乳がん検診にまつわる数字トリック

NHK総合テレビ 毎週水曜日・午後8時から放送中
http://www.nhk.or.jp/gatten/
数字トリック見破り術
2011年07月06日放送
今回の番組について
「数字は怖い」とは言うけれど、実際どんな危険があるの?
実は、日常生活から人生の大事な場面まで、突如あなたに襲いかかる
“数字のトリック”がたくさんあるのです。
買い物で見かける値引き率、“お得”の見分け方は?
“がん”の疑いありと宣告されたとき、本当にがんである可能性は?
数字のウラに隠された衝撃の実態が明らかに!
誰にでも起こりうる実例を満載した“人生をお得に生き抜く数字の見方”をガッテンが大研究!
番組ディレクターのひとこと
たかがポイント、されどポイント
皆さんは買い物の時、ポイント制度をどのくらい利用しますか?
「全然気にしない」という人から、「ポイントがたまるのが楽しくて・・・」という人までそれぞれ。
私は、結構ポイント好きです。
ポイントを“ためる”、“使う”の鉄則は、「ポイント還元率が高い商品を買う時にポイントをためて、
ポイント還元率が低い商品にポイントを使う」ことだそうです。でも、ポイントのことを考え過ぎて、
いらない物を買ってしまったり・・・。
今回は、数字トリック見破り術。面白くて、恐ろしい、数字の世界を楽しんでください。
1/6
現金値引きとポイント還元、どっちが得?
よく見かける「○%ポイント還元
ポイント還元」や、「○割分の商品券を差し上げます
商品券を差し上げます」というお店。
ポイント還元
商品券を差し上げます
次回の買い物で、お金の代わりにポイントや商品券を使うことができます。
では、「現金4割引き
現金4割引き」のお店と、「5割分の商品券を還元
5割分の商品券を還元」、という店はどちらが得でしょうか?
現金4割引き
5割分の商品券を還元
これを簡単に考える方法があります。
まず、5割分の商品券の店で、1万円分の買い物をしたとします。すると、5千円分の商品券をゲット。
これをすぐに使うと、5千円分の商品がもらえます。手元には、1万5千円分の商品
1万5千円分の商品、
1万5千円分の商品
支払ったのは1万円
1万円です。
1万円
では、同じ1万5千円分の商品を、現金4割引きの店で買うとどうなるか?
9千円です。同じだけの商品を買うのに、
1万5千円の4割引きは、9千円
9千円
4割引きの店の方が千円もお得なのです。
もちろん、それぞれの店の制度や、使う側の利用の仕方で、どちらが得かの境目は変ってきます。
でも「○%還元
○%還元」という言葉を、「○%値引き
○%値引き」と同じように考えてはいけない、ということは言えそうです。
○%還元
○%値引き
全米騒然!モンティ・ホール問題
1990年、アメリカで数字にまつわる大騒ぎが起きました。
それは、あるテレビ番組のゲームをもとにした問題でした。
3つのドアのうち1つに車が隠れていて、当てると車がもらえるゲームです。
3つのドア
参加者である、あなたはドアを1つ選びました。
すると正解を知っている司会者は、すぐに答えを発表せず、ハズレのドア
ハズレのドアを1つ開けて見せます。
ハズレのドア
残ったドアは2つ。司会者は言います。
「選んだドアを変えてもいいですよ?」
さて、この時、ドアを変えた方が良いでしょうか?変えない方が良いでしょうか?
(司会者は、参加者が最初に選んだドアが当たっていても、ハズレていても、
残ったドアのうちどちらか1つを開けて、2択にします。)
この問題は、元になった番組の司会者の名前から、モンティー・ホール問題
モンティー・ホール問題と
モンティー・ホール問題
名付けられました。初めて聞くと、多くの人がこう考えます。
「残ったドアは2つなので、当たる確率はどちらも2分の1、選択を変えても変えなくても、
当たりやすさは同じはず。」
当たりやすさは同じ
ところが、実際には、選んだドアを変えた方が2倍も当たりやすくなる
2倍も当たりやすくなるのです!
