海外実習報告第 8 日目 9 月 22 日(日) 牛膓健司,藤森颯太 海外実習 9 日目の今日はチャンタブリにある, 王立開発学習センターへ訪問しました。まず,訪 れてすぐに王立開発学習センターについてベスさ んとカイカイさんに説明をして頂きました。この 地域はかつて開発されることなく,マングローブ が多くある場所だったそうです。しかし,入植者 がエビ養殖のために,海沿いのマングローブを 次々と切り倒していってしまいました。それを食 い止めるためにプミポン国王がこの土地を買い取 り,入植者にこの地から出て行ってもらいました。 そして,自然を取り戻す研究をするためにこのセ 王立開発学習センターの試験養殖場 ンターを設立したそうです。 いま存在するエビ養殖場を維持しつつ,自然を取り戻すために,エビ養殖に伴う水の富栄養化や排水 の処理およびマングローブの植林に力を入れていました。マングローブは水の浄化作用があるため,マ ングローブを増やすことは自然を取り戻すことに大きく貢献します。排水は貯水池に貯められ,その後 時間をかけて排水されていきます。しかし,排水が貯められるにつれて富栄養素を多く含む養殖場の汚 泥がたまっていってしまいます。この汚泥を池から取り除くことによって,富栄養化の問題に対処して います。 さらに,取り除いた汚泥は,稲わら 1000 kg に対して 200 kg,さらに尿素を 2 kg 混ぜることによって 堆肥化するため,汚泥の処理も問題ありません。また,これに加えて牡蠣を養殖することによってさら に水の富栄養素を減らしています。こうした活動のために水の浄化が進み,近年ではかつてこの地で見 られたジュゴンの姿が,再び観察されるようになったそうです。 プミポン国王が自然を保護するために,土地を買い取ったという行為に大変敬服しました。また,自 然を取り戻すための様々な工夫に,このセンターで研究をする人々の前向きな姿勢を垣間見ることがで き,私たちも見習わなければいけない姿勢であると考えさせられました。 説明を受けた後は、研究施設や実際にマング ローブの植林を行っている地域を見学しました。 最初に訪れた試験養殖場では牡蠣やサメなどの 様々な海洋生物を飼育し,地域の人や観光客が プロジェクトの内容を見学出来るようになって いました。私たちはこの養殖場で 50 匹のカニを 海に放流するという体験をしました。これには, カニを増やす目的のほかに,生き物を自然に放 すことで自分の中の悪いものを放すという仏教 に基づく文化的な意味も込められているそうで す。 マングローブの林 次に視察したマングローブの林はエビ養殖により富栄養化した灌漑水を入り江内に広げないことを 目的として植林されてきました。ここでは 1 メートル 5000 バーツ(約 15000 円)で作られた遊歩道が 1.7 キロメートル続いていました。林の中ではマングローブの間隔により生育の速さが違っていて,それを 調査・実験していました。これらの情報はマングローブの管理や植林などに利用されます。最後にセン ター内にある水族館を訪問しました。ここでは,近海に住む魚類をはじめとした海の生物を見ることが できました。 一日を通して普段日本では見られない動植物を見ることができ,日本との違いを感じつつも,富栄養 化した水から生態系を守るという考え方などは今年の 6 月に国際ユニットの研修旅行で訪れた厚岸町愛 冠の生態系管理と似ていて驚きました。海外研修も折り返し地点ですが,できるだけたくさんの物事を 吸収して帰りたいと思います。 海外実習報告第 13 日目 9 月 26 日(木) 河原田侑希,江橋純香 9 時にムンスィンにあるタゥイチャイ・エレファントキャンプに到着すると,マネージャーのヨッチ ャイさんよりこちらの施設についてご紹介をして頂きました。このエレファントキャンプは 5 年前に 5 頭のゾウと共に,ゾウの種の保全,その保全活動としての観光,街中で使役されていたゾウたちの保護 を目的として始まりました。現在では 26 頭のゾウが所属しており,このゾウたちのうち 2 頭はショー に,残り 24 頭はトレッキングに仕えています。まだこのキャンプで生まれた個体はいないため,タイ 東部のスリン県より連れて来たものばかりだそうですが,現在妊娠 10 か月の個体がいるそうで,今後 がとても楽しみです。また,一般的なゾウの妊娠期間は 18 から 24 か月と個体差が大きいそうで,とて も驚きました。このキャンプで一日に必要な飼料は 200kg,水は 600L で,ゾウの健康診断は半年おきに 政府から派遣された獣医師を呼んで行っています。飼料にはパイナップルやバナナの実を除いた部分を 与えており,実はお客さんからご褒美としてもらえるようになっています。