体育の学習内容としてのターゲット型ボールゲームに関する一

Akita University
秋 田大学教育文化学部教育実践研究紀要
第2
4号 2
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2
年
体育の学習内容としてのターゲット型ボールゲームに関する一考察 I
長澤
光雄 *
秋 田大学教育文化学部
スポー ツや体育関連資料 を もとに して,体育 の学習内容 としてのターゲ ット型 ボールゲー
ムに関 し検討 を した. そ して, ボールゲームを適切 に 4類型化す ると, ゴール型, ネ ッ ト
型, ベース型, ターゲ ッ ト型 とな った. ターゲ ッ ト型 のゲーム理念 を考察 す ると, 自己決
定 の重要性, ボ-ル等 を送 り出す正確性, そ して数 を競 うことと考 え られ る. このボール
ゲームの特性 に は,比較的軽運動 であ り,結果 に対す る洞察力が必要 とされ,セルフジャッ
ジが可能 で,安全性 が高 い ことがあげ られ る.
このよ うに 4類型化 した場合,体育 の学習内容 には, ターゲ ッ ト型 ボ-ルゲームが含 ま
れていない ことにな る. ターゲ ッ ト型 のゲーム理念 と運動特性 を踏 まえ ると,学習内容 と
して価値 があ ることが明 らか とな った. ただ し,比較 的軽 い運動 が主体 で あ る ことか ら,
体力向上効果 は直接 には期待 で きない.
キー ワー ド:体育 の学習内容, 夕-ゲ ッ ト型 ボールゲ-ム, ゲーム理念
1
. 研究 目的および方法
施 され る. それ に合わせ,内容 を 3割削減 した とさ
2
.考察
2-1 スボ-ツ界におけるターゲ ッ ト型ボールゲーム
2
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1
年 8月,秋 田県でオ リンピックの競技種 目以
9
9
8
年 (
平成 1
0
年) 改訂 の,新学習指導要領 が
れ る1
外 の スポーツで世界一 を競 う,国際総合 スポーツ大
小 ・中学校 で実施 され る. この学習指導要領 にはい
会,第 6回 ワール ドゲームズが開催 された.今回実
くつかの特徴 があるがそれを踏 まえ,体育 の学習内
施 された公式競技 には,大会名 と共 にスポール ブー
容 と して ターゲ ッ ト型 ボ-ルゲームを導入す ること
ル等,知名 度 の極 めて低 い種 目が多 く含 まれて い
に関 し, い くつかの検討 を試 み る.
た3
)
. また,従来 はスポーツとは考え られていなか っ
2
0
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2
年 4月,学校週 5日制が 日本 において完全実
ターゲ ッ ト型 ボールゲ ームはゴル フやボウ リング
た ビリヤー ド等 の競技 も含 まれていた.
が代表的であるとされ るが, その 日本国内 における
6
競技 1
5
6種 目の中 で ボールを使 用 し
この大会 の2
評価 はあま り高 くはない. そのような環境 であ るこ
たの は, ビリヤー ド4種 目, ブールスポーツ 4種 目,
とか ら,体育 の教育実践 における資料 は限 られてい
ボウ リング 3種 目, ファウス トボール, コー フボー
る. しか し,逆 にその教育的意義 につ いて検討すべ
ル, ロー ラースケーティング (
ホ ッケー)
, ラグビ-,
き時期 に来 ていると考 え,近年 の体育 スポーツ関係
6
種 目であ った. この う
新体操 (ボール) の 8競技 1
資料 を参考 に,体育 の学 習内容 とす る際の諸課題 に
ち ビリヤー ドとブールスポーツ, ボウ リングの計 3
ついて検討 を進 め る.
競技 11種 目は, ボールを 目標 に当て るなど正確性 が
求 め られ る競技 と しての特徴 を持 って いた. また,
ボールで はな くプ ラスチ ック製 の円盤 を投 げて, ゴ
2
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0
2
年 1月2
2日受理
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第2
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号
2
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0
2
年
8ホールをまわ るフライ ングデ ィ
ル フと同 じよ うに1
スクの, デ ィスクゴル フが 2種 目含 まれていた. こ
の種 目 もゴル フと同様 に, デ ィスクを正確 に投射す
ることが求 め られ る競技特性 を持 っていた.
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Akita University
ワール ドゲ ームズが第二 のオ リンピックとか,読
技会 の説 明 にオ リンピックを例 にす る ことに も象徴
が促 され るためには,類型化 は自然 な成 り行 きと考
え られ る.
され るよ うに,最 も代表 的国際総合 スポー ツ大会 は
球技 あ るい はボールゲ ームは,様 々な観点 か ら頬
オ リンピックで あ る. その実施種 目は,2
0
0
0
年のシ
型化 されて い る. ボールを使用 す るか ら球技 あ るい
ドニー大会 で 2
8
競技 3
0
0
種 目で あ ったが, 目標 にボー
はボールゲ ーム と呼 ばれ るが, シャ トル コ ックを使
ルを正確 に送 る競技 は含 まれて いなか った.
用す るバ ドミン トンも,一般 的 に球技 に含 まれ ると
オ リンピックに引 き続 き同会場 を使用 して, 障害
考 え られて い る.例 えば, 中学 校 の球 技 領 域 は5
分
のあ る人 々が参加 す る国際総合 スポー ツ大会 パ ラ リ
類 された 4番 目に, テニ ス と卓球 に並 んでバ ドミン
ンピックには, シ ドニー大会 で 1
8
競技が実施 された.
