全文 - 日本損害保険代理業協会

代協活動の現状と課題
現状維持は後退と同じである
∼ 変化を先取りし、前に進もう ∼
平成28年度版
社会に貢献する
一般社団法人 日本損害保険代理業協会
都道府県損害保険代理業協会
※全国47の各都道府県損害保険代理業協会は全て一般社団法人として
活動しています。
― 編集・平成 28 年6月末日現在 ―
[ 目 次 ]
頁
※ 平成28年度版「現状と課題」発刊のご挨拶……………………………………………………………… 2
1.日本代協の概要………………………………………………………………………………………………… 4
2.日本代協76年の歴史と発展… ……………………………………………………………………………… 9
… …………………………………………………………… 16
3.日本代協の課題と活動方針(平成28年度)
4.代理店・募集人の資質向上への取り組み… ……………………………………………………………… 22
5.
「損害保険大学課程」の創設と運営………………………………………………………………………… 26
6-1.公平・公正な募集環境の構築に向けた取り組み①〈オープンでフェアな競争環境を構築するために〉…… 30
6-2.公平・公正な募集環境の構築に向けた取り組み②〈銀行等の保険商品販売に対する対応〉………… 35
6-3.公平・公正な募集環境の構築に向けた取り組み③〈郵政民営化・保険販売への対応〉… ………… 47
6-4.公平・公正な募集環境の構築に向けた取り組み④〈「活力ある代理店制度等研究会」〉… ………… 52
7-1.保険業法等関連法規の動向①〈金融審議会保険WGの動向〉… ……………………………………… 77
7-2.保険業法等関連法規の動向②〈保険業法の改正〉… ………………………………………………… 80
7-3.保険業法等関連法規の動向③〈代理店手数料の開示〉……………………………………………… 85
特別寄稿 :
『代理店手数料の開示を巡る動き』(栗山泰史アドバイザー論考)…………………… 87
7-4.保険業法等関連法規の動向④〈委託型募集人の適正化対応〉………………………………………… 94
8-1.業界関連法規の動向①〈代理店の雇用動向と社会保険の取り扱い〉… ……………………………… 100
8-2.業界関連法規の動向②〈民法改正動向(債権法)〉… ………………………………………………… 108
8-3.業界関連法規の動向③〈マイナンバー制度〉…………………………………………………………… 110
9.代理店制度・募集制度関連の動向… ……………………………………………………………………… 112
10.共通化・標準化の推進………………………………………………………………………………………… 118
11.組織力の強化〈代協正会員の増強と支部の活性化〉…………………………………………………………… 127
参考 :代理店動態統計付表… …………………………………………………………………………… 133
12.日本代協コンベンション…………………………………………………………………………………… 139
13.代理店賠責の推進と代理店経営品質向上への取り組み……………………………………………… 146
14.CSR活動の推進〈地球環境保護・社会貢献活動への取り組み〉… …………………………………………… 149
15.大規模災害への対応…………………………………………………………………………………………… 156
16.対外的広報活動の推進………………………………………………………………………………………… 169
17.代協会員向け情報提供・経営支援活動の推進…………………………………………………………… 172
………………………………………………………………………… 175
18.代協正会員実態調査(平成27年度)
19.公益法人制度改革への対応… ……………………………………………………………………………… 178
20.反社会的勢力への対応………………………………………………………………………………………… 181
21.
「全国損害保険代理業国民年金基金」の運営… ………………………………………………………… 184
… …………………………………………………………… 186
22.全国損害保険代理業政治連盟(政治連盟)
参考資料編 :
『新しい保険募集ルールをどのように捉えるか』(栗山泰史アドバイザー論考)…………… 191
………………………………… 223
※ 都道府県損害保険代理業協会 事務局一覧表(平成28年7月現在)
<日本代協ホームページ>URL:http://www.nihondaikyo.or.jp
本会の略称「日本代協」と「シンボルマーク」は、平成8年4月30日付で商標登録されています。
(登録番号3147939)
平成28年度版「現状と課題」発刊のご挨拶
一般社団法人 日本損害保険代理業協会
会 長 岡部 繁樹
全国の代協会員の皆さま、日頃は各地域で様々な代協活動を推進いただき改めて御礼申し上げます。
日本代協並びに各代協の活動に関しまして、引き続きのご理解とご支援をよろしくお願いいたします。
今年も皆さまのお手元に本冊子をお届けできることになりました。仕事を進める上で生じる様々な課題等
には全てそこに至った背景があります。業界の歴史や過去の経緯、今後の動向等をよく知ることで、問題へ
の理解が深まり、将来に向けた展望を描く手助けになります。そしてそれは、代理店自身の成長や代協の発
展、更には業界の健全な発展につながることが期待できます。本冊子には、そうした取り組みの参考となる
情報が盛り込まれていると思いますので、是非とも一読をお願いしたいと思います。
先ず最初に、熊本地方大地震においてお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災さ
れた皆さまにお見舞い申し上げます。今回の地震は、内陸型地震における前震、本震、かつ一連の地震活動
において震度7が2回観測され、余震についても2週間で1, 000回を超えるといった今までに例のないケー
スとなり、被害は甚大で今なお住民の方の不安は消えていません。
6月14日に日本代協通常総会を行い、午後の全国会長懇談会の席上において、熊本県代協井上会長様から、
会員様の事務所52件、自宅63件、合計115件の財物被害の報告、日常生活も確保できない状況下において地
震保険金支払いに奔走された貴重な体験談、損害調査等への関わり方やBCP等の課題等のお話をいただきま
した。私たちにできることは限られていますが、全国から寄せられた義援金5, 798, 390円(当日時点)をお
渡しし、一日も早く日常業務を取り戻していただくようエールを送りました。義援金にご協力いただきまし
た会員、関係者の皆さまには改めて御礼を申し上げますとともに、損害保険の代理店として、今回の教訓を
改めて確認し、今後に活かす必要があることを痛感しています。
地震保険金の支払いについては、6月20日現在で201, 186件、3, 171億円と当初の予想を大きく上回り、東
日本大震災に次いで史上2番目の規模となりました。一方で、地震保険の世帯加入率は28. 8%、火災保険付
帯率は59. 3%(ともに平成26年度末実績)とまだまだ低い水準に留まっています。今後日本のどこでも起こ
りうる地震に対し、一日でも早く生活を再建するためには第一に自助の備えが重要であり、自助の柱である
地震保険の普及に、より一層の使命感をもって取り組むことが私たちの責務であると考えます。
併せて、昨今ではこれまでの異常が異常ではない“ニューノーマル”の災害が多発しています。それに対
応するために、私たち代理店としては、先ずは日々の事業活動において、お客さまが気付いていないリスク
を認識してもらい、それを未然に防ぎ、被害にあった時には最小限に留めるための取り組みが必要です。そ
のために、くらしの安心・安全に役立つ情報提供を継続的に行う「本業+ほんの少しの情報上乗せ活動」を
地道に行うとともに、代協の組織活動においては、セミナー等を通して消費者に対し直接リスク啓発活動を
行う等、地域社会におけるリスクの専門家として関わりを深めていくことが重要だと思います。
さて、本年5月に改正保険業法が施行されましたが、この2年間は、栗山アドバイザーを中心に全国の代
協・保険会社等で業法改正対応セミナーを100カ所以上開催し、代理店の立場に立った情報提供を行いまし
た。また、具体的な支援ツールとして、
「社内規則」のひな形や「お客さまご案内用帳票ひな形パック」を
提供したり、
「体制整備の豆知識」を定期的に配信し、多くの会員の皆さまに活用いただいております。
― 2 ―
こうしたセミナーやツール、各種情報発信は、代理店賠責「日本代協新プラン」に並ぶ会員サービスの一
つだと思います。今後も環境変化を迅速に捉え、代協会員の皆さまの経営上の参考になる様々な情報発信に
努めますので、お見逃しのないようキャッチしていただきたいと思います。
今回の業法改正において特徴的と言えることは、適正な比較説明・推奨販売のルールが初めて定められた
こと、そして、適正な保険募集を確保するためのPDCAサイクルの徹底遂行が求められていることです。商
品の品ぞろえでお客さまに訴求する、即ち、比較説明・推奨販売を行うか否かは、代理店にとって重要な経
営戦略の一つになります。ヒト・モノ・カネも要する取り組みになるので気合いだけで臨むことはできませ
ん。各社の商品を熟知する必要がありますし、募集プロセスを全募集人で共有しておくことも必要です。ま
た、PDCAサイクルのポイントは、Cに当たる自社検証あるいは内部監査です。「検証や監査は自社の健康
診断」であると前向きに捉え、現実を直視して自社の経営改革に活かすことで「チェックはチャンス」にな
ります。更に、Aの改善については、自らの課題認識は勿論ですが、お客さまの声を正面から受け止めるこ
とが重要です。こうした検証・改善を繰り返し、徐々に業務のレベルを引き上げ、お客さま対応の品質を高
めていくこと、これが今回のPDCAの肝だと考えています。
法改正を踏まえて募集現場で私なりに気づいたことがあります。当たり前のことではありますが、保険加
入の目的、被保険者、受取人、保障金額、保障内容、保険期間、保険料の払込期間・払込方法といった「保
険加入をご検討いただく際のポイント」をしっかりとお客さまに示したうえで説明を行うと、お客さまの理
解が進み、納得感、満足感が高まることです。代協会員の皆さまも全国各地で様々な経験値を積み上げてい
かれると思いますので、引き続き、情報交換を重ね、よりよい取り組みが広がるよう横展開を図りたいと思
います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、保険業法改正という規定レベルの変化に留まらず、保険マーケットを取り巻く環境は大きく変化し
ています。保険は人生や社会生活、事業活動を営む上においてのリスクヘッジの方策という伝統的な考え方
は変わりませんが、最近は、
「保険は本業を取り巻くバリューチェーンの一つ」と位置付けて、兼業代理店
が保険に注力したり、異業種からの参入も増えています。また、今後、自動車の自動運転やテレマティクス
は急速に進展していくことが予測され、中期的に見れば、私たちの主力商品である自動車保険にも大きな影
響を与えることが想定されます。一方で現状はどうかと言えば、昨年度実施した正会員実態調査によると、
自動車保険の割合は、一部を除いて60~70%の地域が多く、全国平均も60. 7%と自動車保険への依存度が極
めて高い実態があります。自動運転車の導入が進み、保有台数自体も減少していくことを考えると、代理店
経営のあり方も大きな転換に迫られることは容易に予測できます。
募集環境、マーケット環境、社会環境等が大きく変わる中においては、情報収集のアンテナを敏感にし、
自らの強みや独自能力を再チェックし、消費者に必要とされる地域オンリーワンの企業を目指していくこと
が何よりも大事だと考えます。技術革新が進めば進むほど、立ち返るところはやはり「思いやりの心」だと
思います。社員全員が自分以外の相手のことを考える思いやりの心を持ち、どうしたら満足していただける
か、徹底的に考え抜いてチャレンジすることが成長のカギのように思います。どうせ働くなら、楽しく働い
て幸せになりましょう!
最後になりますが、各代協会員の皆さまのますますのご発展を祈念して、平成28年度版「現状と課題」発
刊のご挨拶とさせていただきます。
以上
― 3 ―
1 日本代協の概要
■性 格
⑴ 本会は、損害保険代理業界を代表する社団法人格を有する職業団体である。(略称:日本代協)
⑵ 本会は、長年にわたり個々の損害保険代理店を正会員とし、正会員一店一店が表決権を有する団体とし
て運営されてきたが、平成21年度施行の公益法人制度改革3法を活用し、全国の全ての代理業協会(通
称:代協)が一般社団法人格を取得したことを受けて、組織運営をより適正なものにするとともに、厳し
い環境変化に迅速に対応できる機動性を確保するため、正会員資格を「法人となった47都道府県の損害保
険代理業協会」に変更する組織改革を行った。(平成21年8月25日定款変更認可取得。各代協が任意団体
から社団法人に転換したことで法的なガバナンスが期待でき、手順を踏んだ意思決定が行われるため組織
としての透明性も確保されることが背景にあった。)
⑶ 日本代協本体は、元々旧民法34条で認可を受けた社団法人であったが、公益法人制度改革を受けて平成
21年10月に公益社団法人への移行を目指し、内閣府(公益認定等委員会)に対し認定申請を行った。しか
しながら、申請後の折衝内容や他団体の認定・認可状況を踏まえて総合的に判断した結果、この時点で公
益認定を得るのは難しいと判断し、平成22年3月に申請自体を一旦取り下げた経緯がある。
その後、審査方針が変更になる見込みがない状況であったため、一旦一般社団法人へ移行した上で、公
益認定については中長期的な視点で改めて検討を行うこととした。(平成24年6月通常総会承認済)
⑷ これを受けて、平成24年10月に一般社団法人への移行認可申請を行い、平成25年3月19日付けで移行認
可証を受領、同年4月1日付けで登記を行った。
⑸ 本会は、正会員・特別会員並びに賛助会員の会費で運営されており、各種活動は各役員・委員が無報酬
のボランティアとして行っている。
■組 織 目 的
本会は、
「損害保険の普及と保険契約者及び一般消費者の利益保護を図るため、損害保険代理店の資質を
高め、その業務の適正な運営を確保し、損害保険事業の健全な発展に寄与するとともに、幅広く社会に貢献
するための活動を行うこと」を目的としている。(定款第3条)
■事 業
本会は、上記組織目的実現のために、次の事業を行っている。(定款第4条)
① 損害保険代理店及び損害保険募集人に対する教育研修事業
② 損害保険代理店の制度、業務に関する調査研究及び関係諸機関への提言
③ 損害保険の健全な普及に関する啓発、宣伝及び防災運動
④ 地球環境の保護、地域社会に貢献するためのボランティア活動
⑤ 社員及び賛助会員への情報伝達と相互理解を図るための会報等の発行
⑥ 損害保険代理店に関する広報活動
⑦ 損害保険代理業に対する支援事業
⑧ 前各号のほか、本会の目的を達成するために必要と認めた事項
― 4 ―
■運 営 指 針
本会は、
「倫理綱領」
「募集規範」
「反社会的勢力への対応に関する基本方針」を組織運営の基軸に置き、
定款並びに諸規則に基づき運営されている。
■会 員 構 成
⑴ 正会員
全国47都道府県の損害保険代理業協会
各代協に所属する損害保険代理店の総計は、12, 041店(平成28年3月末現在)となっている。損害保険
代理店であれば各代協への加入資格に特別な制限はないが、日本代協グループとしては、資質の向上・消
費者利益の保護を前提とした「プロの保険代理店」の集団を目指している。このため、志高く使命感を
持って代理業に取り組み、資質向上に対する不断の努力を怠らない代理店は、専業・兼業といった画一的
なチャネル区分やその他の属性に囚われることなく広く仲間に迎えることとしている。
⑵ 特別会員
損害保険会社16社
特別会員は、定款で「一般社団法人日本損害保険協会、損害保険料率算出機構、公益財団法人損害保険
事業総合研究所(損保総研)等及びこれらに所属する社員または会員」と定められており、現在は下記16
社が会員となっている。
<あいおいニッセイ同和、朝日火災、共栄火災、ジェイアイ傷害、セコム損保、セゾン自動車、損保ジャパン
日本興亜、大同火災、東京海上日動、トーア再保険、日新火災、富士火災、三井住友海上、明治安田損保、
AIU、エース損保>
⑶ 賛助会員
賛助会員は、定款で「本会の目的及び事業に賛同し、本会の事業を賛助または後援する法人、個人」と
定められている。現在は、全国で中古車買取りを行っている株式会社JCM(JUのグループ会社)が会員
となっている。
■組織改革の歴史
・昭和15年10月 東京火災保険代理業懇話会創立
・昭和18年12月 東京損害保険代理業協会設立
・昭和24年2月 全国損害保険代理業協会連絡協議会設立
・昭和25年5月 全国損害保険代理業協会連合会設立(全代連)(事務所を丸ビルにおく)
・昭和39年12月 大蔵省より社団法人の認可(社団法人全国損害保険代理業協会連合会)
・昭和55年4月 社団法人日本損害保険代理業協会発足(「日本代協」を登録商標)
・平成20年12月 全国47都道府県の損害保険代理業協会が一般社団法人を設立
・平成21年8月 正会員資格を47代協に変更する定款変更の認可を取得
・平成21年10月 内閣府公益認定等委員会に対し公益認定を申請・翌年3月申請を一旦取下げ
・平成22年5月 正会員資格変更に伴う理事数削減のための定款変更認可を取得
・平成24年6月 一般社団法人への移行認可申請を行うことを総会で決議
・平成24年10月 一般社団法人移行認可を内閣府に申請
・平成25年3月 4月1日付けの移行認可証受領
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・平成25年4月 一般社団法人日本損害保険代理業協会の登記完了
■組織機構図
※ブロック協議会:北海道、北東北、南東北、上信越、東関東、南関東、東京、東海、北陸、近畿、阪神、
東中国、西中国、四国、九州北、九州南 (計16ブロック)
■役 員
本会は、定款で「理事15名以上30名以内、監事3名以内の役員を置く」と定めている。
平成27年7月1日現在の役職名、人数は以下の通りである。(理事19名・監事3名)
① 会長(代表理事)
:1名(岡部繁樹)
② 副会長
:4名(小出富晴、小平髙義、山口史朗、金子智明)
③ 地域担当理事
:6名(丸山邦夫、横山健一郎、津田文雄、小澤正志、川本吉成、陣内 栄)
④ 委員会担当理事
:6名(高橋克之、林 雅弘、木下幸太郎、北島香代子、小田島綾子、山中 尚)
⑤ 専務理事、常務理事:各1名(野元敏昭、小見隆彦)
⑥ 監事
:3名(杉本恭三、渡辺眞一、吉川正幸[公認会計士])
その他、名誉会長(荻野明廣)、顧問(佐藤貞一朗)、相談役(髙梨重勝、辻本完治)を置いている。
■活 動 状 況
本会では、損害保険代理業界を代表する団体としての使命感と責任感を持ち、消費者保護の実現と業界の
健全な発展を目指して活動を展開している。主な活動は以下の通りである。
⑴ 委員会・研究会活動
① 企画環境委員会:公平・公正な募集環境整備に向けた調査・研究・提言、金融機関・ディーラー等の
保険販売に対するモニタリング、代理店賠責の加入促進、共通化・標準化に向けた
提言 等
② 組 織 委 員 会:代協正会員増強運動、各代協・支部の活性化、国民年金基金加入推進 等
③ 教 育 委 員 会:
「損害保険大学課程」の運営・検証・改善、日本代協独自の教育制度の研究、各種セミ
ナーの開催 等
④ C S R 委 員 会:地球環境保護・社会貢献活動の推進、公開講座、寄付金(グリーン基金)の選定、
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(ぼうさい探検隊、地震保険普及、無保険車追放、学校教育の推進 等)
⑤ 広 報 委 員 会:対外広報活動、お客様向け情報誌の発行、消費者団体との対話推進 等
⑥ ビジョン委員会:ブ ロック協議会のあり方、大規模災害時の代理店支援策、代理店経営の支援策、
消費者啓発策の検討 等
⑦ 機 関 紙 編 集 室:「日本代協ニュース」の発行、業界関連情報の配信 等
⑧ 活力ある代理店制度等研究会:代理店の活性化に向けた特別会員4社との意見交換、共同研究 等
⑨ コンベンションPT:コンベンションのアクションプランの策定・運営
⑵ その他各種活動
・
「全国損害保険代理業国民年金基金」:日本代協が設立母体となって平成4年9月1日に認可を取得して
創設した職能型の基金。制度運営ならびに加入者募集等を実施
・
「コ ン ベ ン シ ョ ン」
:平 成23年度から、全国の代協加盟代理店が集い語らう場として、毎年11月に東
京にてコンベンションを開催。平成28年度で6回目の開催
・
「日本代協政治連盟」:東京都選挙管理委員会届出団体。日本代協の目的実現のために活動しており、表
裏一体の関係にあるが、組織としては本会とは全く別の性格を持った個人加入の
団体であり、経費も本会と完全に分離されている。なお、「税制改正」や「法律
改正」に関しては、損保協会と連携して調査・要望活動を行っている。
⑶ 各種要望・提言
金融庁、損保協会、各保険会社等に対して、様々な機会を捉えて各種要望、提言活動を続けている。公
的な会議体等の場で本会が意見陳述等を行う機会を得た主なものは、以下の通りである。なお、行政や損
保協会等とは随時意見交換、情報連携を行っている。
・平成3年 保険審議会臨時委員(会長)
・平成6年 大蔵省「保険ブローカー制度懇談会」に参加(会長)
・平成7年 大蔵省「地震保険制度懇談会」に出席(副会長)
・平成9年 保険審議会・基本問題部会において銀行窓販に対する意見陳述(会長)
・平成17年~ 金融庁「保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム」委員(副会長)
・平成18年 政府「郵政民営化委員会」において意見陳述(会長)
・平成19年 損保協会「消費者の声諮問会議」に出席(会長)
・平成19年 政府「郵政民営化委員会」において意見陳述(会長)
・平成19年 金融審議会「保険の基本問題に関するWG」において銀行窓販に関し意見陳述(会長)
・平成21年 金融審議会「保険の基本問題に関するWG」に参考人として出席(会長)
・平成22年 公正取引委員会に対し優越的地位の濫用に関するパブリック・コメント提出
・平成23年5月 「銀行等による保険募集に関する金融庁副大臣ヒアリング」にて意見陳述(会長)
・平成24年6月 金融審議会「保険の基本問題に関するWG」実務者委員就任(名誉会長)… 1年間
・平成24年9月 損保協会「よりわかりやすい募集文書・説明のあり方に関するタスクフォース」委員就任
(企画環境委員長)… 約1年間
・平成24年9月 内閣府に対し「ゆうちょ銀行損害保険募集業務認可申請反対」の意見書提出
・平成24年10月 内閣府「第86回郵政民営化委員会」において意見陳述(会長)
・平成25年6月 早稲田大学保険規制問題研究所シンポジウムにて意見陳述(会長)
・平成26年2月~金融庁保険課において代理店の募集実務に関するプレゼン実施(東京代協会員)
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・平成27年3月 金融庁に対し改正保険業法の政省令・監督指針に関するパブリック・コメント提出
・平成28年5月 公正取引委員会に独禁法対応に関するアンケート提出
⑷ 代理店対象の各種制度の改善
上記⑶の他、代理店を対象とした様々な制度に対して、代理店経営支援の観点から関係各所への改善提
案や折衝調整を行い、具体的な成果につなげている。主な事例は以下の通りである。
・昭和41年 地震保険制度の創設
・昭和48年 ノンマリン代理店制度の改定
・昭和53年 国民金融公庫の代理店向け融資の実現
・昭和55年 地震保険制度の大幅改定(現行制度のベース)
・昭和57年 住宅金融公庫の契約取扱規定の改善
・昭和57年 中小企業金融公庫の代理店向け融資の実現
・昭和58年 別途保管口座の預金種類に定期預金の追加実現
・昭和60年 中小企業信用保険法保証対象業種への指定実現
・昭和61年 代理店登録手続きの改善
・平成4年 中小企業新技術体化投資促進税制適用業種の指定実現
・平成5年 全国損害保険代理業国民年金基金の創設
・平成22年 政府「景気対応緊急保証」の対象業種に損害保険代理業の追加実現
・平成24年 代理店乗合承認制度の改善(回答方法・期限明示等)
・平成25年 消費税簡易課税制度に関する「みなし仕入率」引き下げ時期の繰り延べを実現
・平成26年 乗合代理店における推奨販売方針の一つとして「募集人毎指定」の追加を実現
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2 日本代協76年の歴史と発展
■創 成 期 (昭和15年〜昭和25年)
昭和15年10月 東京火保代理業懇話会設立→職業代理店の再確認と公平な手数料率制定に取り組む
昭和18年12月 同懇話会を発展させ、東京損害保険代理業協会を設立
昭和23年2月 全国損害保険代理業協会連絡協議会設立→東京、函館、小樽、東海、関西が参加
昭和25年5月 同協議会を発展させ、全国損害保険代理業協会連合会(全代連)を設立
■成 長 期 (昭和26年〜昭和39年)
昭和27年7月 火災保険代理店格付制度創設→全代連はこの制定に大きな役割を果たす
昭和39年12月 社団法人全国損害保険代理業協会連合会設立→大蔵省より法人格を認可される
■改 革 期 (昭和40年〜昭和55年)
昭和46年6月 「保険募集の取締に関する法律の改正について」請願書を大蔵大臣に提出
昭和48年4月 ノンマリン代理店制度の制定→前記請願書が導火線となる
昭和53年2月 国民金融公庫の代理店向融資実現
昭和53年10月 大蔵メモ受領→保険募集制度及び手数料問題に係る8項目
昭和54年2月 「損害保険ノンマリン代理店制度における諸問題に関する答申」→大蔵省に提出
昭和54年7月 太平洋損害保険代理店米国研修(PIAS)の実施
昭和55年4月 全代連を発展させ、社団法人日本損害保険代理業協会に改組
昭和55年10月 新ノンマリン代理店制度実施→日本代協の意見が反映される
■発 展 期 (昭和56年〜平成12年)
昭和57年1月 損害保険代理店学校の開校
昭和57年4月 住宅金融公庫契約取扱の改善がはかられる
昭和57年7月 中小企業金融公庫の代理店向融資実現
昭和58年4月 保険料預貯金種類へ定期預金の導入実現
昭和60年7月 中小企業信用保険法保証対象業種指定実現
昭和61年4月 代理店登録手続の改善
昭和61年7月 損害保険料ローン制度「おおぞら」の開発実施
昭和63年8月 オートリースシステム「かがやき」の開発実施
平成2年6月 代協創始50周年・日本代協移行10周年記念行事実行
平成3年10月 日本代協会長が保険審議会の臨時委員に委嘱される
平成4年3月 中小企業新技術体化投資促進税制適用業種指定
平成4年9月 全国損害保険代理業国民年金基金の設立
平成5年11月 日本損害保険代理業振興基金の創設
平成6年10月 大蔵省・保険ブローカー制度懇談会へ参加
平成7年3月 大蔵省・地震保険制度懇談会へ日本代協会長が参加
平成9年3月 保険審議会・基本問題部会において日本代協会長が意見陳述
平成9年10月 ヨーロッパ損害保険代理店研修(EIAS)の実施
平成9年10月 募集規範の制定
平成10年10月 日本代協保険大学校の開講
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平成11年2月 新しい資格制度の提言
平成11年12月 新しい代理店制度・代理店手数料に係る要望書の提出
平成12年4月 地球環境問題への取り組みの開始
■第Ⅱの創成期(平成13年〜平成19年)
平成13年1月 日本代協認定保険代理士 1期生 1, 163名の誕生
平成13年3月 代理店制度(種別・資格)の廃止
平成13年4月 各社別の代理店制度・代理店手数料体系の導入
平成13年10月 21世紀委員会の答申・日本代協の組織の見直しの議論始まる
平成14年6月 日本代協総会において保険代理士の国家資格昇格を目指すことを決議
平成14年7月 代理店賠責・日本代協プランの導入
平成15年4月 代理店手数料の完全自由化
平成15年7月 日本代協認定保険代理士の更新研修開始
平成16年2月 理事会において「保険代理士の国家資格昇格のための調査研究」採択
平成16年3月 損保協会販売調査委員会に対し、損害保険募集人(保険代理士を含む)の国家資格化の
共同検討を申入れ、共同検討が始まる
平成16年8月〜 銀行窓販の全面解禁に対する反対運動を展開
平成17年2月 理事会において代理店賠責・日本代協プランと東京代協職業賠償共済の一本化が承認
平成17年2月 理事会において収益事業研究会の答申を採択
平成17年3月 金融庁「保険商品の販売勧誘の在り方に関する検討チーム」へ荻野副会長参画
平成17年6月 理事会において企画環境委員会の答申「個人情報保護に関する研究」を採択
平成17年10月 理事会において代協法人化に関する「フォローアップ委員会」の答申を採択
平成17年12月 銀行窓販第3次解禁、モニタリングの開始
平成18年2月 「募集環境問題ハンドブック」・兵庫代協の「阪神・淡路大震災の教訓」採択
平成18年6月 理事会において代協法人化に関する標準定款・マニュアルについての「フォローアップ
小委員会」答申を採択
平成18年6月 金融庁「保険商品の販売勧誘の在り方に関する検討チーム」最終答申
平成18年10月 理事会において「保険会社の行政処分により消費者が受けた影響の調査」を採択し、金
融庁保険課に提出
平成18年10月 第11回郵政民営化委員会において日本代協会長が「実施計画」について意見陳述
平成19年2月 企画環境委員会から「公正な募集環境を維持するための研究(中間答申)」および「損
害保険の保険金支払いに関するガイドラインについて」を答申
平成19年2月 第20回郵政民営化委員会において日本代協会長が意見陳述
平成19年3月 損保協会の「消費者の声」諮問会議に日本代協会長が出席
平成19年5〜6月 全国11場所において損保協会とブロック・各代協役員がコンプライアンスガイドお
よび適合性原則への対応(意向確認書、契約確認書)について意見交換
平成19年8月 活力ある代理店制度等研究会の設置
平成19年10月 郵政民営化
平成19年10月 金融審議会保険WGにおいて日本代協会長が銀行窓販に関して意見陳述
平成19年12月 銀行窓販の全面解禁
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■第Ⅱの改革期(平成20年〜)
平成20年2月 理事会において金融庁監督局保険課長が講演
平成20年4月 活力ある代理店制度等研究会・平成19年度報告を金融庁に提出
平成20年4月 損保協会の「損害保険募集人試験更新制度」スタート(認定保険代理士は免除)
平成20年4〜6月 各代協の通常総会において一般社団法人化の決議
平成20年6月 理事会において法人化推進特別委員会(小委員会)答申を採択
平成20年7月 保険大学第11期募集において受講者が累計10, 000人を突破
平成20年10月 郵便局株式会社において自動車保険取扱郵便局が303局となり、全国展開開始
平成20年10月 金融庁保険課長との意見交換会開催
平成20年12月〜平成21年1月 各代協で一般社団法人の認可取得
平成21年2月 理事会において「教育プログラム再構築」・「日本代協認定代理店制度」・「ビジョン委員
会答申・答申への追記」・「公正・公平な募集環境整備に向けて」(中間報告)・並びに地
震保険キャンペーンの主管変更を承認(組織委員会→CSR委員会)
平成21年2月 会員増強のために「全国一斉1支部1店入会運動」実施
平成21年3月 第50回金融審議会「保険の基本問題に関するWG」において、荻野会長が意見陳述
平成21年4月 認定保険代理士の認定基準改定
①保険会社社員への資格開放 ②募集実務経験を2年間に短縮
平成21年4月 「活力ある代理店制度等研究会・平成20年度報告」を金融庁に報告
平成21年6月 日本代協HPの全面リニューアル実施(「認定保険代理士のいる店」検索等)
平成21年6月 通常総会において、会員資格変更の定款変更を承認
平成21年7月 郵便局株式会社において自動車保険の取扱局が600局に拡大
平成21年8月 金融庁に定款変更の認可申請書提出(正会員資格等)し定款変更認可取得(25日)
平成21年10月15日 臨時総会において公益認定申請を決議
平成21年10月 国民年金基金加入見込み者550名達成キャンペーン実施
平成21年10月 グリーン基金寄付先公募をHP上で実施
平成21年10月20日 内閣府公益認定等委員会に対し、公益認定申請を実施(電子申請)
平成21年12月 保険大学の名称を「保険大学校」に変更
平成22年2月1日〜12日 全国一斉1支部2店入会運動実施
平成22年2月 政府「景気対応緊急保証」の対象業種に「損害保険代理業」の追加指定実現
平成22年2月28日 BSジャパンにおいて、認定保険代理士の活動を紹介する特別番組を放映、日経全
国版に10段広告実施(「どう選ぶ?損害保険」)
平成22年3月12日 臨時総会において、平成22年度事業計画、同予算を承認
平成22年3月 公益認定申請を一旦取下げ
平成22年4月 保険法施行
平成22年4月9日 「活力ある代理店制度研究会・平成21年度報告」を金融庁保険課長に報告
平成22年4月 第30次記念PIAS実施
平成22年4月〜6月 募集人の認定制度に関する損保協会との合同研究会開催(6月答申)
平成22年5月10日 理事数削減(30名〜60名 ⇒15名〜30名)の定款変更認可取得
平成22年5月 理事会において、「公益認定申請の一旦取下げ・再申請方針」、「ビジョン委員会第二次
答申」、地球環境・社会貢献委員会の名称変更(「CSR委員会」)を承認
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平成22年5月31日 国民年金基金事務局移転(本郷から日本代協事務局内へ)
平成22年5月〜6月 代協正会員実態調査実施
平成22年6月16日 正会員資格変更後初の通常総会開催・役員改選・金融庁保険課長が講演
平成22年7月 琉球大学において「損害保険の募集」に関し岡部副会長が講義(損保協会と合同)
平成22年7月28日 募集人の認定制度に関する損保協会との合同部会スタート
平成22年8月 公正取引委員会に優越的地位の濫用に関するパブコメ提出
平成22年10月 損保業界の裁判外紛争解決機関である「そんぽADRセンター」開設
平成22年12月〜翌3月 BSジャパンにて日本代協TVCM「Mr. D、現る」放映
平成23年2月 全国一斉「代協正会員250店入会キャンペーン」実施
平成23年3月11日 臨時総会・東日本大震災発生
平成23年5月 損保協会から「損害保険大学課程」創設のニュースリリース
平成23年5月 銀行窓販に関する副大臣ヒアリングにて岡部会長が意見陳述
平成23年7月 銀行窓販に関する弊害防止措置見直し内容公表
平成23年8月7日〜10日 正副会長による東日本大震災被災地代協訪問
平成23年11月 全国一斉国民年金基金キャンペーン月間
平成23年11月18日〜19日 第1回日本代協コンベンション開催(ヤクルトホール他)
平成24年1月1日 「社会保障を補完する商品に係る保険料控除制度」適用開始
平成24年1月 「自動車盗難等の防止に関する官民合同PT」メンバーに新規承認
平成24年2月 全国一斉代協正会員2月入会キャンペーン実施
平成24年2月 金融庁検査入検
平成24年2月 BSフジにて認定保険代理士の活動に密着した特別番組放映
平成24年3月9日 臨時総会・全国会長懇談会開催
平成24年3月 「損害保険大学課程」教育プログラムの教育機関に指定
平成24年3月 東日本大震災発生から1年に合せ、損保業界合同で防災啓発活動実施
東日本大震災特別企画講演会を保険毎日新聞、損保総研と共催で開催
平成24年3月 野村総研に協賛して「中国自動車保険セミナー」開催
平成24年4月 振興基金全件償還終了
平成24年4月1日 平成23年度見直し後の銀行窓販弊害防止措置施行
平成24年4月〜5月 岡部会長 各保険会社社長訪問実施
平成24年6月7日 金融審議会「保険の基本問題に関するWG」第1回会合開催(以後16回開催)
平成24年6月14日〜22日 第32次PIAS(太平洋保険学校)実施
平成24年6月19日 通常総会・全国会長懇談会開催
公益法人制度改革に関し、一旦一般社団法人へ移行することを承認
代理店賠責の引受保険会社変更を承認(アリアンツ火災→エース損保)
平成24年7月 損保8社・損保協会担当部長との懇談会開催
業界紙各紙との懇談会開催
平成24年8月 郵便局の自動車保険取扱局が1, 241局に拡大
平成24年9月 損保協会「よりわかりやすい募集文書・説明のあり方に関するタスクフォース」開催
(日本代協小平理事・企画環境委員長がメンバーとして参画)
損保協会に83項目の「共通化・標準化」に関する具体的な要望・提言書を提出
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大同火災・上間社長様の被災地視察を設営(気仙沼・大船渡等視察に事務局同行) 内閣府に対しゆうちょ銀行の損害保険募集業務認可申請の差し止めを求める意見書提出
金融庁小野参事官との意見交換会実施(名誉会長、事務局出席)
平成24年10月 内閣府第86回郵政民営化委員会に岡部会長出席。ゆうちょ銀行の損害保険募集業務認可
申請に対して「断固反対」の意見表明
一般社団法人への移行認可申請書提出(電子申請)エース損保引受初年度となる代理店
賠責「日本代協新プラン」スタート
損害保険大学課程「専門コース」第1回教育プログラム開講
平成24年11月16日〜17日 第2回日本代協コンベンション開催(ヤクルトホール他)
日本代協ニュース新年号用特別企画「女性代理店座談会」開催 大同火災役員会にて専業代理店政策の現状と課題をプレゼン(事務局) 国民年金基金加入推進キャンペーン実施
平成24年12月 損保協会タスクフォース中間報告書とりまとめ(重説プロトタイプ作成)
平成25年1月 金融審議会第9回保険WGに損保協会タスクフォース中間報告書提出
損保8社・損保協会担当部長との定期懇談会開催 第13期認定保険代理士誕生(752名)
平成25年2月 会員増強キャンペーン実施
平成25年2月〜3月 BSフジにて認定保険代理士のPRドラマを放映(4パターンのコント仕立て)
平成25年3月 臨時総会開催(15日) 一般社団法人への移行認可証受領(4月1日付)
■第Ⅱの発展期(平成25年〜平成28年7月)
平成25年4月 一般社団法人の移行登記完了
損害保険大学課程「コンサルティングコース」第1回教育プログラム開講
平成25年5月 公益社団法人日本消費生活アドバイザー協会賛助会員として承認
岡部会長 各保険会社社長訪問実施(〜6月)
損害保険大学課程に関する損保協会との合同運営会議スタート
平成25年6月 金融審議会第16回保険WG開催・報告書とりまとめ
第33次PIAS(太平洋保険学校)実施(13日〜21日)
RINGの会オープンセミナーに代理店賠責のブース出展
平成25年度通常総会開催(18日)
早稲田大学「保険規制問題研究所」シンポジウム共催開催(岡部会長プレゼン)
平成25年7月 損保8社・損保協会担当部長との懇談会開催
業界紙3紙との懇談会開催
金財主催「代理店ビジネスの新潮流」セミナーにて基調講演(事務局)
新日本保険新聞社主催「保険関係団体懇談会」に岡部会長出席(日本代協にて)
平成25年8月 金融庁保険課との意見交換実施
平成25年10月 結心会パネルディスカッションに岡部会長出席
金融財政事情座談会に荻野名誉会長、栗山アドバイザー出席(日本代協にて開催)
平成25年11月 金融庁保企室・保険課との意見交換実施(荻野名誉会長、岡部会長)
平成25年11月 第3回コンベンション開催(15日〜16日・ヤクルトホール他)
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平成25年12月 金融庁保険課との意見交換実施
平成26年1月 金融庁から「保険募集に関する再委託の禁止について」文書交付
消費税の簡易課税に関する「みなし仕入率」引き下げの繰り延べを実現
平成26年2月 BSフジにおいて、代理店の役割、価値の情宣を図る情報バラエティ番組放映
平成26年3月 平成25年度臨時総会開催(7日)
平成26年3月 「東日本大震災から3年」講演会において宮城県代協・小林副会長が「代理店の使命と
役割について講演(保毎主催)
代理店向けBCP策定ガイドブック「私たち損害保険代理店の事業継続計画」発刊
平成26年6月 平成26年度通常総会開催(17日)
第34次PIAS実施(19日〜27日)
金融庁保険課との意見交換実施
早稲田大学産業研究所アカデミックフォーラムにて栗山アドバイザー講演
平成26年7月 「損害保険トータルプランナー」認定者誕生
損保8社・損保協会担当部長との懇談会開催(9日)
業界紙3紙との懇談会開催(10日)
「事務局職員研修」実施(18日)
韓国保険代理店協会 孫副会長他訪日団幹部との会談(24日)
平成26年8月 理事会合宿初開催(8日~9日)
平成26年9月 JC保険部会主催「国際保険流通会議」に岡部会長出席(20日)
早稲田大学「保険規制問題研究所」シンポジウム共催(26日)
平成26年10月 阪神ブロックコンベンション開催(8日)
損保3社直資代理店出向者による座談会開催(10日)
自民党税調ヒアリング出席(28日)
保険毎日新聞社主催「代理店が今なすべきことを考える」パネルに岡部会長出席(31日)
平成26年11月 財務省・秋田県主催「秋田防災塾」を日本代協・秋田県代協後援(8日)
第4回日本代協コンベンション開催(14日~15日)
平成26年12月 第1回損害保険トータルプランナー認定授与式(イイノホール)
平成27年2月 平成26年度活力研開催(12日)
BSフジにて「暮らしに効き目!かしこい損害保険の選び方教えます!2」放映(28日)
平成27年3月 平成26年度臨時総会開催(6日)
平成27年3月 国連防災世界会議開催(仙台/14日~15日)
ぼうさい探検隊マップコンクール表彰式(日本代協賞「キッズリスクアドバイザー」賞)
平成27年4月 安倍首相主催「桜を見る会」に日本代協・政連両会長出席(18日招待)
平成27年6月 平成27年度通常総会開催(16日)
第35次PIAS実施(18日~26日)
平成27年7月 損保7社・損保協会担当部長との懇談会実施(8日)
業界紙3紙との懇談会実施(9日)
平成27年度第1回活力研開催(22日)
平成27年8月 損保労連との初めての意見交換会開催(3日)
平成27年10月 代理店賠責審査会開催
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平成27年10月 金融庁保険課井上課長との意見交換
平成27年10月 損保協会「防災・地震フォーラム」開催(札幌他全国11地域)
平成27年10月 JC保険部会主催「国際保険流通会議」に岡部会長出席(24日)
平成27年11月 第5回コンベンション開催(3日~4日)
平成27年11月 自民党税調ヒアリング出席
平成27年11月 慶應義塾大学保険学会にて東日本大震災における損保代理店経営への影響度調査報告
平成27年12月 第2回損害保険トータルプランナー認定授与式(イイノホール)
平成27年12月 金融庁保険課井上課長 代協会員視察・日本代協事務所来会(7日)
平成28年1月 損保総研主催「損保講座」において栗山アドバイザー・野元専務理事講演
平成28年1月 ぼうさい探検隊表彰式開催(あいおいニッセイ同和本社)
平成28年1月 九州大学経済学部において野元専務理事講義(旧7帝大で初)
平成28年1月 BSフジにて損害保険トータルプランナーならびにプロ代理店に関するPR番組放映
平成28年2月 平成27年度第2回活力研開催(17日)
平成28年3月 平成27年度臨時総会開催(4日)
平成28年3月 損保協会主催「もっと!防災 東日本大震災5年シンポジウム」開催(朝日ホール)
平成28年4月 安倍首相主催「桜を見る会」に日本代協会長出席(9日招待)
平成28年5月 改正保険業法施行(29日)
平成28年6月 関東財務局との意見交換(8日)
平成28年6月 平成28年度通常総会(14日)・新任会長オリエンテーション(15日)開催
平成28年7月 損保7社・損保協会担当部長との懇談会開催(7日)
平成28年7月 業界紙3紙との懇談会開催(15日)
平成28年7月 平成28年度第1回活力研開催(20日)
― 15 ―
3 日本代協の課題と活動方針(平成28年度)
1 平成27年度の活動状況の振り返り
平成27年度も事業計画に基づいて諸活動を行った。対外的には行政、損保協会、保険会社、業界他団体等
との情報交換を重ねてきた結果、業界における存在感をさらに増すことができ、また対内的には会員増強や
国民年金基金の加入者募集を除いて概ね計画通りに推進することができた。しかしながら、各代協の取り組
みに濃淡があり、また、組織決定したことが必ずしも実行できていない現実もある。「情報と熱が伝わる組
織づくり」が本会の大きな課題である。なお、当年度の特記事項は以下の通り。
① 保険業法改正に伴う代理店の対応に関するセミナー、研修会の講演依頼が数多く入ったが、栗山アド
バイザーを始め事務局・役員を中心に積極的に対応し、全国で約100回(前年度は72回)の開催を数えた。
業界紙への起稿、体制整備豆知識配信なども実施し、迅速かつ正確な情報周知に努めた結果、代理店の
みならず保険会社からも一定の評価をいただいた。
② 12, 500店の会員増強目標が達成できなかったことは残念であるが、昨年度の対前年度260店増店を上
回る289店の増店となり、2年連続の大幅増店を達成することができた。
③ 創設4年目となる損害保険大学課程のコンサルティングコースの受講者募集においては、過去最多と
なる1, 458名の受講者を集めた。また会員の割合も74. 5%(1, 044名)と上昇することができ、業界内に
存在感を示すことができた。制度の周知が進んできていることも実感でき、募集人の資質向上に向けて
励みとなる受講勧奨結果であった。
④ 法人事業者の社会保険適正加入の推進に関しては、事業者団体の役割と認識して、社会保険の概要・
加入要件並びに政府方針及び対応上の留意点などの情報を発信し、是正を求めた。
本格的な保険募集改革の時を向かえ、厳しい環境の中で積み残した課題はあるが、理事会、各担当委員会
では使命感をもって取り組みを進めており、次年度においても「立てた目標を達成する」ために何ができる
か考えながら、情報と熱が伝わる組織活動を展開していく必要がある。
なお、都道府県代協別では、京都代協、奈良県代協、山梨県代協、長崎県代協、熊本県代協が三冠王(会
員増強、国民年金基金新規加入員獲得、損保大学課程コンサルティングコース受講者募集)を連覇し、福岡
県代協は会員増強目標の12連覇を達成した。
事業区分別の概況は以下の通りである。
<公益目的事業>・・・教育、損害保険普及と消費者保護、地球環境保護・地域社会貢献
○ 代理店・募集人の資質向上への取り組み
平成27年4月に開講した「損害保険大学課程コンサルティングコース」においては、1, 197名の受講者
中1, 099名が修了し、6月の試験受験・合格の後に、他の要件の充足をみて自己申請することにより「損
害保険トータルプランナー」に認定される。また、平成28年4月開講の2016年度コースに関しても、強
力な受講勧奨を展開した結果、1, 458名の受講者が集まった。一定の制度周知が図れ、多くのトータル
プランナーが世に輩出される基礎が築けてきており、更なる制度の周知と改善を図っていきたい。
業界唯一の横断的な海外研修制度であるPIASは、今年度も14名の参加を得て35回目の実施となり、
累計の参加者も718名となった。米国代理店のプロ意識、情熱、使命感を肌で感じることができる貴重
な研修であり、業界内に広く情宣し、継続実施を行っていく方針である。なお、既に募集開始していた
第36回PIASの開催に関しては中止を決定した。米国の研修機関からの受入条件変更要請に対し、直ち
― 16 ―
に応諾することが難しい状況であったためである。代替策も含め、今後の海外研修のあり方と対応策を
検討することとした。
ブロック・代協・支部セミナーの開催は、延295回、参加者数12, 417名(前年度282回、12, 115名)と
前年同様に堅調であるが、未実施代協・支部もあり、取り組みの温度差がみられるため、更なる活性化
を働き掛ける必要がある。
○ 損害保険の普及と消費者保護に向けた取り組み
企画環境委員会を中心に、保険契約者等の利益保護のための募集の公平性の維持を図るため、「募集
環境問題対応ハンドブック」の活用・セミナーの実施(94回、2, 988名参加)、募集現場の実態把握によ
る不適正募集のデータベース化(116件)を行うとともに、必要に応じて金融庁、損保各社等への情報
提供を行った。
また、代理店賠責の加入勧奨においては、エース社による36箇所のセミナー実施の他に、説明用の
10分版資料(企画環境委員会作成PPT)を活用した損保各社の業務連絡会での研修会が奏功し、加入率
向上及び会員増強につながった。更に「代協活動の現状と課題」のサマライズ版資料(同)の活用によ
り、企画環境委員を中心に全国34箇所1, 042名に代協の活動目的、存在意義等を周知した。
消費者団体等との対話活動の推進に関しては、14代協で延べ19回実施し、消費者側131名(前年度224
名)
、代協側131名(前年度166名)の参加があった。
○ 地球環境保護、地域社会貢献活動
本会会員が地域に根差した地域のリスクマネージャーとして広く認知いただけるよう、地球環境保護
運動や地域社会貢献活動にも注力した。地球環境保護活動に関しては、38代協(前年度38)、1ブロッ
ク(前年度2)で計82回(前年度82)
、延べ3, 668名が参加して実施した。地域社会貢献活動に関しては、
損保協会との強力な連携を図りながら、ぼうさい探検隊、地震保険普及、無保険車追放の取り組み、自
動車盗難対策、高齢者自動車事故防止対策、自転車事故防止対策等の取り組みを推進した。
特に、ぼうさい探検隊は、代協関連で81団体312マップ2, 191名(前年度43団体165マップ1, 810名)の
応募があり、うち2点が審査員特別賞、11点が佳作入賞と、今後の更なる拡大が期待される成果となっ
た。今年度も本会としてマップコンクールを後援し、「キッズリスクアドバイザー賞(日本代協賞)」を
贈呈した。また、本会関連で参加した児童2, 191名に参加賞を提供した。
グリーン基金(寄付金)に関しては、継続応募(寄付の公表ならびに活動報告あり)@10万円:6団
体、継続応募(寄付の公表ならびに活動報告なし)@5万円:8団体、継続応募(震災関連活動あり)@10
万円:2団体、2年以上前に応募または新規応募@5万円:14団体の合計30団体に対して、計190万円
を寄付した。
公開講座は、3支部、10代協・5ブロックにて計18回開催、参加者も2, 199名となった。また、学校
教育への取組においても、
「高校への交通安全出前講座」を8代協17校3, 165名(前年度7代協15校で2, 700
名)に対して実施、損保協会と連携した「大学における損害保険論等の講座」においても6校で各代協
の会員が講師を務めた。併せて、講師のスキルアップを図るため、10月にプレゼン研修会を開催し、受
講者6名を「日本代協認定講師」と位置付けた。
<共益事業>・・・組織力強化、活力ある代理店制度の構築、代理店賠責、会員への支援・サービス提供
○ 組織力強化
社団法人の力の源泉は組織力である。代理店数は平成26年度末で204, 990店(平成25年度末は192, 007
店)と前年度から12, 983店増えているが、勤務型代理店等の新設によるものを除くと対前年度微減とい
う状態である。今年度も専業・兼業、チャネルを問わず数多くの志の高い「保険(募集)のプロ」を仲
― 17 ―
間として迎えるべく、組織一丸となった取り組みを展開した。
必達目標として掲げた12, 500店が達成できなかったことは大変残念であるが、「業法改正への対応」、
「代理店の賠償責任」などの研修会の開催を始めとする積極的な情報提供により、会員はもちろん損保
各社の本部や営業第一線が以前にも増して協力的になっていることが感じられる。これを受けて、各社
のトップ層代理店の入会も相次ぎ、保険会社別でも昨年度に続き、対前年度比較にて全社が増店となり、
潮目が変わってきていることを実感できた。その結果、今年度は+289店(入会852店、退会563店)と、
4年連続での増店、しかも昨年の260店を上回る増店となった。
但し、ここでも代協による取り組みに大きな濃淡があり、引き続きの課題となった。
○ 活力ある代理店制度等の構築
第1回目を平成27年7月22日に開催した。代理店の成長・発展、並びに公平・公正な募集環境の構築
に向けて、代理店を取り巻く環境を「外的要因」、「内的要因」に区分した上で、代理店の一人当たり生
産性を高めていくためのポイントを論議した。また、各社の平成27年度専業代理店戦略・代理店手数料
体系(平成28年度支払分)を開示いただき、各社戦略やビジネスモデルを確認した。
第2回目は平成28年2月17日に開催した。代理店サイドで関心が高い「現行代理店手数料体系に関す
る代理店の主な疑問・不満点」について、代理店の声を報告し、意見交換を行った。また、各社の平成
28年度専業代理店戦略・代理店手数料体系(平成29年度支払分)を開示いただき、各社戦略を確認した。
○ 代理店賠償責任保険
今年度は企画環境委員を中心に、損保各社の業務連絡会等にて「代理店の賠償責任」に関する15分版・
10分版の情報提供を積極的に展開した。また、エース社の協力の下、各地で代理店賠責研修会も開催し、
「万が一の時の代理店経営のプロテクター」として本制度の情宣と加入促進を図った。その結果、加入率、
加入店数とも増となり(平成28年3月末時点加入率83. 2%:10, 027店/12, 047店と増加)、加入店数も制
度創設以来初めて1万店を突破した。
○ 会員への支援・サービス提供
年間9回発行の「日本代協ニュース」にて、タイムリーに取組内容のポイントを伝えた。また、代協
会員の必携である「代協活動の現状と課題」も9月に全会員に配布し、活用を行った。
さらに、新日本保険新聞にて、日本代協プレゼンツの「中小企業開拓に役立つ財務知識」が継続連載
中であり、各代協の掲載記事のデータ提供ができる仕組みも活用できている。
また、日本代協アドバイザーに就任した日本創倫に執筆いただき、改正保険業法対応「体制整備の豆
知識」
(平成27年度内ではvol.1~7)を順次、配信した。
東日本大震災関連の取り組みとしては、「私たち損害保険代理店の事業継続計画」の発行に続き、今
年度は野村総研とタッグを組み、被災地代協の協力を得て、被災から4年後の代理店の状況をヒアリン
グして『東日本大震災による損害保険代理店経営への影響に関する調査』報告書を作成し、今後の支援
構築の仕組みにつなげるべく、関連各署に配布した。
<法人運営>・・・コンベンション
○ コンベンション
11月13日・14日、「代理店のマネジメントのあり方を考える」をテーマに第5回コンベンションを開
催した。基調講演(
「チームマネジメント~今治からの挑戦~」サッカー日本代表元監督(現)株式会
社今治夢スポーツ代表取締役 岡田武史氏)、分科会をはじめ、プログラムの内容は総じて好評であっ
た。また、懇親会は業界各社・各団体のリーダーが一同に会するいい機会として定例化されつつあり、
今後につながるイベントとなった。
― 18 ―
2 本年度の取り組み指針
⑴ 目指していく姿:
[代協会員]
① 消費者のニーズに的確に応えることができる募集品質を備えた代理店になる
② 自立して業務を行い、自律してPDCAサイクルを回せる代理店になる
③ 正確で迅速な顧客対応ができる業務品質を備えた代理店になる
④ コンプライアンスが徹底された代理店になる
⑤ 社員満足度が高く、持続的な成長力を有する代理店になる
[代協活動]
① 募集人の資質向上・経営者のマネジメント力向上を支援する
② 公平・公正な保険市場の構築に向けて取り組む
③ 代理店の存在と役割を広く社会に広めていく
④ 社会貢献活動を推進する
⑤ 組織力を強化し、互いに成長する
⑵ 日本代協運営の指針:
① オープンで丁寧な組織運営を行い、活動の透明性を高める
② 各代協の取り組み事例を収集、情宣し、より良い取り組みを後押しする
③ 若手会員、女性会員の登用を図り、組織を活性化する
④ 組織として決めたことを尊重し、実践し、結果に残す
⑤ 関係各組織には敬意を持って接し、良好な信頼関係を構築する(特に、損保協会)
⑶ 代理店経営支援の指針:
① 代協会員の経営品質向上(特に従業員重視)、経営マネジメント力向上を支援する
② 代協会員の成長力確保・業務効率向上・収益力強化を支援する
③ 代協会員の一人当たり生産性の向上に資する支援を行う(@1, 000万円を目標)
④ 小規模代理店を前提としたマーケティング支援を行う(地域ブランド構築を含む)
⑤ 代理店の体制整備に関わる情報提供、サポートを行う(社会保険の加入徹底を含む)
3 平成28年度の事業活動の概要
1:教育・研修事業
◦ 「損害保険大学課程」の円滑な運営を確保する
◦ コンサルティングコースの受講者募集に主体的に取り組む
◦ 損害保険トータルプランナーの周知・情宣に努め、認知度向上を図る
◦ 日本代協独自の教育体系を検討・展開する
2:消費者保護・保険普及
◦ 各チャネルの保険販売に対するモニタリングを継続する
◦ 募集環境の整備・改善に取り組む
◦ 業界標準化の推進にむけて提言を行う
― 19 ―
3:地球環境保護・社会貢献活動
◦ 地域における防災・減災・事故防止の取り組みを進める
◦ 学校教育・消費者教育への取り組みを進める
◦ 地震保険の必要性の情宣に努め、普及を図る
◦ グリーン基金の贈呈を行い、各団体と各代協との地域ネットワークを構築する
◦ 消費者団体との対話活動を行う
4:組織力強化
◦ チャネル区分に囚われず「プロの志を有した代理店」を代協会員に取り込む
◦ 本年度は平成27年度末正会員数+300店を増強目標とし、組織一体となって取り組む
◦ 支部・代協・ブロック協議会強化のための取り組みを推進する
◦ 国民年金基金の加入者増目標を達成する
◦ 各保険会社との関係強化を図り、会員増強への協力体制を構築する
5:代理店経営支援
◦ 改正保険業法対応の状況を注視し、必要な支援策を提供する
◦ 代理店の体制整備を支援する
◦ 「活力研」を通して保険会社との対話を継続し、課題解決につなげる
◦ 代理店賠責の普及に取り組む
◦ コンベンションを開催する
◦ 代理店経営支援策を検討する
◦ 大規模災害対策を検討する
【参考】日本損害保険協会の取り組み:『損保協会第7次中期計画(平成27年度~29年度)』の概要
平成27年度を初年度とする3年間の重点課題は以下の通りである。
(各課題の内容は後掲資料参照)
[新たな環境変化に対応することによる「安心・安全な社会づくり」への貢献]
〇 超高齢社会への取組み
〇 グローバル化への取組み
〇 新たなリスクへの取組み
[災害・犯罪の防止または軽減による「安心・安全な社会づくり」への貢献]
〇 自然災害への取組み
〇 保険犯罪への取組み
[消費者の保険の利用環境を整備することによる「安心・安全な社会づくり」への貢献]
〇 新たな募集態勢の構築に向けた取組み
〇 消費者からの相談・苦情・紛争解決への取組み
〇 消費者教育の取組み
― 20 ―
― 21 ―
(出典:日本損害保険協会HP)
・損害保険への理解を促進することにより、損害保険の裾野拡大やトラブル減少に取り組むとともに、これを踏まえた保険規制のあり方を提言する。
・交通安全・防災・防犯等の安全に関する意識啓発や、保険加入判断にも役立ちうる安全に関する教育を推進することにより、事故の減少ひいては社会的損失の低減に向けて実効性の高い取組みを
推進する。
○消費者教育の取組み
・業界全体で業務品質向上に資する取組みを推進するとともに、そんぽADRセンターの一層の態勢強化等を推進する。
○消費者からの相談・苦情・紛争解決への取組み
・改正保険業法により導入された情報提供義務・意向把握義務・代理店の体制整備義務への対応等、募集品質の維持・向上に資する取組みを推進する。なお、代理店の体制整備については、代理店
の管理・指導を後押しする制度・仕組みの構築を含め効果的・効率的な対応を講じる。
・損害保険募集人一般試験や損害保険大学課程等、募集人教育の改善・安定化に資する取組みを推進する。
○新たな募集態勢の構築に向けた取組み
消費者の保険の利用環境を整備することによる「安心・安全な社会づくり」への貢献
・不正請求防止に係るシステムインフラの整備や消費者への啓発活動等、実効性の高い不正請求対策を実施する。
○保険犯罪への取組み
・自然災害の発生実態や地域特性等に基づく、より効果的な防止策の提案等、自然災害における防災・減災に資する取組みを推進する。
・自然災害に係るリスクマネジメントの高度化による損保業界の健全性の維持・向上に向けた取組みを推進する。
・多様化する自然災害に応じた啓発や防災教育の実施等、消費者を取り巻くリスクに関する情報を共有し意思疎通を図るリスクコミュニケーションに資する取組みを推進する。
・地震保険の理解促進・普及促進の取組みを推進するとともに、東日本大震災で明らかになった課題も踏まえ、迅速・適正な保険金支払いを確保するための態勢整備を推進する。
○自然災害への取組み
災害・犯罪の防止または軽減による「安心・安全な社会づくり」への貢献
・賠償責任や被害者救済等、新技術の実用化が損保業界に与える影響に関する研究・整理を通じて、各社共通となる事業基盤の整備に資する取組みを推進する。
○新たなリスクへの取組み
・国際保険監督規制を中心に国際的な規制の動向を注視するとともに、保険監督規制以外の国際的議論の動向についても注視し、国内法制度への影響等を踏まえた要望・提言を行う等、市場・事業
環境の整備に資する取組みを推進する。また、アジア諸国の金融インフラ整備支援や通商課題への対応等、損保市場の健全な発展と会員会社の海外事業基盤の整備に資する取組みを推進する。
・訪日外国人への案内・情報提供のあり方や態勢整備等についての各種課題の整理、およびその取組みを推進する。
○グローバル化への取組み
・高齢者事故の発生実態や事故特性等に基づく、より効果的な防止策の提案や啓発の実施等、高齢者の事故防止・減少に資する取組みを推進する。
・超高齢社会に見合った新たなルール等の整備、保険募集・保険金支払に関する態勢整備等の取組みを推進する。
○超高齢社会への取組み
新たな環境変化に対応することによる「安心・安全な社会づくり」への貢献
【重点課題(~ 年度)の概要】
損害保険業界が、損害保険業の健全な発展と信頼性の向上を通じて「安心・安全な社会づくり」に貢献していくため、損保協会とし
て当面の か年(~ 年度)で優先的に取り組む課題を重点課題と位置づけ、解決に向けて取組みを推進する。
一般社団法人日本損害保険協会 第 次中期基本計画(~ 年度)
4 代理店・募集人の資質向上への取り組み
■日本代協における教育研修事業の位置付けと基本的な考え方
日本代協の最大の目的は、損害保険の普及と保険契約者の利益保護を図るため、「損害保険代理店の資質
を高め、その業務の適切な運営を確保すること」(定款第3条)にある。
高い目標ではあるが、一歩でも近づいていくために、全ての代協会員とその募集人は常に自己啓発、自己
研鑚に努めるとともに、保険会社や日本代協並びに各代協が提供する定期的な研修・セミナーの機会を活用
して自らのレベルを向上させ、それらの成果を日々の業務を通して発揮し、消費者・契約者の信頼に応え続
けることが必要である。
特に、平成28年5月29日に施行された改正保険業法は、社会全体の消費者重視の大きな流れの中で、代理
店に対してより一層の顧客対応力向上と代理店経営の高度化を求めており、各代協会員は、このような社会
的要請を正面から受けとめ、「お客様の信頼と業務の品質において業界を代表する代理店」になるとともに、
保険を活用したリスク対策の「プロ」として社会に認知される存在になることが重要である。
日本代協では、長年にわたり、募集人の教育研修事業を最も重要な業務と位置付けて取り組みを続けてお
り、特に、平成10年度以降は「保険大学校」と「(日本代協)認定保険代理士」の制度運営に注力し、より
資質の高い募集人の育成に注力してきた。
その後、業界共通の基盤の上に募集人教育・資格認定制度を構築しようという機運が盛り上がり、損保協
会と日本代協で検討チームを組成して論議を重ねた結果、日本代協の「保険大学校」・「認定保険代理士制
度」は、損保協会の「専門試験」と発展的に統合することとなり、業界共通の募集人資格認定制度となる
「損害保険大学課程」に形を変えて平成24年度から新たなスタートを切ることになった。同時に、日本代協
は、その指定教育機関となり、業界全体の募集人教育を下支えすることになった。
これに伴い、
「認定保険代理士」も、損保協会認定の募集人資格の最高峰である「損害保険トータルプラ
ンナー」に生まれ変わることとなり、募集人の資質向上の取り組みは、業界共通の基盤を持つ新たな資格認
定制度のステージへ引き継がれることとなった。
日本代協の長年にわたる募集人の資質向上に向けた努力が評価され、業界共通の資格認定制度創設という
大きな成果につながったものであるが、保険大学校を支えてきた基本精神・理念は何ら変わらずに「損害保
険大学課程」に引き継がれている。日本代協としては、「募集人の資質向上こそが業界の信頼基盤」との信
念に基づき、損保協会と力を合せて円滑な制度運営と受講者募集並びに教育プログラムの更なる充実に取り
組む方針である。
■日本代協が掲げる“目指すべき代理店(募集人)像”
資質向上の目標となる代理店(募集人)のイメージは以下の通りである。
① 消費者のニーズ(意向)を的確に捉え、リスクに基づいたベストな商品選択のアドバイスができる
消費者の状況によっては、保険商品以外の選択肢も提示できる
② 約款を熟知し、契約に当たって重要な事項を、正確かつ分かりやすく説明できる
③ 契約者へのアフターフォローが確実・迅速にできる(契約の変更・保険金請求手続き支援 等)
④ 変化に応じた各種情報提供サービスが継続的に実行できる
⑤ リスクを回避したり、被害を最小限にとどめるためのアドバイスができる(防災・減災)
⑥ 万が一、募集上の誤りが自身にあった場合は、常に自ら責任を負う覚悟で業務を行っている
― 22 ―
■教育研修事業の歴史
教育研修事業は、本会の創立以来最も重要な施策と位置付けられ、組織を挙げた取り組みを進めてきた。
歴史的には、昭和40年度より全国規模の「日本代協ブロックセミナー(旧全代連セミナー)」と各代協主催
のセミナーから活動が始まり、昭和54年度には初めて外国研修(「太平洋損害保険代理店米国研修(PIAS)」
を実施した。昭和56年度には、新たに学校方式による教育活動を導入し、教育事業体系を「セミナー系列」、
「外国研修系列」
、
「学校系列」の三本立てとして拡大・充実を図ってきた。また、平成3年度から新たに
「代協人材育成研修会」を新設し、平成8年度からは「新任理事研修」(現在の「新任代協会長オリエンテー
ション」
)を実施している。
日本代協ブロックセミナーは、損保協会並びに各損保会社の協賛のもと、毎年ブロック毎に開催してきた
が、昭和56年度より開催ブロックを2ヵ所にして拡充を図った。
学校方式による教育活動は、大蔵省の指導ならびに損保協会の後援のもと、昭和56年度より年1ヵ所の開
校で実施したところ、好評であったため、昭和58年度からは毎年2ヵ所に拡充したが、平成7年度から再び
1ヵ所となり、平成9年度の埼玉での代理店学校を最後に、新たに創設された「保険大学校」へと引き継が
れることとなった。(この間、通算27回開催・受講者総数10, 251名)
外国研修は、PIAS(米国研修)に加え、平成9年度には「ヨーロッパ損害保険代理店研修」(EIAS)を
初めて実施したが、翌年は最少催行人数を満たさず中止となった。(PIASは継続実施しており、平成27年度
は第35次の研修団を派遣した。)
平成10年度からは、損害保険の急激な自由化、規制緩和に対応した教育・研修体制の確立を図るため、教
育研修事業を「保険大学校(PIASを含む)」、
「人材育成研修会」、「代協セミナー」の三本立てに再構成して
実施してきた。
平成24年度からは、業界共通の「損害保険大学課程」が始まり、日本代協の教育体系も新たなステージを
迎えることとなった。これに伴い、日本代協としては、次の段階の継続教育のあり方を検討する必要がある
と判断し、平成24年度から教育委員会を中心に論議を続けているところである。
■日本代協の現在の募集人教育体系
⑴ 「保険大学校」(第1期~第14期[最終])
平成10年度に開講した日本代協保険大学校は、平成23年度の第14期で最終期となり、平成24年度以降は
「損害保険大学課程」に発展的に引き継がれた。この間の累計受講者数は12, 960名となり、累計修了者数は、
11, 640名となった。
⑵ 「損害保険大学課程」
平成24年度に開講した「損害保険大学課程」は、損保協会の中核事業の一つに位置付けられているが、
日本代協はその指定教育機関として、業界全体の募集人教育の下支えを行っている。引き続き、制度の安
定稼働に注力するとともに、より実践的で有益なプログラムとなるよう今後も損保協会と連携して取り組
んでいく方針である。
⑶ 太平洋保険学校(PIAS)=米国研修
昭和54年度の第1回目から継続的に実施し、平成28年度は第36次の研修団を派遣する予定であったが、
米国の研修受入先機関との実施条件の協議が整わなかったため実施を断念し、次年度の再開へ向け、改め
て実施プランを検討することとした。
損害保険という仕組みは世界共通であるが、その制度は法制・税制・社会保障制度・歴史・文化・消費
― 23 ―
者の意識等によって大きく異なる面があり、米国の好事例がそのまま日本で使えるわけではない。しかし
ながら、米国の代理店・募集人の強烈なプロ意識と高い業務レベルを肌で感じる機会は貴重であり、また、
日常業務を離れて視野を広げ、自分の仕事を見つめ直すことで今後の代理店経営改善の気付きを得る有益
な機会にもなるので、次代を担う若手を中心に一度は参加することが望まれる。
⑷ 人材育成研修会
本会並びに代協の次代を担うリーダーの育成は極めて重要な課題であり、日本代協では毎年4つのブ
ロック毎に順に開催していく方針としている。また、自主的な開催も期待される。
⑸ 代協・代協支部セミナー
代協・代協支部におけるセミナーは「集い、語らう」代協活動の基本であり、継続的・計画的な開催が
何よりも望まれる。
■平成28年度の教育研修事業計画
⑴ 「損害保険大学課程」の運営
① 指定教育機関としての役割発揮
・日本代協は本課程の指定教育機関であることを自覚し、教育委員会を中心に、損保協会との連携を図
りながら制度の企画・運営に当たる。運営に当たっては、教育委員会下部のプロジェクトチームが主
体となり、各代協と連携して進める。
・損保協会との「定例合同運営会議」
(4半期に1回・年4回開催)における論議を通して、より良い
プログラム構築と制度改善を継続的に進める。
② 「損害保険大学課程」受講生の募集推進
・
「損害保険大学課程」の制度周知や受講者募集に関しては、損保協会、損保各社と連携して取り組み
を進める。併せて、保険会社に対し、代理店認定要件のマスト項目として本課程取得を織り込むよう
要望を行う。(判定項目に織り込み済みの保険会社が徐々に増えている。)
・受講者募集に関しては、日本代協が主体的、能動的に取り組み、安定的な運営を可能とする自主目標
を掲げて推進する。(本年度は日本代協目標として840名を予定)
③ 「損害保険大学課程」の認知度向上の取り組み
「損害保険大学課程」に対する営業第一線の認知度には依然としてバラつきがあるため、損保協会、
損保各社と連携を図り、制度の周知徹底に取り組むとともに、プロ代理店を中心に多くの募集人に積極
的なチャレンジを促していく。
⑵ 日本代協独自の教育制度の検討・実施
① 損害保険大学課程を補完する教育プログラムの提供を検討し、出来るものから実施する。平成28年度
は、第一弾として以下の二つの研修を実施する。具体的な実施方法や拡充していくカリキュラムについ
ては、教育委員会において引き続き検討する。
・
「マネジメント力向上研修」
・
「コミュニケーション力向上研修」
② ビジョン委員会ならびに事務局において、代理店の若手社員、事務職員等を対象にした「損害保険基
礎講座(仮称)
」の開催プランを検討し、平成28年度中に試行を行う。試行に当たっては、教育コンサ
ルタント会社であるRAMインターナショナル株式会社の協力を得る。
③ 各代協会員の募集品質・顧客接点能力向上のため、外部機関の活用ができないか、事務局で検討する。
― 24 ―
⑶ 「損害保険トータルプランナーの会」のあり方
現時点では大阪を除いて全国的な取り組みには至っていないが、非会員を含めた相互研鑚の場は代協会
員にとっても資質向上に有効であり、損保協会とも協議しながら、教育委員会において参加資格の考え方
や活動内容プラン等を検討する。
⑷ 人材育成研修会
平成28年度は、定期開催分として、南東北・南関東・東中国・九州北の4ブロックで開催する。
⑸ 代協セミナー・代協支部セミナー
全代協会員が定期的に最新情報に触れ、旬のテーマについて意見交換を行う機会を持つために、継続的
な教育・研修の機会が必要であり、また、そうした取り組みは代協活動の原点でもある。引き続き、各代
協で創意工夫を発揮しながら計画的に開催し、会員に対する有益な情報提供に努める。
■「損害保険トータルプランナー」認知度向上の取り組み
⑴ 社会的信認度向上の取り組み
消費者に募集人選択時のメルクマールとして認識してもらうために、先ずは「損害保険トータルプラン
ナー」の存在と実力を社会から認めてもらうことが必要である。そのためには、損害保険トータルプラン
ナー自身が日々の活動の中でお客様本位の営業活動を展開し、信頼度を高めていくことが重要である。
⑵ 「3つの基本行動」の実践
損害保険トータルプランナーが消費者保護及び資質向上に取り組む姿勢を対外的に示すために、下記の
「3つの基本行動」を各代協、代協会員において実施する。
① 代理店事務所に「損害保険トータルプランナーポスター」並びに「認定証(PDF版)」を掲示する
② 募集時に「同・認定証(通称;ゴールドカード)」を提示する
③ 契約者に「同・チラシ」を手交する(損保協会作成汎用チラシ)
なお、損保協会のホームページに外部リンクされている「損害保険トータルプランナーのいる代理店検
索」への登録に関しても積極的に推進する。
⑶ ビジュアル媒体の活用
認知度向上のためには、先ず何よりも損害保険トータルプランナー自らが、日々の活動の中で消費者に
その価値を提供していくことが重要である。その支援のために、ビジュアル媒体を活用したPR活動を継
続して実施する。平成28年度は以下の企画を予定している。
・内容:消費者を視聴対象としたメッセージ性の高いショートムービーを複数製作し、You Tube等に
載せてPRする
・活用:You TubeなどWeb媒体を使った広告活動ならびにPRチラシの配布
― 25 ―
5 「損害保険大学課程」の創設と運営
■「損害保険大学課程」の創設と日本代協との関係
損保協会と日本代協は、
「損害保険大学課程」の創設に向けて検討を行い、平成24年7月から業界共通の
最高峰の募集人資格認定制度として開講に至った。(詳細は前章記載の通り)業界に先駆けて平成10年度か
ら保険大学校・認定保険代理士制度を創設・運営し、以後着実に拡大を図ってきた多くの本会関係者の努力
が認められるとともに、新たな業界共通制度の構築という形で実を結ぶこととなり、日本代協にとって画期
的な成果となった。
また、既存の認定保険代理士の新制度への移行についても、要望通り実現することとなり、保険大学校を
卒業して認定保険代理士となった多くの募集人の努力が新しいステージの中で報われる形となった。
「損害保険大学課程」創設に関する損保協会の対外的な公表内容は以下の通りである。制度の趣旨ととも
に、本会との関係についても明示された点は注目される。
<損保協会ニュースリリースの概要(平成23年5月18日)>
『社団法人日本損害保険協会では、2011年10月実施予定の「損害保険募集人一般試験」に合格した損
害保険募集人が、さらなる保険募集の品質向上に取り組むことにより、お客さまにご満足いただける
サービスを提供できるよう、2012年7月(予定)から「損害保険大学課程」をスタートします。
損保協会では、現在、保険募集に関連する幅広い知識修得のため「損害保険代理店専門試験」を実施
しています。一方、社団法人 日本損害保険代理業協会では、同様の趣旨で「保険大学校」・「認定保険
代理士制度」を実施しています。本課程は、両協会が合同検討の上、制度を整理・統合し、今般、損害
保険業界共通の制度として構築するものです。
本課程では、「専門コース」と「コンサルティングコース」の2つのコースを設け、それぞれ専用の
教育プログラムを修了し試験に合格した募集人のうち、所定の認定要件を充足した者を損保協会が認定
します。本課程の創設により、さらなる保険募集の品質向上を目指します。』
〈原文〉
■代理店・募集人の意識改革の必要性
自由化で業界統一の募集人・代理店に対する資格・種別制度(ノンマリン代理店制度)が廃止されて以降、
損保業界における統一試験は、入口段階の「募集人資格(基礎単位・商品単位)」のみとなった。また、そ
の中の「商品単位」は保険会社による研修代替が認められていたため、資格保有の認識がない募集人も多く
存在していた。
そのため、保険募集に係わる高度な資格の保持は、自らの生業の価値を高める重要な要件であるにも関わ
らず、自分の保有する資格に関する認識が甘く、その管理も保険会社任せになっている募集人がまだまだ多
く存在するのが実態である。
(注:この点は、募集人資格の取得・維持に多大なロードとコストを要し、自
らの重要な品質表示と捉える欧米各国の実態とは大きな違いがある。)
こうした背景を踏まえ、日本代協としては、消費者から求められ、選択される募集人になるために、代理
店・募集人の意識改革を働きかけて「持続的に学ぶ文化・学び合う文化」を広め、持続的に資質向上に取り
組む環境を構築する必要がある。
― 26 ―
■指定教育機関としての日本代協の役割
「損害保険大学課程」の主催者は損保協会であるが、日本代協はその指定教育機関として、教育プログラ
ムの運営を担っている。主な役割は、以下の通りである。
○ 受講者の受付・管理
○ 受講料収納
○ 教育プログラムの作成
○ 「コンサルティングコース」テキスト等の作成
○ セミナーの運営(講師選定・会場手配・事務局業務)
○ 通信教育の運営(発送、採点・解説等)
○ 受講者からの照会応答対応
また、受講者募集についても、従来の保険大学校での受講者実績をベースに、本会として能動的、主体的
に取り組む必要がある。
なお、本会は本事業を収益事業ではなく、収支相償を前提とした公益的な活動(一般社団法人への移行法
人としては「継続事業」の位置づけ)として取り組んでいくこととしている。
■本課程の運営状況
現時点の現状は以下の通りである。
⑴ コンサルティングコース教育プログラム
各年度の状況は、下記の通りである。
なお、平成28年4月から、損害保険トータルプランナーとして最初の認定更新が始まっている。旧認定
保険代理士の3期・6期・9期・12期からの移行者が対象となるが、今後も順次更新を控えるため、ス
ムーズな運営が行えるよう、損保協会と連携して取り組む。
□
【平成25年度受講生】
<受講申込者> 0, 804名 / <受講料> 76, 000円 / <修了状況> 0, 798名中0, 759名が修了
□
【平成26年度受講生】
<受講申込者> 0, 803名 / <受講料> 77, 760円 / <修了状況> 0, 780名中0, 732名が修了
□
【平成27年度受講生】
<受講申込者> 1, 210名 / <受講料> 77, 760円 / <修了状況> 1, 197名中1, 106名が修了
⇒ 未修了者は在学期限である平成29年3月31日までに修了を目指す必要がある
□
【平成28年度受講生】
<受講申込者> 1, 498名 / <受講料> 77, 760円
□
【平成29年度受講生】
受講申込受付期間は、平成28年12月1日~平成29年2月17日を予定している
⑵ 専門コース教育プログラム
同プログラムについては、受講者数が伸びず、平成27年度から実施を取り止めることとなった。
(受講者数:平成24年度139名・平成25年度96名・平成26年度130名)
専門コースは、自学自習でも認定試験を受けることができることもあって、テキストのみ購入して試験
に臨む応募者が大半となり、同コース用の教育プログラムの意味が薄れてしまったためである。併せて、
プログラムの価値を、受講者に周知・訴求しきれなかったことが閉講の要因でもある。
― 27 ―
⑶ 「損害保険トータルプランナー」「同・プランナー」認定状況
□
「損害保険トータルプランナー」:平成28年5月1日現在 認定者10, 243名
(内訳:認定保険代理士からの移行組…9, 045名・新規認定組…1, 198名)
□
「損害保険プランナー」:平成28年5月1日現在 認定者71, 451名
(この内、損害保険トータルプランナーの認定は取得しておらず、損害保険プランナーの認定のみを取
得している募集人は、60, 445名)
■募集人資格の社会的位置づけ強化に向けた取り組み
⑴ 代理店選別の必要性
商品・価格が各社共通であった規制時代においては、保険加入の際に利便性を考慮していた消費者が、
自由化に伴う商品・価格・サービス等の多様化が進展する中で、信頼して相談できる身近な専門家の存在
を求めており、本会が掲げてきた「保険を選ぶ前に代理店(募集人)を選ぶ」ことの重要性が広く認識さ
れるようになっている。
一方で、代理店・募集人は、本来全員が「保険(募集)のプロ(注)」であるべきだが、その属性や成り
立ちから現時点においては業務品質には属人的なバラつきがあり、また、個々の募集人の資質は消費者か
ら見えにくいのが現実である。(消費者団体からは、保険業界に対し、「プロでない代理店・募集人を市場
に出すな」と言われている。)
注:
「専業」であっても、必ずしもプロとは言えない実態もある。逆に、統計上「兼業」その他であっ
