平成21年度学校経営診断の実施結果

平成21年度学校経営診断の実施結果
平成21年9月
都立学校経営支援委員会
は じ め に
東京都教育委員会では、児童・生徒一人一人に対し、豊かな個性や創造性の育成と、希
望進路の実現に向けた教育を行うため、特色ある学校づくりを推進しています。各都立学
校では、都民に信頼され、魅力ある学校づくりをすすめていくために、学校の自律的かつ
質的な向上を図り、取組の内容や成果を都民に説明して、更なる改善に生かしていくこと
が重要です。
各都立学校では、平成13年度から「学校運営連絡協議会」を設置し、学校の運営や教
育内容に関して、保護者や地域住民の意見を的確に反映するとともに、学校自らが家庭や
地域社会に対して積極的に発信するなど、開かれた学校づくりを推進してきました。
平成15年度には、全都立学校に「学校経営計画」及び「学校経営報告」を導入し、学
校の自律的改革の促進と、教育サービスの質的向上を目指した、マネジメント・サイクル
の仕組みを取り入れました。
平成21年3月には、
「都立学校の自己評価指針」を改訂し、経営診断の実施時期を早め
て、診断結果が次年度の学校経営計画策定に、より反映されやすくするなど、改善を行う
とともに、
「学校経営シート」を都立高校で試行し、目指す学校像や、その実現のための目
標、具体的方策及び数値目標をよりわかりやすく都民に公表することとしました。
平成16年度に開始した「学校経営診断」では、各都立学校の教育活動を評価・検証す
るとともに課題や問題点を明らかにし、これを解決するために適切な支援・指導を行って
います。平成18年4月の「東京都学校経営支援センター」設置以降は、重点支援指定校
以外にも診断対象校を拡大して実施してきました。診断も6年目となり、特色ある教育活
動として実践されている「環境教育」などの取組も、学校ごとの新たな項目として診断を
行ったところです。また、従来未診断であった島しょ地域の高校や進学指導重点校につい
ても診断を実施しました。
さらに、特別支援学校においても今年度から診断を試行実施し、学校経営の基盤となる
組織の健全性を評価するとともに、各校の特色ある取組について診断しました。特別支援
学校では、在籍する幼児・児童・生徒の個に応じた教育の推進とともに、地域の特別支援
教育の拠点となる働きが求められている中、診断結果の活用が期待されます。
文部科学省においては、平成19年6月に学校教育法改正、同年10月には学校教育法
施行規則を改正し、学校評価の推進を図るために、自己評価や学校関係者評価の実施・公
表に関する規定が設けられました。
今回の経営診断においても、今まで以上に、ヒアリングや授業参観に外部専門委員にも
加わっていただくことで、各校の取組や成果を一層客観的に評価するとともに、課題やそ
の解決策等を具体的に提示し、
「目指す学校」の実現への支援につながる診断となるよう努
めました。
診断結果について、各校の今後の教育活動に資するとともに、都教育委員会においても
診断結果を踏まえた施策の推進を図り、今後もより一層、学校経営診断を充実させていき
ます。
平 成 2 1 年 9 月
都立学校経営支援委員会
-1-
目
次
はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
目
2
次・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【高等学校】
平成21年度学校経営診断の結果について(高等学校)
・・・・・・・・・・・
6
学校経営診断書
1 農産高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
2 三田高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
3 江戸川高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
4 雪谷高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
5 田柄高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
6 八王子北高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36
7 昭和高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41
8 小金井北高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46
9 清瀬高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51
10 葛飾商業高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56
11 忍岡高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60
12 荒川商業高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64
13 美原高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68
14 第三商業高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72
15 芦花高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76
16 杉並高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 80
17 大島高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84
18 北園高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88
19 北豊島工業高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92
20 大泉桜高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96
21 若葉総合高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100
22 立川高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・104
23 多摩高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・108
24 上水高校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・112
外部専門委員の意見(高等学校)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 119
(用語解説)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 124
-2-
【特別支援学校】
都立特別支援学校における学校経営診断の試行について・・・・・・・・・・・128
25 城南特別支援学校
診断書・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・132
外部専門委員の意見・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・140
26 羽村特別支援学校
診断書・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・144
外部専門委員の意見・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・152
(用語解説)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 154
資料
1 平成21年度学校経営診断実施要綱・・・・・・・・・・・・・・・・158
2 都立学校経営支援委員会委員名簿・・・・・・・・・・・・・・・・・160
3 都立学校経営支援委員会幹事会名簿・・・・・・・・・・・・・・・・161
4 都立学校経営支援委員会学校経営診断部会名簿・・・・・・・・・・・162
5 最近の都における主な教育改革・・・・・・・・・・・・・・・・・・164
6 都立学校における学校経営診断に関するPDCAサイクル・・・・・・165
学校経営支援センター経営支援顧問の意見・・・・・・・・・・・・・・・・・169
-3-
【
高
等
学
校
】
平成21年度学校経営診断の実施結果について(高等学校)
東京都教育委員会は、本年3月に定めた「平成21年度学校経営診断実施要綱」に基づき、平成20年度の
教育活動について、都立学校の学校経営診断を実施しました。ついては、
「平成21年度学校経営診断の実施結
果」として取りまとめました。
1 診断の目的
東京都教育委員会が、都立学校の教育活動を評価・検証し、その結果得られた課題及び問題点を基に個々の
学校に対し適切な支援・指導を行うことで、魅力的な学校づくりに資する。
2 今年度の主な改善点
・ 経営診断の結果を次年度の学校経営計画の策定に反映させるため、経営診断の実施時期を早めた。
・ 従来、重点支援校指定2年目の学校の診断に外部有識者を加えていたが、学校経営診断の専門性と客観性
を担保するために、重点支援校指定2年目以外の対象校についても外部有識者を加えることとし、今年度は、
24校中19校で外部有識者を加えた診断を実施した。
・ 必須の診断項目を従来の7項目から「学習指導」
、「進路指導」
、
「生活指導」
、「特別活動・部活動」
、「学校
経営・組織体制」の5項目とし、新たに学校の特色を取り入れた2項目を含めて診断した。
・ 各校の取組とその成果について、結果だけでなく、取組のプロセスも評価に取り入れた。
3 診断対象校
平成16年度から診断を実施し、平成18年4月には学校経営支援センターの設置に伴い、重点支援校以外
の高校に対しても診断を行い、今年度までに延べ161校で実施した。
《重点支援指定2年目校》
(1) 農産高校
(2) 三田高校
(3) 江戸川高校
(4) 雪谷高校
(6) 八王子北高校 (7) 昭和高校
(8) 小金井北高校 (9) 清瀬高校
《その他の対象校》
(10)葛飾商業高校 (11)忍岡高校
(12)荒川商業高校 (13)美原高校
(15)芦花高校
(16)杉並高校
(17)大島高校
(18)北園高校
(20)大泉桜高校
(21)若葉総合高校 (22)立川高校
(23)多摩高校
(5) 田柄高校
(14)第三商業高校
(19)北豊島工業高校
(24)上水高校
4 診断方法
各学校から提出された学校経営計画や学校経営報告等の書面に基づいて、学校経営支援センターが中心とな
って、学校ごとの特色に応じた診断方針を定め、事前に学校に提示を行った上で、ヒアリング及び授業参観を
実施した。
5 診断結果の概要(高等学校)
「都立学校の自己評価指針」をもとに、
「学習指導」
、
「進路指導」
、
「生活指導」
、
「特別活動・部活動」
、
「学校
経営・組織体制」の5項目に、学校の特色を取り入れた2項目を加えて診断を行った。
各学校の状況を踏まえ、個々の学校ごとに指導内容、教職員の取組、組織運営の在り方について、学校経営
診断書の中で、取組状況とその成果、今後期待される改善の方策について助言を行っている。
(1) 学習指導
(ア)取組成果
・ 生徒の学力の差によらず、各校では、
「基礎・基本の定着」
「家庭学習習慣の定着」
「自学・自習の習
慣の定着」を目的として、補習・補講や宿題等の実施、自習室の充実などに取り組んでいる。
・ 各校では、校内研修を充実させてOJT研修を取り入れたり、授業でICT機器を活用したりする
など、わかりやすい授業づくりに取り組んでいる。
(イ)課題と改善の方策
・ 教科内に留まらず、組織的に教員相互の授業研究を行い、学校全体で授業力向上のための取組を充
実させる必要がある。
-6-
(2) 進路指導
(ア)取組成果
・ 多くの学校で、1年次から3年間を見通したキャリア教育の充実を図り、早期からの目標設定を
可能にさせ、希望進路の実現に向けた学習や規範意識の確立に取り組んでいる。
・ 「進路の手引き」の充実を図ったり、生徒の学力データを蓄積・分析したりして、進路指導に活
用している。
・ 卒業生の追跡調査等を行い、卒業生の動向や離職の原因等の調査結果を生徒の進路選択に当たっ
て適切な助言や指導を行うために役立てている学校もある。
(イ)課題と改善の方策
・ 学年と進路指導部等が連携して、組織的に進路指導に取り組むことが必要である。
・ 進学指導に重点をおいている学校では、難関大学進学等の高い目標を生徒が維持していくための
指導の工夫が必要である。
(3) 生活指導
(ア)取組成果
・ 多くの学校で、毎朝、校門で服装や身だしなみなどについて、継続した指導をしている。
・ 学校によっては、スクールカウンセラーなどを活用して教育相談体制を整えて生徒の心の安定を
図るとともに、授業規律の向上や遅刻防止にも寄与している。
(イ)課題と改善の方策
・ 各校共通の課題として、校内で統一した指導の方針・基準を設けて、全教職員で共通理解を図る
ことが挙げられる。
・ 指導に当たって、生徒に指導の趣旨を理解させることや家庭との連携を強化することが必要であ
る。
(4) 特別活動・部活動
(ア)取組成果
・ 各校では、学校行事や地域活動を生徒主体で企画・運営できるようにし、生徒の自主性と学校へ
の帰属意識を育てる工夫をしている。
・ 部活動で培った活気や集団の力を学習活動にも取り入れ、文武両道を目指す取組を行っている学
校も多くある。
(イ)課題と改善の方策
・ 学校行事や地域活動等を効率的に実施するために内容や実施時期を精選し、生徒のモチベーショ
ンの維持と学習との両立を図るための工夫が必要である。
・ 部活動の指導者育成や、外部指導員の確保など、部活動をより活性化する取組が必要である。
(5) 学校経営・組織体制
(ア)取組成果
・ 多くの学校で、企画調整会議や主幹会議が定期的・機能的に行われ、活性化している。
・ 経営企画室が学校経営に参画し、
経営企画室も一体となった学校経営が行われている学校もある。
(イ)課題と改善の方策
・ より一層、主幹教諭や主任教諭が中心となった学校経営を推進するとともに、新たなミドル・リ
ーダーの育成に取り組む必要がある。
(6) その他、特色のある取組
・ 各校では、国際理解教育の推進、広報活動の充実、設置課程(単位制)等の理解推進、地域との
特色ある交流活動、環境問題に関する取組、環境美化等に関する取組などを行っている。
6 診断結果の活用について
診断を行った各学校においては、学校経営診断書の評価内容を含めた教育活動に関する成果と分析結果を取
りまとめ、学校の自己評価である「学校経営報告(原案)」及び、その報告内容に基づいた、次年度の「学校経
営計画」を策定し、次年度の教育活動における具体的な目標と方策を設定する。
また、診断書で示された課題については、学校経営支援センターが本庁各部と連携しながらきめ細かい支援
を行い、学校の自律的改革に向け改善を図っていく。
-7-
学校経営診断書
(高等学校)
№1農産高校
学
校
経
営
診
断
書
―
農
産
高
校
―
食と緑の文化あふれる学校
所 在 地 葛飾区西亀有1-28-1
創
立 昭和23年4月1日(当時:都立農芸新制高等学校下千葉分校)
診断対象 全日制課程(農業科:園芸デザイン科、食品科)
生 徒 数
20年度
405名(男151名〔37.3%〕、女254名〔62.7%〕)
408名(男151名〔37.0%〕、女257名〔63.0%〕)
20・21年度 食育推進研究指定校(19~20年度)
の主な指定等 重点支援校(20~22年度)
21年度
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 普通教科を基礎・基本とする学力の上に、農業教科による専門的技能を育成し、豊
かな心と健康な体を源とする人格の完成を目指すとともに、農業のもつ優れた教育特性を生かし「食と
緑の文化あふれる学校」を目指しています。落ち着いた学習環境の中で、前向きに学び活動する、自律
心をもった「落ち着いた生徒」を育てることで、保護者に安心を与え、生徒自らが未来を切り開く教育
を推進しています。
■特徴的な取組と成果 平成20年度から重点支援校の指定を受け、
【
「食と緑のアクションプラン」~地
域交流、そして進路を拓く~】をスローガンに、
「食と緑」の地域交流という「人とのふれあい」を通
して、生徒の自己有用感を高め、学習意欲を向上させるよう取り組んでいます。生徒の知識・技能を活
用する取組として「食と緑」の地域交流を実施しています。専門性を生かした地域交流は年間100回
を超え、駅前花壇の整備や地域の祭りにおける生産品販売など、学んだ知識・技能を社会で生かす活動
を展開しています。地域からの交流要請が増え、地域交流の回数は年々増加しています。また、資格取
得への挑戦、部活動での活躍、ボランティア活動への参加等をポイント化し、一定のポイント蓄積で生
徒を表彰する、やる気のポイントリザーブ制度「農産顕彰」を導入することにより、生徒のモチベーシ
ョンを向上させています。
生活指導では、農業教育を通して「落ち着いた生徒」を育てる取組を行っています。農場や食品加工
での実習の趣旨から、服装・頭髪指導を徹底するとともに、手作り弁当を持参する活動では、偏食を防
止し健康づくりを推進しています。
■課題と改善の方策 専門教科の教員を中心として協力体制が整っていますが、学校が目指す「食と緑の
文化あふれる学校」の実現に向けて更に充実を図るためには、各事業に全教職員が主体的に取り組むこ
とが必要です。校長の学校経営計画の下、各教職員が専門性を発揮し、分掌間、教科間の連携を図りな
がら企画・提言できる組織づくりが求められます。また、専門性を生かした資格の取得を推進するため
に、やる気のポイントリザーブ制度「農産顕彰」や地域交流を活用することで、資格取得に挑戦する意
欲につなげる工夫が必要です。
Ⅱ 経営診断結果
100
(図1)授業満足度の推移
(%)
診断ポイント① 学習指導 「基礎学力と専門性」の向上
80
■取組内容と成果 普通教科では、英語で習熟度別授業、
国語、数学、理科、体育、家庭で少人数授業を実施して
います。また、週2回、始業前にプリントを活用した朝
学習を実施し、基礎学力の向上を図っています。専門教
科では、2年次から類型別に専門性を生かした体験的な
学習を進める中で、実習レポートを毎回課すなど、学習
- 11 -
70
60
60
60
18年度
19年度
40
20
0
20年度
№1農産高校
の深化を図っています。さらに、夏季休業日にも総合実習の授業を行い、専門性の向上を図っています。
授業力向上のため、学校運営連絡協議会協議委員に生徒代表を加えて組織した授業評価協議会を実施し、
生徒の声を直に聞きながら授業改善に努め、授業満足度が70%に向上しました(図1)
。また、20
年度から始めたやる気のポイントリザーブ制度「農産顕彰」で生徒の意欲向上を図っています。
■課題と改善の方策 様々な取組で基礎学力の向上に取り組んでいますが、専門的知識や技能をより向上
させるために、下支えとなる基礎学力の更なる定着が求められます。そのためには、長期休業日を活用
した講習に組織的に取り組むなどの工夫が必要です。
また、検定試験の受験者数が伸び悩んでいます(図2)
。
「農産顕彰」のポイント付与の仕方を工夫す
るなどして、受験者数を増加させる必要があります。
140
120
100
80
60
40
20
0
(図2)主な検定試験の受験者数・合格者数の推移
(人)
138
66
40
17
7
3
1
42
6
3
5
8
3
2
2
2
25
27
20
18
19
20
18
19
70
45
56
65
68
71
62
68
28
31
31
32
40
35
34
20
18
19
20
18
19
20
20
(年度)
18
19
園芸検定
造園技術
検定
食生活
アドバイザー
合格者数(下段細字)
漢字検定
19
パソコン検定
20
農業
技術
受験者数(上段太字)
診断ポイント② 進路指導 「目指す進路」の実現
■取組内容と成果 20年度に「進路の手引き」を大幅に改訂しました。求人票の見方、履歴書の書き方、
入社試験への取組などを充実させ、進路説明会やホームルーム活動において重要な資料として活用して
います。全教職員が共通の手引きを持つことで、組織的なきめ細かな進路指導ができるようになりまし
た。また、就職活動開始から就職内定までの一連のマニュアルとしての機能が充実し、生徒がいつでも
活用できる手引きとなっています。
さらに、職業と密接な関係にある日々の専門科目の授業を通してキャリア教育を実践しています。キ
ャリア教育委員会が組織的に北海道酪農実習や産業現場実習などのインターンシップを実施し、生徒の
職業観の育成を図っています。
■課題と改善の方策 インターンシップ参加者が減少傾向にあります(図3)
。インターンシップ参加者
の体験を他の生徒に知らせるなどの工夫をして、参加者を増やす必要があります。
また、卒業時点での進路未決定者が10%を超えている状況にあります(図4)
。生徒の目指す進
路を実現させるため、早期に進路意識を確立させるための取組や目指す進路に対応した講習を組織的
に行うなどの工夫が必要です。さらに、就職では、専門性を生かせる農業系の求人が少ないので、就職
先の更なる開拓が必要です。
(人)
(図3)インターンシップ参加者数の推移
100
35
30
33
80
25
(%)
(図4)卒業生の進路状況の推移
6.7
15
40
10
12
0
0
18年度
19年度
20年度
- 12 -
45.4
42.0
30.0
35.9
その他
就職
専門学校等
短期大学
四年制大学
37.3
20
8
5
12.1
39.6
60
20
13.0
6.7
9.7
8.5
18年度
19年度
3.1
6.9
20年度
3.1
№1農産高校
診断ポイント③ 生活指導 「落ち着いた生徒」の育成
(人)
(図5)遅刻者数(年間70回以上)の変化
■取組内容と成果 朝の校門あいさつ運動を実施するな 40
ど、社会人として必要なマナーの定着に取り組んでい 35
36
34
30
ます。特に身だしなみ指導を徹底し、頭髪違反者ゼロ
25
を実現しています。また、朝学習や校門あいさつ運動 20
を通して遅刻者の減少に取り組みました。その結果、 15
17
年間70回以上(平均週2回以上)の遅刻者数は、1 10
5
8年度34人、19年度36人に対して、20年度は
0
17人と半減させることができました(図5)
。
18年度
19年度
20年度
生徒は落ち着いた学校生活を送っており、地域から
の評判も良いことから、地域交流の依頼が多く、日々の教育活動の成果が現れています。
■課題と改善の方策 学校評価アンケートで、教員が生徒の悩み事の相談に乗っていると感じている生徒
が52%と少ない傾向が見られます。教育相談に関する研修を充実させ、教員の意識と技術を向上させ
ることが必要です。
診断ポイント④ 特別活動・部活動 「生徒の企画力」の育成
■取組内容と成果 生徒会執行部や体育祭・文化祭の実行委
員会が活発に議論し、学校行事の実施に向けて生徒が企画
力を発揮しています。また、20年度は関東地区学校農業
クラブ大会の事務局校として、多くの生徒が大会運営のた
めに活躍しました。
また、年間100回を超える地域交流へも、生徒は積極
的に参加しています。
「亀参まつり」や「葛飾区産業フェア」
では、生徒自らが生産品の販売を直接行い、自分で作った
ものが消費者の手に渡る体験をしました(図6)
。
■課題と改善の方策 生徒の企画力を更に育成するために、
(図6)地域交流で活躍する生徒
現在行われている地域交流活動について、段階的に生徒中
心の活動へ移行し、生徒の企画力を発揮する場を増やすことが必要です。
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 「学校経営参画意識」の醸成
■取組内容と成果 校長のリーダーシップの下、学校のブランド化へ向けて組織的に取り組んでいます。
「農業人・産業人の育成」という学校創立の理念に基づき、
「食と緑の文化あふれる学校」という学校
のビジョンを明確にし、
「食と緑のアクションプラン」を展開しています。地域交流を通した生徒の自
己有用感の育成、専門性の活用・探求、農業に基づく食育の推進という取組の方向性について、教職員
の共通理解が図られています。
経営企画室も学校経営計画を十分に理解し、教員とともに学校経営に積極的に参画しています。
■課題と改善の方策 取組の方向性が教職員に理解されているものの、実践においては、教員個々の力量
に頼っている部分があります。主幹教諭や主任教諭などのミドルリーダーを中心に校内の組織化を推進
し、分掌間、教科間の連携を深める必要があります。
診断ポイント⑥ 健康づくり 「食育」による健康づくり
■取組内容と成果 野菜の生産や食品の加工という日々の授
業を通して食育を推進するとともに、昼食を充実させる取
組として、保健委員会が中心となり、毎月19日を食育の
日と位置付け、弁当持参運動を展開して食事に対する意識
向上を図っています。重点支援予算で校内10箇所に設置
した食育テーブルは、昼食時には多くの生徒に利用され、
食とコミュニケーションの充実を図っています(図7)
。ま
- 13 -
(図7)食育テーブルで昼食をとる生徒
№1農産高校
た、重点支援予算で生徒玄関前に設置された食
(%)
育掲示板を活用し、
生徒が持参したマイ弁当
(手 100
作り弁当)の写真の掲示など食育に関する取組
80
を紹介し、校内での情報共有を図っています。
70
60
さらに、PTAと協力して制作した「農産かあ
62
60
さんの困った時の簡単レシピ」の発行などを通
朝食摂取率
40
マイ弁当持参率
して、マイ弁当持参を推進しています。
35
31
30
20
その結果、
前年度に比べ、
朝食摂取率が8%、
マイ弁当持参率が4%上昇し、食に対する意識
0
18年度
19年度
20年度
が着実に向上しています(図8)
。
■課題と改善の方策 保健委員会を中心に積極的な食育推進がなされていますが、組織的な取組へと広げ
ることで、更なる充実が期待できます。
(図8)食育への取組の成果の変化
診断ポイント⑦ 地域貢献の推進 「食と緑」による地域交流の推進
■取組内容と成果 「花のまちつくり協議会」の活動や亀有
駅前花壇の整備など、専門性を生かした地域緑化運動に地
域住民とともに参加しています。また、地域の祭りでは、
生産品を出品して販売したり、参加者からの質問に答えた
りすることで、生徒は自分が学んだ知識・技術を生かせる
ことを理解し、生徒の自己有用感が醸成されています(図
9)
。このような取組に対し、地域の期待はますます大きく
なり、地域交流の回数は年々増加しています(図10)
。
重点支援予算で整備された「食と緑の交流室」は、地域
交流の打合せや学校説明会など様々な交流活動の場面で活
用されています。交流活動のない日には、授業や生徒
(回)
140
の企画会議でも有効に活用されています。
120
■課題と改善の方策 多くの地域交流を実施しています
100
が、かかわりをもつ教職員が限られており、学校全体
80
としての組織的取組が不十分です。多くの地域交流を
60
維持するとともに質を高める上で、全校で取り組める
40
体制作りをする必要があります。
20
(図9)地域の小学生に指導する生徒
(図10)地域交流の年間実施回数の変化
123
110
80
0
18年度
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
19年度
■重点支援校指定の概要
○20~22年度の取組内容
・会議室(食と緑の交流室)の整備
・生徒による授業評価の調査を専門業者に委託
・東京聖栄大学との高大連携事業を実施
・全生徒対象の進路意識調査を実施
・あいさつ運動を実施
・定期的な頭髪指導を実施
・生徒自らが企画し地域の人々と交流できるイベントを実施
・文化祭で「自作弁当写真展」を実施、
「私の弁当お薦めおかずレシピ」を作成
・地域イベントに参加
・学校経営会議(主幹会議)を開催
- 14 -
20年度
№1農産高校
○主な目標(22年度末まで)
・地域交流を通した学習モチベーション、進路モチベーション、職業観、コミュニケーション能力、
の向上
・普通教科の基礎学力の向上
・農業教科の専門性を深化
・農業教科にかかる資格取得を推進
・
「落ち着いた生徒」を育成
・生徒の企画力向上
・朝食摂取・弁当持参を推進
・教職員の教育理念の共有
■20年度の目標とその成果(概要)
重点目標(抜粋)
生徒による授業満足度65%
学習指導
農業技術検定合格者50人
食生活アドバイザー合格者10人
地域交流回数100回
進路指導
生活指導
特別活動・部活動
健康づくり