トンが示 されて い る ごと くで あ る9
)
. この様 に ボ ー
その中 にポ ッチ ャとい う聞 き慣 れない競技があるが,
ルを使用 しないなが ら, その特性 が他 の ボールゲ ー
これ は重度脳性 まひ者 が参加 し, 目標 にボールを正
ムに類似 した種 目を含 め, ボールゲ ームの類型化 の
確 に送 る特徴 を持 った競技 で あ った.
例 を探 る ことにす る.
ウ ィンタース ポー ツの国際総合 スポー ツ大会 であ
小学校高学年 のボール運動の領域 を解説 して, ゴー
る冬季 オ リンピ ックは,2
0
0
2
年 にアメ リカ合衆 国 の
ル型 のゲー ムと してバ スケ ッ トボ - ル とサ ッカ ー,
ソル トレー クシテ ィーで開催 された. その実施種 目
ベ ースボール型 のゲーム と して ソフ トボール, ネ ッ
は,7競技 7
8
種 目で あ るが, カー リングは目標 にス
ト型 のゲ ーム と して ソフ トバ レーボールを示 し, こ
ト- ンを正確 に送 る特徴 を持 った競技 で あ った.
このよ うに, 国 際総合 スポー ツ大会 の種 目を比較
す ると,知名度 に反比例 す るよ うに, ボール等 を正
こで も各 ゲ ー ムの類 型 化 の と らえ方 が示 され て い
る11).
中学校 の球技領域 は,前述 の よ うに 5分類 され ア
確 に送 る特徴 を持 った競技 が多 く含 まれ る ことに気
か らオまで示 されて い るが, その根拠 は中学校学 習
付 く. また, スポー ツに最 も縁遠 い と思 われ る重度
指導要領解説保健体育編 には示 されて いない. しか
脳性 まひ者 が参加 で きるポ ッチ ャは, ブール スポー
し,小学校 の ボール運動 の頬型化 に従 えば, アのバ
ツのペ タ ンク, カー リングと類似点 が多 い. その類
スケ ッ トボール と- ン ドボール は,手 を使 って攻 防
似点 は, それぞれ数人 で チー ムを組 み,順次 目標 を
を組 み立 て る ゴール型 の ボールゲームと考え られ る.
ね らい,相手 チ ームよ り目標 に近 いボールや ス トー
イのサ ッカーは足 を使 うゴール型. クのバ レーボー
ンの数 が得点 とな る. そ こで は正確性 と共 に,相手
ル はネ ッ トに区切 られ た コー トの中で,集 団で攻 防
チーム との駆 け引 きが勝敗 の重要 な要素 とな る.身
を組 み立 て るネ ッ ト型 の ボールゲームと考え られ る.
体 を 自由 に動 かす ことが困難 な重 度 脳 性 ま ひ者 が,
前段 で も触 れ た 工のテニス,卓球, バ ドミン トンは
チームの一員 と して プ レイで き るス ポ ー ツ と して,
個人 あ るいはペ アで攻 防 を組 み立 て るネ ッ ト型. オ
ポ ッチ ャの存在 は, スポー ツ ・フォア ・オールを実
の ソフ トボール は攻守 を規則 的 に交替 し合 い,一定
現 す る今 日の社会 で大 きな意義 を持っ と考え られ る.
回数 内で得点 を競 い合 うベ ースボール型 のゲ ーム と
考 え られ る. この よ うな類型化 は, ゲーム理念 に基
2-2 体育 にお けるターゲ ッ ト型ボ ールゲーム
教科体育 につ いて調 べ ると,小学校 の新学習指導
づ くもので, 同様 の例 が他 に も見受 け られ る.
例 えば,Be
l
ka (
1
9
9
4)が アメ リカ合 衆 国 の教 員
要領 で は,第 3学年 ・第 4学年すなわち中学年 のゲー
の研修用 図書 と して ま とめた 「
子 どものゲーム教育,
ム領域 はバ スケ ッ トボール型 ゲーム,サ ッカー型ゲー
原題 TEACHI
NGCHI
LDRENGAMES
」の中でゲー
ム, ベ-スボール型 ゲームで構 成 され て い る8). こ
ムは,鬼 ごっこ型 (
TagGame
s
)
,的 当て 型 (
Tar
ge
t
の領域 は第 5学 年 ・第 6学年 す なわち高学年 の ボー
,ネ ッ ト・壁型 (
Ne
tandWal
lGame
s
)
,倭
Game
s
)
ル運動 の領域, さ らには中学 ・高校 の球技領域 につ
入型 (
I
nvas
i
onGame
s
)
,守備型 (
Fi
e
l
di
ngGame
s
)
なが る導入 的領域 と考え られ る.そ して,従来のポー
と 5分類 されて い る1
〕
. また, ダ リフ ィン他 (
1
9
9
9)
トボールのよ うな特定種 目を示す ことか ら,○○型
が ボール運動 の授業 づ くりのため に著 した 「ボール
ゲ ーム と表 し,類型化 された ボールゲ ームの特性 に
運動 の指導 プ ログ ラム」 の中でゲ ー ム は, 侵 入 型 ,
応 じた学習が促 され る ことを期待 して い る11)
. 内容
ネ ッ ト・壁型,守備 ・走塁型, ターゲ ッ ト型 と 4分
が削減 された指導課程 において,特性 に応 じた学 習
類 されて い る2
)
. さ らに, 岡 出
4
4
(
2
0
0
0
)の
「イ ギ リ
秋 田大学教育文化学部教育実践研究紀要
Akita University
スのゲーム理解 のための指導論」 で,侵入型, ネ ッ
らは じき出されないような位 置 に置 いた り,最後 に
ト/壁型, フィールデ ィング/走塁型,的当て型 と
4分類 されて いる1
7
)
.
