こだち News - 九州大学こころとそだちの相談室

特定非営利活動法人 九州大学こころとそだちの相談室
第 7号
発行日 2011/5/21
こだち
News
■
巻頭言
■
■
■
■
危機に向き合うために
~繊細さと丈夫さ
九州大学大学院高等教育開発推進センター
吉良 安之
目次
平成23年度事業計画
2
心理臨床部長の挨拶
3
掲示板
4
今年度の事務局
事務局の体制が次の通り
に変わります。
理事長:田嶌誠一
事務局長:中村俊夫
相談室長:増田健太郎
心理臨床部長:姫島源太郎
事務局:安藤徹
伊原出
北野祥子
調優子
林寛子
宮原里依子
準事務局:入内澤景吾
瓜生樹実子
月岡寛子
福田章子
堀内美穂
(五十音順)
どうぞよろしくお願いい
たします。
私がこの原稿を書いている現在、東日本大震災の発生から15日が経ったとこ
ろです。状況が詳細にわかるようになるにつれて、被害を受けた方々の数は拡
大を続けています。原発の状況も、今後どのようになっていくのか予断を許し
ません。テレビに映し出される方々の姿を見ていると、さまざまな強い感情が
混じり合いながら込み上げてくると同時に、体から力が抜けてしまうような感
覚を感じます。あまりにも圧倒的な自然の力を前にして、私たちの無力さに打
ちのめされる思いです。
今後、二次的、三次的な問題も含めて、この国全体にさまざまな苦しみが起
こってくることが予想されます。私たち心理職者も、それら多くの課題に向き
合っていくことが必要になるだろうと思います。しかもそれは、短期的なこと
ではなく、かなり長期的になりそうです。私たちはそれぞれ、個人としてだけ
でなく、心理職者として、この危機状況に向き合わなければなりません。
考えてみれば、私たち心理職者はふだんから、心の危機に向き合うことを仕
事としています。慢性的な危機や急性の危機に直面しながら、それといかに向
き合い、どのように関わっていくかを考え、実践するのが私たちの職務です。
しかし今回の危機は、私たちが日ごろ経験している危機よりもはるかに規模
が大きく巨大です。日常の危機対応の経験だけでは歯が立たない状況に直面し
ているのだと思います。けれどもこの危機の中にあって、私たちはただ無力感
に圧倒されるだけ、というわけにはいきません。この状況においても役割を果
たしていかなければなりません。
そういったことを考えるなかで、私には“繊細さと丈夫さ”という言葉が浮
かんできました。私たち心理職者には、来談された方の心を丁寧に受けとめて
それに同伴していくような“繊細さ”が日頃から求められます。しかしそれと
同じくらい、私たちには“丈夫さ”が必要です。それは、強くて粘りがあり、
折れにくい心です。来談者から表現される悲しみや苦しみを自分の心を通じて
受けとめながら、それによって折れてしまうのではなく、持ちこたえてへこた
れない心です。“丈夫さ”は、私たちのふだんの仕事においてももちろん必要
ですが、現在の危機状況においてはとりわけ重要になると思います。
“丈夫さ”は、破壊されずにしっかり守るだけでなく、次のステップを見つ
けて踏み出す力にもつながります。レジリアンスという用語で表現されるよう
な力です。今は、私たち一人ひとりが力を発揮し、かつ、お互いにつながるこ
とが求められている状況だと思います。繊細かつ丈夫な心をしっかり保ちなが
ら、皆で力を合わせて、困難に立ち向かっていきましょう。
平成23年度事業計画
当法人は、大きく「臨床心理サービス事業」「協
働事業」「研究事業」「研修事業」の4つの枠組み
で事業を展開しています。
平成23年度の主たる事業計画として臨床心理サー
ビス事業ではカウンセリングルーム「こだち」の運
営、「家庭学習支援事業」、「九大こだちゼミナー
ル」を行います。
協働事業では、福岡市との共働事業で「思春期居
場所支援事業(ここりーと)」「スクールメンタ
ル・サポーター学校派遣」「こころの授業」を行い
ます。また、大学との協働により、九州大学教育研
究プログラム・研究拠点形成プロジェクト(P&P)
として「心理臨床人材育成事業」を行います。
研究事業では、第30回心理臨床学会秋季大会(九
州大学主催)にてこだちの事業に関する公開シンポ
ジウム、ポスター発表を行います。
研修事業では「こだちロールシャッハ研修会」
「セラピスト・フォーカシング研修会」を行い、平
成23年度は「臨床動作法研修会」を実施する予定で
す。
最後になりましたが、5月21日に年次総会を九州
大学西新プラザにて行います。また、同日に成田善
弘先生による公開スーパービジョンも行います。
臨床心理サービス事業
カウンセリングルーム「こだち」において、臨床
