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e-NEXI
2013 年 6 月号
➠特集
NEXI のアフリカ向け引受案件(中長期)の紹介と今後の取り組みについて・・・・・・・・・・1
独立行政法人日本貿易保険 営業第二部
➠カントリーレビュー
ミャンマーの現状と今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
➠NEXI ニュース
2012 年度の保険事故の特色・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
発行元
発行・編集 独立行政法人日本貿易保険(NEXI)
総務部総務・広報グループ
e-NEXI (2013 年 6 月号)
1
NEXI のアフリカ向け引受案件(中長期)の紹介と今後の取り組みについて
独立行政法人 日本貿易保険
営業第二部
6 月 1 日(土)~3 日(月)、横浜にて第 5 回アフリカ開発会議(TICADⅤ)が開催されました。アフリカの 51
ヶ国の首脳が出席した今回の会議において、安倍総理は、政府開発援助を約 1.4 兆円に増額すること
を含め、今後 5 年間で官民合わせて最大 3.2 兆円の支援に取り組む方針を発表しました。また、アフリカ
に進出する日本企業向けの NEXI による貿易・投資保険枠を 20 億ドルに拡大する方針も発表されまし
た。
今月号では、NEXI としてのアフリカ案件への現状の取り組みのご紹介(アフリカ案件の引受実績、残高、
および過去 5 年で引き受けたアフリカ向け中長期保険の事例紹介)と、今後のアフリカ向け案件に対する
取り組みについてお知らせいたします。
1.アフリカ向け案件引受実績および責任残高
NEXI 全体の引受実績・残高に占めるアフリカ向けの割合ですが、2012 年度の引受実績は約 4,472
億円(全体の 5.0%)また、責任残高については約 7,881 億円(全体の 5.9%)と他地域に比して低水準
に留まっています。
地域別引受実績
地域
2008 年度
(単位:百万円)
2009 年度
2010 年度
2011 年度
2012 年度
対前期
構成比(%)
増減率(%)
アジア
4,437,621
3,604,106
4,506,009
4,381,676
4,003,749
44.9
△ 8.6
中東
1,220,586
793,380
711,115
947,276
591,102
6.6
△ 37.6
ヨーロッパ
1,284,625
987,617
965,790
895,278
795,756
8.9
△ 11.1
北米
617,350
842,520
302,121
261,013
293,729
3.3
12.5
中米
1,147,354
1,029,527
1,065,227
1,086,265
903,421
10.1
△ 16.8
南米
844,275
363,382
601,494
825,627
883,707
9.9
7.0
アフリカ
739,050
526,435
469,999
479,742
447,219
5.0
△ 6.8
オセアニア
251,302
463,329
580,589
148,645
833,730
9.3
460.9
国際機関
58,023
106,123
160,254
116,006
167,972
1.9
44.8
(出所)弊社内統計システムデータより集計
1
e-NEXI (2013 年 6 月号)
地域別責任残高
地域
2008 年度末
2
(単位:百万円)
2009 年度末
2010 年度末
2011 年度
2012 年度
対前期
構成比(%)
増減率(%)
アジア
4,852,423
4,305,435
4,826,289
5,223,394
5,591,707
41.9
7.1
中東
3,228,462
2,531,022
2,096,943
1,919,569
1,852,988
13.9
△ 3.5
ヨーロッパ
1,133,428
1,237,234
1,361,156
1,563,996
1,778,936
13.3
13.7
北米
616,611
869,422
840,569
651,853
375,726
2.8
△ 42.4
中米
681,062
735,762
754,325
698,215
620,925
4.6
△ 11.1
南米
788,489
750,377
675,266
824,239
1,050,016
7.9
27.4
アフリカ
796,105
903,281
