CONTENTS 「万里の長城(幕田峪)」北京 KT 随 想 多数決原理デモクラティズムと食品のおいしさの行方? …………………………………………………………… <山口静子>… 268 シリーズ解説 日本の伝統食品(第2回) かまぼこ… ……………………………………………………………… <阿部洋一>… 270 シリーズ解説 果実とその加工品の話(第8回) 果実・果汁飲料と機能性成分(6) 熱帯果実,特にバナナの機能性 …………………………………………………………… <高田式久>… 277 連載エッセー:食べもの随想 世界最高長寿 ―日常生活と遺伝子― ………………………………………………………… <田村真八郎>… 286 海外技術・マーケット情報 食品・飲料容器用ラベルの新製品……………………………………………………………288 高齢者向け食品・飲料の開発…………………………………………………………………290 消費期限:食品安全と廃棄物減量のバランス………………………………………………293 食物繊維に富む食品の進展……………………………………………………………………295 食品製造における安全で効率的な“色”の効果………………………………………………298 フルーツジュースの栄養と健康………………………………………………………………300 2012年度新製品トップ10……………………………………………………………………302 2012プロセッサーオブザイヤー:Chobani 社のサクセスストーリー……………………304 業界トピックス:家庭用ココア,スティック伸長も微減で着地…………………………… 307 特別解説:光の指紋による食品の鑑別・定量… ………………………… <杉山純一>… 308 特別レポート:第1四半期の低アルコール飲料市場動向…………………………………… 316 技術用語解説:押出コーティング,コイルコート,静電塗装,ラミネート… …………… 319 業界の話題…………………………………………………………………………………………… 320 今月の統計…………………………………………………………………………………………… 324 最近の技術雑誌から………………………………………………………………………………… 326 野菜・果物を巡って(第五十三話) 思い出のホームリキュール…… <吉田企世子>… 331 缶詰技術研究会 http://kangiken.net/ 随 想 多数決原理デモクラティズムと 食品のおいしさの行方? やま ぐち しず こ 山 口 静 子 (味覚と食嗜好研究所 代表) 酒,ワインなど醸造の大家,戸塚昭先生の今年 ここでは食品の甘味化,高脂肪化,その結果と の賀状に「昨年は日本酒の原料米,日本ワインの してのうま味への影響についてみてみよう。甘味 原料ブドウ,ともに品質に恵まれ,今後,市場に は炭水化物,うま味はタンパク質のシグナルとい 登場する日本酒,日本ワインの酒質が楽しみです。 われる味で,3大栄養素の摂取バランスにも繋が しかし,品質よりも価格に比重を置く市場と飲食 る問題である。甘味化については,本来甘い菓子 の動向をみると,日本人の誇りとすべき《飲酒文 類の甘味はむしろ弱まったが,果物は酸味や微妙 化》を破壊し,《酒道》を過去のものとしていま な味は抑えて甘味一辺倒となり,野菜は本来甘く す。近い将来,《正体不明》な廉価な外国産酒類 ないトマトをはじめピーマン,枝豆などで甘味を が日本市場を席巻しないうちに,各種酒類に関し 増強したものが増え続けている。その他漬物,ハ ての《酒造法》の制定が待たれます」とあった。 ム・ソーセージなど枚挙に暇がない。甘味は本能 これは一般の食品にも思い当たることで,市場に 的に好まれる味であるため,食べ慣れないものや は世界の食品が益々溢れ,先端技術を駆使した膨 クセのあるものに添加して食べやすくするのはよ 大な数の新製品が開発され鬩ぎあうなかで,真に くある手段である。世界でもっとも消費量の多い 価値あるものが生き残れなければ,《食文化》は 野菜であるトマトは青臭く独特の味で,ヨーロッ 破壊し,《食道》は地に堕ちることになる。 パに伝わった当初は敬遠されたが,アメリカで砂 せめ わが国の食文化の特徴を振り返ると,季節感を 糖を加えてケチャップにされて世界に広がったと 重んじ,新鮮な素材の持ち味を生かして食べるこ いわれる。人参も人参臭さが減り甘味が強くなっ とにあった。色,味,香りは自然を尊び,油脂を たために子供にも好まれるようになった。これは 多用せず,繊細で奥深いものをよしとし,献立, 嗜好形成の動機付けという意味ではよいが,嗜好 食器,食空間まで,互いに他を引き立て合うこと が形成されたときはむしろ甘味は邪魔になる。例 を旨としてきた。素材を引き立てる「だし」は和 えばコーヒーや紅茶も嗜好が定着した今日ではそ 食文化の真髄をなすもので,うま味や相乗作用の れ自身の味や香りを楽しみ,砂糖を加える人は少 発見が日本人であったのも,和食文化と無縁では ない。 ない。また山菜の苦味やお茶の渋味などについて 何でも甘くすることは味覚の発達を幼児段階に も独特の嗜好を形成してきた。こういった伝来の とどめ,それに迎合することで,食品本来の持ち 食文化を支えてきた日本人の食嗜好はどう変化し 味を失うことに繋がることになる。実際,筆者の ているであろうか。 調査では「最近の野菜の味は概して単調で深みが 食品と容器 268 2013 VOL. 54 NO. 5 人とない人とがいる。多数決原理で評価を行いそ なくなった」,「本来の野菜らしさがなくなった」 「微量成分が薄くなっているものが多いような気 れに従って食品を生産する限り,食品は分かりや がする」に対して高い同意率がみられ,そう思わ すくて単純な甘味化や脂肪化に流れ,うま味や微 ない人は皆無に近かった。単調な味を補うために 妙な味は顧みられず,食べ慣れることによって嗜 甘味を付与するなら,甘味はうま味をマスクする 好が獲得できる,ほろ苦さや香りはない方向に向 ので逆効果である。高級果物を菓子のように甘くす かうことは構造的に避けられないことが分かる。 では一般的にいって好ましい味,風味というの ることが正道といえるのかも考える必要がある。 高脂肪化も顕著に進んでいる。霜降り和牛では はいかなるものなのか。そのフィロソフィーを提 粗脂肪含量が69% のものが実際に最高の等級格 唱したのは半世紀以上前の米国の A. D. Little フ 付けで売られていて評価してみたが,脂肪過剰で レーバー研究所である。それは少数の特性の適度 圧倒的に好まれなかった。脂肪が限度以上に増え な強さの快いインパクトが感じられること,高度 ればタンパク質が減りアミノ酸系のうま味が減る にブレンドされた豊かなフレーバー(味)が口 のは当然で,代表的なタンパク質食品が脂肪食品 いっぱいに広がること,突出した不快な特性がな になることは栄養学的にみても好ましいものでは いこと,よい後味があること」である。ブレンド ない。マグロの大とろ,養殖魚の脂肪含量も顕著 というのは 「殆どがどの物質によるのか区別はで である。これも甘味の場合と同様に,脂肪が本能 きないが,多くの成分が存在することが感じられ 的に快であるため,霜降り牛やマグロではそれを るもの」 であるという。例えば人参なら適度な強 強調すれば高価とみなされるためであるが,ある さの主役の甘味があり,それ以外にコーラス隊の べき食品としてのバランスを越えていることは確 ように無数の弱い味の微量成分が豊かに存在し, かである。 味全体が融和して和音のように広がることだとい そこでどういう人が野菜の甘味を高く評価した う。それはすべての成分の味が他を圧することな かを調べると,野菜そのものをあまり好まず,独 く互いに他を生かし合うときに引き起こされるも 特の香りや,ほろ苦さを嫌い,うま味や微妙な味 のである。言葉で理解するのは難しいが,実際に に対して感受性の低い人が多かった。また,昔な 経験すればこれは普遍性のある真理であることが がらの栄養価も高い人参と大量生産の5寸人参, 分かる。これは和食文化における互いに他を生か 伝統的な三浦大根と通常の青首大根を比較すると し合うという根本思想とも一致している。ある味 大量生産品のほうを好む人が多かった。牛肉につ だけを安易に強調すれば,その味が他の味を抑制 いては脂肪の多いものを好む人は味や風味よりも し,この感覚は起こらないのである。 やわらかさを重視し,脂っこさとうま味を混同す ではなぜバランスを崩してまである味を強調し る人が多く,脂っこさの少ないほうを好む人は味 たり本来その食品にない味を付与したりしなけれ や風味を重視し,単にやわらかいよりも噛みごた ばならないのかであるが,その理由の1つは競合 えのあるものを好み,うま味と脂っこさを識別で 品が生き残るには他との「差別化」が求められる きる人が多かった。 からである。そのためには好ましいといわれる特 そして重要なことは,多数決原理で平均を取る 性を誰でも分かるように強調することが有効では と有意差がつかないか,または甘味の強いものや, ある。しかしよい味,風味や和食文化の根本原理 脂肪の多い方が高く評価されてしまうということ は決して突出せず互いに他を生かし合い共存共栄 である。生産者からしてもそれでよければ好都合 することなのである。無益な競争のジレンマと戦 である。消費者には常にその食品に対して嗜好が うよりも今あるものの品質をよい味,風味のフィ 形成されている人と未形成な人,識別能力がある ロソフィーに照らして見直すことが大切と思われる。 食品と容器 269 2013 VOL. 54 NO. 5 ◆ 第2回 ◆ ❖シリーズ解説❖ 日本の伝統食品 かまぼこ あ べ ・よ う い ち 東京水産大学水産学部 食品学科卒業。冷凍す り身メーカー代表取締 役,練り製品メーカー 取締役を経て,現在, フリーの技術コンサル タント。 水産学博士 阿 部 洋 一 地で特徴のある練り製品が生まれたのは原料魚に ◆ はじめに ◆ よる特性の違いが関与したためであろう。 わが国における「かまぼこ」は長い歴史を持っ 現在,北海道から沖縄まで全国各地に代表的 ており,日本の伝統食品と呼ぶに相応しい水産加 な「かまぼこ」があるが,それらの種類は極めて 工品である。アジアの各地や欧州にも魚肉を使っ 多岐にわたる6)。いくつかのジャンルに分けるこ た加工品はあるが,わが国の「かまぼこ」ほどの とができるが,加熱方法や配合材料,形態で分類 バリエーションはなさそうである。 するとイメージがつかみやすい7)。ちなみに,農 ふ さ わ 林水産省の水産物流通調査によれば,焼きちく ◆1. かまぼこの歴史 ◆ わ,かまぼこ類(包装かまぼこ,かまぼこ,揚げ ゆ 伝説はともかく,平安時代の宮中儀式や行事に かまぼこ,茹 でかまぼこ,風味かまぼこ,その 関する諸々を記した「類聚雑要抄」にある記述が 他),魚肉ハム・ソーセージ類と項目分けされて るいじゅうぞうようしょう 1) (現時点では)もっとも古い 記録となる。従っ いた(なお,平成18年からは,かまぼこ類と魚 て,かまぼこは少なくとも平安時代以来の食品と 肉ハム・ソーセージに変更されている)。ただし, ようしゅうふ し 2) いえる。江戸時代初期に記された「雍州府志 」 同じジャンルとされるかまぼこであっても,地域 によれば,その当時には板付きかまぼこやちくわ によって食感や味の異なることがある。そのよう のスタイルが作られており,団子などと同様に庶 に「かまぼこ」は地域に根付いた食品であり,全 民の食品となっていた。 国ブランド商品が流通する中にあっても地元の 「かまぼこ」が売り場の一角を占めている。それ ◆2. かまぼこのローカルカラー ◆ らは日常の食卓にのる食材であるとともに,ハレ の日の食材として,また祝儀用や伝統行事などの 当初のかまぼこは,ナマズなどの淡水魚を原料 3) 4) 地域の風習・文化として引き継がれているもので としていた が,江戸時代には多種の魚を原料に 5) もある。 日本各地で作られるようになった 。その中には びき せい 明治末期に底曳漁業が始まると底棲魚も練り製 現在に続くかまぼこ店もある。 江戸時代であれば沿岸の魚が主体で,地域によ 品の原料となった4)。練り製品メーカーの中には り入手できる魚種は異なっていたはずである。各 それらを遠方から入手する事例も出てくるが,練 食品と容器 270 2013 VOL. 54 NO. 5 ◆ かまぼこ り製品の原料は平安時代から昭和30年代半ばまで した原料が好まれることとなる。従って,すり身 は地元で入手できる生魚が主力であった。 の品質に対する評価にそれぞれの主観が入ってく るのは当然であろう。しかし,自らは客観的な評 (以下,用語の混乱を避けるため,総称として 価と思い込んでいる場合があるので,多くの練り かまぼこを示す場合には練り製品と記す)。 製品メーカーと接するすり身の提供側は,同一品 ◆3. 練り製品の生産量 ◆ に対する評価が練り製品メーカーによってバラつ 1925年に4万t台だった全国の練り製品生産量 くことやそれぞれが同じ表現を使いながらも異な は1941年に18万t台まで伸びた。やがて大戦の影 るニュアンスを示していることに困惑させられる 響もあり伸び悩むが,1950年以降の経済発展に 場合が多くなる。冷凍すり身の品質に関して,作 伴って需要が伸び 1960年の生産量は約40万tま り手と使い手がともに共有できる客観的評価手法 で増加した。さらに,その後の約10年間で生産量 を確立する必要性の背景がここにある。残念なが が一気に増えて100万tを超える。これは1960年 ら,現行の検査方法では,実態として,それを十 に開発された冷凍すり身に主原料をシフトした産 分に果たせていない。 8) 業構造の変化に伴う結果である。 ◆5. 練り製品の製造方法 ◆ しかし,1990年以降の生産量は漸減しており, 農林水産省の水産加工統計によれば,2010年の生 5−1.練り製品は魚肉タンパク質食品 産量は約53万tである。ただし,経済産業省の 1954年に全国水産煉 製品協会が業者を対象に ねり 工業統計による出荷額は4,000億円を超えており, 行った調査によれば,主な原料魚として48魚種が 依然としてわが国の代表的水産加工品ではある。 記されている9)。練り製品の原料はそれほど多岐 にわたっており,地域や時期によって漁獲主体と ◆4. 冷凍すり身の登場 ◆ なる魚種は異なっている。魚種により練り製品へ 現在も生魚を原料とする練り製品メーカーは存 の適否が異なるので,地域によりそれぞれの原料 在する。しかし,ほとんどの練り製品メーカーは 魚に適合させた製造方法が確立されるのは当然の 冷凍すり身を原料としている。 成り行きである。しかし,いずれの練り製品も魚 冷凍すり身の登場は練り製品産業界に産業的一 肉に塩を添加しペースト状の魚肉に変化させ,そ 大変化をもたらしたが,同時に製造技術にも影響 れを成型した後,加熱して製造する点では共通し を与えた。生魚を原料としていた時には,入手し ている。練り製品の製造原理は,魚肉が塩によっ た魚の季節や鮮度,型など品質に影響する要因を てゾル化する反応とゲル化という魚肉タンパク質 自ら観察評価して自らの手ですり身を調製したう の機能の利用なのである。従って,練り製品の製 えで製品を製造できた。しかし,冷凍すり身を原 造工程は魚肉の本質である魚肉タンパク質に視点 料としてからは,解凍した魚肉片の品質を的確に をおいて展開されなければならない。 5−2.一般的な製造工程 判断して加工せねばならなくなった。 第1図に一般的な練り製品の製造工程の概略を 練り製品の製造原理は共通しているものの,そ れを永きにわたり生業としてきた各メーカーでは, それぞれが独自の工夫を行っており,それに適合 示した。 練り製品の製造工程中で,原料入手から脱水・ 原料入手 - 調理 - 採肉 - 水晒し - 脱水・裏漉し - 擂潰 - 成型 - 加熱 - 冷却 - 包装 第1図 練り製品の製造工程 食品と容器 271 2013 VOL. 54 NO. 5 ◆ ❖シリーズ解説❖ 日本の伝統食品 ご 裏漉しまでは,すり身の調製工程となる。すり身 受ける。一般に,塩による魚肉タンパク質の溶出 化の工程は,冷凍すり身の製造工程と共通するの は pH が7前後の場合が最も適している11)。 らいかい で,本編では擂潰以降の工程について記す。 イワシ・サバに代表される赤身魚はその筋肉特 5−2−1.擂潰工程 性により死後の筋肉内 pH が6前後まで低下しや 擂潰とは,採取した魚肉をすり潰し,塩を添加 すい。そのため,筋肉を構成する魚肉タンパク質 して撹拌することで,粘調性のあるゾル状の肉糊 が酸変性し,塩摺りをしても滑らかで粘りのある を得る工程をいい,塩摺りとも表現される。魚肉 肉糊が得難くなる。しかし,この肉糊にアルカリ に塩を添加し混合撹拌すると魚肉がゾル状に変化 を添加し pH を中性~弱アルカリにすると,見掛 することから,見掛け上は魚肉をすり潰したかの け上の粘性は増してくる。しかし,pH がもとも ような印象を受ける。しかし,実態は塩の添加に と中性域にある魚肉の粘調状態とは異質のもので よって魚肉タンパク質の状態が変化しているだけ あり,すでに変性した状態の魚肉では塩との反応 である。擂潰工程の本質は魚肉と塩の撹拌混合に が起こりにくくなっていることを示唆している。 かくはん にく のり ず では,塩と撹拌混合された魚肉はその後どう よるタンパク質の状態変化なのである。 5−2−1−1.魚肉と塩との撹拌混合 なっていくのか? 5−2−1−2.擂潰(塩摺り)で起こる変化 魚肉タンパク質は筋原線維タンパク質,筋形質 タンパク質,基質タンパク質から構成される。そ 擂潰の工程は,石臼,サイレントカッターや の中で約60~70%を占める筋原線維タンパク質が ボールカッターなどと呼ばれる密封型高速カッ 一定濃度以上の食塩添加によって速やかに性状を ターなどの撹拌混合装置で行われるが,それぞれ 変化させる。いわゆる「塩溶性タンパク質が溶け の装置の撹拌形式や能力によって肉糊の状態を呈 出す」状態となる。 するまでの時間が異なる12)。第2図は石臼,サイ 塩によって溶出する魚肉タンパク量は食塩濃度 レントカッターや密封型高速カッターを用いた場 によって異なる。食塩濃度が3%前後で溶出タン 合の肉糊の温度変化と製品の物性を検証した結 パク量が最大となり,約13%程度まで高い水準に 果12)である。 ある10)。ただし,調味の点を考慮すれば,練り製 品製造における食塩添加量は3%程度に抑える 図によれば,いずれの撹拌装置によっても擂潰 11) 時間が長くなると肉糊の温度が上昇する。その上 昇速度は装置によって異なり,密封型高速カッ こととなる。 ター>サイレントカッター>石臼の順となる。そ 魚肉と塩の反応は魚肉の pH によっても影響を 800 20 温度(℃) 25 ゲル強度(g・㎝) 1000 600 400 石臼 サイレントカッター 密封型高速カッター 200 石臼 サイレントカッター 密封型高速カッター 15 10 5 0 0 0 10 20 30 40 50 0 時間(分) 10 20 30 時間(分) 40 50 第2図 異なる撹拌混合装置によるゲル物性と肉糊温度の経時変化(橋本ほか,1986) 食品と容器 272 2013 VOL. 54 NO. 5 ◆ かまぼこ れぞれの装置で調製した肉糊から得たゲル強度の 上昇した魚肉タンパク質はどういう変化をしてい 最大値を比較すると装置による差異はほとんどな るのか? い。しかし,密封型高速カッターやサイレント 筋原線維タンパク質の主要成分はミオシンとア カッターではゲルの物性値が最大となった後に低 クチンであり,ミオシンは2個のミオシン重鎖と 下している。これは擂潰中に肉糊の温度が上昇す 4個のミオシン軽鎖で構成されている14)。肉温が ることと関連している。 上昇した肉糊では筋原線維タンパク中のミオシン 第3図はスケトウダラとイトヨリについて,サ 重鎖同士が重合し,多量化反応が進行する13)。ミ イレントカッターでの肉糊温度とゲル物性の関係 オシン重鎖の多量化反応は坐り(5−2−2−2項 を示したもの13)である。 を参照)ゲルを形成する時に見られる現象であり, すわ 図によれば,いずれの場合もゲルの破断強度は タンパク質が変性した状態にほかならない。いっ 約20分後に最大値となり,その後低下している。 たん変性した筋原線維タンパク質が未変性の状態 ゲル物性が最大となった時の肉糊温度をみると, に戻ることはないので,この状態のものを撹拌す スケトウダラの場合には約10℃であるのに対して, ることはすでに形成されつつあるゲルを物理的に イトヨリの場合には約18℃とスケトウダラより高 破壊することとなる。 これまでのことを総括すると,擂潰工程とは, い。いずれの場合も,それ以上の肉糊温度の上昇 によって破断強度が低下することが示されている 肉糊中の筋原線維タンパク質を変性させずに魚肉 が,破断強度がピークを示す温度は魚種によって と塩とを撹拌混合する操作であることが分かる15)。 異なり,寒帯産の魚種では低く,温帯産の魚種で 前項に記したように筋原線維タンパク質の温度 は高い傾向となることが示唆されている。これは 安定性16)(変性する温度)は魚種によって異なる。 魚肉タンパク質の温度感性が魚種によって異なる 温度安定性の相違はゲル化の速度とも密接な関係 ことに関連している。 がある17)。実際の製造における擂潰工程の終点は, 5−2−1−3.肉温上昇による魚肉タンパク質 成型可能な流動性と成型後に変形しない(ダレな の変化 い)程度の保型性を有し,製品設計で企画したゲ 上述のように,擂潰操作中の肉温上昇はゲル形 ルを形成できる状態の肉糊となった点におくべき 成に好ましくない影響を与える。これは塩摺り工 である。魚肉タンパク質の変性のみを恐れて,よ 程中の肉糊の温度上昇が肉糊の筋原線維タンパク り低い温度で擂潰を終了するのは必ずしも最も優 13) れた製造技術となるとは限らない。適切な温度管 質の変性をもたらすためである 。では,肉温が 【イトヨリ】 40 600 30 400 20 200 10 0 20 40 時間(分) 40 600 30 400 20 破断強度 温度 200 0 0 0 800 0 0 60 10 温度(℃) 破断強度 温度 破断強度(g) 破断強度(g) 800 温度(℃) 【スケトウダラ】 20 40 時間(分) 60 第3図 異なる魚種による擂潰時の肉糊温度とゲル物性の経時変化(加藤ほか,1989) 食品と容器 273 2013 VOL. 54 NO. 5 ◆ ❖シリーズ解説❖ 日本の伝統食品 る。 理の下で擂潰をすることにより,品質の良い商 坐りは加温される温度によって発現の仕方が異 品を安定的に製造することができるようになる。 従って,擂潰では,原料に適した上限温度をあら なり,低温ではゆっくり進行し,高温では急激に かじめ設定することが重要な管理技術となる。 進行する18) 傾向がある。それゆえ,坐り工程を行 なお,練り製品製造現場での擂潰工程では,魚 う場合には,原料配合に適した加温条件の設定が 肉に塩を添加した後に,デンプンや調味料などの 重要となる。 添加物や物性調整のために水が加えられることが 肉糊の坐りは保管されている温度帯に応じて時 ある。それゆえ,この過程の温度管理もまた重要 間経過にともなって進行する。従って,坐りを起 な技術上のポイントとなることはいうまでもない。 こしやすい魚種の肉糊では,擂潰後は常に肉糊の 5−2−2.擂潰以後の工程 変化が起こっている。坐りゲルの形成が魚肉タン 5−2−2−1.成型 パク質の変性反応である以上,常に温度と時間を 要素として,その影響を考慮しなければならない。 擂潰を終えた肉糊は商品に適した形状へと成型 きょうざつ される。成型前には,肉糊中にある夾雑物や異物 反応の進行を抑制するためには,より低温での管 の除去を目的に裏漉しが行われることもある。た 理とより迅速な処理を行うことが必要となる。 だし,野菜などの種物が混入された場合には練り 5−2−2−3.肉糊のゲル化 肉の裏漉しはできない。 練り製品の弾力は肉糊のゲル化の結果,形成さ 5−2−2−2.成型後の魚肉タンパク質の挙動 れるものである。練り製品における弾力は商品の 一般的には成型が終わった段階で加熱工程へと 個性として品質上極めて重要な要素であり,特に, か 移行する。しかし,すべてが成型後直ちに高温で 噛み初めの食感はアシという独特の業界用語で示 の加熱がなされるわけではない。成型後,一定温 される。 度(低温度)帯に一定時間保管してゲル化の強化 魚肉タンパク質のゲル化反応は一定温度環境下 を図る技術がある。これを俗に「坐り工程」と呼 では時間経過に伴って進行し,温度帯が変われば ぶ。坐りとは,肉糊を加温することによって,次 進行状況も変わる。従って,その変化の全体を把 18) 第に粘調性を失い弾力に富むゲルとなる 現象を 握しなくては,魚肉のゲル形成の全体像は見えて 指した練り製品業界の用語である。坐りでできた こない。それゆえ,これまでの報告によく見られ ゲルは白濁したものではなく,やや透明感がある るような加熱条件を任意に定めて断片的に抜き出 のが特徴である。 した加熱ゲルの物性による判断は,普遍性に富む 実用性のある成果を得るとはいい難い。 前述したように,擂潰工程で肉糊の坐りが起こ ることは好ましくない結果を生じる。しかし,成 練り製品の商品価値の重要素である食感は噛み 型以後の工程では,坐りはより強い弾力を形成す 初めの歯切れだけではなく,口中で噛んでいる時 る手段として活用することができる。 のこなれ具合やそれらがのどを通過する段階まで も含めた総合的な印象を示すものである20)。残念 坐りは他の食品タンパク質には見られない魚肉 タンパク質に特有の現象である18)。坐りの発現能 ながら,食感を客観的に表現するのは困難であり, 力は魚種によって異なり,顕著な坐りを起こすも より適格に判断する場合には人による官能検査に のもあるが極めて穏やかに進行するものや全く起 頼るしかない。しかし,肉糊への加温や加熱に 19) こさないものもある 。また,同一魚種でも原料 よって起こるゲルの物性変化を経時的に追うこと 魚の鮮度や加工処理条件によりその発現の度合い で,ゲル形成の過程を客観的に比較し工程の管理 は異なる。当然ながら,すり身調製時や擂潰工程 をすることが可能となる。 もっとも,すべての肉糊についてゲル形成の経 までの魚肉タンパク質の変性度合いにも影響され 食品と容器 274 2013 VOL. 54 NO. 5 ◆ かまぼこ 時変化を追うことは,実務上,現実的ではない。 も十分な弾力形成を行うためには温度と時間を要 それゆえ,個々の原料魚肉について,あるいは商 素とする工程管理が必要となる。 品の配合決定がされた段階で,ゲル化の経時変化 なお,すべての肉糊が弾力のあるゲルを形成す を検証しておくことで対応することとなる。最近 るとは限らない。加熱技術が巧みでも脆弱なゲル の研究では,いわゆる坐りが起こりやすい魚種の しか形成しない魚種もある。また,変性したタン すり身やその他のすり身を混合した塩摺り肉のゲ パク質から調製した肉糊の場合にも脆弱なゲルが ル化の進行状態を把握することにより,製品の食 形成されやすい。 ぜい 5−2−2−5.冷却・包装 感や原料としたすり身の産業的評価が可能である 21) ことが示されている 。 冷却の目的は菌の増殖抑制である。練り製品の 5−2−2−4.加熱技術と得られるゲルの物性 加熱工程で行われる殺菌では耐熱性の菌を滅する 加熱は練り製品の弾力形成をするうえで重要な ことはできない。菌の増殖は定常期までは指数関 工程であると同時に,殺菌の面からも重要な工程 数的に増加することから,できるだけ速やかに となる。一般的な練り製品は中心部の温度を75℃ 10℃以下にすることが望ましい。また,冷却に際 以上に保つか,それと同等の効力のある方法で殺 しては,包装時などに結露を起こさないよう表面 菌することが厚生労働省の練り製品の規格基準に を十分乾燥させることも重要である。なお,包装 定められている。本項では加熱工程を物性制御の は汚染抑制と表示による告知,商品訴求を兼ねて 工程とみなし,特に弾力形成に重点をおいて記述 いる産業的には重要な要素であるが,本編の趣旨 することとする。 ではないので特に触れない。 練り製品の加熱方法は多様である。一般的には, 蒸し,焼き,揚げ,茹でなどによる加熱となるが, ◆6. おわりに ◆ 目的として共通するのは商品の個性を十分に発揮 練り製品がもつ長い歴史は,それが良質な食品 する弾力形成と過不足のない殺菌を達成すること としての評価を得て人々に支持されてきた結果で である。 ある。一般的には練り製品は高タンパクで低カロ 食品タンパク質のゲル化は変性したタンパク質 リーな食品として訴求されているが,魚肉を原料 が凝集して規則的なタンパク質網目を形成する とする練り製品には魚に由来する各種の栄養素や 22) 現象 に相当するが,魚肉タンパク質のゲル化も 機能性も備わっている。しかし,その中には加工 23) 工程中に変化や消失するものもある。一方,肉糊 同様である 。 タンパク質が網目を形成する際に関わる結合の に添加することで後天的に付与されたり,それに 種類は複数あり,坐りを起こすような低温下で起 よって強化される栄養機能もある。また,日常の こる結合と殺菌可能なレベルの高温下で起こる結 食卓やおでん,お酒やビールのアテなどでおいし 23) 合の機構は異なると考えるのが妥当である 。結 い練り製品と巡り合えた時に味わえる充足感やそ 合の機構に関する話題はゲル形成の機構を検証す の場の団欒を生み出す効果もある。これは他の優 るうえで重要なテーマであるが,加熱工程におけ れた食品と同様,練り製品が心身の癒しと健康増 る製造実務上のポイントは,いかに効率よく中心 進に役立つ健全な食品としての素地を備えたもの 温度75℃以上を達成し過不足のない殺菌を行うか の証明といえる。 らん であろう。しかし,到達する温度が同じでも,加 なお,本稿の作成にあたり,元・北海道大学水 熱技術次第で昇温速度が遅くなった場合や加熱装 産学部教授 新井健一博士より有益なるご指導と 置内の温度ムラが激しい場合などには十分な弾力 ご校閲を賜りました。ここに記して深甚なる謝意 形成が行われない可能性がある。従って,ここで を表します。 食品と容器 275 2013 VOL. 54 NO. 5 ◆ ❖シリーズ解説❖ 日本の伝統食品 参 考 文 献 1)清水亘,かまぼこの起源,「かまぼこの歴史」 ,(日本 食糧新聞社,東京),pp. 14(1975). 2)黒川道祐,雍州府志,「新修 京都叢書」,野間光辰編, (臨川書店,京都),pp. 432−433(1968). 3)清水亘,緒論, 「蒲鉾」, (生活社,東京),pp. 5(1944). 4)清水亘,かまぼこの原料魚,「かまぼこの話」,(全国 蒲鉾水産加工業協同組合連合会,東京),pp. 14−22 (1979). 5)本多康宏,蒲鉾の由来,「小田原蒲鉾のあゆみ」 ,(夢 工房,秦野),pp. 20−21(2004). 6)柴 眞,ねり製品,「かまぼこ その科学と技術」,山 澤正勝,関伸夫,福田裕編,(恒星社厚生閣,東京), pp. 152−153(2003). 7)清水亘,蒲鉾の種類,「蒲鉾便覧」,柴信一編,(全国 水産煉製品協会,東京),pp. 67(1954). 