心理士の資格をもつ相談員が、心理面接事業を運営
しており、今年度も引き続き申し込みをいただいて
おります。昨年度は年間153件の電話受付があり、
そのうち87件の方が実際に来談されています。ま
た、年間でのべ相談回数は1124件を超えました。
家庭学習支援事業では、不登校や発達障がいを抱
える生徒を主な対象として、主に臨床心理学を専攻
している大学生・大学院生の家庭学習支援員の派遣
を行っています。家庭学習支援事業では「①家庭学
習支援員の派遣」「②保護者相談」「③家庭学習支
援員の資質向上(研修)」の3つを1セットとして
行っています。
九大こだちゼミナールでは九大教授陣による一般
市民を対象とした臨床心理学の講座を行います。
協働事業
思春期居場所支援事業(ここりーと)では、不登
校児童生徒やひきこもりの青少年を対象に、水曜日
と金曜日の13時~16時にこだちのプレイルームを
使ってフリースペース活動を行っています。スタッ
フ数名とゲームや折り紙、おしゃべりをしたり、
ゆったりとした時間を過ごしています。また活動前
後にはミーティングを行い、関わり方などの話し合
いをします。
スクールメンタル・サポーター学校派遣では、学
校現場へ主に臨床心理学を学ぶ大学院生をボラン
ティアとして派遣して各学校のニーズに応じた活動
を行っています。また活動に対してはシェアリング
やスーパービジョンも行い、大学院生の研修の1つ
ともなっています。
こころの授業では実際にこだちより相談員を派遣
し、学校と話し合いを行いながらストレスマネジメ
ント教育や心理的なグループワークを実施していま
す。今年度は6校で20回実施する予定です。
以上の3つの事業は福岡市との共働事業となりま
す。
大学との協働事業(九州大学教育研究プログラ
ム・研究拠点形成プロジェクト;P&P)として心理
臨床人材育成事業を行っています。こだちでは大学
院生も活動に多く関わっています。こだちでの経験
が大学院生の研修に活かせるようなシステムの構築
を行っています。
研究事業
第30回日本心理臨床学会秋季大会(2011.9.2~4)
にて、こだちの事業に関する発表を行います。事業
ごとにポスター発表を行い、主催大学企画シンポジ
ウム「地域に貢献する臨床心理学の活動・展開・創
造」として菅野泰蔵先生(東京カウンセリングセン
ター)と共同でシンポジウムを行います。村瀬嘉代
子先生(北翔大学大学院教授、大正大学名誉教授)
Page 2
を指定討論者にお願いしています。
こだちは地域コミュニティに密着し、行政や大学
と連携して事業を展開するという独自の活動を行っ
ています。創設から5年間の歩みの総括を、研究を
通して行うことで、今後の活動の展開へと活かして
いきます。
第 7号
研修事業
平成23年度には3つの研修事業を計画しています。九大こだちゼミナールも合わ
せて紹介します。
九大こだちゼミナール
2011
こだちロールシャッハ研修会
昨年度から実施している、市民の方向けの臨
床心理学の講座です。臨床心理学のエッセンス
に触れながら、毎月のゼミを通じて日々の暮ら
しが豊かになるように、九州大学の臨床心理学
を専門とする教授陣がそれぞれの専門領域につ
いて、講義または実習を行っていきます。
日時:1回2時間、全6回(6月18日~)
場所:九州大学西新プラザ 中会議室
受講料:25,000円(会員は22,000円)
定員:30名(先着順)
ロールシャッハ法の事例を通してクライエント
の内界を理解し味わっていく研修会です。
講師:吉岡和子先生(福岡県立大 講師)
アシスタント講師:吉田加代子先生(静岡大学
大学院人文社会科学研究科 助教)
対象:臨床心理士有資格者または現在現場で
ロールシャッハを施行している方
日時:1回3時間、全7回(7月31日~)
場所:九州大学西新プラザ 中会議室
受講料:25,000円(会員は22,000円)
定員:30名(先着順)
セラピスト・フォーカシング研修会
現場で使える臨床動作法
臨床面接の場におけるセラピストの体験を
フォーカシングを用いてゆっくりと味わい、確
かめていく研修会です。
動作法に関する研修会を企画しています。詳細
は、今後お知らせしていきます。
講師:吉良安之先生(九州大学大学院教授)
対象:臨床経験または心理臨床実習経験があり
守秘義務を有する方、大学院生も参加可能
場所:九州大学西新プラザ 3階和室
日時:9月11日~全6回
受講料:25,000円(会員は22,000円、学生は
20,000円)
定員:15名(先着順)
■
■
■ ■
■
■
■
■
講師:
成瀬悟策先生(吉備国際大学大学院教授、九州
大学名誉教授)
針塚進先生(九州大学大学院教授)
