1-1 医学論文の種類

LESSON
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医
薬
翻
訳
の
基
礎
知
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1-1 医学論文の種類
PART1
医
学
論
文
に
つ
い
て
医学論文はいくつかの種類に分けられます。
論文の基本である「原著」、一つの症例を研究する「症例報告」、ある医学事項に関して現在
までの知見を概括した「総説」、さらに、研究の優先権を確保したり、新しい発見を速報とし
て伝えるための「短報」「手紙」があります。
それぞれについて詳しくみていきましょう。
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原著 Regular Papers, Original Articles
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総説 Review
原著とは論文の最も基本的なものです。主に文献検証によって自分の研究に関連する
総説は、ある医学事項に関した文献やデータについての概論的な考察です。例えば臨
これまでの知見を考察し、そのうえで著者として独自の結論を出すものです。
床的疾患を取り扱ったものでは、原因・診断・予後・治療法・予防法などについて述べ
通常、医学論文といえばこの原著のことを指します。
られます。
最近、特に興味のもたれている事象が取り上げられ、その事項に対する最新の知見を
原著の種類
全般的に知ることができます。
原著は、大きく「臨床研究 Clinical Investigations and Reports」と「基礎研究 Basic Science Reports」の2種類に分けられます。
短報 Brief Report
「臨床研究」とは、実際の患者を対象に行われる研究です。例えば、A疾患に対して
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B治療法を行った場合のある施設における治療成績についての報告、新薬を人間へ投与
短報は、新しい発見や概念をより早く発表するため、雑誌の速報欄に速報形式で扱わ
してその安全性や効果を確かめるための研究などを指します。それらの結果は、医者が
れます。数ページ程度の短いものですが、原著の形式に従って書かれます。
患者の疾患に対して、数ある治療方針の中から最も望ましいものを選択する際などに使
医学論文では、同様の研究を再度発表することは意味がないため、研究のプライオリ
われます。
ティ(先取権)をとるためにも利用されます。
「基礎研究」とは、主に研究室にて培養細胞や遺伝子、実験動物、また臨床材料(患
者の献体や手術的に得られた標本など)を用いて基礎医学的な手法(生化学、生理学な
手紙 Letters to the Editor
ど)を行う研究のことをいいます。それらの結果が直接治療に活かされることはまれで
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すが、基礎研究の積み重ねやその応用によって、新薬開発へとつながったり、新たな治
大きく2種類に分けられます。
療法が見い出されたりします。
一つは、雑誌に載った論文に対する関連データや反論などを述べたものです。その論
文の掲載からあまり時間がたつとインパクトが少なくなってしまうため、雑誌によって
論文掲載から4週間以内などの規定があります。内容は要点のみで、新たな疾患概念や
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症例報告 Case Report
疾患相互の異同などが主張されます。
症例報告は、今までに報告されていない珍しい臨床例や剖検例、新しく開発した診断
もう一つは、
優先権を確保するための報告で短報に準じたものです。新しい発見でも、
法や治療法を使用した症例(特に新薬の使用例)の経過などを考察を加えて報告するも
原著にするには十分なデータがない場合などに、研究のプライオリティを確立するため
のです。特定疾患・遺伝性疾患の統計などに関する新たな展開を報告するためにも利用
に投稿されます。
されます。
症例報告によって、難治性疾患の新しい診断法や治療法、珍しい合併症などが紹介さ
れることにより、臨床成績の向上につながります。
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1-2 医学論文の構成
PART1
医学論文の種類については述べた通りですが、基本となるのは「原著」と「症例報告」です。
医薬翻訳では、このふたつの論文の構成を理解し確実に訳出できるようになれば、他種の論文
にもほぼ対応できます。ここでその構成を具体的に詳しくみていきます。
※各構成部分の名称は雑誌によって異なりますが、その内容についてはほぼ同じです。
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原著の構成
①表題部分
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表題(タイトル)、著者とその所属、キーワードなどが含まれます。
表題はその論文の顔です。読者がその論文に興味をもつかどうかは表題によってほぼ
決まるので、研究の内容を的確に表すよう慎重に選ばれます。 キーワードは、
図書館などで論文を整理する際にポイントとなる語です。論文検索を
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する利用者は、このキーワードから必要な論文を探し出します。
翻訳の際は、著者名とその所属は原則として英語表記のままにします。
②要旨/抄録/要約 Abstract / Summary
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読者に論文の内容を短い時間で的確に理解させるためのもので、その研究による新し
い発見や重要な所見が強調されます。
ここには、目的・対象・方法・結果・考察が含まれます。項目立てするかどうかは、
各雑誌の投稿規定によって決まっています。
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③緒言/序文/はじめに Introduction
読者に論文の研究目的を理解させるためのもので、
その研究領域に詳しくない人にも
理解できるように書かれます。
その研究領域において今までに知られている事実、その研究に至った経緯、その研究
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で明らかにする点などについて述べられます。
また、研究の仮説をたてる場合はここで述べられます。
④対象と方法 Subjects and Methods
研究の対象、デザイン、使用した器具、測定法などについて詳しく記載されます。正
確な情報を記すことで論文の信頼性に結びつき、また他の研究者が追試する際の助けと
なります。
統計学的分析を行う場合は、その分析方法についても述べます。
⑤結果 Results
研究によって得られたデータが示されます。理解を助けるため、図(写真)figure や
表 table が効果的に使われます。
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