2011第4講:緩和ケアにおける臨床薬理学

2011/12/9
第4講
緩和ケアにおける
臨床薬理学
あさひかわ緩和ケア講座 2011
医療法人社団慈成会東旭川病院
がん専門薬剤師・がん指導薬剤師
里見眞知子
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
エピローグ
ある日の午後‥
モルヒネを使おうと思っている
A医師が家族に
こんな説明をしました。
「病状が進んで、痛みが極めて強くなってきました。普通の痛み止
めで抑えることが出来なくなっています。今の痛み止めに変えて、
いよいよ最後の手段としてモルヒネを始めようと思います。モルヒ
ネを使い出すと、徐々に効かなくなって量がどんどん増えていくこ
とが予想されます。また、途中で止めることは出来ないので、最後
まで使い続けることになります。麻薬中毒になったり、呼吸が弱く
なって、命を縮めることになるかもしれません。眠気が強くでて意
識がなくなっていきますが、痛みがわからなくなるのでその方がご
本人は幸せかもしれません。モルヒネを始めるので今している抗が
ん剤の治療は中断しましょう。強い薬なので、胃がすごく荒れるこ
ともありますし、他にも様々な副作用がありますが、今は痛みをと
るのが最優先なので我慢してもらうしかありません。いろいろと危
険を伴う治療ではありますが、苦しみをとる唯一の方法ですのでど
うかご理解下さい。心配させてもいけないのでご本人には内緒にし
ておきましょう!」
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
A医師:麻薬・・・
「オピオイド=麻薬」ですか?
オピオイドの薬理学・薬剤学
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
1
2011/12/9
Q)覚せい剤や大麻も麻薬である。 Yes:約20%
国民
行政
法律
覚せい剤
大麻
幻覚発現薬
コカイン
医療従事者
医療用麻薬
【広辞苑】
「麻薬は麻酔作用を持ち、常用すると習慣性となって中毒作用を
起こす物質の総称」
麻薬はオピオイドのみならず覚せい剤や大麻までも含む依存性薬
物全体を指す用語として使用されている
医療用麻薬も大変危険な依存性薬物であり、その使用により中毒
になり、さらには廃人になってしまうという誤解
20~50%
麻薬性鎮痛薬
麻薬性鎮咳薬
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
薬は受容体と結合して効果をあらわす
オピオイドはどうして
効くのでしょうか?
受容体は細胞にあって
外界や体内からの刺激(薬も)
を受け取り、情報として
利用できるように変換する
仕組みをもった構造
薬は受容体と結合することで
効果をあらわす
刺激(薬も含む情報伝達物質)=「鍵」
受容体(レセプター)=「鍵穴」
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
オピオイド受容体の種類
表 オピオイド受容体タイプの特徴
では、オピオイド受容体は
どうなっているのでしょうか?
μ受容体
β-エンドルフィン
内因性リガンド エンドモルフィンⅠ
エンドモルフィンⅡ
δ受容体
κ受容体
メチオニン-エンケファリン
ロイシン-エンケファリン
ダイノルフィン
作動薬
モルヒネ,コデイン,ペチジン
フェンタニル、オキシコドン
メチオニン-エンケファリン
ロイシン-エンケファリン
ケトシクラゾシン
生理機能
鎮痛、鎮咳、多幸感、身体
精神依存、徐脈、神経伝達
物質の遊離抑制
鎮痛、情動、身体、精神依
存、神経伝達物質の制御
鎮痛、鎮咳、鎮静、
縮瞳、徐脈、利尿、
嫌悪感
大脳皮質、視床、扁桃核、
青斑核、弧束核、黒質など
大脳皮質、側坐核など
脊髄、線条体、側坐
核、弧束核、視床下
部など
脳内分布
成田 年他:月刊薬事2007.Vol.58.No.11から一部改変
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
2
2011/12/9
上位中枢ならびに脊髄における
モルヒネの鎮痛作用発現機序
痛み
皮膚・骨格系な
ど
:痛覚伝導系
:下行性抑制系
大脳知覚領域
がん組織
青斑核(LC)
視床
炎症
中脳水道周囲灰白質
モルヒネ
脳
PG
モルヒネ
オピオイド
受容体
BK
オピオイド
鎮痛薬
中脳
脊髄
侵害受容器
ミュー受容体
大縫線核(NRM)
モルヒネ
知覚神経
視床
μ受容体
脊髄後角
脊髄後根
神経節(DRG)
後角
癌
組織
κ受容体
PG:プロスタグランジン
BK:ブラジキニン
あさひかわ緩和ケア講座 2011
モルヒネの末梢作用
:2次ニューロン
:オピオイド神経
:GABA神経
:セロトニン神経
モルヒネ
脊髄
あさひかわ緩和ケア講座 2011
モルヒネの代表的薬理作用(1)中枢作用
PGE₂
細胞膜
EP₂
Gs
+
cAMP
μ
Gi
AC:アデニル酸シクラーゼ
P:リン酸
PKA:プロテインキナーゼA
+
AC
鎮痛作用
大量では催眠を起こすが、低用量できわめて選択的に
強度の鎮痛作用を示し、多くの痛みに有効
呼吸抑制作用
脳幹にある呼吸中枢のCO2に対する反応を減弱させ、
呼吸衝動(respiratory drive)を抑制
鎮咳作用
P
K⁺
延髄最後野にある化学受容器引き金帯
(chemoreceptor trigger zone)のドパミンD2受容体
の直接刺激により起こる
縮瞳作用
瞳孔を支配している副交感神経が動眼神経を興奮させ
起こる。耐性はほとんど形成されない
P
モルヒネ
一部は延髄の咳中枢に直接作用し、咳反射を抑制
嘔気/嘔吐作用
PKA
-
侵害受容線維自由終末
あさひかわ緩和ケア講座 2011
モルヒネの代表的薬理作用(2)
2.末梢作用
鎮痛作用:炎症組織におけるPGの発痛増強作用に拮抗
平滑筋への直接作用:腸管、膀胱等の平滑筋緊張亢進
あさひかわ緩和ケア講座 2011
A医師:麻薬中毒
になって・・・
なぜ、がん疼痛治療時においてモル
ヒネの依存性はあまり問題にならな
いのでしょうか?
便秘や腹満、排尿困難
3.痒みを引き起こす作用
肥満細胞からのヒスタミン遊離による
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
3
2011/12/9
炎症性疼痛下における
モルヒネ精神依存不形成のメカニズム
正常および炎症性疼痛時における生体内μおよび
κ神経系の生理的バランスの概念図
通常、生体内においてμとκ神経系は
相互に調節し合い、バランスを保持
痛みがある時
痛みがない時
炎症性疼痛
ダウノルフィン神経
μ
*炎症性疼痛下ではκ神経系が活性化
↓
ダイノルフィンが遊離
↓
ドパミン過剰遊離抑制
*神経障害疼痛下ではミュー受容体低下
↓
ドパミン過剰遊離抑制
κ
μ
κ
側坐核
刺激
側坐 核
非疼痛下でモルヒネ投与
↓
バランス崩れ、依存形成
モルヒネ投与
モルヒネ投与
ドパミン
受容体
κ受容体
κ
μ
μ
κ
ドパミン抑制
ҡ受容体
活性化
ドパミン神経
:ドパミン
:ダウノルフィン
あさひかわ緩和ケア講座 2011
GABA受容体
:GABA
あさひかわ緩和ケア講座 2011
神経障害性疼痛下における
モルヒネ精神依存不形成のメカニズム
A医師:
μ受容体の
機能低下
神経障害性
疼痛
モルヒネが抑制性
GABA介在神経上
に分布のμ受容体
に結合できない!