8)岡田稔,かまぼこ入門 ,「かまぼこの科学」,(成山堂 書店 , 東京),pp. 4(1999). 9)須 山三千三,かまぼこの原料について,「蒲鉾便覧」, 柴 信 一 編,( 全 国 水 産 煉 製 品 協 会, 東 京 ),pp. 24 (1954). 10)W. J. Dyer, H. V. French, J. M. Snow,Protein in FishMuscle.1. Extraction of Fractions in Fresh Fish. J. Fish. Res. Bd. Can., 7, 585−593(1950). 11)柴 眞, 水 産 ね り 製 品 の 製 造,「 水 産 ね り 製 品 入 門 」, (日本食糧新聞社,東京),pp. 83(2002). 12)橋 本昭彦,加藤登,カマボコの足とその品質管理Ⅳ らい潰条件の検討,北海道大學水産學部研究彙報, 37,157−163(1986). 13)加藤登,中川則和,照井正三郎,筋原線維タンパク質 の性状変化からみた連続ミキサーによるすり身の塩 摺り条件の検討,日本水産学会誌,55,1243−1251 (1989). 14)ジャン-クラウド シェフテル,ジャン-ルイ クッ ク,ドゥニー ロリアン,アミノ酸とタンパク質の物 理化学的性質,「食品タンパク質ハンドブック」 ,(エ ヌ・ティー・エヌ,東京),pp. 23(1988). 15)加藤登,ねり製品,「かまぼこ その科学と技術」,山 澤正勝,関伸夫,福田裕編,(恒星社厚生閣,東京), pp. 192(2003). 16)鴻巣章二,須山三千三編,貯蔵・加工に伴う肉質の変 化,「水産食品学」,(恒星社厚生閣,東京),pp. 174 −176(1987) 17)加藤登,橋本昭彦,野崎恒,新井健一,スケトウダラ, シログチおよびティラピアの肉糊の坐り,日本水産学 会誌,50,2103−2108(1984). 18)柴 眞, 水 産 ね り 製 品 の 製 造,「 水 産 ね り 製 品 入 門 」, (日本食糧新聞社,東京),pp. 90−91(2002). 19)志水寛,主原料の科学,「新版 魚肉ねり製品」,岡田 稔,衣巻豊輔,横関源延編,(恒星社厚生閣,東京), pp. 43−50(1987). 20)志水寛,足の物差し,「昔の蒲鉾・今の蒲鉾」,(全国 蒲鉾水産加工業協同組合連合会,東京),pp. 46(2001). 21)加 藤登,阿部洋一,安永廣作,中川則和,佐藤繁雄, 國本弥衣,新井健一,加熱ゲル形成能からみたスケト ウダラ冷凍すり身の品質,東海大学紀要(海洋学部), 9,1−11(2011). 22)ジャン-クラウド,シェフテル,ジャン-ルイ,クッ ク, ド ゥ ニ ー ロ リ ア ン, タ ン パ ク 質 の 機 能 特 性, 「食品タンパク質ハンドブック」,(エヌ・ティー・エ ヌ,東京),pp. 61(1988). 23)北上誠一,村上由里子,小関聡美,阿部洋一,安永廣 作,新井健一,スケトウダラ塩ずり身のゲル形成能 とその加熱温度依存性,日本水産学会誌,70,354− 364(2004). 食品膜・分離技術研究会(MRC)設立25年記念 食品膜・分離技術研究会(MRC)2013年度総会・第25回春季研究例会 ◇日 時:2013年6月5日(水) ◇場 所:川口総合文化センター リリア 〒332−0015 埼玉県川口市川口 3−1−1 TEL:048−258−2000 FAX:048−258−2100 (京浜東北線川口駅西口下車至近) ◇主 催:食品膜・分離技術研究会(MRC) ◇協力機関:東京農工大学農学部付属硬蛋白質利用研究施設 ◇参加費(円 / 人) :民間会社・特例会員=20,000円 / 人, 非会員=30,000円 / 人,当会顧問・国公立研究機関・ 大 学 等 教 育 機 関: 会 員 =12,000円 / 人, 非 会 員 = 18,000円 / 人(5/15以降の申し込みは+5,000円) ◇最終締切日:2013年6月1日(土) ◇参加申し込みおよび問い合わせ 食品膜・分離技術研究会(MRC)本部事務局 〒332−0015 川口市川口 1−1−3−3211 TEL & FAX 048−224−3336(事務局 渡辺敦夫) 食品と容器 276 e-mail:[email protected] ◇プログラム(12:20~16:55) 2013年度総会(MRC 会長挨拶 議事) 研究例会 ①記念講演:MRC25年のあゆみと膜・分離技術開発 渡辺敦夫(食品膜分離技術研究会) ②特別講演:食品評価と新製品開発 岩附慧二((株)森永乳業) ③最近の膜技術の発展と展望 ―ロバスト RO/NF 膜の開発状況― 都留稔了(広島大学大学院) ④都市下水の機能膜による高度処理および処理水の 植物工場への展開 横山文朗(㈱日本ピュアウォーター) ⑤膜装置の衛生管理と最近のサニテーション技術 宮澤史朗((合)エコラボ・ビレッジ) 交流会(17:05~19:00) 2013 VOL. 54 NO. 5 ⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話 第8回 果実・果汁飲料と機能性成分(6) 熱帯果実,特にバナナの機能性 た か だ ・の り ひ さ 米国 Purdue 大学大学 院博士課程修了。現在, 日本デルモンテ株式会 社顧問,岩手大学客員 教 授( 三 陸 復 興 推 進 室)。 高 田 式 久 Ph.D ツは約20万トン,パイナップルは約11万トンに相 ● はじめに ● 当する量が輸入されている。生果実と濃縮果汁両 熱帯および亜熱帯で生育する果実は熱帯果実と 方がわが国の果実需要を満たしている。バナナは 呼ばれ,特に東南アジアで自生または栽培されて リンゴ,オレンジと共にわが国の食を満たし健康 いる種類は多く,市場につながる流通網の欠如に 第1表 わが国への 2011 年果物輸入量 より地元でのみ食されている果実も多い。わが国 に輸入されている熱帯果実には,第1表の*印に 示すように,輸入量順でバナナ,パイナップル, キウイフルーツ,アボカド,マンゴー,パパイア, ランブータン,ライチ,ドリアン,マンゴスチン などがある。最近は日本へ輸出される果実の植物 防疫対策も進み,輸入品目数が増えつつある。平 成19年の農林水産省調査1)によると,好きな果物 としてミカン,リンゴ,イチゴに次いでバナナが 挙げられ,さらに健康のために良い効果を持つと 認識されている果物として,ミカン,リンゴに次 いでバナナが3位であった。一方,嫌いな果物と して熱帯果実類が上位に挙げられ,日本では熱帯 果実は敬遠される傾向にある。熱帯の果物には風 味に特徴があるものが多く,不慣れなため敬遠さ れていることが理由の1つとなっている。わが国 では,生果実の輸入量と同時に濃縮果汁としての 輸入量も多い。特にリンゴとオレンジ果汁は生換 算でそれぞれ約75万トンの果実に匹敵する量が果 汁として輸入され,同じように,グレープフルー 食品と容器 果 実 名 *バナナ グレープフルーツ *パイナップル オレンジ *キウイフルーツ レモン *アボカド メロン マンダリン ブドウ クリ サクランボ *マンゴー イチゴ スイカ *パパイア ライム ブルーベリーなど ラズベリーなど *ランブータン,ライチなど *ドリアン リンゴ *マンゴスチン (トン) 1,064,124 160,004 152,863 115,329 65,894 51,597 37,172 32,948 21,316 15,409 11,690 10,350 10,055 3,395 3,055 2,774 1,889 1,833 483 457 168 148 138 出典:財務省貿易統計 277 2013 VOL. 54 NO. 5 ⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話 維持への役割は顕著であり,第1図に示すように ●1.熱帯果実の機能性成分 ● 輸入量も右肩上がりを示している。本稿ではバナ ナの機能性を中心にして概要を述べる。 タイ産の熱帯果実の機能性成分分析例を第2表 に示す2),3)。熱帯地方で果実の消費は多く,水分, エネルギー,ビタミン,ミネラル等の補給源とし 輸入量(×1,000トン) 1,400 て重要である。一般的に知られている機能性成分 1,200 としては食物繊維,フラボノイド化合物,カロテ 1,000 ノイド化合物がある。 果実の品種によってこれら機能性成分は変動し, 800 一概に果実名と含量を呼応させることはできない 600 が,傾向として,ドリアンの食物繊維含量は高く, ポメロのフラボノイド含量は高い。バナナの食物 400 1990 1995 2000 2005 2010 繊維はやや高めであり,フラボノイド,カロテノ 年 度 イド含量も低くはない。熱帯果実の中で,バナナ 第1図 日本へのバナナ輸入量の年度推移 はデザートとしての生食用途に加え,加熱調理し 出典:財務省貿易統計より作図 主食として食べられている唯一の果実である。バ 第2表 タイ国で消費されている熱帯果実の主な機能性成分2),3) n =5サンプル100g当たりの平均値を表示 果実名 品種名 科学名 水分量 (g) 総食物繊維 総フラボノイド (g) (µg) βカロテン3) (µg) バナナ Khai Mam-wa Leb mu nang Hom Musa Musa Musa Musa sapientum L. sapientum L. sapientum L. hybrids 74.8 66.8 69.8 76.8 1.68 2.71 2.46 1.82 3,560 3,376 3,057 4,063 25.2 ~ 58.8 ドリアン Chanee Kradum Kan yao Mhon thong Puang manee Durio Durio Durio Durio Durio zibethinus zibethinus zibethinus zibethinus zibethinus 64.6 64.6 56.1 63.0 63.1 3.58 1.6 2.42 3.39 2.69 3,508 4,480 1,904 3,233 4,485 41.4 ~ 95.8 グアバ Kim chu Pan see thong Psidium guajava L. Psidium guajava L. 87.4 88.5 2.95 2.78 3,168 8,926 13.8 パパイア Holland Khak Dahm Carica papaya L. Carica papaya L. 89.3 88.6 2.03 1.42 961 1,509 (リコピン2,169µg 共存) マンゴスチン 記載なし Garcinia mangostana L. 80.8 1.00 1,515 ND ポメロ Khao tang kwa Khao num phung Khao yai Thong dee Tubtimsayam Citrus Citrus Citrus Citrus Citrus Merr. Merr. Merr. Merr. Merr. 88.9 87.5 88.7 87.7 88.7 0.73 0.99 0.93 0.99 0.8 7,368 8,939 - 13,994 15,094 8.9 ~ 25.6 パイナップル Phuket Sri racha Ananas comosus Merr. Ananas comosus Merr. 82.7 85.7 1.84 0.71 4,268 4,187 ND マンゴー3) Rad 等 Mangifera indica 80.6 - - maximus maximus maximus maximus maximus 471 21.2 ~ 308 (リコピン含む品種あり) 3) マンゴーとβカロテン含量は文献 食品と容器 より引用,他は2)より引用。ND は検出されずを示す。-はデータなし。 278 2013 VOL. 54 NO. 5 熱帯果実,特にバナナの機能性 ナナは通年栽培され流通技術も発達した。しかも 型(ゲノム)は,ムサ・アクミナータ(AA)と, 品種の多様性,広範な栽培地域,広い用途を背景 ムサ・バルビシアーナ(BB)の組み合わせによ に,その機能性は注目に値する。 り,AA,AB( 二 倍 体 ),AAA,AAB,ABB (三倍体)などと表される。同じ遺伝子型でも栽 ●2.バナナの生産 ● 培地により形質に変異が起きており,単純に品種 1)バナナの世界生産の推移 を特定できない状況である。科学的区別が不明で バナナは現在130カ国余りで栽培されており, も,栽培現地で差別化されているバナナの固有名 その世界生産量は最近20年間で2倍以上に増産さ を品種と呼んでいる例が多い4)。以下品種につい れ,今もその傾向は続いている(第2図)。FAO ては,遺伝子型と各研究者が特定した固有名で表 統計によると,2010年には実績1億202万トンに すのは,このような事情による。日本に輸入され 至っている。1990年対比で約6,000万トン増加し, ている最も一般的な生食用テーブルバナナは遺伝 その主要増産国と増産量はインドで約2,200万ト 子型 AAA のキャベンディッシュ品種であり,他 ン,中国で約820万トン,フィリピ 120,000 490万トン,インドネシアで約330万 100,000 トン,タンザニアで約275万トンと なっている。主要生産国のバナナ生 産総量を国内消費量と輸出量で示し たのが第3図である。最も生産量の 多いインドは2,978万トンを生産す るが,ほとんどが国内で消費され, 輸出はごくわずかである。生産量2 総生産量(x1000トン) ンで約560万トン,エクアドルで約 80,000 60,000 40,000 20,000 0 1985 1990 1995 位の中国でも国内でほとんどが消費 されている。国際貿易に寄与するバ 2000 生産年度 2005 2010 2015 第2図 世界の総バナナ生産量の推移 ナナは,エクアドル,コスタリカ, FAOSTAT データより作図 コロンビア,グアテマラ,フィリピ ン産が主である。わが国へは,フィ リピン,エクアドル,台湾,ペルー からの輸入が多い。 2)バナナの品種と利用方法 バナナはバショウ科バショウ属に 含まれる多年性草本であり,2種の 野生種,ムサ・アクミナータ(Musa acuminate), ム サ・ バ ル ビ シ ア ー ナ(Musa balbisiana)のどちらか, もしくは両方を祖先としている。栽 その他 エジプト パプアニューギニア ベトナム タイ コスタリカ ブルンジ コロンビア メキシコ グアテマラ タンザニア インドネシア ブラジル エクアドル フィリピン 中国 インド ら繁殖する。栽培バナナの遺伝子 食品と容器 輸出量 0 培バナナは単為結果性を持っている ため,種子からではなく栄養体か 国内消費量 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 第3図 主要バナナ生産国の2010 年国内消費と輸出量(×1,000トン) FAOSTAT データより作図 279 2013 VOL. 54 NO. 5 ⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話 にモラード,セニョリータ,ラツンダンが輸入さ 種類のビタミン類,ミネラルなど栄養成分に富ん れ,プランテインと呼ばれる料理用バナナは遺伝 でいる(第3表)。バナナなど熱帯果実は,その 子型 AAB 型に含まれ,カルダバ,ツンドク,リ 品種と栽培地により栄養成分に変動が大きい。第 ンキッド等の品種が輸入されている。アジア・ア 4表に,東南アジアで栽培されているバナナの品 フリカ等での品種や用途の分布については小松と 種別のβカロテン相当量を示す。品種により果肉 北西が詳細に調査をしており報告書を参考にされ の色調は違い,オレンジ色調の強い品種のカロテ 4),5) たい ン含量は,一般的なキャベンディッシュ品種より 。 かなり高い6)。栽培地ごとの品種変異が大きく栽 ●3.バナナの基礎的な栄養成分 ● 培条件でβカロテンが変動しており,特定の数字 をとらえてバナナの栄養価を判断できないことに バナナは,炭水化物,カリウムが多く,他の多 第3表 バナナ 100 g 可食部の栄養成分(日本食品標準成分表第5訂より) エネルギー 水分 タンパク質 脂質 炭水化物 ナトリウム カリウム カルシウム マグネシウム リン 鉄 亜鉛 銅 マンガン 86 75.4 1.1 0.2 22.5 Tr 360 6 32 27 0.3 0.2 0.09 0.26 kcal g g g g αカロテン βカロテン αトコフェロール ナイアシン ビタミンB1 ビタミンB2 ビタミンB6 ビタミンB12 葉酸 パントテン酸 ビオチン ビタミンC コレステロール 水溶性食物繊維 不溶性食物繊維 mg mg mg mg mg mg mg mg 28 42 0.5 700 50 40 380 - 26 440 1.4 16 - 0.1 1 µg µg µg µg µg µg µg µg µg µg µg mg g g 注意が必要である。しかし,特定の品種 と栽培条件の組み合わせは,特に発展途 上国では貴重なビタミンA供給源と考え られている。 バナナは豊富なカリウム源としても知 られている。カリウム含量も産地により 異なり変動が大きく,カナリー諸島と エクアドルの比較事例では503 mg,372 mg と開きが大きい7)(第5表)。 このようにバナナの一般栄養成分量を 掲げる際には,その産地,品種等十分な 考慮が必要である。 ●4.バナナのアミノ酸 ● 第4表 東南アジアで栽培されているバナナのβカロテン相当量6) バナナにはアミノ酸が可 食部100g当たり810 mg 含 産地 品種分類 βカロテン相当量* (µg / 100 g 可食部) Tundok フィリピン AAB ; Horn Plantain 1,370 成分表準拠アミノ酸成分表 Pisang Rajah Buluh マレーシア AAB ; Pisang Raja 420 Pisang Mas マレーシア AA ; Sucrier 420 2010)。その中で必須アミ Pisang Tandok マレーシア AAB ; Horn Plantain 370 Pisang Kelat マレーシア AAB ; Pisang Kelat 370 Lakatan フィリピン AA ; Lakatan 360 Kluai Khai タイ AA ; Sucrier 345 ウイフルーツはそれぞ Pisang Susu マレーシア AAA ; Pisang Susu 330 Ternate フィリピン AAA ; Pisang Raja 325 れ,総アミノ酸が2,100 mg, Pisang Rajah Udang マレーシア AAA ; Red 290 Hug-mook Silver Bluggoe タイ AAA ; Bluggoe 279 Pisang Berangan マレーシア AA ; Lakatan 230 Common Banana 不特定 AAA ; Cavendish 調査バナナの現地名 * βカロテンとαカロテンの半量を合計した量をβカロテン相当量と定義 食品と容器 280 21 まれている(日本食品標準 ノ 酸 が370 mg と 多 く, 総 アミノ酸含量の約46%を占 め て い る。 ア ボ カ ド, キ 870 mg と 高 く, 必 須 ア ミ ノ酸が総量に対してそれぞ れ41%,39%である。国内 で最も消費量の多い,温州 ミカンでは,総量と必須ア 2013 VOL. 54 NO. 5 熱帯果実,特にバナナの機能性 ミノ酸構成比は,それぞれ,480 mg,28%,リ を持ち,腸内健康維持に有益であるということ ンゴでは160 mg,27%であり,バナナなど熱帯 が頻繁に言及されている。しかし,その濃度や 果実のアミノ酸組成は特徴があることが分かる。 分子種については研究報告により変動が大きい。 Campbell ら10)は,1-Kestose[グルコース1分子 ●5.バナナのルミナコイド成分 の機能 ● にフラクトース2分子が結合,GF 2 ],nystose [グルコース1分子にフラクト-ス3分子が結合, GF 3 ],1 F-β-fructofuranosylnystose[グルコー 1)バナナのルミナコイド成分分類 ルミナコイドは 「ヒトの小腸内で消化・吸収さ ス1分子にフラクトース4分子が結合,GF 4 ] れにくく,消化管を介して健康の維持に役立つ生 を市販完熟バナナで定量し,乾燥重量1g当た 理作用を発現する食物成分」 と定義される重要な り GF 2 を8.6 mg,GF4を2.3 mg 検 出 し,GF 3 は 8) 健康機能を持つ成分である (第4図)。ルミナコ 検 出 し な か っ た。L’ homme ら11)は 完 熟 Consul イド分類に沿うと,バナナには植物性多糖類から premium 品種で,GF 2 のみを6.02mg 検出し,一 なる食物繊維,オリゴ糖とレジスタントスターチ 方,Ghedini Der Agopian ら12)は8品種のバナナ (難消化性デンプン:RS と略す)が含まれる。 7) 第5表 産地の違うバナナのミネラル含量(mg/100g) 2)バナナの食物繊維 バナナには不溶性・可溶性食物繊維が含まれて ミネラル元素 いる。これら含量はバナナの熟成と共に変化す る。不溶性プロトペクチンは熟成が進むと0.5か ら0.3%に減少し可溶性になる。セルロースは2 ~3%含まれ,これも熟成中にわずかに減少する。 へミセルロースは未熟な緑色バナナの可食部の8 ~10%を占めるが,熟成バナナでは約1%にまで 減少する9)。先の第2表に示したように,タイ市 Na K Ca Mg Fe Cu Zn Mn 産 地 カナリー諸島 エクアドル 0.17 0.08 503 372 4.3 6.2 38.4 32 0.28 0.26 0.08 0.11 0.16 0.18 0.06 0.26 場のバナナの総食物繊 維は1.68~2.71%であり, 植物性 可溶性食物繊維は0.37~ 多糖類 食物繊維(*) 1.04%,不溶性食物繊維 非デンプン性 は1.15~1.81 % の 変 動 幅 オリゴ糖(*) が報告されている。おお よそ中~大の大きさのバ ナナ1本が1~2gの食 物繊維源となる。 ルミナコイド Luminacoid その他 バナナには他の果実や デンプン性 難消化性 デキストリン の中では含有量が高く , 食品と容器 (*)印がバナナに含まれる成分 レジスタント スターチ(*) 10) プレバイオティクス効果 化学修飾性 レジスタント プロテイン オリゴ糖 糖が含まれており,果実 微生物性 糖アルコール 3)バナナのフラクト 野菜同様フラクトオリゴ 動物性 リグニン 第4図 ルミナコイド分類8)とバナナに含まれる成分 281 2013 VOL. 54 NO. 5 ⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話 で熟度別に定量し,完熟した8品種のバナナす る腸内発酵による水素ガスの発生について調べた。 べてで GF 2 を最大で1.63 mg 検出したが,GF 3 バナナ食餌後約30分で水素ガスは呼気に検出され, は Prata 品種でのみ少量検出し,GF 4 は検出さ 3時間半でピークに達することが確認された。こ れなかった。バナナの熟成期間は品種により数日 の生成ピーク時間は腸内でメタンを生成する菌叢 から20日以上かかるものまで差があり,蓄積した を持つヒトでは遅延し,そのヒトの持つ腸内細菌 シュークロースが引き金になりフラクトオリゴ糖 叢や食習慣に依存していることが示された。腸内 が生成される。この合成機序はすべての品種で同 で発生した水素ガスが血流に入り,その後,肺を 一であるが,フラクトオリゴ糖の変動は大きい。 含めた種々の臓器に移行し,生体内酸化障害を抑 ビフィズス菌増殖を見込むには従来市販のフラク 制することが判明してきている26)。これまで水素 トオリゴ糖では,1日当たり数グラム以上摂取が ガスの体内抗酸化作用については注目されてこな 13) 必要とされるが ,バナナのオリゴ糖の適正摂取 かったが,水素は強力な還元作用を有しており, 量に関しては報告がない。一方,オリゴ糖は腸内 大腸内発酵を介して水素を発生する RS を含めた でのムチンの分泌量を増加,カルシウム,マグネ ルミナコイドの新たな機能性である。 シウムの吸収促進と,消化管ホルモンや食欲抑制 未熟バナナには天然のデンプンが豊富に含まれ ペプチドの増加にも影響することが報告されてお ている。これを抽出・洗浄・沈降・乾燥で得られ 14) り ,バナナのフラクトオリゴ糖の機能と作用濃 たバナナデンプンとして,1日24gを水に混合し 度について今後の研究が待たれる。 4週間,タイプⅡの糖尿病患者に提供した試験で 4)レジスタントスターチとその意義 は,有意な体重減,BMI 値の低下,インシュリ か ンの低下,インシュリン抵抗性の改善が確認され バナナのデンプンは果肉部に顆 粒状で分布し, 結晶構造とアミロペクチンの分布量,近在のアミ ている27)。バナナデンプンを高温加熱による老化 ラーゼ類の活性量等に依存して熟成過程で分解度 処理により RS 化を調整することができ28),機能 が変化する。料理用バナナのデンプンはテーブル 性を高めることも可能であろう。わが国では未熟 バナナより結晶構造部分が多く,アミロペクチン バナナを食べる習慣はないが,健康維持に通常食 が多いため,完熟後でも分解されにくいデンプン 材やサプリメントとして利用価値があり,特に 22) が残り,料理特性が高くなる 。このデンプンの RS は,ポリフェノールなどの抗酸化成分とは異 結晶構造は,小腸経過中に崩壊を起こすが消化酵 なり,大腸を介した抗酸化機能を発揮する成分と 素が働きにくく,しかし細菌による攻撃を受け して注目したい。 5)バナナのグリセミック指標 やすいデンプンとして大腸へ移行し,発酵を受 23) ける 。この難消化性デンプンをレジスタントス グリセミック指数(GI 値と略)は急激な血糖 ターチ(RS)と呼ぶが,デンプンの化学的およ 値上昇を抑制する食素材を栄養機能的に評価する び物理的特性に起因して生成する。バナナの RS ために使われている指標である。バナナは低 GI は便量を増やし,大腸内細菌叢で発酵を受け,短 素材として知られているが,その摂取による血糖 鎖脂肪酸として酢酸,プロピオン酸,酪酸を生 値の上昇は他の果実より緩い22)。これはバナナに 成する24)。短鎖脂肪酸はそれぞれが個別の生理活 デンプンや食物性繊維が含まれていることが要因 性を持つが,大腸の上皮細胞の増殖エネルギー である。対照としてのリンゴの場合には,デンプ 源,肝臓での糖新生の材料,末 梢 脂肪細胞のエ ンは極微量しか存在しないが,食物性繊維が多 ネルギー源等が知られている。RS は大腸細菌叢 いため,血糖値上昇は比較的緩い22)。第6表に品 を介して重要な栄養機能を担っているといえる。 種の異なる4種類のバナナの糖組成と GI 値を示 そう しょう 25) す23)。バナナには単糖類のグルコース約4~7%, Segal ら は健常人16名でバナナの摂取に起因す 食品と容器 282 2013 VOL. 54 NO. 5 熱帯果実,特にバナナの機能性 フラクトース約5 第6表 スリランカで栽培された4品種のバナナ(100g)の炭水化物含量(g)と GI 値23) ~ 13 %, 二 糖 類 の シュークロース約4 ~7%と消化性デン プン0~3%台があ り,さらに難消化性 動は大きいが,50g の炭水化物を投与し た試験では GI 値は Mysore AAB AAB AAA ABB 水分 70.9 75.6 74.2 68.2 消化性デンプン 3.7 Tr 1.3 Tr シュークロース 7.2 4.3 6.8 3.5 炭水化物吸収性 グルコース デンプンを1~5% 含む。品種による変 Silk 遺伝子型 4.6 フラクトース 総量 Gross Michel Pisang Awak 5.4 4.1 6.6 11 13.4 4.9 12.5 26.5 23.1 17.9 22.6 難消化性デンプン 3.8 4.4 4.5 1.2 GI 値(50g炭水化物相当バナナ) 61 61 67 69 5.5~7 3.7~4.4 6~7.7 4.1~4.9 GI 値(1本のバナナ当たり) 60~70であるが,1本当たりのバナナ換算では3 が,同時に抗酸化成分として炎症を抑えると推定 ~8と低い。 されている24)。肥満傾向ラットではドパミンが基 低 GI 食品では高粘性という物性が可溶性成分 礎値の50%ほど少なく,ドパミン濃度を回復する の移動を抑制し吸収を遅延させるという食品物性 ために食事量を増そうと行動することが観察され 14) も重要と考えられており ,バナナの粘性が関与 ている25)。バナナから摂取されるドパミンが脳を していることも予想される。 介して食習慣に影響を与える可能性に関して研究 途上であるが,興味がもたれる課題である。 ●6.バナナのアミン系抗酸化成分: ドパミン,メラトニンとセロトニン など● 一方,バナナには強い抗酸化能力を持つ別のホ ルモン成分,セロトニンとメラトニン(第5図参 照)が含まれる。セロトニンはヒトにおいて前述 国内で最も一般的なキャベンディッシュ品種 のドパミンの体内生成を制御する物質であり,一 バナナはアスコルビン酸に加え数種の重要な抗 方メラトニンの前駆体でもある。セロトニンは生 24) 酸化成分を含んでいる (第7表)。これらには 食用バナナや料理用バナナのプランテインの果 食品の酸化抑制に使われる添加物ブチルヒドロ 肉部中心で26~28 µg / g 含まれ26),メラトニンは キ シ ア ニ ソ ー ル よ り 抗 酸 化 力 が 強 い ド パ ミ ン ( 3,4-dihydroxyp henylethylamine), ド パ ミ ン その約千分の1濃度存在している27,28)。セロトニ の前駆体であるドパと,ドパミンの代謝産物であ 12名の健常男性がバナナ,オレンジ,パイナッ るノルエピネフリンを含んでいるのが特徴であ プルの各1kg から得た果汁を摂取する試験では, ンもメラトニンも容易に体内に吸収される27~29)。 る(第5図参照)。ドパミンは特に果皮に多く未 第7表 適熟バナナの果肉と果皮部の抗酸化 24) 成分濃度(mg / 100 g ) 熟なバナナでは865~1,940 mg / 100g含まれ,適 熟期で80~560 mg に減少する。しかし果肉部で 抗酸化成分名 は,未熟時で も4.7~10 mg / 100g で, 適 熟 期 で ドパミン 2.5~10 mg / 100gと変化はほとんどない。ドパミ ドパ ンは果実を酸化から防御していると考えられてい る。バナナのドパミンは水溶性であり,容易に吸 1.1~8 ND~24 ナリンギン ND~3.3 28~95 カロテン類 トコフェロール類 連した神経活動の調節に重要な位置を占めている 食品と容器 1~1.5 0.82~1.6 アスコルビン酸 も作られ脳内活動に重要であり,記憶・学習に関 283 果皮部 80~560 ノルエピネフリン ルチン 収され体内で代謝される。