募集・広報活動
20人
3人
123回
四年制大学進学者数5人
9人
就職者数30人
53人
あいさつ運動実施日20日
30日
農業クラブ対外行動参加回数4回
5回
校内新聞発行回数16回
14回
朝食摂取率70%
70%
マイ弁当持参率(年1回以上自作弁当を持参する生徒)55%
35%
体験入学・学校説明会来校者数600人
649人
入学者選抜(推薦応募)応募者数130人
156人
入学者選抜(学力検査)応募者数130人
133人
学校経営会議(主幹会議)実施
学校経営・組織体制
達成状況
(20年度末)
70%
学校だより発行12回
0回
10回
PTAメール送信110回
122回
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
今回の学校経営診断により、基礎学力の更なる定着、進路意識の早期確立、就職先の更なる開拓、
教育相談に関する研修の充実、生徒の企画力を発揮する場を増やす、校内の組織化を推進し、分掌間
教科間の連携を深める、等が明らかになった。校長の学校経営計画の下、各教職員が専門性を発揮し、
分掌間、教科間の連携を図りながら企画・提言できる組織づくりと、各事業に全教職員が主体的に取
り組むことが必要である。
今後、自律的改革を一層進めるために、校長自らリーダーシップを発揮し、主幹教諭や主任教諭な
どのミドルリーダーを中心に校内の組織化を推進し、分掌間、教科間の連携を深める必要がある。
(農産高等学校長 佐藤 喜一郎)
- 15 -
№2三田高校
学
校
経
営
診
断
書
―
三
田
高
校
―
こた
難関大学進学者数の増大と、大学進学後の学力の質的保障にまで応える学校づくり
所 在 地 港区三田1-4-46
創
立 大正12年1月15日(当時府立第六高等女学校)
診断対象 全日制課程(普通科)
生 徒 数
20年度
828名(男395名〔47.7%〕、女433名〔52.3%〕)
21年度
833名(男401名〔48.1%〕、女432名〔51.9%〕)
20・21年度 重点支援校(20~22年度)
の主な指定等 進学指導研究協議会参加校
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 全人教育の校訓の下で80余年の歴史を築いてきた伝統校です。大学を中心とした
進学実績や、都立高校初の海外帰国生徒学級設置校としての国際理解教育などに特色があります。平成
16年度に1回目の重点支援校の指定を受け、45分7時間授業や補習・補講の充実、授業規律の確保
などに取り組みました。20年度に再び重点支援校となり、~難関大学進学者数の増大と、大学進学後
の学力の質的保障にまで応える学校づくり~をスローガンに、生徒の学力の向上やキャリア教育の充実
を図っています。
■特徴的な取組と成果 「三田教師道場」として、授業力向上のためのOJT研修に取り組み、教科別教
育課題研修や研究授業を数多く実施しています。また、特色である国際理解教育との関連性をもたせて
キャリア教育を実施し、生徒のキャリア意識の向上を図っています。こうした取組により、早慶上智、
東京理科、MARCHの難関私大の現役合格者数が、20年度は17年度の約2.5倍になるなど、成
果を上げています。
また、入学者選抜は一次で志願倍率が2倍を超えるなど高い水準を維持しています。中学校と連携し
た「中高接続問題検討協議会」を設置し、学習の継続性、連続性について具体的な研究に取り組んでい
ます。
■課題と改善の方策 難関私立大学の合格実績は順調に増加していますが、国公立大学への合格実績は伸
び悩んでいます。理数教育の充実を図るなどの対策が求められます。
19年度から制服を導入し、遅刻や身だしなみなど生活指導全般の強化に取り組んでいますが、遅刻
は依然として少なくありません。教職員が課題意識を共有し、生徒・保護者に周知を図り、学校として
組織的に指導を行っていくことが重要です。
また、特色ある活動である国際理解教育について、単発的な行事だけでなく、各教科の学習など教育
活動全体を通して推進していくことが期待されます。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 生徒の学習意欲を高め、学力を向上させる学習指導
■取組内容と成果 三田高校では、18年度から3年間指定を受けた文部科学省の学力向上拠点形成事業
指定校として、生徒の学力向上のために、生活指導・進路指導も視野に入れた生徒の現状分析と総合的・
系統的指導方法の確立を目指して、校内研修の充実に取り組んできました。20年度は、研究授業を2
4回、校内研修を13回実施し、OJT研修として全ての教科で研究授業を2回、教科別教育課題研修
を1回実施するとともに、コーチングの専門家による講演会を行うなど、多方面から授業力の向上を図
っていることは評価できます。生徒による授業評価の満足度は年々上昇し、20年度の 1 回目は平均8
0.5%、2回目83.2%と良好な水準を保っています。授業力向上のための取組を「三田教師道場」
- 16 -
№2三田高校
として今後も更に進化させていくことが期待されます。
18年度から実施している土曜授業は、保護者からの評価が非常に高く、学習時間の確保と規則正し
い生活習慣の確立に寄与しています。
重点支援予算により映像教材の授業等での活用に必要な機材を購入し、教員が授業で使用するだけで
なく生徒も活用を始めました。また、生徒の自学自習を促す上で長年の懸案であった校内の学習室の整
じゅうき
備については、重点支援予算による什器の整備により、図書室の第2閲覧室を学習室にすることができ
ました。連日満席状態が続いており、更に自律経営推進予算で学習机を増設する予定です。
■課題と改善の方策 20年度実施の生徒生活実態調査によると、家庭学習を全くしない生徒は1年生で
16.9%と、18年度の10.0%から増加しています。2年生は20年度、18年度とも18.1%
と1年生より多くなっています。家庭学習の習慣を身に付けさせ、自学自習の姿勢を定着させるには、
家庭と連携し、適切な質と量の宿題を計画的に付与してその成果を評価する等、より一層の工夫が必要
です。
診断ポイント② 進路指導 キャリア教育の充実と進学実績の向上
■取組内容と成果 進路指導は、
進路指導部が中心になり、
進路情報の提供と相談体制の充実を図っています。入学
時には、進路部による学習ガイダンスを実施し、ノート
の取り方や辞書を使った予習の方法などを具体的に指導
しています。また、キャリアガイダンスやキャンパス見
学会、高大連携による大学の出張授業や、同窓会の会員
が外部講師となってキャリア講演会
(図1)
等を実施し、
生徒のキャリア意識の育成を図っています。
進路実現に向けた長期休業中の講習には、20年度は
延べ2300名を超える生徒が参加しました。教員によ
(図1)キャリア講演会
る進路校内検討会や模試検討会も開催され、生徒の進路
決定への適切な支援を図っています。
(図2)現役難関私大合格者数の推移
(人)
こうした取組により、20年度には、早慶上 140
12 5
智、東京理科、MARCHの難関私大の現役の 120
99
合格が、前年の87名を大幅に上回る125名 100
87
78
となり、17年度との比較では約2.5倍に増
早慶上智
80
70
東京理科
64
加しています(図2)
。
51
MRACH
60
合計
41
また、重点支援予算によりセンター試験リス
40
23
ニング対策用機材を購入し指導を充実したこと
13
16
20
6
4
で、リスニング受験者の得点は全国平均を1
3
1
1
0
7%上回るという成果を挙げています。
17年度
18年度
19年度
20年度
■課題と改善の方策 難関私立大学の現役合格者
数は大きく増加していますが、国公立大学の現役合格者数は20年度7名と、目標とする20名以上と
はまだ開きがあります。センター試験における数学、理科などの得点の伸び悩みがその一因と言えます
が、19年度から化学と地学で導入していたサイエンス・パートナーシップ・プロジェクトを、21年
度からは、生物、地学の科目で実施し、理系の生徒の学習意欲の向上を図っています。自律経営推進予
算においても、21年度重点として理科備品等の充実を図っており、これらを活用した授業の改善によ
る生徒の学力の向上が求められます。
かんよう
診断ポイント③ 生活指導 基本的生活習慣の確立と規範意識の涵養
■取組内容と成果 19年度に入学した生徒から制服を導入し、完成年度となる21年度からは、頭髪、
制服等の身だしなみ指導を本格的に実施しています。制服の導入は90%を超える保護者の支持を得て
おり、身だしなみの指導に対する保護者の満足度は17年度には3割程度であったのが、20年度には
6割近くに達するなど、生活指導の改善は一定の評価をすることができます。
- 17 -
№2三田高校
授業態度はおおむね良好で規律ができており、問題行動による特別指導も少なく、大半の生徒は規範
意識をもって学校生活を送っていると言えます。
■課題と改善の方策 遅刻指導については、
(図3)学年別遅刻者数(年間累計延べ人数)の比較
(人)
前回診断時(17年度)に、当該年度から 12,000
11,156
実施の朝のショートホームルーム等によ 10,000
8,760
り減少の成果があるとされましたが、遅刻
8,000
する生徒は少ないとは言えず、20年度は
5,837
1年
6,000
17年度と比較して、学校全体では減少し
2年
4,035
3,580
4,000
ているものの、1年生では増加しています
3年
2,697
2,028
1,739
計
(図3)。家庭との連携をより緊密にする
2,000
など、指導方法の工夫が求められます。
0
17年度
20年度
前回診断時の指摘である「頭髪や服装に
関する指導については、改善に向けて教員間で共通理解を深め、生徒に指導方針を示し、保護者に対し
て周知するなどの取組が今後求められます」という点については、生活指導部を中心に組織的な取組が
進んできています。しかし、教員間に指導の温度差があることは依然として課題です。遅刻防止週間の
みならず年間を通じた校門指導等を、生活指導部の教員だけではなく、全教員が協力して行うことによ
って、生徒の意識にも変化が現れると期待できます。
診断ポイント④ 特別活動・部活動 自主・自律の精神を育成する部活動、学校行事
■取組内容と成果 特別活動・部活動は、生徒の自発的な活
動を促進し、学校が目標として掲げる自主・自律の精神に
富む人材を育成する上で重要な役割を果たしています。
21年度の部活動加入率は、1年生が86%、2年生が
93%とおおむね高い水準になっています。代表的な学校
行事としては、合唱コンクールが20年度に第30回を数
える伝統行事となり、第九の合唱を行うなど、生徒の自主
的な努力と運営により大きな成果がありました(図4)
。
■課題と改善の方策 部活動については、加入率の高さを生
(図4)合唱コンクール
かして活動を活性化し、更に大会等での具体的な実績を上
げていくことが期待されます。また、学校行事の精選を図り、個々の行事の内容を充実改善していくこ
とが重要です。代表的な行事の一つである白珠祭(文化祭)は、生徒の文化的・学術的な活動を伸ばし
ていくという観点から、実施内容にやや物足りなさが指摘されており、改善の余地があります。
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 危機管理意識をもち、課題に迅速・適切に対応できる組織
■取組内容と成果 学校経営の組織については、企画調整会議のほかに、校長、副校長、主幹教諭、進路
指導主任、1学年主任及び経営企画室長による校務連絡会が原則として週1回開催され、中長期的な課
題についても検討が行われています。前回診断時に、
「教職員の危機感や課題意識が少なく、組織的な
指導が不十分」との指摘がありましたが、教職員の課題意識は高まりつつあり、進学実績など成果が現
れることで教職員が自信をつけ、意欲的になっていることはよい傾向です。校内研修が活発に行われて
いることで、組織的な課題の共有化が進んできています。
■課題と改善の方策 危機管理意識をもち、課題に迅速・適切に対応するには、教職員の意識改革を図る
とともに、経営企画室の参画意識を高めることも重要です。特に、定時制閉課程に伴う施設・設備の維
持管理や物品の整理、学校の安全管理の観点から、今一度校内の点検を行い、危機管理マニュアルを整
備するなどして、組織的な危機管理体制を整備することが求められます。
診断ポイント⑥ 国際理解教育 真の国際人を輩出する国際理解教育の推進
■取組内容と成果 都立高校初の海外帰国生徒学級設置校として、分掌に国際教育部をもち、国際理解教
育を推進しています。総合的な学習の時間を活用し、
「留学生が先生」
「国際理解シンポジウム」
(図5)
「国際理解講演会」など特色ある活動を実施しています。キャリア教育と国際理解教育を関連させて推
- 18 -
№2三田高校
進しており、生徒が進路を考える上でよい影響を与えています。
また、海外留学生徒の派遣及び受け入れを積極的に行って
おり、20年度は 3 名の生徒が 1 年間米国に留学し、1名の
男子生徒を同国から受け入れています。
海外帰国生徒の指導については、1年の国語と数学で個に
応じた指導を実施しており、
「帰国生交流会」や文化祭にお
ける帰国生徒の研究発表などを実施し、帰国生徒の円滑な学
校生活を支援するとともに、一般生徒の異文化理解の促進も
図っています。
第二外国語への興味・関心の喚起にも取り組んでおり、1
年次学校設定科目として「ドイツ語」
「フランス語」
「中国語」
を設置しています。また、放課後の外国語特別クラブとして
(図5)国際理解シンポジウム
「英語」
「スペイン語」
「韓国語」の講座があり、外国人講師による日常会話を中心とした学習に、それ
ぞれの国や言語に関心の強い生徒が熱心に取り組んでいます。
■課題と改善の方策 学校評価において「国際理解教育に満足している。
」と回答した保護者が減少してき
ており、生徒の満足度も約半数にとどまっています。内容の質的改善を図ると同時に、単発的な行事だ
けでなく、各教科の学習など教育活動全体を通して国際理解教育を推進していくことで、真に三田高校
の特色ある取組として生徒・保護者に評価されることが期待できます。
また、国際理解教育の基盤の一つとなる英語教育の充実が求められています。前述したセンター試験
の結果は順調に伸びています。英語検定の合格者数を見ると、17年度の2級8名、準2級14名、計
22名から、20年度は2級19名、準2級14名、計33名と増加していますが、放課後の講習等を
充実することにより、更なる向上が可能と考えられます。
診断ポイント⑦ 中高接続問題 中高の円滑な接続のための教育活動の工夫
■取組内容と成果 三田高校は、21年度入学者選抜において、推薦が5.31倍、一般入試が2.28
倍と、都立高校全体の中でも高い応募倍率を維持しています。学校説明会の参加者数は、20年度に2
574名と前年度から20%以上増加しました。重点支援により購入した大規模な説明会用の機材を活
用し、より見やすく聴き取りやすい説明会を実施することができました。
一方、こうした志願者の期待にこたえ、教育課程において中学校と高校との円滑な接続を図るために、
20年度に「中高接続問題検討協議会」を設置し、中学校と三田高校の教員が協同して学習の継続性、
連続性について具体的な協議・研究を実践する取組を開始しました。これまで募集対策として中学校へ
の出前授業等の取組は多くの学校で実施されてきましたが、教育内容について中学校と高校の間で教員
が組織的に協議・研究を行うことはまだ珍しく、意欲的な取組として評価することができます。
■課題と改善の方策 今後とも高い倍率を維持し、より意欲的な志願者を獲得するためには、教育内容の
改善はもとより、施設・設備の活用を図るとともに校内の美化に努め、三田高校に来訪する方々により
よい印象を与えることも大切です。
また、中高接続問題検討協議会の研究内容を、具体的に教育課程の改善に反映させ、中学校での学習
を踏まえた効果的な指導方法の工夫が、各教科で組織的に実践されることを期待します。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■重点支援校指定の概要
○20~22年度の取組内容
・授業力向上のための全教員での校内研修等
全体の校内研修(継続)に加えての、教科別の研究授業と研修会(20年度~)などの実施により、
こた
授業力向上を図る。また、基礎学力の定着を図り、生徒の進学希望に応えるため、放課後や土曜日、
夏期・冬期・春期の補習・補講(拡充)と家庭における自学自習の推進に取り組む。
- 19 -
№2三田高校
・キャリア教育の充実
職業や大学に関する調べ学習や進路講演、国際理解教育の要素も含めた進路行事、大学見学、高大
連携(継続)などに取り組み、進路への関心を深め、希望進路に挑戦する生徒の意欲向上を図る。
また、センター試験の受験を奨励し(拡充)
、国公立大学進学者の増加を図る。
○主な目標(22年度末まで)
・中学校までに身に付けた生徒の基礎学力の確実な把握に基づいた予備校に頼らない基礎学力定着を
目指す。
・予備校に頼らない進学指導と生徒のキャリア意識の育成を目指す。
・生活管理能力を育成し、自律した判断力を持った生徒を育成する。
・一般入学選抜での応募倍率2.5倍を目指す。
・三田教師道場を実現する。
■20年度の目標とその成果(概要)
国公立大学合格実績
難関私立大学合格実績
大学入試センター試験
募集対策
校内研修の充実
長期休業中講習
重点目標(抜粋)
達成状況(20年度末)
国公立現役で 20 名以上
国公立現役7名
早・慶・上智・東理大・MARCHに現役で
現役難関私大 125 名
100 名以上
英語受験者数で 200 名以上
英語受験者数 209 名
国語 116.2%、英語 114.6%
対全国平均比率を 120%以上
日本史B112.9%、地理B94.3%
(国語、英語、日本史 B、地理 B、現社、政
現社 107.2%、政経 102.4%
経、生物Ⅰ)
生物Ⅰ104.4%、
世界史B107.2%、数学ⅠA101.5%
全国平均を目指す。
数学ⅡB95.2%、物理Ⅰ82.3%
(世界史 B、数学ⅠA・ⅡB、物理Ⅰ、化学Ⅰ)
化学Ⅰ94.1%
学校説明会参加者数 2,574 名
学校説明会参加者数 2,000 名以上
合同説明会等説明件数約 1,000 件
合同説明会等説明件数 1,000 件以上
中学校訪問数 23 区の 7 割以上(290 校前後) 中学校訪問数 206 校
推薦入試の志願者倍率 5.31 倍
推薦入試の志願者倍率5倍以上
一次入試の志願者倍率 2.28 倍
一次入試の志願者倍率2倍以上
校内研修年13回
全体研修4回(奉仕2回、学力2回)
教科研修1回+各教科研究授業2
教科研修1回+各教科研究授業5回
回
生活指導3回、進路指導2回
コーチング専門家による講演
夏期 75 講座、冬期 30 講座
延べ 100 講座以上
計 105 講座
参加生徒 2,500 人程度
参加生徒 2,326 名
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
前回診断時に、希薄な教職員の危機感・課題意識、組織的な取組の弱さを課題として、指摘された
が、進学指導への取組と実績、授業力向上や学習の継続性、連続性の研究をねらいとした三田教師道
場、中高接続問題検討協議会の設置等について評価していただいた。しかし、今年度学校経営計画に
掲げる「学習指導・生活指導・進路指導の一体的指導」のうち、生活指導面での不十分さは指摘の通
りで、今後課題意識を共有化し、組織的取組を強化していく。
また、重点支援校スローガンに掲げる学力について、大学合格のための学力ではなく、進学後も伸
びる確かな学力の育成のために「三田の学び」の構築に、今後も取り組んでいく。
(三田高等学校長 及川 良一)
- 20 -
№3.江戸川高校
学
校
経
営
診
断
書
―
江
戸
川
高
校
―
「学習、行事、部活動の両立」
~江戸高は21世紀を担う若者の力を育みます~
所 在 地 江戸川区松島2-38-1
創
立 昭和15年1月12日
診断対象 全日制課程(普通科)
生 徒 数
20年度
824名(男420名〔51.0%〕、女404名〔49.0%〕)
21年度 835名(男431名〔51.6%〕、女404名〔48.4%〕)
20・21年度 重点支援校(20~22年度)
の主な指定等 スポーツ教育推進校(20年度・21年度)
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 創立69年を迎える普通科の伝統校として「合理性・積極性・自主性・協調性」の4資
とうや
質を備えた人格陶冶を教育目標とし、文武両道を奨励する中で「進路希望が確実に実現できる」学校を目指
しています。
部活動が充実しており、文化・スポーツ等特別推薦を導入して部活動の活性化を図り、平成20年度はス
ポーツ教育推進校にも指定されました。また、生徒による実行委員会主体で運営されている体育祭・文化祭・
合唱祭等の学校行事は伝統的に充実しており、多くの保護者や地域住民の参観を得ています。
こた
保護者や地域からの期待に応える「地域に愛される学校」として文武両道を推進し、学力向上と部活動活
性化に取り組んでいる学校です。
■特徴的な取組と成果 20年度から重点支援校に指定され、全学年での土曜講習、夏季勉強合宿、
「1学年全
員の大学キャンパス見学」の実施等、学力向上と進路希望実現のための取組を着実に進行しています。
20年度の進学実績は国立大学(1名)及びMARCH(16名)の合格者が増加しました。また、スポ
ーツ教育推進校指定による各種の講習や講演会の実施によって部活動がより一層活性化し、多くの運動部が
東京都でベスト16以上の成果をあげています。
■課題と改善の方策 部活動及び体育祭・文化祭・合唱祭等の行事が盛んで生徒が意欲的に取り組んでいます
が、学習との両立を図ることが課題です。土曜講習を組織的に実施するために、学校全体として講習時間と
部活動時間を区分して設定したり、また、各行事の準備期間を短縮し集中して行わせたりするなど、生徒に
学習と部活動及び行事にめりはりを付けて取り組ませることにより文武両道がより一層推進されます。
主幹会議では中期的目標達成のための方策の実施について具体的に協議し、企画調整会議において学校経
営計画に基づいた各分掌や委員会の目標の具現化について年間を通じて進行管理していくことで、より一層
組織的な取組を行うことが期待されます。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 家庭学習習慣の確立による基礎学力の定着
■取組内容と成果 「生徒による授業評価」や「学校評価アンケート」等での「教育活動」に関する調査(以
下、
「教育活動アンケート」
)の結果では、
「家庭学習時間」について「まったくしていない」と回答した生
徒が37%、
「30分程度」と回答した生徒が25%で、合計すると「家庭学習時間1時間以内」の生徒が6
2%という実態がありました。
授業中の小テストや「週末課題」を各教科で実施したり、
「江戸高学力スタンダード」と称した問題集の作
成について検討したりするなどして、家庭学習習慣確立による基礎学力の定着に取り組んでいます。また、
数学Ⅱ、英語Ⅱ、ライティング、家庭基礎においては、習熟度別及び少人数授業を実施してきめ細かな指導
を行っています。
- 21 -
№3.江戸川高校
20年度は、これまで3学年のみで実施していた土曜講習を1・2学年においても実施し、さらに、夏季
休業中には1・2学年対象で2泊3日の「勉強合宿」
(28名参加)を実施するなど、学力向上のための取組
も推進しています。
■課題と改善の方策 「教育活動アンケート」の中では、
「進学に向けた講習に期待する」と回答した保護者が
89%であるのに対して、生徒の講習希望者は32%でした。保護者の大学進学実現への期待は大きいもの
の、生徒が講習よりも部活動を優先している傾向が伺えます。長期休業日中や週休日、また、早朝や放課後
等における講習・補習については、学校として組織的に取り組むことにより学習と部活動の両立がより確立
できます。
基礎学力定着のためには、現在実施している小テストや週末課題を更に意図的・計画的に行い、生徒の学
習意欲を喚起して家庭学習習慣を確立させることが必要です。また、学力向上のためには、授業及び講習な
どにおいて、生徒一人一人の学力に応じた発展的・継続的な指導が望まれます。
「生徒による授業評価アンケート」の結果を十分に分析・検証し、それらを活用した教科内研修・全体研
修、研究授業・研究協議会及び実力テストの校内作成と実施等により、教員の「授業力」向上と指導体制を
構築することで、更に生徒の基礎学力の定着と学力向上が期待できます。
診断ポイント② 進路指導 「特別講座」と「育成事業」によるキャリア教育
■取組内容と成果 「特別講座」として、キャリア教育推進のための様々な取組を積極的に行っています。
「ようこそ先輩事業」では、同窓会と連携して各界で活躍する同窓生を招き、15教室に分かれて1学年
対象の講演会を開催しました。19年度までは2~3名の講師でしたが、20年度は15名の講師によって
講演会を実施することにより、複数の講演が聴取可能となって内容が充実してきています。
「卒業生による進路講話」では、現役大学生(卒業生10人)が進路選択等についての講話を行うなど、
1学年から勤労観・職業観を培い学習意欲を向上させる取組を行っています。さらに、20年度は「1学年
全員の大学キャンパス見学」を実施しました。全員が2つの大学を見学することとし、大学からの説明を受
けるだけでなく、学生食堂で昼食をとりながら学生から「生の声」を聞く活動など、大学進学への目的意識
をもたせる具体的な取組を行っています。
(図1)センター試験出願者数とセンター試験での大学合格者数
その他、四年制大学・短期大学の教授等による「分野
(人)
180
161
別模擬授業」や卒業生による「進路体験発表会」
、外部講
160
152
師による「文化講演会」等を開催し、進路部が意図的・
140
120
計画的なキャリア教育を推進しています。さらに、塾関
出願数
102
114
合格者数
100
係者による運動部部員対象
「勉強の仕方」
講座を開催し、
71
80
70
運動部加入生徒が「どのようにして学習と部活動を両立
60
41
55
するか」についてなど、文武両道を推進する取組も行っ
40
20
ています。一方、保護者対象の「進路講演会」や「進学
0
(受験年度)
のお金講座」等を開催して保護者へ進学についての理解
17年度
18年度
19年度
20年度
啓発を行い、保護者と学校が一体となってキャリア教育
と進路指導を推進しています。
(図2)MARCH現役合格者数
18
(人)
進路部が中心となって作成している「進路資料
(データ
16
2
編)」と「進路の手引き(解説編)」は、詳細な現状分析に
14
1
明治
2
6
青山学院
2
12
1
基づいた内容となっており、
進路指導に役立っています。
立教
2
10
中央
1
進路実績としては、センター試験出願者が増加すると
3
5
法政
2
8
4
1
ともに(図1)
、20年度は一般入試で国立大学に1名、
6
1
11
2
1
9
2
4
MARCHに16名(図2)
、日東駒専に60名(昨年6
7
2
2
4
3
1名)と上位大学への進学者が増加しています。
2
0
専門学校進学者は48名(17%)で、「専門学校進学
15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 (受験年度)
者20%以内」の目標を達成し、
安易に専門学校進学を選
択する生徒が減少してきています。
「育成事業」として、外部の各種講座への参加を推奨する取組も行っています。全国から選ばれた100
人の高校生と一緒に「森の名手・名人」を訪ねて「聞き書き」を行う「森の聞き書き甲子園」
、
「一日新聞記
- 22 -
№3.江戸川高校
者」
、
「高校生心のサミット」
、
「江戸川区青少年の翼」への参加を呼びかけています。江戸川区主催の海外派
遣事業である「江戸川区青少年の翼」には、江戸川高校の推薦により1名が参加しています。
■課題と改善の方策 「1学年全員の大学キャンパス見学」では、
「早稲田大学・明治大学」コースを希望した
生徒が最も多く49名でした。卒業後の進路としてそれらの大学への進学を実現させるためには、キャリア
教育の充実によって生徒が自らの人生設計を行い、学習と部活動及び行事にめりはりを付けてバランス良く
取り組むことが求められます。そのためには、学校として意図的に学校生活の時間帯を学習と部活動及び行
事に区分して、生徒の学習意欲の喚起と学習時間の確保を図ることが必要です。
診断ポイント③ 生活指導 生徒の実行委員会主体による学校行事と組織的な生活指導
■取組内容と成果 「教育活動アンケート」では、生徒の91%、保護者の96%、教員の89%、地域の6
6%が「行事が充実している」と回答しており、体育祭・文化祭・合唱祭等の学校行事への満足度が高いこ
とが分かります。生活指導部は、生徒が主体となって学校行事を企画・運営できるよう指導し、実行委員会