ても、保険専管部署の設置や組織的教育等により、保険募集に関してプロの資質を有し、消費者に
信頼されている代理店・募集人も多数存在する。また、そうした代理店の多くは、来店型店舗が話
題になる以前から来店対応の機能を有していたことは注目すべき点である。
⑵ 代理店資格の公的資格化の必要性と消費者の信頼獲得
上記認識から、本会としては、従来から「認定保険代理士」(現在は「損害保険トータルプランナー」)
に公的資格を付与し、質の高い募集人を消費者から見えやすくして消費者が募集人を選択する際のメルク
マール(品質のてがかり)にするとともに、その数を増やして募集人全体の資質の向上を図ることが必要
であると考え、取り組みを進めてきた。また、それが消費者の利益に直結するとともに、募集人の社会的
地位向上にも資することになると考えたのである。
同時に、個々の損害保険トータルプランナーは、保険会社と消費者との間に存在する情報ギャップを埋
める努力を続け、消費者のニーズやリスクに応じた商品選択の的確なアドバイス並びに契約内容の変更や
事故対応等のアフターサービスを徹底し、真のプロ(専門家)として認知されることが必要である。
たとえ募集人資格の公的資格化が実現しても、その価値を決めるのは消費者であり、「プロ」と認めら
れる責任は個々の募集人の日々の行動に懸かっている。資格を取って終わりではなく、継続的な学習とそ
の成果をお客様に対して発揮することで初めて認知されることになる。全ての募集人は、この点を改めて
認識し、自らの資質向上に継続的に取り組むことが求められる。
⑶ 公的資格のイメージ
公的資格とは、法律によってその資格制度が整備され、公的機関がその能力・技術的水準を社会的に維
持、向上させる必要がある資格で、専門的な知識・業務経験等が求められるものであり、現時点において
は次頁のようなカテゴリーが考えられる。
― 28 ―
① 国の行政機関が直接試験を行うもの(医師、弁護士等、参入制限・業務制限が目的)
⇒ 行政改革の流れの中で新たな国家資格を設けることは極めて難しいのが実状である。また、保険
募集資格を参入制限的な位置づけとすると、現実に存在する多くの消費者のニーズに応えきれな
いとともに、既存の募集人の一部が職を失うことにもなりかねず、現実的ではない。
② 地方自治体が試験を行うもの(宅地建物取引主任、美容師 等)
⇒ 行政のスリム化の流れの中で、全国の地方自治体において新たな試験制度を設け、運営してもら
うことは、物理的なハードルが高すぎる。
③ 国・地方自治体の指定団体が試験を行うもの(FP・金融窓口サービス 等)
⇒ 上記2案と比べると現実的な案である。(この場合は、損保協会が指定団体となることが想定され
る)但し、指定を受けるためには年間1万人程度の制度利用が必要であり、また、更新制度が認
められない等課題も多く、直ちにこれを目指して取り組む状況ではない。
④ 行政(金融庁)に「お墨付き」をもらう
⇒ 可能性としてはゼロではないが、行政としては業界共通資格で十分という立場であり、現実性は
乏しい。
⑤ 業界共通の統一資格制度にする
⇒「公的」色彩はないが、社会的な位置づけは高めることができる。現在の「損害保険大学課程」が
これに当たる。先ずは業界全体で本制度の内容を充実させ、広く消費者にPRしていくことが現実
的であり、また、効果もあると考える。
⑷ 今後の取り組み
募集人資格の社会的位置づけ強化に関しては、「損害保険大学課程」の創設により、業界として一定の
効果を生み出すことはできた。従って、新制度導入を考える前に、先ずは「損害保険大学課程」の安定稼
働と実績作りが必要である。本会としては、引き続き、損保協会との連携を図りながら受講者募集に取り
組むとともに、指定教育機関としての役割と責任を果たすことに注力する。
― 29 ―
6-1 公平・公正な募集環境の構築に向けた取り組み①
〈オープンでフェアな競争環境を構築するために〉
■基本方針
既得権益や前例踏襲あるいは岩盤規制にすがりつく業界では、消費者の満足を高めるイノベーションが起
こることもなく、相違工夫を発揮しようという活力も生まれない。また、活力を生み出すためには、それぞ
れの代理店・募集人の努力が報われる環境があることが必要である。
そのためには、募集現場において不公正と思われる取引を排除し、それぞれが保有する能力で消費者の信
頼を求めて競い合うことができる市場の確保が重要である。
本会は、このような認識の下、
「真面目に働く者が報われる社会」に少しでも近づいていけるように、日
本の保険市場における公平で公正な競争条件の確保、並びに募集環境整備に向けた取り組みを重要な柱の一
つと位置付けて活動を続けてきた。勿論、公平と平等は異なるため、例えば、規模や収益の大きい代理店を
保険会社が優遇したとしても、そのこと自体は営利企業として当たり前のことではあるが、それが商品内容
の優劣や保険料格差を生むようなことになれば、結果として多くの契約者や消費者にデメリットを与えるこ
とになる。即ち、リスク分析や商品提案力、商品説明力、事故発生時の対応力が優れた代理店が契約者から
選ばれる環境にしていかなければ、募集人の真の資質向上は望めず、消費者の利益保護には結びつかないの
である。
このような認識の下で、日本代協としては今後も各代協との連携を図りながら、「オープン」で「フェア」
な競争環境の構築に向けて引き続き努力を続ける方針である。
また、そのことが、本会の目的である「保険契約者の利益保護」ひいては「日本の損保業界の健全な発
展」に寄与することになると考える。
<活動を進めるにあたっての基本的な行動指針>
① 募集の公平性を維持し、不公正な競争を排除することは、保険契約者の利益保護並びに損保業界
全体の健全な発展のために重要な取り組みであり、重点施策として取り組む。
② 個別事案等において、早期対応が必要な案件は、ブロック協議会・各代協との連携を密にし、現
地にて迅速・最善の対応を実行する。
③ 法律等の制度やルールに及ぶ問題であれば、直接、あるいは、活力研等の対話の場を通して保険
会社に改善を求めるとともに、必要に応じ行政に対しても情報提供を行う。
④ その前提として、法律や制度の内容を正確に理解し、誤解や無知に基づく誤謬を犯さないよう留
意する。
■活動に当たっての留意点
「おかしい」と声を上げること、「正しいこと」を言い続けることは重要なことであるが、ビジネスの世界
においては、
「何を言っているのか」ではなく、「誰が言っているのか」によって相手の受け止め方が変わる
面があることも認識しておく必要がある。
相手に公平・公正な対応を求めるためには、それを求める側の組織もメンバーも、コンプライアンスの徹
底は勿論のこと、倫理的な側面も含めて外部から揶揄されることのないようしっかりとした座標軸を持って
行動し、周囲から信頼され評価される存在となることが大前提である。それは保険代理業という本業におい
― 30 ―
ても同じことが言える。
従って、各代協会員は、先ずは、
「自立と自律」の精神の下で、他律規範(ルールがあるから守るという
姿勢)ではなく、自ら定めたルールの下で事業活動を行う「自律規範」の精神のもとで、本業である保険代
理業において他の代理店・募集人の模範となり、消費者並びに保険会社から信頼される存在になることが何
よりも重要である。
日本代協の教育研修事業には、こうした強い思いが込められており、専門性を高めることは勿論のこと、
互いに切磋琢磨して専門性を高めるとともに、倫理観や人間性の面においても秀でた人材を育てる事を目指
している。結局はこうした努力が消費者の信頼につながり、公正な環境構築のための底力になるのである。
■個別事案への対応
平成18年度から付加保険料の商品審査が簡素化され、保険料の合理性・妥当性・公平性は、金融庁が事後
に行う損保各社の事業費に関するモニタリングによって確保されることになっている。
(注:自動車、火災保険
等の個人分野の商品の純率は、料率算出機構が算出する「参考純率」をベースに各社が判断している。
)日々
現場で様々なケースに遭遇する代理店としては、個別事案の中において、付加保険料の弾力化によって公平・
公正な募集環境が損なわれていないか、消費者が不利益を被っていないか、モニタリングを行う必要がある。
募集環境整備において先ず大事なことは、問題事案(コンプライアンス違反等)が発生した時に、速やか
に当該事案に対して個別に対応し、改善を求めることである。各代協を中心に、ブロック協議会や企画環境
委員会と連携して対処し、その上で再発防止のための取り組みを求める必要がある。
また、代協会員からの生の情報は「現場で起こっていること」をいち早く知るために重要であり、日々の
活動の中で得られた問題事案については、各代協経由企画環境委員会で集約を行い、問題解決につなげるこ
とが必要である。
なお、情報の信憑性を高めるためには、事案の特定とその内容の具体的な把握が必要であり、情報元の協
力が不可欠となる点は留意が必要である。
(注:匿名情報は相手にされない。また、当事者の一方のみの発
言に偏った情報では信憑性を疑われる。)
■制度的な問題に対する取り組み
⑴ 業際問題
保険業界の枠を超えた制度的問題で主要な課題は、現時点では「金融機関の窓口における保険販売」と
「郵便局における自動車保険販売(ゆうちょ銀行における火災保険販売を含む)」であるが、これらについ
ては、それぞれ章を改めて掲載しているので参照願う。(第7章・第8章)
⑵ 保険会社との間の制度問題
本件に関しては、各章の中に織り込まれている課題も多いため、それぞれの章を参照願う。なお、保険
会社との間の制度問題は、民と民の間で解決につなげることが基本であり、何よりも相互信頼をベースに
した冷静かつ論理的な意見交換が必要である。日本代協としては、損保7社との定期的な懇談会や「活力
ある代理店制度等研究会」などの意見交換の場を通して、継続的に対話を行っていく方針である。
⑶ 商品改定に伴う対応[自動車保険等級制度改定]
平成24年10月以降の契約から適用されている「事故有等級制度」に関しては、事故時の対応の際に、翌
年度保険料を睨んで保険金請求するか否か判断する必要があり、契約者にとって分かりにくく、かつ、代
理店に大きな負担がかかっている実態がある。主な問題点は次の通り。
― 31 ―
・仕組みが複雑で説明が難しい
➡ ex. 旧制度のような一本のライン上で動く方が消費者にとって分かりやすい
・長年の優良契約者であっても一度事故を起こすと、いきなり事故有等級に移行し、保険料が大幅に
アップして不満につながる
➡ ex. 長期優良契約者優遇のために、例えば30等級まで等級を増やすと同時に事故の際のランクダ
ウンを拡大する等の改善策が考えられる
・保険金が支払われる事故であっても「請求しない」となれば、そもそも何のために保険に入っている
のか分からなくなり、保険に対する信頼性を低下させる
➡ ex. 商品内容を見直し、フランチャイズなどを引き上げる
・人身事故の際、自賠責基準を超えて任意保険で支払われる保険金は戻し入れができず、契約者の不満
につながるケースがある(自賠を超える自己負担の方が、翌年度保険料の上り幅よりも少額の場合)
➡ 一括請求の場合は、支払保険金の額について、事前確認ができるようにする 等
本件については、収益改善が喫緊の課題であった保険会社サイドと現場の実態・消費者の認識とにかい
離があるが、あくまでも消費者・契約者の立場に立って考えた場合に「このような制度でいいのか?」と
いう視点を基軸にして、再検証を行う必要があると考える。(特に、近年の保険会社の好決算は、こうし
た疑念を深める要因になっている)こうした現場の声を保険会社や行政に伝え、少しでも実態改善ができ
るよう努めていく。
今後とも商品や制度の改定は続いていくため、消費者保護、消費者視点を基軸において問題提起を行い、
必要な対応を要請していくこととする。
■商工会議所の団体契約・集団扱契約への対応
⑴ これまでの日本代協の対応
商工会議所による保険の取り扱いについては、平成7年の製造物責任保険施行に伴う「中小企業PL保
険制度」を皮切りに、平成9年の所得補償団体契約「休業補償プラン」、平成10年の千葉県中小企業団体
中央会から全国に広がった自動車保険集団扱、平成16年の個人情報漏えい賠償責任保険団体契約等と続き、
現在も様々な動きがある。(この他、各地の商工会議所独自の取り組みあり)
⑵ 問題点と日本代協の取り組み
本会としては、
「そもそも論」として、商工会議所がこの種の保険制度に取り組み、集金事務費等の収
益を得る事は、その事業の規模や態様が商工会議所の事業活動を維持していく上で必要かつ相当な範囲を
逸脱するようなものになれば、営利事業を禁じている商工会議所法上問題となること、特に、自動車保
険・火災保険は一般代理店にとって収益の柱であり、公益法人である商工会議所が、自らの会員も多い一
般代理店の既得権益を侵害するような制度を運営することは問題がある、と考え、国策としてスタートし
たPL保険等一部の制度を除き、都度中止要請を行ってきた。
また、新種保険等の団体契約については、以下の問題点を指摘し、改善要請を続けてきた。
① 商工会議所と関連が深い事務管理代理店の存在に対する疑義と代理店としての適格性の問題
② 事務管理代理店と募集代理店の分担割合の問題
③ 保険料とは別に徴収される「制度維持費」の問題
④ 団体割引、優良割引の適用の問題
こうした動きを受けて、特定の保険会社を除き、一般代理店の収益の大半を占める自動車保険・火災保
― 32 ―
険の集団扱は、商工会議所サイド・保険会社双方で概ね自粛され、新種保険については前記①~④を踏ま
えた制度設計がされてきた経緯がある。
⑶ 日本代協の対応方針
商工会議所や各種制度に参画する保険会社・代理店の立場で考えた場合、
「
(自社の)専業代理店支援の
ためにやっていること」
、あるいは、
「
(商工会議所)会員のためのサービス提供だ」という立場、更には、
当該制度に地元の代協会員が参画している場合はどう対応するのか、といった問題があることは事実であ
る。しかしながら、一般的に見て、根拠の薄い割引の適用によって単に保険料が下がり、損害率が上昇す
ることは、
「一部の消費者の利益」が「その他多くの消費者の利益」を損なうことにつながるおそれがある。
こうした点を踏まえ、本会としては普及率が高く、代理店の収益の核にもなっている自動車保険、火災
保険の集団扱については、組織として断固反対の立場で臨むこととしている。
一方、商工会議所サイドとしてみれば、保険制度を活用して会員にメリットを提供しようと考えるのは
当然のことでもあり、常にこの問題は発生し続けることになる。
本件の最大の防御策は、代協あるいは代協会員が商工会議所の会員になり、保険制度を所管している委
員会に所属して制度論議に加わることによって、この種案件を提案段階で、内部から排除することである。
(注:実際に多くの代協でこうした取り組みを行っている)不満の声を上げるだけでは物事は解決しな
いため、具体的な事前対策をとることが必要である。
⑷ 中小企業開拓と商工会議所の制度プランの活用
一方で、中小企業の抱える各種新種リスクへの対応については、残念ながら既得権益を主張できるほど
の普及は図れていないのが実態であり、商工会議所のもつ仕組み・制度を利用して中小企業にアプローチ
することは有効な企業開拓方法となる。未開拓の状態のまま既得権と勘違いして「何でも反対」では逆に
市場から排除されてしまうことになる。
超高齢社会、少子化が進行する今後の日本国内損保マーケットにおいて、中小企業が抱える新種リスク
を保険市場に取り込んでいくことは専業代理店が生き残る主要な戦略の一つである。商工会議所のような
公的色彩を有した組織がオーソライズした制度は、地域のプロ代理店が地場企業開拓を進めるために非常
に有効であり、活用が望まれる。
⑸ 日本商工会議所と本会との関係構築
今後、日本商工会議所との間には未来志向の新たな関係を築いていくことが必要である。目指していく
方向は以下の通りであり、タイミングを計りながら、取り組みを進めていく。
① 日本商工会議所と日本代協本部との間で直接対話ができるルートを作り、保険会社を介さずに意思
疎通を図れる環境を構築する。
② 各代協においても各地域の商工会議所と従来以上の関係構築を図る。(会員になり、内部から声を
上げることが最も効果的)
③ 商工会議所と日本代協(各代協)との間で販売提携を行い、中小企業経営者のニーズが高く、普及
が進んでいない新種分野のリスクに関する開拓推進役を担う。(ニーズを喚起し、新たなマーケット
を創造するというプロ代理店の存在価値を示す。)
④ 上記関係構築をベースに、代協加盟代理店に対して中小企業マーケットの提供を行う。(現時点で
は具体的案件はないが、銀行窓販が制限なく全面解禁され、金融機関が本格的に中小企業マーケット
に参入する前に、リスクの専門家として開拓を進めることはプロ代理店にとって何よりも重要であり、
こうした視点から引き続き検討を行う。)
― 33 ―
■au社・ライフネット生命の「セット割」中止の経緯
⑴ セット割の導入と終了
ライフネット生命は、本年4月5日から、KDDI社を通じ、auのスマホから同生保の契約に加入した契
約者に対し、auの通信料を月200円、最長60か月間割り引く「金融サービスセット割」を実施していたが、
本サービスは11月末をもって終了することになった。
その代わりに、本年12月1日から、「還付金付auの生命保険」を発売し、毎月200円・最長60か月契約
者に還付する方法に変更することが発表された。
「セット割」は、KDDI(au)が自社の利用料である通信料を割り引くものであり、本年4月にライフ
ネット社がマスコミ発表した時点では、
「セット割は通信料の割引きであり、保険料を割り引いているわ
けではないので、保険業法第300条第1項5号(「保険料の割引、割戻しその他の特別の利益の提供を約し、
又は提供する行為」の禁止)に抵触せず、違法性はない」としていた。(注:保険料が月2, 000円ならライ
フネットには2, 000円全額が入るので、保険料を直接割り引いたわけではないとの見解)
⑵ 日本代協の見解と対応
本会としては、
「そもそも保険加入を前提条件にした本業商品の割引は、法が禁じている保険料割引の
脱法・潜脱行為である(=形を変えた保険料割引である)」と考え、本件公表後、ただちに関係部門に対
し見解を確認していたものである。その後、上記の通り、「セット割」は中止となり、結果的には本会の
見解にも沿った対応が行われることとなったものである。
本件を踏まえると、保険以外の商品を取り扱っている兼業チャネルにおける「保険加入を前提にした他
の商品の金銭的割引」には一定の歯止めをかけることができると思われ、今後の健全な競争環境構築につ
ながることが期待される。引き続き、モニタリングを通してこうした保険業法の脱法・潜脱行為が行われ
ないよう注視していく方針である。
なお、ライフネット社は上記の通り、セット割廃止と引き換えに「還付金付生保商品」の認可をとり、
新商品として販売する。認可をとった還付金は保険料割引ではないため、法的な問題点はなくなることに
なった。
(なお、詳細は把握できておらず、引き続き情報収集に努める)還付金は月200円・最長60か月と
なっており、契約者の支払総額は「セット割」の場合と同じであるが、「特典(=割引)目当ての加入」
という募集形態はなくなるので、顧客のリスクに適切に対応することを求める今回の改正保険業法の趣旨
にも沿った形になると考える。
(なお、新聞報道によれば、本件変更に伴い、ライフネット社の収保は、
当初想定よりも約1億円の減になる見込みとのことである。)
― 34 ―
6-2 公平・公正な募集環境の構築に向けた取り組み②
〈銀行等の保険商品販売に対する対応〉
■基本的な考え方
「銀行等による保険商品販売」(以下、銀行等の保険販売)に対する本会の基本的な考え方は以下の通りで
あり、引き続き関係当局(金融庁、消費者庁)に対して問題点を指摘し、消費者保護の徹底を求めていく。
⑴ 消費生活センターへの苦情実態等を見ても、銀行窓販に関しては優越的地位を利用した圧力募集や抱き
合せ販売の懸念は消えておらず、融資先に対する保険販売を禁止する等の弊害防止措置が必要である。
⑵ 消費者保護徹底の観点から、措置の内容については消費者への周知に努める必要がある。
⑶ 優越的な地位を利用した圧力的な保険募集の問題は、闇に潜り表面化しないおそれがあるため、深度あ
る議論を求めていく。
(※特に、中小事業者においては、融資拒否・引上げを恐れて、ニーズがなくとも
銀行等の意向に沿わざるをえない実態がありえる。この点を関係当局は十分認識すべきであり、引き続き
規制の在置を求めていく。)
■銀行等の保険販売の解禁の経緯<第1次解禁>(平成9年6月~平成13年4月)
平成9年6月の保険審議会において、
「子会社又は兄弟会社の保険商品に限定したうえで、住宅ローン関
連の長期火災保険及び信用生命保険の販売を認める。その際、影響力を行使した販売の禁止等の実効性のあ
る弊害防止措置を講じ、その遵守のための必要な監督を行うとともに、必要に応じ措置を見直し、常に実効
性を確保する。平成13年を目途に実施」と決まり、条件付きで銀行等の保険販売が認められた。
その後、平成12年5月31日に保険業法の一部改正法案が成立し、平成13年4月1日から銀行等の保険販売
が合法化されたが、詳細を定める内閣府令の内容は金融審の結論を待つこととなった。
一方で、政府の規制改革委員会は、規制緩和3ヵ年計画の中で、「銀行等による保険商品の販売とその範
囲拡大」を掲げ、金融庁並びに金融審にプレッシャーをかけていた。
このような状況の中で、本会は、金融庁に対して平成9年6月の保険審議会報告の遵守を訴えるとともに、
損保協会に対しては共闘を呼びかけて運動を進めていた。
その後、平成12年12月、金融審において、銀行サイドから銀行業務との関連性が強い「債務返済支援保
険」と「海外旅行傷害保険」の解禁要望が出された。金融審事務局は、損保協会に対して業界意見の集約を
依頼し、本会は反対の意見を表明。併せて、損保業界に対し、「業界をあげた反対」を要請したが、当時の
損保業界としては「賛成も反対もしない」という自然体の対応であった。(注:損保業界としての懸念はあ
るが、新たな保険販売チャネルとなりえる銀行の存在を無視できない状況であった。)
結果的に、銀行等の保険販売は、
「住宅ローン関連の長期火災保険」、「債務返済支援保険」、「海外旅行傷
害保険」とすることが決まり、平成13年4月1日より実施された。
■銀行等による保険販売の範囲拡大への対応①<第2次解禁>(平成13年4月~平成14年10月)
政府は、平成13年3月の「規制改革推進3ヵ年計画」の中で、「銀行等が原則として全ての保険商品を取
り扱えること、その銀行の子会社又は兄弟会社である保険会社の商品に限定しないことについて引き続き検
討を行い、平成13年度中に結論を得る」と閣議決定していたため、本会としてはこれ以上の範囲拡大を阻止
するために、署名活動や顧客アンケート等の運動を展開するとともに、範囲拡大反対の陳情を行った。
しかしながら、銀行等による保険販売自由化の大きな流れを食い止めることはできず、金融庁は、平成14年
― 35 ―
3月19日の金融審の承認を得て、平成14年10月1日から、年金払積立傷害保険や個人年金保険などへの範
囲拡大の実施を決定した。なお、本種目追加に先立ち、平成14年2月19日に金融庁から素案が本会に示さ
れた際には、上記商品に加え、
「自動車ローンに係る自動車保険」、「自賠責保険」も含まれていた。本会
は、特に自動車保険においては契約者保護上重大な支障が生じることを強調し、反対の主張を行った。
(注:事故処理対応の問題など)
その後、平成14年2月28日に金融審保険WGで本件が審議された際には、本会は協会長会社(三井住友
海上社)と連携し、反対の陳情を行うとともに金融庁宛に意見書(「銀行等による自動車保険販売の弊害
について」
)を提出し、保険契約者保護上の問題点について警鐘を鳴らした。
一方、損保協会も、金融庁に対して自動車保険販売に伴う弊害の報告書を提出し、併せて、金融審保険
WGにおいても、自動車保険の種目追加に対して反対の立場を表明した。
こうした努力が実り、規制緩和の大潮流の中で、最終的には自動車保険、自賠責保険を解禁の対象から
除外することができたことは極めて大きな成果となった。
■銀行等による保険販売の範囲拡大への対応②(平成15年度の取り組み)
金融庁は、
「対象商品の更なる拡大については、平成14年10月1日以降の実施状況をみながら、引き続き
検討を行い、平成15年度中に結論を得る」と表明していた。本会としてはこれ以上の範囲拡大を阻止するた
め、平成15年7月には全代協でアンケート調査を実施し、金融庁や損保各社に対し、範囲拡大反対の陳情を
行った。こうした一連の取り組みにおいては、協会長会社5社との緊密な連携のもとで金融庁に対する働き
かけを行うことができ、大きな力となった。
⑴ 金融審議会の動向
平成16年1月金融審第二部会において、5つの取り組みテーマ(自然災害リスク、支払補償制度の見直
し、無認可共済問題、銀行等による保険販売及び構成員契約規制、相互会社のガバナンス強化)が示され
たが、具体的な審議は作業部会で行うこととなった。平成16年2月の作業部会には本会佐藤会長(当時)
が出席し、消費者アンケートの調査結果を踏まえて、銀行等の保険販売による弊害の大きさを力説し、対
象商品の拡大には絶対反対である旨、意見陳述を行った。
さらに同年3月に開催された作業部会においても、「銀行窓販に係る保険商品の販売規制のあり方」、特
に「弊害防止措置の現状と評価」及び「対象商品の拡大を図る場合の弊害とその対応策」について、意見
陳述を求められた。佐藤会長は、過去2回行ったアンケート調査の結果をもとに、「現行の弊害防止措置
は機能しておらず、対象商品を拡大すれば弊害は増加する。弊害を防止する最大の有効策は対象商品の拡
大をしないことである」と主張するとともに、次善の対応策として「銀行等の融資先の法人・個人に対す
る保険販売の禁止」を求めた。
⑵ 保険制度改善推進議員連盟の動向
平成15年12月から、支援議員に対する陳情活動を強化した結果、多くの議員から金融庁に対し、範囲拡
大反対の意見を表明していただいた。
一方、政府与党の自民党内に創設された「保険制度改善推進議員連盟(通称:保険議連)」が平成16年
1月、2月に会議を開催した。この場では損保協会も範囲拡大反対を陳情、また生保協会の反対陳情もあ
り、保険議連としては範囲拡大反対の決議を採択した。同年3月の保険議連には本会役員が出席し、銀行
の圧力販売の実態と範囲拡大反対を訴えた。
― 36 ―
⑶ 自民党財務金融部会・金融調査会合同会議の動き
平成16年3月に、「保険に関する当面の問題について(銀行窓販)」というテーマで掲記会議が開催され、
生保協会長、損保協会長、本会会長が夫々銀行窓販の範囲拡大反対の陳情を行った結果、合同会議は範囲
拡大反対で全員一致を見た。
⑷ 金融審作業部会報告
その後、平成16年3月に開催された作業部会において、次の内容の報告書が作成され、金融審金融第二
部会において承認された。
<保険の基本問題に関する作業部会報告書(平成16年3月)>
① 新たな弊害防止措置を設けることを前提に段階的に解禁し、3年後には銀行等が原則として全
ての保険商品を取り扱えるようにする。
② 圧力販売につながるような融資先に対する保険販売を禁止する新たな弊害防止措置を設ける。
本報告書に対する本会の評価は以下の通りである。(平成16年3月当時)
 3年後には原則として全面解禁という結論は極めて遺憾である。
 しかしながら、消費者を圧力販売・抱き合せ販売から守るために“融資先に対する募集規制が新た
に弊害防止措置として設けられる”ことは評価できる。
 本弊害防止措置は「目に見える規制」であり、実効性が担保される必要がある。
■銀行等による保険販売の範囲拡大への対応③(平成16年度)
⑴ 金融庁に対する陳情(平成16年8月、11月)
新たな弊害防止措置策定にあたり、本会は以下の内容の陳情を行った。
<本会の主張>
① 弊害防止措置:銀行の融資先は個人・法人ともに販売禁止とすること
分かりやすく、検証可能な内容にすること
② 先行解禁商品:自動車保険、傷害保険は既存代理店への影響が大きく除外すること
③ 3年後の解禁:相応の準備期間が必要。3年後では混乱が大きく、先延ばしが妥当
これに対する金融庁の見解は以下の通り。
<金融庁の見解>
① 平成16年3月の金融審報告の内容が基本的な立場である
② 融資先規制については、大企業や個人は銀行の影響を受けないと考えている
③ 先行解禁商品は極力公平なものとしたい
⑵ 金融庁への最終要請(平成17年2月)
上記⑴を踏まえ、本会としては最終的に次の2点に絞って要請を行い、併せて損保協会、保険議連議員
に対して、支援を依頼した。
① 先行解禁商品の制限
・自動車保険、傷害保険を除くこと
・上記以外の保険を先行解禁する場合は、全面解禁までの間、団体扱・集団扱・団体契約の販売を禁
止すること
― 37 ―
② 全面解禁時期の延期
・既存代理店の準備期間を考慮し、全面解禁の時期を3年後ではなく4年後(平成20年4月)とする
こと
一方で、融資先規制については、関係業界が了承した次の条件を受け入れざるを得ないと判断した。
法人 ……従業員が50名以下の企業について販売規制を設ける
➡該当する企業が銀行等から融資を受けている場合、該当企業及びその従業員への保険販売
を禁止する。
個人 ……個人が銀行から融資を受ける際には、銀行等の保険販売を禁止する。
こうした経緯を辿ったあと、第3次解禁が行われることとなった。
■保険業法施行規則等を改正する内閣府令の発令<第3次解禁>(平成17年度)
銀行等による保険販売に関する保険業法施行規則等は、平成17年7月8日に公布、同12月22日施行と
なった。
(第3次解禁)施行後2年間、先行解禁商品の募集状況、新たな弊害防止措置の実効性をモニタリ
ングし、問題がなければ全面解禁し、問題が生じた場合は見直すことになった。
<第3次解禁の内容>
〇先行解禁商品
損 保
第3次解禁
(平成17年12月)
生 保
〇自動車・自賠・傷害を除く個人分野の 〇一時払養老保険
保険(但し団体扱、集団扱、団体契約 〇一時払終身保険
〇回払い養老保険(保険期間10年以下、
の販売は禁止)
〇積立保険(団体扱可)
法人契約除く)
〇積立傷害保険(団体扱可)
〇弊害防止措置
⑴ 融資先販売規制
〇 事業性融資の貸出先である法人および代表者(個人事業主を含む)には保険販売を禁止する。
〇 事業性融資の貸出先である従業員数50名以下の企業の役員および従業員には保険販売を禁止する。
⑵ 担当者の分離
〇 事業性融資の担当者と保険商品の販売担当者を分離する。
⑶ タイミング規制
〇 融資申込者(個人を含む)に対しては、融資の申し込みから貸付実行または謝絶までの間(融
資審査期間中)は保険販売を禁止する。
⑷ 銀行等の保険募集指針の策定・公表
〇 銀行等は、公正な保険募集のための指針を策定し、公表する。
〇 引受保険会社の商号等を明示する。
⑸ コンプライアンス体制の整備
〇 銀行等は、保険販売を行う営業店舗毎にコンプライアンス責任者を配備する。
⑹ 子会社等による潜脱募集の禁止
〇 銀行等がその子会社等を利用して融資規制等の潜脱行為を行うことを禁止する。
(注:上記⑴、⑵、⑶および⑹は既解禁商品には適用されない。)
― 38 ―
〇特例措置(中小金融機関配慮)
⑴ 中小金融機関の特例
地域限定の中小金融機関(地銀・第二地銀・信金・信組等)については、下記特例が認められる。
・融資先企業従業員への販売規制の対象を20名以下の企業とする。
・融資と保険の担当者分離規定を緩和する。(簡略化可とする)
(注:但し、生命保険・第3分野商品(疾病保険)については、契約者1人当りの保険金額が
1, 000万円までに限定される。)
⑵ 協同組織金融機関の特例
信金・信組などの協同組織金融機関については、会員・組合員に対する融資先規制を実施しない。
また、上記の中小金融機関の特例も適用となる。
(注:但し、生命保険・第3分野商品(疾病保険)については、契約者1人当りの保険金額が
1, 000万円までに限定される。)
上記を含め、第3次解禁にあたり、本会の意見が大きく反映される成果となった点は評価できる。
具体的には以下の通り。
① 先行解禁商品を自動車・自賠・傷害以外の個人商品に限定し、団体扱・集団扱・団体契約が禁止され
たこと
② 融資先企業、従業員50名以下の企業の役員・従業員に保険販売が禁止されたこと
③ 個人であっても融資申込中の保険販売が禁止されたこと
④ 先行解禁及び全面解禁の時期が当初案より9ヵ月延期されたこと 等
■銀行代理店(銀行業務を行う銀行の代理店)の取扱い(平成17年11月)
⑴ 保険業法施行規則の改定
「銀行代理店」の規制を大幅に緩和する銀行法の改正が平成17年11月に公布され、平成18年4月1日に
施行された。
(注:「銀行代理店」は「銀行業務の代理店」であり、一般企業が預金の受け入れや融資の取
次ぎを行うもの。銀行への融資取次と保険の抱き合せ販売が懸念される。)
本会は、平成18年2月から3月にかけて、保険業法施行規則の改正に関して金融庁と意見交換を行い、
一般企業が銀行代理店と保険代理店を兼営する場合には、銀行窓販における銀行本体と同じ規制をかける
ことを要望した。同時に、平成18年2月に出されたパブリックコメントに対して、タイミング規制(融資
申込み中の保険販売規制)および銀行等の特定関係者に関する融資先販売規制を導入すべきであるという
意見を提出した。
最終的に、金融庁は「銀行代理店は銀行等とは異なる主体であり、消費者が感じる圧力の程度も異なる
ことから、銀行等と全く同じ措置を講じることはできない」として、本会提案は採用されなかった。
⑵ 銀行代理店のモニタリング
銀行代理店への対応は上記の通りとなったが、タイミング規制について金融庁は「現在行われている銀
行窓販の実施状況等に関するモニタリングとともに、銀行代理店の保険販売に関してもモニタリングを行
い、その中で実際に問題が生じ、現行の措置では不十分ということになれば、弊害防止措置の在り方につ
いての検討を行う」ことをパブリックコメント結果において公表した。また、特定関係者に対する融資先
販売規制については、現行の銀行に対する規制の潜脱防止規定を厳格に適用する旨を本会に伝えた。
― 39 ―
■銀行等による保険販売の全面解禁<第4次解禁>(平成19年12月)
本会は、平成17年12月の第3次解禁以来、全面解禁阻止に向けて銀行等の法令違反のモニタリングを行
い、金融庁への報告陳情を行ってきたが、平成19年9月に金融庁は金融審金融第二部会に対し、以下のモニ
タリング結果を報告した。
○ 必要かつ十分な弊害防止措置の構築
先行解禁商品に係る新たな弊害防止措置については、一部の銀行員による事務疎漏を除き、概ね銀
行等において遵守するための体制整備が行われたと考えられ、問題事例の発生状況に鑑みれば、規制
は有効に機能している。
○ 全面解禁の実施時期の検証
当局検査における指摘や不祥事件届出により一定程度の問題事例が発生していたと認められるが、
いずれもその後銀行等において改善が図られている。
これを受けて、金融庁と自民党、本会を含む関係各団体との意見調整が行われ、最終的に政府与党は、新
たな監督上の措置を実施することを条件に全面解禁の方針を固めた。これを受けて、平成19年12月21日に
「保険会社向けの総合的な監督指針」の改定が発出され、翌日から実施されることとなった。
<新たな監督上の対応措置>
1 銀行等における責任ある販売態勢の整備
① 保険契約締結後に発生する業務の分担
○ 保険契約締結後に発生する業務について、保険会社と銀行等の業務分担を明確にし、顧客に明示す
ること
○ 保険会社及び銀行等双方において、保険契約締結後の業務を行うため、十分な要員の確保に努める
等、必要な態勢を構築すること
② 銀行等の販売責任等の周知
○ 違法な保険募集で損害を与えた場合には、銀行等に募集代理店としての販売責任があることを保険
募集指針に明示し、その内容を顧客に周知徹底するため、銀行等において、書面による交付、店頭掲
示などの必要な措置を講じること
○ 保険契約の締結に際しては、非公開情報が事前に顧客の同意を得ることなく利用されてはならない
が、実効性を確保するため、事前に同意をとらなければ商品説明を行えない、さらに書面による同意
がなければ契約申込み・締結を行えないような事務手続きを整備する等の必要な措置をとること
2 顧客情報の利用態勢の整備
① 法令等遵守責任者の要件
○ 銀行等が配置する法令等遵守責任者は、保険募集に関する法令や保険契約に関する知識等を有する
人材であることを要件とすること
② 内部監査態勢の整備
○ 銀行等の保険募集に係る内部監査が、確実に実施されるよう、銀行等が保険募集に関する法令や保
険契約に関する知識等を有する人材を内部監査部門に配置すること
③ 公正取引委員会ガイドライン
○ 公取ガイドライン「金融機関の業態区分の緩和及び業務範囲の拡大に伴う不公正な取引方法につい
― 40 ―
て」における「第2部第2.2銀行等の保険募集業務に係る不公正な取引方法(注)」に十分留意した業
務運営を行うこと
(注:
「①保険契約の申込みの強制等、②不当な顧客誘引、③委託元保険会社に対する不当な干渉」を
行った場合には、独占禁止法上問題となる旨の規定)
○ 全面解禁後もモニタリングを継続する
○ 今回改正した監督指針等の趣旨を十分に踏まえた検査・監督を行い、問題が認められた場合には、
厳正な対応を行う
○ モニタリング結果等を踏まえ、概ね3年後に弊害防止措置等の見直しを行う
<本措置に対する本会の評価>
全面解禁に至ったことは誠に遺憾であるが、本会が銀行等の優越的地位の乱用、圧力募集等の問題点を一
貫して主張してきたことにより、以下の通り、保険契約者等の保護のための措置が一層強化されることに
なったことは評価できる。
○ 弊害防止措置が継続され、新たな監督上の措置が追加されたこと
○ 公取ガイドラインに十分留意することが保険会社向けの監督指針に規定されたこと
○ モニタリングが全面解禁後も継続されること(3年後に弊害防止措置等を見直す)
[参考]<パブリックコメントの内容>
保険契約締結後の業務に関連して、今回の改定がパブリックコメントに付された際に、本会から、事故対
応について、以下の意見・質問を金融庁に提出し、回答を得ている。
本会 :被 害者救済の観点から、顧客のために即時対応をすべき保険(自動車保険、賠償責任保険)
について、銀行等においても、常時速やかな対応を確保できる体制が必要と考えられるが、
どのような体制を構築し、明示することが必要と考えられるか。
金融庁:銀行等においても一般代理店と同様に、顧客の利便性向上の観点から、その体制については
委託契約等にしたがって十分な措置を講じた上で、担当部署、連絡先、営業時間等を明示す
ることが必要であると考えている。
<公正取引委員会ガイドラインとの関係>
前記措置の中に、同ガイドラインへの留意が盛り込まれたことは、大変大きな意義があると考えられる。
なお、今回の改定がパブリックコメントに付された際に、同ガイドラインに関連して、本会から以下の意
見・質問を金融庁に提出し、回答を得ている。
本会 :代理店間分担契約は、当該代理店が保険の募集、保険事故の受付及び相談等を実際に分担し
て実施する等、合理的な理由がない場合は行ってはならないことを保険契約者、銀行等に周
知徹底する策を講じるべきではないか。
金融庁:銀行等が、優越的地位を不当に利用して保険募集を行う行為は既に禁じられており、仮に、
銀行等が優越的地位を利用して、実態として保険募集を行わず、対価性のない募集手数料を
収受するような行為を行っていれば、保険監督上問題となるものと考えられる。
(日本代協注:これにより、名目的な代理店間分担契約は、禁止されたものと考えられる。)
― 41 ―
■弊害防止措置見直しに向けた対応(平成19年〜平成23年5月)
⑴ モニタリングの状況
平成19年12月の全面解禁以降、本会としては銀行窓販に対するモニタリングを続けていたが、販売商品
が生保中心であるため、損保分野においては特に問題事案は発生していない状況であった。(注:見方を
変えれば弊害防止措置が有効に機能しており、金融機関サイドに販売を躊躇させているとも言える。なお、
実際に問題事例として報告があったのは、弊害防止措置の対象となっていない住宅ローン関連の長期火災
保険に係る「債務者団体割引」の適用に関するものが多いという状況であった。)
⑵ 措置見直しに向けた動き
弊害防止措置については、平成19年の全面解禁時に「概ね3年後を目途に(措置内容を)見直す」こと
になっていた。そのため、金融庁サイドとしては、平成22年夏頃から検討に着手し、モニタリングの総括
を踏まえて「概ね3年後」となる平成22年12月には何らかの方針を示し、遅くも平成23年4月には実施し
たい意向であった。
しかしながら、本会や生保労連等関係諸団体から様々な意見が出され、簡単には結論を見出せない状況
であったこと、並びに、政局が安定せず行政としては動きが取りにくかったこと等もあり、表面立った動
きはなかった。その後、平成23年3月末に関係団体のヒアリングが行われることとなったが、平成23年3月
11日に東日本を襲った大震災への対応を優先するため、調整作業は延期となった。
⑶ 関係団体に対する副大臣ヒアリング
東日本大震災に伴う地震保険金の支払いに一定の目途がついたことを受け、5月27日と30日に副大臣ヒ
アリングが行われた。
各回の参加団体はそれぞれ以下の通り。日本代協会長は30日の会に出席し、意見陳述を行った。
・5月27日:全国銀行協会、信託協会、全国信用金庫協会、リース事業協会、生保協会、生保労連、日本
保険仲立人協会
[有識者] 水口啓子氏(日本格付研究所)、江澤雅彦氏(早稲田大学)
・5月30日:全国地方銀行協会、第二地方銀行協会、全国信用組合中央会、在日米国商工会議所、欧州ビ
ジネス協会、損保協会、日本代協、損保労連、外国損害保険協会、生命保険FA協会
[有識者] 丹野美絵子氏(全国消費生活相談員協会)
当日本会から提出した意見書の骨子は以下の通り。意見陳述の後、副大臣との質疑応答が行われたが、
その後の調整は金融庁に委ねられた。
<日本代協の意見並びに要望骨子(平成23年5月30日提出)>
1 要望事項
① 現行弊害措置は、消費者保護のために不可欠なルールであり、引き続き維持すること
② 措置の実効性を高めるため、消費者への周知徹底を行うこと
2 要望の背景
① 保険に関しては、消費者利便以上に消費者保護が重要である
② モニタリングは直接消費者(事業者を含む)に対して行う必要がある
③ 金融審議会「保険の基本問題に関するWG」において、平成21年6月にまとめられた「中間論点
整理」の論議を先行すべきである
④ 金融機関の優越的地位濫用の懸念は払拭されておらず、見直しは時期尚早である
― 42 ―
⑷ 弊害防止措置の見直し内容と本会の評価
金融庁による調整を経て平成23年7月6日に見直し案が公表され、パブリックコメントに付された後に
内閣府令等の改正が行われ、平成24年4月1日から施行された。
主な見直しの内容は以下の通りであるが、極めて限定的で小幅な見直しに止まるとともに、新たに規制
強化となった項目もあり、全体として、本会の主張が概ね反映された内容に持ち込むことができた。
また、
「次回見直しの時期を定めない」とされた点も大きな成果であり、本会としては、本内容を受け
入れることとした。
<弊害防止措置見直し内容(平成23年7月6日)>
A:融資先募集規制等
⑴ 融資先募集規制:
<現行措置内容> 一定の保険商品は、事業性資金の融資先(従業員50人以下の小規模事業者の従
業員を含む)に対し、手数料を得て保険募集をしてはならない。
【見直し内容】 本規制は引き続き存置。但し、一時払終身、一時払養老、積立傷害、積立火災、及
び事業関連保険(銀行等のグループ会社を保険契約者とするものに限る)の募集は、
規制対象から除外。
⑵ タイミング規制:
<現行措置内容> 融資先募集規制の対象となる保険商品については、融資申込者に保険募集を
行ってはならない。
【見直し内容】 引き続き存置。但し、非事業性資金の融資申込者に対する保険募集については、規
制対象から除外。
⑶ 地域金融機関の特例:
<現行措置内容> 地域金融機関については、①融資先募集規制の対象となる保険募集に関し、担
当者分離規制の代替措置をとること及び従業員数20人超〜50人以下の融資先の従
業員等に対する保険募集を可能とする一方で、②融資先の従業員(従業員数50人
超の融資先を含む)を保険契約者とする保険契約に関する保険金額が一定の枠内
に制限されている。
【見直し内容】 当該措置は存置。但し、担当者分離規制の適用を受ける場合は、保険金額制限の対
象となる保険募集は、従業員数50人以下の融資先の従業員等を保険契約者にするもの
に限る。(50人以上の場合は、一般規定に従う。)
B:実効性確保のための措置
⑴ 保険商品と預金の誤認防止のために、顧客が当該説明内容を理解したことについて、書面を用
いて確認すること。(規制強化)
⑵ 非公開金融情報の保険募集業務への利用については、顧客の事前同意を得る際に、保険勧誘の
手段、利用する情報の範囲、同意撤回の方法等について、明示すること。(規制強化となった)
⑶ 住宅ローン関連の保険募集に際しては、当該保険への加入がローンの条件ではない旨を顧客に
対して書面で説明すること。(規制強化)
C:次回見直しの時期
○ 今後の見直しについては、特段の期限を設けず、必要が生じた場合に行う。
― 43 ―
■弊害防止措置見直しに対する取り組みの成果と今後の課題
⑴ 当初の状況(金融庁の見解)
今回の見直しに際しては、当初、金融庁からは下記のような極めて厳しい見解が示された。
・独禁法との二重規制の観点から、事前規制として過剰規制となっている本措置そのものの全廃
・中小企業に対するリスクコンサルティングの機能を金融機関に担ってもらう観点から、事業性融資先
企業に対する保険募集の全面解禁や従業員規制の撤廃(融資先の企業や従業員に対して、銀行がどん
な保険商品でも販売できるようにする)
・再加入困難性がある生保のみ規制を残し(解約すれば保険料が上がる、契約時とは異なる病歴が加わ
ると加入そのものができなくなるおそれがある)、1年契約で弊害が少ない損保は規制全廃 等
⑵ 取り組みの成果
数の上では規制廃止派が多数を占める状況(全金融機関、米国・欧州の政府通商代表部、外資保険会社
等は規制全廃を主張)の中で、本会は苦しい折衝を強いられていた。しかしながら、損保協会(特に、協
会長会社)や生保業界とも綿密な調整を行いながら、業界のエゴではなく、消費者保護の視点から銀行窓
販の問題点を主張し続けたこと、また、日頃から意思疎通を図っている政連の支援議員の協力を得て、タ
イムリーかつ効果的な取り組みを展開できたことが奏功し、最終的には、限定的かつ極めて小幅の見直し
に止めることができた。その結果、一般代理店が受ける大きな影響を回避することができた。
⑶ 今後の課題
本会としては、引き続き、損保協会や消費者団体、有識者等々の意思疎通の機会を持ち、情報収集に努
めるとともに、本会の立場や主張を正確に理解してもらえるよう取り組みを続ける。
一方で、在日米国商工会議所(ACCJ)や銀行協会は、全面開放を求めており、また、行政としても独
禁法との二重規制(注)を解消したいとの意向が強い。(注:措置全廃となった場合は、弊害防止措置とい
う事前規制ではなく、独禁法による事後規制下に置かれることになる。)従って、日本代協としては、政
連との連携を図りながら弊害防止措置の存続に全力で取り組むが、一方で、各代協会員は、銀行との間で
主戦場となる中小企業に対するリスク対策の総合提案を早急に進めていく必要がある。規制措置が存置さ
れている間は、中小企業開拓に注力するために与えられた猶予期間と考え、総合的なリスク分析や保険を
含めた顧客企業のリスクヘッジ対策の提案を進める必要がある。特に多くの国内損保の専業代理店は、自
動車や火災以外の様々な企業リスクの提案・開拓が遅れており、賠責や費用利益、約定履行、リコール回
収費用保険、取引信用保険等の提案ができていない実態がある。金融機関対抗の観点のみならず、新規
マーケット創出の観点からも、中小企業を中心とした企業リスクの開拓は専業プロ代理店にとって重要な
取り組みとなっている。そのためには、新種リスクに関する専門性を高め、中小企業に対する総合的なリ
スク対策に関する提案力を磨くとともに、銀行本体が非幹事代分でシェアインを求めてきた場合にも対応
できるよう、顧客企業との保険に限らない複層的な取引関係と専門家としての信頼関係を構築しておく必
要がある。
[参考]<国民生活センターの問題意識>(平成24年6月)
平成24年6月27日に開催された金融審保険WG第2回会合において、消費者サイドの丹野委員(当時、
国民生活センター理事長)から、銀行窓販のトラブルの多さについて懸念が示されており、国民生活セン
ターも同様の指摘を行っている。こうした状況を踏まえれば、銀行窓販に対する販売規制が簡単に緩和さ
れる状況ではないとも考えられるが、独禁法との二重規制が必要か否かはまた別の問題でもあり、予断は
許されない。なお、保険WGにて国民生活センターが示した問題点は以下の通り。
― 44 ―
 銀行等金融機関、巨大乗合代理店の販売責任等の明確化を図るべき。消費者の現場から見ると、銀
行窓販でのトラブルが多数あって一向に減っていない。保険会社が銀行等金融機関をコントロール
できていないのではないか。
 銀行は保険を保障商品として売っているのではなく、預金を上回る高リターン商品として販売をし
ている現実がある。併せて、製販分離の中で、販売側=銀行側が、商品の内容を変える力を有して
いる。ほとんどの消費者トラブルの原因は保険商品の中に内在してあるのではなく、募集時の顧客
ニーズの把握の不適切さ、説明の不適切さの中にある。➡ 事実認識は日本代協と同じである。
 保険会社が募集人教育の責任を負い、銀行の募集人への指導教育を実施することになっているが、
多数商品の中からの選択を含め、現実に保険会社のコントロールは困難ではないか。販売趨勢を見
れば、銀行等金融機関への消費者の信頼が非常に高いので、保険販売のほうに力点を置くと、銀行
での消費者被害がこれから増える可能性があり、それを放置していいわけがない。➡ 今回の保険
業法改正で、全ての募集人に体制整備義務が課されるとともに、「規模の大きな特定保険募集人」
(一定基準以上の大型乗合代理店)は金融庁の直接監督も受けることとなった。
 トラブルをなくすために一定規模以上の乗合代理店に対して以下の対応を検討して欲しい。
①体制の確保:多数ある商品を管理する能力や商品の比較選別能力、多数の商品の説明能力の確保を
制度として仕組んだらどうか。➡ 今回の保険業法改正で、比較推奨販売を行う乗合
代理店に対する追加的体制整備義務として取り入れられた。
②販 売 責 任 :‌銀行で買った保険についてトラブルがあって、消費者センターとかADRで解決をす
るが、販売上の問題があるにもかかわらず金銭負担をしているのは現実には保険会社
である。適切・慎重な販売のために銀行サイドに金銭負担をさせるということはでき
ないのか。保険業法283条との関係をぜひ検討して欲しい。➡ 今回の検討では、保
険業法283条自体の整理は見送りとなり、保険会社による求償の義務化は実現しな
かった。しかしながら、今後は、保険会社も求償すべきは求償するというスタンスに
転じるとともに、代理店サイドの責任割合は従来よりも大きくなることが想定される。
従って、代理店としては、万が一の場合の賠償資力の確保が従来以上に必要な環境に
なっていることを認識する必要がある。➡ 代理店賠責「日本代協新プラン」の重要
性が更に大きくなっている。
③商品選択の公正性の確保:銀行代理店もあくまで代理店なので、いわゆるベストアドバイス義務は
ないが、顧客に販売する商品選択の公正性や顧客に適合した保険販売の担保が必要。
その観点から考えれば、「手数料の開示」も1つの方策である。➡ 今回の保険業法
改正では、比較推奨販売を行う乗合代理店に対して追加的体制整備義務が課されたこ
と等を受けて、一定の適切な体制が整備・確保されると考えられることから、代手の
開示については、現時点において一律に要求する必要はないとされた。一方で、乗合
代理店に対して支払われる手数料の多寡によって商品の比較・推奨のプロセスが歪め
られていないか、当局の検査・監督によって検証を行っていくこととされた。今後、
こうした検査等の結果、手数料開示の必要性が改めて課題として取り上げられること
も想定しておく必要がある。代理店としては、顧客に対する自身の価値の明確化を図
るとともに、組織としての生産性向上に取り組む必要がある。
(注:手数料に関しては、第7-3章「代理店手数料の開示」参照)。なお、代理店と
しては、「代手はあなたに対する私の価値の対価」と言えるだけの価値提供が必要。
― 45 ―
併せて、将来的な代手率そのものの引き下げに備えて、生産性向上のための取り組み
を進める必要がある。)
[参考]<全国銀行協会による保険窓販に関する消費者アンケート>(平成28年1月)
全国銀行協会では、保険窓販の完全全面解禁を求める論拠とするために、平成22年度から毎年継続的に
本アンケートを実施しており、平成28年1月で6回目となる。それによると銀行窓販の認知率は4割強で、
詳しい人ほど利便性の高さを感じる割合が多いとしている。また、銀行で保険に加入する際の規制を不便
だと感じている人は、最近5年以内に加入した契約者の3割~4割前後存在し、規制を不便だと思わない
人の割合よりも多い。その傾向は、銀行窓販に利便性を感じている層で強く、銀行窓販に関する規制が利
用者利便を損ねている実態があるとしている。こうした結果を踏まえ、同協会では、『利用者の利便性』
『保険市場の拡大・発展』の観点から、弊害防止措置については、更なる見直し(緩和・撤廃)がなされ
るべきとしており、本会としては引き続き金融機関サイドの動向に留意する必要がある。(平成28年1月
実施・サンプル数10万人・インターネット調査・20歳~69歳の男女一般生活者)
アンケート結果のポイントは以下の通り。
 生命保険は銀行からの加入が年々増加している。
 加入理由は、「信頼できる」(45%)、「行員が適切な提案をした」(32%)という割合が高い
 保険会社(他の代理店)で加入しなかった理由は、「気軽に相談できる窓口がない」(37%)、「保険
会社(代理店)との接点がない」(31%)が高く、銀行が気軽に相談できる上に信頼感がある点が強
みになっている
 銀行で加入した人の7割がリピート意向を示しており、男性30代と女性20代で特に高い
 銀行のメリットは、「信頼できる」「複数の商品から選ぶことができる」「店舗が近くて便利」「他の
用事のついでに相談できる」など、信頼感と便利さが評価されている
 一方で、「詳しく説明してもらえる」「保険の知識がある」のスコアは低く、専門的なイメージは持
たれていない様子
 不便と感じている規制は、「募集制限先規制」(39%)、「タイミング規制」(44%)、「融資担当者分離
規制」
(44%)などとなっている
 銀行で相談したが、最終的に別のチャネルで契約した人のうち、「規制の影響」と答えた人は34%
 保険募集に関し圧力を感じるケースは、「営業職員が近親者」が48%と最も多く、「取引銀行からの
提案」
(9%)よりも圧倒的に多い。
― 46 ―
6-3 公平・公正な募集環境の構築に向けた取り組み③
〈郵政民営化・保険販売への対応〉
■基本的な考え方
本会としては、国が株式を保有する事業体が、民間企業と同列で市場において競争することはアンフェア
であり、認められないとの立場を基本としている。これに基づき、郵政グループの各社の事業拡大にはそれ
ぞれ以下の方針で臨むこととしている。(注:日本郵政の株式の89%は依然として国が保有している)
○ 日本郵便・・・平成19年10月に自動車保険の販売が開始されたが、89%の株式を保有する日本郵政が実
質的な国営企業である以上、日本郵便におけるこれ以上の取扱種目の拡大には反対
○ ゆうちょ銀行・・・現在、住宅ローンへの新規参入申請と併せて損害保険代理業への参入を求めている
が、89%の株式は同じく日本郵政が保有しており、基本方針に基づき、本申請には反対。日本郵政の
全保有株が市場で売却されない限り、民間企業と同列の取扱いは不可
日本郵政は今後数年に一度ずつ日本郵政の株式を売却し、財源確保に当てる方針ではあるが、その道筋は
不透明である。また、日本郵政は、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株を50%程度まで売却する方向であるが、
これも全株売却の道筋は見えていない。
従って、本会としては、政連支援議員への要請を続けるとともに、自動車保険の販売状況をモニタリング
し、これ以上の取扱商品の拡大や新規参入を認めないよう取り組みを行っていく。
一方で、民間事業参入のイコールフッティングの観点から、既存の代理店に対してかんぽ生命の商品販売
を認めるよう引き続き働きかけていく。
<参考>郵政民営化法第92条には「同種の業務を営む事業者への配慮」が規定されている
「郵便局株式会社は、郵便局株式会社法第4条第2項第2号に掲げる業務及びこれに附帯する業務並
びに同条第3項に規定する業務(以下、
「届出業務」)を営むに当たっては、郵便局株式会社が公社の
機能を引き継ぐものであることにかんがみ、届出業務(当該届出業務が他の事業者の委託を受けて行
うものである場合には、当該委託に係る業務を含む。)と同種の業務を営む事業者の利益を不当に害す
ることのないよう特に配慮しなければならない。
■日本郵政の損保商品販売参入の経緯
⑴ 実施計画の骨格の公表(平成18年7月)
平成18年7月に日本郵政が政府に提出した「日本郵政公社の業務等の承継に関する実施計画の骨格」が
公表され、郵便局株式会社が損害保険商品販売に参入する計画であることが明らかになった。
本会としては、上記方針通り断固反対の立場に立ち、日本郵政との交渉、郵政民営化委員会における荻
野会長(当時)の反対意見陳述、総務省への反対意見の表明、支援議員への陳情などの活動を展開した。
⑵ 日本郵政が実施計画を提出(平成19年4月)
平成19年4月、日本郵政は「日本郵政公社の業務等の承継に関する実施計画」を政府に提出した。その
中で、
「民営化時より首都圏の23局において自動車保険販売の取扱いを開始し、その後段階的に取扱郵便
局を拡大。その他の生損保商品についても早期取扱開始に向けて準備を進める。」と記載された。
そこで、本会は日本郵政に対して以下の申し入れを行うとともに、郵政民営化委員会に対しても同趣旨
のパブコメを提出した。
― 47 ―
日本郵政への申し入れ事項は以下の通り。
⒜ 試験的に実施する際には、郵政民営化法第92条等のモニタリングを十分に行うこと。保険契約
の継続手続も検証する観点からは、少なくとも1年間は販売局を拡大しないこと
⒝ 販売局および販売する損保商品を拡大する場合には、事前に本会に連絡をすること
⒞ 本会と郵便局との業務提携の検討のために、共同研究会等を設けたいこと
これに対する日本郵政の回答は以下の通りであった。
⒜ については、「試行の検証結果を踏まえて冷静に判断する」
⒝ については、「了解」
⒞ については、「前向きに考える。研究会については持ち帰り検討する」(※研究会は開催されず)
今後とも、本会と協議をしながら進めたいとの意向を表明。
本会が求めていたかんぽ生命の商品開放に対しては、「前向きに考えたいが、現状は民営化準備のため
新たな取り組みは難しい」とのことで、上場後の課題として残った。
⑶ 政府が実施計画を認可(平成19年9月10日)
平成19年6月、郵政民営化委員会は、内閣総理大臣に対して「日本郵政公社の業務等の承継に関する実
施計画に対する郵政民営化委員会の意見について」を提出し、この中で、「実施計画は政府方針に適合し
ている」との見解を示した。これを受け、政府は実施計画を平成19年9月10日に認可し、郵便局における
自動車保険販売についても同年10月から試行することが決定した。
⑷ 郵便局株式会社等との交渉
郵便局における自動車保険販売の試行決定は残念であったが、引き続き、本会としては、一定の信頼関
係のもとで、定期的な情報連絡を行うよう要請し、現状では動向をある程度把握できるようになっている。
一方で、日本代協としては、下記理由から平成20年4月の理事会において簡易郵便局の受託先として協
力することを決議し、これを受けて、代協会員関係で3局の簡易郵便局が開業した。
・代協会員の多くは、店舗を構え、損保・生保を販売しており、簡易郵便局業務(郵便・貯金・保険)
との親和性があることから、ビジネスチャンスと考えられること
・地域社会貢献の観点から、郵便局業務の受託は意味があること
■自動車保険の販売状況と本会の対応
⑴ 販売状況(日本代協調べ)
<金融商品取扱局の状況(取扱局数)
>
〇変額年金保険
:1, 079局
〇がん保険
:20, 076局(全てアフラック専売局)
〇生保事業保険(経営者向け)
:200局
〇自動車保険
:1, 495局(収保は約約50億円程度と想定される)
なお、郵便局では顧客への価値提供の観点から、電話募集は認めておらず、全て対面募集を義務付けて
いる点は注目に値する。一方で、事故の際には、保険会社(幹事:東京海上日動)のフリーダイヤルを案
内し、郵便局における事故対応は行わないことになっている。
― 48 ―
⑵ 課題と対応
郵便局における自動車保険販売は、保険商品販売の難しさ(商品説明、コンプライアンス対応、収益の
低さ、共済の存在等)に加えて、郵便局職員の業績評価において、かんぽ生命のウエイトが高く動機付け
が行いにくい等の課題があり、販売が急速には拡大しないという悩みを抱えている。
また、TPP対応の関係で、アフラックとの共同開発商品の販売強化が求められており、自動車保険には
シフトしにくい環境にもあるが、本会としては引き続き販売状況を注視していく方針である。
■ゆうちょ銀行の損害保険募集業務認可申請に対する対応(平成24年9月~)
⑴ 日本郵政の動き:損保募集業務の認可申請
○ 日本郵政は平成27年秋をメドに株式売却を開始。国(財務大臣100%保有)の持株比率を3分の1ま
で下げる道筋を示す見返りに(※)、13年4月からゆうちょ銀行の「住宅ローン」参入を計画し、認可申
請を行った。
○ 同時に、顧客の利便性の向上、収益源の多様化、収益構造改善の観点から「損害保険募集業務(ロー
ン長火)
」の認可申請を行った。保険関連では、他にかんぽ生命の学資保険の改定(返戻率引き上げ等)
の認可申請も行われた。
※その後、同年11月4日に日本郵政・ゆうちょ銀行・かんぽ生命のグループ3社は上場したが、引き続
き日本郵政は金融2社の株式の89%を保有しており、この先50%程度まで売却を進める方針。50%以
上売却すれば新規事業に必要な認可が届出で済み、完全売却すれば民間と同水準になる。国保有の株
式が全株売却されれば本会としても異を唱える理由はないが、問題はそこに至るまでのなし崩し的な
業務拡大である。
⑵ パブリック・コメント提出
○ 本認可申請に対し、本会は、平成24年9月25日付で内閣府郵政民営化推進室に対しパブコメを提出し
た。主張のポイントは次の通りである。
① 官業銀行であるゆうちょ銀行による損害保険募集への参入は、郵政民営化法の基本理念(民で
できることは民に委ねる)に反しており、損害保険代理業者の利益を不当に害する
② 完全民営化の道筋が見えないままのなし崩し的な参入は、地域経済の健全な発展と市場に与え
る影響への配慮を欠いており、既存代理店の経営を圧迫する
③ 官業銀行が一般事業者よりも有利な条件で参入することは(※大幅な債務者団体割引を想定)、
対等な競争条件の確保を求める「国会審議確認事項」に違反する
④ 保険取扱が二重構造(取扱店舗が限定)になっており、顧客利便性があるとは言えない
⑤ ゆうちょ銀行が収益を独占するのではなく、民間事業者との協力、連携、役割分担を進め、各
事業者との共存・共栄の下で地域経済の発展に貢献すべきである
⑶ 第86回郵政民営化委員会における意見表明
○ 内閣府と折衝の末、平成24年10月12日開催された第86回郵政民営化委員会に岡部会長が出席し、西室
委員長他の委員に対し、以下の通り「断固反対」の旨表明した。
(※西室氏はその後日本郵政社長に就任。同委員会は郵政事業拡大を前提としており、反対意見の表明
はありばい作りのような印象であった。)
・火災保険は自動車保険と並んで既存代理業者の収益の柱。影響が大きい
― 49 ―
・単品の商品販売では顧客ニーズに応えられない。保険はプロに任せるべき
・民間金融機関においては圧力募集防止の観点から弊害防止措置が設けられている
・郵政株全株売却の道筋を示すべき 等
○ 同時並行で政連支援議員を中心に、与党・野党を問わず、「官による民の圧迫はおかしい。完全民営
化が大前提」との立場で政治対応を依頼した。
〇 その後、政権交代を受けて小泉郵政改革の見直しが行われ、一旦は上場方針は凍結されたが、東日本
大震災の復興財源確保のため、再び上場方針に変わることになった。中途半端な形とはいえ、民営化を
進めるためには、日本郵政の収益改善は国にとって喫緊の課題であり、委員会は本申請に対し「容認」
の意見書を提出した。
〇 一方で、かんぽ生命の保険金不払い事案の発覚に危機感を持った金融庁は、「がん保険の認可」並び
に「新学資保険」
(保険料を引き下げ販売しやすくした商品)の認可に対して慎重姿勢を取り続け、総
務省「容認」
・金融庁「慎重」の状態となった。これを受け、平成25年4月開始予定だったゆうちょ銀
行の融資業務への参入も実現しておらず、現在に至っている。(注:「がん保険」については下記⑷の通
り、TPPの一環としてアフラックとの共同開発・販売で合意に至っている。また、「新学資保険」の認
可は承認されている。)
⑷ 米国の動き
かんぽ生命の肥大化に強い危機感をもった米国(注) は、TPP(米国)の事前協議で、ゆうちょ銀行の
「住宅ローン」参入と併せて認可申請が行われていたかんぽ生命の「がん保険」参入を棚上げすることで
合意に持ち込み(平成25年4月10日日経新聞記事)、本件の解決には米国の権益(=アフラックの利益)
が絡む極めて政治的な判断が介入することが明らかになった。(注:米国企業であるアフラックは、利益
の8割を日本市場で稼いでいる。アフラックの本音は、日本郵政グループの中で同社商品の販売拡大を実
現することにあると思われる。)
その後、平成25年7月になって、日本郵政とアフラックが、がん保険分野で業務提携を強化することで
基本合意し、日本郵政が日本生命との間で検討してきた独自商品開発も撤回されることとなった。
これにより、同年秋から、全国2万店舗の郵便局とかんぽ生命の約80の直営店舗でアフラックのがん保
険が販売されている。この背景には、TPPの対米主要分野の交渉を有利に進めたい日本政府が、米国の意
向を踏まえて意図的に働きかけたと見られている。ゆうちょ銀行の融資参入とそれに伴う損害保険募集業
務の認可申請の問題は、直接米国の権益とバッティングするものではないが、本会としては、なし崩し的
な参入には反対であり、国の出資が全く残らない完全民営化のスケジュールの明示を求めて、今後も関係
各所に対する折衝を継続していく。
[参考]<ゆうちょ銀行・かんぽ生命の上場問題の経緯>
両社の持株会社である日本郵政は、当初、平成27年春の上場を目指して準備することとしていたが、金融
2社の扱いは不透明なままになっていた。
(注:前述の通り、平成27年11月4日に3社同時上場済みである。
)
改正郵政民営化法は平成24年、民主・国民新党政権下で成立したが、旧法にあった金融2社(ゆうちょ銀
行・かんぽ生命)の売却期限を撤廃し、
「できる限り早期に処分」との表現にとどめていた。これを受け、
日本郵政が作った上場計画は、先ず持株会社の日本郵政が平成27年度中に上場し、その後も日本郵政の株式
が半分程度売却されるまで、金融2社の売却は保留する、という内容であった。日本郵政グループの資産は
金融2社に集中しており、日本郵政自体の資産価値はほとんどない。そこで、上場に当たり金融2社の株式
を一定期間日本郵政が持ち続ける方針を示すことによって、投資家が持株会社である日本郵政の株式を買い
― 50 ―
やすくする方針であった。
上場計画の転機になったのは、平成24年末の自民党への政権交代であった。小泉(元)首相の完全民営化
路線を支持する菅義偉氏が官房長官に就き(現)、前政権が事実上指名した日本郵政の取締役はほぼ全員が
解任されることとなった。
ゆうちょ銀行(貯金残高176兆円・資産200兆円以上)もかんぽ生命(総資産90兆円)も、各業界でダント
ツの資産規模を有する。(因みに、三菱東京UFJ銀行の預金残高112兆円、日本生命の総資産54兆円)巨大な
日本郵政グループには常に民業圧迫の批判があり、実際に規制が業務拡大を抑えている。金融2社の新規業
務をやろうとしても金融庁と総務省の認可が必要であり、貯金には限度額1千万円、生命保険には最大13百
万円の補償限度額が設けられている。
(注:郵政民営化委員会は、ゆうちょ銀行・かんぽ生命の限度額引き
上げを求める報告書をまとめていたが、政府与党の調整の結果、ゆうちょ銀行の預入限度額は平成28年4月
1日から1, 300万円に、同じくかんぽ生命の加入限度額は2, 000万円に引き上げられることとなった。)
日本郵政の収益構造は、金融2社が赤字の郵便事業を支える仕組みになっている。郵政グループが民間企
業として成長戦略を描くためには金融2社の業務拡大が不可欠であり、上場で株式の売却が進めばそれだけ
経営の自由度が増す公算が大きい。政府は現時点で日本郵政の株式の89%を保有している。平成19年のグ
ループ発足以降、時の政権の方針によって会社の方向性も人事も強制的に決められてきたのが日本郵政であ
る。郵政の経営には政治の意向が色濃く反映され、そのリスクは今後も続くものと思われるため、今後も動
向には注視していく必要がある。少なくとも、民間事業への参入や貯金限度額・かんぽ生命加入限度額の引
き上げなどは、国の保有株式が全株売却され、完全に民営化されてから論議するべき課題であり、国策会
社・国営企業の間になし崩し的に進めるべきことではないというのが本会の見解である。本会としては、こ
うした認識のもとで、今後もなし崩し的な取扱種目の拡大や新規事業への参入には断固反対の立場で活動を
展開していく方針である。
― 51 ―
6-4 公平・公正な募集環境の構築に向けた取り組み④
〈
「活力ある代理店制度等研究会」
〉
■基本的な考え方
保険の自由化による消費者意識の変化、来店型ショップ店や生保会社・銀行本体による保険販売等の新た
な販売チャネルの出現、利用者ニーズの重視と利用者保護を柱とした金融行政の強化等を受けて、平成26年
5月に保険業法が改正され、平成28年5月から施行された。本改正により、保険募集に関して「意向把握義
務」と「情報提供義務」からなる基本的なルールが新たに創設されるとともに、代理店・募集人に対しても
直接「体制整備義務」が課せられ、代理店の日常業務のみならずその経営のあり方も大きな変革を求められ
ることになる。
一方、世界に先駆けて超高齢社会を迎えた日本国内の損保マーケットを見据えて、国内損保会社は揃って
海外展開を加速させるとともに、経営資源を海外や医療・介護・年金を中心とする生保分野、更には健康・
介護事業などの他業へシフトしている。
このような環境の中で、日本の消費者のために、日々地域密着で取り組んできた国内の損保代理店、とり
わけ保険募集を主業とする専業代理店に生き残る道があるのか、将来に向けた成長ビジョンが描けるのか、
大きな課題が突きつけられている。
我が国の損害保険は、その約91%が代理店扱いとなっており、代理店は歴史的にも長年に亘り消費者の
ニーズに応えてきた。この実績は極めて重く、個々の事象にいたずらに怯える必要はない。しかしながら、
環境は常に変化し、社会は進化していくので、停滞は現状維持ではなく、衰退につながる。知らない間に鍋
の水の温度が上がって死んでしまった「茹でガエル」にならないよう、常に社会の変化に目を向けるととも
に、自らの意識や行動を検証し、変化に適応した体質に転換していく努力が求められる。
こうした課題は、代理店制度を主要な販売チャネルとしている国内損保会社にとっても同じである。これ
から環境はどう変わっていくのか、その中で日本の消費者は保険に何を求めていて、代理店と保険会社はそ
の期待に応えることができるのか、といった自らの原点を確認する根本的な論議が今こそ必要な環境になっ
ている。保険会社と代理店がお互いの立場を理解した上で進むべき方向感を揃え、新しい時代環境に則した
代理店制度を追求し、あるべき姿を実現していく必要がある。すなわち、「日本の損害保険マーケットにお
いてお客様満足を高めるためには代理店制度が最適のシステムである」という考えが共通認識として持てる
のであれば、若くて有能な人材が保険代理業という職業を目指して参入してくる活力ある代理店制度を構築
していくことは業界全体の重要な課題であり、そのための努力が本会と保険会社双方に求められるのではな
いかと考える。
このような認識の下で、平成19年度に「活力ある代理店制度等研究会」が設けられ、代理店と保険会社が
同じテーブルに着き、目指すべき代理店像の論議を始めた。これが「心ある対話」のスタートであり、以降、
論議を継続している。
なお、本研究会は結論を出すことを目的としているわけではない。それぞれの課題にはそこに至った経緯
があり、存在するものには何らかの意味があるので、一朝一夕に解決することはできない。また、結論に拘
ると杓子定規な論議になりかねず、論議そのものができないおそれもある。
保険会社の担当者に代理店の現状を「頭」で認識し、その思いや願いを「心」で感じ取ってもらった上で、
それぞれの保険会社の戦略や政策立案の際に、出来るものから能動的に実現してもらうことを期待したもの
である。勿論、代理店サイドも保険会社の戦略や方針、その背景をしっかりと理解することが必要であり、
― 52 ―
「相互理解」が論議の大前提である。そして、感情を排したこうした冷静で前向きな論議こそが、時間はか
かっても真に実効性を伴った問題解決を導くのである。
■「活力ある代理店制度等研究会」
(通称:活力研)の構成
⑴ メンバー
◇保険会社:協会長会社5社(現在は4社)の代理店営推担当部長
◇日本代協:会長、副会長、企画環境・教育・組織の各委員長、事務局
⑵ 論議報告
本研究会の報告は、平成19年~22年までの第一クールは報告書にまとめ、本会HPにも掲載した。平成
23年度~25年度は、協議の結果、議事録を作成しなかったが、平成26年度以降は、改めて論議内容を報告
することとし、議事録を配布するととともに、本冊子にも掲載を行っている。
■平成19年度以降の論議内容
⑴ 平成19年度の内容
消費者の声、保険会社の専業代理店政策を確認後、損保代理店の現状と問題点(代理店の悩み)や代理
店の活力を喪失させている内外の諸課題について、現場の実態を踏まえて意見交換を実施した。
⑵ 平成20年度の内容
消費者団体や有識者の意見等を踏まえた上で、以下の諸課題について論議を行った。
① 保険契約者の利益保護につながる代理店の資質向上
② 公平・公正な募集環境の確立
③ 目指すべき損害保険代理店像の共有化
④ 代理店手数料の基本的考え方
⑶ 平成21年度の内容
代理店と保険会社の関係を規定する現行の「代理店委託契約書」(内容は各社別)の各規定に関し、募
集現場の実態との乖離について、今日的見地から問題点と課題解決の方向性について論議を行った。
主な論議項目は以下の通り。
 委託契約書全体に対する基本的な問題認識
 委託業務の範囲(計上業務、保険契約の変更・解除等の申出の受付、保険契約の維持・管理(特に
満期管理業務)、その他保険会社が別に定める業務)
 経費等の取り扱い(負担者等)
 保険事故発生時の対応(保険事故発生時の対応、損害調査の補助業務に対する報酬・費用支払い)
 他の保険会社との損害保険委託契約(乗合申請・承認手続き)
 代理店手数料規定(一方的通知による水準改定、引き下げ規定、損害率のポイントへの反映)
 用語の定義
 委託契約書に関する保険会社の社員教育 など
⑷ 平成22年度の内容
我が国損害保険マーケットの将来展望を踏まえた「求められる代理店像=特に、プロ代理店の存在価値
とあるべき姿」について論議を行った。
(なお、平成23年3月11日に発生した東日本大震災への対応を最
優先するため、同年3月に予定していた研究会は8月まで延期した。これにより、報告書の作成は平成23
― 53 ―
年9月となっている。)主な論議内容は次の通り。
① 損保市場における専業代理店の位置付けと今後の戦略並びに必要な支援策
② 代理店を取り巻く外部的な競争要因の整理と対応策の検討
ⅰ.競合チャネルの強み・弱み比較
<対象チャネル> 銀行窓販・郵便局・ディーラー・ダイレクト(直販)・ニューチャネル(SHOP
店等の来店型店舗)・少額短期保険会社・保険会社直資代理店・保険仲立人
ⅱ.一般代理店にとって競争上不公平と感じる各種割引への対応策
<対象割引> 債務者団体割引・大口団体割引・退職者団体割引
③ 代協正会員実態調査の「代理店の声」を踏まえた意見交換
④ 代理店の目指す方向性と職業魅力の向上
⑤ 活力ある代理店制度の構築に向けて
ⅰ.前提認識
 国内損保マーケットの位置づけ  国内マーケットにおける代理店の役割の再確認
 若くて有能な人材が参入してくる保険代理業界に対する思いの共有
 損保業界の信頼性向上は募集人の資質向上が鍵
ⅱ.マーケット環境の整備
 努力が報われる市場環境の整備  商品内容やサービスを巡る本質的な競争環境の構築
 保険は専門家の仕事という環境の構築
ⅲ.今後の損保代理業のあり方
 お客様との永続的な関係  代理店従業員一人当たりの生産性の向上
 成功確率の高いビジネスモデルの構築  代理店における経営管理の実践
ⅳ.保険会社との関係のあり方
 納得感のある代手体系の提示  消費者の多様なニーズに対応できる態勢の構築
 代理店、保険会社の役割の明確化と必要な能力の確保
 代理店の能力の活用(権限移譲)  良好なパートナーシップの構築
 保険代理業の原点の確認
また、特別編として、「東日本大震災と代理店の存在価値」についても報告書に付記した。
⑸ 平成23年度~平成25年度の内容
平成19年度以降の論議により、代理店制度・募集制度に関する主要課題については一応の荒論議ができ
たので、平成23年度以降は、代理店の成長・発展を実現していくための取り組みについて論議を行った。
<平成23年度>
平成23年度上期は、東日本大震災関連の対応を最優先にしたため、活力研開催は下期1回のみとなった。
概要は以下の通り。
□ 平成23年10月3日、安東邦彦氏(株式会社ブレインマークス代表取締役)を講師に招いて「専業代
理店が継続的に成長するための『保険営業の仕組みづくり』と『組織化』について」をテーマに、情
報提供型営業の開拓力強化モデルについての講演の後、同氏を交えて意見交換を行った。
― 54 ―
<平成24年度>
前年度に引き続き、代理店の成長・発展を目的として論議を継続した。概要は以下の通り。
① 第1回:平成24年10月3日 栗山泰史氏(損保協会常務理事;当時)に、「今後の業界展望を踏ま
え、代理店の明日を考える」をテーマに話を伺った。代理店の目指す方向性、業界として
の在り姿、損保各社への期待等について提言をいただき、意見交換を行った。
② 第2回:平成24年12月6日 小坂学氏(株式会社ソフィアブレイン常務取締役;千葉県代協会員)
を講師に招き、「若手代理店に聞く」と題して、同代理店の事業拡大の取り組みについて
講演いただいた。成長・発展のための取り組み、代理店を「普通の企業」にして若い人が
働きたくなる会社にするための取り組み、保険会社との関係のあり方、保険会社に対する
期待、他の代理店へのメッセージ等をお話しいただき、意見交換を行った。
<平成25年度>
平成25年度は、代理店の成長・発展を目的とし、かつ、保険会社の戦略検討の際の参考になると思われ
るテーマについて、有識者の提言を踏まえながら論議を行い、できる限り共通のベースを作ることを目指
した。
① 第1回:平成25年10月24日
・テーマ:①各社の専業代理店戦略・支援策、並びに、②自動車等級制度改定をめぐる諸問題
・内 容:上記①、②について、損保各社の戦略をそれぞれヒアリングしながら、今後代理店が向か
うべき方向性について意見交換を行った。自動車等級制度改定を巡る顧客対応上の問題点
について、本会から現場の実態を踏まえた改善提言を行ったが、双方の認識には大きな相
違があり、等級制度のあり方については根本的な論議の必要性を感じた。
② 第2回:平成26年2月27日
・栗山泰史アドバイザー(平成25年9月就任)から金融審議会WG報告を受けた「保険募集・販売
ルールの変革への対応」について、基調となる提言をいただき、今後の代理店のあり方、保険会社
のあり方、両者の関係性のあり方等について意見交換を行った。
なお、平成23~25年度の論議内容については、保険会社との事前協議で議事録を作成しないことに
なっていたため、各代協会員への具体的な情報提供が不十分となってしまったことを踏まえ、平成26年度
以降の研究会については、改めて参加者の承認を得た上で、記録を取り報告できるようにした。
■平成26年度以降の内容
<平成26年度>
・開催日:平成27年2月12日
・テーマ:これからの代理店経営の重要なポイントとなる「一人当たり生産性の向上」=より具体的には
@1, 000万円以上目標」を確保するために、代理店・保険会社それぞれにおいて、何をどう取
り組んでいく必要があるのか、実現のためのボトルネックはどこにあってどう手を打っていけ
ばいいのか等について、「外的要因(代理店サイドでは解決できない外部要因)」と「内的要因
(代理店自身の取り組みに係るもの)」別に、日本代協で作成した資料(後掲の通り)に基づき、
論議を行った。併せて、各社の来年度の専業代理店戦略並びに代手体系について、各社の方針
を確認し、意見交換を行った。
― 55 ―
【生産性向上を実現するために課題となる「外的要因」に関する論議内容(抜粋)①】
本議事録抜粋(全文は各代協会長宛に報告済み)では、保険会社サイドは「保」、日本代協サイドの発
言は「代」
、アドバイザーの発言は「ア」と表記し、発言内容によってはまとめて記載している。
なお、論議資料にある「内的要因」については、次回以降の活力研で論議を行うこととした。
代
・活力研は、全国の会員が関心を寄せており、期待も大きい。保険会社の方にとっては耳
の痛くなるような話も出ると思うが、基本は、専業の我々と保険会社が共に成長するこ
とを目指すものであり、活発な論議をお願いしたい。
代
(事務局で用意した資料を説明後、「外的要因」について論議)
・カタカナ生保と国内生保での手数料の差は大きい。カタカナ生保の手数料額の問題は別