有利 にな るよ う空 けておいた り,投 げ動作 の正確性
これ らを総合 して, ゲーム理念 に基づ いて ボール
れを踏 まえたチームワークが求 め られ る. それぞれ
ゲームを類型化 を行 ってみ ることにす る. す る と,
を基礎 と して, ほ じいた後 を予測す る洞察力 と, そ
手で送 り出すが, ポ ッチ ャに参加す る重度脳性 まひ
侵入型 とも呼ばれ るゴール型,壁 を使用す る種 目を
者 は,雨 どいの様 な ランブスを傾斜 させてボールを
含 めたネ ッ ト型, ベースボール型 とも呼ばれ る守備
送 り出す.送 り出す動作 は正確 性 を求 め られ るが,
単純である.
型, そ して的当て型 と 4種 に類型化す ることが考 え
られ る. この類型化 はゲーム理念 に基づ いて はいる
以上 のよ うに, ターゲ ッ ト型 のボールゲームで は
ちのの, ゴールや ネ ッ トな どゲームで使用す る象徴
ボール等 を正確 に送 り出す ことと,それを繰 り返 し,
的な器具 によ って呼称 されてい ることに気付 く. そ
数 を競 う共通性 が存在す る. これ らの共通 性 か ら,
こで,守備型 ゲームで使用す る象徴的な器具 のベー
ターゲ ッ ト型 ボールゲームの特徴 や特性 を考察す る
ス,的当て型 ゲームで使用す る象徴的な存在 の ター
と, まず始 めに正確 な運動 の遂行 があげ られ る.正
ゲ ッ トを用 い, ボールゲームをゲーム理念 に基づ い
確 な運動 の遂行であ って も, ボール等 を正確 に送 り
て類型化す ると, ゴール型, ネ ッ ト型 , ベ ー ス型 ,
出す ことであ り,体操競技 や飛 び込み競技のように,
ターゲ ッ ト型 の呼称 によ って類型化す ることが妥 当
身体動作 の外見の正確 さが求 め られているわ けで は
であると考 え られ る.
ない.体操競技 や飛 び込 み競技 は空中で回転等を し
て,着地で静止 した り,入水 で しぶ きが上が らない
2-3 ターゲ ッ ト型ボールゲームの特性
姿勢 を とることが採点 されて,高い得点 となるので,
ここで, この ターゲ ッ ト型 と類型化 され るボール
外見上正確 な身体運動 の遂行 が求 め られている. そ
ゲームの特性 やゲーム理念 につ いて検討す る. この
れ に対 し, ターゲ ッ ト型 ボールゲームの正確 な運動
類型 の代表的 ボールゲームは, ゴル フやボウ リング
の遂行 は,対象物 あ るいは用具であ るボール等 を正
であることは研究 目的の項 で触 れたが, この両競技
確 に送 り出す ことであ り, その結果 は運動 の実践者
は,個人で プ レイす ることが基本 とな る.国別対抗
に も客観的 に把握で きる.
な ど団体で競技す る場合 も,多 くが個人 の成績 の集
客観的に結果 が把握で きるのは,静止 したボール
計 によ って成績が定 まる. ゴル フはホールアウ トす
の位置や倒れた ピンの数 によるか らであ る.他 の類
るまでの打数 の少 な さ, ボウ リングは倒 した ピンの
型 のボールゲームで は,移動 中の身体 や ボールの位
多 さで成績 が定 まる.求 め られ る技能 は, どち らも
置等がルールに適合 してい るのか, あ るいは違反 し
正確 にボールを送 り出す ことである. ボウ リングの
ているのか判定が必要で,一過性 であ るため審判員
場合 は,各 フ レームの第 1投 はポケ ッ トをね らって
の存在 が必要 とな る. ターゲ ッ ト型 ボールゲームで
同一 の投球 が必要 であ る. それ に対 し, ゴル フで は
は, プ レイ後 ボールや ピンは停止 し,結果が再確認
各 ホールの距離 や高低差,障害 とな る樹木 や山, あ
で きるので,公式競技 で は中立 な立場 の審判員 を必
るいは池や砂 を敷 いたバ ンカーなど,環境 によって
要 とす るが,本質的 には審判員 を必要 とせず セル フ
求 め られ るシ ョッ トが異 な る状況下で正確性 が必要
ジャッジが可能 とな る.
であ る. どち らも成績が数字 で表 され るので, ベス
ゴル フで は1
8ホール, ボ ウ リングで は1
0フ レーム
トス コアーや アベ レージ, ゴルフでは- ンディキャッ
等 のよ うに, ターゲ ッ ト型 ボールゲームで はプ レイ
プの場合 もあ るが,技量 が数量的 に把握で きる.