主体による江戸川高校の伝統行事に一人一人の生徒が生き生きと参加しています。地域や保護者からの期待
も大きく、体育祭900名、文化祭2986名、合唱祭156名の参観者があり「地域に愛される」行事と
なっています。
また、基本的生活習慣確立のための取組として、早朝や昼休みの校門指導や、学年指導・生活指導部指導・
校長指導と段階的な遅刻指導を実施しています。頭髪指導についても、定期考査中に全教員で確認して、そ
の後、個別の指導を行うなど組織的に取り組んでいます。
■課題と改善の方策 早朝や放課後及び週休日や休日にも行事にかかわる時間が伝統的に長く、学習意欲の減
退や家庭学習時間の減少にもつながっています。各行事の教育的目的を再確認し、教育活動の一環として行
事を明確に位置付け、学習との切り替えができるよう指導していくことが求められます。
診断ポイント④ 特別活動・部活動 スポーツ教育推進校としての取組
■ 取組内容と成果 部活動加入率は85%で、
「教育活動アンケート」
では教員の91%、保護者の84%、生徒の69%が「熱心に取り組
んでいる」と回答しています。
20年度は東京都教育委員会からスポーツ教育推進校に指定され、
運動部を中心に様々な講習会を実施するなど活性化の取組を推進して
います。国立スポーツ科学センター研究員による「栄養指導講習会」
(243名)
、
「熱中症予防講習会」
(170名)
、
「スポーツマッサー
ジ講習会」
(120名)
、
「テーピング講習会」
(114名)
、
「トレーニ
ング講習会」
(図3)
(118名)等、多くの生徒の参加で実施されま
(図3)トレーニング講習会
した。
東京都教育委員会によるアスリート派遣事業では、バスケットボー
ル部にアトランタ・アテネ両オリンピック出場の大山妙子選手が、ソ
フトボール部には北京オリンピック金メダリストの上野由岐子選手が
来校して指導を行いました(図4)
。上野選手来校時には、近隣の中
学生17校267名、高校生20校210名、江戸川高校生徒278
名、保護者100名の参加があり、部活動振興と生徒の部活動意欲向
上につながりました。
主な大会成績としては、陸上部都大会個人800メートル3位・関
(図4)ソフトボール上野選手来校
東大会出場、ソフトボール部インターハイ都予選及び関東大会都予選ベスト16、女子バスケットボール部
関東大会都予選ベスト16・インターハイ都予選7位・A支部大会優勝、全国高校野球選手権大会東東京予
選ベスト16、女子バレーボール部春季リーグ優勝・Ⅰ部大会都ベスト32、サッカー部インターハイ都予
選ベスト32、男子ハンドボール部墨東大会ベスト8などがあり、多くの運動部が東京都で上位に進出して
います。文化部では、書道部が「東京都高等学校文化連盟書道展」教育委員会賞受賞、
「成田山全国競書大会」
特選、
「学芸書道全国展」硯心会理事長賞を受賞しています。
■課題と改善の方策 スポーツ教育推進校として活性化した各部活動で得られた生徒一人一人の
「集中力」
を、
- 23 -
№3.江戸川高校
将来の進路を見据えた学習活動に生かすことが必要です。そのためには、生活指導部を中心に顧問会議や部
長会を常時開催して、土曜日や早朝練習及び考査前の部活動の在り方などについて共通理解を図ることが大
切です。学習時間の確保や土曜講習参加に組織的に取り組み、めりはりのある学校生活を定着させることが
求められます。
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 企画調整会議や主幹会議等による組織的な学校経営
■取組内容と成果 重点支援応募時には、
「江戸高スタンダードプロジェクト」を立ち上げ、企画調整会議を中
心に中期的視野に立った江戸川高校の取組について組織的に検討を行いました。また、70周年事業に向け
て、企画調整会議が中心となり準備を進めています。主幹会議についても定例化の動きが出てきており、組
織的な学校運営が活性化しつつあります。
■課題と改善の方策 「奉仕検討委員会」における取組など、各分掌や委員会では個々に充実した取組を行って
いますが、20年度に重点支援校に指定され、学校全体として「文武両道の充実」を更に推進するためには、
各分掌や委員会の取組を企画調整会議や主幹会議等で共有し、より組織的な取組とすることが課題です。
主幹会議を定例化して中期的な戦略会議として機能させたり、学校経営計画に基づいて各分掌や委員会の
目標を具現化するために企画調整会議で年間を通じて進行管理をしていくことで、より一層組織的な学校経
営を行うことが期待できます。
診断ポイント⑥ 奉仕 江戸川区と連携した「奉仕」の充実
■取組内容と成果 教科「奉仕」は1学年の「総合的な学習の時間」に
より代替して行われていますが、18年度から「奉仕検討委員会」に
よって内容が検討され組織的に取り組んでいます。この結果、江戸川
区文化共育部健全育成課、江戸川区教育委員会と連携した地域密着型
の奉仕体験活動が実施されました。
20年度は体験活動場所も増え、共育プラザ6箇所(図5)
、保育
園11園、老人ホーム6箇所、すくすくスクール11箇所、地域清掃、
(図5)奉仕体験活動(共育プラザ)
図書館3館の6ブロックがあり、280名の生徒が班に分かれて奉仕
体験活動を行っています。年度末には「まとめの冊子」を作成し、江戸川区の関係者出席のもと成果発表会
を実施することで「奉仕」の内容が一層充実しました。また、
「体験活動の受け入れ先アンケート」や「生
徒アンケート」を基にして「実施報告書」作成し、成果を検証しています。
■課題と改善の方策 奉仕体験活動後の「受け入れ先及び生徒アンケート」等による「実施報告書」によると、
概ね地域と連携した充実した内容となっていることが分かります。
「奉仕のねらい」や受入先の状況について
事前指導を徹底し、また、受入先の実状に合わせた体験活動の内容及び実施日時の設定を行うことにより、
更に内容の充実が期待できます。
診断ポイント⑦ 広報・募集対策 「地域に愛され、支持される」広報・募集活動
■取組内容と成果 「江戸高ニュース」を年2回発行し、江戸川区・江東区・葛飾区の全中学校に配布してい
ます。また、20年度は「学校紹介DVD」を完成させ、学校説明会等で活用しました。1年生による近隣
中学校への「母校訪問」や「中学校教員対象説明会」
(6中学・6名参加)も実施しています。
19年度から江戸川高校を会場として、江戸川区内の都立高校
による合同説明会を開催しています。また、学校独自の学校説明
会(940名)
(図6)や文化祭時の個別相談会(65名)などを
企画開催し、合計1554名の参加者があるなど広報・募集活動
が充実しています。
(図6)学校説明会参加者数
(人)
1000
940
900
800
800
■課題と改善の方策 学校独自の学校説明会は年1回で、
「体験部活
動」や「体験授業」も同日に開催されています。学校説明会の複
数回開催や「学校見学会」の実施、また、体験部活動を独立させ
て実施するなど、更に組織的・計画的に広報・募集活動を行うこ
とが望まれます。
700
690
720
600
565
500
16年度 17年度
- 24 -
18年度 19年度 20年度
№3.江戸川高校
また、塾対象の説明会を開催したり、中学校教員対象説明会については多くの中学校の教員が参加できる
ように企画の改善を図るなど、広報・募集活動を更に充実させることで、応募倍率の向上が期待できます。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■重点支援校指定の概要
○20~22年度の取組内容
・
「江戸高学力スタンタード」
(国語・数学・英語の3教科)の完成と活用
・長期休業日、週休日等の補習・補講の組織的な実施と勉強合宿の拡大実施(80人)
・部活動加入率85%(1学年加入率100%)
、文化・スポーツ等特別推薦の継続
・生徒個人の学習状況と進路希望等のデータ化による進路指導の充実
・特別講座(文・理・スポーツ系)の拡充
○主な目標(22年度末まで)
・国公立大学5人、四年制大学進学者174人(62%)
、センター試験利用合格者80人
・補習、補講講座合計160講座
・部活動加入率85%、関東大会以上出場部数3部
・学校説明会来校者数1500人、行事等の来校者数4000人
■20年度の目標とその成果(概要)
重点目標(抜粋)
① 文武両道の充実
(難関大学への挑戦)
②教育活動の積極的PR
③進学実績の向上
④地域・保護者に愛される学校
達成状況(20年度末)
大学(四年制大学・短期大学)65.6%
大学(四年制大学・短期大学)
(四年制大学 61.9%・短期大学 3.7%)
進学率64%以上
センター試験受験者161名
センター入試受験者の増加
(昨年度 152 名)
センター試験受験者平均点の向上
センター試験利用合格者
71名
得点率平均60%
自己採点得点率平均
58.5%
一次募集1.50倍
推薦4.0倍
学校説明会1554名
江戸川高校説明会
940名
合同説明会(墨田川)
244名
合同説明会(新宿)
75名
入学者選抜応募倍率1.3倍以上
江戸川地区合同説明会
230名
学校説明会参加者2000名以上
文化祭時個別相談会
65名
体験授業・部活動
106名
授業公開
283名
学校見学 (授業日)
1705名
(夏季休業中)1456名
大学(四年制大学・短期大学)65.6%
(四年制大学 61.9%・短期大学 3.7%)
大学(四年制大学・短期大学)
国公立
1名
進学率64%以上
MARCH
16名
日東駒専
60名
体育祭来校者
1500名以上
体育祭来校者
900名
文化祭来校者
2500名以上
文化祭来校者
2986名
合唱祭来校者
100名以上
合唱祭
156名
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
今回の学校経営診断では、客観的な視点による総合的評価を受けることができた。その中で本校が目指
している「文武両道を奨励する中で進路希望が確実に実現できる」学校づくりに対する現段階での成果と
課題をより鮮明に把握することができた。
特に、特別活動と学習時間の「切り替えと確保」に向けた取組は、より具体的な形で進めたいと考える。
また、今後とも様々な取組を実践する中で、より組織的な学校経営を確立し、目指す学校の具現化に向
けて努力する所存である。
(江戸川高等学校長 奈良 隆)
- 25 -
№4雪谷高校
学
校
経
営
診
断
書
―
雪
谷
高
校
―
「鍛え合う未来のスペシャリスト」
~知力、体力、精神力を本気で鍛え進路実現できる雪谷~
所 在 地 大田区久が原1-14-1
創
立
大正2年4月1日
(当時:東京府荏原郡調布村立調布女子実業補習学校)
診断対象 全日制課程(普通科)
生 徒 数
20年度
722名(男343名〔47.5%〕、女379名〔52.5%〕)
21年度
722名(男359名〔49.7%〕、女363名〔50.3%〕)
20・21年度 重点支援校(20~22年度)
の主な指定等 部活動推進指定校(20・21年度)
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 豊かでたくましい人間の育成を目指し、
「文武両道」
の教育を実践している学校です。
4年後には創立100周年を迎えます。生徒は、学習と部活動及び学校行事に意欲的に取り組んでおり、
生徒、保護者ともに学校生活への満足度が高い学校です。
平成20年度は重点支援校及び部活動推進指定校に指定され、「鍛え合う未来のスペシャリス
ト ~知力・体力・精神力を本気で鍛え進路実現できる雪谷」のスローガンのもと、名実ともに
中堅上位の進学校となることを目指しています。
■特徴的な取組と成果 重点支援校として大学への進学実績の向上に取り組み、3年生の63.7%の生
徒が四年制大学に進学しました。また、部活動推進指定校として部活動の充実にも取り組み、在校生の
86%の生徒が部活動に加入して活発に活動しました。さらに、頭髪に関する指導体制を新たに構築す
るなど、生徒の基本的生活習慣やマナーについても指導を続けています。
20年度は、進路指導や生活指導の取組を通して、年度の後半から学校改革が急展開しました。まさ
に学校経営や教育活動における教職員間の共通理解が深まった1年間であったと言えます。今後、具体
的な成果を上げていくことが期待されます。
■課題と改善の方策 20年度に整備した学校経営や教育活動の手立てを、今後、確実に実行していくこ
とが重要です。
たとえば、四年制大学及び短期大学への進学実績を向上させるため、生徒の学力データに基づく進路
指導を行ったり、頭髪や服装、あるいは基本的な生活習慣の指導を更に充実させたりすることが必要で
す。また、地域の方々から理解を得ながら、都大会上位入賞などを目指して、部活動をより一層活性化
させることも必要です。さらに、入学者選抜の応募倍率の安定化と上昇のため、教職員全員が一体とな
って雪谷高校の良さを積極的かつ組織的に外部に発信していくことも重要です。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 生徒の進路実現のための教科指導体制と授業改善
■取組内容と成果 授業改善及び校内研修の推進と生徒の家庭学習時間の増加に取り組みました。
授業改善及び校内研修については、各教科が「生徒による授業評価」の結果に基づいて、教科指導に
おける課題と改善策とについて検討し、年2回校内研修会を実施しました。また、初任者研修や2・3
年次授業研究における研究授業の参観をきっかけに、一部の教科の教員が自主的に授業を相互に参観し
たりするなど、より発展的な授業を行おうとする雰囲気が教員間に醸成され始めました。また、重点支
援などにより、若手教員を先進的な進学指導を行っている他県の学校4校に派遣し、視察内容を年4回
の校内研修会において報告させました。
- 26 -
№4雪谷高校
家庭学習時間を増加させることについては、授業の予習
(図1) 自習室使用者数
(人)
300
284
となる宿題を金曜日に出題して月曜日に提出させたり、シ
269
ョート・ホームルームにおいて英語の小テストを実施した
250
りして、
生徒が家庭で学習に取り組むきっかけとしました。
200
また、20年12月に自習室を開設したことは、生徒の自
179
学自習の時間と場所とを学校が確保するという観点から評
150
価できます(図1)
。自習室については生徒や保護者の評価
97
100
も高く、21年度からは平日の開放時間を延長するととも
に、土曜日、日曜日及び祝日も開放することとしました。
48
50
29
■課題と改善の方策 授業改善の気運の高まりを更に加速さ
せ、生徒の実態に応じた組織的な指導体制を速やかに構築
0
20年
21年
21年
21年
21年
21年
12月
1月
2月
3月
4月
5月
し、実施することが急務です。
そのためには、校内研修会において予習及び復習が不可欠な授業の在り方や宿題及び小テストの効果
的な活用などについて協議したり、
「生徒による授業評価」の結果に基づいた授業改善策を教科会議に
おいて検討し、校内研修を通じて雪谷高校の授業の実態と課題とについて教員全員で共通理解した上で、
生徒を「鍛え進路実現できる雪谷」高校のシラバスを完成させたりすることが考えられます。
また、教務部が中心となって、学習と部活動との両立を図りながら、より組織的な講習・補習体制を
構築するとともに、卒業生である大学生を活用した個別的な学習支援であるサマースクールの実施計画
を改善したりすることも必要です。生徒の学力に応じた習熟度別授業の導入も方策の一つとして考えら
れます。
診断ポイント② 進路指導 3 年間の計画的な進路指導と進路実績
■取組内容と成果 各学年が、生徒各自が入学時から3年間を通じて学習や進路に関する情報を記録する
「進路カルテ」を活用して指導を進めてきました。
(%)
(図2) 卒業生の進路
70.0
ところが、6月の進路指導行事に向けて、第2学年と
へい
63.6
63.7
第3学年とがそれぞれ別々に同一の外部講師の招聘を計
60.0
56.1
画するという事態が起こり、組織的な進路指導体制が整
54.3
っていないことがわかりました。このことを受け、9月
50.0
47.1
からは進路指導部が中心となって拡大進路指導部会を開
四年制大学
短期大学
専門学校
催して、3年生に対する進路指導体制を点検し、生徒一
40.0
就職
その他
人一人の志望、適性及び能力などに応じて高い目標を設
29.2
30.0
定させ、教員全員で指導に取り組みました。その結果、
20年度の進路状況は19年度とほぼ同様の結果となり
20.3
18.8
20.0
16.7
14.9
ました(図2)
。
17.2
16.3
16.3
12.4
11.0
また、これまで学年ごとに作成していた進路指導計画
10.0
7.3
6.7
7.5
5.6
3.8
を校内で統一することについても、同様に拡大進路指導
3.1
2.1
0.9
1.7
3.8
0.0
部会において進路指導部と各学年とが協議を重ねた結果、
16年度
17年度
18年度
19年度
20年度
3年間を見通した計画的かつ系統的な進路指導計画を策
定することができ、21年度から実施することとしました。
さらに、重点支援により、大学別入試問題集を新たに60冊購入して進路指導室の所蔵冊数を120
冊に倍増させたり、大学受験のための映像教材を購入して生徒に貸し出したり、校内の進路情報コーナ
ーの掲示面積を7倍に拡大したりしました。12月には校内の1室を41ブースを備える自習室に改修
して、生徒の自学自習を支える具体的な環境整備にも取り組みました。
■課題と改善の方策 四年制大学及び短期大学への進学実績を向上させるとともに、難関校の合格者を増
加させるため、進路指導の在り方を経験主義から学力データの分析に基づく指導に移行させることが必
要です。
そのためには、情報科の教員が中心となって大学入試センター試験の得点状況や模擬試験の結果をデ
ータとして確実に管理及び分析するとともに、分析結果を教科会議や校内研修会、あるいは生徒の面談
指導に活用するなどして、進路指導部と各学年、更に各教科が連携して進路指導を進めていくことが重
- 27 -
№4雪谷高校
要です。
診断ポイント③ 生活指導 基本的な生活習慣とマナーの確立
■取組内容と成果 校長のリーダーシップのもと、20年10月から生活指導部が中心となって頭髪に関
する指導の在り方について校内で検討を続けてきました。その結果、教員全員が一致して指導すること
ができる「頭髪指導マニュアル」を策定することができ、21年度から頭髪の染色や加工を禁止する指
導に取り組むこととしました。このことは、創立100周年に向けて制服の改定を検討していることと
合わせ、雪谷高校の生徒に品位ある服装やマナーを指導していく上で大いに成果が期待できます。
また、登下校において、生徒が道路の道幅を占拠したり、自転車を二人乗りしたりしていることにつ
いて地域の方々から苦情が寄せられました。校長が自ら対応するとともに、生活指導部が中心となって
登下校指導や交通マナー指導、あるいは駐輪指導に取り組んだ結果、生徒の登下校の状況が改善され、
地域の方々の理解を得ることができました。
■課題と改善の方策 21年度から取り組む頭髪指導を円滑に推進するため、拡大生活指導部会などを定
例的に実施するなどして、生活指導部と各学年とが連携を更に強化するとともに、その他の教員も全員
が一丸となって、ホームルームや授業、あるいは部活動を通じて共通に指導していくことが必要です。
診断ポイント④ 学校経営・組織体制 分掌間の連携強化による組織的な指導体制の確立
■取組内容と成果 主幹教諭及び主任を中心とした組織的な取組を推進するとともに、教員全員に学校課
題を意識させるため、企画調整会議の記録を迅速に教職員全員に配布して情報の共有化と職員会議の円
滑な進行とを図ること、週1回「重点支援プロジェクト」を開催して管理職と各主任とが重点支援校と
しての取組の進行管理に当たること、校長、全日制副校長、定時制副校長、経営企画室長による「管室
会議」を月1回開催して教育活動及び学校経営の進行状況を確認すること、
「100周年プロジェクト」
を発足して雪谷高校の在り方に関する将来構想を検討すること、といった様々なことに取り組んだ結果、
組織的な学校経営が進展しました。
また、校長が「生徒による授業評価」及び「学校生活アンケート」の結果に基づいて雪谷高校の現状、
課題及び改善策をまとめ、生徒、保護者、同窓会及び地域の方々にメッセージとして明確に示しました。
校長が経営及び指導方針を外部に発信したことにより、教職員各自にとっても自らが取り組むべき課題
と解決への方向性とが明確になりました。
■課題と改善の方策 22年度は重点支援校指定の終了年度であり、進学実績の向上と部活動の充実など
とについて、校長、あるいは副校長がリーダーシップを更に発揮し、教職員全員が一丸となって具体的
な成果を上げることが必要です。そのためには、企画調整会議、分掌会議、学年会議及び教科会議にお
ける協議を活性化させるとともに、学年や分掌を越えた拡大会議や校内プロジェクト・チームなども活
用するなどして、学校課題の解決に向けた達成期限を明確にさせた上で、PDCAサイクルをきめ細か
く実施していくことが必要です。
診断ポイント⑤ 特別活動・部活動 部活動の活性化と地域社会への貢献
■取組内容と成果 重点支援校及び部活動推進指定校の指定により配置した外部指導員を交えた指導体制
を整備し、生活指導部が指導目的や安全確保について確認した上で、生徒の活動意欲を支える体制づく
りを進めてきました。その結果、部活動の加入率が19年度
の79%から20年度は86%に上昇し、多くの生徒が活発
に活動しています。その中で、硬式野球部が、現役で大学に
合格した卒業生の大学受験の体験談を生徒と保護者とが共
に聴く進路シンポジウムを開催したことは、部活動の側面か
ら「文武両道」を図る取組として、他校でも参考にできます。
また、
「小中高 夢のかけ橋推進事業」の一環として、チア
リーダー部(図3)及び吹奏楽部が中学生対象の体験入部を
(図3)部活動の様子(チアリーダー部)
実施したり、地域のイベントなどに参加したりしました。吹
奏楽部は近隣の幼稚園及び小学校の幼児及び児童を雪谷高校に招き、招待演奏会も行いました。
- 28 -
№4雪谷高校
さらに、生徒が部活動ごとに地域や近隣の幼稚園及び小学校、あるいは学校周辺の清掃に取り組んだ
り、来校者に爽やかにあいさつをしたりしていることは、教科・科目「奉仕」における奉仕体験活動と
ともに、地域の方々から高い評価を得ています。
■課題と改善の方策 部活動は活発に行なわれていますが、実績として都大会上位入賞、あるいは関東大
会及び全国大会への出場はありませんでした。今後は年間練習計画に基づく具体的な目標を設定させ、
引き続き生徒に練習に励ませ、努力を続けていくことが重要です。そのためには、重点支援による公募
制人事を活用して専門的な技術を指導できる教員を確保したり、外部指導員の人材を開拓したり、他校
との合同練習の機会を増やしたりすることが必要です。さらに、複数顧問制を活用して校内で指導者を
育成していくことも重要です。
また、限られた時間及び施設を活用して、多くの部が効率的に活動を進めるためには、学校周辺道路
でのランニングや下校時の交通マナーなどについて、地域の方々から理解を得ながら活動を進めていく
ことが不可欠です。生活指導部が中心となって部活動顧問会議を開催し、教員全員が雪谷高校の部活動
の状況について共通の認識のもとで、技術指導のみならず、社会的ルールを遵守する規範意識について
も生徒に指導していくことが大切です。
診断ポイント⑥ 募集・広報活動 組織的な募集対策活動と学校情報の発信
■取組内容と成果 入学者選抜における応募倍率の安定化と上昇のため、7校の中学校への訪問授業及び
2校の中学校を対象にした体験授業を実施したり、携帯電話によるホームページの閲覧を可能にしたり
しました。また、重点支援によりポスタープリンタ及びカラープリンタを購入して、6種類の大型ポス
ターや約1000枚の色刷りのリーフレットを作成し、年間4回の学校説明会及び1月の相談会におい
て活用したことは、参加者に雪谷高校の特色を印象付けることにおいて効果がありました。
さらに、推薦に基づく入学者選抜における文化・スポーツ等特別推薦に、硬式野球に加えてチアリー
ディングを導入するなど積極的に取り組んだ結果、入学者選抜の応募者を増加させることができました。
■課題と改善の方策 校長及び副校長、あるいは主幹教諭のみならず、教職員全員が積極的かつ組織的に
募集対策活動に取り組んでいくことが不可欠です。中学校に発信する情報を学校全体で共通理解した上
で、訪問校を教員全員で分担してより多くの中学校にねらいをもって訪問したり、訪問授業及び体験授
業の実施教科を増加させたりすることが必要です。また、中学生のニーズに合わせて体験入部を実施す
ることは、雪谷高校の生徒が中学生の憧れの存在になることにもつながります。さらに、プライバシー
や個人情報の保護に配慮しながら、ホームページや学校便りに在校生の活躍が分かる写真を掲載するこ
とも有効な方策です。
なお、学校説明会において、保護者の立場に立った説明として、経営企画室から授業料及び学校徴収
金などについて説明することも重要です。
診断ポイント⑦ 健康づくり 部活動を通した健康・安全指導
■取組内容と成果 喫煙による健康被害に関する指導(1年生)
、性に関する指導(2年生)
、交通安全に
関する指導(全学年)を行いました。
部活動においては、スーパーバイザー派遣事業を活用して、アスリートの食事や、けがの応急処置及
び熱中症の予防について指導するとともに、養護教諭が事故防止について生徒の活動の実態に即して指
導しました。また、夏季活動中の熱中症予防のため、体育館に温度・湿度一体計を設置しました。
■課題と改善の方策 部活動推進指定校として部活動を一層活性化させると同時に、都教育委員会が作成
した「部活動中の重大事故防止のためのガイドライン」などを活用して、事故の未然防止に引き続き取
り組んでいくことが重要です。
また、食育リーダーが中心となって組織的な指導体制を確立して、家庭とも連携しながら、部活動の
生徒だけでなく全生徒に、健康づくりや食育に関する指導を進めていくことも大切です。
- 29 -
№4雪谷高校
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■重点支援校指定の概要
○20~22年度の取組内容
・ 組織的な授業改善と計画的な講習・補習を実施して、生徒の学力を向上させる。
・ 3年間の計画的な進路指導を通じて、進路実績を向上させる。
・ 部活動の指導を通じて、生徒の基本的な生活習慣やマナーを確立させる。
・ 部活動の指導を充実させ、都大会、関東大会、全国大会出場を目指す。
・ 安全に部活動に取り組めるよう、健康づくりについて指導する。
・ 募集・広報活動を組織的に実施して、入学者選抜の応募倍率の上昇と安定化を図る。
・ 校内組織を改善して、組織的な指導体制を構築する。
○主な目標(22年度末まで)
・ 夏季休業日中等の講習講座数
:年間40講座
・ 四年制大学現役合格者数
:年間160名
・ 部活動加入者数
:年間650名
・ 関東大会出場部活動数
:年間4部
・ 健康・安全教室の開催回数
:年間4回
・ 学校説明会参加者数
:年間1800名
・ 学校生活アンケートにおける生徒の満足度:95%
■20年度の目標とその成果(概要)
重点目標(抜粋)
達成状況(20年度末)
夏季休業日中等の講習講座数
30講座
25講座
四年制大学及び短期大学現役合格者
75%以上
69%
四年制大学現役合格者数
140名
150名
国公立大学及び難関私立大学現役合格者数
35名
11名
大学入試センター試験受験者数
120名
111名
特別な生活指導の指導件数
0件
10件
部活動加入者数
600名
612名
部活動加入率
85%
86%
全国大会出場部活動数
2部
0部
関東大会出場部活動数
3部
0部
健康・安全教室の開催回数
3回
3回
ホームページの内容更新回数
2週間に1回以上
年間33回
学校説明会参加者数
1600名
1649名
推薦に基づく入学者選抜応募人員
210名
215名
学力検査に基づく入学者選抜応募人員・応募倍率
300名・1.4倍以上 269名・1.42倍
学校生活アンケートにおける生徒の満足度
85.0%
86.8%
学校生活アンケートにおける保護者の満足度
92.0%
91.4%
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
学校経営診断により、重点支援校としての様々な取組が客観的に評価され、成果と課題とが明確に
なった。これからの目標達成に向けて、全教職員で取り組むべき新たな課題が示され、具体的な方向
性を認識することができた。
また、これまでの取組には、4年後の創立100周年という次世代への継承も含めているが、今後、
こた
更に教職員一丸となって足元を固め、生徒や保護者、更には地域からの期待に十分応えられる中堅進
学校の確立に向けて全力投球し、着実に前進したい。
(雪谷高等学校長 高田 幸一)
- 30 -
№5田柄高校
学
校
経
営
診
断
書
―
田
柄
高
校
―
田柄高校で「文化」を学べ!「日本の伝統・文化」を語れる国際人に!
