統一特許と統一特許裁判所: 来たる改正のための準備 John Dean and Dr Nicholas Jones 1 講演で扱う内容 • • • • • • 新法の概要 統一特許パッケージの概観 統一特許の紹介 統一特許裁判所の紹介 欧州における特許戦略 いまから準備すべきこと 2 新法の概要 • 統一特許:ヨーロッパの大部分(!)をカバーする新たな特許 権 • 統一特許裁判所:統一特許について訴訟するための新たな 特許裁判所 –移行期間後は欧州特許についての訴訟も扱う 3 統一特許パッケージの概観 4つの新たな法律 • 2つのEU規則: – 規則:“統一特許保護の創設の領域における強化され た協力を実施する” - Reg (EU) 1257/2012 – 規則:“適用可能翻訳の取決めに関して統一特許保護 の創設の領域における強化された協力を実施する” Reg (EU) 1260/2012 • 1つの国際協定: – 統一特許裁判所協定 • 裁判所規則(現在は草案) 4 現在の状態 • • • EU規則及びUPCAは、署名され成立した 13か国がUPCAに批准したのち、規則及びUPCAは発効 する – ただし、2014年1月1日より前ではない – イギリス、フランス及びドイツが含まれなければならない 欧州委員会は2015年を目標としている 5 統一特許の紹介 • • 第三者から所有者を保護する単一の特許権は、すべての 参加するEU加盟国中で効力を有します。 参加加盟国とは? 6 ヨーロッパ ヨーロッパ大陸: • ヨーロッパ諸国及びロシ アの一部 • 約7億3千万人 7 欧州共同体 • 27 ヶ国 8 欧州特許条約 • EUプラス: – – – – – – – – – – – – アルバニア クロアチア リヒテンシュタイン マケドニア モナコ ノルウェイ サンマリノ セルビア スイス トルコ ボスニアヘルツェゴビナ モンテネグロ 9 統一特許制度の参加国 • • • スペイン・イタリア不参加 4億人 20% GWP 10 10 地理的範囲について • • • 最初は12か国のみとなる見込み (イタリアはUPCA署名国だがUP参加国ではない) ポーランドは現段階では批准しないことを表明 クロアチアは7月にEU加盟予定 11 出願処理について • • • • • • 欧州特許出願と全く同じ 言語体制も同一 出願時に「EUを指定」する必要なし 審査ガイドラインや判例法も同じ 特許付与手数料並びに登録時のフランス語及びドイツ語 のクレーム翻訳 これまでのEP出願と費用は変わらない! 12 特許付与段階について • • • • 付与日から1月以内に「unitary effect(統一効、単一 効)」を選択 すべての参加加盟国において同一のクレームにしなけれ ばならない 「統一特許による保護のための登録」として登録-EPOによ り管理 登録料に関する規定なし 13 暫定の翻訳期間について • • • • 英語による手続の場合-EU参加加盟国の公用語による全 訳 フランス語又はドイツ語による手続の場合-英語による明 細書全訳 ルーマニア語翻訳(例:900ポンド(137,000円))は英語翻 訳(例:3,000ポンド(455,000円))より安価 継続期間は12年。これより短期間で全EU加盟国に高品質 の機械翻訳が利用可能になった場合は、12年未満で終 了する予定 14 暫定の翻訳期間後について • • • • 暫定期間後は翻訳は不要 EU参加国の全言語で「高品質の」自動機械翻訳 出願人は無料で利用可能となる予定 費用なし+翻訳なし=無料でUP登録? 15 欧州特許出願における特許権取得の地域選択 • • 3つの主な選択肢 – 通常通り、EPC指定国での権利化(すわなわち、欧州統 一特許の効果無し) – 欧州統一特許の効果のみ(すなわち、EPC締約国での 権利化無し) – 欧州統一特許及び不参加国(スペイン、イタリアその他 の国(例えば、ポーランド)を含む)での権利化 欧州統一特許の効果と参加EU 加盟国での権利は共存で きない。 16 係属中の欧州特許出願 • • 発効すると、法令は審査係属中の欧州特許出願に適用さ れる。 特許付与を遅らせる戦術 – 分割出願 – 施行規則71(3) の通知に対する応答で補正 17 更新費用 • • • • • • • • 更新料金を欧州特許庁へ納付できる。 欧州統一特許権の管理・・・に係る全体の費用をカバーす るのに十分 現在の欧州特許・・・平均・・・更新費用・・・同等 4,5,6カ国と同等? 高額すぎる場合 - 欧州統一特許が利用されない。 低額すぎる場合 - 締約国にメリットが無い。 