として、代理店経営にとって取扱がカタカナ生保か国内系生保かで収益に大きな差が出
ることは事実だ。
・生保系の代手体系は、ボーナス代手など、代理店の増収意欲、モチベーションを高める
作りになっているのに対し、損保は減点方式で“出来てないと下げる”といったイメー
ジが強く、やる気を殺ぐ体系になっている。こうした代手のあり方は問題だ。また、カ
タナカ生保の中には、代手の一部が年金方式のところもあり、代理店には魅力的だ。
・外資系生保は、解約返戻金が大きい商品が多い。法人への提案の場合、返戻金の大きさ
も比較対象となる。お客様にとって魅力ある商品作りも課題だ。
ア
代
・代手をどう考えるかは一つのポイントだ。代手の問題イコール付加率を保険会社と代理
店でどう分配すべきかである。代手は代理店に対する評価である。ノンマリン代理店制
度が廃止され、代手も自由化された。お客様にとって、また、保険会社にとって価値が
ある代理店とは何かという評価の観点をベースに考えるべきではないか。
・そう考えれば、先のカタカナ生保の代手の理屈も筋が通るし、現在EUでは保険料の一
定割合で決める手数料率という仕組みそのものを廃止する考えもある。EUでの論議が
進めば、手数料がコンサルフィーに代わるというような視点も必要になるだろう。
・プロチャネル政策はより一層、専属政策に舵を切ると思われるが、本当に比較を希望す
るお客様は保険ショップに向かう傾向が強いことを認識してほしい。お客様ニーズをカ
バーするための商品補完的な乗合については、一定の配慮をいただきたい。
・お客様へのコンサルティング提案を基本とした場合、商品引受上の問題など専属では厳
しいところもあり、補完的・限定的な乗合については配慮していただきたい。
代
・ここ数年、代理店の規模・組織は拡大しているが、実態は属人的営業スタイルのままの
代理店も多い。経営理念すらなくガバナンスが効かない代理店はこれから厳しくなる。
保険会社も合併ありきで代理店の集約を行ってきたが、その考え方はもはや崩壊してい
る。今大事なことは経営のマネジメントであり、今後、体制整備義務が課されることを
踏まえると、費用負担の問題も含め、事業を続けられるのか不安になっている代理店が
多いことを認識していただきたい。
保
・外的要因について、意見を申し上げたい。競争環境のところに「保険ニーズの一次情報
が取れる副業チャネル」とあるが、これは“不公平な”競争環境とは言えないのではな
いか。ビジネスモデル上、情報が取れるものであり、これはある意味当然のことで、是
正するような話ではない。むしろ専業チャネルは、他チャネルがこうしたメリットを
持っていることを認識したうえで、もっと緊張感を持ってお客様とのグリップ力を強め
ないと、顧客を取られるという危機感を持つ必要があるのではないか。
― 56 ―
代
・確かに地域密着といっても顧客情報は本当に把握しているのか、真に顧客をグリップし
ていると言えるのか、これだけ単種目割合が多い現実を踏まえると、自らに問いかける
必要はある。
代
・年度末に向け、ディーラーの抱き合わせ販売と取られかねないような募集行為が増えて
くる。ディーラーは敵ということではなく、むしろ代協の勉強会にディーラーも参加す
るような環境を整備し、論議するような場も必要だ、こうした環境づくりには保険会社
も協力していただきたい。
代
・営業社員は、会社の予算ありきで数字や件数しか頭にない。もっと代理店経営について
アドバイスをしてほしいが大きな期待ができないのが実情だ。今の環境で、営業社員は
何を身につけるべきか、また、何を教育すべきなのか、再検討すべきだ。
・当社の場合、フリート顧客が多いが、ロス改善の取組みを行った結果、メリットが進み
保険料が下がると、営業社員には「何とか(保険料の減分を)埋めてほしい」と懇願さ
れる。逆にデメだと見かけの保険料は増えるけど、手数料は減る。優割を増やすことが、
お客様にも代理店にも保険会社にとってもいいはずなのに、結局は見かけの増収が全て
というのではお客様本位とはいえないのではないか。
保
代
・私の地域はトヨタの城下町。トヨタの自動車団体割引が50%で、更改申込書に〇をすれ
ばいいだけの状態だ。あまりにも競争環境が異なるというか、むしろ競争にならないの
が実情だ。
ア
・割引など確かに不公平と感じるものはある。一昔前は、保険会社に申し入れ、それが駄
目なら行政に調整を求めるという構図であった。しかしながら、その枠組みは金融ビッ
クバン以降、変わった。先ほどの構図には、お客様の視点が欠落していた。割引もルー
ルに沿ったものならばお客様にとってはメリットになる。一方で、専業チャネルは、丁
寧に訪問対応することで、割引に負けずにお客様を獲得することができる。そして、一
定の棲み分けができていた。しかし、ダイレクト販売や保険ショップなどの台頭でチャ
ネル間での競争が激しくなってきた。それをどう解決するかが問題だ。
・その際、行政は消費者の観点で問題がなければ対応はしない。業者間の調整に行政が出
てくることはありえない。割引などは長い歴史の中で、いろいろな背景があって出来て
おり、違法でもないので、行政が中に入って解決することは非常に難しい。新しい仕組
みのルールを決めるのとは訳が違う。保険会社と代理店が必死になって論議し、現実の
実態を踏まえた解決策を見出していく努力をするしかない。また、その論議においては
独禁法にも配慮しなければならない。そういう意味でもこうした論議の場は貴重だ。
・保険会社の中でも立場によって考え方は違うと思う。例えば本日お越しの皆さんは専業
の営推部門で私たちに近い立場だが、ディーラーはディ―ラーで、企業は企業で戦略が
異なるし、商品部門はお客様のニーズがあれば商品を作る。
・保 険会社の中でも時間をかけて、チャネル部だけでなく商品部等の関連部も含めて、
チャネル戦略のあり方をしっかりと論議してもらいたい。
・当社の場合であるが、フリートのメリデメによる保険料の増減は営業予算において一定
調整する仕組みとしている。また、予算の規範性について、その意識を常に持っていな
いと持続して成長する組織には成りえないと考える。
・専業チャネルの競争環境は認識している。ただ、企業チャネルでは構成員契約規制を撤
廃してほしいと考えているし、銀行は弊害防止措置の撤廃を求めている。ディーラーで
は整備工場に比べて自社の修理コストが高いため、少額修理の入庫が減少しているとい
う厳しい競争環境に立たされている。それぞれのチャネルの競争環境を正しく理解する
ことも重要である。
― 57 ―
保
・専業はプロだと言うが、他のチャネルに比べて自動車新規が取れず、お客様も増えてい
ないのが現状だ。他業態・他チャネルの努力も知ってもらいたい。モーターでは、車販、
車検、保険、修理のバリューチェーンを構築しており、一般的な事業所で保険の取引割
合は10%程度だが、先進的なモーターでは30%の割合となる。専業と比べてどちらがお
客様との接点が多いかは一目瞭然だ。他業界の営業マンを跳ね除けるパワーを持たない
と、専業、専業といっているだけでは勝ち抜けない。
保
・代理店業務が増加しているとの記載がある。事務面だけ見ると、会社の業務が代理店の
業務に移ったように見えるが、代理店で完結できる業務が増えたと考えてもらいたい。
少し前は保険会社で計上して、保険料や記載内容に誤りがあると代理店に戻すようなこ
とをやっており、このやりとりにかなりの時間を要していた。伝言ゲームがなくなった
ことで双方ともにかなり効率化が図られているのが実態だ。
代
・企業の大型別働体代理店でも業務が増えたと言っている。保険会社の見せ方、伝え方に
よるところも大きいのではないか。相手の立場に立って話さないと、情報は伝わらない。
代
・我々専業代理店のほとんどは自動車保険の割合が50%以上である。今後、クルマ離れや
事故が起きない車が増えてくると、これからやっていけるのか不安だ。新種をやれと
いってもそのやり方がわからない。代理店は5年、10年先のことも考えているが、営業
社員は2年、3年くらい先までしか目が向かない。この先の展望をどう考えればいいの
か、保険会社としても具体的な道筋を示してほしい。
代
・私は逆に地域では自動車が重要だと考えている。郡部では過疎化が進んでおり、他チャ
ネルの自賠責の攻勢も激しい。しかしながら地上(人)を押さえているのがプロであり、
今こそ初心に戻って自動車保険を徹底的にやっている。自動車から世帯ぐるみのリスク
対策につなげている。集落全てが契約者という場所がいくつもある。
保
・自動車の販売台数は実際には微増しており、短中期的には大きな影響を及ぼさないと考
える。確かに大都市圏ではクルマ離れの影響が発現するかもしれない。また、先進安全
自動車装置による事故削減や軽自動車の高性能化による影響は、参考純率に反映してく
るものと思われる。
・自動運転車により実際に事故が起きなくなれば、保険会社の選定者がお客様から自動車
メーカに移っていくことも想定される。代理店の価値をどこに求めるのか、考えていく
必要がある。
ア
・プロ代理店はコンサルティング能力がないとやっていけないのは明らかではないか。自
動車リスクの総量が下がれば、保険料も下がる。自動車単種目に過度に依存すると先は
見えている。
代
・これからのプロは新種(企業リスク)の専門家となって他チャネルとの差別化を図るこ
とが必要だと考える。保険会社には専業代理店が中小企業のリスクをもっと勉強できる
機会を提供してほしい。
ア
・保険業法が変わる中で、保険会社の戦略として他社プロ開拓やキャンペーンはなかなか
馴染まなくなる。営業担当者が自社の商品をしっかりと説明できることが大事となる。
― 58 ―
保
・専業も昔は儲かっていた。今は事業も厳しくなっているが、ディーラーやSSもかなり厳
しい。その中で相手も頑張っている。当社の統計だが、オールチャネルの自動車の増率
は、ディーラー6%、中古車販売5%、全チャネル平均3. 5%、プロ3%、SS2%となっ
ており、専業は販売チャネルとしては見劣りするのが実態だ。そうしたことも冷静に見
ておかないとダメだ。お客様を専業ではないチャネルに取られているということだ。
代
・今の数字は、増率の数値をチャネルで並べたもので、平均でプロが弱いと言ってもナン
センスかもしれない。どのチャネルも様々な代理店が存在している。毎年10%以上伸ば
しているプロや年1億円以上増収しているプロも中にはいる。
代
・社会保険は大きな問題だ。金融庁から日本代協に対して、社保加入推進の協力依頼があっ
た。厚労省の所管業務を金融庁から依頼するのを見ても政府の本気度が伺える。委託型募
集人の適正化以降に本格的に指導すると言われている。納税データと付け合せて対象代理
店を掴んでおり、3年くらいかけて徹底的に取り組むようだ。この問題は業界団体として
は重要な課題だと認識している。適正加入を行わないと、社会の指弾を浴びることになる。
保
・当社では問題意識を持つ程度で、現時点では特段の指示を出している状況ではない。
・当社では、以前はプロ認定制度の要件に入れていた。しかし社保は加入することがそも
そもの大前提であり、認定要件に加えることは未加入代理店があることを前提にするこ
とになるので、外した経緯がある。
保
・保険会社にも何とか社保のコストを押えられないかと言った相談も増えてきている。
・当社では、社労士をネット化し、プロ代理店の会の会員には2時間無料相談の支援サー
ビスを行っている。こうした制度を活用し、適正加入を行ってほしい。
(以上)
<平成27年度>
・第1回開催日:平成27年7月22日
・テーマ :前年度論議に引き続き、代理店の一人当たりの生産性向上を図る際に課題となる要因を
中心に論議を行った。論議内容(抜粋)は以下の通りである。今後も本テーマに沿って
論議を行う予定である。
【生産性向上を実現するために課題となる主に「外的要因」・「内的要因」に関する論議内容(抜粋)②】
代
代
・前回の活力研で、
『専業代理店の皆さんは、他チャネルを押しのけるくらいの気概を持っ
てほしい。
』との発言が心に残った。様々な競合にさらされている副業チャネルに比べ
ると甘いところもあるのではないかと感じた。
・改正保険業法で、代理店が大きく変わる転換期を確実に迎える。今後ともお互いが協力
しあえるよう宜しくお願いしたい。
(事務局で用意した資料を説明後、論議)
<共通化・標準化、事務効率化関連>
・実務で困っている問題として、自賠責の保険料の領収方法を業界として改善していただ
きたい。クレカ払いや口座引き落としを認めていただきたい。
・事故対応等を考えると自賠責と任意保険は一体で管理した方がいいが、それぞれの実務
の流れが異なり、お客様にとっても不便だ。一方で、手数料の額を考えると自賠責の手
続きにそれほど時間をかけられないのが実情だ。
― 59 ―
保
代
・日本代協としても、共通化・標準化の課題として、自賠責のキャッシュレス化を要望し
たが、政治課題とされた。
・種目によって、手続きが異なるのは顧客本位と言えず、もう一度働きかけたい。
代
・事務の手続きが保険会社によってかなり異なる。例えば車検証の取付けでも保険会社に
よって提出の有無が異なる。このあたりは統一出来ないものか。
保
・利便性が良くなることに異論はないが、公正取引委員会、独占禁止法の考えも考慮する
ことが必要だ。変えたくても変えられないものもある。
保
・共通化・標準化の考えと事務の統一が必ずしも一致するとは限らない。事務の流れや書
類の取付けには、保険会社が必要だと考える思想が織り込まれている。その中でどこま
で統一する必要があるかは、十分な論議を要する。
保
・税金もクレカ払いが出来るのだから、自賠責もクレカ払いを認めてもいいのではないか。
我々がやるべきところは、こういう理由で必要だと示すことが大事だと考える。実際に、
自賠責のクレカ払い、口座振替は、当社の代理店からも要望をいただいている。当社で
は、
「代理店の声」として、代理店の要望が本社に挙がってくる仕組みが出来ており、
要望に対して、本社の所管部が、出来る・出来ない、出来ないのであればその理由、出
来るのであれば開発期限を明確にして回答している。
代
<これからの代理店の在り方>
・保険会社は、どのような代理店を求めているのか、中期的にプロチャネルをどうしてい
きたいのか教えてほしい。
代
・我々がどこを目指すべきなのか、議論したい。手数料を上げることよりもマーケットを
押さえることが大事ではないのか。保険会社の担当者も、とかく増収要請ばかりで、経
営のあり方や目指す方向を語っていた昔に比べ冷たくなった感じを受ける。
保
・代理店には、生産性を高めていただきたい。その上で、社保完備、体制整備といった組
織化をしっかりと固めていただきたい。当社の場合、研修生の育成に毎年大きな投資を
している。このチャネルが無くなっては困る。組織化を図っていただかないと世代の引
き継ぎも進まない。
・個人的な見解だが、今回の金融庁のパブコメの回答は、『何をやれ』ではなく、『結果を
示せ』といった論調になっている。数年後、結果が示せなかった場合には、手数料開示
の圧力が高まるのではないか。手数料開示となれば、業界に激震が走る。そのためにも
生産性を高めていただきたい。
保
・自賠責は、車についてくるので、仕組みが複雑となり、そのことにより改善が進みにく
い一因となっている。
・自賠責は、国交省が管轄しており、保険会社の努力だけで実現できるものではない。実
務上の問題があれば保険会社と日本代協で協力して取り組んでいきたい。
・営業の二重構造が解消しきれていない。保険会社としては、自立した代理店になっても
らいたい。地域を任せられるような代理店になってほしい。そのためには、生産性を上
げて、内部留保を高めてほしい。それにより新しい投資が可能となり、組織化や人材採
用につながる。
― 60 ―
代
・本社と現場で温度差、意識の違いがあるのではないか。我々が改正保険業法のセミナー
をした後に、保険会社から『体制整備も大事だが、まずは自動車保険の新規を』といっ
た発言もある。
代
・当社は、地域を任されている方だが、我々は期待される代理店となりうるのか、日々考
えている。地域の過疎化が進み、保険会社も代理店も地域から引き上げている。自分の
マーケットをしっかり考えなくてはならない。
保
・プロ代理店はフルラインで商品を提供している。リテールマーケットで頑張ってほしい。
当社では、支店長が地域戦略を描いている。その中で販売戦略をどう組み立てるのか、
新規が足りない場合には、どこで稼ぐのかを考えてもらう。
・当社は、代理店に体制整備の内容を一歩早く示してきた。代理店の大型化を進める中で、
理念なき合併があったのも事実だ。規模が大きくない家族経営のような代理店でもガバ
ナンスが発揮できている代理店も多く存在する。その証左が代手体系であり、(2016年
度適用代手では)1億未満層の代手ポイントを引き上げた。
・保険会社が求める代理店の姿として、「お客様にどれだけ利益を還元できるか」という
のが、一つのポイントではないか。
代
・手数料に見合う価値をお客様に提供しているかといった考えは重要だ。一方で効率化を
求めるうえで、お客様との付き合い方、言い換えれば、顧客セグメントをしっかりと進
める必要がある。
代
・業法改正で、比較推奨を行う代理店と一社専属の代理店に分かれてくると考える。比較
した上で商品を選びたいお客様ニーズに対して、対抗する代理店はどのような価値を見
出せばいいのか。我々自身の課題だが、保険会社の立場での意見も伺いたい。
代
・今回の業法改正で、大型乗合代理店の生きる道は示されたと言える。専属・専業代理店
の価値がこれから問われるであろう。自分としては、フルコンサルサービスや世帯単位
でのリスク管理、独自メリットを提供できる代理店が勝ち残れると考えている。
保
・比較推奨の際は、保険料の提示だけでは不可とされており、説明に時間を有する。その
点、専業・専属代理店には、時間的優位があり、単純に自動車保険の提案だけで終わら
すのか、リスクベースのフルコンサルを行うのか、創出された時間をどれだけ有効に使
うかによって専属代理店の差が開いてくるであろう。
・モーターチャネルは、車両販売、オイル交換、車検、保険と自動車カーライフの一環で
お客様とのグリップを強め、通販はこれまで通り価格優位性を訴求して新規顧客を開拓
してくることになる。これに対して専属・専業はどういう価値を提供できるかの勝負だ。
代
・専属・準専属代理店は、自社の立ち位置を明確にしなければ業法改正を乗り越えられな
い。また、専業だからこそ、他チャネルにはない、リクスをベースとしたバリュー
チェーンでお客様を囲い込むなどの取り組みが必要となってくるであろう。
保
・専業代理店は、リスクをベースとしたコンサルティング提案がコアコンピタンスと考え
る。保険会社としては、コンサルティングを実践している代理店を支援する商品・サー
ビスを提供していきたいと考えている。
― 61 ―
保
代
・専属代理店にとってみれば、保険会社のブランド、ネームバリューも付加価値となるの
ではないか。
・当社は逆に、保険会社のブランドでなく、地域に根差した自社のブランド・代理店名を
浸透させることに注力してきた。早い段階から事故専任担当者を配置して、企業への事
故対応や安全運転講習などを行ってきた。遠方には、出先機関を作り地域を押さえるこ
とに専念した。先行投資も大きく、大変だが、この事業にやりがいを感じている。
代
<代手開示>
・次の保険業法改正では、手数料開示が避けられないと考えている。想定されるシナリオ
など考えがあれば教えていただきたい。
保
・手数料が開示されたらどうなるのか?あくまで推測の域を越えないが、電気小売店のよ
うに数社しか生き残れないのではないか。大型化した小売店は、仕入れ値に対して圧力
をかけてくることになるかもしれない。保険という商品の特性を考えた場合、健全性を
維持できるのかという問題もある。
保
・手数料を開示することが、消費者にどのようなメリットがあるのか不明だ。また、手数
料は、保険会社と代理店との委託契約で決められている。それを第三者に開示する必要
があるのか、そのような義務を課すことができるのか、リーガル上の問題もあるのでは
ないか。
代
・改正保険業法の検討段階において、消費者団体から手数料開示の要請があったが、今回、
代理店・募集人に対し、直接的に保険募集に関する基本的ルールの規律付けがなされる
ことを踏まえ、見送りとなった経緯がある。消費者の苦情など改善されなければ論議は
再開される。代手体系が複雑で開示に馴染まないとの意見もあるが、「体系が複雑であ
れば、開示できるような体系に変えればいい。」との要請が挙がってくるであろう。
・手数料が開示されれば、純率の引下げ要望も含め、流通革命が起きる。ニトリやイオン
のような企業が既にビジネスに参入しており、大資本による卸値方式のような形態が現
実味を帯びてくる可能性もある。保険のような商品で、それが果たして健全なことなの
か、議論の余地があると思う。
保
・当社では、プロチャネル組織が増収をけん引しており、感謝している。それに対して、
まだまだ支援が届かないところもあり、プロ代理店の期待に応えられるよう手を打って
いきたい。
・専 業代理店の対応手段としては、防災・減災の取組みが他チャネルにはないアドバン
テージであり、そこに価値を見出してほしい。3. 11の時に地域に密着したプロ代理店
の重要性が再認識されたように、消費者が「加入先はどこでもいい」から、「代理店を
選ぶ、あなたでないと困る」と意識するような土壌を作っていけばいい。
<直資代理店の展開>
・当社は、プロチャネルの組織を抱えているので、直資代理店の展開はプロ代理店に配慮
しながら進めてきた。外的要因に直資の視点を織り込んでもいいのではないか。プロ代
理店と直資の棲み分けも重要な課題だ。保険会社としては、拠点代替として直資代理店
の設置も必要だ。
・当社は、各県に直資代理店を出店しているが、マーケットの成熟度合いを見ている。直
資代理店が必要な地域もあれば、代理店に移管する地域もあると考えている。
・当社では直資代理店の撤退はないと考えている。直資代理店は、保険会社のブランドを
活用したマーケット開拓だけでなく、統廃合した代理店・募集人の受け皿対策、営推施
策のトライアル機能を有している。
― 62 ―
代
・直資代理店に受け皿機能を持たせると生産性が下がると思われるが、その辺りはどう考
えているのか。
保
・直資代理店と専業代理店では、会社が期待する役割も違う。直資には直資の役割がある
以上、一定の資本投下も必要だと考えている。
代
・最初は直資に抵抗があったが、今では役割が違うことを理解しており、違和感はない。
・最終的にはお客様が代理店を選ぶ訳だから、様々な形態があっていいと考える。無尽蔵
にヒト・モノ・カネをかけられないのだから、我々が地域を任されるような代理店にな
ればいいことだ。
・自社のエリアで直資代理店と競合したことはない。お客様が当社を選んでいただいて、
ここまで伸ばせてきた。
・自分は、当初敵対視していたが、今は違う。施策のトライアルなど見習うことも沢山ある。
また、受け皿機能を担っている中で、ガバナンスが維持できていることに感心している。
保
代
<その他>
・会員から、ディーラーでは自動車保険の長期契約を認めているが、専業代理店は抑制も
しくは禁止されているといった声が挙がってきている。代理店の立場としてではなく、
消費者の選択権を奪っているという視点でみると、現状では問題がある。保険会社とし
ても考えていただきたい。
代
・代理店のM&Aには、保険会社主導による合併のほか、事業拡大を目的に代理店自ら投
資して買い取るケースもある。後者においても同一保険会社の扱い契約が、新規となら
ず継続・実績として評価されるのは、納得し難いとの声があることを申し上げたい。
代
・保険会社から体制整備関連でPDCAの徹底を求められるが、Cが単なる指標のチェック
で終わっている。改善に向けてもう少し踏み込んだコミュニケーションを取ってもらえ
ればと考える。
・代理店と保険会社の関係において、自立=距離を置くことと考えているのであれば、見
直してほしい。
保
代
・当社では、事業継承の候補者が見当たらない代理店の受け皿として、直営代理店を出店
するケースなどがある。出店方法も直営に限らず様々な形態を検討している。
・当社では、全国に所在する総轄代理店に地域を任せたいと考えている。総轄代理店は課
支社の代替機能を有しており、傘下の副業代理店等への販売指導や事務支援、コンプラ
研修などを担ってもらっている。
・営業のやり方は色々あると考える。ただ、今の営業担当者は、基本に忠実ではあるが、
代理店主と経営について語れていないかもしれない。経営指導について、社員教育をし
なければならないと考えている。
・担当レベルでは、日々の問い合わせなど、コミュニケーションが取れていると思うが、
代理店も組織化され、
(日頃の打ち合わせは担当者同士で済むので)社員と社長との接
点も減ったのではないか。保険会社としても考えなくてはならない。
・メーカー(保険会社)の担当者は、ディーラーのロードマンのようにマーケットを創り、
開拓することの喜びを知ってもらいたい。なお、女性の営業担当者もコツを覚えれば、
女性ならではのきめ細かい対応ができるので、当代理店は大変助かっている。
(以上)
― 63 ―
【平成27年度専業・プロチャネル戦略、代手体系(平成28年度支払分)等に関する各社の補足】
※各社の戦略は、それぞれの代理店には開示されている。各社の狙いについて話を伺った。
東京海上日動社
・当社の専業チャネルは、純新規は獲得しているが他社新規の獲得は弱く、新規の情報は掴んでいるもの
の、既存契約の切り替えの提案はそれほど進んでいないとの認識を持っている。そうした課題を解決す
るために、見込み客情報を保有するモーターなどの兼業チャネルとの連合を作ることも必要だと考えて
いる。
・生損保併売率は依然として進展していない。一人が全部やる体制に無理があると判断しており、今後は
より一層、専門分業体制を指向していきたい。募集人それぞれが特定分野の専門スキルを磨き、組織力
でマーケットを開拓することを戦略として掲げている。
・今年度は、代理店の組織態勢イメージを示した。平成32年度に一人当たり生産性1, 000万円実現を目標
とし、専門分業体制のもとで社員約12名、損保挙績4億、生保挙績1億クラスの「組織型代理店」を実
現モデルとした。一人当たり生産性を引き上げるために、代理店と一緒になって取り組んでいきたいと
考えている。
三井住友海上社
・当社としては「攻めと守りの戦略」を掲げ、専業支援に取り組む方針だ。今後は、①お客様との接点強
化、②中堅中小企業開拓、③態勢の伴った大型化を推進していく。このような戦略を実現するため、
「プロ新特級」の仕組みと連動させて、収益性と大型化を段階的に実現していくイメージである。また、
こうした戦略に沿って、次年度代手体系を策定している。
・現在、プロ代理店の収保は会社全体で3, 600億円であるが、その半分を「プロ新特級」が占めるように
したい。
・これからのプロ代理店は、スマホなどのテクノロジーを活用した営推ツールを使いこなし、顧客との接
点強化を実現していくことが不可欠であり、こうした ITの活用も支援していく。
・代理店の内部事務の効率化のためには、代理店の内務スタッフの強化が必要であり、教育プログラムな
どの支援を充実させている。内務スタッフ向けのロープレ大会も計画し、代理店の意識を高めたい。
・代手については、当社の特徴である「前年加減算方式」を次年度も採用している。同じ収保層でも、低
ポイントの代理店が伸ばした場合には加算幅を厚くし、高ポイント層には厳しくすることで、成長層へ
の傾斜配賦を企図している。
あいおいニッセイ同和社
・今回の業法改正で求められる体制整備にはコストがかかるが、法改正が強い代理店を作れるよう促して
いると捉え、内部管理体制の整備をプロの認定要件に取り入れ、「強い体質をもった代理店」つくりを
一層強化したい。
・当 社では、昨年から前倒しで、内部管理態勢の確立に取り組んでもらった。代理店認定基準である
HGAの要件にも取り入れており、内部規程のひな形提供含め、業界の中で一歩先に出た支援をしてき
たと自負している。今年度は、この“器”に“心”を入れていただきたいと思っている。
・代理店からは「PDCAをどこから手を付ければいいかわからない。」といった相談を受けてきた。当社
は、支店長経験者を中心に15名のコンサルタントが代理店に赴き、支援を行ってきた。支援に入った代
理店には、代理店主導による月次ミーティングの実施を義務付け、募集人単位で目標を落とし込み、週
― 64 ―
次ミーティングで進捗管理を行っている。営業予算達成のPDCAを通じて、代理店における内部管理態
勢の確立を支援してきた。2年間で400店の支援を実施したが、対象代理店は5%の増率となっており、
他のプロ代理店と比較して倍の増率を実現している。
・併せて、代理店には「事業の継続・発展に向けた再投資」を求めており、「内部留保」、「先行投資」が
できる経営基盤が強化された代理店づくりを支援していきたい。
・問題意識は世帯単位の囲い込みが出来ていないことだ。地域密着とはいうものの、プロの電話募集比率
は半分以上もあり、お客様に会えていない。お客様の意向もあるが、「対面募集100%」を目指して取り
組みたい。そうすることで様々な家族の情報も得られるので重要だと考えている。
・マーケットで重要なのは中小企業だ。当社では、1億円以上のHGA層と研修生を対象に、全国68支店
にトレーニングセンター(専任スタッフ)を設置し、開拓指導を行っている。毎日、販売実践研修を
行っており、この機能を更に強化したい。来店型店舗作りにもチャレンジしたいと考えている。
・代手については、総ファンド額の変更はない。平成26年度からは、1億未満層のいわゆる家業代理店で
あっても、ガバナンスがしっかりしている代理店には一定のファンドを充ててきたが、平成27年度は、
5, 000万円未満の層にも同様の対応を行いたい。また、専業トップ層であるHGA認定代理店に対しては、
損害率の結果で代手ポイントを下げないようにするとともに、増収していれば代手ポイントを下げ止め
る激変緩和措置の導入を検討している。
・代理店の「顧客数の拡大」は、非常に大事だと考える。深耕開拓も大事だが、それではマーケットが広
がらない。代理店が持続的に成長するには、「顧客数の拡大」は不可欠であり、こうした視点で推進し
たい。
・会社施策であるが、本社の推進部門をプロ担当とモーター担当に切り離す。新しい組織は、プロチャネ
ル支援にマーケット開拓と商品企画機能も取り入れ、一元的に支援策を検討、推進するプロチャネルの
専任部となる。また、代理店の事務、システム、ヘルプデスク機能を集約した代理店業務支援部も設置
して代理店の内部態勢の支援機能を強化する。先行して、平成26年10月に「代理店業務マニュアル」を
作成し、業務のスタンダード化を後押ししており、更に推進する方針である。
損保ジャパン日本興亜社
・当社としては、「地域のとりまとめができる事業型代理店」つくりを目指したい。
この方針の下で、代理店には「規模・品質面で地域№1」か「お客様にとってのONLY1」のどちらか
を目指してもらう。共通のベースは、「永続的に事業が継続できる体制」だ。
また、これまでトライアルで保険会社の支社を撤退した後を直資代理店でカバー出来ないかを検討して
きたが、更にそれを地場の代理店で出来ないか、と考えており、平成27年度中には実践したい。
・これまで、代理店に対し事故の際のサポートを求めていなかったが、事故対応・手続きをサポートして
いる代理店の方が継続率が高いことがデータで明らかになった。これを踏まえ、今回、代理店には、事
故対応を通してお客様の満足度を高めることを求めている。
・目指す姿を実現していくために、お客様ニーズに応える高品質なサービス(「事故対応」・「他業種との
提携」
・
「コンサルティング力の強化による多種目販売」)の提供とあわせて、強い経営体質の醸成を求
めている。内部留保を高め、成長分野への投資を進めてもらいたい。内部留保は、十数%程度を想定し
ている。
・代手については、小規模層の代手ポイントを若干減らす。また、代理店自らが取組み課題を選択し、そ
の課題を達成すれば代手ポイントを付与する「チャレンジ№1ポイント」という仕組みを取り入れた。
― 65 ―
代理店毎に実態に合わせて、取り組み課題を保険会社と握る仕組みだ。取り組み項目は8つある。
・研修生の採用については、少しずつ絞り込む方針だ。段階を踏んで減らしていくが、優秀な人材をじっ
くりと育てていきたい。また、研修生を募集人として送り込んだ代理店が社会保険未加入であったケー
スもあったと思う。これについては、見直しが必要と考えている。
・会社施策ではあるが、例えば研修生の採用基準などを現地に委譲する「連邦経営」を進める方針だ。本
社では、専業・中小企業・モーターの各チャネル支援の組織に、保険金サービス、システム、商品を加
えて、ワンストップで横串を刺した機構改革にチャレンジする。
・第2回開催日:平成28年2月17日
・テーマ :代理店が感じる代手の問題点について意見交換を行い、その後、生産性向上策の論議を
行った。代手に関し提示した声(「日本代協に寄せられる現行代手体系に関する代理店
の主な疑問・不満の声」)の内容は、以下の通り。
① 代手ポイント制度問題
 代手ポイント制度を廃止して欲しい(➡自由化前の種別制度への復帰?)
 ポイントは短期的な保険会社施策の押し付けであり、代理店経営の独自性を阻害している
 代手が代理店経営の活性化のためではなく、会社の施策推進のためになっている
② 改定頻度の問題
 一方的かつ短期的な水準変更・改定が繰り返され、長期的視点に立った代理店経営ができにくく、
先行投資の意欲を阻害している
③ 損害率ポイントの問題
 専属代理店は契約付保先のコントロールができないので、損害率のポイント化は止めて欲しい
④ 業務プロセスの変化と現行代手体系の納得感の問題
 業務プロセスの改革の中で、代理店サイドの業務経費は増加しているが、代手にはこうした費用が
織り込まれていない
⑤ 改正保険業法等との適合性の問題
 比較推奨販売に挑戦することは顧客ニーズに応える上で重要な戦略になるはずなのに、専属だから
ポイントを加算するというのは、業法改正の趣旨を踏まえていないのではないか
 特定商品の成約実績を織り込むことは、業法改正の趣旨に反するのではないか
代
(岡部会長挨拶)
・活力研の前に、栗山アドバイザーから改正保険業法の背景、監督官庁の意図など、興味
深いレクチャーを受けた。改めて共有の機会を持ちたいと考えている。
・代協会員からは、代申会社の代理店会では言い難い内容でも、代協だと本音で言えると
の意見がある。本日のテーマでも耳障りな部分もあるかと思うが、現場の声として予断
なく受け取ってもらいたい。
・私達の目指すところは、副業チャネルやショップ店などとの競争の激しさが増す中、皆
さんとタッグを組んで他チャネルに負けない真のプロチャネルにすることだ。
・代理店のビジネスを成功させる鍵は「ヒト・仕組み・カネ」だと思う。お客さまから選
ばれる「仕組み」となるヒントが見出せるよう、活発な論議をお願いしたい。
― 66 ―
代
【テーマ1 代手体系の課題と今後の展望】
・代手体系については、これまでも活力研の中で意見交換を重ねてきたが、代理店サイド
の関心は高く、本資料に記載した内容は、“代理店の生の声”として受け止めていただ
きたい。また、現行の体系だけでなく、今後、どのような体系を目指しているのか頭出
しが出せるようであれば、あわせてお願いしたい。
(以下、配布資料「現行代手体系に関する代理店の主な疑問・不満点」(前記)に基づき、
日頃日本代協事務局に寄せられる代理店の声を報告し、保険会社の考えを確認した。)
保
【① 代手ポイント制度問題】
(保険会社の主な意見は次の通り。)
・
「代手ポイント制度の廃止要望」は、「種別認定に戻したい」という意味合いがあると思
われるが、逆戻りする理由はなく、現時点で考えられない。
保
・代手体系の作り手としては、代理店の事業の成長を考えて作っているつもりだ。会社施
策の押し付けとの意見が挙がっているが、当社の代手体系では、予め会社が提示した複
数の項目から代理店が得意とする取組みを選べる仕組みを採用し、代理店の個々の経営
課題を取り込めるようにしている。
保
・代手ポイントがなくなるとは考えていない。そもそもは商品別基準代手×100ポイント
がベースと考えている。100ポイント+αの部分をどうやって取りに行くかを営業担当
者と一緒に考えPDCAを回してほしい。この取組みが代理店の安定経営に資する保険会
社の支援と考えている。
保
・代手ポイントには、業務品質、認定制度などを織り込んでおり、それらは代理店の経営
品質を向上させるものだ。会社施策推進のためだけの体系とはなっていない。また、
「押
し付け」と言われる会社施策の部分には、選択項目なども設け、代理店の個別課題を取
り込めるようにしている。
保
【② 改正頻度の問題】
・当社の場合、代手ポイントの改定は、2年毎に変更することとしているので、次年度は
変更しない。改定で代手ポイントが大幅に下がらないよう、キャップをはめるなど代理
店経営の安定に配慮している。
保
・改定による代理店経営への影響を十分承知しており、保険会社としても配慮している。
損害率ポイントにストップロスを採用しているのもその表れだ。トップライン層の代理
店には、ポイントの下げ止め措置なども設けている。
保
・当社の代手体系は、平成25年度から前年ポイントをベースとした加減方式を採用してお
り、安定要素を織り込んでいる。
保
【③ 損害率ポイントの問題】
・損害率ポイントについては、ロス改善に意欲的な代理店からは、もっと大幅に取り入れ
てほしいとの声もあるのが実態だ。契約引き受けの一次選択は、代理店サイドが有して
おり、代手ポイントに入れることに違和感はない。むしろ強化する方向だ。
保
・損害率を代手ポイントから落とすことは考え難いが、損害率のピッチの幅やストップロ
スの基準など、運用面については代理店の意見も聞いて反映を検討したい。
― 67 ―
保
・損害率ポイントの廃止要望は、どの程度のレベル感で受け止めればいいのか。メジャー
意見なのか、少数意見なのか、本当のところが見えない。損害率の反映は、保険という
商品の特性、また、代理店の役割という点でも必要な項目と考える。
保
【④ 業務プロセスの変化と現行代手体系の納得感の問題】
・手書きの頃と比較し、申込書の機械作成や保険料計算、集金・精算業務など、代理店シ
ステムの高度化で業務の効率化が図れているのではないか。法で求められる体制整備義
務についても、代理店システムで補完している。その点を認識すべきだ。
保
・保険会社の経費に占める代手の割合は、年々上昇している。海外のIRでは、代手の割合
の高さが指摘されている。「代手が下がった」というが、それは代理店間の配分の問題
であり、自由化前に比べて上は15%アップになっていることも認識して欲しい。
保
・商品別基準料率をベースとしており、業務プロセスの変化を織り込んでいるとは言い難
い面はあるが、保険会社としても、改正保険業法への対応で業務プロセス、費用が大幅
に増加しており、一方的に転嫁している訳ではないことを理解いただきたい。
保
・代手開示の動きもあり、手数料の見直しや引下げが今後検討されるかもしれないが、手
数料の引き下げは、代理店の成長の源泉を削ぐことになる。そのバランスを取るのは難
しく、単純に引き下げることはできないと考えている。
保
【⑤ 改正保険業法等との適合性の問題】
・専属代理店のロイヤリティーにポイント加算することがおかしいとは思えない。
・また、新商品が出れば商品知識を身に付けるため勉強していただく。その対価として、
新商品の成績を代手ポイントに反映させることは、割合が過度でなければ違和感はない。
保
・当社の場合、例えば自賠責の獲得件数を代手ポイントに組み入れているが、プロ代理店
の事故のアドバイスや顧客グリップ力などを考えた場合、同じ代理店から加入してもら
うのが、望ましいと考えているからだ。単に自賠責保険の単品顧客を増やしてほしいと
言っている訳ではない。代理店経営を考えたうえで代手ポイントに取り入れている。
(その他代手関連項目等・意見交換)
代
・代手ではないが、新種等の適用料率の幅を代理店の経営品質に応じて付与できるような
仕組みは作れないか。優良代理店への優遇策にもなる。
保
・認可にかかることなので即答は出来ないが、商品部にも可能なのか確認したい。
保
・経営品質の高い代理店には、グループ退職金制度等福利厚生面での支援も考えたい。
代
・保険会社も営利企業なのだから、各社自前の政策を出すのは当然だ。ただ、その軸が会
社の施策(利益・効率化)中心になっていないかを懸念する。今回の業法改正も保険業
界に対し、真のお客さま本位への転換を求めている。お客さまの満足度を高める視点で
代理店施策を考えていただきたい。
代
・保険会社にお願いしたいのは、代手項目の中身までしっかりとフォローしていただきた
いということだ。例えば、
“法人化を代手ポイントに反映させる”のであれば、法人化
とは何なのか、どういう義務や責任が伴うのか、例えば、社保の加入義務がある等とい
うことを営業担当者も指導できるようにしてほしい。
― 68 ―
保
・法人化すれば、社保加入は当然であり、「指導する」という概念自体がなかった。今、
社保の適正加入がクローズアップされているが、当然なすべき法的義務に対して、代手
ポイントに付与するといった対応は、保険会社としても難しい。
代
・損害率ポイントについては、加減方式でなく、一定の損害率であれば加算する方式であ
れば、モチベーションも上がる。代理店のやる気を引き出す視点が必要だ。
ア
・保険料は最終的に、保険契約者(保険金)、保険会社(社費)、代理店(手数料)の3者
に配分される。これに加えて海外投資家のように利益還元を求める層もある。自由化以
降、競争等によって保険料総額が低下する中で保険金は増加してきた。となると、保険
会社と代理店への配分は低下するが、それを保険会社は社費の低下で吸収し、手数料の
総ファンドは低下していない。従って、保険会社としては代理店手数料の総ファンドを
引き上げる余裕はない。となると、限られた手数料の総ファンドをどのように代理店間
で配分するかが問題になる。代手ポイントは、保険に例えるならば、リクス細分化のよ
うなもので、代理店間の配分をより緻密に行うという調整機能を持っている。これを廃
止するとか、昔のような大括りの手数料制度に戻るという選択肢は今やあり得ないので
はないか。代理店サイドもこうした認識をしっかりと持ってもらいたい。
代
・代理店にとって、代手がホラーシナリオになっている。代手ポイントにある背景を営業
担当者がしっかりと担当代理店に説明し、それぞれの経営課題を踏まえて、共に発展で
きるよう支援するのが営業担当者の役割ではないかと思う。
保
・有力な代理店には、営業担当者が個別に訪問して説明していると思うが、規模の小さい
代理店の場合は、業務連絡会で事務的に変更点だけを説明しているかもしれない。一定
期間の間に全ての代理店さんに説明しなければならず、悩ましい問題だ。
代
(テーマ1のまとめ)
・今 回、一括りで代理店サイドから見た疑問点・不満点という形で掲げたが、代理店に
よって相当の認識の違いがあることを理解しておいていただきたい。現場の社員にも同
じ理解を持っていただいて、代理店としっかりと対話を繰り返し、双方の力を合わせて
成長戦略を描くような取り組みをしていただきたい。
ア
・いつも同じことの繰り返しで、次のテーマに進まない。代手に関する議論については、
テーマとして掲げるにしても、論点を明確にすべきだと考える。以下、論点を示すので、
参考にしていただきたい。
○現在の(保険会社間・チャネル間の)競争環境化において、代手ポイント制度を廃止す
ることは考えられない。是非を問う論議はやめるべき。
○代理店サイドに契約の一次選択責任がある以上、損害率ポイントの廃止も馴染まない。
これについても、論議するならピッチの幅やマイナスポイントにすることの是非などの
各論に落とし込むべき。
○代手体系の改定頻度等、代理店経営に関する重要な要素など
・今後、重要になってくるのは、(ベースになっている商品別の)基準代手がどう変わっ
てくるかであり、各社とも社費をギリギリまで削っている中、これまで踏み込まなかっ
た代手の総ファンドの低下に手を入れるか否かが大きなポイントになる。
・次回以降、論議を前に進める観点でテーマを設定することが大切なのではないか。
― 69 ―
【テーマ2 一人当たり生産性向上を実現するための内的要因の洗い出しと対応策】
(以下、前回からの継続論議として、配布資料の「内的要因」
(「お客様」、「人材」、「組織」、
「時間」、「業務プロセス」)について、現状の課題や問題意識、改革の方向性等について事
務局より説明し、認識について誤り・齟齬がないか、内的要因に関する保険会社のサポー
ト体制などを全体的な視点で論議した。)
保
・この資料の代理店の規模はどのくらいをイメージしているのか。論点がぼやけないよう、
モデルイメージを設定していただけると助かる。
代
・代協会員の現時点の平均募集人数は7名で、中間値で5. 5人程度となる。モデルイメー
ジとしては、手数料収入1億円、募集人数10名、一人当たり生産性1, 000万円の代理店
を想定していただきたい。
保
・内的要因のうち、最も焦点を当てなければならないのは、「人材」ではないか。
・以前は、小規模でも、他の代理店との差異化が図れるなら問題ないと考えていたが、今
はそれではダメだと考えている。募集人の高齢化が進んでおり、実務に携わらない経営
者も多い。当然ながらお客様も一年毎に歳を取り、世代交代が進んでくる。代理店サイ
ドも若い募集人を採用して若返りを図らないと、お客様をしっかりと守れない。そのた
めには一定の規模感が必要だ。
代
・最も悩ましいのが人材であり、採用と育成だ。そもそもこの業界に新卒者のような若い
人材が来てくれるのかと考える。今年度、かなりの費用を投じて人材採用に取り組んだ
が、新卒は取れなかった。インターンシップも受け入れているが、来てくれる学生の考
えが本来の趣旨と違うため、インターンで来た学生に入社を勧められない。
・また、新入社員が入ったら、次は、目の前の仕事を抱えながら育成することの難しさを
痛感している。
保
・当社は、会社ブランドでの代理店グループ採用を実施しているが、今回25名採用できた。
採用した人材を見ると、大手志向ではなく、それぞれの地域から離れたくないという地
方志向が志望動機となっている。新卒は女性が多く、中途採用は男性が多い。うち直資
代理店の採用は3名で、22名が専業代理店での採用であった。
代
・当社も人材を採用しているが、Uターン組が多い。当社のWebサイトでの社員募集を見
て応募してきたものだ。
代
・採用した人材を研修生として保険会社に送り込んでも、挙績基準をクリアするのが難し
く、途中で戻ってくる。新規だけの開拓は限界がある。そのため、当社では、研修生と
して送り込まず、自社の更改要員として、まずは実務に慣れてもらうことを第一として
いる。そこから既顧客への情報提供を通じて、追販を行なうことで無理なく成功体験を
積んでもらうことで育成を図っている。
代
・当代理店は、毎月10万円の採用費用をかけているが、なかなか採用まで結びつかない。
保険会社の研修制度の詳細を見せると応募者の多くは引いてしまう。
代
・地元の高校と提携し、継続して社員を採用している代理店もいる。応募に来た学生など
が、「ここはいいな」と思えるような店作りも大事だ。
― 70 ―
保
保
・新入社員でも契約に携わることができ、お客さまのところに訪問できる仕組みを作るこ
とが経営者として求められ、保険会社もそのようなマーケットを開拓することが責務と
なっている。
代
・一人のスーパーセールスマンが会社をけん引する時代ではない。誰でも出来る仕組みを
作ることが重要だ。業務のマニュアル化や標準化、顧客情報の共有なども代理店の課題
だ。
保
・人材育成は、保険会社も同様の悩みを抱えている。リテールチャネルでは、地域限定社
員が代理店を担当しているが、経営指導のスキルを身に付けさせるのがなかなか難しい。
営業スキルを身に付けた中高年層の経営サポートスタッフが、経営指導とともに代理店
のスタッフや地域限定社員を育成するニーズが高まっている。
代
・当代理店では、保険会社が提供している経営品質の講義を社員全員で受講している。セ
ミナーや講演など社長一人が聞いてもなかなか社員に伝わり難い。講義中は、事務所を
完全に空けることになるが、全員で受講することによって、意思伝達が早くなりメリッ
トが大きい。
保
・当社はこれまであまり大型化を提唱していなかったが、改正保険業法で求められる代理
店の姿として、今後は大型化を積極推進する。収保3億円が当面のメルクマールだ。
保
・一人、二人の体制ですべてをこなすのでなく、生損保、事故対応などの専任担当者が機
能を発揮してチャネル間競争を勝ち残っていくような組織型代理店を目指して欲しいと
考えている。
ア
・今後は、代理店の事業継承をアドバイスできる社員を増やしていくことも重要だ。
代
・代理店が成長に向けて、次のステージに上がっていくことに全く異論はないが、その成
長の筋道が急な階段であれば、上がれない代理店も出てくる。具体的な成長戦略をどう
描くのかが最大のポイントだ。
・また、規模拡大を図るうえで、M&Aや事業継承が避けて通れない課題となるが、その
ために必要となる資金面をどう考えているのか。
・あ る代理店(社員20名程度)の事例だが、ここ数年、毎年新卒を2名採用している。
採用の決め手は、離れた場所であっても必ず採用担当者が志望者の実家を訪問し、自社
の会社説明を実施していることだそうだ。
・この代理店は、元々、若い世代の活躍を期待した会社理念・活動指針を掲げているが、
学生や若い転職志望者は必ず会社情報をホームページで確認するので、「この会社は、
やりがいがありそうだ・チャレンジできそうだ」と思えるようホームページの作り込み
もしているそうだ。
・採用後の育成面では、初心者でもお客さま接点を日常的に作り出せる仕組みづくりが肝
要で、経営者としての最優先課題として取り組んでいるそうだ。
保
・まだ、固まっている訳ではないが、会社が融資する仕組みを考えたい。
代
・代理店は、事業投資、特に人に対する投資に慣れていない。また、保険会社のような資
金的余裕もないため、失敗は許されない。融資制度があれば、規模拡大も進めやすい。
また、投資についても、保険会社がアドバイザー的に指導してくれるのが望ましい。
― 71 ―
保
・M&Aは企業代理店のイメージが強いが、専業代理店でもそのニーズはあるのか?
ア
・昔は委託型募集人の仕組みが使えたので、買い取りの概念はそれほどなかったかもしれ
ないが、委託型募集人の適正化により、M&Aのニーズは確実に増えている。
・一方で、買い取り価格にスタンダードはなく、ケースバイケースで個々に判断しなけれ
ばならず、高い専門性が求められる。
保
代
(テーマ2のまとめ)
・本日、論議してきた「代理店が目指す方向性」は、代理店サイドと保険会社サイドで基
本的には同じベクトルにあることが認識できたので、継続して論議を深めたい。
保
【テーマ3 平成28年度専業代理店戦略・代手体系(平成29年度支払分)】
<東京海上日動>
(プロチャネル戦略)
・専業代理店に若い人材が集まり、その人材が活躍できるフィールドを創ることを推進の
柱に据えている。
・そ のためには、担当社員の育成が不可欠であり、経営指導力、販売支援等の研修カリ
キュラムを用意している。経営支援力を身に付けるための第一歩として、代理店と夢を
共有することが必要だと説いている。
・また、今後は、業法改正を踏まえ、乗合ではなく「乗換(専属先変更)」を推進する。
(代手体系)
・2年毎に改定することとしており、次年度は改定しない。
保
・専門である投融資部門も代理店の事業譲渡に関する資産査定のノウハウはなく、チャネ
ル部が現場にアドバイスしているのが実情だ。
・単に規模を拡大しても、増収が重荷となってくる。しっかりと経営計画を立てて、その
計画実行の過程において、M&Aも検討することが肝要だ。M&Aありきでは頓挫する。
<三井住友海上>
(プロチャネル戦略)
・プロ代理店には、①大型化の推進、②お客さま接点強化、③中堅・中小企業開拓を期待
している。
・大型化は、業法改正に伴う体制整備で不可欠の要素であり、生産性の向上、成長力の強
化も図っていただきたい。
・お客さま接点では、価値を提供し、お客さまから紹介してもらう仕組みを作りたい。
・企業開拓では、社労士、中小企業診断士などの有資格者等で構成する経営サポートセン
ターの支援メニューの評価が高く、この取組みの拡大を図っていく。
(代手体系)
・手数料体系の大きな変更は考えていない。
― 72 ―
保
保
<損保ジャパン日本興亜>
(プロチャネル戦略)
・専業代理店の大型化を推進し、組織化・事業化を図っていただきたい。それを支えるた
めにも若い人材の投入が不可欠だと考えている。
・他チャネルに比べ、プロは募集人の年齢構成が高く、本業の競争激化により保険獲得に
力を入れているディーラーや整備工場に対抗する手段を持たないと取り残されるとの危
機感を持っている。
・新代理店システムの準備を進めている。これによって業務効率化が図れ、創出された時
間を新規開拓、企業開拓に当てていただきたいと考えている。
(代手体系)
・ポイントテーブルの改定や新設を行なっているが、抜本的に変更するものではない。
・専属ポイントや入賞した場合に加算するMVPポイントを新設している。
<あいおいニッセイ同和損保>
(プロチャネル戦略)
・プロチャネルは、一部企業代理店を除けば、お客さまへフルラインで商品提供可能な唯
一のチャネルである。フルライン販売が可能なことを他チャネルにはない固有のバ
リューチェーンと捉え、お客さま接点強化・囲い込みを進めていただきたい。
・2年前から業法改正を視野に、プロ代理店にはガバナンスの効いた“強い組織”作りを
目指していただき、形は一定出来てきた。一方で、成長に向かう取組みが若干遅れた面
もあり、今後は“強い組織”を武器に、挽回を図っていきたい。
・過去の合併による大型化動向や使用人適正化取組みの経験を踏まえると、大型化のみが
会社として目指して欲しい姿ではない。目指して欲しいのは、ガバナンスの効いた“強
い組織”であり、これを追求する過程で適正規模が見えてくると考えている。話しは
少々飛躍するが、家族経営ならではのガバナンス・組織力もあるはずだ。
・また、次年度4月からは出向形態の研修生制度を導入し、人財育成による組織強化の観
点で代理店経営を支えていく。
(代手体系)
・代手は、損害率のピッチを縮めるなどの改定は行なっているが、項目自体を大きく変え
ない予定だ。
― 73 ―
― 74 ―
外的要因
<代理店から見た課題と問題点>
活力研資料
社会の要請
競争環境
お客様の視点
保険会社のプロチャネル戦略
・キャッシュレス、口座振替の増大(代理店負担コスト増)
・タブレット等のモバイル端末の投資、社員教育
・テレマティクスなど将来の技術革新に対応した販売体制
・厚生年金のコスト
そ 他 福利厚生費
・その他の福利厚生費
社会保険コスト
IT・インフラ投資コスト
・内部管理コスト(PDCAの実践、個人情報管理)
・企業としての代理店の規模感
・ダイレクト販売の進展と対面販売への厳しいルール
・保険ニーズの一次情報が取れる副業チャネル
販売手法
体制整備義務
面
ャ
特化商
・実態面でのチャネル特化商品
・長期契約等の引受基準、コンプラ抵触ルールの相違
・チャネル毎の代理店体系 ・特定契約比率
・債務者団体割引
・退職者団体割引
・大口団体割引 等
・対応要員の手当て(複数体制)、運営コスト
・高齢者のニーズに応じた保険商品、サービス
世代の引き継ぎ
・世代の引き継ぎ
・手数料に見合う代理店価値
・手数料割合と実額とのギャップ(損保)
・付加率開示との関係
・意向把握義務、情報提供義務への対応
・比較ニーズへの対応、細部に亘る商品知識の取得
・コンサルティング型営業、生損垣根のない提案
・代理店完結業務の増加
・勤務型代理店の指導・管理(特に会社誘導の合併)
勤務型代理店の指導 管理(特に会社誘導の合併)
・クレームへの関与等、委託契約書の条項との齟齬
・年々厳しくなる代手ポイント、小規模代理店の抑制
・損害率など代理店のコントロールに限界がある評価項目
・カタカナ生保の代手との実額差
・組織型代理店と属人型代理店
・増収要請と従来型営業スタイル
・生損保併売と自動車単種目中心の契約構造
1
平成27年2月12日
日本代協
優遇された他チャネル施策
割引制度
高齢化社会への対応
手数料の開示
「賢い消費者」への対応
増大する業務内容
一方的な手数料体系
求める代理店像とのかいり
~より少ない人数でより多くの収益を上げる ☛ 職業魅力の向上 ☛ 若手人材の参入~
代理店経営において一人当たりの生産性を高めるために
― 75 ―
人 材
お客様
内的要因
活力研資料
×
人 材
×
組 織
×
時 間
×
クレーム対応力向上
対応力均質化
生損総合販売ノウハウ
業務プロセス
・オフィス環境の整備 (STANPL) ☜ 経営戦略の重要性
・3R顧客(連絡が付かない、理解力がない、理不尽な要求をする)、口振連続不能顧客との取引の見直し
・顧客情報の収集とマーケティングへの活用・成功確率の高いアプローチ ☜ ITインフラの活用
・世帯単位の取引量に応じたセグメントと対応方針の明確化 ☜ ITインフラの活用
・紹介の仕組み作り (業法改正に注意)
・定期的情報提供 ☜ ひな型提供の必要性
・フルコンサルを前提した提案
フルコンサルを前提した提案 ⇒生損合せた多種目取引の実現 ☜ システムサポ
システムサポートの必要性
トの必要性
・新種リスクコンサルティング力向上 ⇒実践的研修、仕組み作り、ニーズ喚起、フローの確立
・訪問しやすい環境 ⇒ 「制度商品」の活用
・説明しやすい仕組み ⇒ 「パッケージ型商品」の活用
・研修、標準販売プロセス、専門分業体制の確立 ☜ ITインフラのサポート・要員の確保
・代理店と保険会社の役割分担明確化、実践的研修
・防災・減災に係わる具体的な情報提供
・ITインフラ、タブレットの徹底活用によるモデル化、業務プロセスの標準化・モデル化、お客様情報の一元管理
☛損保だけで成り立つ代理店は考えられないのか?
損保 け 成り
代理店 考えられな
?
2
=@最低10,000千円
@最低 ,
千
を実現する
・紹介の仕組み作り (業法改正に注意)
・地域ネットワークの構築
・独自能力
・保有契約を有する他代理店・募集人との提携 ⇒ マーケティング戦略 ☜ 業法改正の影響
<コンサルティング能力の向上>
来店誘導
顧客セグメント
既存顧客の開拓
中小企業開拓
他代理店との提携
新規顧客の開拓
<お客様の数と取引額のUP> = きめ細やかなコンサルティング
お客様
社員がやる気に満ち、効果的な顧客対応を実践している
オペ
シ
主体
ネジメ トが確立され
な
④ オペレーション主体でマネジメントが確立されていない
② 募集人が高齢化し、新たなニーズやプロセスに対応できない
募集人が高齢化し 新たな
ズやプ セスに対応できない
=生産性向上 =「少ない要員で大きな収益を上げる」
③ 「武器」が活用されず、仕事のやり方が旧態依然
① 日々の更改業務で手一杯で新しい提案や新規開拓ができない
― 76 ―
時 間
組 織
活力研資料
×
顧客対応時間の創出
・顧客単位の契約の一本化 長期契約の活用 ⇒ 契約件数の減少と1回当たり取引額のアップ
・顧客単位の契約の一本化、長期契約の活用
契約構造の転換
・顧客に価値を届ける時間を確保し、新しい提案・新規開拓につなげる
・世代単位の顧客管理と生損併売、多種目化の推進 ☛ 取り組みが簡便な商品、仕組みが必要
・オンライン、モバイルを軸とした分かりやすく均質なプロセスの実現 ☛ 会社のインフラ活用と定着
属人的な業務遂行 ➡ 標準的な業務フローの確立
標準的な業務
確立 ☛ マニュアル整備とブラッシュアップ
ア 整備とブラ
ア プ
・属人的な業務遂行
・プロセスのムダ排除 ⇒業務の棚卸 ・インフラの徹底活用の必要性 ☛ 機能的な業務プロセスの確立
オンライン活用
標準業務
標準業務フロー確立
確立
業務の棚卸し
<業務プロセス全体を見直して、「顧客に価値を届ける時間」を創出する>
・社会に受け入れられる会社への転換
社会に受け入れられる会社への転換 ⇒ 福利厚生、就業規則、人事制度の整備
福利厚生 就業規則 人事制度の整備 ☜ 外部専門家の目
・内部体制整備コストの手配
社会との共存
業務プロセス
・社員をやる気にさせる社内環境 ☜ 「やりがい」だけでは続かない ☛ 処遇、業務内容、意思決定ルート
・コミュニケーションのスキルアップ
・経営者のマネジメント能力の強化 ☛ NO2とともに継続的な経営者研修の必要性
・経営理念、ビジョン、中期計画、年度計画とPDCAサイクルの実践 ☛ 担当社員とともにフォロー
・社会との調和、独自能力、顧客本位と従業員重視とのバランス ☛ 経営品質の柱
経営品質の定着・活用
社内環境整備
・人材採用、育成の難しさ ☛ 会社の仕組み(研修生制度)とのリンケージ
・経営者(店主)のマインドセット ☛ スーパー営業マンから人材育成のコーチングに軸足を変える
⇒ フロントの顧客担当は、“目の前のお客様”対応、“新規顧客”開拓に注力
フ ントの顧客担当は “目の前のお客様”対応 “新規顧客”開拓に注力
⇒ 顧客からの問い合わせ、更改契約は代理店オフィスで完結する体制の構築
・バックオフィス業務に営推機能を持たせたミドルオフィス業務への革新 = 女性の活躍
※ 組織改革の時間、
コスト、ロードをど
う確保するか?
人材採用・育成
バックオフィス強化
・契約を個人から組織へ ⇒ チームで顧客に対応する仕組みの確立
顧客対応
☛一定規模になれば、社長はマネジメントに特化
・一人で全てをやらない ⇒ 相互補完的に業務を遂行 (BCP対策)
・どの程度の規模になればいいのか?
専門分業体制の確立
<“組織の力で対応する代理店”を創り上げる”>
3
7-1 保険業法等関連法規の動向①
〈金融審議会保険WGの動向〉
■金融審議会保険ワーキンググループ(WG)の位置付け
金融審議会は、金融業界の状況を踏まえ、法制上の整備が必要な課題に対し専門的な見地から検討を行い、
安定的で活力のある金融システムの構築、および、金融制度の改善を図るために進むべき行政や関連業界の
方向性を示す役割を有している。各金融業界にとっては極めて重要、かつ、大きな影響力を持つ金融庁長官
の諮問機関である。
(平成10年にそれまでの金融制度調査会、証券取引審議会、保険審議会を統合して設営
された。
)
保険WGは金融審議会の傘下に設けられた保険分野に関する専門機関である。保険法制の改善等、保険に
関する重要事項について調査、審議を行っており、保険審議会の流れを汲む会議体である。このWGにおい
ては、近時、保険募集に関するテーマが繰り返し取り上げられており、実務にも大きな影響を与えている。
その背景には、自由化の進展や社会環境の変化に伴って保険募集の現場に様々な課題が生じているが、法律
や各種制度が実態に追いついておらず、抜本的な改革が求められていることが背景になっている。
近年の保険WGにおける審議の概要は、以下の通りである。
■販売勧誘の在り方PT「中間論点整理」
・
「最終報告」
(平成17年~18年)
平成17年~18年にかけて、精力的な検討が行われ、最終報告が取りまとめられた。本報告書で示された課
題と対応策は以下の通りである。なお、本PTには、日本代協から荻野副会長(当時)がメンバーとして参
画し、代理店の立場から発信、提言を行った。
○ 保険商品の多様化・複雑化に伴い、消費者に提供される情報量の多さが課題となり、顧客による商品
比較が困難になっていることを受けて、①保険会社による情報提供のあり方、②ニーズに適合した商品
勧誘を確保する方策、③ニーズに合致した商品選択に資する比較情報のあり方を検討する必要がある
○ 提供する情報量を限定し、最低限の重要事項を明確化するため、「契約概要・注意喚起情報」の交付
を求め、その内容、書式等を整理すること➡保険業法第300条(重要事項の不告知禁止)を根拠
○ 顧客のニーズに合った商品を選択する上で、提案が顧客の期待に合致したものであるかを確認する
「意向確認書面」の作成、交付➡保険業法第100条の2(保険会社の体制整備義務)を根拠
○ 「一部比較、保険料の比較上の留意点を監督指針上明確化」し、契約概要の開示促進、比較情報提供
の環境整備に向けた協議会の設置等の提案
☞本報告を受けて、「契約概要・注意喚起情報の交付」、「意向確認書面の取付」が導入された
■保険の基本問題WG「中間論点整理」のポイント(平成20年~21年)
平成20年から保険募集上の残された課題についての論議が行われ、平成21年6月、「中間論点整理」が公
表された。本WGには、本会・荻野会長(当時)が参考人として招致され、下記内容の提言を行った。
⑴ 平成21年3月3日第50回WGにおける荻野会長の提言
① 提言1 :保険募集現場における消費者に理解しやすい仕組み作り
・消費者向けの各種募集関連文書の整理・統合を行い、契約者への説明は重要事項説明書とパンフレッ
トを一体化した帳票で行うことが望ましい。
・意向確認は、簡素化・平易化を図り、各社間の差異を無くし、確認書類と申込書の一体化を図る必要
がある。
― 77 ―
② 提言2 :乗合代理店制度の普及促進
・消費者の利便性向上のために、保険会社と代理店の関係を見直し、乗合代理店の一層の普及を図るた
めの方策を検討する必要がある。
・現行損保の乗合承認制度をビジネス上のルールに改善し、消費者対応や代理店経営上、合理的理由が
認められる場合は、速やかに乗合が実現できるようにすべきである。
「認定保険代理士」への公的資格付与
③ 提言3 :
・認定保険代理士に公的資格を付与し、質の高い募集人が消費者から見えやすい仕組みをつくり、その
数を増やして、消費者に質の高いサービスを提供できる体制を構築する必要がある。
⑵ 本WGの論点整理の概要
本WGは結論を出すものではなく、保険募集に関する制度論議の論点を明らかにして次の審議に備える
ものであった。論点整理の概要は以下の通りである。
<中間論点整理の論議の概要>
○ ニーズの多様化に対応し多様な商品が提供される状況の中で、複雑な商品の理解困難性が生じ、商
品間の比較が容易でなく、専門家のアドバイスを求めようにも、中立的な情報源をどこに求めたらよ
いかも容易には分からないといった問題意識を背景に、募集時の規制、商品に対する規制、募集主体
の問題、支払管理面の規律にわたり、規制のあり方を総合的、全体的に考える必要性が示された。
○ 個別の論点としては下記10項目が提示され、それぞれ検討の方向性、視点が示された。なお、利
用者保護の観点に加えて、競争原理を通じて、「より分かりやすく、より良い保険商品が優れた
チャネルにより提供される」ように留意することが求められた。
<中間論点整理の個別項目のポイント>
○ 情報提供の義務:保険会社による募集時の説明義務の強化、「契約概要」等の書面交付義務の法
定化の検討を求める意見あり。制度全体の望ましい姿を考えていく中で検討。
○ 適合性原則:現在、投資性の強い商品について適合性原則が適用されているが、法律上の義務と
して保険商品一般にも適合性原則を導入すべきとの意見あり。今後、「意向確認書面」
による消費者ニーズ把握の効果等も検証しながら検討。
○ 募集文書:実際の募集現場において「契約概要」等が効果的に使われているか、形式に流れてい
ないか、募集文書の量が多すぎるので整理・集約化が必要、約款を読みやすく簡素化
すべき、募集文書の頻繁な変更は契約者の負担につながるので慎重に、等の多様な意
見あり。今後、「契約概要」等の活用状況について、業界を含めた実務的検証を行い、
必要な対応を行っていくことが適当。
○ 広告規制:TV広告は影響が大きく、より厳格な規制を課すべきとの意見あり。今後、実務的な
検証作業を行い、必要な対応を検討していくことが適当。
○ 募集主体:保険仲立人の活用が進んでいないため制度の見直しが必要。また、独立性の高い乗合
代理店が出現してきたため、仲立人との関係の見直しが必要との意見あり。今後、制
度全体のあり方を検討していく中で、消費者保護、利便性向上の観点から検討。
○ 募集コスト開示:手数料水準を開示すべきとの意見あり。一方で、手数料については、ベストア
ドバイス義務を課すべきか等の論議と併せて議論すべきとなっている経緯があり、今
後、乗合代理店制度や保険仲立人制度のあり方の見直しとの関係を踏まえつつ検討し
ていくことが必要。
― 78 ―
○ 募集人の資質向上:保険会社において様々な取り組みは行われているが、募集人の一層の資質向
上が必要との意見あり。業界を含めた実務的検証を開始し、改善していくことが適当。
○ 保険金支払い:保険会社に対して、支払事由に該当するか否かについての誠実、迅速な調査義務
を課すべきとの意見や支払請求に向けた保険会社の情報提供義務、注意喚起義務を規
定すべきとの意見あり。今後、制度全体の望ましい姿を考える中で検討。
○ 商品のあり方:商品そのものの簡素化を図るべきとの意見あり。今後、商品開発のあり方、規制
のあり方を含め検討。
○ 保険料積立金等の支払:解約返戻金に係わる商品審査基準を明確化すべき、基礎書類の開示を検
討すべき、無・低解約返戻金型保険商品について保険料が比較的高い商品のあり方に
ついて考え方を検討すべき、との意見あり。今後、募集面や商品面と併せて検討。
その後、自民党から民主党への政権交代に伴い、審議会のあり方そのものが論議の対象になったこと等も
あり、本中間論点整理に係る継続審議は中断されたままになった。
■金融業の中長期的あり方WG「現状と展望」
(平成23年~24年)
平成23年度に入って再開された本WGでは、顧客が認める価値を創り出す金融業に向けて、内外のプレー
ヤーが顧客目線で競い合い、金融イノベーションが生み出される市場の創設を求めた。併せて、保険は販売
者にとって収益機会が大きく、販売会社側の事情で取扱商品が限定され、消費者に対して適切な選択肢が与
えられない懸念があることが示された。その対応策としてまとめられた検討の視点は以下の通り。
○ 多様化する需要に応え、
「顧客目線で商品を設計・販売する態勢作り、顧客が負担するコスト構造の
透明化(※)」が重要(※代理店手数料の開示義務に関連)
○ 商品開発者と販売者の連携(いわゆる製販分離)の在り方を不断に見直す必要がある
○ 保険仲立人等、中立的な立場での金融アドバイザーが不足しており、顧客サイドに立った独立系金融
仲介業者の育成が必要
○ 販売段階における「適合性の原則」
(意向確認のベース)を元本毀損リスクに限定せず、顧客が求め
る商品を見出すためのコンサルティング活動を基本とした幅広いものに捉え直す必要がある
■金融審「保険商品・サービスの提供等のあり方に関するWG」開催(平成24年6月~平成25年6月)
上記中長期WGで示された問題認識を踏まえ、平成24年6月7日から本WGが開催されることとなり、保
険募集上の諸課題について、1年間精力的な論議が行われた。(平成25年6月までの1年間で計16回開催)
本WGの論議は平成28年5月に施行された改正保険業法のベースになっており、極めて重要な意味を持つ
WGであった。また、本WGには、金融庁の指名により、日本代協から荻野名誉会長(現在)が実務者委員
として参画することができ、損害保険代理店を代表する立場で意見を述べる機会を得たことは大きな意義が
あった。
本WGの報告書は平成25年6月に公表されたが、その概要は金融庁のHPで確認することができる。
― 79 ―
7-2 保険業法等関連法規の動向②
〈保険業法の改正〉
■「保険業法等の一部を改正する法律案」の成立
前章で記載した金融審議会保険WGの報告書に沿って金融庁による検討が行われた結果、平成26年5月23
日付で保険業法が改正され、平成28年5月29日に施行された。保険募集関連法規としては、昭和23年(1948
年)の「保険募集の取締に関する法律(旧・募取法)」制定以来(※)の抜本的改革が行われることとなった。
(※平成8年の改正保険業法施行の際は、旧・募取法の規定はそのまま横滑りの形で保険業法に移行されて
おり、保険募集に関するルールとしては67年振りの大改定となった。)
環境変化に対応するため、保険募集に関する規制が再構築されたものであり、代理店は意識を変え、行動
を変えて臨む必要がある。態勢を整えるために一定のヒト・モノ・カネを要することにはなるが、変化する
環境の中で業界が目指すべき「お客さま本位の業務運営の確立」という方向性は明確に示されており、やら
され仕事で形式だけ整えることには何の意味もない。むしろそれは時間とコストの無駄であることを認識す
べきである。今回の改正を代理店自身の経営革新並びに業務品質向上の好機ととらえ、真にお客さま本位の
業務運営を実践していくことが重要である。
■改正保険業法の留意点
前章で記載した金融審議会報告に基づき今回の業法改正が行われ、新しい保険募集ルールが適用されたわ
けであるが、規定の趣旨を実務に落とし込む立場に立つ代理店として、以下の点に留意する必要がある。
[主要な狙い]
・募集人一人ひとりのお客さま対応力を均質化し、向上させること
・代理店に企業としての自立と自律を求め、代理店経営の高度化を図ること
・適正な比較推奨販売が行える環境を整えること
[留 意 点]
① 新しいルールは、消費者のために導入されるものであり、保険業界の「現代化」を強く
求めている。従って、ルールを前向きに受け止め、自代理店の経営改善・改革に活かす
ことが重要であること
② 法的規制はミニマムであり、対応できなければ退場あるのみ
大事なことは、ミニマムは大前提として、今後の成長戦略を描き、実行すること
③ 全ての代理店が募集の主体として対象になる
大型乗合代理店や来店型のショップ店だけが対象になっているわけではない
法律上の規制として基本的な保険募集ルールが定められた意味は大きく、全ての代理店
が一定の緊張感を持って適切に対応する必要がある
④ 意向把握・情報提供・意向確認は、一連のプロセスとして理解する必要がある
お客さまが有する「ニーズを踏まえて丁寧な説明を受け、理解し納得して契約する権
利」を疎かにしてはいけない
⑤ 体制整備に終わりはない。より高いレベルでお客さま対応ができるよう、常に改善を繰
り返し、経営努力を重ねていく必要がある
― 80 ―
■法律の構成
改正保険業法の保険募集に係る条文構成は、以下の通りである。
⑴ 全ての募集人・代理店に対して適用される条文
294条1項 「情報の提供」 …「情報提供義務」
294条の2 「顧客の意向の把握等」 …「意向把握義務」
294条の3 「業務運営に関する措置」 …「体制整備義務」
「乗合代理店に対する追加的体制整備義務」
(比較推奨販売を行う乗合代理店が対象)
「保険募集人指導事業」(フランチャイズ)
⑵ 特定保険募集人(※)または保険仲立人に対して適用される条文
(※規制対象は比較推奨販売等の業務を日常的に行うことが想定される規模の大きな乗合代理店等と
なっているが、具体的には内閣府令で規定されている)
「規模の大きな特定保険募集人」に該当する代理店は、以下の対応を行う必要がある。
303条 「帳簿書類の作成・備付け」
304条 「監督官庁に対する事業報告書の提出」
305条 「監督官庁による立入検査」(外部委託者への立入検査等)
⑶ その他
監督指針 「保険募集の定義」(紹介行為の明確化と委託先管理責任)
「電話による新規募集の留意点」(テレマーケティング代理店)
■日本代協としてのサポート策
今回の改正は、保険募集に係わる抜本的改定であり、実務への影響はそれなりに大きなものになる。日本
代協としては、正確で分かりやすい情報提供を行うため、全国各地で昨年度だけでも100回以上のセミナー
を開催してきたが、引き続き、積極的に対応する方針である。
また、保険会社や損保協会から様々なサポートツールや対応システム等が提供されており、具体的な対応
レベルにおいては、先ずはそれらを最大限活用し、新しいルールに対応する基盤を整えることが重要である。
なお、日本代協としても以下のツールを提供済みであるが、今後は、実務対応面で生じた課題等に対し、
損保協会等との連携を図りながら、サポートツールの提供や対応方針のアドバイス等を通して共有化を図っ
ていく方針である。併せて、他代理店の参考になる取り組み事例の配信に努める。
<体制整備のために日本代協から提示した主なツール類>
「適正な保険募集管理のための社内規則」・・・小規模代理店向けのPlanにあたるひな形を提供
(日本代協ひな形:専属代理店モデル・乗合代理店モデル Ver. 1)
「お客さまご案内用帳票ひな形パック」・・・お客さまの理解促進のため、以下をワンセットで提供
・会社案内
・勧誘方針
・プライバシーポリシー
・保険契約の基本的な流れ(改正保険業法対応)
・保険商品のご提案にあたってのご案内(委託保険会社・権限明示・推奨方針など)
・保険募集上の禁止行為の定め
― 81 ―
・ご契約時の最終確認書
・ADRのご案内
「体制整備の豆知識」…代理店の「自分はどこまでやったらいいか、どうやったらいいか分からない」
という声に応えることを目的として、日本代協アドバイザーの日本創倫株式会社の協力を得て、平成
28年1月から毎月2回配信(7月初で13号まで配信済)
■改正の概要(ポイント)
平成28年5月29日に施行された改正保険業法のポイントは、以下の通りである。
<保険募集の基本的ルールの創設>
情報提供義務 (全代理店が対象)
[義務の内容]
保険募集の際に、商品情報など、顧客が保険加入の適否を判断するのに必要な情報の提供を
求める。(従来の不適切な行為の禁止だけではなく、積極的な顧客対応を求める義務が導入
された)
[留 意 点]
保険会社や代理店が募集を行う際の情報提供義務について、明示的に法令において位置付け
られた。実務上は、現行の重要事項説明書等による情報提供が維持されるが、より適切に、
確実に実施することが要請されている。
意向把握・確認義務 (全代理店が対象)
[義務の内容]
保険募集の際に、
「顧客の意向を把握し※1」
、
「顧客の意向に基づいた商品提案・説明を行い※2」
、
「契約締結前に顧客自身が意向に沿ったものであることを認識し」、「事前に把握した意向と
最終的な意向の相違があれば説明し」
、
「契約前に意向と申込内容の合致を確認する※3」こと
を求める。
※1:顧客から保険契約に当たっての意向や必要な情報を聴き取る(顧客の話を聞く)
※2:把握した意向の内容と提案プランとの対応関係を説明(代理店の話を聞いてもらう)
※3:最終的な意向を確認(顧客と一緒に内容を確認するステップ・現在も実務としては実
施しているが、法的義務としての実施が求められので、より適切に確実に行う必要が
ある)
[留 意 点]
意向確認に加えて、「意向の把握」・「把握した意向に基づいた商品提案・説明」が必要にな
る。併せて、後日にその適切な遂行を確認できる記録の保存が必要
※上記の各義務には、契約方法や保険商品の特殊性などに応じて、適用除外や一律の手法でなくてもいい
ケースが定められている
<保険募集人の体制整備義務>
体制整備の全体像 (全代理店が対象)
[義務の内容]
①重要事項説明、②顧客情報管理、③委託先管理、④比較・推奨販売、⑤フランチャイズ…
その他の健全かつ適切な運営を確保するための措置が求められた
[留 意 点]
保険募集人も、保険会社とともに体制整備について法律上の義務を負うことになった
代理店の業務の規模(管理スパン等)や特性(比較推奨販売の有無、フランチャイズの有無
等)に応じて、「社内規則等の策定」、「当該規則に基づいた業務運営に関する募集人の教
育・指導・管理」、「自己点検」、「改善」に向けたいわゆる「PDCAサイクル」の確実な実践
と定着が求められている
― 82 ―
比較・推奨販売に係る情報提供・体制整備 (比較推奨販売を行う乗合代理店が対象)
[義務の内容]
◇ 比較説明を行う場合…比較すべき事項を偏りなく説明
◇ 推奨販売を行う場合…複数の保険会社の商品の中から、提案する商品をどう選別したの
かを以下の選択肢の中から予め代理店として定め、説明
A.顧客意向に沿って商品を選別し、推奨 ⇒ 候補となる対象商品の概要と推奨理由
B.自店独自の推奨基準・理由に沿って商品を選別し、推奨 ⇒ 当該推奨理由
C.AとBのコンバインド(例;Bで絞込んだ後、該当商品の中からAで選定する)
[留 意 点]
□ 推奨販売を行う場合、提案する商品の内容だけでなく、候補となる商品の中から何故こ
の商品を推奨するかについての理由・基準についても説明が必要
□ 所属募集人が、適切に比較・推奨に係る説明ができるだけの体制整備が必要(※)
(※)保険会社のマニュアルに規定のない独自業務として比較・推奨販売を行う場合は、
自店独自の社内規則等を定め、募集人全員に周知・教育・管理・指導が必要
自代理店として実現可能な方針を定めることが必要であり、気合で臨むことは不可
□ 推奨方針を募集人任せにすることは不可。会社(代理店)として決めることが必要
□ 継続契約の更新方針、お客さまから会社方針と異なる申出が合った場合の対応方針を予
め定めておく必要がある
<フランチャイズ>
保険募集人指導事業に係る体制整備 (フランチャイズ採用代理店向け)
[義務の内容]
フランチャイズ本部代理店(フランチャイザー)による傘下代理店(フランチャイジー)に
対する指導が適切に行われるための体制整備が必要
・保険募集の方法や条件に関する重要な事項をフランチャイズ契約書に定める
・これに基づき、継続的にフランチャイジーの指導を行う
[留 意 点]
指導方針の策定、指導員の育成、必要に応じた指導方針の改善などが必要になる
<大規模特定保険募集人>
保険募集の定義の明確化 (大規模特定保険募集人向け)
[導入の趣旨]
保険会社による監督だけでは募集自体の把握等の実効性が確保できない独立性の高い代理店
を対象として、行政も複線的に直接監督を行うもの
[対象代理店]
乗合代理店の募集形態や販売実績等の把握の必要性、代理店サイドの負担、当局による監督
の実効性等の観点を総合的に勘案し、「その規模が大きいものとして内閣府令で定めるもの」
と規定されている。具体的な判断基準は以下の通り。
・事業年度末において保険会社等(損保・生保・少短)の乗合数が各業態内で15社以上
の代理店
・1事業年度の手数料収入等が10億以上の代理店
[義務の内容]
① 事業年度開始日から保険募集業務に関する帳簿書類の備付(5年間)
② 事業年度末から3カ月経過後以内に、所定の事業報告書を監督官庁(財務局)宛提出
③ 保険募集人自身は勿論のこと、取引先および業務委託先も報告徴求や立入検査の対象
― 83 ―
<募集規制の適用範囲の見直し>
保険募集の定義の明確化 (全代理店が対象)
[定義の内容]
従来、保険募集の定義とされていた内容に加え、紹介行為などのような行為が「募集」に該
当するか否かを、従来からある「保険契約の締結の勧誘」等の他、以下の要件に照らして総
合的に判断することになっている
〇 保険募集人が行う募集行為と一体性・連続性を推測させる事情があるか?