所
在
創
地
練馬区光が丘西2-3-1
立
昭和56年4月1日
診断対象
生
徒
数
20・21年度の
主 な 指 定 等
全日制課程(普通科・外国文化コース)
20年度
522名(男177名〔33.9%〕、女345名〔66.1%〕)
21年度
548名(男194名〔35.4%〕、女354名〔64.6%〕)
重点支援校(20~22年度)
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 「社会の一員としての資質能力を備えた人間性豊かな生徒の育成」を目標に、自ら
学び、思考できる知性や、互いの人格を尊重し、思いやりと規範意識を育てる教育を行っています。平
成20年度から「理数コース」
「日本文化コース」
「外国文化コース」を「普通科」と「外国文化コース」
に改編し、特に日本の伝統・文化の理解を基盤とした国際感覚を身に付ける教育を実践しています。2
2年度には創立30周年を迎え、今後の更なる活性化が期待されます。
■特徴的な取組と成果 20年度から重点支援校に指定され、
「日本の伝統・文化」の学習や「国際交流活
動」に積極的に取り組んでいます。和太鼓や津軽三味線を購入したり、柔道場の畳を拡張したりするな
ど、22年度から3年生全員が履修する学校設定科目「日本の伝統・文化」の準備を進めています。ま
た、国際人の育成を目指して、中華人民共和国、大韓民国、アメリカ合衆国の高校生との「国際交流活
動」を行っています。
■課題と改善の方策 特色ある教育活動を実践していますが、その運営は管理職主導で行われており、学
校全体での組織的な取組になっていません。また、学習指導、生活指導及び進路指導についても学年主
導で行われている傾向があり、学年によって指導の方法や内容に格差も見られます。
今後は、特色ある教育活動の一層の推進に向け、主幹教諭を中心に構成された「田柄高校活性化プロ
ジェクトチーム」に、各分掌・学年の主任教諭を加えて組織的に運営することが求められます。また、
各分掌と学年が連携を強化して、統一性及び一貫性のある指導体制を確立することが必要です。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント①
学習指導
わかりやすい授業の実践による基礎学力の定着
■取組内容と成果 20年度における習熟度別及び少人数授業は、週当たり17~19時間(全29時間
中)実施されており、生徒に対してきめ細かい指導が行われています。20年度は、初任者、2・3年
次、4年次及び10年次研修を活用して、研究授業を数学3回、英語8回、情報2回の合計13回実施
しました。また、教員相互による授業見学も年々活発になっており、授業見学を行っている教員の割合
は、19年度の55%から20年度は62%と7%上昇しています。授業見学後には、ベテラン教員が
若手教員に対して指導・助言を行うなど授業力向上に向けた取組が行われています。
20年度の「生徒による授業評価」では、
「この授業は、わかりやすく教えてくれたり、考えさせてく
れたりしていますか」の質問に対して「あてはまる」
「ややあてはまる」と回答した生徒の割合は、すべ
ての教科・科目において70~80%の結果が出ています。
■課題と改善の方策 「生徒による授業評価」についての検証は、教科ごとに行っていますが、学校全体
で検証することはほとんど実施されていません。今後は、教科の枠を超えた授業研究や、学校運営連絡
協議会の協議委員及び保護者からの評価や意見を活用した校内研修を実施して、授業力の向上を図り、
基礎学力の定着を目指す必要があります。
- 31 -
№5田柄高校
また、20年度の各種検定合格者数は、漢字検定5人(24人)、英語検定14人(12人)
、数学検
定3人(10人)でした(括弧内は19年度の数値)。19年度と比較すると、英語検定は合格者数が増
えていますが、その他の検定では20年度学校経営計画の数値目標を下回っています(第Ⅲ章 参照)。
今後は、それぞれの検定合格に向けた指導を各教科に委ねるのではなく、担当分掌が年間指導計画を
示すなど、受験者及び合格者を増加させるための組織的な指導体制を構築することが必要です。
診断ポイント②
進路指導
キャリア教育を踏まえた進路指導体制の確立
■取組内容と成果 3年間を見通した計画的な進路指
(図1)卒業生の進路
(人)
導を実施しています。1年生は進路ガイダンス、進
80
76
71
路適性検査、2年生は分野別ガイダンス、卒業生講
70
64
62
話、進路意識生活実態調査、3年生は小論文指導、
60
四年制大学
短期大学
模擬面接、進路希望確認書の提出等を行っています。 50
専門学校
40
その結果、17年度までは、専門学校に進学する生
38
就職
40
35
35
32
徒が多かったのですが、18年度からは四年制大学
26
27
未決定
30
23
21
及び短期大学に進学する生徒が最も多くなりました
16
18
20
13
(図1)。
10
20年度には、夏季休業日に3泊4日の日程で、
0
17年度
18年度
19年度
20年度 (卒業年度)
八王子セミナーハウスにおいて、大学進学希望者を
対象とした勉強合宿を初めて行いました。教員以外に、早稲田大学教職大学院の学生3人も加わり、大
学進学のための個別指導を実施しました。参加した生徒は5人(1年生2人、2年生3人)と少なかっ
たものの、生徒たちは長時間の学習にもかかわらず集中して取り組んでいました。
■課題と改善の方策 進路指導に関しては、就職指導は進路指導部主導、進学指導は学年主導で行われて
います。そのため、進学については、学年間に指導の違いが見られます。また、生徒は進学先を指定校
推薦やAO入試で早々に大学を決定してしまうなど、安易な方法を選択してしまう傾向があります。さ
らに、進路ガイダンスや資格取得などは行われていますが、個々の生徒が将来を見据えて進路を考える
ための指導が十分でない点が見られます。
そのため、20年度学校評価アンケートの進路指導に関する生徒の評価は決して高くありません。
「先
生に自分の進路先について相談したり、助言を受けているか」の質問で、「よくあてはまる」
「まああて
はまる」と回答した生徒の割合は、1年生35%、2年生45%、3年生61%という結果になってい
ます。
今後は、進路指導部が中心となり、キャリア教育に関する校内研修会を実施するなど、組織的な進路
指導体制を構築する必要があります。また、これまでの個別面談を更に充実させ、個々の生徒に応じた
きめ細かい指導を行っていくことも必要です。勉強合宿については、学級担任から生徒への働きかけを
積極的に行うことで、参加者数を更に拡大するとともに、教員の指導体制も管理職主導ではなく、教科
が中心となって教材開発を行うなど、組織的に実施することが求められます。
診断ポイント③
生活指導
教員全員体制で取り組む授業規律の確立
■取組内容と成果 チャイムとともに開始する授業の徹底状況は、学校経営報告によれば、約80%が励
行されています。授業規律に関する規定は、私語・飲食の禁止・携帯電話を机上に置かないなどが示さ
れ、多くの生徒が励行しています。
また、月2回、登校時に、
「身だしなみチェック」を実施し、服装や頭髪の指導を行っています。課題
のある生徒に対しては、注意の意味である「イエローカード」を渡して改善を促しています。
「イエロー
カード」を渡されても改善が見られない場合は、保護者の理解を得て「レッドカード」を渡し、自宅に
戻って注意された点を直してから再登校させる指導を行っています。このような指導により、注意を受
けたほとんどの生徒が改善しています。
■課題と改善の方策 授業規律に関しては、チャイムとともに開始する授業が確立しつつありますが、授
業中に携帯電話や飲み物を机上に置く生徒はまだ若干見受けられます。服装や頭髪に関しては、
「レッド
カード」を受けても直さない生徒も少数ですが存在するなど、指導が完全に浸透しきれていません。
また、生活指導部が具体的な指導方針を示しているにもかかわらず、その指導の方法や内容は学年に
- 32 -
№5田柄高校
よって差があります。さらに、20年度の1日平均遅刻者数が全校で80人に達しており、生徒の授業
への取組姿勢に課題があります。
これまで以上に落ち着いた学校を堅持するために、生活指導部が指導方針をより明確に示し、学年と
定期的に連絡会を行って緊密な連携を図るとともに、生活指導に関する校内研修会を開催して、指導の
統一性と一貫性を確立することが求められます。さらに、組織的な指導体制を確立する手段として、授
業規律徹底週間等を実施することも考えられます。
診断ポイント④
特別活動・部活動
国際交流活動を踏まえた特別活動の充実
■取組内容と成果 「外国文化」の学習を充実させ、国際理解教育
を推進するために、様々な国際交流を行っています。20年度に
は、訪日団として来校した中華人民共和国や大韓民国の高校生と
交流会を行いました。田柄高校では、生徒会が中心となって積極
的に交流し、茶道部の生徒がお手前を披露しました(図2)
。
交流会に参加した生徒は「外国の高校生と交流し、異文化を理
解することができて、とても有意義であった。
」という感想を述べ
ています。
また、日中青少年訪中代表団に選ばれた2人の生徒が中華人民
(図2)茶道部の生徒によるお手前
共和国を訪れ、現地の高校の授業に参加するなど、中国文化に触
れ、貴重な体験をしました。
このほか、3年生の生徒は「総合的な学習の時間」において「ジャパンアートマイル国際交流壁画プ
ロジェクト」に参加し、インドネシアの「国立ウブドー第一高等学校」の生徒と、インターネット回線
を利用して、互いに制作した壁画を紹介し合いました
■課題と改善の方策 国際人の育成を目指して、様々な国際交流活動を行っていますが、その取組が一部
の教員と生徒の活動になっている状況が見られます。
「国際感覚を身に付ける」という教育目標を掲げて
おり、国際交流に関する事業を学校全体の取組として、組織的に行うことが必要です。22年度からは
3年生全員が、学校設定科目「日本の伝統・文化」を履修し、国際交流活動に生かしていく計画です。
これにより、すべての教職員及び生徒が国際交流活動に対する意識を深めていくことが求められます。
そのためには、校内に「国際交流委員会」を設置し、校長の学校経営計画に基づき、主幹教諭などが
リーダーシップを発揮して、委員会の企画・運営を行うことが必要です。21年度からは、アメリカ合
衆国の高校生との新たな国際交流事業も始まるため、国際交流活動を計画的かつ組織的に実施すること
が必要です。
さらに、22年度に実施を計画している海外修学旅行について、国際人を育成する目的や意義が教職
員、生徒、保護者に対して十分に理解され、綿密な計画のもとに実施されることも重要です。
診断ポイント⑤
健康づくり
外部機関を活用した教育相談体制の充実
■取組内容と成果 様々な課題のある生徒に対応するために、
18年度からスクールカウンセラーが週に1回来校し、生
(図3)スクールカウンセラーへの生徒の相談内容と件数
徒に対する教育相談や教員に対する助言を行いました。
その他
友人問題
20年度の相談件数は生徒77件(図3)、教員148件、
21件(27%)
23件(31%)
保護者1件でした。また「スクールカウンセラーからのお
知らせ」を年間3回発行し、1年生全員に対して「自己理
家庭・家族
4件(5%)
解」に関する講義を行いました。
性格・行動
4件(5%)
さらに、臨床心理学講座専攻の大学院生2人がメンタル
情緒不安定
13件(17%)
問題行動等
サポーターとして週2回来校し、生徒に対する教育相談を
5件(6%)
学習・進学
7件(9%)
行ったところ、相談件数は61件ありました。このほか、
1・2年生を対象に「生活満足度感」アンケート調査を実施し、その調査報告書をもとに校内研修会を
実施しました。
このように、スクールカウンセラーやメンタルサポーターの活用により、中途退学者数は、18年度
37人、19年度23人、20年度12人と、着実に減少しています。
- 33 -
№5田柄高校
■課題と改善の方策 1週間にスクールカウンセラーが1回、メンタルサポーターが2回来校し、教員や
生徒の相談に応じていましたが、生徒が抱える問題は多様化・複雑化していることから、より一層、個
に応じたきめ細かい指導が求められます。
今後は、教員がカウンセリングなどの講習を受け、教育相談に関するスキルアップを図るとともに、
外部相談機関との連携を更に深めることにより、教育相談の体制を強化していくことが求められます。
また、生徒の情報を共有して、組織的・計画的に取り組めるように、校内の教育相談体制を構築するこ
とも必要です。
診断ポイント⑥
募集・広報活動
普通科、外国文化コースの特色を明確にした募集・広報活動
■取組内容と成果 19年度入学生までは、
「理数コース」「日本
(図4)入選の推薦倍率の変化
(倍)
文化コース」
「外国文化コース」の3つのコースを設置していま
7.0
6.0
したが、20年度入学生から「普通科」と「外国文化コース」
6.0
に改編を行いました。コース制の改編に伴い、募集・広報活動
5.0
4.3
に力を入れた結果、学校説明会や体験入学等の延べ参加人数は、 4.0
19年度には中学生が645人、保護者が290人であったの
3.0
2.0
が、20年度には中学生1012人、保護者が443人と、大
2.0
2.0
幅に増加しました。また、校長によるミニ説明会も13回実施
1.0
1.4
1.1
しました。この説明会には生徒会役員、各部活動の部長も参加
0.7
0.0
して、中学生やその保護者に、田柄高校の教育活動の実際の様
18年度
19年度
20年度
(実施年度)
子を直接伝えることができました。その結果、入学者選抜の推
普通科男子
普通科女子
外国文化コース
薦倍率は、普通科は19年度実施と20年度実施ともに2倍以
上、外国文化コースは18年度実施の定員割れの状況から20
年度実施は1.4倍に増加しました(図4)。
■課題と改善の方策 生徒の活動の様子等は、ホームページをはじめ、校長が作成する「田柄高校だより」
等を通して発信されていますが、ほとんどが管理職と一部の教員のみで行われている現状です。また、
学校説明会も管理職を中心とした取組が多く、学校全体で組織的に取り組まれていない状況が見られま
す。今後は、総務部が中心となって、学校説明会などの参加者と応募した生徒との関連について検証・
分析を行い、21年度実施の入選に向けて、募集・広報活動を企画・運営し、組織的に展開していくこ
とが必要です。
診断ポイント⑦
学校経営・組織体制
「日本の伝統・文化」の学習の推進に向けた組織づくり
■取組内容と成果 19年度の11月から「田柄高校活性化プロジェクトチーム」を発足させました。校
長、副校長、経営企画室長、主幹教諭が中心となり、20年度からのコース制改編に伴う新たな取組に
ついて検討しました。その取組のひとつとして、国際交流の行事を多く取り入れるように工夫し、交流
行事においては、和太鼓・津軽三味線等「日本の伝統・文化」を披露し、外国の生徒たちに日本文化を
理解してもらうことに取り組んでいます。
また、
「田柄高校活性化プロジェクトチーム」で企画された内容
について、
「国際交流」や「日本の伝統・文化」担当の教員が他の
先進校を視察したり、和太鼓や津軽三味線の外部講師から「日本
の伝統・文化」の披露について助言を受けたりする(図5)など、
田柄高校の活性化に向けた新たな取組も行っています。
■課題と改善の方策 22年度から、3年生全員に学校設定科目
「日本の伝統・文化」を履修させるにあたり、
「田柄高校活性化
プロジェクトチーム」の更なる活性化が求められます。例えば、
現在のプロジェクトチームのメンバーに各分掌・学年の主任教諭
(図5)津軽三味線の授業風景
を加え、教員からの意見を反映させます。そして、プロジェクト
チームの方針に基づき、主任教諭が他の教員に対して、開講する各講座(和太鼓・津軽三味線・陶芸・
書道など)の内容を理解させる機会を設けることも考えられます。
また、「日本の伝統・文化」の外部講師との定期的な協議会を開催して、継続的に講座内容の改善を
- 34 -
№5田柄高校
図ることが求められます。さらに、外部講師の代表を学校運営連絡協議会の協議委員の中に入れるなど、
「日本の伝統・文化」に対する取組の成果を評価・検証することも必要です。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■重点支援校指定の概要
○20~22年度の取組内容
・新教育課程の策定と定着
・日本の伝統・文化の実施
・大学との連携
・外国文化コースの活性化
・キャリア教育の推進
・生活指導の充実
・広報活動の充実
・部活動の活性化
○主な目標(22年度末まで)
・「普通科」「外国文化コース」への再編成と定着
・
「日本の伝統・文化(書道、和太鼓、陶芸、茶道、華道、農業文化、囲碁・将棋等)」の履修(3年
生全員)
・進路相談、勉強合宿での指導、外国人ボランティア派遣による異文化理解講座の実施
・中華人民共和国、大韓民国、アメリカ合衆国等との国際交流、スピーチコンテストの実施
・定期的な進路説明会、個別相談の実施、進路学習(1年生)、インターンシップの実施(2年生)
夏季休業期間中の勉強合宿による学力向上、大学と連携した進路カウンセリングの実施
・登校時の校門指導、昼休み中の校内巡回、月2回の服装・頭髪検査
・年間の中学校訪問100校以上、学校説明会等の延べ参加者数1000人以上、交通広告の活用、
出前授業の実施、週2回以上のホームページ更新
・部活動加入率60%以上、部活動を通した地域交流、対外試合及び合宿の活性化
■20年度の目標とその成果(概要)
重点目標(抜粋)
達成状況(20年度末)
皆勤、精勤率
1 年 90%、2 年 95%、3 年 100%
漢検 20 名
英検 20 名
数検 5 名
各学年 20%以上
1 年 87.9%、2 年 96%、3 年 99.3%
漢検 5 名(2級1名、3級以下4名)
英検 14 名(2級3名、準2級11名)
数検 3 名(準2級1名、3級以下2名)
1 年 13.1%、2 年 14.6%、3 年 12%
進路決定率
90%以上
87.8%
学校運営連絡協議会アンケート
生徒・保護者の満足度 80%以上 生徒 55.3%、保護者 97.1%
学校説明会等の参加者
延べ参加者数1000名以上
進級率・卒業率
検定合格者
延べ参加者数1455名
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
今回の診断で、本校の取り組みを客観的に見直すことができた。今後改善すべきこと、取り組まなけ
ればならないことは、「組織的な取組」と「取組の成果の評価・検証」である。課題は「日本の伝統・
文化の実施(22年度)」「普通科・外国文化コースの活性化」「キャリア教育」「生活指導」など、
多岐にわたる。コース改編を機に様々な取組をしてきたが、ほとんどが本校では新たな取組である。重
点支援校指定の3年間で、今後の田柄高校の方向性を、具体的な成果をもとに明らかにし、確立してい
きたい。
(田柄高等学校長 村越 和弘)
- 35 -
№6八王子北高校
学 校 経 営 診 断 書
― 八 王 子 北 高 校 ―
「Hachikita style」~キャリア教育をとおした人間力の育成~
所 在 地 八王子市楢原町601
創
立 昭和52年12月23日
診断対象 全日制課程(普通科)
生 徒 数
20年度
583名(男307名〔52.7%〕、女276名〔47.3%〕)
21年度
592名(男307名〔51.8%〕、女285名〔48.1%〕)
20・21年度 重点支援校(20~22年度)
の主な指定等 高等学校におけるキャリア教育の在り方に関する調査研究推進校(19~21年度)
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 「Hachikita style」~キャリア教育をとおした人間力の育成~を通して、知・徳・
体のバランスのとれた、よき社会人の育成を目指している学校です。男子生徒の約90%、女子生徒の
約70%が八王子市内から通い、地域に根ざした学校づくりをしています。四年制大学・短期大学進学
希望者が約40%、専門学校進学希望者が約30%、就職希望者が約25%と多様な進路希望があり、
キャリア教育は八王子北高校にとって大きな柱となる取組です。中途退学者防止対策として教員の加員
配置があり、全クラス35人以下のクラス編成が可能となり、学習指導・生活指導ともにきめ細かい指
導を行っています。規範意識の確立にも力を入れ、生活指導がしっかりとした落ち着いた学校です。
■特徴的な取組と成果 基礎学力の定着を図るために、少人数指導や習熟度別指導を多数取り入れるとと
もに、授業以外の学習時間の確保のための指導も行っています。キャリア教育を組織的に実施しており、
卒業生進路状況追跡調査やキャリアアドバイザーの活用は特徴的です。基本的な生活習慣の確立と規範
意識の育成に力を入れ、元気なあいさつは八王子北高校の特色の一つです。文化・スポーツ等特別推薦
の導入により部活動が活性化し、目的意識をもって入学する生徒が増え、学校に活気を与えています。
生徒の健全育成のためにスクールカウンセラーを導入し、中途退学者の減少にも効果がありました。生
徒による母校訪問や部活動による小・中学生の指導により、地域との交流を深めています。
■課題と改善の方策 「生徒による授業評価」を十分に活用するためには、各教科として授業改善策を打
ち出し校内研修を行う等のステップアップが求められます。キャリア教育を充実させるために、キャリ
アアドバイサーの明確な位置付けやインターンシップの活性化が必要です。生徒に主体的な進路選択を
させるためには、各分掌・学年のより一層の連携が大切です。生活指導では、校内研修を通して意見交
換を重ね、全教員が指導基準を理解することによって、温度差のない指導が求められます。学校経営で
は、学校としての将来に向けたビジョンを一層明確に示し、ミドル層である主幹教諭にそれぞれの力を
最大限に発揮する機会を数多く作ることが重要です。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 基礎学力養成のための指導と授業改善に向けての取組
■取組内容と成果 進路実現を図るために「基礎学力の定着」に取り組んでいます。1学年において「国
語総合」を1クラス2展開の少人数指導、
「英語Ⅰ」を2クラス3展開、
「オーラルコミュニケーション
Ⅰ」を1クラス2展開の習熟度別指導、2学年において「数学Ⅱ」を2クラス3展開の少人数指導、
「英
語Ⅱ」を2クラス3展開の習熟度別指導を行い、きめ細かい学習指導をしています。また、国語・数学・
英語を中心に宿題を与えています。宿題の確認は、授業中に机間指導しながらノート等にスタンプを押
したり、課題プリントを提出させたりしています。さらに、基礎学力の定着を確認するために、国語で
は週1回の漢字テスト、数学では単元毎のワークシートの提出、英語では授業の最初に英文を5分間読
ませる「速読マラソン」を実施しています。また「わかる授業」を行うために、初任者研修~4年次授
- 36 -
№6八王子北高校
業観察、10年経験者研修を利用した授業参観と研究協議会、年2回の
校内研修会を通して全教員の授業力向上を図っています。
「生徒による
授業評価」は年2回実施し、生徒の実態やニーズを把握して授業改善に
いかしています。家庭での学習時間がなかなか作り出せない生徒もいる
ため、学校にいる間にある程度の予習や復習を行うように、教務部や教
科担当が中心となって指導しています。授業以外の学習時間の確保に向
けて、始業前の朝学習や昼休み、部活動前の時間等のいわゆる「スキマ
(図1)朝学習の様子
時間」を有効に活用させています(図1)
。
■課題と改善の方策 宿題があるにもかかわらず、家庭での学習を「全くしない」と回答する生徒の割合
が59%もいます。宿題が、
「スキマ時間」だけでできてしまう量ではないか、
「わかる授業」は予習を
する必要のない内容にはなっていないか等の分析が必要です。少人数制授業・習熟度別授業のメリット
を生かし、組織的に学習面での適度な負荷を生徒に与えていく取組が大切です。
必修研修の研究授業を中心として授業改善に向けた取組を行っていますが、いわゆるベテラン層の相
互授業見学や研修等の組織的な取組が不十分です。授業力向上への取組とともに、あわせて「基礎学力」
について教員間の共通認識を図る取組が必要です。また、
「生徒による授業評価」の活用として、教科
会を通した授業改善案を校内研修にもちより協議し、さらに、授業改善案を生徒や保護者、学校運営連
絡協議会に積極的に示す等の取組が求められます。
診断ポイント② 進路指導 生徒自らが進路を探求していく姿勢の育成への取組
■取組内容と成果 「キャリア教育における全体計画」に基づいて、進路指導部が中心となって、組織的
にキャリア教育を実施しています。1年次の事業所訪問、2年次の上級学校訪問やキャリアアドバイザ
ーからの助言による意識付け、3年次の分野別指導会、インターンシップ、大学教授による進路ガイダ
ンス等への参加を通して、個々の生徒が自分の将来像や職業観がもてるよう指導しています。
「高等学校におけるキャリア教育の在り方に関する調査研究推進校」として、過去3年間の卒業生の
うち569名に卒業後の進路状況等に関するアンケート調査を実施するとともに、就職先へもアンケー
ト調査を実施し、
「卒業生進路状況追跡調査結果」を作成しました。この調査により、卒業生の動向と、
職場の人間関係や希望の進路ではなかったことが離職の主な理由であることがわかりました。また、自
分の能力や適正を良く理解できていないまま進路を決めてしまっていたなど、卒業後にわかった進路に
関する課題や、企業側の課題意識も把握することができ、この結果を在校生の進路指導とキャリア教育
の改善に活用しています。
保護者会は、希望進路別に行い、進路部の進学や就職などの各分野の担当者が、分野別の傾向や注意
点、保護者の心構え等について説明しています。これによって家庭との連携・協力体制を築いています。
また、中央大学の大学院生がキャリアアドバイザーとして、週1回の割合で進路指導室に在室してい
ます。生徒たちは親近感をもって相談し、アドバイスも好評です。教員以外の身近な人から進路につい
ての具体的な話を聞くことによって、教員の指導が説得力を増す効果があります。
■課題と改善の方策 外部模試等のデータを収集・蓄積し、進路実績と3年間の学力の推移との関係を把
握したり、進路選択のための情報収集をしっかりと行わせたりするために、進路指導部を中心としたよ
り組織的な体制を整え、継続的かつ計画的な進路指導を行うことが重要です。進路指導部と学年との連
携に加え、教務部とは進路実現を図るための教育課程の改善に向けての連携、生活指導部とは社会人と
しての規範意識づくりに向けての連携、保健部とは心の健やかな発達を図るための連携等が必要です。
また、計画的なキャリア教育のために、キャリアアドバイザーによる進路相談を充実させたり、看護系
や公務員など、希望進路別に専門的な外部講師を活用したり、インターンシップの受入先を開拓したり
するなどの取組が求められます。
「卒業生進路状況追跡調査結果」の分析は、八王子北高校が目指す「進
路希望100%実現」を名実ともに達成させるための画期的な取組です。今後の多面的な分析が大切で
あり、そのためにも集計結果をより見やすくする工夫や表記等の統一が必要です。
診断ポイント③ 生活指導 基本的な生活習慣の確立と規範意識の育成への取組
■取組内容と成果 基本的な生活習慣の確立と規範意識の育成のために、全教員体制で毎朝校門に立ち、
あいさつ等の声掛けをしています(図2)
。その成果として生徒も自然とあいさつを始め、今では学校
- 37 -
№6八王子北高校
の至る所で元気なあいさつの声が聞かれます。進学・就職関係の外
(図2)校門指導の様子
部の方から「あいさつ」について誉めていただくと全校集会等の機
会を使って生徒に紹介し「あいさつ」の大切さを指導しています。
また昼休みや休み時間にも教員が校内巡回を実施し生徒とのかか
わりを増やす努力をしています。
遅刻者数は、5年前に朝学習を始めた頃から減少しはじめ、ここ
数年は横ばい状態です(図3)
。遅刻3回で生活指導部による特別な
指導が行われています。
保護者の協力により花壇の作成や生徒の自転車置き場や生徒
(図3)1日の平均遅刻者数の推移
(人)
用出入口等の環境整備を行うことによって保護者との交流を深
40
めています。また生活指導に関する理解と協力をあおぐため、
36.9
35
「生活指導の手引き」をホームページ上で公開するとともに、
30
保護者会等の機会を活用して説明しています。
24.1
23.0
■課題と改善の方策 生活指導では、これまでのあいさつの励 25
21.6
21.1
行・遅刻指導・頭髪指導等の取組から、さらに一歩進め、制服
20
の着こなしや通学マナー等への指導が求められます。指導の拡
15
充のためには、校内研修を通して教員の共通認識を図ることと、
16年度
17年度
18年度
19年度
20年度
指導について生徒・保護者へ十分に効果と基準について説明す
ることが大切です。また遅刻者数は、
(図3)から読み取れるように、近年は横ばいの状態です。遅刻
をしないことは社会人の基本であり、キャリア教育の一環としての指導が大切です。改善策としては、
生徒会活動を活用した、遅刻撲滅キャンペーンや自転車交通マナー向上・バス乗車マナー向上キャンペ
ーンなどの取組が考えられます。地域に根ざした学校だからこそ、地域の方々の目を意識することは重
要です。いずれの取組においても、生徒に正対した、きめ細かく粘り強い指導が求められます。
診断ポイント④ 特別活動・部活動 成就感のある学校行事の実施と部活動の活性化への取組
■取組内容と成果 16年度以降、部活動への加入率が向上傾向
100
る生徒が増えました(図4)
。また、しっかりとした目的意識
95
をもって入学する生徒が増え、放課後や休日に学校で活動して
いる生徒が多くなり、学校の活性化にもつながっています。
野球部やサッカー部等が熱心な活動をしているほか、女子バ
スケットボール部が2部に昇格、女子バレーボール部が市民大
会優勝、男子硬式テニス部が都立校大会のダブルスで準優勝、
女子硬式テニス部が都立校大会の団体戦で準優勝等の活躍を
しています(図5)
。また、これまで楽器が不足し、思うよう
に活動できなかった吹奏楽部も、重点支援予算による楽器購入
で活動の幅を広げることができるようになりました。運動系は
関東大会出場を、文化系は特色ある活動やコンクール金賞等を
目指しています。また学習と部活動の両立を図るために部活動
単位で顧問によるテスト前勉強や補習を行っています。
■課題と改善の方策 部活動の活性化や学校への帰属意識の向上
のために、1年生に部活動の全員加入を原則義務付けているこ
(図4)部活動への加入率の推移
(%)
にあり、学校への帰属意識が高まり、行事へも積極的に参加す
91
90
87
85
80
75
86
85
全体
男子
女子
82
79
77
76
80
81
78
77
83
84
80
16年度 17年度 18年度 19年度 20年度
とは有効な取組です。しかし全員加入を原則義務付けているな
(図5)野球部の練習の様子
らば、学校としては、個々のニーズにあった、それぞれの生徒
が活躍できる部活動の設置と指導体制づくりが必要となってきます。さらに、顧問や活動施設、予算の
割り振り等様々な課題がでてきます。それらの課題の解決に向けて、積極的な外部指導員の発掘と活用、
保護者の組織的な協力体制の充実、教員間の互助体制の構築についてより組織的な取組が求められます。
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№6八王子北高校
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 人材育成や学校評価を活用した教育活動の改善への取組
■取組内容と成果 人材育成の結果、6名の主幹教諭が学校の現在や将来
に対する課題に対して意識をもって取り組み、学校運営の中心的な役割
を担っています。企画調整会議の前に、それぞれの案件を事前に調整・
整理する工夫もしています。また、担任団と教科担当による拡大学年会
を定例会化することによって、生徒一人一人の学力を向上するための情
報交換を図っています。
(図6)視聴覚室
学校評価における「生徒の学校生活における満足度」は、18年度の
63%、19年度の63%、20年度の68%と、なだらかですが上昇傾向にあります。
重点支援予算によって視聴覚教室の机を固定式から可動式に改めました(図6)
。これによって授業や
講習、講演会等の多様な教育活動ができるようになりました。
■課題と改善の方策 主幹教諭の更なる育成のために、学校の将来に向けたビジョンを一層明確化し、O
JTを通して学校経営に積極的に参画させ、より広い視野で学校運営に取り組ませることが大切です。
学校評価における「生徒の学校生活満足度」を上昇させるためには、学習指導や生活指導がキャリア
教育の一環であることをしっかりと生徒に理解させるとともに、部活動の一層の活性化が求められます。
視聴覚室の一層の活用として、ICT機器を活用した授業や講習、講演会等の取組が考えられます。
ICT機器の有効な活用について、分掌業務に明確に位置付けたり、委員会を立ち上げ組織的に取り組
んだりすることが求められます。
校内に、備品等が雑然と置かれ、廊下が狭められているところがあります。生徒の安全確保といった
危機管理上の点からも、備品等を長期に有効活用する点からも、備品等の管理状況の是正が必要です。
診断ポイント⑥ 健康づくり
生徒一人一人の心身の発達段階に応じた健康指導の充実
■取組内容と成果 重点支援予算と自律経営予算により、スクールカウン
セラーを導入しました。年間16回の生徒相談日を設け、28回のカウ
ンセリングが行われました。全クラスにスクールカウンセラーの写真入
り来校予定表を掲示し生徒に周知しました。相談のしやすさを重視する
ために、予約なしでも相談に応じています。
カウンセリングがない時間には、相談室に自由に出入りできるように
し生徒が気軽に入室できる工夫をしています(図7)
。カウンセリング
(図7)相談室
を受けた生徒の多くは繰り返し来室しており、生徒の居場所づくりにも
役立っています。カウンセリング終了後には、保健部や学年で情報を共有できるようにカウンセラーか
らの報告を聞く会議を毎回行い、学年や担任の多面的な生徒理解の大きな助けとなっています。中途退
学者が減少していることからも、カウンセリングによる生徒への効果はうかがえます(図8)
。
■課題と改善の方策 生徒からのアンケートには、
「カウンセリ
ングに関心はあるもののまだ入室にまで踏み切れない」という
8
回答が複数あります。生徒に、ロングホームルームや授業等の
7
機会を使って、カウンセリングの効果についてより周知すると
(図8)中途退学者数の推移
(人)
7
7
6
5
5
1学年
2学年
ともに、入室しやすい環境整備の一層の工夫が大切です。
4
3学年
3
3
3
3
今後は、教員がカウンセリングのノウハウについて習得して
3
2
2
いくとともに学校としての組織づくりが求められます。相談し
2
1
1
1
てくる生徒の抱える問題は深刻なものもあるため、教員個人で
0
0
0
0
16年度 17年度 18年度 19年度 20年度
は支えきれない場合もあります。カウンセリング組織の体制づ
くりは、校内研修を通して教員間の相談連携体制を充実させるとともに、学校教育相談センターとの連
携も視野に入れることが重要です。
診断ポイント⑦ 募集・広報活動
「地域に根ざす」
「地域を切り拓く」活動への取組
■取組内容と成果 生徒による母校訪問を出身中学校すべてに行うよう組織的に取り組んでいます。さら
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№6八王子北高校
に、3年生の進路決定者には進路結果報告を兼ねた母校訪問をさせています。
吹奏楽部は、小・中学校で2回の演奏活動、生物科学部は
(人)
地域のお祭りと児童館で2回の理科実験、サッカー部は地域
700
のお祭りでの子どもサッカー教室の手伝いなど近隣行事へ
650
(図9)学校説明会の参加人数の推移
664
632
600
積極的に参加することによって地域との交流を図っていま
550
す。また卓球部は年間を通して近隣小学校のサタデースクー
ルに協力しています。
地域との交流や広報活動の結果、学校説明会への中学生・
保護者の来校者数は年々増加しています(図9)
。
522
477
500
444
450
400
16年度
■課題と改善の方策 地域に根ざした学校づくりを目指す八
王子北高校にとって、地域との交流は、生徒の健全育成や生
徒募集対策から考えてきわめて重要な取組です。地域との交
流を深める取組としてのボランティア活動への参加人数が、
近年横ばいになっています。学校として組織的に対応するこ
とによって、ボランティア活動への参加のしやすさを工夫す
るとともに、参加先の一層の開拓が求められます(図10)
。
230
(人)
17年度
18年度
19年度
20年度
(図10)ボランティア活動の参加人数の推移
228
227
225
225
222
220
215
210
205
205
200
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
16年度
17年度
18年度
19年度
20年度
■重点支援校指定の概要
○20~22年度の取組内容
生徒による授業評価「わかりやすく教えたり、考えさせる授業」満足度90%を目指す。進路多様校
における進路希望実現100%を目指す。教育相談カウンセラーを導入し活用する。視聴覚教室を整備
する。全教職員による生活指導を行う。基本的な生活習慣を身に付けさせ、遅刻者や中途退学者を減少
させる。
○主な目標(22年度末まで)
生徒自身が学校生活に充足感をもち、意欲的で活気のある学校とする。基礎学力の定着、基本的な生
活習慣、部活動の活性化、進路希望実現100%、地域社会との交流を通してよき社会人として育成す
る。
■20年度の目標とその成果(概要)
学習指導
重点目標(抜粋)
達成状況(20年度末)
家庭学習時間0分の生徒の割合を50%以下 19年度57%→20年度59%
進路指導
四年制大学・短期大学への進学者数70人
19年度72人→20年度69人
生活指導
生徒の一日平均遅刻者数18人以下
特別活動
インターンシップ参加60人
ボランティア活動参加300人
19年度23.0人→20年度21.1人
インターンシップ参加:19年度44人→
20年度15人、ボランティア参加:19
年度222人→20年度225人
健康づくり
中途退学生徒数10人以下
19年度5人→20年度3人
募集・広報活動 地域との交流行事等への参加生徒数150人 19年度101人→20年度73人
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
経営診断により、学習指導、生活指導、本校の特色であるキャリア教育等について教職員相互の連
携を強め、更なる学校改革を進める重要性を改めて確認した。
今後は、進路実現を保証できる学力の定着を図るため学習指導の改善に取り組むこと。その基盤とな
る基本的生活習慣の確立を目指す生活指導の徹底に努めていくこと。また、充実した学校生活を送る
ための部活動の活性化を図ること等の推進を図る。
保護者や地域の信頼を一層高め、キャリア教育の充実に努めるとともに、重点支援校として学校改
革を進めていく。
(八王子北高等学校長 馬場 寿)
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№7昭和高校
学
校
経
営
診
断
書
―
昭
和
高
校
―
明日に挑戦、授業で勝負・高める学力、
部活で青春、昭和で拓く君の進路
所
在
地
昭島市東町2-3-21
立
昭和24年1月16日
診 断 対 象
全日制課程(普通科)
創
生
徒
数
20年度
835名(男425名〔50.1%〕、女410名〔49.1%〕)
21年度
837名(男428名〔51.1%〕、女409名〔48.9%〕)
20・21年度の
重点支援校(20~22年度)
主 な 指 定 等
小中高夢のかけ橋推進事業指定校(20年度)
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 昭和高校は昭和24年創立の生徒数837名の全日制課程普通科の学校です。生徒
の約75%が青梅線または五日市線沿線から通学している、地域に密着した学校です。たくましく生き
る力を備えた人間を育成し、進学実績を向上させることを目指しています。卒業生の進路は、四年制大
学60%、短大4%、専門学校13%、就職3%、その他20%となっています。平成20年度に「明
日に挑戦、授業で勝負・高める学力、部活で青春、昭和で拓く君の進路」をスローガンに改革プログラ
ムを策定し、重点支援校に指定されました。
と
と
■特徴的な取組と成果 「二兎を追い、二兎を得る」を目標に、部活動や特別活動の奨励と学習との両立、
授業改善、家庭学習の習慣化、授業規律の確立、キャリア教育の充実、学校評価等の結果による経営改
善・教員研修の拡充などを進めています。また、地域交流を生徒募集活動に生かす取組を進めています。
部活動加入率は90%に近づき、関東大会出場以上の成績を収めた部は、前年度の2部から5部へと
増えています。また、国公立大学への現役合格者数は、前年度の2名から7名へと増えています。
■課題と改善の方策 「授業力向上」「部活動と学習の両立」「経営改善」に向けて様々な取組がなされて
います。しかしながら、その取組はまだ完成途上のものが多くなっています。教員相互の授業見学研修
により多くの教員が参加する体制づくりが求められます。また、生徒による授業評価については、分析
結果を学校全体の研修会で全教員に伝え、授業改善の手立てを考えるものにすることが必要です。学校
評価の保護者の回答率も低く、調査結果自体の客観性確保には回収率の向上が必要です。
このように全体を通して、各取組の更なるレベル向上が大きな課題となります。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント①
学習指導
授業改善と家庭学習の習慣化に向けた取組
■取組内容と成果 授業については、教育課程の改善と教員相互の授業見
学研修及び生徒による授業評価により改善を図っています。20年度入
学生から学年進行により1,2学年の修得単位数を増やすなどの教育課
程改善を行いました。教員相互の授業見学研修を年6回実施し、また、
生徒による授業評価を年2回実施しました。
家庭学習の習慣化については、学年プラス1時間をミニマム家庭学習
(図1)授業風景
時間と定め、実現に向けて校内に自習室や質問コーナーを設置し、生徒
の学習時間アップの支援をしています。
■課題と改善の方策 授業改善はまだ途上です。学校評価アンケートによれば、「教員は教え方や教材を
工夫した授業を行い、授業内容をわかりやすくしているか」という問いに対して、
「当てはまる」と「や
や当てはまる」と肯定的回答をした生徒の割合は全体の49%にとどまっており、前年度の50%とほ
- 41 -
№7昭和高校
ぼ同水準で、決して高いとは言えない状況にあります。
また、教員相互の授業見学研修については、年間の参加者数が延べ57名で、1回あたり10名に満
たない数字です。2・3年次授業研究など若手を中心とした授業見学であり、学校全体のものとはなっ
ていません。
生徒による授業評価についても、評価結果を教科や学校全体で分析して、授業改善に結びつけるなど
の取組にすることが必要です。これらを学校全体で取り組むなどの改善が求められます。
家庭学習時間については、各学年とも平均1時間に満たないなど、目標を大幅に下回っています。
家庭学習時間を増大させるには、まずは、生徒の学習行動を正確に把握し、策を打つ必要があります。
そのための手立てとして、家庭学習時間をより正確に測定する調査を行うことも一つの方法です。現在
のところ、年度初めの外部模試に付随したアンケート調査で大まかに学習時間を測定していますが、定
期考査などの時期により変動する生徒の学習時間を捉えるにはより正確な調査が必要となります。ある
時期に生徒が家庭でどのくらい何を学習しているのかを知ることは、その時期にどのような授業展開を
すべきかを検討するのに、大切な手がかりとなります。このように、生徒の学習行動を正確に知ること
で、その時期に応じた授業の在り方を検討・改善することにより、家庭学習時間を増大させる仕組みを
組織的に導入することが求められています。
診断ポイント②
■取組内容と成果
進路指導
系統的な進路指導を通したキャリア教育充実の取組
19年度から各学年1単位の「総合的な学習の時間」をキャリア教育に取り組む時間
とし、20年度はその定着を図りました。3年間を見通した指導計画を立て、1学年では個人面談、進
路ノート、進路講演会等を通して進路意識を高める指導を、2学年では進路に関わる適切な情報を提供
し、定期的な進路面談を実施するとともに、オープンキャンパスへの参加を促すことにより進路意識の
啓発を図る指導を、3学年では面談を通して最後まで妥協しない指導を実施しました。これらの取組を
ひら
通じて、大学入試に際して安易に推薦入試に流れず、自分の将来を自分で切り拓く指導をした結果、セ
ンター試験受験者が、前年比26名増の194名になり、うち国公立大学受験をする5もしくは6教科
7科目型受験者は前年比10名増の30名になりました。現役生徒の大学合格実績については、国公立
大学が5名増の7名、早慶上理が6名増の8名となりました。
■課題と改善の方策「学校は生徒が進路について考え、決定できるようにキャリア教育を適切に指導して
いるか」という学校評価アンケートの問いに対して、
「当てはまる」と「やや当てはまる」と肯定的回答
をした生徒の割合は全体の54%であり、前年度の51%からわずかながら増加しています。大学進学
を目指す進路指導は、学年主導の進路指導から進路指導部主導のものへと変わりつつあります。進路便
りも3学年対象に年間8号、また1,2学年対象に年間6号発行するなど学年に応じた進路指導を試み
ています。これらの動きを加速させるとともに、外部模試の結果分析を軸とした研修会を、より多くの
教員が参加できるよう計画的・組織的に開催することが求められます。
診断ポイント③
生活指導
授業規律の確立に向けた組織的な取組
(図2)遅刻件数の比較〔昨年度同月比〕
■取組内容と成果 授業への遅刻解消を図るため、生活指導部と学
(件)
450
年が連携して、朝、校門に立ち、登校指導をしています。20年
404
度の各学年の遅刻総数は、1学年延べ1031回(1日当たり5.
