【プレゼンテーション】 メディカルカフェ@町家へようこそ 医師不足は本当

添付資料4
メディカルカフェ@町家
「お医者さんと話す会」による健康力向上プロジェクト
NPO 法人京都の医療を考える若手医師の会
【プレゼンテーション】
メディカルカフェ@町家へようこそ
今回の健康力向上プロジェクトの目的をひとことで言えば「ヘルスリテラシー」です。
健康になるためには正しい知識を得ることが何よりも大事だということを言いたいと
思います。健康になろうと一生懸命やっても間違った方法ではまったく意味がなく、む
しろ害になることもあります。
「○○をすれば健康にいい」というような話題はテレビなどでしばしば見かけます。
例えば、何かの野菜を食べると血液がさらさらになるとか、そういう安直な話は基本的
に眉唾ものだと思ってもらった方がいいと考えています。
ここで私が強く言いたいのは、どのように医療が提供されているかとか、どのような
医療を受けるべきかということに関する知識が必要なのではないかということです。直
接的に自分の健康に関わることではないと思われるかもしれませんが、現在の医療体制
がどうなっているのかとか、医療にどのようにアクセスするのがよいかということを考
えるのが今回のプロジェクトの目的のひとつです。
そのために必要なことのひとつは、やはりインターネットではないかと思っています。
もちろんインターネット上の情報がすべて正しいとは限りませんが、自分から必要な情
報を取ってくるという作業には便利だと思います。テレビや新聞では自分が必要な情報
を流してくれるとは限らないので、能動的に自分から情報を探しに行くことが難しいの
ではないでしょうか。
また、私が知る限り医師は基本的にお人よしが多く、お金もうけにはあまり興味がな
く、自分の仕事にはプライドを持っています。信頼できる医師ときちんと向きあって率
直に話をすることによって、さらに有用な情報が得られると思います。
医師不足は本当か?
医師不足だとときどき報道されていますが、本当に不足しているのでしょうか。OECD
諸国の平均医師数は人口1千人当たり 3.1 人です。日本は 2.1 人です。ということは、
OECD 諸国の 3 分の 2 ぐらいしか医師がいないことになります。少なくとも国際的にみ
ると日本の医師は少ないといえそうです。足りているか、足りていないかどうかはとも
かくとして、外国と比べると少ないのです。
1
添付資料4
実際、日本は高齢化社会です。高齢者は医療を受ける機会が多いですから、日本は諸
外国の 3 分の 2 の医師数で高齢化社会の医療を支えていると言えます。
次に、京都の話をします。今日参加されている方はほとんどが京都市在住だと思いま
す。人口 10 万人当たりの医師数は平成 20 年で 279.2 人と東京都よりも多く全国で一番
多いのです。京都府立医科大学と京都大学という 2 つの大学病院を抱えていることが大
きいと思いますが、139.9 人と全国で一番医師が少ない埼玉県と比べると、倍以上の医
師数です。
一方で京都は縦に長いので、南北問題という問題があります。全国平均の医師数は人
口 10 万人あたり 212 人と先ほど言いました。京都府の医療圏は6つにわかれています
ので医療圏ごとの医師数を紹介しますと、丹後:146 人。中丹:202 人、南丹:161 人、
山城南:122.7 人、山城北:152.2 人で、京都・乙訓:353.5 人。
京都府は医師数が全国で一番多いと言いながら、実は全国平均より多いのは、京都・
乙訓医療圏、ただ一つだけです。この医療圏だけが他の医療圏より突出してたくさんの
医師を抱えていることになります。京都市在住の皆さんはあまり医師不足を実感されな
いかもしれません。
医師の仕事
京都市内にお医者さんは充足しているのでしょうか?そもそも病院のドクターはど
のような生活をしているのか、私の同僚の医師にどのような生活をしているのかを書い
てもらいました。
まず私の同期の外科医のある週の 3 日間の勤務記録を示します。1 日目は、朝 7 時 40
分に出勤し、9 時ぐらいから手術に入って、終わるのが 21 時くらいになっています。
手術中は食事をとることができません。そのあと、標本整理といって、手術で切除した
臓器をいろいろと分類して、計測してスケッチをしたりホルマリンに漬けたりする作業
をし、カルテを書いて 23 時に帰宅しています。
次の日は、同じく 7 時 40 分に出勤したあと何かこまごまとした仕事がいっぱいあっ
て、カンファレンス(手術前に手術方針などを関連する診療科の医師たちとディスカッ
ションする会)や検査、グループの回診などを経て、22 時 30 分に帰宅しています。
3 日目は 8 時 20 分出勤で、この日は 20 時 30 分というまずまずの時間帯に帰宅する
ことができています。
ちなみにこのドクターの正規の勤務時間は 8 時 30 分から 17 時 15 分までです。時間
外労働時間が長いように思いますがいかがでしょうか。
次に、別の外科医の連続 3 日間(木、金、土)の連続する勤務を示します。1 日目は
7 時 30 分に出勤し、手術が朝の 8 時 30 分から 20 時 30 分までかかり、手術終了時に初
めて軽食をとって、そのあと標本整理をして、カルテチェックをして、午前 0 時 30 分
2
添付資料4
に帰宅しています。
次の日は、朝の 7 時半に来て、こまごました仕事の後に手術に入り、14 時に遅めの
お昼ご飯を食べた後に研修医の指導をしたり、指示を確認したり、回診したりしていま
す。さらにこの日はそのまま当直勤務についています。病棟の仕事をしたり、救急外来
に呼ばれていったりしたあと午前3時から朝7時半まで仮眠をとっています。翌日は土
曜日ですが、仮眠の後も様々な仕事をして、13 時にようやく仕事を終わって帰ってい
ます。3 日間連続で長時間長働いて、土曜日も半日働いていますが、代休があるわけで
はないので休日はかなり少ないです。ちなみにこの医師はこの記録をつけた時よりも今
のほうが忙しくなっているとコメントしています。
医師が多いのなら、もう少し勤務に余裕があってもいいのではないかと私は思ってい
ます。これは研修医時代からの素朴な疑問です。医師が忙しいのはやはり人が足りてい
ないからでしょう。
実際、当直明けも翌日が平日であれば普通に働くことになるので、32 時間連続労働
になってしまいます。当直明けにも、もちろん手術もあれば、外来もしなくてはいけま
せん。入院患者を受け持っていると、患者さんは昼夜問わず、状態が悪くなる可能性が
あるので、医師は 24 時間 365 日対応することを当然視されているところがあります。
また、大学病院の給料は安いので、大学病院勤務の医師はさらにアルバイトに行って
(場合によっては当直をして)生活費を稼いでいます。
女性医師の増加
さらに医師不足と関連して女性医師の増加がしばしば指摘されています。近年、医師
国家試験合格者に占める女性の割合は 30%を超えています。すなわち、新しくお医者さ
んになる人のうち、3 分の 1 が女性ということです。この女性医師たちが妊娠・出産・
育児などを経て病院勤務を続けられずに離職してしまうことが医師不足に拍車をかけ
ているといわれているのです。
先ほども示したように、勤務医の労働時間は長いので、なかなか家庭生活との両立が
難しいのです。入院患者さんを主治医として受け持っていると、一般的には主治医がそ
の患者さんの責任を負わなければならないので、何か変わったことがあったら夜間や休
日でも対応する必要があります。このような勤務体制は、家事や育児を奥さんに任せら
