ザ・デーリーオーストラリアン - Dairy Australia

ザ・デーリーオーストラリアン
2015年11月・春号
2015年も残りわずかですが、酪農乳業界では現在もさまざまな活動が展開されていま
す。原料乳製品の国際相場はシーズン初めの上昇から一転し、再び下降気味です。
こうし
たボラティリティの背景には、
グローバル・デーリー・トレード
(GDT)のオファー数量低下
やニュージーランドの生産見通し下方修正があるとみられています。
国際相場で全般的に需給の不均衡が続
いており、回復が遅れています。世界各
地の酪農地域では、マージンの薄さが影
響して生産が伸び悩むところも出ており、
市場のファンダメンタルズ改善に必要な
大規模な調整は、
まだ十分に進んでいな
いようです。
2015/16年シーズン第1四半期の豪州の
生乳生産は、前年同期をやや上回る順調
なスタートを切りました。
しかし、一部の
酪農地域では非常に乾燥した天候が続
く中、酪農家の多くが生産コストの増大
によるマージンのさらなる目減りに直面
しています。
豪州国内市場は堅調に推移しており、バ
ター、バターオイル、脱脂粉乳、バターミ
ルクパウダー、チーズ各品目の製造量
は、前年同期を上回っています。
諸外国との貿易交渉では、豪中自由貿
易協定(FTA)交渉における中国側の法
的・内政的処理が進み、今年末までには
批准される見込みであり、
これは豪州に
とって嬉しいニュースです。豪州酪農乳
業の関係者は、年末を待たずに豪中
FTAが発効されるだろうとの見方を強め
ています。
環太平洋経済連携協定(TPP)について
も、先ごろアトランタで大筋合意を迎えま
した。
ここ数年、貿易自由化の波は歴史
的な高まり見せており、TPPもその流れの
一つと捉えることができます。TPPに関す
る資料が最近公開されたことに伴い、業
界関係者による包括的な検証作業が進
められています。
身近な話題では、DAのスカラシッププロ
グラムが今年も東南アジア、中国、
日本を
対象に実施され、高い評価を集めまし
た。来年3月に予定されている第2回東南
アジア向けスカラシップの開催を、関係
者一同楽しみにしています。
目次
DA日本スカラシップ2
DA東南アジアセミナー3
DA北アジアセミナー3
同窓生紹介4
豪州酪農が求める海外労働力5
カンガルー会5
生産概況6
国際乳製品市況7
長期的観点で運
営されるDA日本
スカラシップ
「DA日本スカラシップをどう評価しますか?
」
、
もし日本の大手乳業メーカーや商社の上
級管理職にこう尋ねれば、おそらくほぼ全員
から
「将来の意思決定者にとって不可欠な
事業だ」
、
との答えが返ってくるだろう。
DA日本スカラシップは1998年にスタートし
て以来、
これまでに数百名に上る日本の大手
乳業メーカーや商社の若手・中堅社員を研
修生として迎え入れてきた。彼らは現在、重
要な判断を下す地位につき、
あるいは担当
バイヤーとして豪州の輸入業者とさまざまな
交渉を行っている。今年もその例に漏れず、
酪農場から工場に至る豪州酪農乳業のすべ
てを学ぶため、
21名の研修生が訪れた。
豪州の大手乳製品輸出企業、例えばベガチ
ーズ、
ブラ、バラフーズ、マレーゴールバン、
ワーナンブール・チーズ・アンド・バター、
フ
ォンテラ、
ライオン、
ノルコ、バランタインも、
このプログラムへの参加を通じてさまざま
なメリットを享受している。
ベガチーズの乳素材担当ビジネスマネージ
ャー、
トニー・キルマーティン氏は、
日本を同
社のクリームチーズの主要市場と位置付
け、
スカラシップが始まった20年前から積極
的に関わっている、
と語る。
「このスカラシップは、
日本企業との関係づ
くりや、そうした企業の若手社員に当社の設
備や製品を理解してもらうのに、
とても役に
立っています。
私が日本へ行くと、多くの関係者からスカラ
シップをこれからも続けてほしい、
という声
を聞きます。
これからの世代を担う若手にと
って必要な事業だ、
と彼らは言うのです。
ス
カラシップは社員教育の機会であり、
