福祉の再構築(1)

H24.7.3 慶応大学・現代行政研究会講演
発言録
【福祉の再構築(1)】東村山市の人口推移
次に、福祉の再構築ということで、行革と絡めて福祉については、どんなことを取り
組んできたのか、お話をさせていただきたいと思います。
これは、東村山市の人口構成、ご多分にもれず、年少人口、紫色の人口が減ってきて、
なお且つ生産年齢人口が減ってきて、増えるのが高齢者という状況であります。平成
24 年が 15 万 3337 人のうち、65 歳以上の方が 22.3%ということですが、これの比率が
徐々に高まっていくという推計であります。
【福祉の再構築(2)】東村山市を取り巻く福祉の現状
東村山市は、病院・公営住宅等々が非常に多くて、その分、高齢化率や生活保護の受
給率が非常に高いのが特徴であります。高齢化率については、23 年 1 月 1 日現在、22.27%
ということで、多摩 26 市中では高齢化率は上から 4 番目に高い、比較的お年寄りの多
いまちであります。それから生活保護率ですが、これはパーミルですので、1000 人の
うち 18.4 人が生活保護を受給しているということになります。今、生活保護について
は、いろいろ問題になっていますけれど、どうしても一定所得以下の方がお住まいにな
る公営住宅が集中しているまちは、生活保護の発生率は高いということで、現在当市は
多摩 26 市中 6 番目に生活保護率が高いというような状況にあります。
それから保育園の整備率、保育サービスの定員が就学前児童人口に占める割合ですが、
これでいうと 23.0%ということで、逆に保育需要は非常に高いんですが、なかなか充
足することができなくて、整備率でいうと 26 市中 26 番目という最下位、後塵をまだ拝
している状況であります。
それから財政力指数、
これは財政の力を指数化したものですが、0.848 ということで、
多摩 26 市中 23 位で、残念ながら非常に下位の方に甘んじている。どうしても財政が脆
弱なところにこそむしろ生活保護率が高かったり、高齢化率が高くなるという相関関係
があって、このへんは少し府県行政の立場から広域的に考えて基礎的自治体にあまり偏
りがないようにしていく必要があるのではないかと考えていますが、今日は時間がない
ので、その辺は端折らせていただきます。
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【福祉の再構築(3)】歳出「目的別」決算額の推移〈普通会計〉
これが、当市の歳出目的別の決算額の数字ですが、全体のうち民生費の比重がぱっと
見でも非常に高いというのがおわかりいただけると思います。下の紫色の部分が、福祉
関連予算といわれる民生費、生活保護費だとか児童福祉費あるいは障害関係、高齢福祉
の費用が、現在ではだいたい予算の半分くらいまで占めるようになってきています。
【福祉の再構築(4)】歳出「目的別」構成割合〈普通会計〉
これが歳出目的別の決算を構成割合で示した表ですが、22 年度を見ていただくと、
民生費の比率が 47.9%、ほぼ 50%近いところまできておりまして、多摩 26 市の平均で
は 43.2%ですが、当市の場合は、都市構造の関係から福祉の予算、私どもの市が特別
すごいことをやっているわけではないのですが、対象となる人数が非常に多いというこ
とから、こういう状況になっています。
【福祉の再構築(5)】廃止または縮小した主な事業
行革に絡んで、どういった事業を廃止縮小したかということについてですが、できれ
ば続けたかったのですが、財政破綻一歩手前ともなると、そうも言っておれませんので、
福祉領域においても選択と集中の観点から、あまり本当の趣旨としてどうなのかという
部分については、果敢に廃止または縮小させていただきました。例えば高齢者の調髪事
業、これはある一定の年齢になった高齢者に、床屋さんやパーマ屋さんの無料券を配る
という事業ですが、本当にお困りの方の支援というよりも敬老的な意味が強く、高齢者
の自立支援施策全体を再構築する中で、廃止をさせていただきました。それから休日診
療事業、1 歳 6 カ月の健康検査については、いくつか法律で基礎自治体としてやらなけ
ればならない事業に上乗せとして行っていたものですが、これらについては、ある意味
過剰なサービスではないかということで思い切って上乗せ部分を止めさせていただい
たところです。
それから、もうひとつは収入の確保と収納率の向上に力を注いでまいりました。具体
的には国保税の改定に伴って交付金を確保したり、国保税の収納率の向上、それから保
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育料・児童クラブ使用料の徴収強化などを行ったところです。福祉も全くタダではなく