れる男性医師であれば可能かもしれませんが、自分自身が妊娠したり出産したり、育児
や家事の大部分を担わなければならない女性医師にとって両立は極めて困難と言えま
す。妊娠中は働き過ぎると胎児にも悪影響が出ますし、疲れやすいので適宜休憩をとる
など仕事のペースダウンが必要です。また、出産のときは休まないといけませんし、出
産した後も、子どもの世話をしなければなりません。仕事があるからといって、子ども
たちだけを置いて家をあけるわけにはいきませんから、子持ちになると女性医師は第一
3
添付資料4
線から退かざるを得なくなることが多いと言われています。
医師不足だからといって医学部の定員を増やしても、3 人に 1 人が女性医師ですから、
彼女たちが仕事を続けられないようでは、医師不足は根本的には解決しないでしょう。
次に、医師の就業率のグラフを示します。女性は、卒後 6 年から 9 年ぐらいの就業率
が一番低くなっています。第一子出産の時期です。この時期には仕事から離れざるを得
ない女性医師が多いのでしょう。また、今回はお示ししていませんが、一旦復帰しても、
女性医師の場合は病院勤務から診療所勤務へ勤務先をシフトする人が多いのです。すな
わち、病院勤務医には戻らない人が多いということです。
女性医師問題は女性医師だけの問題ではなく、勤務医問題であると言われるようにな
ったのはこういうことです。すなわち、女性医師に限定された問題ではないと認識され
つつあります。家庭との両立という点では、男性も家事や育児に参加する必要がありま
す。
医療の質と勤務医問題
医師が、厳しい勤務環境から逃げるように去ってしまう現象がしばしば報道されてい
ます。救急、産婦人科、小児科などから医師が去り、残った医師たちの負担が増えてさ
らに勤務環境が厳しくなり、入院を扱わず外来だけになってしまったり、診療科そのも
のがなくなってしまったりする医療機関もあります。勤務医の劣悪な勤務環境は医療の
質を下げる要因になっています。
いまや女性医師問題は勤務医全体の問題であるという認識のもと、京都府医師会勤務
医部会でも熱心に話し合われるようになっています。また、質の高い医療という観点で
も、当直明けの寝不足の医師に診察してもらうよりは、きっちり休養もとって栄養補給
もした体調良好な医師に診察してもらった方がいいのではないでしょうか。医師といえ
ども普通の人間ですので、普通の生活を営みたいと考えてもおかしくありません。
【ディスカッション】
医師の勤務について
【会場 1】
医師の勤務の内容について見ると過酷に思えますが、どうやって体調管理をしている
のでしょうか。
【医師 A】
確かに、体を壊して本当に倒れてしまう医師もいます。当直室で冷たくなっていたと
いう医師の話も時々耳にします。過労死もありますし、過労自殺もあります。仕事を辞
4
添付資料4
めてしまう医師もいます。ぎりぎりまで頑張って、耐えきれなくなったら、厳しい職場
から逃げるように去ってしまい、もう少し勤務条件のいい勤務先を求めるようになりま
す。
【医師 B】
医師が1日をどのように過ごしているのかというのを、細かく書くと結構大変だとい
うことになりますが、他の職業、例えばサラリーマンもこたいへんだというのは同じで
はないでしょうか。
【会場 2】
不景気で、人員削減で人手不足で、どの業界でもサービス残業が日常化しています。
【医師 B】
医師もサラリーマンの方と同様に普通に働いているのですが、1 日 1-2 時間より長く
働いているだけで普通の生活を送りにくくなっている可能性があります。
【会場 1】
私の知り合いの医師が、夕方「ああ、ちょっとしんどいな」と言って帰って、家であ
んパンの袋を開けたまま倒れてそのまま亡くなられました。次の日、同僚が、遅刻する
ような先生ではないからと、見に行ったらそのままのかたちで倒れておられたのです。
女性医師の問題だけではなく、勤務医全体の問題というのはよくわかります。それで今
回参加させてもらいました。
【医師 B】
私は最近まで医師として働いていたのですが、今は製薬会社に勤めています。製薬会
社を見ていると女性はよい働き方をさせてもらっていると感じます。どこの仕事でもあ
る程度は女性が働く上での共通した問題があるとは思いますが、それでも医療の世界は
遅れていると感じます。
【会場 1】
命を扱う仕事をしていたら、職場を放って先に帰るというわけにはいかないですよね。
【医師 B】
外国ではどうしているかというと、夕方 5 時、6 時に次の医者がやってきてくれて仕
事をバトンタッチします。
【会場 3】
私はガス関連の会社に務めていたことがあります。規模の大きな会社だと、女性が働
きやすい環境が比較的整備されていますが、中小企業になるとなかなか難しいようです。
大企業はある程度資金力があるのでそういうことが可能なのかもしれませんので、企業
の規模というのも考慮しなければならないと思います。
また、ガス関連の話をすると、医師と同様に緊急の電話が入ったらすぐに対応しなけ
ればならないこともあります。
【医師 B】
5
添付資料4
業種の特異性というものを考慮しなければならないということと、ちょっとした工夫
で解決可能なところもあるのではないでしょうか。
もともと我々の「京都の医療を考える若手医師の会」は、医師同士でこういう問題に
ついて話しあうことはあっても、内輪だけの話になってしまっていて何も解決しないと
いうところからはじめた会です。医療は一見特殊なようですが、医師と患者さん、ある
いは患者になる前の一般の方々との話し合いによって微調整できるところがあるので
はないかと考えています。
【会場 4】
私は古い建物の時代から、京大病院にかかっています。老人が診察室に入ってくどく
どと枝葉の話をすることで時間がかかることで先生方の負担が増えていると聞いたこ
とがあります。私は、1 カ月の間に何があったかということをメモしておいて、余計な
ことを話さずに先生にお渡ししています。できるだけ先生の負担を軽くしたいと考えて
います。
【医師 A】
確かに、自分の状態を上手に伝えるのに慣れていない患者さんは多いですね。
【会場 4】
気の毒なくらい先生は老人に対して説明しておられます。そのために、診察時間がず
れてしまうことも多いと思います。
【医師 B】
例えば、午前中の外来の時間に患者さんが 30 人来られると、単純に割り算をすると
ひとり 5 分くらいの診察時間になってしまいます。患者さんひとりを 10 分、20 分診察
しようとすると外来の人数を制限しなければならなくなります。
外国ではどうしているかというと、実際にアクセスを制限しています。私はフィンラ
ンドに住んでいたことがあるのですが、フィンランドでは病院に行く前に、まず電話で
予約を取らなければいけません。電話で「今日は風邪をひいていますので受診したい」
と言うと、
「予約が入るのは 3 日後です」と言われます。もちろん、3 日後には、風邪
は治ってしまっていることもあります。フィンランドの人たちはそれで満足しているの
です。日本式とフィンランド式のどちらが正しいのかというのはわかりませんが、議論
する価値はあると思います。
【医師 A】
外来で患者さんひとりを 5 分では済ませるのは大変ですね。手術を前提にした初診に
は 1 時間ぐらいかかることもありますし。
【会場 4】
時には、予約時間より何分遅れたと言って、診察中にもかかわらず診察室に入ってい
く方を見たことがあります。日本でもマナーの悪い人がいますね。診察される先生は本
当に不愉快な思いをされていると思います。
6
添付資料4
【医師 A】