864,959
890,361
788,076
5.9
△ 11.5
オセアニア
249,099
349,574
744,995
774,131
1,092,066
8.2
41.1
国際機関
95,667
158,757
227,419
218,854
202,893
1.5
△ 7.3
(出所)弊社内統計システムデータより集計
2.過去 5 年のアフリカ向け中長期保険引受案件
次に、NEXI が過去 5 年で引き受けたアフリカ向け中長期保険の事例をご紹介します。2009 年以降、
NEXI は、中長期保険(海外事業資金貸付保険・貿易代金貸付保険(2 年以上)・海外投資保険)
で引き受けた案件は下記の 6 件です。南スーダンやエジプト向け等の大規模な本邦企業による事業
投資案件やプロジェクトファイナンス案件を含む各種アフリカ向け投融資案件に対する貿易保険付保
を通して、本邦法人の海外事業への参画をサポートしております。アフリカ向けの案件数、引受国は依
然として限定的ですが、今後も引き続きアフリカ向けの中長期保険の引受に向けて尽力して参りま
す。
引受年度
事業地国(国カテ)
案件
保険種
保険価額
①
2012 年
モロッコ(D)
石炭焚火力発電所増設プロジェクト
貿易代金貸付保険
約 115 万 Euro
②
2011 年
南スーダン(H)
たばこ製造販売会社の買収案件
海外投資保険
約 450 百万米ドル
③
2011 年
南アフリカ(D)
フェロバナジュームの
海外投資保険
非公表
製造・販売案件
海外事業資金貸付保険
(非常のみ)
④
2011 年
南アフリカ(D)
Eskom 社イングラ揚水発電
プロジェクト
2
貿易代金貸付保険
非公表
e-NEXI (2013 年 6 月号)
⑤
⑥
2010 年
2009 年
エジプト(F)
ナイジェリア(F)
ハイドロクラッカー(水素化分解重油精
貿易代金貸付保険
B/C:約 360 百万米ドル
製設備)建設
海外事業資金貸付保険
海事:約 200 百万米ドル
非鉄金属精錬プラント案件
海外事業資金貸付保険
非公表
以下、引受案件 6 件をご紹介いたします。
①
モロッコ/石炭焚火力発電所増設プロジェクト(2012 年)
本件は、アブダビ国営エネルギー会社がスポンサーとして実施する石炭焚火力発電所増設プロジ
ェクトに対する融資について、貿易代金貸付保険の引受を行っています。三井物産が韓国大宇
建設と共同で発電所の設計・建設を受注しており、本邦からは三菱重工業製の蒸気タービン、I
HI製のボイラー等の主要機器が輸出されます。本件は成長著しい同国電力マーケットに向けた
本邦機器の輸出をファイナンス面より支援するものであり、今後もリニューアブル発電を含め発電
インフラ拡充が計画されている同国における本邦企業の今後の事業活動にも寄与するものです。
②
スーダン・南スーダン/たばこ製造販売会社の買収案件(2011 年)
日本たばこ産業株式会社がオランダ子会社を通じて行う、スーダン共和国及び南スーダン共和
国のたばこ製造販売会社への投資について、海外投資保険の引受を行いました。スーダンでは
20 年以上に及ぶ内戦と包括和平合意に基づく 6 年間の和平プロセスを経て、2011 年 7 月に同
国南部が南スーダン共和国として分離独立し、この取り組みに対して国際社会からも高い評価
を受けているところです。両国とも国内の安定化に基づく投資環境の改善により、今後の経済発
展が期待されています。本件はNEXIとして、和平後のスーダン向けでの初めての案件であり、南
スーダン向けとしては第一号の中長期貿易保険引受案件になります。特に、南スーダンについて
はNEXIとして新たな国作りへの支援のため、OECD諸国の他の貿易保険機関に先駆けて、貿
易保険のカバーを決定したものです。
③
南アフリカ/フェロバナジウム※の製造・販売案件(2011 年)
南アフリカにおいてフェロバナジウムの製造会社への投資案件です(投資先企業は、現在は日本
電工(2010 年に三井物産の持分を取得)及びバンケム社(南ア)の合弁会社)。本件は海外投
資保険の期間満了案件であり(2002 年以来海外投資保険で引き受けている)、今回の期間満
了に伴う再契約に際し、2010 年に三井物産から持分取得した分も併せて保険引受を行いまし
た。
※フェロバナジウムは、バナジウム(元素記号 V、灰色がかった銀白色の金属)と鉄の合金である。
主として製鋼の副原料として鋼の強度、靭性、耐熱性などが向上する。国家備蓄(60 日分)の対
象。わが国で消費されるフェロバナジウムのほとんどが南ア産である。
3
3