400
19年度
2人)
、2学年延べ2506回(1日当たり12.5人)
、3学年
20年度
338
350
延べ2010回(1日当たり10.7人)であり、21年度は各
309
291
学年とも延べ1000回以下に遅刻を減らす目標を立てています。 300
ここ2ヶ月の状況は前年同月比で約20%の減となっています
250
(図2)
。「朝、生徒の登校するピークが前年度に比べて、5分ほ
4月
5月
ど早まっている。」との声も聞かれ、成果はあがっています。
また、学習を進める上で様々な悩みを抱える生徒が、安心して学習できるよう、アドバイザリースタ
ッフの派遣を年5回受けています。20年度は15件の相談が生徒・保護者からありました。また、セ
ーフティ教室として、携帯安全教室や薬物乱用防止教室を開き、生徒が授業に安心して集中できる取組
を進めています。
- 42 -
№7昭和高校
■課題と改善の方策 進学校型の生徒指導の構築とその組織的取組が昭和高校の課題です。遅刻指導は効
果が出ているとは言え、未だ遅刻者数は高い水準にあり、校門で声かけをする指導に加えて、生徒各々
し
に授業に真摯に取り組む内発的な動機付けをする指導も必要です。それは、授業の中だけではなく、学
校行事や生徒会活動や部活動などの学校生活のあらゆる局面において実施することが可能です。特別活
動のあり方を検討し、生徒がもっと自主的に企画・立案・実施できるような指導体制をつくることが望
まれます。
ぼう
また、アドバイザリースタッフ等によるカウンセリングは進学校へと学校が変貌すればするほど必要
性が高まります。カウンセラーがいないときの対応など、今まで以上にますます養護教諭や保健部とカ
ウンセラーの連携が必要になります。さらに、教員一人一人が教育相談的な指導ができるよう、OJT
を含めた研修の充実も重要です。
診断ポイント④
特別活動・部活動
部活動などの自主的活動への支援体制と学習との両立への工夫
と
と
■取組内容と成果 90%近い部活動加入率があり、「二兎 を追い、二兎 を
得る」をキャッチフレーズに、学習と両立できる部活動を目指しています。
19年度末に定時制課程が閉課程となりました。これにより、20年度か
らは、前年度より1時間遅く午後6時15分まで、部活動に参加している
生徒が学校に残れるようになりました。それにより家庭学習時間が減らな
いように、顧問の判断により休日の部活動前後に自習室(図3)を開放し、
こた
(図3)自習室
部活動を行なう生徒の学習ニーズに応えています。20年度末には個別自
習机も40台整備され、より学習に集中できる環境を整えました。また、
平日に授業の質問等があれば、いつでも教員を職員室に訪ね、職員室前の
質問コーナー(図4)で、個別の学習指導が受けられるようになっていま
す。
部活動の成果も着実にあがっており、吹奏楽部の全日本管楽器合奏コン
テスト全国大会出場や4年連続の陸上部の全国大会出場など、関東大会レ
ベル以上の出場は、前年度の2部から5部へと伸びています。
(図4)質問コーナー
■課題と改善の方策 「生徒は、部活動に積極的に取り組み、内容も充実さ
せているか」という学校評価アンケートの問いに対して、
「当てはまる」と「やや当てはまる」と肯定的
回答をした生徒の割合は全体の67%にとどまり、前年度の71%から微減しています。部活動加入率
や部活動実績が上がってきている中での肯定的評価の微減は、部活動と学習の両立のために、更に生徒
支援が必要なことを示唆しています。
自習室を、部活動と学習を両立させるツールとして更に活用することが重要です。現在、部ごとに各
顧問の判断で開放されている休日等の自習室開放を、原則全生徒対象に開放するようにすれば、更に生
徒の利便性は高まります。また、休日において部活動等指導で学校に来ている教員が、生徒からの質問
に質問コーナーで答える体制を整えることも大きな生徒支援になります。
加えて、今後は、各部活動を、部活動単位で学習もする集団にするなどの工夫も考えられます。部活
動の部員としての一体感を保ちながら、例えば、休日等の練習前後にあるいは平日で練習のない日など
に、顧問などの指導のもと、補習・補講を部単位で実施するなどの取組は学習との両立を支援するのに
有効であると考えられます。また、すでに組織されている部活動単位の保護者会を活用し、部活動ばか
りではなく学習においても、家庭の協力を全面的に得て、生徒が部活動と学習両面で活躍する仕組みを
多層的に構築する必要があります。
診断ポイント⑤
■取組内容と成果
こた
学校経営・組織体制
授業評価・学校評価を学校運営に生かす取組
年2回実施される生徒による授業評価の校内分析では、「教員は生徒の真の学習ニー
ズに応える必要がある」ことが明らかになっています。また、診断ポイント①に述べた学校評価アン
ケートでも、半数以上の生徒が授業に対しては何らかの不満を持っています。これらを踏まえて、学校
経営計画に、
「授業時数の確保」
「授業規律の確保」
「家庭学習の習慣化」
「校内研修の充実」
「ICT機器
の授業への活用」を挙げ、授業改善に乗り出しています。
また、心の問題への対応については、
「教員は、生徒の抱える様々な問題を見逃さず、悩みや相談に親
- 43 -
№7昭和高校
身に応じているか?」という学校評価アンケートに対する肯定的評価の割合は、18年度の35%から
20年度の45%へと改善が見られます。このことは、進学指導充実に向けて学校経営計画に、三者面
談の計画的実施やアドバイザリースタッフの有効活用を位置づけて取り組んだ成果だと考えられます。
■課題と改善の方策 学校評価の信頼度を高めるには、その回答率を改善することが必要となります。2
0年度の回答率は、生徒の93%に対して、保護者は16%です。保護者会の場などを活用するなどし
て保護者の回答率を上げ、学校評価の精度を高めるよう努力をする必要があります。
また、地域に密着した学校でありますが、地域住民に対する学校評価アンケートは未実施です。今後
は、地域の声を聞くことも重要です。
一方で、授業評価及び学校評価の分析はなされていますが、学校評価で改善の要ありと認められた項
目が、次年度の学校経営計画にどのように反映され、学校経営計画にどのような改善をもたらしたのか、
わかりやすく明示するなどの工夫が必要です。学校改善のためにPDCAサイクルを有効に機能させる
ためにも、今後は、分析が有機的に学校経営計画策定に結びつくよう改善を図っていく必要があります。
診断ポイント⑥
人材育成・教員研修
教員研修の組織的運営とその成果
■取組内容と成果 教員相互による授業見学研修として、新規採用教員や2,3,4年次教員の授業など
を他の教員が参観し、研修する試みを19年度より始めました。生徒による授業評価に基づく研修会に
ついては、1,2学期に各1回開催しています。これらにより、教員の授業力の向上を目指しています。
また、進路指導力の育成のため、1,2学年が年に3回、3学年が年1回、外部模試の結果分析会を、
模試業者を講師に行っています。結果分析会には学年担任の教員が参加し、全国における昭和高校の位
置や優れている点、改善すべき点を研修します。それは、三者面談の資料としても活用しています。そ
の他、前年度の進路結果分析会を全教員対象に、年1回開催しています。
■課題と改善の方策 現在、教員研修はその内容により、進路指導部や教務部、学年と様々な分掌が担当
し実施していますが、教員研修を体系的にまとめる視点が十分とは言えません。
教員研修全般について、更なる規模の拡大や参加教員の増加が必要とされています。現在のところ、
参加は低調で、組織的に個々の教員の人材育成を図り、学校を改善する研修とはなっていません。
他県の先進校を視察し、そこで知った多くの取組について、校内に浸透させようとはしていますが、
それが根付いて学校改善に発展するような大きな動きにはなっていないようです。また、近隣の学校に
も充実した取組をしている学校があり、それらを視察することも、改善を進める上で助けとなります。
大学合格のための進路指導としては、外部模試などで全国規模で各生徒の実力を測り、勝っている点
や努力の必要な点を明らかにし、各生徒に高い目標を設定し、励ましつつ、学力を伸ばす方策を指導す
ることが有効です。そのための指導力を育成するには、外部模試の結果を校内で分析する仕組みが必要
となります。各模試業者が有償で提供する分析システムなどを活用しながら、各教員が生徒に面接指導
等ができるようになるためのOJTが、進路指導力を育成するには有効です。副校長が進路部主幹教諭
を指導し、そのようなOJTを、例えば学年単位で実施することが教員研修の組織的な運用の第一歩と
言えます。
診断ポイント⑦
地域交流・学校広報
地域と連携した学校広報の取組状況とその成果
■取組内容と成果 地域の小中学生に昭和高校のことをよく知ってもらうため、中学生に昭和高校に来て
もらいソフトテニスや硬式野球などの部活動を体験してもらう「トライ&チャレンジ」事業が10月を
中心に行われており、200名近い中学生が参加しました。また、小中高夢のかけ橋推進事業として、
昭和高校生徒約90名が地域の小学校6校に出向き、水泳指導補助や夏祭り支援などを行いました。
また、学校の状況を地域に知らせるために、
「昭高だよ
(図5)一般入試応募倍率推移
(倍)
1.7
り」を年12号発行し、40の中学校や市教委に配布し
1.59
1.6
1.51
ています。また、地元進学塾主催の学校説明会にも積極
1.5
1.44
1.4
的に参加しています。また、夏季休業中には20日間に
1.31
1.3
わたって学校見学会を開き、1000名を超える見学者
1.24
1.2
を集めました。これらは、副校長を長とし、6名の主幹
1.1
1
教諭と4名の各分掌から選出された若手教員などからな
(入試年度)
17年度 18年度 19年度 20年度 21年度
る生徒募集委員会が行っています。
- 44 -
№7昭和高校
一般入試の応募倍率については、19年度を底に、20年度には大幅に改善しました。21年度は倍
率が下がりましたが、「隔年現象」もあることから、今後の動向を注視することが必要です(図5)。
■課題と改善の方策 意欲的に活動している生徒募集委員会ではありますが、学校広報の要として校内で
十分に機能するには、若手教員ばかりに頼ることなく、主幹教諭を中心とした広範な年齢層の教員を成
員に加えることが必要です。また、進学塾等主催の学校説明会への派遣依頼が年々増えています。それ
らは週休日等に開催されることが多いことから、負担が少数の生徒募集委員会委員に一方的にかからぬ
よう、OJTなどを活用して生徒募集委員会委員以外にも、より多くの教員が説明できるような校内体
制を整えることが重要です。こうすることにより、参加教員の学校経営参画意識が深まるほか、広報活
動が学校全体で活性化するなどの利点があります。
多摩地域では、20年度に都立中高一貫教育校が開校しました。また、来年度には別の都立中高一貫
教育校が開校します。そのため、両母体校の入学定員が大幅に絞られています。結果として、入学難易
度などから考えて、この地域では、以前にも増してより多くの中学生が昭和高校を入学対象校と見るよ
うになってきています。この機会をとらえて、正確な情報発信に基づいた積極的な募集広報活動をする
ことが肝要です。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■重点支援校指定の概要
○20~22年度の取組内容
・相互授業研究プログラムの実施
・外部模試の結果分析とそれを基にした授業改善の取組
・ミニマム家庭学習時間の設定
・総合的な学習の時間を活用したキャリア教育の充実
・遅刻指導など授業規律の確立
○主な目標(22年度末まで)
・国公立大学現役合格者数 15名
・GMARCH 合格者数
100名
・外部模試偏差値平均
52
・部活動加入率
95%
・夏季見学会参加者数 2500名
・入学者選抜一次倍率 1.80倍
■20年度の目標とその成果(概要)
ミニマム家庭学習時間
長期休業中の設定補習・補講数
現役国公立大学合格者数
現役GMARCH以上合格者数
外部模試偏差値(国数英)
センター試験受験者数
部活動参加率
重点目標(抜粋)
学年プラス1時間
35講座
10名
75名
50以上
180名
92%
達成状況(20年度末)
各学年とも1時間未満
29講座
7名
37名
48
194名
87%
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
本校は重点支援校として教育改革に取り組んでおり、その過程で学校評価の活用も計画している。し
かし、計画した評価と異なり、学校経営全体について第三者を含めて実施された経営診断は課題を明確
化し、新たな視点により改革を見直す機会となった。
今後は、この診断結果を全教員に周知し、課題の共有化を図る。特に重点支援校指定期間の後半は、
継続して教員の授業力向上に努めるとともに、部活動と学習とを両立させる施策の実施や改革に係る基
礎データの改善・蓄積等、診断で指摘された事項に力点を置き、選ばれる学校づくりを目標に、更なる
発展を目指す所存である。
(昭和高等学校長 根岸 潔)
- 45 -
№8小金井北高校
学 校 経 営 診 断 書
― 小 金 井 北 高 校 ―
「君の進路実現を最も大切にします」
-小金井北が夢を叶えますー
所 在 地 小金井市緑町4-1-1
創
立 昭和54年11月16日
診断対象 全日制課程(普通科)
生 徒 数
20年度
722名(男375名〔51.9%〕、女347名〔48.1%〕)
21年度
718名(男367名〔51.1%〕、女351名〔48.9%〕)
20・21年度 重点支援校(20~22年度)
の主な指定等 進学指導推進校
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 「創造・自律・努力」を教育目標として、
「君の進路実現を最も大切にします」-
小金井北が夢を叶えます-をスローガンに、特色ある学校づくりを推進しています。
「知・徳・体」のバ
ランスを大切にし、学習に励むとともに、部活動や学校行事等の特別活動を通して、豊かな人間性や社
会性、自ら律する心と強健な心身を育成している学校です。
■特徴的な取組と成果 学力向上研究誌の発行、土曜日の授業の実施、サテライン講習(予備校の講習を収
録したDVDを活用)の導入等、特色ある方策を盛り込んだ「ライジング小金井北プラン(RKP)
」の
実践により、生徒の学力向上を図り、国公立大学や難関私立大学等への進路実現を目指しています。補
習・補講の数は年々増えており、春季も5教科で講習を行うなど、生徒の学習支援に当たっての組織的
取組が進んでいます。21年3月の進学実績は、国公立大学が12名、難関私立大学が125名とほぼ横
ばいでしたが、難関私立大学への現役合格者数が103名と19年度に比べて23名増加し、現役合格率が
72.5%となりました。
■課題と改善の方策 小テストや宿題等によるきめ細かい点検や補習・補講の更なる充実により、生徒の学
習習慣を確立することが大切です。模擬試験等の結果を定点観測して学力の実態を把握し、授業改善に生
かしていくことも不可欠です。机間指導や指名等により生徒の学習状況を常に把握しながら、教師と生徒の
コミュニケーションを重視した授業の展開を図り、日々の授業を更に活性化していく必要があります。生徒
による授業評価を積極的に活用するとともに、3、4人程度の小グループを構成して、教員相互の授業参観
を実施し、課題やテーマに沿った改善策を話し合い、校内研修につなげていくことが有効な方策です。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 生徒の学力伸長と教員の授業力向上
■取組内容と成果 「ライジング小金井北プラン(RKP)
」に
(図1)年間研究授業実施回数
基づき、生徒の学力向上を図っています。長期休業日の弾力的 20年度
10
運用の試行校として、土曜日の授業を年20回実施し、授業時 19年度
8
数の確保に努めるとともに、語学研修・異文化体験(宿泊行事) 18年度
4
を導入しました。この宿泊行事には、1、2年生の希望者48 17年度
4
名が参加し、生徒の英語に関するモチベーションが大変高まり 16年度
3
(回)
ました。英語検定に158名(前年度75名)が挑み、その結
0
2
4
6
8
10
果、準2級取得者が117名、2級取得者が9名となりました。
補習・補講の充実にも努めています。夏季休業中には、前年度比20増の43講座、冬季休業中には、前
年度比11増の13講座を開講しました。春季休業中には、新たに新3年生を対象とした講習を7講座実施
し、149名が受講しました。また、サテライン講習(予備校の講習を収録したDVDを活用)を1、2年
- 46 -
№8小金井北高校
生は長期休業中に、3年生は1、2学期の平日の授業日にも実施し、合計143名が参加しました。さらに、
校内での自主的な学習スペースとして、多目的室を整備し、自習室として生徒に開放しています。
教員の授業力向上にも積極的に取り組みました。
「生徒による授業評価」を活用した校内研修を9月と1
月に、教員相互の授業参観を6月、10月及び2月に実施しました。研究授業は年間で10回(図1)行い
ました。また、進学指導研究協議会の報告を基にした校内研修を5回、予備校の講師による大学入試の現状
に関する進路研修会を 1 回、電子情報ボード等のICT機器を活用した授業改善に向けた校内研修を3回実
施しました。11名の教員が原稿を寄せ、教科の内容及び授業評価の分析等を掲載した「学力向上研究誌」
は、19年度に引き続き発行し、中学生及びその保護者等へ積極的に発信しました。
■課題と改善の方策 学校評価アンケートの結果によると、1・2年生の家庭学習時間が、1 日当たり1時間
未満という回答が過半数を占めています。小テストや宿題等を教科の組織目標に位置付け、授業時に点検す
るなどして、生徒の家庭における自主的な学習習慣の確立を図る必要があります。その前提として、日々の
授業が重要であることは言うまでもありません。机間指導や指名等により生徒の学習状況を常に把握しなが
ら授業を更に活性化し、教師と生徒のコミュニケーションを重視した授業の展開を図っていくことが大切で
す。生徒による授業評価を積極的に活用するとともに、教員相互の授業参観の効果を更に高めるため、3、
4人程度の小グループを構成して、課題やテーマに沿った改善策を話し合い、校内研修につなげていくこと
が有効な方策です。また、長期休業中の補習・補講の更なる充実も求められています。早い時期から生徒に
講座内容及び日程を提示し、受講者数を更に増やしていくことが大切です。
診断ポイント② 進路指導 組織的・計画的な進路指導
■取組内容と成果 3年間を見通した進路の全体計画及び年間指導計画を再構築し、キャリア教育の観点を重
視した指導へと転換を図りました。
進路部では、
「進路の手引き」を活用するとともに、年に15回「進路室だより」を発行しました。また、
全学年を対象に進路希望調査を実施し、個別面談を実施しまし
(図2)国公立大及び難関私大合格者数
(人)
た。3学年の希望者には小論文指導を導入し、各教科と連携し
160
140
て生徒の志望分野に対応した指導を行いました。さらに、一般
120
受験に向けて、説明会の充実を図り、早期から生徒の進路に係
100
る意識の向上に努めました。生徒を対象とした予備校講師によ
80
117
125
124
117
60
る勉強の仕方の講話(1学年)
、看護医療系進路説明会・大学教
82
40
授などを招いた上級学校模擬授業
(2学年)
、
卒業生進路講話
(2
20
16
14
9
11
12
0
学年)
、センター試験説明会の他、保護者のための進路講演会も
16年度 17年度 18年度 19年度 20年度
実施しました。
国公立大
難関私大
その結果、学校評価において、生徒の進路指導満足度が43%(19年度36%)
、保護者の進路指導満
足度が61%(19年度50%)に上昇しました。センター試験受験者は前年度に比べて37名増加しま
した。既卒生を含んだ合格者は、国公立大学が12名(19年度11名)
、難関私立大学が125名(19
年度124名)とほぼ横ばい(図2)でしたが、難関私立大学への現役合格者数が103名(19年度80
名)と23名増加し、現役合格率が72.5%(19年度72.2%)となりました。
■課題と改善の方策 生徒の進路指導満足度は、19年度と比べて上昇したものの、依然として生徒の半数以
上が満足していない状況にあります。入学当初には、30名以上が国公立大学を志望していますが、学年が
進むにつれて、受験科目の負担の少ない私立大学で妥協し、国公立大学を受験するに至らない生徒が少なか
らずいます。センター試験で6教科7科目を受験し、更に二次試験にも挑戦するなど、難関を突破しようと
する意欲のある生徒を育てていくためには、進路指導部と学年・教科が連携し、具体的支援策を講ずる必要
があります。例えば、入学時から生徒の進路意識調査や模擬試験等の結果を分析・蓄積(定点観測)して校
内全体での情報共有を促進し、授業改善に向けて校内研修を行うとともに、計画的かつ組織的に補習・補講
を整備し、個別面談を行うことなどが考えられます。また、ワークシートの有効活用や生徒の志望する大学
を卒業して活躍している社会人による講演や就業体験等、キャリア教育の一層の充実に努めていく必要があ
ります。生徒を粘り強く励まし、難関を突破することに対するモチベーションを高めていくことが大切です。
診断ポイント③ 生活指導 生徒の自己管理能力の育成
■取組内容と成果 生徒の自主、自律の精神を培い、学習と部活動・特別活動との両立を図るため、生徒部が
- 47 -
№8小金井北高校
中心となって、年7回の全校集会、ホームルーム指導及び部活動指導を軸とした指導を行いました。特に、
部活動では、毎週1回の部長会で、部活動のリーダーである部長の自覚を高めながら、あいさつの励行、校
内のルールや下校時刻の遵守等について指導し、部員への周知徹底を試みました。
4月には1年生を対象として、交通安全講話を実施し、7月にはPTAの広報誌を活用して、交通安全へ
の協力を保護者に呼びかけました。その結果、重大事故の発生はゼロになりました。10月には、東京弁護
士会の弁護士を講師として、携帯電話にまつわる犯罪被害防止を目的としたセーフティ教室を実施し、生徒
の危機対応能力の育成を図りました。
■課題と改善の方策 20年度は、自転車による事故が9件発生しました。全校集会、交通安全キャンペー
ン等を通して更なる通学マナーの向上を図るとともに、
「安全教育プログラム」を活用し、年間指導計画に
基づいた指導を行うなど、生徒自身の安全に対する意識を一層高めていく必要があります。また、保護者と
の連携の強化を図り、個人面談の充実等、生活指導を充実させて基本的な生活習慣(遅刻、服装、頭髪、あ
いさつ等)を確立していくことも大切です。
診断ポイント④ 特別活動・部活動 学校行事・部活動の更なる充実
■取組内容と成果 生徒の自主性を尊重しながら、学校行事・部活動の更なる充実に向け、時期を逸さず必要
な指導を行ってきました。合唱コンクール、文化祭では、企画書の点検に時間を割き、不十分なものは再提
出させました。また、文化祭では、展示物を見回り、好ましくないものは改善を促したりしました。合唱コ
ンクールでは事前指導を徹底し、体育大会では予行練習時に予選を実施し、時間を短縮しました。
部活動では、部活動指導委員会を中心に、部長会の運営等を通して部活動の振興を組織的に図りました。
運動部を対象に実施したトレーナー講習会では、生徒も教員も効率のよい体の鍛え方、ケガの予防などへの
意識を高めることができました。各部活動の結果は校内に掲示し、顕著な成績を挙げた生徒を校長室に招い
て励ますなど、生徒の成就感・達成感を高めてきました。その結果、部活動全体が活性化し、水泳部はイン
ターハイに出場し、写真部は全国高文連に出場、文芸部は関東大会に出場するなど大きな成果がありました。
部活動を通じて地域交流にも積極的に取り組みました。美術部は、7月の小金井市の市民祭りのポスター
を制作し、9月には、吹奏楽部が地域の障害者及び高齢者の方々70名を招き「ふれあいコンサート」を実
施しました。11月には、剣道部が地域の中学校を訪問し、合同練習会を行いました。7月と12月には、
学校周辺を17ブロックに分けて、部活動単位で清掃活動を行いました。
■課題と改善の方策 学校評価アンケートの結果では、「行事を通して自主性が育まれている」、「参加
してよかったと実感できる部活動が行われている」の項目には、19年度を上回る数の生徒が肯定的な
回答をしています。また、部活動加入率は、91%と高い水準を保っています。その一方で、全教職員
が声かけをして生徒に下校時刻を遵守させ、家庭での学習時間の確保に努めました。今後は、生徒が特
別活動・部活動で発揮するエネルギーを学習面にも向けていけるよう、更に生徒の意識を高めていく必
要があります。例えば、部活動の公式戦等の日程に関する情報を校内で共有し、夏季休業日及び冬季休
業日に講習優先期間を設けていくことが考えられます。また、年齢の近い卒業生等に依頼し、学習・部
活動双方からの支援を受け、部活動単位での土曜勉強会や朝学習等を実施するなど、特別活動・部活動
と学習の両立を図り、限られた時間を有効に活用することも必要です。
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 経営企画室の経営参画の推進
■取組内容と成果 経営企画室職員による経営参画に関する検討会を3回実施し、学校経営の一翼を担う執行
者としての意識向上を図るとともに、経営参画の方向性について常に共通認識をもって取り組んでいます。
経営企画室による厳正な予算の執行管理により、20年度決算における一般需用費の執行率は99%と高い
数値を示し、同時に各事業の進行管理の役割も果たしました。21年度予算編成では、学校経営計画に基づ
く目標の達成に向け、前年度の執行状況や費用対効果の分析を行い、無駄のない効果的な予算が編成できま
した。また、RKPに基づき、進学実績向上のための学習環境を整えるため、重点支援予算を有効に活用し、
懸案であった視聴覚機器の充実等が実現しました。学校PR活動においては、総務部と連携して、学校見学
会や学校説明会の受付、学校PR紙の校内作成等に取り組みました。行政職の専門性を発揮し、学校説明会
等の参加者のデータを分析し、次のPR活動に生かすなどの取組にも積極的に参画しました。
経営参画をより充実させるため、経営企画室は定例業務のスリム化に向けて積極的に業務改善に取り組ん
でいます。学校経営支援センターへの契約執行依頼を意図的に増やした結果、主要科目(一般需用費、役務
- 48 -
№8小金井北高校
費、委託料)のセンター執行の割合は68%(19年度53%)に上昇しました。
■課題と改善の方策 学校経営計画の実現に向けて、経営企画室が予算を入口として積極的な経営参画を
行っていることにより、学校経営活動の進行管理が適切に行われています。教職員の異動があっても、
現在のPDCAサイクルが有効に機能するよう、自律経営推進予算に関する教職員の理解を更に深め、
中・長期的な視野で継続性のある予算編成を目指していくことが大切です。経営参画を定着させ、更に
一歩進めるためには、経営の進行管理や学校評価の分析等の経営企画室に求められる具体的な機能及び
経営参画することで得られる効果について、より一層校内の共通認識を高めていく必要があります。
診断ポイント⑥ 募集・広報活動 募集対策・広報活動の充実
■取組内容と成果 総務部が中心となり、
「入りたい学校、入ってよかった学校」というコンセプトのもと、
教員による中学校訪問68校の他、在校生による出身中学
(図3)第一次募集最終応募倍率の推移
(倍)
2.00
校訪問83校を加え、151校を訪問しました。訪問後に
1.96
1.90
は、各教員が作成した報告書を基に、
「中学校が小金井北高
1.86
1.80
1.65
1.64
1.77
校に期待していること」等をテーマとした協議中心の校内
1.70
1.62
1.58
1.56
1.60
研修を実施しました。ホームページは2週間に1回の割合
1.59
1.52
1.50
1.50
1.49
1.41
で更新し、学校見学会・説明会の日程や申込方法等を記載
1.40
1.41
1.30
1.30
した「小北インフォメーション」というコーナーを新設し
1.20
ました。学校だより「小金井北」は紙面を刷新し、19年
1.10
1.00
度より3回多い10回発行し、近隣の郵便局にも配布を依
17年度 18年度 19年度 20年度 21年度
頼しました。新たに中学校の進路指導主任会及び私塾にお
(入試年度)