京都は全国平均からみると医師が多いという話をしましたが、京都大学と京都府立医
大という大学に所属する医師も多いのだと思います。京都大学だけでも 630 人ぐらい医
師がいるのですけれども、全員が診療をだけに携わっているわけではなくて、研究や教
育に携わっている医師も多いことを念頭においておく必要があると思います。
【会場 1】
確かに診療以外の仕事もしているだけかもしれないけれども、人数が多いのに仕事が
ハードだというのはやはり人が少ないのでしょうか。経営上、もうちょっとお医者さん
を雇えば状況は改善すると思うのですが、その経営母体の問題なのでしょうか。
【会場 4】
病院では勤務医の先生方はお忙しいということですが、教授くらいになりますと、外
来でもそんなにたくさんの患者さんを診察しておられないように見えますが。
【医師 A】
研究会に行ったりとか、教授会があったりとか、学生の講義をしたりなど、診療以外
にも教授としての仕事がまた別にあるのです。
【医師 C】
私は患者さん側に立つ機会があまりないのでよくわからないのですが、患者さんは、
自分がしんどくて入院しているときでも、必ず自分の主治医の先生に診てもらわないと
満足できないのでしょうか。例えば、今日自分の主治医の先生は夕方 6 時で帰るとして、
6 時以降に何か医師と話したいことがあるときに、同僚の医師や当直医が対応してくれ
れば皆さんは満足されるのでしょうか。それとも、自分の先生はずっと自分のために診
てくれていないと嫌だと思われるでしょうか。
【会場 2】
それは人によって違うと思います。私の身内が京大病院でお世話になって入院してい
たことがあるのですが、大部屋だと同じ病室に 4 人ぐらい患者がいますよね。すごくわ
がままを通している人と、何も言わずにいて、先生もほとんど顔を出さないような状態
になっている人もいました。病状にもよるのでしょうが、患者のキャラクターによって
先生の対応も違うように感じました。文句をよく言う患者には、十分すぎることをされ
ているような印象を受けました。
【医師 B】
それは本当かもしれません。言わないと損みたいに思っている人はいると思います。
【会場 2】
代わりの先生でも、ちゃんと診てくださって 1 日 1 回でも来てくださると、本人は安
心するんですね。忙しいときは、全然来てくださらなくても仕方がないのかもしれませ
んが、そういうときはどなたでもいいから来ていただきたいという気持ちはあるでしょ
7
添付資料4
う。それを言えない人もいれば、どんどん言ってしまう人もいます。
【医師 D】
患者さん側も、絶対自分の主治医が診てくれないと駄目だという方がいらっしゃる限
り、いくら病院がたくさんのお医者さんを雇っても、医者個人の負担はやっぱり変わら
ないと思います。医者側の勤務態勢を変えていくということと同時に、患者さん側にも
医者も 1 人の人間であるということを認識していただいて、ある程度シフト制で働ける
ような態勢ができないと、医者の過労というのは変わらないと思います。
【医師 A】
2 人体制にして、主に主治医が診察をして、副主治医もある程度患者さんのことを把
握して主治医のフォローもできるようにしたらよいのでしょうか。
【医師 D】
大学病院では、上級医と研修医という組み合わせで患者さんの診療に当たっているこ
とが多いのですが、研修医ではちょっと頼りないこともあります。副主治医が研修医で
は不十分だからといって、すべての患者さんにスタッフをふたり以上担当させるのは現
状では難しいでしょう。
【会場 5】
主治医が 1 人の患者さんを担当するという方針は病院が決めているのですか。
【医師 B】
病院側が「主治医があなたを診ます」と示しているから、患者さんの方としてはそう
いうものかと思っているだけなのかもしれません。
開業医さんの場合は、いつも診てもらっていても、夜間や休日は診てもらえないこと
がありますから、その時に診てもらいたいならば別の医療機関に見てもらうことになり
ます。つまり、医師の取り換えが可能なのです。そのときに診てもらえる病院に行けば
いい。勤務医に関しても、その時診てくれる医師に診てもらえば良いということになれ
ばいいのでしょう。
【医師 C】
たぶん、一般病院ではいろいろなパターンがあると思います。具体的にいうと、それ
ぞれの診療科の部長の裁量である程度変えられる部分があるように思います。
私が以前に勤務していたところでは、部長の考えで、手術を担当する医師も途中で交
代して食事を取るようにしていました。そのために常に複数で手術に入るようにしてい
ました。皆で患者さんの情報を共有するために、回診も交代で患者さん全員を診察する
ようにしていました。だから週に1回ぐらいは必ず自分の科の患者さんを全員は診察し
てカルテも読むことを徹底していました。一応主治医は決められていましたが、主治医
が休みのときでも他の医師が対応可能でした。そういう工夫が必要だと思います。
そのためには、コミュニケーションがよくないと難しいと思います。仲の悪い先生が
同じ科に複数おられると難しいかもしれませんね。
8
添付資料4
【会場 6】
私は子どもを保育所に預けているのですけども、そこで府立医大の医師と知り合って
お付き合いがありますので、お医者さんが不足しているとか、診療科が偏在の状況にな
っているような話を聞くことがあります。
短期的には、お医者さんが全体的に不足していて、偏在もしている。さらに女性医師
が増えているという状況もあり、それをどういうふうに解決していくかということだと
思います。国も自治体も、いろいろ対策を打ってはいるのだろうと思うのですけども、
決め手となる対策は、なかなか打ち出せてはいないのかなと思います。
一方で、中長期的にお医者さんはどうあるべきかというのは、また別の問題だと思い
ます。これから人口がどんどん右肩下がりの時代に入りますので、本当に増やしていく
ことが正しいのかどうかというのも、なかなか難しい問題なのかなと感じます。
それよりも介護など医療以外の分野と医療の、上手な連携で必ずしもお医者さんの負
担ばかりが増えないようなシステムを作れたらいいのにと思います。
女性医師問題について
【会場 7】
私は女性研究者としてグループに入っているのですけども、女性医師も自分たちと同
じように働きづらい環境にあるのか、同じような境遇にいるのか、と感じていました。
女性医師と女性研究者との連携というのはどこかに探れるのかなというところに興味
があります。
【会場 8】
私は、今年京大病院で手術を受けました。私は、15 年前にも京大病院でお世話にな
りましたが、今回 15 年ぶりに入院して手術前に女性の先生が挨拶に来られて外科の女
性のお医者さんということでびっくりしました。15 年前には女の先生自体が少なかっ
たように思うんですけど、もう時代は変わったのだなと思いました。さらに、お子さん
がふたりいてそれもまだ小さいというお話も聞いてさらにびっくりしまして、「子ども
さんどうしてはるんですか」と聞いたぐらいなんです。
男性の先生の中で女の先生にはお話がすごくしやすくて、術後に抗癌剤を飲むのか飲
まないかという話とかもいろいろとうかがうことができました。
【医師 A】
外科の女性医師はまだまだ少ないです。最初に診療科を選択するときに、先輩に分野
としては面白いけど、おすすめはしないと言われました。私も、後輩にはたぶんすすめ
られないなと思います。やはり長時間の仕事のため、家庭との両立が難しいです。
医師と患者のコミュニケーションについて
9
添付資料4
【会場 4】
先生のほうにも患者の好き嫌いはあるのではないでしょうか。