e-NEXI (2013 年 6 月号)
④
南アフリカ/Eskom 社イングラ揚水発電プロジェクト(2011 年)
南アフリカ電力公社(Eskom 社)が新設する揚水発電所に富士フォイトハイドロ及び Voith
Siemens Hydro(独)のコンソーシアムが電動発動機の納入及び据付を行うプロジェクトです。本
邦輸出品である発電用ポンプ水車及びモーター発電機 4 基の輸出並びに現地での役務提供の
支払に充当される資金への本邦市中銀行等からの融資に対して、貿易代金貸付保険の引受
を行った案件です。
⑤
エジプト/ハイドロクラッカー(水素化分解重油精製設備)建設(2010 年)
エジプト国営石油公社が主導で行うハイドロクラッカー建設事業について、三井物産株式会社が
同事業の実施会社に対し行う融資に対し、海外事業資金貸付保険の引受を、また、同設備
建設のために事業会社が我が国から購入する残渣油分解装置等の購入代金への本邦市中銀
行等からの融資に対して、貿易代金貸付保険の引受を行った案件です。
⑥
ナイジェリア/非鉄金属精錬プラント案件(2009 年)
ナイジェリアの非鉄金属精錬企業が所有するプラントの生産キャパシティを増強する資金の貸付
に関し、海外事業資金貸付保険を引き受けました。事業会社はナイジェリアの非鉄金属精錬最
大手の企業で、製品の約 9 割をアジア地域に輸出しており、特に再生アルミについては本邦商社
を通じて日本へ輸入され、主に自動車用エンジン部材として使用されています。現在、再生アル
ミは中国からの輸入依存度が高いことから、輸入先国を多様化することが重要な課題となってお
り、本件引受により、日本の製造業への安定的な原材料供給に資することが期待されます。
3.NEXI のアフリカ向け案件への取り組みについて
上述の通り、アフリカ向けの中長期の保険付保実績は、引受案件数、対象国、引受金額等すべての
面において限定的ですが、今回の TICAD V における安倍総理の表明を受けて、今後更に日本企業
のアフリカ向け投資拡大が見込まれるなか、NEXI としては更に積極的なアフリカ向け案件の支援を行う
べく、5 月 27 日に、サブサハラ・アフリカ諸国 19 ヶ国における引受条件の緩和、引受再開等の発表を
いたしました。詳細は弊社ホームページをご参照ください
(http://nexi.go.jp/topics/cover/004794.html)。
引受条件の緩和、引受再開等の対象 19 ヶ国
スーダン、セネガル、ギニア、コートジボワール、トーゴ、ベナン、カメルーン、チャド、コンゴ共和
国、コンゴ民主共和国、ウガンダ、タンザニア、セーシェル、モザンビーク、ジンバブエ、レソト、
ザンビア、コモロ、南スーダン
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e-NEXI (2013 年 6 月号)
NEXI は、資源開発のほか、近年需要の高まりがみられるインフラ開発・整備プロジェクトを含む、多様
な分野における我が国企業のアフリカ向けビジネスの拡大を支援してまいります。政治・経済情勢の安
定により引受を再開する国々を含めて、アフリカ 54 ヶ国のうち 50 ヶ国について、何らかのかたちでの貿易
保険付保による支援が可能となります。
現在、アフリカ向けの中長期案件についての多数のご相談をお寄せいただいております。アフリカ各国の
政治・経済情勢を踏まえると中長期保険の引受に向けてまだまだ課題はあるものの、NEXI は今後とも、
更にアフリカ進出をご検討されている事業者様のご要望に応えるべく、アフリカ向け案件の積極的な引
受に向けた取り組みを継続して参ります。
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カントリーレビュー「ミャンマーの現状と今後の課題」
1. ミャンマー経済概観
ミャンマーでは、2011 年 3 月に長きに亘る軍政から民政移管され、テイン・セイン大統領率いる新政権
が発足した。閣僚や国会議員の多くを軍関係者が占めている等なお民主政治への移行途上にあるが、
多数の政治犯を釈放する等の動きを受け、欧米諸国は経済制裁を段階的に解除し、経済関係の正
常化へ向け大きな進展があった。
社会主義的な経済運営の伝統を有するミャンマー経済においては、今日においてもなお国営企業セク
ターが大きな役割を占めている。財務歳入省によれば、昨年度(2012 年度)の連邦政府の歳入額及び
歳出額は、各々約 10 兆チャット(≒117 億ドル)、約 12 兆チャット(≒140 億ドル)と、各々GDP 比 25%、
