Japan Book in Japanese 16

京セラ
会社概要
京セラ株式会社(Kyocera Corporation; 以下
「京セラ」と表記)は、1959年に設立された京
都に本社を置く会社である。同社は携帯電話や
業務用プリンタ、ファインセラミック、電子部
品/デバイス、ソーラー発電システム、家庭用
品など、インダストリアル、オフィス及びプロ
フェッショナル、コンシューマーセグメント向
けに多種多様な製品を提供している。
2006年3月末時点で、京セラグループは子会社
170社、関連会社12社、世界各地に61,468人
の従業員を擁している(関連会社の社員を除
く)。2005年-2006年度の同社の売上高は
101億ドルである。
京セラにはワイヤレス通信事業を扱う2つの部
門がある。米国サンディエゴに本社を置く京
セラワイヤレスコーポレーション(Kyocera
Wireless Corporation; 以下「京セラワイヤレ
京セラの地域別売上高構成比 - 2006年
39%
6%
ス」と表記)と日本に拠点を置く京セラコミュ
ニケーションズ(Kyocera Communications; 以
下「京セラコミュニケーション」と表記)であ
る。
京セラは、革新的な製品を開発するパイオニア
であり、3つの製品セグメント(インダストリ
アル、オフィス/プロフェッショナル、コン
シューマー)で数多くの賞を受賞してきた。
2006年にLaptop誌から「モバイルイノベーショ
ン賞」、PC誌の「編集者賞」については過去
4年で3度受賞している。
16%
インドにおける京セラ
22%
17%
n
n
日本
ヨーロッパ
n
n
米国
その他
n
アジア
出所:京セラ年次報告書
京セラがインド市場に参入したのは2003年で
あり、京セラ・ワイヤレス・インド(Kyocera
Wireless (India) Pvt. Ltd.; 以下「KWI」と
表記)を通じて事業展開してきた。KWIは米国
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サンディエゴに本社を置く京セラワイヤレスの
子会社で、ソフトウェア、ハードウェア、メカ
ニカルエンジニアリング、製品試験/検証、研
究・開発活動を展開している。バンガロールに
デザインセンターがあり、約550人のスタッフ
を雇用している。2005年-2006年度の売上高は
2,200万ドルである。
京セラはこれまでにインドで約1,000万ドルの
投資をしている。同社のR&Dチームは非常に優
秀であり、これまで27件の特許を取得してい
る。同社のインドにおけるCDMA携帯市場のシェ
アは5.2%である。
KWIには本格的な機能を有するエンジニアリン
グ部門があり、同部門で携帯電話の端末を開発
している。
戦略的アライアンス
さらにKWIには、プログラムマネジメント部門
及び独立的な機能を持たせたカスタマーケア事
業組織があり、バンガロールにL4サービスセン
ターを置くほか、インド全土に400ヶ所を超え
る同社認定サービスセンターがある。また、バ
ンガロールの事務所にはCMCE、CMSI、PHSとい
った複数の部門があり、日本の京セラコミュニ
ケーションのエンジニアリングニーズに対応す
るかたちで、PHS電話のアプリケーションソフ
トウェア開発や次世代モバイルネットワーク、
iBurst、その他先進技術の研究開発を行ってい
る。
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KWIはタタ・テレサービス社やリライアンス
社、BSNL社、MTNL社といったインドの大手通信
メーカーに携帯端末を供給している。また同社
では、XLテレコム社と共同で電話機の組み立て
をインド国内で行っている。
成功の要因
KWIは、リライアンス、タタ・テレサービス、
BSNL、MTNLといった通信大手各社と戦略的アラ
イアンスを構築してきた。インドでの事業開始
とともに、BSNLとMTNLの両社と各々80,000台及
び75,000台の携帯端末の受注契約を締結した。
通信大手であるリライアンス社と強力な提携関
係を構築できたことも、インド市場での同社の
ポジショニング強化とつながった。
製品のイノベーション
KWIは、市場に出回っている既存製品よりも、
より多くの特徴や機能を持った革新的な製品を
供給することに重点を置いてきた。また、先進
機能を搭載した電話機の開発にも力を入れてお
り、個人向け携帯情報端末(PDA)やポータブ
ルコンピュータなどの機能を搭載した「京セラ
7135スマートフォン」も開発・発売している。
またKIWIは、プッシュ・ツー・トーク(PTT:
push-to-talk)式ワイヤレス電話をインドに初
めて導入したメーカーであり、タタ・テレサー
ビス社がこの電話機を利用したPTTサービスを
同国で開始した。
経営のベスト・プラクティス
KWIが成功したもうひとつの要因は、京セラの
創始者で名誉会長である稲盛氏の経営哲学にあ
る。彼の哲学が、神への敬拝や自然への敬意、
シンプルで効率的な会計システム、人間本位の
考え方へとつながり、チーム一体となった努力
を促している。文化の違いから発生する問題解
決の過程で培われた忍耐力の強さも、インドで
成功を収めてきた理由のひとつである。.
今後の計画
製品ポートフォリオの強化
現在、京セラではインド国内での市場シェアの
強化に重点を置いている。低価格帯の携帯を導
入する計画を打ち出しており、これにより価格
志向の強いインド市場での対応強化が期待され
る。
さらにKWIでは、WCDMA(広帯域時分割多元接
続)と3Gを電気通信分野における未来の技術と
位置づけ、将来需要に対応できるよう、これら
の技術の開発に取り組んでいる。
KWIは、米国と日本の開発センターから開発業
務を請け負ってきたが、今後はエンジニアリン
グ部門を強化し、京セラの様々な通信事業分野
におけるワイヤレス通信事業の拠点へと発展さ
せて行きたいとしている。
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