て、受益者には負担能力に応じ一定のご負担をいただくことが必要で、例えば国民健康
保険のように一定の保険料を支払っていただく、あるいは保育・児童クラブについても
使用料等を支払っていただいているわけです。そこで、いただくものはきちんといただ
くと、ある意味当たり前のことで取り組みをさせていただきました。こうした福祉領域
における行革の取り組みによりまして 19 年度から 22 年度の行革効果額としては約 1 億
7 千万円ほど効果をあげています。
【福祉の再構築(6)】笑顔あふれるまちの実現(安心して子育てできるまちづ
くり)
一方で、選択と集中の観点から、伸ばすべきところはきっちり福祉についても手当を
していかなければならないと考え、いくつかの事業については充実を図ってきました。
その一つが子育て支援です。
これからの次代を担う子どもたちを安心して子育てできるまちをつくっていくとい
うことは、まちの成長戦略にも非常に重要なことです。というのは、高齢者は当然大切
にしなければなりませんけれども、都市というのは高齢者だけではなかなか成り立たな
い、やはり子育て世代、生産年齢人口に当たるような人たちにも魅力的な政策を打って、
まちに呼び込むということが必要で、そういう意味で言いますと、子育て支援というの
は非常に重要な施策だというふうに、私自身は位置づけております。
具体的には、子育て総合支援センターの開設、それから認可保育所、まだまだ数は足
りていませんが、先日ニュース等でもかなり取り上げられた、ハンセン病の療養所であ
ります全生園の中に認可保育所を建設するなどの認可保育所の整備に精力的に取り組
んでいます。それから病児病後児保育の実施、児童館分室の改築だとか、妊婦検診、乳
児の全戸訪問事業、これは乳幼児の健やかな発達を支援するものですが、虐待防止部分
もあります。それから認可外保育所の保育料の補助金の実施など、かなりこの間、子育
て支援については充実を図ってきたのではないかと考えています。
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【福祉の再構築(7)】笑顔あふれるまちの実現(住み慣れた地域で暮らせるま
ちづくり)
その一方で高齢者や障害をお持ちの方々も、住み慣れた地域で暮らし続けるまちづく
りを進めております。地域支援事業それから地域密着型サービス事業を推進し、高齢者
についても、介護予防を中心としながら、できるだけご自身のお宅で住まうことができ
るように、身近なところで介護サービスが受けられたり、介護予防事業が受けられたり
するような体制を取りつつあります。それから障害者についても障害者の就労支援、公
共施設におけるオストメイト対応のトイレの整備とか、こういったことを進めています。
【福祉の再構築(8)】笑顔あふれるまちの実現(つながりを大切にした地域社
会の実現、市民ニーズに対応する適切な運営体制の確立)
それから 3 点目としては、繋がりを大切にした地域社会の実現ということで、市民同
士の助け合い、支え合いの仕組みづくりを勧めています。福祉というのは公助ではある
のですが、よく言われるように、自助・公助そして共助といわれる助け合いの部分を少
し厚くしていかないと、何でもかんでも行政任せでは、これからの超高齢社会は担えま
せん。そこで、今、地域支援事業ということで、包括支援センターを中心として、高齢
者の見守り事業を推進しています。日常的な見守りとともに震災などの災害時に要支援
となる方々を地域でゆるやかに見守りながら、万が一の場合の安否確認ができるように
しようというふうな体制を組み立てはじめています。
それからもうひとつは、市民ニーズに対応する適切な運営体制の確立ということで、
福祉領域における民営化などサービスを充実する代わりに効率化図る施策に取り組ん
でいます。例えば公立保育園の民間移管、実は公立で保育園を開設するより私立でやっ
たほうが、お金が市費の部分としてはかからないのです。その一方で公立に比べ民間で
は市民ニーズに対応して柔軟に対応しやすいというメリットもあります。今、当市には
公立保育園が 7 園ありますが、これを公立、私立の役割分担をはっきりさせながら何園
かは民間移管できないかというようなことを検討しています。福祉の世界も官が全てや
るというのではなくて、できるだけ、民にやってもらえるところは民にやっていただく
ことによって、質も落とさず、機敏に市民ニーズに対応しながら、量的拡大を図ってい
く、そういう戦略性を持ちながら進めているところです。
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