30%に達し、歳入の 60%は国営企業からの収入、歳出の 50%は国営企業に対する支出となっている。
財政赤字が約 2 兆チャット(≒23 億ドル)に達するが、その 60%は中銀、残り 40%は銀行による国債引
受によりファイナンスされている模様である。銀行は、国債引受を安全かつ有利な運用商品と位置づけて
いるようである。一方、中銀引受によりインフレが生じていないのは、IMF の指導の下、財政赤字幅そのも
のを GDP の 5%以内に抑制する比較的堅実な財政運営がなされていることに加え、都市部の経済成長
と地方への貨幣経済浸透により、貨幣流通量とともにその需要が拡大過程にあるからであろう。
ミャンマーの一人当たり GDP は、856 ドルにとどまる。産業構成を見ると、農林水産業が GDP の 43%
を産み出し、就業人口の 70%を吸収している。物価指数等の経済指標は農産品の動向に大きく影響さ
れる。
ミャンマー中央銀行によれば、昨年度(2012 年度)は約 9.3 億ドルの貿易黒字を計上し、総合収支で
も約 1.8 億ドルの黒字を確保した模様である。主要輸出品目は天然ガス、翡翠、木材、米、豆類及び
縫製品等であるが、天然ガスと木材の輸出が伸長した。また、主要輸出品はガソリン、石油、重機材、
食用油及び自動車等である。ヤンゴン市内を走る自動車については、日本から輸入された中古車(とい
っても比較的新しくきれいなもの)が大部分を占めている。一方、所得収支はマイナス基調が続いてきた
が、配当金の海外送金や、天然ガス開発における合弁相手方の外資企業への収入分配等が含まれて
いるようである。
外貨準備高は、IMF による厳格な定義に基づけば、輸入カバー月数で 3.5 か月分相当の保有にとどま
る模様である。ミャンマー政府は、さらに外貨準備を積み上げたいとの意向と聞く。ただし、外資の受入拡
大により産業機械等の輸入が増加するものと見込まれ、実際に、ミャンマーチャットの対米ドル相場が、
2012 年 4 月の管理変動相場制導入時に 818 チャット/ドルであったのが本年(2013 年)5 月には 950 チ
ャット/ドル近辺まで下落していることから、今後ともその動向を注視していく必要がある。
2. 外資への開放と法制度の整備
ミャンマー政府は、昨年(2012 年)、前述のとおり管理変動相場制を導入するとともに、いくつかの民間
6
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e-NEXI (2013 年 6 月号)
銀行に対し外貨送金業務の認可を行った。
また、同年(2012 年)11 月に新外国投資法が成立した。新法は、旧外国投資法との比較においては、
法人税の免税期間や土地賃借期間の延長を認める、投資審査期間の最長期間に関する規定や新た
に株式売却を可能とする規定を盛り込む一方で、外国企業による投資が制限または禁止される業種を
新たに示した。
投資環境が改善されたことは疑いないが、規定に曖昧さが残るため、当局の裁量の余地がなお大きい
と思われる。また、新外国投資法の英訳は公表されているが、仮に原文のミャンマー語と英訳との間に齟
齬があればミャンマー語が優先され、その運用規則はミャンマー語のみしか存在しないため、リーガルリスク
は完全には払拭できない。
以下に、新外国投資法に基づきミャンマーへ投資する場合(同法に拠らずに、免税措置等のメリットの
ない通常の会社法上の登録により進出することもできる)における送金リスクについて、筆者が当局及び
銀行関係者の発言から得た心証について記すこととしたい。最終的な投資判断に当たっては、現地弁護
士等専門家のアドバイスを受けることを強くお薦めしたい。
旧外国投資法で必要とされていた、配当金の海外送金に当たっての中銀の許可は新法では不要とさ
れ、ミャンマー投資委員会(MIC)の承認のみを以て送金することが可能となった。外国からの直接投資を
促進したいとの意向に加え、為替レートの一本化により、ミャンマーチャットを実態よりもはるかに割高に評
価した公定レートで換算された多額の外貨が流出する懸念がなくなったことも、その背景にあるようだ。
ただし、旧法時代から中央銀行の形式的な審査手続きを経れば配当送金自体は可能であったようで
あり、中央銀行の手続きが不要となった分だけより早く本国へ送金することが可能になったと考えるべきで
あろう。なお、MIC への外国投資許可申請時に包括的に配当金送金許可を取得することはできず、毎
年度決算毎に法人税等の納税証明等を付して都度 MIC への許可申請を行うことが必要である。
