オープニングフォーラムの記録(PDF:239KB)

オープニングフォーラム
~市民の皆さんがつくる景観街づくり~
日
時
平成21年7月26日(日)
場
所
市役所1階
参加者数
概
の記録
午後1時 ~ 午後2時40分
市民ホール
92名
要
1.
開会
2.
あいさつ
所沢市長
当麻
よし子
3.
基調講演
東京農業大学准教授
阿部
伸太
『豊かなライフスタイルが魅力的な景観をつくる』と題して、国内外における景観形成の
歴史や取り組み、また活動事例等について、パワーポイントを用いながら講演が行われた。
【講演内容(抜粋)】
・
東京農業大学で造園学を専攻しているが、最近では住宅地や都市の中の緑などについて考え
ている。
ヨーロッパの街の事例等
・
ヨーロッパの街は、敵から身を守るために囲い込むように形成された城郭都市が多い。その
ため、街の中は過酷さと緊迫感の漂う空間になってしまったが、街に潤いを持たせるため、
ほんの少しの空間でも緑が設けられている。
・
イタリアのフィレンツェは、建物の屋根の高さや色彩が揃っている美しい街である。屋
根の高さを揃えるということは、教会建築のような精神的なルールによるものであり、
また、色彩が揃っているのは、その土地の素材が活用されており、おのずとその地域色
がにじみ出ているからなのだろう。このような、地域の精神性、気候や風土が街の美し
さを形成しているのである。
・ パリのアパートメントは、連続して配置されているが、主要な地点からモンマルトルの丘(パ
リ市内で一番高い丘)が見えるようにするため、一部に空間を設けている。これは、モンマ
ルトルの丘への景観を遮らない規制が、街の中に縦横無尽にかけられているためである。
・
パリの街は、見られる対象物、見る位置の関係により街が形成されている。また、歴史的な
街並みを残し活かしながら、現代的な建物(例えば、ポンピドゥーセンター〔総合文化施設〕
など)を街の中にうまくはめ込んでいる。
・
ヨーロッパの街では、建物の窓辺にきれいな「花」が置かれているが、肌寒い気候の中
でも雰囲気が明るくなるように、また除虫効果といった効用などによるものである。窓
辺に「花」を置くことは、生活者が心身ともに健康に生きていることのバロメーターで
あり、結果としてヨーロッパの「美しさ」につながっていると言えるだろう。
・
ドイツには、「クラインガルテン」という農地の賃借制度があり、市民による都市農地、
市民農園として良好な景観をつくっている。
日本の事例等について
・
過去、ヨーロッパから見て、日本が美しいと思われていた時代があった。開国、明治維新と
いった時代に外国人が日本を訪れて感じたのは、ヨーロッパに比べ、水と緑が溢れている自
然豊かな国であるということだった。
(具体的には、植物の種類の豊富さ、田園風景、武家屋
敶など)
・
山の残雪状況により作業時期を調整している「田植え」や、外国にはない「お花見」など、
これら日本の文化も景観と言えるだろう。また、水田、農地での作物づくりは、日本の気候、
風土による1つの景観と言える。
・ 雑木林は、田園と深く関わっており、境界や田植え時の休憩場所などとして使われているが、
近年は減少傾向にある。現在、ボランティアなどで管理作業者を募集しているところもある
が、最初は集まっても、時間が経ってしまうとなかなか厳しい。昔のような管理サイクルは
無理であるが、景観として新たな価値感を見出すことが大事である。
・
日常生活の中で、オープンカフェでのちょっとしたお茶タイムや、オープンテラスなど
庭にある1本の木の木陰での読書なども、素敵な景観を演出している。
・
1つの敶地に1本の木があることが大事である。それによって、街が良い関係になると
ともに、市内の緑が豊かになっていく。
・
景観街づくりは、市民の皆さん1人1人の生活と密接な関係にあり、街の緑を増やした
り、良い街をつくるなど、良好な景観形成を支えるためには、市民の皆さん1人1人の
ライフスタイルが、いかに豊かであるかが大事だと言える。
4.
パネルディスカッション
〔パネリスト〕
東京農業大学准教授
阿部
伸太
荒幡富士保存会
金子
八郎
所沢パークタウングリーン並木地内の緑化活動
〔コーディネーター〕
街づくりアドバイザー
須﨑
聰枝
杉崎
和久
『これからの身近な地域の景観街づくり』と題して、以上の4名により、活動事例や体
験談を交えながら、市民が参加できる身近な景観街づくりについて討論が進められた。
【ディスカッション内容(抜粋)】
杉崎氏
・
パネルディスカッションでは、市民が活動していくきっかけ、それに対して、市としてどの
ような支援が考えられるのか、そのようなことを今後議論していくためのきっかけとしたい。
・ 景観街づくりは、
“景観づくり”ばかりではだめで、この催しを機会に、いろいろな活動や楽
しみを知るきっかけになればと思っている。
金子氏
・
今年2月、清掃活動の景観として、「彩の国景観賞」を受賞した。
・
これまでに、一時荒れていた時期があったが、昭和44年に「保存会」が結成され、保
存活動を始めた。荒幡富士を後世に美しい姿で残していくため、現在、小学校児童から
高齢者まで約250人により活動している。
・
年2回、6月第2日曜日〔富士山の山開き(7月1日)前〕と、12月第2日曜日(元
旦のご来光の前)に清掃活動を行っている。
・
活動の悩みとしては、山頂からの眺めにおいて、一部の民地の樹木が伸びすぎており、眺望
を阻害していることである。
須﨑氏
・
昭和57年に完成した325世帯の団地内における緑化活動である。
・
居住者の高齢化が進んでおり、皆で何か助け合いができないものかという呼びかけにより、
組織が発足した。活動者の年齢層は60~70代半ばで、毎週木曜日に活動している。暑い
ときは夕方以降とするなど、無理はしないよう心掛けている。
・
「所沢市花と緑のオアシスづくり推進事業」における活動団体として登録されており、
市から配布される苗木、草花を基に、緑化・美化活動を行っている。普段、あまり知ら
ない方との会話も生まれ、コミュニケーションづくりにもなっている。
・
13、14年前にフラワークラブを結成したが、うまく継続できなかった。今度の活動
では、健康なうちに皆さんとのつながりをより広げていきたいと考えている。
阿部氏
・
金子氏、須﨑氏の活動内容などをお聞きして、景観づくりの活動は、地域コミュニティ
や防犯性の向上にも効果的であると実感した。
・
地域活動によって、高齢者はもちろん、子育て世代の方や子供たちが安心して暮らせる
街を目指すことが大事である。そして、地域活動の継続が、街の美しさにつながってい
くのだと思う。
5.
閉会