〜ドイツ留学を終えて〜 ドイツ/マンハイム大学 大澤 亮介(経4) 【留学先

〜ドイツ留学を終えて〜
ドイツ/マンハイム大学
大澤 亮介(経4)
【留学先】
マンハイムはドイツ南部の Baden Württemberg 州の北端に位置しており、
州都 Stuttgart に次ぐ 30 万の人口を抱える第二の都市です。地理的には、ライ
ン川とネッカー川に挟まれた平野に街があり、ドイツの中でも最も暖かい地域
の一つと言われています。そのため、ビールのイメージが強いドイツの中でも
ワイン生産が盛んな地域(ex. Pfalz 地方)としても知られています。また、
Hessen 州のフランクフルト・アム・マインまでは電車またはアウトバーンで 1
時間の距離にあるため、交通の便は非常に良いです。アルザス=ロレーヌ地方
にも近いため、週末の旅行先としてフランスのストラスブールなどは人気が高
いです。
マンハイム大学は世界中に 400 もの提携校があり、毎年 800 人の交換留学生
がやってきます。そのため、大学内はとてもインターナショナルであり、大学
の至るところで、多様な言語が飛び交っているのを耳にします。また、経済・
経営学における評判は高く、特にマンハイムのビジネススクールは、ドイツの
全国紙 Die Zeit に’ The Harvard of Germany’とまで評価されています。他にも、
18 世紀にプファルツ選帝侯がハイデルベルクから居城をマンハイムへ移したと
いう歴史的経緯により、現在の大学(旧宮殿)はドイツで最大規模を誇るバロ
ック建築としても知られています。
【勉強面】
履修できる科目の自由度が比較的高いことが院留学や Ph.D 留学にはない、派
遣留学(学部留学)のメリットであると考えていたので、自分の興味のある授
業を中心に履修しました。特に印象に残っている授業はマーケティングの授業
と国際政治学のゼミナールです。
前者では、毎週の Lecture に加えて週 1 回の Tutorial(Ph.D 課程の学生によ
る Review 講義など)、不定期に開かれる Exercise(Group プレゼンの準備・発
表)がセットになっているため、この科目だけでも非常に workload は多かった
です。プレゼン自体は、グローバル企業のマーケティング戦略を Case Study と
して扱う形式であったので、他のグループの発表を聞くだけでも非常に勉強に
なりました。
後者の授業に関しては、シラバス上は他学部生に開かれているものではあり
ませんでしたが、教授にメールをして特別に履修の許可を頂きました。内容は
「人道介入・保護する責任(R2P)
・人間の安全保障」の 3 点を軸に DR コンゴ・
ダルフール・南スーダン・リビアなどの国々に焦点を当てて、授業毎に担当生
徒がプレゼンをし、その後ディスカッションに移るといった方式でした。この
クラスは履修者(ゼミナリステン:以下、ゼミテン)の大半がドイツ人で、交
換留学生は自分の他にアメリカ人・トルコ系カナダ人・ノルウェー人の4人し
かいませんでした。自分は政治学を体系的に学んでこなかったので、初めの頃
はディスカッションの議論の流れに付いていくことがなかなかできませんでし
たが、複数の Reading の文献を読みこむのと同時に、他のゼミテンの議論のポ
イント(理論・枠組み)を吸収していくうちに、次第に授業中での発言数も増
えて行ったと思います。一方、文献の中で用いられる英単語はどれもアカデミ
ックなものばかりで、とても難しく(時にラテン語も登場する)、毎回の予習に
非常に苦戦したのを覚えています。また、前期のテストが終わり長期休暇に入
る前にカナダのクイーンズ大学との合同ゼミ(インゼミ)が Saarland 州にある
EAO(Europäische Akademie Otzenhausen)という研究機関で行われました。
実際に 2011 年の「リビア内戦」を取り上げて、数日間に渡る Simulation(ロ
ールプレイング:ゼミテンはそれぞれアラブ諸国や安全保障理事会の加盟国家
に仮想的に割り振られる)を行う一方で、ブリュッセルにある NATO 本部へ訪
問し、当該問題をヒアリングしていく中で、国際社会における意思決定の難し
さや国家間の利害関係の調整の難しさなどを学びました。
その他には、ドイツ語のクラスを履修しました。1 学期目にとった授業は日常
会話を重視する授業、2 学期目にとった授業はドイツ語でプレゼンをする授業