事業撤退に伴う株式譲渡代金の国外送金も認められているが、配当金送金ほどには話は簡単では
ないようである。そもそも株式譲渡の理由に正当性が認められるか、国民の利益が害されないか等の観
点から MIC が審査を行い、免税期間終了前の株式譲渡については、免税措置に見合う利益の返還を
求められる可能性もある。さらに、利益の蓄積により持込資本金よりも大きい海外送金を行う場合には、
中央銀行が外国投資法とは別の枠組みで、マネーロンダリングの可能性がないかという観点から送金取
扱銀行に対し聞き取り調査を行うこともあると聞く。
したがって、新外国投資法に規定のない事実上の規制も存在するようであることから、実例は未だごく
限られると思われるが、過去の事例研究等も入念に行っておくことが必要であろう。
3. ミャンマーのさらなる経済成長に向けた課題
ミャンマーには、既に我が国企業が 104 社(2013 年 5 月末ヤンゴン日本人商工会議所会員数)進出
しているが、製造業は比較的少ない。豊富で安価な労働力、対日感情の良さ、消費市場としての魅力
等多くのメリットを感じながらも、なお政治や法制度リスクが大きく、産業インフラが未整備であり特に電力
供給に不安が大きいということがその理由として挙げられよう。実際、筆者がヤンゴンのあるオフィスを訪問
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e-NEXI (2013 年 6 月号)
した際、瞬間的な停電が 2 度あり、一定の電圧を維持できない場合があることを認識した。特に乾季に
入ると、工業団地でも長時間にわたり電力供給が停止してしまうことがあり、これを自家発電で補うとなる
と通常時の 2 倍以上の発電コストが発生する。これでは、安価な人件費メリットの相当部分を相殺してし
まうことになりかねない。
ミャンマーへの進出ではすでに日本よりも先を行っている韓国企業でも、大型投資が行われているのは
天然ガス等の資源関連分野であり、あとは小規模投資がほとんどである。まずは会社法に基づいて会社
登録を行い、ある程度事業化の目途がたったところで外国投資法に基づき申請をするという方法をとって
いる外資企業もあるようだ。
ミャンマーは IMF との協議により、上限 20 億ドルの非譲許的借入(Non-concessional loan)を行うこと
が認められている。この運用方法については、少なくとも外部に説明できるような形での明確なルール化は
行われていないようであり、未だこれを活用した実績もほとんどないようである。大幅な債務削減が合意さ
れたため、残存する公的債務の負担は決して過大ではないことから、政府保証を積極的に活用する等
により優先的に電力インフラ等の充実を図ることが肝要ではないかと考える。
ハードインフラの整備と併せて、ソフトインフラの整備も重要である。今回、筆者はいくつかの銀行を訪
問したが、窓口に電子端末が置かれていることは少なく、段ボール一箱分はあろうかと思われる札束が机
上に置かれているのを何度も目にした。また、国内業務も海外業務も国営銀行がなお寡占的地位を享
受しており、他方、民間銀行の業務展開には、口座開設や新店開設等で様々な制約が課せられてい
る。インターバンク市場は未だ存在せず、ミャンマーチャットの対ドルレートは、中央銀行が各行と相対で売
買を行うことにより需給調整する中で決定される仕組みとなっている。銀行に対する健全性基準も存在
するが、各行はそもそも自身の財務内容を一般に公開していないことから、預金者や債権者等ステーク
ホルダーの監視に晒されることがないため、有効に機能しているとは言い難い。
中央銀行主導によりインターバンク市場の創設に向け準備作業が行われているが、それは銀行間の
相互チェックシステムを形成することにも繋がり、銀行間の連携と自浄作用を通じた銀行の経営健全化
が促進されよう。また、証券取引所の設立準備も併せて進められているが、直接金融による資金調達機
能のみならず、自身の経営内容を積極的に公表するインセンティブを付与する効果も期待される。ミャン
マーには公認会計士制度もあるようだが、銀行ですら経営数値の公表に積極的でない中で、情報開示
のメリットに気付いてもらうことが、ミャンマーが健全な経済発展を遂げていく上で重要なステップであると感
じている。ミャンマー政府が主導する取り組みと、民間企業セクターにおける意識改革に今後の期待が高
まる。
以 上
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e-NEXI (2013 年 6 月号)
2012年度の保険事故の特色
1.