セール
ス向上や事業拡大につながる、
と彼ら自身が
認めているのでしょう」
(キルマーティン氏)
2
金額でみると日本は豪州最大の輸出相手国
であり、総輸出額の17%に相当する4.83億
豪ドルが対日輸出によるものとなっ
た。2014/15年度は10万トン余りが日本へ輸
「当社は、
日本国内のメーカーと豪州国内
のサプライヤーとをつなぐ役割を担ってい
ます。豪州における生乳生産から加工出荷
に至る一連の流れや高い品質基準を理解
スカラシップ・プログラムでは、豪州酪農乳
業の食品安全体制、食品基準、生乳処理、乳
製品試食、チーズ製造、乳製品の機能と応
用など幅広い内容を取り上げる。今年の研
修では、DA会長ジェフ・エイカーズ氏経営
の酪農場や、豪州酪農生産者協会(ADF)会
長ノール・キャンベル氏経営の酪農場の見
学を実施した。ビクトリア州の乳業メーカー
の工場も数カ所訪問し、研修生と各社の輸
出担当者との懇談の場も設けられた。
DA会長、
ジェフ・エイカーズ氏は、今回の研
修生をビクトリア州北部にある自身の酪農
場へ案内した。エイカーズ氏は、
アジア市場
への展開にあたり、人脈作りの大切さを極
めて重視している。
出され(総輸出量の14%)、その大半はチー
ズが占めた。
DA国際市場マネージャー、セーラ・スー氏
によると、研修生らはプログラム内容の充実
ぶりに大変感心した様子であり、豪州酪農
乳業について非常に多くを学ぶことできた
という。
「スカラシップの大きなメリットのひとつ
に、海外顧客企業から派遣された研修生
が、豪州サプライヤーと直接会うチャンスが
得られるという点が上げられます。研修生た
ちは、豪州企業との将来の関係づくりにとて
も積極的に取り組んでいました。
スカラシップ終了後、研修生はDAのスカラ
シップ同窓会プログラムを通じ、豪州企業
担当者と定期的に連絡を取り合う関係を築
いていきます」
(セーラ・スー氏)
研修生のひとり、荒木千晶氏(三菱商事酪農
飲料部チーズチーム)は今回のスカラシッ
プについて、非常に有意義であったと評価
する。
することは、すごく有意義であり大変勉強に
なりました」
(荒木氏)
「スカラシップ・プログラムの開始からずい
ぶん経ちました。
日本では一つの会社に長
く務め、内部で昇格を重ねながら大きな影
響力を持つ地位につく例がよく見られます。
そうした人々がスカラシップのおかげで豪
州乳製品に好印象を持ってくれるなら、非常
に大きな成果だと思います」
(エイカーズ氏)
写真上:ベガチーズ/タチューラ工場を見学した2016年
度DA日本スカラシップ研修生一行
写真下:タチューラのマネージャー、キルマーティン氏(
手前左)からチーズの説明を受ける研修生ら
豪州乳製品、東
南アジアで好評
を博す
していくと予想されます」
(DA国際貿易開発
マネージャー、ピーター・マイヤーズ氏)
ィスカッションや良質の豪州乳製品を食材
とする実演調理を行った。
2014/15年度の豪州乳製品輸出の3分の1
以上は、ASEAN諸国向けが占めた(輸出量:
約295,000トン、輸出額:約10億豪ドル)。
こ
の地域の国々
(シンガポール、マレーシア、
タイ、ベトナム、
フィリピン、インドネシア)は
豪州と地理的に近く、乳製品輸出にとって理
想的な相手といえる。
「セミナーの参加者には、ハッシュタグ
『#ozcheftim』
でツイッターやインスタグラ
ムを活用することもお願いしています。
この
方法は、豪州産乳製品に関する私たちのポ
ジティブなメッセージを、楽しみながらより
多くの人に伝えるのにとても適しています。
「ティムの実演調理は、
各地で大好評でした。
豪州産乳製品の理解を進める上で、
さまざま
な料理を通じてその風味、
色、
香りを味わって
もらうというのは素晴らしいアイデアです。
このたび、東南アジア3カ国(フィリピン、ベト
ナム、
タイ)
で豪州乳製品セミナーが開催さ
れ、出席したホスピタリティ業界および商社
関係者の舌を大いに魅了した。
先月、デーリー・オーストラリア
(DA)
とオー
ストラリア人シェフ、ティム・ホランズ氏は、