μ受容体
刺激
抑制性GABA
介在神経
腹側被蓋野
βエンドルフィン
含有神経
腹側被蓋野
GABA受容体
モルヒネが徐々に効かなくなっ
て量がどんどん増えていく?
κ受容体
ドパミン神経
:モルヒネ
:GABA
:βエンドルフィン
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
薬物耐性とは
『薬物を反復投与することにより効果が減弱し、目的の
効果を得るためには次第に投与量を増加しなければな
らなくなっていく現象』
A医師:
1.代謝耐性:チトクロムP450誘導に基づく薬効の減弱
(代表例;フェノバルビタール)
2.組織耐性:受容体の脱共役(結合できなくなる)
受容体の減少(ダウンレギュレーション)
途中で止めることは出来ないの
で、最後まで使い続ける・・・
オピオイド耐性の原因は受容体のリン酸化による構造変
化で細胞表面から受容体がなくなる!
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
4
2011/12/9
オピオイドの薬物動態の特徴
オピオイドの薬物動態の特徴を十分に理解して
いると、いろいろな病態、患者の状態(腎機能
低下時、肝血流量の低下時など)に合わせてオ
ピオイドを使い分けできる。また、剤形が違う
と薬物動態も変わってくる。剤形別にみた特徴
も十分につかんでいるとオピオイドローテー
ション時にも役立つ。
各オピオイドの薬物動態パラメータ
モルヒネ
フェンタニル
オキシコドン
(F:生体内利用率)
徐放錠:20~40%
ネブライザー:5%
経皮吸収:92%
口腔内崩壊錠:50%
速放錠:60~87%
徐放錠:50~87%
バイオアベイラビリティ
蛋白結合率
20~36%
80~86%
45%
分布容積(Vd)
1~6L/kg
3.2~4L/kg
2.6L/kg
クリアランス(CL)
1.2~1.8L/hr/kg
46L/kg
48L/kg
未変化体尿中排泄率
2~12%
10%
半減期
2.2±0.3hr
19%
34.6hr(デュロテップMTパッチ)
5.7±1.1hr
参考文献:DRUGDEX Healthcare Series
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
薬効の個人差
薬物動態学
効果
薬物動態(pharmacokinetics:PC)
• 吸収:absorption→A
• 分布:distribution→D
• 代謝:metabolism→M
• 排泄:excretion→E
分布
静注
吸収
Rx
薬物濃度
経口
直腸
内
薬 効
有害反応
作用
部位
筋注
薬の血中濃度concentration (C)を
規定する因子
ADME(アドメ)
感受性
(pharmacodynamics:PD)
組織
血中
濃度
肝臓
生体内利用率
(バイオアベラビリティ)
代謝
受容体
腎臓
排泄
処方量-効果関係
投与量-効果関係
血中薬物濃度-効果関係
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
くすりの生体内利用率(バイオアベイラビリティ)
薬の吸収
錠剤
経口
静注
皮下
筋注
直腸
舌下
舌下投与
経皮投与
静脈内のみが吸収率100%
食道
経口投与
酵素誘導・阻害
小腸上皮
初回通過効果
胃
肝臓
薬物代謝
酵素
CYP3A4
併用薬
吸着
P-gp
GFJ
作用
部位
分解
不活化
代謝体
GFJ=グレープフルーツジュース,p-gp=P糖蛋白
あさひかわ緩和ケア講座 2011
=薬の受容体
あさひかわ緩和ケア講座 2011
5
2011/12/9
肝初回通過効果を受けるため
生体内利用率が低い代表的薬物
 三・四環系抗うつ薬:トリプタノール、
トフラニール
 コントミン
 ワソラン・ヘルベッサー
 5-FU
 ニトログリセリン
 モルヒネ
 インデラルなどベータブロッカー
生体内利用率の違いで
薬の効果・副作用はどうなる?
わずか
モルヒネ生体内利
モルヒネ生体内利
20%の違い
用率40%のひと
用率20%のひと
が100mgを服用
が100mgを服用
体循環に入り作用部位に
到達する薬の量
2倍の差
20mg
40mg
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
分 布distribution(D)
生体内利用率(F)
 生体内利用率とは経口投与された量に対して循環血中に
入った量の割合
 Fの小さい薬物は吸収が悪いか、肝臓で代謝(初回通過効
果)を受けて消失しやすい
 モルヒネ徐放錠の20~40%に比べてオキシコドンは50~
87%と大きく、血中濃度はモルヒネに比べて安定
 モルヒネの経口剤と注射剤を比較した場合の効力比は1/2
~1/3
 オキシコドンにローテーションの際には経口オキシコドン
は経口モルヒネの約70%の用量
(例:モルヒネ60mg⇔オキシコドン40mg)
1. みかけの分布容積(Vd)で実容積でない
2. 薬物に固有
3. 組織移行性大きい→分布容積は大きい
血液
血中濃度=10mg/L
薬Aを100mg
血液
薬Bを100mg
組織
血中濃度=1mg/L
あさひかわ緩和ケア講座 2011
例:テオフィリンの分布容積は約20L
テオフィリン400mg服用:400mg÷20L
血中濃度約 20mg/L(20μg/mL)
喘息発作で受診
ネオフィリン250mg1A点滴
(テオフィリンとして200mg)
血中濃度200÷20= 10mg/L(10μg/mL)
組織
分布容積
は10L
100÷10
分布容積
は100L
100÷1
あさひかわ緩和ケア講座 2011
分布容積
 分布容積(L)=投与量(mg)÷血中濃度mg/L
 薬物が見かけ上、血中濃度と等しい濃度で均一に分布する
ような体液の容積
 どのオピオイドも大きく、約200Lくらい
 組織中に比べて血液中には非常に少なく、血液透析や一時
的な出血ではほとんど抜けない、また腹水などのサードス
ペースへの体内貯留分はあまり考えなくて良い
テオフィリン血中濃度20+10=30mg/L(30μg/mL)
中毒量!!!