【医師 D】
私は医療におけるコミュニケーションの中でも、医師側の気持ちというものを研究し
たいと思っています。医師は患者の好き嫌いという感情を持ってはいけないと学生時代
から強制的に考えさせられているのではないかと感じています。人間には必ず好き嫌い
はあると思うんですけれども、患者の好き嫌いを感じてしまうこと自体、医者として駄
目だというふうに教えられているような気がするのです。
【会場 4】
でも、しんどいときにお医者さんにすがる気持ちで行くのに、「こいつは好かんな」
と思われたのではどうしたらいいのでしょう。
【医師 A】
医師として、患者に対して好き嫌いを感じてしまっても、それを乗り越えて対応する
訓練が必要だと思います。最低限のマナーというか、相手に不快な気持ちを抱かせない
最低限の配慮というか、立ち居振る舞いを身につける必要はあるでしょうね。
【医師 B】
先ほどの患者と医師の相性の話に関して言うと、グループで診ることのメリットもそ
こにあるような気がします。人間なのでどうしても相性が悪いこともあるでしょうが、
グループで診るようにすると、メンバーで補い合えそうです。私は、グループで診ると
いうことには結構メリットがあると思っています。
【会場 2】
ドクターとしては、患者さんを診るというのが一番大事な仕事ですよね。けれども、
今では京大病院でもすべてがコンピューター入力になっていますね。データがぱっと出
てくるのはいいと思いますが、科によってはちゃんと触って診察してくれる先生もいれ
ば、別の科では顔も全然見ずにデータを見て、「はい、どうも。はい。じゃあ、また何
曜日ね」。ほとんどこちらの顔を見ていなくて、それでいいのかと思います。
【医師 C】
実は、電子カルテの入力には時間がかかって面倒なんです。一方で、病院によっては
ほとんど医師がカルテを書かずに、助手が書いてくれるところもあります。そういう人
にカルテ入力を全部やってもらって、医師は患者さんの診察に専念するわけです。補助
者を一人雇って、その分医師にはたくさんの患者さんを診てもらった方が、経済的なの
でしょう。
救急の問題
【会場 7】
10
添付資料4
私は自然環境の豊かな方が好きなので、京都から大阪のちょっと田舎の方に住移り住
んだのですが、そうすると、子どもが夜中に熱を出すと、隣町まで行かないと小児科が
いないという医療環境になりました。都会からそう離れていないところなのに格差とい
うのは存在するんだなと、ちょっとびっくりしました。
【医師 B】
京都の救急に関しては、比較的充足されているようですが、その理由は、まさに医者
が多いからなのです。
規模の小さい病院には医者も少ないので、夜はアルバイトで医者を雇って、当直時間
帯の診察をしてもらうことになります。京都は大学に所属する医者が多いので、生活費
を稼ぐために当直のアルバイトにいくことが多いのです。あるいは大学院生なども、学
費と生活費のために非常勤医師としてアルバイトに行っています。救急病院に行ったら、
いつも若い医者ばかりだということを皆さんも経験するかもしれません。そういう意味
で、救急を中心とする医療崩壊は、京都市内ではあまり目立たないのでしょう。
【会場 3】
先ほど南北問題の話がありましたが、京都府北部のほうはどうですか。
【医師 B】
それが大きな問題です。救急領域では、3 時間以内にとか、30 分以内に処置を行わな
ければ救命できないとか重篤な後遺症を残すといった制限時間のある疾患があります。
例えば、脳梗塞を例にとりますと、重い脳梗塞になると、30 分以内に病院に着いて、3
時間以内に薬を使わなければ予後が厳しいのです。そういう重い脳梗塞の患者さんが病
院から遠いところでおられた場合、この患者さんを助けるためには、例えばヘリコプタ
ーを飛ばさなければなりません。
北部で、重症の脳梗塞の患者さんが出た場合、京都市までヘリコプターで搬送するよ
りも、隣接する他県でよりも近い病院に搬送したほうがいいでしょう。そういうネット
ワークが必要です。
病気にも、その時代その時代に重視される疾患があります。今までは脳梗塞を治療す
るための体制づくりを重点的に進めてきたわけですが、以前よりは脳梗塞もずいぶん治
る病気になってきました。いつか治療法や診療体制も確立し、これ以上の治療成果の改
善は望めないというようなプラトーに達する時代が来るのでしょう。このように一刻を
争うような病気が減っていく可能性もありますよね。そうすると、たくさんのお金をか
けてヘリコプターを配置してそのわずかな患者さんを救うべきなのかという議論にな
ると思います。
京都の南北問題は、縦貫道路や電車を使って京都市にアクセスする手段をもっと便利
にすることが普通の患者さんにとって重要だと思います。ヘリコプターでの搬送という
のは人目を引きますが、やはり日常的な医療へのアクセスも重要ですから。
北部にも、大きな医療機関がありますが、京大病院や府立医大病院でしか診ることが
11
添付資料4
できない疾患もあります。そういうときに、普通に車や電車でそれなりの時間で通院で
きるようにした方がいいと思います。定期的に診察を受けるためにはもっと交通の便が
よくなってほしいですね。
【医師 A】
京都から丹後の方に行くのでも、今は不便ですよね。京都から北部の方に応援の医師
が出向くとしても遠くて不便です。
例えば、徳島のある地域で、応援の医師の通勤の負担を軽くするために、住民の半分
以上の署名を集めて、JR四国の時刻表を改定したという話があります。
【会場 3】
すごいですね。
【医師 A】
JR の時刻表を改正させるような努力をして、医師を確保している地域もあるという
ことです。京都から医者が医師の少ない地域に出向くという形にせよ、患者さんが京都
の医療機関を利用するにせよ、今のままでは交通アクセスが悪いために、医師の偏在と
いう南北問題をさらに増悪させていると思います。
また、医師の少ない地域では、A病院には麻酔科医はいるが、産婦人科医がいない、
B病院には産婦人科医はいるが常勤の麻酔科がいないというような状況もあります。妊
婦さんが脳内出血を起こすと、脳外科と産婦人科と麻酔科が全部そろったところでない
と対応できないのですが、患者さんを遠く離れたより大きな病院に搬送するのも搬送中
のリスクがあります。そこで、必要な診療科の医師をひとつの医療機関に集めてチーム
を組んで対応してやりくりしている地域もあると聞きました。
【会場 3】
私の近所にはたくさん開業医の診療所があります。でも、私は 24、25 年前から京大
病院でかかりつけの先生がひとりいます。ひとりの先生は4、5年したら出ていかれま
すが、引き継がれる先生もまたいい先生なので、ずっと診てもらっています。
でも、知り合いがかかりつけ医から離れて京大を受診したときに「かかりつけ医にか
かってください」と言われて怒っていました。
遠方からお見えになっている方もおられますね。近くにお医者さんがおられないのか
なと思って見ているのですが。お年寄りも含めて、京大へ行きたがるというのは、何か
魅力があるんでしょうね。
【医師 C】
私も大学病院で外科系の科にいたことがあります。手術の後、経過がよくてあとはお
薬を出すだけとか、1年に1回定期的にCTを撮るくらいでよいという状態になったら、
京大病院をかかりつけにする必要はないと思うんです。近くの便利なところで、検査の
機器がそろった医療機関で診てもらうほうが本人にとってもこちらにとっても良いと
思うのですが、中にはやはり京大病院でなければ嫌だと言って京大病院にずっと通い続
12
添付資料4
ける方もおられます。やはり大病院志向でしょうか?