ドパミンはヒト体内で 果肉部 2.5~10 ND 11~16 6.9~11 5.8~8 0.03~0.12 0.28~0.78 ND 1.5~5.8 2013 VOL. 54 NO. 5 ⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話 それぞれの試験区で血液中のメラトニン代謝物が クチン活性の調査品種はいまだ限定的であるが, 果汁摂取後2時間で最大に達し,血液の酸化が抑 Emperor バナナと Del Monte バナナには,マク 29) 制されたことが確認されている 。セロトニンは ロファージ活性化,癌細胞増殖抑制,HIV ウイ 神経を抑制的に働かせ落ち着きと安定感をもたら ルス逆転写活性を阻害する共通の機能が見いだ し,メラトニンは生物時計(概日時計)を制御し されている34,35)。Emperor バナナの BanLec はグ 睡眠を制御するホルモンである。一方,メラトニ ルコース・マンノース結合型31),Del Monte バナ ンの強い抗酸化力は,体内で発生する炎症で生じ ナの BanLec はフラクトース・グルコサミン結合 る酸化分子を消去しつつ,多くの代謝系制御を介 型35)で,分子構造に違いが確認されている。さ して炎症を治癒させる効果も持つことが判明しつ らに Del Monte バナナの BanLec では白血病細 30) つあり ,食餌性のこれら成分がヒト代謝に少な 胞,肝癌細胞の増殖抑制効果が報告されている35)。 からぬ影響を及ぼすと考えられている。 Swanson ら36)はマンノース結合型 BanLec がヒ とう ト免疫不全ウイルス(HIV)表面の外套糖タンパ ●7.バナナレクチンの機能 ● ク質のマンノース構造を認識し直接結合し,ウイ 適熟の生食用バナナとプランテインと呼ばれる ルスを効率高く不活性化することを確認した。こ 料理用バナナの主要タンパク質の1つは生理機能 の外套糖タンパク質は,ウイルスが宿主細胞に吸 を持つ糖タンパク質レクチン,バナナレクチン 着・進入する際に,宿主の免疫機構から逃れるた 31, 32) 。バナ め表面に突起状に出ており,これを不活性化させ ナを含め種々の植物由来のレクチンは試験管レベ る BanLec は HIV ウイルス感染を予防する成分 ルと動物レベルで癌細胞抑制等の生理活性を持つ として注目されている36)。 (略号 BanLec または PlanLec)である ことが知られている33)。BanLec は2つの同一タ 最近報告されたバナナの免疫関連効果の事例を ンパク質が2量体となった構造を持ち,種々の 紹介する。14名による75 km 自転車タイムトライ 標的細胞表面のマンノース構造に特異的に結合 アルで,バナナと6%炭水化物飲料の摂取効果を し,その細胞を活性化または不活化する機能を持 走行後に比較したところ,バナナは血液のドパミ 31) の果肉部分にありその他の組織には見つかってい ンと抗酸化力を有意に上昇させると同時に免疫サ イトカインの IL-10,IL-8 の生産を高めることが ない。しかも直鎖グルコース残基にも結合する特 観察されている37)。今後も食餌時の機能性の発掘 性を有していることが判明し,バナナのデンプン と証明が期待される分野である。 つ型のレクチンである 。この BanLec はバナナ 32) と結合して存在していると推定されている 。レ NH ● おわりに ● CH O 2 H 3C HN O HO OH ドパミン メラトニン NH 2 N H はエネルギー供給と同時に一般微 時に提供できる貴重な果実といえ る。その甘さと硬さ,大きさ,保 ノルエピネフリン 第5図 神経制御に関わるアミン系成分も化学構造 食品と容器 まで機能性が見いだされ,バナナ 2 腸資化成分,免疫賦活成分等を同 セロトニン OH バナナの栄養学的価値は高まって 量栄養素,ホルモン作用成分,大 HO OH HO 機能性成分の研究が進むにつれ, いる。低分子成分から高分子成分 N H NH HO 3 284 存性と価格いずれも日常生活に取 2013 VOL. 54 NO. 5 熱帯果実,特にバナナの機能性 り入れやすい特性を持つ果物である。わが国では る。ダン・コッペル著(黒川由美訳)「バナナの 生食用途が主流であるが,今後用途が広がり,さ 世界史」38)である。バナナの普及にまつわる生物 らに健康を支援する果物となるよう期待したい。 学的・社会学的エピソード,近年のパナマ病によ 現在のようにバナナが豊富に食卓に並ぶまでには, る大打撃,栽培国の政治と企業活動,将来への課 長い間の多くの人々による栽培と流通の仕組み作 題と期待など,1本のバナナが持つ壮絶な歴史物 りが欠かせなかった。この世界を巻き込んだグ 語である。一読を推薦し,食卓のバナナに感謝し ローバルな歴史を物語る1冊の本が出版されてい たい。 参 考 文 献 1)農林水産省消費・安全局消費・安全政策課,平成19年 度食料品消費モニター第2回定期調査結果「果実・果 実飲料の消費動向について」(2008) 2)Kongkachuichai R., et al., Int. 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支えとして寄与しているのでしょう。 食生活については,畜肉が大好きな人,お魚が 動物の飼育実験では,無菌動物が長生きするこ 好きな人,野菜が大好きな人とあるようです。で とが知られています。つまり,ネズミなら妊娠し すから何を食べるかということは,ある程度の範 ているネズミを,帝王切開のようにして子宮から 囲であれば,健康長寿に直接にはかかわりがない ネズミの無菌胎児を取り出します。そもそも動物 のかも知れません。 は人間も含めて微生物にまみれています。人間で また100才長寿者としては,聖路加病院の理事 いえば細胞数は60兆コとされていますが,人間に 長・日野原重明先生が有名です。日野原さんは先 住みついている微生物は100兆コを超えていると のこと先のことを考える方で,現在101才ですが, いわれます。それらの膨大な数の微生物は全てが 110才位までの毎日の予定を手帳に書きこんでい 病原菌というわけではなく,常在菌といわれます るといいます。そのように将来の予定をして行く が,腸,口,皮膚,鼻などに住みついています。 ことが,健康長寿によいのでしょう。 もちろん生殖器にも住んでいますが,入口と違っ ところで,昨年(2012)の暮れから今年の春に て内部の奥は無菌状態になっています。それで子 かけて,読売新聞によると世界最高長寿の人が現 宮から無菌の胎児を取り出せるわけです。無菌の 在のところ,男の人も女の人も日本人になったと 胎児を注意に注意を重ねて無菌的に飼育すると, いう嬉しい話がありました。 大体50%ぐらい長生きするそうです。 しかし,このような無菌動物は無菌状態ではな 男性の方では,京都府の木村次郎右衛門さんで 食品と容器 286 2013 VOL. 54 NO. 5 い,細菌などがウヨウヨするシャバに出すと,ト ア文学から来ています。これは「帰りなんいざ, タンに多くの微生物に感染されて発病してしまい 田園まさに荒れなんとす」で始まる『帰去来の ます。ですから全く実用性は無いわけです。 辞』で有名な,中国の詩人・陶淵明(365~427) の作品・『桃花源記』から来ています。 それで実際を考えれば,次善の策として比較的 無難な微生物を感染させればよいと考えられます。 大体,腸内 に 居 る 常 在 菌 は,20 % が 有 用 菌, シン <晋の太元の頃,武陵の人,魚を捕うるを業と タニ なす。渓にそいて行き,路の遠近を忘る。たちま ヒ ヨ リ ミ キン 20%が有害菌で,60%は日和見菌だそうです。日 ち桃花の林にあう> そこからさらに逆のぼって山に突き当たります。 和見菌は,有用菌が多くなれば有用菌のように働 き,有害菌が多くなれば有害菌のように働くそう すると小さな洞窟があって,そこを通り抜けると です。それで有用菌を増やすことが大事だと考え 桃源郷にたどりつくわけです。 このようなユートピア物語りは数多く伝えられ られています。 その第1は乳酸菌を増やすことです。そのため ています。しかし実際にはこのようなユートピア 現在日本の日常生活では乳酸菌飲料・ヨーグルト を発見したという話は聞きません。これはユート などを摂ることが推しょうされており,国民もそ ピアは成立しても,大きなストレスのない社会で うしているようです。 は,ある程度の短い期間で自己消滅してしまうこ とを示しているのではないでしょうか。 これはロシア生まれの生物学者,エリー・メチ ところで,私には現代日本の社会はこのような ニコフ(1845~1916)の論説から始まりました。 メチニコフは19世紀末に当時,健康長寿と考えら 自己消滅の過程に入りかかっているのではないか れていた東ヨーロッパのブルガリア人の日常生活 と思われます。 現に厚生労働省の人口問題研究所が本年3月27 を研究して,その健康長寿の原因がヨーグルトの 日に「地域別将来推計人口」を発表しています。 多量摂取によると結論づけたわけです。 メチニコフは当時フランスで研究をしており , それでは2010年の国勢調査によると,日本全体で たいそう著名な人気学者でしたから,このブルガ 総人口は約1億3,000万人ですが,四半世紀後の リア・ヨーグルトの話はたいへん有名になり,多 2040年には,約1億700万人に減少します。80% くの学者もこの意見に賛同しました。 ほどに減ってしまうわけです。都道府県別では, トップが秋田県で約36%の減,次が青森,高知と それで今でもブルガリア・ヨーグルトは世界的 続いています。もちろん少子高齢化も進みます。 に著名です。 そのような人口減少と少子高齢化のスピードはど 乳酸菌は糖類から最終的に乳酸をつくり出し, んどん加速しているようです。 腸内を酸性に保ちウェルシュ菌などの有害菌を住 ですから,筆者の日本が消滅の時代に入ってい みにくくするようです。 キ ユ ウ るというのは,杞憂ではないように思うのですが。 ところで動物飼育試験には,たいへんオモシロ イ,「ユートピア実験」というのがあったそうで どうでしょうか? す。私は原報を見ていませんが,次のような話です。 その問題はさておき,日本人はたいへん長寿国 ネズミに質的・量的に充分の食事を与え,ネズ 民になりました。その理由として昔からいわれて ミ人口が増えれば,居住空間を次々に増設して いる「腹八分目」がよいのでしょう。人類には長 やって,場所の取り合いも起こらないようにしま 寿遺伝子というのがあるそうです。しかしその長 す。すると始めのうちは,ネズミ人口は増え続け 寿遺伝子は満腹だとオフになってしまい,空腹で るのですが,五代目ぐらいから段々増えなくなっ オンにスイッチが入るそうです。日本人はほとん てしまい,最終的には消滅してしまったというこ ど全員がこのスイッチがオンになっていて,その とです。 ために世界最高長寿者を出すような健康長寿を享 また誰でも知っている桃源郷も中国のユートピ 食品と容器 受しているかもしれません。 287 2013 VOL. 54 NO. 5 ● 海外技術情報● 食品・飲料容器用ラベルの新製品 ( New Developments in Labels and Sleeves ) Food Engineering & Ingredients(BEL)p. 16( ’ 12・9 / 10 )文献 № 5831 2014年12月から実施される欧州連合の消費者に 元図補正ソフトウエアが利用できる。もう1つの 対する食品情報開示に関する EU 規則1169 / 2011 欠点は容器のネック部や頂部のスリーブフィルム ではアレルゲンの明示および栄養データの表示義 にミシン目が入った切り裂き部分が付いていても, 務が新たに加わり,これをすべて判読可能な大き 容易にはぎ取ることができない場合があることだ さの文字で表記しなければならなくなる。多くの (特に高齢者にとっては)。その対策として欧州の 商品がすでにこの要件を満たしているとはいえ, CCL から“easy4opening”システムが登場する。 従来型のラベルでこの新たな規則を順守しながら スリーブのミシン目が入った切り裂き部に旗の形 商品の見栄えを維持するには限界がある。機能性, をした固いつまみを設け,この部分をつまんで引 見栄えの両面からラベルに対する食品メーカーの き裂きやすくしたもので,特に小型ボトルや広口 要求はますます厳しくなってきており,これを受 瓶に適しているという。 スリーブラベルのもっと大きな問題点はリサイ けて興味をそそるいくつかの革新的な技術開発が クリングの流れの中でシュリンクフィルムが深刻 進められている。 スリーブラベルが伸長 な異物混入の原因になることだ。先般,米国使 食品・飲料向けスリーブラベルは毎年約5%の 用済みプラスチックリサイクル業協会(The US 勢いで市場が拡大しており世界のラベル市場の中 Association of Post Consume Plastic Recyclers) で最も急速に伸びている分野である。印刷可能な は,廃棄物の中で全面をスリーブで覆った PET 筒状のフィルムを用いるスリーブラベルにはスト ボトルの量が増大してきていることに懸念を表明 レッチフィルムやシュリンクフィルムなどいくつ し,製造業者向けの手引書を発行した。問題はリ かの異なった方式があるが,その中で加熱シュリ サイクル可能な廃棄物を仕分けする自動近赤外線 ンクラべリング方式が市場全体の約75%を占めて センサーが,別の材質の不透明なフィルムで覆 いる。スリーブフィルムは印刷,着色,透明,不 われた PET ボトルを検出し難いことだ。さらに, 透明のいずれも可能でいろいろな形に仕上げるこ シュリンクフィルムは大半がポリ塩化ビニルを素 とができ,斬新な形状の容器でも見苦しさを生じ 材としており比重が PET とほとんど変わらない させずに装着できる。製品情報を明示しブランド ため,水を使った方法では容易に分別することが イメージを持たせるために容器の全周にわたり, できず PET 再生材に混入して商品価値を著しく 印刷が可能になるという利点がある。また,ス 低下させてしまう。このため,代替え策としてス リーブラベルを採用すれば,プラスチック容器自 トレッチフィルムの新開発技術が多くの注目を浴 体は着色不要で肉厚の薄いものが利用でき,ス びている。CCL Label 社のスーパーストレッチ リーブでキャップを覆えばいたずら防止機能を持 スリーブ(“Triple”)は従来スリーブに加熱シュ たせることもできる。 リンクフィルムを使わざるを得なかった形状のボ トルや広口瓶にも対応しており,既存のリサイク しかしながらスリーブラベルにも欠点がある。 フィルムを加熱してシュリンクさせ容器に装着す ル設備で PET との分別ができ,装着に接着剤が る際に図柄にゆがみが生じる可能性があることが 不要でシュリンクフィルムのような加熱トンネル その1つだ。この点はディストーション(歪み) も必要としないためエネルギー使用量も少なくて 印刷を施すことで克服でき,そのための仮想3次 済む。 食品と容器 288 2013 VOL. 54 NO. 5 その他の新開発技術 費者の行動を喚起する新たな技術にも目を向ける 環境問題もラべリング技術の開発を後押しする ようになってきた。パッケージ表面に付けられ 要因となっている。DaniMer Scientific 社が石化 た QR コードがその一例だが,これは1990年代に 系接着剤に代わるものとして開発した PET ボト 日本で考案されたもので,スマートフォンで読み ル用ラベルの接着レジン DaniMer 92721はリサイ 取ることができ商品のラベルに直接表示できない クル材を50%以上使用している。PET のリサイ 情報を消費者に提供する手段となっている。日 クル処理工程で接着剤によって生じる凝集とい 本ではすでに何年も前から数多くの食品・飲料 う問題を軽減する効果を持つこのレジンは,苛 製品に QR コードが使用されているが,欧州での 性洗浄液に完全に溶解し,他の接着剤に比べて 採用の動きは最近まで遅々としたものであった。 処理工程で生じる廃水中の BOD 値も低い。また, 英 国 の ス ー パ ー マ ー ケ ッ ト チ ェ ー ン Marks & Avery Dennison 社が新たに開発したガラス瓶お Spencer 社が2009年に自社ブランドの瓶入りオレ よび PET ボトル用ラベル Fasson は,複雑な形 ンジジュースに QR コード採用を試みたが,以 状に対応でき,かつ,熱膨張率の異なる多層の 来,次第に高度で手の込んだものになってきてい フィルムでできているため温水洗浄器で加温され る。Pernod Ricard New Zealand 社は自社ワイン ると丸まって容易に除去できる。ガラス瓶に装着 ブランド Brancott Estate のサイトにリンクする したラベルは接着剤とインクがそのままラベルに スマートフォン用アプリケーションを開発し,消 残り温水に交じることはない。PET ボトル用の 費者が読み取った QR コードからこのアプリケー Fasson ラベルは密度が低いので苛性洗浄工程で ションをダウンロードしてブドウ園の見学のよう の分別が可能で PET に混入して劣化させるとい な仮想体験をしたり,試飲情報やどんな食べ物と う問題が生じない。ラベルの除去は80℃の温水で 合うワインかといった情報にもアクセスできるよ 行うのが普通だが,このラベルは65℃の温水で除 うにしている。 QR コードはまだ初 去できるので大幅なエネルギーの節減にもなる。 期の普及段階にあるが, 見栄えの改善ということも依然としてラベル技 術の開発を推し進める力になっている。デジタル 十分に普及する前に他 印刷の新技術により小ロットの印刷が可能となっ の開発技術に取って代 たため,小規模の生産者でも高品質のラベルが利 わられてしまう可能性 用しやすくなっている。インモールドラベル用 もある。その候補の1 に Verstraete 社が新たに開発した印刷済みのポ つがプリンタブル電子 リプロピレン製透明ラベル SuperClear は,成形 回路だ。食品用ラべル モールドにセットすると射出されたポリプロピレ としてはまだ技術的にもコスト的にも実用化の段 ンと融合して従来と比べて透明性の高いラベル 階に至っていないが,英国を本拠とする Innovia と装飾が施された容器が,単一の材料で出来上 Films 社は2011年末,インプリントロジック回路 がるのでリサイクルが容易になるという。Avery の開発を手掛ける PragmatIC Printing 社との共 Dennison 社がワインや酒類の高級品向けに開発 同開発により,印刷エレクトロニクスを二軸延伸 した Aqua Proof フィルムは,高級紙の外観を持 ポリプロピレンのラベルフィルムに組み込むこと ちながら氷水に浸しても冷蔵庫貯蔵しても影響を に成功したと発表した。開発者によれば,この技 受けず,貯蔵中に紙ラベルが傷みやすいオリーブ 術は調理方法,賞味期限,販売価格,等の情報を オイルのような製品にも利用できる。 提供するなど,食品・飲料業界でのいろいろな応 インタラクティブラベル 用の可能性を秘めているという。 (桜田三郎) 食品メーカーは従来のラベルとは異なる形で消 食品と容器 289 2013 VOL. 54 NO. 5 ● 海外技術情報 ● 高齢者向け食品・飲料の開発 ( Developing Foods for an Aging Population ) Food Technology(USA)p. 22( ’ 12・10 )文献 № 5836 医療や健康管理の改善が寄与して人の寿命が延 や飲料製品にオープンな傾向があり,シニア世代 びている。国連は,60歳以上の世界人口は2000年 より CPG の消費が多い。両世代の共通点は,良 の11%から2050年には22%に増加すると推定して 好な健康状態で活動的に目いっぱい老後を生きる いる。これは,この年齢層が6億500万人から約 ための探求である。従って,メーカーは単に年齢 20億人に増えることを意味している。 に応じて製品を勧めるのではなく,加齢に関連す る健康問題の解決や予防に寄与する製品を市場に この人口シフトは社会的,政治的,経済的に世 出している。 界的な課題である。特に加齢に伴う健康問題は生 活の質を低下させ個人や社会の経済的負担を招く。 健康問題への対応 人々は活動的で健康的な老後を送るために,健康 50~64歳の米国人の60%以上は,関節炎や,が 問題の解決や予防を食品に頼り始めている。しか ん,糖尿病,心臓疾患,高コレステロール症,高 し,今まで積極的に高齢者を対象とする食品飲料 血圧症などの経験がある。これが近年機能性食品 は比較的少なく,この年齢層は食品飲料メーカー や飲料が飛躍的に成長した要因の1つである。実 に対して課題と機会を提供していることになる。 際に,高齢者の大多数は,認知低下や心臓疾患な 変化する消費者市場 ど加齢による健康問題を懸念している。ヘルスク 食品や飲料のパッケージ製品(CPG)の大部分 レームを持つ商品と医療/臨床分野の商品の世界 市場は2,000億ドル以上と推定されている。 は,主として若年世代(子供と18~49歳の世代) 加齢による身体機能の衰えを最小化するために, を対象にしているが,現在,ベビーブーマー世代 (1946~1964年生まれ)はこの年齢を過ぎている。 65歳以上の米国人の87%はより健康によいものを さらに,初産年齢の高齢化や出生率の低下により 食べようとしている。食行動は年齢によって傾向 若者市場は相対的に縮小している。2030年には米 がある。例えば,ほとんど毎日全粒穀物を食べる 国の18 ~ 49歳の層は現在より12%増えるが,50 ベビーブーマーは35%だがシニアは44%である。 歳以上の層は34%増えると推定されている。 また,ベビーブーマーの21%は毎日1回オメガ− 現在,米国のベビーブーマー世代は8,000万人 3を食品やサプリメントで摂っているがシニアは で,CPG 売り上げの約50%,2,300億ドルを占め 30%である。しかし,一般に「機能性効能」があ ている。さらに,シニア層(1925~1945年生ま るとされる食品飲料の消費は年齢の増加と共に減 れ)の寿命は延び,2050年の80歳以上の世界人口 る傾向にある。これは,シニア層(特に高齢者) は,2000年の4倍,約4億人になると推定されて は機能性ヘルスクレームに懐疑的なためである。 いる。現在でも,彼らは1億3,000万人以上でか ヘルスクレームに対する多くの厳しい規制にも なり大きい市場を示している。この高齢者人口は 関わらず,2011年に高齢者を対象に新発売された 巨大であるにも関わらず,64歳以上を対象にした 製品は世界で5,770品目あり,その大部分は消化 宣伝費は5%未満と推測される。 器と心臓の健康に関するものである(第1図)。 機能性強化の取り組み ベビーブーマー世代は約20年の範囲にわたるの 食品飲料業界は,高齢者の健康問題に対処する で,消費ニーズが多様であって当然である。シニ ア世代は食品の機能性メッセージに懐疑的だが, ために機能性の付加に利用できる多くの成分を紹 ブーマー世代は予防のメッセージを提供する食品 介している(第2図)。 食品と容器 290 2013 VOL. 54 NO. 5 0 1000 2000 3000 0 10 20 30 (%) ビタミンC カルシウム ビタミンA ビタミンE プロバイオティクス 食物繊維 全粒穀物 オメガ-3 プレバイオティクス ナイアシン ビタミンD ニンニク タウリン カフェイン 消化器の健康 心臓の健康 骨の健康 心の健康 目の健康 抗加齢 関節の健康 第1図 2011年新発売のシニア向け健康関連製品数 ♦ヨーグルト:プロバイオティクスを含有する ヨーグルトは消化器の健康をサポートする。腸内 の栄養不足は上皮細胞のダメージにつながり,局 第2図 2011年ヘルスクレームを強調して世界で 発売された製品に含まれる上位成分 所免疫の低下や食事成分の吸収低下,食欲の減退 を起こす。Dannon 社の Activia は,消化器の健 康をサポートする培養プロバイオティクス(特 製品である。また,パンには骨や心臓の健康によ 許)の Bifidus Regularis を含有している。2012 いカルシウムやビタミンD,オメガ−3脂肪酸な 年夏,穀粒をミックスした低脂肪ヨーグルトの ども強化されている。 Breakfast Blend(タンパク質11g含有)が発売 食物繊維を強化した朝食シリアルも消化器の された。タンパク質は加齢性筋肉減弱症の防止に 健康効能が宣伝されている。Kellogg 社の Fiber 寄与する。 Plus Antioxidants シリアルは食物繊維や全粒穀 物,抗酸化物質,ビタミンCとEの優れた供給源 ♦黄色脂肪(yellow fats):マーガリンやスプ である。 レッド(黄色脂肪)は,コレステロール値のコン トロールや心臓の健康維持に有効な植物スタノー ♦ミルクおよびその他の飲料:ミルクなどの乳 ルやオメガ−3脂肪酸を含有し,高齢者層は機能 製品は機能性成分やプロバイオティクスの理想的 性黄色脂肪の重要なターゲットである。Raisio 社 なキャリアーになる。過去10年間,乳製品メー の Benecol スプレッドはこの分野の主要製品であ カーは植物スタノールやオメガ−3脂肪酸,ビタ り,「1日当たり0.5gの植物スタノールはコレス ミンD添加カルシウムなどを強化したミルクを開 テロールを低減する」というヘルスクレームを容 発してきた。2011年,Stonyfield Farm 社は,包 器の前面に掲載している。 装の前面に「心臓や脳,目の健康」とうたったオ ♦パンとシリアル:2010年食事ガイドライン メガ−3脂肪酸強化製品を発売した。イヌリンや は,1日当たり3~5皿以上の全粒穀物摂取を推 CoQ10なども強化ミルクに利用され始めている。 奨している。全粒穀物摂取は体重やコレステロー ソフトドリンクやジュース,スポーツエネル ル低減に寄与し,糖尿病や心臓血管疾患などの慢 ギー飲料なども各種健康成分の良好なキャリアー 性疾患のリスクを低減する。このヘルスクレーム になり,心臓の健康効能をうたった機能性飲料が は FDA によって認可されている。しかし,2008 大量に市販されている。この種の飲料の世界市場 年の55歳以上の1日当たり平均全粒穀物摂取量は は約8,500億ドルで,売上高の大部分は植物ステ 1皿以下であり推奨量の14%以下である。 ロールやカリウムを特徴にした冷蔵果汁やドリン 米国では,全粒穀物を強化したパンが増えてい ク,スーパーフルーツ飲料である。しかし,これ る。現在,米国の白パン市場の約10%が全粒穀物 らの飲料は健康効能にも関わらず,高齢者を対象 食品と容器 291 2013 VOL. 54 NO. 5 にしているという示唆は少ない。 の正確な感覚フィードバックにも大きく左右され 製品開発における留意事項 る。口腔内の受容体は味と同様に圧力や振動,場 高齢者用製品を開発する場合,機能や栄養特性 所,痛み,温度に反応する。触覚フィードバック の他に留意すべきファクターが多い。老化現象は, は口内の食品の位置や咀嚼に要する適切な力,嚥 嗅覚や,味覚,皮膚感覚,視覚,聴覚,運動感覚 下する食品のサイズと硬さを判断させる。 などの知覚能力の減退を伴って生じる。これは人 高齢者の約40%は食品の咀嚼や嚥下に問題を が食品のフレーバーや温度,色,外観,テクス 持っていて,栄養摂取や満足できる生活状態,全 チャーなどの情報をどう認識するかであり,この 般的な生活の質などに影響している。食品増粘剤 機能が低下すると食品の美味しさや満腹感の感知 やゼラチンの使用は特定食品のテクスチャーに寄 が衰える。製品開発者は,高齢者の知覚の衰えに 与する。 留意すると同時に,五感や個人によって衰え方に ♦包装容器:パッケージは高齢者を対象にした 差異があることを理解する必要がある。 製品の成功を左右する。視力が衰えた高齢者には ♦味とにおい:嗅覚の1次神経細胞は環境に直 大きいフォントと易しい用語で読みやすい表示を 接さらされ多くのダメージを受ける。他方,味覚 することが肝要である。さらに,高齢者は力が衰 系は神経細胞でなく上皮細胞で構成されている。 え製品の開封が困難になる。55歳以上の消費者を 従って嗅覚喪失は味覚喪失よりも一般的である。 対象に行った調査では,回答者の64%が食品の 嗅覚が衰えるとイチゴとバナナなど類似フレー パッケージは開封し難いと答え,25%は少なくと バー成分の差異を判別し難くなる。加齢によって, も1週間に1度パッケージと苦闘すると答えてい においの感知能力だけでなく識別能力も低下する。 る。34%はパッケージが要因で将来別の製品やブ 味覚感知では,苦味は薬理学的活性があり細胞の ランドに変えたいと答えている。リシーラブルと ダメージが大きく加齢の影響を受けやすい。甘味 ともに,握りやすい形状のフレキシブル包装は開 は塩味より加齢の影響が小さい。 封しやすく,また鮮度を長く保てる。 嗅覚が衰えると,食品が味気なくなり体重減少 高齢者は徐々に食事の準備が困難になり,しば の原因になることがある。これは「老化性食欲不 しばインスタント食品を求める。さらに進むと摂 振」と呼ばれ深刻な栄養関連疾患である。 他方 取を減少させる。従って,高齢者用食品は栄養に で,高頻度で間食を摂り,さらに美味しい食品を 富み利便性のよい包装であることが重要である。 探し求めて体重が増える人もいる。加齢による嗅 成長市場の攻略 覚系の衰えは通常徐々に進むので多くの人は食品 世界人口の高齢化は食品飲料業界に影響してい の好みは変化しないが,食品の腐敗を認識できな ることは否めない。問題はこれに業界がどう対応 くなることがあり食品安全性リスクが懸念される。 するかである。高齢者は確実で理解できる健康効 高齢者はフレーバーを強化した食品を好むとい 能を提供する食品や飲料を求めようとする。製品 うエビデンスがあり,安全対策からもフレーバー 開発に新しいアイデアは必要ないが,成功するに 強度を上げるとよいと思われるが,問題は個人差 は高齢者層の多様なニーズを理解する必要がある。 である。感覚の衰えは環境や遺伝など多くのファ 課題は,どのスペースで行うべきかを選ぶことで クターに左右され非常に個人差が大きい。 ある。ブランドがうまく提供できる効能を見つけ そしゃく え ん げ ♦テクスチャー:咀嚼や嚥下は歯の健康が低下 ることが重要であり,そして,美味しくなければ したり唾液の分泌が減少すると難しくなる。咀嚼 ならない。消費者がより長く幸せな生活を送る手 効率は加齢による筋力の衰えや歯の欠損,義歯の 段としてその製品を見るように健康効能を効率よ 摩耗などに影響される。咀嚼プロセスは口腔から く伝えることも重要である。 こうこう 食品と容器 292 (合田芳宏) 2013 VOL. 54 NO. 5 ● 海外技術情報 ● 消費期限:食品安全と廃棄物減量のバランス ( Use By Dates−Food Safety and Waste Reduction ) Food Engineering & Ingredients(BEL)p. 22( ’ 12・9 / 10 )文献 № 5832 消費者が購入する包装済み食品の耐用性を表示 ラム(WRAP)が出した報告では,英国の小売 するのは,安全性と品質の観点から重要である。 