が繰 り返 され る. その繰 り返 され る全 プ レイに正確
それに対 し,国際総合 スポーツ大会 の種 目を検討
性が求 め られ ることか ら,運動 の再現性 が求 め られ
した ときに触 れた, ポ ッチ ャ, カー リング, ペ タン
る.陸上競技 の投て き種 目や距離を競 う跳躍種 目も,
クは個人で プ レイす ることも可能であ るが,数人で
試技 が 3回か ら 6回繰 り返 され るが,繰 り返 された
チームを組 み,一人が 2ない し 3投 し, それを繰 り
試技 の中で最 も良 いパ フォーマ ンスが評価 され順位
返 して競技 をす る.相手 チームよ り目標 に近 いボー
が決定 され る. そ こで は運動 の再現性 よ りも,最高
ルや ス トー ンの数 が得点 とな る. そのため,先 に投
パ フォーマ ンス発揮 のための努力が求 め られ ること
げ られたボールや ス トー ンをは じき出 した り,後 か
にな る.運動 の再現性 は努力 の集 中 よ り,努力 の分
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散 によ り一定 のペースあ るいは強度 を守 る ことで,
達成 され る可能性が高 いのであ る.
プ レイ開始 の時期が プ レイヤー本人 に委 ね られて
いることは,競泳や陸上競技 の走種 目等 は, 出発合
ペースあるいは強度 を守 ることは,運動 による傷
図 に運動開始 を適合 させ る努力が重要 にな ることと
害が発生す る可能性が低 い と考え られ る. ゴル フの
対照的であ る.他 の類型 のボールゲームで は,対戦
場合 はボールの硬 さ,飛球速度,打具で あ るクラブ
相手 のプ レイや, バ スケ ッ トボールの ジャンプボー
の長 さ, その硬 さ,広大 な ゴル フ場環境 による偶発
ルで は審判 の動作 に,対応 させて プ レイ しなければ
性が危険である. しか し,他 の ターゲ ッ ト型 のボー
ない. したが って,多 くのプ レイが他律的であ るの
ルゲームで は, ペースあ るいは強度 を守 る ことと,
に対 し, ターゲ ッ ト型 ボールゲームは自律的である.
プ レイす るエ リアが比較 的狭 い ことか ら,極 めて安
全性 は高 い.
自律的であることは, プ レイ中のマナーが強調 さ
れ ることにつなが ってい る.特 に ゴル フはその服装
ゴル フ場 におけるプ レイは偶発性 があ り,成績 に
は じめ,飲食 ・喫煙, そ して プ レイに関 し多 くの守
もそれ に起因す る偶然性 が影響す る場合 がある. し
るべ きマナーが存在す る.他 の 夕-ゲ ッ ト型 ボール
か し,他 の ターゲ ッ ト型 のボールゲームで は,偶然
ゲームで も不文律 があ って,成文化 されていないが
によって成績が左右 され る可能性 が低 い. ボウ リン
他 のプ レイヤーや相手 の プ レイヤーに,不快 な思 い
グで は複数 の ピンが離 れて残 り, スペアーが期待 さ
を させない ことが求 め られてい る. これ は他 の類型
れに くいスプ リッ トの状態 にな った場合,不運 と考
のボールゲームで は,対戦相手 の安全 を考慮 しルー
え ることがあ る. しか しこれ もプ レイヤー自身 の第
ル化 されていることに比較 し,道徳的であ り,友好
1投 の結果 であ り, フ ックボール等でカーブを付 け
て ポケ ッ トの位置 に高 い速度 で投 げ込 まれ た場 合,
的であ り,相互理解 を深 め る可能性 が高 い と考 え ら
れ る.
スプ リッ トにな りに くい し, 1投ですべて倒す ス ト
以上 か ら, ターゲ ッ ト型 のゲーム理念 を考察す る
ライクに もな る可能性 が高 いのである.偶然 によ っ
と, 自己決定 に基づ き,正確 にボール等を送 り出 し,
て成績が左右 され る可能性 が低 い ことは,努力が結
数 を競 うことと考 え られ る. そ して, ターゲ ッ ト型
果 に結 びつ きやす く, 目標達成 の期待感 も高 くなる
と類型化 され るボールゲームには以下 の特性 があ る
と考 え られ る.
と考 え られ る. それ は,比較的軽運動 であ り, ペー
正確性 と再現性 を求 めプ レイのペースあるいは強
度 を守 ることは,運動強度 が低 くな ることが考 え ら
スあ るいは強度 を守 ることと, プ レイ後 を予測す る
れ る.かな りの距離 を徒歩 で移動 しなければな らな
洞察力 とが必要 とされ, セル フ ジ ャ ッジが可 能 で,
安全性 が高 く, マナーが求 め られ 自律 的であ ること
い ゴル フを含 め,多 くの ターゲ ッ ト型 ボールゲーム
等 である.
は軽運動 ととらえ られてい る.
Be
l
ka(
1
9
9
4)はターゲ ット型ゲームの戦術 (
s
t
r
at
-
また,一部 の この類型 のボ-ルゲ ームには,技量
が数量的 に把握 で き, プ レイ後 を予測す る洞察力 を
e
gy) を以下 のよ うに示 している. す な わ ち, 少 な
い試技で多 くの成果 を得 よ うとす るか, 多 くの試技
で堅実 な成果 を得 よ うとす るか,期待す る成果 と自
己の技能 と状況 を分析す る ことで あ る1
)
. この よ う
な 自己決定場面 は,他 の類型 のボールゲ ームや 日常
踏 まえたチームワークが求 め られ,偶然 によ って成
生活 における様 々な状況で もしば しば発現す ること
レク リエー シ ョンあるいは生涯 スポーツと しての普
である. しか し, ターゲ ッ ト型 ボ ール ゲ ー ムで は,
及 を期待す る場合が多 い. このよ うに行 うことが楽
績が左右 され る可能性 が低 い特性が認 め られ る.