(保険会社や保険募集人から報酬を受け取る場合や25%超の資本関係がある場合等)
〇 具体的な保険商品の推奨・説明を行っているか?
募集関連行為の新設 (全代理店が対象)
[内 容]
広義の保険募集プロセスのうち「保険募集」に該当しないものを「募集関連行為」と定義し、
募集関連行為を第三者に委託する場合、当該第三者(募集関連行為従事者)の適切な管理を
募集人に求めている
[留 意 点]
〇 「保険募集」に該当する行為を保険募集人でないものに行わせると無登録募集を行わせ
たことになる。併せて、保険募集の再委託にも該当することになるので注意が必要
〇 募集関連行為従事者が以下のような不適切な行為を行わないよう適切な管理が必要
・誤った説明や不適切な評価など、保険募集人が募集行為を行う際に顧客の正しい理解
を妨げる行為がないか?
・委託先の業務実態の把握が出来ているか?
・紹介手数料が高額あるいはインセンティブ体系になっていないか?
・継続契約で紹介料を支払っていないか?
・見込客の個人情報管理は適切に行われているか?
・紹介料を使って契約者に割戻しが行われていないか?(保険料の割引、特別利益の提
供)
<電話による新規募集の留意点>
電話による新規の保険募集等 (テレマーケティングを行っている代理店が対象)
[義務の内容]
電話による新規の保険募集・加入勧奨を反復継続して行う場合、特に、顧客の望まないタイ
ミングで一方的に不必要な勧誘が行われるリスクが大きいため、改正保険業法で求められる
基本的なルールを踏まえ、実務レベルで適正な対応を確実に行うことが必要
(継続契約の電話募集や勧誘を伴わない事務連絡等は対象外)
〇 保険募集方法を具体的に定め、適切な教育・管理・指導及びPDCAを実施することが必要
[留 意 点]
以下の対応が必要
① 説明すべき内容を定めたトークスクリプト等の整備・実施の徹底
② 顧客から今後の電話等を拒否する旨の意向があった場合は一切電話しない体制を徹底
③ 通話内容の記録・保存
④ 苦情等の原因分析および再発防止策の策定・周知
⑤ 電話行為者以外の者による通話内容の確認およびその結果を踏まえた対応
― 84 ―
7-3 保険業法等関連法規の動向③
〈代理店手数料の開示〉
■金融審議会の報告内容
代理店手数料の開示に関しては、平成25年6月に公表された金融審議会「保険商品・サービスのあり方に
関するワーキング・グループ」報告書の「乗合代理店に係る規制」の中で次のような方向性が示され、これ
を受けて、今回の保険業法改正においては法的義務としての代手開示の要請は見送りになっている。
「手数料の開示については、商品比較・推奨販売を行う乗合代理店に対する追加的体制整備義務の導入を
通じて、乗合代理店による保険商品の比較販売について、一定の適切な体制が整備・確保されると考えられ
ることから、現時点において、一律にこれを求める必要はないと考えられる。ただし、比較販売手法につい
て問題が存在するおそれがある場合などには、必要に応じて、乗合代理店に支払われる手数料の多寡によっ
て商品の比較・推奨のプロセスが歪められていないかについて、当局の検査・監督によって検証を行うこと
が重要である」
(※なお、報告書本文には以下の注記が付されている。
56 審議においては、
「募集手数料について、顧客に理解可能な形での開示が困難であり、結果とし
て誤った情報を与えることになる、手数料の多寡は、顧客ニーズと保険商品が合致しているかど
うかや顧客が支払う保険料には直接の関係はない」との意見もあった。
57 仮に、手数料の多寡を原因として不適切な比較販売が行われる事例が判明した場合には、手数料
開示の義務付けの要否について、改めて検討を行うことが必要である。
■金融庁の問題意識と関連業界の動向
一方で、金融庁は、投資信託と並べて金融機関の窓口で販売されているリスク性保険商品については、顧
客に対する手数料の説明が行われないまま、手数料の高い保険商品が売れ筋になっているのではないかとの
問題意識から、平成28年1月、生命保険会社各社に対し、保険料の透明化にむけた検討を求めていた。
これを受けて生命保険協会で検討を重ねた結果、運用実績や為替相場で契約者の受取額が変わる(すなわ
ち、リスクがある)
「変額保険」や「外貨建て保険」、「積立利率変動型個人年金保険」などの「特定保険契
約」を対象に、投信と並列で販売されている銀行等の窓口販売チャネルを対象(注)として、平成28年10月か
ら開示する方向で検討を進めてきた。
(注:来店型SHOP店など比較推奨販売を行う他の乗合代理店で販売されている同様のリスク性生保商品
は、今回の検討では開示の対象から外すことになっていた。なお、損保の積立型商品で特定保険契
約に該当するものはない。)
しかしながら、手数料が明らかになれば保険料の引き下げ圧力が働くようになるといった一部生保会社の
懸念や、マイナス金利政策で利ザヤの縮小が予想されるなか、手数料収入を増やしたい地銀が「銀行だけを
開示対象にするのは不公平」として反発し、結果として、平成28年7月6日に開催された金融審議会におい
て、手数料開示のあり方に関し、今後幅広い論議が行われることになった経緯がある。
(※投信の場合、申込額に対して0~3%ほどかかる顧客が支払う手数料(フィー)は金融商品取引法に
より開示が求められている。保険の場合、契約者が支払う保険料の5~7%ほどの手数料(コミッショ
ン)は開示されていない。なお、保険商品の販売に関する手数料はコミッションであり、個別の契約にお
いて、その多寡で契約者が支払う保険料が変わるわけではない。)
― 85 ―
■大手銀行の動向と日本代協の立ち位置
こうした流れの中で、平成28年7月7日付日経新聞朝刊によると、5大銀行は手数料開示の検討に入った
と報道されている。概要は以下の通り。
○ 三菱東京UFJ・みずほ・三井住友・りそな・三井住友信託の大手5行は、銀行窓口で販売する外貨建
て保険などの手数料を開示する検討に入った
○ 本年7月6日に始まった金融審議会の論議を待たず、年明けにも情報開示を始める方針。窓口におく
パンフレットに手数料を記載したり、行員が口頭で説明することを想定
○ 自主的な情報開示で透明性を高め、顧客目線の販売をアピールする狙い
(※銀行が受け取る手数料の割合は、平成27年度上半期で全体の41%となり、前年度の31%から急上昇。
一方、投信は62%から53%に落ちており、日銀の政策が大きく影響している。)
なお、金融庁は、特定の商品に限定して手数料を開示させることは対症療法に過ぎないと考えており、監
督指針の改正ではなく、金融審議会の審議を経て、今年度中にも金融機関が守るべき根幹となるルール作り
を進める方針と見られている。
このような動きは、消費者が保険選択する際の判断材料の一つとして、手数料に目を向かせることになり、
手数料開示の問題は今後大きな論議を呼ぶことになると思われる。更には、これが契機となって保険料その
ものの引き下げを求める声が高まることも想定される。
日本代協としては、手数料開示については多面的で深い議論が必要であると考えており、商品特性や保険
料の構造、現行代手体系の正確な理解などがないまま、単純に、一律に、保険契約の代手開示を求めること
には反対の立場である。また、保険料自体の水準に関しては、代手をキーにするのではなく、各保険会社の
競争戦略の中で実現されるべきものと考えるが、水準そのものが高すぎると消費者サイドからは「代手を下
げて保険料に還元すべき」との意見が当然出されることになる。(※7月6日の金融審議会で消費者委員が
発言した「品格のあるもうけ方」
)従って、先ずは保険会社において、社費と手数料の適正な水準と配分を
考えることが重要である。代理店にとっては重要な課題であり、今後の金融審議会の論議を注視するととも
に、状況判断を誤らないよう情報収集に注力し、適時必要な対応を行うこととしている。
■金融庁の掲げるフィデューシャリー・デューティー(Fiduciary Duty)
金融庁は、昨年9月に公表した金融行政方針において、「フィデューシャリー・デューティーの徹底」を
盛り込み、金融各機関に対し、顧客目線の自主的な取り組みを求めている。フィデューシャリー・デュー
ティーは「受託者責任」と訳されているが、投信や保険など金融商品の開発、販売、運用、管理について、
真に顧客のために行動する金融機関の役割や責任を指している。言い換えれば「顧客本位の業務運営」の要
請である。本年6月の日本代協総会で金融庁の井上保険課長は、「お客さまと様々な局面で携わる事業者自
身がお客さまに対して顧客本位を貫くプリンシパルを実施することに尽きる」「金融庁として、フィデュー
シャリー・デューティーの浸透・徹底に向けて永続的な取り組みを進めていく」「今回の業法改正は、顧客
目線の業務運営というフィデューシャリー・デューティーのプリンシパルにかなうもの」「代理店において
は、日々の保険募集において、お客さまのためにどれだけやってきているか、お客さまの意向に沿ったどの
ような提案が出来ているのか、お客さまのために何ができるのか、という視点を常に持ってお客さま対応力
の向上に努めて欲しい」と述べられており、上からの法的な規制で動くのではなく、事業者自身が顧客本位
の目線で主体的に創意工夫を発揮するよう求めていることは強く認識しておく必要がある。正に、顧客本位
の「自立」と「自律」の要請である。
なお、特別寄稿として、本テーマに関する栗山アドバイザーの論考を掲載するので、参照願う。
― 86 ―
特別寄稿
本寄稿は、本会アドバイザーで、株式会社丸紅セーフネット常勤監査役の栗山泰史氏が、平成28年4
月7日から6月2日にかけてインシュアランス損保版に寄稿された「保険事業の今を読む(その32・
33・34)
」をまとめたものである。
(平成28年4月7日号掲載;その32)
代理店手数料の開示を巡る動き
栗山 泰史
代理店手数料の開示の動きが始まった。週刊ダイヤモンドがオンライン上、スクープとして報道したのが
平成28年2月5日、そして日本経済新聞も2月20日に報道している。これらによれば次のような動きが生じ
ているようだ。
『金融庁が、生命保険協会の会合を通じて手数料の開示に関する具体案検討の要請を行った。期限は3月
末まで。対象は「運用成果しだいで受取額が変わる変額年金保険や外貨建て保険(日経記事より抜粋)」』
◇「開示」検討の背景
こうした動きの背景としては、
「銀行などが受け取る販売手数料の透明性を高める」といった制度上の観
点、
「契約者が支払う保険料には手数料も含まれており、手数料が正確に分かれば顧客の商品選びにも役立
つ」といった消費者の利便性向上の観点、「銀行などが保険を売った見返りに受け取る手数料が高すぎると、
手数料を目当てに不要な保険を売る動きが強まりかねない」、「金融庁は、日銀によるマイナス金利政策で収
益の確保が厳しくなった銀行が、保険販売による手数料稼ぎに力を入れるのではないかと警戒している」と
いった消費者保護のための銀行など保険販売事業者への規制強化の観点(以上、括弧内は日経記事より抜
粋)が示されている。
◇これまでの検討の経緯
手数料開示を巡る新たな動きについて、特に代理店の中に「ついに手数料開示の動きが始まるのだろう
か」と懸念する声が生じている。比較推奨販売を行う乗合代理店の体制整備義務や規模の大きい特定保険募
集人への金融庁による直接監督が今年の5月29日以降導入される。それに向かって懸命の努力をしている中、
さらに大きな課題を突き付けられたように代理店が感じるのは至極当然のことであると思える。
しかし、手数料の開示に関しては、金融審議会における検討の経緯があり、それを踏まえた現時点での一
定の結論が存在することを念頭に置けば、それほど心配することはない。ここに至る経緯は以下のように整
理することができる。
まずは、平成21年6月19日の「保険の基本問題に関するワーキング・グループ中間論点整理」である。こ
こでの議論の中で、消費者の保険商品選択において、付加保険料水準や代理店手数料は有用な情報であると
の意見が出され、保険仲立人(保険ブローカー)制度と併せて検討することが望ましいとされた。保険仲立
人の場合、顧客から求められた場合の手数料の開示義務が定められているためである。
次は、
「我が国の金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」が平成24年5月28日に公表
した報告書である。ここでは、株式や債券の販売が自由化やネット販売によって極めて薄利になっているの
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に対し、保険や投資信託の販売は、販売する側の収益機会が大きいため、販売する側の誘導等によって顧客
側に適切な選択肢が与えられない懸念があるとの指摘がなされた。そして、この問題の解決のために、「顧
客が自己のニーズを明確に認識し、十分な情報と豊富な選択肢を基に購入判断ができるような環境を整備す
る」ことが必要としている。
ここでは、手数料の開示が明記されているわけではない。保険の場合、まさに意向把握義務や情報提供義
務、そして何よりも比較推奨販売を行う乗合代理店の体制整備義務の法定こそが上記の「環境の整備」に該
当する措置といえるであろう。
◇開示に関する結論
上記の検討を踏まえた上で、一定の結論を示したのが「保険商品・サービスの提供等の在り方に関する
ワーキング・グループ」が平成25年6月11日に公表した報告書である。この報告書こそが保険業法の改正に
つながるものであるが、ここにおいては、手数料の開示に関し、「現時点において、一律にこれを求める必
要はない」とした上で、今後の展開において「手数料の多寡を原因として不適切な比較販売が行われる事例
が判明した場合には、手数料開示の義務づけの要否について、改めて検討を行う」こととしている。こうし
た結論に至ったのは、今回の業法改正によって比較推奨販売を行う乗合代理店の体制整備義務が法定された
ことで、
「保険商品の比較販売において、一定の適切な体制が整備・確保される」からである。
これを受けて、監督指針においては、
「形式的には客観的な商品の絞込みや提示・推奨を装いながら、実
質的には、例えば保険代理店の受け取る手数料水準の高い商品に誘導するために商品の絞込みや提示・推奨
を行うことのないよう留意する。(Ⅱ-4-2-9
(5)の(注)1)」旨が明記されている。
◇開示の対象
これまでの経緯と現時点での結論を見ると、今回の手数料開示の動きは、その対象が「特定保険契約」に
限定されると判断してよいのではないだろうか。特定保険契約とは、「金利、通貨の価格、金融商品市場に
おける相場その他の指標に係る変動により損失が生ずるおそれがある保険契約(保険業法第300条の2)」と
され、生命保険協会によると、主なものとして、「変額個人年金保険」、「積立利率変動型個人年金保険」、
「外貨建保険」が該当する。ちなみに、損保の積立保険の中でこれに該当するものはない。
「特定保険契約」の場合、金融商品取引法が準用されることになっており、現時点でも投信等の金融商品
と同じ規制が適用されている。具体的には、①広告等の規制、②契約締結前交付書面の交付、③契約締結時
交付書面の交付、④禁止行為、⑤損失補てん等の禁止、⑥適合性の原則が該当する。
ここで一つ引っかかる点が存在する。契約締結前交付書面において「手数料、報酬その他の当該特定保険
契約等に関して顧客が支払うべき対価に関する事項」が記載事項の一つに入っていることである。これを見
て「特定保険契約に関しては、既に手数料開示が行われているではないか」と思う人がいるかもしれない。
しかし、ここでいう「手数料」は顧客が支払うものであるから、代理店手数料のように保険会社が代理店に
支払うものは該当しない。従って、代理店手数料は新たな開示項目になるのである。
また、今回の開示の動きについて、冒頭に示した日経記事において「保険と同じように銀行が窓口で取り
扱う投資信託は手数料が開示されている」との指摘がある。現状では、投資信託の場合、投資信託委託会社
や投資信託販売会社(証券会社、銀行等)といった事業者側が受け取る手数料や報酬は誰がどのように支払
うかを問わず、すべて投資家(消費者)に開示されている。
様々な保険商品の中で、特定保険契約は保険の枠組みの中で作られてはいるが、その本質は投資信託等の
金融商品に近いといってよいだろう。従って、「投信は既に手数料が開示されているのだから、保険も開示
すべきだ」というイコールフッティングの観点は、特定保険契約に焦点を当てれば一定程度、理解できると
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ころである。
◇手数料の水準
既に結論が出ている手数料開示問題に関し、今の時点で金融庁が動く理由は何であろうか。一つの背景は、
「平成27事務年度金融行政方針」において「フィデューシャリー・デューティー(他者の信認を得て、一定
の任務を遂行すべき者が負っている幅広い様々な役割・責任の総称)の浸透・実践」を掲げ、具体的な取り
組みの一つとして「手数料の透明性の向上」を掲げていることである。
この流れの中に手数料開示問題を位置付けた場合、保険の手数料と報酬が投資信託と比べて大幅に高いと
いう事実が浮かび上がる。先ほどの日経記事は、次の文章で締めくくられている。
「退職金の運用先として人気がある一時払い終身保険は、外貨建ての手数料が7%ほど。1千万円の保険
を契約すると単純計算で70万円ほどの手数料を銀行が得る計算だ。手数料が10%近い場合もあるという。」
金融庁から投げられた球は、
「代理店手数料の開示に関する検討」であるが、これを受けた民間サイドの
保険会社と代理店にとっては、
「球のターゲットはむしろ手数料率水準」として捉えるべきなのかもしれない。
(平成28年5月5日号掲載;その33)
保険における代理店手数料開示
前回、代理店手数料の開示の動きについて記した。その後、開示の対象が保険業法上の「特定保険契約」
に限定されること、保険販売チャネルとしては、金融機関の窓口販売に限定され、保険ショップを初めとす
る他の代理店は除外されること等、内容が概ね定まってきたようである。
ちなみに、
「特定保険契約」とは、「金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変
動により損失が生ずるおそれがある保険契約(保険業法第300条の2)」と定義されており、保険業法ではな
く金融商品取引法が適用されることとされている。生命保険協会では、主なものとして、「変額個人年金保
険」
、
「積立利率変動型個人年金保険」、「外貨建保険」を挙げている。
◇銀行の反応は・・・
金融機関の窓販に限定するという点は、手数料開示に関して、「銀行窓販規制」と同様、同じ代理店で
あっても銀行には他の代理店とは異なる規制を課すことを意味する。果たして、銀行はこれを妥当なものと
して受け入れることになるのであろうか。最も大きな影響を被るのは、他の誰でもない銀行なのである。
全国銀行協会が平成28年3月15日に公表した「銀行による保険窓販に関する消費者アンケート調査結果」
によれば、
「利用者の利便性」「保険市場の拡大・発展」の観点から、銀行窓販規制に対する見直しが提言さ
れている。
今般の手数料開示は、投信等の金融商品と特定保険契約が類似している中で、イコールフッティングの観
点から行われるものであるため、銀行としてはやむを得ないものとして受け入れるべきであろう。しかし、
その一方で、銀行としては、「来店型保険ショップ等、他の募集人にも同じルールを適用すべきである。」と
の主張を、今後、行うことになるのではないだろうか。
◇手数料は原価の一つ
ところで、特定保険契約のような特殊な商品を除く一般の保険に関して、代理店手数料開示問題はどのよ
うに考えるべきなのであろうか。従来、保険業界では次のような理由から手数料開示には慎重な議論が必要
とのスタンスをとってきた。
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第一に、代理店手数料は原価を構成する要素の一つという考え方である。いうまでもなく保険料は、純保
険料と付加保険料、そして代理店手数料に分割できる。これに一定の利益を加えたものが保険会社として顧
客に提示する保険料である。
原理的には、代理店が顧客から受け取るべき報酬は、保険会社を経由して受け取る「コミッション(手数
料)
」と募集を含む様々な保険関連のサービスへの対価として顧客が代理店に直接支払う「フィー」に分け
ることができる。わが国においては、ごく一部の代理店が、例えばリスクマネジメントサービス等に伴い
フィーを徴しているケースがあるが、保険募集に伴う対価をフィーとして得ているケースは皆無に近いと
いってよい。
従って、顧客は保険料を保険会社に支払うのであり、代理店手数料は、保険料の中から保険会社が代理店
に支払うことになる。顧客にとっては、代理店に手数料がいくら支払われようとも保険料が割引されるわけ
ではない。
現在、保険料の決定には一定の規制はあるとしても、かつてのような総括原価主義に近い価格形成の時代
とは異なり、市場原理の中で価格は決定される。代理店手数料は価格を構成する原価の一つであり、商品の
競争力に係る原価を開示する理由はないのではないかというのが、従来の代理店手数料開示問題における保
険業界の一つのスタンスであった。
◇保険料の一定割合としての支払い
第二に、代理店手数料が保険料の一定割合として決定されることに伴う問題である。保険会社は代理店手
数料の支払いにおいて、代理店または保険商品ごとに異なるが、保険料の一定割合という形で額を決定して
いる。このため契約単価が高いほど手数料実額も高くなるという構造になっている。
これはごく当たり前のこととして業界人に認識されているが、ここには一つ問題がある。保険料の一定割
合が手数料になる結果、実額としては募集費用に見合った金額になっていないことが生じるという点である。
例えば、保険料1, 000円の契約の手数料が150円である時、代理店は当該契約に関しては明らかに赤字を余儀
なくされる。一方、大企業の契約のように保険料が億の単位になるような場合は、働きに見合う額を大きく
超える手数料を得ることができる。
もし代理店手数料を開示した場合、何が起こるだろうか。契約者の圧力によって、大規模契約における手
数料が大幅に値下げされれば、それを補てんするために小規模契約の手数料を大幅に値上げすることが必要
になるだろう。そして、この問題は代理店手数料だけではなく保険会社の社費に関しても同様なのである。
すなわち、保険料の算定においては、大規模契約から小規模契約への社費や代理店手数料の融通という一種
の内部補助を避けることができないのである。
◇金融商品と保険の違い
一方、保険と異なり金融商品においてはフィーだけでなくコミッション(手数料)に関しても一貫して開
示が進展してきた。顧客が投じた資金から差し引かれる手数料が少ないほど運用に回す資金が多くなるわけ
だから、手数料が不当に高い場合、顧客には明らかに不利益が生じる。従って、顧客保護の観点からも手数
料開示が重要になるからである。また、販売側としても競争の激化に伴い手数料の低さをセールスポイント
にすることができるというメリットがある。
保険の場合、特に損保商品においては、手数料が低いからといって保険金が多く支払われるわけでは決し
てない。また、保険募集においては、代理店が高い質を有していればいるほど保険会社の募集に伴うコスト
は低くなるという面がある。本質的には代理店の仕事に見合う手数料であれば、顧客にとっても保険会社に
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とっても問題はない。
それにも拘わらず、保険において手数料の開示問題が俎上に上がったのは、乗合代理店の行為を原因とす
るものであった。専属代理店であれば、その存在は保険会社の社員と同じような位置付けであるから、まさ
に代理店手数料は価格を構成する原価の一つと捉えることができる。しかし、乗合代理店においては、必ず
しも保険会社が適正に原価を決定できるとは限らない。典型的なケースは、乗合保険会社間で当該代理店で
の扱い高を巡る競争が生じ、代理店手数料が高騰していくケースである。このようなことになれば、代理店
手数料は不当に高くなり、顧客はその分不当に高い保険料を負担することになる。また、複数の保険商品の
比較推奨販売において、代理店手数料の高い商品に顧客を誘導することになれば、これもまた顧客にとって
大きなデメリットになる。
◇さらに深い手数料開示の議論
しかし、あくまでも代理店手数料は保険会社と代理店の内部における配分の結果に過ぎない。金融商品の
ように手数料の額そのものが問題になるのではなく、それを通じて、補償の内容その他に問題がある不適切
な商品に誘導されるという歪みこそが顧客にとっての弊害となるのである。
従って、今般の保険業法改正においては、乗合代理店が顧客に対して行う比較説明と推奨販売をどのよう
にして適正なものにするかが焦点になり、代理店手数料の開示は見送りになったのである。そして、弊害防
止のために登場するのが比較推奨販売を行う乗合代理店に対する追加的体制整備義務である。
そして、今般、金融商品に近い特定保険契約に関し、まずは銀行だけとはいえ手数料開示が始まる。この
ようにみると、手数料開示問題は事実上終わったとの見方が出るかもしれない。しかし、事はそれほど単純
ではない。手数料開示問題は、もう少し深いところで動き続けている。そこには、EUにおける議論やアメ
リカにおける不祥事を受けた対応等が絡んでいる。次回、この辺りについて触れてみたい。
(平成28年6月2日号掲載;その34)
代理店手数料開示を巡る論点
過去2回にわたり、代理店手数料の開示の動きについて記した。結果的に、開示の対象商品は保険業法上
の「特定保険契約(変額個人年金保険、積立利率変動型個人年金保険、外貨建保険等)」に限定され、保険
販売チャネルは、金融機関の窓口販売に限定されることになるようだ。
◇特定保険契約の場合
5月29日付で導入されたばかりの新しい保険募集ルールの下で、乗合代理店のうち比較推奨販売を行うも
のには他の代理店とは異なる特別の体制整備義務が課せられることになった。窓口販売を行う銀行は典型的
な乗合代理店である。そして、銀行における窓口販売の場合、自動車保険のような典型的な損保商品ではな
く生保商品がメインの商品である。
中でも特定保険契約は金融商品としての特色を色濃く持つため、他の代理店とは異なり銀行窓販において
は主力商品である。当然のことながら、比較推奨販売を行う場合の他のラインナップ商品は投資信託等の金
融商品ということになる。これらの金融商品に関しては、既に手数料の開示が行われているから、比較推奨
販売におけるイコールフッティングの観点からも特定保険契約の手数料開示は納得できる。
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◇通常の保険商品の場合
しかし、通常の保険商品の場合においてはどうであろうか。保険契約者の負担する保険料は、最終的には
三つの主体に配分されることになる。一つ目は保険金等として顧客に配分される。二つ目は社費として保険
会社に配分される。三つ目は代理店であり、代理店手数料がこれに該当する。
顧客に配分される保険金等の相当分は、生保であればアクチュアリーによって、損保の主要商品の場合は
損害保険料率算出機構によって一定の客観性を保つ形で料率算出が行われている。さらに、その結果に関し
ては金融庁が認可を通じて関与することになる。従って、消費者にとって重要である価格競争への影響は相
対的に小さいといってよいだろう。
一方で、保険会社の社費は、平成8年の金融ビッグバンによる保険自由化以降、価格競争における中心的
要素になってきた。保険会社は価格競争力を維持するためにローコストオペレーションを促進し、徹底的な
社費の削減に尽力してきた。自由化前の平成8年と平成26年で社費の実額を比較すると、損保業界の場合、
約1. 3兆円の減少になっている。
また、代理店手数料においては、それまでの画一的な手数料体系に対し手数料ポイント制度が導入される
ことによって、代理店としての業務の質と量のレベルが反映される体系に変化した。能力の高い代理店によ
る募集は保険会社として手がかからないから、配分において手数料が大きくなる一方で社費は低くなるとい
うことである。実際には、代理店手数料は総ファンドとしては横ばい傾向にあるので、個々の代理店の能力
によって差がつくという形で競争環境が作られてきた。すなわち、保険会社が顧客に提示する保険料におい
ては社費と代理店手数料が競争の要素になってきたのである。
金融商品の場合は、顧客が負担する投資金額のうち、手数料が小さければ小さいほど顧客へのリターンが
大きくなるという構造がある。これに対して、保険の場合は、保険会社の社費と代理店手数料が小さくなっ
たからといって顧客へのリターンである保険金が増えるわけではない。
金融商品と保険は根本的に異なる構造になっていることに留意しなければならない。保険商品における価
格競争力を高めるために、保険会社の社費と代理店手数料は、市場における競争によって自ずと低下の圧力
にさらされている。仮に手数料水準が高いとしても、それは保険会社と代理店の事業者内部における配分の
問題にすぎない。配分がどうなされようと顧客が負担する保険料には影響はないのである。
◇手数料開示の論点
ところで、諸外国における手数料開示はどのような状況なのであろうか。これを見るにあたり、三つの観
点からの整理が必要である。第一に、ブローカーと代理店という区分、第二に、保険会社が支払う手数料
(コミッション)と顧客が支払う報酬(フィー)という区分、第三に、保険商品ではあっても金融商品に近
いものと通常の保険商品という区分、この三つの区分によって手数料開示の扱いが異なるのである。
第一のブローカーと代理店では異なる取り扱いになるという点をみてみよう。法的に代理店は保険会社の
代理人である一方で、ブローカーは顧客の代理人である。ちなみに、わが国においては今回の保険業法の改
正によって、初めてブローカー(保険仲立人)が顧客の代理人であることが明記されることになったが、ブ
ローカーからはこれを大きく評価する声が上がっている。
法的位置付けの違いは手数料開示に関し大きな影響を与えている。すなわち、どの国においても、顧客の
代理人であるブローカーに関しては手数料開示を要求している。ただし、法律ではなく業界団体での自主規
制によって実施しているケースや保険の種類や契約内容によって部分的な開示に留めるケースもある。なお、
開示とはいってもブローカーによる自発的な開示ではなく、顧客が求めた場合に限るケースが多く、わが国
もこれに該当する。
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その一方で、保険会社の代理人である代理店に関しては、一部の例外を除いて手数料の開示は求めてはい
ない。諸外国ではすでに代理店手数料の開示が行われているとか、またはその方向に動いているとのイメー
ジがあるが、実態は決してそうではない。開示を要求されているのはブローカー手数料であり、代理店手数
料についてはそうした事実はない。ただし、アメリカのニューヨーク州においては「コンティンジェント・
コミッション」といわれるボーナスのような手数料を巡る不祥事を契機に代理店手数料に関しても開示が要
求されている。
いずれにしても、アメリカやイギリスのように販売チャネルの多くがブローカーによって占められ、かつ
代理店とブローカーの兼営が容認されている国においては、多くの契約において手数料開示が行われている
実態があるため、代理店手数料に関してすでに開示が行われているとのイメージが生じるのであろう。
第二は、保険会社が支払う手数料(コミッション)と顧客が支払う報酬(フィー)という区分による扱い
である。これが典型的にみられるのはEUにおける議論である。EUにおいては、平成28年2月23日に発効し
た「保険販売業務指令」によって、長く続いた開示に関する議論に結論が出されることとなった。議論の過
程においてはすべてを開示する案も作成されたが、最終的にはフィーは開示するが、コミッションは開示す
る必要はないということで決着がついている。事実上、代理店に関しては手数料の開示は見送りになったと
考えてよい。
第三の、保険商品ではあっても金融商品に近いものと通常の保険商品という区分については、本稿では今
更述べる必要はないであろう。多くの国において、金融商品に近い保険に関しては、積極的な手数料開示が
要求されている。
◇開示による保険料引き下げ
消費者からみれば、代理店手数料の水準が不当に高い結果、顧客の負担する保険料が高止まりしているの
ではないかという疑念が生じるのかもしれない。確かに、手数料を消費者の目にさらすことによって引き下
げを図るという考え方は成立する。しかし、もしそうした事実があるとするならば、社費と手数料は事業者
内部での配分のあり方に左右されるから、まずは保険会社が手数料水準の適正化を図るべきである。それで
も是正できない場合、これを解決する方策は金融庁による料率審査や公正取引委員会による独禁政策に委ね
るのが本筋であろう。
保険料引き下げは全体としての保険料の競争に委ねるべきであり、代理店の手数料開示問題は、諸外国に
おける動向を併せ見ながら本質的な論点をベースに検討すべきなのである。
(以上)
― 93 ―
7-4 保険業法等関連法規の動向④
〈委託型募集人の適正化対応〉
■委託型募集人誕生の背景
平成8年に金融ビックバンの大きな流れの中で自由化を迎えるまで、損保の家計分野商品は、全保険会社
で同一約款・同一料率であり、代理店手数料も同一種別間(特級・上級・普通・初級)では各社同じであっ
た。そのため、保険会社の販売戦略は、代理店の質よりも数を競う競争が中心となり、代理店数は増加の一
歩を辿っていた。
自由化以降は一転して厳しいコスト競争(付加率低減の要請)にさらされ、国内営業はローコストオペ
レーションが求められる環境になり、肥大化した販売基盤の構造改革を迫られることになった。そうした折、
経団連の規制緩和要望に答える形で金融庁のガイドラインが改定され、保険代理店の使用人の定義から「雇
用」の要件が外されることとなった。これは本来的には当時拡大していた派遣社員にも保険募集ができるよ
うにするための改定であったが、これを契機に、保険会社が主導する形で委託型募集人という仕組みが導入
され、代理店の合併・統合の推進策として活用されるようになった。結果として、販売基盤の合理化・効率
化が急速に進展していったものである。
さらに、代理店手数料ポイント制度の導入と相まって、個人代理店の店主などが委託型募集人として他代
理店の傘下に入る動きが加速し、代理店の大型化がより一層進展することとなった。(注:代理店実在数が
最も多かったのは平成8年度末の約624千店。これが昨年度末では約190千店まで減少しており、約7割の減
となっている。その一方で、募集従事者数は、平成7年度末の1, 086千人が平成26年度末には2, 052千人まで
増加して約1. 9倍に膨らんでいる。結果として、代理店1店当たりの募集人の数は、単純平均で、約1. 7人か
ら約10. 7人にまで増加している実態がある。こうした観点でみれば、委託型募集人という仕組みは、自由化
後の効率的な販売基盤の構築に一つの役割を果たしたという評価はできる。)
■金融庁による適正化の要請
こうして広く業界内で活用されていた委託型募集人であるが、平成26年1月26日に金融庁が発出した「報
(※)
により、保険業法275条第3項で禁止されている保険募集の再委託に該当するとされ、平成
告徴求命令」
27年3月末を期限として、新たな形態への移行が求められることとなった。(※本命令に関し、日本代協に
対しても金融庁から直接協力依頼文書が発出された。内容は本章添付の通り。)
日本代協では、平成25年10月に委託型募集人に関する金融庁の基本的な考え方(保険募集の再委託禁止に
抵触)が示された後も、金融庁に対して意見書の提出や協議を行い、代理店の立場から意見を伝えて現状を
踏まえた柔軟な対応策を模索してきた。しかしながら、その仕組みが保険募集の再委託そのものであり、再
委託は保険業法第275条において禁止(一部例外規定有り)されていることは法的には動かしがたく、使用
人届が出せる募集人として不適切であることが明確になった以上、過去の経緯はともかくとして、先ずは金
融庁の方針に沿って期限内の適正化を進めていくことが正しい方針であると判断するに至ったものである。
但し、それぞれの募集人は、これまで地域の顧客を守ってきた存在であり、生活権もある。従って、移行
に際しては、保険会社、代理店、委託型募集人の関係者3者で対話を行い、当該委託型募集人にとっても納
得感のある選択肢が提示されることが重要であるため、金融庁並びに各保険会社との情報連携を密にし、丁
寧な対応(逆に言えば、無理な対応はしない)を求め、これには金融庁も理解を示したところである。
なお、適正化のための改善期間は平成27年度末まで認められたが、全件漏れなく移行を完了させる必要が
― 94 ―
あるため、実務的には平成26年12月末を目途に移行を完了させるスケジュール感で臨むこととなり、各社・
各代理店において取り組みが進められた。
■適正化要請を受けた時点の委託型募集人の状況と対応
保険会社がリードする形で代理店の整理・統合・大型化が進む中で、多くの代理店が委託型募集人になる
道を選択した。全社ベースの正確な数値ではないが、損保業界だけでも1万人以上の該当者がいると見られ
ていた。
一般的に損保では、委託型募集人は高齢の方が多く、収保規模もさほど大きくはないと言われるが、これ
まで地域の顧客を地道に守り、生計を営んできたのも事実である。従って、日本代協としては、適正化は進
めていくとしても、廃業を強引に迫るのではなく、当事者が納得する形で丁寧に進めていくことが肝要であ
ると考え、各保険会社に要請を行った。
一方、生保業界においては、委託型募集人となることで多数の保険会社の商品が扱えることになり、消費
者ニーズの変化にもマッチしたことから、来店型保険ショップ店という新たな顧客対応のスタイルとも相
まって急速に拡大していった。損保を上回る該当者がいたのではないかと思われるが、損保のような会社主
導型ではなかったため、生保会社サイドでは実態を把握できていない面もあった。また、こうした大型乗合
代理店の募集人になることで、
「生保募集人の一社専属規制」(保険業法282条)の潜脱を生んでいるという
指摘も受けることとなった。
なお、日本代協としては、委託型募集人だから何か問題を起こしたという事例は特にないと認識しており、
今回の委託型募集人の適正化要請は、あくまでも法律上の対応であると考え、先ずは、金融庁方針を踏まえ、
「当事者間の納得」と「柔軟な移行策の提示」を前提に適正化に取り組む方針とした。
■移行策①(雇用、派遣、出向のケース)
移行策としては先ずは雇用が基本であり、その他、派遣あるいは出向の形態を検討することになった。
先ず、派遣の可能性を考えてみると、委託型募集人は成果報酬型の個人事業主という実態があり、一般的
に損保の営業では派遣の形態は難しいと考えられた。派遣社員の場合、派遣先の代理店の指示で働くが、教
育・指導・管理は派遣元の派遣会社が行うことになるため、体制整備上も問題がある。そもそも受け入れて
くれる派遣会社があるか、という問題もある。(新たに派遣会社を作るという案もあるが、この業界は規制
が厳しく、設立も運営も容易ではない。
)募集人は顧客訪問のための外出や、休日・時間外の労働も多いた
め、どのように管理するのかも課題となる。給与も時給制となり、収入面で大幅な開きが出るといった課題
もある。コスト的に見ても、そもそも派遣料には社会保険料等が反映されており、残業の規定もあるため、
経費削減を目的とした採用は的外れといえる。また、派遣のメリットは、人材の需給調整とニーズマッチン
グにあるが、これまで委託型募集人として募集業務を行っている人を継続的に受け入れることを前提とする
と、そもそも派遣という選択肢は採りにくいという問題があった。なお、平成27年9月に行われた労働者派
遣法の改正で派遣労働者単位の期間制限(3年)が導入され、同一派遣労働者が3年を超えて同一職場・同
一業務に従事できなくなったため、さらに活用は難しくなっている。
次に、出向という形態は、現在でも、例えば会計事務所や社会保険労務士事務所などで、募集人資格のあ
る社員が代理店に出向し、顧客を開拓するケースなどがあるが、今回の委託型募集人の移行策とする場合は
先ず最初に出向元を探さなくてはならず、選択肢としては考えにくいとの見解が一般的であった。
こうした点を踏まえると、雇用が一番妥当な移行策となることは明白であったが、この場合も様々な留意
点があった。主なものは以下の通り。
(これは委託型募集人の移行に限ったことではなく、全ての募集人に
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適用される要件であることに注意が必要である。)
なお、日本代協としては、実際に雇用する場合は、個々の代理店によって状況が異なるため、社会保険労
務士や税理士と相談の上、労働関係法規等の潜脱や脱法にならないよう留意しながら、自社としての判断を
行っていくことが重要であるとのメッセージを発信し続けた。
① 会社(代理店)と労働者で労働契約を結ぶ:雇用するに当たっては、会社と労働者(募集人)で労働
契約書(雇用契約書)を締結し、入社時誓約書等にサインをしてもらう等の手続きが必要である。その
ためには、就業規則等、会社として社員を受け入れるのに必要な体制を整える必要もある。
② 給与体系を決める:従来の報酬支払から給与に変わるため、本部費用の設定や社会保険等の福利厚生
コスト、更には早期解約時の戻入れへの対応や手数料が最低賃金を下回った場合の対応など、保険代理
店としての特殊性を織り込んだ給与体系を決める必要がある。一説には、雇用する場合、代理店手数料
で最低300万~400万円程度必要との試算もあるが、委託型募集人の現在の取扱実績と今後の予測を踏ま
えると、代理店経営上簡単には受け入れられない募集人も出てくるものと思われた。また、委託型募集
人サイドとしても、本社経費等が控除されるため、現在の収入より手取りの実額が減ることがありえる
ことへの認識が必要であり、この点も推進時のネックの一つとなった。
③ 社会保険等のコスト負担:受け入れる代理店の側では社会保険等の会社負担分のコストが発生する。
そのベースは「報酬の全額」であり、歩合給等で募集人の事業所得扱いとなるものであっても、全て計
算の分母になることに注意が必要。(会社負担分は報酬の約16%位になると言われている。)雇用保険逃
れのために、週20時間未満の勤務を条件とする動きもあったが、労働関係法規はあくまで実態優先であ
り、契約でどう定めても実態が伴わなければ脱法、潜脱となるので注意が必要である。
④ 最低賃金をクリアすること:雇用する場合には、都道府県別に時給ベースで設定されている最低賃金
をクリアする必要がある。(沖縄などの693円~東京907円まで幅がある。平成27年7月末現在)1日8
時間、土日・祝日等年間休日120日の場合で、月平均所定労働時間は163. 3時間になるため、月給与ベー
スでは、沖縄113, 167円~東京148, 113円を最低限クリアするよう全体の給与構成を考える必要がある。
⑤ 「勤務の実態」と「教育・指導・管理の実態」が必要:雇用すれば誰でも募集ができるわけではない。
使用人届を出すためには、「代理店事務所に勤務」し、「教育・指導・管理」を受けている実態が必要で
ある。具体的には以下の通りである。
代理店の事務所に勤務…毎日or一定日に定期的に出社して業務を行い、実態も確保されていること
適正な教育が行われている…コンプライアンス、コンサルティング、販売スキル等について、管理
者から適切な教育が行われ、その記録がされていること
適切な管理・指導が行われている…管理者が募集人の業務遂行状況(外出先、成約状況、苦情・ト
ラブル状況等)を管理・把握し、適切な指導が行われていること
代理店から指揮命令・監督を受けている…募集人の業務内容や実施方法について、管理者から指
示・監督を受けていること(その旨就業規則等に明示されていること)
今回の適正化は、法令違反状態を早期に脱却するために、どうしても完了させる必要がある取り組み
であったが、今後、代理店として顧客満足や従業員満足を高めていくために、募集人(従業員)が働く
環境は本来どうあるべきか、それぞれの代理店で考え、再構築していくことの方が重要であり、それが
代理店としての成長戦略の基盤になっていく。従って、今回の法律上の適正化対応で歩みを止めず、よ
り良い職場環境の構築を目指して経営戦略を考え、実行していく必要がある。
― 96 ―
■移行策②(3者間契約スキームの活用)
前記の通り、雇用をメインとしても、諸条件から移行できない委託型募集人が多数存在するものと思われ
た。従って、可能な限り、現状の実態が維持できる移行策として業界ベースで考え出された仕組みが「3者
間契約スキーム」である。
3者間契約スキームとは、委託型募集人と所属代理店および保険会社の3者間で改めて契約を締結し、現
行実務を極力維持した形で3者の役割分担を定め、顧客対応に当たるものである。内容は共同募集のイメー
ジに近いものであるが、教育・管理・指導の責任の所在や募集の形態等、それとは異なる新たな募集スキー
ムと位置付けられる。本スキームの導入により、従来の委託型募集人は、3者間契約スキームに基づいた新
たな形態の個人代理店(通称:勤務型代理店等・保険会社によって呼称は異なる)となり、法律上の再委託
問題はクリアされることとなった。勤務型代理店に対する教育・指導・管理は、保険会社の委託を受けた親
代理店(業界ひな形名称:統括代理店)が行う仕組みである。代理店手数料ポイントの算定を含め、これま
での委託型募集人の実務を極力変えない前提となっており、移行に際して有効な選択肢の一つとして活用さ
れた。
(このスキームの活用により、損保においては、約12, 000店の個人代理店が登録された。)
一方、3者間契約スキームには課題もある。委託型募集人から個人代理店に移行した場合、一社専属規制
の適用(※)によって生保の乗合いができなくなる点である。これまで乗合代理店の募集人として複数社の生
命保険商品を販売してきた場合は、扱えなくなった保険商品は親代理店で対応せざるを得なくなり、顧客と
の関係や以後の代理店手数料の支払いも問題になる。こうしたことから、来店型保険ショップなど生保系の
乗合代理店では、雇用を前提に適正化が進められた。この結果、雇用できない、あるいは、雇用条件に納得
しない委託型募集人は、転廃業を含め別の道を選択することとなった。
(※一社専属規制の例外として認められている「クロス特例」は適用可能である。)
なお、3者間契約スキームの適用方針は、保険会社によって戦略の相違があるため、日本代協としては所
属保険会社と十分打合せのうえ、実行に移すよう様々な機会を通して情報発信を行った。
■今後の展開
委託型募集人の問題は平成27年3月末で一つの区切りをつけたが、使用人要件の充足については、全ての
募集人について、不断のチェックが必要である。今回の業法改正で代理店にも体制整備が課されたことを踏
まえると、この点は益々重要になっていることを認識する必要がある。全ての募集人に対する「教育・指
導・管理」の仕組みを作り、実践し、検証し、問題があれば改善していくことが求められる。その土台の上
で、多様化し、細分化される消費者ニーズに的確に応えていくことが、これからの代理店には求められる。
(※)
こうした仕組みが業界発展
なお、もともと保険募集の「再委託」自体は法律上絶対禁止事項ではない。
のために必要で、消費者保護上の問題もないということであれば、改めて再委託の制度を業法上位置付け、
活用を図る道は残されているといえる。
また、今回の適正化の背景の一つになっている生保の一社専属規制についても、消費者視点に立って今日
的あり方を論議する時期が来ているのではないかと考える。
(※現行保険業法において、同一グループ内の保険会社を再委託者とし、再委託者が自らも保険募集の委
託をしている保険募集人を再受託者とする場合に限り、保険募集の再委託が認められている。
[ex. MS&ADグループにおいて、MSがADに募集の委託を行い、ADが自らの代理店にMSの商品販売
を委託するケースは保険募集の再委託である])
― 97 ―
[参考]平成26年1月16日付 日本代協宛金融庁発出文書
― 98 ―
― 99 ―
8-1 業界関連法規の動向①
〈代理店の雇用動向と社会保険の取り扱い〉
■雇用動向を巡る所管官庁の動向
委託型募集人の適正化に伴い、対象となる募集人が雇用に移行する場合、労働関係法規が全面適用される
ため、全国の労基署や年金事務所で代理店の雇用動向を注視する動きが広がった。
特に、委託型募集人の適正化期限が終了した平成27年4月以降は、労基署や年金事務所(※)による実態把
握や代理店訪問が始まっており、対応が不十分な代理店においては、早期に適正な手続きが求められている。
これまで問題の所在を認識しながら対応を怠ってきた一部の代理店や、法人であることの義務を示さないま
ま法人化を推進したり、コンプライアンスといいながらも、この問題については「法律を守ることは当然で
あり、企業の責務」として指導対象外に位置付けてきた保険会社サイドの対応は、ここで大きく転換を求め
られている。
(注:既に、複数の保険会社においては、優良代理店認定の際の指標の一つに「社会保険の適
正加入」を盛り込むところが出てきている。建前に拘らない現場目線の施策であり、評価したい)
見方を変えれば、ようやく全ての代理店が「普通の企業」になる環境が整うということであり、本件は旧
来型代理店の経営・組織変革のチャンスと位置付けるべきであると考える。
※保険業界の監督官庁は金融庁であるが、労働関係法規の所管官庁は厚生労働省であり、就業規則や
雇用契約書の調査は労働基準監督署、雇用に伴い生じる社会保険料の支払い実態の調査は年金事務
所に調査権限がある。従って、労基署の関心は年金事務所にも共有されることとなる。また、労基
署の調査に対しては、税務署と同じく入検企業に対して協力義務が課せられている。
年金事務所等が代理店の雇用動向に関心を持つのは、かねてから雇用に伴う社会保険の整備について代理
店の曲解や認識誤りが少なからず散見されており、監督官庁として問題視していたからと言われている。と
りわけ多いのが、社会保険料(狭義…次頁表参照)の支払額を圧縮させようとするもので、例えば、雇用す
る募集人の給与体系を固定給と歩合給(事業所得)に分け、歩合給に対する社会保険料の支払いを逃れよう
とするケースや、募集人の労働時間がフルタイムであるにも関わらず、社会保険料の支払い対象外となる週
数回勤務のパート形態で形式的に雇用契約を交わすケースなどが指摘されている。
いうまでもなく社会保険料の課税対象は、「報酬の総額(全額)」(健康保険法第3条5項)と定められて
おり、歩合給等名称の如何を問わず、報酬の一部を対象から除外するのは違法となる。(受給者が事業所得
として経理処理する場合も同じ)また、労働法は労働者を守るための法規であり、雇用契約よりも労働時間
の実態が優先するため、雇用契約上パート勤務だと言っても実態がフルタイムなら、社会保険の加入義務者
となる。つまり、パート勤務として雇用契約を交わす場合は、それを示す労働記録の管理と代理店による労
働実態の把握が求められるということになる。
この問題は、委託型募集人から雇用への移行が表面化したことで、大きくクローズアップされているが、
移行に限った話ではない。
「雇用」だと言っても、社会保険や雇用保険等の適切な手続きが行われていない
場合、問題は同じであり、早急に必要な対処を行う必要がある。なお、加入逃れを指摘された場合、過去2
年間分の保険料が追徴されることもあることに留意する必要がある。
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<参考①:
「厚生年金、加入逃れ阻止」
>
新聞報道(平成26年7月4日日経)によれば、政府は厚生年金に加入していない中小零細企業約80万社(※)
を平成27年度から特定し加入させる方針を固めたとのこと。国税庁が保有する企業情報(所得税の源泉徴収
データ)を使って対象企業を割出し、日本年金機構が加入を求めていく。年金制度への信頼性確保のため、
「加入逃れ」は許さない方針である。(※源泉徴収実施事業所250万ヵ所、厚生年金加入事業所170万ヵ所、未
加入80万ヵ所、未加入授業員200万人と推計されており、国レベルの大きな問題になっている)
<参考②:社会保険の概要> … ○○ は企業の従業員が加入
社会保険(広義)
社会保険(狭義)
医療保険
(業務外のケガ等)
労働保険
年金保険
(老齢、障害、死亡)
・ 健康保険
・ 厚生年金保険
・共済組合
・共済組合
・国民健保
・国民年金
・後期高齢者(75歳~)
・ 労災保険 (業務上のケガ、病気等)
・ 雇用保険 (失業)
…公務員はなし(身分保障あり)
・災害補償法(公務員等)
<参考③:社会保険の加入要件> … 個人事業主でも5人以上の事業所は加入義務有り
加入する従業員の要件
健康保険
所定労働時間、労働日数が他の正社員のおおむね3/4以上
2ヵ月を越える雇用が見込まれること
厚生年金
厚生年金は70歳まで加入できる(70歳以上でも例外的に高齢任意加入制度あり)
常時5人以上の従業員が働く個人事業所、および法人の事業所は強制適用
雇用保険
週20時間以上の勤務で強制加入かつ31日以上の継続勤務が見込まれること
(※労災保険よりは範囲が狭い)
労災保険
1人でも人を雇ったら強制加入
(1日でも、1時間でも、パートもアルバイトも問わず)
■年金事務所による調査の内容
政府によるマイナンバー導入に伴い、各法人に固有の番号(法人番号)が設定されたことによって、時間
がかかっていた未加入事業者の特定が一気に進み、年金事務所による健康保険・厚生年金保険加入実態調査
も全国で順次実施されている。(健康保険法第198条第1項・厚生年金保険法第100条第1項に基づく調査)
調査は、未加入事業者のみならず、既加入事業者に対しても適正加入の確認の観点から実施されており、
年金事務所への呼び出しが行われている。
(この場合、日時指定だが変更は可能。場所は管轄の年金事務所
会議室。事業主本人の出頭が原則だが代理者でも可。)
<持参を求められる資料は以下の通り>
① 労働者名簿・雇用契約書
② 賃金台帳または賃金支給明細書(用意できない場合は個人別所得税源泉徴収書)
③ 出勤簿またはタイムカード
④ 源泉所得税領収証書(所得税徴収高計算書控の直近分)
⑤ 社会保険関係の各種決定通知書の事業所控分(被保険者資格取得届、算定基礎届、月額変更届、賞与
支払届の決定通知書)
― 101 ―
⑥ 就業規則(労働協約)および給与規定
⑦ 事業所名・所在地ゴム印、社印、代表者印(持ち出し可能な場合)
⑧ 呼び出し通知書(受付で提示)
■労働基準監督署の動向
委託型募集人の適正化後の状況については、全国の労働基準監督署(労基署)も強い関心を寄せており、
各地で順次実態調査が行われている。調査項目は、就業規則、労働条件の明示、労働時間、残業時間、休日
勤務、休暇所得、最低賃金、労働保険加入状況等多岐にわたるが、代理店としては先ずは自主点検により実
態を把握し、労働関係法令に抵触するような事項があれば、速やかに改善を図ることが求められる。
(なお、京都下労働基準監督署では、事業者自身が実態調査を行う場合の自主点検表を用意しており、本
章末に掲示するので参照願う。)
■法人企業としての代理店のあり方
法人形態の代理店という事業体が、社会的責任を担う企業として認識されるかどうかをチェックする目は、
金融庁だけではなく、厚生労働省(年金事務所・労基署)等の他官庁やマスコミ、消費者団体等各方面に存
在する。従って、企業運営において法制度の抜け道探しは通用しないことを認識し、規模の大小に関わらず、
企業としての「あり姿」においてどこに出ても恥ずかしくない会社をつくる必要がある。社会保険未加入の
法人は、いわばブラック企業であり、ハローワークを通した求人もできない。社会的地位云々以前の問題で
あることを踏まえ、改善を要する事項があれば、社会保険労務士等の専門家と相談しながら正攻法で対応す
べきである。
また、この問題に限らず、福利厚生は、法律の定めだからという次元の対応ではなく、社員が安心して働
ける環境を構築することによる人材の確保や、社員満足の向上による生産性の向上、更にはお客様満足度の
向上の観点からも、経営者として必須かつ重要な責務であることを自覚し、主体的に対応を進めることが重
要である。
■日本代協の支援策
日本代協では、全国社会保険労務士会連合会と提携し、全国ネットで対応できる「総合労働相談所」によ
る対面相談(0570-064-794にTEL・対面相談は事前予約制・一部電話相談も可)やセミナー講師の派遣、
個別相談の受付等の支援策を用意し、各代協並びに代協会員に活用できるようにしている。脱法や潜脱を避
けるためにも専門家の助言を得ることが必要であり、今後も団体間の連携強化を図り、適正加入を促してい
く。併せて、各保険会社に対しても代理店認定要件への組入を引き続き要請し、適正加入の環境を整えてい
く方針である。
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8-2 業界関連法規の動向②
〈民法改正動向(債権法)
〉
■民法改正動向
「民法の一部を改正する法律案」(以下、改正法案)が平成27年3月31日に閣議決定され、同日、国会に提
出された。今回の改正は、いわゆる債権法に関わる法案であるが、成立すれば現在の民法財産編が制定・交
付された明治29年以来120年ぶりであり、経済環境や社会生活等の大きな変化に対応させるための大改定と
なるはずであった。しかしながら、安保関連法案などの審議が優先されため、次の国会(平成28年1月召集
の第190回国会)に継続審議案件として送られたが、そこでも具体的審議は開始されておらず、今後の見通
しは不透明な状況となっている。
法律の改正は国会で成立した後、一定の猶予期間(2年~3年)を経て施行される。この施行日以降の取
引について、改正後の民法が適用されるのが原則となるが、民法は、契約、取引など市民の日常生活に深く
かかわる基本的な法律であり、改正の影響は多方面に及ぶことが想定される。従って、代理店としても業務
上は勿論のこと、契約者へのアドバイスという観点から概要を把握し、改訂動向に留意しておく必要がある。
■改正法案の主な内容
<約款の位置づけの明確化>
現行民法には約款に関する明確な規定はないが、携帯電話や各種保険等の契約において、消費者サイドが
約款を読まずに契約し、企業側とトラブルになるケースがある。
こうした課題を解決するために、約款について「不特定多数の人を対象に画一的に行う取引の内容を示し
た文書」
(多数の相手方との契約の締結を予定して予め準備される契約条項の総体であって、それらの契約
の内容を画一的に定めることを目的として使用するもの)」と定義し、予め約款に基づく契約と示していれ
ば、消費者が約款の内容を理解していなくても有効とみなすことになっている。
一方で、約款の内容が「相手方の利益を一方的に害する場合」は合意しなかったものとみなすとされてお
り、消費者保護が図られることになっている。
<法定金利の引き下げ>
損害賠償の利率に適用される法定利率も変更となる。法定利率とは、契約で金利を定めない場合や支払い
遅延の場合に支払う遅延損害金の算定などに用いられる金利であるが、現在は民法で5%に固定されている。
今回の改正で、この金利を3%に引き下げ、その後3年ごとに1%単位で見直す変動制が導入されること
になっている。
これにより、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りとの大幅なかい離を改善し、市場環境に則し
た金利の適用が期待される。
一方で、損保業界としては、対人事故の際の保険金などに大きな影響(支払額の増加)が出てくることが
想定される。
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<消滅時効の統一>
現行民法では、一般的な債権の消滅時効(注:一定期間の経過により債権等の財産権が消滅する制度)は
「権利行使できる年から10年」と定められているが、職業別に様々な「短期消滅時効」というものが定めら
(注)
れている。
(注)飲食店の飲み食い代金 :1年間
小売業の商品代金や弁護士報酬:2年間
医療費や工事代金 :3年間
年金・地代・利息・賃借料など:5年間 など
しかしながら、相手の職業によって消滅時効が異なることを理解することは難しく、トラブルの元にもな
りかねないため、改正案では職業別の短期消滅時効は廃止され、従来の「10年」に加えて「5年」の時効が
追加されることになっている。
[債権の発生]⇒[債権者が権利行使できることを知った日から5年間の間に権利行使しなかった場合は
時効成立]⇒ または[権利を行使できる時から10年間行使しない時は時効成立]となる。
<保証人の保護の強化>
改正案では、第三者が保証人になる場合、保証契約締結前1ヵ月以内に公正証書を作成して保証人になる
意思を明らかにすることとされた。但し、主たる債務者と一定の関係があるもの(取締役、従業員でもある
配偶者等)は第三者とはせず、連帯保証人になることができるとされている。
また、民法の規定では、一部を除いて保証人が負担する限度額を定めておらず、保証人が想定外の弁済を
求められることもあり得るため、改正案では、個人保証の場合には、債務の内容に関わらず、事前に極度額
を定めることとされ、保証人の保護が図られることとなった。(注:これにより、包括根保証は不可となる。
保証額には必ず上限を定めることとなっている。)
<敷金の原則返還>
マンションの賃貸等の場合、家賃の数か月分の「敷金」が必要になることが多いが、退去時に返還されな
かったり、敷金以上の原状回復費用を請求される等、トラブルが多く発生している。
一方で、現行民法には敷金に関する規定がないため、改正案では、敷金を明確に定義し(注)、併せて退去
時の返還義務を定めることとなった。
(注)敷金とは「賃料債務その他の賃貸借に基づいて生じる賃借人と賃貸人に対する金銭債務を担保す
る目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」とされた。関西圏で適用されている「保証金」もこ
れに含まれることになる。
また、賃借人は「賃貸物を受け取った後に生じた損傷(通常の使用および収益によって生じた賃貸物の損
耗並びに賃借物の経年変化を除く)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷の原状回復義
務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰すことができない事由によるものであるときは、この限り
でない」と定められ、原状回復義務の内容が明確化されることとなった。
― 109 ―
8-3 業界関連法規の動向③
〈マイナンバー制度〉
■マイナンバー制度とは
マイナンバー制度は、「行政手続きにおける特別の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(以
下、
「番号法」
)により導入されたもので、住民票がある個人一人ひとりに12ケタ(末尾1ケタは検査用数
字)の固有の番号を割り当て、行政手続きの効率化や国民の利便性の向上、脱税防止等に利用される社会基
盤(インフラ)である。
(注:法人に対しては、検査用数字1ケタの後ろに12ケタの番号を付した全13ケタ
の会社法人番号が割り当てられた)
平成27年10月以降、各市町村から住民票を有する全ての人に対し、「通知カード」によりマイナンバーの
通知が開始され、平成28年1月からその利用とマイナンバーカードの交付が始まっている。
マイナンバーは極めて重要な個人情報であり、取り扱いを誤ると取り返しがつかないことになりかねない
ので、最大限の注意が必要である。
(注:番号法では、個人情報保護法よりも厳格な情報保護措置が求めら
れており、法令で定めた手続き以外の利用が禁止されている。不正利用の場合は、4年以下の懲役または
200万円の以下の罰金等、課される罰則も重くなっている。)
■マイナンバーの利用分野
マイナンバーは「特定個人情報」といい、社会保障・税・災害対策分野の中で、法律で定められた下記の
ような手続きにしか使用できないことになっている。
社会保障 ・年金や雇用保険の資格取得や確認、給付
・医療保険の給付請求、福祉分野の給付、生活保護 / ハローワークの事務 など
税
・税務当局に提出する申告書、届出書、調書などに記載する場合 / 税務当局の内部事務 など
災害対策 ・被災者生活再建支援金の支給 / 被災者台帳の作成時 など
■企業としての代理店の対応
企業は給与所得の源泉徴収票の作成や社会保険料の支払い等において、マイナンバーの取り扱いが必要で
あり、取り扱いには最大限留意する必要がある。
①従 業 員 対 応:従業員、その扶養親族にマイナンバーを明示してもらう必要がある。他人のなりすまし
を防止するために、本人確認が必要である。
②社内態勢整備:各企業はマイナンバーの漏えい防止のために、安全管理措置を講じる必要があり、社内
規定の策定や体制の整備が必要である。(次頁参照)
③委 託 先 管 理:マイナンバーを利用する事務の委託先に対しても、安全管理措置が必要になる。例えば、
税理士や社会保険労務士と契約を結んでいる場合、安全管理措置を適切に順守できる委
託先なのか選定した上で必要な契約を締結し、委託先の管理・監督を行っていく必要が
ある。
なお、
「法人番号」はマイナンバー(個人番号)とは異なり、広く公表され、官民問わず自由に利用する
ことができる。
― 110 ―
<参考>
経団連では、平成27年3月に「マイナンバー制度への対応準備のお願い」という文書を配信し、各企業に
対して主な準備事項を示している。(以下、出典:日本経済団体連合会HP)
1.対象業務の洗い出し
1. ⑴ マイナンバーの記載が必要な書類の確認
・給与所得の源泉徴収票、支払調書等の税務関係書類
・健康保険・厚生年金保険、雇用保険関係書類
2. ⑵ マイナンバー収集対象者の洗い出し
・従業員等(役員やパート、アルバイトを含む)とその扶養家族
・報酬(講師謝礼、出演料等)の支払先、不動産使用料の支払先、配当等の支払先 等
2.対処方針の検討
⑴ 組織体制の整備 ⑵ 社内規程の見直し ⑶ 担当部門・担当者の明確化等
⑷ 身元(実在)確認・番号確認方法に係る検討、明確化等
⑸ 物理的安全管理措置の検討(区域管理、漏えい防止等) ⑹ 収集スケジュールの策定
3.マイナンバー収集対象者への周知
⑴ 収集までのスケジュールの提示(収集開始時期等の確定)
⑵ 教育・研修 ⑶ 利用目的の確定・提示
4.関連システムの改修(自社システムを構築している場合)
⑴ 人事給与システム ⑵ 健康保険組合システム
5.委託先・再委託先の監督等
⑴ 委託先の選定
⑵ 必要かつ適切な監督を行うための契約の締結(取り扱い状況を把握する方法を含む)
■保険業界への影響と代理店としての対応
企業としての代理店に求められることは前記の通りであるが、保険業界としては、保険会社による法定帳
票(支払調書(※1))作成のためにマイナンバーの記載が必要である。
この場合のマイナンバーの取得事務は、保険会社が直接行うため、基本的には代理店は関与しなくていい
ことになっている。しかしながら、代理店も自身のマイナンバー(法人の場合は法人番号)を保険会社に提
供するとともに、保険会社によっては契約者等のマイナンバーの確認・収集のサポートを依頼してくる可能
性もあるので、代理店としてもその取り扱い方法について正確に理解し、所属保険会社の指示に従って対応
(※2)
(募集人は、お客さまの同意がある場合であっても、支払調書を作成する目的以外
を行う必要がある。
でお客さまのマイナンバーを収集・利用できないことを認識しておく必要がある。)
(※1:保険金支払いや代理店報酬に関する支払調書作成のために使用)
(※2:お客さまから収集したマイナンバーを含む個人情報を代理店が保管してはならない)
なお、兼業代理店の場合は、代理店業務以外でマイナンバーを取り扱う場面も想定されるので、プライバ
シーポリシーの改定等を行い、取り扱い手順を定めて適正利用を徹底する必要がある。
― 111 ―
9 代理店制度・募集制度関連の動向
本章では、代理店制度や募集ルール等、募集現場に関連する近年の動向をまとめている。
主なものは以下の通りである。(保険業法等関連事項は第7章に掲載)
Ⅰ 代理店登録関係
■乗合承認制度
⑴ 乗合の問題点
原則一社専属であることが保険業法(282条)で定められている生保募集人と異なり(※1)、損保代理店
は複数の保険会社の委託を受ける乗合代理店の存在が認められている(※2)。一方で、損保代理店のよう
な商法上の代理商には法律上「競業避止義務」があるため、新たな代理店委託契約を結ぼうとする場合
には、既委託保険会社の承認が必要となる。
(※1:生保の一社専属規制には、生損保相互乗り入れが解禁された際に、「複数使用人特例」と「ク
ロス特例」が例外的に認められた。これにより、要件さえ満たせば比較的容易に乗り合うこと
ができる実態がある。)
(※2:平成28年5月に施行された改正保険業法において、「二以上の所属保険会社等を有する保険募
集人」という文言で乗合代理店が定義された)
損害保険業界においては、現状は保険会社サイドに専属囲い込み政策の色が濃く、顧客ニーズに応え
るため、あるいは代理店経営上の必要性から乗合申請を行っても、拒否されたり、引き伸ばしされたり、
保険会社によっては乗合申請したこと自体を信頼関係欠如の表れとして、一方的に委託契約解除に動い
てくることもあり、現実にはなかなか乗合は実現しないのが実態である。
また、乗合申請時の取り扱いは明確なルールにはなっておらず、期限の定めもないため、トラブルと
なるケースも多く、ビジネスルールとしては問題を含んだ実態になっている。
こうした実態を踏まえて、日本代協としては、既委託保険会社との信頼関係の維持を前提とした上で、
消費者対応上あるいは代理店経営上乗合が必要な合理的理由があると判断される場合は、速やかに乗合
を認めるよう、金融審議会等の場を活用しながら要望を続けている。
⑵ 金融審議会保険WGにおける提言
平成21年3月、金融審議会「保険の基本問題に関するWG」の第50回会合に、本会荻野会長(当時)が
参考人として出席し、「乗合代理店の普及促進」を求めて以下の提言を行った。
<金融審議会における提言内容>
① 「消費者利便の向上のために、保険会社と代理店の関係を見直し、乗合代理店の一層の普及を図
るための方策を検討する必要がある」こと
② 「既存保険会社との信頼関係の維持を前提にした上で、合理的理由が認められる乗合については
速やかに実現できるような仕組みに改善する必要がある」こと
⑶ 代理店サイドの留意点
乗合は、保険会社の代理店政策に大きく影響される課題であるが、その要否については、改正保険業法
の趣旨、規程を踏まえ、代理店サイドでも慎重に判断する必要がある。特に、家計分野中心の小規模損保
― 112 ―
代理店の場合は、乗合は代理店にとってリスクでもあることを認識し、多様な商品の品ぞろえが本当に必
要なのか、慎重に検討する必要がある。検討のポイントは以下の通り。
○ 商品・価格が業界で統一されていた規制時代と異なり、現在は、各社の商品・価格・サービスは多様
であるため、複数の保険会社と取引を行い、契約者に対する説明責任を全うするためには、相応の要員、
能力、社内態勢等の整備が前提となる。特に、平成28年5月に施行された改正保険業法において、比較
推奨販売を行う乗合代理店に対しては、追加的体制整備義務が加重されたため、内部態勢整備が大きな
課題となる。比較推奨販売を的確・適正に行うためには、要員やコストをかけて仕組みを造った上で、
社員教育を徹底しなければならない。全社共通商品であった規制時代と同じ感覚で乗合を考えることは
できない時代になっているのである。自社の顧客層を見渡した上で、将来展望をどう描くのか、中長期
にどういう代理店を目指すのか、もし乗合を選択する場合には、必要な態勢を構築できるのか、といっ
た点を十分に検討のうえ、慎重に判断する必要がある。
○ 代理店の企業としての発展段階を考えた場合、現在の自社のステージにおいて、特定保険会社の経営
資源(人・ブランド・インフラ・支援策等)をフルに活用した方がいいのか、コストをかけて自らのブ
ランドを構築した方がいいのか、経営者として冷静に判断する必要がある。(代理店の発展段階に応じ
た経営のやり方があるはず)
○ 信頼関係崩壊を理由にした乗合申請は、合理的な理由とは判断されない。その場合は乗合ではなく、
委託保険会社を変更する必要がある。(但し、次の委託先の確保や分割代手喪失の問題が発生するため、
計画的な取り組みが必要になる。
)また、保険会社では、こうした代理店を自社に受け入れるのであれ
ば、代手体系上の手当を行うことが望まれる。
⑷ 日本代協が提案している乗合申請時の取り扱いルール
日本代協としては、「健全な乗合代理店を育成することは消費者対応上有益である」との考えのもとで、
既委託保険会社との信頼関係を破綻させず、代理店の成長に資する経営戦略の一つとするために、以下の
業界ルールの設定を求めている。
<日本代協の提言:乗合申請時の取り扱いルール>
1.代理店は、乗合申請にあたり、委託契約の基本である相互信頼、相互理解の精神を堅持した上で、
次の項目につき代申会社に伝え、協議を行う。
⑴ 乗合申請を行うに至った経緯、乗合を行おうとする理由を明確に伝える。(顧客ニーズへの対応、
代理店経営戦略上の必要性 等)
⑵ 既委託保険会社への忠実義務には違反しないことを説明する。(現契約の維持・拡大に努める等)
2.保険会社は、代理店の説明に真摯に耳を傾け、申請内容が顧客対応上、あるいは、代理店の健全な
発展のために必要であると判断された場合には、速やかに乗合を承認する。(顧客満足を高めながら
代理店経営の発展を支援する)
⑸ 乗合手続きルールの改定
平成23年度に損保協会の「損害保険代理店登録事務取扱マニュアル」の改定があり、乗合申請時の取り
扱いルールについて、次のような新しいルールが定められた。代理店サイドから見れば100%の水準では
ないが、本会が最低限の対応として求めていた「文書回答」・「理由の開示」・「期限の明示」が実現したこ
とで、ルールのあり方としては一歩前進したものと考える。
― 113 ―
<従来のルール>
「所属保険会社は、新たに乗り合う保険会社について、代理店から乗合承認の申し出があった場合、
すみやかに諾否の回答を行う。
」
<新しいルール>
「所属保険会社は代理店から乗合承認の申し出があった場合…
① 乗合承認に関する請求書を受理しなければならない。(⇒ 門前払いはできない)
② 乗合の諾否は文書にて受理日から原則1か月以内に回答する
(⇒ 期限が定められ、かつ文書回答となった。少なくともうやむやにされることはない。)
③ 乗合を拒否する場合は乗合拒否の理由を文書で回答するか、代理店と十分話し合う。」
(⇒ 保険会社はより誠実な対応が求められる)
Ⅱ 代理店手数料関係
■代理店手数料体系の改定・概要
⑴ 損害保険代理店制度は、昭和27年7月の「火災保険代理店格付制度」を皮切りに、長い歴史の中で数度
の改定を経て形成された。昭和55年10月には大蔵省銀行局通達第1459号にて初めて「ノンマリン代理店制
度」が定められ、個人資格と代理店種別を柱とした業界共通の制度として運営されてきた。(自動車、火
災、傷害等の家計分野の商品・保険料・代手体系は全社共通という枠組み)
代手体系については、平成13年3月までは代理店種別に応じた業界統一の水準であり、同一種別の代理
店であれば、どの保険会社であっても代手率は同一であった。その後、平成13年3月末にノンマリン代理
店制度が廃止され、各社別の代理店制度・代手体系に移行して現在に至っている。
⑵ 自由化以降の制度の変遷
平成8年以降の損保の自由化により、算定会制度の抜本的改定(純率算定会への移行)、生損保相互参
入、保険仲立人制度(いわゆる保険ブローカー)の導入、保険契約者保護機構(PPC)の創設などが行わ
れ、業界を取り巻く競争環境は大きく変化した。
この間の主な経緯は以下の通り。
・平成8年4月:新保険業法の施行
・平成8年12月:日米保険協議の決着
・平成9年9月:リスク細分型自動車保険の外資系損保への先行認可
・平成10年7月:損害保険料率・商品の自由化
・平成13年3月:損害保険代理店制度(代理店種別制度・個人資格制度)の自由化
代理店種別にリンクした代手制度の廃止(各社別の手数料体系への移行)
・平成13年4月:各社別代理店制度・代手体系の導入(平成15年3月までは金融庁の認可が必要)
・平成15年4月:代理店手数料の完全自由化(金融庁の認可が不要となり、完全自由化)
⑶ 自由化後の対応
平成15年4月から代手体系が完全自由化・各社別化になったことを受け、日本代協では、各社から提供
された資料に基づき、代手ポイントの判定項目やウエイト等の整理を行い、全代協会員に対して情報提供
を行っている。本資料は代手の高低を比較するものではなく、評価項目や評価ランクを比較することに
よって、全体的な方向性を把握するとともに、各社の戦略の相違を確認するためのものである。(注:も
― 114 ―
とより商品の保険料自体が各社で異なるため、ポイントだけで手数料の高低を比較することはできない)
⑷ 平成28年度判定・平成29年度適用代手の概要
平成28年度を評価期間として、平成29年度に適用される各社の代理店手数料(以下、代手)体系の概要
は以下の通り。(注:一覧表は、平成28年4月19日付け第16-011号(I-3)にて各代協宛に配信済みであ
り、参照願う。)
① 資料提出に協力頂いた保険会社
・損保ジャパン日本興亜、東京海上日動、三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保、日新火災、富士
火災、共栄火災の7社(代理店に開示された専業チャネル向け代手体系の資料)
② 一覧表の記載内容(昨年度からの主な相違点)
・昨年度の損保5社に富士火災、共栄火災を加えた7社の概要を整理した。また、各社の改定内容を中
心とした時系列での記載を改め、各社が取り入れている評価項目を中心に再整理し、各社の重点取組
み、評価項目の違いを明確にした。
・評価項目は、
「品質」
、
「成長」
、
「収益」、「ロイヤリティ」の大分類・中分類と「損害保険大学課程」
等の個別項目で整理し、各社の代手判定用のランク区分、プロ代理店の認定制度を参考指標として掲
載した。
③ 各社代手体系の傾向と概要
・各社とも概ね「成長」と「収益」を重視する体系を維持しつつ、改正保険業法の施行を踏まえ、「品
質」項目を細分化し、取り組み強化を図っている。日新火災は、より「品質」を重視するコンセプト
を打ち出している。
・その他、
「専属ポイント」の新設や自動車種目に別体系を取り入れるなど、各社の特色や方針を代手
にも反映させている。各社の狙いは以下の通り。
損保ジャパン日本興亜
顧客基盤の拡大を後押しし、成長指標に軸足を置いた体系
東京海上日動
代手体系の変更なし(代理店経営の安定化のため、改定は2年毎に実施)
三井住友海上
内部管理態勢・販売力、損害率改善の取組みを軸に評価する体系
あいおいニッセイ同和
日新火災
富士火災
共栄火災
安定的かつ「お客さまの確保・拡大に向けた募集態勢の構築」を目指し
た体系
お客様接点の販売時と事故発生時に焦点を当てた「日新モデル」を実践
した評価体系
新会社(AIG損保)への移行を見据え、評価項目をシンプルにした体系
代理店の「安定経営」を基本としつつ、中期経営計画、年度営業方針を
意識した体系
Ⅲ 経費関係
■銀行口座振替手数料・クレジットカード加盟店手数料の負担に対する日本代協の考え方
口座振替手数料・クレカ加盟店手数料については、AIU社を除く各保険会社において委託契約書上代理店
― 115 ―
負担となっているが、キャッシュレスの進展に伴い、多くの契約の保険料支払いが口座振替に移行する中で、
振替手数料の負担額は代理店経営上無視できないものとなっている。(注:更に、各金融機関は手数料収益
の最大化のため、振替手数料についても増額を求める動きが顕著であり、代理店の負担は年々大きくなって
いる。
)
一方で、委託契約書では、代理店から保険会社へ保険料を精算する際の振込手数料については保険会社負
担と規定されている。
これを踏まえ、本会としては、直接保険会社が収受する口座振替やクレカ払いは、
「保険料の領収と保険
会社への精算が同時に行われている」と見做し、その振替費用等は、保険会社と代理店が応分の負担(例え
ば50:50で折半)を行うことが望ましいと考える。
日本代協としては、上記の考え方に基づき、これまでも保険会社に対して見直しを求めてきたが、現時点
では実現していない。引き続き粘り強く要請を行っていく。(ITの進展に伴う決済方法の多様化が一つの転
機になるのではないかと思われるが、引き続き動向に留意しながら、対応を行う。)
なお、代理店に費用負担を求めている諸手数料等を改定する場合には、その背景と理由について、事前に、
丁寧に説明を行うよう各保険会社には要請を行っている。
なお、口座振替手数料の負担は代理店であるにも関わらず、その水準決定に代理店自身は関与できない。
また、同じ銀行であっても、保険会社によってその額は異なっている。銀行との力関係の結果、安易な妥協
をすることのないよう保険会社には強く要請していく。(現在、口座振替手数料はこれまでの@50円の水準
から、@75円、@100円に上がりつつある。最も低額なのはゆうちょ銀行である。)
Ⅳ 募集制度関連他
■特別利益の提供に関する業界ガイドラインの策定(平成25年7月~)
損保協会では、共通化・標準化の枠組みの中で、特別利益の提供に関しても今日的見地からの検討を進め
ていた。その結果、独禁法上の問題から各保険会社を拘束することは難しいと判断し、ノベルティ等の提供
に際しては、損保協会としては留意点の解説は行うものの、あくまでも各保険会社の責任において判断・運
営を行う方針としている。
なお、ノベルティとはいえ、現金やキャッシュバック機能が付加された商品券、保険料決済が可能な商品
券等は、保険料の割引・割戻に該当するため、金額に関わらず不可であるが、それに該当しないものであれ
ば、
「経済的価値の社会相当性」の範囲内で可とされている。その解釈幅はデジタルに示せるものではない
が、例えば隣接の銀行業界では、公正競争規約においてノベルティ等の上限を「1, 500円」と規定しており、
景表法の総付景品規制の上限額は、取引価格(=保険料)の20%と規定している。こうした状況を踏まえ、
損保業界でも「基本的には1, 000円以内で上限1, 500円までの物品」であれば、社会相当性が認められるので
はないかというのが一般的な認識である。
日本代協としては、事案毎に、換金性の程度や使途の範囲、ポイントに応じたキャッシュバックの有無等
を把握した上で、問題事案に対しては個別に改善を求めるとともに、損保協会に対して上記留意点の見直し
を求めていく。