業から出る廃棄食品だけでも金額にして毎年6億 EU では「消費期限」ないし「賞味期限」のいず ポンド以上に達すると推計している。小売業以外 れかの表示を法律で義務付けている。この制度が から出る消費者による廃棄なども加えると,食品 始まってから15年を経たいま,増え続ける食品廃 の廃棄は持続可能性が求められる時代に逆行する 棄量の問題はその表示のあり方について疑問を投 ほどのレベルに達してきている。中でも,消費期 げかけている。 限を表示した食品は,期限が過ぎると販売できな くなるため,食品廃棄の最大の元凶となっている。 日付の表示は,その食品の安全性と味につい て消費者に明確な情報を提供することを目的と どうして消費期限が食品廃棄につながるのか している。食品の表示内容や宣伝に関する EU 指 問題のひとつは,本当に細菌汚染の危険のある 令2000 / 13 / EC はほとんどの包装食品について 製品と,汚染は受けても危険というまでには至ら 消費期限ないし賞味期限を表示するよう求めて ない製品とがあるにも関わらず,それを特に区別 いる。この指令は2014年12月に新しい EU 規則, もせず一律の表示を適用しているところにある。 1169 / 2011に改められることになっているが,日 調理肉,シーフード,ソフトチーズ,フレッ 付の表示については特に変更はない。大抵の包装 シュサンドイッチ,サラダといったそのまますぐ 食品は引き続き賞味期限の表示が義務付けられて に食べられる食品は,食中毒のリスクがあること いるが,傷みやすく,健康被害につながりやすい は周知のことだが,その区別がはっきりしないも 食品については賞味期限に代えて消費期限を表示 のもある。例えば,ヨーグルトは pH が低いので することが求められている。 病原菌は繁殖しないのだが,その75%に消費期限 日付の表示に関するルールが変わらないという の表示があり,残り25%は賞味期限の表示が付い のは,食品業界や消費者にとって一見良いことの ている。ヨーグルトの場合,これは安全のためと ように思われるが,改善すべき欠陥はあるとする いうよりも味という観点からそうなっているだけ 見方もある。というのも,消費期限と賞味期限の で,本来は賞味期限を表示すべきところである。 違いを多くの人がよく理解していないため,小売 同じことはジュースや熟成チーズなど病原菌の繁 業者にとって在庫管理に都合の良い「陳列期限」 殖しにくい pH の低い食品にもあてはまる。 とか「販売期限」といった法律にはない表示が乱 これまで日付表示に関するガイドラインはほ 用される例があったりするためである。日付表示 と ん ど な く, メ ー カ ー の 判 断 に 任 さ れ て い た の意味をよく理解していない消費者が傷みやすい が,2011年 後 半 に 至 っ て 英 国 環 境 食 糧 農 林 省 食品の消費期限に注意を払わなくなれば,それは (DEFRA)が消費期限表示の判断の目安となる 食品安全という問題につながるが,それよりも 「決定木」(decision tree)を付したガイドライン もっと大きな問題は食品廃棄物の量への影響とい を定めた。そこに例示されているものに,ヨーグ う点であるだろう。 ルトを3つのカテゴリーに分けたものがある。 今日,極めて大量の食品が,消費期限に達した ヨーグルトA:製品出荷の履歴からリステリア からという理由で廃棄されているという現実があ 菌がなく,また,あったとしても繁殖することは る。2010年に英国の廃棄物資源アクションプログ ないということができる工場で生産されたもの。 食品と容器 293 2013 VOL. 54 NO. 5 シェルフライフの設定 ヨーグルトB:記録上,リステリア菌はほとん 次に,消費期限の表示が決まってからも残るの ど検出されたことがないが,その製品中で繁殖し がシェルフライフをどう設定するかという問題で ないとは断言できない工場で生産されたもの。 ヨーグルトC:超高温処理され常温保存可能で, ある。1992年イギリスでは政府の諮問委員会が真 開封後は3日以内に消費するよう推奨されている 空パック冷蔵食品について,90℃で10分以上の処 もの。 理をしていないものについてはそのシェルフライ フを最大で10日とするガイドラインを打ち出した。 当然ながらというべきか,決定木に従えば,C は賞味期限,Aも同じく賞味期限を表示するのが この「10日間ルール」は,低温下でボツリヌス菌 妥当で,Bは消費期限を表示すべきだということ が繁殖する可能性があるという理由に基づいてい になり,本来は賞味期限を表示すべき製品が消費 る。これはあくまで理論上のリスクであり,実際 期限を表示しているという実態があることが分かる。 にはなかなか起こりにくいことなのだが,英国で 食品安全がキー は多くのチルド食品についてこれが適用されてい 本来,包装食品は商品個々の特性に応じて日付 る。これに対し,他の欧州諸国ではこれよりも長 の表示を行うべきところだが,一般的なルールと いシェルフライフが適用されており,英国でもこ して消費期限は,微生物の繁殖によって保管中に の「10日間ルール」の見直し(SUSSLE プロジェ 安全でなくなる製品に付ける必要がある。しか クト)が官民共同で行われ,90℃×10分以下の殺 し「足の速い」食品については必ずしもそうとは 菌条件の製品であっても10日以上のシェルフライ いえない。ほとんどの食品は病原体の繁殖で汚染 フとすることができるとする科学的データの収集 される可能性を考慮して冷蔵される。また,多く が行われた。 の場合それらはそれ以上の手をかけることなく消 テクノロジカルツール 費される。本当に危険なのは冷蔵されていても病 20年前なら,消費期限を決めるためには製品の 原体が繁殖するような食品に限られる。リステリ 中に菌を入れて培養し,長期間をかけてさまざま ア菌,ボツリヌス菌,腸炎エルシニア菌,セレウ な温度条件のもとでの菌の繁殖についてデータを ス菌などの内,最も重要なものはリステリア菌で, とり,それに基づいてシェルフライフを設定する サルモネラ,カンピロバクター,大腸菌といった という時間もコストもかかるテストをせざるを得 他の病原体は冷蔵食品の中で長期に生存するが, なかった。今日では,こうしたテストを経ずに消 激しい温度変化がなければ増殖することはない。 費期限を設定できる。その最先端の手法が予測微 それらに汚染されれば確かに安全性のリスクはあ 生物学と呼ばれるもので,数々の複雑な数式モデ るが,それだけでシェルフライフを限定して消費 ルを用いてリステリア菌,その他の病原体につ 期限を表示するよう求めるべきではない。 いてさまざまな条件下での繁殖を予測するとい 危険なレベルにまで増殖する可能性のある病原 うものである。その多くがネット上で入手でき 体を含んでいる可能性があるような食品の場合, るが,有力なデータベースのひとつに ComBase その食品の組成,物理的・化学的特性,製造工程, initiative がある。同データベースでは5万件以 流通過程におけるハンドリング,そして消費者に 上のデータを備えており,食品メーカーは自社の よる消費の形態などについて専門家による評価が 製品に関わるデータにアクセスすることができる。 必要である。キーポイントは,リステリア菌ない インテリジェントパッケージング しは場合によってはそれよりも危険なボツリヌス ただ,いかに慎重に消費期限を設定しようとも, コールドチェーンに破たんが生じたり,消費者が 菌の増殖があり得るかどうかである。 そのような評価がきちんとなされれば,前出の 誤使用するといった実際上起こり得る事態をすべ 決定木などによる判定も簡単になり,無駄な消費 て想定することは不可能である。そこで,ここ数 期限表示なども少なくなるだろう。 年注目を集めているのが,包装自体によって周辺 食品と容器 294 2013 VOL. 54 NO. 5 の環境を監視したり,危険を知らせたりする「イ するとしている。もうひとつ,英国 Open Life ンテリジェントパッケージング」あるいは「ス Packaging 社が開発中の Oli-Tec TTI ラベルも マートパッケージング」である。そのひとつに, また極めてユニークなものである。多層構造のこ 時間と温度の変化をモニターする TTI ラベルと のラベルは液体を貯留する部分とポリマーを充填 いうものがある。いまのところ,主要な食品に対 した長短さまざまな毛細管からなり,使用が始ま してはまだあまり採用されるには至っていないが, ると酵素が毛細管中のポリマーを徐々に分解し, 次々と新しい技術が開発されつつあり,今後様相 貯留部分の液体と混ざって色が緑から黄,赤へと は大きく変わる可能性がある。 変化して消費期限が来たことを知らせるというも 米国のプラスチック包装メーカー Bemis 社で のである。こうした新技術はいずれも食品の消費 は,ノルウェーの Thin Film Electronics 社の技 期限表示のあり方を大きく変える可能性を持って 術開発による温度や湿度をワイヤレスで知らせ おり,食品廃棄物を大幅に減らすものとなるかも るラベルを導入しており,2014年には本格販売 しれない。 (大池静男) ● 海外技術情報 ● 食物繊維に富む食品の進展 ( Progress in Fiber-Enriched Foods ) Food Technology(USA)p. 36( ’ 12・11 )文献 № 5825 食物繊維と健康との関係が明らかになるにつれ 生理的影響を持つ多様な来源の非消化性炭水化物 て,食物繊維含有製品への関心が高まり,サプラ に適用されている。食物繊維を述べる場合,可溶 イチェーン全体で革新に拍車がかかっている。 性と不溶性の2カテゴリーが最も一般的に使われ British Medical Journal 誌の論文で E. H. Hipsley るが,これは食物繊維の領域の複雑性を的確にと (1953)はリグニンやセルロース,ヘミセルロー らえていない。可溶性対不溶性に加えて,発酵性 スに対して食物繊維に属するという脚注を付記し 対非発酵性や,粘着性対非粘着性,内因性対機能 た。F. W. Robison(1904)は“朝食用食品”と 性などの特性も食物繊維を述べるために一般的に 題するリポートで食物繊維をセルロースと表現 使われる(第1図)。 し,低い消化性は消化過程で食物に“浮力と体 食物繊維の包括的定義 積”を付与すると述べている。Hipsley の脚注は 食物繊維の国際的,一般的な定義はまだない 食物繊維の最初の実質的定義であると思われるが, が,最も基本的には消化酵素によって加水分解さ H. Trowell(1972)によると,“食物繊維”の用 れず大部分は吸収されないということである。食 語は,食物繊維の生理学的定義が確立された1972 物繊維の性質に対する理解はこの40年間で広がり, 年に採用された。Hipsley(1953)は,食物繊維 種々の定義が研究者や開業医,規制機関から提案 を含有する食事と一部のアジア人やオーストラリ された。最も広く認められている定義はコーデッ ア人の低い子癇発症率との相関関係を調査した。 クス委員会の提案によるものであり,次の3要素 Trowell(1960)は,“食物繊維仮説”で,食物 を規定している。a)10個以上のモノマー単位か 繊維の摂取と種々の食事関連疾病の罹患率との関 らなる炭水化物重合体(重合度3~9を含むかど 係に言及した。これらの初期研究は,栄養や健康, うかは各国で判断),b)小腸の酵素で加水分解 疾病における食物繊維の役割に関心を持たせた。 されない,c)食品中にもともと存在する,また し か ん 多面的な成分 は外部由来の重合体で,有益な生理的効果が明ら 現在,食物繊維の用語は,種々の特性や機能性, かにされている。米国では,2009年のコーデック 食品と容器 295 2013 VOL. 54 NO. 5 機 能 性 ・可溶性食物繊維 ・不溶性食物繊維 ・粘性食物繊維 ・非粘性食物繊維 ・発酵性食物繊維 ・非発酵性食物繊維 ・膨化性食物繊維 ・非膨化性食物繊維 以前の食物繊維 生理的効能 現在の食物繊維 一 般 的 定 義 ・ヒトの消化酵素によっ て加 ・10個以上の分子数の炭水 化物重合物(小腸内の酵素 水分解されない植物細胞壁 によって加水分解されない; の残余物 食物に天然に存在している, ・植物に固有で無傷の非消 または物理的,酵素的,化 化性炭水化物とリグニン(有 学的方法にて得られる,ま 益な生理的影響をもつ分離 たは合成ポリマー;健康に された非消化性炭水化物か 有益な生理的効果) ら成る機能性繊維) ・便通 ・プレバイオティクス& 消化器系健康 ・血糖効能 ・コレステロール低減 ・代謝効能 ・満腹,体重管理 ・免疫サポート 臨床確認された健康効能 便通、糞便量 構造・来源 カロリー量低減 ・ アラビノキシラン,アラビノガラクタン ・β-グルカン ・ぬか類とセルロース ・ガラクトマンナン&グルコマンナン ・難消化性デキストリン/マルトデキストリン ・非消化性オリゴ糖 ・難消化性デンプン ・フルクタン ・糖類 ・ペクチン 食物繊維の摂取と特定疾患 のリスク低減の相関を示す 疫学的研究 消化器系健康 心臓血管健康 満腹/体重管理 血糖健康 ミネラル吸収 免 疫 症例管理研究、特異的マー カー、薬効評価項目 食物繊維の地位 基本的栄養素;栄養摂取 Nutrition Facts Panel 第1図 食物繊維のスペクトラム 健康;効能 強調表示:構造ー機能,健康 第2図 食物繊維の進化 ス定義は重合度3~9のものを含めて広く採用さ れている。医学研究所(2002/2005)によると, Walker(1974),B. P. Burkitt(1975) が, 種 々 期待できる生理的効果は便通や血糖減衰,血中脂 の地域住民の食物繊維摂取量と心臓疾患や糖尿病 質の正常化,大腸内発酵である。さらに,食物繊 などの疾患発生との関係を調査し,食物繊維はこ 維は,認可された表示用分析方法(最も一般的な れらの食事関連疾患予防の役割をすると結論づ ものは AOAC 認可の方法)によって測定できな けた。 ければならない。FDA は,食物繊維に栄養成分 1970年代中期以来,便通や,血糖反応と糖尿病 強調表示を認めていて,食品または飲料1食当 管理,血中脂質,コレステロール,心臓血管疾患 たり2.5g(1日当たり推奨摂取量の10%)以上 予防などに対する食物繊維の効能を示す多くの 含有していれば“良い(good)食物繊維供給源”, 研究があり,その多くは医学研究所(IOM)の 1食当たり5g(1日当たり推奨摂取量の20%) 2005年 Dietary Reference Intakes の食物繊維セ で“優れた(excellent)食物繊維供給源”の強調 クションに収載されている。 表示ができる。また,FDA の CFR21はコレステ 食物繊維の臨床研究で注目される進展は,発酵 ロールの低減や心臓病のリスク低減に対して,一 特性と代謝プロフィルである。大腸の有益細菌に 部食物繊維の健康強調表示を認めている。規制政 よる可溶性食物繊維の発酵が消化系や大腸の健康 策が進化し,食物繊維の定義にはさらに広範囲な 全般に影響することを示す研究がある。大腸の食 取り組み(化学構造や機能性,生理的効果の精査 物繊維発酵産物(短鎖脂肪酸や,大腸細菌の構成 と評価)が規定された(第2図)。 と個体数の変化)は食物繊維のタイプに大きく依 食物繊維の役割 存する。また,食物繊維は代謝されて血糖反応や かいよう コレステロール値などに生理的影響を与える。 非感染性結腸疾患(便秘や憩室疾患,潰瘍性大 腸炎,大腸がん)が珍しいサハラ以南のアフリカ 栄養・健康効能 人の疫学的評価に基づく,Trowell(1960)の仮 食品の栄養・健康効能に対する米国の消費者 説は,おそらく食物繊維と健康や疾病予防との複 の関心や認識は極めて高い。International Food 雑な関係を理解するための最初の試みである。そ Information Council(IFIC) の2011年 全 国 消 費 の後20年間,Trowell(1972,1976)や,A. R. P. 者調査では,米国の消費者の73%は食品や栄養分 食品と容器 296 2013 VOL. 54 NO. 5 は健康維持に大きい役割をすると答え,87%は特 2009年の31%より増えていて,高タンパク質食計 定の健康効能を持つ食品についてもっと知りたい 画(24%)よりかなり高率である。 食物繊維摂取のための選択肢 と答えた。 積極的に製品情報を探したり,製品ラベルを読 現在,包装食品と飲料産業は順調に発展してお む消費者が増加しているのは,決して自分自身の り,原料から製品までサプライチェーン全体で付 ためだけでなく家族や子供達のためである。 加価値を最大化するための革新が進んでいる。 Ingredion 社の2011年消費者調査では,回答者 米国の食物繊維摂取量はまだ推奨量に達してい の大多数は製品ラベルを読み,92%はある程度の ない。IOM は非妊娠・非授乳女性に対して1日 注意を払って食品ラベルを読むと答えている。ま 当たり25g,成人男性に対して38gを推奨してい た,IFIC の2012年消費者調査では,かなりの割 るが,2010年の食事ガイドライン諮問委員会によ 合の消費者が食品や飲料パッケージで種々の事項 ると,まだ目標の約40%程度であり,実摂取量は を探していることが分かった。彼らは,栄養表示 成人で1日14~17g前後である。また,9 ~18の パネルを見る(66%),成分リストを見る(51%), 年齢層も少年,少女それぞれ31g,26gの推奨量 栄養効能説明を探す(42%),健康効能説明を探 に達していない。しかし,米国の消費者は摂取量 す(30%)と答えた。 を増やすために積極的に努力している。2012年の 特に,食物繊維は米国の消費者から大きい共感 IFIC 調査では,消費者の56%がより多くの食物 を得ている。彼らは食物繊維は重要食品成分であ 繊維を摂るよう努力していると答えている。これ ると理解していて,Ingredion 社の消費者調査で は全粒穀物(57%)に近似の第2位であり,カル は,製品ラベルを通常読んでいる回答者の81%は食 シウム(40%)やオメガ-3 脂肪酸(25%)をよ 物繊維の含量や強調表示を探していると答えている。 り多く摂るよう積極的に努力していると答えた消 2012年の IFIC 調査では,消費者が包装食品や 費者の率より大幅に高い。 飲料を買う際,考慮する主要要素の中で食物繊維 最先端の素材技術によって分子量のより小さい はカロリー量と全粒穀物に次いで3番目にランク 食物繊維や,可溶性や多用途加工性の高い食物繊 された。調査対象者の62%は加工食品を買う場合, 維が次々に開発され,“目に見えない”可溶性食 食物繊維含量を考慮に入れると答え,タンパク質 物繊維が食品システムに使用されている。Mintel (56%)やカルシウム(46%)などの栄養成分よ 社の新製品データベース(2012年)によると,食 りも高くランクされた。さらに,ナトリウム / 食 物繊維含量をセールスポイントにした製品はベー 塩(60%)や,トランス脂肪(56%),飽和脂肪 カリー類とスナックのカテゴリーが大部分である (55%)など摂取低減を勧められている成分と比 が,この5年間,食物繊維含量を目玉にした製品 べても,食物繊維含量は購入決定により大きく影 の数は食品や飲料カテゴリーの広い範囲にわたっ 響していることが分かる。 て増えている。この製品開発トレンドは実質的に 2011年の IFIC 消費者調査によると,食物繊維 は消費者ニーズと合致している。Ingredion 社の は機能性食品のトップ10にランクされている。こ 2011年カスタムサーベイでは,消費者は多種多様 の調査では,食物繊維の健康効能を知っている消 な食品から食物繊維を摂ることに関心を持ってい 費者の大多数は,心臓疾患のリスク低減(62%) る。消費者は従来の食物繊維源だけではもはや満 や,消化器系 の 健 康(60 %), 健 康 的 な 血 糖 値 足しない。食物繊維に対する消費者の知識は数年 (62%)のために既に食物繊維を摂取していると 前から実に大きく進化している。 答えている。体重管理のような従来と異なる領域 持続している消費者の関心 でも食物繊維の使用が増えている。2010年の全国 消費者は食物繊維と健康との関係をよく認識し 満腹調査では,消費者の36%は減量のために高食 ていて,食物繊維の摂取を増やすことにも関心が 物繊維食計画に従っていると答えている。これは 高い。健康のために積極的に食物繊維を摂取して 食品と容器 297 2013 VOL. 54 NO. 5 いる消費者の割合はここ数年現状維持か上昇傾向 従って,生理的に有益な食物繊維を,手軽に利用 にある。実際に,食物繊維消費量が失速している できる形態で提供するための革新が必要である。 という兆候はなく,消費者の関心は続いている。 (合田芳宏) ● 海外技術情報 ● 食品製造における安全で効率的な“色”の効果 ( Color Contributes to Safe, Efficient Food Production ) Food Engineering(USA)p. 55( ’ 12・12 )文献 № 5834 メンテナンス設備やサニテーション設備を色で 赤 区分けすることが,認証取得の要件の1つになり 青 つつある。色を使う大きな利点としてその普遍性 橙 にある。どんな言語をしゃべる人にとっても色は 共通なので,製造環境の中で色の使い方にある種 青 の規則を設けてそれを周知させればだれでも理解 黄 緑 し適切に対応することができる。色を効果的に使 用することは,従業員が誤って用具を混同した結 果,病原菌やアレルゲンが工場の中を移動して ゲンとなるものが使われる工場ではもっと色数を しまうという事態を防ぎ,食品の安全性向上の一助 多くした区分けが必要となる。人間は忘れる習性 となる。色付けされた運搬用のバッグ,籠,台車, があるので,色分けすることは目立ち易くし間違 大箱,ひしゃく,ブラシ,モップ,ゴムぞうきん,へ いを犯さないようにするための最善の方法の1つ ら,その他の用具は,清掃をより効率的にし,作 だと Guelph Food Technology Center 食品安全 業場で段取りをする従業員が迅速かつ正確な判断 担当ディレクターの P. Medeiros 氏は言う。 を行う助けとなる。色の活用は廃棄物処理の安全 射出成形で耐久性のある用具 性や作業効率を高め,搬送,貯蔵,移動,待機と ニューヨーク州ポートランド市の Perfex 社は, いった負担を軽減し,用具の紛失や用具を探す時 さまざまに色付けされたほうきや用具類を製造販 間のロスを減らすための一助ともなる。米国の連 売している。同社のほうきやブラシは,射出成形 邦・州政府の規則には色分けした用具類に関する でブラシの毛を耐衝撃性のあるブロックに溶着さ 規定はないが,多くの食品メーカーが色分けした せて一体のものとし,毛の繊維が抜け落ちたりせ 用具を採用している。工場のどの部分にどの色を ず,バクテリアが入り込み難い構造になっている 使うかについて決まりがあるわけではないが,生 という。材質はポリプロピレンを使用しており, 肉は赤色,魚介類は青色,製造エリアは緑色,仕 溶かして再利用することが可能なので環境に悪影 上がり品は白色,危険物エリアは黄色,というよ 響を与えない。水,バクテリア,グリース,石化 うに一定の色が標準となっている。アレルゲンが 製品,洗剤,清浄薬,溶剤などを吸着せず水洗 存在するエリアには,しばしば紫色やオレンジ色 いすればきれいになり乾燥も速い。Perfex 社が が用いられる。どこまで色分けを行うかは製造環 特許権を持つ“Lite ’ n Tite”と称する継ぎ手は, 境がどの程度込み入ったものであるかによる。生 柄とブラシヘッド部のぐらつきが生じないように 産設備1ラインの工場でわずか3色の色分けで済 した滑りばめ構造になっている。同社の製品群は んでいるところもあれば,種々の製造をしていて バケツ,絞り器,台車,モップをセットにした ピーナツ,魚介類,ある種の穀類のようにアレル TruClean Pro および TruClean II システムとス 食品と容器 298 2013 VOL. 54 NO. 5 コップ,ヘラ,ブラシ等のさまざまな用具類の2 してくれるという。色による効果的な区分けは つのカテゴリーに分かれている。いずれの製品・ SQF 認証を取得する上でも重要な役割を果たす 使用材料も米国農務省および食品医薬品局(FDA) ため,納入業者が既存の商売を維持し新たな取引 から認可されていて,ほうき・ブラシ類は赤,白,青, を求める上での前提条件になると思われる。また, 緑,黄色に色付けしたものが標準品になっている。 来訪者用の着衣や従業員の作業服を色分けするこ 色と HACCP とも効果があるし,複数の工場を稼働している企 オ ク ラ ホ マ シ テ ィ ー を 本 拠 と す る Carlisle 業が各工場共通の色分けをすれば1つの工場から Sanitary Maintenance Products 社の販売担当責 他の工場への従業員の職場移動が容易になるとい 任者 B. Hutton 氏は,同社の HACCP 工具箱に色 う利点もある。 分けは欠かせないと言う。掃除用具が色分けされ 可動式サインショップ ていれば所定の場所から外れたところにあるもの ミシガン州グランドラピッドの Visual Workplace が一目で分かるので,さまざまな物が行き来する 社では,ユーザー企業が独自の色分け計画を実施 場所で汚染のリスクを避けるためには色分けが非 できる標識作成装置を販売している。同社の主 常に効果的だと言う。Carlisle 社は標準色として 要製品 Mobile In-House Sign Shop は,ソフトウ 5色を採用しており,その他にフロアに関連する エアとテンプレートが組み込まれたラップトッ ものには黒色,ナッツ,魚介類,卵,グルテン, プ PC,ビニールカッティングプロッター,台車, イチゴ,その他のアレルゲンに関係するものは紫 種々着色され裏側に接着剤が施されたロール状の 色を取り入れている。平面,パイプ,ドレーンお ビニールシートで構成されている。製造現場を独 よび手の届き難い部分を清掃するための各種ブラ 自に色分けできるように考案されたもので,工具 シの他,最大6×8フィートまでのサイズの色分 を掛けておくペグボードに使用した工具を戻す場 けしたカッティングボードやモップ掛け用具,ゴ 所を示す“工具形状の影”を付けることもでき, ミ入れ,等を提供している。 用具の色分けにも利用できる。この装置を採用す 特注品の要望にも対応 ることで外注した場合の費用の最大75%が節減で ウィスコンシン州マーシュフィールドの きるし時間の節約にもなるという。 Nelson-Jameson 社は,色付けした用具類の大手 食品の安全を維持するトライアングル 販売会社の1つでワンストップショップを売り物 ミシガン州アナーバーの NSF Intentional 社国 にしている。同社は特注品を提供できるのが1つ 際食品安全部門の事業開拓責任者の D. Fone 氏 の強みで,例えば通常のものよりも径が2インチ は,色分けが同社の食“食品安全トライアング 大きいブラシが欲しいと言われれば,メーカーと ル”-トレーニングツールタイムの一部になって 協議してその要望を満たすものを用意できる。色 おり,この3つが正三角形のように組み合わさっ 数についても同様で,それぞれのメーカーにアレ て互いに密接な関係にあると言う。正しいトレー ルゲン識別用に紫色の製品を加えるよう働きかけ ニングを実施し正しい用具をそろえても,15分か ている。 かる仕事をするのに従業員に5分の時間しか与え 安全品質食品(SQF)認証と信頼性の向上 なければリスクを伴う近道をしてしまうのと同様 イ ン デ ィ ア ナ 州 シ オ ン ズ ビ ル の Remco に,色分けした正しい用具をそろえても十分な作 Products 社販売開拓担当の M. Williams 氏によ 業時間を与えなかったり訓練が不十分であればう れば,色による区分けを採用することが得意先や まくゆかない,と指摘する。色分け以外にも,ブ 規制当局との関係改善にも役立っているという。 ラシの柄は人の手で触る部分であるし,手が工場 工場内に色分けが実施されていると,FDA 当局 内でバクテリアをあちこちに移動させる主たる汚 や得意先からの来訪者はそれを食品の安全性を真 染源になっていることが多くの研究で示されてい 剣に考えている証しと受け止め,より信頼を強く るので,柄に抗菌剤を浸み込ませたものを使うこ 食品と容器 299 2013 VOL. 54 NO. 5 ている。色分けした用具の使用はそのための最も とも重要になるとしている。 簡単かつ最も効果的な方法の1つなのだ。 食品の安全性は,物事が行き交う重要な地点で (桜田三郎) 汚染のリスクを特定し減らしてゆくことに懸かっ ● 海外技術情報 ● フルーツジュースの栄養と健康 ( Fruit Juice Nutrition & Health-IFU Scientific Review ) Fruit Processing(DEU)p. 221( ’ 12・11 / 12 )文献 № 5833 食事に関する一般的な勧め 化性や抗炎症作用を有するエラグタンニンが豊富 果物と野菜の摂取はさまざまな慢性疾患のリス に含まれる。エラグタンニンはベリー類のジュー クを減らすという研究報告があり,WHO は1日 スにも含まれる。ぶどうジュースには,レスベラ 5皿以上の果物や野菜の摂取を勧めている。な トロールやアントシアンのようなフラボノイドが お米国小児科学会では,100% フルーツジュース 含まれ,トマトジュースにはリコペンが多い。そ 177 mL は果物1皿に相当するとしている。 の他,ジュースには,カルシウムやビタミン D, フルーツとフルーツジュース フィトステロールが添加されることもある。 フルーツジュース成分の特性 適切な方法で作られたフルーツジュースは,そ の元となるフルーツと成分が非常に類似している ジュースの成分の生理作用は,抗酸化作用だけ が,フルーツそのものよりも摂取しやすく,一般 では説明できない。ジュースを摂取するとその成 的に保存性も高い。フルーツジュースは,りんご 分は,腸管で代謝により修飾を受けて,その一部 ジュース等に褐変防止のために添加されるビタミ が血液中に取り込まれ,肝臓などの臓器でさらに ン C 以外は,ほとんど添加物を必要とせず,保 修飾を受ける。これらの代謝物は,細胞のシグナ 存料の使用も許可されていないことが多い。ただ ル伝達系に作用し,一連のカスケード反応1) を し,食物繊維は搾汁過程でかなり除去されてし スタートさせ生理作用をもたらすのである。 フルーツジュースの健康増進効果 まっている。 フルーツジュースの健康増進成分 ほとんどのジュースはカリウムが多くナトリウ ジュースはナトリウムや油をほとんど含まず, ムが少ないので,血圧を正常に保つ助けになり, その代わりにカリウム,カルシウム,マグネシウ またジュースは飽和脂肪酸をほとんど含まないの ムのようなミネラルが含まれている。オレンジ, で心臓血管系にもよい。