はじめに
今回は「2012年度の保険事故の特色」についてご紹介いたします。
2012年度の保険事故発生状況は、件数・金額共に対前年度比で増加となりました。一方、保
険金支払については、件数は増えたものの、金額ベースでは減少となりました。
次項から、詳細データを示しながら、具体的にご説明させて頂きます。
2.
2012年度の保険事故発生と保険金支払いの実績
(1) 信用危険/非常危険別の推移
(単位:百万円)
区分
危険区分
2012 年度
前年度比
46,872
3,974
16,262
409.2%
件数
285
133
193
145.1%
金額
11,283
11,333
23,303
205.6%
件数
139
99
522
527.3%
金額合計
58,154
15,307
39,565
258.5%
件数合計
424
232
715
308.2%
金額
4,603
7,017
3,993
56.9%
件数
91
34
57
167.6%
金額
3,972
1,342
424
31.6%
件数
52
15
2
13.3%
金額合計
8,574
8,359
4,416
52.8%
件数合計
143
49
59
120.4%
非常危険事故
信用危険事故
保険金支払
2011 年度
金額
信用危険事故
事故発生
2010 年度
非常危険事故
注:事故発生は、各年度内に受理した危険発生通知・損失発生通知に基づく計数。
2012年度の事故発生状況については、全体(信用危険+非常危険)で715件、395.7億円の
危険発生・損失発生通知書が提出されました。2008年のリーマンショック以降、2010年度まで増加
していたところ、2011年度は一旦減少しましたが、2012年度は欧州通貨危機の影響もあり、件数、
金額ともに増加に転じました。
実際の保険金支払いについては、2012年度は全体で59件、44.2億円を支払いました。前年度
と比較すると、件数は増加したものの、金額ベースでほぼ半減となりました。信用危険事故については、
一件あたりの金額が前年度と比べて少額であったことから、件数は2割増ながら金額では4割減となりま
した。非常危険事故については、遅延しながらも保険金請求に至る前に入金される案件が多かったこと
から、件数、金額ともに対前年度比減となりました。
9
9
e-NEXI (2013 年 6 月号)
<2010年度~2012年度の事故の推移>
(2) 地域別
<2012年度の地域別実績>
(単位:百万円)
事故発生金額
地域
信用危険
保険金支払金額
非常危険
信用危険
非常危険
2,104
1,366
5,408
0
121
1,560
6
0
1,387
707
0
17,471
2
12
0
418
オセアニア
10,696
1
424
0
2,297
0
0
0
合計
16,262
23,303
3,993
424
アジア(中近東を含む)
ヨーロッパ
北・中米
南米
アフリカ
<2012年度の地域別事故発生金額>
①事故発生状況
2012年度の信用危険事故は、アフリカが66%を占めました。これは大型の破産等案件が発生した
ことによるものです。非常危険事故は、南米とアジア(中東)で98%を占めました。南米は「為替取引の
制限」による事故、中東は「その他本邦外事由」による事故でした。
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e-NEXI (2013 年 6 月号)
②保険金支払い状況
2012年度は全体では44.2億円を支払いましたが、その内、アフリカの23.0億円(52%)とヨーロ
ッパの15.6億円(35%)が太宗を占めております。
非常危険事故については、南米で4.2億円(99%)を支払いました。信用危険事故については、ア
フリカの23.0億円(58%)、次いでヨーロッパの15.6億円(40%)を支払いました。アフリカは大型の
破産等事故、ヨーロッパは欧州通貨危機の影響によるものです。
3.