男子
女子
計
けるPR活動も始めました。
授業公開・学校見学会、学校説明会、夏季休業中見学会、中学校での説明会等に参加した中学生とその保
護者の総数は5412名に達し、前年度より1496名増加しました。そして、入学者選抜における最終応
募倍率は、前年度比0.45ポイント増の1.86倍となりました(図3)
。
■課題と改善の方策 組織的・効率的な広報活動を展開し、より多くの教員が関わっていくことが大切です。
ICT機器を導入し、先進的な取組を行っていることも学校の魅力の一つです。校内において更なる活用を
図るとともに、中学生を対象とした体験授業や出前授業、中学校教員を対象とした研修会等を実施すること
により、大きな効果が期待できます。
小金井北高校は、
「行きたい学校」の一つとなり、中学生とその保護者からとても大きな期待が寄せられ
ています。入学後にどのように生徒の学力を伸ばし、希望の進路を実現させていくか、真価が問われること
になります。生徒への学習支援の方策を明確にして、校内研修等で共通理解を図り、図式化するなどして生
徒や保護者に示し、実践に移していくことが大切です。
診断ポイント⑦ キャリア教育 教育課程の改善と「在り方生き方」の指導
■取組内容と成果 キャリア教育の視点を踏まえて、
「総合的な学習の時間」は「在り方生き方」を中心とし
た学習、すなわち、第 1 学年では「奉仕」の代替で「環境の中から学ぶ」
、第2学年では「学びの旅」
、第3
学年では「学びの輝き」をテーマに掲げる新たな学習へと転換しました。特に、第2学年では、小論文や英
語の多読指導等も導入し、主体的に進路について考察させるようにしました。また、東京農工大学との高大
連携による体験授業や地域の病院と連携した就業体験も実施しました。そして、生徒の進路実現に向けて検
討を重ね、21年度入学生からの教育課程を改善しました。第2学年では、文系(Ⅰ類)で数学B又は英語
Ⅰ、理系(Ⅱ類)で古典Ⅰ又は英語Ⅰからそれぞれ一つずつ選択することになっていましたが、新たに音楽
Ⅱ、美術Ⅱ、書道Ⅱ、被服製作、フードデザインを含め7科目から1科目を選択できるようになりました。
また、第3学年では、自由選択科目から8単位以上選択できるように改め、国公立大学受験を含む多様な進
こた
路にも応えられるようにしました。
■課題と改善の方策 小金井北高校では、新学習指導要領の趣旨を生かした教育課程の編成に向けて校内研
修を実施しています。キャリア教育の全体計画を考慮しながら、教育活動全体を見直すことが必要です。
「総
合的な学習の時間」を有効に活用するとともに、生徒にどんな力を付けていきたいのかを全教科の教職員で
検討し、教育課程を編成していくことが大切です。大学進学そのものを目的とするのではなく、大学進学後
の生き方まで含めて考える機会を生徒に提供していく必要があります。活躍する様々な社会人からの講話を
- 49 -
№8小金井北高校
聴くことは、生徒の視野を広げることにつながります。また、生徒に複数の就業体験ができる機会を提供す
ることも、職業観・勤労観を育成する上で有効な方法です。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■重点支援校指定の概要
○20~22年度の取組内容
・学力の伸長(土曜日の学習ゾーンの設置、予備校のサテライン講座の導入、隔週土曜授業の実施、補習・
補講の充実、自習室の設置とサポートティーチャーの導入)
・授業力の向上(
「学力向上研究誌」の発行、教員相互の授業公開週間の実施と研究授業の充実、 ICT
や視聴覚機器など教育機器の活用の研修の推進)
・教育課程の改善(国公立大学や難関私立大学への進学に応えられる新カリキュラムの策定、
「総合的な
学習の時間」の改善)
・組織的・計画的な進路指導(3年間を見通した進路の全体計画、年間指導計画の再構築、キャリア教育
の推進、高大連携の推進)
・学校行事・部活動の更なる充実(部活動の地域貢献及び中学生との交流(体験入部等)の実施、学校行
事や部活動の生徒の満足度の向上)
・組織的な募集対策・広報活動(教員による中学校訪問の実施、開校以来の制服の改定)
・経営企画室の経営参画(事業進行管理・予算執行管理と評価、渉外・PR活動の充実)
○ 主な目標(22年度末まで)
・1,2年生の家庭で「一日当たり1時間以上の勉強をする生徒の割合」を65%以上にする。
・研究授業を年15回実施する。 ・教育課程に関する校内研修を年6回実施する。
・国公立大学合格者を30名以上にする。
・難関私立大学合格者を150名以上にする。
・学校評価において生徒の「学校行事での自主性の育成」にかかる肯定的評価を85%以上にする。
・学校評価において部活動の満足度を90%以上にする。
・入学者選抜 「学力検査に基づく選抜」の最終応募倍率を1.80倍以上にする。
・センター執行の割合を70%以上にして、業務の効率化を図る。
■20年度の目標とその成果(概要)
学力の伸長
授業力の向上
教育課程の改善
重点目標(抜粋)
1時間以上の家庭学習(1、2年)55%
年間の研究授業10回
教育課程に関する校内研修会5回
国公立大学合格者20名
組織的・計画的な進路指導
難関私立大学合格者130名
学校行事・部活動のさらな 学校行事指導に関する満足度75%
る充実
部活動の満足度80%
募集対策・広報活動
「学力検査に基づく選抜」応募倍率1.70倍
経営企画室の経営参画
センター執行割合60%
達成状況(20年度末)
48%
10回
5回
国公立大学12名
難関私立大学125名
学校行事指導 59%
部活動
71%
1.86倍
68%
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
平成20年度重点支援校の指定を受け、生徒の学力向上を図り、生徒の進路実現を目指すため、「ラ
イジング小金井北プラン(RKP)」に基づき、土曜日隔週授業の実施、補習・補講の充実、教育課
程の改善等、様々な取組を実施してきたが、今回の学校経営診断により、改善点や課題がより明確に
なった。このことを教職員に周知して、具体的な改善への組織的な取組を推進していく。経営診断の
指摘にあるように、大学進学そのものを目的とするのではなく、その先の生き方まで含めて考える機
会を提供することは極めて大事なことであり、重点支援校3年目の目標の重点項目として、今後更に
キャリア教育の充実を図っていく。
(小金井北高等学校長 野口 眞幸)
- 50 -
№9清瀬高校
学
校
経
営
診
断
書
―
清
瀬
高
校
―
社会常識を身につけ、チャレンジ精神豊かなたくましい生徒の育成
所 在 地 清瀬市松山3-1-56
創
立 昭和47年10月26日
診断対象 全日制課程(普通科)
生 徒 数
20年度
720名(男370名〔51.4%〕、女350名〔48.6%〕)
21年度
719名(男370名〔51.5%〕、女349名〔48.5%〕)
20・21年度
重点支援校(20~22年度)
の主な指定等
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 「情熱・誠実・理想」の校訓を継承する文武両道の学校です。清高プロジェクト委
員会を中心に進学実績の向上を目指して、平成20年度からの3年間、重点支援校に指定されました。
部活動や学校行事が活発で、生徒・保護者の学校満足度が高い数値で推移しています。特に部活動の
加入率は、90%以上の高水準の中で着実に向上しています。ソフトテニス部、陸上競技部、少林寺拳
法部が関東大会に出場しています。また、清瀬高校杯(バスケットボール、バレーボール、ソフトテニ
ス)や生徒会主催の学芸ボランティアを実施するなど、地域や中学校との交流も積極的に行っています。
■特徴的な取組と成果 土曜日の8時30分から10時30分までを「学習の時間」と位置付け、部活動
を制限し、土曜講習を実施しています。また、自習室を設置し、図書館にパソコンを10台設置するな
ど、学習環境の整備にも取り組んでいます。
生徒が安易に指定校推薦に頼ることなく、
「行ける大学より、行きたい大学にチャレンジ」をキャッチ
フレーズに進路指導をしています。1年生から出前講義、キャンパス訪問を活用して大学の講義を受講
することで、早期から生徒の進路選択に係る意識を向上させようとしています。20年度卒業生の進路
決定率は、83.1%となりました。
6月に実施する地域連携事業「あじさいウィーク」には、毎年1200名以上の地域の方が来校しま
す。この時には、茶道部によるお点前の披露や箏曲部の演奏等を行っています。また、20年9月から
ホームページを日々更新し、日常の教育活動をタイムリーに情報発信しています。
■課題と改善の方策 文武のバランスを重視しながら実施している学校行事や部活動は、生徒の学校満足
度78%を支えています。これらの活動を通して得られる達成感・成就感は、より上位の目標設定につ
なげる向上心を育てます。進学指導においても、国公立大学や難関私立大学等の更に高い目標にチャレ
ンジしようとする自発的精神を養っていくことが大切です。また、キャリア教育の推進により生徒の進
路に対する意識啓発を図ること、生徒の多様な進路希望に対応するため、教育課程を見直して選択幅を
拡大すること、そして、授業改善に向けた努力を重ね、日々の授業を充実させていくことなど、学校が
一丸となって取り組むことが不可欠です。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 生徒の学習習慣の確立と教員の授業力向上
■取組内容と成果 意欲ある教員が自主的に行っていた講習を学校全体の「土曜講習」として確立し、国
語、数学、英語をはじめとして内容が充実してきました。また、自習室(30席)を設置し、土曜日の
午前8時30分から10時30分までを「学習の時間」と位置付け、部活動を制限するとともに、土曜
講習への参加、自宅学習又は自習室等での学習を推進してきました。自習室ができたことで、自主的に
勉強するグループ「勉強部」ができ、校内における学習する雰囲気づくりの推進役として、他の生徒に
も良い影響を与えました。部活動引退後の受験に向けた追い込みを支援するために、3年生対象の25
- 51 -
№9清瀬高校
講座の夏期講習、7時30分からの英語のモーニングレッスン等、補習の一層の充実に努めました。
生徒全員による「読書感想文コンテスト」を継続して実施し、優秀な作品を冊子にまとめ、最優秀作
品は校内放送で朗読しました。図書館の利用が進み、年間の図書貸し出し数は3300冊以上に達しま
した。図書館は、生徒の読書習慣の確立と調べ学習に大きな役割を果たしています。そこで、図書館機
能の一層の充実を図るため、総務部が中心となり、図書館充実長期計画を立案しました。現在、図書館
には、10台のパソコンが設置されており、生徒が活用しています。今後も、読書環境の整備とインタ
ーネット・電子メディアの更なる充実に向けて取り組んでいく予定です。
重点支援予算でプロジェクターやポスタープリンター等の視聴覚機器が整備され、ICT機器の活用
による効果的な授業の展開が可能になりました。また、校内研修も内容、回数ともに充実してきました。
生徒による授業評価を活用した校内研修の他、学力診断テストにより年に2回生徒の学力の推移を定点
観測するとともに、自宅学習時間や生徒の学習状況調査を行い、対応策を検討しています。さらに、教
員の授業観察終了後には、校長及び副校長から指導を行い、授業改善に結び付けています。
■課題と改善の方策 平日には、自習室及び図書室が満席になることがあり、更なる学習スペースの確保
が急務となっています。放課後の講義室や会議室等の使用計画を立て、生徒に開放するなどの対応が必
要です。土曜日には、生徒への対応が講習を実施している教員と部活動の顧問に偏ってしまう傾向があ
ります。学力向上を学校全体の課題として位置付け、卒業生等のサポートティーチャーを導入して生徒
からの質問に対応するなどの工夫を施しながら、全教科の教員が連携して授業を担当する学年だけでな
く全学年の生徒を支援していくことが大切です。また、生徒の学習習慣の確立に向け、教科の組織目標
に小テストの実施や週末課題・宿題の点検等を位置付けて、計画的に取り組んでいくことも大切です。
個々の生徒のニーズに応えていくため、主幹教諭・主任教諭によるOJTを推進し、教員全体の授業
力を向上させていく必要があります。特に、若手教員の授業力向上を推進することが大切です。近隣の
学校と連携して合同講習を行い、他校の教員の授業を観たり、他校の生徒を教えたりすることは、若手
教員育成に向けた有効な方法の一つです。
診断ポイント② 進路指導 生徒のチャレンジ精神高揚と進学実績の高揚
■取組内容と成果 入学時より、毎日10分間の朝学習、小テストの実施、英検受験の奨励、土曜日にお
ける自主的な講習、学年集会、保護者会等の活用等、生徒の学習及び進路に関する啓発活動を継続的に
行ってきた学年がありました。重点支援校への応募を契機に、進路部中心の組織的な進路指導への転換
を図り、学年主体の取組を学校全体の取組へと高めていきました。
20年度より学年と進路部が連携し、3年間を見据えた全体計画のもと、第1学年から「進路ノート」
を活用してキャリアガイダンスを実施しています。そして、生徒が安易に指定校推薦に頼ることなく、
「行ける大学より、行きたい大学にチャレンジ」をキャッチフレーズに進路指導を行っています。第1
学年の2学期には26の大学教授等による出前講義、3学期には
(図1)国公立及び上位私立大学
全員が文系・理系に分かれて武蔵大学と法政大学のキャンパスで
合格者数
(人)
60
54
の受講体験を活用し、早期から生徒の進路選択に関する意識向上
50
43
を図りました。さらに、学年と進路部が連携して進路ガイダンス
40
32
32
を、1年生は5回、2年生は8回、3年生は10回実施し、生徒
26
30
の進路にかかる意識の高揚を図りました。その結果、卒業生の数
20
が前年度より減少したにもかかわらず、20年度卒業生の進路実
10
績は、国公立大学及びMARCH等上位私立大学への合格者数が
0
16年度 17年度 18年度 19年度 20年度
前年度より増えて54名(前年度43名)となりました(図1)
。
また、進路決定率は83.1%(前年度82.3%)となりました。
■課題と改善の方策 MARCH等の上位私立大学への進学実績では、一定の成果が上がってきました。
しかし、生徒及び保護者からは、国公立大学や早慶等の難関私立大学への進路希望を実現させていくこ
とも期待されています。生徒の希望に対応できるよう、教育課程を見直して生徒の選択の幅を広げるこ
と、総合的な学習の時間の更なる活用を図ること、そして、全体計画に基づき、新たな職場訪問や現在
活躍している社会人の講演会を導入するなど、キャリア教育を推進し、早期から生徒の進路に係る意識
を更に高めて学習習慣を確立していくことが大切です。また、第1学年の3学期に文・理系別で一律に
- 52 -
№9清瀬高校
行っているキャンパス訪問先に生徒の志望校を取り入れるなどの工夫の余地もあります。
診断ポイント③ 生活指導 礼儀・規範意識の定着と基本的生活習慣の確立
■取組内容と成果 生徒の健全育成を重視し、生徒部でガイドラインを作成し、教職員の共通理解のもと
に、基本的生活習慣の定着に向けて取り組んできました。清瀬高校では、生徒会役員が毎朝、校旗を掲
揚し、正門であいさつ運動を行っています。教職員は、継続して登校時に正門や駐輪場等で自転車のマ
ナー、遅刻、制服の着崩し等に対する指導を行いました。また、月に1度の全校集会では、部活動で顕
著な成績を挙げた生徒の表彰や校歌の歌唱指導等を行い、生徒の学校に対する帰属意識を高めてきまし
た。その結果、生徒の「あいさつをする習慣」が定着し、自転車の乗車・通行マナー等にも改善が見ら
れ、近隣からの苦情が減少しました。
■課題と改善の方策 厚生部が中心となって日常の清掃、ゴミの分別等について指導を行いました。学校
訪問者からは良い評価をもらう反面、不十分であるという指摘もあります。生徒の自転車の乗車・通行
マナーには改善が見られましたが、学校の周囲には狭い道路があり、引き続き安全に対する意識を高め
ることが必要です。奉仕の時間における環境保全活動等を推進するとともに、全校集会、学年集会及び
ロングホームルームの時間等に「安全教育プログラム」や「人権教育プログラム」を有効に活用するな
どして、安全に関する意識や人権意識及び公共心を育てていくことが大切です。
診断ポイント④ 特別活動・部活動 部活動・学校行事等の推進
■取組内容と成果 清瀬高校には、充実している部活動や学校行事等に期待して、意識の高い生徒が入学
してきます。伝統的に生徒の自主運営を尊重し、文化祭・体育祭・合唱コンクール等の学校行事では、
生徒がスタッフとして主導し、企画・運営を行ってきました。この特色を生かし、部活動の顧問からも
積極的に学業との両立に向けた働きかけを行いつつ、部活動における技術・技能の向上や学校行事等の
一層の充実に努めてきました。また、外部指導員による体のケアについての相談会を月に1回実施し、
部活動におけるコンディションづくりについて、生徒の意識が一層高まりました。そして、ソフトテニ
ス部が9年連続で、20年度は少林寺拳法及び陸上競技部(走り幅跳び)も関東大会に出場するなど、
大きな成果を挙げることができました。20年度の部活動加入率は93%、学校評価における生徒の学
校満足度は78%、保護者の学校満足度は90%といずれも19年度よりも高くなりました。
■課題と改善の方策 清瀬高校では、文武両道を維持し、知・徳・体のバランスを重視しつつ生徒のチャ
かんよう
レンジ精神の涵養を図っています。受験において一歩上を目指して自発的にチャレンジする精神を養う
ためには、特別活動や部活動での達成感・成就感が不可欠です。文化祭・体育祭・合唱コンクール等の
学校行事においては更なる質の向上、部活動においては公式戦での上位進出やインターハイ等上位の大
会への進出、コンクールでの入賞等、更に高い目標設定につなげて、向上心を育てていく必要がありま
す。限られた時間で最大限の効果を出すために、特別活動や部活動で先進的な取組をしている学校を調
査して視察するとともに、交流事業や合同練習会等を導入するなどして、生徒と教師が一体となり、目
まいしん
標に向かって邁進していくことが大切です。
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 組織体制の確立と進行管理
■取組内容と成果 重点支援校への応募に際して、プロジェクトチーム(清高プロジェクト委員会)を立
ち上げました。清高プロジェクト委員会は、学力向上委員会とチャレンジ委員会の2つから成り立って
います。学力向上委員会では、主幹教諭1名と教科代表者4名が進学に向けた生徒の学力向上に取り組
み、自習室の設置、土曜講習の実施及び進路ノートの導入と活用といった具体策を着々と実現させてい
ます。現在、この委員会が土曜講習の取りまとめと教員を対象としたアンケート調査を実施し、校内研
修の実施及び教科会の活性化に向けて主導的な役割を果たしています。
重点支援校としての達成目標の具現化に向けてアクションを起こし、改革の推進役となる役割を担っ
ているのが、チャレンジ委員会です。チャレンジ委員会は4名の主幹教諭で構成されます。現在、チャ
レンジ委員会では、21年度からの勉強合宿の実現に向けて企画・立案を行っています。
■課題と改善の方策 かつて19あった委員会を精査し、14にまで絞りました。更に各委員会等の機能
の充実とスリム化に努めながら、校務分掌の再編成を図り、校務分担の効率化に向けて取り組んでいく
必要があります。ラインの関係を強化し、主幹教諭をリーダーとして21年度から導入された主任教諭
- 53 -
№9清瀬高校
を介して若手等の教諭を育成できるよう、組織の機能を重視した研修会を導入することで、それぞれの
校務分掌及び委員会等の活性化を図っていくことが大切です。
診断ポイント⑥ 地域連携 地域連携の推進
■取組内容と成果 PTAと連携して、6月に恒例の地域連携事業「あじさいウィーク」を実施しました。
吹き抜けドームでは、茶道部によるお点前の披露、昇降口ホールでは箏曲部の演奏と合唱部の発表を行
いました。1285人の地域の方々が来校し、生徒との交流が深まり、学校の教育活動を紹介する広報
活動としても大きな効果がありました。
運動部活動地域連携事業(文部科学省指定14~16年度)や部活動推進指定校(東京都教育委員会
指定16~18年度)として活動した取組も継続し、外部指導員の活用や中学生対象の女子バスケット
ボール、女子バレーボール、ソフトテニスの大会(清瀬高校杯)を運営しました。また、生徒会を中心
とした特別支援学校との交流会や小学校における学童保育の活動も継続して行いました。さらに、部活
動では、ダンス部、吹奏楽部、茶道部、筝曲部が地域の福祉施設を訪問しました。
■課題と改善の方策 あじさいウィークは、学芸部(文化部)の生徒にとっても、部活動の発表を通して
地域住民との交流を図ることのできる貴重な機会となっています。この期間中には、地域の商店街に横
断幕が掛けられるなど、清瀬高校はまさに地域の学校として期待されています。また、運動部で実施し
ている清瀬高校杯は、部活動を通して、地域の中学生の高校進学に向けたモチベーション向上に大きく
貢献しています。地域交流の体験は、部活動における技術・技能の向上に加え、生徒自身の視野を広げ、
人間的に大きく成長させる効果があります。さらに、清瀬高校の校内で、学芸部の生徒や生徒会役員等
の企画・運営により、地域の小・中学校、特別支援学校及び地域住民等を招き、清瀬高校の学芸部の生
徒と合同で舞台発表会を実施するなどの新たな取組を加え、開かれた学校づくりを推進していくことが
望まれます。
診断ポイント⑦ 広報活動 広報活動の充実
■取組内容と成果 20年9月に学校ホームページをリニューアルし、毎日更新して、日常の教育活動の
様子をタイムリーに伝えるとともに、学校からのお知らせ
(図2)ホームページアクセス件数
〔1日当たり〕
(件)
や証明書申請案内を掲載するなど、一層充実した情報発信
500
430
450
に努めました。その結果、1日当たりのアクセス件数が平
400
350
均で430件(19年度215件)となり、半年で約10
300
215
250
万件のアクセスとなりました(図2)
。
「ホームページを通
195
200
して、知りたかった学校の様子がよく分かった」という声
150
99
100
49
が寄せられるなど、都民の学校に対する関心の高さを再認
50
0
識することができました。また、夏季休業中には、PR委
16年度 17年度 18年度 19年度 20年度
員会を中心として集計・分析した過去の地区別入学生のデ
ータを基に、教員全体で100校の中学校訪問を行いました。学校説明会は、当初の計画では2回の予
定でしたが、5回実施しました。その結果、学校説明会への参加者数は1318名(19年度比383
名増)となりました。入学者選抜第一次募集の応募倍率は、男子が1.83倍(19年度1.48倍)
で、女子が1.56倍(19年度1.41倍)
、男女合計で
(図3)第一次募集最終応募倍率の推移
(倍)
2.00
は、1.70倍(19年度1.45倍)といずれも高倍率
1.83
1.90
となりました(図3)
。
1.80
1.70
1.59
1.70
■課題と改善の方策 学習意欲が旺盛な生徒の応募を促進
1.60
1.48
1.43
1.50
1.43
するよう、更なる広報活動の工夫が必要です。入学後の生
1.45 1.56
1.40
1.39
1.41
1.25
1.30
徒の学校満足度を更に上昇させ、実際に前向きな学校生活
1.36
1.29
1.20
1.17
1.10
を送っている生徒の生の声を出身中学校に届けていくこと
1.09
1.00
が効果的です。また、生徒の学力が向上していることがわ
17年度 18年度 19年度 20年度 21年度
男子
女子
計
かる資料の作成・配布を行うことで、出身中学校を通して
中学生とその保護者からの信頼度が上昇し、意欲ある生徒の応募につながる原動力となります。日々
の授業の充実がその原点であることは言うまでもありません。教員一人一人が授業改善に向けた努力
を重ね、ホームページ等を活用してその取組の様子を情報として発信していくことが大切です。さら
- 54 -
№9清瀬高校
に、中学校を対象として出前授業を実施し、清瀬高校の授業の魅力を積極的に広報していくことも有
効な方策です。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■重点支援校指定の概要
○20~22年度の取組内容
・
「わかる授業」
「魅力ある授業」への工夫・改善
20年度 土曜講習の質及び量の充実、特別進学講座及び勉強合宿の実施
21年度 数学の習熟度別授業の実施
22年度 特別進学クラスの設置
・計画的な進路指導とキャリアガイダンス
20年度 進路ノートを活用したキャリア教育の実施(第1学年から)
21年度 希望生徒へのインターンシップの実施(看護体験など)
22年度 ショートホームルーム及びロングホームルームを活用したキャリア教育の推進
・部活動の推進及びホームルーム活動や学校行事等の特別活動の活性化
20年度 部活動外部指導員(トレーナー)の配置
21年度 ホームルーム年間指導計画の作成と計画的なホームルーム活動の実施
22年度 地域連携事業の拡大
○主な目標(22年度末まで)
・学習指導の充実 ①自宅学習時間を90分以上にする。
②年間の図書貸し出し数を4400冊、一人当たりの平均貸し出し数を6.1冊
以上にする。
③研究授業回数を年8回以上にする。
・進路指導の充実 ①現役進路決定率を90%以上にする。
②国公立・私立難関大合格者数(延べ数)を25人以上にする。
③MARCH現役合格者数(延べ数)を60人以上にする。
・特別活動・部活動の充実 ①部活動加入率を93%以上にする。
②都ベスト32以内の部を10部以上にする。
■20年度の目標とその成果(概要)
重点目標(抜粋)
現役進路決定率向上
英検受検者の拡大
部活動参加者の拡大
図書貸し出し数の増大
中学校訪問校数の拡大
入学選抜倍率向上(第一次募集)
86%
20%
91%
年間 3600冊以上
110校
1.5倍
学校生活の満足度向上
85%
自宅学習の定着
90分
国公立及び上位私立大学合格者数の増加 60人
達成状況(20年度末)
83.1%
12.4%
93%
年間 3300冊以上
100校
1.7倍
78%
65分
54人
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
生徒・保護者の願いである、「希望する進路の実現」を目指して、進路指導の充実を図り進学実績
を向上させることが学校の信用につながっていく面もあると考えている。そのために進路指導と学力
向上の検証を組織的に行って教職員の共通理解とし、教育課程改編等の新たな策を推進していく。ま
た、ホームページ等を活用して、その改善状況や授業改善に向けた教員の取組を公表していくことも
必要であると考える。
こた
重点支援校の負託に応えるために、進路指導と部活動の指導・発展に力点を置き、今後とも清高生
一人一人の人間力を高めていく。
(清瀬高等学校長 山﨑 廣道)
- 55 -
№10 葛飾商業高校
学 校 経 営 診 断 書
― 葛 飾 商 業 高 校 ―
資格取得・部活動・奉仕体験に取り組み、
調和のとれた人格形成のもと進路希望を実現します。
所 在 地 葛飾区新宿3-14-1
創
立 昭和37年4月1日
診断対象 全日制課程(商業科・情報処理科)
生 徒 数
20年度
595名(男233名〔39.2%〕、女362名〔60.8%〕)
21年度
563名(男213名〔37.8%〕、女350名〔62.2%〕)
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 商業科・情報処理科を設置し、普通教科の基礎・基本を重視するとともに、専門教
科である商業に関する専門性の深化を図り、自己教育力のある心豊かな職業人の育成に取り組んでいる
学校です。葛飾区内から6割、足立区、江戸川区を加えると9割の生徒が通学する地元密着型商業高校
こた
として、地域のニーズに応え、堅実で着実に成果を挙げています。
■特徴的な取組と成果 「検定の葛商」といわれるほど、
「生徒全員に基礎的な検定を合格させる」
「一人
も不合格者を出さない」という徹底した指導を行い、確実に実績を積み上げてきています。また、生活
指導については、
「葛商では髪染めNO」というスローガンのもと頭髪指導の徹底を図るとともに、毎
朝の遅刻指導や制服指導にも、全校体制で取り組んでいます。これらの取組から、学校生活は落ち着き