中小企業料金の支援 更新費用は、全体的に不明な点が残る。 18 費用の概要 • • • • • 審査料金 – 欧州出願と同じ 特許付与の料金 – 欧州出願と同じ 登録費用 - 無料? 翻訳料 - 900ポンド 137000円 から 3000ポン ド 456000円 更新料金 -既存の国内 手数料の4/5/6 倍 19 費用の比較例 • • • イギリス、ドイツ、フランスでの権利化と欧州統一特許との 比較 – 権利化: 1700ポンド 258000円 – 欧州統一特許: 4250ポンド 643000円 イギリス、ドイツ、フランスでの権利化の方が明らかに低廉 もしかすると、更新費用は引き下げられるかもしれない。 20 費用の比較例 • • • EU 全加盟国での権利化と欧州統一特許との比較 – 権利化: 4700ポンド 7070000円 – 欧州統一特許:4250ポンド 645000円 明らかに、欧州統一特許の方が低廉。 そして、もしかすると更新費用も同様に。 21 統一特許裁判所の紹介 • • • • • 統一特許の専属管轄 7年または14年の移行期間中における非統一欧州特許 の非専属管轄 移行期間後の非統一欧州特許の専属管轄 イタリアがUPCAの批准を示唆している点に注意 - 欧州(イタリア)特許がUPCに訴えられる可能性あり 補充的保護証明書 22 裁判所の構成 • • • 第一審裁判所 – 中央部:パリ(本部)、ミュンヘン、ロンドン – 地方部:各参加国で設置可 – 地域部:各参加国は共同で設置可 控訴裁判所 - ルクセンブルグ 欧州連合司法裁判所への上告は無いことが期待される 23 中央部 • • • ロンドン: IPC分類 A,C(化学、医薬品、バイオテクノロジー および生活必需品、医療機器を含む) ミュンヘン: IPC分類 F (機械工学) パリ: (その他全般) 24 訴訟の種類 ルート 無効訴訟 中央部-無効訴訟は中央部のみに提起可 非侵害確認訴訟 中央部-非侵害確認訴訟は中央部のみに提起可 侵害訴訟 特許権者の選択により、侵害発生場所または被告の 裁判籍における地方/地域部 被告の裁判籍がEUにない場合(特許権者が選択す れば)、または地方/地域部がない場合は、両当 事者の合意により中央部 無効訴訟の反訴 侵害訴訟が提起された地方/地域部 裁判所の選択により中央部に付託 控訴 ルクセンブルクの控訴裁判所 25 無効訴訟 • • • • 中央部にのみ提起可 3名の裁判官で構成 -法律系2名、技術系1名 統一特許の無効は、EU加盟国の全参加国における保護 を無効とする 欧州特許の無効は、EU加盟国の全参加国における保護 を無効とする - どの国で無効とするかは選択不可 26 非侵害確認訴訟 • • 同じく、中央部にのみ提起可 3名の裁判官で構成 -法律系2名、技術系1名 27 侵害訴訟 • (特許所有者のための)選択肢 – 侵害発生場所における地方/地域部、又は – 被告が居所又は主たる営業所を有する場所-いずれも適用 できない場合は営業所を有する場所-における地方/地域部 • 例外 – 居所や営業所を有さない場合-侵害発生場所における地方/ 地域部、又は中央部を選択できる – 地方/地域部がない場合-中央部 28 無効訴訟の反訴 • 地方/地域部で提訴された場合、裁判所は以下を選択でき る – 両訴訟の審問をその地方/地域において行う – 無効訴訟を中央部に付託し、侵害訴訟は停止する – 無効訴訟は中央部に付託し、侵害訴訟は継続する -訴訟分岐 – 当事者の同意により、訴訟全体を中央部に付託できる 29 訴訟分岐 • • • 有効性が(正当に)審問される前に差止命令が出される可 能性有り 特許権者には大きな優位性 被告には大問題? 30 侵害に対する救済措置 • • 損害、廃棄、引渡し、費用 差止命令 – 統一特許については、一の差止命令が全ての参加EU 加盟国に及ぶ – 欧州特許については、一の差止命令が当該欧州特許 が有効な全ての参加EU加盟国に及ぶ – 地方部における訴訟分岐は、特許有効性が決定される 前にEU規模の差止命令を認めることができる 31 移行期間と適用除外 • • • • 暫定的に7年間継続する移行期間がある 移行期間は、移行期間の終期の前に登録又は出願された 欧州特許のみに関連する 移行期間中においては、特許権者は各国の裁判所とUPC を選択できる 5年経過後に、移行期間を更に7年延長させるか否かを決 定する審議会が設けられる 32 移行期間と適用除外 • • • 加えて、移行期間満了までに出願または許可されたEP特 許は、統一特許裁判所からの適用除外を登録可能 