豪州産乳製品(チーズ、
ヨーグルト、牛乳、
ク
リーム)を材料とする数種の料理をセミナ
ー開催地で披露した。
これは、豪州産乳製品
の魅力である種類の豊富さと手に入れやす
さ、そしてさまざまな利用法などを東南アジ
ア市場でアピールするための、2週間のミッ
ションの一環として行われたもの。
「ASEANは今後も、豪州最大の地域市場で
あり続けるでしょうし、中流家庭の食の嗜好
が西洋化する中で、市場規模はさらに拡大
北アジア市場向
けDAセミナー開
催
外食サービスや小売り業が発達している
ASEAN市場は、巨大なチャンスが見込める
ため、われわれ業界関係者はそのチャンス
を確実に活かしたいと願っています。各地
で行うセミナーは、市場の有力者との関係
づくりやその維持に有効であり、われわれ
の願いを実現する上で大いに役立つと期待
しています」
(マイヤーズ氏)
このたびのミッションでは、マニラ
(フィリピ
ン)、ホーチミン市(ベトナム)、バンコク
(タ
イ)各地でセミナーと実演調理を行い、政府
関係者、乳製品輸入業者、小売業者、
レスト
ランオーナー、ホスピタリティ専門学校関係
者らが多数出席した。
DA一行は、セミナーと並行して各都市のホ
スピタリティ専門学校を訪れ、調理師コー
スの学生らを相手に豪州乳製品に関するデ
2015年のDA海外セミナーは、北アジア市場
向けセミナーで幕を閉じた。
このセミナーで
は北アジア地域から参加した数百名の顧客
を対象に、豪州酪農乳業の最新情報や豊富
な乳製品の紹介を行い、各地で好評を博し
た。
香港、
ソウル、台北の3カ所のセミナー会場
には、食品および乳製品の加工・流通、ホス
ピタリティ事業、小売業の関係者らが多数
集まった。
また、
このセミナー初の試みとし
て、若手シェフを対象とする実演調理が香
港の調理師学校で催された。
各地のセミナーでは豪州酪農乳業の最新
情報の紹介のほか、チーズ試食会、豪州産
乳製品(牛乳、
ヨーグルト、
クリーム、チーズ、
バター)を用いた実演調理が行われた。そ
の際にはマレーゴールバン、ベガ、キングア
イランド、
タスマニア・ヘリテージ、
レムノ
ス、
ブラ、
アモーレチーズ各社の乳製品が使
用された。
3
ホスピタリティ専門学校で現在学ぶ人たち
は、将来バイヤーや小売業界の意思決定者
になるかもしれません。DAのこうした地道
なセミナー活動が、いつの日か大きく実を
結ぶことを期待しています」
(マイヤーズ氏)
写真:乳製品を材料とした実演調理を紹介するオースト
ラリア人シェフ、ティム・ホランド氏
DA中国スカラシップの同窓会も開催され、
会合では最近の豪中国乳業の動向、国際乳
製品市況、豪中FTA関連の最新ニュースな
どが紹介された。
この同窓会は毎年恒例の
行事であり、湖南で行われた今年の会合に
は50名が出席した。香港、
ソウル、台北の各
地でも、同窓生同士が積極的にネットワー
クづくりに励む様子が見られた。
DA国際市場マネージャー、セーラ・スー氏
によると、
この北アジア市場向けプログラム
は、大切な地域市場の関係者(顧客、
ステー
クホルダーら)
との関係維持を常に念頭に
置いているという。
「各地のセミナーは、豪州産乳製品に対す
る海外バイヤーの好印象を維持し、需要を
確保すると同時に、海外市場における販路
拡大にも役立っています」
(セーラ・スー氏)
同窓生紹介
森元 慧一氏
オーストラリア三菱商事
生活産業部
シニアアシスタントマネージャー
研修参加年:2010年
ザ・デーリーオーストラリアンでは、今季号か
ら新企画「同窓生紹介」
を設けることになりま
した。同窓会プログラムは、DAスカラシップ
を通じて築いた卒業生たちとのネットワーク
や交流関係を、
さらに維持するという重要な
役割を果たしています。
こうしたネットワーク
は、豪州酪農乳業に関するビジネス機会や
情報など、最新ニュースを関係者に広めてい
く上で大いに活用されており、極めて高く評
価されています。
森元さんは現在の会社に何年お勤めです
か?またオーストラリア勤務は何年になりま
すか?