【医師 A】
京大ブランドということなんでしょうか?絶対京大でないと嫌だという人がおられ
て対応に困ることもあります。
【医師 C】
医療機関ごとにある程度分業しないと医療が成り立たないのは明らかなのですが、現
状では来られるのを断ることはできないシステムになっていますよね。
京大でないと診られない病気で京大に来られた患者さんでも、例えば、ちょっとした
皮膚の荒れについて皮膚科を受診したいと言われたらお断りできません。分業という点
で見ると、こういう場合一番よいのは近所の皮膚科の開業医へ行くことだと思います。
京大の皮膚科にも、京大でしか診られない患者さんがたくさんおられます。そういうと
ころに行くことになるわけですから。でも、患者さんの立場だと、せっかく時間かけて
京大病院に来たのだからついでに診てほしいというのもすごくよく分かります。
その辺、ルールがないのが問題なのではないでしょうか。患者さんにお願いされたら
医師も断れませんし、ますます外来が終わるのが遅くなってしまいます。京大病院に行
ったら待たされるといわれる一因はこんなところにあるんじゃないでしょうか。一応予
約はありますが、全然その通りに診察出来ていないので、患者さんにもまたご迷惑をお
かけすることになります。
【医師 A】
基本的には京大や府立医大は高度医療を実施する病院だと思います。まず開業医さん
にかかって、開業医では対応できない患者さんの場合には、そこで紹介状を書いてもら
って大きな病院に行くという流れをさらに強化しなければならないと思います。
ただ、医師自身は自分が悪者になるのは嫌なんです。先ほども言いましたが、基本的
にはお人よしですし、医師として患者さんにベストのことをしたいという気持ちはある
んですよ。一方で医療経済的な限界というのも日常感じていて、どんどん自分達の手で
国の医療費を増大させているのもどうかなと考えてしまうのです。
【会場 4】
開業医と京大病院の連携なんかはどんな感じですか?患者が勝手に、自分の近所の開
業医のところへ行くというかたちなのか、病院側から近所の開業医さんを紹介される形
なのか、どちらなのでしょうか?
【医師 B】
患者さんの数が多過ぎて、そこまでの連携は出来ていないと思います。京大病院側に
負担がかかりすぎるのではないでしょうか。そういう連携については京都市や京都府が
イニシアチブを取ってくれるのがいいのではないかと思います。たとえば、この地域に
は、こういう救急病院がありますというお知らせをホームページなどにすでに掲載され
ているのではないですか。
13
添付資料4
さっきのプレゼンテーションを見ていて、患者さんがインターネットを使って調べて
病院を探すというのは難しいのではないかと感じました。たとえば、京都市のホームペ
ージを見て、どこそこの病院が、どのような診療をやっている、というようなことをい
ちいち調べるなんてことはあまりされないのではないでしょうか?インターネットは、
使えば便利そうだけども、情報や機能が多すぎて逆に分かりにくくなっているかもしれ
ないと思います。
【医師 C】
若い世代は、結構使いこなしているという印象はありますが、ある一定以上の年代の
方には、難しいかもしれませんね。
【医師 B】
東京では、コンビニ病院というのができています。東京にも、ある程度医者が多いの
で、夜間の診療も可能なのだと思います。いつ来てもらっても構わないですというよう
な病院がやっぱりあったほうがいいのでしょうか。
もう一つ、最近はコンビニでも薬が買えるようになりましたよね。セルフメディケー
ションということだと思いますが、風邪くらいの簡単な病気だったら、自分で薬を飲ん
で治してくださいと。
コンビニ病院をどんどん広めようとすれば医療費が高くなりますね。一方で、自分で
コンビニで薬を買って簡単な病気は治してしまいましょうという方針を進めれば医療
費は抑制できる可能性はありますね、
【会場 4】
私のように年金生活をしていて、少ない手元の中で、急に診てほしいようなときにあ
まり高額ではなく、夜間や休日にも診てもらえるような、老人を主な対象にしたような
施設があったらいいなと思います。
【医師 A】
医師会に休日診療所というのがありますよね。夜間と休日も診てもらえるはずです。
【会場 4】
そこは遠過ぎて不便です。
それに、私は介護保険に申請して腰が痛いのでちょっとマッサージなどしてほしいと
言っても、対応してもらえないままです。それなのに介護保険料だけは上がっていくと
いうようなことを新聞で見ますと、これは不公平ではないかと感じます。体と心を診る
のはやっぱりお医者さんでしょう。
【医師 B】
それは違うと思います。心を診るなんていうのは、医者ではなくてもよいのではない
でしょうか。実際、医者にも心を診てもらいたいというところが、もしかしたら医者に
無理を強いているかもしれないんですよ。医者がほかの人たちと優れているところとい
えば病気を診ることであって、それ以外は普通の人間なんです。心を診るトレーニング
14
添付資料4
を受けているわけでもなく、そういうところまでカバーできないと思います。
【医師 D】
今のお話に根本的にギャップがあると感じたのは、患者さんは自分がどんな症状を医
者に訴えても、どういう病気かとか、自分がどういう気持ちになっているかをすぐに医
者はわかってくれると思っておられるのではないかという点です。
ただ、医学部で6年間勉強して普通に研修をしていても、腰痛ひとつとってもそう簡
単には直せない医者がほとんどだと思います。その理由のひとつは、いくら医学部の定
員が増えても医学教育も臨床研修のシステムも変わっていないことです。そんなに能力
の高い医師がたくさんいるとは思えません。
【会場 4】
昔のお医者さんには、手を切ったのを診てもらって、赤チンかヨーチンを塗ってもら
っていました。
【医師 B】
今は赤チンを塗っただけでは医療をやったことにならないということになってしま
うのですね。医療は確実に進歩していますから。
【会場 4】
あまりにも細分化、専門的に分野が細かくなりすぎていているということですが、そ
れでも以前に勉強されたことを頭に入れて、患者の話を聞いてくださると良いのですが。
【医師 B】
昔のお医者さんたちというのは、今ほどの技術はなかったから心でカバーしていたと
いうところもあると思うんですね。
【医師 A】
実際、昔に比べると勉強しなければならないことがものすごく増えています。単純に
医学部の教科書も明治時代からすれば今は何十倍にも増えて、身につけなければならな
い技術も増えて、トレーニングに時間がかかるようになったと思います。すべての分野
をできるようにしようと思ったら、全逆に何もできない医者になってしまうのではない
かと思います。
【医師 B】
例えば、単純に考えても循環器疾患で心臓カテーテルをするのだったら、そればかり
毎日毎日やっている医者の方が上達するでしょう。
【医師 C】
患者さんの要求も、昔に比べるとやっぱり上がっているのだと思います。昔は治らな
い病気がほとんどでしたから、これでお医者にかかっても駄目だったら、しようがない
と諦めてもらっていた部分があったと思うんです。今だったら、例えば、ある総合内科
で、何でも診られる先生が診察してもうまくいかなかったときに、特定の分野の専門の
医師が新しい技術で治してしまうという可能性を求めてしまうと思います。そして、最
15
添付資料4
初に診てくれたお医者さんに対してやっぱり恨みを持ってしまうと思います。
初めから専門医に診てもらっていたら治ったかもしれないと思って納得できないし、
後悔されるんじゃないでしょうか。
【会場 5】
私の知り合いで、ご自身もお医者さんなのですが、あちこちの診療科にかかっても
「様子を見ましょう」「データでは問題がありません」といわれても症状はよくならな
いと愚痴を言っておられる方がいます。何か各科でのミーティングというか、カンファ
レンスというか、情報をつなぐ場があるといいのではないかとおっしゃっておられます。
【会場 4】
診療科を超えた横のつながりですね。
【会場 5】
人数とか時間的に、忙しいというのはよくわかりますが、そのへんの環境がもうちょ
っと改善されるのと同時に、患者さんの一つ一つの症状を、もっと丁寧に診ていく必要
があるのではないでしょうか。
【医師 A】
外科系は手術という目標があるので、手術前に手術に関する診療科が集まって、画像