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
6
2011/12/9
蛋白結合率
遊離している薬のみが作用する
蛋白結合率が低いモルヒネの場合
蛋白結合率
フェンタニル
血漿たんぱく
モルヒネ
蛋白結合率が高いフェンタニルの場合
 蛋白に結合していない薬が受容体と結合し効果
 モルヒネやオキシコドンは蛋白結合率が低いので問題
ない
 フェンタニルが80から86%と大きく、低栄養など蛋
白濃度が低くなった時に血液中にフェンタニルが遊離
してフェンタニルの血中濃度が上昇
血漿タンパクの低下
血液中の遊離モルヒネ量は変わらない
血液中の遊離フェンタニルが増える
効き方は変わらない
効きすぎ
あさひかわ緩和ケア講座 2011
半減期
t1/2
あさひかわ緩和ケア講座 2011
腎機能正常な人のモルヒネの半減期 t1/2
 その薬が体の中で満ち足りる(定常状態)のはその薬の
半減期の5倍の時間が経ってから
 その薬が体の中からなくなるのはその薬の半減期の
5倍の時間が経ってから
例)授乳婦がどうしても飲まなくてはならない薬があって
その薬は乳汁に血中濃度の4倍の量が出てしまう。
その薬の半減期が2時間とすると10時間経ったら授乳可
モルヒネ血中濃度
キーワードは半減期の5倍
10
5
0
1
2
3
4
あさひかわ緩和ケア講座 2011
腎機能障害者・高齢者のモルヒネの半減期
時間
あさひかわ緩和ケア講座 2011
腎機能正常な人のモルヒネの排泄
モルヒネ血中濃度
モルヒネ
10
5
半減期t1/2
モルヒネ代謝物M-6G
モルヒネ
5
腎臓からM6Gは排泄
0
1
2
3
4
5
時間
半減期t1/2
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
7
2011/12/9
クリアランス(CL)
腎機能障害者・高齢者のモルヒネ排泄
モルヒネ
モルヒネ+M6G
モルヒネ代謝物M-6G
腎臓からの排泄が低下
 クリアランスとは、どのくらい体から薬を排泄するこ
とができるか(肝での代謝+腎での代謝)
 クリアランスの大きい薬ほど体内から消失速度が大き
い
 どのオピオイドも非常に大きく、肝血流量の変化に対
して影響が大きい
 肝機能低下時、血中濃度上昇
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
AUC(血中濃度下面積)
注意)製剤の違いで体内動態が違う!
モルヒネ血中濃度
最高
血中濃度
到達時間
最高
血中濃度
(ng/mL)
10
0.9±0.1
16.6±3.3
39.6±6.2*1
MSコンチン(10mg12hr毎3回) 30mg
90
2.7±0.8
29.9±13.3
165.5±78.3*2
ピーガード(5日間反復投与)
60mg
120
6.3±4.1
16.5±4.1
487.0±151*3
アンペック(8hr毎1日3回3日)
10mg
20
1.5±0.3
25.8±2.1
120.7± 8.4*4
1回の 効果発現
投与量 時間(約 分)
①
②
③
④
オプソ内用液(1回のみ投与)
⑤
⑥
投与後の経過時間
①
②
③
10mg
血中濃度曲線下
面積(ng・hr/mL)
④
⑤
⑥
*1:AUC0-∞時間
AUC=①+②+③+④+⑤+⑥
*2: AUC 0-12時間
*3:AUC 0-72時間
*4:AUC 0-8時間
各インタビューフォームから
参考:外科手術に耐え得る鎮痛効果は平均65ng/mLを要するとされる。
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
オピオイド製剤の剤形別特徴
投与経路
変換比
吸収開始時間
最高血中濃度到達時
間(hr)
効果持続時間(hr)
処方間隔(hr)
経口
1
10分以内
30分~1
3~5
4時間、ただしレ
スキューでは1時
間
(MSコンチン錠・細粒・MSツワ
イスロンカプセル)
経口
1
1時間
2~4
8~14
12
(カディアン、ピーガード錠)
経口
1
30分~1時間
6~8
24
24
(パシーフカプセル)
経口
1
30分以内
≦1
24
24
直腸内
2/3
20分
1~2
6~10
8
持続静注
1/3
直ちに
12
薬剤名
モルヒネ速放製剤
(モルヒネ錠・末・水・オプソ内服液)
モルヒネ徐放剤
モルヒネ坐薬(アンペック坐剤)
モルヒネ注射薬
オキシコドン速放製剤(オキノーム散)
オキシコドン徐放剤(オキシコンチン)
複方オキシコドン注射液(パビナール)
フェンタニル貼付剤(デュロテップMTパッチ)
持続皮下注
1/3
数分
12
持続硬膜外
1/18
30分
1≦
8~12
-
経口
2/3
15分以内
1~2
3~6
6,ただしレスキューで
は1時間
経口
2/3
10~20分
2~4
8~14
12
持続静注、
皮下注
1.3~2
直ちに
12
8~12
-
経皮
1/100
2時間
17~48
72
72
持続静注
1/100
直ちに
12
8~12
-
フェンタニル注射薬
持続皮下注
1/100
加賀谷 肇:がん疼痛緩和ケアQ&A p70,じほう、2006より引用,一部改変
数分
正しく安全に使うための基本
12
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
8
2011/12/9
痛み(鎮痛薬)
COX阻害(-)
•アセトアミノフェン
COX阻害(+)
•アスピリン
•イブプロフェン
•インドメタシン
•その他NSAIDs
COX2選択性阻害
(+)
•セレコキシブ
+
解熱・鎮痛作用
オピオイド
受容体
-
PGs
BK
Ⅲ
オピオイド鎮痛薬
NSAIDsまたはアセトアミノフェン(カロナール)※
治療戦略
①痛覚刺激伝達の遮断
または抑制
②発痛物質産生の抑制
神経ブロック
•局所麻酔薬
•神経破壊薬
侵害受容器
必要に応じて鎮痛補助薬
抗うつ薬,抗てんかん薬,抗不整脈薬,NMDA受容体拮抗薬,
ステロイド等
内臓痛
-
+
PG:プロスタグランジン
経度から中等度の
痛みに用いる
コデイン
Ⅰ
オピオイド
受容体
炎症
中等度から強度の
痛みに用いる
フェンタニル
モルヒネ
オキシコドン
Ⅱ
•ペンタゾシン
•トラマドール
•ブプレノルフィン
+
抗炎症作用
(COX阻害)
-
WHO方式がん疼痛治療法
オピオイド鎮痛薬
•モルヒネ製剤
•オキシコドン
•フェンタニル
• (コデイン)
BK:ブラジキニン
※日本では現在(2011年7月)がん性疼痛に唯一適応が認められている非オピオイド鎮痛薬
最大投与量は2011年1月,1回1000mg1日4000mg迄と変更された。
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
てんかん
感情障害(うつ病、躁病)
NA神経終末
MAOによる
NA・セロトニンの
不活化を防ぐ
MAO阻害薬
セレギリン(エフピー)
-
α₂受容体
SNRI
ミルナシプラン(トレドミン)
デュロキセチン(サインバルタ)
MAO
複素環系抗うつ薬
治療戦略
-
IP
①ノルアドレナリン再吸収阻害
②選択的セロトニン再吸収阻害
③MAO阻害
IP₃
IP₂
MAO:モノアミン酸化酵素
興奮性
Na⁺チャネル
NA:ノルアドレナリン
抑制性
Cl⁻チャネル
バルビタール酸
結合部位
5­HT:セロトニン
SSRI:選択的セロトニン再吸収阻害薬
+
-
:刺激
:抑制
Ca²⁺
BZD結合部位
+
+
不活化遅延
PIP₂
後シナプス神経
アミトリプチリン(トリプタノール)
アモキサピン(アモキサン)
ミアンセリン(テトラミド)
①電位作動性Na⁺チャネルの抑制
②抑制性GABA作動性神経刺激↑
③興奮性Ca²⁺チャネルの抑制
GABA
結合部位
Na⁺
NA
α₁受容体
治療戦略
バルプロ酸
Cl⁻
SSRI
フルボキサミン(デプロメール)
パロキセチン(パキシル)
セルトラリン(ジェイゾロフト)
NA
-
?
-
5‐HT
-
NA再吸収ポンプ
GABA
分解酵素
抑制性
GABA神経
抑制性5­HT 神経
-
-
フェノバルビタール
フェニトイン
カルバマゼピン
バルプロ酸?
