平成 27 年度 卒業証書・学位記授与式 学長式辞

平成 27 年度
卒業証書・学位記授与式
学長式辞
大学正門脇の桜のつぼみも大きく膨らみ、開花のときを待つばかりになっていま
す。この良き日に、大谷範子名誉学長様、芝原玄記学園長・理事長様を初め、多く
のご来賓の皆様のご臨席を賜り、平成 27 年度の修了式、卒業式を挙行できることは
大学のすべての教職員にとって大きな喜びであります。大学院博士前期課程・修士
課程を修了された皆さん、各部を卒業された皆さん、おめでとうございます。これ
までのご努力とご研鑽に対して心より敬意を表します。
また、ご家族の皆さまのお慶びもひとしおのことと存じます。これまでの長年に
わたるご労苦に対して敬意を表しますとともに、育友会などをとおして大学に賜っ
たご支援についてお礼申し上げます。
この修了式ならびに卒業式で皆さんの学びは、一区切りを迎えたということにな
ります。しかし、それはあくまで一区切りであって、学びの終わりを意味するもの
でありません。皆さんの中には、学士入学や大学院への進学などでさらに勉学や研
究を継続する方たちがいらっしゃいます。大学や大学院でさらに学ぶことができる
環境にあることを感謝しつつ、一層のご研鑽を積まれることを期待します。これか
らの勉学や研究の成果が実り多いものであることを心より念じます。
他方、多くの皆さんは大学での学びを終えて、社会へと旅立つことになります。
新しい環境へと進んでゆくとき、人は大きな期待とともに、不安も感じます。しか
し、皆さんは社会で求められている多くのことを大学で学んできました。新しい社
会生活へと入っていく準備はできています。どうか、自信を持ってそれぞれの新し
い世界へと進んでください。
その上で申し上げたいのは、社会へ出てから、新しい学びのステージが始まるの
だということです。皆さんは大学という場で、多くの知識や新しいスキルを学びま
した。しかし、あらためて言うまでもなく、今、私たちは急速な ICT、情報通信技
術の革新の時代を生きています。私が大学を卒業したのはおよそ 40 年前のことでし
たが、この 40 年間に人間が行っていた多くの仕事が機械に置き換わりました。囲碁
の人工知能ソフトが世界最高レベルの棋士に勝ったということが数日来の話題とな
っています。それは、まだしばらく先のことだと考えられていた出来事でした。
さらに私たちは、グローバル化という大きな流れの中にもいます。日本で長い間、
通用していた様ざまな独自の基準やものの考え方が、いわゆる「グローバル・スタ
ンダード」に置き換わりつつあります。国家や国境はなお存在し、それが近い将来
に消滅するとは考えていませんが、その意味や役割は絶えず変化しています。グロ
ーバル化の中で私たちの社会のしくみも刻々と変化をしています。40 年後のことは
言うまでもなく、おそらくは 5 年後、10 年後の世界を見通すことも容易ではない時
代となっています。
皆さんが大学で学んだことがらには、人類の歴史とともに積み上げられてきた知
恵や文化が含まれており、それらがただちに意味を失うとは考えていません。しか
し、習得された最新の知識やスキルのかなりの部分の耐用年数はそれほど長いもの
ではないと考えるべきでしょう。
今の時代を生きる人間は、社会という場で働きながら、つねに学び続けなくては
なりません。皆さんは大学教育の中で新しい知識やスキルそのものを学びながら、
その知識やスキルを習得する方法も学んできました。大学での学びの経験こそが大
切なのだと考えています。そのような学びの経験が、これからの皆さんの生きてい
く力になるのです。建学の理念である親鸞聖人の体せられた仏教精神とともに、そ
の学びの経験は、皆さんの生涯にわたる道標になると私は信じています。
皆さんは、これからひとりの社会人として職場で働き、ひとりの市民として地域
で活動し、そして有権者として政治に参加します。さらには、議員として政治の世
界に入っていく人もいるかも知れません。そのような方が皆さんの中にいることを
私は期待しています。
またそのような社会活動、市民としての活動が、良き伴侶とともに家庭を築き、
世代を跨いで家族を支えるという、人間としての営みと両立する社会が求められて
います。さらには、男女共同参画ということだけでなく、若者と高齢者、様ざまな
マイノリティ、ハンディキャップを持つ人びとがそれぞれの場所で活きいきと暮ら
すことができる、そういう社会の実現が望まれています。皆さんがそのような社会
の形成に向けて進まれることを私は期待しています。
私たちも、この大学の教育、研究、社会貢献をとおして、新しい社会の形成に加
わりたいと考えています。卒業後も京都女子学園というコミュニティの一員として
学園と大学へのご支援をお願いいたします。繰り返しになりますが、人は生涯にわ
たって学び続けなくてはなりません。大学は様ざまな形で社会人に対して学びの場
を提供することが求められており、私たちはその期待に応えるべく、社会人向けの
教育プログラムを検討し、それを立ち上げつつあります。皆さんが人生の転機に立
ったとき、もう一度大学で学ぶという選択肢があることを申し添えておこうと思い
ます。
大学生活で培った力を土台に、変化の時代に相応しい、しなやかな知と心を社会
生活の中でさらに育んでください。皆さんの今後のご活躍を心より念じ、私の式辞
といたします。
平成 28 年 3 月 15 日
京都女子大学長 林 忠行