を見ます。放射線科が来て、内視鏡をしてくれた内科の医者が来てという感じで集まっ
て、治療方針の最終確認をします。内科系の方が診療科を超えた連携は難しいのではな
いでしょうか。いろいろな不定愁訴があって、はっきりとした疾患名を当てはめにくい
症例も多そうですし。
【医師 D】
それは偏見ですね。
【医師 A】
偏見ですか。外科が手術するためのカンファレンスというのは、目的が手術とはっき
りしているので。
【医師 B】
整形外科の医者が外科のカンファランスに集まるわけでもないでしょう。おなかが痛
いと思っていたら、実は骨格系の疾患だったというようなこともないとは限らない。
【医師 D】
医師個人の良心にもよると思います。自分の担当の患者さんが自分にはよくわからな
いけれどもすごく苦しんでいるような場合、他の科の医師に電話して、細かく相談する
ようなことをするかどうか、その一歩を踏み出すかどうかだと思います。
【会場 5】
でも、そこまで抱え込めますか。いまの労働環境はとても厳しいんですよね。
【医師 D】
そうです。医師にとってはなかなか難しいところなんですが、患者さんはそこまで求
16
添付資料4
められているわけです。そういうところが患者さんの満足度につながっているんだと思
います。ただ、医師が、たくさんの科に関わられている患者さんの全ての問題をひとり
でを解決しよう思うと、かなりの手間をかけて色々中のドクターに相談しないと全体像
を把握できないと思います。実際にそこまでやっている医師は精神的には持ちこたえら
れないと思うんです。
【医師 B】
患者力という点でみれば、いくら言ってもこの医者には私の病気は治せないのではな
いかというのは、第一印象でわかるのではないでしょうか。原因が何かというのをすぐ
に調べて欲しいのではなくて、とにかく今痛いのを何とかしてくれないような医者はあ
まり良い医者ではないのではないか、とか。
【会場 4】
患者もお医者さんを見ています。
【医師 B】
このへんは好き嫌いとか相性もあると思いますね。
【会場 5】
総合診療というのは意味があるのでしょうか。
【医師 B】
京都大学からはなくなりました。
【医師 D】
2000 年ぐらいにできたところで、いまも残っているところは少ないと思います。実
際は、大学病院がそのような医者を育てられないので。
【医師 A】
家庭医とか、総合医を作っていこうという動きはあると思うんですよ。
【医師 D】
アメリカのものをそのまま直接輸入してできるというものではないと思います。アメ
リカには上級医の下に必ず二人以上の医師がいて、さらにその下に医学生が何人かいて
というピラミッド型のチームがあります。日本では個人が別々に走り回っていますから、
背景が全然違います。
【医師 A】
日本とアメリカではバックグラウンドが全然違うんですよね。文化が違うところに、
システムだけをぽんと持ってきても、たぶん全然根付かないと思います。
一般人の救急参加
【会場 4】
ずいぶん前に京大病院の救急の入り口のあたりを通りかかったときに、出産前の若い
17
添付資料4
奥さんがうずくまっているのを見かけたことがあります。そばにいたご主人が、ぼうっ
と立っているだけなので、どうされたんですかと、私は尋ねました。すると、もう動け
なくて、お腹が張って、破水しかけているとおっしゃったんですね。その横を人がたく
さん歩いているのに誰も声をかけようとしません。私は守衛室に入って、早く看護婦さ
んを呼んでくださいと声をかけて産婦人科へ連絡してもらいました。なかなかお迎えが
来なくて、しばらく待っていたら慌ただしく看護婦さんが来られました。
【医師 A】
そういう場合、通りかかっても関わらない人が多いですよね。そもそも、日本には、
「善きサマリア人の法」がありません。災難に遭ったり急病になったりした人を救うた
めに無償で善意の行動をとった場合、たとえ失敗してもその結果につき責任を問われな
いという保証がないんですね。例えば、私が新幹線の中とか、飛行機の中で、誰か急病
人が出て、何か診察して、治療して、うまくいかなかったときに、訴えられたら、たぶ
ん負けるんですよ。それなら敢えて医師であることを名乗り出ないほうが良いのではな
いかということになってしまいます。
【医師 B】
医者が普通の人よりできることといえば、誰かが何かの病気のときに何をするべきか
を一応心得ているところです。おなかを抱えて痛がっているとか倒れている人がいても、
他の方々が見て見ぬふりをする理由は、怖いからです。何も手だてがないからなんです。
血を見たらびっくりするとかいうのと比べると、われわれ医師は一応そういう状況に慣
れているといえるでしょう。
【医師 A】
自分が何も手立てがなくて何もできそうになかったとしても、人を呼ぶというのが大
事ですよね。われわれ医師でも、たぶん一人ではなかなか倒れている人を助けることは
難しいので、まず人を呼ぶということが大事だと思います。
【会場 3】
私は CPR とか、ファーストエイドを一般の方々に教える仕事もしているのですが、倒
れている人を見掛けたときに、通り過ぎてしまうというのには、意識の問題もあると思
いますが、義務教育の中でも教えられることが無くなっていると思います。
【医師 A】
もっと積極的に関われというふうに教育していくべきでしょうね。教育という点には
われわれもすごく注目していて、義務教育の時点で、そういう心肺蘇生も大事だし、い
ろいろ健康に関すること、生活習慣病に関する情報を教えていった方が、効果的だと思
います。心肺蘇生も、子どものうちからするのが当たり前になっている方がその場に遭
遇したときに自然に体が動くと思います。あるいは、生活習慣病に関しても 40 歳過ぎ
ておなかが出てきてから生活を改善するより小さいうちからそういう生活習慣を避け
るような教育をした方がいいのではないかと思っています。
18
添付資料4
【会場 7】
私は田舎に住んでいて、すごく高齢化が進んでいるのですけれども、二人の老人が私
の目の前で倒れたという経験をしたことがあります。
私は大学院まで卒業したんですけれども、医療に関する知識はほとんどありません。
そういう誰かが倒れた場面に遭遇したときに普通に対処できるような教育を受けたか
ったと思います。また、自分の子どもにも、そういった場合にどういう対応をすればい
いのかという基本的な情報を与えられるような教育が必要だと感じました。
代替医療と医師
【会場 9】
私はアロマセラピーとつぼ押しの仕事をしているのですけれども、心の面と体の面と
いうのが両方必要だと考えています。体だけほぐそうとしてもほぐれないところも出て
きます。
【会場 8】
今年手術を受けた後、抗癌剤を飲むか飲まないかという選択をしなければならなかっ
たのですが、先生のお話では飲んでも飲まなくてもいいという状況だったので非常に悩
みました。結局副作用があって3日でやめてしまったのですが、でも何か飲みたいなと
思っていました。何も飲まないというのは正直なところ、何かすごく不安だったんです。
それで、府立医大病院に漢方外来というのがありまして、初めに行きますと、4時間
待ちの、ものすごい人気なんです。
【医師 A】
京大にも漢方外来がありますよ。
【会場 8】
後で聞きました。それでも処方していただいた薬が体質にぴたっと合いまして、今こ
うやって元気に過ごしています。
【医師 B】
われわれの会では、漢方はこれから重要だと考えています。僕も実を言うと、最初は
漢方は嫌いな方でした。漢方も代替医療のひとつなので。代替医療の領域にはお金もう
けをする人たちが多いので、基本的には嫌いなんです。けれども、本当に効く代替医療
というものを見つけていこうとは思っています。
【医師 A】
代替医療にも怪しいのがありますよね。ついこの前もホメオパシーは効果がないとい
うことで問題になって報道されていました。
私も報道されたところしか知りませんが、報道によると、助産師がビタミンKを新生
児に飲ませないで、ホメオパシーといって砂糖玉みたいなのを飲ませただけだったので
19
添付資料4
す。頭蓋内出血が起こって赤ちゃんが亡くなってしまったそうです。代替療法の中にも
まったく効果のないというか、むしろ害をなすようなものもあるので注意してみていか
なければならないと考えています。
【会場 9】
人によりますよね、やっぱり。どういう目的でやっているのか私の業種の中でも疑問
に思うこともあります。
【医師 A】
商売第一の人もいますよね?