森元氏:メルボルンに赴任する前は三菱商
事の東京本社に在籍していました。
メルボ
ルンに赴任してから1年半ほどになります。
入社からの勤続年数は7年半余りです。
お仕事の内容を教えていただけますか?
森元氏:主に、乳製品(チーズ、粉乳等)をは
じめとする食品の買付けを担当しています。
スカラシップを通じてどのようなことを学ば
れましたか?
森元氏:チーズの製造加工の流れや、酪農
業・生乳生産現場の重要性などについて、広
く深く理解することができました。
スカラシッププログラムの最も優れた点とは
なんでしょうか?
森元氏:一週間という期間の中で復数のサ
プライヤー企業を訪問し、担当者と直接話
ができる点だと思います。
森元さんのこれまでのキャリアの中で、
スカ
ラシップはどういう点で役に立っているとお
考えですか?
森元氏:私は、
スカラシップ参加後にオセア
ニア地域チーズ買付け担当になりました。
東京本社からメルボルンに転勤となり、オ
セアニア地域での乳製品その他食品に関す
る輸入業務を任されるようになったのです。
4
チーズスカラシップでの経験は、
こうした私
のキャリアに大変プラスであったと思いま
す。
森元さんはスカラシップへの参加を他の人
にも勧めたいとお考えですか?その理由もお
聞かせください。
森元氏:もちろんです。
スカラシッププログ
ラムは内容がとてもよく練られており、
「オー
ジー・デーリー」を包括的に学ぶことができ
ます。そのおかげで、チーズの製造加工だけ
でなく、厳格で信頼性の高い食品安全プロ
グラムまでを網羅した豪州酪農乳業の実態
を学び、体感することができたと思います。
スカラシップ卒業生にとって、同窓会プログ
ラムへの参加はどれくらい重要だとお考えで
すか?
森元氏:スカラシップは、その基本コンセプ
トや目的において昔から変わることなく運
営されています。つまり、卒業生は年次に関
わらず共通の体験を得られるわけです。同
窓生同士がそれを共有し話し合うことによ
り、
日豪の乳業ビジネスにとってさらに大き
なメリットへとつなげることができると思い
ます。
豪州酪農界、海
外熟練労働者受
け入れへ
オーストラリア酪農界は、国内のみでは必
要な人材の確保がもはや困難であるとの認
識のもと、移民・国境警備省との間で酪農従
事者雇用協定を締結し、海外から技能労働
者を雇用する方針に舵を切った。
この協定は、就労ビザ・サブクラス457(技術
者対象)を利用した外国人労働者に関する
労働条件の、大枠を定めたものである。
ちな
みに同ビザの保有者は最長4年間、オースト
ラリア政府の認可を受けた事業者のもとで
勤務することができる。
この協定では、熟練農業従事者については
「熟練酪農従事者」
と定義し、以下の条件を
満たす者と定めている:
• サ
ーティフィケート3(または同等の資
格)を取得し、関連業務に最近3年以上
従事している者、または
十余年の歴史を
誇る豪日酪農関
係者の集い「カン
ガルー会」
今年のカンガルー会セミナーは、豪日酪農
乳業関係者ら200名以上が集まる中、東京
で開催された。セミナーに続くレセプション
では、豪州政府農業大臣バーナビー・ジョイ
ス氏が開会の挨拶に立った。
ジョイス農相は、
日中韓各国との貿易協定
推進のためトレードミッションを率いて来日
中のところ、
カンガルー会セミナー開催時期
と重なったことから今回の参加が実現した。
農相はセミナー開会の挨拶の中で、豪日両
国の乳業関係者の絆について触れ、両者は
長きにわたるパートナーであり、数十年もの
5
• 関
連業務にに最近5年以上従事してい
る者
外国人労働者の採用にあたっては、
所定の技
術を有しているかの審査が実施される。
給与
については、
オーストラリア国内の酪農従事
者の給与レートまたは一時技能者移民の最
低賃金枠
(TSMIT)
のいずれか高い方が適用
される。
労働時間は週45時間を上限とする。