カルシウムやフィトステ グレープフルーツ,パイナップルのジュースには ロールを添加したジュースは,骨や心臓血管系の 葉酸が含まれている。ビタミン C は,いろいろ 健康によい作用をもたらす。ビタミン C は,コ なジュースに豊富に含まれている。 ラーゲンや軟骨,筋肉,血管の形成に必要であり, りんごジュースは,ケルセチン,クロロゲン酸 鉄の吸収を助ける働きを持ち,抗酸化性があり, の他,フロリジンやフロレチンキシログルコシド また補酵素としても働く。柑橘類,パイナップル, のような血糖値を正常に保つ働きを持つジヒドロ イチゴなどに含まれる葉酸は,二分脊椎や早産の カルコン化合物を含む。ベリー類には,アントシ リスクを減らし,心疾患や脳卒中リスクに関係す アンなどのフラボノイドが豊富に含まれ,柑 橘 る炎症マーカーであるホモシステインのレベルを 類は,ビタミンC,チアミン,葉酸,フラボン 低く抑える効果がある。ただし,ポリフェノール, 類,カロテノイドを含む。グレープフルーツには カロテノイド,リモノイドを主としたジュースの リモノイドが含まれ,ザクロジュースには,抗酸 成分の健康増進効果は,培養細胞や動物を使った かんきつ 食品と容器 300 2013 VOL. 54 NO. 5 試験で観察されたものも多く,注意が必要である。 循環器系への効果 肌への効果 ビタミン C は古くから肌のコラーゲンを維持 フルーツジュースは,血管内の血小板の凝集を する効果を持つことが知られており,その作用は 阻害することで血栓の形成を抑制すると考えられ 遺伝子発現レベルから明らかにされている。フラ る。フルーツジュースの成分は HDL(善玉コレ ボノイドは,肌の毛細血管の血流とコラーゲン合 ステロール)を増やし,LDL(悪玉コレステロー 成を促進する。カロテノイドが肌の健康を増進す ル)を減らすなど,動脈硬化が起こるまでのさま るという報告がある。 ざまな段階に影響を及ぼす。また,血管を拡張し 体重とインスリン抵抗性への効果 て血流を増加させる一酸化窒素(NO)のレベル フルーツジュースに含まれる糖分が,特に子供 の肥満につながるのではないかという懸念がある。 を維持する働きを持つ。 骨の健康への効果 しかし,1日あたりのジュースの消費量は平均 ポリフェノールやカロテノイドのようなフルー 4.1オンスで,これは平均58 kcal で,1日のエネ ツジュースの成分は,閉経後の女性の骨密度の維 ルギー摂取量の3.3%にしかならない。また子供 持など骨に対してもよい効果をもたらす。柑橘類 のジュースの平均消費量は,米国小児科学会で推 に含まれるヘスペリジンやナリンジンは骨や軟骨 奨している100%ジュースの消費量の上限よりも の形成を誘導する。フルーツジュース中のβ - ク 少ないという報告がある。また,子供や青年では リプトキサンチン,β−カロテン,リコペンのよ 100%ジュースの消費量と体重過多には系統的な うなカロテノイドは,骨の分解を抑制する。柑橘 関連は見られていない。 類やザクロは関節炎に効果があるという報告もある。 けっしょう フルーツジュースの消費量と空腹時の血漿グル 脳,認知力,加齢への効果 コースとの間に負の相関が見られ,グレープフ フルーツジュースには,認知力を維持し,脳の ルーツジュースやグレープフルーツのナリンジン, 老化を抑制し,アルツハイマー病の進行を遅らせ オレンジジュース,クランベリージュースやブ る作用を有する可能性があるという報告がある。 ルーベリーの摂取後に,インスリン抵抗性や酸化 このような作用は,フラボノイドが血液脳関門を ストレス,炎症の減少が報告されている。オレン 通過することによる。フラボノイドは,脳血管の ジジュースがインスリンの分泌を抑制するソマト 血流を増加させ,神経のシグナルカスケードに作 スタチンを増加させるという報告もある。 用し,細胞死を抑制し,神経の分化を促進する。 歯の健康への効果 ビタミンCも脳に達することができるので,虚血 フルーツジュースは,エナメル質を溶解させて 性脳卒中やアルツハイマー病,パーキンソン病, 虫歯の原因となるという主張があるが,これは ハンチントン病に効果を有する可能性がある。 in vitro や長い時間をかけた不自然な条件下での がんと炎症への影響 実験結果によるものである。100% フルーツジュー フルーツジュースに含まれるポリフェノール, スの摂取と歯を失う確率との間には相関は観察さ カロテノイド,リモノイドには,抗変異原性,血 れなかったという報告がある。ジュースに含まれ 管形成制御,抗炎症性,シグナル伝達の調節のよ るポリフェノールや,ジュースに添加されたカル うながんの予防につながる生理機構への影響が見 シウムやビタミンDは,歯の健康に好ましい効果 られている。ベリー類のアントシアン,柑橘類の がある。牛の象牙質根を用いた実験では,ヘスペ フラボノイドとリモノイドは,抗発がん性を有す リジンはコラーゲンを保ち,歯の脱灰を抑制し, る可能性があるが,これらの研究の過半数は培養 再石灰化を増進した。 細胞や動物を使ったものであるので,結果の実証 結論 のためにはさらなる研究が必要である。 フルーツジュースは,多くの健康増進作用を有 するビタミンやミネラルを含む。特に臨床的な面 食品と容器 301 2013 VOL. 54 NO. 5 での研究はまだ断片的でもっと広がりを持つ必要 ランスの取れた食生活の一環としてのフルーツ があるものの,ジュースは慢性的な炎症に関係し ジュースの適度な摂取は,健康と病気の予防につ た疾病や,がん,心臓病,骨の疾病,認知力や老 ながるものである。 化の問題,インスリン抵抗性に効果があると思わ 1)カスケード反応:最初の刺激から過程が進むにつれ, 関与する酵素や分子の数が増大し,弱い刺激から大き な反応を誘導する(増幅作用),反応の連鎖を「カス ケード反応」と呼ぶ。 れる。フルーツジュースの成分の作用機構は,主 に遺伝子活性の調節によるものと見なされる。バ (吉田 充) ● 海外技術情報 ● 2012年度新製品トップ10 ( Our Favorite Things ) Food Processing(USA)p. 22( ’ 12・11 )文献 № 5826 本誌は毎年,編集者,寄稿者,その他の協力者 製品が登場し,この1年間に発売された新製品数 を対象に,2011年7月以降に全米で販売開始され が大きく増加した。一方,スナック類は野菜入り た新製品の中で,その年の1年間に繰り返し購入 と風変わりなグレーン入りのいずれかが選べると し最も気に入った新製品は何だったかを尋ね,そ いう選択型商品と,スナックバー,ナッツ類全般 の結果をカバーストーリーとして報じてきた。こ の新製品が発売数の増加に貢献した。調理品の分 れは科学的な調査でも大がかりな調査でもないが 野も2人前のパックやベジタリアン向けの新製品 面白い結果が出る。 の登場により発売数が増加した。 新製品情報を提供する Mintel Group 社は,経 この1年間で新製品の発売数が最も減少した大 済の持ち直しに伴い発売される新製品の数も徐々 きな分野はベーカリー類とソース類である。ベー に上向いてきているとみている。同社のディレク カリー類の新製品の減少は,近年爆発的に増加し ター L. Domblaser 氏によれば,主として経済の た100カロリーパック(個包装)の新製品が出て 落ち込みの結果,2009年から2010年初頭にかけ米 こなかったことがその理由ではないかと思われる。 国市場では全品種にわたり発売された新製品数が ソース・調味料は2009年後半に急激な増加を示し 大きく減少したが,その後は食品・飲料全般に新 たが,これは消費者が家庭で調理することが増え 製品の増加がみられると言う。新製品数がもっと たためとみられ,その後は低調な動きとなってい も増加した分野は乳製品とスナックの2つの分野 る。 本誌が選んだ2011年7月以降発売の新製品トッ である。乳製品ではギリシャヨーグルトが勢いを プ10: 付けたのに加えすべてのタイプのヨーグルトに新 ◆ い ろ い ろ な ケ ー キ を イ メ ー ジ し た Wells 米国食品市場における2010年以降の新製品発売数 2010年 1~6月 9,910 7~12月 11,375 2011年 1~6月 9,454 7~12月 11,015 2012年 1~6月 10,163 7~10月 5,991 Blue Bunny のプレミアムアイスクリーム この“レッドベルベットケーキ”は過去2~3 年の間に突然頭角を現し人気のデザートとなっ た。バターミルクではな くクリームチーズをフロ スティングに使用してい るのが特徴である。この 2012年前半の新製品発売数は過去2年間の同期を上回ってお り,通年でも増加すると見られる 出典:Mintel Group 食品と容器 ほかに昨年はキャロット ケ ー キ, ト リ プ ル チ ョ 302 2013 VOL. 54 NO. 5 コレートケーキ,ストロベリーショートケーキ, の人気を呼んでいる。食感はアイスクリームと ウェディングケーキをイメージしたものまで発 シャーベットの中間といったところ。(製造部門 売された。いずれもテレビで人気のケーキ職人 担当編集員 D. Phillips) ◆ General Mills の グ ル テ ン フ リ ー シ リ ア ル Duff Goldman 氏との共同開発による。(編集長 Chex Apple Cinnamon D. Fusaro) ◆ハーシーのチョコレート Hershey’ s Simple セリアック病を患っているとか,健康維持を理 Pleasures 由に多くの人々がグルテンを 排除した食生活を送っている。 真ん中にクリー ムが入ったチョコ 美味で“健康食品”らしさを レートで普通の 感 じ さ せ な い General Mills チョコレートに比 社のグルテンフリーシリアル べ脂肪分が30%少 Chex Apple Cinnamon は 子 ない。いずれもチョコレートクリーム入りのミル 供にも大人にも喜ばれ,サク クチョコレートとプレーンチョコレート,バニラ サク感のあるアイスクリームのトッピングとして クリーム入りのミルクチョコレートの3種類があ も利用できる。(社外編集員 A. Juttelstad) る。5.6oz. スタンドバックに24個入りである。 (上 ◆ Vitalicious の冷凍ピザ VitaPizza 級デジタル編集員 E. Erickson) 健康を考えた処方のマフィンなどで名をあげ ◆1人用の冷凍調理食品 Stouffer’ s Farmers’ た Vitalicious 社 が こ の 夏 に 発 売 し た 冷 凍 ピ ザ Harvest Steam Meals-For-One VitaPizza は6インチサイズでわずか190 kcal な がらピザ台は薄すぎず厚すぎず,トッピングも “Steam Perfect Bag”と称するスチームバッグ 入りの1人用調理食品。パリ しっかり乗っている。トッピングはチーズとトマ パリした野菜の歯ごたえ,肉 ト,大豆肉サラミのペペローニがある。 ◆ Hostess Brands のスポンジケーキ Chocolate の柔らかさ,パスタのゆで上 Crème Twinkies がり,ソースの豊かな風味が 保たれている。フローレンス 2011年初めにスト 風チキン,エ ビ と イ カ の ク ロベリークリーム入 リーム煮,5種類のチーズの り,バナナクリーム トルテローニ,ガーリックチキン,チーズ入りサ 入りと共に地域限定 ウスウェストスタイルチキンがある。希望小売価 的なテスト販売で大 格は3.89ドル。(社外編集員 D. Cassell) 好評を得て今年本格的な商品として登場した。毎 ◆ Ciao Bella Gelato のフローズンヨーグルト 年およそ5億個の Twinkies が製造されており, Adonia Frozen Greek Yogurt 全米で1分間に951個が消費されていることにな る。(編集長 D. Fusaro) ギリシャスタイルのフローズンヨーグルト。 14 oz. 丸型容器入り7種と ◆レストランのシロップ IHOP At Home Syrups バーアイス型4個入りパッ 家庭の朝食で ク の 2 種 類 が あ る。 い ず レストランの味 れ も 無 脂 肪 で130 kcal 以 が楽しめる IHOP 下,プロテインがバー1本 At Home Syrups 当たり5g,半カップに9 は Original, Lite, g含まれており,これがギ Sugar Free, Rooty Tooty Fresh ‘N Fruity リシャスタイルヨーグルト Strawberry, Rooty Tooty Fresh ‘N Fruity 食品と容器 303 2013 VOL. 54 NO. 5 Blueberry と フ ル ラ イ ン の 品 揃 え で,Sorbee 揃っている。(寄稿者 D. Berry, Dairy & Food International 社 の み が 製 造 販 売 権 を 持 つ 商 品。 Communicatsions 社) ◆ American Roland のアンデスのキノアを原 (上級デジタル編集員 E. Erickson) 料とした Flavored Quinoa ◆ Fair Oaks Farms Brands のプロテイン飲料 Core Power 取り扱いがとても簡単 今年の夏に登場したこのプ で美味かつ健康的という ロテイン飲料は,他の同種製 消費者が望む3つの条件 品と異なり新鮮な牛乳を使用 の す べ て を 備 え, 繊 維 しているため,美味で,嫌な 質,アミノ酸,タンパク 後味が口に残らない。独特の 質,各種ミネラルに富む 冷却ろ過工程により,含有プ 栄養価の高い調理済みキ ロテインを乳清タンパク20%, ノアである。キノア以外 カゼイン80%という天然の牛 の使用原料はガーリック, 乳のタンパク質の構成と同じ 玉ネギ,トマト,ニンジン,セロリ,海塩など。 にしている。 ガーリック入り,野菜入り,レモンカレー,ゴマとジ 無菌充填プラスチックボトル入りで,プロテ ンジャー入り,地中海風などがあり,お湯で15分 イン量26グラムと20グラムの2サイズ,前者はチョ 間煮るだけで食べられる。なお,国連食糧農業機 コレート,バニラ,蜂蜜の3種類,後者はチョコレー 構は2013年を”キノアの国際年“と宣言している。 (社外編集員 K. Shelke, Ph. D.) ト,ストロベリーバナナの2種類のフレーバーが (桜田三郎) ● 海外技術情報 ● 2012プロセッサーオブザイヤー:Chobani 社のサクセススト-リー ( Greek-style Yogurt, American-style Success Story ) Food Processing(USA)p. 22( ’ 12・12 )文献 № 5835 Chobani 社物語はいわばトルコ移民の立身出世 当たって,2013年がこの会社にとって命運を握る 物語であるが,何から話し始めるべきか簡単では 1年であることをあらかじめ指摘しておくことは ない。同社は閉鎖されたヨーグルト工場を買い取 必要だ。世界最大のヨーグルト工場となるだろう り,事業家として成功した。その情熱で,新たに 米国第2工場を,グリーンフィールド(未開発地 流行となるフードカテゴリーを創出したのである。 域の緑野)から建設中であるが,同社はその工場 単一製品で事業を開始した同社が,どのようにし を稼働できるのか。米国以外のその他地域にその て数十億ドルを売り上げる企業に成長したのだろ 成功を展開できるのか。さらに,どこまで(ギリ うか。 シャヨーグルト)単一商品カテゴリーでやってい けるのか。 ギリシャヨーグルトがもっとも“熱く”成長す るカテゴリーとなった翌年,Chobani 社は Food これらは Chobani 社が検討している課題であ Processing 誌主催の第8回 Processor of the Year り,我々全員が同社の意思決定と結果の証言者と (年間加工業者賞)に選出された。わずか5年間 なるだろう。しかし,今のところ,関係者は2012 で,Chobani 社はヨーグルトカテゴリー全体で最 年の同社経営状況に好意的であり,同社が提供し も売れる単一ブランドとなった。 ている製品は,今なおギリシャヨーグルトのみで ある。 際立った成功物語への道をこれから詳述するに 食品と容器 304 2013 VOL. 54 NO. 5 ヨーグルト成功物語 は大部分はプレーンだが,米国は違うし,米国の Hamdi Ulukaya 氏はトルコ東部 Erzinkan 市の 果実は大粒だがトルコは違う。保存剤や着色剤 酪農場で育った。彼の家族は羊の乳を使って,主 のない単純な成分を公表することで,‘ナチュラ にチーズと少量のヨーグルトを製造していた。 ル’を維持しておきたかった」と氏は語り,さら に「私は非常にささいなことにこだわった。レシ 家業を手伝い,トルコの Ankara 大学で政治学 を学び,1994年にはニューヨークのロングアイラ ピ調整に18カ月かかったが,2007年の終わりごろ, ンドにある Adelphi 大学に入学し,英語を習得 そのレシピを獲得した。唯一で,しかも完璧でな した。1年足らずで,セントラルニューヨークに くてはならなかった」と続けた。 引っ越し,ニューヨーク州立大学の Albany キャ 明 ら か に 完 璧 な レ シ ピ だ っ た。 当 時 Argo ンパスに入学して,今度はビジネスの勉強を始め Farma 社 だ っ た 社 名 を, こ れ を 機 に Chobani たが,間もなく,氏は家業のフェタチ―ズ を輸 社 に 変 更 し た。( 社 名 の Chobani 社, ま た は 入して販売を開始した。 chopani 社とはトルコおよび地中海言語では「羊 1) 飼い」の意味)。 「販売は好調であり,私は良い兆しだと思った。 地域の経済発展機構から資金を借りて,ニュー 事業構築 ヨーク州 Johnstown 市の小さな工場を,フェタ 創業以来,氏は主要な食料雑貨チェーンにあ る乳製品ケースを販売網として獲得したかった。 チーズを作るために買い取った」と語る。 2005年に,South Edmeston 市近郊にある閉鎖 ニッチやオーガニックセクションでもなく,自然 中の老朽化した Kraft 社工場の広告を見つけた。 食品やスペシャリティーストアでもなかった。そ ヨーグルト事業はこの国で最終的には流行す の理由は資金量や取扱量がただ単に大きいだけで はなかった。 るにも関わらず,Kraft 社は同事業から撤退中で Breyers ヨーグルト事業を売却したところだった。 「Ulukaya 氏は,ギリシャヨーグルトを試食す ギリシャ企業であるギリシャヨーグルトの先駆 れば,アメリカ人の味覚に合うと心から信じてい 者 Fage(ファーエイ)社は1990年代後半にギリ た」と2006年に同社に参画した K. O’Brien 氏は シャ国内工場からギリシャヨーグルトを輸入し 言う。氏は現在 Chobani Global Holding 社の販 始め,2005年には最初の米国工場を,くしくも 売担当副社長である。 氏は当時を回想して「Fage 社はうちが販売を Ulukaya 氏のチーズ工場がある Johnstown 市内 開始した時には約10年間アメリカでビジネスをし に建設した。 ヨーグルトは地中海,中近東地域の食事に大き ていたが,グルメあるいは自然食品店のニッチ/ な役割を果たす。朝食だけでなく,一部の食事に スペシャリティー製品として位置づけられ,ギリ 対しては飲み物であり,副菜でもあるが,それだ シャヨーグルトは大衆には手が届かなかった。当 けでなく,ずっと多くのレシピに使われている。 社は収入に関係なく,大衆がギリシャヨーグルト を楽しめるようにブランド,製品,価格帯を位置 「ヨーグルトは,トルコではあらゆる機会に使わ づけた」。 れる。ヨーグルトを少しも食べなかった日は1日 18カ月もかかったが,ニューイングランド, もないと思う」と氏は語る。 Ulukaya 氏は Mustafa Dogan 氏を米国に呼び ニューヨーク,ニュージャージー州に375店舗を 寄せた。彼はトルコでは“ヨーグルト製造の匠 持つ the Stop & Shop チェーンが,Chobani 社新 “という評判だった。彼はセントラルニューヨー 製品を採用し,店舗の乳製品のメイン・ケースに クに移住し,Ulukaya 氏と共に Chobani ブラン 置いてくれた。「画期的な出来事であり,我々が ドとなるレシピ作りに18カ月間奮闘した。 目標に到達間近だと分かった」と Ulukaya 氏は 「米国の市場と販売網はトルコと同じようには 語る。さらに O’Brien 氏が「2009年終わりごろに できない多くの理由がある。トルコのヨーグルト BJ’ s や Costco と契約した。その時は,まさにメ 食品と容器 305 2013 VOL. 54 NO. 5 ジャーリーグと契約したようだった」と付け加えた。 5,000万ドルのコストがかかったと発表された。 Ulukaya 氏は,製造に集中したことと工場に格 生産が軌道に乗ってくれば,安定時には South 別の注意を払ったことが,初期段階に於ける同社 Edmeston 工場の能力に匹敵するが,高レベルの の成功の理由の90%を占めると言う。氏は甥の 自動化により従業員数は同工場の40%しかいない。 Halil Ulukaya 氏を,Chobani 社工場運営のため 同社はオーストラリアでも事業を展開してい に2011年フェタチーズの工場から連れてきた。製 る。2011年6月には,Chobani 社は Bead Foods 造担当副社長である Halil 氏は「設備はすべて古 社を買収した。同社は乳製品加工業者および流 いので,その一部は廃棄しなくてはならず,新規 通業者であり,オーガニックヨーグルトを含む 設備(特にセパレーター)を購入した。ギリシャ Gippsland Dairy ブランドオーナーである。当 ヨーグルト製造の重要なステップは,ホエー(乳 時 の Chobani 社 公 式 発 表 に よ る と, 計 画 で は 清)とラクトース(乳糖)をそれまで以上に多く Gippsland Dairy ブランドを「オーストラリアで 除去することだった」と回想する。 最も成功したヨーグルトブランドの1つに成長さ 最初はトラック1台分のミルクを使い切るのに せる」予定である。現在,同製品はカナダ,トロ 1日以上かかった時もあったが,今では Chobani ント地域にも輸入されており,同社はカナダ政府 社は日に70台分のトラック積載量である約420万 と共同でその地域に生産工場を操業する準備をし ポンドを使い,約170万ケースを毎週出荷する。 ている。 「9月はじめ,英国でも Tesco チェーン数百店 今年末には約10億ドルの売り上げになる。 次のレベル で当社製品を発売したが,反応は極めて良好だっ Chobani 社は,2013年3月にはヨーグルト出荷が, た。これから,世界中にどうやって製品展開する 週240万 ケ ー ス に 拡 大 す る と 確 信 す る。South かを戦略的に検討中である。当社の全世界のファ Edmeston 工場は既に能力の限界にあるが,アイ ンが望む所であればどこへでも,喜んで行くつも ダホ州 Twin Falls の新工場が今月末には稼働する。 りだ」と O’ Brien 氏は言う。 公式には,その新工場は世界最大のヨーグル (訳注) 1)主にヤギの乳から作る柔らかく白いギリシャチーズ ト工場で,100万スクエアフィートの広さ,4億 別刷り合本をご利用下さい (常盤恭徳) 水 の 話 水は地球上のすべての物質と深い関わりをもち,生物の生命活動や人間の生活,文化,産業に重要な役割を演じ ています。本誌ではこの水の科学的知見から応用までをあらゆる角度から取り上げ,専門の方々に解説していただ きました。ご希望の方は,電話またはファックスで下記あてお申し込み下さい。 B5判 本文162ページ 定価3,000円(送料別) 《内容》 水の科学〔1〕水と生命の誕生と進化/〔2〕水の不思議:水と水溶液/〔3〕水の新たな利用法(機能水)とそ の評価 水と食品〔1〕食品中の水の状態/〔2〕食品加工と水/〔3〕微生物と水/〔4〕調理と水の関わり/〔5〕 お茶類と水 水と生活・文化〔1〕日本人と水利用,健全な水循環を目指して/〔2〕水道水の安全性とおいしさ /〔3〕容器入り飲用水の国際規格:食文化と商売の観点から(1)(2)/〔4〕おいしい水とまずい水(水質・ 成分との関係)/〔5〕水道水とミネラルウオーターはどう違う? −その境界をめぐって− 水と産業〔1〕清 涼飲料と水/〔2〕醸造と水/〔3〕水の新しい利用:精密洗浄用機能水と超臨界水/〔4〕海洋深層水/〔5〕紫 外線殺菌装置の現況 水と健康〔1〕体液とそのはたらき/〔2〕体液の代謝調節とその異常/〔3〕スポーツと 水/〔4〕肌と水 缶 詰 技 術 研 究 会 電話 03(3 6 6 3 )7 2 5 1 ファックス 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3 食品と容器 306 2013 VOL. 54 NO. 5 業 T 界 O ト P ピ I ッ C ク S ス 家庭用ココア,スティック伸長も 微減で着地 ○ココアパウダーの供給状況 原料となるココアパウダーの供給状況の12年 (1~ 12月累計)実績をみると,国内生産は無糖 がほぼ前年並みとなるも,全体の8割を占める加 2012年度の家庭用ココア(12年4月~ 13年3 糖が6.7%減となり,全体は5.4%減の1万4,343ト 月)は,8~9月の残暑や機能性報道が寄与した ン。 前年の反動もあり2%減で着地した。ココア市場 輸入は数量ベースで0.9%減の1万7,199トン, はここ数年横ばいでの推移が続いていたが,ス ティックタイプの拡大や新規参入メーカーもあり, 金額は1.7%増となり,単価は2.7%増となった。 全体(1~12月累計)では,数量ベースで3%減 動きが出てきている。一方で,メーカーが増えた の3万1,542トンの着地。 ことや他の嗜好飲料との競争も激しくなり,店頭 ○市場活性化の新たな施策に期待 の価格は下落傾向が続くなど取り巻く環境は厳し ココア市場は,02年にココアの機能性が当時の い状況が続いている。 テレビ番組に取り上げられたことをきっかけに, ○12年度家庭用ココア,微減で着地 「第2次ブーム」を築いた。その後03年をピーク 12年度(12年4月~13年3月)上期は震災の裏 に市場はほぼ10年間横ばいで推移してきた。その 返しもあり順調に推移。下期は8月の猛暑,9月 間様々な新商品なども発売され市場は安定した推 の残暑と暑さが続き,気温が下がったのは10月後 半と遅かったため,商品の販売は11~12月に集中。 移をみせてきたが,ここ数年は市場を取り巻く環 境が変化。大きな要因のひとつはスティックタイ また,販売量の多い1~2月も全国的に気温が低 プ商品の台頭。嗜好飲料はこれまでコーヒー,紅 く相応の伸びが期待されたが,昨年健康訴求で伸 茶,ココアとそれぞれの棚が住み分けされてきた 長した反動もありやや低迷したままシーズンを終 が,スティック商品のフレーバーが拡大するにつ え,全体では微減の着地となった。 れ,店頭では“スティック棚”としてカテゴリー ココアは依然として季節性が強く,「気温が下 の垣根なく置かれることも多くなり,とまどいの がった時に一番売れる嗜好飲料」とされている。 声も聞こえている。 ただ,ここ数年は,「予測がしづらい」(メーカー ただ,「スティックタイプのココアが伸び,飲 筋)天候が続き,特に秋冬の棚は9月頃から差し 用機会が増えることはチャンス。ココアのおいし 替わるため,シーズンインの動きが鈍かった。 さを再認識してもらいたい」との前向きな意見も そんな中,市場のけん引役となっているのがス ある。実際に外食のカフェチェーンなどでもココ ティックタイプの商品。スリムな形状で持ち運び アメニューは順調に動いているとのことで,潜在 がしやすいことや,お湯をそそぐだけで簡単に楽 的な需要は高いといえよう。多様化が進む嗜好飲 しめるなど簡便性や,またフレーバーの豊富さで 料の中で,ココアのコクのあるおいしさ,健康感 20~30代の女性を中心に人気を集めている。 12年度は全体で2%減の171億円(出荷ベース), をどう出していくかが今後のポイントとなりそうだ。 (業界誌記者 稲野結子) 工業用を含む全体では1.4%減の223.5億円で着地。 第1表 家庭用ココアメーカー別実績 年度 メーカー 森永製菓 明治 片岡物産 味の素ゼネラルフーヅ ネスレ日本 和光堂 名糖産業 日本ヒルスコーヒー その他 合計 2009年 金額 シェア 43.1 7,200 28.1 4,690 19.6 3,270 − − 5.6 930 1.0 160 1.3 220 0.3 50 1.2 200 16,720 100.0 2010年 金額 シェア 42.2 7,150 27.1 4,600 20.1 3,400 − − 7.1 1,200 1.1 180 1.1 180 0.3 50 1.1 190 16,950 100.0 日刊経済通信社調(単位:百万円) 2011年 金額 シェア 39.5 6,860 25.3 4,400 19.6 3,400 6.0 1,050 6.3 1,100 1.0 175 0.9 155 0.3 50 1.0 180 17,370 100.0 2012年見込み 金額 シェア 38.1 6,520 21.6 3,700 20.2 3,450 11.4 1,950 5.8 980 1.1 180 0.8 140 0.3 50 0.8 130 17,100 100.0 注)1.年度は各企業決算年度 2.一部本誌推定 3.金額は出荷ベース 4.ハウス,グリコはその他に合算 食品と容器 307 2013 VOL. 54 NO. 5 ● 特別解説 ● 光の指紋による食品の鑑別・定量 すぎやま・じゅんいち 筑波大学第二学群農林学類 卒業。久保田鉄工,農林水 産省食品総合研究所,同東 北農業試験場等を経て,現 在,(独)農研機構食品総合 研究所食品工学研究領域計 測情報工学ユニット長,上 席研究員。 工学博士 杉 山 純 一 よくお化け屋敷で,ブラックライトという,これ 1.光の指紋とは も目に見えない光が白いYシャツ等にあたると, 青白く光って見えるのも,洗剤やシャツ等に含ま 光の指紋の説明をする前に,蛍光という現象を 説明する。通常,蛍光とは,第1図左に示すよう れるリン(P)による蛍光現象である。そして, に,ある特定波長成分だけからなる光(励起光) このような蛍光現象を利用して,様々な化学成分 を試料に照射し,それによって生じる様々な波長 の鑑別・定量を行うのが蛍光分析法である。しか の光(蛍光スペクトル)のことを指す。日常では, し,この場合は,刺激(特定の励起波長)が1種 蛍光灯の白色光は,蛍光管の内側から目に見えな 類,それに対する応答(蛍光スペクトル)が1種 い短波長の光が蛍光管内側に塗られた蛍光体に照 類というひと組の刺激と応答の情報を解析するこ 射され,白色光を生じる蛍光現象である。また, とになる。しかしながら,情報は多ければ多いほ ど,その中に含まれる有 用な情報が抽出できる可 能性が高い。