ペ タ ンクやデ ィスクゴル フ等, この類型 のゲーム
種 目を紹介す る書物等 では, これ らをニ ュースポー
ツあ るいは レク リエー シ ョンス ポー ツ と して扱 い,
ペースを守 ることと同様 に,特別 な場合 を除 きプ レ
しく,比較的少人数でゲームがで きる,身近なスポー
イ開始 の時期 を プ レイヤー本人 に委 ねて いる. この
ツであ ることも特性 の一つ と考 え られ る.
ことか ら,期待す る成果 と自己の技能 と状況 を分析
これ らのゲーム理念 や特性 と類似点 を持っ プ レイ
す る自己決定 のための,十分 な時間が確保で きるの
は,他 の類型 のボールゲームに も多 く見 られ る.例
であ る. そのよ うな特性 によ り, 自己決定場面 の重
えば, ゴール型 ボールゲームのバ スケ ッ トボールに
要性 が ターゲ ッ ト型 ボールゲームの特性 の一つ と考
え られ る.
お けるフ リースローとラグ ビーの トライ後 の ゴール
4
6
キ ックは, そのプ レイヤーの自己決定 に基づ き正確
秋 田大学教育文化学部教育実践研究紀要
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図 1 体育の学習内容としてのボールゲームの類型
にボールを送 り出 ことが求 め られ る. 同 じくゴール
型 のサ ッカーで は, 防御 す るキーパ ー は存在 す る も
のの, ペナルテ ィーキ ックで 自己決定 に基 づ き正確
'
本文中はボールゲーム運動 と記述
学
校 学年/
教科 領 域
学習内容の運動
" 1を選択
類 型
にボールを送 り出 ことが求 め られ る. ベ ース型 ボー
プ レイが開始 され る. この ときの ピッチ ャーの プ レ
小 低学年 ゲーム ボールゲーム*
ターゲット
型
中学年 ゲーム バス
ケットボール型ゲーム ゴール型
サッカー型ゲーム
イは, バ ッター と対 峠 しな ければな らない要素 が加
学
ルゲームの野球 や ソフ トボール は, ピッチ ングか ら
ベースボール型ゲーム ベース型
わ るものの, ターゲ ッ ト型 と類似 した プ レイを して
い ると考 え られ る
校
高学年
ボール バスケットボール
ゴール型
サッカー
ゴール型
運 動 (:
;; こ/
誓 言 V工 ル ベース型
ネット型
2-4 体育科学習 内容 の取捨選択
体育 の学 習内容 は時代 の影響 で変化 す る.第 2次
大戦後 の 日本 で は,平和 な民主 的社会 の形成者 を育
て る レク リエー シ ョン重視 の体育 か ら始 ま った.続
中 学 校 球 技
いて,高度経済成長時代 はそれを支 え る労働力 の供
給源 と,東京 オ リンピックにお け る外 国選手 との体
サッカー
ゴール型
ノ
ヾレ-ボール
ネット型
(:
こ;吉宗二ニール事
書 ゴール型
ソフ トボール
ネット型
ベース型
ハ ンドボール
ゴール型
ラグビー
バ レ-ボール
テニス
バスケットボール
ノ
ヾドミントン
ソフトボ-ル
ゴール型
ネット型
ネット型
ゴール型
ネット型
ネット型
ベース型
ハンドボール
サッカー
ラグビー
サッカー
バ レーボール
テニス
ゴール型
ゴール型
ゴール型
ネット型
ネット型
バ ドミントン
ソフトボール
ネット型
ベース型
ベース型
ゴール型
ネット
型
力差 か ら,体力づ くりの体育 に移行 して い った. そ
の内容 に対 す る子 ど もの拒否反応 を反省 し,新指導
要領 に も引 き継 がれて い る運動 の特性 にふれ る楽 し
い体育 に移行 した4
)
. また,新指 導 要 領 で は現 代 の
成熟社会 にお ける価値観 の多様化 す る中で,精神面
にお ける体 育 の効 果 も期 待 す る, 心 と体 の体 育 が
弓 芦体育科
】
保 健 球 技
2
0
0
2
年 4月 か ら実践 され よ うと して い る18). そ こで,
今 回 の指導要領改訂 によって変更 された,ボールゲー
ムあ るい は球技 の学 習 内容 の取 り扱 いにつ いて検討
を試 み る. その ことによ って,体育 の学習 内容 が ど
のよ うに取捨選択 されて い るかを明 らか にす る.