(これは少し背伸びをしたかもしれません)を履修しました。ただ、なにより
も自分のドイツ語を成長させてくれたのは周りの環境だと思います。ドイツ人
は英語がうまいとはよくいいますが、当然大学の一歩外を出ればそこは「ドイ
ツ語圏」です。買い物をするにしても何をするにしても周りはドイツ語で溢れ
ています。店員さんとの何気ない会話やレストランのメニューを読んだりする
うちに、自然とドイツで暮らすのに必要な語彙や言い回しなどを覚えていきま
した。留学中には 10 人以上もの友人がヨーロッパの留学先や日本から遊びに来
てくれましたが、そのときには観光案内を引き受けられる程度にはドイツ語も
上達していたと思います。
勉強全般に関してですが、総じてドイツ人は「真面目」だと思います。よく
言われる話ですが、入学が難しく卒業が簡単な日本の大学に対して欧米の大学
は入学が簡単な割に卒業が難しい。マンハイム大学もその例外ではなく、ドイ
ツ人から「友人のドロップアウト」の話なども聞きました。普段はパーティー
などに積極的に参加するような社交的なドイツ人もテスト前になると、図書館
に一日中こもってひたすら勉強します。特に経営学部の図書館には 8 時の開館
前に行列ができることで有名で、そういうところからもドイツ人の勤勉さが垣
間見れると思います(図書館の開館時間も 24:00⇒26:00 まで延長されます)。
自分の場合は、同じ授業をいくつか一緒にとっていたボスニア系スウェーデン
人の留学生と一緒にカフェや図書館などで勉強することが多かったです。自分
の部屋ではあまり集中して勉強できない性格なので、僕は基本的に図書館に通
いましたが、周りの学生のやる気やアカデミックな図書館の雰囲気に刺激され
て、そこではよく勉強できました。
【生活面】
国籍を問わずいろんな国の学生と関わったという印象が強いです。1 学期目は
特に仲良くしていた留学生グループ(フランス・オランダ・ノルウェー・スロ
ベニア・シンガポール・エジプト・オーストラリア)で Schwarzwald(黒の森)
までキャンプしに行きました。コテージを貸し切ってみなで共同生活した経験
は忘れることができません。ベランダのハンモックで天然のプラネタリウムを
楽しんだり、山の中をハイキングしたりする中で、ドイツの「自然の豊かさ」
を堪能しました。2 学期目はルームメイトと「WG 旅行」と題してドイツ各地の
クリスマスマーケットに観光をしにいきました。日本と異なり、ドイツの高速
道路(アウトバーン)は無料であるため、移動手段として車は大活躍します。
食事に関しては、閉店法という法律が曲者でした。ドイツでは日曜日(と祝日)
は小売店の営業が法律で禁止されているため、土曜日までに食料を確保しなけ
ればなりません。慣れれば、
「買い忘れ」が防げるのですが、トリッキーなのが
祝日で自分は日本の手帳を持って行ってしまったので、ドイツの祝日を正確に
把握することができず、一度失敗してしまった経験があります。
ドイツはカーニバルやオクトーバーフェストなど一年間で色々な行事が行わ
れますが、特に印象に残ったのは Katholikentag とクリスマスです。前者は、
ドイツ全土からカトリック教徒が集まる一大イベントで開催地は持ち回りです
が、たまたま 2012 年はマンハイムで行われました。これに合わせてメルケル首
相もマンハイムのコンサート会場で講演会を行い、自分は幸運にもチケットが
取れたためそのイベントに参加しました。後者は、キリスト教圏の国々では一
年を締めくくる最も重要なイベントです。特に、Advent(キリスト降臨節)と
呼ばれる 12 月初頭からクリスマス当日にかけての 3 週間はクリスマスマーケッ
トも始まり、街全体が活気付くため非常に盛り上がります。僕は幸運にもイブ
の夜にドイツ人の実家に招待され、伝統的なドイツ人のクリスマスの「祝い方」
を肌で体感しました。
最後になりますが、このような人生でまたとない貴重な機会を与えてくださ
った明治産業株式会社、明産株式会社、社団法人如水会の皆様に感謝を申し上
げます。また、国際課の皆様、ゼミの指導教授である石川城太先生、如水会フ
ランクフルト支部の皆様、ドイツ留学の相談やアドバイスをしてくれたデーゲ
ン先生と岡室先生にもこの場をお借りして改めてお礼を申し上げます。
<番外編>
インゼミでの集合写真
午前 8 時前の図書館の様子
シュバルツバルトでのキャンプ
メルケル首相@マンハイム
1 年間通った大学(マンハイム城)の外観