ジアゼパム
クロナゼパム
脳神経細胞
?=臨床的意義が不明である作用
興奮性T型
Ca²⁺チャ
ネル
-
バルプロ酸
エトスクシミド
BZD:ベンゾジアゼピン
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
炎症(副腎皮質ステロイド)
不整脈
内因性カテコールアミン
+
電気的除細動
Na⁺チャネル阻害薬(Ⅰ群)
ⅠA:キニジン、ジソピラミド
ⅠB:リドカイン、メキシレチン
ⅠC:フレカイニド
+
1相
Β遮断薬(Ⅱ群)
プロプラノロール
アテノロール 等
活動電位
治療戦略
①不整脈誘発要因除去
②Na⁺チャネル阻害
③β受容体遮断
④K⁺チャネル阻害
⑤Ca²⁺チャネル阻害
(mV)
0
-80
2相
0相
電解質異常
低酸素血症
心不全
心筋刺激薬
ACTH
-
多チャネル阻害薬(Ⅲ群)
アミオダロン
ソタロール
4相
Ca²⁺
抗炎症効果
弱
負の
フィードバック
憎悪因子
強
副腎皮質
鉱質ステロイド作用
半減期
ヒドロコルチゾン 短
プレドニゾロン
メチルプレドニゾロン
トリアムシノロン
デキサメタゾン
ベタメタゾン
長
アルドステロン
Na⁺再吸収↑
浮腫
高血圧
K保持↓
抑制
3相
Na⁺
ACTH
分泌抑制
-
-
糖質ステロイド作用
脳
-
Β₁受容体刺激
頻脈
興奮性増加
Ca²⁺チャネル阻害薬(Ⅳ群)
ベラパミル
ジルチアゼム
Na⁺ K⁺
受容体
蛋白
コルチゾール
ホスホリパーゼA₂
阻害
クッシング症候群
糖利用↓
蛋白異化↑
脂肪異化↑
骨吸収↑
組織修復反応↓
中枢機能↑↓
眼圧↑
炎症
特異的
蛋白合成
抗炎症作用
細胞外
心筋細胞膜
免疫抑制作用
細胞内
あさひかわ緩和ケア講座 2011
易感染性
血液凝固能
糖尿病
糖尿病
成長遅延
成長遅延
骨粗鬆症
消化性潰瘍
消化性潰瘍
躁・うつ状態
躁・うつ状態
緑内障
白内障
白内障
血液凝固能
腎臓
あさひかわ緩和ケア講座 2011
9
2011/12/9
炎症~ステロイドの種類と作用の比較
一般名
商品名
コートリル®サクシ
抗炎症作用
生理的一日
分泌相当量
(mg)
鉱質ステロイ
ド作用
20
1
8~12
コートン®
8
25
0.8
8~12
プレドニン®
4
5
0.3
18~36
メチルプレドニゾロン
メドロール®
5
4
0
18~36
トリアムシノロンアセトニド
ケナコルト-A®
5
4
0
18~36
コルチゾン酢酸エステル
プレドニゾロン
ゾン®
一般名
生理学的
半減期
(時間)
1
ヒドロコルチゾン
剤形別オピオイド製剤一覧
剤形
モルヒネ塩酸塩
経口製剤
モルヒネ硫酸塩
デキサメサゾン
デカドロン®
30
0.75
0
36~54
ベタメタゾン
リンデロン®
35
0.6
0
36~54
オキシコドン
坐剤
モルヒネ塩酸塩
貼付製剤
フェンタニル
キャンディタイプ
フェンタニル
性状
商品名(会社名)
規格
速効性
モルヒネ塩酸塩錠(大日本住友)
10mg
速効性
モルヒネ塩酸塩末(第一三共、武田、シオノギ)
現末
速効性
オプソ内服液(大日本住友)
持続性
パシーフカプセル(武田)
30mg、60mg、120mg
持続性
MSコンチン錠(シオノギ)
10mg、30mg、60mg
持続性
MSツワイスロンカプセル(日本化薬)
10mg、30mg、60mg
持続性
モルペス細粒(藤本)
10mg、30mg
持続性
カディアンカプセル(大日本住友)
20mg、30mg、60mg
持続性
カディアンスティック(大日本住友)
30mg、60mg、120mg
持続性
ピーガード錠(田辺三菱)
5mg/2.5mL、10mg/5mL
20mg、30mg、60mg、120mg
持続性
オキシコンチン錠(シオノギ)
5mg、10mg、20mg、40mg
速効性
オキノーム散(シオノギ)
2.5mg、5mg
持続性
アンペック坐剤(大日本住友)
10mg、20mg、30mg
持続性
デュロテップMTパッチ(ヤンセン)
2.1mg,4.2mg,8.4mg,12.6mg,16.8mg
持続性
フェントステープ(協和キリン、久光)
1mg,2mg,4mg,8mg,12mg
速効性
モルヒネ塩酸塩
アクレフ(田辺三菱)
200μg、400μg
モルヒネ塩酸塩注(シオノギ、武田、田辺三菱)
アンペック注(大日本住友)
10mg・1mL、50mg/5mL
200mg/5mL
注射製剤
フェンタニル
プレペノン注(テルモ):プレフィルド製剤
10mg/1mL、50mg/5mL。200mg/5mL
フェンタニル注(第一三共、ヤンセン)
0.1mg・2mL、0.25mg/5mL
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
患者の経済的要件からみた選択
患者情報による剤形の選択
基本的な投与ルートは経口
経口摂取不能で点滴ライン→注射剤、貼付剤、
坐薬
販売名
規格
薬価(¥)
1日薬価
1か月のコスト
オキシコンチン錠
20mg
523.00
40mg/日
等鎮痛用量
分2
1046.00
31380円
MSコンチン錠
30mg
725.10
60mg/日
分2
1450.02
43506円
ピーガード錠
60mg
1386.70
60mg/日
分1
1386.70
41601円
カーディアンスティック
60mg
1450.60
60mg/日
分1
1450.60
43524円
パシーフカプセル
60mg
1483.10
60mg/日
分1
1483.10
44493円
MSツワイスロンカプセル
30mg
567.90
60mg/日
分2
1165.40
34962円
モルペス顆粒
6%1g
1129.00
6%1包
(0.5g)×2
分2
1129.00
33870円
デュロテップMTパッチ
4.2mg
3467.80
4.2mg/3日
3467.80
34678円
フェントステープ
2mg
2mg/日
*添付文書上ではモルヒネ:デュロテップMTパッチ=1:150であるがこの表では1:100として計算
あさひかわ緩和ケア講座 2011
*薬価;2010度新薬価で計算
あさひかわ緩和ケア講座 2011
オピオイド開始時
NSAIDsを中止してはいけない理由
A医師:今の痛み
止めに変えて
NSAIDsをオピオイド開始時に中
止してはいけないのはなぜですか?