を保ち、生徒が社会人として必要なビジネスマナーの習得に向けた環境が整いつつあります。さらに進
路指導では、就職を希望する多くの生徒に対して、一人一人の進路実現に向けた指導を行っています。
その結果、平成20年度は進路決定率が89.9%に達するとともに、就職を希望する生徒の第1社目
の内定率は80.8%であり、就職希望者全員が内定しています。
■課題と改善の方策 普通教科において教員は、自作プリントや確認テストを使用するなど、基礎学力の
定着を図るため、生徒が自ら学習を行うことができるような指導方法の工夫がみられます。しかし、ま
だ、教科で組織的に取り組む体制が整っていません。教務部を中心として、普通教科で最低限身に付け
させる項目を整理し、専門教科へとつなげていくことが必要です。また、授業規律を確保するために、
組織的かつ継続的な生活指導を実践し、教員全員による統一的な指導を行うことも大切です。さらに、
商業科と情報処理科の教育課程の特色化を図るとともに、伝統的な商業教育が積み重ねてきた実践と時
代のニーズに即した指導内容の調和を図ることで、商業教育の充実が期待されます。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 専門科目における指導力の育成と普通科目の授業力の向上
■取組内容と成果 「検定の葛商」を目指し、個に応じた指導の充実を図るため、専門科目集中授業を1・
2学期末定期考査後、資格指導の集中講習を2学期末に6日間、3学期初めに3日間実施するなど、放
課後や週休日において個別に補習を行っています。その結果、20年度は、日本商工会議所(以下、日
商)が実施する日商簿記検定2級に5名、ワープロ検定1級に25名合格しました。全国商業高等学校
協会(以下、全商)が実施する全商簿記実務検定では、1年生の90.9%が3級に合格し、これらを
契機として生徒のほとんどは、高度な資格試験にも積極的にチャレンジしています(図1)
。さらに、
全商が実施している検定試験のうち、4種類で1級に合格する「全商4冠」を2名が達成しました。ま
た、一方では、普通教科を中心とした基礎学力の向上にも取り組み、英語や商業科目でティーム・ティ
ーチングによる授業や少人数・習熟度別授業等により、きめ細かな指導を実施しています。
■課題と改善の方策 専門科目と普通科目の生徒の興味・関心を比較したところ、取組姿勢に差異がある
ことがわかりました。検定科目には真剣に取り組みますが、その他の科目は苦手意識もあり、授業の集
- 56 -
№10 葛飾商業高校
中力を持続できない生徒もいるのが現
状です。学校評価アンケートでの生徒
の家庭学習時間に関する質問の回答で
は、
「全くやらない」が70.3%とな
っており、生徒に家庭学習を習慣づけ
るために、教科の枠を越えた全校的な
取組が必要です。
今後は、各教科で取り組む補習体制
の強化と、きめ細かな個別指導の質を
高め、普通教科と専門教科が課題を共
有し、基礎学力を定着させることで、
高度な資格取得への意欲を高めていく
ことが重要です。
(図1)平成20年度 各種検定合格率
100
全国
(%)
9 6 .4
90.9
91.1
7 6 .4
74.0
80
葛飾商業
91.5
71.0
60.8
58.5
60
48.6
40
20
0
簿記3級
簿記2級
ワープロ3級 情報処理3級 情報処理2級
診断ポイント② 進路指導 3年間の計画的なキャリア教育の推進
■取組内容と成果 1年生では、普通教科における基礎基本を重視し、自己理解を図るための基礎力テス
ト、適性・性格検査を実施しています。2年生では、総合的な学習の時間を活用して、勤労観・職業観
の育成を図り、個々の生徒の実態に合わせた面接・作文指導を行っています。3年生では、夏季休業日
に進路面接、就職対策補習、企業等の訪問を行い、生徒の進路希望に応じた取組を通して、生徒の進路
実現に向けたキャリア教育の推進を図っています。特に、就職希望者には、面接や履歴書作成等の指導
を繰り返し、丁寧に行い、公務員希望者には、2年生から本格的に指導を始め、3年生では朝補習を実
施しています。その結果、就職希望生徒の第1社目の内定率が、19年度の67.9%から20年度は
80.8%へ上昇し、最終的に就職希望者全員の内定を得ました(図2)
(図3)
。
(図2) 進路先の推移
2
29
20年度
30
91
26
0
12
19年度
32
21
18年度
102
36
22
100
6 9
(人)
0
20
40
進学 〔四年制大学・短期大学〕
60
80
進学 〔専門学校等〕
■課題と改善の方策 「進路の手引き」を活用して、
キャリア教育の充実に向けて取り組んでいます
が、学年が主体となって指導を行うため、組織的
な進路指導の確立が不十分です。そのため、1・
2年生では、将来の進路についての具体的なイメ
ージがもてず、生徒自身による目標設定が難しく
なっています。今後、1年次から系統的・具体的
な指導を行うことができるように、進路指導部が
主体となって計画的に指導を行い、学年、教務部
及び生活指導部と連携を図りながら3年間の計
画的なキャリア教育を推進する必要があります。
- 57 -
100
120
就職 〔民間企業〕
140
160
就職 〔公務員〕
180
その他
(図3)就職希望者の1社目内定率
85
(%)
80.8
80
75
70
68.8
67.9
18年度
19年度
65
60
20年度
№10 葛飾商業高校
診断ポイント③ 生活指導 授業規律の定着に向けた取組
■取組内容と成果 生活指導の充実を目指し、生徒の半数以上が就職する実態を踏まえ、実社会で必要と
される基本的生活習慣を身に付けさせるために、あいさつなど、礼儀のマナー向上に取り組んでいます。
遅刻、欠席をさせないために朝の校門指導等を実施し、各学期に遅刻指導週間を設定するなど、生徒の
意識啓発を目指しています。また、冬期の校内での服装の乱れの改善に取り組み、スウェットパンツ、
パーカー等の預かり指導を行うなど、生活指導を進めています。生徒の間には、
「葛商では髪染めNO」
が浸透し、以前に比べて大幅に改善され、学校運営連絡協議会の地域を代表する協議委員から信頼を得
てきています。
■課題と改善の方策 20年度当初に特別指導等が増加したことにより、学年と生活指導部が連携を図っ
て指導の充実に努めましたが、授業中、生徒に落ち着きが見られない状況がありました。しかし、授業
中の携帯電話の使用制限や飲み物指導を継続してきめ細かく行ったことで、授業規律が向上してきてい
ます。今後、授業規律の定着に向け、チャイム着席の指導など、学校全体が同じ指導方針のもと、組織
的に取り組み、全教員が毅然とした態度で指導を行うことが大切です。
診断ポイント④ 特別活動・部活動 行事・部活動の活性化
■取組内容と成果 18・19年度の2年間、部活動推進校の指定を受けた
ことで、部活動に対する目的意識の高い生徒が入学しています。指導教員
や外部指導員の活用により、レスリング部の関東大会出場(図4)
、硬式
野球部の東京都秋季大会ブロック準優勝等の成果が出ています。また、生
徒総会、体育祭、文化祭等の学校行事などでは、生徒会や各実行委員会に
対して、担当教員が生徒の主体的な活動を促すよう、具体的な方向性を示
したことで、生徒が自主的に運営するようになってきています。
■課題と改善の方策 生徒にとって成就感、充実感を味わうことのできる機
(図4)レスリング部の活動
会を増やすことが、生徒の学校に対する帰属意識を高めることになります。
部活動加入率が近年、50%台で推移していますが、部活動加入率の向上と部活動の質的向上に向けた
取組を行うために、活発に活動している部を中心に、リーダーシップを発揮する生徒を育成することが
学校の活性化につながっていきます。
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 経営企画室との連携を深めた校内体制の整備
■取組内容と成果 経営企画室の経営参画機能を高めるために、予算調整会議、各種委員会において、経
営企画室職員が資料の作成・会議の進行等を行い積極的に参加しています。また、環境美化にも取組ん
じゅうき
でおり、施設設備の計画的整備や什器類の配置を行っています。さらに、全日制、定時制の間で、生徒
の活動場所や時間調整を図るために全定連絡会を開催するなど、副校長間や生活指導部間において、連
携・調整が図られています。
■課題と改善の方策 学校全体で、日ごろから業務改善を行うとともに、情報交換や連絡を密にし、教員
と経営企画室職員との適切な役割分担に基づく連携を強化していくことが必要です。また、学校評価ア
ンケートの結果を活用し、新たな課題に対して共通認識を図り、教員と経営企画室職員とが一体となっ
て、学校評価の分析を行い、具体的改善策を提案することが望まれます。
診断ポイント⑥ 広報・募集活動 学校の広報活動・募集対策の工夫・改善
■取組内容と成果 教員による中学校訪問と併せて、進路決定した生徒が母校の中学校を訪問し、受験体
験談や3年間の高校生活の様子を伝えるなど、ユニークな活動を行っています。また、学校運営連絡協
議会やPTA・同窓会と協働した広報活動の推進を目指しています。具体的には、地域商店街等へ学校
PRポスターを掲示したり、文化祭での新企画となるPTA主催による「プロのジャズコンサート」を
行ったりするなど地域に密着した活動を行っています。
■課題と改善の方策 学校評価アンケートによると、
生徒の学校に対する満足度が50%となっています。
かいり
生徒が学校に求めるものと、学校が生徒に求めているものに乖離がみられます。学校は、評価結果を分
析するとともに、生徒や保護者に対し、商業高校の教育活動を十分に説明するとともに、入学後の生徒
こた
のニーズに応えられるよう、学校として、特色ある教育活動をPRすることが大切です。また、経営企
- 58 -
№10 葛飾商業高校
画室は、都民サービスの視点に立った窓口業務、広報活動の促進を図るとともに、広報担当の教員との
連携を推進する必要があります。
診断ポイント⑦ 地域貢献の推進 教科「奉仕」による地域連携の定着
■取組内容と成果 2年生で学習する総合的な学習の時間では、
教科「奉仕」を代替で実施し、花づくり体験や地域清掃活動
(図5)を行っています。また、日本環境協会のメンバーと
連携を図り、環境問題を中心とした地域とのつながりを目指
し、公園での二酸化炭素排出量の測定や遊具チェック等の奉
仕体験活動を実施しています。生徒は、商店街や地域の方か
ら「ありがとう、頑張っているね。
」などと声をかけられるこ
とにより、感謝されることに励まされ、生徒が自ら進んで貢
(図5)参道の清掃
献する活動へとつながっています。
■課題と改善の方策 地域のお祭りで、硬式野球部やサッカー部の生徒が、会場設営や後片付けを手伝った
り、ダンス部がダンス演技を披露したりするなど、地域に密着したボランティア活動を実践しています。
今後もこのような活動を通して、
「葛商」を積極的にアピールしながら、奉仕体験活動が教員主導から
生徒の自主的な活動へと発展していくことが望まれます。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■20年度の目標とその成果(概要)
重点目標(抜粋)
①検定合格率
専門教科の各種検定3級全員合格
②進路決定率
・就職希望生徒の第1社目の内定率70%
・進路決定率 90%
③生活指導
遅刻、欠席をさせない指導の徹底
④部活動加入率
60%
⑤生徒の学校満足度
60%
⑥入試応募倍率
本校を第1希望で受検する中学生の確保
達成状況(20年度末)
全商簿記検定3級
90.9%
全商情報処理検定3級 91.5%
全商ワープロ検定3級 91.1%
80.8%
89.9%
各学期に遅刻指導週間を設け、意識
啓発の強化を図り、遅刻の改善が見
られない生徒に対する段階的な個
別指導の実施
3年間皆勤 11名
精勤 13名
50%
53.8%
校内学校説明会参加者数 347名
一次入試 商業科
1.11倍
情報処理科 1.39倍
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
学校再生への取組に対して、一定の評価を得られたことは、教職員の自信と励みにつながる。葛商
では、学習指導・生活指導・進路指導・募集対策・地域貢献等の分野において、改善に向けて真摯に
取り組んでいるが、道半ばの状況となっている。今回の学校経営診断により、すでに進行している部
分も含めて解決すべき課題が提示されたことで、改善への方向性が一層明確となった。今後は、一つ
ずつ課題を乗り越えて「商業教育を通した人づくり」「地域とともに成長していく葛商」に向けて、
全教職員一丸となって邁進していく。
(葛飾商業高等学校長 小山 公央)
- 59 -
№11 忍岡高校
学
校
経
営
診
断
書
―
忍
岡
高
校
―
単位制による7つの学習系列と進路希望の実現
所 在 地 台東区浅草橋5-1-24
創
立 明治44年3月25日
診断対象 全日制課程(単位制 普通科・生活科学科)
生 徒 数
20年度
670名(男170名〔25.3%〕、女500名〔74.6%〕)
21年度
668名(男156名〔23.4%〕、女512名〔76.6%〕)
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 普通科及び生活科学科を併設する単位制高等学校として、都立高校改革第一次実施計画に
基づき、平成18年4月より新たにスタートした学校です。95年の歴史と伝統のある忍岡高等学校と商業・
家庭の専門高校として歴史と実績をもつ上野忍岡高等学校が発展的に統合し、進学希望の実現や将来のスペシ
ャリストの基礎を培う教育の充実を目指しています。そのために、入学時からの系統的なキャリア教育を推進
することで生徒一人一人の進路目標を明確にさせ、単位制の特色を生かした自由な時間割の編成によって学習
指導の充実と進路の実現を図っています。
■特徴的な取組と成果 学習指導では、習熟度別指導(数学、英語)や少人数指導(体育、家庭)による授業の
実施、土曜日や長期休業日中等の補習・補講を通して個別指導の充実を図っています。その結果、
「学校評価報
告書」の「習熟度別指導や少人数指導」の項目では、両学科ともに約60%の生徒が肯定的に評価をしていま
す。
進路指導では、1年次より「総合的な学習の時間(普通科)
」及び「生活産業基礎(生活科学科)
」の中で職
業理解・学問理解を深め、自己の在り方生き方を考えながら、自己の進路目標を設定していきます。また、生
徒自らが学習系列を決定し、
系列ごとのモデル時間割の提示を基に、
生徒一人一人の時間割編成をしています。
3年次には、普通科及び生活科学科ともに「キャリアガイダンスⅡ」の授業の中で、進路希望分野に関する実
践的な指導を展開しています。その結果、現役進学率(四年制大学・短期大学・専門学校等)は、普通科で7
8%、生活科学科で87%となっています。
また、特色ある教育活動として「日本の伝統文化」
(図1)では、華道・茶道・日本舞踊などを、
「文化総合」
では、モダンバレーや演劇などを12講座開講しており、定員に対する受講率は78.8%でした。
■課題と改善の方策 これまでの取組や成果を踏まえ、今後、単位制高校の特色を生かしながら更に生徒の学力
向上を図り、進路実現させていくことが課題といえます。そのために、定期的な教員相互による授業観察の実
施や教科内での3年間を見通した授業計画等の研究・研修など、
教員の授業力向上を図ることが必要です。
また、長期休業日中の講習の拡大実施や四年制大学進学希望
者に対する平日の補習・補講の一層の充実を図ることで、生徒
の進路希望達成率を更に上げ、生徒・保護者の学校に対する満
足度を高めることができます。
校長のリーダーシップのもと、組織的な学校運営の一層の推
進を図り、校務分掌や学年の組織目標設定、中間総括、年度末
総括、次年度への課題と改善策を明確にしたPDCAマネジメ
ントサイクルをより厳格に実施し、学校経営計画を実現するこ
(図1)「日本の伝統・文化」の授業風景
とが重要です。また、主幹会議等を活用して、定期的に学校全
体に視野を向け課題解決策を話し合う機会を設定していくこと
も考えられます。
- 60 -
№11 忍岡高校
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 学力の向上を目指した取組
■取組内容と成果 習熟度別指導(数学、英語)や少人数指導(体育、家庭)による授業によって、分かりや
すい授業の展開が図られています。20年度の学校評価報告書の結果では、
「習熟度別指導や少人数指導が力
をつける上で十分だと思うか」という問いに対して、肯定的な回答をした生徒の割合は、普通科63.7%、
生活科学科59.2%と、前年度より普通科で23.0%、生活科学科で13.7%向上しました。
また、生徒の学力向上を図るために、土曜日・放課後の補習・補講を積極的に実施しています。長期休業
日中の夏期講習では、普通科15講座、生活科学科24講座が開かれ、549名の参加がありました。冬期
講習では、両学科で7講座、60名の参加がありました。こうした取組は、生徒の進路希望の実現や学力の
向上に寄与しており、学科改編後初めての卒業生となった20年度卒業生の四年制大学・短期大学の現役進
学率は、普通科55%、生活科学科53%となりました。
■課題と改善の方策 単位制の特色を生かして、
「数学・理科系列」
「文学・社会重点系列」
「文学・社会総合系
列」
「総合系列」
「服飾・デザイン系列」
「食物科学系列」
「生活科総合系列」と7つの学習系列が用意されて
います。今後、この系列と生徒の進路希望をより明確に結びつけることで、生徒の学力向上と進路希望の実
現率を高めていくことが大切です。そのために、生徒の実態に応じた系列の見直しを検討すること、各系列
におけるモデル時間割の作成、3年間を見通した体系的な「シラバス」を作成して、生徒の学習活動を支援
していくことが考えられます。
また、外部の模擬試験を定期的に実施して、生徒の成績を集計・分析した結果を、四年制大学進学に向け
た学習指導や進路指導に活用していくことや、校内研修の中で、学習系列の現状と課題を分析し、忍岡で目
指すべき授業の在り方等を検討していくことが考えられます。
診断ポイント② 進路指導 進路希望の実現に向けたキャリア教育の取組
■取組内容と成果 進路指導の柱として、キャリア教育を授業の
(図2)普通科 進路決定割合(20年度卒業生)
中で取り入れています。
「キャリアガイダンスⅠ」
(普通科 1 年)
「生活産業基礎」
(生活科学科 1 年)では、生徒一人一人に、
浪人その他 20%
自己の在り方生き方を考えさせ、職業理解や学問理解を深め
ています。
「キャリアガイダンスⅡ」
(普通科・生活科学科 3 年)
就職 2%
では、進路指導部の系列担任を中心にして系列別、分野別(四
四年制大学 46%
年制大学・短期大学分野、専門学校分野、就職分野、その他看
護等の分野)の進路希望に応じて実践的な学習に取り組み、生
専門学校 23%
徒の進路希望の実現を目指しています(図2)
(図3)
。
また、高大連携では、國學院大学・東洋大学・聖徳大学での
短期大学 9%
の講義の聴講や、國學院大学・女子栄養大学・杉野服飾大学等
の教授による出前授業により、生徒の学問理解や進学意欲の向
上に役立てています。
■課題と改善の方策 単位制における進路指導の充実を図るため、 (図3)生活科学科 進路決定割合(20年度卒業生)
進路指導部の系列担任とホームルーム担任が更に連携し、生徒
一人一人に応じたきめ細かい指導体制を確立していくことが必
浪人その他 9%
要です。そのためには、現在、進路指導部会として実施してい
四年制大学 28%
就職 4%
る、各学年の進路担当者が出席する定例部会を継続させるほか、
系列担任とホームルーム担任との連絡会を実施して、生徒の情
報を共有化し、指導に活用していくことが考えられます。
また、夏季休業日中における系列担任とホームルーム担任に 専門学校 34%
よる生徒・保護者面談などの実施が考えられます。
短期大学 25%
診断ポイント③ 生活指導 生活指導と人権尊重教育の充実
■取組内容と成果 学校生活では、
「落ち着いた雰囲気で学習できる環境」
「社会に貢献し、
、
いじめのない学校」
、
せっさたくま
「互いのよさを認め合い、切磋琢磨する集団」を学校の方針に掲げて、生活指導部と学年担任が連携し、あ
いさつの励行、服装の着こなし、頭髪の指導等を推進しています。また、ノーチャイム制の導入や有名デザ
イナーによる制服を採用などにより、
生徒の自律的な行動や態度を促し、
落ち着いた校風が培われています。
- 61 -
№11 忍岡高校
さらに、人権尊重教育の充実を図るために、全校生徒対象の人権課題に関する講話を行うとともに、映画
「With 若き女性作家の生涯」を鑑賞し、人権の意義や重要性について理解を深める教育を充実させています。
■課題と改善の方策 重点目標である年間皆勤者30%以上が達成できませんでした(12.7%)
。遅刻者数の
減少に向けて、生活指導を改善する全校的な組織運営が求められます。
また、
「生活指導マニュアル」にそって、生徒指導部主導による指導体制を構築し、服装、頭髪、装飾品、遅
刻等の指導を、統一した基準で、生徒・保護者にわかりやすく取り組むことが必要です。
さらに、心の悩みを抱えた生徒への対応については、生徒の不安や警戒心を解き、安心して話ができる環境
を整えることが重要です。必要に応じてホームルーム担任、養護教諭、生活指導部などの関係者によるケース
会議を開催し、生徒一人一人の人権に留意しながら解決策を話し合うことも考えられます。
診断ポイント④ 特別活動・部活動 生徒の主体性を伸長させる特別活動の取組
■取組内容と成果 部活動では、剣道・卓球・将棋などが同好会から部への昇格を果たし、放課後や土曜日等に
活発に活動しています。また、テニス・吹奏楽・陸上競技・女子バレーが中心となって、20年度には初めての
夏季合同合宿を実施し、65名の生徒が参加しました。
生活科学科では、教科「奉仕」における奉仕体験活動として、千代田区にある「いずみこどもプラザ」と連
携して、近隣の小学生を対象とした料理教室を実施しています。生徒の主体性をはぐくむ教育活動を推進する
とともに、地域交流によって学校への高い評価を得ています。
また、忍岡高校の特色である「日本の伝統文化」
「生活科学科課題研究」等の学習成果発表の場として、芸術
祭を、大学・専門学校との教育連携記念事業として開催しました。地域からも254名の参加者が集い、芸術
面の1年間の成果を広く紹介することができました。
■課題と改善の方策 狭小なグラウンドや校内の限られた施設・設備等を利用して、他校との部活動の合同練習
会を開催するなど、部活動の幅を広げていくことも必要です。20年度の学校評価報告書では、
「生徒会活動が
活発だと思いますか」との問いに対して、肯定的な評価が前年度と比べて、普通科では15%増加しています
が、生活科学科では12.7%減少しています。生活指導部の担当者やホームルーム担任が、生徒会活動の充
実を図るために意図的・計画的な指導を行い、生徒が主体となる文化祭や体育祭など学校行事の活性化を図っ
ていく必要があります。また、奉仕体験活動では、生活科学科の特色を生かした活動を工夫して行い、地域と
の交流を深めていくことも重要です。
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 全教職員の協力体制を構築する取組
■取組内容と成果 進路指導部キャリア課、教務部、ホームルーム部各学年課の連携により、三者面談の実施、
小論文指導、系列や進路希望の選択・決定などにおいて、組織的に生徒一人一人を指導する体制が整備されて
きています。また、企画調整会議、主幹会議、職員会議が適切に実施されており、学校経営の効率化とともに
経営実践層である主任等の力量向上が図られています。
■課題と改善の方策 組織的に役割分担をして、生徒を指導する体制は整備された一方、進学指導における小論
文指導は進路指導部の担当、生活指導はホームルーム担任といった業務の固定化の傾向も見受けられます。
生徒一人一人の興味・関心を伸ばすため、有機的に機能できる組織体制を検討することが必要です。校務分
掌ごとの強みを生かした効果的な指導ができるように役割分担を見直し、組織を再構築することも考えられま
す。主幹会議を活用して、学校の教育課題や解決策を検討し、校内研修等で教職員に報告していくなど、ミド
ルリーダーとしての役割を果たしていくことで、校長の学校経営計画を実現していく必要があります。
さらに、校内 LAN を整備し、生徒の出席や成績を管理するシステムを構築し、教職員の情報共有や円滑な
職務遂行を図っていく必要があります。
診断ポイント⑥ 健康安全教育 安全安心な学習環境の整備
■取組内容と成果 安全安心な学習環境に向けた具体的な取組として、薬物乱用防止、ハイテク犯罪防止、交通
安全指導などの各教室を開催し、生徒の学校生活の安全に配慮した教育活動に努めています。
また、家庭科の教員を中心にして、東京都食育推進計画に基づき、保護者との連携による食生活・食習慣の
充実を図っています。地域での菓子料理教室では、マーガリンを用いたクッキー作りを行い、地域祭りでは、
自作のお菓子を提供するなど、地域に密着した取組として高い評価を受けています。さらに、普通教室への加
湿器の設置や学校庭園(蓬菜園)池への循環器の設置など、生徒の学習環境や学校の美化環境の整備に努めて
います。
■課題と改善の方策 生徒が安全な学校生活を送る上で、
携帯電話やインターネットによるネット犯罪に対して、
全校集会や保護者会等を通して、被害の防止に対する生徒・保護者への啓発を行っていくことが重要です。特
- 62 -
№11 忍岡高校
に、携帯電話については、家庭でのルールを決めて、有害サイト等への不正なアクセスができないようにフィ
ルタリング機能を推奨していくことが大切です。
また、友人関係や家族関係などで悩みを抱えた生徒への対応として、
「特別支援教育に関する校内研修等への
講師派遣事業」
(教育庁指導部)を活用して、生徒への適切な対応方法等を教職員で共有するための校内研修会
を開催することも考えられます。
診断ポイント⑦ 広報活動 様々な情報媒体を活用した広報活動の工夫
■取組内容と成果 テレビでの制服の紹介、
「忍岡高校便り」の発行・地域への配布、学校説明会において、中学
校・保護者のニーズにあったプレゼンテーションの工夫等を行いました。その結果、21年度入学者選抜にお
(図4)応募倍率の推移
いて、推薦、一般ともに、応募倍率は1.5倍を
(倍)
超えました(図4)
。
3
2.89
また、
「学校訪問対応マニュアル」を作成した
ことにより、学校全体で学校訪問に対応できる
普通科
2.29
1.90
推薦入試
2
1.91
普通科
ようになり、学校説明会や体験入学の参加者数
1.77
一般入試
1.11
1.51
家庭科学科
も増加し、中学生・保護者の忍岡高校に対する
1.33
推薦入試
1.44
1.03
家庭科学科
1
理解が深まりました。
一般入試
1.09
0.89
■課題と改善の方策 今後、学校の教育活動の充
実を図る上で、入学者選抜における応募倍率を
0
19年度
20年度
21年度
確保していくことが課題です。そのために、学
校説明会や体験入学で、学校行事や部活動の映像を放映したり、在校生によるプレゼンテーションを行ったり
して、学校の様子をわかりやすく伝えていくことが必要です。
また、中学校訪問を積極的に行い、忍岡高校をアピールしていくことが必要です。さらに、ホームページの
充実を図ることやパブリシティの活用によって、特色ある学校行事や授業などをわかりやすく紹介していくこ
とが考えられます。
他にも、
単位制による普通科と生活科学科の特色を打ち出したPR誌を経営企画室と連携して発行するなど、
効果的な広報活動を行い、中学校・保護者の学校へのニーズを掘り起こしていく必要があります。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■20年度の目標とその成果(概要)
重点目標(抜粋)
①四年制大学及び短期大学進学希望者の第
80%以上
一進路希望の実現
②専門学校進学率
100%
達成状況(20年度末)
100%
③就職希望者決定率
90%
100%(7 名)
④生徒による授業評価
70%以上
77.0% 肯定評価
⑤「日本の伝統文化」
「文化総合」 受講率
70%以上
78.8%
⑥三者面談
100%
100%
⑦年間皆勤者
30%以上
⑧志願者
1.2倍
12.7%
普通科(推薦:1.90 倍一般:1.51 倍)