【会場 9】
商売だけでなく、体をよくしていきたいと考えている人も多いです。
【医師 A】
一応私達は医学教育の中でエビデンスを重視するように教えられています。漢方は、
疾患は同じでも患者さんの状態に応じて処方を変えるオーダーメイドのようなところ
があるので、西洋式の科学論文にはなりにくく、経験論的に使われているところがあり
ます。西洋的な科学的根拠をどこまで漢方に対して求めなければならないかというのも、
難しい問題です。
エビデンスがないと言って医者の中でも漢方が嫌いな人も結構います。われわれ医師
の中でも、意見の相違があります。
【医師 B】アメリカのようにエビデンスを求めすぎてしまうと、漢方も飲めないという
ことになってしまいます。
【会場 10】
私は、もともとアロマセラピーとか、ボディーワークとか、精神的なサポートという
のを一般のお店で仕事としてやっていたことがあって、お医者さんは嫌いでした。風邪
ぐらいでお医者さんに行くのはもったいないと思うような人でした。
その後、大きな病気をしてそんなことも言っていられない状況になって、すごくお医
者さんにお世話になったときに、本当にお医者さんや看護師さんたちが一生懸命やって
くださる姿を見て、すごくありがたいと思いました。
その体験から、普段お医者さんはどんなことを考えて、患者さんたちのことを思って
くださっているのかな、お仕事をされているのかなという興味もありました。また、医
師不足の問題をどうしたらもっとお互いが気持ちよく医療を受けられる環境ができる
んだろうと前から思っていたので、今回のイベントに参加しました。
私自身は、コンビニ診療所も、コンビニでお薬が買えるという状況も望んでいません。
そういうところに財政がむけられるのだったら、もう少し、代替医療の方にも力が入れ
ばいいなと思っているんです。
というのは、私が入院して退院するとき、先生に「これから私はどんなことに気を付
けたらいいんですか」と聞いたら、「何もありません。好きなものを食べて、好きなよ
20
添付資料4
うに、普通の生活をしてください」と言われたんですけれども、私の病気は、生活習慣
病のひとつだったので、何もしなくてもいいということに疑問を感じました。生活習慣
病であるならば、今までの生活を変える必要があるのに、何もアドバイスがないという
ことは、どういうことなんだろうと思ったのです。自分で、自分の病気に関する情報を、
インターネットや本で調べたり、人から話を聞いたりしてかき集めました。その中で、
これはよさそうかなと思うことを実践してみました。
お医者さんの治療が終わった後、どんなふうに生活をしていけば、自分の健康を保っ
たり、向上させたりすることができるのかというところに力を入れていただければ、患
者の不安は解消されて、ちょっとしたことでお医者さんのお世話にならずに済むと思い
ます。病気になる前や、病気が終わった後にも相談できるところが充実してくればいい
なと思いました。
【医師 B】
今のご意見には実に賛成です。医者はどちらかというと、「〇〇をしてはいけない」
ということが多いですよね。一方で最近は、テレビやインターネットで、「これを食べ
たらいいですよ」、「〇〇をしたらいいですよ」、というような情報が流れてきます。そ
ういう方法論のほうが受けるようです。医者はまだ、その点に関して無頓着だと思いま
す。われわれ医師も代替医療に無頓着だったのでしょうが、本当に使えるものを試して
いこうと自分では思っています。
漢方は、自分で使ってみてよく効いたし、大丈夫だったから、みんなに薦めるように
なっています。肩凝りに効くというバンドも今自分で試しているところですが、実を言
うと、効果を理論的に説明できないので、とりあえず試すしかないんですが。
【医師 A】
代替医療をどこまで許容するかについては議論が分かれるところじゃないでしょう
か。
【医師 B】
いや、医者は「してはいけない」とは結構言うのに、では、「こういうことがいいで
すよ」というのに答えるだけの能力がないので、そのへんが患者さんや一般の人たちと
の気持ちと乖離しているところじゃないでしょうか
【医師 A】
みんな、何かしたいんですね。何かしていないと安心出来ないんですね。
【医師 B】
やっぱりみんな健康になりたいと思っているんだと思う。
【医師 C】
疑問に思ったんですけれども、医学も科学の一分野なので、根拠のないことは言わな
いということはあるのではないでしょうか。科学者としての医者に期待するのか、ある
いは、医者として経験を積んできて、多少、不確かでもいいから何か言ってほしいとい
21
添付資料4
うことを期待されるのかというのか、といえば、両方を同時に求められてしまっている
と思います。
【医師 B】
我々医師というものは、その一方をまったく見逃していたわけです。
【医師 C】
そうですね。でも、分かりにくくないですか。
【医師 B】
でも、さっきおっしゃったように、生活習慣病の治療で入院していたのに、生活に関
しての注意やコメントがないというのは、やっぱり駄目じゃないでしょうか。
【医師 C】
生活習慣病といわれる病気でも、それがどうして起こるのかというのは、実は分かっ
ていない部分がたくさんありますよね。だから、あまりにいろいろと気を使い過ぎて生
活するのも、どうかと思うところもあります。
【医師 B】
普通にしていればいいって言われても、どういうことなのかよく分からないですよね。
何を食べて、どうやって仕事をして、どの程度活動するのが普通なのかというのは具体
的に示さないと患者さんには多分わからないでしょう。
【会場 4】
個人差もありますからね。
【会場 10】
私が思っているのは、代替医療についてお医者さんがこれがいい、これはダメと言う
にはお医者さんの専門知識の幅が増え過ぎてしまって、大きな負担だと思うんですね。
そうではなくて、お医者さんの手が離れたら次はこの機関に行ってくださいというよう
な行き先があればいいと思います。
【医師 C】
そうですね。
【医師 B】
それは面白いですね。
【会場 10】
そこのやっていることを、お医者さんがあまりにも否定し過ぎてしまうところもある
と思います。例えば、運動がいいと聞いたから、患者さんが一生懸命運動をしようと思
っているのに、「そんな運動をしても意味がない」とお医者さんに言われたら、患者と
しては、困ってしまいますよね。
【医師 C】
そうですね。でも、何かそこで、不安に付け込んで、悪い商売をする人が多過ぎるん
ですよ。
22
添付資料4
医療コミュニケーション~医療情報をわかりやすく伝える
【会場 11】
私は、個人的に、医療情報を、どのように一般の人に伝えればいいかというのを、ち
ょっと模索しています。
【医師 B】
なるほど。素晴らしい試みだと思います。
【会場 11】
家族がひとり今年の夏に大腸癌になって、今も治療を受けている最中です。そこで初
めて、一般の人が医療情報を収集するのも結構大変だと気づきました。インターネット
も私は使えるにしても、親の世代になるとなかなか難しいようです。
医療情報も、すごく氾濫していると思いますし、必要としている人たちに正確で分か
りやすい医療情報をどういうふうに伝えればいいかというのを、今考えています。
例えば病院の受付や待合室に、いろいろな冊子が並んでいるのをよく見かけますが、