あさひかわ緩和ケア講座 2011
 オピオイドにはないNSAIDsのがん疼痛鎮痛メカニズム
『進行がんが周囲組織に浸潤しその細胞膜から遊離した
アラキドン酸にシクロオキシゲナーゼ(酵素)が働き、
プロスタグランジン(PG;痛覚過敏形成)が発生
NSAIDsはシクロオキシゲナーゼの働きを阻害』
 NSAIDs中止により疼痛悪化しオピオイドを急速増量す
るとオピオイドの副作用対策が必要
 NSAIDsによる腎血流量の低下、消化管障害に注意
あさひかわ緩和ケア講座 2011
10
2011/12/9
テキスト疾患編P7
癌発生メカニズムとNSAIDsの鎮痛作用点
細胞膜
リン脂質
ブラジキニン、H⁺等の発熱物
質による受容器刺激
PGによる受容器の
過敏化(感化)
NSAIDs
末梢性作用
:COX阻害作用に
よる過敏化抑制
大脳皮質
視床
刺激インパルス発生
腫瘍周囲
炎症
ステロイド
ホスホリパーゼA2(PLA2)
アラキドン酸
シクロオキシゲナーゼ
後策
NSAIDs
(COX-1,COX-2)
2次ニューロン線
維
後角
癌組織
NSAIDs
中枢性作用
:モルヒネ鎮痛作用
を増強
:鎮痛耐性を抑制
プロスタグランジン(PG)G2
痛覚繊維
(1次知覚線維)
PGH2
前角
1次ニューロン細
胞体
PGEs
前策
受容体への直接刺激
または痛覚刺激への浸潤
PGE2
脊髄
:発痛物質(ブラジキニン、H⁺等)
:侵害受容器(痛覚神経終末)
:疼痛関連PG(プロスタグランジン):PGE₂、PGI₂
:シナプス構造 あさひかわ緩和ケア講座
PGA2
PGF2α
血管拡張
発熱、発赤
炎症性疼痛
胃粘膜保護
PGIs
TXs
PGAs
トロンボキサンA2
PGI2
血小板凝集
痛覚刺激
血管拡張
腎血流維持
抗血栓作用
あさひかわ緩和ケア講座 2011
2011
COX-2阻害薬:COX-2を選択的に阻害するため、
消化管、血小板に対する副作用を減らすことができる。
アラキドン酸
COX-1
COX-2
構成酵素:ほとんどの細胞に常
に発現
誘導酵素:主に炎症部位の細
胞に発現
非選択的NSAID
COX-2阻害薬
COX-2を阻害し、
COX-1に影響しない
両方を非選択的に阻害する
プロスタグランジン
胃粘膜保護
血小板凝集
腎機能維持
プロスタグランジン
炎症、発痛、浮腫
炎症反応に関与?
腫瘍の血管新生阻害作用あり?→エビデンスが弱
い→判定保留
国内で使用可能なCOX-2阻害薬:選択性強い順
セレコキシブ(セレコックス)>メロキシカム
(モービック)>エトドラク(ハイペン)
消化性潰瘍リスクは低いが、腎障害リスクについ
ては未確定
血栓形成、心毒性など未知の面あり
生体保護に関与?
横田敏勝:臨床医のための痛みのメカニズム 改訂第2版. 東京, 南江堂, 71-90, 1997より作図
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
消化性潰瘍治療薬
消化性潰瘍の治療戦略
粘膜保護剤
スクラルファート
治療戦略
H⁺
H⁺
①
胃酸の中和
②
胃酸分泌刺激の遮断 H2受容体拮抗薬;ファモチジンほか
抗コリン薬;ピレンゼピン
③
④
⑤
胃酸産生の抑制
制酸剤
マーロックス®
アルミゲル
H⁺
代表的薬剤
制酸剤;マーロックス®
プロトンポンプ阻害薬;ランソプラゾール
(タケプロン®)
胃粘膜損傷部の保護 粘膜保護剤;スクラルファート
プロスタグランジン誘導体;ミソプロストー
ル(サイトテック®)
粘膜傷害因子の除去 ピロリ菌の除去療法;タケプロン®+クラリ
スロマイシン+アモキシシリン
ピロリ菌除菌
タケプロン® +
アモキシシリン+
クラリスロマイシン
H⁺
H⁺
H⁺
H⁺
粘液分泌
粘液バリア
重炭酸イオン
粘膜筋板
アセチルコリン
ヒスタミン
H⁺逆拡散
+
壁細胞
H⁺
H⁺
H⁺ポンプ
-
腹痛
ムスカリン
受容体
H₂ヒスタミ
ン受容体
-
プロスタグランジン製剤
ミソプロストール
プロトンポンプ阻害薬
タケプロン®
オメプラゾール
あさひかわ緩和ケア講座 2011
H⁺
ピロリ菌
H₂受容体遮断薬
シメチジン
ファモチジン
-
抗コリン薬
プロパンテリン
選択的抗ムスカリン薬
ピレンゼピン
あさひかわ緩和ケア講座 2011
11
2011/12/9
モルヒネの主な薬理作用の
50%有効用量の比較
A医師 :呼吸が弱くなっ
て命を縮める?眠気が強く
出て意識がなくなる?
死亡
0.1
0.02
0.0
拒薬
便秘
3.4
カタトニー(緊張病)
2.6
1.0
1.0
鎮痛
患者QOL低下、満足度低下
10.4
行動抑制(眠気)
オピオイドの副作用
357.50
嘔気
嘔吐
注)上記の50%有用用量は、
研究施設、実験動物の種類、飼
育飼料などによって変化するこ
ともあるので、絶対的ではない
ということを著者らは断ってい
る。
1000.0
呼吸抑制
オピオイド製剤で注意すべき副作用と
その対策・対応
便秘、嘔気・嘔吐といった副作
用は、鎮痛用量よりも低用量で
発現する。
一方、行動抑制(眠気)、呼吸
抑制などは鎮痛用量よりも高用
量で発現することがわかる。
(鈴木勉、武田文和:オピオイド治療-課題と新潮流.鎮痛薬・オピオイドペプチド研究会編.25‐34.エルゼピア・サイエンスミクス.