そこで,情 報量を多くすることを考 える。それには,刺激を 複数(つまり,複数の励 起波長を順次走査して照 射)にし,それに対する 応答(蛍光スペクトル) も複数得られれば,第1 図右のような3次元の膨 大な情報が得られる。こ の3次元データを上から 見れば,等高線図のよう なパターンが観察される。 第1図 蛍光から蛍光指紋へ (カラー図表を HP に掲載 C017) 食品と容器 308 このパターンは,その試 2013 VOL. 54 NO. 5 料特有の蛍光現象がすべて表現されたものと考え から,いかに情報量が多いかが分かる。また,こ られ,蛍光指紋,または励起蛍光マトリクスと呼 のパターン自体は物質固有のものであることから, ばれ,本稿が主題とする「光の指紋」である。 様々な鑑別・定量等に使える。当研究室では,こ また,従来の蛍光は主に輝度値がピークの情報 の特性を利用して,食品の産地判別1),混ぜ物の のみを解析することが多かった。確かに単一の際 検知2)3),危害物質4)−9)や成分分布可視化10)−12) 立った蛍光成分ならそれで済むが,最近のセン 等の様々な応用を試みている。 サー技術は飛躍的に向上し,目に見えるような強 さらに昨今の ICT(情報通信技術)の進展は, い光の情報だけでなく,わずかなエネルギー収支 これまでの不可能を可能にする。近年,デジカメ による様々な反応もデジタル量でとらえることが が普及し,解像度の高い写真が携帯電話でも撮れ できる。すなわち,蛍光スペクトル上の微小な凹 るようになった。また,写真が画素という小さな 凸,ショルダーや,さらに蛍光のない低レベルで 点の集まりであることは誰もが認識しつつある。 も拡大すればなんらかの情報が確認できる。そこ この画素を上記の蛍光指紋の検出器として使えれ で,解析対象を,ピークだけに限定せず,すべて ば,画素ごとに蛍光指紋を取得することも可能で の領域を平等に取り扱いながら,必要な情報のみ ある。そして,画素ごとにその特徴を判断し,色 をうまく抽出するモデルを構築すること,すなわ に置き換えれば,これまで見えなかったものも可 ちデータマイニングは,昨今のコンピューター技 視化することができる。これが,我々が世界初の 術が得意とするところである。 技術として開発を進めている蛍光指紋イメージン 第2図は,ローダミンという蛍光色素の蛍光指 グである。 紋の一例である。従来の蛍光スペクトルは,この 2.蛍光指紋の計測 3次元のグラフのピーク点を通過する一断面だけ にしか注目していなかったのに対して,蛍光指紋 従来型の蛍光分光光度計では,前述のように励 は,一番高いピークだけでなく,指紋パターンを 起光をあて,蛍光スペクトルを計測するという1 構成するすべての輝度値をデータとして扱うこと 対の測定しかできない。蛍光指紋を計測するに 第2図 蛍光指紋とは (カラー図表を HP に掲載 C018) 食品と容器 309 2013 VOL. 54 NO. 5 は,照射する励起光の波長を走査(スキャン)し この図では,X 軸が蛍光波長,Y 軸が励起波長 て,それぞれの蛍光スペクトルを連続的に計測す として描かれている。対角にあたる45度の線上は, る必要がある。このような機能を持った蛍光分光 あてた励起光と観察する蛍光の波長が同じことを 光度計は非常に限られており,実用的に使えるレ 意味し,いわゆる散乱光(分光反射スペクトルが ベルのものとして,我々は,第3図に示す装置を利 Z軸方向に観察される位置)である。この散乱光 用している。この装置では,1点の試料を計測する は,計測原理から,整数倍の位置(2次光,3次 のに数分で完了することができる。試料は,液体の 光・・・)にも表れる。また,蛍光は,励起波長 場合は,キュベットセル,粉体・固体の場合は,粉 より必ず長い波長に表れるため(ストークスの法 体セルに封入して計測ができる。前者の場合は,透 則),前述の45度の対角線より蛍光波長軸側(こ 過法,後者の場合は,反射法で測定されることが多い。 の場合は対角線より下側)に描かれるパターンが 蛍光指紋である。 測定された蛍光指紋の一例を,第4図左に示す。 従って,実際にデータ解析に用いる 蛍光分光光度計(日立F7000) 情報は,これらの不要な情報を削除し, 残った情報のみを蛍光指紋として用い 石英窓 る必要がある。すなわち,①蛍光波長 より大きい励起波長部分(対角線より 励起波長寄りの部分),②1次,2次, 粉体セル 3次・・・の散乱光除去,③ノイズの 試料封入 励起光 多い低感度領域を削除することが必要 蛍光 となる。これらの前処理を行うと,得 られる蛍光指紋領域は,第4図右の 試料 ような領域になり,一例として,生 (反射法) データで5,041点あった蛍光強度値(Z 軸の数値)が,2,063点に削減される。 第3図 蛍光指紋の計測装置 (カラー図表を HP に掲載 C019) 最終的には,この残ったデータを,離 散データとして,X 軸 方向にスキャンし,1 次元のベクトルデータ スキャンして、1次元ベクトルに 蛍光強度 励起波長(nm) として,以降の解析に 蛍光波長(nm) オリジナルデータ: 5041波長条件 蛍光波長(nm) 不要波長域削除後: 2063波長条件 ① 非蛍光成分除去: 励起波長(Ex)>蛍光波長(Em) ② 散乱光除去: 1次(±30nm), 2次(±40nm), 3次(±40nm) ③ 低感度領域の削除: 低波長励起 EX≦230[nm] 長波長蛍光 EM≧810[nm] 第4図 蛍光指紋データの前処理(不要な波長域の削減) (カラー図表を HP に掲載 C020) 食品と容器 310 用いる。 3.蛍光指紋を 使った基本的なア プローチ手法 得られた蛍光指紋だ け で, い き な り, 鑑 別・定量を行うことは 非常に難しい。事前に, 目的とする答えが既知 の試料に対して,蛍光 指 紋 を 測 定 し, 両 者 2013 VOL. 54 NO. 5 (蛍光指紋と鑑別・定 蛍光指紋 (網羅的データ) 量値)の関係をモデル 化する必要がある(第 真の値(答え) ・判別 5図) 。すなわち,最 or 初に物差しを作る作業 を行う。このことを, モデル化 ・定量 化学分析等 キャリブレーション (較正)と,以下では 記す。すなわち,蛍光 一度物差し を作れば 推定可能! 説明変数 指紋という,数千にお よぶ膨大な蛍光強度値 を説明変数として,真 ? 目的変数 第5図 蛍光指紋の基本的なアプローチ(カラー図表を HP に掲載 C021) の値である鑑別値または定量値を目的変数とする 効性を確かめるバリデーションセットとした。多 推定式を,様々な多変量解析手法を使いながらコ 数の波長条件のうち,判別に有用な波長条件のみ ンピューターで構築する作業を行う。そして,一 を抽出するため変数選択を行った。 度,このモデル化が行われれば,今度は,それ以 第6図に,最も判別結果の良かった②セルに入 外の試料を,そのモデルに適用して,どの程度の れて果皮を測定した場合の判別結果を示す。3種 正解が得られるかを検証する必要がある。このこ 類の測定法全体におけるバリデーションセットの とを,以下では,バリデーション(検証)と記す。 誤判別率は国の判別では3.19~11.70%,地域の判 別では5.32~19.15%であり,判別が十分に可能で 4.マンゴーの産地判別1) あるといえる。特に測定部位として果皮を用いる ことで,比較的低い誤判別率が得られた理由は, 供試材料には実際に産地偽装事件が発生した産 地のマンゴー(台湾産を沖縄産として偽装)に加 果皮は環境にさらされており,産地特有の情報量 え,ブランド化しつつある宮崎産を用いた。日本 がより多くなるものと思われる。果皮の計測のみ における主要生産品種であるアーウィン種を測 を行う場合,検体を破壊せずに済むため多検体に 定 対 象 と し, 台 湾 産34 個,宮崎産30個,沖縄産 30個を用いた。測定方法 は①セルに入れて果肉を ● 沖縄 ● 宮崎 ● 台湾 宮崎 沖縄 台湾 測定,②セルに入れて果 皮を測定,③直接果皮を 測定という3通りを実施 した。マンゴー1個につ き各方法を2回ずつ行い, 得られた蛍光指紋に対し て3つの測定方法ごとに 判別分析を行った。その 際データをランダムに二 分し,判別式を作成する ためのキャリブレーショ ンセットと,判別式の有 食品と容器 95%の的中率で地域の判別が可能 第6図 マンゴーの産地判別:果皮セルによる結果 (カラー図表を HP に掲載 C022) 311 2013 VOL. 54 NO. 5 対して判別を実施でき,また前処理を要しないた PLS 回帰分析を適用することにより,市販そば め簡便かつ迅速に行えるという点で実用性が高い 乾麺におけるそば粉の混合割合の推定を試みた。 最初に,小麦粉とそば粉を任意の割合で混合し といえる。 たモデル試料を作製し,その混合割合の推定を試 5.そば乾麺におけるそば粉混合割 合の推定2)3) みた。この場合は,バリデーションにおいても, R2=0.992と非常に正確に推定できることが明ら 近年,そば乾麺に虚偽の混合割合を表記して販 かになった。そこで,次に実用的な場合を想定し 売する事例が報告されている。そこで,市販そば て,全国から96品(51品キャリブレーション,45 乾麺の粉砕試料を,蛍光指紋を説明変数とした 品バリデーション)のそば乾麺を製造元から直接 収集し,その混合割合の 申告値の推定を試みた。 第7図にその結果を示す が,キャリブレーション では高い相関が得られた が,バリデーションでは, かなり推定値が分散する 結果となった。その原因 を追求するため,個々の 蛍光指紋のパターンを確 認したところ,第8図に 示すように,醸造酢入り や抹茶いりのそばにおい 第7図 PLS 回帰によるそば粉混合割合のあてはまり ては,それ以外の典型的 典型パターン 800 2000 600 1500 500 1000 400 500 300 抹茶入り 800 1500 500 1000 400 500 300 400 600 800 Excitation wavelength (nm) そのため,これらの典型 的に異種のパターンの試 料,すなわち,醸造酢入 0 りと抹茶入り,さらに, 海藻・増粘多糖類,山芋 などを含む試料を除いて, 800 2500 再解析してみると,第9 1000 500 0 700 2000 600 1500 500 1000 400 500 300 200 200 400 600 800 Excitation wavelength (nm) 第8図 典型と異なる蛍光指紋パターンを示した試料(そば乾麺) (カラー図表を HP に掲載 C023) 食品と容器 添加物が原因と思われた。 2500 1500 400 600 800 Excitation wavelength (nm) 600 3000 500 200 200 ば粉,小麦粉以外の特定 2000 抹茶入り 600 300 2500 700 900 2000 400 なるパターンを示し,そ 312 0 Fluorescence intensity 700 3000 800 3000 Fluorescence intensity Emission wavelength (nm) 900 900 200 200 0 400 600 800 Excitation wavelength (nm) Emission wavelength (nm) 200 200 Emission wavelength (nm) 2500 700 なそばの蛍光指紋とは異 醸造酢入り 3000 Fluorescence intensity Emission wavelength (nm) 900 図に見られるような大幅 な改善がなされた。従っ て,原料素材がある程度 近いものだけで推定モデ ルを作ることにより,実 用的な推定が可能になる と思われる。 2013 VOL. 54 NO. 5 であった。これは,かび毒種による蛍光特性のわ 6.小麦かび毒の推定4)−7) ずかな違いが反映された結果であると推察された。 小 麦 やトウ モ ロ コ シ 類 の 赤 か び 病 菌 で 産 これらから,蛍光指紋計測と多変量解析を組み合 生 され るか び 毒 に は, デ オキシニ バ レノール わせることで,一次スクリーニングとしての小麦 (Deoxynivalenol,DON),ニバレノール(Nivalenol, 粉中のかび毒汚染濃度の推定や,異なるかび毒の 同時定量への応用の可能性が示唆された。 NIV),ゼアラレノン(Zearalenone,ZEA)等が ある。かび毒汚染は,穀類の収量・品質低下を招 7.ナツメグにおけるアフラトキシン の推定8) くばかりでなく,汚染穀物を摂取したヒトや動物 おう に嘔吐,下痢,頭痛などの有害作用を示すため, 世界中で重大な問題となっている。そこで,かび アフラトキシンは熱帯から亜熱帯地域にかけて 毒汚染の迅速・簡易な非破壊計測技術の開発を目 生息する Aspergillus flavus などのカビにより生 的として,小麦粉の状態で,それぞれのかび毒の 成されるカビ毒の一種であり,天然物の中で最も 同時定量推定の検討を行った。 強力な発ガン物質として知られている。日本では ほ かび毒汚染小麦(品種:ホクシン)は,圃場に アフラトキシン B1を対象に規制値(10ppb)が て赤かび病発病程度(低,中,高,甚)の異なる 定められており(注:2011年10月より Total AF 4つの試験区から収穫し,それを粉砕した小麦粉 での規制に変更),香辛料中のアフラトキシン B1 を試料とした。レファレンスとなる DON,NIV, を検出する手法として,多機能カラムを使用した ZEA の化学分析値は,DON は,公定法に基づく HPLC や LC / MS などの化学分析が公定法とし 液体クロマトグラフィー法により濃度を算出した。 100 出)となる微量であったため,LC / MS / MS に 80 予測値(%) NIV,ZEA に関しては,公定法では ND(不検 て測定を行った。蛍光指紋は粉のまま分光蛍光光 度計(日立F7000)で計測した。得られた蛍光指 紋に PLS 回帰分析を適用し,蛍光指紋情報によ 60 40 20 る各かび毒の汚染濃度の定量推定を試みた。 0 第10図に,DON,NIV,ZEA における PLS 回 帰分析のバリデーション試料における結果を示す。 化学分析値と蛍光指紋に基づく推定値の間にいず 0 20 40 60 80 100 実測値(%) 第9図 外れ値となる副原料を含む試料を除外した 解析 れも直線性が見られ,各かび毒で濃度推定が可能 DON R2 = 0.76 SEP = 11.3 NIV ZEA 第10図 3つのかび毒の同時推定(バリデーション結果) 食品と容器 313 2013 VOL. 54 NO. 5 て採用されている。しかし,これらの手法は,煩 似汚染濃度となるよう調製した。アフラトキシ 雑な前処理や機器の操作・習熟を要するため,香 ン B 1 標準溶液と疑似汚染試料は,前処理をせず 辛料の産地や流通段階で実施可能な簡易・迅速な に,そのまま蛍光指紋計測に供試した。蛍光指紋 スクリーニング手法の開発が望まれている。ここ の測定条件を検討するために,透過計測と反射計 では,蛍光指紋により,煩雑な前処理をせずに簡 測(第11図)を試みた。 第12図に,その結果を示す。第12図( a )にお 易・迅速にナツメグ抽出液中のアフラトキシン いては,透明なメタノールだけであるので,ほと B 1 を検出する手法について検討を行った。 んど蛍光情報は見られない。そこにアフラトキシ アフラトキシン未検出のナツメグを粉砕した後, メタノール溶液(メタノール:水=8:2)で振 ン B 1 を添加した場合は,アフラトキシンの特徴 とう抽出を行い,遠心器で抽出残渣を取り除いた 的な蛍光ピークが観察される。しかし,メタノー ものをナツメグ抽出液とした。この抽出液にアフ ルに替わってナツメグ抽出液にアフラトキシン ラトキシン B 1 標準試薬(メタノール:水=8: B 1 を添加すると,ナツメグ抽出液の色素による 2)を添加し,0.0~4.0ppb(23濃度段階)の疑 励起光の吸収が生じ,透過法においては第11図 さ の下部に図解したように,キュベッ トセルの内部まで励起光が到達でき ないため,蛍光情報はほとんど得ら れなくなる。しかし,反射法におい ては,キュベットセル表面のみにお いては蛍光現象が生じうるので,第 12図( d )のようなアフラトキシンの 情報も含んだ蛍光指紋が得られるこ とが明らかになった。すなわち,蛍 光指紋の測定に反射法を用いること で,煩雑な前処理を経ずに疑似汚染 試料に含まれるアフラトキシンの計 測が可能となった。得られた蛍光指 第11図 蛍光指紋計測における透過測定と反射測定 (カラー図表を HP に掲載 C024) 励起波長 [nm] (a)透過計測 80%メタノール 紋データに PLS 回帰分析を適用す (c)透過計測 ナツメグ抽出液 +アフラトキシンB1 (b)透過計測 80%メタノール +アフラトキシンB1 (d)反射計測 ナツメグ抽出液 +アフラトキシンB1 800 600 400 200 200 400 600 800 200 400 600 800 200 400 600 800 200 400 600 800 [nm] 蛍光波長 この条件を使用 第12図 アフラトキシン B 1 の蛍光指紋計測 (カラー図表を HP に掲載 C025) 食品と容器 314 2013 VOL. 54 NO. 5 アフラトキシンB1推定値 (ppb) メグ抽出液中における ppb レベルの低濃度のア フラトキシン B 1 濃度を簡易に推定可能になると 4 推察された。 3 8.蛍光指紋の可能性 2 蛍光指紋は,励起蛍光マトリクスとも呼ばれ, その概念は決して新しいものではない。しかしな 1 がら,実際に手間をかけずに比較的短時間で計測 R2=0.934 ができるようになったのは,ここ4,5年のこと 0 であり,また,得られた膨大なデータを十分な 0 1 2 精度で鑑別や定量に応用できるようになったの 3 も,最近の情報科学の進歩によるところが大きい。 アフラトキシンB1添加値 (ppb) 我々は,さらに,この技術をイメージングに拡げ 第13図 PLS 回帰分析によるアフラトキシン B1 濃度推定 る研究も行っており,パン生地におけるデンプン やグルテンの可視化10)−12)や生菌数の分布の可視 (●△■は,便宜的につけた3段階の濃度) 化などへの展開を試みている。すなわち,点から ることにより,推定値は,実際のアフラトキシン 面への計測も可能であり,その応用範囲は,食品 B1添加濃度と高い直線性を示した(第13図)。こ 分野だけにとどまらず,生物,医療分野にも貢献 れらの結果から,蛍光指紋を用いることで,ナツ しうるものと期待している。 参 考 文 献 1)中 村結花子,藤田かおり,杉山純一,蔦瑞樹,柴田 真理朗,吉村正俊,粉川美踏,鍋谷浩志,荒木徹也: “蛍光指紋計測によるマンゴーの産地判別”,日本食品 科学工学会誌,第59巻 第8号,p. 387−393(2012) 2)杉 山武裕,藤田かおり,蔦 瑞樹,杉山純一,柴田 真理朗,粉川美踏,荒木徹也,鍋谷浩志,相良泰行: “励起蛍光マトリクスによるそば粉と小麦粉の混合割 合の推定” ,日本食品科学工学会誌,第57巻 第6号, p. 238−242(2010) 3)M ario Shibata, Kaori Fujita, Junichi Sugiyama, Mizuki Tsuta, Mito Kokawa, Yoshitane Mori, Hiroshi Sakabe “Predicting : the buckwheat flour ratio for commercial dried buckwheat noodlesbased on the fluorescence fingerprint” , Bioscience, Biotechnology and Biochemistry, 75(7),p. 1312−1316(2011) 4)藤田かおり,蔦 瑞樹,杉山純一:“励起蛍光マトリ クス計測を応用したデオキシニバレノールの新規判別 法”,日本食品科学工学会誌,第55巻 第4号,p. 177 −182(2008) 5)K aori Fujita,Mizuki Tsuta,Mito Kokawa, Junichi Sugiyama “Detection : of Deoxynivalenol Using Fluorescence Excitation-Emission Matrix”, Food and Bioprocess Technology, 3(6),p. 922−927(2010) 6)藤田かおり,蔦瑞樹,杉山純一,久城真代,柴田真理 朗:“蛍光指紋による小麦粉中のデオキシニバレノー ルの非破壊計測”,日本食品科学工学会誌,第58巻 第 8号,p. 375−381(2011) 7)藤田かおり,杉山純一,蔦瑞樹,小澤徹,柴田真理朗, 吉村正俊,粉川美踏,久城真代: “蛍光指紋を利用し たコムギ中のカビ毒の非破壊簡易検出法の開発”,農 食品と容器 315 業情報研究,21(1)p. 11−19(2012) 8)Kaori Fujita, Junichi Sugiyama, Mizuki Tsuta, Mario Shibata, Mito Kokawa, Hiroyuki Onda, Takehito Sagawa:“Detection of aflatoxins B1, B2, G1 and G2 in nutmeg extract using fluorescencefingerprint” , Food and Bioprocess Technology,(inpress) 9)Naomi Oto,Seiichi Oshita,Yoshio Makino,Yoshinori Kawagoe,Junichi Sugiyama,Masatoshi, Yoshimura: “Non-destructive evaluation of ATP content andplate count on pork meat surface by fluorescence spectroscopy” , Meat Science, 93(3) ,579−585(2012) 10)M ito Kokawa,Kaori Fujita,Junichi Sugiyama, Mizuki Tsuta,Mario Shibata,Tetsuya Araki, Hiroshi Nabetani:“Visualizationof Gluten and Starch Distributions in Dough by Fluorescence Fingerprint Imaging”, Bioscience, Biotechnology and Biochemistry, 75(11),p. 2112−2118(2011) 11)Mito Kokawa, Kaori Fujita, Junichi Sugiyama, Mizuki Tsuta, Mario Shibata, Tetsuya Araki a, Hiroshi Nabetani “Quantification : of the distributions of gluten, starch and air bubbles in dough at different mixing stages by fluorescence fingerprint imaging” , Journal of Cereal Science, 55, p. 15−21(2011) 12)M ito Kokawa, Junichi Sugiyama, Mizuki Tsuta, Masatoshi Yoshimura, Kaori Fujita, Mario Shibata, Tetsuya Araki, Hiroshi Nabetani “Development : of a quantitative visualization technique for gluten in dough using fluorescence fingerprint imaging”, Food and Bioprocess Technology, 5(5), (2012) 2013 VOL. 54 NO. 5 特別レポート 第1四半期の低アルコール飲料市場動向 3%増。宝酒造〈焼酎ハイボール〉は16%増と引 1~3月累計は主要4社計で6%増 き続き2ケタ増。アサヒ〈カクテルパートナー〉 は3月5日から発売の「ディアピンク」シリーズ 醸造産業新聞社が集計した主要4社(サント が上乗せとなり11%増。 リー・キリン・宝酒造・アサヒ)の第1四半期 (1~3月累計)の低アルコール RTD 飲料市場 第2表 2013年1~3月のブランド別販売数量 規模は前年比6%増の1,616万箱(350 mL ×24本 換算)となった。これで5年連続の増加となり過 去最高を更新した。社別の実績は第1表のとおり で,4社すべてプラスとなった。4社のアル分8 ~9%「ストロング系」商品の合計は11%増の約 530万箱となり,約3分の1を占めた。一方,アル 分2~4%の「ライト系」商品の合計はほぼ前年 並みの約480万箱で約3割を占めたとみられる。 第1表 2013年1〜3月の主要4社実績 数量 (万箱) 前年比 (%) サントリー 596 107 キリン 534 103 宝酒造 246 109 アサヒ 240 110 1,616 106 計 銘柄名 数量 (万箱) 前年比 (%) キリン〈氷結〉 サントリー〈−196℃〉 サントリー〈ほろよい〉 宝酒造〈焼酎ハイボール〉 アサヒ〈カクテルパートナー〉 アサヒ〈すらっと〉 宝酒造〈直搾り〉 キリン〈本搾り〉 サントリー〈カロリ。〉 サントリー〈カクテルカロリ。〉 宝酒造〈canチューハイ〉 アサヒ〈ハイリキ〉 アサヒ〈果実の瞬間〉 キリン〈スミノフアイス〉 447 344 159 105 65 62 56 48 45 40 36 36 28 18 101 121 103 116 111 86 115 182 64 108 97 − 89 118 《注》1箱 =350mL×24本換算 このほか,3月にリニューアルした〈カクテル 《注》1箱=350 mL×24本換算。洋酒ベースの「ハイボール缶」 除く カロリ。〉8%増,1月30日から「オレンジ」を 発売したキリン〈本搾り〉82%増,キリン〈スミ ノフアイス〉18%増の伸長が目立つ。新商品では 〈氷結〉1%増,〈-196℃〉21%増 アサヒが3月19日から発売した〈ハイリキ・ザ・ スペシャル〉が大部分を占める〈ハイリキ〉は36 主要ブランドの販売数量は第2表のとおり。上 万箱となった。「まずまずの出足」(同社) 位10ブランドのうち,8ブランドが前年を上回っ た。トップブランドのキリン〈氷結〉は1%増。 「ストロング系」の今後の伸長に注目 「ストロング」「スタンダード」がともに3%増と なったほか,「早摘み」の大幅増が寄与した。サ 今後の焦点はアル分8~9%の「ストロング ントリー〈−196℃〉は21%増と引き続き好調。 系」分野がどこまで伸長するかだ。サントリーが このうち「ストロングゼロ」は27%増となった。 発表した「RTD レポート2013」によると,「スト 続くサントリー〈ほろよい〉は1月に発売した ロング系」商品を飲む理由について,「ストレス 「練乳いちごサワー」など期間限定商品が堅調で を発散したい,手頃な値段で酔うことができるな 食品と容器 316 2013 VOL. 54 NO. 5 どの回答が多かった」といい,他のメーカーの見 ~4%の「ライト系」,アル分5~7%の「スタ 方もほぼ一致している。あるメーカー担当者は ンダード系」,「ストロング系」各分野と低アル こう指摘する。「東日本大震災以降,家飲みが広 RTD 総市場の推移は第3表のとおり。「ストロン がっていることに加え,08年に発生したリーマン グ系」の伸長が目立つ一方,「スタンダード系」 ショックによる景気悪化以降続く節約志向から, 「ライト系」は頭打ちの状態となっており,今後 日々の生活でストレスを感じている30 ~ 50代男 も大きな伸長は難しそうだ。 性に受け入れられているのではないか。世相を反 第3表 低アル RTD のタイプ別市場規模 映した伸長だろう」 2010 年 2011 年 2012 年 ライト 2,500 (115) 2,500 (100) 2,400 (96) スタンダード 4,350 (100) 4,350 (100) 4,230 (97) ストロング 1,350 (130) 1,700 (125) 2,300 (135) 総市場 8,200 (108) 8,550 (105) 8,930 (104) ヘビーユーザーが多いことも特徴だ。「『ストロ ング系』商品を好む層は,同じブランドを継続購 入することが多い。一度気に入れば飲み続けても らえる。ヘビーユーザーに支えられている」 (メー カー筋)という。「ストロング系」商品の鍵を握 るのは定番フレーバーのレモンだ。「新ブランド が定着するかどうかは,最も激戦であり,販売量 の多いレモンでいかにヘビーユーザーの支持を得 《注》単位:万箱。1箱=350mL×24本換算。カッコ内は前年 比,%。ライトはアル分2~4% , スタンダードは5~ 7% , ストロングは8~9% られるかにかかっている」(アサヒ) その一方でフレーバーの多様化も鍵を握る。定 番のレモン,グレープフルーツに加え,サント 「ライト系」分野は09年のサントリー〈ほろよ リーは11年以降,〈-196℃ストロングゼロ〉でブ い〉の発売で同年に急拡大。10年には2,500万箱, ドウやリンゴなど様々なフレーバーを展開。女性 総市場の約3割を占めた。しかし11年は前年並み 層へ浸透した。アサヒは3月発売の〈ハイリキ・ にとどまり,12年は前年割れとなった。中心ター ザ・スペシャル〉で「カシスオレンジ」を発売。 ゲットが20代の男女で,風呂上がりや就寝前など キリンは7月2日から〈氷結ストロング・サワー リラックスしたいときなどに軽く酔いたいという チェリー〉を期間限定発売する。 飲用が多いこと,酒が苦手な人の飲用が多いこと 重点分野とみて主要メーカーは新商品の発売や から,一度に何本も飲むことがなく,ヘビーユー リニューアルなどを行っている。サントリーは ザーが多い「ストロング系」に比べて伸び悩んで 〈−196℃ストロングゼロ〉から「ドライ」を4月 いるようだ。 2日発売。「甘味料ゼロ・プリン体ゼロ。食事に 「スタンダード系」は現在も最大規模ではある も合う甘くないチューハイ」(同社)。食中に低ア が,市場でのシェアは年々低下している。12年の ル RTD を飲む層の取り込みを狙う。アサヒは3 シェアは47%とはじめて5割を割った。PB 商品 月19日から,新ブランド〈ハイリキ・ザ・スペ の伸長とともに,NB メーカーは PB では真似で シャル〉を発売。「ロングセラーブランド〈ハイ きない商品を作ろうとして,「スタンダード系」 リキ〉を冠した」(同社)。キリンは2月製造分か 商品から離れ,「ストロング系」「ライト系」商品 ら〈氷結ストロング〉を一新,4月3日から「沖 の開発を進めたともみることができる。今後もし 縄産シークヮーサー」を発売。