心 と体 の体育 が示 された背景 には,学級崩壊,不
登校, い じめ,薬物乱用,非道 な犯罪等,子 ど もた
ちに様 々な問題 が生 じて い る ことが あげ られ る. そ
して この呼称 の由来 とな った変更点 は, かつて体操
と呼 ばれて いた領域 の名称 を体 つ くり運動 と し, そ
の中 に体 は ぐしの運動 が取 り入 れ られた ことが まず
妄
r
…
学
卓球
野球
H校 】体育科 スポーツⅡE卓球
バスケットボール
あげ られ る8 10
)
.体 は ぐしの運動 は体 のみ に限 らず,
心 を解 きほ ぐす こと もね らい と した運動 で あ る. ま
た ことは, 3割削減 の方針 の下, ほとん どの運動領
た,小学校 の保健領域 に心 の発達 に関連 す る内容 が
域 が削減 され た中で異例 の措 置で あ った. 中学 の球
含 まれ,配 当学年 も高学年 だ けで あ った ものが, 中
技領域 は 5分類 8種 目,高校 の球技領域 は 9種 目で
学年 まで拡大 され,全体 の授業 時数 も約 2
0
時間か ら
構成 され, これ らの うちか ら 2を選択 す る こととさ
2
4
時間 に増加 して い る. このよ うな時代背景 を踏 ま
れ,従来 と変更 はなか った.従来 と変更 が なか った
えた変更 に加 え,小学校 の ボール運動 の領域 は前節
ことは, 内容 の 3割削減 と, 授 業 時数 の 1
05時 間 か
で も触 れたが 4種 目の中か ら, 3の学習 内容 を学 ぶ
ら9
0
時間への減少 の中で,相対 的 には増加 した とと
ことに増加 して い る8
)
.
らえ ることがで きる12,13). さ らに, 各 指 導 要 領 の補
従来 ゴール型 の 2種 目だ けで あ った この領 域 が,
足事項 で あ る内容 の取 り扱 いが示 されて い る. そ こ
ネ ッ ト型 とベ ース型 か らの選択 を含 め, 3に増加 し
で は,小学校 のボール運動領域 にお いて, 3種 目目
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年
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Akita University
との入れ替 えが条件 とされ るが, 中学 ・高校 の球技
競争 的内容 を含 めている.楽 しい体育 の本質 が運動
領域 において も共通 して,地域や学校 の実態 に応 じ
の特性 にふれ ることであ り,小学校 のボール運動 の
て, その他 の運動 につ いて も履修 させ ることがで き
特性 は,集団対集団で勝敗 を競 うことが中心 で, 中
ることが示 されてい る. この ことは,楽 しい体育 と
学 ・高校 の球技 は個人対個人, また は集団対集団で
して運動 の特性 にふれ る学習 を充実 させてい く意図
勝敗 を競 うことが中心、
とされている. このよ うな競
と,現在 の生涯 スポー ツ環境 を考慮 したボールゲー
争 の重視が,現在 の体育 の学習内容 の採用 の特徴で
ム重視 の意図が うかがわれ る.
あることが知 られてい る1
4
1
5
)
.
このよ うな意図を踏 まえた上 で, これ らの領域 の
競争 で はな く達成 を 目指 したパ スの連 続遊 び は,
各学習内容 の例示 を検討す ると,次 の点 が明 らか と
蹴鞠 や羽根 っ さと して 日本 の伝統 的球技 に見 られ る
な る. ボールゲームを 4種 に類型化 した場合,小学
が,体育 の学習内容 と して は含 まれていない.伝統
校 のボール運動 および中学 ・高校 の球技 の学習内容
的遊 びにはそれぞれ受 け入れ られ る要素 があるはず
には, ターゲ ッ ト型 ボールゲームが含 まれていない
ことになる. ただ し,高等学校 の専門教育 に関す る
であ り,パ スの継続 も楽 しいはずであ るが,含 まれ
ていない. ただ し,現在 の体育 の学習指導で は,千
教科 の一つであ る体育科 で は,球技 を示す科 目のス
どもの主体性 や技能,発達段階を尊重 し課題別学習
ポーツⅡに, ゴル フが示 されている10). また, 小 学
や,様 々な場 における学習が取 り入れ られている6,7).
校第 1
学年 ・第 2学年すなわち低学 年 のゲ ーム領 域
その課題 や場 を,競争 に重点 を置 いた り,達成 に重
のボールゲーム運動 注
)は次 のよ うに示 されて い る,
点 を置 いた りす る実践例が見 られ る. た とえば,バ
す なわちは, ボールを転が した り,投 げた り,蹴 っ
レーボールでゲームを中心 に学習 を進 め る競争 の場
ての的当てゲームや, その的当てゲームの発展 した
と,パ スの連続回数 を増 やす達成 の場 を設 ける例 で
シュー トゲームである11),高等学校 の体育 科 は専 門
あ る. スポーツが体育 の学習内容 の中心 とされ る中
教育 に関す る教科 の一 つで,体育 ・スポーツの能力
で,競争 を伴 わない球技 の実践 が現場で は取 り入れ
に優 れ, これ に興味や関心 のあ る生徒 の能力を一層
られているのであ る. このよ うな競争 を伴 わない球
仲良 し,高度 な運動技能 を習得で きるよ うにす ると
技 は,現在 の体育 の学習内容 には含 まれていないが,
ともに,体育 ・スポーツの振興発展 に寄与す ること
現場 で は取 り入れ られているので,今後採用 され る
ので きる人間の,育成 を 目指 して設定 した教科であ
可能性 は考 え られ る.
る7
)
. このよ うに発展的段階 と, 小 学校 低学 年 の初
専門教育 に関す る教科 の体育 科 で採 用 されて い る
歩的段階 にターゲ ッ ト型 あ るいはそれに類似 のボー
ゴル フは,教科体育 の中で唯一 の ターゲ ッ ト型 ボー
ルゲームが示 されていることにな る.
ルゲームであ る. ただ し,前項で触 れたが,危険性
このボールゲーム運動 は,未分化 な ターゲ ッ ト型
を含 め特別 な要因が多 く,一般 の体育 の学習内容 と
ボールゲームを学ぶ基礎的学習内容 と,位置づ け ら
す るには解決 しなければな らない課題が多 い と考 え
られ る.