2000.一部改変)
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
代表的オピオイドと副作用
剤形
オピオイドによる便秘
モルヒネ
オキシコドン
フェンタニル
原末・内服液剤・錠剤
徐放製剤・注射剤
徐放錠・散剤
注射剤
貼付剤
注射剤
代謝臓器
肝
肝
肝
活性代謝物
M-6-G
oxymorphone
(-)
腎障害の影響
+++
(-)
(-)
嘔気・嘔吐
++
+~++
+
めまい
++
+
+
便秘
+++
+++
±
眠気
++
+~++
±
掻痒感
+
±
+(局所)
• 肛門括約筋の収縮力増強作用
• 腸管の輪状筋を収縮させて腸運動低下作用
• 経口投与では中枢μ2受容体と腸管のμ2受容体への
直接作用で静注、皮下注に比し強い便秘
• 静注や皮下注で中枢のμ2受容体を介して便秘
• フェンタニルはμ1受容体に選択性が高いので便秘は
軽度、高用量で便秘
• モルヒネ、オキシコドンからフェンタニルにオピオイ
ドローテーション時の下剤用量に注意
(的場元弘ほか:ターミナルケア、13(1):11, 2003 一部改変)
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
便秘・下痢
止痢薬
蠕動抑制
便秘の治療戦略
蠕動亢進
オピオイド受容体刺激薬
腸運動促進薬
モルヒネ
コデイン
ロプラミド(ロペミン)
メトクロプラミド(プリンペラン)
ドンペリドン(ナウゼリン)
①
膨張性下剤 ①
CMC-Na(バルコーゼ)
浸透性下剤②
②
便秘誘発
抗コリン作用
抗コリン薬
3・4環系抗うつ薬
ジソピラミド(リスモダン)
セロトニン5HT3拮抗薬
グラニセトロン(カイトリル)
オンダンセトロン(ゾフラン)
パロノセトロン(アロキシ注)
その他
コレスチラミン
リチウム
ラクツロース
刺激性下剤
浣腸
直腸刺激薬
グリセリン
③
センナ、センノシド
ピコスルファートNa(ラキソベロン)
ピサコジル(テレミンソフト坐)
③
治療戦略
腸管内容積の
増加
代表的薬剤
食事療法;植物繊維の多い食事
膨張性下剤;CMC-Na(バルコーゼ
®)
腸内浸透圧増加 浸透圧下剤;ラクツロース(適応外)
塩類緩下剤;酸化Mg(マグミット
®)
腸管蠕動直接
刺激性下剤;センノシド
刺激
下剤
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
12
2011/12/9
便秘対策薬剤
目的
分類
一般名
酸化マグネシウム
塩類下剤
1~3g(2~3回)
1~3g(2~3回)
水酸化マグネシウム
ミルマグ
3~6錠(2~3回)
カルメロールナトリウム
バルコーゼ
1.5~6g(2~3回)
糖類
ラクツロース
モニラック
カロリールゼリー
10~60mL(2~3回)1
~3個
センナエキス
アローゼン
1~3g(2~3回)
センノシド
プルゼニド
1~4錠(眠前/起床時と眠
前)
大黄末
大黄末
0.3~0.5g/回
ピコスルファートNa
ラキソベロン
(1錠=5滴)
5~30滴/2~6錠
(1日2~3回)
ピサコジル
テレミンソフト
1日1~2回(頓用)
新レシカルボン
1日1~2回(頓用)
大腸刺激性下剤
大腸刺激性下剤
排便刺激
用法・用量
カマ
膨張性下剤
硬さの調節
大腸の蠕動刺激
商品名
マグミット
複合剤
消化管全体の
蠕動刺激
セロトニン受容体刺激
モサプリド
ガスモチン
3~6錠(1日2~4回)
PGE1誘導体
ミソプロストール
サイトテック
4錠(1日4回)
どうしても出ない
塩類下剤
クエン酸Mg
マグコロールP
50g(頓用)
今朝お通じがありましたか?
午前中に下剤を
追加してください
これからは
下剤を朝と
寝る前に飲
んで下さい
寝る前までに
お通じがありましたか
今まで通り
下剤をのん
で下さい
便は普通の硬さでしたか
寝る前に下剤をさら
に増やして下さい
硬くて排便の
時痛みが
あった
下痢では
ないが軟
便だった
今晩から下
剤を増やして
下さい
今晩から下
剤を減らして
下さい
下痢になり
トイレに何
回か行った
今日は下剤を
飲まないで明
日から下剤を
減らして下さい
国立がんセンター中央病院薬剤部作成図を一部改変
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
下剤の換算値
オピオイドによる嘔気・嘔吐
一般名
商品名
ピコスルファート錠
(1錠5滴相当)
センノシド12mg
プルゼニド
フォルセニッド
チネラック
ソルダナ
リタセンド
セネバクール
ソルドールE
フォルセニッド
ラキソロン
センナル
センナリド
センノサイド
センノシド12mg
2T ≒ 3T
ピコスルファート液
(1本10mL150滴)
2T ≒ 15滴
(1mL)
 主に化学受容器引き金帯(CTZ)を介して嘔吐
中枢を刺激することで起こる。
 体動時の嘔気・嘔吐は前庭神経・前庭神経核
への作用。めまい・ふらつきを伴う。
 便秘が二次的に嘔気・嘔吐の原因となりうる。
 投与開始から2週間程度で耐性形成
センノシド
7.2mg
プルノサイド
セナン
1T
≒
1T
2T ≒ 15滴
(1mL)
センナエキス80
ヨーデル80mg
1T
≒ 3T
1T ≒ 15滴
(1mL)
 頻度
経口モルヒネ:30~50%
デュロテップMTパッチ:30~40%
オキシコンチン:40%以下
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
嘔気・嘔吐の対策薬の薬剤
嘔気・嘔吐
モルヒネ
乗り物
酔い
感情の動き
内耳 ②
前庭器
一般名
商品名
プロクロルペラジン ①
ノバミン
メトクロプラミド ①⑤
プリンペラン
ex)暗示・連想・情動
大脳
大脳皮質
モルヒネ
胃内容物停留
→胃内圧の上昇
胃
5‐HT産生
→5‐HT₃受容体刺激
小腸
モルヒネ
便秘
①
③
求心性神経
1回投与量
注
第四脳室
CTZ ①
ドンペリドン
①⑤
ナウゼリン
クロルプロマジン ①
コントミン
ハロペリドール①
セレネース
延髄
遠心性神経
嘔吐
治療戦略①CTZのドパミン受容体遮断:ノバミン
②ヒスタミン受容体遮断:トラベルミン、ドラマミン
③CTZおよび腸管5-HT3受容体遮断:カイトリル他
④機序不明:ステロイド(デカドロン)
⑤胃内容排出促進:プリンペラン、ナウゼリン
⑥便秘対策
あさひかわ緩和ケア講座 2011
投与間隔
5~10mg
錠・細・DS
5~10mg
持続
持続
8~12時間
坐剤
60mg
錠・散
5~12.5mg
注
10~50mg
持続
錠・顆粒
0.75mg
12~24時間
錠
錐体路
弱
少
まれ
まれ
まれ
まれ
強
少
強
高
コメント
第1選択薬 中枢作用
用法上は筋注
8~12時間
注
注
鎮静
8時間
5mg
錠・散・液
モルヒネ
求心性神経
剤形
錠・散
2.5~5mg
1錠
効果が弱い
(中枢移行が少ない
+消化管運動亢進)
8~24時間
持続
鎮静に注意する
アカシジアなど
の副作用あり
第2選択薬
8時間
ジフェンヒドラミン
ジプロフィリン②
トラベルミン
注
1A
頓用
なし
なし
ジメンヒドリナート②
ドラマミン
錠
50mg
6~8時間
ペロスピロン塩酸塩①
ルーラン
錠
4mg
8時間
弱
小
フマル酸クエチアピン①
セロクエル
錠
25mg
8時間
弱
小
前庭障害、めまい、体動
時の嘔気・嘔吐
高血糖に注意
あさひかわ緩和ケア講座 2011
13
2011/12/9
統合失調症治療薬の作用と副作用
•口渇
•排尿困難
•便秘
•視力調節障害
αアドレナリン受容体
遮断作用
ムスカリン受容体
遮断作用
5­HT受容体