■生保業界との不祥事件情報の共有制度スタート(平成25年7月~)
平成25年7月1日から、損保協会の共同システムである「代理店廃止等情報制度」を利用し、保険料等の
詐取、流用・費消、保険金不正請求等を行った募集人の情報を生保協会と共有する仕組みがスタートした。
(事故発覚日等から3年間掲載)
― 116 ―
これにより、損害保険代理店において、生保業界で不祥事件を起こした者を誤って財務局に登録申請して
しまう事態を防止することができるため、不適格者を排除する仕組みの一つとなる。(保険業法第279条に準
拠)
損保各社は「代理店廃止等情報制度」
、生保各社は「廃業等募集人登録情報」のデータベースにアクセス
し、募集人になろうとする者が不祥事件を起こしたものでないかを確認し、不適格者を排除していくことに
なっている。
なお、新制度において情報登録する募集人に対しては、原則として、生保業界との情報共有について同意
を得ることになっている。
■代理店管理体制の強化(平成25年度以降)
近時、代理店による大型不祥事件が続発しており、金融庁としては大きな問題意識を持って業界の指導に
当たっている。これを受けて、各保険会社ともに、キャッシュレスの徹底、証券非直送の厳格運用、領収証
の不正使用防止対策の実施等の他、代理店監査の強化(無予告・抜き打ち監査の実施)や契約者を介した早
期発見策の導入等の取り組みを順次強化している。
同業者が不正行為を働き、契約者等に迷惑をかけるようなことがあれば、業界全体の社会的評価は大きく
失墜することとなるので(※)、不適格募集人・代理店の排除は日本代協としても望むところである。一方で、
誠実、的確に業務を行っている代理店・募集人が、過度な負担を負うことがないよう、状況を十分注視する。
(※業界全体の信頼がないところに個社の信頼はなく、個社の信頼がないところに業界全体の信頼はない)
■高齢者に対する保険募集のガイドラインの策定(平成26年6月~)
高齢者に対する保険募集に関しては、平成26年2月28日に金融庁の監督指針が改定され、顧客保護を図る
ための留意点が規定された。また、対応を誤ると業界全体への批判を招きかねないことから、損保協会とし
ては各社が自主的に取り組む上での考え方を整理したガイドラインの策定を行っている。(平成26年6月30
日公表)
本ガイドラインの主なポイントは、以下の通りである。
高齢者の定義:70歳以上(但し、年齢区分の細分化なども可能)
年令・商品毎のきめ細やかな取り組み:
① 高齢者の理解力・判断力に応じた取り組みの整理:
・本人の正確な意向把握
・分かりやすい言葉での繰り返し丁寧な説明
・親族等の同席、代理人規定の活用
② 高齢者や商品の特性に応じたきめ細やかな取り組みの整理:
・商品特性の切り口
・よりきめ細やかな対応例の整理
➡親族等の同席、複数募集人による募集、複数回の募集機会の設定、意向確認…
③ 保険募集内容の記録、保存:適切な期間「記録・保存」の必要性
④ ‌契約締結後のフォローアップ:郵送、証券送付時の確認依頼、電話・訪問等のフォローアップ策を
整理
⑤ 取り組みの適正化等の検証:規定の整備とPDCAの実践の必要性
― 117 ―
10 共通化・標準化の推進
■基本的な考え方
東日本大震災以降、日本国内では、適正な競争を前提としつつも業界として共通化・標準化を進めた方が
消費者利便につながることであれば、協調・協力して取り組んでいく動きが出ている。(ex. ペットボトルの
キャップは各社趣向を凝らした製品を作っていたが、現在は、同じ規格の製品が使われている。)特に、国
際競争に晒され、新興国の低価格商品との競争を強いられる製造業においては、徹底的なコスト削減を求め
られ、物流や商品供給等の場面で様々な共同取り組みが行われている。
損保業界においても、一連の震災対応において、損保協会が主体的に業界としての共同取り組みをけん引
したことで保険金の早期支払いが実現し、業界横断的な取り組みの重要性が再認識されている状況にある。
また、足元を見れば、保険業界は、少子化・超高齢社会の到来という社会環境の大きな変化を迎え、市場
の縮小に備えざるをえない状況にある。併せて、自然災害の増加や自動車保険の損害率上昇等に苦しんでお
り、損害率改善とともに社費の削減が喫緊の課題となっている。
自由化により各社の独自性が発揮されることは消費者にとって有益なことであり、そもそもの自由化の狙
いでもあるが、保険会社間の競争が加速する中で、本来独禁法や職業倫理上の問題もないような分野まで必
要以上に競争を拡大させた結果、業界全体で高コスト体質を招き、複雑化させたことでかえって契約者の理
解を妨げる状況を生み出してしまった面があることは否定できない。
それは結果として、保険料引き上げをまねいたり、契約者に無用なロードを強いたりすることにつながる。
「競争のための競争」に奔走して「誰のための、何のための競争なのか」が分からなくなっている実態はな
いだろうか。また、代理店、特に乗合代理店においては、「各社が何でも競争する、あるいは、細部に拘る」
ことで事務処理や各種手続き、内部管理の細かい相違が複雑化や煩雑化を招き、生産性を阻害する要因にも
なっている。
こうした状況を踏まえると、共通化・標準化を図ることで契約者にメリットが生じるものについては、消
費者無視のこだわりや根拠なき前例踏襲主義を捨てて、思い切って変えることが必要な時期に来ているもの
と考える。
日本代協としては、こうした認識の下で企画環境委員会が中心となり、「各社間の相違により、現場で
困っていること」を洗い出して提言としてまとめ、損保協会の検討に活かしてもらう方針である。
■検討の視点
共通化・標準化の検討に際して必要な視点は、以下の3点である。
① 契約者にとっての分かりやすさ、利便性の向上(トラブル、不信の抑制)
② 代理店・募集人の業務効率化(生産性向上)
③ 保険会社のコスト削減(保険料引き上げ抑制)
また、課題を詰めていくと、システムやコストの壁に阻まれ、「総論賛成、各論反対」になることが想定
されるが、業界全体の向かうべき大きな方向感を共有した上で、速やかに実行できるものから長期的視点で
検討するものまで、時間軸を先に伸ばして検討を進めていく必要があると考えられる。
本会としては、共通認識を有する損保労連と連携し、業界サイドの熱が冷めないよう継続的に提言を続け
ていく方針である。
― 118 ―
■損保協会の取り組み
⑴ 第6次中期計画(平成24年度~26年度)
損保協会においては、平成24年度から3年間の第6次中期基本計画の重点課題として「共通化・標準化
の推進による消費者利便の向上と業務効率化」を掲げ、「共通化・標準化推進PT」を設置して対象となる
事業の洗い出しと選定のための検討を行い、優先度をつけて取り組みを進めた。
本検討に際しては、損保各社、損保協会各委員会、損保労連とともに日本代協からも提言・要望を行い、
計約300項目の中から130項目を事業候補として検討を進めた。検討結果については、平成27年3月末で一
旦整理した上で、継続課題については各担当部会で論議を続けることになっている。
⑵ 「よりわかりやすい募集文書・説明のあり方に関するタスクフォース(TF)」の設置
損保協会では、平成24年6月から開催された金融審議会・保険WGの論議の方向性を踏まえ、併せて、
「お客様の声・有識者会議」の諮問事項に応えるために、「共通化・標準化」の重点施策として「重要事項
説明書等について消費者目線での分かりやすさの向上に向けて検討を行う」ことを掲げ、平成24年9月に
「よりわかりやすい募集文書・説明のあり方に関するTF」を設置し、重要事項説明書の抜本的改定を行っ
た。
本TFには、日本代協から小平企画環境委員長(現副会長)が委員として参画し、募集現場の実態を踏
まえた具体的な提言を行うことで、代理店が使用できる重要事項説明書の業界プロトタイプ並びにガイド
ライン策定に貢献した。また、この結果は、平成25年1月30日に開催された第9回金融審保険WGに提出
され、業界の自主的取り組みに期待する流れをつくることができた。
(本TFは平成24年9月~12月にかけて5回開催。その後の損保協会内における検討を踏まえ、平成25年
9月の第6回TFにて最終総括を行い、その役目を終えた。)
<損保協会タスクフォースメンバー(4名)
>・・・◦は金融審保険WG委員(当時)
◦丹野美恵子氏(TFリーダー) 公益社団法人 全国消費生活相談員協会 理事長(当時)
◦錦野裕宗 氏 中央総合法律事務所弁護士 (元金融庁監督局保険課課長補佐)
◦小平髙義 氏 日本代協理事・企画環境委員長(当時)
◦永井順國 氏 政策研究院大学客員教授 (UCDA理事)
本TFで論議を積み重ね、平成25年9月に火災保険等の重要事項説明書の改善案をまとめた。これをもと
に損保協会において保険会社向けのガイドラインを策定し、各社で改善が行われることとなった。
<参考:業界プロトタイプの改善度(三井住友海上社自動車保険重要事項説明書の新旧比較)>
 文字数:55, 000文字 ➡ 13, 000文字(約76%削減)  ページ数:16ページ ➡ 8ページ(約50%削減)
 最少フォント:8P ➡ 9P  DRC(注):21% ➡ 16%(注:ドットレシオカウンター・印字率)
■日本代協の取り組み:損保協会への提言・要望書の提出(平成24年9月)
日本代協では、企画環境委員会が中心となって共通化・標準化が必要と思われる具体的な課題を洗い出し、
検討結果を84項目にまとめ、同年9月26日付で損保協会に提出した。
本会の提言項目に対する損保協会の検討状況(平成28年7月20日時点)は次頁以降の通りである。
― 119 ―
共通化・標準化に向けた提言に対する検討状況
(平成28年7月20日時点)
No
分 類
提 言 項 目
※検討状況欄 ○・・・検討後に実現・実現済 ×・・・検討後見送り
△・・・検討中(継続・別課題として検討を含む)
対象外、「-」・・・検討せず・検討不可
共通化・標準化策
検討
状況
損保協会の検討内容
△
◦口座依頼書は参画保険会社において共用端末
の開発を行うべく、現在、検討中である。
×
◦各種帳票については各社の商品内容・システ
ムに拠る部分が大きく、これらは競争領域で
あることから、各社にて「わかりやすさ向
上」を指向することとし共通化は見送る。
◦告知書については各社のアンダーライティン
グ方針に拠る部分が大きいことから同様に見
送りとする。
3
競争する必要がないもの、各社趣向
その他各種帳票の
を凝らす必要がないものは思い切っ
共通化(具体的な
て共通化・標準化を目指し、取り組
帳票名は以下の通
みを進める。
り)
(将来的には共同作成も検討する。)
-
以下の通り。
4
○保険料領収証
×
◦多くの会社においてコスト負担増となるため
採用困難であり見送る。
5
○クレカ売上票
×
6
○口座振替依頼書
△
7
○質権設定承認
請求書
○
◦主に火災保険全般を対象に使用する質権設定
承認請求書について、標準的な記載項目例を
整理した。
8
○中断証明書
×
◦コスト負担が高い一方で効果が限定的である
ため見送る。
9
○自賠責関連書類
○
◦各種確認書(権利譲渡に係わる確認書、罹災
解約時の確認書)について、標準帳票および
事務ルールを整理した。
10
○保険料算出基礎
数字申告書
○
◦保険料算出基礎数字の確認にあたり、各社共
通で必要になると考えられる事項を整理した
資料として、保険料算出基礎数字申告書の標
準記載項目を整理した。
個人分野申込書の
記載ルール・帳票 米国・ACORDフォームのあり方を参
の共通化・標準化 考にして業界全体で標準化を図り、
統一フォームを使用する。(各社特殊
な商品は除く)
併せてUCDAフォントを使用するこ
異動帳票の
とにより、字体も共通化する。
共通化・標準化
1
2
帳票
全社共通フォームとする。
◦上記(№1)に同じ
11
○事故報告書
×
◦各 社、商品内容やCS施策などが異なるため
事故受付フォームに差異が生じることはやむ
を得ず、採用困難なため見送る。
12
○保険会社への
送付状
×
◦送付状の使用を必須としていない会社もあり
実施は見送る。
13
○保険金請求書類
×
◦各社の商品内容・システム等に拠る部分が大
きいことから、各社にて「わかりやすさ向
上」を指向することとし共通化は見送る。
14
○示談書・確認書
△
◦損 保協会第6次中期基本計画における損害調
査関連の重点課題のため、別途検討を進める。
15
○保険金請求に係
わる個人情報保
護の同意書
○
◦既に各社ほぼ同内容である。
16
○代理店勘定
精算書
×
◦システム開発コストが膨大であり実現困難な
ため見送る。
17
内容の簡素化・重複排除とともにデ
重要事項説明書・ ザイン、配置等共通化できるものは
意向確認書類の記 統一し、比較しやすくする。少なく
載ルール、帳票の とも全社重説はパンフレットと、意
共通化
向確認書類は申込書と一体化し、分
かりやすい帳票にする。
○
◦重要事項説明書等の簡素化について、業界ガ
イドラインへの反映方法や火災保険等の重要
事項説明書の改善案の検討を行い、「よりわ
かりやすい募集文書・説明のあり方に関する
TF」の最終報告書をふまえ、「契約概要・注
意喚起情報(重要事項)に関するガイドライ
ン」および「募集文書等の表示に係るガイド
ライン」を改定した。(2013年9月)
18
募集ツールのモデ
ル化(高齢者に分
かりやすい帳票の
ガイドライン策
定)
○
◦上記(№1)に同じ
極力文書を減らし、アニメーション
等を盛り込み、契約者の理解を得や
すいツールのモデルを業界全体で作
成し、各社で活用する。
― 120 ―
検討
状況
損保協会の検討内容
コンビニ払込用紙 コンビニ払いは「末日期限」で統一し、
の使用期限の統一 払込用紙のフォームも共通化する。
×
◦約款に関連する事項であり、また相当のシス
テム開発が必要なため見送る。
20
第三者機関による評価基準を参考に
保険証券のデザイ
保険証券のデザイン、配列等の共通
ンの共通化
化を図る。
×
◦各社の商品内容・システムに拠る部分が大き
く、これらは競争領域であることから、各社
にて「わかりやすさ向上」を指向することと
し共通化は見送る。
21
自動車検査登録事務所等でも行える
自賠責保険の異
ようにして消費者(手続き代行者)
動・解約手続き窓
の利便性を確保する。併せてネット
口の拡充
処理を検討する。
△
◦システム構築が必要な案件であるため、協会・
業界全体のシステム改定の動向を踏まえた上
で、中長期的課題として引き続き検討する。
22
相続等の手続きに
全社ベースでルールを共通化し、必
おける必要書類取
要書類も削減を図る。
付ルールの共通化
○
◦相続や破産等の事由により契約が終了して返
戻金をお支払いする場合における取付書類の
種類や確認範囲等に関し、各社共通で必要に
なると考えられるものについて、「必要書類
一式(標準例)」を整理した。
23
契約時、確定精算
時、保険金支払時
全社ベースでルールを共通化し、必
に取り付ける必要
要書類も削減を図る。
書類ルールの共通
化
○
◦フ リート契約の所有・使用確認(構内専用
車、構内専用車以外)、車の譲渡事実の確
認、準公有車割引の確認について、確認資料
およびルールを整理した。
◦保険金請求書については、仮に請求書が共通
化・標準化された場合でも、複数保険会社に
提出すべき場合は保険会社ごとに請求書の記
入が必要であるため、記入枚数は軽減され
ず、お客様利便の向上に資するところは少な
いと考えれられる。一方、現在でも、各社で
は自社の請求書について、書きやすさや事務
効率化の観点からレイアウト等を工夫してお
り、お客様の負担軽減に努めているので、こ
の取り組みを継続することとする。
24
解約処理の計算方 解約方式を契約者に納得感がある日
式の日割り(また 割(契約方式によっては月割)に統
は月割)への統一 一する。
対象外
25
業界ベースでの保
険料引き落とし口
座の会社登録制度
の構築
No
分 類
19
帳票
事務処理・
ルール
提 言 項 目
共通化・標準化策
契約単位ではなく、会社登録方式と
し、登録済みの契約者は口座振替依
頼書の提出を不要とする。(実施して
いる保険会社もある)
×
◦独禁法上の問題
◦コスト・ロードが膨大であり実現困難なため
見送りとする。
26
業界ベースでの地
全社で5年自継キャッシュレスの実
震保険5年自継の
現を図り、地震保険の安定的加入を
キャッシュレス支
推進する。
払いの実現
対象外
◦個社判断の領域
27
一般的な商品購入の場合と同様に、
業界ベースでクレジットカード払推
クレジットカード 進のための環境を整備する。支払回
払の業界ベースで 数は契約者が選択できるようにする
の推進のための環 とともに、業界ベースでクレジット
境整備
カード協会等と交渉し加盟店手数料
引き下げを実現する。携帯クレカも
推進する。
対象外
◦独禁法上の問題
28
契約者の目線で、対象種目、手続き
電話募集ルールの
の範囲、対象者の範囲、事務処理を
共通化
見直し、全社で統一を図る。
○
◦募集コンプライアンスガイドで整理済み。
29
同居以外の親族の
同居以外の親族を代理人に指定でき
代理人選任ルール
るよう業界ベースでルールを改め
の業界ベースでの
る。併せて記載ルールも共通化する。
見直し・統一化
○
◦
「代理人による署名・押印方法」について
は、担当WGにて共通化の方向性を打ち出
し、共通化を実現した。(募集コンプライア
ンスガイドの改定に反映済み)
30
デイリー精算の全
種目等による取扱上の違いの差をな
種目対象化(主に
くし、シンプルで間違えにくい事務
専業代理店を対
処理プロセスを確立する。
象)
対象外
31
積立保険の契約者
貸付利用時におけ 契約者貸付手続きの必要書類を統一
る本人確認手続き し、かつ最小限に絞り込む。
の簡素化、共通化
○
― 121 ―
◦個社判断の領域
◦担 当WGでは、「口頭委任による代理人手続
き」ならびに「法定代理人による手続き」の
共通化を検討・策定した。
No
分 類
提 言 項 目
共通化・標準化策
検討
状況
損保協会の検討内容
32
火災保険証券コピーを添付すれば、
地震保険中途付帯 既存の火災保険加入会社、代理店以
時の別口契約方式 外でも地震保険が取り扱えるように
の導入
改定し、特に直扱契約の付帯率アッ
プを図る。
対象外
33
コンビニ払込票使用期限を月末まで
コンビニ払込票使 に統一し、月末までに入金できなけ
用期限の延長と無 れば未払い期間中に発生した事故に
責発生日の統一
ついては無責として分かりやすい
ルールに改定する。
×
◦約款に関連する事項であり、また相当のシス
テム開発が必要なため見送りとする。
対象外
◦約款マターの競争領域であり、検討除外とする。
34
事務処理・
ルール
保険料払込の
共通化
キャッシュレス化を進めるととも
に、「始期翌月払」に一本化する。
◦地震保険制度のテーマ
35
代理店オンライン
乗合代理店用のオンラインシステム
システムの一部共
の基盤を各社共同で構築する。
有化
×
◦システム開発コストが膨大であり見送る。
36
(計上前)新規・
会社報告の様式や通知手段(FAX・
異動のリスクア
メールなど)を統一する。
タッチの共通化
×
◦所定の様式を用意していない会社もあり見送る。
37
早期更改を行った後に更改前契約に
現契約の異動に伴
異動が発生した場合、早期更改済契
う更改後契約への
約に対して異動が発生したことを注
注意喚起の標準化
意喚起する仕組みを標準化する。
×
◦個社でのシステムにより対応方法が異なるた
め見送る。
38
現行の自賠責保険制度の在り方を根
本から見直す。法律上の付保義務に
自賠責保険制度の 移行させて対人リスクを一本化し、
見直し・付保義務 制度全体の仕組みをシンプルにする。 対象外
への移行
付保義務の充足状況は、車検とは切
り離し、自動車税納付時に申告させ
る等の方法に移行させる。
自賠責保険
制度
約款解釈の共通化を図る。
(例:「火災」の定義)
◦自賠責保険制度のテーマ
39
約款解釈の共通化
40
個人分野商品の
約款の共通化
41
用語の共通化
42
等級制度
契約者が理解できるように等級制度
を一本に戻し、他の共済なども含め
自動車保険の等級 て共通化する。
制度改定の再改定 (少なくとも今回の改定内容を業界全
体で周知に努め、契約者の理解を促
進する。)
対象外
組織の呼称
「事故受付窓口」「苦情相談窓口」「契
約変更受付窓口」等、各社のコール
お客様窓口の呼称
センター、カスタマーセンターの呼
の統一
称を機能別に統一化し、分かりやす
さを追求する。
○
業界ベースで判断基準の統一化を図
り、適用の齟齬をなくすとともに一
団体類別の統一化 物 二 価 を 排 除 す る。 特 に 集 団 扱 は
「日本国民総団体化」を招きかねず、
根拠も希薄であり、廃止する。
対象外
◦独禁法上の問題
根拠が希薄であり、本割引は廃止する。
退職者団体割引の 少なくとも現行規定を改め、退職者
適用廃止
の定義を業界ベースで厳格に定めて
公平性を確保する。
対象外
◦独禁法上の問題
約款・商品・
用語
43
44
割引・割増
規定
45
対象外
◦独禁法上の問題
出来る限り共通化を図り、消費者に
とっての分かりやすさを追求する。
対象外
◦独禁法上の問題
外部の目を入れて、さらなる平易化
に努めると共に独自商品以外は用語
の統一化を図る。併せて、約款等の
フォントやポイント、文字の行間も
契約者の目線で損保協会としてのガ
イドラインを策定し、見やすさ、読
みやすさを追求する。
○
― 122 ―
◦2008年6月に「保険約款および募集文書等
の用語に関するガイドライン」を策定済み。
◦参考純率制度のテーマ
◦機能別に整理されており、概ね共通化されて
いる。
No
分 類
提 言 項 目
共通化・標準化策
検討
状況
損保協会の検討内容
根拠が希薄であり、割引は廃止する。
どうしても廃止が無理な場合は、少
なくとも該当する契約者に対して
債務者団体割引の は、取扱代理店がどこであっても、
対象外
適用廃止
同一保険会社なら適用できるように
改定する。もしくは、同一保険会社
であれば同水準の保険料が提示でき
るよう料率上の手当を行う。
◦独禁法上の問題
47
中断特則ルールの 業界ベースで中断特則ルールを統一
統一
する。
×
◦各社の引受方針(販売戦略)に係る事項であ
り標準化になじまないため、見送りとする。
48
チャネル間で対応に齟齬が生じない
よ う ル ー ル を 統 一 す る。 特 に、
全チャネルの規制
ディーラーにおける仮領収証の発行
を統一する
は、特別利益提供の隠れ蓑になる懸
念があり、廃止する。
対象外
46
割引・割増
規定
業務規制
重要事項説明書等の簡素化について、業界ガイ
ドラインへの反映方法や火災保険等の重要事項
説明書の改善案の検討を行い、「よりわかりや
すい募集文書・説明のあり方に関するTF」の
最終報告書をふまえ、「契約概要・注意喚起情
報(重要事項)に関するガイドライン」および
「募集文書等の表示に係るガイドライン」を改
定した。(2013年9月)
49
募集文書作成
ルールの共通化
50
乗合承認のルールを業界ベースで定
め、合理的な理由のある乗合の円滑
な実現を図る。(損保協会が定めた期
限のルールに追加する)
具体的案は以下の通り。
1. 乗合申請に当たっては、代理店は
委託契約の基本である相互信頼、
相互理解の精神を堅持し、次の項
目について事前に代申会社と協議
する。
乗合承認時の基準
①乗 合申請を行うに至った経緯、
を業界ベースで定
乗合を行おうとする理由、当該
める
保険会社選定の理由(顧客ニー
ズへの対応、代理店経営戦略上
の必要性等)
②忠 実義務を遵守し、現契約の維
持・拡大に努めること
③乗 合に対応できる態勢(人員・
能力)を整備していること
2. 保険会社は、代理店の乗合申請理
由に真摯に耳を傾け、申請内容が
妥当であると判断されれば、速や
かに乗合を承認する。
対象外
◦個社判断の領域
51
少短保険会社の追加委託は、乗合と
は見做さず、事前承認ではなく事後
少額短期保険会社 通 知 と す る よ う 業 界 ル ー ル を 整 え
の乗合の自由化
る。これにより少短商品の活用を促
し、消費者の多様なニーズに応える
環境を整備する。
対象外
◦個社判断の領域
52
個人代理店店主死
亡時の代理店登録
規定の明確化を図る。
空白期間の規定上
の手当
_
◦登録・届出の電子化以降、課題は大きく改善
されており検討の必要性がないため見送る。
53
募集人の届出、変
更に関する運用と 現行の運用と委託契約書の規定との
委託契約書との齟 整合性を図る。
齬の解消
×
◦役員・使用人届出に際しての承認・通知ルー
ルの共通化は困難であり見送る。
登録制度
業界ベースで作成ルール、記載項目
の簡素化、共通化を図る。
◦他業界に係る事項
― 123 ―
○
No
54
分 類
登録制度
提 言 項 目
新規募集人の
即日募集の実現
共通化・標準化策
即日募集活動ができるように業界ベース
で即日申請の仕組みを構築する。
検討
状況
損保協会の検討内容
×
次の理由から見合わせる。
◦代理店が直接、代理店登録電子申請システム
にアクセス可能とした場合、募集人の届出・
変更に限定しても営業部門との連携が望め
ず、申請時や不備発生時の対応に支障を来た
すこと。
◦募集人届出に関し、監督指針において従前よ
りも厳格な要件が定められたため、代理店か
ら直接届出が行える仕組みの構築は馴染まな
いと考えられること。
55
委託契約書の基本的な内容は、業界
ベースで統一し、乗合代理店におけ
標準委託契約書の
る適用の齟齬を解消する。各社別あ 対象外
作成
るいは代理店別に定める必要がある
ものは、別に定める方式に移行する。
◦個社判断の領域
56
現実の対応の実態に合わせて委託契
代理店に対する異
約書を改定し、代理権を付与する。
動・解約承認代理
これにより消費者のニーズに迅速に
権の付与
対応できるようにする。
対象外
◦個社判断の領域
57
口座振替やクレカ支払いの場合は、
口座振替手数料
領収と精算が同時に行われてると見
負担ルールの改定 做し、保険会社と代理店双方で分担
(50:50)するように改定する。
対象外
◦個社判断の領域
58
委託契約書において代理店の事故時
事故発生時の代理 の役割と代理店手数料との関係を明
店 の 役 割 の 業 界 確に定める。その上で、お互いの役
ベースでの明確化 割を契約者に事前に提示し、サービ
ス品質を明確にする。
対象外
◦個社判断の領域
59
第三者機関による調停の仕組みを活
過失割合認定判断
用する等により過失割合認定の共通
の共通化
化を図り、公平性を担保する。
△
◦6次中計課題として別途検討。
60
事故状況の共同
査定のルール化
複数の保険会社が係わる事故の場合
は、共同査定が実施できるように業
界ベースでルール化する。
△
◦6次中計課題として別途検討。
61
人身傷害保険の
自賠責基準、任意基準を共通化する。 対象外
支払基準の共通化
◦独禁法上の問題
62
対人賠償保険金の 対人賠償の支払基準を改めて共通化
支払基準の共通化 する。
対象外
◦独禁法上の問題
63
キャッシュレス契 キャッシュレス契約においては入金
約における入金確 確認を廃止し、速やかに保険金を支
認の廃止
払う。
×
64
事故の当事者にはそれぞれ情報を開
事故当事者への個
示し、事故処理がスムーズに進めら
人情報提供のルー
れるよう業界ベースで警察庁に働き
ル化
かける。
対象外
65
鈑 金 塗 装 修 理 費 の 見 直 し を 図 り、
ディーラー経由とBS直持ち込みの場
修理費は ◦修理費の標準化は独禁法上の問題
合の二重価格を排除する。(BSに直
自動車事故におけ
対象外
接持ち込んだ場合の修理費をベース
る鈑金修理査定基
に査定基準を見直す)
準の見直し・共通
リサイク ◦リサイクル部品の活用はチラシ作成・配布や
併せて、リサイクル部品の積極活用
化
ルは○
動画配信などにより啓発を行っており、今後
を図るとともに、業界ベースで自動
も継続的に取り組みを推進する。
車メーカーに対し、事故時の修理代
を低減できるパーツの開発を促す。
66
自動車保険の等級
保険会社間での等級確認を可能にする。
照会制度の改善
○
◦契約計上時に同制度へデータ送信するよう運
用面、システム面の改定を行った。
コンプライアンス上の問題を惹起
代理店不祥事件情 し、金融庁に不祥事件として届け出
報のデータベース た 代 理 店 の 情 報 は、 委 託 が あ る 生
化と処分の徹底
保、損保全社で共有できるD / Bを
構築する。
○
◦代理店不祥事件に関する情報(不祥事件届出
を行った代理店の情報)の損保・生保で共有
できるD / Bを構築した。
委託契約書
損害調査
情報交換
67
― 124 ―
◦固有の事情に基づく事務フローを策定してい
る会社があり見送る。
◦共通化・標準化の範疇外
No
分 類
68
情報交換
提 言 項 目
共通化・標準化策
反社該当で契約引受けを謝絶した
反社会的勢力に関
り、契約解除したケースに関する情
する業界D / Bの
報を業界ベースで保有し、代理店に
構築
も照会可能な仕組みにする。
検討
状況
損保協会の検討内容
全般は
△
◦反社対応全般について別途検討中(代理店か
らの直接アクセスは実現困難)
69
反社会的勢力に関
する警察庁D / B
への照会システム
の構築
70
損保協会作成による募集コンプライ
コンプライアンス アンスガイドを使用することでルー
マニュアルの共通 ルの共通化を図り、業界全体のベー
化
スを統一する。(各社別ルールの部分
は別に定める)
対象外
71
不祥事件の際の処分の基準を共通化
不祥事件に対する
し、保険会社間における処分内容の
代理店処分の業界
差をなくす。(乗合代理店の場合は、
統一ガイドライン
委託保険会社間で処分に関する情報
策定
を共有できるようにする)
○
◦ガイドラインを策定した。
72
業界ベースで判断基準を統一する。(実
質的な公正競争規約的な位置付け)
具体的な項目は以下の通り。
◦ノ ベルティ(使用できるものの明
示・広範な規制は不要。限定的に
特別利益の提供に
定めることで可)
関する業界共通の ◦ノ ベルティの金額の設定(上限・
ガイドラインの作
長期契約の場合の基準)
成
◦本 業割引の排除(ノベルティとは
異なる概念であり、安易な適用は
保険料割引につながるため、厳格
に規制する)
◦見込客に対するノベルティ基準
◦懸賞キャンペーンの基準
○
◦担当部会において、現在の社会・経済情勢に
照らして、今日的な考え方を整理した。
73
紹介行為の定義の
業界ベースでの明 見込客紹介の定義を明確化する。
確化
○
◦今回の業法改正に伴い、監督指針の改定が行
われ、募集関連行為として定義付けされた
(日本代協補足)
謝礼の基準を業界ベースで共通化す
紹介者への謝礼基
る。(継続・反復的に業として行う紹
準の共通化
介行為は除く)
○
◦金融庁の監督指針改正案(2015年2月)に一
定の解釈要素が示されたこと等を踏まえ、共通
化・標準化ルールとして整理することは見送った
が、これまでの検討経緯等を整理した。
◦コンプライアンス研修の内容や頻度などは各
社の経営方針等によること、現状では会員会
社・代理店双方にとって業務効率化に有効な
手段と言えないため、見送ることとする。
◦なお、会員会社にとって有効な情報をフィー
ドバックすることが必要と考えられるため、
「代理店コンプライアンス研修の参考事例」
を取りまとめた。
74
コンプライ
アンス
業界ベースで警察庁に働きかけて同
庁が保有するD / Bへのアクセスを
可能とし、反社排除に損保業界を挙
げて取り組む。
_
◦上記に同じ
◦個社判断の領域
75
乗合代理店に対す
乗合代理店の場合は、委託保険会社を
るコンプライアン
代表する1社が実施すれば可とする。
ス研修の共通化
×
76
標準帳票以外の募
集文書作成時の保 業 界 ベ ー ス で 負 担 の 考 え 方 を 統 一
険会社と代理店間 し、代理店によって差が生じないよ
の費用負担ルール うにする。(50:50など)
の明確化
対象外
77
保険料専用口座の規定を緩和し、実務
に即した運用を認めるとともに保険会社
による対応の違いをなくす。(保険料入
保険料専用口座の
金用の別口座を設けているケースや兼業
規定の緩和
代理店において本業口座に他の商品の
(実務に即した柔
代金と合せて保険料が振り込まれるケー
軟な対応の明確
ス等、実務上の必要性が認められるケー
化)
スについては業界ベースで柔軟に対応す
る。必要によっては監督指針の改定を求
める)
○
◦銀行側の規則により口座名義に保険会社名を付
すことができない場合の取扱い、預金債権が保
険会社にある旨の念書の効力等を整理した。
比較広告を実施しやすいよう業界共
通の具体的なガイドラインを定め、
消費者の商品選択ニーズに応える。
○
◦比較ガイドラインを策定済み。
78
比較広告ガイド
ラインの策定
― 125 ―
◦個社判断の領域
検討
状況
損保協会の検討内容
個人情報の定義を改めて明確にし、
ルールの簡素化、限定化を図る。
併せて、飲酒運転や危険運転致死傷
罪の経歴等、社会の安心・安全を脅
かしかねない問題があるケースにつ
いては、当該情報を関係者が閲覧で
き、契約を謝絶できるような環境を
構築する。
○
◦2014年5月21日情報セキュリティ PT主催
「損害保険会社に求められるスマートデバイ
スにおける個人情報管理」をテーマに専門家
によるセミナーを開催。
80
業界ベースで該当契約・契約者を明
確に定め業務規制の解釈の齟齬をな
くす。併せて、長年に亘って続く既
自己・特定契約の
存代理店に対する「当分の間」とい
該当契約の明確化
う規定文言を廃止し、規定そのもの
をシンプルで分かりやすいものにす
るよう金融庁に働きかける。
○
◦特定者の定義等について当局と意見交換を実
施。
81
構成員契約規制の 業界ベースで見直し(撤廃)を働き
見直し(撤廃)
かける。
対象外
◦規制改革要望等での検討事項
82
業界ベースで「(広域)損害査定補助
士(仮称)」認定制度を創設し、業界
業界ベースの「
(広 を挙げて早期支払いを実行できる態
域)損害査定補助 勢を整える。(損保協会で研修と認定
士( 仮 称 )
」 認 定 を担う)並行して、契約者からの自
制度の創設
己申請制度と代理店によるサポート
制度を拡充し、迅速な損害処理を実
現する。
対象外
◦代理店の損害サービスへの関与範囲は各社判
断に拠る
損保協会が主体となって文部科学省
に働きかけ、中学・高校の学習指導
学校教育における 要領に保険教育を織り込む。
保険教育の業界を 実施に当たっては代理店を講師とし
挙げた推進
て活用する。その前提として、損保
協会において専任講師の育成制度を
設ける。
○
◦引続き関係部会にて取り組んでいく。
業界ベースで行うことでファンドも
確保でき、大きな仕掛けにもつなが
ることから、社会全体にとって必要
と思われる活動を思い切って業界
ベースで推進する。(ex. 離島等への
消防車の寄贈は損保協会だから継続
的に行うことができ、息の長い支援
につながる)
○
◦引続き関係部会にて取り組んでいく。
No
分 類
提 言 項 目
個人情報保護
ルールの見直し
79
コンプライ
アンス
災害対応
83
CSR活動
84
CSR活動の業界
ベースでの推進
共通化・標準化策
― 126 ―
11 組織力の強化
〈代協正会員の増強と支部の活性化〉
■組織力強化の基本方針
日本代協並びに各代協は、お客様に直接接する損害保険代理業者の業界団体として、「損害保険の普及と
一般消費者の利益保護」 を図るため、長年に亘り地道な活動を続けてきている。日本の損保市場の約91%は
代理店扱であることを考えると、本会の発展は保険業界発展の礎ともなるものである。
一方で、本会が消費者や社会の信認を得て持続的に活動を展開するためには、一定の組織力を保持する必
要があるが、その指標の一つとなる組織率は高いとは言えず、本会の懸案事項となっている。
平成21年8月に行った組織改革の結果、日本代協の会員は法人格を持った各都道府県代協になり、各会員
(個々の代理店)はその代協の会員という位置付けに代わったため、組織力の源泉となる代協会員の増強は
一義的には各代協の取り組み課題そのものである。同時にそれは、本会の事業目的達成のための重要な命題
でもあるので、当面は、日本代協グループとして全代協一体となって代協正会員の増強に取り組む方針とし
ている。
1.会員増強
■会員増強の前提となる基本的な考え方
① 組織率目標:組織の核となる専業代理店については、中期的に各都道府県において過半数を超える組織
率(注:専業代理店数を分母として算出した一種の推計)となるよう取り組む。但し、これはあくまでも
通過点であり、代協という業界団体の存在価値を考えた場合、「全代理店(約19万店)を分母に置いた場
合の組織率50%超」という水準が本来の目標であることを認識しておく必要がある。(その場合、約9. 5万
店の会員が必要)
② チャネルの考え方:代協は「保険募集のプロ」として活動する保険代理店・募集人の団体としての発展
を目指している。一方で、業界で使用されている統計上のチャネル区分は、単なる画一的な属性区分に過
ぎず、専業・兼業という用語には「プロか否か」といった質的概念は含まれていない。また、「専業」は
プロであるべきだが、統計上は「他の事業の収入が全体の50%を超えない」というだけで、専業代理店が
全て本来のプロ代理店を意味しているわけでもない。逆に、「兼業」に区分されていても保険部門を有し、
専任者を配置する等して、高い専門性を発揮し、顧客の期待に応えている代理店も数多く存在している。
日本代協の理念と照らし合せた場合、 画一的なチャネル区分で会員資格を縛るのではなく、「保険募
集・顧客対応のプロ」としての高い志と能力を持った代理店であれば、 どのチャネルの代理店・募集人で
あっても仲間として迎え入れ、互いに切磋琢磨しながら発展していくことが重要である。
③ 組織を挙げた取り組み:「会員増強運動は一部の役員・委員長だけの仕事」 という現状を打破し、組織
全体で取り組むことが求められる。そのためには、 意思決定の透明化や情報の共有化、全員参画型の組織
運営を行い、共通の目的に向かって楽しく取り組む雰囲気作りを行い、会員増強に取り組む実行部隊を増
やしていく必要がある。
■各代協にとっての会員増強の位置付け
平成21年8月25日付の定款変更により、日本代協の正会員は「代理店」から、一般社団法人となった「各
― 127 ―
都道府県の損害保険代理業協会の代表者」となり、個々の代理店は各都道府県代協の正会員という位置付け
になっている。
(平成25年4月1日付で設立された一般社団法人にもそのまま引き継がれた)
従って、会員増強は、各代協の組織問題そのもの(※)であるため、各代協においては、自らの組織運営上
必要な運営経費を賄える会員数を念頭におき、全会員の力を結集して計画的に会員増強活動を展開する必要
がある。
(※日本代協組織委員会に指示されることではなく、自ら主体的に取り組むべき課題である)
■代協正会員の増強と平成28年度の取り組み
⑴ 平成27年度の総括と会員増強に当たっての心構え
日本代協の組織目標は、全代理店の50%超の代協加入であるが、現実を踏まえた達成可能なステップ目
標として、ここ数年は代協会員12, 000店を目標に掲げ、取り組みを行ってきた。
平成27年度は、平成26年度の260店増店という結果、並びに、各保険会社の協力も得られるようになっ
てきたことを受けて、一気に12, 500店達成を目指して取り組みを進めることとし、そのステップとして、
先ずは11月のコンベンションまでに長年の目標であった12, 000店を達成することとした。
具体的には、会員増強は「通年運動」が基本であるという原点に戻り、連Q(クォーター)稼働(4半
期ごとに加入増目標達成)を推進したが、結果的には十分に定着・浸透するには至らず、11月までの中間
目標達成はできなかった。
そのため、平成28年2月に会員増強キャンペーン(増店目標の80%確保を入賞基準とした)を実施した。
その結果、目標とした610店の増強には届かず、達成率は40%止まりではあったが、単月で41代協が稼働
して152店の入会があり(入会152店、退会23店、増強129店)、平成28年2月末の代協会員数が12, 002店と
なって中間目標であった12, 000店を漸く達成することできた。
年間を通した退会者数は、563店に抑えることができ、新規入会は昨年度より108店増加して852店と
なったため、年度末の代協正会員数は289店増加して12, 047店となった。年度目標として掲げた12, 500店
には届かなかったが、4年連続の増店、また、昨年度の260店増店を上回る289店の増店となった。この結
果、組織率は40. 6%となって初めて40%を超えることができた。(注:平成27年7月末公表の専業代理店
実在数29, 703店[勤務型代理店等を除く])
なお、本年度も各社が進める販売基盤の構造改革や合併・M&A等により、総代理店数の減少(勤務型
代理店等を除く)が続く傾向にある。また、新しい保険募集ルールが適用され、中途半端な代理店が市場
から淘汰されて代理店数自体も減少していくことが想定される。会員増強という観点からは、厳しい環境
ではあるが、こうした環境下においても、福岡県代協が12年連続で目標達成という素晴らしい成果を残し
ていることは注目すべきである。
(注:福岡県代協の会員数推移については付表9・10参照。具体的な目
標を持って組織をあげて取り組みを進め、
「出来るまでやる」・「会員数上位の愛知県代協を抜く」を実践
してきた成果である。)
併せて、平成27年度は、北海道代協が支部活動を活性化させ、保険会社との連携強化を図ることによっ
て、37店の増強を成し遂げたことも特筆できる。(注:意欲的な自主目標には届かなかったが、増強数は
全代協の中でトップであった。
)この他、東京代協がオールチャネル展開により30店、神奈川県代協が若
手の登用・活躍により25店、大阪代協が支部活動の活性化により21店の増強、また、高知[V4]、滋賀
[V3]
、宮城・京都・熊本・沖縄・青森・山梨・奈良・香川・長崎・鹿児島[V2]と各代協が連続して
自主目標を達成した。
改めて「出来ない理由」ではなく「出来る理由」を考え、組織の総力をあげて具体的な行動に移し、諦
めずにやり続けることが重要であることを再確認させた取り組みであり、各代協においては、こうした取
り組みを模範として成果につなげていくことが望まれる。
― 128 ―
⑵ 正会員増強運動【平成28年度の取り組み】
平成28年度は、代協正会員12, 347店(平成27年度末会員数12, 047店+増店300店)達成を目標とし、次
の内容で増強運動を実施する。
① 全国で一体感を持って取り組むため、全ての代協が「自主目標」を定めて取り組む。
代協正会員の増強は、本来各代協の経営課題であるが、日本代協の事業目的を達成して代協会員を
取り巻く様々な環境を変えていくためには、全国の代協が一体となって基盤拡充に取り組むことが必
要であり、本年度も日本代協グループとして組織をあげて取り組む。(基本方針の通り)
② 平成28年度の増強目標数は、昨年度の反省(意思疎通が不十分なままでの一方的な目標設定)を踏
まえて以下の手順で定めた。
[組織率50%未満の代協]
・日本代協組織委員会は、専業代理店組織率50%未満の代協に対し、平成28年3月末までに、前年度
組織率(年度末見込み)と増強実績(同)を勘案した増強目標ガイドラインを提示
・該当代協では、組織率50%達成のための中期的計画を立て、これを踏まえて当年度の増強自主目標
数を策定し、日本代協組織委員会に報告
・日本代協組織委員会では、上記自主目標とガイドラインにかい離がある場合は、目標数字の調整を
各代協会長と行い、目標数を双方で確認、合意
・該当代協は、上記調整を終えた増強目標を事業計画に定め、総会にて組織目標として決定
[組織率50%以上の代協]
・正会員数の3%アップ(500会員であれば15会員の増強)達成をミニマム基準として、自主目標を
定め、日本代協組織委員会に報告
・該当代協は、上記増強目標を事業計画に定め、総会にて組織目標として決定
③ 増強運動は年間を通して推進する。連月稼働を前提に、日常の代協活動の中で呼びかけや紹介依頼
を行っていく。
ⅰ.四半期ごとの目標を定め、「連クォーター稼働」を推進してステップを刻んで達成していく
ⅱ.平成26年度から始めた「三冠王(会員増強・国民年金基金・損保大学課程受講者募集)」挑戦を
推進する
ⅲ.期中の進捗状況によっては、下半期において、増強キャンペーンの実施を検討する
④ 「紹介の仕組み作り」を行い、会員・組織一体となった取り組みを推進する。
・既存会員から紹介を引き出す仕組みを作る。
・保険会社に協力を依頼する。その際には、「保険会社にとっての代協加入のメリット」を伝える。
・
「連れてき隊」による仲間支援活動を展開する。
⑤ 保険会社に影響力を有し、地域の模範となっている有力代理店に対し、加入を働きかける。
⑥ 代協加入のメリットの明確化を常に検討し、情宣していく。(組織委員会)
⑦ 専業・兼業を問わず、保険募集を本業の一つに位置付け、志高く取り組んでいる有力代理店に幅広
く入会を呼びかける。
⑧ 組織委員だけではなく、会員一体となった取り組みとなるよう役割分担を行う。(組織委員会の
リードの下、各代協会長・組織委員長・事務局・ブロック長・地域担当理事の間で密接な連携を図り
ながら取り組みを進める。)
⑨ 退会の際には退会理由を確認し、退会防止に役立てる。
⑩ 各施策の実施に当たっては、「組織活性化の手引き」・「正会員増強マニュアル」・「非会員向けPR
― 129 ―
リーフレット」を活用する。また、「日本代協3大ブランド」と位置付ける以下の施策を活用する。
ⅰ.
「代理店賠責セミナー」の開催(保険会社社員や非会員代理店も対象に含めた開催を企画する)
ⅱ.
「損害保険大学課程」の受講推進(非会員にも広く働きかける)
ⅲ.
「地域社会貢献活動」への取り組み(地域のリスクマネージャーとしての認知度向上)
⑶ 新入会員オリエンテーションの実施
平成27年度にオリエンテーションを実施したのは39代協(計55回・参加者965名)であった。全代協で
実施することはできなかったが、「新入会員連れてき隊」・「同 守り隊」を組成し、日々の関係構築を図る
活動が定着してきた代協も出てきている。
新入会員に本会の意義を理解してもらい、また本会の活動に参加する喜び(価値)を知ってもらうため
にもオリエンテーションの開催は重要である。全代協でできる限り第1四半期(4月~6月)に開催し、
新人会員への啓発とともに、疎外感を味あわせることがないように努力する必要がある。
なお、実施に際しては、
「新入会員オリエンテーションガイド」・説明用PPT「代協活動の現状と課題・
その活用」
・BS番組の二次利用DVDを活用する。
⑷ ブロック協議会活動の強化
代協活動、特に、会員増強活動を進めるに当たっては、ブロック協議会の担う役割は極めて大きい。各
ブロック協議会においては、各代協の経験交流を通じ、所属代協が揃って目標を達成できるようリードし
ていく必要がある。本年度も地域担当理事のアドバイスのもと、「ブロック協議会開催準備・運営の手引
き」を活用し、計画的な開催と経験交流を通し、各代協活動を草の根ベースで活性化させていく。
⑸ 各種委員会との連携強化
企画環境、組織、教育、CSRの4委員会は全国委員会であり、その基盤は各代協にある。各代協におい
ては、上記4委員会の委員が活動の中心となって、ブロック協議会並びに日本代協の各委員会とのパイプ
役となり、支部活動、代協活動を活発に展開していくことが期待される。(連絡、連携を密にし、情報の
共有化を図ることが重要)
⑹ 損保協会、同協会支部、損保各社との接点・連携強化
代協活動を推進するために重要なことは、日頃から損保協会(支部)、損保各社(支店・支社)との良
好な関係構築に努め、意思疎通をしっかりと図っておくことにある。日本代協、各代協、各支部がそれぞ
れの持ち場で主体的に行動し、代協活動に対する理解と支援を求めていく。併せて、信頼関係の基本は相
互互恵関係の構築にあることを認識し、出来る協力は積極的に行っていくことも重要である。
⑺ 損保7社並びに損保協会との懇談会
日本代協・各代協の活動に対する理解を深めていただくとともに、「代協会員の増強」、「国民年金基金
の加入者募集」、「代理店賠責の加入推進」、「損害保険大学課程の受講推進」等に対する協力依頼を行うこ
とを目的として、毎年7月・1月の年2回、損保7社と損保協会の担当部長(各社営業企画・地域営業推
進・専業代理店担当部門)との懇談会を実施しており、今後も継続的に働きかけを行っていく。(平成28
年度第1回の懇談会は7月7日開催予定)
[懇談会参加の損保7社・損保協会(50音順)]
あいおいニッセイ同和・共栄火災・損保ジャパン日本興亜・東京海上日動・
日新火災・富士火災・三井住友海上/損保協会(募集・研修サービス部)
― 130 ―
2.基盤強化
■人材育成研修会
人材育成研修会は、代理店・募集人の資質向上とともに、代協活動の次代の指導者を育成するために重要
な取り組みである。また、本研修会を計画的に開催している代協は、退会抑制とともに会員増強にも成果を
出しているところが多い。
平成29年度までの開催スケジュールは下記の通りであり、各ブロックにおいては「人材育成研修会マニュ
アル」を活用しながら、活発な意見交換が行われる有意義な研修会にすべく、企画することが望まれる。
(下記スケジュール以外の自主的な開催も期待される。)
年 度
開催ブロック
平成28年度
南東北・南関東・東中国・九州北
平成29年度
北海道・東 海・北 陸・西中国
平成30年度
上信越・東 京・近 畿・四 国
平成31年度
北東北・東関東・阪 神・九州南
■組織の強化と基盤整備
⑴ 基本的な考え方
組織が人の集りである以上、組織の活性化は組織を構成する人、とりわけそのリーダーの資質に負うと
ころが大きい。各代協会長・支部長は、高い倫理観をベースにした明確なビジョンと責任感を持ち、リー
ダーシップを発揮して組織運営に取り組むことが求められる。この場合、最も重要なスキルは「傾聴」の
姿勢であり、常に会員の声に耳を傾け、対話をベースにした組織運営を意識することが必要である。
平成21年度からは、全ての代協が法人格をもった社団として活動することとなった。社会の期待もまた
社会に対する責務も、任意団体の時代とは比較にならない位大きなものとなる。この第二の創業とも言え
る転換期においては、改めて代協活動の原点に戻り、支部活動、代協活動、ブロック協議会等の更なる活
性化を図り、対外的なパワーの源泉となる組織力を強化することが必要であり、代協会長、支部長の役割
はますます重要なものになっている。
一方で、本会の最大の課題は、各代協の取り組みに濃淡があり過ぎることにあり、全国の取り組みに粗
密が生じないよう、ブロック協議会等の場を通して認識の共有化を図るとともに、必要に応じて各会長の
サポート、支援を行う必要がある。
なお、業界団体という特性上、各代協のリーダー役は、代協活動と本業(保険代理業)を両立させるだ
けでなく、自らの事業を発展させる(代理店経営を語れる存在になる)ことで、他の会員の模範となる代
理店となることが望まれる。
⑵ 支部活動の強化
支部が強くなければ、代協が強くならないのは自明の理である。各支部長は、所属する代協はもとより、
「損保代理業を背負っているのは自分である」との責任感とリーダーシップをもって、支部活動をリード
することが組織活性化の鍵となる。
「代協活動は、会員が“集い、語らう”ことから始まる」と言われる
が、その原点が支部であり、各支部は定期的に会合を開き、情報交流と相互研鑽を重ねていくことが望ま
れる。
「支部の活性化」⇒「加入したくなる代協作り」⇒「会員の増強」⇒「活動への全員参画」⇒「代協・
日本代協の活性化」⇒「損保代理業界の発展」⇒「損保業界の健全な発展」へとつなげていくため、支部
並びに支部長の役割は極めて重要であり、各地域の独自性を発揮しながら創意工夫を凝らした活動の展開
が期待される。
― 131 ―
支部の運営に当たっては、以下に留意する。
・定期的な会合を設ける(無理なく集まるために、決まった曜日・場所で昼食ミーティングを開いている
支部もある)
・全会員が支部の活動に参加するように仕組む(参加しやすい社会貢献活動などの場が効果的)
・イベントの際は広く声を掛けて盛り上げる(会員のみならず、家族や保険会社社員、協賛企業等にも幅
広く声掛けを行い、楽しく取り組める雰囲気をつくる)
・地域の名士や各団体との関係構築を図る
なお、支部体制(支部数・所属代理店数)については、各会員が活動に参画する際に負担増とならない
前提で、持続的な活動を可能とする水準に再編(新設・統合・廃止・分割)を検討する。
⑶ 代協事務局の対応力アップ
一般社団法人の活動を円滑に遂行していくためには、各代協事務局の安定的運営と能力向上が不可欠で
ある。日本代協としては、事務局支援のため、定期的に「事務局員研修」を行っており、直近では、平成
26年7月に実施した(34代協から37名参加)。各業務の業務処理の流れや一般社団法人運営上の留意点等
について、理解を深める機会となっている。また、事前アンケートに基づく情報交換や日頃の悩み相談な
どを行い、実りある研修とすることができた。今後も、定期的(2-3年サイクル)に開催し、代協事務
局のレベルアップを支援していく方針である。なお、次回開催は、平成29年度を予定している。
⑷ 代協内における認識・情報の共有化
各代協においては、会員に対する情報発信を強化し、日本代協の方針や具体的活動の内容、並びに各代
協の取り組み状況、更には業界動向等に関する最新知識等の情宣に努め、認識の共有化を図る必要がある。
そのためにも、各会員に確実に配信できるメールアドレスの登録が必要である。
⑸ 若手会員の育成・登用
組織活性化のためには、次代を担う若手の育成、登用が不可欠であり、各代協においては、将来の指導
者育成の視点を常に持って積極的に若手人材を登用し、役員人事の若返りを図るとともに、その育成を支
援することが望まれる。代協会長は、後任人事を考えることも重要な役割であり、計画的な育成が求めら
れる。
⑹ 女性会員の登用
保険募集の現場では多くの女性が活躍しており、思考の多様性確保の観点からも女性会員の登用を積極
的に行い、組織の活性化を図ることが重要である。(ダイバーシティ推進の一環)日本代協においても平
成28年度役員改選において、女性の理事(委員長)が2名誕生しており、今後の活躍が期待されている。
⑺ 組織運営のガバナンス確保
① 各代協においては、関連法規に沿った公正な運営を行うとともに、「一般社団法人運営マニュアル」
を参考にしながら、態勢の構築、適正な組織運営、事務局の役割分担等を確立することが求められる。
② 運営に当たっては、ブロック協議会の場等を活用し、他代協とのノウハウの共有化を進める。
③ 日本代協本部においては、各代協の運営に資する情報収集と知識習得に努め、弁護士・公認会計士等
の専門家の支援を得ながら、各代協の個別問題事案(特に、意思決定手続きや税務問題)をサポートする。
⑻ 好取り組み事例の収集・発信
現状取り組み不十分であり、各委員会、各理事、事務局等で連携し、各代協並びに代協会員の好取り組
み事例に関する情報収集と発信に努める。(各代協にも積極的な情報提供を依頼する。)
― 132 ―
〔付表1〕
代理店実在数の推移
700,000 623,741(店)
※平成27年度末
成 年度末 202,148店
,
店
※対前年 ▲ 2,842店
平成8年度対比 32.4%
600,000 509,619
500,000 400,000 300,000 ,
305,836
342 191
342,191
235 846
235,846
266,753
200,000 197,005
207,903
100 000
100,000 202,148
192,007
0 H8
H13
H15
H17
H19
H21
H23
H25
H27
※平成26年度は委託型募集人から勤務型代理店等に移行したケースがあり、登録上個人代理店となるため代理店数としては
増加したが、平成27年度以降は再び減少に転じている。
(出典:日本損害保険協会HPより抜粋)
〔付表2〕
募集従事者数の推移
2500
2000
2,160,029
1,575,195
1,716,006
1500
1000
2,139,475
2,147,461
千人
2,059,743
2,052,176
1,873,485
1 145 252
1,145,252
500
0
H12 H13
H15
H17
H19
H21
H23
H25
H27
※募集従事者数はH23年度から3年連続減少し、H26年度に約1万人増えたが、再び微減となった。
※募集従事者数はH13年度に大幅に増加(+429, 943人)
。これは銀行等の窓口において保険販売が解禁されたことに伴い、
銀行員等が大量に募集従事者になったためと推測される。
(出典:日本損害保険協会HPより抜粋)
― 133 ―
〔付表3〕
募集形態別元受正味保険料
仲立人扱
47,103(0.5)
直扱
751,976(7.8)
※「海上保険」分野においては、
6.3%の構成比を占めている
※全体の構成比は昨年同
※
「海上保険」分野において
は、39.9%の構成比を占
めている(船舶保険等)
代理店扱
直扱
仲立人扱
総合計:約9兆5,810億円
(単位:百万円・%)
◎我が国の損保市場にお
ける保険募集の主体は
圧倒的に代理店となっ
ている
代理店扱
8,781,972(91.7)
※代理店扱:損害保険代理店を通じて行われる募集形態
※直 扱:保険会社の役職員(研修生を含む)が直接保険を募集する形態
※仲立人扱:保険仲立人を通じて行われる募集形態(参考:日本損害保険協会HP)
〔付表4〕
形態別代理店数・扱保険料・募集従事者数(国内・外社計)
(単位:店・百万円・人)
合 計
代理店数
202, 148
扱保険料
6, 457, 880
募集従事者数
2, 059, 743
専業・副業別
専 業
法人・個人別
副 業
法 人
専属・乗合別
個 人
専 属
乗 合
38, 407
163, 741
108, 997
93, 151
153, 236
48, 912
19. 0%
81. 0%
53. 9%
46. 1%
75. 8%
24. 2%
2, 540, 593
3, 917, 287
5, 942, 376
515, 504
2, 275, 917
4, 181, 963
39. 3%
60. 7%
92.0%
8. 0%
35. 2%
64. 8%
124, 580
1, 935, 163
1, 927, 899
131, 844
635, 210
1, 424, 533
6. 0%
94. 0%
93. 6%
6. 4%
30. 8%
69. 2%
※扱保険料は火災保険、自動車保険、傷害保険の合計額を計上
※専業1店平均収保:66百万(昨年比+2百万)・平均募集人数:3. 2人・1人当平均収保:20百万
※副業1店平均収保:24百万(昨年比+1百万)・平均募集人数:11. 8人・1人当平均収保:2百万
※全体の46. 1%を個人代理店が占めているが収保ウエイトは8%しかない
※募集形態別保険料の視点から見ると日本は「副業・法人・乗合代理店」の市場であることになる
(出典:日本損害保険協会HPより抜粋)
― 134 ―
〔付表5〕
都道府県別代理店実在数(平成27年度末統計)
(出典:日本損害保険協会HPより抜粋)
都道府県名
代理店実在数
都道府県名
代理店実在数
都道府県名
代理店実在数
北 海 道
8, 769
長 野 県
3, 638
岡 山 県
3, 389
青 森 県
2, 294
岐 阜 県
3, 762
広 島 県
4, 627
岩 手 県
1, 922
静 岡 県
6, 903
山 口 県
2, 054
宮 城 県
4, 116
愛 知 県
10, 979
徳 島 県
1, 635
秋 田 県
1, 594
三 重 県
3, 067
香 川 県
1, 850
山 形 県
2, 110
富 山 県
1, 891
愛 媛 県
2, 577
福 島 県
3, 484
石 川 県
2, 076
高 知 県
1, 215
茨 城 県
5, 463
福 井 県
1, 440
福 岡 県
8, 563
栃 木 県
3, 518
滋 賀 県
2, 009
佐 賀 県
1, 378
群 馬 県
3, 892
京 都 府
4, 003
長 崎 県
2, 231
埼 玉 県
8, 935
大 阪 府
12, 773
熊 本 県
3, 324
千 葉 県
7, 624
兵 庫 県
7, 471
大 分 県
1, 905
東 京 都
26, 150
奈 良 県
1, 846
宮 崎 県
1, 885
神奈川県
9, 125
和歌山県
2, 002
鹿児島県
2, 946
新 潟 県
3, 938
鳥 取 県
982
沖 縄 県
2, 144
山 梨 県
1, 663
島 根 県
986
合 計
202, 148
※勤務型代理店等を含む(勤務型代理店等の数を除けば代理店総数は19万店弱と推定される)
※昨年比▲2, 842店・東京(+466店)を除き全府県で減少
※全体が増加している中で、群馬・鳥取・島根の3県は減少
〔付表6〕
代理店新設数・廃止数の推移
(参考:日本損害保険協会HP)
45,000
40 000
40,000
40,150 40,627
35,000
29,282
30 000
30,000
25,000
20,000
29,194
20,890
新設数
20,012
16,939
14,207
15,000
15,557
13,253
17 037
16,211 17,037
14,195
廃止数
10,000
,
5,000
0
H16
H18
H20
H22
H24
H26 H27
※平成26年度の新設店数は対前年で17, 043店の増加。これは委託型募集人適正化を受けて勤務型代理店等の個人代理店の新
設が増加した影響であると推測される。
※平成27年度は廃止が新設を上回ったが、勤務型代理店等の新規登録は約1千店程度増加している模様
※廃止店数は自由化対応で過去最高となったH17年度の40, 627店との対比で約35%の水準
― 135 ―
〔付表7〕
チャネル別代理店数・募集従事者数(平成28年3月末)
(出典:日本損害保険協会HP)
保険募集チャネル
代理店数
店数
募集従事者数
構成比
順位
人数
構成比
順位
ディーラー・整備工場等
99, 919
49. 4%
1
559, 708
27. 2%
2
専業代理店
42, 319
20. 9%
2
311, 667
15. 1%
3
不動産業
24, 394
12. 1%
3
122, 339
5. 9%
5
卸売・小売業(自動車を除く)
5, 688
2. 8%
4
38, 005
1. 8%
7
建築・建設業
4, 327
2. 2%
5
31, 923
1. 6%
8
公認会計士・税理士等
3, 840
1. 9%
6
13, 087
0. 6%
9
金融業
2, 339
1. 2%
7
617, 891
30. 0%
1
(金融業のうち銀行業)
(1, 127)
(0. 6)
(426, 292)
(20. 7)
旅行業
2, 298
1. 1%
8
58, 824
2. 9%
6
通信・運輸業
1, 845
0. 9%
9
187, 590
9. 1%
4
15, 179
7. 5%
118, 709
5. 8%
202, 148
100. 0%
2, 059, 743
100. 0%
その他サービス業等
合 計
生命保険募集人を兼ねる代理店
代理店数
募集従事者数
48, 132(▲5, 260)
1, 130, 662(▲3, 654)
※全体の構成比は昨年対比で大きな変動はないが、旅行業の代理店数が減少し、金融業の代理店数は増えたため、
チャネル
構成比で金融業の順位が上がっている。
※付表4の専業代理店数38, 407店と上記統計の専業代理店数42, 319店に差があるのは、チャネル別統計が平成20年度から調
査を始めた新しい統計であることから、両統計作成システムの仕様が異なる保険会社があるため。
※専業代理店の募集従事者数には生保会社の営業職員が含まれる。
※通信・運輸業の募集人数には、日本郵便の募集人が含まれている。
※代理店数で最も多いのはモーターチャネル、募集従事者数が最も多いのは金融業(銀行等)となっている。
<付表数字の対象会社>
[国内保険会社 28社] あいおいニッセイ同和、アイペット損保、アクサ損保、朝日火災、アニコム損保、アメリカンホーム、
アリアンツ火災、イーデザイン損保、エイチ・エス損保、AIU、エース損保、SBI損保、au損保、共栄火災、
ジェイアイ、セコム損害保険、セゾン自動車火災、ソニー損保、損保ジャパン日本興亜、そんぽ24、
大同火災、東京海上日動、日新火災、日立キャピタル損保、富士火災、三井住友海上、三井ダイレクト損保、
明治安田損保
[外国保険会社 13社]
スター、ゼネラリ、アトラディウス、カーディフ、HDIグローバル、コファス、ロイズ、ニューインディア、
スイスリーインターナショナル、チューリッヒ、現代海上、フェデラル、ユーラーヘルメス
― 136 ―
〔付表8〕
ブロック別・代協別 正会員数・組織率(平成28年3月末現在)
代 協
ブロック
H28.3. 31現在
専業代理店
実 在 数
正会員数
組織率(%)
代 協
ブロック
H28.3. 31現在
専業代理店
実 在 数
正会員数
組織率(%)
北 海 道
1, 520
626
41. 2
滋 賀
244
132
54. 1
〈北海道計〉
1, 520
626
41. 2
京 都
586
368
62. 8
青 森
419
138
32. 9
奈 良
271
143
52. 8
岩 手
329
112
34. 0
〈近畿計〉
1, 101
643
58. 4
秋 田
290
101
34. 8
大 阪
1, 781
950
53. 3
1, 038
351
33. 8
兵 庫
996
278
27. 9
宮 城
680
258
37. 9
和 歌 山
290
190
65. 5
やまがた
290
160
55. 2
〈阪神計〉
3, 067
1, 418
46. 2
福 島
547
265
48. 4
岡 山
516
346
67. 1
1, 517
683
45. 0
鳥 取
170
109
64. 1
新 潟
581
203
34. 9
島 根
177
60
33. 9
長 野
549
235
42. 8
〈東中国計〉
863
515
59. 7
群 馬
582
246
42. 3
広 島
656
237
36. 1
1, 712
684
40. 0
山 口
358
173
48. 3
栃 木
556
135
24. 3
〈西中国計〉
1, 014
410
40. 4
茨 城
757
241
31. 8
徳 島
222
116
52. 3
埼 玉
1, 319
390
29. 6
香 川
226
153
67. 7
千 葉
1, 366
376
27. 5
愛 媛
365
146
40. 0
〈東関東計〉
3, 998
1,142
28. 6
高 知
195
123
63. 1
神 奈 川
1, 520
485
31. 9
〈四国計〉
1, 008
538
53. 4
山 梨
236
127
53. 8
福 岡
1, 342
579
43. 1
〈南関東計〉
1, 756
612
34. 9
大 分
328
151
46. 0
東 京
2, 916
918
31. 5
佐 賀
202
115
56. 9
〈東京計〉
2, 916
918
31. 5
長 崎
324
184
56. 8
静 岡
1, 014
267
26. 3
〈九州北計〉
2, 196
1, 029
46. 9
愛 知
1, 589
568
35. 7
宮 崎
294
162
55. 1
岐 阜
533
228
42. 8
熊 本
435
255
58. 6
三 重
512
225
43. 9
鹿 児 島
396
178
44. 9
3, 648
1,288
35. 3
沖 縄
397
160
40. 3
富 山
296
141
47. 6
〈九州南計〉
1, 522
755
49. 6
石 川
297
164
55. 2
〈全国合計〉
29, 703
12, 047
40. 6
福 井
234
130
55. 6
〈北陸計〉
827
435
52. 6
〈北東北計〉
〈南東北計〉
〈上信越計〉
〈東海計〉
(※勤務型代理店等の登録数を除く)
※
(専業代理店)組織率60%以上:香川
(67. 7%)
、岡山
(67. 1%)
、和歌山
(65. 5%)
、鳥取
(64. 1%)
、高知
(63. 1%)
、京都
(62. 8%)
の6代協。
※50%以上:熊本(58. 6%)、佐賀(56. 9%)、長崎(56. 8%)
、福井
(55. 6%)
、石川
(55. 2%)
、やまがた
(55. 2%)
、宮崎
(55. 1%)、
滋賀(54. 1%)、山梨(53. 8%)、大阪(53. 3%)、奈良
(52. 8%)
、徳島
(52. 3%)
の12代協。
※ブロック単位:東中国(59. 7%)、近畿(58. 4%)、四国
(53. 4%)
、北陸
(52. 6%)
※30%未満:栃木(24. 3%)、静岡(26. 3%)、千葉(27. 5%)
、兵庫
(27. 9%)
、埼玉
(29. 6%)
の5代協。
― 137 ―
〔付表9〕
福岡県代協 会員数の推移
70
700
年度
年度末会員数
入会数
579店
退会数
600
60
50
500
378店
400
40
300
30
200
20
100
10
0
H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27
〔付表10〕
福岡県代協 会員増強データ
年度
前年度末
会員数
入会数
退会数
増減
年度末
会員数
H. 11
441
23
60
△ 37
404
H. 12
404
25
30
△ 5
399
H. 13
399
30
45
△ 15
384
H. 14
384
25
26
△ 1
383
H. 15
383
26
31
△ 5
378
H. 16
378
47
27
20
398
H. 17
398
41
16
25
423
H. 18
423
43
27
16
439
H. 19
439
44
33
11
450
H. 20
450
46
40
6
456
H. 21
456
40
26
14
470
H. 22
470
38
21
17
487
H. 23
487
47
26
21
508
H. 24
508
36
15
21
529
H. 25
529
44
28
16
545
H. 26
545
39
24
15
560
H. 27
560
44
25
19
579
※年度末会員数は平成15年度をボトムとして反転し、12年連続で増強している。
※昨年度は、平成15年度末対比+201店(約153%)の増強
― 138 ―
0
12 日本代協コンベンション
■コンベンション開催の経緯
平成21年8月に、本会の正会員資格を、個々の代理店から一般社団法人格を取得した全国47都道府県の代
表に変更する定款変更の認可を取得した。これによって本会の総会参加者は、個々の代理店から各代協の会
長に変更になり、全国の代協会員が集う機会がなくなることとなった。そこで、新たな交流の機会を設ける
こととし、平成23年度にコンベンションという形に装いを変え、総会とは別の時期に開催することとしたも
のである。
開催に当たっては「小さく生んで大きく育てる」を合言葉とし、先ずは従来の総会規模(参加者数350名
程度)を前提にすることとした。また、開催プランの検討は、東京代協の若手会員と日本代協事務局による
コンベンションプロジェクトチーム(PT)で進めることとし、平成22年12月から活動を始め、翌23年11月
に最初のコンベンションを開催した。以後、毎年11月に定例イベントとして開催している。
■コンベンションの目的
従来の総会・代協会員懇談会に代わる全国代協会員が集い、語らう場と位置付け、併せて業界関係者を含
めた情報交換と経験交流を行うことを目的として開催している。
なお、従来総会終了後の業界関係者を交えた懇談会については、損保協会主催で実施されていたが、コン
ベンションを開始する際に、これを日本代協主催の会費制の会合に改めた。
■第1回コンベンションの開催
⑴ テーマ:
平成23年3月11日に発生した東日本大震災において、自ら被災しながらも契約者のために尽力した被災
地代理店の経験、教訓を踏まえ、全体テーマを『震災を通して代理店の価値を考える』とした。なお、震
災からの復旧・復興の最中であるとともに、原発の影響が現実の危機として続いていたことを踏まえ、華
美を排し、手作り感を打ち出しながら開催することとした。
⑵ 日程・内容:
◇平成23年11月18日(金)12:30~17:00 式典の部 [於:ヤクルトホール(約350名)]
① 式典 [来賓]
金融庁監督局保険課長 小原 広之 様・日本損害保険協会 専務理事 浅野 広視 様
② 功労者表彰式 [功労者]
加納 敏孝 様(愛知県代協)・髙山 本丸 様(京都代協)・前田 房夫 様(大阪代協)・
須藤 正巳 様(故人・岡山県代協)・平岡 俊二 様(徳島県代協)・千守 隆 様(愛媛県代協)
③ キャンペーン表彰式 [平成23年2月会員増強キャンペーン目標達成代協]
26代協(北海道、宮城、やまがた、福島、新潟、栃木、茨城、千葉、岐阜、三重、富山、滋賀、京都、奈良、
大阪、兵庫、和歌山、島根、徳島、香川、高知、福岡、大分、佐賀、宮崎、熊本/代表:福岡県代協)
④ 代協会員懇談会 [コーディネーター:山中副会長]
― 139 ―
⑤ 被災地代理店によるパネルディスカッション [コーディネーター:岡部会長]
[パネリスト] 藤原 真琴 氏(岩手県代協副会長/ MS岩手株式会社)
小林 良昭 氏(宮城県代協副会長/株式会社エス・ハート)
尾形 京平 氏(宮城県代協/東海あんしんサポート株式会社)
石塚 健二 氏(福島県代協/有限会社S・BC)
山本 惠一 氏(福島県代協/有限会社ハート・&・ハート)
◇平成23年11月18日(金)18:00~20:00 懇親会の部 [於:東京第一ホテル(約450名)]
業界関係者一同に会した懇親会として開催
① 来賓ご挨拶:日本損害保険協会 会長 隅 修三 様(東京海上日動社取締役社長)
② 被災地からのメッセージ:被災地代協代表挨拶、復興への決意表明
被災地銘酒・名産品紹介と支援のお願い
◇平成23年11月19日(土)10:00~15:00 分科会の部 [於:損保会館(約300名)]
① 基調講演:日本損害保険協会 常務理事 栗山 泰史 様 「損保代理業の明日を考える」
② 分科会(ゼミ形式):
[野崎ゼミ]:「ハザードマップを活用した防災・減災活動」
野村総研 野崎 洋之 様
[中崎ゼミ]:「お客様目線の事業承継を考える」
保険ジャーナリスト 中崎 章夫 様
[北村ゼミ]:「やりがいのもてる職場環境とは」
臨床心理士 医学博士 北村 勉 様
[圡川ゼミ]:「I-netを活用した地域密着型保険経営のヒント」
名案企画 圡川 尚己 様
⑶ 評価
コンベンションとしては初めての試みであったが、プログラム全体を通して参加者からは概ね高い評価
を頂いたので、平成24年度も同規模、同スタイルで開催することとなった。
■第2回コンベンションの開催
⑴ テーマ:
第1回目のコンベンションは「代理店の価値」を再認識する機会となったが、価値は消費者が決めるこ
とであり、
「価値がある」ことを認めてもらう必要がある。そのためには、地域において「困った時に
真っ先に顔が浮かぶ存在になる」ことが必要であり、第2回目のコンベンションは、代理店ブランドを考
える契機にしようとの方向性が定まった。一方で、ブランドは大企業のものであり、地域の専業代理店の
ような小規模事業者にブランドは構築できるのか、という問いかけにも答える必要があるとの認識の下で、
『地域における代理店ブランドを考える』をテーマに開催することとした。
⑵ 日程・内容:
◇平成24年11月16日(金)12:30~17:00 式典の部 [於:ヤクルトホール(約350名)]
① 式典 [来賓]
金融庁監督局保険課長 小原 広之 様・日本損害保険協会 専務理事 浅野 広視 様
② 功労者表彰式 [功労者]
長尾 忠正 様(北海道代協)・長野 稔泰 様(埼玉県代協)・剣持 正明 様(山梨県代協)
坂上 正則 様(三重県代協)・本田 勝久 様(京都代協) ・藤本 宏志 様(山口県代協)
葛石 賢秀 様(香川県代協)・平田 正次 様(佐賀県代協)・前田 清 様(宮崎県代協)
大城 勝也 様(沖縄県代協)
― 140 ―
③ キャンペーン表彰式 [平成24年2月会員増強キャンペーン目標達成代協]
14代協(山梨・岐阜・石川・福井・滋賀・京都・奈良・和歌山・岡山・香川・高知・福岡・大分・長崎)
④ 代協会員懇談会 [コーディネーター:泉副会長]
⑤ 基調講演 テーマ:「小が大を超える ― マーケティングの法則」
講 師:静岡県立大学経営情報学部 教授 岩崎 邦彦 様
◇平成23年11月18日(金)18:00~20:00 懇親会の部 [於:東京第一ホテル(約450名)]
① 来賓ご挨拶:日本損害保険協会 会長 柄澤 康喜 様(三井住友海上社代表取締役社長)
② ご当地ブランド紹介:南九州ブロック(宮崎県・鹿児島県・沖縄県の名産品・銘酒紹介)
◇平成24年11月17日(土)10:00~15:00 分科会の部 [於:損保会館(約300名)]
[岡部ゼミ]:「実践者に聞く『地域に認知される代理店』のあり方とは」(司会:岡部会長)
・株式会社dii 代表取締役 永井 伸一郎 様(岐阜県代協)
・株式会社藤吉保険事務所 代表取締役 藤吉 友子 様(岐阜県代協)
[中崎ゼミ]:「不況下でも躍進する代理店に学ぶ これからの専業代理店の事業のあり方」
保険ジャーナリスト 中崎 章夫 様
[圡川ゼミ]:「インターネットを活用した地域密着型保険代理店経営のヒント」
名案企画株式会社 代表取締役 圡川 尚己 様
[安東ゼミ]:「地域密着の代理店としてのブランドづくり」
株式会社ブレインマークス 代表取締役 安東 邦彦 様
⑶ 評価
1回目と同規模・同スケジュールの開催であったが、プログラム全体を通して参加者からは高い評価を
頂くことができた。特に、岩崎先生の講演は、地域に根ざす小規模事業者に勇気と元気を与える素晴らし
い内容で大きな反響を呼び、各代協で個別にセミナーを開催するケースが相次ぐ等、代協会員の関心の高
さが窺えた。
■第3回コンベンションの開催
⑴ テーマ:‌
代理店としての存在価値の在処も分かった、小規模企業のブランド作りのポイントも分かった…とは
言っても、代理店を一つの企業として見たときの魅力を高めていかないと、人材は集まらず、持続的発展
も望めないこととなる。そうした認識の下で、社員にとって働きたい会社、働きやすい会社はどうあるべ
きか考える機会を持ちたいとの思いで、第3回目のテーマを『“魅力ある企業”としての代理店を考える』
とし、代理店主の経営品質向上の機会にすることとした。
なお、開催に当たっては、東京に加え、神奈川・埼玉・千葉の各代協の若手会員でプロジェクトチーム
を構成し、アクションプラン策定と推進に当たった。
⑵ 日程・内容:
◇平成25年11月15日(金)12:30~17:00 式典の部 [於:ヤクルトホール(約350名)]
① 式典 [来賓]
金融庁監督局保険課長 諏訪園 健司 様・日本損害保険協会 専務理事 浅野 広視 様
② 功労者表彰式 [功労者]
武田 忠穂 様(宮城県代協)・関根 茂 様(埼玉県代協) ・大江 金男 様(岐阜県代協)
瀧山 健次 様(滋賀県代協)・保田 定昭 様(和歌山県代協)・田中 仁 様(福岡県代協)
― 141 ―
③ 代協会員懇談会 [コーディネーター:泉副会長]
④ 日本代協アドバイザー就任ご挨拶[丸紅セーフネット株式会社 常勤監査役 栗山 泰史 様]
⑤ 基調講演 テーマ:「成果の出る組織と出ない組織の違い」
~オペレーション能力ではなくマネジメント能力に着目せよ~
講 師:株式会社静鉄ストア 代表取締役会長(当時)
名古屋商科大学大学院マネジメント研究科(MBA)客員教授 望月 広愛 様
◇平成25年11月15日(金)18:00~20:00 懇親会の部 [於:東京第一ホテル(約450名)]
① 来賓ご挨拶:日本損害保険協会 会長 二宮 雅也 様(日本興亜損保社代表取締役)
② ご当地ブランド紹介:西中国ブロック(山口県・広島県の名産品・銘酒紹介)
◇平成25年11月16日(土)10:00~12:00 分科会の部 [於:損保会館(約300名)]
[P T ゼ ミ ]:「夢を持てる保険代理業とするために」(司会:杠葉PTサブリーダー)
・株式会社ウォーム 奥田 耕平 様(東京代協)
・株式会社小酒保険 代表取締役 小酒 廣士 様(石川県代協)
[中崎ゼミ]:「製販分離時代の代理店組織化の留意点」
保険ジャーナリスト 中崎 章夫 様
[圡川ゼミ]:「魅力ある企業としての代理店を考える」
ファシリテーター:名案企画株式会社 代表取締役 圡川 尚己 様
パネラー:株式会社コスモワーク 代表取締役 朝倉 憲太郎 様
伊藤保険株式会社 代表取締役 伊藤 由美子 様
有限会社トータルサポート 代表取締役 田村 淳 様
[安東ゼミ]:「プロ代理店が『家業』から『企業』になる方法」
株式会社ブレインマークス 代表取締役 安東 邦彦 様
■第4回コンベンションの開催
⑴ テーマ:
過去3回のコンベンションで提起された、お客様との関係のあり方、保険会社との関係のあり方、社員
との関係のあり方等、代理店を取り巻く全ての関係者との信頼関係構築の基盤となる「コミュニケーショ
ン」の原点を学ぶ機会とすることを目的として、『代理店におけるコミュニケーションのあり方を考える』
をテーマに開催した。
⑵ 日程・内容:
◇平成26年11月14日(金)12:30~17:00 式典の部 [於:ヤクルトホール(約350名)]
① 式典 [来賓]
金融庁監督局保険課長 諏訪園 健司 様・日本損害保険協会 専務理事 堀 政良 様
② 功労者表彰式 [功労者]
大島 昭夫 様(愛知県代協)・髙橋 幸雄 様(奈良県代協)・大島 晏 様(大阪代協)
松村 建造 様(和歌山県代協・故人)・村上 公明 様(愛媛県代協)
酒匂 康男 様(鹿児島県代協)
③ 代協会員懇談会 [コーディネーター:小出副会長]
④ 基調講演 テーマ:「現役道化師から学ぶ組織・社内環境をプラスに変えるコミュニケーション手法」
講 師:NPO法人 日本ホスピタルクラウン協会 理事長 大棟 耕介 様
― 142 ―
◇平成25年11月15日(金)18:00~20:00 懇親会の部 [於:東京第一ホテル(約450名)]
① 来賓ご挨拶:日本損害保険協会 会長 櫻田 謙悟 様(損害保険ジャパン社代表取締役)
② ご当地ブランド紹介:近畿ブロック(滋賀、京都、奈良の名産品、銘酒紹介)
◇平成25年11月16日(土)10:00~12:00 分科会の部 [於:損保会館・ホテル聚楽(約300名)]
[P T ゼ ミ ]:名案企画株式会社 代表取締役 圡川 尚己 様(ファシリテーター)
「好取組代理店によるパネルディスカッション」
渡辺 健一 様(有限会社渡辺総合保険事務所 代表取締役:宮城県代協)
絹田 翠々英 様(株式会社ABC 代表取締役:岡山県代協)
葭谷 広行 様(ユナイテッド・インシュアランス株式会社 代表取締役:埼玉県代協)
