ゲーム・ ボール運動領域分科会の概要とまとめ <授業研究> 1年「ころがしまとあてゲーム 4年「タグラクビー」 2年「シュートゲーム」 5年「ソフトバレーボール」 4年「セストボール」 6年「バウンドベース」 1,ゲーム・ボール運動領域分科会の概要 (1)児童の実態 各学年の意識調査では低学年の85%、中学年の90%、高学年の80%が、子供 達が一番好きな運動としてボール運動をあげている。また、普段の中休みなどで一 番遊んでいる運動がボール運動である。このような結果を受け、この分科会では、 体つくり運動分科会とは反対に、子どもたちの好きなゲーム・ボール運動から、楽 しく運動する子どもを目指すことになった。取り組みを始めるに当たって、児童の 実態を把握するために、体力テストの結果を詳細に検討することからはじめた。 その結果、ソフトボール投げなど、体力テストの結果から児童をみると、全学年で 府中市や都(平成19年度抽出調査) 、全国(平成18年度抽出調査)の平均より劣 っており、学年によっては大きく落ち込んでいることがわかった。 また、一人一人の結果を 握力 見てみると、子どもによっ 55 ソフトボー ル投げ 立ち幅とび 50 上体起こし て大きな差があることがわ 45 かった。これは、普段から 40 社会教育で行っているスポ 35 長座体前屈 ーツ団体で活躍している児 童とそうでない児童との差 があることがわかった。そ 反復横跳び 50m走 20mシャト ルラン の数値を見ると他の領域よ 全国 り、その差は大きく、二極 若松小5年女子 化のもっとも激しい運動領 域であることがわかった。 また、教師側の意識調査で も、ベースボール型の運動などは大きな差があり、指導の難しさがあがっていた。 (2)「一人一人がめあてをもち」について 低学年では、初めて取り組むゲームが 多く、教師側からスモールステップのめ あてを提示することからはじめた。例え ば、2年生のシュートボールの運動では、 投げる、捕るなどの動きに合わせて相手 に体を向けて投げる、両手で捕るなど、 その内容そのもののめあてを段階に応じ て示して取り組んだ。低学年の特徴とし て、その運動中はボールを投げることに夢中 でその都度振り返ることは難しかった。その ため、1 年のころがしまとあてゲームのニコ ニコタイムのように、授業の終わりにがんば りを確認する時間とした。 中学年では、セストボールに取り組んだ。 セストボールでは、授業の進行とともに、 試合運びや技能が向上していく児童の実態 に合わせて、ルールなどを工夫しそのルー ルに合わせて、スモールステップのめあて をつくるようにした。 高学年では、オリエンテーリングである程 度、取り組む運動やゲームの内容を理解し た段階で、児童一人一人がめあてを設定す ることにした。教師側は、そのめあてを把 握しながら、一人一人に合わせたアドバイ スをすることができた。 ソフトバレーでは、確実に打てるサーブ をめあてにした子どもなどに腕のどの部分 で打てばいいかという投げかけをした。 (3)「友達とかわり合いながら」について 低学年では、自分がゲームに夢中になるこ とが多い。反面、友達にほめられたり、励ま されたりしたことが嬉しく、ゲームが楽しく なることも多くみられる学年である。 そこで、1 年生「ころがしまとあてゲー ム」では、言われて嬉しい「ナイス!」 「すごいね!」などの言葉かけを示すことに より、よりよい友達とかかわり合う関係を築くことに取り組んだ。また、2年生のシュ ートゲームでは、攻守の初歩的な作戦を考える時間を設定した。 中学年のセストボールでは、体つくり運動 と同様にヒントカード(ここではアドバイス 集)を活用したかかわりを考えた。また、指 導者が運動のポイントを全体に提示するこ とをよりどころに、子どもたち同士のアドバ イスをする場面も多く見られた。また、チー ム対抗のゲームのため、チームで練習方法を 考えたり、試合の作戦を話し合ったりする場 面を授業の中に意図的に設定した。 高学年のボール領域では、特に友達との関わりが重要である。個人めあてのほかに、 全員が楽しくゲームを取り組むために5年生ソフトバレーボールでは「みんなで協力」 のように、クラスのめあてを設定した。 これは、負けることで意欲を失うことの ないようにするためのめあてでもある。 6年生のベースボール型のバウンドベ ースボールゲームは、攻守交代型のゲー ムである。それぞれの特性に合わせて、 めあてをもてるように、具体的な運動の 視点を提示し、児童が自らめあてを設定 できるように工夫した。ベースボールゲ ームは、もっとも二極化の激しいゲーム であり、それに応じた個々のめあてを設 定することが重要であった。 また、ゲームを展開する中でチャレンジカードを利用した、個々の振り返り、話し合 いによるグループの振り返りの2つのフィードバックを行なった。このことを通して、 互いの成果を確認するとともに、自分の成長を確かめることになり、次の時間、その次 の時間に活き楽しく運動する子どもたちにつながってくる。 (4)授業づくりの工夫 ゲーム・ボール運動領域では、授業を充実さ せるためには、すべての子どもが取り組めるた めのルールや用具を工夫するこが重要である。 低学年のころがしまとあてゲームやシュート ボールは、ボールやまとを工夫した。