法の発効から移行期間の一か月前までの間であれば適 用除外が可能 ただし、統一特許裁判所において何らかのアクションがあ った場合は不可 33 移行期間と適用除外 • • 適用除外はいつでも取り下げ可能だが、国内裁判所にお いて何らかのアクションが発生した場合は取り下げ不可 適用除外は特許権が有効である限り継続する見通し 34 統一特許裁判所における訴訟コスト • • • EP全体における訴訟がより安価になるものと思われる しかし、訴訟コストは、例えば英国において州特許裁判所 (PCC)を利用する場合と比べると未だ高価なままであると 思われる 現段階においては訴訟コストは未知数 35 統一特許裁判所の主な利点 • • • 侵害訴訟における単一アクション 特許権者に対して有利(差し止め命令が欧州全域で有効) コスト(EU全体における訴訟が安価) 36 統一裁判所の主な不利点 • • • • • 重要特許にとって単一障害点 権利者にとって悪夢の可能性-無効特許が混乱を引き起 こす 裁判所がどれくらいプロパテントかアンチパテントか未知 特許権者に都合の良い「ロケットドケット」が現れ得る-特 許訴訟の歴史がないために(利点かもしれない) • どのように裁判管轄が選ばれるか? 料金-各国の裁判所よりも訴訟料金が高い 37 ヨーロッパでの特許戦略 • • 特許保護を受けるための3つのルート • 各国特許庁に直接出願 • 欧州特許庁を経ての欧州特許(国内出願の束) • 統一特許 特許訴訟の2つの選択肢 • 国内特許と移行期間中の欧州特許のための各国の裁 判所 • 統一特許と適用除外されなかった欧州特許のための統 一特許裁判所 38 各国へ直接出願 • • 利点 • 主な利点: UPCを完全に避けることができる • 2~3国のみがカバーされる場合料金が安い • EPOよりも各国特許庁の方が一緒に仕事をしやすいと いう意見がある 不利点 • 複雑な出願戦略-複数の特許庁において審査の調整 しなければならない • 翻訳料の前倒し • 複数の法域で訴訟を起こさなければならない-料金が 高い 39 欧州特許 • • 利点: • 主な利点: 適用除外によってUPCを避けれる • しかし! いつでもUPCを利用するために適用除外を 無効にすることができる • 2~3国のみがカバーされる場合料金が安い(登録と更 新) 不利点 • 複数の国を要する場合料金が高い • 適用除外をすると、複数の法域で訴訟を起こさなけれ ばならない-料金が高い 40 統一特許 • 利点: • 主な利点: 欧州全域の保護を要する場合料金が安い • 一つの訴えで複数の侵害訴訟 • 各国毎にライセンスされる • 不利点: • 特許の存続にとっての単一攻撃点 • 各国毎に譲渡することができない • 2~3国のみがカバーされる場合料金が高い 41 差し当たり準備すべきことは? • 考慮したい3つのポイント 1.許可済みの欧州特許(規則施行前に許可されるであろう ものも含む) – 統一裁判所での取り扱いから“opt-out”するか? 2.継続中の欧州出願 – 統一特許を利用するか? 各国で権利化するか? – 非統一特許を“opt-out”するか? 3.将来の出願 – 各国ルート? 欧州ルート? – 統一特許/非統一特許を“opt-out”するか? 42 戦略の例 • 大手製薬会社 • 価値が高い少数の特許 • 中央部で無効とされるリスクを避けたい? • 新しい裁判システムのリスクを避けたい? • 資金力(いくつかの場合) • EP出願を継続し、かつ他の国にも出願する? 43 戦略の例 • 通信会社 – 価値が低い多数の特許 – 訴訟が大好き – 低コストで出願できることの魅力 – 統一特許に十分な価値を感じる? – 新しい裁判システムを試してみたい? – より多くの統一特許を出願するかも 44 戦略の例 • 中小企業 – 欧州じゅうで出願や訴訟をすることはない – UPCはPCCよりも高額となる可能性が高い – 中小企業は、少数の重要な国に出願するとよい 45 結論 • • • • 欧州は、ワクワクするようなイノベーションの時を迎えてい る 統一特許は、欧州全域での権利保護や訴訟を考える者に とって、明らかにコスト的に優位である 中央部で無効となるリスクを避ける出願人もいるだろう 大方の欧州特許は、UPCからの“bed-in”まで適用除 外されるだろう 46 ご清聴有難うございました。 ご質問をお受けします。 John Dean and Dr Nicholas Jones 47
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