置づけているのかを明らかにするこ
とを目的とした。その事例として、フランス語圏のセネガル、ルクセンブルク、アルジェ
リアを取り上げ、異なる言語状況の背景と、同じ在外言語としてのフランス語に対し、そ
れぞれの社会がどのように働きかけているのかを考察した。
■各発表及びパネルディスカッション
始めに、古谷からセネガルの事例についての発表が行われた。旧フランス植民地領のセ
ネガルでは、フランス語が公用語となっている一方で社会に浸透していないという状況に
ある。古谷の発表では、特に教育に焦点がしぼられ、教育言語としてフランス語を取り込
んでいった歴史的背景と、フランス語が教育言語として使用されている一方で、その普及
率に地域格差があることと他のアフリカ諸語が教育言語として発展しない現状の問題が示
された。
次に、中村(上智)から、同じ旧植民地であったアルジェリアの教育から、フランス語
から見る政府イデオロギーの変容について、政府側の教育改革報告書を基に報告を行った。
アルジェリアでは、フランス語の普及率が高い一方で、国是としてはアラビア語を国の唯
一の言語として掲げていた。しかし、1970 年代後半から文化的脱植民地化の動きに伴い、
アラビア語化政策が国策として行われたが、2000 年代に入り、フランス語の教育にも力を
入れ始めた。そこには、地中海世界に自らを位置づける対外的な要因としてフランス語の
重要性が主張されると同時に、国内のベルベル語の地位上昇に伴うフランス語の地位上昇
という点が指摘された。
最後に、中村(一ツ橋)からは、ルクセンブルクの事例に関する報告が行われた。ルク
センブルク語はドイツ語と近いが、フランス語はドイツ語に続く第二の教育言語として用
いられている。しかしフランス語を習得するのは、エリートに限られるという状況がある。
このように言語として遠いフランス語を自らの公用語として選び取った理由として、第一
次・第二次世界大戦のドイツとのかかわりを論じた。
これらの報告に対し、コメンテーターの亀井先生からは、多言語社会アフリカにおける
言語状況と欧米言語とのかかわりについて、三浦先生からは、フランス本国から見た、文
化的多様性の中の普遍主義の象徴としてのフランス語と、フランスの文化的な防衛として
のフランコフォニーに関するコメントを頂いた。その上で、外在の言語としてのフランス
語に対して、各報告で扱った国々が、インターネット、SNS などの新しい環境、英語に対
してどのような態度をとっているのか、などの質問があった。
■ワークショップのまとめ
研究報告を通して、言語というものがどのような形で社会の諸相と結びつき、問題とし
て浮上するのかという事例比較ができたことは一つの成果として挙げられる。また、今回
は支配言語として機能するフランス語そのものよりも、それに対し各社会がどのような働
きかけをしているのか謂わば社会の自己形成にどのように言語と関わっているのかという
社会の主体性に重点を置いた。そのため、ある地域の「外側」と結びつく外在の言語を地
域社会からの視点で考えるという地域研究と社会言語学を併せた視座と可能性を提供でき
たことが、本ワークショップの意義であったと考えている。
Title
Language and Society: The relationship between French and social problems in
francophonie
Theme(s)
This workshop aims to reveal the problems and issues that occur because of the
external language French among francophone countries. The French has existed as the
authority (official) language in francophone states. In this workshop, we will examine
three cases, Senegal, Luxemburg and Algeria, and also research on how they,
themselves, treat French and construct the relationship with it. Examining these cases,
we objected to reveal how people in these countries had developed relationship with
French to form their society.
Main Arguments
First presentation from Furuya (Sophia University) is about the case of Senegal.
His report revealed the situation of Senegal, where French doesn’t penetrate among
people. The Senegal government introduced French as educational language but it
wasn’t very eager to do so. Furuya indicated that the penetration of French makes
difference in region and also other African languages don’t develop as education
language.
Next presentation of Nakamura (Sophia University) treated Algeria case. Algeria,
where people speak French in the vernacular, admits only Arab as official and national
language and denied use of French. In 1970’s, the government encourage the
Arabisation for achievement of cultural decoloniastion, especially in the field of
education. The government repressed French and Berber, the other language in Algeria.
However the government changed its policy of national education, and it made French
as an important language for being a member of Mediterranean. Furthermore, for
counter against English, the French gets its status of educational language. These
situations may indicate the new attitude to French and more, we can say that these
changes will lead the change of Algerian government.
Luxemburg, which is situated between Germany and France, is the last case of
this workshop. Nakamura (Hitotsubashi University) gave a presentation about its
language politics, especially focus on the time of its nation building. The Luxemburg
resembles with the Deutsch, and in schools, people learn German as the first foreign
language. On the other hand in 19th century Luxemburg adopted French as its official
language which is regarded as elite’s language. Nakamura indicated that the reason for
this choice was to separate from Germany and Nazi during war time.
Results
One of the results of this workshop is to compare problems caused by the language
and coming out to the different aspects in societies. The situation of each presentation
has variety.
This workshop focuses not only on the French itself as an authority language, but
its role as one of parts which constitutes societies, so I called the self-formation of
society in this workshop. The important point is the activity of each society, that is to
say, to consider the language connecting with “external” from the view of communities.
Therefore, to present another new viewpoint that the area study and the social
language study can be referred to as the result of this work shop.