ころがし まとあてゲームでは、当たった時にまとが動き、 さらに 1 年生でも扱いやすいボールを使用した。2年生のシュートゲームでは、投げや すく捕りやすい、きれいで楽しくなる、手になじむ大きさということでキャンディボー ルを選択した。また、ねらうまとに絵を描いたり、当たると音の出る缶を使うなど子ど もが楽しく取り組めるように工夫をした。 低学年で扱うゲームのルールはわかりやすさが求められる。ボールを扱う順番を決め たり、交代制にしたりして、みんなが同様に取り組 めるようにした。 中学年のセストボールでは、多様な子どもに対応 して、横から入れることや上から入れることができ るゴールを考案した。また、安全面を考えてガード の柵を設けたり、児童がスムーズに準備や片付けが できるように、ゴールにキャスターを設けた。 高学年のソフトバレーボールでは、子どもがゲー ムの中で扱いやすいボールをいくつかのボールの 中から選択した。また、子どもの実態に合わせてワ ンバンドでもよいというルールを設定したことか ら、丁度いい具合に弾むボールであることも重要で あった。さらに、ローテーション制を導入し、すべての子どもが、いろいろな場所でレ シーブをしたりアタックをしたりすることができるようにルールを工夫した。 6年生で扱うバウンドベースボールゲームは、狭い校庭でも行える、通常のボールで はなく誰もが扱えるスポンジボールを選択した。また、投げる、捕るなど、個人の能力 差が大きく反映されるゲームのため、誰でもでき るようになることを考えて、バウンドボードをつ くりそこに反射したボールを打つというゲームを 考案した。このゲームは、ティーボールの止まっ たボールを打つことの次の段階、 「飛んでくるボー ルを迎え打つこと」を考え、バウンドさせて飛ん でくるボールを打つことにした。また、このこと は、投げることが弱い児童でもピッチャーができ るための一つの方法として効果を期待した。指導 をする際は、それぞれの児童が設定しためあてを 指導者側が一覧を持参するなどして、しっかり把 握し、運動の特性を考えて的確な指導ができた。 さらに授業を改善のための研修会を行い、新しいゲームを考えたり、ルールの工夫を 検討したりした。 (5)新学習指導要領への対応と年間指導計画に向けて ボール運動系の領域として、低・中学年を「ゲーム」高学年を「ボール運動」で構成し ている。 ゲームは低学年を「ボールゲーム」「鬼遊び」で、中学年を「ゴール型ゲーム」「ネ ット型ゲーム」「ベースボール型ゲーム」で内容を構成している。これらの運動は、勝 敗を競い合う運動をしたいという欲求から成立した運動であり、主として集団対集団で 競い合い、仲間と力を合わせて教え合い、競い合うことができる運動である。 ゲームの学習指導では、仲間と協力して、楽しくゲームを行うことやルールを工夫し て楽しいゲームを作り上げることが、児童にとって重要な課題となってくる。集団で勝 敗を競うゲームでは、ルールを工夫したり作戦を立てたりすることを重視しながら、簡 単な動きを身に付けて、ゲームを一層楽しくしていくことが学習の中心となる。また、 公正に行動する態度、特に勝敗の結果をめぐって、正しい態度や行動がとれるようにす ることが大切である。 ボール運動は「ゴール型」、「ネット型」「ベースボール型」で内容を構成している。 これらの運動は、ルールや作戦を工夫して、集団対集団の攻防によって競争することに 楽しさや喜びを味わうことができる運動である。 ボール運動の学習指導では、互いに協力し、役割を分担して練習を行い、型に応じた 技能を身に付けて、ゲームをしたり、ルールや学習の場を工夫したりすることが学習の 中心となる。また、ルールやマナーを守り、仲間とゲームの楽しさや喜びを共有するこ とが大切であると明記されている。 今年度は、来年度からの移行期を意識した、ゲーム・ボール運動の内容を実践するこ ととした。 そこで、本校では、ゴール型、ネット型、ベースボール型でどんな運動ができるかに ついて、学年のつながりを考え実技研修を通して検討してきた。また、本校の狭い校庭 事情も考慮した。体力テストの結果から投げる力が少し劣っているということからも投 げる力が付くようなベースボール型の内容についても考えた。内容については以下のよ うに考えた。 (6)ゲーム・ボール運動のまとめ> <成果> ・友だち同士アドバイス集(声かけの例示)を出すことで、子ども同士が教え合い、助 け合いよく声かけをしてかかわり合っていた。 ・具体的なめあてを用意することで、子どもたちがめあてをたてやすかった。 ・教材・教具の工夫をすることによって、子どもたちがさらに楽しく運動に取り組むこ とができた。 <課題> ・ニコニコタイムでは、カードを見ながら個人の振り返りはできたが、チームでの振り 返りはできなかった。チームの中でがんばっていた人を紹介したり互いによかったと ころを伝え合ったりするなど、カードを工夫する必要があった。 ・一斉にゲームをしたので審判の教師がきまりを見切れなかった。ラインをはっきりさ せる、まとまでの距離を離す、まとを低くするなどルールを自分たちで審判できるよ うに、場を工夫する。 ・めあてが具体的に決められていなかったので、子どもたちがどのようにアドバイスし ていいかわからなかった。
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