この新協定は、現行のオーストラリア移民法
に対応するために策定された。現行法で
は、農業分野で技能者移民ビザの対象とな
るのは、農業従事者および農業管理者に限
られている。
DAの政策・戦略担当マネージャー、
クレア・
ミラー氏は、現在の状況について、多くの酪
農家が、勤勉で信頼できる人材をオーストラ
リア国内で確保することは困難だと感じて
おり、海外からの人材確保に目を向けはじ
めているという。
「アジアの広い地域では高品質・安全な乳
製品の需要が高まっており、今後10年はオ
ーストラリア酪農にとって大きな成長を遂
げるチャンスの時期といえる。
しかし、オーストラリア国内には熟練労働者
が不足しているため、それが生産拡大の足
かせになっている」
ー飼料の集中的生産、バイオセキュリティ、
重機の扱い、輸送、廃棄物処理などについて
しっかり訓練を受け、専門知識を身に付け
ることが求められる。
「未熟な者に仕事を任せると、酪農家は多
大な損失を被ることもある。例えば、乳牛や
子牛にケガや病気が生じたとしても、初期
段階のわずかな兆候を見逃した結果、高額
の治療費がかかったり生産力が失われる、
といったことだ」
酪農業界ではこれまでに、労働者の訓練や
技能研修などに多額の投資を行っている。
国立酪農乳業教育センター(NCDE)
で2006
年から始まった資格認定コース(サーティフ
ィケート、
ディプロマ)は、その一例だ。
同センターの生徒数は順調に伸びているも
のの、海外需要の増大にともなう生産拡大
が急務といわれる中、業界の人材不足に対
応できるまでには至っていない。そのため、
海外熟練労働者の受け入れは、短中期的な
技術者不足を補うための苦肉の策と受け止
められている。
(詳しい情報は、DAのウェブサイトをご覧く
ださい:www.thepeopleindairy.org.au)
酪農は、高度な技術が要求される職業だ。
従事者には、畜産、食品安全体制、高カロリ
間緊密な協調関係を築いてきた、
とその意
義を強調した。
また、豪日EPA(JAEPA)に関しては、豪日間
にまたひとつ重要なファクターが加わり、
こ
れにより豪州産チーズの日本市場への特恵
的アクセスが可能になるとの期待を示した。
デーリー・オーストラリア
(DA)国際貿易開
発マネージャー、ピーター・マイヤーズ氏
は、
カンガルー会やDAスカラシップ・プログ
ラムなど毎年恒例の事業のおかげで、豪日
乳業界は良好な関係を維持できている、
と
述べた。
カンガルー会は、DAが毎年11月に東京で
開催する年次セミナーとレセプションを主
な活動とする。会員は、豪州産乳製品を扱う
日本企業が中心。豪州におけるシングル・デ
スク・セリングの最晩年である2000年代初
めに創設された。
今年のセミナーには日本の乳業メーカー、
食品メーカー、商社、業界団体、
日本政府か
ら関係者が出席した。豪州側は、DAのほか
在日オーストラリア大使館(大使、農務参事
官、オーストレード)、ビクトリア州政府事務
所、東京に駐在事務所を構える豪州乳業メ
ーカーらが出席した。
また、豪州からこのセ
ミナーのために東京に出向いた乳業会社
役員らの姿もあった。
DAはセミナー出席者向けに、豪州酪農乳業
の最新情報、国際乳製品市況、貿易政策に
関する諸課題の検討状況などを紹介した。
写真:DAハリデー社長とジョイス農業大臣
オーストラリアの
生産概況
2015/16年シーズン第1四半期の生乳生産
量は、豪州全体で24.7億リットル。
しかし、マ
ージンの薄さや高温・乾燥の気象条件の影
響で、7月が5.5%増、7-8月4.6%増、7-9月
3.1%増(いずれも前年同期比)
と、生産ペー
スに陰りが出始めている。年度開始から9
月現在までの各州の生産動向は次のとお
り:西オーストラリア州7.1%増、南オースト
ラリア州6.1%増、ニューサウスウェールズ州
4.6%増、ビクトリア州2.7%増、
タスマニア州
2.6%増、