2012年度信用危険事故の事故発生状況の分析
(1) 保険種別
保険種
包括区分
金額(百万円)
企業総合
238
738
11,884
250
556
10
74
0
50
1,165
0
1,295
16,262
一般企業
貿易一般
組合
個別
限度額設定型
-
輸出手形
-
簡易通知型包括
-
再保険(受再)
-
中小企業
-
貿易代金貸付
-
海外投資
-
海外事業資金貸付
-
合計
構成比
1.5%
4.5%
73.1%
1.5%
3.4%
0.1%
0.5%
0.0%
0.3%
7.2%
0.0%
8.0%
100.0%
件数
構成比
13
2
16
36
70
2
15
0
11
4
0
24
193
6.7%
1.0%
8.3%
18.7%
36.3%
1.0%
7.8%
0.0%
5.7%
2.1%
0.0%
12.4%
100.0%
保険種毎の信用危険事故の発生状況は、企業総合保険、組合包括保険等の包括保険が約8割
を占めました。2011年度との対比では、企業総合保険での事故発生金額が減少した一方、組合包
括保険での事故発生金額が増加しました。
(2) バイヤー格付別
危険区分
バイヤ格付ー引受時
GA
GE
EA
信用危険
EF
EC
PU
合計
金額(百万円)
1,362
700
128
1,314
9,838
2,919
16,262
構成比
8.4%
4.3%
0.8%
8.1%
60.5%
18.0%
100.0%
バイヤー数
7
2
5
87
3
29
133
構成比
5.3%
1.5%
3.8%
65.4%
2.3%
21.8%
100%
バイヤー格付別では、件数ベースでみると、EF 格と PU 格が事故発生金額の87%を占めています。
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e-NEXI (2013 年 6 月号)
なお、引受時 EC 格案件で事故が発生していますが、これは全額前受金の案件が船積前事故になっ
たことによるものです。
※バイヤー格付けの内容はこちらのHPを御覧ください
http://www.nexi.go.jp/product/confidence/
(3) てん補範囲別
危険区分
てん補範囲
船積前
信用危険
船積後
その他(※)
合計
金額(百万円)
9,818
5,138
1,305
16,262
構成比
件数
60.4%
31.6%
8.0%
100.0%
構成比
2
165
26
193
1.0%
85.5%
13.5%
100.0%
(※)手形保険及び海外事業資金貸付保険
てん補範囲別では、「船積前」事故が全体の6割を占めています。これは、「船積前」の大型信用事
故が発生したことによります。
4.
おわりに
2012年度における、NEXI の保険金支払い総額は対前年度比でほぼ半分の水準となりました。これ
は、保険事故発生は信用危険・非常危険共に増加したものの、遅延しながらも保険金請求に至る前に
入金される案件が多かったことによります。一方、ベルン・ユニオンの統計においては、保険金支払い総額
は2009年の5,446百万ドルをピークに、2010年は3,656百万ドルに一旦下がったものの、2011
年は3,970百万ドル、2012年は4,826百万ドルと上昇に転じている状況です。2013年度は、こう
した傾向に加え、引き続き緊張の続く中東・北アフリカ情勢や南米における外貨割当状況、世界経済の
動向等により、非常危険、信用危険とも保険事故が発生する可能性があります。
お客様におかれましては、引き続き損失防止・軽減へのご協力をお願いいたします。NEXI としましても、
ご相談に応じておりますので、万が一、保険事故が発生しましたら、下記までご連絡頂きますようお願い
いたします。
また、保険事故等に関連して、保険の内容や保険金請求等の各種手続き等について、ご質問・ご不
明な点等がございましたら、ご遠慮なく NEXI の下記窓口までお問い合わせください。
お問い合わせ先: 日本貿易保険(NEXI)債権業務部 査定回収グループ
TEL:0120-673-094(フリーダイヤル)
以上
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