[中崎ゼミ]:保険ジャーナリスト 中崎 章夫 様
「法改正動向を踏まえた保険会社の事業戦略・プロ代理店に期待していること」
[増島ゼミ]:森・濱田松本法律事務所 弁護士 増島 雅和 様(元金融庁保険課在籍)
「募集制度の変革に伴う代理店のあり方」
~小規模損害保険代理店における体制整備のあり方を中心として~
[松本ゼミ]:株式会社A. I. P 代表取締役 松本 一成 様(東京代協)
「リスクマネジメント視点からの法人マーケット開拓」
~企業経営の支援者としての保険提案について~
■第5回コンベンションの開催
⑴ 開催場所の選定:
第5回コンベンションの開催に当たっては、今後の開催場所についてビジョン委員会で論議を行った。
その結果、会場手配、交通手段、講師手配、損保協会役員や各保険会社の社長等の懇親会への出席、企画
運営の負担等を考慮し、当面は東京もしくはその近郊開催を前提に検討を進めることとなった。
これを受けて第5回目のコンベンションについては、各代協へのアンケート結果を考慮して開催規模を
少し拡大するとともに、会場の移動がないホテルを手配することとし、東京・お台場のホテルLE DAIBA
にて開催した。
⑵ テーマ:
多様な人材の能力を引き出し、組織としての力を発揮しながら持続的に成果を生み出していくために最
も重要な「経営者の資質」について考えることとし、「代理店のマネジメントのあり方を考える」~個人
の能力を引き出し、組織の力を高める~ をテーマに開催することとした。
⑶ 日程・内容:
◇平成27年11月13日(金)12:30~17:00 式典の部 [於:ホテル LE DAIBA(約350名)]
① 式典 [来賓]
金融庁監督局保険課長 井上 俊剛 様・日本損害保険協会 専務理事 堀 政良 様
② 功労者表彰式 [功労者]
米川 武夫 様(千葉県代協・故人)・鈴木 啓喜 様(愛知県代協)・関本 誠一郎 様(京都代協)
山本 誠 様(大阪代協)・都筑 定宣 様(高知県代協)
③ 代協会員懇談会 [コーディネーター:小出副会長]
― 143 ―
④ 基調講演 テーマ:「チームマネジメント ~今治からの挑戦~」
講 師:サッカー日本代表 元監督 岡田 武史 様
◇平成27年11月13日(金)17:30~19:30 懇親会の部 [於:同上(約470名)]
① 来賓ご挨拶:日本損害保険協会 会長 鈴木 久仁 様
② ご当地ブランド紹介:北海道代協
◇平成27年11月14日(土)10:00~12:00 分科会の部 [於:損保会館・ホテルジュラク]
[高林ゼミ]:「保険業法改正とコンプライアンス」
高林 真一郎 様(イーエデュケーション株式会社 顧問)
[中崎ゼミ]:
「改正保険業法を踏まえた、製販分離時代の勝ち残れるプロ代理店の目指す姿」
中崎 章夫 様(保険ジャーナリスト)
[圡川ゼミ]:「成果の上がる強いチームのつくりかた」圡川 尚己 様(ファシリテーター)
<パネラー>安島 裕子 様(有限会社ハロー保険サービス 代表取締役:福島県代協)
加藤 睦 様(株式会社ベストパートナー 代表取締役:神奈川県代協)
三根生 啓太 様(株式会社イーズコーポレーション:愛媛県代協)
[弘田ゼミ]:「直資代理店を経営して気づいたプロ代理店の経営マネジメントと事業戦略のヒント」
弘田 拓己 様(三井住友海上 営業企画部部長)
⑷ 評価
過去4回目まで使用した会場を変更して開催したが、プログラム全体を通して参加者からは高い評価を
頂くことができた。なお、式典会場についてはやや手狭な印象があり、椅子の配置や演台の高さ等、細か
な改善が必要であることが判明したため、次回以降に活かすこととした。一方で、懇親会会場が従来の
2倍近い広さになっこと、喫煙場所が確保されたこと、ホテル故にフロアが広く開放感があったことなど
により、運営サイドの環境は大きく改善されることとなった。
これを踏まえ、第6回コンベンションも同ホテルにて同規模で開催することとした。
■第6回コンベンションの開催(案)
1. 目的
・各都道府県の代協会員が“集い、語らう場”として開催し、テーマに沿った基調講演、分科会を通して
代理店経営の気づきを提示するとともに業界の更なる発展に向けた意思結集を図る。
・業界関係者を含めた情報交換の場を設け、親睦を図り、日本代協の存在感を高める。
2. テーマ
・
『消費者から見た代理店のあり方を考える』
改正保険業法の施行により、募集プロセス、お客さまとのかかわり方が抜本的に変わりつつある中、改
めて消費者から求められる(選ばれる、必要とされる)代理店の価値、経営品質を考える契機とするこ
とを目的として上記テーマで開催する。
3. 実施日
・平成28年11月4日(金)13:00 ~ 11月5日(土)12:00(※開会時間は昨年度から30分繰り下げ)
― 144 ―
4. 開催規模
・昨年と同一会場で、同程度の規模とする(式典・懇談会:約400名、懇親会:約500名)。
・昨年までは、参加できない全国の代協会員に向けて、USTREAMによるライブ配信をしていたが、映
像・音声の調整が難しく、また、オンタイムで視聴できない会員もいるため、収録した映像を式典終了
後速やかにYouTubeで一定期間配信する(事前周知を行う)。
5. 開催内容
・第1部(式典・代協会員懇談会・基調講演の部)、第2部(懇親会)、第3部(分科会)の3部構成
6. 運営
・東京、千葉、埼玉、神奈川各代協の若手メンバーと東京代協・日本代協の事務局によるプロジェクト
チームで企画・運営を行う。
7. 開催場所
・式典・懇談会、懇親会:ホテルグランパシフィック LE DAIBA(東京都港区台場2-6-1)
(※7月1日より、「グランドニッコー東京 台場」に名称変更)
・分科会:損保会館、ホテルジュラク(東京都千代田区神田淡路町2-9)
三井住友海上本社新館会議室(東京都千代田区神田駿河台3-9)
8. 日程・内容
⑴ 第1部:
『式典・代協会員懇談会・基調講演の部』
[11月4日(金)13:00~17:30 ホテルグランパシフィック LE DAIBA]
① 『式典』:来賓ご挨拶・功労表彰など
② 『代協会員懇談会』:事前質問への回答+フリートーク
③ 『基調講演』:有限会社ベルテンポ・トラベル・アンドコンサルタンツ
代表取締役 高萩 徳宗 様
⑵ 第2部:
『懇親会の部』
[ 同 18:00~20:00 ホテルグランパシフィック LE DAIBA]
・損保協会、各保険会社社長、金融庁、政連顧問議員等を含めた業界関係者、全国代協会員の経験交
流、意見交換の場として実施
・代協の紹介を兼ねたご当地PRを実施(担当:東海ブロック)
・震災復興支援としての募金活動を実施
⑶ 第3部:
『分科会の部』
[11月5日(土)10:00~12:00 損保会館・ホテルジュラク・三井住友海上本社新館会議室]
○ テーマ別分科会:⇒4つの分科会(ゼミ)で、基調講演の内容を保険業界に落とし込んで論議
○ ゼミ講師
1ゼミ:坂東 俊矢 氏(弁護士 京都産業大学大学院教授 そんぽADRセンター紛争解決委員)
2ゼミ:中崎 章夫 氏(日本代協アドバイザー:保険ジャーナリスト)
3ゼミ:栗山 泰史 氏(日本代協アドバイザー:株式会社丸紅セーフネット 常勤監査役)
4ゼミ:山中 伸枝 氏(一般社団法人 公的保険アドバイザー協会 理事)
― 145 ―
13 代理店賠責の推進と代理店経営品質向上への取り組み
■代理店賠責創設の経緯
平成11年4月に代協会員の要請を受けた米国のリバティ保険会社が、伊藤忠インシュランス・ブローカー
を通じて損害保険代理店賠償責任保険を開発したのが発端である。その後、理事会で日本代協としての制度
創設を検討したが、その際は担保範囲が不明確で次期尚早との結論となり、制度採用は各代協の判断に委ね
ることとなった。
その後、平成12年5月に消費者契約法、金融商品販売法が成立し、代理店もコンプライアンスの徹底が強
く求められる時代になったこと、また、東京代協から度々検討要請を受けたこと等から、平成13年6月の理
事会において、保険業法第283条第3項による「保険会社から代理店に対する求償への備え」として、改め
て制度創設に向けた検討を行うことが決定し、企画環境委員会に諮問された。
同委員会において審議の結果、保険制度の創設を積極的に推進することとなり、同年2月の理事会で承認
の後、平成14年7月1日付で日本代協としての代理店賠償責任保険制度がスタートした。
■代理店賠責の一本化
一方、日本代協としての制度創設が進まないことに危機感を持った東京代協では、共済と保険のハイブ
リッド型となる「職業賠償共済」(保険部分の引受はAIU社)を独自に開発し、日本代協の制度に1年先行
する形で平成13年5月から募集を開始させていた。このため、日本代協の制度がスタートした平成14年7月
以降は、東京代協と日本代協の二本の制度が併進する状態となった。
こうした状況に対して多くの代協会員から制度の一本化を望む声が上がり、平成16年夏から一本化に向け
た検討が開始された。
検討の結果、両制度の利点を取り入れ、代協加盟代理店に更にメリットがある制度とすることで合意に達
し、上記記載の通り、平成14年2月の理事会で一本化が承認され、同年7月1日よりアリアンツ火災を元受
保険会社とする「代理店賠責『新日本代協プラン』」がスタートすることとなった。
「新日本代協プラン」は、東京代協の職業賠償共済で補償していた部分をほぼ取り入れた上で、新たに個
人情報漏えいに係る対応費用部分を補償範囲とし、更に補償限度額を2倍に引き上げた。これらの対応によ
り、補償内容は大幅に拡充されるとともに、保険料は低廉な価格のまま据え置かれたため、代協加盟代理店
にとって更に魅力ある制度に生まれ変わることとなった。
■引受保険会社の変遷
⑴ アリアンツ火災引受けの経緯
同プランの引受先については、検討当初は米国のリバティ保険会社を想定していたが、同社が米国にお
ける同時多発テロの影響を受けて日本市場から撤退することとなった。そのため、同社の推薦でアリアン
ツ火災が引き受けることとなり、平成23年度契約分まで同社が元受保険会社となった。(平成22年度契約
までは7月1日始期であったが、平成23年度契約以降は、他業務の繁忙度を踏まえ、事務ロードを平準化
するために始期日を10月1日に変更して募集を行っている。)
― 146 ―
⑵ エース保険への変更
平成24年度の更新契約においては、エース保険から補償内容をより充実させたプランの提案を受けたた
め、理事会で審議の結果、元受保険会社を変更することとなり、名称も『日本代協新プラン』と変えて募
集を行うこととなり、現在に至っている。(注:同社は、買収に伴い、平成28年10月1日付けで「Chubb
(チャブ)保険会社」に社名変更の予定である。)
なお、大手企業代理店の会員においては、1事故1億円というリミットの低さが加入のネックになって
いる面もあるため、平成27年度契約から、補償金額を増額するプランも提供できるよう制度内容の改善を
行った。
■本制度に対する基本的なスタンス
プロの保険代理店としては、不断の努力を積み重ねて自社の経営品質向上を図り、適切・的確な保険募集
の遂行並びに内部事務管理態勢の整備等により、契約者等とのトラブルを未然に防止することが最優先の取
り組み課題である。
一方で、自らの行動(代理店としての行動)が招いた結果に責任を負えるだけの賠償資力を確保すること
は保険募集のプロとして重要なことである。(注:本保険は言い掛かり的な訴訟時の防御費用等も対象とな
るのみならず、施設賠責なども含めた代理店総合賠償プランになっている。)また、保険契約の性格上、保
険金の支払いを巡る巨額賠償事案も想定されるため、全てのケースに代理店の内部留保で対応することは困
難であり、各代協会員は漏れなく『代理店経営のプロテクター』となる本制度へ加入することが必要である。
更に、平成28年5月施行の改正保険業法において、募集人に対して直接情報提供義務等が課され、また、
代理店に対しても体制整備義務が課されることから、特に乗合代理店においては、顧客との賠償疑義事案に
おける保険会社サイドの責任割合は縮減される方向に向かうことが想定され、代理店賠償責任保険の重要性
は極めて大きくなっている。
こうした環境を踏まえ、日本代協としては、別個登録店、AIU代理店会所属代理店の会員(AIU社による
別制度有)を除き、代協会員100%加入を目指す。
■本制度の健全な普及のための取り組み
① 未加入会員や非会員の代理店に対し、事故例集等を用いて情宣と加入案内を行う(各代協)
② エース社の協力の下、各地域で「代理店賠責セミナー」を開催し、本制度の普及を図る(各代協)
③ 「経営品質向上委員会」を定期的に開催し、事故例等の分析結果をフィードバックすることによって、
各代協会員の日常行動の改善に活かしてもらう。(日本代協)
④ 学識経験者等で構成される「代理店賠償責任保険審査会」を開催し、本制度の健全・公平な運営を図
る。
(日本代協…本年度は年2回開催予定であり、1回目は平成28年7月27日開催済)
⑤ 各保険会社の業務連絡会等を活用してセミナーを開催し、本制度への理解を深める。(各代協)
⑥ 保険会社の本社担当部門並びに代理店担当社員に保険業法第283条の趣旨(使用者賠償の特例)を十
分に理解してもらい、保険会社に生じる責任と本制度採用によるメリットを認識してもらう。(日本代
協・各代協)
⑦ 円滑な事故処理のため、エース損保と各保険会社担当部門との折衝ルートを構築する。(日本代協)
― 147 ―
■代理店賠責の概要(平成28年度更新契約)
□契約方式:日本代協を契約者とし、代協正会員を被保険者とする団体契約
□募集時期:8月中旬から案内開始
□補償内容:<基本補償プラン>
① 代理店賠償・受託財物・施設賠償
=1事故1億円・期間中3億円(5万円フランチャイズ)
② 争訟費用=1事故2, 000万円・期間中6, 000万円
③ 個人情報漏えい見舞金=1事故・期間中500万円(見舞金@500円) 等
<高額保障プラン(平成27年度新設)>
①・② 代理店賠償・受託財物・施設賠償・争訟費用 =1事故・期間中合算3億円(エクセス100万円)
③ 個人情報漏えい見舞金=1事故・期間中500万円(見舞金@500円)…基本補償に同じ
※基本補償プランと高額保障プランのレイヤーは不可
高額保障の保険料は基本補償の平均約1. 4倍の水準
なお、高額保障プランは企業代理店等の大規模代理店のニーズに応えるものであり、加
入手続きは個別対応を行う。
□保険期間:平成28年10月1日~1年間
□保険料水準:平成27年度契約と同じ(平成21年度契約から同水準を維持)
※
□割 増 引:団体割引・優良割引・損害保険トータルプランナー割引(8月末認定者ベース)
先行行為補償特約10%割増
(※従来の認定保険代理士割引の廃止に伴い平成27年度契約から新設。割引の考え方は従来
同様である。)
□勤務型代理店等の取り扱い(委託型募集人から「3者間契約スキーム」を選択して統括代理店傘下の個
人代理店に移行した場合の取り扱い)
:統括代理店の募集人にカウントし、統括代理店が保険加入手続
きを行う。(当該個人代理店単独での加入はできない)
(注:
「3者間契約スキーム」に関する損保業界の標準ひな形では、教育・指導・管理を行う親代理店を
「統括代理店」、統括代理店の下で保険募集を行う個人代理店を「勤務型代理店」と呼称しているが、保
険会社によっては「非統括代理店」あるいは「新設代理店」等と呼ばれている。名称が異なるだけでス
キーム上の位置づけは同じである。)
□直近加入率:平成28年3月末時点:10, 027店/加入率=83. 2%(制度創設以来、初めて1万店を突破)
― 148 ―
14 CSR活動の推進
〈地球環境保護・社会貢献活動への取り組み〉
■CSR活動への取り組みの意義
損害保険に携わるものとして、気候変動や異常気象の原因となる地球環境の保護に関わる活動を行うこと
は重要であり、日本代協では平成10年2月に地球環境問題研究会(※)を立ち上げ、「組織としての社会的使
命・責任を果たす」ことを目的として、全国各地で活動を展開している。
(※)その後、地球環境問題研究会⇒地球環境問題対策室⇒地球環境対策室⇒地球環境・社会貢献委員会
と徐々に役割を拡大し、平成22年度にCSR委員会に引き継がれ、現在に至っている。この間、平成
19年度からは社会貢献活動も取り組み領域に加え、様々な取り組みを行っている。
地球環境保護・社会貢献活動を主体とするCSR委員会の取り組みは、日本代協の重要な事業であり、個人
として取り組むものは個人として、組織として取り組むものは組織一体となって、引き続き積極的に取り組
みを進めることとする。(全国の代協・支部における様々な活動については、日本代協HP参照)
■地球環境保護への取り組み
⑴ 代協正会員が実行すべき基本行動
環境省が進める低炭素社会の実現(※)に向けて、以下の3項目を会員各自が実行すると定めており、代
協会員自身が意識して取り組む必要がある。
① 紙の使用削減に努める(両面コピー、縮小印刷、電子ファイル、WEB証券の活用等)
② ゴミの削減に努める(リサイクル、リユース等を含む)
③ 駐車中は自動車のエンジンを切る(エコカーに乗り換える等を含む)
(※)有効な気候変動対策が取られなかった場合、21世紀末までに地球の平均気温は現在に比べ、4. 8℃
上昇、平均海面水位も82㎝上昇する可能性が高いと試算されている。
⑵ 各地域における活動の活性化
地域の実情に応じた様々な環境保護活動(植林、清掃等)を、代協・支部単位で実施することがこの活
動の基本であり、引き続き地域密着で継続的に取り組むこととする。
実施にあたっては「ボランティア・グリーン活動ガイドブック」(日本代協書庫にファイル掲載)を活
用するとともに、従業員、家族のみならず損保協会や各保険会社社員等にも広く声をかけ、業界一体と
なって取り組む風土作りを各代協や支部がリードして行うことが望ましい。
また、主催することに拘らず、他団体主催のイベントへの協賛等の形で参画することも考えられる。い
ずれにしても、各代協会員が自ら出来ることは夫々取り組むとともに、各代協・支部で創意工夫を発揮し、
「継続的に(続けることに意味がある)」
「楽しく(楽しくないと続かない)」
「出来る限り多くの人たちと(多
数の参加の機会になる)」、ともにいい汗を流して、環境保護につながる活動を実践していくことが期待さ
れる。
⑶ エコバッグの斡旋
平成19年4月1日に、改正容器包装リサイクル法が施行(※)され、スーパーやコンビニ等のレジ袋が有
料化された。
(※日本では一人当たり年間300枚のレジ袋が使用され、多くがゴミとなっている。また、レ
ジ袋1枚につき約18. 3mlの石油が使用されており、国全体では、1秒当たり約967枚、2ℓのペットボト
― 149 ―
ル換算で約8. 9本分の石油が費消されており、大事な資源を投げ捨てていることになる。)
こうした環境を受けて、日本代協では、マーク入りのエコバッグを製作し、会員・契約者・一般消費者
に提供している。平成27年度はデザインを刷新し、約1万1千個を新たに提供した。(累計約8万6千個)
■地域社会貢献活動への取り組み
⑴ 基本方針
地域に密着した活動を通して社会に役立つ存在となることを目指す日本代協グループにとって、各種ボ
ランティア活動による地域社会への貢献は、重要な取り組みであり、本年度も各代協・支部の創意工夫の
下で、損保協会や損保会社の社員の参画も得ながら、計画的に実施する。
⑵ 草の根活動の展開
全国各地で献血、チャリティ、救命士講習(AED講習)、介護施設や恵まれない子供たちへの支援等、
様々な活動が展開されている。こうした草の根の運動が日本代協グループの基本であり、引き続き地道に
展開していく。
■地震保険の啓発・普及促進
家屋・家財に対する地震補償の必要性を広く消費者に周知し、自助としての地震保険の存在をPRしてい
くことは、地震国日本における損保業界の重要な社会的責務である。政府も平成18年度の税制改正において、
「地震保険料控除制度」を新たに創設する等、様々な地震対策を進めており、地震保険の普及は国家的課題
となっている。
特に、平成23年3月11日に発生した東日本大震災以降、未曽有の被害を目の当りにした国民の間に危機意
識が高まり、地震保険の付帯率が増加している。こうした情勢も踏まえ、引き続き、地震保険の啓発・普及
キャンペーンを展開し、万が一の震災、津波、噴火の際の生活再建の備えとなる地震保険の普及を図っていく。
日本代協においては、平成17年度から新潟県中越地震が発生した10月(23日)を「地震保険の月」と定め、
全国各地で一斉キャンペーンを実施し、地震保険の啓発・普及促進活動を展開している。(情宣チラシ、
ティッシュ 55, 000セットを全国の街頭で配布)
平成26年度は、通年の取り組み以外に、国連防災世界会議の仙台開催(3月)にあわせ、宮城・新潟・兵
庫の3県で地震保険啓発のための特別キャンペーンを実施した。
平成27年度は、損保協会が指定した地震保険重点広報地域11か所で開催された「防災・地震フォーラム」
に参画し、各代協会長等がパネリストとして登壇し、地域住民に対して地震保険の仕組み・必要性を講演した。
何よりも重要なのは、代協会員自身が日々のお客様対応を通して地震保険の必要性を情宣し、地震保険の
(地震保険の普及は、代理店の意識・行動に懸かっている)
付帯率アップ(※)に率先して取り組むことである。
(※平成26年度末の火災保険付帯率は全国計で59. 3%[前年比+1. 2P]、世帯加入率は28. 8%[前年比+0. 9P])
■交通安全への取り組み
⑴ 無保険車追放キャンペーン
毎年9月に実施される自賠責広報協議会主催の自賠責制度PRキャンペーンに合せ、平成13年度~平成
18年度の間は郵政省と共同で、平成19年度は本会単独で、平成20年度以降は国土交通省と共同で「無保険
車追放キャンペーン」を実施しており、平成28年度も街頭でのPR活動を実施する。
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⑵ 自動車等の盗難対策
損保協会では、毎年10月7日を「盗難防止の日」と定め、消費者に対する啓発活動を行っており、本会
も毎年協力を行っている。特に、平成23年度に、日本代協が「自動車盗難等の防止に関する官民合同PT」
(警察庁主管)の正式メンバーとして承認されたことから、従来以上に主体的に参画する必要がある。
平成27年度以降は、損保協会が『特に取り組み強化が必要な地域』として指定する都道府県(平成28年
7月頃最終確定予定)において積極的に協力することとしている。
⑶ 飲酒運転撲滅運動
各代協において「生命のメッセージ展」が開催(主催または共催)されているが、平成28年度も地域の
ニーズに応じて本媒体の活用を図る。
上記に関連し、平成23年度から車社会の入口に立つ高校生を対象に、「いのちのミュージアム」事務局
と連携して、
「ゼロからの風」DVDの全国高校への無償配布事業を行ってきたが、DVDの生産終了に伴い、
平成27年度末で終了した。
⑷ 高齢者の自動車事故、自転車事故軽減への取り組み
地域密着の代理店として、近時社会問題化している高齢者の自動車事故や自転車による傷害・死亡事故
等の発生を防ぐために、地域の「老人会」等の高齢者サークルやPTA、子供会等の会合の場における継
続的な注意喚起や事故防止研修等を実施し、安心・安全な社会の実現に貢献することが求められる。
こうした取り組みは、事故そのものを削減して消費者を守ると同時に、高ロス対策にもつながり、保険
料の引き上げを抑制することにもなる。具体的な取り組みはこれからという段階であるが、損保協会とも
連携しながら進めていく方針としている。
⑸ 高校生への出前授業の展開
富山代協が自主的に始めた高校生への自動車リスク教育が徐々に他代協に浸透してきている。代協活動
らしい地道な取り組みであり、賛同者が全国に広がっていくことが期待される。(後記参照)
⑹ 各種イベントへの参加・協力等
その他、全国各地で交通安全協会が行う各種イベントへの協力等、地域に密着したボランティア活動が
行われており、引き続き各地域の実情に合せて展開を図る。
■防災・減災、防犯への取組み
⑴ 「ハザードマップ」の普及に向けた取り組み
日本代協では、平成22年から、損保協会が各地方自治体からの委託を受けて進めた「分かりやすい『ハ
ザードマップ』作り」に協力し、各代協の協力を得てハザードマップの副読本の作成に貢献した。
日々の営業活動の中で、お客様にハザードマップを見ていただき、居住地域の自然災害リスクについて
認識を深め、いざという時の避難経路を確認してもらう時間的余裕はないと考えがちである。しかしなが
ら、
「代理店の仕事はリスクに関する情報提供業」と位置付ければ、こうした地域防災に係わる情報を提
供することが仕事そのものでもあるわけであり、各代協会員が「ハザードマップの伝道師」となって、地
域への普及に貢献することが期待される。
⑵ 「ぼうさい探検隊」…防災マップ作成を通じた子供たちへの防災・減災教育の実施
「ぼうさい探検隊」とは、損保協会が実施する「子どもたちが楽しみながらまちにある防災・防犯・交通
安全に関する施設や設備などを見て回り、マップにまとめて確認する実践的な安全教育プログラム」である。
日本代協では、平成24年度からCSR委員会を中心に「ぼうさい探検隊」の取り組み強化を掲げて積極的
― 151 ―
に推進を行い、平成25年度は代協関連で89作品、平成26年度は165作品、平成27年度は312作品で総応募数
の約1割を代協会員の紹介で占める規模にまで広がっている。
東日本大震災の際、本活動を通じてマップ作成の体験をしていた小学生が、その経験を活かして難を逃
れるとともに、下級生の避難誘導を行うことができたとの報告もあり、本取り組みは地道ながらも有益な
活動であることは明確である。日本代協としては、引き続き損保協会と連携しつつ強力に推進する。
国を挙げて児童への防災・減災教育が求められる中、ハザードマップ同様、地域に根差したリスクマ
ネージャーとして地域の子供たちの防災・減災に取り組むことは、正に本業を活かした地域社会への貢献
そのものである。夏休みの自由研究や子供会のイベント等として、広く呼び掛けるとともに、代協会員が
作成指導にあたることで、地域における「リスクの専門家」としての存在感を示すことが望まれる。
なお、平成26年度の表彰式は、国連防災世界会議の開催に合せて、平成27年3月15日に仙台で実施され
た。また、同年から後援団体として日本代協賞(「キッズリスクアドバイザー賞」)を提供することとなり、
平成26年度は、「ガールスカウト千葉県第3団ジュニア部門『西船KIDS』」に、平成27年度は、「石川県か
ほく市子ども会宇ノ気支部『狩鹿野子ども会』」に贈呈を行った。
⑶ 「こども110番の家」の参画にむけた推進
国を挙げて子供に対する防犯、防災教育に取り組んでいるものの、犯罪や事件に巻き込まれるケースが
後を絶たない現状を踏まえ、平成28年度から「こども110番の家(地域によって名称は異なる)」の設置あ
るいは連携を全ての代協で推進していく。
子供に安全な場所であることを示すオリジナルプレート等を代理店事務所の見える場所に掲示し、助け
を求める子供を保護し、行政機関等に連絡することを推進する。具体的な展開方法・対外情宣については、
CSR委員会で検討する。
■グリーン基金の活用
⑴ 基本方針
本会では、平成12年度に地球環境保護に取り組んでいる団体を支援するための「グリーン基金」を設け、
寄付を行っている。その後、地域社会に対する貢献活動も寄付先に加え、小規模ながらも身の丈の寄付を
続けてきている。(毎年会費の2%相当・約200万円を目途)
寄付先の選定に当たっては、平成21年度からは公募を行うとともに、選考委員会を組成し、寄付の妥当
性を審査する態勢を整えた。
(平成27年度の選考委員には、日本損害保険協会の鈴木常務理事と損害保険
事業総合研究所の遠藤理事長が就任)
⑵ 平成27年度の寄付先一覧
全国から、自然環境保護や盲導犬育成などの活動を行っている33団体の応募があり、選考の結果、資格
要件を満たした後記の30団体に対して寄付を行った。寄付先は以下のとおりである。
なお、応募数が増加していることを踏まえ、平成28年度については、応募要件を見直す予定としている。
― 152 ―
<平成27年度日本代協グリーン基金寄付先団体と対応者>…寄付金合計:190万円
1.昨年寄付先団体かつ寄付の広報、担当代協との活動 有
6団体 各10万円
団体名
1.特定非営利活動法人 もりねっと北海道
2.特定非営利活動法人 庄内海岸のクロマツ林をたたえる会
3.盤州干潟をまもる会
4.特定非営利活動法人 未来の荒川をつくる会
5.特定非営利活動法人 世界の砂漠を緑で包む会
6.特定非営利活動法人 共生の森
2.昨年寄付先団体かつ震災被災地・被災者支援活動
2団体 各10万円
団体名
7.公益財団法人 日本補助犬協会
8.特定非営利活動法人 日本動物介護センター
3.昨年寄付先団体で、寄付の公表または担当代協との活動 無
8団体 各5万円
団体名
9.特定非営利活動法人 霧多布湿原ナショナルトラスト
10.特定非営利活動法人 山の自然学クラブ
11.特定非営利活動法人 町屋百人衆
12.特定非営利活動法人 エコ葛城市民ネットワーク
13.コウノトリ湿地ネット
14.八代のツルを愛する会
15.特定非営利活動法人 日本救助犬協会
16.チャイルドラインおおいた
4.2年以上前に応募または新規応募団体
14団体 各5万円
団体名
17.奥入瀬川クリーン対策協議会
18.特定非営利活動法人 白神ネイチャー協会
19.足羽川堰堤土地改良区連合
20.公益財団法人 天神崎の自然を大切にする会
21.特定非営利活動法人 鷲羽山の景観を考える会
22.仁淀川流域山林保全育成の会
23.私たちの未来環境プロジェクト
24.どんぐりのぼうしの会
25.特定非営利活動法人 筑後川流域連携倶楽部
26.特定非営利活動法人 ビーンズふくしま
27.一般社団法人 もふもふ堂
28.特定非営利活動法人 石川県救助犬協会連合会
29.特定非営利活動法人 だっぴ
30.大分県点訳・音訳の会
― 153 ―
⑶ 対応代協との関係強化
グリーン基金については「寄付して終わり」ではなく、日頃から代協サイドで寄付先団体との関係構築
に努め、当該団体の活動に参加する等の連携が重要である。
また、地元の小さな団体に対しては、大きく育てるためのシードマネーとして各代協から直接寄付を行
い、関係強化・連携を図ることも重要である。
■公開講座
消費者保護への貢献を目指す日本代協にとって、消費者に直接情報を提供し、リスク啓発を図る観点から、
大規模災害や自動車事故防止、救急・救命等、消費者に関心の高いテーマを選んだ公開講座の開催は重要な
取り組みであり、各代協において継続して実施する。
(平成27年度は、3支部・10代協・5ブロックで計18回開催・参加者数2, 199名)
■消費者団体等との対話活動の推進
⑴ 基本方針
消費者の声に耳を傾け、それを会員で共有して資質向上に役立てるとともに、行政・損保協会等に伝え、
より良い保険制度の構築や分かりやすい保険商品の提供を実現し、消費者の利益に貢献することは本会の
使命であり、引き続き積極的に推進する。
⑵ 懇談会の開催
全ブロックで定期的に懇談会を開催し、消費者団体との信頼関係構築に努める。本部においても定期的
な訪問等を通して、消費者団体、消費者行政との関係強化、人脈形成に注力する。
開催に当たっては、日本代協が賛助会員となっている「公益社団法人日本消費生活相談員協会(全相協)」
と連携を図り、同協会の各支部との懇談会開催を検討する。
(平成27年度は、14代協で計19回開催・消費者団体サイドの参加者131名・代協サイド131名)
実施にあたっては、「消費者団体等との懇談会推進ガイド」(日本代協書庫)を活用し、相互理解を深め、
日常業務に活かしていくことが重要である。
<進め方の一例>
◇代協から:身近な保険商品の解説、お客様からよく聞かれる項目の説明、ロープレなど
◇消費者団体から:消費者苦情の最近の動向や理解しにくい内容の洗い出しなど
■学校教育への取り組み
⑴ 基本方針
保険制度に対する理解を深め、その必要性や役割を認識してもらうことにより、将来の賢い消費者を生
みだしていくために、学校教育への取り組みは重要である。
損保協会も学校教育を事業の重要な柱と位置付けて積極的な取り組みを行っており、連携すべきところ
は連携し、お互いの役割を分担しながら、具体的かつ地道な取り組みを進めていく必要がある。
⑵ 大学における保険教育
各大学で損保協会が開講している「損害保険講座」の中の「保険募集」のパートを本会が引き受け、日
本代協役員や各代協から選任されたメンバーが学生向けに講義を行っている。平成27年度も九州大学、埼
玉大学、高知大学、福島大学、琉球大学等で講義を行った。
― 154 ―
代理店という職業の認知度向上や講師の資質向上につながる取り組みとなるので、本会としても積極的
に支援を行う方針である。
⑶ 高校生向け自動車リスク教育
富山代協が行っている高校生向けの教育(これから社会に出る高校3年生を対象に、自動車を運転する
リスクと責任を問いかけ、自覚と責任を持ってもらう内容)は、代協独自の取り組みとして全国の模範と
なる事例である。既に、他県での取り組みにつながり、代協活動としての広がりを見せつつあるが、こう
した取り組みは極めて重要であり、出来るところから実践していくことが望まれる。
《補足:CSR(Corporate Social Responsibility)とは?》
参考 CSRとは「企業・組織の社会的責任」を指す言葉であり、一般的には「企業活動のプロセスに社会的
公正性や環境への配慮などを組み込み、ステークホルダー(株主、従業員、顧客、環境、コミュニティ
など)に対して説明責任を果たしていくこと。その結果、経済的・社会的・環境的成果の向上を目指
すこと。
」と定義されている。
従って、CSRは、コンプライアンスは勿論のこと、人権に配慮した適正な雇用・労働条件の確保、消
費者への適切な対応、環境問題への配慮、地域社会への貢献など、企業が市民として果たすべき責任
をいう幅の広い概念であるが、日本代協では、この内、環境問題や地域社会への貢献活動に絞り込ん
で取り組むこととし、「地球環境・社会貢献委員会」を「CSR委員会」と改称して推進を図っている。
― 155 ―
15 大規模災害への対応
Ⅰ 東日本大震災
■東日本大震災と代理店の存在意義
⑴ 未曽有の大災害とその教訓
平成23年3月11日、午後2時46分、三陸沖を震源とするマグニチュード9. 0(最大震度7)の巨大地震
が発生し、想像を絶する大津波が岩手、宮城、福島、茨城をはじめ東日本沿岸各地に襲いかかり、甚大な
被害を与えた。黒い波の壁となって押し寄せた大津波に街は一瞬にして流され、地域社会そのものが根こ
そぎ失われるという、信じられないような現実がこの国で起こったのである。
さらに、福島では、東京電力福島第一原子力発電所で発生したレベル7の原発事故により、市町村その
ものが崩壊させられるとともに、東日本一帯が「目に見えない恐怖」にさらされることとなった。また、
千葉や埼玉では液状化現象によって地盤が大きく歪み、市民生活に大きな影響を与える事態となった。
平成28年3月8日時点の総務省の発表では、死者は1万9, 418人、行方不明者は2, 592人、住家の全壊
121, 809棟、半壊278, 496棟となっている。また、平成28年7月29日付の復興庁発表資料では、震災から5
年経った今でも全国で約14万1, 800人もの人々が、不自由な避難・転居生活を送っている。倒産した企業
や廃業を余儀なくされた企業も多数に上る。
未曽有の天災に様々な人災が加わって生じた、あまりにも過酷な現実は、多くの人々のそれぞれの人生
や日々の穏やかな日常を大きく変えてしまった。自然災害への備えの提供を仕事とする我々代理店は、今
回の震災の教訓と被災され犠牲となられた人々の無念さを決して忘れることなく、次の世代に語り継いで
いく責務がある。
⑵ 損害保険業・損害保険代理業の社会的意義
今回の大震災は、改めて損害保険事業の社会的な重要さを再認識させる契機となった。震災発生から
3ヵ月余りの平成23年5月31日時点の地震保険金の支払は、支払件数78万3, 648件、支払保険金1兆2, 346
億円に及び、JA共済(同3月7日付建物更生共済金8, 416億円)を含めた支払保険金の総額は2兆円を上
回る水準に上った。震災対策費として組まれた国の補正予算に匹敵する規模であり、被災者の生活再建の
大きな支えになったことは間違いない。
また、今回の震災においては、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、保険金の早期支払いに向けて、損保
協会を中心に業界一体となった取組みが行われた。この結果、家計地震については、6月末までにほぼ支
払いを終えたことは損保業界の存在価値を示す大きな成果となった。この早期支払いに大きな役割を果た
したのが、地域密着で顧客を良く知る被災地の代理店であり、地域社会における代理店の役割と価値を、
業界内外の関係者が改めて認識する機会となった意義は極めて大きい。
自ら被災しながらも、
「被災契約者のお役に立ちたい」一心で、早期支払いに尽力した被災地代理店の
努力に深く敬意を表するとともに、改めて損害保険代理業の社会的な意義と役割を全国の会員で共有し、
日々の仕事に活かしていきたい。
⑶ 日本代協の取組み
日本代協としては、こうした教訓を踏まえ、「地域社会に根差す顧客対応力の高い代理店」の育成に引
き続き全力で取組むとともに、地震国日本において、お客様をお守りするためには地震保険は重要な備え
― 156 ―
であるとの認識の下で、引き続き組織をあげて「地震保険の普及」に注力する。
併せて、今回の震災の経験を踏まえ、各代協会員の今後の経営にとって参考となる指針を提供するとと
もに、地震保険を含めた保険制度に関する改善点をとりまとめ、関係諸機関に要望していくこととする。
■被災者支援に向けた取組み
日本代協では、震災直後は先ずは被災者支援に最優先で取組むとの方針のもとで、被災地会員からの要望
などを踏まえ、以下の取組みを行った。
⑴ 被災契約者に対する特別措置の要請
被災地会員からの要望を踏まえ、損保協会、金融庁に対して以下の要請を行った。協会長会社(あいお
いニッセイ同和社)他各社の迅速な対応により全ての項目で要望が実現し、被災者支援に一定の役割を果
たすことができた。
① 「損害保険(自賠責を除く)の失効・解約処理」の特例適用
○ 遡及手続の承認(6ヵ月間)
○ 返戻保険料計算方法の日割適用
② 「自動車保険の中断手続」の簡素化
○ 中断特則適用に際しての確認書類の簡素化(登録事項等証明書の省略等)
③ 自賠責保険解約時の手続簡素化(国土交通省)
○ 罹災証明書の省略
⑵ 被災者支援のための損保協会との共同取組み
損保協会と協力して以下の取組みを進めた。本取組みに関しては、金融庁からも評価された。
① 連絡先が分からない他社・他代理店扱いの契約者への契約者対応窓口の紹介
○ 委託保険会社や取扱い代理店にかかわらず、連絡先を案内した
② 契約者等からの、地震保険制度に関する照会への情報提供
○ 地震保険に関する根拠のない憶測を防止し、契約者に安心感を与えるために尽力した
③ 東日本大震災に関する「各社相談窓口のポスター」の避難所等への掲示
○ 宮城代協などの被災地代協の会員が、各保険会社の連絡先が記載されたポスターを掲示した
⑶ 「あしなが育英会」への寄付
今回の震災により親を失った子供たちの支援のために、「あしなが育英会」に対し、100万円の寄付を
行った。平成23年6月16日に岡部会長が同会事務局長に対して贈呈を行った。
⑷ 損保協会による地震保険啓発活動への参画
平成24年3月11日に損保協会が全国11ヵ所で実施した「防災啓発・地震保険啓発」街頭活動に参画し、
日本代協並びに該当地域の代協において、損保協会役職員、各保険会社社員とともに、「地震保険制度理
解促進チラシ」等を配布し、災害への備えと地震保険の活用を呼びかけた。
■被災会員に対する支援活動
⑴ 被災会員向け義援金の募集
今回の震災で被災した代協会員等への支援のため、義援金の募集を行った。その結果、各代協会員から
総額23, 866, 423円の義援金が寄せられ、被災地代協経由で被災会員へお届けした。この他、埼玉代協会員
から未使用のPC15台、佐賀代協からカレンダーの寄付等があり、それぞれ被災会員宛に届けた。
― 157 ―
⑵ 被災代理店の救済・支援のための取組み
被災代理店支援を目的として、損保協会・各保険会社に対して以下の要請を行い、その実現に努めた。
<代理店経営の観点>
① 代理店専用相談窓口の設置
② 担当者による被災代理店との対話活動の実施
③ 事務所・PC等業務用必要なハードの貸与
④ 代理店向け「災害特別融資制度」の創設
⑤ 被災地域をカバーする受皿代理店の設置と被災代理店受け入れの検討
<代理店業務の運営上の観点>
① 被災代理店の更改業務の会社引取り
② 電話募集の範囲拡大
<代理店手数料の観点>
① 被災物件の滅失等に伴う保険契約の解約に伴う代理店手数料戻し入れの免除
② 代理店手数料ポイント判定の緩和措置・経過措置の適用
結果的には、各社濃淡はあるが、上記要望を踏まえた措置が導入あるいは実施された。但し、代手の戻
し入れについては、損保労連からも要望を出してもらったが、委託契約書との整合性、阪神・淡路大震災
時の前例を踏まえ、「分割返済」か「支払い猶予」のみが認められるに止まった。
⑶ 被災地代協会員の声を聴く取組み
平成23年8月7日~10日の日程で、正副会長が直接被災地(釜石、大船渡、陸前高田、気仙沼、石巻、
仙台、相馬など)を訪問し、代協会員へのヒアリングを行った。(別途会員宛のアンケートも実施)こう
した声を踏まえ、同年11月に実施した第1回日本代協コンベンションでは、被災地代理店によるパネル
ディスカッションを行い、大災害の経験と教訓の共有化に努めた。
⑷ 各種情報提供
震災直後から、日本代協のホームページ、日本代協ニュース、全役員宛レター等を通して、地震・津
波・原発に関する多様な情報提供を実施した。主なものは以下の通り。
① 地震保険金請求手続(軽微な被災に関する契約者からの自己申告による事故受付)
② 「セーフティネット保証(第5号)」対象業種緊急拡大(損害保険代理業も対象に追加)
③ 原発事故に伴う損害賠償制度の仕組み(原賠法と政府補償の仕組み)
④ 震災時に利用できる主な公的給付・融資制度(一覧表にまとめて提供)
⑤ アジア全域の再保険料率引き上げ動向(今後の保険料水準に対する影響)
⑥ 被災車両の抹消登録申請時の特例措置
⑦ 地震保険の全損認定に写真判定導入の情報 ⑧ 「漁船保険制度」の概要(公的保険制度の内容)
⑨ 「被災者雇用助成金」制度の創設(代理店も活用できる制度)
⑩ 自動車保険「地震・噴火・津波危険車両損害補償特約」に関する代理店の説明責任関連情報
⑪ 東日本大震災による政府労災の支払い(Q&Aを提供)
⑫ 地震保険改定動向 他
― 158 ―
■日本代協の取組み
⑴ CSR委員会における継続取組み(消費者対応)
① 対消費者:地震保険の情宣・普及推進(キャンペーン等)、並びに、地域防災・減災に関わる啓発活
動の強化(ハザードマップの普及、「ぼうさい探検隊」等)
② 各 代 協:地震保険の付帯率アップに向けた組織的取組みの推進
③ 代協会員:商品説明の徹底、地震保険のニーズ喚起、地震保険付帯率アップ 他
⑵ 地震保険に対する要望・提案の実施
地震保険は、内容を充実させれば保険料が引き上げになるため、補償と保険料負担のバランスを考える
ことが重要な視点となることは前提として、東日本大震災の教訓を踏まえ、損保協会に対して以下の提言
を伝えた。
(本内容については、平成24年3月19日に保険毎日新聞社・損保総研・日本代協が共催し、行
政・業界の幹部が出席のもと開催された「東日本大震災特別企画講演会」においても岡部会長から提言を
行った。
)
・損害区分の見直し(一部損と分損の間の飛びつきの改善/一部損の廃止⇒この点は両論併記)
・補償水準(一部損の保険金支払い水準の見直し)
・保険料体系(等地区分の細分化/全国一律料率の導入⇒この点は代協内にも両論あり)
・損害調査態勢(大規模災害時に損害調査を委託できる代理店向け業界資格の創設)
・損害処理基準(自治体の損害判定との整合性の確保)
・自動車車両補償の検討(家財に含める/地噴津特約の加入制限撤廃)
・中小企業の事業性資産の補償(地震保険の対象化の検討)
・免震、耐震の推進(保険料割引の拡大)
・付帯方式(主契約と別会社で契約できるようにする) 等
なお、地震保険制度に関しては、財務省の「地震保険制度に関するプロジェクトチーム」において制度
見直し案が論議され、これに基づき改定が行われている。(注:地震保険制度は財務省の所管)
■震災の教訓を活かした事業継続計画の検討
今回の震災の教訓を今後の業務に活かすため、小規模専業プロ代理店(社員7~10名程度を想定)のBCP
(事業継続計画)について、現実的で実効性がある対応策を提供する責任があると考え、平成25年度に野村
総研と東京代協正副会長、日本代協事務局による特別PTを組成し、論議を行った。
その結果、空欄を埋めれば出来上がる計画書のひな形を提供しても意味がなく、危機に直面した際に、ど
のような判断基準で優先事項を選択し、行動するか、という代理店としての「座標軸」を共有しておくこと
が重要であり、その社内論議の材料を提供することが必要との判断に至った。
そうした論議を踏まえて、代理店内における認識の共有化と事業継続策定に至るガイドライン的な位置付
けで『私たち損害保険代理店の事業継続計画』をまとめ、平成26年3月に新日本保険新聞社から発刊を行っ
た。
(本編100頁・附録15頁で構成)今後代理店が直面することになる危機は様々であるが、状況に応じた臨
機応変の対応力を発揮し、課題に立ち向かうことが重要である。そのためには代理店内での認識共有化が何
よりも重要であり、本書がそうした代理店内部における論議材料として活用されることを期待したい。
なお、本書は導入編の位置付けであり、実践に移していくためにはさらに踏み込んだ手引書が必要となる
ため、今後検討を進める予定である。
― 159 ―
■被災代理店アンケートの実施と結果のとりまとめ・公表
⑴ 背景・目的
地震保険は「地震保険に関する法律」に基づいた保険商品であり、リスクの多くを特別会計で賄ってい
るため、損保会社の経営への影響は限定的であるが、代理店にとっては未曽有の大災害によって相当の影
響と爪痕を残す被害が生じているはずである。一般に、代理店は資本規模が小さく、十分な経営体力を有
していない。また、経営主体単位でみたときに、営業拠点が少なく、代理店主や従業員の自宅、さらには
顧客基盤も営業拠点と同一地域に所在しているため、面的被害をもたらす地震・津波災害が代理店の経営
に与える影響は大きいものと想定される。代理店は、東日本大震災の発生によって契約者の保険金請求の
対応とともに、様々な保険種目・保険商品の解約手続きに追われ、その結果、保険契約の解約に伴う代理
店手数料の戻し入れも発生している。また、地域の再建の目処が立つまでは新契約の計上も難しい環境が
あるため、被災地域の代理店の再建は容易ではないと思われる。
そこで、東日本大震災から4年が経過し、一般の事業会社であれば再建の兆しが見え始める時期の代理
店の現状を把握し、日本代協としての支援のあり方や、今後の代理店経営のあり方について検討すること
を目的としてアンケート調査を行った。
⑵ 実施概要
a.調査の概要
・本調査は、地震保険の認定結果として「全損」が最も多く出た宮城、岩手及び福島の3県を対象に、
株式会社野村総合研究所と共同で実施した。
・調査にあたっては、宮城県代協(231会員)、岩手県代協(104会員)及び福島県代協(245会員)の会
員を対象に、郵送によるアンケート調査を実施した。
・併せて、3地域の代理店並びに茨城県と千葉県で大きな被害を受けた代協会員に対してインタビュー
調査を行った。また、損保業界を良く知る有識者にもヒアリングを行った。
・これらをもとに、大規模災害時の日本代協としての支援のあり方(損保協会・損保会社への要請等を
含む)や今後の代理店経営のあり方について検討・考察を行った。
b.調査項目
・調査項目は、発災前の状況(事務所・自宅所在地、従業員等の状況、営業の状況など)と地震による
被害(事務所・自宅の損壊、従業員等の死傷など)、発災直後の活動状況、現状(復旧状況(営業を
含む)
)とした。
⑶ 調査結果
➡詳細は、日本代協HP>新着情報>過去の新着情報>2015. 09. 01「東日本大震災による損害保険代理店
経営への影響に関する調査・研究」(2015年8月発刊)を参照願う。
本調査を踏まえ、今後の教訓として活かしていく必要がある内容は以下の通りである。
① 特に困ったことや次なる備えとしての教訓(報告書P18図表27)
分類
内容
停電・ライフラインの停止
社会被害
困ったこと
電話の不通
移動手段の確保(ガソリン確保含む)
保険金支払
大量の事故受付への対応
停電等のためシステムで契約情報を確認できない
― 160 ―
分類
内容
顧客に連絡できない(避難先が不明、携帯電話番号が不明等)
立会いまでに時間を要する
保険金支払
保険会社が避難したため相談できない
調査員による査定結果のばらつき
困ったこと
罹災証明と地震保険の損害認定のずれ
商品内容(契約内容、地震時の支払基準等)に関する損害保険
損害保険代理店対応 代理店側の知識不足
初動時の混乱、募集人による対応の差異
顧客の緊急連絡先(メールアドレス・携帯番号等)の把握
紙ベースでの契約情報の保管
平時からの備え
あらゆる災害を想定した代理店マニュアルの作成
停電時に備えたバックアップ体制の構築
今後の教訓
災害優先電話や衛星電話の導入
発災後の対応
損害保険代理店から顧客への能動的な連絡
メール・SNS等の活用
② 保険会社から得た支援で良かったこと・助かったこと(報告書P21図表32)
分類
内容
保険金支払関連
本業に関すること
上記以外
事故受付対応
7
契約データの提供
6
査定への同行・査定迅速化施策の実施
その他
5
書類の簡素化
1
サポート窓口等の設置
2
異動手続の優遇措置
1
手数料の優遇(上乗せ・減額なし)
4
執務スペースの提供、PC等の貸与
義援金・見舞金等の支給
片づけ支援
31
4
19
1
その他
12
③ 保険会社、都道府県代協の支援のあり方・要望として挙がった意見(報告書P22図表34)
内容
対象
顧客対応方針の統一・明確化
お客様センターや専用ダイヤルの早期開設
迅速な対応(説明・損害調査)
保険会社
20
鑑定人の手配
食料・物資等の配給
費用・物資等支援
件数
柔軟・親身な対応
迅速な安否確認・確実な連絡方法の確立
全国的な支援体制の構築
代理店間ネットワークを生かした支援方法の確立
― 161 ―
内容
対象
契約情報を把握できる仕組みの構築
保険会社と代理店が連携した査定活動の実施
保険会社
営業社員の対応改善
義援金等の支給
食料・物資等の支給
他社の対応状況に関する情報提供
保険会社への窓口としての機能
代理店の協力・支援体制の強化
都道府県代協
仲間意識を持った助け合い
より迅速な対応(安否確認含む)
契約者向けの公告の実施
義援金等の支給、義援金の用途・配分方法の明確化
食料・物資等の配給
④ 東日本大震災により得た教訓、知見など(報告書P23図表35)
主な意見等
項目
全てのお客様に地震保険を勧める。
地震保険の加入促進 建物にも家財にも限度額上限の地震保険付保が大事であると認識した。
どこで地震が起こるのか分からないため、地震保険を積極的に勧める。
地震リスクの再認識
災害を甘く見てはいけない。忘れたころに来る。
地震はいつ来るか分からない。忘れ去られることが一番恐ろしいのではないか。
食料・水等の備蓄をしておく。
物資の備蓄等
ガソリンは常に満タンにしておくべきである。
ライフライン復旧まで衣食住が確保されるよう備えをすることが重要である。
お客様に非常用グッズの備えを提案している。
安否確認のルール等、マニュアルを作成しておくべきだったと感じた。
行動マニュアル等の
会社のリーダーが目に見える形でガイドラインを提示する必要がある。
策定
連絡網を作成した。
データ管理
事務所ともう一か所に顧客データを分け、モバイルでもデータを見られるよう
にした。
紙ベースでの顧客情報管理も必要である。
停電の際でも契約内容確認・書類作成等に対応できるよう体制を整備した。
契約者への連絡手段 申込書に携帯電話番号も記載する。
の確保
契約者情報として携帯電話番号の記載を必須にしたらどうか。
収入保険料が減少したため手数料ポイントが下がり、それにより収入が減って
大変だった。
建物や自動車等が無くなり手数料が減収となるため、代理店としてキャッシュ
収入・顧客基盤への フローが必要である。
影響
地震保険や天災特約を積極的に勧めていたため、保険金支払い後に多数のお客
様を紹介頂き、震災直後の解約をカバーでき、さらに増収することができた。
また、他の代理店で地震補償について十分に説明を受けずに被災された方にも
ご契約を頂いた。
― 162 ―
主な意見等
項目
震災対応をお客様から高く評価して頂き、新規のお客様をご紹介頂いたり、連
収入・顧客基盤への 携先代理店(共同募集)が増えたりした。
影響
査定・保険金支払いを通して契約者からの信頼を獲得でき、それ以降の契約に
つながった。
お客様の全てのリスクを考え、ベストな商品を提案する。
リスクの全体像を
踏まえた提案
リスク全体を踏まえて保険の見直しや加入について積極的にアドバイスするよ
う会社全体で取組んでいる。
契約者へのリスクに対する情報提供の重要性を認識した。
よりきめ細かいサービスを心掛けたい。
細やかで永年にわたる対応を心掛ける必要がある。
お客様対応
お客様への定期的な情報発信、情報提供
事故報告・保険金支払いまでお客様のことを考えてしっかりサポートすること
が大事だと思った。
各種証明書や義援金の受取り手続き等のサポートを行った。
保険会社・社会が一丸となって被災者のために支払査定を行ったため、早くに
保険金が支払われ感謝して頂けた。
保険会社自体が地震保険から手を切りたいと思っているように見えて残念である。
保険会社等の対応
地震保険金の支払において保険会社の優劣が出た。今回の震災以降一切提案し
ない保険会社もある。
保険会社の査定部門が他県に逃げてしまった。代理店は保険金支払いのための
手数料は受けていないが、クライアントのために我慢して動いた。
代申会社が営業拠点を閉めてしまった。代理店は顧客から「損害がいくらか」
「早く見に来てくれ」と言われて大変返答に困った。
保険会社や損害保険代理業協会は役に立たないため、全ての対応を代理店がや
るのが当然の仕事だと深く感じた。
行政側の対応に関しても情報を仕入れることを忘れてはいけない。
高齢者は発災時にサポートが必要になるため、顧客の年齢層を把握しておく必
要がある。
その他
長期一括払いの火災保険の保有は危険と感じる。地震保険全損時の払戻しは想
定外だった。
皆様の役に立っていると感じることができ、この仕事をしていてよかったと
思った。
72時間ルールによる不公平感がある。
⑷ 日本代協としての報告のまとめ
① 本調査を踏まえた日本代協としての取組みの方向性は以下の通りである。
◆ 日本代協としての今後の取組み
1. 災害時にも安定的にサービスを提供できる損害保険代理店経営の支援
◦ 損害保険代理店向けの「事業継続計画策定ガイドライン」の策定・提供と、実効性の確保
及び形骸化させないためのセミナー等の実施
◦ 地震保険の加入の有無が契約者等の状況や心情に大きく影響をもたらすことを考慮した初
動対応マニュアルの策定・提供
2. 災害時の損害保険代理店経営の支援態勢の強化
◦ 損害保険会社の支援・応援体制の情報収集と、損害保険代理店への情報提供態勢の整備
― 163 ―
◦ 被災地域以外の代協会員による応急支援態勢の整備
◦ 契約者に被災地域の代協会員の状況(事故受付の対応状況など)を伝える仕組みの検討・
整備(地方紙の広告やウェブサイト上での広報など)
◦ 災害見舞金規定の整備・緊急融資制度の検討
② 代協会員として、個社で今すぐに取組めることは以下の通りである。
◆ 損害保険代理店に検討・実施して頂きたい取組み
1. 地震保険の普及
◦ 業界を挙げての地震保険の普及活動の実施
◦ 意向把握義務の先にある助言義務に近い形での地震保険の提案
2. 損害保険代理店の経営を安定化させるために
◦ 損害保険代理店の社員やその家族を対象とした安否確認の仕組みの検討と構築
◦ 災害時における行動指針・運営ルールの検討と徹底(防災訓練を含む)
◦ 事業継続計画の策定及び実効性の確保を目的とした訓練の実施
3. 災害時にも迅速に契約者対応ができるように
◦ 契約者等の緊急連絡先の把握や、紙ベースでの契約者情報の保管
◦ 契約者等に対して能動的に連絡できるようにするための態勢の整備(メールやSNSの活用
を含む)
③ 日本代協としては、東日本大震災の経験・教訓を踏まえ、全国の代協会員とともに地震保険の普及
と、代理店が災害時にも迅速かつ適切に契約者等の対応ができる態勢の整備に努めたいと考える。そ
のための取組みとして、損保協会や損保各社にも以下の項目について協力をお願いしていく方針であ
る。
◆ 日本損害保険協会、損害保険会社各社に協力頂きたい取組み
1. 損害保険会社と損害保険代理店の連携関係の構築
◦ 被災した損害保険代理店に対する精神面・健康面等のケア体制の検討・構築
◦ 損害調査を実施する損害保険会社社員及び損害保険代理店の支援のあり方の整理
◦ 大規模災害時の損害調査に関わる損害保険代理店の活用方法の検討・構築
◦ 非幹事代理店も契約照会ができる態勢の整備(一部の損害保険会社のシステムでは、非幹
事代理店が契約確認できないという課題がある)
2. 地震保険金の迅速な支払いのために
◦ 営業社員や業務社員への損害調査ノウハウの付与・継続的な研修の実施
◦ 地震保険の加入の有無が大きく契約者等の状況や心情に影響をもたらすことを考慮した初
動対応マニュアルの策定・提供(日本損害保険代理業協会との連携による検討)
3. その他
◦ 企業分野の地震保険(拡担)の保険金支払いの迅速化の検討(必要書類の簡素化や仮払い、
損害保険代理店等との連携可能性の検討)
災害時における迅速な被災契約者対応を実現するためには、損保各社と代理店とが連携し、協力し合
いながら業界として求められる役割を果たす必要がある。そのために、日本代協は損保協会とのさらな
る連携の強化を図り、損保各社と代理店における平時の備えを含めた態勢整備の一助となる活動を積極
的に支援していく方針である。
― 164 ―
Ⅱ 熊本地方大地震
■熊本地方大地震の発生と現地代理店の苦悩
⑴ 熊本地方大地震の特異性
平成28年4月14日21時26分、熊本県熊本地方を震央とする震源の深さ11km、マグニチュード6. 5の地震
(前震)が発生し、熊本県益城町で震度7を観測した。その28時間後の4月16日1時25分には、震源の深
さ12km、マグニチュード7. 3の地震(本震)が発生し、熊本県西原村と益城町で再度震度7を観測した。
マグニチュード7. 3は平成7年に発生した阪神・淡路大震災と同規模の大地震であった。当初、14日に発
生した地震が本震で、その後に発生するものは余震であり、地震の規模で上回るとは想定されていなかっ
た。しかし、16日未明に上記マグニチュード7. 3の地震が発生したことを受けて、気象庁は同日、後者
(16日未明)の地震が本震で、前者(14日)の地震は前震であったと考えられるとする見解を発表した。
内陸型(活断層型)地震でマグニチュード6. 5以上の地震の後にさらに大きな地震が発生するのは、地
震観測が日本で開始された明治18年以降で初めてのケースであり、また一連の地震活動において震度7が
2回観測されるのも初めてという大災害であった。
14日の地震は日奈久断層帯の北端部、16日未明の地震は布田川断層帯によるもので、隣接する断層帯が
連動して発生した連動型地震とみられている。さらに16日の本震以降、熊本地方の北東側に位置する熊本
県阿蘇地方から大分県西部にかけての地域と、大分県中部(別府–万年山断層帯周辺)地域においても地
震が相次いだ。熊本地方と合わせて活発な地震活動がみられ、発生後2週間で1, 000回以上の有感地震を
記録するという異例の状態が続き、地域住民に大きな被害をもたらし、市民生活にも大きな混乱が生じた。
⑵ 被害状況(熊本県災害対策本部 平成28年7月31日現在速報値)
[人的被害] 死者(関連死を含む)
… ………… 76 人
行方不明者 … …………………… 1 人
重傷者 … ……………………… 592 人
軽傷者 … …………………… 1, 393 人
分類未確定 … ………………… 140 人
[住家被害] 全壊…………………………… 8, 534 棟
半壊 … ……………………… 87, 553 棟
一部破壊 … ……………… 125, 444 棟
分類未確定 … …………………… 1 棟
[避 難 所] 設置数 … ……………………… 68か所(最大時4月17日 723か所)
避難者数 … ………………… 3, 229人(最大時4月17日 183, 882 人)
[罹災証明書交付申請件数] 全壊 … …………… 11, 947 件
大規模半壊 … …… 10, 442 件
半壊 … …………… 31, 819 件
一部破損 … …… 104, 171 件(申請総数:158, 379 件)
[二次被害] 依頼件数 … ………………… 38, 756 件
実施件数 … ………………… 28, 773 件
⑶ 熊本県代協正会員の被害状況(6月10日現在:会員数253/108会員調査時点)
[代理店主の人的被害(死亡・重傷)
]………… なし
[事 務 所]
全壊 … …………………………… 2 棟
― 165 ―
大規模半壊 … …………………… 4 棟
半壊 … …………………………… 7 棟
一部損壊 … ……………………… 39 棟
大きな被害なし … ……………… 53 棟
[自 宅]
全壊 … …………………………… 2 棟
大規模半壊 … …………………… 1 棟
半壊 … …………………………… 10 棟
一部損壊 … ……………………… 50 棟
大きな被害なし … ……………… 41 棟
⑷ 家計地震保険金支払い状況 (平成28年6月30日現在:損保協会発表・・・HPから抜粋)
県名
事故受付件数
調査完了件数
福岡県
15, 875
14, 273
9, 976
6, 388, 864
佐賀県
2, 474
2, 162
1, 549
1, 050, 806
熊本県
211, 114
201, 778
186, 684
312, 006, 363
大分県
13, 371
12, 312
9, 979
8, 321, 410
長崎県
693
628
419
252, 587
その他
1, 338
1, 182
686
512, 021
244, 865
232, 335
209, 293
328, 532, 051
合計
支払件数
支払保険金(千円)
■被災会員に対する支援活動と今後の取組み
⑴ 被災会員向け義援金の募集
今回の震災で被災した代協会員等への支援のため、義援金の募集を行った。その結果、各代協会員から
総額6, 554, 977円の義援金が寄せられ、平成28年6月14日、全国代協会長懇談会において、岡部会長から
熊本県代協・井上会長に目録が手交された。(この他、熊本代協に直接送金された662, 802円を加えた義援
金総額は7, 217, 779円となった。この他に多数の救援物資等も届けられている)各会員への配分は熊本県
代協に一任することとした。
[参考]次頁に熊本県代協(井上会長名)から各代協宛のお礼状掲載
熊本県代協では、8月末を期限として会員の被害状況を再確認した上で、以下の基準に沿って分配する
こととしている。
❖ 全壊・大規模半壊:12万円程度(申請数によって変動)
半壊 :7万円程度(上記同)
上記以外の正会員:2万円
❖ 事務所・自宅等を問わず被害の大きかった物件一つを申請(建物のみを対象とする)
⑵ 被災会員座談会
今回の震災の経験と代理店としての教訓の記録と共有化のため、8月26日(金)東京海上日動熊本支店
会議室にて被災会員5名による座談会を開催する予定である。本座談会の内容は、全代協に情宣するのみ
ならず、業界紙(保険毎日新聞)への掲載や映像媒体としての活用などを通して代理店の生の声を伝え、
業界全体の参考材料となるよう情報提供を行う方針である。
― 166 ―
⑶ 大規模災害時の被災会員支援策の検討
① アクションプランの策定(継続案件)
大規模災害が発災した際の被災会員に対する支援のあり方については、ビジョン委員会の諮問事項
の一つとして検討を続けているが、支援策の策定までには至っていない状況である。
保険会社の支援体制が整うまでの間、被災地周辺の代協会員が、短期間被災代理店のボランティア
に入ってサポートするなど、非常時の活動がスムーズに行える具体的なアクションプランが必要であ
り、引き続きビジョン委員会で継続論議を行う予定である。
② 慶弔見舞規則の改定
同規則の災害見舞金条項には、見舞金の金額を明記していないため、これまでは災害発生時の都
度、見舞金額を検討していた。また、義援金を募った場合の寄付額についても、金額のメルクマール
がなく、義援金が妥当な水準であるかの判断に苦慮していた。
昨今、集中豪雨や土砂災害などの自然災害が恒常的に発生し、最早異常気象とは呼べなくなってい
る現状を踏まえ、平成27年度に災害見舞金額の明確化(「事務所の全壊・半壊 30, 000円」「床上浸水
20, 000円」の見舞金支給)を図った。
なお、別途募った義援金の配分については、該当代協の判断に委ねることとした。
― 167 ―
参考資料:熊本県代協井上会長から全国の代協・会員宛御礼状
平成 28 年6月15 日
日本代協 各都道府県会長、会員の皆様
日本代協 役職員の皆様へ
一般社団法人 熊本県損害保険代理業協会
会 長 井上 浩一
熊本地震ご支援の御礼
拝啓 時下ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
さて、4月14日、16日に発生しました熊本地震におきましては、皆様に多大なご心配をおかけし、ま
た心からのご支援を賜り誠にありがとうございました。
地震発生直後から皆様より激励のお言葉やお見舞い等を頂戴し、本日で丁度2カ月が経過しました。本
来であれば、いち早く皆様へ御礼申し上げるべきでしたが、本日となってしまいました。どうかご容赦下
さい。
今回の熊本地震は、震度7が続けて発生し、本震の前に前震が発生するという観測史上初めての事態、
その後の余震も2週間で 1,000 回を超え、1カ月間で約 1,500 回、現時点で 1,700 回を超える異例の多さ
で有感地震が発生しています。今も余震が続いており、震災時の恐怖感が甦って来ます。
熊本は、昨年8月に11年ぶりとなる大きな台風に見舞われました。台風に対する備え保険対応につい
ては、過去3回大きな被害を受けた経験から心の準備が出来ていたように思いますが、今回の熊本地震は
不意を突かれました。このような激しい揺れを体験した者は誰もいません。熊本県代協会員も、自ら被災
しながら懸命にご契約者の地震保険金支払いに向け対応し、順調に支払いが進んでおります。
これから私達は、この経験を踏まえ、自然災害に対する啓発と火災保険・地震保険の普及をさらに加速
していきたいと思っております。現在9割程度のお客様へ地震保険金をお支払いすることが出来ました。
鑑定・判定の問題はありましたが、ほぼご契約者の皆様から感謝のお言葉をいただき、私達の大きな
役割・責任を果たせた感がございます。今後も油断することなく私達の使命を果たして行こうと思ってお
ります。
あらためて、ご支援していただきました日本代協・各都道府県代協の皆様に心より感謝申し上げます。
甚だ略儀ではございますが、熊本県代協全会員を代表し、御礼のご挨拶とさせていただきます。
今後皆様のご健康とご発展を心よりお祈り申し上げます。
敬具
― 168 ―
16 対外的広報活動の推進
■広報活動に対する基本的考え方
損害保険商品をコモディティ(日用品)として認識する消費者も増える中で、プロの損害保険代理業の認
知度は極めて低く、社会保障の補完的役割を果たしていることへの理解や、その仕事内容に対する関心は薄
いのが実態である。
我々としては、先ずはそれを厳しい現実と受け止めた上で、消費者(消費者団体を含む)は勿論のこと、
官公庁、政財界、有識者、業界紙等に対して、広く広報活動を展開していくことが必要である。
そのためには、先ず代協加盟の個々の代理店・募集人が、リスクのプロとして本業にしっかり取り組み、
併せて、防災・減災に役立つ情報提供を行うことが何よりも重要である。その日々の積み重ねの中で、地域
社会において、
“よろず相談窓口”の機能を果たしながら、消費者から認知され信頼される存在になること
が王道の取り組みとなる。同時に組織としても、あらゆる機会を通して、広く社会に保険代理店(特に、プ
ロの保険代理店)の役割や価値、並びに、本会や各代協が行っている消費者保護活動等の取り組みを伝えて
いくことが求められている。
■ホームページ(HP)の活用
⑴ 日本代協HPの充実
対外的広報活動の充実のためには、HPの活用が重要であり、その内容を充実させるとともに、最新情
報が掲載されるよう、常時更新を行う必要がある。(HPは社会に開かれた窓である。)
日本代協では、平成11年10月にHPを開設して以来、ディスクロージャーの充実を図ってきた。また、
平成21年6月には全面リニューアルを実施し、消費者向けのコンテンツを充実させるとともに、見やすく
親しみやすい画面を目指して改善を図った。平成26年7月には、認定保険代理士の損害保険トータルプラ
ンナーへの移行に伴い、リニューアルを行っている。今後も引き続き掲載内容の充実と使い易さの向上に
取り組む。
⑵ 都道府県代協におけるHPの活用
平成21年6月、HP未開設の代協を対象に、ひな形システムの利用を提案し、開設支援を行った。平成
22年9月にはHP制作に関するガイドラインを改定し、代協事務局研修会において研修を行う等、具体的
なサポートを実施した。
その結果、平成25年3月時点では47代協全てのHPが完成している。しかしながら、アドレスはあって
も「工事中」のまま未完成であったり、更新頻度が極端に少なかったりして、組織外に向けた情報発信が
不十分もしくは全くない代協も見受けられるのが現状である。HPは現代社会における重要な情報提供・
入手の手段となっており、特に小さな組織ほどその有用性は高い。こうした認識のもとで、全ての代協に
おいてHPやFacebookなどのSNSの機能を有効に活用し、広く社会に対する情宣活動を行っていくことが
求められる。また、取り組みを活性化させるためには、ITに強い若手・女性会員の活用が望まれる。
■メディアの活用
「代協の存在」と「代理店は消費者・契約者の保険コンサルタントである」ことのPR、並びに「保険を選
ぶ前に代理店を選ぶ」という考え方を普及させるために、本会や各代協において、業界紙や地方紙、地元
― 169 ―
TV局等のメディアと良好な関係を築き、記事掲載等を通じて社会にアピールする機会を作りだすことが重
要である。特に、平成26年7月以降は、
「損害保険トータルプランナー」の存在を広く消費者に伝え、周知
を図る必要がある。
また、
「社会に貢献する代協」の存在をPRするために、各地でボランティア活動を行う場合は、大阪代協
や愛知県代協他のように、損保協会や各損保会社へも呼びかけてその地域の恒例行事となるような大きな仕
立てを目指すとともに、石川県代協他のように地元紙に記事として掲載されるよう努力する必要がある。
(そ
のために、マスコミとは日頃から関係構築に努める。)
⑴ 広報委員会における取り組み
広報委員会においては、日本代協の認知度向上、
『保険を選ぶ前に代理店を選ぶ、という考え方』の普及、
代協における消費者団体との懇談会の側面支援等を目的にメディアの活用を図っていく。
また、毎年9月に発刊される週刊東洋経済・臨時増刊号において、会長インタビュー記事と「損害保険
トータルプランナー」のPR広告を掲載する。
⑵ 業界紙との懇談会の開催
平成22年8月から、業界紙(※)の記者と日本代協役員との懇談会を実施し、本会の活動に対する理解を
高めてもらう取り組みを進めている。平成28年度も7月に実施済であるが、今後も継続的に開催していく
方針である。
[※業界紙3紙]保険研究所(インシュアランス)、保険毎日新聞社、新日本保険新聞社
⑶ 業界紙掲載の活用
平成26年12月から、業界紙に掲載された代協活動の記事を有効に活用するため、新日本保険新聞社と協
議の上、当該掲載記事を毎月日本代協に提供いただき、それを日本代協では翌月の月初にHPに掲載し、
各代協で利用してもらう取り組みを始めている。(注:これにより著作権の問題はクリア)
各代協のHPへのリンクや広報活動、会議等での二次利用(コピーの配布、WEBページへの掲載等)が
可能になるため、各代協における活用が望まれる。
併せて、各代協の活動は、新日本保険新聞の紙上で掲載される可能性もあるため、積極的な投稿も期待
される。
(活動日から1週間以内に、日本代協宛に記事原稿・写真を送付。事務局にて内容確認の後、新
日本保険新聞社に送付。なお、掲載を確証するものではない。)
⑷ TV媒体の活用
TV媒体は平成21年度から活用を始めた。各年度の内容は以下の通りである。
① 平成21年度:BS放送(BSジャパン)を初めて活用し、日本代協並びに認定保険代理士の活動ぶり
を紹介する30分の特別番組を放映
② 平成22年度:日本代協並びに認定保険代理士に関する情宣活動として、年末・年始のBS放送にて
TVCMを初めて実施(「Mr. D, 現る。」)
③ 平成23年度:東日本大震災時の被災地代理店の奮闘ぶりの他、全国で契約者・消費者のために日々
活動を続けている代理店(認定保険代理士)の紹介番組をBSフジにて放映(30分)
④ 平成24年度:認定保険代理士を主人公にした3分間のドラマと岡部会長が認定保険代理士をアピール
する2分間のインフォマーシャルのセットを4週に亘りBSフジにて放映
⑤ 平成25年度:タレントの松尾貴史氏他と3名の認定保険代理士が損害保険に関する素朴な疑問に答
える情報バラエティ番組としてBSフジにて放映
⑥ 平成26年度:前年度に続き、タレントの松尾貴史さんとフリーアナウンサーの三田佐代子さんが投
げかける損害保険に関する身近な疑問に対して、代協会員の2名がアドバイスする情
― 170 ―
報バラエティ番組としてBSフジにて放映(後半では、岡部会長が、日本代協の活動
並びに「損害保険大学課程・損害保険トータルプランナー」の意義について解説)
⑦ 平成27年度:
「損害保険トータルプランナー」を第三者から見た印象でまとめ、メッセージ性のあ
る内容で伝えるドキュメンタリー番組をBSフジの30分番組として放映。(番組名『幸
せの鍵お持ちですか?』)
⑧ 平成28年度:各代協会長等への視聴アンケート結果、スマートフォン等の急激な普及の現状を踏ま
え、従来のBS放送からWEBによる対外広報活動を展開することとし、メッセージ性
の高いショートムービーを制作する予定。
映像媒体の活用には相応の費用はかかるが、視覚から入る情報は、効果的な情報伝達手段であり、本会
としても「身の丈」を意識しつつ、また、費用対効果を見極めながら、今後も引き続き有効活用策を検討
していく。
なお、各映像はDVDとして提供を行うとともにYouTubeでも視聴できるようにしており、各代協での
各種研修会や公開講座等、様々な機会での活用が望まれる。
⑸ 各代協における独自取り組み
各代協においては、意識的に地元メディアの活用を図る必要がある。現状においても、地元紙への広告、
ラジオ放送、地下鉄車両への広告掲示、タウン誌・フリーペーパー・コンサートパンフへの広告掲載等、
工夫を凝らした取り組みが行われているが、今後も継続的に実施する必要がある。
― 171 ―
17 代協会員向け情報提供・経営支援活動の推進
■代協会員向け情報提供活動
⑴ 基本的な考え方
人口減少や高齢者の増加、自動車のIT化などの社会環境の大きな変化とともに、商品や代手の相次ぐ
改定、ダイレクト保険会社の浸透、銀行窓販やショップ店の拡大、異業種の参入、代理店の統廃合の進展、
改正保険業法の施行等、業界を巡る環境変化は早く、そして激しい。今後の代理店経営を考える際に、正
確な情報をタイムリーに得ることは非常に重要であり、日本代協としては、引き続き幅広い情報収集に努
め、代理店経営の参考材料として迅速に各代協会員に届けることが求められている。
一方で、全ての情報を全代協会員に個別に届けることには限界もあるが、本会においては、定期発行し
ている「日本代協ニュース」の他、HPやWEB上の書庫、各代協宛のメールや各種資料、本冊子(「現状
と課題」
)等において、各委員会の活動内容を始め、多くの情報がオープンに掲載されている。各代協会
員は、日頃からこれらの資料に目を通し、最新情報に触れて理解を深めておく必要がある。
また、個々の代理店経営を考える上でも、社会の変化や業界動向等に関する情報収集は必須であり、保
険会社経由の情報だけではなく、業界紙等の定期購読等により、自ら「情報を取りにいく」姿勢も求めら
れる。特に、代協の仲間は保険会社を跨っているため、多面的な情報を得ることができる。正に、代協活
動は「集い、語らう」代協の価値が発揮される場面であり、活発な情報交換が望まれる。
⑵ 日本代協ニュースの配信
日本代協ニュースは、本会の活動を伝える主要な情報伝達手段であり、下記2ルートで配信している。なお、
日本代協から代協事務局宛配信されるメール情報は、各代協会員にも速やかに伝達されることが望まれる。
① 「日本代協ニュース(定期版)」 ➡ タブロイド版年2回・定期メール配信年8回 計10回発信
② 「参考情報」 ➡ 各代協宛メールにより随時配信・タイムリーな情報発信を実施
⑶ 「代協活動の現状と課題」の作成・配布
代協活動の現状と課題をまとめた冊子であり、代協会員必携の書として毎年9月に発刊している。全代
協会員に各1冊配布するとともに、日本代協HPにも全文を掲載している。会の活動状況やポジションを
オープンにして活動の透明性を高めるとともに、様々な課題解決に向けた提言を盛り込み、業界関係者に
対して論議材料の提供を行っている。
■代協会員向け経営支援活動
主な支援活動は以下の通りである。代理店経営に関する具体的な支援が十分ではないのが現状であり、本
年度以降、ビジョン委員会を中心に論議を進める予定である。
⑴ 情報提供
① 顧客向け情報紙「みなさまの保険情報」の斡旋
平成10年1月から斡旋提供を始めた「みなさまの保険情報」は、各会員の消費者対応力強化、付加価
値提供のためのツールとして企画されたものであり、年4回発行している。平成16年7月からは、電子
メール(PDF)による提供も始め、利便性を向上させている。更に、平成22年度には価格の引下げも実現
しており、広報委員会の意欲的な取り組みもあって、徐々に利用会員が拡大している。平成27年度におい
ては、新たに「購入者拡大キャンペーン(新規購入者には50部無料提供)
」を展開し、活用推進を図った。
― 172 ―
ダイレクト販売等の進展に対応し、プロ代理店は自らの価値を高めるとともに、従来以上に顧客との
距離を詰め、より身近なところで頼りにされる存在になる必要がある。一方で消費者からは「保険の更
新の時しか来ない、電話だけで更新の時すら来ない、代理店の顔が見えない」との不満の声が多いのも
現実である。
事故を起こさない契約者への日常普段の働き掛け、情報提供の強化による他代理店との比較優位化
(違いを認識してもらう)を図るためにも「みなさまの保険情報」は有効なツールであり、更に活用を
図る必要がある。
(注:自ら自主的に取り組んでいれば問題ないが、実際にはこの種の情報紙を、充実
した内容で年4回継続して発刊することは非常に難しく、本施策には活用の価値がある。)
② 新日本保険新聞社提携:「プロ代理店が実践できる中小企業開拓に役立つ財務知識」の連載
今後人口減少で縮小する日本の保険マーケットを展望した時、代理店成長のカギの一つが中小企業開
拓にあることは言うまでもない。しかしながら、自動車や火災等のニーズ顕在型の商品販売を行ってき
た多くの地域の代理店には、中小企業開拓の知識やノウハウは必ずしも十分ではない。特に、中小企業
の場合は、先方の財務状況を踏まえた上で、リスク分析とリスクヘッジの方策を提案する必要があり、
一定の財務知識の保持は代理店にとって不可欠の資質となっている。
こうした認識の下で、「東京都中小企業診断協会」の「企業金融研究会」と連携し、共同企画の形で、
平成25年10月から新日本新聞社に定期的に連載記事を掲載し、代理店に対して実践に役立つ財務知識の
提供を行っている。(継続連載中)
⑵ 経営支援に係る各種制度(税制、代理店制度等を除く)
○「景気対応緊急保証制度」の対象業種化の実現(「セーフティネット保証」)(平成21~24年度)
近畿・阪神ブロックからの要請を受け、政府が実施している「景気対応緊急保証制度」の対象業種へ
の損害保険代理業の追加指定を実現するため、平成21年6月から金融庁の協力、並びに政連の支援を受
けて中小企業庁と折衝を行った。その結果、平成22年2月に対象業種への追加を実現した。(これによ
り、代理店が金融機関から融資を受ける際に、売上高減少の基準を満たせば、一般保証とは別枠で、無
担保保証で8, 000万円、有担保で2億円まで信用保証協会の100%保証を受けられることとなった。)
平成23年度下半期以降は、損保協会にて本制度の適用申請を行うことになった。本会の取り組みを契
機として、ようやく本件が業界全体の課題と位置付けられたものであり、日本代協にとって一つの成果
となった。
一方で、本会で把握している限りでは代協会員の利用実績はなく、対象業種化の必要性には疑問も
残った。必要のない制度を取りにいくと、(そのために動いた)行政との間に禍根を残すおそれもある
ので注意が必要である。
⑶ 各種外部業者との提携 <人材あっせん>
① パソナドゥタンク社との提携
パソナドゥタンク社との提携による「総合人材サービスREP制度」は、代協会員の客先に人材採用
ニーズがある場合、同社につないで必要な人材を派遣してもらう制度である。成約すれば既定のコミッ
ションが支払われる。現在、北海道代協他が提携を行っている。
② JCM社との提携 <マイカー買取り・下取りサービス>
JCM社との提携による「マイカー買取り・下取りサービス」は、顧客の車の下取り・廃車・輸送・
名義変更代行を専門業者であるJCMに紹介するものであり、成約すれば代協会員並びに代協事務局に、
所定の紹介手数料が支払われる。現在、多くの代協が提携を行い、成約台数も年間ベースで約1, 000台
― 173 ―
に到達している。(平成27年度末実績 985台)
提携の可否は各代協の判断となるが、JCM社は企業・団体提携を販売チャネルとしており、個々の
代協会員が個別に同社のサービスを利用することはできないため、代協という法人の活用価値がある。
また、クルマのバリューチェーンの中に保険を組み込むディーラーへの対抗策としても活用の価値が
あるため、各代協会員における積極的な取り組みが期待される。
(注:JCM社は、中古自動車販売協会(中販連)とメガバンク、メガ損保等が出資者となって設立さ
れた会社であり、防衛省の他、医師会や税理士会等とも提携している信頼と実績ある業者である。)