宝酒造は3月19 ばらくは減少が続くとみられ,市場に占めるシェ 日から,〈can チューハイ〉の「発売30年記念缶」 アも低下することが予想される。 を発売した。 瓶入り RTD 商品の堅調続く 「スタンダード系」 「ライト系」は頭打ち このほか好調なのは瓶入り商品だ。本紙が推計 した昨年の瓶入り低アル RTD 商品の市場規模は 醸造産業新聞社が推計した過去3年のアル分2 食品と容器 317 2013 VOL. 54 NO. 5 20%の増の約180万箱。総市場(約8,930万箱)の 急拡大したアル分0.00%ノンアルコール RTD 市 約2%に過ぎないが,堅調な伸びとなっている。 場。今年に入り前年比ではマイナスの推移が続く ブランド別には,キリン〈スミノフアイス〉は昨 が,主要社が4月から新商品を発売するほか,サ 年23%増の84万箱。今年に入っても1~3月累計 ントリーは昼間の飲用を増やそうという施策を始 は18%の2ケタ増と好調が続く。モルソン・ク めた。最需要期の夏場に向け市場は勢いづくか。 アーズ・ジャパン〈ジーマ〉は昨年16%増の93万 注目が集まる。 箱(330 mL,340 mL 単純合算)。4月15日からは 醸造産業新聞社が推計した1~3月累計のノ 275 mL 瓶を発売。「さらに飲みやすいサイズを開 ンアルコール RTD 市場は前年比10%減の約80万 発」(同社)。サントリーは4月9日から〈スカイ 箱(350mL×24本換算)となった。この要因につ ブルー〉を一新して発売。「昨年年間では約3割 いては「昨年,数多くの商品が各社から発売され, 増」(同社)。さらにサッポロが4月10日から〈バ 市場が急拡大した裏返しが大きい」「認知度は上 カルディ・モヒート〉で275 mL 瓶を発売し参入。 がっているが,お客に『ノンアルコールで甘い飲 「今後伸長が期待できるカテゴリー」(同社)とい み物』という先入観があり,清涼飲料を選択され う。 てしまう」などの声が聞かれるものの,「マイナ 伸長の理由はバーやクラブなどでの若者の支 スは一時的なもので,ノンアルコール飲料が支持 持の広がりだ。「20~30代の集まるバーやクラブ, される傾向は続いており,プラスに転じるとみて カラオケボックスなどで好評」(サントリー)と いる」との見方が多い。 の見方は共通している。さらに,「グラスに注ぐ 巻き返しに向け,各社から新商品が登場する。 のではなく,瓶のまま飲める手軽さが支持を集め サントリーは3月中旬から〈のんある気分〉カク ているのではないか」(メーカー筋)などの声が テル風味3種を一新,4月23日から「爽やかシャ 聞かれる。 ルドネ」を初夏限定発売。アサヒは4月9日か ら〈ゼロカク・アイスリモーネ〉を発売。キリン アル分以外の特徴を訴求する商品増加 は4月10日から〈ゼロハイ・ウメ〉〈同・ライム〉 を発売した。 また,アル分とは異なる切り口を訴求する商品 サントリーはイベントを通し飲用シーンを提案, の発売が増えつつある。その一つが「食感」だ。 宝酒造は3月26日から〈果莉那(かりな)〉を発 新たな需要の掘り起こしを狙う。3月27日と4月 売。瓶を振って中身を崩して飲むのが特徴。 「ジュ 1~3日に東京・六本木ヒルズで「オールフリー レ状のような食感。カクテルやデザートとして ひる花見パーク」を実施。4月24~29日に「のん も使える」(同社)。サントリーは昨年9月から ある足湯ガーデン」を東名高速海老名サービスエ 〈カクテルカロリ。カクテルスムージー〉を発売。 リアに実施した。「当社の調査によると,月1回 「女性に人気の飲み物・スムージーのような,ほ 以上ノンアルコール飲料を飲用している人の8割 超が,昼間に飲用経験があるか,昼間の飲用に関 どよいとろみと舌触りの新食感」(同社) メーカーからは「アル分を見て購入することが 心があることがわかった。今後も昼間の飲用拡大 浸透したため,アル分だけの訴求では購入につな を目指す」(同社)という。「市場が生まれてまだ がりにくくなるだろう。今後はそれに加えた提案 3年。販売動向についてメーカーもまだ把握でき が鍵になる」との声があり,糖類ゼロや糖質オフ ていない部分がある。まだ潜在需要はあり,そこ といった機能系,食感,食事との相性などを訴求 を掘り起こせば市場は伸びる」(メーカー筋)と する商品の動向に注目が集まりそうだ。 の見方が多く,今後の各社の動向に注目が集まり そうだ。 ノンアル RTD,飲用シーン提案で拡大なるか (醸造産業新聞社編集部) 昨年,各社から様々な商品が発売され,市場が 食品と容器 318 2013 VOL. 54 NO. 5 技術用語 解説 「容器の事典」(缶詰技術研究会編)から抜粋 押出コーティング 〔extrusion coating〕 基材の上に LDPE などの溶融樹脂を薄膜状態 で塗工し,複合包材を作り上げる方法で,複合 フレキシブルパッケージの代表的加工方法であ る。二軸延伸フィルム(OPP,PET,ONy)や紙, はく アルミ箔などを基材として300℃以上の温度で押 し出した溶融樹脂膜を貼り合わせるもので,1945 年に米国 DuPont 社が開発した技術である。 リバースコーティングモデル図 プラスチックを基材とする場合,接着促進剤 溶液(AC:アンカーコート剤)を塗布,乾燥後, 溶融樹脂膜と貼り合わせ,冷却した後に巻き取る。 紙を基材とする場合は,コロナ処理機などで基材 静電塗装 〔electrostatic coating〕 の前処理が施される。成形速度は70~400m/min 帯電した塗料を利用する塗装方法。自動車の車 と速く,少品種多量生産に適した加工方法である 体や白物家電の筐体などに広く利用されている。 が,用途に応じてアイオノマー樹脂,EVA,PP, 塗料を霧状にするための方式には,塗料を噴霧器 LLDPE などが使用される。 で噴霧するガン型と,帯電した塗料自身の反発を きょう 利用した静電霧化方式があり,さらに,ガン型に は帯電した塗料を噴霧する方式と,噴霧した塗料 コイルコート 〔coil coating〕 に外部電極からコロナ放電で電荷を付する方式と がある。 コイル状に巻き取ったアルミ材やスチール材を 連続的に80~220m/min 程度の高速でロール塗装 する方法。 ラミネート 〔lamination〕 缶材において,多くは EOE やサニタリー蓋と いった蓋材の塗装に適用している。生産性を考慮 単体フィルムでは得られない性能を得るため, し,別々のコーターでコイル表裏を同時に塗装す 2種以上のフィルムを貼り合わせること。加工法 る場合が多い。 は,樹脂フィルム,アルミニウム箔,などの基材 塗布量の調整は,アプリケーターロールと呼ば 同士を接着剤にて積層するグルーラミネーション れる塗装ロールとピックアップロールと呼ばれる と,ダイより溶融樹脂を押し出し,溶融樹脂同士 塗料供給ロールの押し込み圧(ニップ圧という) あるいは溶融樹脂と樹脂フィルム,アルミニウム の強弱およびこれらのロールの塗装速度に対する 箔などの基材を圧着して積層品を得る押出ラミ 周速比を変動させることにより行う。 ネーションとに大別される。グルーラミネーショ なお,コイルコートは,リバースコーティング ンはさらにウエットラミネーション,ドライラミ による塗装方式が用いられることが多く,その特 ネーション,ホットメルトラミネーションに分類 徴は,アプリケーターロールの回転方向と被塗装 され,押出ラミネーションは押出コーティング, 材の進行方向が逆向きとなる。一般的に厚塗りに 多層Tダイ法に分類される。また,押出コーティ 適しており,コイル幅方向の塗布量のバラツキも ング法には,シングル押出コーティング,タンデ 少なく,均一できれいな塗面を得ることができる。 ム押出コーティング,共押出コーティングがある。 食品と容器 319 2013 VOL. 54 NO. 5 業界の話題 日本食糧新聞社・食サーチ(http://news.nissyoku.co.jp/)より 総合企画センター大阪,「要介 用したことがある」が38.2%と スープ」の要望が高かった。最 護者家族」を調査 栄養補助食 約4割が利用経験があった。要 も強化したい栄養成分は「たん 品に「栄養摂取」期待 介護度別に見ると,高いほど栄 ぱく質」「エネルギー」「カルシ 養補助食品の利用経験が多いこ ウム」などが上位で,栄養補助 とが分かる。特に「要介護5」 食品を利用することで予防・改 の総合企画センター大阪は,2 の場合,要介護度が高いほど栄 善したい症状は「筋力・運動機 月に同居家族に在宅の被介護者 養補助食品を「利用したことが 能の低下」が約6割となり,特 を抱える全国の600人を対象に ある」人は64.2%と多い。一方, に「要支援1・2」や「要介護 (日食 2013/03/25 日付) マーケティングリサーチ会社 「介護における低栄養の実体と 「要支援1・2」では,利用経 1・2」では7割が筋力・運動 機能の低下を予防・改善したい 食品ニーズ」の消費者調査を実 験者が17.9%にとどまっている。 施したところ,栄養補助食品に 「要介護5」の人は,かむ力 期待する効果は要介護度の高い や飲み込む力の低下,食欲の減 介護冷食の利用進む 課題は 人は「栄養摂取」,要介護度の 退などを理由に栄養不足を感じ 「価格」「容量」 日本冷凍食品 比較的低い人は「筋力・運動機 ていることが多く,栄養不足へ 能の低下の予防・改善」を期待 の関心も高い。それだけに栄養 していることが分かった。 補助食品の利用も多くなっている。 としている。 協会調べ (日食 2013/03/29 日付) 日本冷凍食品協会(冷食協) 要介護高齢者を抱える同居家 栄養補助食品の効果を実感し は27日,「介護・医療施設にお 族全体では「栄養不足(低栄養 た人は51.1%と高かった。特に ける冷凍食品利用実態調査」の 状態)」が問題となっているこ 「要介護5」や「90歳以上」「栄 結果報告書を公表した。それに とを認識している人は3割と少 養不足を感じたことがある」人 よると,飲み下し・そしゃく困 なかった。さらに被介護者が栄 が効果を実感している。効果内 難者を対象とする業務用の「冷 養不足であると感じたことがあ 容は「食欲が戻った」「おいし 凍介護食品」(UDF など)の取 る人も3割にとどまり,約7割 そうに食べるようになった」な り扱い比率は,給食受託業者が の人が栄養不足を実感していな ど食欲の改善が上位に上がって 69%,介護施設が62%,医療施 いことが分かった。 いる。栄養補助食品の商品評価 設が43%にのぼることが分かっ しかし,被介護者が「要介護 では「手軽さ」「食べやすさ・ た。通常の冷凍食品に比べて利 5」の場合は,低栄養状態の問 飲み込みやすさ」「栄養面」に 用率は低いが,割高な価格や適 題に関する認知度が高く,被介 対する満足度が高い。一方で 量を超える容量・発注ロットな 護者の栄養不足を自覚している 「価格」や「メニューの少なさ」 どの課題が改善されれば,取り 人は46.5%と多く,要介護度が 「見た目がおいしそうでない」 扱いを「増やしたい」とする事 高いほど被介護者の栄養不足が といった点を不満に感じている 業者が3~4割を占めるという。 問題になっていることが分かっ 人が多く,こうした点の改善が 同調査は12年11月~13年2月 た。 求められている。 にかけて,全国の介護施設・医 要介護者向けの栄養補助食品 今後利用したい栄養補助食品 療 施 設・ 給 食 受 託 業 者, 合わ があることを「知っている」と では,要介護度が高い場合は せて1,335事業者を対象に行っ 答 え た60.7 % の364人 で, こ の 「濃厚流動食」で,要介護度が た。うち電話スクリーニング調 364人に栄養補助食品を使用し たことがあるかを訪ねたら「利 食品と容器 低い場合は「栄養強化ゼリー」 「栄養強化プリン」「栄養強化 320 査 が1,036件。 調 査 票 の 郵 送 に よる調査数が288件で,うち介 2013 VOL. 54 NO. 5 護施設104件,給食受託業者78 棄ロスが少なく保存性に優れる, 及促進が魚食拡大の鍵となりそ 件,病院・診療所73件が含まれ が大半だった。 う。また「揚げ物」「マリネ・ る。また,訪問面接調査も11件 各年代で家庭の魚食減 「増や カルパッチョ」「洋風の麺・ご 実施した。 したい」は半数 日本水産「魚 はん料理」を好む傾向が強まった。 介護冷食の認知度を事業体別 に見ると,医療施設が95%,介 介料理調査」 「家庭で魚介料理を増やすた (日食 2013/04/01 日付) めに期待する商品・メニュー」 護施設が93%,給食受託業者が 首都圏の既婚女性,魚食は漸 を聞くと,切り身・骨抜きや調 88%といずれも高い。取り扱い 減だが「増やしたい」が半数。 味品など「下処理済み商品」へ 実績のある事業体の食品カテゴ 日本水産が06年から3年置きに の要望が特に60代以外で強い。 リー別利用率を見ると,「魚介 実施した「魚介料理に関する意 調理メニューでは「フライパン のおかず」「肉のおかず」「野菜 識と実態」調査で,こうした実 のみで調理できる」「野菜も一 のおかず」「菓子・デザート類」 態が浮き彫りとなった。首都圏 緒にとれる」メニューが僅差で の順に利用率が高い。一方で 50km 圏内に在住する25~69歳 並んだ。 「米飯・麺類」「卵料理」などは の既婚女性約1,000人から有効 日本食糧新聞社と日本冷凍食品 回答を得た。06年,09年にも同 検査協会,「食品技術管理士」 様の調査を実施しており,傾向 認定制度を創設 低い傾向にある。 利用している事業体に今後の 取り扱いの意向について聞く の変化を分析した。 (日食 2013/04/01 日付) と,「増やしたい」「どちらかと それによると,「魚を多く食 日本食糧新聞社と日本冷凍食 いうと増やしたい」を合わせた べることを心がけている」と 品検査協会は1日,「食品技術 回答が給食受託業者で40%,医 す る 回 答 は06年 時 点 で67.8 %, 管理士」(商標登録出願中)の 療施設で35%,介護施設で34% 09年 に69 % と 上 昇,12年 に は 資格認定制度を創設した。両社 だった。「どちらともいえない」 63.7%に減少した。全年代で減 は11年9月に「食品技術者養成 は6割程度で,その理由とし 少したが,特に40代が最も減少 学校」を開校。製造現場の管理 て(1)食材としてまだ違和感 率 が 高 く,06年 か ら9.1ポ イ ン に必要とされるスキルと知識を があり,社会的認知度の上昇 ト 減,50代 で も 8 ポ イ ン ト 減 兼ね備え,改善活動推進のため を待ちたい(2)コストがかか だった。ただ「今後は魚介料理 のリーダーシップを有する“食 る,(3)負担の軽減につながる を増やしたいか」との問いには, 品技術者”の養成を目的とする。 が,嗜好面で満足を得られない, 「増やしたい」が全体の49.4%, (4)発注単位が微調整できない, 「現状維持したい」が50%。年 第5期の今年3月現在,約130 人が修了した。 などの回答が目立った。利用し 代別では20~30代の61.6%,40 食品業界における資格取得の ていない事業体の理由では,価 代の60.6%,50代の46.5%が「増 動きの加速化を受け,同校につ 格が高い・種類が少ない・手作 やしたい」と回答。魚食を増や いても修了生の力量を証明する りしたいという思いが強い,と す食事場面として,全体の9割 ための資格認定を求めるニーズ いった声が聞かれた。 以上が「夕食」と答えた。 が高まっているところから創設。 一方,通常の冷凍食品の利用 「好きな魚料理」と「料理し 食品技術管理士の資格認定制度 は給食受託業者の9割超,介護 てよく食べる魚料理」を聞いた の目的は,修了生の力量を社会 施設と医療施設はともに全施設 ところ,ともに「和風の焼魚」 的に担保し,食品事業者の管理 が「取り扱いあり」と回答した。 が09年から変わらずトップだっ レベルの向上による“食の安 冷食利用が定着していることが た。09年と比較して両方で伸び 全”と“品質の維持向上”への 分かった。取り扱い理由は(1) たのが「照り焼き」「洋風の焼 貢献にある。 簡便調理で価格が安い,(2)廃 き魚」で,これらメニューの普 食品と容器 321 これに伴い,同校のカリキュ 2013 VOL. 54 NO. 5 ラムが資格の力量要件を満たす 袋が縮小する中,海外ビジネス パに輸出する三国間貿易を行っ 内容であることを精査し,認定 を今後の成長分野ととらえると ている。これをジャポニカ米 が適切であるかについて評価す ともに,コメ消費拡大による農 6,000t, 香 り 米 1 万 t の 達 成 るカリキュラム認定委員会が組 業活性化につながると,強化を を目指している。 織された。 図る卸は多い。だが外国産米と さらに将来の日本米輸出を見 の価格差の壁に加え,低価格米 据え,ベトナムやタイ米の中国 〈委員長〉東京海洋大学教授・ を中心とした玉不足と価格上昇 向け輸出を推進するほか,アメ 鈴木徹氏,〈委員〉ABE 技術士 に転じる国内にあって,原料手 リカ産の中・単粒種や国産米の 事務所代表・阿部万寿雄氏,前 当ての問題が顕在化するなど課 シンガポールやマレーシアなど ニチレイフーズ品質保証部長・ 題は多い。 への販売を強化する方針だ。 メンバーは次の通り。 こうした取り組みの背景には, 片山博視氏,東京家政大学特任 最大手の神明は,輸出用米が 教授・生活科学研究所長 / 東京 生産調整の一環として位置づけ 海外で和食や寿司がブームを超 海洋大学名誉教授・藤井建夫氏, られた08年に,米輸出を本格的 えて定着してきた上,品質や食 永谷園茨城工場長代理・増田尚 にスタートさせた。アジアや 味の点で日本米の評価が極めて 弘氏。 ア メ リ カ, ヨ ー ロ ッ パ, オ ー 高いことがある。だが,海外産 ストラリアなどに向けて,こ との価格差がネックとなり,日 食品工場の製造現場を管理する の年40tを輸出。9年には300 本米のシェアは低い。現にアメ ために必要とされる一般的な知 t,10年から直近の12年まで毎 リカやオーストラリア,イタリ 識を有すること,(2)製造現場 年1,000t に 上 っ て い る。12年 アなどのコメ生産国の間では, における問題解決について問題 産のわが国のコメ総輸出量が 和食に使う中・単粒種米の生産 点の顕在化と改善案を策定でき 2,000tの中で約半数を占める。 を拡大し,輸出に本腰を入れる ること,(3)製造現場に関わる 同社の海外戦略のスタンスに 作業を標準化し,作業手順書な 「海外に日本食文化を広め定着 そうした中,わが国では輸出 どの文書作成が適切にできるこ させたい」があり,そこでもう 用米は生産調整の一環として位 と,(4)HACCP 手法による食 一つの柱に外食店展開を据えて 置付けられるものの,米粉用や 品安全に関わる取り組み(危害 いる。具体的には昨年,回転寿 加工用米と異なり生産に対して 分 析,CCP の 決 定, シ ス テ ム 司チェーンの元気寿司とグルメ 助成金がないことで取り組む農 運用など)が適切にできること, 杵屋3社で資本業務提携を締結。 家が減り,原料米確保が困難と (5)従業員の教育訓練方法,製 元気寿司の筆頭株主となり共同 なって高値を誘発し,国際競争 造現場におけるコミュニケー で米国で日本食レストラン事業 力が弱まっているのも確かだ。 ション力を身に付けていること, に乗り出し,すでに「そじ坊」 具 体 的 な 力 量 要 件 は,( 1) 傾向が強まっているという。 加えて13年産米で,農水省が, (6)その他,食品工場を管理す の店名で2店オープンさせた。 棚上げ備蓄制度円滑運営のため るのに必要とされるスキルを有 一 方 で 木 徳 神 糧 は 今 期, 海 政府備蓄米の買い入れ確保に注 外ビジネスの強化に乗り出し 力し,高生産者手取り額が見込 今年7月,第1回食品技術管 た。同社は91年,ベトナムに現 まれ,生産者にとってメリット 理士資格試験を実施する予定。 地の輸出入公団と合弁で「アン が大きい。このコメも競合とな コメビジネス最前線特集:ト ジメックスキトク」を立ち上げ, り,輸出用米生産量が一層減少 ピックス=活発化する海外ビジ 日本米とタイ香り米の現地生産 する懸念が高まっている。 ネス原料米不足が新たな問題に をスタートさせるなど,海外ビ 産地 JA はここまでできる JA ジネスにいち早く取り組み,現 秋田おばこの取り組み(3)加 在アジア諸国や北米,ヨーロッ 工用や輸出用も 大手米卸と すること。 (日食 2013/04/03 日付) 人口減や少子高齢化進展で胃 食品と容器 322 2013 VOL. 54 NO. 5 こうした加工原料としての供 で」,準備時間は78%が「15分 給に当たっては,同 JA が得意 未満」,朝食メニューは42%が とする品質の均質化を通じて, 「作り分けをする」などの実態 国内向け主食用米だけにとどま 加工ロス率の少なさなどで差別 が,紀文食品の調査で浮き彫り らず,大手米卸などと取り組ん 化を図っている。 となった。20~60代の主婦1,000 チャレンジ (日食 2013/04/05 日付) JA 秋 田 お ば こ の 独 自 性 は, ただ,農水省は棚上げ備蓄制 人を対象に3月下旬,ネット上 度の円滑な制度運営のため13年 でアンケート調査した。高齢化 産の政府備蓄米の買い入れ確保 や女性の就業増などで生活サイ 味噌などの原料米のうち国が生 に力を入れており,13年産の生 クルの多様化が進むなか,朝食 産調整の一環として位置付けた 産者手取り額(10 a 当たり)は, シーンでも個別化や多様化が浸 もので,かつてはほぼ全量が全 加工用米で助成額の2万円を含 透している。一方で,理想的と 農,全集連経由だった。だが, め10万円台に対し,備蓄米は12 考える“朝食像”とのかい離も 規制緩和の進展から,取り組み 万5,000円程度が見込まれる状 みられる。 の多様化を目指し生産者と実需 況ともいわれており,加工用米 紀 文 調 査 に よ る と, 平日の 者が結びつき適正流通が確保さ の生産が備蓄米にシフトするこ 朝食を誰と食べるかの問いに, れることを条件に,08年から大 とが懸念されている。 で加工用米や輸出用米にチャレ ンジする点にもある。 加工用米とは米菓や和菓子, 「1人で」が最多の33.8%,次 一方,同 JA は転作カウント い で「 夫 と 」 が26.9 %。「 家 族 農業の法人化や集落営農の流れ 面積として生産できる輸出用 全員で」は17.1%だった。理想 の中で改廃農地が多く発生し対 米に積極的に取り組んでおり, を聞いたところ「家族全員」が 手卸の参入が相次いだ。加えて, 「海外でも需要があると判断し 48.9%,「1人で」が12.7%と順 「この解消と転作カウント面積 たことと,秋田県産あきたこま 位が逆転。「子どもと」も現在 にコメを作付けし,農家所得を ちの競争力を高めるための方 が20.6%,理想が9%とかい離 向上させたい」(藤村正喜組合 策」(藤村組合長)として,コ が大きい。また42.4%が朝食メ 長)思いがあり,同年に大手卸 メ卸最大手の神明と組んで生産 ニューを家族に合わせて「作り と手を結んで加工用米の取り組 をスタートした。同 JA と神明 分け」しており,43.3%が今後 みをスタートさせた。 は全国米関連食品輸出促進会の 「作り分け」したいと回答。家 こ の 年 に は5,000t 程 度 を 収 会員にもなっており,香港や台 族の好みや要望に合わせた“朝 穫したが,11年産では1万3,789 湾,ヨーロッパに「あきたこま 食メニューの多様化”が今後も tまで拡大した。同 JA では, ち」を11年産で約700tを販売 進みそうだ。 管内2,000ha の改廃農地のうち した。 策に苦慮していたことがあり, 多 忙 な 朝, 朝 食 準 備にかけ 約4分の1の500ha が作付け可 「地元農家が丹精込めて育て る時間は「10分未満」が36.2% 能とみており,その際の生産量 たコメを,海外の人においし と 最 多 で,「 5 分 未 満 」「15分 1万6,200tを目標に掲げている。 いと思って食べてもらいたい」 未満」と合わせると77.8%を占 (同組合長)という思いから, めた。就業女性と専業主婦と 介役となり,冷食メーカーや酒 輸出用米を最終的に1,500tに で,かける時間には大きな差が 造メーカーに向けて冷凍米飯や まで拡大することを目標に掲げ なかった。重視したい朝食の条 日本酒,焼酎用原料米を供給し ている。 件を聞くと,7割が「準備が簡 ている。このほか,震災を契機 朝食にも個別・多様化が浸透 単」,6割が「栄養バランスが に注目が集まる保存食用アル 紀文食品が調査 良い」,5割が「手早く食べら 販売に当たっては大手卸が仲 ファー化米原料としても,大手 メーカーに納入している。 食品と容器 (日食 2013/04/19 日付) 平 日 の 朝 食 は34 % が「 1 人 323 れる」,35%が「野菜の摂取量 を増やす」と回答した。 2013 VOL. 54 NO. 5 今月の統計 (℃) 30 平年値 25 2012年 20 2011年 2013年 15 10 5 0 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 第1図 平均気温の推移(1~12月・東京) (千kL) 500 (千kL) 500 2011年 2013年 2012年 2012年 2011年 ビン 400 2013年 新分野 400 大樽 300 300 発泡酒 缶 200 200 ビール 100 100 0 0 1月 2月 1月 3月 第2図 ビールの容器別課税数量推移 2月 3月 第3図 ビール・発泡酒・新分野別課税数量推移 (発泡酒・新分野込み) (千kL) 3,500 (一般社団法人全国清涼飲料工業会調) 2010年 2011年 2012年 3,000 2,500 その他容器 紙 2,000 PET びん アルミ缶 1,500 スチール缶 アルミボトル缶 1,000 スチールボトル缶 500 0 炭酸飲料 果実飲料 コーヒー ウーロン茶 紅茶 緑茶 ブレンド茶 スポーツD. 第4図 清涼飲料の品種別容器別生産対比 食品と容器 324 2013 VOL. 54 NO. 5 今月の統計 第1表 2013年(1~3月)ビール課税数量の前年比・構成比,容量ベース(発泡酒・新分野込み) 合計 缶 大樽 ビン 合計 ビール 発泡酒 新分野 前年比 97.3 98.5 97.2 88.7 前年比 97.3 94.3 92.3 103.4 構成比 100.0 69.6 19.8 10.6 構成比 100.0 47.1 14.4 38.5 前年構成比 100.0 68.8 19.6 11.6 前年構成比 100.0 48.6 15.2 36.2 第2表 容器入り清涼飲料生産量の推移 2010年 2011年 炭酸飲料 果実飲料等 コーヒー飲料等 茶系飲料 ミネラルウォーター類 豆乳類等 野菜飲料 スポーツ・機能性飲料 その他飲料 3,030,464 1,428,170 2,868,943 5,232,872 2,099,000 215,700 506,100 1,831,470 800,049 前年比 (%) 107 103 99 103 100 108 109 113 104 総計 18,012,768 104 生産量(kL) 2012年 3,128,093 1,508,820 2,888,145 5,135,616 2,582,600 229,700 508,600 1,639,896 767,547 前年比 (%) 103 106 101 98 123 106 100 90 96 18,389,017 102 生産量(kL) 第3表 平均気温,降水量,日照時間 平均気温(℃) 降水量(mm) 平年比 前年比 平年差 前年差 2012年 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2013年 1月 2月 3月 月間 月間 月間 月間 月間 月間 月間 月間 月間 月間 月間 下旬 月間 4月 上旬 中旬 14.5 19.6 21.4 26.4 29.1 26.2 19.4 12.7 7.3 5.5 6.2 11.3 12.1 15.1 14.8 -0.1 +0.7 -0.7 +0.6 +1.7 +2.4 +0.9 -0.6 -1.4 -0.6 -0.3 +0.8 +2.7 +2.2 +0.2 注)平年値は1981年~2010年の月,旬平均値 食品と容器 +0.0 +1.1 -1.4 -0.9 +1.6 +1.1 -0.1 -2.2 -0.2 +0.7 +0.8 +0.8 +3.3 +2.7 +0.5 (%) 118.5 231.0 185.0 130.0 25.0 214.5 154.5 154.0 69.0 70.0 30.0 12.0 44.5 222.5 8.0 *:暫定値 325 95 168 110 85 15 102 78 166 135 134 53 22 38 531 18 3,042,258 1,742,116 2,939,932 5,309,990 2,788,000 263,000 564,100 1,616,671 773,284 前年比 (%) 97 115 102 103 108 114 111 99 101 19,039,351 104 生産量(kL) (4月中旬まで・東京) 日照時間(h) 前年比 平年比 (%) 123 108 159 239 10 91 129 137 116 140 32 53 31 1,011 15 (%) 162.4 195.4 125.3 181.3 * 236.0 164.4 156.6 153.3 166.9 212.5 173.7 38.3 190.1 59.2 65.3 93 113 102 126 135 140 117 105 95 113 104 71 117 102 121 (%) 80 134 119 97 140 99 111 107 89 116 117 56 127 66 151 ☆2012年8月号から新平年値を使用(気象庁調査) 2013 VOL. 54 NO. 5 最近の技術雑誌から 国 内 編 〔解説〕食べやすさの評価―高齢者と若年者による評価― 高橋智子:日本官能評価学会誌,17(1)12~16('13.4) 栄 養 ・ 健 康 分 析 ・ 測 定 〔解説〕抗酸化栄養素の虚血性脳卒中に対する予防効果 山形一雄:New Food Industry,55(4)1~13('13) 〔解説〕特別寄稿―炭酸飲料分析の大幅な作業負担軽 減― 株式会社アントンパール・ジャパン:Beverage Japan, 36(3)104~105('13.4) 〔解説〕食成分と健康長寿―レスベラトロールの研究結 果を中心に― 早田邦康:New Food Industry,55(4)14~20('13) 〔解説〕特集―微生物管理の技術動向― ジャパンフードサイエンス,52(4)15~47('13) ○モバイル型一般生菌数センサの開発 …(有)バイオデバイステクノロジー/(株)ゲイト ○食中毒菌検出用キットの近況…………………米北太郎 ○大腸菌群から腸内細菌科菌群へ―簡易・迅速食品検査 キットの近況―………………………………森田 裕 ○サルモネラ簡易迅速試験法/バイダス UP サルモネラ (SPT)……………………………………………内田和之 ○過酢酸系除菌剤「MINNCARE」―ドライフォグシス テムによる食品工場内の殺菌―……………杉浦彰彦 ○厚生労働省からの通知法に収載/「ベロ毒素遺伝子検 出キット」&「リアルタイム RCR 装置」 ……………………………………タカラバイオ(株) ○微生物迅速検査装置「バイオプローラ」 ……………………………………光洋産業株式会社 〔解説〕特集―新開発の機能性食品― 食品と科学,55(4)64~70('13) ○機能性食品を食べて生き生きと①……………酒井重男 〔解説〕特別企画―食物アレルギー/求められる適切な 対応― 林 典子・柳田紀之・海老澤元宏:食と健康,57(4) 32~36('13) 〔解説〕特集―食のおいしさとは何か?