れていると考 え られ る.例示 された運動 も,荊述 の
通 りシュー トゲームとされ,一般化 してい るスポ-
指導要領 の補足事項である内容 の取 り扱 いで, そ
ツ種 目とは異 な った ものであ る. また,
、学習内容削
の他 の運動 を加 え ることがで き るとされて いたが,
減 のため,低学年 の基本 の運動 の領域 に含 まれてい
小学校 において は- ン ドボールな どその他 の運動 で
た用具 を操作す る運動が縮小 され, その中か らボー
あることが示 されている.中学 ・高校 の球技 の場合
ル遊 びが削除 された. この基本 の運動領域 のボール
はその他 の運動 とされ,何 を取 り入れて も全 く制限
遊 びは, ボールを右手 や左手 で続 けてつ く運動 と,
はない と解釈で きる. このよ うな制限 の撤廃 はダ ン
投 げ上 げて捕球す る運動 が例 と して示 されていた 5).
スや武道 の領域 に も見 られ,新指導要領 の特徴 の一
これ らの例 と共 に,将来行 うバスケ ットボールやサ ッ
つである. したが って, ターゲ ッ ト型 ボールゲーム
カーの,基礎的技能 を向上 させ る目的を持 っていた.
の導入 も地域や学校 の実態 に応 じていれば,支障が
ない こととな る.
その日的を もにな う運動 と して, このボールゲーム
運動 は位置づ け られている.基礎的技能 の向上 を 目
的 として も,かつて多 く実践 されて いた基礎練習 と
しての動作 の繰 り返 しで はな く, ゲーム性 すなわち
4
8
2-5 ターゲ ッ ト型ボ ールゲームの学習内容 と して
の価値
秋 田大学教育文化学部教育実践研究紀要
Akita University
前項 のよ うに,球技領域 や ボール運動領域 で何 を
が, 4類型 されて,欠 けた部分 があることは矛盾 と
取 り入 れ るべ きか制限 はないと解釈で きるよ うにな
考 え られ る. 同 じ類型 の作戦 や技能 は転移す ること
り,体育 の学習内容 を取捨選択す るよ りどころにつ
だ けでな く,他 の類型 のボールゲームの中 に も類似
いて明 らか にす る必要性 が生 じた.取捨選択 のよ り
点 を持っ プ レイがあることか ら, それ らの学習や実
どころは,地域 や学校 の実態 な ど環境 の要因が大 き
いと考え られ るが, その学習内容 の価値 も重要 な要
践 において,内容 の深 まりに貢献す ることも考え ら
れ る.
因であると考 え られ る. そ こで この項 で は, ボール
夕-ゲ ッ ト型 ボールゲームは生涯 スポーツに も有
ゲームの検討 によ り, ターゲ ッ ト型 ボールゲームの
用 であ り,国民 に対す る普及度 も高 い実 態 が あ る.
学習内容 としての価値 を明 らかにす る.
余暇活動 の統計 と して公表 されている総理府
小学校低学年 のゲーム領域 の, ボールゲーム運動
(
1
9
9
8
)
の,社会生活基本調査 によると,行動者率 の トップ
に示 された シュー トゲームは,基礎的技能 を向上 さ
が ボー リングであ った. また,男子 の 3位 に ゴル フ
せ る目的を持 っていた. そのため,未分化 なゲーム
があげ られ,上位 5位 まで に 2の この類型 に属す る
を内容 としていたが,完成 されたあるいは一般化 さ
ボールゲームが含 まれてい る19).他 の運 動 は散歩 や
れたボールゲームを指導 す ることの方が,妥 当 と考
水泳で,他 のボールゲームは上位 5位 まで に含 まれ
え られ る.生涯 にわた るスポーツ実践 を通 C, 明 る
ていない. この実態 か らも,学習内容 と して価値が
あ ると考 え られ る.
く豊かな, そ して健康 な生活 を実現す るために,教
科体育 で求 め られ る課題 は, スポーツ文化 の享受 が
安全性 はゲームを評価す る場合重要 な観点で, ゴ
あげ られ る. その中で,授業時数 の削減,内容 の精
ル フを除 きターゲ ッ ト型 ボールゲ-ムの安全性 が高
選が されていることを踏 まえれば,小学校低学年 の
い ことは前述 の通 りである.ただ し, この類型のボー
学習内容であ って も,可能 な限 り文化 と して確立 あ
ルゲーム導入 の際 に注意 しなけれ ば な らな い点 は,
るいは一般化 しているスポーツ種 目の方が妥当 と考
ギ ャンブル と類似行為が行 われ る場合があることを
え られ る. ただ し, その発達段階を踏 まえ ると,高
指摘 で きる. ゴル フで はチ ョコ レー トと称 して金銭
逮,長大,複雑 な要素 を含 む, オ リンピック種 目な
のや り取 りが行 われた り, ビリヤー ドによる賭 けも
どは適 さない ことは明 らかであ る.前章 で検討 した
映画や小説 のテーマに もな っている. この賭 けの要
よ うに, ターゲ ット型 ボールゲームにはワール ドゲー
素 は楽 しみを増加す る付随的価値 と理解することが,
ムズに採用 されているよ うに,国際競技連盟 や国際
体育科学習内容 と して採用 の前提 と考え られ る.