大場信惠先生(九州大学大学院教授)
遠矢浩一先生(九州大学大学院准教授)
日時:7月9日、10月15日(いずれも土曜日、
9時半~17時) 各回先着50名
場所:九州大学総合臨床心理センター
■
■
■
■
■
■
■
■
平成23年度の体制の紹介
姫島源太郎
-心理臨床部長の挨拶-
この4月から、杉本浩利さんの後任として心理臨床
部長を務めることになりました。私もそろそろ、こだ
ちのお手伝いを(少しだけ)しようかなと思ってはい
ましたが、いきなり責任の重い立場ということで非常
にとまどい、結局とまどったまま4月を迎えてしまい
ました。多くの先輩や先生方の理想や理念から生まれ
たこだちですから、実のところなかなかのプレッ
シャーを感じます。私なりに、今までのこだちが何を
大切にしてきたのかを考え、そこからスタートしてい
きたいと思っています。
おりしも先日の震災以降、多数の方が今も避難生活
を過ごされている状況です。そんな中、今回は特に、
被災された方への心のケアの重要性に数多く言及され
ているように感じられます。これだけの災害で心のケ
アが重要なのは当然のことですが、一方でこれらの報
道は、被災者の“こころ”になんとか寄り添いたい、
せめて理解したいという人が日本中に多くいるという
ことを映しているのではないかと思います。
これからこだちは、これまで同様に一人ひとりの来
談者のニーズに適切に応えながら、一方で“こころ”
を大切にしたいという多くの方のニーズにも応えられ
る相談室を目指していきたいと思っています。
こだちが地域にしっかりと根を張り、みなさまから
の栄養を受けて実りをつけることができるように、わ
ずかながらではありますが力を尽くしたいと思ってい
ますので、どうぞよろしくお願いい
たします。
Page 3
掲示板
こだちよりお知らせ
書籍紹介
セラピスト・フォーカシング
-臨床体験を吟味し心理療法に活かす
吉良安之著 岩崎学術出版社
セラピスト・フォーカシングと
は、セラピストが事例を担当する
中で、あるいは臨床実践を行う中
で自分自身が感じているさまざま
な気持ちについて、フォーカシン
グの感じ方を用いて丁寧に注意を
向け、ゆっくりと吟味する方法で
す。この本ではこの方法の概要や
実施手順を紹介するとともに、さ
まざまな実践事例を記載し、その
意義や特徴を論じています。手に取っていただけると
嬉しいです。
こだちでは例年「セラピスト・フォーカシング研修
会」を開催してきました。今年も9月から毎月1回計
6回シリーズで開催されます。関心をお持ちの方はぜ
ひご参加ください。
障がいをもつこどもの「きょうだい」を支
える
遠矢浩一編著 ナカニシヤ出版
“障がいをもつこどもの「きょうだ
い」を支える”は文字通り、様々な
障がいを持つこどもの兄弟姉妹への
こころの支援の必要性とそのあり方
について具体的に解説したもので
す。特に、障がいをもつこどもさん
のお父様、お母様方に向けて書かせ
ていただきました。きょうだいは、
障がいをもつ兄弟姉妹ともっとも長
い時間を過ごすのですが、その一方で、心理的支援の
必要性についてはあまり語られてきませんでした。
この本が、お父様、お母様方の子育てのために、少
しでもお役に立てば幸いです。執筆者は、全員、九州
大学で臨床心理学を学び、現場で活躍している専門家
たちです。
○入会のご案内
こだちは今年の11月で丸5年です。地域に定着した心理
臨床サービスを継続するには、収支の安定が求められます
が経営状態は厳しい状況です。
NPO法人の会員となって私たちの活動を支えていただけ
ると幸いです。会員になっていただける方はぜひこだちま
でご連絡ください。なお、会費は1年毎の更新制です。よ
ろしくお願いします。
○ご支援のお願い
当NPO法人では会員の方でなくとも、ご寄付をおまちし
ております。
○お礼
福岡市東区の三宅八重子様より「社会に貢献しているあ
なた達の活動を評価します。頑張ってください」との言葉
と共に寄付金をいただきました。
交通のご案内
編集後記 気づけば、こだち事務局に、いつの間にかニュー
スレターを作り…。何もかも初めてのことです。1つ1つ、丁
寧にやっていければいいなぁ…とぼんやり思いました。(A)
特定非営利活動法人
■■■■■■
■ ■ 地下鉄でお越しの方 ■ ■
福岡市営地下鉄空港線西新駅下車後
7番出口より徒歩にて約10分
九州大学こころとそだちの相談室
〒814-0002
福岡市早良区西新2-16-23
九州大学西新プラザ内
産学交流棟
TEL 092-832-1345
FAX 092-832-1346
HP http://www.geocities.jp/npo_kodachi/