水産業を取り巻く話題≫ 平成 26 年度 水産白書より

≪水産業を取り巻く話題≫
平成 26 年度 水産白書より
『水産白書』が平成 27 年 5 月に刊行され、その内容として第Ⅰ章では我が国周辺の漁業資源を持続的に利
用していくための課題と対応策が取り上げられている。また、第Ⅱ章には我が国水産業全般をとりまく状況に
ついて、水産業をめぐる国際情勢や東日本大震災からの復興等も含めて掲載されている。
このたびのトピックスでは、水産白書の中から漁業・養殖業の動向について取り上げた。我が国の平成 26 年
度の水産物の自給率(重量ベース)は食用魚介類で 60%、非食用を含む魚介類全体で 54%、海藻類で 66%
になっている。今後の水産物の供給を考える上で、漁業・養殖業の動向が注目される。
①沿岸漁船漁家の経営状況
近年の沿岸漁船漁家の平均漁労所得は 200 万円台の黒字で推移してきたが、平成 25(2013)年の漁労所得
は 190 万円となり 200 万円を割り込んだ。これは、漁獲量が前年と比べて 912kg 減少したことにより漁労収入
が減少したためと考えられる。このような中で、水産加工業や民宿の経営等による漁労外事業所得が事業所
得に占める割合は、平成 18(2006)年の 3%から平成 25(2013)年には 9%に上昇した。
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2015 年 9 月作成 一般財団法人日本水産油脂協会
②漁船漁業を営む会社経営体の経営状況
漁船漁業を営む会社経営体の経営状況をみると、漁業利益の赤字が続いている。平成 25(2013)年度の漁
労収入は前年度並みであったが、漁労支出が 751 万円増加したことから、漁労利益の赤字は前年度より拡大
し 1,860 万円となった。漁労事業での赤字を、水産加工業等の漁労外事業の利益(943 万円)及び事業外利益
(1,088 万円)で埋め合わせる傾向が続いており、経常利益は前年に比べて 1,150 万円少ない 170 万円となっ
た。
③養殖業の経営状況
平成 25(2013)年の海面給餌養殖経営体(個人経営体)の経営状況をみると、漁労収入が 7,339 万円であっ
たのに対し漁労支出が 6,846 万円で、漁労所得は前年よりも 237 万円増加して 493 万円となった。また、漁労
支出の中では、餌代(73.4%)、種苗代(16.5%)が大部分を占めており経営構造は変化していない。(表Ⅱ-1
-5)。
一方、平成 25(2013)年度の海面給餌養殖経営体(会社経営体)の経営状況をみると、漁労売上高が 7,257
万円増加して 2 億 8,285 万円だったのに対し、漁労支出は 6,567 万円増加の 2 億 9,093 万円にとどまり、漁業
利益の赤字幅が前年度より 690 万円縮小し 808 万円の赤字となった。漁労外利益は 1,197 万円と大幅に増加
したため、営業利益は 389 万円の黒字となった。(表Ⅱ-1-6)。
平成 25(2013)年の貝類・藻類養殖等の海面無給餌養殖経営体(個人経営体)の経営状況をみると、漁労所
得が 507 万円で漁労外事業所得を合わせた事業所得は 516 万円であった。(表Ⅱ-1-7)。
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2015 年 9 月作成 一般財団法人日本水産油脂協会
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2015 年 9 月作成 一般財団法人日本水産油脂協会
④魚粉価格の動向
給餌養殖に使用される配合飼料には魚粉が多く使われることから、えさ代が経費の大部分を占める給餌養
殖業にとって、魚粉価格の動向は経営を大きく左右する。養殖業に用いる魚粉の需要は世界的に伸びている
こと、また世界の魚粉生産の約 4 分の 1 を占めるペルーにおいて魚粉の原料として用いられるペルーカタクチ
イワシ(アンチョビー)の資源量が急減し、魚粉生産量も大幅に減少していること等から、魚粉価格は高騰した。
こうした事態に備える「漁業経営セーフティーネット構築事業」が実施されている。
⑤漁業経営体の動向
2013 年漁業センサスによると、平成 25(2013)年における我が国の海面漁業の漁業経営体数は 94,507 経営
体で、平成 20(2008)年と比較して 18%減少した。特に個人経営体が 18%、共同経営体が 20%と大きく減少し
た一方で、会社経営体は 7%の減少にとどまった(図Ⅱ-1-7)。また、養殖業を除く沿岸漁業経営体が平成
20(2008)年と比べて 17%減少したのに対し、中小及び大規模漁業経営体は 13%の減少にとどまっている(図
Ⅱ-1-8)。
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2015 年 9 月作成 一般財団法人日本水産油脂協会
⑥漁業就業者の動向
平成 26(2014)年の我が国の漁業就業者数は 173,030 人で、前年に比べて 4%減少した。
漁業就業者の中で、65 歳以上が占める割合は 35%で前年と同じであったが、44 歳以下の漁業就業者は
42,830 人で前年に比べて 1%増加し、特に 15~24 歳の年齢層では 6%増加した。
漁業経営が厳しい中で漁家子弟が必ずしも漁業に就業するとは限らなくなっているが、その一方で職業・生
活に対する価値観の多様化から、就業の場として漁業が注目されている。
⑦漁業における外国人労働者
多くの遠洋漁業の漁船は、ほとんど日本に帰港せず、主に海外の港で補給や乗組員の交代を行いながら操
業しており、一定の条件を満たした遠洋漁業の漁船には、外国人が乗り組んで操業を行うことが認められてい
る。平成 26(2014)年 12 月末現在で 5,142 人の外国人漁船員が日本漁船に乗り組んでいる。
⑧水産業を支える女性の力
平成 26(2014)年の女性漁業就業者数は 22,580 人で、全体の 13%を占めている。特に、日帰りで操業する
漁業や養殖業では女性が比較的多く就業しているが、女性の漁業就業者についても高齢化が進んでいる。漁
業は海上での長時間作業を伴うため、家事や育児との両立が難しい。また、漁船の居住区画も限られており女
性専用スペースの確保が困難で、肉体労働の占める部分が多く、女性にとっては課題の多い職場となってい
る。女性が漁業現場で活躍するためには、保育所や家事代行の充実等、漁業に従事しながら育児・家事の両
立を図るための支援の充実が課題と考えられる。
一方で、陸上の作業では多くの女性が就業しており、平成 25(2013)年における漁業に付随する陸上作業の
従事者のうち女性が占める割合は 38%、水産加工業従事者では 62%になっており、漁業を支えている。
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2015 年 9 月作成 一般財団法人日本水産油脂協会