ルールが確立 されてい る競技があ った. その上,身
今回の学習指導要領改訂方針 の最初 に,豊 かな人
近で,洞察力が必要 とされ, セル フジャッジが可能
間性 や社会性 の育成があげ られて いたが 81
0
)
, 高齢
で,安全性が高 く, マナーが求 め られ 自律的である
化社会 において老人や障害者 の理解 はその重要 な点
等,教育 の内容 と してふ さわ しい競 技 が存在 す る.
であ り,パ ラ リンピックに採用 されているポ ッチ ャ
また,基礎的技能 を向上 させ る目的を持 っていた と
は, それに答 え る体育 の学 習内容 と考 え られ る.障
して も,単調 な運動 の繰 り返 しなど子 どもの実態 に
害 を持 っ子 どもたち との交流学習 の促進 に も, ター
そ ぐわない内容 は避 ける方針が示 されていることか
ら,一般化 しているスポーツ種 目の方が妥当 と考 え
ゲ ッ ト型 ボールゲームの果 たす役割 は大 きい ことが
考 え られ る.
られ る. したが って, シュー トゲ ー ムで あ って も,
サ ッカーのペナルティーキ ック合戦,バスケ ットボ-
の 自由性 や戦術性が他 の球技 にない ことと,技能 の
ルにお けるフ リースロー コンテス ト, ラグ ビーの ト
上達が認 め られ, ゲームで のプ レイに対 す る満足度
ライ後 に行 われ るゴールキ ック合戦, その他 ボール
の向上,等 を根拠 と している1
6
)
. この根拠をターゲ ッ
ゲームの一部 を指導すべ きであろ うと考 え られ る.
ト型 ボールゲームに当て はめた場合,全 くそん色 な
20
00) はラグ ビーの教材的価値 を, プ レイ
中川 (
導入段階であ る小学校低学年 のゲーム領域 に限 ら
く当て はまると考 え られ る. それぞれ独 自なプ レイ
ず, 同 じ類型 の作戦 や技能 は転移す ることを考慮す
の 自由さがあ り,戦術 にお いて他 の球技 にない独 自
ると, ターゲ ッ ト型 を指導す ることも意義があ ると
考 え られ る. ボールゲームの重要性 は,学習指導要
な点があ り,成績 の向上 に技能 の発達 が求 め られ る
点 は,前述 の通 りである.
領 に反映 され,扱 いが広が って いる実態 は前述 した
ターゲ ッ ト型 ボールゲーム導入 の際に注意 しなけ
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ればな らない点 は, ギ ャンブル性の排除 と共 にもう
る. また もう一点 は,体力の向上 にはあま り効果が
一点指摘で きる. それは,身近 な運動であることの
期待で きない運動の軽 さである. この類型のボール
背反で,運動が軽 い場合が多 く,体育 の文化的側面
ゲームの特性か ら,体育の授業以外 の運動実践が増
と共 に,重要視 しなければな らない発達刺激 として
加す ることにより,体力向上の効果 は期待す ること
になる.
の機能的側面 に欠 ける点である.体育 は,体力の向
上 と健康の保持増進機能が期待 され, その効果 は運
動量 と関連 している.最大限の体力向上効果を期待
荏)実際の記載 は 「ボールゲーム」であるが,表題
した場合, ターゲ ッ ト型 ボールゲームは比較的軽 い
で も用いた一般 のボールを用いるスポーツの総称
運動が主体であることか ら,適切 さを欠 いて い る.
であるボールゲームと紛 らわ しいので, ここでは
運動 を付加 して 「ボールゲーム運動」 とした.
ただ し,年間9
0時間の新指導要領 の時間数では, い
かなる運動種 目において も, その時間内で最大限の
効果 を期待す ることは困難である. したが って,体
育 の授業時間以外 の運動実践 において, この目的達
成が期待 されるのである. その点で,身近 な運動で
ある特性 は,体育の授業以外 において実践 を促す こ
とであろう.
3
. 結論
スポーツや体育関連資料 を もとに して,体育の学
習内容 としての ターゲ ッ ト型 ボールゲームに関 し検
討を した.
そ して, ボールゲ-ムを 4類型化す ると, ゴール
型, ネ ット型,ベース型, ターゲ ッ ト型 とす ること
が妥当であった.
また, ターゲ ッ ト型 ボールゲームの特性 は,比較
的軽 い運動で,ゲーム結果 に対す る洞察力が必要 と
され, セルフジャッジが可能で,安全性が高いこと
等があげ られる. さらに,ゲーム理念 としては, 自
己決定 に基づいてプ レーを し,正確 にボール等の用
具を送 り出 し, そ して打数や ピン数, これ らの数 を
競 うことと考え られ る.
ターゲ ッ ト型 ボールゲームを体育の学習内容 とし
て導入す ることは,多 くの効果が期待 される. それ
は,生涯 スポーツに有用で,豊かな人間性や社会性
の育成 に貢献す るスポーツ ・フォア ・オールの実現
が期待 され ることである. さ らに,他の運動 に くら
べ戦術の中の自己決定場面 の重要性が高 く,複雑化
している現代の社会 に生 きる力をは ぐくむ可能性が
高 いこと等である.
ターゲ ッ ト型 ボールゲームを学習指導す る場合,
留意 しなければな らない点 がある. それは, この類
型のボールゲ-ムには賭 けの要素が含 まれることが
あるが,楽 しみを増加す る付随的価値 と理解す るこ
とが,体育科学習内容 として採用の前提 と考え られ
5
0
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