/メンタルヘル スと行動心理学から考える(「フード・フォラム ・ つくば」より)― 食品と開発,48(4)4~14('13) ○メンタルヘルスと栄養…………………………武田英二 ○心理学から見た食と健康………………………今田純雄 ○鉄・ラクトフェリンの鎮痛及び抗ストレス効果 ………………………………………………小林敏也 ○オルニチンとストレスケア……………………西村明仁 〔解説〕特集―食品のオフフレーバー管理― ジャパンフードサイエンス,52(4)48~65('13) ○食品とオフフレーバー…………………………佐藤吉朗 ○ノンターゲット法によるオフフレーバーの分析 ………………………………………………伊藤光男 ○電子嗅覚システムとして機能するフラッシュ GC / 『フラッシュ GC ノーズ HERACLES Ⅱ 』 ………………アルファ・モス・ジャパン株式会社 ○耐熱性好酸性菌統一検査法用「YSG 寒天培地」 「Va-YSG 培地」「グアイアコール検出キット」 ………………………………極東製薬工業株式会社 ○オフフレーバー分析に役立つ GERSTEL におい分析 システムの紹介……………………ゲステル株式会社 〔解説〕特集―ロコモ・サルコペニア対策― 食品工業,56(8)45~72('13.4/30) ○ロコモティブシンドローム予防を目指したβ−クリプ トキサンチンの開発…………………………向井克之 ○ロコモティブシンドローム素材としての食品用コンド ロイチン硫酸について………………………西村和也 ○高齢化社会における乳タンパクの役割と可能性 ………………………………………………松田俊一 ○筋肉減少症(Sarcopenia)とホエイプロテイン(乳清 タンパク質)/その影響,メカニズムと栄養学的介 入の可能性……………… Dr. Paul J. Cribb, Ph. D.・ Dr. Scott K. Reaves, Ph. D. 〔解説〕年間特集―食品の品質保証技術― 食品機械装置,50(4)52~56('13) ○微生物熱測定法による食品防腐剤の効果の解析法 ………………………………………………田中晶善 微 生 物・酵 素 〔解説〕乳酸菌の生理機能とその要因 上西寛司・瀬戸泰幸:日本調理科学会誌,46(2) 129~133('13.4) 〔解説〕におい・味・テクスチャーの客観評価を目指して 編集部:食品と開発,48(4)26~30('13) 食品と容器 326 2013 VOL. 54 NO. 5 最近の技術雑誌から ○塩味感受性に与えるトウガラシ辛味成分カプサイシン の添加効果……………………………………成川真隆 ○新素材「ウェルネックス YN−1」の開発と応用 ………矢澤順子・大塚麻美・佐野博之・伏見善也 ○香料技術を用いた機能性素材(ソルトブースター・ソ ルトエンハンサー・ソルトリプレイサー)で演出す るおいしい減塩食品…………………………赤井則博 ○酵素処理発酵調味パウダー「UMAMI エンハンサ」 の塩味低減食品への応用……………………種市和也 ○各社の減塩素材・技術・注目の商品……………編集部 〔解説〕納豆に含まれる成分ポリアミンによる大腸がん 抑制効果を発見 食品工業,56(8)85~86('13.4/30) 食 品 衛 生 〔解説〕特集―食品自主回収の現状と課題― 食品と科学,55(4)57~63('13) ○食品事故製品の自主回収を考える……………向殿政男 〔解説〕特集1―STOP!! カンピロバクター食中毒― 和田真太郎:食と健康,57(4)8~16('13) 飲 料 ・ 醸 造 〔解説〕特集2―5Sと手洗いが食品衛生の第一歩― 笹井 勉:食と健康,57(4)52~61('13) 〔解説〕2012年輸入酒市場 品目別・銘柄別動向(1) 酒類食品統計月報,55(1)2~13(‘13.3) 〔解説〕特集―安全性確保の要! 品質管理/保証部門 が果たす役割― 月刊 HACCP,19(4)15~33('13) ○食の安全は食品企業活動の前提条件~その安全確保の 手段としての食品衛生7S活動~……………落 亨 ○食品工場において品質管理を機能させるためのポイン ト………………………………………………猪野祐二 ○生食や原材料汚染による食中毒について……笹井 勉 〔解説〕12年ビール類の地域別容器・タイプ構成比 酒類食品統計月報,55(1)19~27(‘13.3) 〔解説〕特集―食品工場の衛生管理技術― 食品機械装置,50(4)57~71('13) ○設備保全に着目した食品工場の衛生管理 ……………………………………………高橋啓一郎 ○食品工場における環境集塵の特色……………三村宏和 〔解説〕特別企画―特定保健用食品とエナジードリンク /再活性化するトクホと拡大するエナジードリンク その可能性を探る― Beverage Japan,36(3)67~77(‘13.4) 〔解説〕12年緑茶市場,リーフ衰退止まらず 酒類食品統計月報,55(1)33~37(‘13.3) 〔解説〕PET ボトル飲料市場,3年連続で成長 酒類食品統計月報,55(1)81~86(‘13.3) 〔解説〕 “緑茶飲料市場”を創造した驚くべきヒット商 品/―『お~いお茶』株式会社伊藤園― 田形睆作:New Food Industry,55(4)61~70(‘13) 〔解説〕食品安全マネジメントシステムの最新動向 編集部:食品と開発,48(4)15~16('13) 〔解説〕特集―健康志向の追い風にも助けられ3年連続 で続伸した飲料市場/ヒット商品が震災反動をカ バー― 総合食品,36(11)45~61(‘13.4) 添 加 物・副 材 料 〔解説〕原料急騰,収益強化急がれる風味調味料 酒類食品統計月報,55(1)74~80(‘13.3) 〔解説〕特集―新しい方向を見せる調味料市場― 食品工業,56(7)33~60(‘13.4/15) ○味噌の復権と世界への拡大……………………大西邦男 ○新しい展開を見せる調味料市場………………山﨑勝利 ○酒類調味料の新たな調理機能について………高倉 裕 ○ハナマルキに見る塩こうじのビジネス………旭 利彦 ○セティの調味料原料/植物タンパク加水分解物(HVP) ビール酵母エキス 〔解説〕2013年食品/飲料のトレンドは,〝濃い味〟か ら〝コク〟重視へ 食品工業,56(8)82~84(‘13.4/30) 〔解説〕特集―もっとおいしい低塩食品― フードケミカル,29(4)17~48(‘13) 〔解説〕この缶詰ブームは本物か 黒川勇人:缶詰時報,92(4)2~7('13) 食品と容器 缶びん詰・レトルト食品 〔解説〕ツナ缶,魚価高騰・急激な円安で値上げへ 酒類食品統計月報,55(1)38~45('13.3) 327 2013 VOL. 54 NO. 5 最近の技術雑誌から ○新規参入相次ぐ注目の“宅配食”市場/高齢者の生活 習慣踏まえた容器提案にも各社の創意が …………………………………………………編集部 ○「UD 前提の製品開発が不可欠」/包装シンポジウム で HQL の畠中順子さんが強調…………日本包装学会 〔解説〕企業最前線~経営者に聞く~⑭ 株式会社津田商店:缶詰時報,92(4)8~9('13) 食 品 一 般 〔解説〕1970年代から現在に至る食事の変化 松 本 仲 子: 日 本 調 理 科 学 会 誌,46(2)134~138 ('13.4) 〔解説〕特集2―食と包装の最先端技術― 食品包装,57(4)31~35('13) ○プレフォーム加工技術に高い評価/キャップシールの 実績も拡大…………………………………アドパック ○新型デジタルフォースゲージ/優れた操作性,高精度 測定………………………………………………イマダ ○あらゆる分野で独自の洗浄機を展開/省エネ・省力化 を実現するパレット洗浄機…………………ショウワ ○新タッキング試験機を展開/加圧・温度・時間による 粘着性を測定……………………………………レスカ 食 品 加 工・保 蔵 〔解説〕特集―食品の殺菌技術― 食品機械装置,50(4)72~100('13) ○マイクロバブル化した加圧二酸化炭素による食品の非 加熱殺菌・酵素失活技術について ………………………………………………小林史幸 ○食品産業における殺菌技術と品質……………山﨑勝利 ○食品工場の殺菌と加工の加熱技術……………外村 徹 ○食品工場における微酸性電解水の利用 ………………………………………………土井豊彦 〔解説〕特集―包装機械の最新動向― 包装技術,51(4)3~44('13) ○ジッパー装着できるピロー袋で横開封を可能としたス マートカット―Smart-Cut らくらくオープンピ ロー 製袋品納入および縦形,横形ピロー包装機対 応で展開―……………………………………川合信行 ○最近の液体包装充塡機について………………山田重良 ○三次元形状検査装置3D-Micro Jr. について ………………………………………………池田 豊 ○タイトスリーブ包装機 WB50…………………吉成利雄 ○ MicVac(ミックバック)について―マイクロウェー ブ加熱調理システム―………………………串岡宏一 ○医薬品用スティック包装のシステムライン機について ……………………正井敏夫・後藤裕志・永峰雄作 ○新型エッジシール装置付きピロー包装機 ……………………………………………金井塚 晃 ○ブリスター包装機における成形シミュレーションの現 状……………………………………………鎌子奈保美 ○ EU の改正 RoHS 指令に基づく包装機械の対応 ………………………………………………西 秀樹 〔解説〕凍結含浸法による高齢者・介護用食品の開発 若 﨑 由 香: 日 本 官 能 評 価 学 会 誌,17(1)8~11 ('13.4) 容 器 ・包 装 〔解説〕五感を補う:容器・包装のユーザビリティ 安 田 尚 司: 日 本 官 能 評 価 学 会 誌,17(1)17~20 ('13.4) 〔解説〕特集―ガラスびん産業の生き残り策― Beverage Japan,36(3)39~57('13.4) ○ガラスびんの市場拡大への取り組み ○商品価値をどのように活かすか? ○ガラスびんのリサイクル動向 ○主要ガラスびんメーカーの動向 ○ガラスびん飲料の受託製造の現場/ホテイフーズコー ポレーション 〔解説〕無菌化包装食品・飲料製造技術の最新動向/ シェルフライフ延長に加えて浮上する高品質ニーズ と省エネ対応 編集部:食品と開発,48(4)38~43('13) 〔解説〕特集1―高齢者に愛を伝える食品包装― 食品包装,57(4)17~30('13) ○“2人のユーザー”という視点の開発姿勢/流動食パッ ケージに使いやすさなどの配慮をこめて ……………………… クリニコ(森永乳業グループ) ○シールをはがす感覚で簡単開封の缶詰/介護食には特 許製法でのイノベーションも………………日本水産 ○通常食と変わらない見た目で食欲を促進/パッケージ デザイン性のあるえん下サポート食も …………………………第5回メディケアフーズ展 食品と容器 〔解説〕販促効果アップを意識した提案に拍車/ニッチ な需要狙う包装イノベーションに来場者の関心も PACK EXPO:食品包装,57(4)36~39('13) 〔解説〕輸送包装の今・・・(その11)/「言い,伝え たいこと」―ようこそ 輸送包装の世界へ!― 橋爪文彦:包装技術,51(4)45~48('13) 328 2013 VOL. 54 NO. 5 最近の技術雑誌から J. P. Clark……………………………………………78~80 海 外 編 ○食品パッケージングが持つパワー The Power of Food Packaging 邦文の題名は内容に従って付けてありま すので,原題と異なる場合があります。 A. L. Brody… ………………………………………82~84 ご興味のある雑誌・記事がございました らいつでも閲覧できますので,当会宛ご 連絡ください。 Food Processing (USA) Vol. 74 Feb. (2013) ○製品開発におけるアウトソーシングとオープンイノベ ーション Let the Ideas In D. Fusaro… …………………………………………26~33 Prepared Foods (USA) Vol. 182 Feb. (2013) ○グローバルベーカリー製品の市場動向 ○アルチザンチーズとパイ生地の進化 What’ s Buzzing in BAKERY S. Cantor… …………………………………………35~42 Slice of Life ○シニアになったベビーブーマー世代の健康食 W. A. Roberts, Jr.……………………………………15~22 ○パン職人に学ぶ伝統技術 As Baby Boomers Turn Seniors R. Gillespie………………………………… WF-3~ WF-11 Artisanal Baking : Keeping It Real ○食肉加工における食品の安全性 K. Jackson……………………………………………29~37 ○コンフォートフードと健康に関する課題 Top Priority Meets Bottom Line D. Phillips… …………………………………………67~72 To Your Comfort and Health D. Feder and K. Nielsen……………………………39~51 Food Engineering (USA) Vol. 85 Feb. (2013) ○油脂と健康に関する R&D セミナーの要約 ○組織的,継続的努力が必要な工場改善プログラム Health and Functionality from Fats and Oils ………………………………………53~58 Engaged Staff Equals Better Performance K. T. Higgins…………………………………………39~46 Food Technology (USA) Vol. 67 Feb. (2013) ○医薬品産業から得た数々の教訓を生かす ○冷凍食品の再活性化 Lessons Learned from Others Industries K.T. Higgins…………………………………………49~56 Heating up Frozen Foods ○食品工場フローリングの機能とルックスの最適バランス M. E. Kuhn… ………………………………………24~35 ○健康飲料の世界的なトレンド Striking the Right Balance Underfoot J. Koel…………………………………………………57~64 Raising a Glass to Healthier Drinks L. A. Williams and B. Katz…………………………37~49 Food Manufacture (GBR) Vol. 88 Feb. (2013) ○食品安全に関する食糧政策 ○チーズの塩分含有問題とその効能 Food Policy Issues Incite Strong Opinions T. Tarver… …………………………………………50~53 Worth Its Salt ○タンパク質成分に関する最新の情報 M. Knott… …………………………………………21~22 ○食品業界の衛生文化のひずみ Plugging into Proteins D. E. Pszczola… ……………………………………54~64 Culture Shock ○健康における朝食の重要性 L. Gibbons……………………………………………31~32 ○新鮮な魚のパッケージによって利用を促進 The Morning Jump-Start L. M. Ohr… …………………………………………66~70 Fear of Fish ○食品テクスチャーの測定技術 L. Mullaney… ………………………………………39~40 Measuring Food Texture Beverage Industry (USA) Vol. 104 Feb.(2013) N. H. Mermelstein… ………………………………72~77 ○ベーカリーの生産課題の解決 ○家庭に浸透してきたココナツウォーター Delivering Bakery Production Solutions 食品と容器 On Stable Footing 329 2013 VOL. 54 NO. 5 最近の技術雑誌から J. Jacobsen……………………………………………10~13 D econtamination of Salmonella, Shigella, and ○健康と栄養のバランスを考えた飲料 Escherichia coli O157 : H7 from Leafy Green Finding the Right Nutritional Balance Vegetables Using Edible Plant Extracts J. Haderspeck… ……………………………………18~24 N. Orue et al……………………………… M290~ M296 ○人気上昇中の高弾性ストレッチラベル Food Engineering & Ingredients (BEL) Vol. 37 Nov./Dec. (2012) A Perfect Fit J. Jacobsen……………………………………………35~39 ○美容とアンチエイジングの新しい飲料 ○機能性成分の最新情報 The Fairest of Them All F r o m N a t u r e , w i t h H e a l t h : A n U p d a t e o n J. Haderspeck… ……………………………………41~42 Functional Ingredients ○認知機能の低下を予防する健康飲料 ……………………………………… 9~11 ○菓子類の新たな発展 Feeding a Healthy Mind J. Jacobsen……………………………………………43~46 A Confection of Innovation : New Developments in Confectionaries Beverage World (USA) Vol. 132 Feb. (2013) ………………………………………12~14 ○新しいフレーバーのトレンド ○アルコール飲料のトレンドと新商品 You Can Almost Taste It : New Flavour Trends Alcohol Trends & Innovation ………………………………………15~16 J. Cioletti… ………………………………………… 8~12 ○フードサプリメント産業の安全性の確保 ○清涼飲料のトレンドと新商品 Non Alcohol Trends & Innovation Protecting a Growing Industry from Safety Concerns J. Cioletti… …………………………………………14~19 ………………………………………17~20 ○高分子フィルム包装材料の最近の進歩 ○ Drinktec 2013の概要(ドイツ / ミュンヘン/ 9 月) Countdown to Drinktec T he Film Business - Recent Development in ……………………………………………………33~40 Polymeric Film Packaging Materials ………………………………………21~24 Journal of Food Science (USA) Vol. 78 Feb.(2013) ○食品ビジネスに利益をもたらすクラウドベースのオン ラインソフトウエア ○シナモンオイルとマイクロカプセル化技術を用いた害 虫除け食品包装フィルムの開発 On Cloud Nine–How Online Manufacturing Software Insect-Resistant Food Packaging Film Development Can Bring Benefits to Food Businesses ………………………………………31~34 Using Cinnamon Oil and Microencapsulation ○食品製造でカーボンフットプリントを低減 Technologies Reducing Food Manufacturing’ s Carbon Footprint I. Kim et al.… ……………………………… E229~ E237 ○冷蔵ピクルス製品の大腸菌を5-log 減少させる効果的 ………………………………………35~38 な処理法の開発 Development of an Effective Treatment for A 5-Log Int. Bottler & Packer (GBR) Vol. 87 Mar. (2013) Reduction of Escherichia coli in Refrigerated Pickle ○ Combidome 紙製の飲料ボトル Products Board Bottle H. Lu et al………………………………… M264~ M269 ………………………………………14~15 ○生鮮食品の除染における二酸化塩素放出フィルムの開 Development of Chlorine Dioxide Releasing Film and Food & Beverage Packaging (USA) Vol. 77 Mar. (2013) Its Application in Decontaminating Fresh Produce ○新世代ロボットを食品,飲料産業へ適用 発とその応用 S. Ray et al.… …………………………… M276~ M284 Generation R ○食用植物のエキスを使用した緑色葉野菜からのサルモ Liz Cuneo… …………………………………………18~20 ネラ菌,赤痢菌,及び大腸菌 O157:H7の除染 食品と容器 330 2013 VOL. 54 NO. 5 とが許可されたのである。 野菜・果物を巡って (第五十三話) 梅,温州みかん,夏みかん,いちご,すもも, かりん,さるなし,ぐみ,くわの実,くこの実, またたび,にんにく,しそなど。現在では,これ 思い出のホームリキュール よし だ き よ ら以外の果実,野菜からも自由に作ることが可能 こ となっている。 吉 田 企 世 子 酒税法上,果実酒とは,果実を原料として,醸 (女子栄養大学名誉教授) 造したアルコール飲料のことで,ぶどう酒,りん ご酒などが代表的なものである。 名作「赤毛のアン」でアンの親友,ダイアナは 上記の家庭酒は果実,野菜などに焼酎(ホワイ お母さん手製のいちご酒を飲みすぎて酔っ払い, 大騒ぎになるが,ダイアナと同じようなことを65 トリカーなど)を加え,糖類と共に漬け込んだ非 年余り前の中学生時代に体験したことを思い出す。 発酵性のアルコール飲料で,これは酒税法上では その時はいちご酒ではなく,梅酒である。 果実混和酒あるいはホームリキュールである。し かし,一般には果実酒と呼んでいる。 梅の季節になると,梅干しと梅酒を作るのが祖 梅酒の起源はおそらく砂糖の歴史と前後するで 母と母親の仕事で,樽には梅干し用の梅と塩を, 大きなガラスの容器には梅酒を漬け込む。梅漬け あろうといわれている。砂糖は奈良時代に日本に は途中で加えたしその葉と一緒に土用干しをして, はいってきたとの記録がある。その頃,中国から 柔らかな赤い梅干しとなり,一年中それが食卓に 鑑真和上がみやげに砂糖を持ってきたのが始まり のぼる。 とされている。その後,足利時代になって中国と の貿易が盛んとなり,砂糖の輸入も多くなってい 楽しみだったのは梅酒の方で,梅干しにはあま る。したがって,梅酒の歴史もその頃からと推察 り関心がなかった。 されるのである。 ある昼下がり,喉が渇いて無性に飲み物が欲し かった。当時は井戸水が喉をうるおす飲物である 梅酒の作り方には青梅を用いると記されている が,前日の夕食に父が飲んでいた梅酒を少し味 ので,その通りに店頭の青梅を購入していたが, わった折の美味しかったことを思いだしたのである。 ある時,和歌山県の梅生産者を訪ねた折のお話で 誰にも気づかれないよう,戸棚の中に納めて は,黄色みを帯びた梅を用いると,風味の良い梅 あった梅酒をグラスに注ぎ,水を少し加えて,ぐ 酒ができるとのことであった。これは,樹上でそ いぐい飲み干した。暫くは満足感を味わいながら のような状態になったもので,店頭で黄化した梅 快適であったが,間もなく,目が回り,身体がだ ではよくない。確かに樹上で青みが薄れ,少々黄 るくなって,気が付いたら居間で横になっていた。 色がかった梅は香りが良好である。梅の樹をもた 家族は大変心配したようである。祖母から大目玉 ない者にとっては料理書通り,傷の無い,しっか をくらったことが,忘れられない。同時にその時 りした青梅を選択することになる。 の梅酒の美味しかったことも記憶に深い。元来ア 梅酒には氷砂糖を用いるが,上白糖より純度が ルコールは性に合う飲料であったように思う。現 高く,あくがないので,風味の良い梅酒ができる 在も好物である。 とのことである。それならグラニュー糖でもよい のではないかと思ったが,砂糖が早く溶解すると, 後に知ったことであるが,当時は,一般家庭で 自由に梅酒を作っていたのであるが,酒税法上で 青梅の成分が焼酎の方に浸出し難くなるので好ま は禁止されていたのである。公然と黙認されてい しくないと教えられた。浸透圧の原理からはそう たという時代なのである。1962年(昭和37年)3 なるであろう。氷砂糖が徐々に溶けることで硬い 月31日から酒税法の施行規則が改正され,その折 青梅からエキス分が十分に浸出されて風味の良い に以下に示す果実,野菜類が家庭酒として作るこ 梅酒となるのである。 食品と容器 331 2013 VOL. 54 NO. 5 酒も作り,お客の好みに合わせてシャンパングラ 仕込んで3か月程度で飲めるようになるが,長 スに氷を入れて供しているのである。 く置くほどこくが出てくる。しかし,梅の実が萎 この時のおかみの影響ということではないが, み,小さくなった頃には取り出すのが一般的であ る。この梅の種を割って,中の仁を取り出し,再 いろいろな果物を用いてホームリキュールを作っ び梅酒に戻すと,更に風味がよくなるとのことで て楽しんだことがある。いちご,かりん,夏みか ある。これを実行したことはないので,今年は試 ん,びわ,あんず,ぐみなどを用いた。梅酒には みてみようかと考えている。 氷砂糖を用いるが,果肉の柔らかい果物にはグラ ニュー糖が適する。その時には焼酎ではなく,ホ 特に香りを望むのであれば,仕込むときに青梅 だけでなく,種を割って取り出した仁を10 ~ 20 ワイトリカーを用いた。これは焼酎の製造工程で, 個程度入れるのがよいとのことである。また,色 アルコールを蒸留する際に,新式方法によって製 を美しく仕上げるために,ぼけの赤い花びらを入 造されたもので,旧式方法による焼酎と比べると れるのがよいとされている。赤い色素が浸出して 無味無臭で,純粋なアルコール分の旨味が品質上 美しい梅酒になるという。 の特徴とされているものである。 夏みかん酒は一週間で,みかんを取り出さない 梅酒独特の香りは仁から浸出される成分による と苦味が強くなって不味くなることを経験した。 もので,主にベンズアルデヒドである。 未熟な梅の仁にはアミグダリン配糖体が含まれ いちご,ぐみなどは10日程度,びわ,あんずは半 る。アミグダリンは酵素アミグダラーゼにより, 月,かりんはひと月というように,果物によって ぶどう糖が遊離してマンデル酸ニトリルになり, 扱い方を異にすることを学んだ。出来上がった果 更に酵素ブルナーゼによりベンズアルデヒドと青 実酒は形の良い,透明な瓶に入れて,並べて置き, 酸を生ずる。青酸は微量であり,この場合には有 外観を楽しみながら豊かな気分になったものであ 害ではない。むしろ薬理作用が期待できるであろう。 る。もちろん味も楽しむのであるが,どちらかと かつて秋田県のある温泉旅館に宿泊した折,美 いえば,雰囲気を楽しんだのである。若い頃の生 しい紅色の食前酒が出てきた。よく冷え,適度の 活の一面である。現在も梅酒は毎年作っているが, 濃さで,さわやかなのどごしだった。おかみに その他の果実酒とは全く縁が無くなってしまった。 伺ったところ,こけもも酒であるとのこと。趣味 これらの果実酒は甘味があるので,食前酒にはよ もかねて,いろいろな果実酒を作り,お客にサー いが,現在はビール,ワイン,日本酒などがあれ ビスしていると伺った。ざくろ,かりん,りんご, ば十分という生活である。適量のアルコールは健 バナナ,またたびなどの他,さるのこしかけの薬 康維持に好ましい。 編 集 後 記 ●私のマイブームはダイエット。スポーツクラブの脂肪 第54巻 第5号 FOOD & PACKAGING 平成25年5月 1 日発行 買い取りキャンペーン(100gで100円)につられ,昨年 11月から体脂肪率15%以下を目指しチャレンジ中。毎日 の酒量は落とさず,腹6~7分目の食事と日々のトレー 発行所 缶 ニング量 up で目標まであと一歩。最近では,愛犬がメ 〒103−0002 東京都中央区日本橋馬喰町 1−8−4 TEL 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1 定 価 FAX 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3 1部 800円 Eメール:[email protected] 年間 8,000円 郵便振替 0 0 1 5 0 − 0 − 4 2 2 1 5 (送 料 共) 井 俊 夫 編 集 人 荒 タボと診断され,朝晩30分の散歩で一緒にダイエット。 ●最近の安倍政権,黒田日銀総裁になってからの円安・ 株高には目を見張るばかり!歓迎する業界もあれば,警 戒する人々も。給料が上がる人は良いが,物価上昇・消 費税 up・年金は???海外旅行派としては,酔っぱら 発 行 人 って寝るだけの安宿は我慢できるが,グルメを我慢する −禁無断転載− のはちょっと辛い。今回は屋台料理で節約するか。 (一) 食品と容器 詰 技 術 研 究 会 田 嶋 一 乱丁・落丁本はお取り替えいたします。 332 雄 印 刷 所 大和サービス株式会社 2013 VOL. 54 NO. 5
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