2倍も当たりやすくなる
番組では実際に実験して確かめました。「確率」は私たちの直感と大きく違う
「確率」は私たちの直感と大きく違うことが実感できる、
「確率」は私たちの直感と大きく違う
2/6
面白い問題です。
モンティ・ホール問題の解説
A、B、C、3つのドアがあり、ある人がAのドアを選んだ場合を考えてみましょう。
可能性は3つ。
このとき、可能性は3つ
可能性は3つ
車が「Aにある」、「Bにある」、「Cにある」。
それぞれの確率は3分の1です。それぞれの場合で、ドアを変えた方がいいのか、
変えない方がいいのかを考えていきます。
ではまず、車がAにあった場合
車がAにあった場合。
車がAにあった場合
司会者は、BかCのどちらかを開け、「選択を変えますか?」と聞きます。
この時は、選択を変えるとハズレてしまうので、「変えない方が良い
変えない方が良い」ことになります。
変えない方が良い
車がBにあった場合。
次に、車がBにあった場合
車がBにあった場合
このとき、先ほどとは違う状況になります。司会者が開けられるドアが1つだけ
開けられるドアが1つだけなのです。
開けられるドアが1つだけ
Aは、もともと選ばれたドアなので、開けられません(いきなり正解発表になってしまう)。
Bは、車が入っているので開けられません(これも正解発表になってしまう)。
なので、司会者は、必ずCのドアを開けます。車が入っているBのドアが残される
車が入っているBのドアが残されるのです。
車が入っているBのドアが残される
「選択を変えますか?」と聞かれたら、「変えた方が良い
変えた方が良い」ことになります。
変えた方が良い
最後に、車がCにあった場合
車がCにあった場合。
車がCにあった場合
このときも、司会者が開けられるドアは1つだけ。Bが開き、車があるCは残されます。
車があるCは残されます。
つまり、「変えた方が良い
変えた方が良い」ことになります。
変えた方が良い
3つの可能性のうち、2つが「変えた方が良い」という結果。
だから、選択を変えた方が当たりやすいのです。
いかがでしょうか?
大学で数学を教える教授さえ、間違えてしまったこの問題。
文章だけでは分かりにくいかも知れませんが、
紙コップとコインなどで実際に何度もやってみると分かってきます。
がん検診に潜むワナ
マンモグラフィー検査を受けたところ「がんの疑い
がんの疑い」と判定され、
自治体のがん検診で乳がんのマンモグラフィー検査
マンモグラフィー検査
がんの疑い
精密検査を受けることになったAさん。不安で家事も手に着かない状態になりました。
3/6
では、Aさんが「乳がんである可能性」はどのくらいでしょうか?
データによれば、乳がんではない女性が、間違って「がんの疑い」と判定されてしまう確率はおよそ9%
およそ9%で
およそ9%
す。
これを聞くと、「Aさんは91%の確率でがん」と考えがちですが、実はそうではありません。
Aさんが乳がんである確率は、およそ3%
およそ3%しかないのです!
およそ3%
実際、Aさんはその後の精密検査で、がんではないことが分かりました。
「およそ3%という数字を知っていれ
数字を知っていれば、あんなに心配しなかったのに・・・」Aさんの実感です。
数字を知っていれ
でも、これからマンモグラフィー検査を受けようとしている人がこの数字を聞くと、
「そんないい加減な検査なら受けたくない」と思うかもしれません。
ところが、それは大間違い
大間違い。検査自体の精度は悪くないのです。
大間違い
「精度が良い検査」なのに「心配しすぎなくて良い」理由は、まさに数字トリック。
番組では模型を使って分かりやすく紹介しました。
大切なのは、きちんと検査を受けること
きちんと検査を受けること。
きちんと検査を受けること
そして、「要精密検査」の結果が出ても心配し過ぎず、落ちついて次の検査に進む
落ちついて次の検査に進むことです。
落ちついて次の検査に進む
健康にまつわる数字には、思わぬ落とし穴がいっぱい。注意が必要です。
乳がん検診にまつわる数字トリック
1000人の女性がマンモグラフィー検査を受けたとします。
1000人の女性
この中に乳がんの人は、およそ3人
およそ3人います。残りの997人は健康ですが、
およそ3人
そのうち9%が間違って「がんの疑い」と判定されます。
997人の9%は、およそ90人
およそ90人です。
およそ90人
つまり、1000人の女性がマンモグラフィー検査を受けると、本当に乳がんの3人の他に、
健康な90人の女性にも「要精密検査」の知らせが行くのです。
知らせを受けた93人のうち、本当に乳がんの人は3人だけ。
マンモグラフィーで陽性でも、乳がんである確率は、たった3%
たった3%ほどなのです!