<コミコミフラット5> JCM社が提供する5年契約の個人向け残価設定型カーリースである。
本プラン利用によるお客様のメリットは以下の通りである。
〇 メーカーを問わず、好きなクルマを選ぶことができる
〇 頭金なしで契約満了時まで、諸費用コミコミの月額定額でクルマに乗ることができる
〇 満了後のプランが4つ用意されており、お客様の状況に応じて選ぶことができる
〇 基本期間5年の後、2年延長すれば、クルマはお客様のものになる
〇 下取り車がある場合は、JCM社が無料査定を行い、競争力のある価格で買い取る
また、代協会員のメリットは以下の通りである。
〇 お客様へのクルマの提供を通して新たな接点が持てる
〇 新車ディーラーへの顧客流出を防ぐことができる
〇 自動車保険・自賠責保険は代協会員扱いとなり、新規契約獲得につながる
〇 JCM社から既定の紹介手数料が支払われる
<K1プラン> 上記の追加プランである。
○ リースは仕組みが難しい、低廉な価格であれば紹介しやすいといった代協会員の声に応えて代
協専用商品として開発されたカーリースプラン
○ 車種を限定し、毎月の支払いを1万円にすることで、インパクトがあり、分かりやすい
③ ハウス・デポ・パートナーズ(HDP)社の紹介
三井物産のグループ会社ハウス・デポ・パートナーズ(HDP)社の「住宅ローン取次店」制度は、
顧客に住宅の新築・借り換え時に住宅ローンのニーズがある場合に、HDP社に取り次ぎ、顧客の資金
ニーズに応えるとともに、火災保険や生命保険の既存契約の見直しにつなげ、顧客拡大や収益向上策の
一つにしようというものである。また、住宅ローンが成約した場合には、個々の代理店に所定の手数料
が支払われる。
本制度は、貸金業の資格取得、登録が必要なく、登録費用やランニングコストも不要なため、一般代
理店でも活用しやすい仕組みになっている。(注:一定量の事務処理などは発生する)
なお、本制度は、代協との提携の必要はなく、代理店個々に利用できるものであるが、日本代協と
HDP社との合意により、代協会員には以下の特典があるので、活用願いたい。
○ 業務を受託する際に必要となる「研修会」は、一般向けには東京・大阪開催であるが、代協会
員の場合は、一定の人数を集めることを条件に、それぞれの地域での開催が可能(20名以上)
○ 代協会員には、有料斡旋の販促グッズ(10, 000円相当)を無償で提供
⑷ 販促品の頒布等
代協会員に対するサービス事業として実施している各種頒布品の斡旋については、今後とも低廉な価格
での提供を行うとともに、品目の充実を図っていく。
― 174 ―
18 代協正会員実態調査(平成27年度)
■実態調査の概要
本会では、野村総合研究所(以下、野村総研)と共同で、平成22年度以来5年振りとなる代協正会員実態
調査を実施した。概要は以下の通り。
□ 実施期間:平成27年11月5日~平成28年2月4日(3か月間)
※当初は1か月間で終える予定であったが、アンケートの回収率を上げるため、締切を延長して実施
した。
□ 対 象 者:平成27年10月末在籍の代協正会員でネット環境がある代理店 10, 272店
□ 実施方法:野村総研が提供するインターネットリサーチサービス「True Navi」を活用し、ネットに
よるアンケート調査を実施
□ 回 収 率:36. 4%(3, 743社)・・・前回47. 3%
※前回を上回る50%以上の回収率を目指して督励を続けたが、残念ながら大きく届かず、前回も下回
る結果となった。
□ 調査項目:⑴ 基本情報 ⑵創業と合併・分離 ⑶経営状況 ⑷従業員等の状況 ⑸経営基盤の安定
化・強化に向けて ⑹日本代協に対する要望 など
□ 調査結果:
「報告書(平成28年6月付け)」にまとめて関係各所に上程するとともに、本会HPにも掲
載しているので参照願う。
■調 査 結 果
⑴ 回答者約3, 800店の基本情報
・チャネル:85. 9%が「専業」チャネルで、うち65. 4%が「研修生OB」である。「整備工場関連」5. 3%、
「企業関連」4. 2%となっている。
・経営形態:
「個人形態」13%、代表者のほとんどが男性で、「40代~60代」で90%以上を占めている。
従業員(勤務型含む・派遣、パート除く)は「1人~5人」の規模が64. 8%、次いで「6人~10人」
18. 6%と、10人以下の代理店が全体の80%強を占めている。平均は6. 9人(勤務型1. 3人)であった。
・年齢構成:40代~60代が多く、勤務型では50代、60代が多くなっている。
・専属/乗合:「専属」66. 2%で、損保ジャパン日本興亜の代理店が最も多かった。
・生保取扱い:89. 3%が生保を取扱っている。うち65%は1社のみの取扱であった。6社以上の取扱があ
る代理店も6. 9%存在。損保系生保会社が主であるが、第3分野商品に強みを持つ「メットライフ」「ア
フラック」
「オリックス」の委託も一定数存在した。
・少短取扱い:8. 2%(306社)のみ。チャネルとして一般代理店を活用していない小短が多いことも一因
と思われる。
⑵ 創業と合併・分離
・設営年:半数近く(46. 1%)が平成13年以降に設立された代理店であり、特に自由化直後の平成13年~
平成22年に多くの代理店が設立されていた。一方で、100年以上の歴史を有する代理店も5社確認され
た。
・合併:39. 2%の代理店が合併経験を有し、特に、平成13年4月の代理店手数料自由化によるポイント制
度導入以降加速していた。
― 175 ―
・分離:13. 9%は分離の経験があり、年々増加していることが窺えた。個別の事情は不知であり、様々な
事情があると思われるが、代手ポイント狙いの打算的な合併や理念の合致がないままの合併で方針の違
いが表面化し、袂を分かったケースも多いと思われる。
⑶ 経営状況
・取扱保険料:
「1億以上10億未満」が42. 9%と最多、次いで「1, 000万以上1億未満」31. 5%であった。
「100億以上」も6社あった。
・手 数料増減:平成24~25年度、平成25~26年度にかけて、ともに半数が増収。2期連続増収が44. 3%
あった。減収は15%程度。未回答が30%近くあった。
・自 動車保険の割合:「60%以上70%未満」が一番多く、「100%」の代理店も170社あった。全国平均は
60. 7%であったが、東京・大阪・神奈川では40%~50%程度と低く、逆に秋田や沖縄では70%近くに
なっており、大都市と地方の差が出ている。
⑷ 従業員等の状況
・営業従事者数:「1人~10人」が92. 8%を占めている。
・給与:代表者は「600万~700万」が最多で、平均は650万円 従事者は「300万~400万」が最多で、平均は400万円
事務担当者は「200万~300万」が最多で、平均は217万円 勤務型代理店は「300万~400万」が最多で、平均は366万円であった。
⑸ 代理店の方針・態勢等
・事故処理の取り組み:「営業時間内」はほとんど代理店で受付けているとする回答が94. 4%、「時間外」
も代理店で対応しているのは70%程度となっている。「現場急行」を行っているのは26. 8%。「進捗状況
を契約者に連絡」しているのは70%程度であった。
・BCP策定状況:「策定済み」19. 7%、「策定中・策定予定」30. 3%で約半数という状況。一方で、「予定
なし・必要なし」が50. 1%あり、大きな課題である。
⑹ 経営基盤の安定化・強化
・実施すべき取り組み:
「保険募集人の増員」「コンサルティング力の強化」「生命保険の割合拡大」が多
く挙げられていた。「コンプライアンス強化」「後継者の確保・育成」などもあった。
⑺ 日本代協等に対する要望
・
「保険会社への提言活動」
「代理店経営(生産性向上)のための教育・啓発・情報発信」「代理店のブラ
ンド向上」
「募集人の教育・研修」を求める声が多かった。
■総 括
本調査の結果は、損害保険代理店ごとの組織体制や手数料収入の増減、待遇・給与などの面でのばらつき
が大きくなっていることを示しており、
「損害保険代理店間の格差が拡大し、二極化しつつある」印象を残
すものであった。
保険募集の基本的なルールや代理店に対する体制整備義務を定めた改正保険業法が平成28年5月29日に施
行され、また、人口減少・超高齢社会の到来による社会環境の大きな変化とともに、自動車の自動運転や
AI・IoTなど、かつてない急激なデジタル革命の進展も重なり、地域密着型の損害保険代理店としても従来
のビジネスモデルの変革が必要になっている。
アンケートの「自由記入欄」にはこうした環境変化をしっかりと認識し、日本代協に対して代理店経営の
安定化のための「情報提供の拡充」や「教育・セミナー等の実施」「地位向上、ブランド力アップの支援」
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を要望する声も一定数寄せられている。
一方で、投稿件数がより多かったのは、「官庁・保険会社への意見強化」や「将来への不安」「代理店制度、
特に手数料問題の改善」
「募集環境の改善」であり、経営環境が厳しくなった、或いは、今後厳しくなると
感じている会員が多くいることが確認できた。
また、
「防災の推進」や「事業継続計画の策定」に関しては、殆どの項目について十分な取り組みが行わ
れていない実態が明らかになった。今回の調査結果の集計中に、熊本地方大地震が発生したが、現地の被災
者及び代理店・募集人の苦悩を目の当たりにするにつけ、本件は喫緊の課題であり、危機感をもって防災・
事業継続計画の態勢整備を進める必要性があることを痛感させられた。
代協正会員実態調査は、5年ぶりの実施であったが、回答率は36. 4%と低調に終わった。代理店の経営実
態について、できる限り詳細に把握するために踏み込んだ質問内容にしたこと、更に、回答の信憑性を確保
するために、インターネットでの回答に限定したことなどが背景にあったのではないかと考えられる。今後
の取り組みに活かしたい。
(※このような中、福井県代協、京都代協、奈良県代協は60%を超える回収率を達成した。組織運営がうま
く行われている結果でもあり、他の参考になる取り組みであった。)
なお、本報告書は調査結果のみを集計・整理したものである。今後、分析を進め、有為な材料があれば、
改めて報告を行う予定である。
― 177 ―
19 公益法人制度改革への対応
■組織改革の変遷
本会の起源は、昭和15年10月に設立された「東京火災保険代理業懇話会」であるが、法人としての歴史は、
昭和39年12月に大蔵省の認可を受けて設立された「社団法人日本損害保険代理業協会連合会」である。その
後、昭和55年4月に現在の「社団法人日本損害保険代理業協会」に改組し(注:同時に「日本代協」を商標
登録)
、諸先輩の先見性と弛まぬ努力のお陰で、損害保険代理業界を代表する全国レベルの職業団体として
歩み続け、現在に至っている。
この間、様々な環境変化に対応しながら活動を続けてきたが、本会の存立根拠となる公益法人制度につい
ては、社会環境に合せて抜本的改革が行われることとなり、平成18年6月2日に公益法人制度改革関連3法
が公布され、平成20年12月1日に施行された。
本制度改革により、旧来の公益法人は、一般社団法人・一般財団法人と公益社団法人・公益財団法人のい
ずれかに移行することとなり、公益法人の認定は、公益認定等委員会の意見に基づき行政庁(内閣府)が行
うこととなった。
本会としては、時代の要請や環境変化に機敏に対応し、消費者の利益のために活動し続ける保険代理店の
専門家集団になる必要があるとの認識の下で、政府が進める制度改革に一歩先んじる形で度重なる論議・検
討を行ってきた。
その結果、日本代協としては、募集人に対する教育・研修事業を柱にして公益認定を得ることができる可
能性があると判断し、組織や事業内容の変更を行うことなく公益社団法人の認定にチャレンジすることとし
た。これに併せて、長年の懸案となっていた全代協の法人化を実現することとした。
法人化実現のために各代協に法人化特別委員会を設けるとともに、日本代協サイドにはフォローアップ小
委員会及び法人化推進特別委員会を設置してサポートを行い、全代協足並みを揃えて取り組みを進めた。
■全代協の法人化(平成20年12月〜平成21年1月)
平成20年4月16日の熊本県代協を皮切りとして各代協の通常総会が開催され、既に中間法人となっていた
群馬県代協(※)を除く46代協は、一般社団法人化に係わる次の内容を決議した。
・平成20年12月中に一般社団法人の形態で新法人を設立すること
・現組織の会員全員が新法人に移行すること
・新法人への移行に伴い現組織を解散すること
(※中間法人となっていた群馬県代協については、整備法の規定により、新法施行日付けで自動的に一般
社団法人に移行)
以後、フォローアップ小委員会が作成した「代協標準定款」並びに「一般社団法人設立のためのマニュア
ル」に沿って、設立手続きが進められることとなった。(本マニュアルは、参考にしたいとの要請を受けて
金融庁にも提出した)
平成20年12月1日~翌年1月にかけて、各代協が続々と一般社団法人格を取得した。これにより、本会の
長年の悲願であった全代協の法人化が実現し、新たな活動のステージへと歩みを進めることとなった。
■会員資格変更の先行実施(平成21年8月)
平成20年の金融庁検査において会員資格変更が未改善事項として指摘を受けていること、また、公益認定
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の審査状況を踏まえると、先ずは現組織において会員資格の変更を行った後、公益認定申請を行うのが望ま
しいとの判断に至ったため、平成21年6月の総会に「会員資格を変更する定款変更」(正会員を個々の代協
会員から法人格を取得した各代協とする変更案)を付議し、承認された。
その後、平成21年8月に金融庁に定款変更を申請し、同25日付で認可を取得した。
これを受けて、平成21年10月に正会員資格変更後初の全47代協による臨時総会が開催され、公益認定申請
に向けた定款変更案等が審議、承認された。
■公益認定申請とその後の状況(平成21年10月〜平成22年3月)
臨時総会の決議を受けて申請準備を進め、平成21年10月に金融庁に事前報告の上、翌10月20日付で内閣府
公益認定等委員会(以下、委員会)に対し公益認定申請を行った。
その後、5ヵ月に及ぶ審査を受け、追加資料提出やヒアリング等にも迅速な対応で応えてきたが、平成22年
3月に開かれた予備審査の結果を踏まえ、現状では公益認定を取得することは難しいと判断されたため、委
員会事務局からの示唆も踏まえ、本審査に至る前に申請を一旦取下げ、しかるべき時期に再申請を行うこと
とした。
長期間に亘る審査期間中、本会の長年に亘る取り組みを踏まえて、委員会事務局に対し、真摯に、かつ、
信念を持って本会の活動の公益性を主張したが、①(当時の時点では)委員会の委員には保険業そのものが
有している公益性に対する認識が薄いこと(一般の物品販売と同じとの認識)
、また、②本会が行っている代
理店・募集人の教育・資質向上の取り組みが消費者の利益につながるものであることへの理解が不十分であ
ること(消費者への利益が反射的であり、直接的に利益を及ぼさないとの理由)から、現在のような審査状
況では、本審査に臨んだとしても公益認定を得る可能性は低いと判断し、一旦申請を取り下げたものである。
■理事数削減の定款変更(平成22年5月)
上記の通り、公益認定申請を一旦取り下げたため、予定していた定款変更は先延ばしせざるを得ない状況
となったが、理事の総数については、①平成21年8月の会員資格変更認可時にも、金融庁から早い段階で新
しい会員資格に応じた数に削減するよう求められていたこと、②平成22年度は役員改選期に当たっていたた
め、6月に開催される臨時総会までには変更認可を取得しておく必要があったことから、理事数を「30名以
上60名以内」から「15名以上30名以内」に削減する定款変更申請を金融庁に行い、平成22年5月10日付で認
可を取得した。
■一般社団法人への一旦移行
本会としては、平成22年3月に公益認定申請を一旦取り下げた後、その後の審査状況を見ながらしかるべ
きタイミングで再申請を行う方針としていた。
しかしながら、その後の他団体の審査状況や関係団体との情報交換においても、前回取り下げ時の環境と
大きな変化はなく、(当時の時点では)再申請を行っても公益認定の取得は難しい状況であると判断された。
また、本会のような特例民法法人は、平成25年11月末が移行期限という時間的制約があり、ここで再申請を
行うことには大きなリスクが伴うことが懸念された(再び取り下げとなった場合、即座に再度臨時総会の決
議を得た上で一般社団法人移行の申請が必要)。そこで、理事会における論議の結果、一旦一般社団法人に
移行した上で改めて事業内容等を再検討し、中長期的な時間軸の中で公益認定申請を行う方が望ましいとの
判断に至り、平成24年度の通常総会において審議の結果、一般社団法人移行を停止条件とした定款変更案が
承認された。
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■一般社団法人への移行
総会決議を受けて申請準備を進め、平成24年10月20日付けで内閣府に対して移行認可の申請を行った。
その後、5ヵ月余りの審査の結果、平成25年3月19日付で、移行許可証を受領し、同年4月1日付で一般
社団法人の登記を行った。
今後、本会としては、一般社団法人として活動を行いながら、引き続き公益認定のチャンスを伺うことと
している。一方で、本会は公益認定を取得するために活動を続けてきたわけではなく、一般社団に移行した
としても本会の理念や目的、事業活動そのものには何ら変更はない。従来通り募集人の資質向上や防災・減
災への取り組み、本業を通じた社会貢献活動などを柱として、様々な活動を展開していく方針である。特に、
公益認定との関係を踏まえると、損害保険大学課程の受講者拡大に向けた取り組みが重要であり、先ずは、
同課程の安定稼働の確保と制度内容の周知、受講者募集に注力する。
なお、移行後3年間は、移行認可法人に求められる「公益目的支出計画」の達成に向けて、万全の取り組
みを続ける必要があるが、最終年度となる平成27年度において若干の積み残しが生じる見込みであることか
ら、計画達成期間を1年延長して平成28年度末とする予定である。
― 180 ―
20 反社会的勢力への対応
■社会的背景と暴排条例の内容
「暴力団による不当な行為の防止等に関する法律」(略称:暴対法)では警察が暴力団を取り締まることが
前提になっているが、一般経済社会の中に暴力団等が巧妙に入り込んで資金獲得活動を行っている現状にお
いては、警察による取り締まりだけでは限界があるのが実態である。そこで、一般市民や事業者が暴力団等
との関係を自ら遮断し、社会から締め出していくことを目的として、全都道府県で「暴力団排除条例」(通
称:暴排条例)が施行された。(平成22年4月の福岡県から始まり平成23年10月の東京都、沖縄県で完了)
暴排条例で暴力団等に利益供与を行うことを禁止される主体は「事業者」であるが、この事業者には、会
社のみならず社団や財団法人、個人事業主まで広く含まれている。従って、日本代協並びに各代協並びに全
ての代協会員は、暴排条例を踏まえた組織対応が求められている。また、営利性の有無を問わず、全ての利
益供与行為が規制されていることを認識する必要がある。特に、「威力利用目的」の場合は、懲役まで含め
た厳しい罰則が規定されている。
なお、条例施行前に締結していた契約については、「正当な理由がある場合」と見做され、その時点では
条例違反ではないとされているが、早期解約あるいは更新拒否が求められた。
また、東京都の条例では「自主申告」の規定が設けられた。事業者が自らの条例違反行為に関する報告や
資料とともに今後同様の違反を行わない旨の誓約書を提出すれば、当該条例違反行為について勧告を受ける
ことはないとされている。
(但し、免除されるのは一度だけである。なお、事業者に対する処分は、勧告⇒
公表⇒中止命令⇒罰則[懲役・罰金]という段階で行われる。)
■金融庁の対応(その1)
平成23年12月26日に公表された反社勢力との関係遮断に向けた取り組み策は以下の通りである。
<全金融機関向け監督指針>
1.反社との取引の未然防止(入口)
○暴力団排除条項の導入の徹底
・各金融機関は、提携ローン(四者型)を含め、暴力団排除条項の導入を改めて徹底する。
○反社データベースの充実・強化
◇ 各金融機関・業界団体の反社データベースの充実
各金融機関・業界団体において、引き続き反社勢力の情報を積極的に収集・分析して反社データベー
スの充実を図るとともに、グループ内や業界団体間での反社データベースの共有を進める。
◇ 銀行界と警察庁データベースとの接続の検討加速化
警察庁が保有する暴力団情報について、銀行からオンラインで照会できるシステムを構築するため、
金融庁、警察庁及び全国銀行協会の実務担当者の間における、情報漏洩の防止の在り方を含めたシステ
ム構築上の課題の解決に向けた検討を加速する。
○提携ローンにおける入口段階の反社チェック強化
提携ローンについて、金融機関自らが事前に反社チェックを行う態勢を整備する。また、各金融機関は、
提携先の信販会社における暴力団排除条項の導入状況、反社データベースの整備状況等を検証する。
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2.事後チェックと内部管理(中間管理)
○事後的な反社チェック態勢の強化
・各金融機関は、反社データベースの充実・強化、反社チェックの頻度アップ等、既存債権・契約の事後
的な反社チェック態勢を強化する。
○反社との関係遮断に係る内部管理態勢の徹底
各金融機関は、反社勢力との取引の経営陣への適切な報告や経営陣による適切な関与等、反社との関係
遮断に係る内部管理態勢を徹底する。
3.反社との取引解消(出口)
○反社との取引の解消の推進
各金融機関は、警察当局・弁護士等と連携し、反社との取引の解消を推進する。なお、事後に反社取引
と判明した案件については、可能な限り回収を図るなど、反社への利益供与にならないよう配意する。
○預金取扱金融機関による、特定回収困難債権の買取制度の活用促進
金融庁及び預金保険機構は、特定回収困難債権の買取制度の運用改善を図るとともに、提携ローンにお
いて、信販会社が代位弁済した債権を買い戻した場合も同制度の対象となること等を周知することにより、
同制度の活用を促進する。
○信販会社・保険会社等による、サービサー(債権管理回収専門業者)としてのRCCの活用
特定回収困難債権の買取制度の対象とならない信販会社・保険会社等の反社債権についてRCC(整理
回収機構)のサービサー機能を活用する。
■金融庁の対応(その2)
平成24年2月25日に公表された反社対応の推進策は以下の通りである。
<保険会社向けの総合的な監督指針>
○組織としての対応
・担当者や担当部署任せにすることなく経営陣が一体となって組織として対応する。
○反社勢力対応部署による一元的な管理態勢の構築
・反社対応部署を整備し、情報を収集、分析するとともに一元的に監視したD/Bを構築し適切に更新する。
・グループ内で情報の共有化に努め、業界団体から提供された情報を積極的に活用する。
・当該情報を取引先の審査や保険会社における株主の属性判断を行う際等に活用する。
○適切な事前審査の実施
・反社情報を活用した適切な事前審査に努めるとともに、契約書や約款への暴排条項導入を徹底して反社
勢力が取引先となることを防止する。
○適切な事後検証の実施
・既存の債権や契約の適切な事後検証を行うために態勢整備、並びに保険金などの支払い審査を適切に行
うための態勢整備を行う。
○反社勢力との取引解消に向けた取り組み
・反社勢力との取引が判明した場合、対応部署を経由して迅速かつ適切に経営陣に報告され、経営陣の適
切な指示・関与のもと対応を行う。
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■日本代協としての対応
暴排条例施行に伴う日本代協としての対応は以下の通りであり、整斉と対応して組織としての社会的責任
を果たす必要がある。但し、現時点では代協会員の家族や従業員の家族その他関係者等にまでチェックの網
を広げてはいない。代協正会員は「代理店」であるが、代理店を委託しているのは保険会社であり、一義的
には保険会社に委託責任があるため、日本代協としては、今後の損保協会や保険会社の対応状況に合せて随
時必要な対応を行っていく方針である。
① 「倫理綱領」「募集規範」改定
② 「反社会的勢力への対応に関する基本方針」策定
③ 「表明・確約書」新設・取付け(日本代協役員就任用・代協新入会員用)
④ 「一般取引用暴排条項」ひな形作成・全代協に提供(無催告で契約解除できる条項)
■損保協会・各保険会社の対応
① 委託契約書:新規委託分から暴排条項が織り込まれた新しい委託契約書が使用されている。既存代理店
に対しては同内容の通知状が一斉送付された。
② 約款:各社毎に時期は異なるが、平成25年10月以降の契約分から、自動車保険の約款が反社対応に改定
され、以後、火災・新種と続いて各約款対応が終了している。なお、反社該当と判明した場合で
も、被害者保護の観点から賠償保険金は支払われることになっている。
加入時の反社チェックの有無や反社該当判明時の契約無効解除の対応等、現場では悩ましいケースも起こ
り得るため、保険会社と連携して対応を行うことが肝要である。そのため、各代理店は、保険会社からの反
社対応に関する連絡・通知内容に留意し、その内容を十分に把握しておく必要がある。
■反社対応における課題
⑴ 反社勢力の判定の統一と公的D/Bの照会・確認スキームの構築
反社勢力を社会から締め出すために、正当な商取引から排除していくことは当然であるが、反社勢力の
判定基準を国あるいは機関として統一することが必要である。そうでなければ、本来排除すべきでない顧
客まで恣意的に排除することもなりかねず、また、裏付け資料や証拠がないのに反社排除の対応を求めら
れても現場の代理店が困惑するだけである。
従って、効果的な対応をとるためには、警察当局と連携した業界全体のデータベースを整備することが
必要であり、保険業界も生保・損保共通で早期にこうした基盤を作り上げる必要があり、損保協会におけ
る対応に期待したい。
(なお、金融業界では、組織一体となって取引解消に努めたもののどうしても取引を止めることが難し
い場合には、国の預金保険機構や整理回収機構に債権を売却し、対応を機構に委ねるという「最後の手段」
も用意されている。=「特定回収困難債権の買取制度」)
⑵ 反社勢力の法的位置づけ
我が国では、法的には反社勢力の存在そのものは否定されていない。個々の構成員には市民権も認めら
れており、運転免許証も発行されている。従って、日常的な取引の中に反社勢力が紛れ込みやすい環境に
あるのが現実であり、こうした環境の中で事業者サイドに過度な対応を求められても限度がある。国とし
ての揺るぎない信念と仕組みの下で、関係機関一体となった強力な対応を望みたい。
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21 「全国損害保険代理業国民年金基金」の運営
■基本的な認識
本基金は日本代協が設立母体となり、平成4年9月1日に厚生省(当時)の認可を受けて創設した損害保
険代理業者向けの唯一の職能型年金基金であり、より豊かな老後の生活を保障する優れた年金基金であるた
め、責任を持って存続させる必要がある。
(注:日本には医師・弁護士などを対象にした25の職能型年金基
金があり、本基金もその一つである。他に、各都道府県に地域型と呼ばれる47の年金基金がある。)
代理店総数が年々減少するとともに、本基金の対象となる個人代理店が減少し、代理店主も高齢化して加
入者から受給者へと移っている。併せて、保険代理業の法人化が進むにつれて、本基金の加入者から厚生年
金へ移行する者が数多く出ており、本基金を取り巻く環境は、極めて厳しい。しかしながら、個人事業主の
従業員、その家族並びに既存加入者の増口、あるいは代協未加盟の個人代理店等、本基金加入が可能な対象
者は数多く残されており、これら対象者への情報提供と加入促進を継続して図ることが重要である。(注:
本基金は代協会員以外でも利用することができる。)
[参考]国民年金は月約16, 000円の保険料で、受給額は満額の場合で月約65, 000円程度であり、国民年
金だけでは将来的に低年金者を増やし、老後破算につながるリスクもある。そのため、上乗せとなる
備えが必要になるが、いくつかの選択肢の中で加入者にとって最も優れた年金制度が国民年金基金で
ある。
■加入者募集の推進
平成20年度以降、加入者募集の推進を組織委員会の主管業務に位置付け、年金基金代議員と連携・協力し
ながら組織一体となった取り組みを展開しているが、毎年目標未達に終わっており、事務局運営(業務経
理)は依然として厳しい状況が続いている。(注:年金自体の支払いが危ないわけではない)
■平成27年度の加入者増取り組み結果
平成27年度は、各地の加入勧奨活動を一歩掘り下げるために、各代協における年金委員会(もしくは年金
委員)の設置を推奨して展開を行った。しかしながら、年度途中の進捗が捗々しくなかったため、10月単月
の 「全国一斉『国民年金基金加入推進キャンペーン』」 を実施した。また、国民年金基金の加入者募集と会
員増強ならびに損害保険大学課程コンサルティングコースの受講者募集を合わせた「三冠王」表彰の企画も
打ち出し、活動の盛り上げを図ったが、年度累計では16代協において27名の新規加入者獲得に留まった。
□平成28年3月末現在加入員数:619名(前年度末 加入員数 813名)
□新規加入:受付ベース 27名・登録ベース 25名(目標 120名)
□新規受給者等の資格喪失者:219名(注:加入者側から受給者側もしくは厚生年金等に移った人数)
□増口:受付ベース 5名・登録ベース 5名
■平成28年度の取り組み
組織委員会の主導の下で、前年度目標と同数である120件の加入者獲得(新規加入者1件1P、増口1件
0. 5Pカウント)を目標に定め、組織一体となって必達を図る。なお、他の課題と同様に、各代協における
― 184 ―
取り組みには温度差があり、また、本制度に対する理解度にも濃淡があるため、地域担当理事や各ブロック
協議会との連携を図りながら、制度の趣旨と有用性並びに目標必達の重要性について浸透を図っていく。
■運営費削減
本基金の安定的運営のため、従来から管理費・運営費は最低限の費用で抑えてきた。平成21年11月には本
基金の常務理事を日本代協常務理事と兼任(無報酬)とし、人件費の削減を図った。また、平成22年5月に
は、事務局を日本代協内のスペースに移転させ(本基金としての賃料負担なし)、管理コストの削減を図っ
ている。更に、平成26年3月には事務局職員を1名削減して担当者1名の体制とし、ギリギリの状態で運営
を行いながら、我々の先輩である受給者への年金支払業務に注力している。
今後も可能な限りコスト削減を図っていくことは勿論であるが、物理的な限界もある。一方で、業務経理
の問題は、加入者数を目標通り増加させることができれば解決する問題であり、先ずは加入者増目標の達成
を第一義として組織をあげて取り組み、事務局運営の安定化を図っていく。
― 185 ―
22 全国損害保険代理業政治連盟(政治連盟)
Ⅰ 政治連盟の意義と成果
■政治連盟の意義
日本代協の事業活動を進めるにあたり、保険代理業に係る法制や税制等について政治的な課題が生じるこ
とがあるが、日本代協は定款上、政治団体としての活動はできない。(注:日本代協は、旧民法34条に基づ
いて旧大蔵省の認可を受けて設立された公益法人であり、政治団体としての活動は制限されていた。)
このため、 日本代協の事業遂行に必要な政治活動を行うために、 政治資金規正法の適用を受ける政治団体
として、
「全国損害保険代理業政治連盟(以下、政治連盟)」を設立、 東京都選挙管理委員会に届出し、 組織
的かつ継続的に活動を行っている。言うなれば、日本代協の事業遂行に必要な政治団体としての活動を担う
組織が政治連盟であり、 政治活動の部分に関しては日本代協、 政治連盟はいわば表裏一体の関係にあるとい
える。
なお、政治連盟は、特定の政党や主義主張に与するものではなく、その主たる活動は、損害保険代理業の
活性化に向けて、国に対し必要な法改正や税制改正を働きかけることにある。そのためには、損害保険代理
業界に対する支援が期待できる国会議員の地元選挙区における関係構築が重要であり、各代協の日頃の取り
組みが東京における政治連盟の活動に反映する関係にある。(注:政策実現のためには政権与党の影響力が
必要となるため、時の与党中心の活動になるのが実態である。)
なお、政治資金規正法第21条により、 企業・団体からの寄付は禁止されているが、政治連盟は、法に則っ
た個人加入の政治団体であり、他の政治団体や政治家個人への寄付も認められている。(金額制限あり)
■政治連盟の会員
政治連盟の会員は、政連規約第5条に基づき「通常会員」と「協賛会員」によって構成されている。
「通常会員」は、 損害保険代理店の業務に携わる「個人」であり、法人代理店の場合には一般的に法人の
代表者名が個人で会員となっている。(平成28年3月末現在通常会員数:8, 127名)
「協賛会員」は、 通常会員以外で本連盟の目的、 事業に賛同する個人であり、 日本代協事務局メンバーな
どが会員となっている。
■政治連盟の活動成果
政治連盟では、40年近くにわたり日本代協の事業遂行に必要な政治活動を行っている。「銀行窓販の弊害
防止への対応」、「税制改正要望」、「郵政民営化に伴う民業圧迫への対応」 等の問題解決のためには、理解あ
る国会議員の支援・協力が不可欠であり、顧問や 「保険制度改善推進議員連盟(保険議連)」 を中心とした
支援議員には、
「自民党税調」、衆参の財政・金融・財務の各委員会、各官庁等への働きかけをサポートいた
だいている。こうした取り組みによる近年の主な成果は以下の通りである。
・平成18年度:「地震保険料控除制度の創設」 の実現
・平成19年度:銀行窓販に関する 「監督指針への『公取ガイドラインへの留意』規定」 の実現
・平成21年度:「医療・介護・年金等の社会保障制度を補完する商品に係る保険料控除制度」 の創設
「中小企業庁の景気対応緊急保証制度(セーフティネット保証)適用対象業種への保険代
理業の追認」 の実現
・平成22年度:国土交通省 「政府保障事業の支払い迅速化による目標処理期間の設定」 の取付け
― 186 ―
・平成24年度:「銀行窓販弊害防止措置の存置と新たな監督上の措置の追加」の実現
・平成25年度:(平成26年度税制)消費税簡易課税制度の「みなし仕入率」引下げ時期の繰り延べ実現
Ⅱ 損害保険に関する税制改正要望
■基本方針
業界団体にとって関連税制の動向に留意することは極めて重要であり、日本代協としても継続的に情報収
集に努めるとともに、損害保険の普及によって安心・安全な社会を創り上げていくために必要な税制並びに
代理店経営上必要な税制があれば、引き続き行政や与党に対して改正要望を行う。
なお、税制は政治の最重要課題の一つであり、損保協会との連携と合せて、政連顧問や税制担当の支援議
員を通じた活動を展開する。近年の主な取り組みは、以下の通りである。
■地震保険料控除制度(平成18年度)
本会は、平成7年以降、
「地震保険料控除制度」の創設を求めて長年にわたり要望を行ってきたが、平成
18年度の税制改正において、ようやく創設が認められた。(所得税5万円限度)
政府も、地震保険料の控除制度を創設することが加入率向上につながり、地震災害に対する国民の自助努
力による個人資産の保全を促進することになるとの判断をしたものであり、本会並びに損保協会の長年にわ
たる要望活動が実ったものである。(注:地震保険は生活再建のための「自助努力」の一つである)
但し、平成18年度の税制改正では、所得税等の定率減税廃止や企業向け減税の縮小など、個人・大企業と
もに負担増となる内容となった。これに合せ、政府・与党は、厳しい国家財政の中で、各種控除制度は極力
減らす方針とし、地震保険料控除制度を創設する見返りに、損害保険料控除制度を廃止することになったも
のである。
(注:保険の普及が進み、税制で後押しする必要はなくなったとの判断)
■社会保障制度を補完する商品の保険料控除制度(平成19年度以降の取り組み)
⑴ 平成19年度の取り組み
平成19年度は、高齢社会の到来を受けて、社会保障制度を補完する商品の保険料控除制度が必要な社会
環境であるとの認識から、同制度創設をもとめる要望書(控除限度額100, 000円・地方税50, 000円)を金
融庁他関係各省庁、各政党に提出し、平成19年10月には自民党の税制改正に関する財務金融部会、関係団
体委員会合同会議に出席するなどして要望活動を行った。
結果として、この年度の改正は先送りとなったが、与党の税制改正大綱に「生損保の保険料控除につい
ては抜本的な見直しを行う」ことが記載され、実現に含みを持たせることができた。
⑵ 平成21年度の税制改正
上記を受け、引き続き本会要望の実現に向け、損保協会とともに取り組みを行った。
その結果、平成21年度の税制改正において、本会・損保協会の共同要望であった「社会保障制度を補完
する商品に係る保険料控除制度の創設」が認められ、金額等の一部修正はあったが、平成24年1月1日以
降締結された契約から、後記内容の新制度が適用されることとなった。
― 187 ―
<新保険料控除制度の概要>
◇ 制度全体の所得控除限度額:所得税12万円・地方税 7万円
① 遺族のカテゴリー ………… 所得税 4万円・地方税 2. 8万円
② 医療・介護のカテゴリー … 所得税 4万円・地方税 2. 8万円
③ 年金のカテゴリー ………… 所得税
⑶ 取り組みの成果
損害保険料控除制度は廃止になったが、
「地震保険料控除制度」と新たな「高齢化対応の保険料控除制
度」の創設が実現した。地震多発国であり、また、急激な高齢社会を迎える我が国に相応しい税制となっ
たものと考える。
⑷ 平成23年度税制改正時の見直し論議
平成23年度の税制改正において、聖域なき財政基盤改革の観点から、平成21年度改正で実現した上記控
除制度を、平成24年度1月1日からの適用を待たずに見直す動きが表面化した。
このため、政連支援議員のサポートを得ながら、損保協会とともに改めて制度の必要性を訴える活動を
展開した結果、見直しはギリギリのところで見送られることとなり、予定通り平成24年度契約から新税制
が適用されることとなった。
■損保協会における最近の税制改正要望とその結果(詳細は損保協会HP参照)
⑴ 平成25年度の税制改正要望とその結果(平成24年6月要望)
平成24年度(25年度税制)以降は、本会としての個別の要望は行っていないが、損保協会の要望実現に
向けて、政連支援議員のサポートを得ながら活動を行った。(注:損保協会の収益悪化は代理店手数料、
ひいては代理店経営に影響を及ぼすため)損保協会における要望内容とその結果は以下の通りである。
① 火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実 重点要望項目
➡ ○ 税率の引き上げ(4→5%)は3年間の期限付きで認められた
② 控除対象外の消費税負担を軽減するための措置 ➡ ×
③ 消費税率引き上げにあたっての経過措置(保険料非課税に伴う負担軽減) ➡ ×
④ 受取配当等の二重課税の控除(益金不算入割合の引き上げ)➡ ×
⑤ 完全支配関係にある会社への配当金に対する源泉徴収の廃止 ➡ ×
⑥ 確定拠出年金に係る税制上の措置(特別法人税の撤廃)➡ 現状維持
⑦ 破綻保険会社から協定銀行への資産移転に係る不動産取得税の非課税措置恒久化 ➡ △期間延長
⑧ 損害保険業に係る法人事業税の現行課税方式の継続 ➡ 〇 実現
⑵ 平成26年度税制に関する損保協会税制改正要望(平成25年7月要望)
① 受取配当等の二重課税の控除
重点要望項目
i.損害保険会社の積立勘定から支払われる利子の負債利子控除対象からの除外
ⅱ.受取配当等の益金不算入割合の引き上げ(現行50%→100%に引き上げ) ➡ ×
② 損害保険に係る消費税制度上の課題解決に向けて 長期的課題への要望項目
③ 消費税率引き上げに際しての必要な措置 ④ 火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実 ➡ ×
⑤ 確定拠出年金に係る税制上の措置(平成25年度までは課税停止措置・税率1. 2%)➡ ×
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⑥ 完全支配下にある会社への配当金に対する源泉徴収の廃止 ➡ ×
⑦ 損害保険に係る法人事業税の現行課税方式の継続 ➡ ×
⑶ 平成27年度税制に関する要望(平成26年7月要望)
① 受取配当等の二重課税の控除(益金不算入割合の引き上げ) 重点要望項目 ➡ ×
② 損害保険に関わる消費税上の課題解決 消費税制に係る要望項目 ➡ ×一部見直し
③ タックスヘイブン対策税制の見直し ➡ △一部実現
④ 火災保険等に関わる異常危険準備金制度の充実(洗替保証率:30%→40%へ引き上げ)➡ ×
⑤ 破綻保険会社から協定銀行への資産移転に係る不動産取得税非課税措置恒久化 ➡ △一部実現
⑥ 確定拠出年金に係る税制上の措置 ➡ 実現せず
⑦ 完全支配下にある会社への配当金に対する源泉徴収の廃止 ➡ 実現せず
⑧ 損害保険に係る法人事業税の現行課税方式の継続(収入金額による外形標準課税0. 7%) ➡ 〇
⑷ 平成28年度税制に関する要望(平成27年7月要望)
① 火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実 重点要望項目
ⅰ.現行の積立率5%を維持 ➡ ○ 3年延長する
ⅱ.洗替保証率を30%から40%に引き上げる ➡ 改善なし
② タックスヘイブン税制の見直し ➡ ○ (ロイズ市場における保険会社子会社関連)
③ 損害保険に係る消費税制上の課題解決に向けて ➡ 改善なし
④ 確定拠出年金に係る税制上の措置 ➡ 改善なし
⑤ 完全支配関係のある会社への配当金に対する源泉徴収の廃止 ➡ 改善なし
⑥ 受取配当等の二重課税の排除 ➡ 改善なし
⑦ 損害保険業に係る法人事業税の現行課税方式の継続 ➡ ○ (対象は、電気・ガス・保険)
■消費税簡易課税制度の「みなし仕入率」引き下げ時期の繰り延べの実現(平成25年12月)
⑴ 背景
消費税制の「みなし仕入率」は、中小事業者の税務事務に係る負担軽減の観点から業種別に設けられて
いる特例措置であるが、全国の税務署の調査で、簡易課税を選択している金融保険業(代理業)に益税が
発生していることが明らかになり、消費税の引き上げに合せて、消費税法の規定により見直し対象となっ
た。
(注:本件は税制改正ではなく、消費税法に基づく既定の対応である。これまでも代理店に適用され
る「みなし仕入率」は、消費税創設時の80%から平成3年10月には60%に引き下げられているが、今回更
にそれを50%に引き下げる案が示された。なお、保険代理業以外では不動産業の益税が問題視された。)
⑵ 本会の対応と結果
益税発生は税務当局の全国調査で判明しており、また、益税は消費税に対する国民の信頼を裏切るもの
であるため、見直しは避けられない状態であった。しかしながら、引き下げ対策をとる猶予期間もないま
ま直ちに次年度(平成26年度)から適用となると、代理店の経営に影響を与えることにもなるため、本会
としては、
「適用期間の繰り延べ」要望が妥当と判断し、陳情活動を行った。与党税調には本件動向の注
視を要望、併せて、政連顧問、支援議員、金融庁にもサポートを依頼した結果、「平成26年度から適用」
という当初案が、
「平成27年4月1日以降に開始する課税期間に繰り延べ」されることとなった。期間限
定の適用ではあるが、本会要望が具体的に実現したものである。
― 189 ―
■今後の取り組み
税と社会保障の一体改革の中で、様々な税制の見直しも予想されるため、引き続き情報収集に努める。
特に、消費税に関しては、引き上げに伴う保険会社の負担軽減を図ることが、結果的に代理店経営の安定
化につながるので、損保協会と連携し、取り組みを進める方針である。
なお、損害保険代理業にとって必要な税制については、代協会員の現状を踏まえ、社会的に見て要望に妥
当性ありと判断される項目について、陳情活動を行う方針である。
― 190 ―
参考資料編
<新しい保険募集ルールをどのように捉えるか>
第一章 新しい保険募集ルールに見る消費者保護の潮流
1.保険業法改正に至る流れ
⑴ 保険会社の経営に対する規制
⑵ 保険募集に対する規制
2.新しい保険募集ルールの狙いと内容
⑴ 保険募集人一人ひとりのレベルアップ
⑵ 代理店経営の高度化
⑶ 比較推奨販売の本格実施
3.第一章のまとめ
第二章 代理店による自律的な経営戦略の構築
1.代理店の体制整備義務
⑴ 体制整備義務における二つの区分
⑵ 比較推奨販売を行う乗合代理店の体制整備義務
2.代理店としての経営戦略の構築
⑴ 比較推奨販売にどう取り組むか
⑵ 比較推奨販売を行う乗合代理店の価値
⑶ 比較推奨販売を行わないという選択
3.第二章のまとめ
第三章 保険会社にとっての新しい保険募集ルール
1.大きく変化した保険会社経営
⑴ 保険自由化による保険会社の変化
⑵ グローバル化による保険会社の変化
2.新しい保険募集ルールの下での保険会社の変化
⑴ 保険会社としての「製販分離」への対応
⑵ 保険会社としての「製販一体」への対応
⑶ 販売チャネル全般における重要な課題
⑷ 営業社員はどう変わるべきか
3.全体のまとめ
注:‌本編は、日本代協のアドバイザーである栗山泰史様が2016年2月5日以降、保険
毎日新聞に7回にわたり連載された記事をまとめたものです。今回の業法改正の
背景や狙い、それによる変化などを俯瞰的に捉えて考えることができる極めて示
唆に富む内容になっています。
代協会員の皆さまの参考になると思いますので、是非ともお目通し下さい。
― 191 ―
<新しい保険募集ルールをどのように捉えるか>
第一章 新しい保険募集ルールに見る消費者保護の潮流
法律改正によって制度が大きく変わる時、人々はそれをどう受け止めるのでしょうか。制度は変わっても
人は常識や行動を急に変えることはできません。制度は法改正によって階段状に一気に変化します。しかし、
人は放物線を描くようにして、少しずつこの変化に追い付いていくしかありません。だから、制度が人々の
間に定着するのには一定の時間がかかってしまいます。
例えば、10年前に個人情報保護法が施行されました。この時、今のような厳しい規制になることを予想し
ていた人がどれほどいたでしょう。間違いなく10年前に、個人情報保護に関する制度は大きく変化しました。
しかし、それが持つ本質的な意味を人々が理解できるようになったのは多くの時が過ぎてからでした。
1.保険業法改正に至る流れ
2016年5月29日以降、改正保険業法が施行され、新しい保険募集ルールが登場します。ここでは、なぜ、
新しいルールが登場するのか、その下で何が生じるのかについて考えてみたいと思います。
ところで、なぜ、保険業法という法律があるのでしょうか。一つは、保険という事業が公共性の高い事業
であるため、制度として社会から信頼されねばならないことです。もう一つは、保険によって恩恵を受ける
消費者が被害を受けないよう保護されることが求められるからです。このために保険事業を担う保険会社や
代理店は法律によって規制されることになります。つまり、保険会社の経営と代理店の保険募集が保険業法
によって規制される二つの重要な柱といってよいわけです。
⑴ 保険会社の経営に対する規制
① 「金融ビッグバン」による保険の自由化
消費者が保険に関して受ける最も大きな被害は何でしょうか。それは保険会社が破綻することによっ
て約款に定めた約束が守られないことです。保険会社の破綻は、保険金が支払われない、満期金が返っ
てこないといった大混乱に消費者を巻き込むことになります。保険会社が破綻につながる危ない経営を
行わないよう、昔は護送船団行政と呼ばれる厳格な規制がありました。保険会社の業務のほとんどに細
かく行政が介入し、「箸の上げ下げにまで口を出す」と言われた時代です。
こうした行政の規制を大きく変えたのが1980年代以降の自由化・規制緩和の動きでした。行政がガチ
ガチに規制することによって破綻は防げるかもしれない。しかし、保険会社は自由で創造的な動きがで
きない。その結果、消費者はかえって不利益を被っているという考え方が出てきたわけです。
そこで、1990年代半ばに「金融ビッグバン」という銀行・証券・保険にまたがる大改革が行われまし
た。保険に関しては1996年に保険業法が抜本的に改正され、保険会社の商品づくりの自由度が大幅に増
し、生損保の相互乗り入れができるようになるなどの変化が生じました。保険会社の破綻からの消費者
の保護についても、それまでのように保険会社をつぶさないというやり方ではなく、経営の仕方が悪け
れば保険会社はつぶれてもやむを得ない、しかし、保険契約者は別の形で保護するという保険契約者保
護制度ができました。
② グローバルな競争の中にいる3メガ
金融ビッグバン以降、保険会社の経営は大きく変化することになりました。それまでの画一的な商品
ではなく、多種多様な商品を世の中に送り出すようになり、国内保険会社同士の合併も様々な形で行わ
れました。そして、いまや活動の舞台は世界にまで広がっています。損保でいえば中心にいるのが3メ
― 192 ―
ガです。しかし、グローバルな市場という見方からすれば、世界にはたくさんの大きな「メガ」があり、
それらが入り乱れて競争しています。今後、日本にはAIGというビッグプレーヤーが本格的に参入し、
まさに4メガが競争することになります。こちらから出て行っているわけですから外からも入ってくる
わけで、さらに別のメガも本格的に日本マーケットに参入してくるでしょう。ほんの何年か前とは大き
く異なる状況が生まれています。
⑵ 保険募集に対する規制
① 保険募集における「行為規制」
ところで、保険業法による規制のもう一つの柱である募集はどう扱われてきたのでしょうか。消費者
は通常、保険に関してあまり知識がありません。そして、消費者の無知に乗じて募集の現場で不祥事が
起こるならば、これを規制することが必要です。そして、保険業法第300条第1項に「やってはならな
い行為
(行為規制)」が列挙されています。例えば、特別利益を提供してはいけないとか、告知義務違反
をそそのかしてはいけないというようなことです。
保険会社の破綻の場合、一つの原因で起こる被害は巨大ですが頻度は小さい。これに対して、募集現
場での不祥事の場合、被害の一つ一つは小さいものですが頻度は大きく、全体を積み重ねると巨大な被
害になります。従って、保険会社経営とともに保険募集は行政による規制の対象とされてきました。
② 先送りされた募集規制
ところが、このように行政による規制の重要な柱でありながら、「金融ビッグバン」という大きな動
きの際に、改革を検討されながらもほとんど中身を変えないまま先送りされたのが募集についての規制
でした。
「金融ビッグバン」の際に、銀行や証券が行う金融商品の募集については全面的な改革が行われまし
た。銀行法が改正され、金融商品取引法が制定されることによって、消費者に丁寧な説明を行い、実情
に即した金融商品を売らねばならないというように募集のやり方が根本から変わったのです。だから、
銀行や証券会社の窓口に行って消費者が金融商品を買おうとしてもすぐには買えません。じっくりと説
明を聞き、その中身を理解することが求められるのです。
保険に関して改革が先送りされた結果、どうなったでしょうか。丁寧な説明をすることなく、
「ここに
ハンコを押してもらえば後はやっておきます」という昔ながらの保険募集のやり方や「G(義理)N(人
情)P
(プレゼント)」に頼って募集するという長く続いた保険募集現場の風景が法的には許され、その
後も続くことになったのです。
なぜ保険だけ先送りされたのでしょうか。金融商品の場合、説明を嫌って買うのを止めてもお金は銀
行口座に残ります。そしてそのお金は経済に貢献します。しかし、保険の場合は単に無保険になるだけ
です。それは国民がリスクにさらされることを意味します。この時期、まだまだ保険は普及を優先する
ことが必要で、昔ながらのやり方は普及を支える有効な方法だったからです。しかし、その結果、消費
者は十分に保険の説明を受け、中身を理解した上で契約するという「権利」を満たされないことになっ
たわけです。
③ 保険制度改革の完結
変えることなく温存された募集のあり方にスポットライトが当たることになったのが「保険金支払い
漏れ事件」です。保険会社の経営が自由化され、様々な保険商品が出てくる中で、特約が多様化し、複
雑化しました。しかし、昔ながらの募集のやり方ですから十分な説明はなされません。その結果、消費
者は事故が起こっても保険の内容が分からないため保険金の請求を行わず、大量の保険金の支払い漏れ
が発生しました。これは、2005年に起こった大事件で、何社もの保険会社が業務停止などの重い処分を
― 193 ―
受けることになりました。
この事件をきっかけにして、金融審議会の場などで募集のあり方が本質を踏まえ、時間をかけて検討
されました。そして、得られた結論が今回の保険業法改正を通じた新しい保険募集ルールということに
なるわけです。このように見ていきますと、1980年代の末に始まった保険制度改革の動きは、1996年の
金融ビッグバンの時の保険業法改正を経て、2016年に実施が予定されている新しい保険募集ルールの登
場によって、ついにゴールに到達したといえるわけです。完結までに20年もの期間を要したといえます。
1996年の保険業法改正は保険会社の経営にスポットライトを当てた改革でした。これに、今回の保険
募集改革が重なって、わが国の保険制度は時代に見合う形で全貌が整えられたわけです。保険募集改革
における主役はいうまでもなく代理店です。そして、その向こうに消費者の保護されるべき権利と満た
されるべきニーズが存在します。
2.新しい保険募集ルールの狙いと内容
新しい保険募集ルールの狙いと内容は何でしょうか。それは3つに整理されると考えています。
一つ目は「保険募集人一人ひとりのレベルアップ」、二つ目は「代理店経営の高度化」、そして三つ目は
「比較推奨販売の本格実施」です。この3つの柱について順を追って説明しましょう。
⑴ 保険募集人一人ひとりのレベルアップ
① 保険募集人一人ひとりの義務
第一の「保険募集人一人ひとりのレベルアップ」は、先ほど述べた「昔ながらのやり方」を根本から
変えるものです。これまでのやり方では、お客さまに会って保険の説明を開始する時から契約が成立す
るまでの間、つまり入り口から出口までどんな道を通るのも募集人の自由でした。ただし、「落とし穴」
があります。保険業法第300条第1項で禁止されている行為(行為規制)は許されませんでした。
今回、募集人一人ひとりの義務が保険業法に定められます。それが意向把握・確認義務と情報提供義
務です。これらの義務に関しては法律に定めるとともに細かな規定が監督指針において定められていま
す。さらに、金融庁に寄せられたパブリックコメントへの回答まで含めれば膨大な量の規定が示されて
います。代理店の中に、実務を前にして大きな不安を抱くものがいるのは当然のことといえるでしょう。
この代理店の不安に関しては、行政の規制の在り方が大きく関係することになります。
② プリンシプルベースとルールベース
行政の規制には二つのやり方があります。一つは「プリンシプルベース」で、行政は原則を定めて後
は事業者が自分で行動するというやり方です。もう一つは「ルールベース」で、行政は細かなルールを
定めて事業者はそれに従うというやり方です。
今回、金融庁の監督指針では、募集人の創意工夫に委ねると書いてあるように、プリンシプルベース
を打ち出す一方で、実質的には細かなルールが定められています。一人ひとりの募集人は、監督指針に
書いてあるルールを熟読し、それに従って募集を行わなければ「義務違反」を問われることになります。
ここで実際に、監督指針の「意向把握・確認の方法」を見ると、「意向把握・確認の具体的方法につ
いては、取り扱う商品や募集形態を踏まえたうえで、保険会社又は保険募集人の創意工夫により、以下
のア. からカ. 又はこれと同等の方法を用いているか。」と記されています。「創意工夫により」という文
言によって、プリンシプルベースが建前として示されていますが、代理店の実務を考えると、「以下の
ア. からカ. 」に従う以外に適切な手順は見出し得ないのが実態です。
ということになると、今回の規定は、プリンシプルベースを建前としているが実際にはルールベース
に近く過剰な規制なのではないかという批判がなされるかもしれません。しかし、もし具体的ルールが
― 194 ―
示されていなければどうなってしまうでしょうか。おそらく、代理店や保険会社の個々の解釈等によっ
て募集の現場では却って大きな混乱が生じると考えられます。その点で、今回の細かな規定は業界とし
ての「共通化・標準化」がなされたと評価すべきではないでしょうか。
しかし、現実の募集行為は、生身の人間同士が具体的な保険契約を締結するというものです。細かな
ルールがそのまま通用する局面ばかりではありません。このような時、どうすればよいのでしょうか。
監督指針において、先ほど見たように建前としてプリンシプルベースは維持されています。従って、募
集人は、可能な限りルールに忠実である一方で、ルールの奴隷にはなることなく、自らの判断でプリン
シプルに沿って対応することが許されていると前向きに理解してよいのではないでしょうか。結局は、
プリンシプルとルールのミックスの中で行動すべきということになると考えています。
③ 消費者と募集人の「対話」
今般、明治から長く続いた「信頼をベースにハンコを押す」とか「G
(義理)N
(人情)P
(プレゼン
ト)
」に基づく保険募集のやり方が根本から見直されます。この見直しは、意向把握・確認義務、情報
提供義務という募集人一人ひとりの義務を法律に定めることによって実現することになります。
募集人一人ひとりの義務について、プリンシプルベースで捉えるとするなら、お客さまと募集人の
「対話
(ダイアローグ)
」が重要になるのではないかと考えています。お客さまに十分に語り尽くしても
らうこと、何が心配なのか、どんな補償を望んでいるのか、保険料はどの程度負担できるのかなど、お
客さまの口からしか聞けない事実はたくさんあります。それが「意向把握義務」です。
そして、お客さまの話を傾聴した上で、募集人は丁寧に、漏らすことなくお客さまが求める保険の内
容について説明することになります。キャンペーンによって売りたい商品があっても決してそれに誘導
してはなりません。途中でお客さまの意向が変わった場合はそれに応じた説明を行います。これが「情
報提供義務」です。こうしたお客さまと募集人の対話の結果、加入する保険の内容が固まります。それ
を両者で確認し合うのが「意向確認義務」です。
大切なことは、お客さまと募集人との「対話(ダイアローグ)」であると理解すべきです。このように
して、消費者は自分が望む保険について十分な説明を受け、中身をしっかりと理解した上で加入すると
いう自らの権利を満たされることになるわけです。新しい募集ルールが設定されるのは時代の流れの中
で当然のことであり、これを守ることは募集人としての基本中の基本であると考えねばなりません。
④ リスクマネジメントの普及
長く続いたわが国の保険募集は、アメリカやヨーロッパとは相当異なるやり方でした。リスクマネジ
メントという保険を付ける上での「論理」よりもお客さまと募集人の人間関係という「情」の方が保険
募集に色濃く投影されていました。しかし、これからは、実際の保険販売からは論理的過ぎて遊離して
いるように感じられたリスクマネジメントが、初めてこの国に根付いていくかもしれません。なぜなら、
消費者の権利を満たすために募集人一人ひとりの義務が法律に定められ、これから始まる「対話
(ダイ
アローグ)」によって、消費者は知らず知らずのうちにリスクマネジメントの世界に招かれることにな
るからです。
⑵ 代理店経営の高度化
① 保険会社の主導による代理店経営改革
新しい保険募集ルールの狙いの第二は「代理店経営の高度化」です。代理店経営には、1996年の保険
業法改正によって、大きな変化が生じました。保険会社は競争の激化に伴うローコストオペレーション
を余儀なくされ、その一環として、様々な形で代理店の経営にも変革を迫ってきました。その促進に使
われたのが代理店手数料ポイント制度です。これによって、代理店は大型化に向かい、経営品質を高め
― 195 ―
ていきました。こうした動きは、代理店経営にとって大きなうねりではありましたが、法律とは関係の
ないところで起こった保険会社主導の動きであった点に特色があります。すなわち、消費者のためとい
うよりも保険会社が効率化のために進めた変革という面が色濃く表れていました。
② 保険募集人の体制整備義務
これに対し、今回は、保険会社主導ではなく、消費者のために代理店は変革を迫られるという面が強
いといえます。代理店経営の高度化によって、消費者の権利を満たし、そのニーズに応える体制を構築
すべきだということです。経営の高度化に関するキーワードが、今回保険業法に定められた保険募集人
の「体制整備義務」です。意向把握・確認義務や情報提供義務が募集人一人ひとりの義務であるのに対
し、体制整備義務は代理店の経営者の義務であるといえます。
これまで、保険業法上、体制整備義務は保険会社についてのみ定められており、代理店についてはど
こにも定めがありませんでした。その結果、法の建前では、代理店の位置付けは保険会社の使用人、す
なわち社員に近い状態でした。
保険募集人という言葉は様々なものを示します。損保会社の営業社員、大手生保の営業職員はまさに
保険会社の社員としての保険募集人です。損保の個人専属代理店は社員ではなく代理店ですが、一人で
仕事をする場合は従来の法律が想定する社員に近い存在として違和感はありません。従って、今回の法
改正によって募集人の体制整備義務が定められたといっても社員やそれに近い代理店の場合は、保険会
社の研修に参加して勉強するといった程度の義務でしかありません。
③ 代理店の体制整備義務
問題はそこから先にいる代理店です。法人化した中小規模の専業代理店、自動車ディーラーのような
兼業代理店、親会社を持つ企業代理店、窓販を行う銀行、大型の来店型保険ショップ等々です。これら
の規模と特性によって様々に異なる代理店の体制整備義務はどうなるのかという点が問題になるわけです。
これら組織として行動する代理店は、保険会社の社員という位置付けに該当しないにも拘わらず、法
的には保険会社の社員と同じ位置付けになっていました。そしてそのことが、どこかで保険会社に依存
しがちな体質を作りだしていたといえるのかもしれません。
今回、法律上、代理店独自の体制整備義務が定められました。実際の中身は違いますが、言葉だけで
いえば、代理店にも保険会社と同じく体制整備義務という言葉が使われています。つまり、保険会社の
社員ではなく、保険会社から独立した対等の企業として位置付けられることになったのです。もちろん、
保険会社による代理店への監督という枠組みは残されていますから完全な独立ではありません。しかし、
体制整備義務の下で、現代的な企業としての新しいビジネスモデルを構築することが必要になるわけです。
④ 現代の企業に求められるもの
では、体制整備義務の下で代理店は具体的に何をしなければならないのでしょうか。募集人一人ひと
りが義務を果たすための体制作り(保険募集管理態勢)を筆頭に、顧客情報(顧客情報管理態勢)や苦
情等の取り扱い(顧客サポート等管理態勢)、外部委託先の管理が適切になされるための体制づくり
(外部委託管理態勢)等が保険募集に固有の体制整備の内容になります。
しかし、それとともに重要なことは、代理店が企業として経営の高度化を図らねばならない点であり、
これこそが家内事業的傾向が強かった代理店にとっての大きな課題であるといえます。今の時代におい
て、企業が業種を超えて求められるものは、コーポレートガバナンスやコンプライアンスといったグ
ローバルな尺度での価値観です。また、体制整備に必須のPDCAサイクルのための内部監査態勢の構築
です。これらは、現代に生きる企業が身に付けねばならない基礎的要素といってよいと思います。体制
整備義務の第一に、経営管理態勢(コーポレートガバナンス)、第二に、法令等遵守態勢(コンプライ
― 196 ―
アンス)を掲げ、最後に、内部監査態勢を掲げることが一般的ですが、まさに体制整備義務は、経営の
高度化による代理店の企業としての自立を求めるものといえるでしょう。
⑤ 代理店ビジネスモデルの革新
わが国において、代理店は見込み客の発掘のために数多く設置されてきたという歴史があります。そ
して、体制整備義務はすべての代理店に課せられますが、義務の重さを考えるとこの言葉が似合わない
代理店が多々存在します。これが似合わない代理店は、まずはだぶだぶでも、体制整備義務という
「スーツ」を着ることを求められます。
とりあえず、だぶだぶのスーツを着た代理店は、これからそれが似合うように成長することが必要で
す。そして、保険会社は引き続き代理店に対する監督責任を負いますから、似合うようになるまで後見
人を務めることになります。
こうした中で、厳しいことをいえば、成長できずにいつまでもスーツが似合わない代理店は消え去る
しかないのかもしれません。なぜなら、体制整備義務を果たすことができない代理店は消費者の権利を
満たすことができないからです。
代理店としての成長は、従来のような家内事業的な代理店経営や保険会社に事実上多くを依存した経
営によっては決して実現することはありません。保険業法が求める体制整備義務を真に体現した新しい
代理店経営、すなわち「代理店ビジネスモデルの革新」が求められます。そして、それによって代理店
は質と量の両面で成長し、代理店としての企業価値を向上させ、そして消費者の権利を満たすことがで
きることになります。まさに体制整備義務は、代理店の経営を革新に導く羅針盤であるといえるでしょう。
⑶ 比較推奨販売の本格実施
① 比較推奨販売の本質
新しい保険募集ルールの狙いの第三は「比較推奨販売の本格実施」です。比較推奨販売は今でも乗合
代理店によって実施されているではないかと感じる人が多いと思います。しかし、問題はそれが消費者
保護の観点から問題なく実施されているかという点です。例えば、乗合代理店が複数の会社の営業社員
を前にして、一番仕事ができる社員の会社に契約を回すというようなケースが見られます。しかしそれ
は消費者にとって、場合によっては不利益さえもたらす代理店自身の利益のための行為です。乗合代理
店が消費者のために、どのように比較推奨販売を実践するかが問われているわけです。
② 保険の比較の禁止
わが国では、明治以来の保険販売の歴史において、保険の比較は禁止されてきました。1948年の保険
募集の取締に関する法律(募取法)の制定までは、生損保ともに業界の自主的規制によって代理店は一
社専属になっており、事実上、保険会社をまたぐ比較はできない状態でした。1948年の募取法の制定以
降は、生保は一社専属制が法定されて比較ができない状態が続き、損保は算定会制度によって主要商品
が全社同一になり、比較そのものが何の意味もない状態になりました。
さらにこれだけではなく、募取法に「一部比較の禁止」が定められました。「全部比較」は実務上不
可能ですから、この規定によって比較販売は完全に禁止されました。これほどまでに比較販売を厳しく
規制したのは、不適切な乗換募集によって消費者に被害が生じるという出来事が歴史的にしばしば見ら
れたからです。
③ 生保乗合代理店の登場
こうした流れに変化が生じたのは、1996年の保険業法改正による生保代理店に対する乗合の解禁と比
較販売を禁止する規定の改正でした。
生保代理店に乗合が許されるようになった背景には生損保の子会社方式による相互乗り入れがありま
― 197 ―
した。中でも、損保会社が生保子会社を設立する場合、当然、販売チャネルは損保代理店です。しかし、
当時、有力な損保代理店の多くが既に生保会社の代理店になっていました。保険会社に生損保の兼営が
禁止される一方で、代理店は元々、生損保両方の販売が許されていたからです。中でも損保商品と親和
性のある第三分野商品の販売のために損保代理店が外資系生保に乗り合うというケースが多く見られま
した。当時、生保においては商品規制があり、第三分野商品は外資系を中心に認可されるという状況が
存在したことが背景にあります。
このような中で生保の一社専属制が法的に維持されると、損保会社は自らの代理店を生保子会社の販
売チャネルとして活用することができないことになります。そんなことになれば損保会社は生保子会社
を設立することができませんから、損保代理店に関しては損保の生保子会社に限って乗合を認めるとい
う例外ができました。これが俗にいう「クロス特例」です。
そして、同時にもう一つ特例が認められました。それが「複数使用人特例」と呼ばれる特例です。こ
れは生保代理店に複数の使用人がいれば、乗り合ってもそれぞれの使用人が専門で担当する保険会社を
持つことによって、消費者に対し適切な対応ができるという考えに基づくものでした。それは、総合病
院において内科や外科の専門医がいるのと同じです。この「複数使用人特例」こそが、その後、大きな
成長を果たす生保乗合代理店の原点であるといってよいと思います。いずれにしましても、二つの特例
によって、生保においても乗合代理店が本格的に登場することになったわけです。
④ 比較の禁止の緩和
1996年の保険業法改正によって生保代理店に対する乗合の解禁が行われるとともに、比較販売を禁止
する規定の改正が行われました。文言としては「一部比較の禁止」が「誤解させるおそれのある比較の
禁止」に改正されたわけですが、これは客観的な禁止が主観的な禁止に変わった点で非常に大きな変化
でした。つまり、
「誤解するおそれのない」消費者に対しては比較推奨販売が解禁されることになった
からです。
その典型が来店型保険ショップや銀行(窓販)を訪れる消費者です。これらの消費者は十分な比較情
報の提供を受けた上で保険に加入するので「誤解するおそれはない」というわけです。そして、保険自
由化によって商品内容、保険料が保険会社によって様々に異なる中、テレビ等でのCMの効果もあって
消費者の比較ニーズは飛躍的に高まり、これに応える形で来店型保険ショップや銀行(窓販)もまた隆
盛を極めるようになりました。
⑤ 比較に関する監督指針の改正
こうした状況の変化の中で、金融庁は法律ではなく監督指針を改正し、法解釈によって、一定の条件
のもとで比較推奨販売が可能になるようにしました。2007年のことです。この監督指針の改正によって、
消費者はサービスとしての比較推奨販売を本格的に享受することができる足掛かりができたわけです。
まさに消費者のために比較推奨販売に関する規制緩和が行われたといえます。
ところが、その後の展開の中で、消費者が補償内容ではなく、代理店手数料の高い商品に誘導されて
いるのではないかという懸念が生じるようになってきました。またしても比較推奨販売のマイナス面が
現れてきたのです。昔の規制時代の感覚であれば、規制強化によって比較を再度禁止すべきとなるので
しょう。しかし、いまや消費者の比較ニーズを、昔の規制を復活させて抑えこむようなことは時代の流
れに逆行します。
⑥ 乗合代理店への規制強化
消費者のために規制緩和が行われたにも拘わらず消費者に不利益が生じた場合、行政は消費者を被害
から守るために事業者への規制強化を図ることになります。保険の比較推奨販売でいえば、金融庁が監
― 198 ―
督指針に定めるルールを乗合代理店がしっかりと遵守するための環境作りを行うこと、手数料をベース
に消費者を誘導するようなことを阻止することが必要になるわけです。そして、こうした脈絡の中から
生まれたのが、今回の新しい保険募集ルールの下での「比較推奨販売を行う乗合代理店に対する(追加
的)体制整備義務」です。
すなわち、消費者保護のために、比較推奨販売を行う乗合代理店に対して、他の代理店と異なる規制
をかける必要があるということです。車の免許に例えれば、他の代理店が「普通免許」ならば、比較推
奨販売を行う乗合代理店は「大型免許」を取る必要がある。大型免許を取ってバスに乗っている消費者
の安全を確保しなければならないという流れになったわけです。
話しはそれますが、保険会社の社員や代理店の中に「保険自由化以降、コンプライアンスが厳しくな
るなど、かえって規制が厳しくなった。自由化ではなく、不自由化だ。」というようなことを言う人が
います。この考え方は、そもそも論として間違っています。保険自由化は消費者のために行われる公的
規制の緩和や廃止です。この結果、事業者の行動の自由度は増しますが、公的規制の廃止によって無茶
なことをする事業者が出てきては元も子もないですから、行政に代わって事業者自身の責任で自らを
しっかりと律することが必要になります。ましてや、消費者に弊害が生じるとなれば、当然に規制強化
が行われます。まさにコンプライアンスが重要になるわけです。「自由化による不自由化」は、消費者
が主役という点で、事業者にとってはむしろ当然のことと考えることが必要です。
⑦ 乗合代理店の監督
消費者に対し、保険の比較情報を提供し、その中から商品を推奨して販売するという乗合代理店の行
為は、保険会社とは関係のない代理店独自の行為です。従って、これに伴う体制整備義務は保険会社と
は関係なく、代理店が独自に負わねばなりません。
では、それが適切であるかどうかを誰が監督するのでしょうか。答えは一つです。金融庁以外にそれ
を監督できるものは存在しません。しかし、乗合代理店は数多く存在し、今の金融庁の態勢ではとても
すべてを監督することはできません。そこで出てきた方法が「規模の大きい特定保険募集人」のみを金
融庁の直接の監督下に置くという形と理解すべきではないでしょうか。生保、損保、少額短期、それぞ
れ別に乗合保険会社の数が15社以上、または手数料等の対価の総額が10億円以上の代理店がこれに該当
します。
⑧ 「一罰百戒」による規制
では、この定義に該当しない乗合代理店は誰からも監督されることなく自由気ままに比較推奨販売を
行うことができるのでしょうか。決してそんなことはありません。比較推奨販売を行う乗合代理店は、
規模の大小を問わず、すべて独自の体制整備義務を負うことになります。そうすると、例えば消費者か
らの苦情等によって適切な体制整備が出来ていないことが発覚した場合は、当然、行政処分の対象にな
ることを覚悟しなければなりません。いわば、交通違反の取り締まりに見る「一罰百戒」の手法が取り
入れられているといってよいでしょう。
考えてみれば保険仲立人の場合は、どんなに規模が小さいものでも、従来からすべて金融庁の直接監
督下にあったわけですから、保険ブローカーと同じような機能を持つ乗合代理店が金融庁の直接監督下
に置かれるのは当然の結果といってよいのではないでしょうか。
⑨ ルールに基づく比較推奨販売
従来、消費者が置かれていた典型的な状態は次のようなものでした。ある生保会社の営業職員が消費
者に接した場合、自社の商品しか説明も販売もできない。消費者が別の会社の商品と比較したい場合、
別の会社の営業職員をよんで説明を受けることになる。そして、両方の商品の比較はどちらの会社の募
― 199 ―
集人にも頼ることができず消費者が自ら行うしかない。これがこれまでの保険募集の典型的な姿であっ
たわけです。しかし、乗合代理店であれば、複数保険会社の商品を比較しながら説明し、その中から自
らに相応しい商品を推奨して欲しいという消費者のニーズに応えることができます。そうした消費者の
比較説明と推奨販売のニーズに本格的に応えるために規制緩和が行われること、それに併せて、比較推
奨販売の担い手である乗合代理店に対する規制強化を行い、ルールに沿った保険募集を行わせること、
ここに今回の新しい保険募集ルールの三つ目の狙いがあるわけです。
3.第一章のまとめ
ここまで、新しい保険募集ルールの狙いと内容について述べるとともに、特に消費者にとってどのような
意義があるかを見てきました。このように見てくると、新しいルールがまさに消費者のためのものであるこ
とは明らかです。そして、保険募集の担い手である代理店は新しいルールの下で、1996年に始まった保険制
度改革の総決算を行う主役といえます。1996年の金融ビッグバンの際に主役であった保険会社は、今回、代
理店がルールの担い手としてしっかりと行動できるようになるまでの間、脇役として後見人を務めることに
なります。
新しい保険募集ルールの下で、代理店の保険募集に関する一人ひとりの能力が飛躍的に高まること、経営
の高度化によって今の時代に見合う企業として成長すること、比較推奨販売を本格的に実施する環境が整う
こと、こうしたことを経て、ついに消費者は昔ながらの保険募集から解放されて、自らの権利が満たされる
日を迎えることになります。このことを保険事業に携わる一人ひとりがしっかりと自覚することが大切と考
えています。
第二章 代理店による自律的な経営戦略の構築
2016年5月29日に新しい保険募集ルールが登場します。その日以降、保険募集人は法律の要求する義務を
負うことになります。すなわち、一人ひとりの募集人は意向把握・確認義務、情報提供義務を、代理店経営
者は体制整備義務を、さらに比較推奨販売を行う乗合代理店は追加的な体制整備義務を負うわけです。
以下では、新しい保険募集ルールのうち代理店の体制整備義務にスポットライトを当て、代理店としてそ
れにどう対処するか、中でも体制整備義務と深い関係のある代理店としての経営戦略の重要性について記し
ます。
1.代理店の体制整備義務
従来、代理店は、法律上は保険会社の社員と同様の位置付け、すなわち、保険会社の下に位置する存在で
した。これが、代理店の体制整備義務が定められたことによって、個人、法人を問わず組織としての代理店
は、金融庁から見た場合、保険会社と対等に近い関係に位置付けられます。「近い関係」と書いたのは、引
き続き保険会社による代理店に対する監督が維持されているからです。幸か不幸か完全な対等ではありません。
⑴ 体制整備義務における二つの区分
① 専属代理店の体制整備義務
ここで、体制整備義務に関するポイントを整理しておきます。印象的には、専属代理店と乗合代理店
で大きく異なると思われがちですが、実際には、必ずしもそうではありません。
まず、専属代理店の体制整備義務です。金融庁の資料では、専属代理店は「従来型の募集人」とされ、
― 200 ―
「従来型の募集人についても、保険会社による指導・管理を受けることを前提とした体制整備を求め
る。
」とされています。
表現としては「体制整備を求める」となっていますが、あくまでも保険会社による指導・管理を受け
ることを前提としたものですから、実質的には保険会社の手助けが相当程度期待でき、代理店としての
負担感はそれほど大きなものではありません。
パブコメ結果452番を見ると、「個人代理店や小規模の法人代理店においても体制整備が必要になるの
か」という質問に対して、金融庁は「個人代理店や小規模の法人代理店も保険募集人の体制整備義務の
対象ですが、所属保険会社の指導・監督に従い、適切かつ主体的に業務を実施する体制を整備すること
で足ります。例えば、独自の社内規則等の策定が難しい場合には、保険会社等のマニュアルやガイドラ
インを自らの社内規則等と位置付け、使用することも考えられます。」と答えています。これこそが
「従来型の募集人」の体制整備義務を示す内容といってよいでしょう。
② 乗合代理店の体制整備義務
次に乗合代理店の体制整備義務です。これについては、金融審議会の報告書「注58」に次の記述があ
ります。
「日常的に複数保険会社の商品の比較推奨販売を行っている乗合代理店については、日常的に
これらの義務を果たすために必要な体制整備を求められる。乗合代理店であっても、原則として比較推
奨販売を行わない場合には、このような体制整備を行う必要はなく、顧客からの求めがあったときに例
外的に比較推奨販売を行う場合には、そのために必要な範囲内で体制整備を行うことで足りる。」そし
て、監督指針はこれを踏まえた内容になっています。
要するに、乗合代理店は、比較推奨販売を日常的に行うかどうかで体制整備義務の内容が大きく異な
るということです。新しい募集ルールの施行以降、比較推奨販売を行わないと決めれば、先に述べた
「従来型の募集人」と同様の位置付けになるわけです。その一方で、比較推奨販売を行うと決めれば、
「比較推奨販売を行う乗合代理店」として、重い体制整備義務を負うことを覚悟しなければなりません。
パブコメ結果474番を見ると「比較推奨を行う場合の保険募集人の体制整備によりどのような対応が
求められるのか。個人代理店や小規模の法人代理店はどのような体制整備をすればいいのか。」という
質問に対して、
「比較推奨販売を行う保険募集人は、通常求められる体制整備に加えて、適切な比較推
奨を行うための体制整備が必要となります。なお、個人代理店や小規模の法人代理店において、独自の
体制整備が難しい場合でも、法令や監督指針を踏まえて、適切かつ主体的に業務を遂行する体制を整備
することが必要です。
」と述べ、比較推奨販売を行う乗合代理店に関しては、個人や小規模の代理店で
あっても手綱を緩める形にはなっていません。
すなわち、体制整備義務は専属か乗合かで異なるのではなく、比較推奨販売を行うかどうかで大きく
二つに区分されることになります。一つ目の区分に属するのは「専属」および「比較推奨販売を行わな
い乗合代理店」です。これらは「従来型の募集人」として保険会社の助けを借りながらの体制整備で許
されます。二つ目の区分に属するのは「比較推奨販売を行う乗合代理店」です。これは保険会社に頼る
ことなく独自に体制整備義務を果たすことを求められることになります。
③ 体制整備における留意事項
ほとんどの代理店が、体制整備に当たり保険会社が用意した「体制整備チェックリスト」を活用する
でしょう。また規定やマニュアルの整備に当たって、保険会社がモデルとして作成したものをそのまま
自社のものとして活用するケースも多いでしょう。
このような中で、いくつかの留意事項について記したいと思います。
第一に、比較推奨販売を行う乗合代理店です。まずは、代申等の親密な保険会社にアドバイスを求め
― 201 ―
ながら体制整備を進めるとしても、先ほど記したとおり、最終的な責任は代理店自身が持たねばならな
いことに留意することが必要です。
第二に、顧客情報の管理、苦情を中心とする顧客サポート管理、外部委託先の管理、内部監査に関し
ては、体制整備の中身として極めて重要な位置付けを与えられており、これに関しては二つの区分のい
ずれに属しても中身のある対応をしなければならないという点です。
第三に、体制整備の状況に問題がある場合の処分の問題です。保険業法第300条違反の際の罰金や懲
役といった個人を想定したペナルティではなく、処分も代理店が企業であることを前提とした罰則が適
用されることになります。すなわち、立入検査が行われ不備が認められれば、業務改善命令や業務停止
命令、最悪の場合には登録の取消しといった処分が下されます。ここにも、体制整備義務の法定によっ
て、従来のような保険会社の社員と同等の位置付けではなく、今後は、代理店に独立した企業としての
