平成26年2月13日(木)第5回 多職種連携研修会資料

平成 26 年 2 月 13 日(木)
於:山下病院 6 階ホール
14:00~15:30
講演「嚥下障害について」
山下病院
名誉院長
中澤三郎先生
【A】 摂食,嚥下、逆流の基本的事項
嚥下を実際の動画で
継時的断面図の説明(口腔,咽頭,食道)
摂食動作の構成
嚥下の神経支配,中枢との関わり
(要旨)摂食、嚥下運動
食物を食べるときの口から胃までの動きを動画で観察する。
食べるという行為には視覚、嗅覚などの感覚から食欲がおき、食べ物に手を出す。次
いで口の中で咀嚼しのどへ送り込む。あとは反射的に気管へ入るのを防ぎ、食物を食道
へ送ると重力によって胃へ入ってゆく。これには単に口腔や咽頭、食道の働きだけでな
く、脳の関与が大きい。従って、脳梗塞、脳出血など中枢疾患のために嚥下機能が低下
し、誤嚥が起こり肺炎が発生する。
嚥下運動それ自体は口腔相、咽頭相、食道相の3相に分かれ、複雑な神経およびホル
モンなどの支配を受けでいる。
【B】 誤嚥
嚥下の種々相
原因
口腔・咽頭,中枢疾患
胃液逆流,Silent aspiration
薬剤,サルコペニア
栄養不良など
誤嚥の評価
(a)臨床症状, (b)関連因子,
(c)診断評価
a 理学的所見
b 摂食・嚥下ステージの観察
c 検査
d 嚥下機能評価と対処
(要旨)
嚥下障害が起きると誤嘸によって肺炎が発生する。(現在、日本人の死亡率順位の第
3位は肺炎である。)特に高齢者の誤嘸からくる肺炎に対する予防、治療は診療、介護
やQOLなどの面から極めて重要である。原因には中枢疾患、消化器疾患のほか silent
aspiration、サルコペニヤ、栄養不良などがある。更に高齢者は薬を多数飲んでおり、
嚥下機能の影響を与える薬剤には注意を要する。
嚥下機能検査として水飲みテストや反復唾液嚥下テスト、食物テストやレントゲン検
査、内視鏡検査などがある。
【C】嚥下リハビリテーション
(a)重症度と対応
(b)摂食リハビリテーション
口腔ケア,食物を用いた直接訓練
食物を用いない間接訓練
経口摂取時期,食品について
抗誤嚥薬
代替的手段
介護者指導
チーム連携:家族,主治医,訪問看護師,ヘルパー,リハ専門
(要旨)
誤嚥性肺炎を繰り返す患者にたいしては経口摂取が目的ではなく、栄養管理を安全に
行うための摂食行動について検討することが大切である。
重症度に応じて対応することが求められる。誤嚥の有無により大別され、それぞれに
食事、経管栄養の必要性、摂食訓練、在宅管理の可否などが分けられている。
リハの具体的方法として口腔ケア、食物を用いる訓練と用いない訓練がある。経口摂
取開始時期の判断基準もある。嚥下しにくい食品として、水、お茶、ジュースなどのサ
ラサラした液体やパン、ゆで卵などのバサバサしたものその他種々ある。
また、誤嚥しにくくする抗誤嚥薬もあり作用部位が異なっている。
代替手段としての経管法や胃瘻、腸瘻があり介護者への指導やさらには家族、主治医、
訪問看護師、ヘルパー、リハ専門師などによるチーム連携も必要となってくる。
【D】誤嚥性肺炎
特徴,基礎疾患
症状
検査・診断,肺炎の鑑別
治療
予防
食す再開日程
難治例への対応
日本NHCAP
(要旨)
高齢者肺炎には臨床症状はじめ種々の特徴がある。若年と異なり明らかな肺炎症状を
示さない場合が多い。単に食欲がない、元気がないとか、尿失禁などを示すことがあり、
油断をすると重症化しやすいので注意が必要である。特に silent aspiration は知ら
ず知らずに起こっており肺炎につながるのでその存在を常に念頭に置くべきである。
肺炎を見た場合の重症性と外来治療か入院が必要かとの判断が年齢、血圧、パルスオ
キシメーター、腎機能、意識障害などで行われる。
治療と予防が大切であり、不顕性誤嚥対策、顕性誤嚥対策のほか禁煙、ワクチン接種
など肺炎予防が必要である。
日本では 2011 年日本呼吸器学会で医療介護関連肺炎、(nursing,healthcare-associated
pneumonia:NHCAP)というガイドラインが発表された。介護施設入所者の肺炎や在宅
介護を受けている方の肺炎への対処を示したものである。
肺炎は老人に友である!
<参考・引用文献等>
・健康長寿ハンドブック 実地医家のための老年医学のエッセンス
編集/発行
日本老年医学会
2011 年
羊土社
1986 年
・新消化器病図説
松尾裕著
・日本医師会雑誌
高齢者診療マニュアル
林泰,大内尉義,上島国利,鳥羽研二 監修・編集
メディカルレビュー社 2009 年
・在宅医学 日本在宅医学会テキスト編集委員会編
メディカルレビュー社 2008 年
・内科・臨床雑誌
これからの高齢者医療
南江堂
2011 年