遮断作用
-
-
-
抗精神病薬
•起立性低血圧
-
ヒスタミン受容体
遮断作用
•ハロペリドール(セレネース)
•クロルプロマジン(コントミン)
•プロクロルペラジン(ノバミン)
D₂受容体
遮断作用
•鎮静作用
錐体外路症状
•パーキンソン病
•ジストニア
•ジスキネジア
•アカシジア
•遅発性ジスキネジア
-
-
-
オピオイドによる眠気
受容体遮断作用
非定型抗精神薬
•クロザピン
ドパミンD₂
受容体
抗精神病作用
鎮静作用
中脳辺縁系
•顆粒球減少症
内分泌障害
•抗プロラクチン血症
•女性化乳房
•月経障害
•体重増加
(1)機序
 オピオイドによる中枢抑制作用により、催眠作用が生じ
る
(2)時期
 オピオイド開始後数日間、急激なオピオイドの増量
(3)オピオイド以外の原因
 脳転移、高Ca血症、感染症、水腎症
(4)対策
 通常は1週間程度で耐性形成
 腎機能低下の場合はモルヒネの減量やローテーション
視床下部・下垂体系
黒質・線条体系
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
オピオイドによるせん妄
オピオイドによるせん妄
軽度から中等度の意識障害(よく診ないと捉え難い)に、錯覚や幻覚、
精神運動興奮、または活動性の低下を伴い、一日のうちで変動するもの
→せん妄
対
対応
① オピオイドの減量
② オピオイドローテーション
③ リスペリドンの定期投与
(0.5mg~1X就寝前、適応外に注意)
④ 規則正しい生活リズムの確保
⑤ 不安・心配事を減らす
モルヒネによるせん妄出現率は投与初期約2%
(高齢者、全身衰弱患者)
原因
腎機能低下によりモルヒネ活性代謝物M-6-G蓄積
※高Ca血症、感染、環境要因など
せん妄の他の原因を除外すること
(すぐにオピオイドのせいにしない)
あさひかわ緩和ケア講座 2011
オピオイドによる呼吸抑制
モルヒネは直接脳幹の呼吸中枢に作用しCO2
の蓄積に対する呼吸反応を抑制
がん患者:鎮痛効果を確認しながらモルヒネ増量
あさひかわ緩和ケア講座 2011
オピオイドによるその他の副作用
排尿障害
尿管平滑筋緊張収縮、膀胱括約筋緊張亢進による
症状:排尿障害、尿閉
対応:排尿筋収縮力↑:ベサコリン、ウブレチド
膀胱出口の圧↓:αブロッカー
かゆみ
重症の呼吸抑制は生じない
肥満細胞刺激によるヒスタミン遊離
病状変化や過量投与対応:ナロキソン静注
対応:抗ヒスタミン薬の投与
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
14
2011/12/9
症例A:男性 肝臓がん 70歳 50kg
疼痛残存、日中傾眠、反応鈍い
 処方
MSコンチン40mg2× 8時20時
マグミット330mg3T3×
疼痛時 オプソ5mg 1包 1×
 血液・生化学検査結果
白血球4500 赤血球400万 血小板16万
アルブミン(g/dL)3.0
血清クレアチニンmg/dL 1.28
Ca(mg/dL)8.5
NH3(μg/dL)50
オピオイド製剤使用時に
注意すべき患者
症例Aの眠気の原因は何?処方変更は?
あさひかわ緩和ケア講座 2011
腎障害によって鎮痛効果・副作用に
影響をうけるオピオイドについて
Ccrは蓄尿しなければわからない?
• Cockcroft&Gaultの式による概算
男性:(140-年齢)×体重/72×sCr
女性:(男性の式)×0.85
N
CH₃
Q)腎障害患者には十分注意が必要なオピオイドは?
H
A)モルヒネ
あさひかわ緩和ケア講座 2011
H
N
理由)モルヒネは肝臓で代謝
M-3-G:鎮痛作用なし
M-6-G:モルヒネより強い鎮痛作用
O
Glu-O
H
H
H
OH
モルヒネ­3­グルクロニド
(M­3­G)
H
H
H OH
CH₃
N
O
HO
両者とも腎臓から排泄
CH₃
H
モルヒネ
H
O-Glu
O
HO
H H
モルヒネ­6­グルクロニド
(M­6­G)
例 85歳女性体重40kg sCr1.0mg/dL(Jaffe法)
Ccr=[(140-85)×40/72×1.0]×0.85
=約26mL/min
注意!
Cockcroft法のsCr値はJaffe法による測定値であり、
日本ではほとんどの施設で酵素法で測定。
Jaffe法sCr値=酵素法sCr値+0.2
参考文献
1)Ando Y, Br J Cancer,1997;75:1067-71
2)プラチナ製剤の臨床薬理;第7回日本臨床腫瘍学会教育セミナー
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
薬効の出現
健常人と腎不全患者におけるモルヒネ
M-3-GおよびM-6-Gの血中濃度推移
腎不全患者
(nmol/L)
代謝物
60mg
1000
1000
モルヒネ3グルクロニド(M3G)
40mgが体に
いきわたる
心臓
代謝
モルヒネ6グルクロニド(M6G)
モルヒネ血中濃度
分布
健常人
(nmol/L)
経口モルヒネ100mgを
生体内利用率40%の
腎機能正常患者が服用
モルヒネ100mg
モルヒネ
100
肝臓
100
血中濃度
血中濃度
モルヒネ6グルクロニド(M6G)
胃
吸収
100mg
投与後の経過時間
100mg
溶出
モルヒネ3グルクロニド(M3G)
崩壊
小腸
モルヒネ
1
0 2 4 6 8 1012
時間(hr)
24
1
0 2 4 6 8 1012
24
時間(hr)
あさひかわ緩和ケア講座 2011
少しだけ糞便中に排泄
ほとんどが尿中排泄されどんどん体からなくなる
あさひかわ緩和ケア講座 2011
15
2011/12/9
心臓
オキシコドン
崩壊
小腸
H₃CO
O H
O
CH₃
ノルオキシコドン
CH₃
H
N
溶出
OH
CYP3A4
H
約20%が
腎臓から排泄
↓
健康成人と比較
腎障害者で約1.6倍の
AUC
↓
腎障害者、高齢者に
は少量から投与
胃
吸収
100mg
H
約80%が肝臓で代謝
O
オキシコドン
H
↓
O H
ノルオキシコドン H₃CO
O
(鎮痛活性なし)
オキシコドン
N
投与後の経過時間
肝臓
CH₃
H
代謝
HN
40mgが体に
いきわたる
オキシコドンの代謝経路
N
分布
カプセル
錠剤
代謝物
60mg
モルヒネを腎機能障害
患者や高齢者が服用
血中薬物濃度
せん妄
など
副作用
増強
モルヒネ100mg
生体内利用率
40%
CYP2D6
OH
O
H
H
O
・gluuronide
O H
H
O
オキシモルフォングルクロニド
オキシモルフォン
図
O
HO
O
オキシコドンの代謝経路
M-6Gが尿中排泄できず体の中にどんどんたまる
少しだけ糞便中に排泄
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
健常人と腎障害患者における
オキシコドンの血中濃度推移
フェンタニルにおける腎障害時の体内動態
フェンタニル
(ng/mL)
フェンタニル
40
O
N
H₃C
血漿中オキシコドン濃度
約90%が肝臓で代謝
健康成人(n=13)
30
N
腎機能障害者(n=12)
フェンタニル
↓
ノルフェンタニル(活性なし)
20
CYP3A4
ノルフェンタニル
O
10
NH
H₃C
N
約10%が腎臓から
未変化体で排泄
0
0
6
12
18
24
30
36
42
48
時間(hr)
オキシコンチン®錠インタビューフォーム
図
フェンタニルの代謝経路
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
オキシコドン徐放錠単回投与による血中濃度
肝機能障害患者のオピオイド鎮痛薬の
使い方で注意は?