これらのゾウたちを毎日お 世話するゾウ使いのことを,英語では mahout, タイ語ではクワンと言います。 施設についての紹介の後は,ゾウのショーを 見学し,ほとんどの学生がトレッキングにも参 加しました。ショーには紹介でお伺いした通り 二頭のゾウが登場し,音楽に合わせて踊ったり, 人に帽子を被せてくれたり,マッサージをして くれたり,ととても器用に芸をしていました。 片方のゾウ使いの方は,昔日本のサーカスで活 ショー後のゾウと記念撮影 躍していたそうで日本語が上手でした。 午後からは自然保護区に行く予定でしたが,最近の天候が思わしくなく保護区に入れなくなってしま ったため,レンジャーのブラウさんに宿泊先のマヒドン大学の寮へお越しいただき,保護区についてと, 野生のゾウの保護について,そしてブラウさんのシカの研究についてのお話をお伺いしました。この自 然保護区は五種類の森林地帯でできており,生息できると考えられているゾウは 250 から 300 頭ですが, 実際には 2004 年度のデータでは 176 頭で,20 年前の 50 頭から増加しています。そして現在は保護区と 民家との境界線からゾウが出てしまい,ヒトに 被害が出ているそうです。原因は生息地の減少, 特に乾季の水資源の減少,境界線付近での作物 生産の増加,そして先に述べたゾウの頭数の増 加が挙げられます。この問題の解決策として, ゾウが境界線外に出ないよう壁や溝を作ったり, 水資源の確保のために保護地区内の水たまりか ら泥を取り除いたり,食糧確保のために草に日 光がよく当たるよう工夫したりといった取り組 みが行われています。また,将来はこの自然保 護区付近の国立公園と土地を繋げて,さらにゾ ブラウさんにご挨拶 ウが増加した時の生息地を確保しようと計画されています。 このようにゾウとヒトとの軋轢を解決するために活動されているブラウさんですが,ゾウの生態系の 維持と,周囲の住民との共存を目標に取り組まれているとのことでした。 海外実習報告第 14 日目 9 月 27 日(金) 安東知紗,西上麻里 本日は,プレゼンテーションの日でした。日本で発表内容を決めて調べ準備した内容に,海外実習で 学んだことを取り入れ,学生それぞれが自分の課題について自分なりの提案や解決策を提示しました。 発表会は 9 時から開始され,マヒドン大学の獣医学部の学生や先生方が聴衆でした。なお、プレゼンテ ーションの内容と発表の順番は以下の通りです。 大山 「飼料不足期における飼料給与法についてのタイと日本の比較」 吉村 「有機農業の信憑性」 安東 「タイと日本の稲作の比較」 小川 「家畜の糞尿の可能性」 松下 「タイ米と日本米の調査と比較」 牛膓 「魚醤と健康的な食品」 脇本 「タイにおける栄養バランスと経済の関係」 梶田 「バイオエタノールと食料の競合」 西上 「タイにおけるエビの養殖によるマングローブの破壊と再生」 今村 「年輪を用いた過去の農業気象の推測方法」 野田 「タイと日本のアニマルウェルフェアの現状」 河原田 「デング熱と生物的防御の可能性」 藤森 「タイにおける狂犬病の現状と課題」 江橋 「野生動物の違法取引とその保護」 全員がそれぞれ緊張しながらも,無事 8~10 分間の発表と 2 分間の質問タイムを終えることができま した。 昼食後,そのままマヒドン大学サイヨクキャンパスを訪れました。大学の車に乗って外の風に当たり ながらの移動途中でホーン先生が乗車し,私たちと合流しました。大学内では,野生動物の診療を行っ ている施設へ行き,ビントロングというジャコウネコ科最大の動物や舌が長く主に蟻を捕食するセンザ プレゼン前の小疇先生のあいさつ プレゼン中の学生 ンコウ,雌雄の区別を目の色だけで行うことができるタイハクオウムなど 10 種以上の動物を見させても らいました。家畜を飼育している所もあったのですが,服や髪など体の全てを殺菌しないと入ることが できなかったため,今回は見学することができま せんでした。 6 時半からは,マヒドン大学のみなさんがフェ アウェルパーティーを開いてくださいました。串 焼きやスープ,果物などたくさんの料理があり, どれも美味しくいただきました。地元の小学生に よるタイ音楽の演奏やダンスも披露され,どちら も見ていて楽しくなるものでした。スミス先生や 岸本先生の美声が聴けるという嬉しいできごとも あり,このパーティーは本当に楽しかったです。 企画してくださったマヒドン大学のみなさんあり がとうございました。 地元小学生によるタイ音楽の演奏
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