そういうわかりやすい冊子病院が作って患者さんが見るというスタイルがいいのか、他
にもなにか方法があるのか考えているところです。
この京都の医療を考える若手医師の会のホームページを見たときに、子どもへの教育
とか、情報の伝え方というものを書かれていたので、その辺りのお話も聞ければと思い
まして、今日は参加させていただきました。
【医師 A】
なるほど。大腸癌など、診療に関するガイドラインというのが、研究会レベルで決め
られていまして、それを患者さん向けに書き下ろした書籍が市販されています。
ただ、それが本当に分かりやすいものであるかどうかという点は一度検証しなければ
いけないと思いますが、そういうものが市販されているので一読の価値はあるでしょう。
さらに、病院独自の説明書や冊子などもたくさんあります。そういうものが何種類もた
くさんあった方がいいのか、あるいは、ある程度お墨付きの付いたものが基本的に一つ
だけあればいいのか、どちらがいいのかはわかりませんが。
【医師 B】
私が大腸癌のガイドラインを勉強し直さなければいけないときにインターネットで
調べたら、本になっているから買えと書いてあって、困ったことがあります。
【医師 A】
私が聞いた話では、治療前の患者さんに、病院の売店に患者さん向けの診療ガイドラ
インを買ってもらっているところもあるそうです。
【医師 D】
DIPEX(注:健康と病の語り http://www.dipex-j.org/)は、ご覧になりましたか。
23
添付資料4
大腸癌ではありませんが、乳癌と前立腺がんに関して患者さんが自分の体験や気持ちを
語っている動画をインターネット上に「患者の語り」として公開しています。もともと、
イギリスで始まったもので、あちらでは様々な癌を扱っています。いろいろなことに関
して、専門家がきっちり監修して公開可能なもののみをアップしてあります。
また、きっちりと検証された情報が無料で手に入るというのはまだまだ日本には少な
いと思いますが、英語が読めるなら、アメリカのガイドラインはすべて、無料で見られ
るようになっています。
新しい臨床研修制度について
【会場 6】
新聞紙上で、医師不足になっている原因として、平成 16 年に始まった臨床研修制度
が目の敵にされていますが、若いお医者さんは、あの制度を実際にどう思っておられる
のでしょうか。昔の医局制度に戻るのが、本当に正しいと思っておられるのでしょうか。
【医師 B】
簡単に言うと制度自身はもしかしたら理想的かもしれません。しかしながら、制度と
いうのは、理想的な制度に必ずしも実効性が伴わないこともあるわけですね。医者同士
で懸念をしているのは、モラトリアムの時間になってしまっているのではないかという
ことです。研修医の2年間というのは、昔は一生懸命働かされることによって研修を積
むという制度だったのですが、それは医局制度のストレスがあってのことだったと思い
ます。
【会場 6】
低いところへ、やっぱり流れていくのかもしれないということですね。簡症例数が多
いところで経験を簡単に積みたいとかいうことで、若い医師が都市部の病院に流れてい
ると考えて良いのでしょうか。
【医師 D】
ただ、医局制度に戻った方がいいとは誰も思っていないでしょう。
【医師 B】
医局制度がいいわけはないと思います。新しい臨床研修制度はゆとり教育と似ている
と思います。ゆとり教育というのは理想的な教育です。実効力がないという意味で駄目
だったと思います。同じように、今の臨床研修制度というのは全ての科を診られるよう
になることを目標にしていて、それは皆が求めている理想ではありますが、実効性が乏
しいと思います。
【会場 6】
昔の医局制度に比べたら、今の制度のほうが若いお医者さんにとってはいいのでしょ
うか。
24
添付資料4
【医師 B】
医者にとっては、よいでしょうが、患者さんにとっては、よくないと思います。
【医師 A】
2、3 カ月で診療科をくるくる交代していくので、あまり身に付かないでしょう。
【会場 6】
そうですね。スーパーローテーションですね。やっぱり密度が違うということですか。
【医師 B】
責任がないということもあります。各科において、2 年間の内に、2、3 カ月しかロー
テーションしなかった科があるわけです。そんな短期間では責任を持って患者さんを診
ることができないのではないかと思います。
介護・死生観について
【会場 4】
私は一人娘と同居しておりますが、この先年をとったら自宅介護になるのかとか、あ
るいは施設に入って自分の死を全うするのかとか、いろいろと考えるようになりました。
【医師 B】
私もうちの妻もそういうことを考えています。やっぱり人はひとりでは生きていけな
いということです。
【医師 A】
そうですね。家族が大事だってこともいえますね。また、死生観というのは人によっ
て違うので、なかなか難しいんですけど、ただ、社会全体として、最近「人間は必ず死
ぬ」ということを忘れがちなのではないかと感じています。
医者にかかっていたら死なないだろうとか、病院にかかっていたら黙っていても全部
の病気を診てもらえるだろうという漠然とした期待感を持ち過ぎなのではないかと思
います。何らかのかたちで絶対「死」という終わりは来るので、毎日考える必要はない
と思うんですけど、時々は自分の死生観について考えていただくことも必要だと思いま
す。
【医師 D】
私はアメリカで 12 年間医師として働いていて、ずっとプライマリーケアで 1000 人ぐ
らいの患者さんを受け持っていました。アメリカではコミュニティーのソーシャルワー
カーの能力がとても高く、様々な働きをしていました。
いろいろな職種のコメディカルがアメリカにはたくさんいて、たとえば自分で車を運
転してお薬を取りに行けない患者さんに、ソーシャルワーカーと連絡をとりながら薬局
に行ってお薬を届ける担当の人がいるといった制度が充実していました。医療を支える
コメディカルの制度は、日本ではすごく遅れていると思います。
25
添付資料4
【医師 A】
家族はたしかに大事ですが、日本では看護や介護を家族制度に頼り過ぎという一面が
あるということですね。
【医師 D】
そうですね。自宅で死にたいと希望しても、諸外国より日本の方が難しいだろうなと
思います。
【会場 4】
私のように家族と同居している場合は、基本的にその家族が介護をするということに
なっているんですね。例えばお弁当をとりたいと思っても、「介護保険を持っています
か」と聞かれるんです。少ない年金の中で、一生懸命どうしたらいいかと考えています。
【医師 B】
ちょっと話が広がってしまうかもしれないんですけれども、ボランティアの力も日本
では弱いと思います。もう少し社会に根づいていく必要があります。
日本はどうしても医療は医者が中心になってしまうのですけれども、本当はもっと役
割を分散してもいいのではないでしょうか。医者にばかり多くを求めすぎてうまくいか
なくなっているのが現在の日本の状況だと思います。ボランティアも、ある程度制度に
組み込んで、その代わりに報酬も得られるような形にした方がいいかもしれません。
【医師 A】
議論は尽きないのですが、お時間がきてしまいましたので、今日はお開きに致します。
積極的な議論をありがとうございました。また別の機会にお会いできることを楽しみに
しております。
26