肝血流量が低下
半減期の延長とクリアランスが低下
血漿中オキシコドン濃度
モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルは
肝血流量依存性薬物
30
肝障害者(n=12)
健康成人(n=12)
25
mean±S.D
半減期
(hr)
最高血中濃度
(ng/mL)
AUC
(hr・ng/mL)
肝機能障害者
7.7±2.3
24.8±9.0
378.5±174.4
健康成人
5.4±2.3
16.9±4.7
195.5±74.2
20
15
10
5
経口投与の場合、初回通過効果減弱でFが増大
0
0
血中濃度上昇
6
12
18
24
30
36
42
48
時間(hr)
オキシコンチン®錠インタビューフォーム
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
16
2011/12/9
症例Aの眠気の原因と処方変更
案
• Cockcroft & Gault式から推定クレアチニンクリアラ
ンスを求める
• (140-70歳)×50kg
72×(1.28+0.2)
=32.8mL/min.
*腎機能障害あり→モルヒネ代謝物M-6G体内蓄積の可
能性大→傾眠、反応鈍い
*高Ca血症の可能性は? 血清Caを補正すると
8.5-3.0+4=9.5mg/dL 高Ca血症はなし
*肝性脳症の可能性は?
アンモニアは正常値
Take Home Message!
 くすり(オピオイド鎮痛薬)は、受容体と結合
してはじめて効果や副作用をあらわすことがで
きる
 くすり(オピオイド鎮痛薬)の効果や副作用に
は個人差がある
 上記の2点を踏まえて、患者のQOLを高めるく
すり(オピオイド鎮痛薬)の使い方は医療者の
責務である
MSコンチンをオキシコンチンまたはMTパッチへ変更
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
麻薬の管理
Q1)麻薬の保管は鍵をかけた堅固な専用金庫で行うことと
されていますが、坐薬が溶ける恐れがある場合、薬剤保管
庫室内の冷蔵庫に保管してよいですか。
A1)麻薬の保管は、麻薬及び向精神薬取締法34条におい
て、その業務所内で鍵をかけた堅固な設備内に貯蔵して行
うことと規定されており、設問のような冷蔵庫は鍵をかけ
た堅固な設備とはいえません。したがって、設問のような
ケースでは坐薬が溶けないように麻薬保管庫の場所を変更
するか、設置している場所の室内温度を管理できるよう改
善するなどの方法をとって下さい。
麻薬の管理 Q&A
あさひかわ緩和ケア講座 2011
麻薬の管理
Q&A(1)
Q&A(2)
Q2)入院中の患者に処方された麻薬は誰が保管・管理する
のですか。
A2)入院患者自身が服薬管理できる状況であれば、患者
に必要最小限の麻薬を保管させることは差し支えありませ
ん。患者自身が麻薬を保管する際には、看護師詰所等で保
管する場合のような麻薬保管庫等の設備は必要ありませ
が、紛失等十分注意するように指導してください。また、
病状等からみて患者が服薬管理できないと認めるときは、
麻薬管理者は、交付した麻薬を病棟看護師詰所等で保管・
管理するようにして下さい。看護師は施用の状況を把握す
るため患者に確認するなどして、施用毎に診療録へ記録す
る必要があります。
あさひかわ緩和ケア講座 2011
あさひかわ緩和ケア講座 2011
麻薬の管理
Q&A(3)
Q3)麻薬診療施設でない病院に入院している患者が他院
で交付を受けた麻薬を服用する場合、病院内におい
ては誰が保管・管理したらよいのですか。
A3)患者本人若しくは患者の看護に当たる職員または患
者の家族等が保管・管理してください。
あさひかわ緩和ケア講座 2011
17
2011/12/9
麻薬の管理
麻薬の管理
Q&A(4)
Q4)麻薬診療施設でない介護老人施設(介護保険法に
規定)に入所する者が、他の医療機関において処
方された麻薬を持ち込む場合、認知症などの理由
で自ら麻薬を服用管理できない時は、施設側で麻
薬を管理しても差し支えありませんか。
A4)患者自身が麻薬を管理できない状況にあるとき
は、施設 内において患者の看護に当たる看護師
やヘルパーが、患者等の意を受けて麻薬を保管・
管理しても差し支えありません。
Q&A(5)
Q5)入院患者に交付された麻薬を病棟看護師詰所で保管す
る場合は、麻薬保管庫等に保管しますが、患者自身が
管理・保管する際にも同様な保管庫の設置は必要です
か。
A5)入院患者自身が処方された麻薬を保管する際には、
麻薬保管庫等の設備は必要ありません。しかし、紛失
等の事故防止を図るため、患者に対しては保管方法を
助言するとともに、服用状況等を随時聴取したうえで
施用記録等に記録する必要があります。
あさひかわ緩和ケア講座 2011
麻薬の管理
あさひかわ緩和ケア講座 2011
Q&A(6)
麻薬の管理
Q6)介護が必要なグループホームの入居者に対し、医
師が往診等により麻薬を処方した場合、自ら麻薬を保
管・管理できない入居者に対しては、介護を行う職員
(看護師・介護福祉士・ヘルパー等)が麻薬を管理
し、患者に服薬させることは可能ですか。可能であれ
ば、麻薬の管理にあたっては、麻薬業務所と同様の基
準で保管・管理させ、帳簿も記載させる必要はありま
すか。
A6)グループホームの職員が患者の意を受けて麻薬を
保管・管理することは差し支えありません。保管・管
理する麻薬について、紛失事故等がないように保管庫
の設備や帳簿による数量管理を行うと便利です。
Q&A(7)
Q7)末期がんの患者が死亡し、残された未使用の持続注入
器に詰められた麻薬について、どのような処理をすれ
ばよいですか。
A7)持続注入器に詰められた未使用の麻薬は、調剤された
麻薬ですので、麻薬管理者(または麻薬施用者)が麻
薬診療施設の他の職員の立会いの下で廃棄し、30日
以内に知事に調剤済み麻薬廃棄届を提出してくださ
い。
あさひかわ緩和ケア講座 2011
麻薬の管理
あさひかわ緩和ケア講座 2011
Q&A(8)
参考文献
Q8)再入院・転院により患者が持参した麻薬を引き続き
服用させる場合、服用の都度、診療録への記載が必
要ですか。
A8)病棟における患者の麻薬の服用は、医師の指示のも
とに行われるものであることから、診療録に記載す
ることが必要です。
北海道麻薬協会発行「麻薬取扱いの手引き」H22年12月改訂
抜粋
あさひかわ緩和ケア講座 2011
1)恒藤
暁著. 最新緩和医療学. 大阪: 最新医学社, 1999
2)柏木哲夫ほか著. 緩和ケアマニュアル-ターミナルケアマニュアル改
訂第4版-. 最新医学社, 2001
3)日本緩和医療学会がん疼痛治療ガイドライン作成委員会編. EvidenceBased Medicineに則ったがん疼痛ガイドライン. 東京: 真興交, 2000
4)鈴木勉他:がん疼痛管理はじめの一歩,薬局,2861-2941,2007
5)鈴木勉:薬と疾病Ⅰ.薬の効くプロセス,日本薬学会編,76-80,東京化学
6)WHO編,武田文和訳:がんの痛みからの解放-第2版,金原出版,2003
7)各モルヒネ,フェンタニル,オキシコドン製剤インタビューフォーム
8)鈴木勉他:オピオイド治療,鎮痛薬・オピオイドペプチド研会,2001
9)的場元弘他:緩和ケアにおける便秘の理解とケア,インターサイエンス
社,2004
10)越前宏俊:図解薬理学,医学書院,2008
11)北海道保健福祉部医療政策局医療薬務課:麻薬取扱いの手引き,北
海道麻薬協会,平成22年12月1日改訂
あさひかわ緩和ケア講座 2011
18