クイーンズランド州1.8%減。先月は
全国の中でも豪州南東部の生産地域にお
ける鈍化傾向が最も著しかったが、
タスマ
ニアは例外的に生産を伸ばしている。
減、7.1%減となった。豪州国内市場は好調
を維持しており、量販店における主要乳製
品の販売状況をみると、販売量は品目毎で
ばらつきがあるものの、販売額はいずれの
品目も伸びている。市乳の売上げ(0.8%増)
にロングライフ牛乳と色物乳飲料が大きく
貢献する一方、全脂肪牛乳の人気も根強
い。製造増が著しいスプレッドタイプ(4.8%
増)
では、バターが牽引役を果たしている。
チーズは単価が上昇する一方で、販売量は
低下が続く
(2.0%減)。
ヨーグルトとスナック
も売上げが落ちているが(3.7%減)、
プレー
ンタイプに人気が集まる中、加糖ヨーグルト
やスナックタイプが割りを食った格好だ。
生産量の増大が製造量に反映される状況
は、
これまでと同様だ。年度初めから8月ま
での累計で、増えているのはバター(1.7%)、
バターオイル(1.6%)、SMP(22.3%)
、BMP(4.8%)、チーズ(7.3%)の各品目。一方
WMPとホエイパウダーはそれぞれ2.4%
豪州の月別生乳生産量
˜ 2013/14 ˜ 2014/15
1,200
0.8%
1,000
3.7%
800
Mllion litres
5.4%
600
400
200
0
6
Jul
Aug
Sep
Oct
Nov
Dec
Jan
Feb
Mar
Apr
May
Jun
国際乳製品市況
原料乳製品の国際相場がここ数ヶ月間急騰
している。
これには、ニュージーランドの生
産見通し下方修正や、
グローバル・デーリ
ー・トレード(GDT)のオファー数量低下が大
きく影響したとみられるが、その程度の要因
では今後も上昇基調を維持するには不十
分、
との見方もある。そのため、10月末に
GDT価格指数がやや低下したことについて
も、価格の底入れを見越した追加需要が一
服したサインであり想定内、
との受け止め
が関係者に広がっている。
理はしない、
という姿勢のようだ。そのおか
げか、欧州産の供給が激しさを増す中でも
SMPの価格は比較的安定に推移している。
オセアニア産チーズの価格抑制にも一定の
効果を果たしているようだ。供給量がタイト
なバターの価格は堅調を保っており、原料
乳製品メーカーの中には、製造量の大半を
小売向けに切り換える動きも出ている。
オセアニア産の供給量不足が価格圧力と
なりつつあるものの、欧州産および増大著
しい米国産の供給により、その影響は軽減
されている。北半球の生産が好調なことか
ら、オセアニア産にこだわらない限りそれほ
ど心配ない、
という余裕をバイヤーに与え
ているようだ。現在のGDT価格指数は半年
前と同水準にあり、大半のバイヤーは在庫
を十分に抱えているため、買い急ぐ様子を
見せていない。一方、オーストラリアの原料
乳製品メーカーは、現状の販売ペースにそ
こそこ満足しており、
またエル・ニーニョの
影響に関する見通しが不明確なこともあっ
てか、望ましい価格水準に落ち着くまで無
原料乳製品価格の推移
Butter
SMP
WMP
Cheddar
6,000
US$/tonne FOB
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
Oct-15
Jun-15
Feb-15
Oct-14
Jun-14
Feb-14
Oct-13
Jun-13
Feb-13
Oct-12
Jun-12
Feb-12
Oct-11
Jun-11
Feb-11
Oct-10
Jun-10
Feb-10
Oct-09
0
ISSN 1839-8812
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0494 | Nov 2015
Published by Dairy Australia Limited.