位置付けが与えられることを読み取れます。
保険業法の施行に伴う初期段階の対応として、まずは従来と同様に保険会社が働きかけ、代理店がそ
れに従うという形をとっていても、内実は従来とは全く異なっています。主体は完全に代理店です。保
険会社は脇役に過ぎません。法的に体制整備義務を負うのは代理店自身です。定めた規定やマニュアル
に責任を持ち、それに従って行動し、問題があれば修正するというPDCAサイクルに基づく動きは代理
店自身が主体的に行わなければなりません。そして問題がある場合の処分も代理店に対して行われます。
まさに、代理店は企業として保険会社から自立し、自律的に行動することを要求されるわけです。
⑵ 比較推奨販売を行う乗合代理店の体制整備義務
① 義務の内容
比較推奨販売を行うかどうかによって異なる体制整備義務の二つの区分のうち、「比較推奨販売を行
う乗合代理店の体制整備義務」に代理店としてどう対処すべきかを見ていきましょう。
比較推奨販売を行う乗合代理店の体制整備義務については、監督指針において「二以上の所属保険会
社等を有する保険募集人」の体制整備義務として、具体的な形で定められています。また、金融庁に多
く寄せられたパブリックコメントへの同庁の回答が、監督指針の解釈規定のような位置付けになってい
ることにも留意しなければなりません。
監督指針とパブリックコメントへの金融庁の回答によれば、乗合代理店として比較可能な商品の概要
をパンフレットに記載された程度の内容で顧客に説明すること、特定の商品を推奨する場合、その理由
を分かりやすく説明すること、代理店の判断で絞り込みを行った上で推奨する場合は、商品特性や保険
料水準など客観的な基準や理由等を説明すること、またそれらを行うに際し、個々の担当者ごとの判断
に任すのではなく組織的に行うことといった内容が定められています。
② 義務に伴う負担
こうした義務を守るためには多くの負担を伴います。保険会社に頼ることなく独自の力で、比較推奨
販売のルールを守るために、募集管理体制やコンプライアンス体制の整備、それを実行する組織体制の
構築、使用人に対する教育・指導・管理の徹底等が必要となり、それらに見合うコストも負担しなけれ
ばなりません。
さらに、認識しなければならないのは行政による代理店への直接監督の問題です。業法改正によって
「特定保険募集人(その規模が大きいものとして内閣府令で定めるものに限る)」は金融庁の直接の監督
下に置かれることになりました。この背景にある基本的考え方は、比較推奨販売を行う乗合代理店は
「自らの判断による独自の募集プロセス」を構築しているため、保険会社を通じた間接的な監督では弊
害が生じるということです。法律上は一部の規模の大きい代理店のみがこれに該当する形ですが、論理
― 202 ―
的に考えれば、比較推奨販売を行うすべての乗合代理店が金融庁の直接監督下に入るということでなけ
れば辻褄が合いません。
比較推奨販売への顧客ニーズの高まりを前にして、行政当局は長く規制によって制限してきた比較推
奨販売を解禁することとしました。そして、消費者に対する規制緩和とのセットで、その担い手である
乗合代理店に対する規制強化が行われるわけです。まさに、比較推奨販売が今後、大きく開花、発展し、
かつ顧客保護に支障が生じないよう環境整備が行われることになります。その最大の眼目が、新しい募
集ルールにおける「比較推奨販売を行う乗合代理店の体制整備義務」といってよいでしょう。
2.代理店としての経営戦略の構築
多くの代理店が、保険業法の改正の施行を前にして、体制整備をどうするかについて悩んでいます。ここ
において重要な点は、体制整備を技術的な課題として捉え、規定やマニュアルの整備、組織体制の構築、
PDCAサイクルの確保といったことが最終ゴールであると考えてはならないということです。
第一章で述べた通り、新しい保険募集ルールの下で「代理店ビジネスモデルの革新」が求められる現在、
どの代理店もこれからの新しい経営のあり方を模索することが求められます。仮に今まで通りにやりたいと
しても、新しい時代に即した新しい経営のあり方としてそれが成立することを再確認しなければなりません。
つまり、代理店としての経営戦略の構築こそが重要な課題であり、体制整備は経営戦略に付随して行われる
もの、経営戦略の中身によって融通無碍に変化するものと捉えなければならないわけです。
⑴ 比較推奨販売にどう取り組むか
① 乗合代理店の持つ「保険仲立人の機能」
経営戦略を構築する上で、最も重要な点は比較推奨販売にどう対応するかだと言って過言ではありま
せん。比較推奨販売を行う乗合代理店の体制整備義務が重いものであり、かつ保険会社に頼ることに限
界があるという事実を前にして、
「どうしたものか」と悩んでいる乗合代理店が数多く存在します。そ
うした乗合代理店は、どう対応すべきなのでしょうか。
金融審議会の「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキンググループ」は、平成24年5月28日
に「我が国金融業の中長期的な在り方について(現状と展望)」というレポートを公表しています。こ
れには、個人金融サービスの在り方について次のような記述が見られます。「金融業が商品開発・販売
態勢を強化していくためには、その前提として、顧客が自己のニーズを明確に認識し、十分な情報と豊
富な選択肢を基に購入判断ができるような環境を整備する必要がある。こうした観点からは、健全性や
信頼性を確保しながら、独立系の投資運用業者を育成していくことや、保険仲立人の機能が適切に発揮
される環境の整備が必要である。」
「保険仲立人の機能」という言葉が見られますが、わが国の現状では、そもそも保険仲立人は極めて
少数にとどまり、企業分野を主な活動領域としています。従って、個人分野において「保険仲立人の機
能」を有するものとしては乗合代理店に焦点が当たることになります。つまり、上記の文脈をたどれば、
「乗合代理店を健全性や信頼性を確保しながら育成する」ことが必要というわけです。そして、これに
対応するのが「比較推奨販売を行う乗合代理店の体制整備義務」であることは明らかです。
このように見ていけば、これから先、比較推奨販売を行う乗合代理店こそが主流になるように思える
かもしれません。しかし、代理店は、ここでこそしっかりと自らの足下を見つめ直すことが必要です。
それは言い換えれば、代理店としての経営をどう考えるかということになります。
② 専属に戻るべき乗合代理店
乗合代理店の場合、規模の大小に拘わらず、これまでも何らかの形で比較推奨販売を行ってきました。
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そしてその際に、専属に比べて何か特別のことをしなければならないという意識を持つ必要はありませ
んでした。しかし、今後は、非常に重い体制整備義務が法的に生じることになります。
これからの代理店経営を考える際、最初に、そもそもなぜ乗合代理店になったかを振り返らなければ
なりません。ある顧客がある保険会社を指定し、そのニーズに応えるために限定的に乗合をしたという
事例はよくあると思います。そのような場合は、「せっかく乗合をしたのだから複数保険会社の商品を
扱おう」などと考えず、当該顧客以外は実質的に専属代理店として活動するという道を選びます。そう
すれば、
「比較推奨販売を行わない乗合代理店」に該当するため重い体制整備義務を免れることができ
ます。
また、専属時代の保険会社との関係が悪化して複数保険会社と取引するようになったというような場
合は、元の会社とよりを戻して専属に復帰するか、乗合保険会社の中から1社に絞り込むことにより、
「比較推奨販売を行わない乗合代理店」になることを検討してみるべきです。なぜなら、乗合の動機が
消費者の比較ニーズに応えるためではなく自らの利益のためであったからです。
重要なことは、新しい保険募集ルールの下で、乗合代理店は自らの経営のあり方を再度、見直す必要
があるということです。これを経営戦略と言い換えれば、専属代理店または比較推奨販売を行わない乗
合代理店となって「保険会社による管理・指導を受けることを前提とした体制整備」でいくのか、それ
とも、
「比較推奨販売を行う乗合代理店としての独自の体制整備」にチャレンジするか、ここにこそ重
要な経営戦略の岐路があります。
⑵ 比較推奨販売を行う乗合代理店の価値
① 成長戦略としての比較推奨販売
代理店としての経営戦略という観点からは体制整備義務のことばかり考えて、小さく、安全にまとま
ることだけが大切というわけにはいきません。代理店としての成長戦略を描かなければならないからで
す。今や顧客における保険の比較ニーズは堰を切ったように膨れ上がっています。重い体制整備義務に
チャレンジし、比較推奨販売を行う乗合代理店を目指すことが成長モデルだという考え方には大いに説
得力があります。
ただし、その場合でも、何から何まですべての商品について比較推奨販売を行うべきでしょうか。例
えば医療保険の場合、医療の内容自体が技術や医薬品の発展によりどんどん変わっていくことに伴って
保険も変化していきます。優れた医療保険が次々に新たに登場する中では、顧客に対しよりよい医療保
険を勧めるためにはどうしても比較推奨販売を避けて通ることができません。そのような判断から、例
えば、損保商品については比較推奨販売を止め、生保や第三分野商品についてだけ比較推奨販売を行う
という経営判断があってもよいでしょう。
また、企業物件に関してのみ比較推奨販売を実施し、個人物件に関しては見送るという形で、マー
ケット別に異なる対応を行うことも可能です。さらに、時間軸を置いて、法施行後一定の期間は医療保
険のみ比較推奨販売を行い、その間に他の種目に関する準備を行うというような対応もあり得ると思い
ます。
このように、すべての分野、マーケットにおいて一気に比較推奨販売を行うのではなく、部分的に時
間をかけて実施するという道があります。この場合は、体制整備義務も該当箇所に関してのみ独自に行
えばよく、それ以外は保険会社とともに実施すればよいということになります。体制整備義務に伴う負
担には大きな違いが出てきます。一部の大型の乗合代理店を除く多くのプロ代理店にとっては、こうし
た現実感のある「比較推奨販売を行う乗合代理店」としての経営戦略を描くことを検討してみるべきで
しょう。
― 204 ―
② 「製販一体」と「製販分離」
「製販分離」という言葉が流布しています。一部の人はこれを「代理店の保険会社の支配からの解放」
と捉えているようですが、この解釈は全くの見当外れです。先に金融審報告書における「保険仲立人の
機能」という言葉を引用しましたが、
「製販分離」はまさにこれに関係するものであり、消費者の保険
比較ニーズの高まりによって芽が出始めている「保険販売事業」といういわば「新事業」に関わる言葉
と捉えるべきです。
従来、大手生保の保険販売は、保険会社の社員である営業職員によって担われてきました。「製」が
保険を製造する保険会社、
「販」が保険を販売する代理店や生保の営業職員とすれば、大手生保におけ
る保険販売は「製販一体」で行われてきたわけです。これは、一つの組織の中に製造部門と販売部門が
併存している構造で、この一体化構造こそが大手生保が契約を獲得する上で大きな推進力になってきま
した。
ところが、保険の自由化以降、消費者に急速に保険の比較ニーズが生まれくることによって、「製販
一体」に一定の限界が生じることになりました。営業職員は、社員ですから当然に自社の商品以外は販
売できません。そうすると比較して保険に加入したいと願う消費者は、複数の保険会社の営業職員から
別個に話を聞いて、自らの力で比較するしかなくなります。
そこに出てきた考え方が「製販分離」です。「販」は「製」と「一体化」するのではなく、「製」から
「分離」することによって、特定の保険会社に縛られることなく消費者の比較ニーズに応えることがで
きるという考え方です。
「製販分離」の担い手は、まさに「保険仲立人の機能」を有するものであり、
個人保険分野においては、その中心にいるのが乗合代理店ということになります。消費者は乗合代理店
を活用することによって複数保険会社の保険を比較し、適切な保険の推奨を得て保険を購入することが
可能になります。
今までも乗合代理店は存在しました。しかし、質と量の両面で、乗合代理店はこうあるべきだという
規律が存在したでしょうか。消費者の比較ニーズがどんどん高まっている中で、新しい保険募集ルール
が登場し、比較ニーズの担い手である乗合代理店の体制整備義務が初めて明確に法定されました。これ
は乗合代理店の規律が初めて定められたことを意味し、この結果、これまでの「製販一体モデル」に加
えて「製販分離モデル」という新しいモデルが登場する環境が整備されたということができるのではな
いでしょうか。
③ 新事業としての「保険販売事業」
「製販分離モデル」によって、複数の保険会社から商品を仕入れて「販売」のみを行う「保険販売事
業」という事業が、敢えて言えば「新事業」としてこの国に登場することになります。それは、形の上
では乗合代理店であっても、これまでの損保業界における乗合代理店とは質も量も大きく異なる存在で
す。この乗合代理店は個人分野の保険を中心に扱いますが、むしろそれは、企業物件において世界を股
にかけて活動する巨大な保険ブローカー、すなわち保険仲立人に近いビジネスモデルなのでしょう。
その先駆けの一つが銀行による保険の窓口販売です。銀行は今や生保販売を手数料ビジネスの中核に
据えて、特定の保険会社や保険商品に拘わることなく、その時々で多種多様な商品を販売しています。
ここには、典型的な製販分離モデルが見られます。
また、ほけんの窓口などの来店型保険ショップにも同じ位置付けを与えることができます。そして、
ここには、大手生保も進出し始めています。日本生命による中堅保険ショップ「ライフサロン」の買収、
住友生命による「ほけん百花」の展開、これらは、大手生保において従来の「製販一体型」に加えて、
今後、
「製販分離型」の販売チャネルが併存することを意味します。
― 205 ―
この時、製販分離モデルにおいては決して自社の保険を販売することに拘わることはないといえるで
しょう。あくまでも比較推奨販売を行う乗合代理店としてのルールを守り、消費者の意向に合致するな
ら他社の保険であっても進んで販売しなければなりません。親会社への貢献は保険販売手数料を最大化
して、株主への配当の形で行われる以外にはあり得ません。だからこそ、大手生保は、銀行を含む乗合
代理店に対して他社に負けない魅力的な商品を供給するために、グループ会社として専門の保険会社を
設立しています。第一生命による第一フロンティア生命保険、住友生命によるメディケア生命保険の設
立はその典型です。
さらに、異業種からの「保険販売事業」への参入も目立ち始めました。イオングループによる「イオ
ン保険ショップ」
、ニトリホールディング、NTTドコモなどの名前が挙がっています。これらもまた、
新しい事業としての保険販売事業に着目した動きであると思います。
資本主義社会においては成長分野と見ればそこに新しい資本が入ってきます。まさに保険販売事業は
そうした新しい資本のターゲットになり始めていると考えねばなりません。そして、これらの巨大な乗
合代理店は相互に激しい競争を開始するでしょう。保険業法の改正による新しい保険募集ルールの登場
によって、これまでとは次元を異にする新しい種類の競争が生まれると理解しなければならないのでは
ないでしょうか。
⑶ 比較推奨販売を行わないという選択
① 保険会社の支援
比較推奨販売を行う乗合代理店の体制整備義務の重さ、そして新規参入してくる大規模の乗合代理店
による競争の激化を前にして、
「むしろ専属に戻ろう」とか「乗合代理店のままでも比較推奨販売はも
う止めよう」というように考えている代理店が数多く存在します。消費者の比較推奨ニーズの高まりの
中で、専属代理店や比較推奨販売を行わない乗合代理店は、顧客ニーズに応える方途を失い、代理店と
しての明るい未来を描くことができないのでしょうか。
結論として、決してそのように悲観することはないと思います。まず何よりも、保険会社の大きな支
援が期待できるからです。保険会社としては、既存の乗合代理店に対し、専属代理店や比較推奨販売を
行わない乗合代理店になることを推奨することは確実です。これらの代理店は、特定の保険会社ととも
に歩むことを選択する代理店で、まさに保険会社にとって望ましい選択を行う代理店です。
この道を選ぶ有力代理店を増やすために、保険会社は、システムを含む戦略的で差別的な支援策を拡
充することになると思います。体制整備義務の軽さとともに保険会社からの手厚い資源投入は専属代理
店または比較推奨販売を行わない乗合代理店にとって大きな強みになるはずです。
また、特定の保険会社の傘下に入ることによって、その保険会社のブランド力を代理店として最大限
活用できることも忘れてはならない大きなメリットであるといってよいと思います。
しかし、こうした保険会社からの支援や関係の強化こそが代理店にとっての真の意味での強みになる
のでしょうか。
② 代理店への「信頼」の重み
日本において近代的な保険が登場したのは明治になってからです。その時、募集はどうなっていたか。
保険という、目に見えない商品で1, 000円の掛け金を払って100万円の保険金が出てくるというマジック
のようなものをそう簡単に信じる人はいませんでした。保険を普及させるために何が最初に必要であっ
たかというと、世の中において信頼される人が保険会社の代理店として保険の募集に当たることでした。
保険が始まった当初、現在の三井物産や三菱商事、当時の国立銀行、または地域において信頼される有
力者などが代理店になりました。まさに保険は代理店の持つ「消費者からの信頼の力」を通じて普及し
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ていったわけです。
現在に至っても圧倒的に多くの顧客が代理店を信頼して保険に加入するという事実があります。「保
険についてはあなたに任せているのだからちゃんとやっておいて。」という顧客の言葉に込められた代
理店への「信頼」には明治以来長く続いたこの国における保険募集の原点が潜んでいます。
③ 代理店の現在
様々なタイプの代理店が存在する中で、長きにわたり地域に根ざして、地道に保険を募集するプロ代
理店の強みは、自らに信頼を寄せる多くの既存顧客を保有していることです。これらの顧客は比較推奨
という現代風の保険販売や代理店が専属とか乗合とかについて何も気にせず、長い付き合いのある代理
店を信頼して保険に加入するといってよいでしょう。そして、わが国においてはこうした顧客層がまだ
まだ圧倒的に大きなウエイトを占めています。
問題は、顧客からの信頼に対し代理店の側が「あるべき対応」をしているかどうかです。これらの顧
客の中には、「長い時間をかけた保険の説明には付き合いたくない。」と考える人が多く、ましてやリス
クマネジメントやリスクファイナンスといった欧米的感覚で保険に向き合う人はほとんどいません。し
かし、だからといって電話で満期更改をすませるなどおざなりな対応で、いつまでも顧客からの信頼を
つなぎとめることができるのでしょうか。長い関係の中で獲得した顧客からの信頼を維持するために、
これまでとは異なる対応が必要なのではないでしょうか。
④ 顧客との「対話」の重要性
新しい保険募集ルールの下、代理店は意向把握等の義務を負い、これまでのような形での保険募集は
許されなくなります。さらに、顧客のニーズが比較推奨販売に向かいつつある現在、専属代理店や比較
推奨販売を行わない乗合代理店は、既存顧客を維持し続けるために、従来とは異なる形で顧客の信頼を
獲得することが必要になります。
ここで、第一章で記したことをもう一度かいつまんで記したいと思います。より本質的に何が大切か
を考える時、法定の義務がどうあろうと、代理店として顧客の信頼をつなぎとめるためにやらなければ
ならないことがあるはずです。対話の充実によって、時々刻々変化する顧客のリスクを把握することが
可能になります。そのことで既存の保険の見直しを行い、保険金額の増額や特約の追加が顧客の希望に
もとづいて実現することは十分に考えられることです。さらに、生損保の枠を超えて新しい保険の販売
にもつながるでしょう。これこそが、意向把握・確認義務と情報提供義務の地道な実践です。
そして、従業員一人ひとりがそれを実践する体制を作るためにも代理店経営のあり方や組織体制を根
本から見直す必要があります。まさに態勢整備そのものです。併せて成長戦略についても数字をベース
にして描くことが必要です。保険業法の改正によって法定された募集人の義務を愚直に守ることこそが、
顧客からの「信頼」をこれからも維持するために、今こそ求められるものといってよいでしょう。
さらにいえば、専属代理店や比較推奨販売を行わない乗合代理店であっても、代理店としての成長を
考える時、比較推奨販売にどう立ち向かうかは、これからの消費者ニーズを考えると重要な課題です。
一部の保険に限定するなど身の丈に合った比較推奨販売への取り組みは、決して忘れたり放棄したりし
てはならない大切な課題です。
3.第二章のまとめ
これから始まる新しい保険募集ルールの下で、代理店は、重要な経営戦略上の岐路に直面することになり
ます。そこにおける課題は三つです。第一は、比較推奨販売を行う乗合代理店の道を選ぶかどうか。第二は、
比較推奨販売を行う乗合代理店の道を選ぶ場合、どのように比較推奨販売を進めていくか。第三は、専属で
― 207 ―
あれ乗合であれ、新しい保険募集ルールの下で、従来の顧客対応をどのように変えていくかです。
新しい保険募集ルールに関し、
「大きな変化は大きなチャンスにつながる。新しい保険募集ルールを自ら
の成長に生かしたい。」との受け止めをしている代理店がいます。
募集人一人ひとりの義務や代理店としての体制整備義務の法定は、代理店にとって厳しい要求であること
は確かです。適切な例えではないかもしれませんが、イメージだけでいえば、既存の農家にとってのTPP
のようなものなのではないでしょうか。そして、農業分野では、異業種の企業が新しい担い手として虎視
眈々と参入を狙っています。そのような中で、一部の農家は、環境変化をチャンスと見做して新しいビジネ
スモデルを構築しようと努力しています。経営戦略の中で農産物の輸出まで描いています。
今回の新しい保険募集ルールを正面から見据え、それに真剣に対応することは農家の中に革新的なビジネ
スモデルが生まれ始めているように、代理店の新しいビジネスモデルを作り出すことにつながるといえます。
日本代協の野元専務と話をする中で、同氏が示したキーワードが「効率化」と「生産性の向上」の二つで
した。同氏の考え方を要約すると次のようになります。
「地域のプロ代理店の一番の強みは、客に会い、親密に会話ができることだ。ところが、これを非効率な
こととして電話等によってすますケースがある。これでは決して顧客の信頼は得られない。むしろ『大切に
すべき非効率』を徹底して残し、その一方で事務の改善やタブレットを含むシステムの活用によって『効率
化』を図ること、
『大切にすべき非効率の維持』と『大胆な効率化の推進』をメリハリよく実行し、それを
『生産性の向上』につなぐことこそが大切である。」
これから取り組む重要な課題に関し、誰がそれを決定し、具体的な形で経営戦略を構築していくのでしょ
うか。いうまでもなく代理店自身でしかあり得ません。決して浮き足立つことなく、これに真剣に向き合う
ならば、比較推奨販売を行うかどうかを問わず、代理店としての新たな成長の道筋を描くことができるので
はないでしょうか。すなわち、これこそが究極の「自立と自律」であると考えています。
第三章 保険会社にとっての新しい保険募集ルール
保険業法の改正によって保険募集人の義務が法定されました。その結果、保険会社としても対応が必要に
なるのは当然です。代理店チャネルに多くを依存しない大手生保も例外ではありません。保険募集人一人ひ
とりの義務として意向把握・確認義務と情報提供義務が法定されることによって、社員である営業職員が義
務を遵守して募集を行うよう教育・指導・管理を徹底しなければなりません。
一方、損保を中心とする代理店チャネルについてはどうでしょうか。従来、代理店は少なくとも法律上は
保険会社の社員とほとんど同じ位置付けでした。すなわち、保険会社としては代理店の行う保険募集につい
て社員が行うのと同様に責任を持つことになっていました。
これが、体制整備義務の法定によって、代理店は保険会社の社員と同様の位置付けではなく、独立した企
業に位置付けられることになります。いわば、子どもが親から独立するかのような変化が生じます。つまり、
保険会社にとっては今までよりも負担が軽くなるわけです。ただし、保険会社による代理店の監督は引き続
き維持されますから完全な独立ではない点に留意することが必要です。
以下、新しい保険募集ルールを保険会社としてどう受け止めるべきか、また、今後、保険会社にどのよう
な変化が生じるのかについて記したいと思います。
― 208 ―
1.大きく変化した保険会社経営 ~ 損保業界を中心に
以前のことで恐縮ですが、早稲田大学の江澤雅彦教授は、2011年6月の日本代協セミナーの基調講演で、
次のように語っています。
「自由化以前における損害保険業界を支配していたのは、代理店数拡大の『店数主義』と、非自立代理店
を高コスト社員がカバーする『二重投資』であったが、自由化以降は法人・大型代理店化の促進を主とする
「効率化」が要請されるようになった。」(日本代協ニュース2011年7月14日号)
保険自由化以降、保険会社と代理店の関係は、それまでの相互密着時代から、一転して一定の距離を保つ
ドライな関係に変っていきました。保険自由化によって何が生じ、それが保険会社と代理店にどのような影
響を与えたかを、代理店を主たる募集チャネルとする損保業界を中心に振り返ってみたいと思います。
⑴ 保険自由化による保険会社の変化
① 商品・料率の自由化
まずは商品・料率の自由化です。規制時代の損保の場合、算定会制度を通じて自動車、火災、傷害の
主要保険種目について、すべての会社が同じ商品を同じ価格で売らねばならないと法律に定められてい
ました。これが、1998年の算定会制度の改革によって、同じ商品を同じ価格で売れば独占禁止法違反に
なるという形に180度変化しました。これの適用に際しては、法の許す2年間の激変緩和期間が存在し
ましたが、いったん切れた堰は元に戻ることはなく、各社それぞれ異なる商品を異なる価格で販売する
傾向は一気に強まっていきました。
ただし、損保各社はともに特約による担保範囲の拡大を行うことで自社の商品の競争力を高める一方
で保険料の引き上げは最小限に留めるという戦略を採り、表面的には激しい価格競争を回避する形をと
りました。そして、これは特約の多様化・複雑化につながり、その後、保険金支払い漏れ問題の一因に
なりました。
その一方で、1996年に決着した日米保険協議の結果、新たに参入した通販型損保は、リスク細分型自
動車保険の登場によって、
「既存の保険に比べて保険料が○割安い」という大量の宣伝を前面に出し、
直接的な価格競争によって既存損保に挑んでいきました。いずれにしても、商品・料率の自由化は、保
険会社の競争環境を劇的に変える大きな要因になったわけです。
② ローコストオペレーション
こうした商品を巡る競争の激化によって、大きな課題となったのが事業費の低減、すなわち世にいう
ところのローコストオペレーションです。なぜなら、保険会社は事業費を下げることで、それを価格低
減の原資にしようと考えたからです。そして、これこそがそれまでの規制料率の下で一定の利益を確保
できた時代との最も大きな違いでした。この流れの中で大きな問題になったのが、江澤教授が指摘した
「二重投資問題」、すなわち「募集における二重構造問題」でした。本来、手数料の見返りとして代理店
が行うべき様々な顧客対応業務を保険会社の営業社員が担うことでコストが二重に費やされていること
をどう解消するかが大きな問題になったわけです。
この問題に焦点が当たった結果、損保各社が抱いた問題意識は「代理店の能力を向上させて営業社員
との二重構造を解消しなければならない。そうしなければ、他社との料率競争に勝てず、生保等新たな
分野への参入もままならない。」というものでした。
代理店の能力向上には量的な面と質的な面の両面がありました。量的には大型化や法人化が求められ、
この促進のために活用されたのが代理店手数料ポイント制度でした。そして、大型化が進展する過程で
登場したのが委託型募集人でした。結果的に、これは行政によって禁止されることになりましたが流れ
としての大型化は今も続いています。
― 209 ―
一方、質的には、顧客対応力、商品等の業務知識、システム投資などの能力向上が求められました。
これもまた代理店手数料ポイント制度が大きな推進力になり、代理店の経営品質の向上に一定の効果を
発揮したといえるのではないでしょうか。
③ 保険会社の合併・統合
保険の自由化以降、各社は顧客基盤、販売網、企業系列、経営陣の人間関係等、様々な要素によって、
競い合うように合併・統合しました。損保においては、第一次の再編を経て、今では3メガを中心とす
る体制にまで至っています。こうした動きは、究極のところでのローコストオペレーションの追求のた
めのものといってよいでしょう。そして、合併・統合後に選んだ経営形態が持ち株会社でした。この下
で、経営資源の配分が適正に行われ、様々な事業領域への進出が可能になる体制が築かれました。
代理店も手数料ポイント制度の下で大型化の道を辿りましたが、保険会社も合併・統合によって、厳
しい合理化、効率化の嵐に耐える時代を過ごしてきたわけです。
④ 代理店制度の変化
保険自由化以前の規制には、代理店制度も含まれていました。1973年に始まったノンマリン代理店制
度は、その後、形を変えながら、2001年には完全に自由化されることになりました。
この背景には、1995年の機械保険連盟事件を契機として、損保業界全体が従来とは異なるレベルで独
占禁止法を意識した事業運営を行わなければならなくなったという状況の変化がありました。こうした
変化は、単に保険業界だけではなく全産業的に生じたもので、日米構造協議を一つの契機とするもので
あったといえるでしょう。業界としての様々な共同行為が独占禁止法遵守の観点で見直され、さらに保
険の自由化が重なったところに代理店制度の廃止を位置付けることができます。
この結果、代理店の資格・種別も各社の個別化、差別化の下に置かれ、代理店手数料も各社が個別に
決定するなど、損保各社は代理店政策を巡っても激しく競争するようになっていきました。
なお、その後の状況の変化により代理店教育制度には手が入り、2011年10月に損保協会の下で「損害
保険募集人一般試験」が創設されました。この試験においては、公正取引委員会にも確認の上、保険募
集人に試験の合格を義務付けることがルール化されています。また、日本代協が運営してきた認定損害
保険代理士制度も損保協会との連携の下で制度改定が行われ、2012年7月以降、「損害保険大学課程」
として新たな道を歩んでいます。
⑵ グローバル化による保険会社の変化
① 株主重視の経営
今では、
「企業は誰のものか」という問いに対して、株主だけではなく、従業員や地域住民など様々
なステークホルダーの存在が認められるようになりました。しかし、グローバル化が世界を席巻し始め
た頃、企業は株主のものであるという考え方が過度に強調される時期がありました。この結果、株主価
値という尺度で企業の優劣を判定する傾向が高まり、多くの企業が株価を上げることに精力を費やすよ
うになりました。そして、株価を上げるために必要とされたのが、株主へのより多くの配当金の支払い
です。
より多くの配当金を支払うためにはより多くの利益を確保するしかありません。競争が激しくなり保
険料が低下傾向にある中では、事業費を下げることが利益を拡大する最も有効な方法です。まさにロー
コストオペレーションが重視されることになるわけです。誰もが身を削るように経費、すなわち事業費
を削減する努力を続け、それが企業の価格競争力の強化につながるというのは、規制産業以外の事業に
おいては至極当然のことです。ローコストオペレーションによって、損保各社は世の中の通常の企業と
同じように配当金を増やし、株価を上げることで投資家の期待に応えるようになりました。
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② コンプライアンス
コンプライアンスの厳格化によって保険会社の社員も代理店も、ともに素朴な思いとして、「なぜ自
由化になって、むしろがんじがらめに縛られるようになったのか。」、「なぜ、行政は昔以上に厳しい対
応を採るのか。」と感じることがあるかもしれません。
実は、自由化・規制緩和とは「公的規制」の緩和を意味しています。公的規制を緩和して民間の自由
な行動を促し、そのことによって世の中を活性化させようという考え方、すなわち「民間活力の活用
(民活)
」に基づく動きが自由化・規制緩和の根本です。しかし、一方で、消費者保護は絶対に必要です。
行政による規制が緩和されることによって消費者に弊害が及ぶことはどうあっても避けねばなりません。
そして、自由化による消費者のメリットを確保するために事業者である保険会社や代理店に対して逆に
規制強化が行われることがあります。また、行政による規制ではなく、それに代わる事業者の「自主規
制」が求められます。まさに事業者としての「自律」がコンプライアンスの本質といってよいでしょう。
昔は、行政が「箸の上げ下げまで監視した」からこそ、業務停止のような厳しい行政処分が行われる
ことはありませんでした。しかし、今は、事業者による「自律」の時代であるからこそ、コンプライア
ンス態勢に不備がある場合、行政による厳しい処分が行われることになると覚悟しなければなりません。
③ 世の中の変化がもたらしたもの
グローバル化は、それまで日本的価値によって行動してきた企業にグローバルな価値を身に付けるこ
とを要求しました。それらは、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、ディスクロージャー、ア
カウンタビリティなど、カタカナで表記される価値観です。今の時代に生きる企業は、主観的な思いと
は別にこうしたグローバルな価値をベースに行動しない限り市場から退場を要求される時代になってい
ます。オリンパスや東芝の例を持ち出すまでもなく、それは明らかです。
そして、グローバル化の中で、わが国の保険会社は、元々国際的なビジネスと親和性のある損保だけ
ではなく、大手生保においても大胆な海外展開を行っています。この流れは、今後、一層加速すること
は確実でしょう。
④ 保険会社と代理店の関係変化
このような流れを国内で保険募集を担う代理店はどう受け止めるべきでしょうか。かつて、保険会社
の経営者と代理店の経営者は同じことを目指していました。すなわち、国内マーケットにおける収保の
拡大によって利益を最大にするということです。
ところが今では状況は大きく異なっています。例えば、保険会社が海外でのM&Aを行うとき、保険
会社の経営にとっては、時と場合によって国内マーケットの動きよりもそれが気に掛かるということは
当然のことです。しかし、それが直接的に代理店の経営に関係するでしょうか。海外展開だけではなく、
保険とは異なる事業への進出に関しても同様です。
保険会社は、1996年の保険自由化によって、国内における保険事業を取り巻く環境が大きく変わり続
けました。そして、次に保険会社だけではなく、わが国企業の多くとともにグローバル化の中で企業の
あり方そのものの大変化に直面しました。そして、その流れの中で、今や海外や異なる事業領域への進
出を図ろうとしています。
古くからの代理店が今の保険会社について不満を口にすることがあります。かつて、保険会社の営業
社員は、専属代理店を中心とする親密代理店のそばにいて、業務知識の不足を丁寧に補完し、一緒に顧
客対応を行い、毎晩のように酒を酌み交わすという関係にありました。しかし、二重構造の解消の下で、
営業社員はこれらの代理店と距離を置くようになっていきました。そして、営業社員は、新しいマー
ケットの開拓、競合する乗合代理店のシェア拡大、他社のプロ代理店への乗合、生保などの新事業分野
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への取り組みなど、損保の事業環境に応じた動きを行うようになりました。
こうした代理店と営業社員の関係変化は、募集に関する制度的な改正とは全く関係がない動きであり、
保険の自由化や企業を取り巻く環境の変化によって生じたものです。これに対し、今回の保険業法改正
は、まさに募集制度の改正を目的とするものです。これは、保険会社にどのような変化をもたらすので
しょうか。
2.新しい保険募集ルールの下での保険会社の変化
一言でいえば、今回の新しい保険募集ルールの登場は代理店を主役とするものであり、変化するのは代理
店であって、保険会社は、1996年の保険業法の改正以降、今に至る20年の間に既に大きく変わってきたと
いってよいかもしれません。
今回の業法改正に関し、代理店の中に「保険会社の対応が鈍くて遅い。」という声を聴くことがあります
が、それは中身を考えるとむしろ当然といえる面があります。あくまでも保険会社は、主役である代理店に
対して脇役を務めるに過ぎません。そして、脇役を務めねばならない理由は、保険業法上、代理店の体制整
備義務が定められる一方で保険会社の代理店への監督が残されているからです。
しかし、それにも拘わらず保険会社にも新しい保険募集ルールの下で大きな変化が生じると予想されます。
また、代理店とともに行動する営業社員の場合、この影響を受けるのは当然のことです。以下では、この二
つの点を中心に生損保の両方を視野において記したいと思います。かつての生損保兼営禁止の時代とは異な
り、今や損保業界にとって生保は損保と並ぶ事業に発展し、また、生保業界にとっても代理店は欠かすこと
のできない募集チャネルに成長しているからです。
⑴ 保険会社としての「製販分離」への対応
① 「製販分離」モデル
新しい募集ルールの登場が保険会社の経営戦略に及ぼす最大の変化は何でしょうか。それは、第二章
で記した「製販分離」の問題です。新しい消費者のニーズである比較説明と推奨販売に応えるためには、
生保の営業職員や損保の専属代理店といった「製販一体」モデルに限界があることは確かです。
また、形の上では「製販分離」とはいえ、従来の乗合代理店の中には、とてもそうとはいえないもの
が多々見受けられました。複数の保険会社を並べて、その中から代理店自身にとって最も大きなメリッ
トを提供する保険会社を選ぶというスタイルがそれに該当します。もちろん、ここでいうメリットは必
ずしも手数料だけではありませんが、こうしたスタイルは、新しいルールの下で、比較推奨販売を行う
乗合代理店としての体制整備義務に照らし合わせると大いに問題ありとされる可能性が高いといってよ
いでしょう。
このような中で消費者の比較推奨販売へのニーズを考えると、保険会社はどう対応するのでしょうか。
一つは銀行や来店型保険ショップ等の大型乗合代理店との連携の強化です。もう一つは「製販分離」モ
デルに基づく比較推奨販売を行う乗合代理店を保険会社自らが設立することです。
これらの「保険販売事業者」に対して、保険会社の立ち位置は「保険製造事業者」です。この観点か
ら、既に第一生命は第一フロンティア生命を、住友生命はメディケア生命を設立し、さらに日本生命は
買収した三井生命にその役割を担わせる構想を描いているといわれています。こうした動きは、今後も
活発化するでしょう。
② 「製販分離」における銀行窓販
保険自由化を受けて、2001年に銀行窓販が始まっています。これ以降、銀行窓販は規制緩和とともに
拡大の一途を辿りました。特に生保販売に関しては、今やその存在感は非常に高いものがあり、これへ
― 212 ―
のコミットの度合いが業績全体に影響するという状況になっています。
損保販売に関しては、銀行窓販に目立った動きはない一方で、生保の営業職員が大きなチャネルに
育ってきているという現状があります。銀行は「窓販」、生保は「損保との提携」という言葉で語られ
ていますが、銀行も生保もともに保険会社の「代理店」という位置付けにあります。ここで、もう一度、
銀行窓販の本質について振り返ってみましょう。
ア.銀行窓販の本質
保険に関わる仕事をシンプルに分解すると、保険の開発、販売、リスクの引受け、保険金支払い、
資産運用といった業務になります。こうした一連の保険関連業務のうち、販売のみを分離して自らの
業務とするところに代理店は位置しており、ここにはこれまでも数々の異業種が参入してきました。
自動車ディーラー、整備工場、協同組合、様々な企業のグループ会社などですが、銀行の別働体もそ
の一つでした。
このような中、銀行が別働体という形でもなく、保険子会社を作る形でもなく、販売に限定する形
で保険事業に本体として参入するのが「窓販」です。生保による「損保との提携」も表現は異なって
いますが、狙いは銀行と同一です。銀行、生保ともに、本体そのものが保険会社の「代理店」であり、
銀行員、生保営業職員が「使用人」という形になっています。銀行にとっては保険子会社を作るより
も、代理店になって「保険販売事業」に特化することが収益の最大化につながるという判断があり、
生保が損保の代理店になるのも同じ発想といってよいでしょう。
こうした動きはアメリカにおける金融自由化の流れの中で生じたもので、昔は金融・保険事業の場
合、業態別に必要な業務をフルセットで行い、業務の中身も画一的でした。子会社を作って他業に進
出するという考え方はこの流れに位置付けることができます。しかし、自由化の中で他業への進出形
態が多様化し、フルセットではなく一部の業務にのみ限定して参入したり、業務のやり方を抜本的に
変えて手数料を安くしたりというような動きが見られるようになってきたわけです。その草分け的存
在がアメリカのチャールズ・シュワッブ社という証券会社です。
今や、生保にとって銀行窓販は業績向上の主力チャネルとなっており、多くの会社で営業職員に次
ぐチャネルにまで成長しています。しかも、従来は金利選好型商品中心の販売でしたが、少しずつ、
医療・介護など平準払の保障性商品の販売に取り組む銀行も出てきています。こうなれば、ますます
保険会社にとって、販売チャネルとしての銀行の重みは増していくものと思われます。
イ.銀行窓販を巡る論点
保険会社にとっての問題は、相手が従来の代理店と比べて会社規模の点で巨大であることです。銀
行窓販に関する従来の議論は主として二つの論点により行われてきました。一つは、保険契約者に対
する圧力募集の排除等の弊害防止策をどう設定するかという「銀行と保険契約者の関係」を巡るもの
です。もう一つは、銀行の保険販売への進出は既存の小規模代理店の経営を圧迫するという「銀行と
既存代理店の関係」を巡るものでした。そして、自由化の流れの中で、この二つの論点は次第に説得
力を失い、銀行窓販は拡大の一途を辿ってきたわけです。
ウ.銀行と保険会社の関係
ここに、第三の論点として、「銀行と保険会社の関係」を巡るものが存在します。「銀行」対「保険
会社」という枠組みを考えた場合、これから先、代理店手数料の決定にあたって保険事業から生まれ
る利益を「販売」と「リスクの引受け」のどちらに多く配分するべきかというパワーゲームが生じる
ことが考えられます。
保険の場合、特に個人分野においては、価格決定権が保険会社に残ることは、今後も変わることは
― 213 ―
ないと思われますが、銀行や生保という超大型の代理店の登場によって、代理店手数料を保険会社が
決定するという従来の枠組みが変化する可能性があることは否めないでしょう。すなわち、従来の
「料率=純率+社費率+代理店手数料率」という形が「料率=純率+社費率
(保険会社取り分)+社費
率
(銀行取り分)」というような考え方に変わるということです。
もちろん、こうしたプロセスに金融庁が介入することは決してありません。独占禁止法の不公正な
取引方法にも該当することはないでしょう。問題は、あくまでもどこまで保険会社がパワーゲームに
おいて頑張れるかという点です。保険会社、中でも損保にしばしば見られる「多くの収保を上げる代
理店」をお客さま扱いする心性が銀行を有利にする可能性は否めないのではないでしょうか。これは
銀行窓販に限られることではなく、損保による生保との提携や大型の来店型保険ショップとの取引に
おいても同じことです。
さらに、第二章で記しましたが、今、製販分離の「保険販売事業」にはイオンやNTTドコモなど
の新しい資本が参入し始めています。これらはすべて銀行と同じように保険会社との利益配分を巡る
パワーゲームの当事者になる可能性を秘めているといってよいでしょう。そして、こうした点にも、
保険会社自身が製販分離の乗合代理店を設立することの意義を見ることができます。少なくともグ
ループ会社であれば、こうしたパワーゲームとは無縁の存在になるからです。
⑵ 保険会社としての「製販一体」への対応
① 「製販一体」モデルへの責任
「従来型の保険募集人」という言葉があります。これは金融庁が改正保険業法を説明する資料の中で
使用した言葉です。典型は生保における営業職員ですが、代理店の場合、専属代理店または比較推奨販
売を行わない乗合代理店がこれに該当すると考えてよいと思います。これまでの文脈でいえば、これこ
そが、保険会社にとって「製販一体」モデルの担い手です。
ア.保険会社による囲い込み
こうした代理店も、新しい保険募集ルールの登場によって、それに所属する一人ひとりの募集人が
意向把握義務等の義務を求められる点は、他のすべての代理店と変わりません。しかし、代理店とし
ての体制整備義務に関しては、特に中小規模の代理店の場合、保険会社との連携の中でこれを実施す
ることでよいとされています。
こうした体制整備義務についての考え方によって、保険会社が乗合代理店に対して、専属化や比較
推奨販売を行わない選択をするよう迫ることは確実と思われます。そのために、保険会社の「人・
物・金」の資源は、これら「従来型の代理店」に対して投入されることになるでしょう。そして、そ
れを通じて既存代理店の囲い込みに関する激しい競争が生じることになります。
イ.将来的なチャネル構造
そうした競争から一歩退いて、遠くから全体を俯瞰すると何が見えてくるでしょうか。それは、
「従来型の保険募集人」の道を選んだ代理店が、今後どこまで力を発揮できるかという問題です。第
二章で記したようにすべての保険での比較推奨販売は断念して一部の保険についてのみこれを行うと
しても、今後、拡大する新しい消費者のニーズに応えることができるのでしょうか。
もっと厳しいことをいえば、家電の世界に起こっている現象があります。今では、かつて存在した
大企業としての家電メーカーと町の系列販売店という構図は完全に崩壊し、小規模の系列販売店は大
規模の量販店に置き換わっています。
保険会社としては、引き続き従来型の「製販一体」モデルを主軸に据えるのか、「製販一体」と
「製販分離」の二つのモデルをバランスよく維持するのか、それとも「製販分離」に軸足を移すのか、
― 214 ―
まだまだ先の話ではあるとしても、いずれこの問題は保険会社として結論を出すべき課題になるので
はないでしょうか。
ウ.
「製販一体」モデルの成長
結論からいえば、
「製販一体」モデルの重要性は、今後も変わることはありません。このモデルこ
そが保険会社の経営の安定において最も貢献することは構造的に明らかです。その意味で、先の選択
肢は保険会社として、自然体で臨むものではなく、「製販一体」モデルの成長のために様々な形で資
源を投入し、ともに発展する道を探ることを前提にしなければなりません。中でも地域に根ざす中小
規模のプロ代理店の成長についての責任が重いことは確かです。ただし、新しい時代における代理店
サイドの懸命な努力が前提になることは、今更いうまでもありません。
② コモディティ化を巡る問題
先ほど、家電販売を例に挙げましたが家電と保険は同じ道を辿るのでしょうか。家電製品において韓
国メーカーの台頭を許し、量販店が地域を席巻することを許した理由にコモディティ化があるといわれ
ます。コモディティ化とは、
「類似の商品の機能・品質に差がなくなり、どれを買っても同じだから安
い方がよいという状態になること(デジタル大辞典)」と定義されますが、まさに家電製品において生
じたのはこの現象です。では、保険においては、どう考えるべきでしょうか。
ア.消費者に有益なコモディティ化
消費者は、自分が付けている様々な保険について家計簿における保険料支出というような面から見
ています。すなわち、保険を「全体」として捉えており、この目線からは、例えば自動車保険や生命
保険といっても、「保険全体」の一つの部品に過ぎません。
ところが、保険会社は個々の保険にばかり着目し、「保険全体」という感覚はあまりなかったとい
えるのではないでしょうか。商品に関する競争の中で、部品としての個々の保険について各社の特徴
を出そうとし、細かな相違が次々に生じた結果、却って消費者には分かりにくい保険になってしまい
ました。例えば人身傷害保険を巡る問題はそうした現象の一つでしょう。
今、様々な業種において「共通化・標準化」の動きが生じています。その理由には供給側としての
合理化・効率化とともに消費者の利便性向上があります。この流れでいえば、部品としての個々の保
険は、消費者の目線に合わせてできる限り簡素化し、かつ「共通化・標準化」を図ることが必要です。
この点で、個々の保険のコモディティ化は消費者の保険の理解のために有効な対応といえます。
イ.
「保険全体」としてのオンリーワン
ここで重要な点は、消費者にとって個々の保険がコモディティ化するとしても「保険全体」は決し
てコモディティ化しないという点です。消費者のリスクは融通無碍に変化し続けます。これに合わせ
て、部品としての保険を「保険全体」に組み立て、それを長い期間にわたって消費者に届け続けるこ
とでコモディティ化の落とし穴に落ちることを避けることができます。つまり、家電製品と異なり保
険の場合は、「保険全体」はコモディティ化せず、常にオンリーワンの状態を維持できます。
③ 「価値協創型ビジネスモデル」
「価値協創型ビジネスモデル」という言葉があります。これからの保険販売のあり方を示す新しいビ
ジネスモデルとして、慶應義塾大学先導研究センター特任教授を務めておられた保井俊之氏が提唱され
た考え方です。この考え方について、同氏は次のように述べています。
「バリューインクリエーション(価値協創型)の商品は、顧客がサービス内容を提案して企業が顧客
と対話しながら価値を作っていきます。アイチューンやアイフォーンは、購入した時点では、普通の端
末ですが、アプリケーションをダウンロードするなど、自分の好きな情報を付加するうちに、その価値
― 215 ―
は自分から見て100万円以上にも高まっていくわけです。保険商品というのは、契約から保険金支払い
まで数十年もあり、保険会社と顧客は長いお付き合いをしていくものです。その間に、家族構成や年齢
条件も変わるし、好みも変わっていきます。補償してもらいたい内容も変わるでしょう。そうした顧客
の声を聞きながら、どんどん互いに付加価値を高めていくアプローチをすれば、顧客は自分が買いたい
商品を得て、一層満足度が高まるはずです。保険会社も過当競争をすることなく、価値を高めて利益性
の高い市場でビジネスを展開することができるようになります。」(インシュアランス2011年9月1日号
に掲載された同教授のインタビュー「価値協創型ビジネスモデルへの転換」から一部を抜粋)
ア.
「全体」と「部品」
「価値協創型ビジネスモデル」の展開において、それを促進するために重要な要素は消費者の理解
力を考えると「部品」である個々の保険はできるだけシンプルである方がよいという点です。そして
その一方で、消費者のリスクの変化によって融通無碍に変化する「保険全体」はその人にとってオン
リーワンの複雑さを持つことになるという点です。このように見ていくと、保険会社と代理店の役割
分担が自ずと明らかになるのではないでしょうか。
イ.
「保険全体」を組み立てる代理店
「保険全体」における「部品」としての保険商品のシンプルさは、業界としての商品の「共通化・
標準化」によってこそ実現できるものです。損保協会が第六次中期基本計画で打ち出した「共通化・
標準化」の動きは今後も促進すべき重要な課題であると考えます。
一方、
「部品」を組み立てて「保険全体」を作り上げることができるのは誰でしょうか。消費者と
保険会社の間に位置する代理店以外にそれができるものはいません。新しい保険募集ルールの下での
丁寧な消費者との対話こそがこれを実現することになります。
特に個人顧客の場合、地域に根ざして活動するがゆえに一人ひとりのリスクの状態を熟知し、丁寧
な対話によってそれを「保険全体」に組み立てるなら、プロ代理店の力は極めて大きいといえるので
はないでしょうか。これができれば、保険は決してコモディティ化することなく大々的に比較推奨販
売を行う大型乗合代理店に負けることもなく顧客の支持を得て成長する道を描けると思います。
自動車単種目の販売、キャンペーン商品への依存という「部品」としての保険ばかりを追いかける
代理店や電話による契約更改に安易に走り、顧客との対話を行わない代理店には、今後、成長の道筋
は描けないといってよいでしょう。そして、保険会社は、こうした流れの中で大規模な資源投入を行
うことで「製販一体」モデルの代理店の成長を促進すべきです。これこそが「製販一体」モデルの代
理店に対して保険会社が果たすべき責任といえるのではないでしょうか。
⑶ 販売チャネル全般における重要な課題
① キャンペーンの問題
これまで、保険会社の営業推進においてキャンペーンは常に柱の一つに位置付けられてきました。中
でも、
「製販一体」モデルは、その最大の協力者であり、功労者でした。しかし、もはや、キャンペー
ンが持つ問題点は指摘するまでもないと思います。新しい保険募集ルールの下で意向把握・確認義務が
法定されました。例えば新商品開発に伴うキャンペーンでその商品をどんなに売りたくても、顧客の意
向に沿うものでなければそれを売ることは許されません。例えばキャンペーン商品が一時的に大量に販
売された場合、それは十分な意向把握がなされていないことの表れとさえ見做されるかもしれません。
ほけんの窓口の窪田泰彦社長は、
「保険会社からこの商品を売ってくれというキャンペーンには参加
しないそうだが」という質問に次のように答えています。
「保険会社から要請を受けた商品キャンペーンは一切やらない。キャンペーンに参加するということ
― 216 ―
は、顧客の意向と関係なくその商品を売り込めということになり、わが社の方針と相いれない。新商品
が出てきた時は、これまでの商品との違いは説明するが、加入の判断は顧客に任せる。」
今後の保険会社における営業推進策のあり方を考える上で示唆に富む発言と感じています。
② 代理店の賠償責任
代理店としての体制整備義務を果たすためには、組織体制の整備、各種のマニュアルの策定、顧客情
報管理態勢や苦情を中心とする顧客サポート等管理態勢の見直し等に伴うコストを要します。弁護士等
の専門家への相談もあれば、対応のための人の雇用が必要かもしれません。
こうした目に見えるコストの増加に加えて、隠れて見えにくいもう一つのコストがあります。それは、
保険募集に伴うトラブルによって生じるコスト、いわゆる外部経済コストです。そして、その代表が賠
償コストであるといってよいでしょう。
これまで、保険募集に伴う賠償コストは、保険業法283条に基づき、その多くを保険会社が負担する
ことになっていました。代理店は保険会社の社員と法的には同じ位置付けにあったという事実をここに
も見ることができます。新しいルールの下でこれはどのように変化するのでしょうか。
ア.代理店への求償の問題
保険業法改正によって代理店自身の義務が法定された結果、保険募集における顧客とのトラブルに
おいて代理店自身の義務違反が問われるケースが増大することは確実です。そして、その程度によっ
て、行政処分とともに、賠償金の負担が義務違反に伴うもう一つのペナルティになります。
ただし、代理店自体の義務が法定されたからといって、今後は保険会社ではなく代理店自身が賠償
責任の主体となるということではありません。なぜなら、保険業法283条は同じ内容で存続するから
です。問題は、同条に保険会社から代理店への求償規定があるため求償が増加し、代理店の義務が法
定されたために、これまでよりも代理店の責任が認定されやすくなるという点です。
イ.保険会社による求償の判断
代理店の賠償責任が認定されやすくなったとしても、保険会社がとりあえず賠償金を支払った場合、
求償するかしないかは保険会社の判断なので、「保険会社に大事にされている自分は大丈夫」と考え
る代理店がいるかもしれません。しかし、今の時代、そのような考え方は通用しないというべきで
しょう。なぜなら、保険会社は株主利益を前に、求償すべき権利がある限りそれを実行しなければな
らないからです。仮に弁護士がリーガルオピニオンを求められれば、どんな弁護士でも、求償せねば
ならないことを伝えた上で、それを行わなければ取締役として株主代表訴訟のリスクに晒されること
を指摘すると思われます。
ウ.代理店賠償責任保険
賠償事故に直面した保険会社と代理店が関係の悪化を招くことなく、スムーズに事を解決するため
の最善の手段は、代理店による賠償責任保険の付保です。今後、代理店賠償責任保険は、これまでと
は比較にならない程、代理店にとって重要な保険になることは確実です。そして、主としてこれを運
営する日本代協は大きな責任を負うことになります。保険の安定的な運営はもとより、団体内に設置
する賠償事故審査会が示す賠償に関する基準や個々の事件における有無責の判断が、時の推移ととも
に権威あるものとして確立されねばならないからです。
これは、代理店の国家資格認定を目指すという日本代協の課題とも関わりがあります。代理店賠償
責任保険は、個々の代理店を賠償事故から守るという機能とともに、日本代協という団体によって運
営されることで、代理店の専門的職能の健全な維持にも関与する重要な位置付けを与えられることに
なります。
― 217 ―
さらにいえば、生保協会、損保協会が運営しているADRは、保険契約者と保険会社の間のトラブ
ル処理のための機関で、代理店はここでも保険会社に従属する存在と位置付けられます。代理店の義
務が法定された結果、論理的には、保険契約者と代理店の間のトラブルを解決するために「代理店
ADR」が設置される日がいずれ来るのではないでしょうか。
③ 代理店手数料率を巡る動き
代理店手数料について、保険自由化以降の動きを振り返ってみましょう。自由化直後の1996年の損保
の元受収保は10兆6千億円ですが、これが2014年には8兆8千億円にまで減少しています。実に1. 8兆
円の減収です。ちなみに1996年以降生じた減少のピークは2010年の7兆7千億円で、保険料競争や自動
車を巡る社会環境の変化などが減少の理由です。
1996年と2014年を比較しますと、事業費率はローコストオペレーションの浸透によって、39%から
32%に減じています。実額で見れば、この間に失われた事業費は約1. 3兆円になります。事業費は保険
会社の社費と代理店手数料で構成されますが、数字全体で見ると、失われた1. 3兆円の多くを保険会社
が負担しています。
ア.代理店手数料率の引き下げ
代理店にとっては、自由化以降「手数料が下がった」という実感が多数派なのではないでしょうか。
従って、1. 3兆円は保険会社だけでなく代理店も負担したという思いがあるかもしれません。しかし、
実態を見れば手数料ファンドは総額ではそれほど低下していません。手数料ポイント制度の下で代理
店の大型化が図られたことによって、手数料総額の配分に変化が生じたというのが実態です。つまり、
大型代理店への配分が増加する一方で、特に小規模代理店への配分が減少したということです。この
背景には保険会社の代理店政策の変化とともに、代理店の帰属を巡る保険会社間の競争があったので
はないかと感じます。
このような中で、今後、保険会社はいよいよ手数料の総額を減少させる方向に向かう可能性がある
のではないでしょうか。これはすなわち、代理店手数料率水準の引き下げを意味します。世界的に見
てもわが国の代理店手数料率の水準は高いという実態があります。主要種目においてアメリカより概
ね6%程度、韓国よりも4%程度高いようです。諸外国との比較において、代理店手数料率の高さが、
わが国における事業費率の高さの理由であると指摘されています(株式会社トムソンネット編「損害
保険代理店ビジネスの新潮流」82頁)。
イ.手数料開示問題
また今後、手数料開示が現実味を帯びてくることも、手数料率水準の低下に拍車をかけることにな
ります。2013年の金融審報告書では、この問題について次のように結論付けています。「手数料の開
示については、
(中略)乗合代理店による保険商品の比較販売について、一定の適切な体制が整備・
確保されると考えられることから、現時点において、一律にこれを求める必要はないと考えられる。
ただし、比較販売手法について問題が存在するおそれがある場合などには、必要に応じて、乗合代理
店に支払われる手数料の多寡によって商品の比較・推奨のプロセスが歪められていないかについて、
当局の検査・監督によって検証を行うことが重要である。」
どんなに業界にとって意義があり、必要な制度でも、消費者に納得してもらえなければそれ自体を
変えるべきというのが今の時代を支配する感覚です。今後、例えば、一部の商品や販売チャネルに限
定して、消費者が手数料開示の後押しをする可能性も高まります。この問題もまた、手数料率引き下
げのインセンティブになるといってよいでしょう。
― 218 ―
ウ.
「ウイン・ウイン」の関係
仮に、代理店手数料率水準の引き下げを保険会社が行うとしても、これは新しい保険募集ルールに
よる動きとはいえません。しかし、体制整備義務の法定によって、今後、代理店が現代的な企業とし
ての質と量を確保しなければならないという現実を考えると、代理店にとって手数料率引き下げ問題
は、今後の経営戦略において十分に意識しておくべき課題になります。
代理店はどうすべきなのでしょうか。その答えは、代理店手数料率が下がっても実額としての手数
料が増加する道を進むこと、すなわち、代理店としての規模の拡大です。手数料は「収入保険料×手
数料率」ですから、収入保険料が手数料率の減少を上回って伸びれば手数料実額は増加します。
言うだけなら簡単ですが、実際には難しい課題です。中長期を含む経営計画を策定すること、それ
を実現するための組織体制を構築すること、生産性と効率性を上げるために事務・システムを改善す
ること、こうしたことを通じて代理店としての企業価値を向上させることが重要です。そして、企業
価値の高い代理店は、M&A等によって他の代理店の事業承継の受け皿になっていくことができます。
アメリカと日本の損害保険マーケットの規模によって、単位当たりの代理店の数を比較すると、わ
が国にはアメリカの約18倍もの数の代理店が存在します。今後、わが国の代理店がアメリカと同等の
質と量を確保するなら、今の代理店の数は18分の1になるということです。
この過程で、代理店間の事業承継は日常的な光景になっていくことでしょう。規模を拡大する代理
店が現れる一方で、廃業する代理店が出てきます。今の時代において、どの業種のどんな企業にも見
られる普通の現象が、これから「保険代理業」においても生じてくるということです。そして、これ
に生き残ることができた代理店のみが保険会社との間で「ウイン・ウイン」の関係を構築することが
できます。
⑷ 営業社員はどう変わるべきか
① 新しい募集ルールの下での変化
営業社員は、とても慌ただしい日々を過ごしています。販売促進のためにキャンペーンが行われる都
度、目標達成に向かって代理店を督励します。また、成熟市場において自社のマーケットシェアを拡大
するためには、他社の契約を奪取することが一番の近道です。そのために、乗合代理店を巡って攻防を
繰り広げています。自動車ディーラーや整備工場、企業代理店等はその主戦場です。他社が育成したプ
ロ代理店への乗合もそうした行動の一つです。
しかし、新しい保険募集ルールの下で、商品キャンペーンは、いきなりなくなることはないとしても、
次第に形を変えていくでしょう。乗合代理店を巡る攻防も同じです。比較説明と推奨販売は代理店が行
いますが、基本的にどの保険会社の商品を選択するかは消費者であって代理店はそれに介入することは
できません。保険会社としては、顧客に選択される競争力のある商品を供給することこそが重要になり
ます。
比較推奨販売を行う乗合代理店に対して、「代理店のお気に入りになって契約を自社に回してもらう」
という営業社員のスタイルがあります。もちろん、それは高い仕事の能力や人間的魅力によって実現す
るものです。しかし、比較推奨販売を行う乗合代理店の体制整備義務の下では、そうした消費者不在の
やり方は許されません。
さらに、乗合代理店の中に、比較推奨販売に伴う体制整備義務の負担の大きさを避けるために「原則
として比較推奨販売を行わない乗合代理店」の道を選択する代理店が大量に出てくることは明らかです。
こうなると、そもそも他社が育成したプロ代理店への乗合という行為は、根こそぎひっくり返すという
ことでもなければ、価値がないということになってしまいます。
― 219 ―
② コンサルティング能力
このような中で、営業社員として備えるべき能力・ノウハウはどのようなものなのでしょうか。
比較推奨販売を行う乗合代理店において、顧客対応は、今回の新しい保険募集ルールの下では、「代
理店自らの判断による独自の募集プロセス」とされています。従って、営業社員が代理店に出入りする
意味は減少することになります。
一方、専属代理店、または比較推奨販売を行わない乗合代理店においては、経営や成長に貢献する点
で、営業社員の活躍の余地は大きいものがあります。
アメリカには、わが国のような二重構造問題はなく、営業社員も存在しません。保険会社は商品の製
造を行い、代理店はそれを販売するという形で「製販分離」が一般化しています。しかし、日本の営業
社員に近いものとして代理店にとってのコンサルタントの役割を果たすものが少数ですが存在します。
代理店とともに経営戦略を練り、組織体制を考え、マーケティングを行うというような役割を担う人々
です。
もしわが国の営業社員がこうしたコンサルティング能力を持つようになれば、代理店としては経営や
成長に貢献するものとしてこれを活用することができます。保険ジャーナリストの中崎章夫氏がいう
「問題解決支援力を有するスーパーバイザーあるいは新たなアイデアを企画するプロデューサー的な営
業社員」は、これから到来する新しい時代において、期待される営業社員像であるといってよいと思い
ます。
そうした難しいスキルは別にして、先に述べたように、「製販一体」モデルの代理店は「価値協創型
ビジネスモデル」を目指すことを求められます。保険会社が商品やシステム等を通じて資源投入を行う、
まさにその最前線にいて、営業社員は代理店が仕事のやり方を変える上で重要な役割を担うといってよ
いでしょう。これこそ新しい時代における、営業社員にとっての最初の一歩であると考えています。
③ 代理店に対する監督
営業社員が備えるべき能力・ノウハウはもう一つあります。それは代理店に対する監督の能力です。
営業社員にとって代理店は自らの人事評価を高めるための「お客さま」という側面があります。しかし、
その一方で、代理店は監督の対象という側面があります。従来、どちらかといえば「お客さま」の側面
が強く、結果的にそれが監督を適正に行う上での阻害要因になるという傾向さえありました。
新しい保険募集ルールの下で、代理店に法定の義務、中でも体制整備義務が課せられることは極めて
重いことです。仮に営業社員が代理店をお客さま扱いし甘い監督を行えば、それは代理店を法的リスク
に晒していることに他なりません。その結果、これからは、代理店に対して行政処分が行われることさ
えあり得ます。
平成26年2月28日付で金融庁の監督指針が改定されています。それまでの簡単な表現と異なり、監査
の周期が業務の品質を確保する上で適切かどうか、監査を行う代理店の選定や監査項目の適切な見直し
が行われているか、無予告での訪問による監査が実施できるかなど、改定前に比べて、より具体的に保
険会社が行うべき監査の内容が記され、代理店監査の厳格化が示されています。これは、新しいルール
の下での保険会社の代理店に対する監督のあり方を先取りする動きと考えるべきではないでしょうか。
代理店としての体制整備が法定される一方で、引き続き保険会社は代理店に対する監督責任を負うこ
とになっています。その最前線にいる営業社員は、間違っても自らの人事評価に関わる「お客さま」と
して甘い対応をしてはなりません。新しいルールの下で、保険業法上のリスクを回避するために代理店
を厳しく監督することも営業社員の重要な仕事となっていくでしょう。そして、これこそが誰よりも代
理店自身を法的リスクから守るための大切な仕事になります。
― 220 ―
比較推奨販売を行う乗合代理店は、
「自らの判断による独自の募集プロセス」を持つがゆえに、これ
からは法的に保険会社から遠くに位置するようになります。これの典型が「規模の大きい特定保険募集
人」であり、金融庁の直接の監督下に置かれます。これに対し、専属代理店および比較推奨販売を行わ
ない乗合代理店については、営業社員こそが、その成長・発展と法的リスクの回避に貢献する形で寄り
添うことが必要であるといってよいでしょう。
④ これからの営業社員
新しい保険募集ルールは代理店を直撃します。そして同時に、代理店とともに行動する保険会社の営
業社員を直撃します。
今、女性社員を中心とする地域型社員の代理店支援業務が拡大しており、代理店からはこれを肯定的
に評価する声が多く聞こえます。その背景には、担当者が身に付けている商品や事務システムに関する
きめ細かな知識・ノウハウがあることは確実です。こうした動きは、会社ごとに商品や事務システムが
異なることを考えると、比較推奨販売を行う大型の乗合代理店においても広がっていくものと考えられ
ます。
このように、これまで当然に営業社員の仕事とされてきたものが地域型社員の仕事に移行する流れが
どんどん加速しています。このような中で営業社員に必要な能力はコンサルティング能力と監督の力で
あると記しました。
しかし、ここには二つの問題があります。一つは、こうした能力を今の営業社員が身に付けることが
できるかどうかです。アメリカの例を見ましたが、コンサルタント的な役割を担う人材は代理店経営の
スペシャリストとしての能力を持つものです。また人格的にも優れ、一定以上の経験を有するものでな
ければその任を担うのは難しいでしょう。少なくともわが国のように新入社員がいきなり担当するとい
うようなことはあり得るはずがありません。
もう一つの問題は人数の問題です。新しい保険募集ルールの下で、代理店は大型化に向かい、自立の
度合いを強めることになると予想できます。それについていけないものは市場から撤退せざるを得ない
状況になるでしょう。そして、保険会社は海外展開や新しい事業への進出のために一層のローコストオ
ペレーションを推進する必要に迫られます。論理的にも、募集における二重構造問題が解決に向かえば
不要となるのが営業社員であることは明白です。このような中で、今と同じ人数の営業社員がこれから
も存続することが可能なのでしょうか。
もちろん、いきなり激減するわけではありません。しかし、現在の形での営業社員は代理店の減少の
スピードを超えて減少の一途を辿るように思えます。営業社員の削減は、二重構造問題解消の次に到来
する保険会社としての課題になるのではないでしょうか。
保険会社の社員の中には営業という職種に愛着をもつものが多くいます。しかし、営業社員は、これ
から大きく変化する状況を念頭に仕事に向き合わねばなりません。質と量の両面で自立して生き残る代
理店に対して、知識と経験に裏打ちされた能力と人間的魅力によって対応することができるもののみが
営業社員として生き残ることができるというべきでしょう。
3.全体のまとめ
第一章において、新しい保険募集ルールの内容と狙い、中でも、そこに見る消費者保護の潮流を記しまし
た。第二章では、このルールの下で主役を担う代理店はどう対応すべきか、体制整備義務とその前提となる
代理店としての経営戦略の重要性について記しました。そして、第三章では、これらを受けて保険会社がど
のように変化していくかについて、保険自由化以降の変化を踏まえて記しました。
― 221 ―
保険制度改革は、1996年の保険会社の経営に関する変革と2016年の保険募集に関する変革の二つによって
完結するといってよいと考えています。20年の時を経て、ついに保険制度は新しい時代の始まりを迎えます。
法律が改正されることによって、制度的には階段状の大きな変化が示されます。しかし、今、認識しなけ
ればならない大切なことは、だからといっていきなり大変化が生じることはないという点です。今ここにあ
る現実は、明治以来の長い歴史の中で、わが国固有の事情を引きずりながら作り出されたものです。法律が
改正されたからといって人の心のありようや常識を一気に変えることはできません。
従って、現実の変化は、放物線を描くように、最初は少しずつ、その後、次第に変化の度合いを速めなが
ら進み、最後には急激にというような軌跡を辿るのではないかと考えています。今の時点で最終ゴールを見
据え、対応に完璧を目指すというのは、ゴルフに例えれば、力の入り過ぎたティーショットに近いような気
がします。その結果は、いうまでもなくOBです。
新しい保険募集ルールの登場とともに、これから訪れる放物線状の変化の中で、少しずつ変化を先取りし
ながら、焦ることなく一歩ずつ着実に進んで行くことが求められるのではないでしょうか。
以上
― 222 ―
都道府県損害保険代理業協会 事務局一覧表
2016年6月3日
都道府県代協名
北海道損害保険代理業協会
事
務
局
所
在
地
話
〒 064-0807 北海道札幌市中央区南七条西2-1
011-518-1195
リバーサイドMS208号
青 森 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 038-0011 青森県青森市篠田3-24-30-1F
岩手県損害保険代理業協会
電
〒 020-0025 岩手県盛岡市大沢川原3-1-2
盛岡浴友会館2F
秋 田 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 010-0951 秋田県秋田市山王7-7-20 AQUA山王201
017-718-7115
019-613-7979
018-867-1888
宮城県損害保険代理業協会
〒 984-0015 宮城県仙台市若林区卸町1-6-15
022-385-5810
卸町セントラルビルディング6F
やまがた損害保険代理業協会
〒 990-0035 山形県山形市小荷駄町8-7
023-673-0306
やまびこハイツB-102
福 島 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 963-8041 福島県郡山市富田町字上赤沼2-7
新潟県損害保険代理業協会
〒 950-0981 新潟県新潟市中央区堀之内32
JA鳥屋野ビル2F
024-953-6877
025-288-6663
長 野 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 390-0826 長野県松本市出川町17−31
0263-88-3140
群 馬 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 379-2165 群馬県前橋市上長磯町313-1
027-290-2355
栃 木 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 320-0072 栃木県宇都宮市若草4-19-10
028-650-5517
茨 城 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 300-4104 茨城県土浦市沢辺787
029-829-3522
埼玉県損害保険代理業協会
〒 338-0002 埼玉県さいたま市中央区下落合5-10-5
048-755-9261
アステリVIP211号
千葉県損害保険代理業協会
〒 260-0003 千葉県千葉市中央区鶴沢町20-16
043-307-8220
ユニバース千葉ビル6F
神奈川県損害保険代理業協会
〒 231-0058 神奈川県横浜市中区弥生町2-15-1
045-341-0411
ストークタワー大通公園Ⅲ801A
山 梨 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 400-0822 山梨県甲府市里吉1−9−8
東京損害保険代理業協会
055-267-6770
〒 101-0063 東京都千代田区神田淡路町1−19−5
03-3253-8291
お茶の水ビジネスビル4F
静 岡 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 420-0025 静岡県静岡市葵区金座町47-1 金座ビル3F
054-253-3055
愛知県損害保険代理業協会
〒 460-0008 愛知県名古屋市中区栄1-13-4
052-203-8722
みその大林ビル6F  C号
岐阜県損害保険代理業協会
〒 501-0204 岐阜県瑞穂市馬場春雨町1-50-2
058-329-0050
司不動産ビル2F
三 重 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 514-0009 三重県津市羽所町345 第一ビル2F  5A
富山県損害保険代理業協会
059-213-8882
〒 939-8272 富山県富山市太郎丸本町1-9-20
076-493-2456
ダイイチハイツ1F
石 川 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 920-8203 石川県金沢市鞍月2-2 石川県繊維会館1F
― 223 ―
076-214-8544
都道府県代協名
福井県損害保険代理業協会
事
務
局
所
〒 918-8202 福井県福井市大東2-1-20
在
地
レコルタフォー202
滋 賀 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 524-0037 滋賀県守山市梅田町5-6 平和堂守山店4F
電
話
0776-57-1665
077-514-0109
京都損害保険代理業協会
〒 604-8187 京都府京都市中京区御池通烏丸東入笹屋町436
075-257-3633
永和御池ビル601
奈良県損害保険代理業協会
〒 630-8114 奈良県奈良市芝辻町4−6−8
0742-32-3331
㈲ 奈良保険センター内
大阪損害保険代理業協会
〒 530-0001 大阪府大阪市北区梅田1-2-2-1400
06-6341-6085
大阪駅前第2ビル14階1-2
兵庫県損害保険代理業協会
〒 650-0023 兵庫県神戸市中央区栄町通2-2-2
078-333-6547
和栄ビル502号
和歌山県損害保険代理業協会 〒 641-0051 和歌山県和歌山市西高松2-9-4-2F
073-460-4761
岡 山 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 703-8235 岡山県岡山市中区原尾島859-10
086-270-7861
鳥取県損害保険代理業協会
〒 683-0802 鳥取県米子市東福原6−2−37
0859-30-2369
㈲ オフィスアームス内
島 根 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 690-0826 島根県松江市学園南2-11-29-101
広島県損害保険代理業協会
0852-28-7122
〒 739-1734 広島県広島市安佐北区口田2-2-21
082-841-3101
㈲ C&C安田内
山 口 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 751-0816 山口県下関市椋野町1-15-23
083-250-8315
徳 島 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 771-1311 徳島県板野郡上板町引野字東原37-1
088-677-9002
香川県損害保険代理業協会
〒 767-0011 香川県三豊市高瀬町下勝間1522-1
0875-56-2363
㈲ 三豊ビジネスセンター 内
愛媛県損害保険代理業協会
〒 790-0066 愛媛県松山市宮田町106-2
089-932-7828
カサブランカ駅前401
高知県損害保険代理業協会
〒 780-0901 高知県高知市上町1−1−18
088-872-2030
㈲ プロ保険センター内
福岡県損害保険代理業協会
〒 812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前1-15-20
092-481-3424
NOF博多駅前ビル907
大 分 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 870-0933 大分県大分市花津留1-1-23 河野ビル2F
佐賀県損害保険代理業協会
〒 849-0923 佐賀県佐賀市日の出1-13-24
0952-37-8431
サンライズハイツ1F
長 崎 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 850-0056 長崎県長崎市恵美須町4-2 平野ビル3F
宮崎県損害保険代理業協会
沖縄県損害保険代理業協会
095-816-3021
〒 880-0806 宮崎県宮崎市広島2-5-30
0985-23-0468
ルポ宮崎駅前ビル205
熊 本 県 損 害 保 険 代 理 業 協 会 〒 861-4101 熊本県熊本市南区近見7-8-45
鹿児島県損害保険代理業協会
097-529-7841
〒 890-0046 鹿児島県鹿児島市西田2-20-8
096-288-1512
山野ビル2F-D
099-297-4641
〒 900-0026 沖縄県那覇市奥武山町26-24
098-858-7192
奥武山マンションビル202
一般社団法人 日本損害保険代理業協会 〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-12-1
新有楽町ビル3階321区
電 話 03(3201)2745
― 224 ―
代協活動の現状と課題
平成28年度版
一般社団法人 日本損害保険代理業協会
〒100 0006 東京都千代田区有楽町1‒12‒1
新有楽町ビル3階321区
TEL 03‒3201‒2745 FAX 03‒3201‒4639
E-mail:[email protected]
URL:http://www.nihondaikyo.or.jp
’
16. 8 13, 500冊