たった3%
集団検診では、健康な人がほとんどのため、検査の精度は高くても、間違われる人がたくさんでてきます。
もしあなたが要精密検査になっても、次の検査で本当に乳がんが見つかる確率は3%。
心配しすぎなくて良いのです。
心配しすぎなくて良い
でも、「それなら検査を受けなくて良い」と考えるのは間違いです。
検査を受けなければ乳がんを発見することができません。
マンモグラフィー検査は、乳がんの死亡率を下げる
死亡率を下げる明確なデータがあり、
マンモグラフィー検査
死亡率を下げる
40才以上の女性には2年に1回の検査が勧められています。
4/6
広告・宣伝の数字トリック
広告や宣伝でよく見る、極端に高い顧客満足度
極端に高い顧客満足度。
極端に高い顧客満足度
本当に多くの人が満足しているのでしょうか?
実は、こうした調査には、「サンプルのかたより
サンプルのかたより」が発生している可能性があります。
サンプルのかたより
例えば、ある商品を2度、3度と注文したお客さんだけに、アンケート調査をしたらどうなるでしょう?
何度も買っているお客さんは、その商品に満足しているから買っている
満足しているから買っていると考えられます。
満足しているから買っている
当然、「満足している」という答えが返ってきます。
でも、1回買って気に入らなかった人
1回買って気に入らなかった人は、調査対象に入っていません。
1回買って気に入らなかった人
「サンプル
サンプル」とは、調査対象のこと。かたよったサンプルからは、かたよった数字が出てきます。
サンプル
サンプルの選び方次第で、調査の結果はまったく違うのです。
サンプルの選び方次第
サンプルの選び方の他にも、調査の結果を左右する要素がたくさんあります。
設問の文章や選択肢
順番など、ちょっとしたことで結果が大きく変る
大きく変ることがあるのです。
設問の文章 選択肢の作り方、順番
選択肢
順番
大きく変る
注意しないとアンケートを行う本人さえも、数字にダマされてしまう
ダマされてしまうのです。
ダマされてしまう
数字を見るときには、「どのようにして出てきたのか」、数字が出てきた経緯
数字が出てきた経緯を知っておくことが大切です。
数字が出てきた経緯
今回のお役立ち情報
番組内で紹介したモンティ・ホール問題の説明
A、B、C、3つのドアがあり、ある人がAのドアを選んだ場合で考える。可能性は3つ。
車が「Aにある」、「Bにある」、「Cにある」。それぞれの確率は3分の1。順に考える。
車がAにあった場合
司会者は、BかCのどちらかを開け、「選択を変えますか?」と聞く。
どちらにしても、この時は、選択を変えるとハズレてしまうので、「変えない方が良い」
「変えない方が良い」。
「変えない方が良い」
車がBにあった場合
このとき、司会者は必ずCのドアを開ける。
なぜなら、Aは最初に選ばれたドアなので、開けられない(いきなり正解発表になってしまう)。
Bは、車が入っているので開けられない(これも正解発表になってしまう)。
Cが開き、車があるBが残る
車があるBが残る。選択はAからBに、「変えた方が良い」
「変えた方が良い」。
車があるBが残る
「変えた方が良い」
車がCにあった場合
同様に、司会者が開けられるドアはBだけで、車があるCが残る
車があるCが残る。選択を「変えた方が良い」
「変えた方が良い」。
車があるCが残る
「変えた方が良い」
5/6
3つの可能性のうち、2つで「変えた方が良い」ので、選択を変えた方が当たりやすい。
乳がん検診(マンモグラフィー検査) 数字トリックの説明
1000人の女性がマンモグラフィー検査を受けたとする。
この中に乳がんの人は、およそ3人。
残りの997人は健康だが、そのうち9%
9%が
9% 間違って「がんの疑い」と判定される。997人の9%は、およそ90
人。つまり、1000人の女性がマンモグラフィー検査を受けると、本当に乳がんの3人 の他に、健康な90人の
女性にも「要精密検査」の知らせが行く。知らせを受けた93人のうち、本当に乳がんの人は3人だけ。3%ほ
どである。
つまり、要精密検査になっても、心配しすぎなくて良い
要精密検査になっても、心配しすぎなくて良いと
要精密検査になっても、心配しすぎなくて良い いえる。しかし、「それなら検査を受けなくて良
い」、と考えるのは大きな間違い。集団検診では、健康な人が圧倒的に多いので、間違われる人も多くなる
が、 検査自体の精度が悪いわけではない。マンモグラフィー検査は、乳がんの死亡率を下げる明確な
データがあり、40才以上の女性には2年に1回の検査が勧めら れている。
大切なのは、きちんと検査を受けること。そして、「要精密検査」の結果が出ても心配し過ぎず、落ち着
いて次の検査に進むこと。
Copyright NHK (Japan Broadcasting Corporation) All rights reserved.
許可なく転載することを禁じます。
6/6