家庭科(推薦:2.71 倍一般:1.77 倍)
60%
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
普通科・生活科学科を併設する単位制高校の特色を生かした学習指導・進路指導・生活指導及び広報活動
の取組と成果について、ある程度評価していただいた。その一方で、生徒の学力向上と進路希望の実現を目
指して、生徒指導体制を整備してきたが、業務・役割分担の固定化、分掌間の連携不足等、組織的な取組を
推進するうえでの課題が明確となった。
これまでの取組を見直し改善を図るため、組織目標を設定して進行管理を行っているが、今後は、診断結
果を踏まえ、PDCAマネジメントサイクルをより効果的に実施して全教職員の協力体制を構築し、学校経
営計画を実現していく。
(忍岡高等学校長 清水ゆかり)
- 63 -
№12 荒川商業高校
学 校 経 営 診 断 書
― 荒 川 商 業 高 校 ―
「進化する荒商!」
所 在 地 足立区小台2-1-31
創
立 昭和35年4月
診断対象 全日制課程(総合ビジネス科)
生 徒 数
20年度
602名(男148名〔24.6%〕、女454名〔75.4%〕)
21年度
615名(男165名〔26.8%〕、女450名〔73.2%〕)
20・21年度 「目指せスペシャリスト(スーパー専門高校)
」
の主な指定等 (文部科学省 平成18~20年度)
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 平成18年度から20年度まで、文部科学省「目指せスペシャリスト(スーパー専
門高校)
」の指定を受け、実学としての商業教育を実践するとともに、資格取得や在り方・生き方教育
にも力を入れ、生徒の進路実現を目指している学校です。模擬株式会社「レガロ工房」では、企画提案
型・情報発信型商業高校として、生徒のデザインした荒川商業高校PRラッピング都電の運行、近隣遊
園地の看板作成、地域商店街のPRフラッグ制作、商店のホームページ作成など、地域と連携した様々
な活動を展開しています。
■特徴的な取組と成果 「レガロ工房」を中心とした実践的な教育活動とともに、生活指導部、学年が中
心となってきめ細かな生活指導を継続した結果、基本的生活習慣の改善が進み、中途退学率の減少につ
ながっていることは特筆できます。また、各種検定資格取得率も向上し、進路未決定者も減少傾向にあ
ります。
■課題と改善の方策 文部科学省「目指せスペシャリスト(スーパー専門高校)
」の指定を契機に、
「レガ
ロ工房」が重要な教育活動となっていることから、今後この活動をいかに発展・継続していくかが大き
な課題です。教育課程の改善を含め、中長期的な展望を明確にもち、組織的かつ継続的に教育活動を推
進できる体制づくり及び指導者育成が重要です。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 総合ビジネス科の各系列におけるスペシャリストの育成
■取組内容と成果 2年次以上では、各系列における系列必修科目等において、
「レガロ工房」の活動の一
部を含め実践的な授業を展開しています。3年次の選択科目として、多様な学校設定科目(
「ビジネス
計算」
(マーケティング系列)
、
「ビジネスデザイン」
(デザイン系列)
、
「Webデザイン」
(情報系列)
、
「経済演習」
・
「珠算道」
・
「ビジネスアート」
(専門選択科目)等)を開講し、生徒の興味・関心に応じ
た教育活動を実践しています。
また、系列毎の学習の成果を生かし、
「販売士検定」
「秘書検定」を取得させるなど、実社会で有用な
検定資格取得の指導体制を整備した結果、日本商工会議所販売士検定1級科目合格2名(3年生)
、2
級合格2年生4名、3年生4名を輩出しました。
■課題と改善の方策 各系列の学習成果を生かし、希望の進路に応じた資格取得を推進するために、各
系列において、指導計画を明確にしたり系列間の調整を図ったりするなど、資格取得に向けた校内体制
をより一層整備する必要があります。
また、系列選択に当たっては、生徒の第一希望を優先してクラス編成をすることから、1年次におけ
る総合的な学習の時間「ライフプラン」を軸に、生徒が自らの進路適性に応じて適切に系列を選択でき
る指導内容・体制を維持・改善することが必要です。
- 64 -
№12 荒川商業高校
診断ポイント② 進路指導 在り方生き方の教育と資格取得の取組
■取組内容と成果 1年次で、
総合的な学習の時間
「ラ
(図1)ビジネスライセンスC級取得率の推移
イフプラン」を計画的に実施し、卒業生による職業
(%)
講話を実施するなど、職業意識、勤労意識の向上を 100
88
82
図りました。
80
70
毎年、「インターンシップ」の実施方法に改善を
重ね、20年度は10社で実施し、30名の生徒が
60
参加しました。また、あわせて専門学校見学会を実
40
施し、生徒の進路希望に応じたインターンシップを
実施しました。
20
補習指導を充実した結果、多くの生徒が、簿記検
0
定、情報処理検定、商業経済検定、ワープロ実務検
18年度
19年度
20年度
定等において複数の検定に合格しました。これらの
検定の3級に3種目合格すると与えら
(図2)進路状況の推移
れる、荒川商業高校独自の表彰制度で
(%)
70.0
あるビジネスライセンスC級を取得し
た生徒は、19年度より6%増加し、
60.0
58.1
88%に向上しました(図1)
。
57.2
50.0
51.4
このような取組をはじめとする、
「レ
46.3
43.3
40.0
ガロ工房」を軸とした多様な教育活動
25.7
の結果、進路未決定者の割合が、17
28.4
30.0
24.4
22.6
年度以降減少傾向にある(図2)こと
17.6
20.0
22.6
は大きな成果です。
21.1
10.3
15.3
8.6
10.0
■課題と改善の方策 進路未決定者の更
5.5
5.5
9.3
4.0
2.2
なる減少に向けて、基礎学力の定着を
0.6
2.9
4.3
4.4
0.0
図るとともに、各系列の専門性に応じ
16年度
17年度
18年度
19年度
20年度
就職(縁故・自営・公務員含)
四年制大学
た多様な進路選択を実現できるよう、
短期大学
専修学校・各種学校
より一層の授業改善・充実が必要です。
家事手伝い・その他・未定等(19年度から留学予定含)
具体的にはまず、校内研修等で目指す
べき授業や進路指導の在り方について共通理解を図ることが大切です。その上で、生徒自身の進路意識
を高め、学習習慣を身に付けさせるための個別指導を充実したり、系列ごとまたは全校的に研究授業の
機会を積極的に設定したりするなどの方法が考えられます。
診断ポイント③ 生活指導 基本的生活習慣の向上と中途退学率減少への取組
■取組内容と成果 生活指導部、学年を中心に、毎
(図3)中途退学率の推移
(%)
朝登校時にあいさつや身だしなみに対する指導
6.0
や遅刻指導を行うとともに、ホームルーム等で定
4.9
4.6
4.5
期的な身だしなみ指導に取り組んでいます。他の
4.0
教育活動とあわせ、教員が生活指導を含め様々な
4.0
3.2
場面で生徒とかかわることが、生活習慣の改善に
結びついているといえます。学校評価アンケート
2.0
においても、約7割の保護者、生徒が、基本的な
生活習慣が身に付けられるような適切な指導が
行われていると回答しています。
また、学年を中心としたきめ細かな指導により、 0.0
16年度 17年度 18年度 19年度 20年度
中途退学率は年々減少しており、20年度は3.
2%でした(図3)
。
■課題と改善の方策 学校評価アンケートにおいて、
「生徒の話をよく聞いていない」という生徒の意見も
- 65 -
№12 荒川商業高校
あることから、学校の指導方針をより明確にした上で、家庭との連携を一層充実させながら、生活指導
の充実を図る必要があります。また、他の教育活動とともに、制服着用やあいさつの徹底など、基本的
なマナー指導を継続し地域からの信頼を重ねることが、生徒の意識を一層高め、基本的生活習慣の向上
と中途退学率の減少につながると考えます。
診断ポイント④ 特別活動・部活動 全国研究発表等への取組
■取組内容と成果 20年11月、東京都を代表して、全国商業高等学校協会主催「全国生徒商業研究発
表大会」
(香川県高松市)で、生徒が研究の成果を発表するなど(図4)
、生徒自らが活動の成果を様々
な機会で発表し、学校内外から高い評価を得ました。このことは、生徒や教職員の自信と誇りにつなが
っています。
(図4) 平成 20 年度 全国研究発表等への取組
年
月日
発表会名
平成20 11月2・3日 全国産業教育フェア 大阪大会
主な内容
場所
作品展示及び「都電もなか」等の販売
大阪・アジア太平洋トレードセンター
「進化する『レガロ工房』」発表 香川・サンポートホール高松
全国高等学校生徒商業研究発表大会
12月14日 専門高校・総合学科高校学習成果発表会 活動発表及び展示
都教職員研修センター
平成21
2月6日 「目指せスペシャリスト研究開発事業」研究発表会 研究成果発表
東京北区・北とぴあ
2月17・18日 総合ビジネス科卒業制作展
「レガロ工房」の紹介その他作品展示 都議会議事堂1階 都政ギャラリー
11月13・14日
また部活動では、珠算部が、第55回全国高等学校珠算競技大会に出場し、個人部門で入賞しました。
また、硬式テニス部、サッカー部、バレーボール部などが、地区大会や商業高校大会等で入賞するなど、
今後の活躍が期待されます。
■課題と改善の方策 学校経営計画に基づいた生徒の育成を図るために、今後も、生徒による発表の場を
積極的かつ適切に設定していくことが有効です。また、これまで行われてきた様々な取組内容を発展・
継続させていくためには、全教職員の共通理解を図るとともに、活動の検証・改善を含めた校内研修を
定期的に実施するなどの方策が必要です。
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 学校経営の透明化の実践
■取組内容と成果 「レガロ工房」や教科「奉仕」
(総合的な学習の時間で代替)をはじめ、地域との連携
のもとで実施された教育活動について、生徒自らが発表する機会を積極的に設定することにより、学校
経営面においても、学校PR活動の促進及び地域、連携機関への情報発信を図りました。また、
「生徒
による授業評価」の評価項目及び集計方法等の改善を図り、評価結果を踏まえた校内研修を実施し、授
業改善に取り組みました。
学校ホームページを月に2~3回程度更新し、学校行事、授業等の情報発信に努めるとともに、情報
系列学校設定科目「Webデザイン」における商店街ホームページ製作実習で作成した生徒作品を公開
するなど、積極的に教育活動を紹介しています。
■課題と改善の方策 20年度学校評価アンケートにおいて、地域からの回答が10名と非常に少ない結
果でした。今後は、地域や保護者から適切な評価結果が得られるようアンケートの回収率を高めるとと
もに、
「レガロ工房」での活動や学校ホームページ、授業公開等を通した情報発信をより一層積極的に
行い、開かれた学校づくりを推進していくことが必要です。さらに、学校経営の透明化に向けて、数値
目標を明確に掲げるとともに、生徒による授業評価を含め教育活動に対する内部評価結果に基づいた改
善点を広く発信するなどの方策が考えられます。
診断ポイント⑥ 地域との連携 地域と連携した教育活動の取組
■取組内容と成果 全校生徒が各系列や教科「奉仕」
(総合的な学習
の時間で代替)等の学習において、都電のラッピング(生徒のデ
ザインによる荒川商業高校PRラッピング都電の運行)
(図5)
、
近隣遊園地の看板作成や地域商店街のPRフラッグ制作、商店の
ホームページ制作、荒川区と足立区の青少年健全育成かるたの絵
札制作、荒川河川敷清掃、保育園児とのジャガイモ堀り(図6)
など、地域と連携した様々な活動を行いました。
また、全都の小中学生を対象に第6回東京都小中学生招待珠算
- 66 -
(図5) ラッピング都電
№12 荒川商業高校
競技大会を開催し、70名の参加がありました。地域と連携した
教育活動については、学校評価アンケートにおいても生徒、保護
者等から高い肯定的評価を得ているとともに、広報活動にも効果
をあげています。
■課題と改善の方策 地域と連携した教育活動をより一層充実させ
ていくためには、各教科・科目だけではなく、学校としての組織
的な取組に拡大していくことが大切です。積極的に意見交換の場
を設けるなど、地域の意見を受け止め、地域と連携した教育活動
を常に評価、改善できる体制を整備することが必要です。
(図6)保育園児とのジャガイモ堀り
診断ポイント⑦ 企画提案型・情報発信型商業高校 模擬株式会社「レガロ工房」活動の取組
■取組内容と成果 模擬株式会社「レガロ工房」では、生徒が各系列の学習に取り組む中で、全生徒を社
員と考え、体験実習を重視した実践的な活動をしてきました。
20年度は、地域の「創造パートナー」を目指し、イベント企画、商品開発・提案、ポスター製作、
Web制作等を行い、地域の活性化に大きく貢献しました(図7)
。
(図7)模擬株式会社「レガロ工房」の主な活動実績(17~20年度)
学校ポスター・学校案内・オリジナルキャラクター
小台・宮城地区 夏祭りポスター
花やしき アクターズスタジオ 生徒募集ポスター
日暮里・舎人ライナー開業記念イベントポスター
足立区内 菓子メーカー ロゴデザイン
荒川区 「あらかわの心」カルタ
荒川区保健所 受動喫煙防止タグデザイン
都電サブレ パッケージデザイン
東京都交通局 マナー啓発ポスター
足立区役所 あだち環境かるた
あらかわ遊園 看板デザイン
など
小台大通り商店街振興組合 イベントポスター・フラッグ
■課題と改善の方策 「レガロ工房」は、荒川商業高校の大きな特色であり、教育活動の核として位置づ
けられていることから、今後この活動をいかに発展・継続していくかが大きな課題です。特に、中長期
的な活動計画と地域との信頼関係の構築が不可欠です。指導者育成の観点からも、教職員の共通理解を
図るとともに、組織的なOJTを継続的に実施していくことが必要です。また、企画提案型・情報発信
型商業高校として、地域のニーズを的確に把握していくことが求められます。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■20年度の目標とその成果(概要)
※
① ビジネスライセンスC級 の取得者
② 中学校の教職員を対象とした説明会の実施
重点目標(抜粋)
1年次で80%
2回
達成状況(20年度末)
88%
5回
③ 中途退学率
5%以下
3.2%
※簿記、情報処理、商業経済、ワープロ実務検定のうち3級に3種目合格すると与えられる荒川商業高校独自
の表彰制度
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
この度、学校経営診断を受けて日頃から本校が課題としてきた内容や項目について改めて指摘を受
け、至急改善する必要があると思った。
・進路指導において、系列ごとの専門性に応じた多様な進路選択の実現という点については、本校
の抱える大きな課題であり、全教職員一丸となって対応すべき課題である。実のある校内研修を軸
として、課題解決に向けて努める。
・学校評価アンケートの地域からの回収率の低さもこれまでの課題であったが、至急、回収率の高
い学校の手法などを学び、適切な評価結果を得られるようにしたい。
(荒川商業高等学校長 森田聖一)
- 67 -
№13 美原高校
学
校
経
営
診
断
書
―
美
原
高
校
―
伝統の礎を築き、美原生の未来を拓く
所 在 地 大田区大森東1-33-1
創
立 平成17年4月1日
診断対象 全日制課程(単位制普通科)
生 徒 数
20年度
696名(男246名〔35.3%〕、女450名〔64.7%〕)
21年度
710名(男284名〔40.0%〕、女426名〔60.0%〕)
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 美原高校は、全日制普通科単位制の高校として、平成17年4月に大田区大森東の地に
かんよう
開校し、20年3月に初めての卒業生を送り出しました。開校以来、
「自律共生」の涵養を教育目標とし、
「伝
統の礎を築く」ことを目指して、 (1)個性を伸ばし、自律心を育成する学校、(2)生徒の進路希望を実現する
学校、(3)地域に根ざした学校づくりを推進しています。
■特徴的な取組と成果 教育課程には「文化・芸術・コミュニケーション科目群」
「情報・サイエンス科目群」
「スポーツ科目群」
「生活・福祉科目群」の4つの選択科目群を設置し、文系・芸術系、理工系・情報系、体
育系、生活・福祉系などの大学への進学を目指し、生徒の多様な進学希望に対応しながら進路希望の実現に
向けて教育活動を進めています。
また、3年間を見通した系統的、計画的なキャリア教育を実施しています。
「総合的な学習の時間」を活用
し、生徒が3年間の学習で成果を積み重ねていくことによって、将来に向けた生活設計を考え、行動力を身
に付けられるように実践的な学習活動を行っています。この「総合的な学習の時間」を活用したキャリア教
育を「Gateway To Careers -未来への扉-」と名付け、生徒の自律心を育成しています。また、職業研究を通
じて、多様な進路希望に対応させながら、卒業後の進路未決定者を出さないように努めています。
これまでの学校評価アンケートでは、
「学校生活は充実していますか」
(図1)や「美原高校に入学してよ
かったと思いますか」
(図2)に対し、約70%の生徒が肯定的な評価をしています。
■課題と改善の方策 単位制の長所や学年制との相違点が、学校として十分に示されていません。まずは、単
位制普通科高校としての特長を明確にし、共通理解を図ることが求められます。
また、単位制普通科高校としての特長や美原高校の多様な選択科目の内容、施設・設備の充実度等につい
て十分に周知し、広報活動を工夫することで、応募倍率の向上に結び付けることが求められます。
一方、単位制の特色である科目選択の過程等で、生徒の様々な悩みに対応したきめ細かな教育相談活動を
充実させることが期待されます。スクールカウンセラーを積極的に活用し、組織的な教育相談体制を構築す
ることが必要です。
(図2)美原高校に入学してよかったと思いますか(生徒)
(図1)学校生活は充実していますか(生徒)
5.7
29.0
20年度
47.9
17.5
30.6
20年度
43.5
17.5
8.4
5.0
31.8
19年度
0%
20%
そう思う
46.1
40%
ややそう思う
60%
あまりそう思わない
17.1
80%
25.2
19年度
100%
そう思わない
0%
43.6
20%
そう思う
- 68 -
40%
ややそう思う
22.5
60%
あまりそう思わない
80%
そう思わない
8.6
100%
№13 美原高校
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 分かる授業、家庭学習の定着を目指した学習指導の工夫
■取組内容と成果 全学年の数学、外国語(英語)の一部科目において、2クラス3展開の習熟度別授業を実
施しています。習熟度別授業、少人数授業の実施により、入学時に生じていた、数学や外国語(英語)にお
ける生徒間の学力差の減少が見られます。
また、校内LAN等のICT機器を活用した授業研究をテーマに校内研修を行い、ICT機器を生かして
わかりやすい先進的な授業の実践に向けた準備に取り組んでいます。
さらに、授業を発展させた内容の学習を目的に、土曜日講習を実施しています。20年度は、土曜日講習
を前期に3回、後期に6回の計9回実施し、数学は47名、英語は61名が受講しました。
■課題と改善の方策 習熟度別授業、
少人数授業は一定の成果がみられるものの、
「生徒による授業評価」
では、
クラスによる評価方法の違いや年度途中で希望するクラスに変更ができない点等の課題を指摘されました。
今後、校内研修を活用するなどして、習熟度別授業及び少人数授業の成果と課題を組織全体で共有し、課題
解決に向けて組織的に取り組むことが大切です。
また、放課後に実施している授業内容の復習や基礎的な内容の補習は、現在、教員個々の取組となってお
り、組織的な取組になっているとは言えません。教科の枠を越えて組織的な取組となるよう指導体制を構築
することが求められます。学習支援体制確立のための具体的な方策を明確に打ち出した上で、生徒の個別的
な学習目標に応じた指導の充実を図ることが必要です。
診断ポイント② 進路指導 継続的・計画的な特色あるキャリア教育の推進
■取組内容と成果 総合的な学習の時間を中心とした「Gateway To Careers ―未来への扉―」の実践を通し
て、キャリア教育を組織的、計画的に推進しています。キャリア教育の充実により、進路未決定者(浪人含
む)については一期生が34名(15.2%)であったのが、二期生は27名(12.7%)に減少しまし
た(図3)
。進路指導部が3年間を見通した指導計画を立てており、職業や資格、上級学校、職業についての
個人研究や卒業後の新生活準備学習など、生徒の実態に合った学習内容の工夫が図られています。
「Gateway
To Careers ―未来への扉―」は美原高校の特色ある教育活動として定着しつつあります。
進路指導部と各学年が連携し、キャリア教育の取組状況も組織的なものとなっています。開校から5年間、
特に実力テストの分析結果を生徒への学習指導や進路指導に生かしてきたことで、学校評価における「総合
的な学習の時間は充実しているか」の問いに対し、約60%の生徒が肯定的な評価をしています(図4)
。
■課題と改善の方策 生徒の実態を把握し、また、生徒自身が「自分を知る」ために、進路適性検査、学力診
断テスト、実力テスト、小論文テストを実施しています。しかし、実力テスト以外の結果については、継続
的な蓄積と分析が十分に行われていません。テスト等の実施を生徒の進路実現に向けた学力向上の機会にす
るとともに、分析結果を蓄積し、学習指導や進路指導に意図的、計画的に活用する方法を確立することが大
切です。引き続き、進路指導部を中心に他分掌や学年と連携を図り、より一層充実した進路指導を推進する
ことが求められます。
(図3)1期生・2期生の進路実績
38.7
2期生
10.8
(図4)「総合的な学習の時間」は充実していますか(生徒)
32.1
12.7
20年度
15.2
48.0
19年度
15.1
48.5
24.3
12.5
5.7
35.3
1期生
11.2
0%
29.9
8.5
50%
四年制大学
短期大学
専門学校
15.2
100%
就職
浪人・他
0%
20%
そう思う
- 69 -
40%
ややそう思う
27.2
60%
あまりそう思わない
80%
そう思わない
9.2
100%
№13 美原高校
診断ポイント③ 生活指導 基本的生活習慣を確立させる指導の充実
■取組内容と成果 美原高校の生活指導は「あいさつの励行」
「制服を着こなす」
「集団生活のルールとマナー
を守る」の3点を指導の重点とし、生徒部を中心に組織的に取り組むことができました。生徒は基本的な生
活習慣やマナーを守り、美原高校の生徒としての誇りをもっています。このことが、3年生の卒業後の進路
に向けた準備を順調に始めさせています。
■課題と改善の方策 20年度末修了式時に頭髪に課題があった生徒は全体の7.2%でした。今後はこの減
少を図ることが必要です。また、引き続き、進路指導と連動させ、
「総合的な学習の時間」の授業内容の充実
を図り、生徒の学習意欲の向上と家庭学習の定着をねらいとした生活指導を組織的に推進することが求めら
れます。学年集会等における頭髪一斉指導や遅刻指導週間の設置、授業時巡回の取組をこれまで以上に充実
させ、落ち着いた学習環境を維持することを期待します。
診断ポイント④ 特別活動・部活動 部活動の振興と強化に向けた取組
■取組内容と成果 特色ある特別活動としては、学習指導、進路指導、学校生活の三点を指導の重点とした1
年生の宿泊行事「Ice Breaking Camp」を実施しています。
「Ice Breaking Camp」では、美原高校における3年間の学習の道筋を理解させ、
「Gateway To Careers ―
未来への扉―」と連動した進路学習の機会として実施しています。学習面では、自分に適した学習の進め方
を身に付け、継続的に目標をもって学習が進められるようにすることを指導の目標にしました。また、生活
面では、生活行動の自律性を高め、他者と協調を図り、学級、学年への帰属意識を高めることを指導の目標
としました。
また、部活動では、18、19年度の文化・スポーツ等特別推薦による入学者が活躍しています。女子バ
レーボール部(図5)が20年5月に関東大会に出場しました。21年2月に都立学校女子バレーボール選
手権大会で優勝しています。
■課題と改善の方策 サッカー部(図6)や女子バレーボール部は地元中学校との合同練習に積極的に取り組
み、美原高校の地域交流に貢献しています。地域交流を通して大田区、品川区の中学生には美原高校の運動
部活動の様子についてPRすることができました。今後は、同様の取組を更に充実させ、港区や台東区など
にも活動の地域を広げることで、より一層、交流活動を推進するとともに、文化・スポーツ等特別推薦によ
って入学希望者を発掘し、これまで以上に運動部活動の活性化と強化に生かすことが期待されます。
(図5)女子バレー部
(図6)サッカー部
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 諸会議を生かした組織的な学校経営の実現に向けた取組
■取組内容と成果 週1回、経営企画室長、主幹教諭による主幹室長連絡会を校長が開催しました。効率的な
企画調整会議の運営に資するよう、企画調整会議の予備的な会議に位置付け実施しました。この会議の実施
は、結果的に学校経営上の様々な課題への迅速な対応に生きています。
また、各分掌や学年の進行管理については、校長が作成した進行カレンダーの活用が図られています。管
理職、各分掌主任等により、様々な事業等の進ちょく状況を相互に把握し、充実した教育活動の実践に結び
付いています。
■課題と改善の方策 単位制普通科高校としての特色を明確に打ち出し、それを教職員全体で共有することが
- 70 -
№13 美原高校
大切です。また、意欲的に学校づくりへ参画し、授業力の高い教員を継続的に育成できる組織体制づくりが
求められます。
20年度末までに作成した教職員用学校マニュアル「教職員ハンドブック」の積極的な活用を図り、すべ
ての教職員が、
美原高校の教育理念と、
美原高校の伝統を生徒が創造していくことの重要性を理解した上で、
日々の教育活動を遂行していくことを期待します。
診断ポイント⑥ 教育相談 生徒の心の問題に対応した教育相談活動の充実
■取組内容と成果 多様な選択科目から生徒が自ら選択して学習する単位制の特色により、ホームルーム単位
で行わない授業も数多くあることから、生徒の様々な悩みにきめ細かく対応するために、教育相談活動を行
っています。担任とスクールカウンセラーが連携してミーティングを行うとともに、スクールカウンセラー
によるカウンセリング理論の研修や、精神科医による、思春期の生徒にみられるメンタルヘルスに関する課
題についての研修など、年4回の研修会を実施することができました。
■課題と改善の方策 生徒の心の問題に対応した教育相談活動の充実については、スクールカウンセラーを積
極的に活用しながら、教職員のカウンセリング・マインドの向上を図り、きめ細かく対応することが重要で
す。特定の教員やカウンセラーのみに頼るのでなく、定期的なケース会議の開催など、学校全体で組織的な
教育相談体制を構築することが求められます。
診断ポイント⑦ 募集・広報活動 応募倍率の向上と入学者の定着を目指した広報活動
■取組内容と成果 応募倍率の向上を目指して、PRビデオを製作し、体験授業を1回実施することができま
した。21年度入学者選抜の応募倍率は、推薦で1.87倍、一般で1.20倍となりました。
また、学校広報の一環として、地域の青少年対策委員会、小学校、中学校の地域連絡協議会などに参加す
ることもできました。さらに、和太鼓部が大森消防署主催の消防団総合訓練大会や「大森 海苔のふるさと館」
の開館式などに出演して好評を得ることができました。こうした取組を通して、地域や関係諸機関に美原高
校の教育活動に対する理解や協力を得ることができました。
■課題と改善の方策 美原高校を広報する上で、単位制と学年制との相違点が十分に周知されていません。単
位制普通科高校としての特長を明確に示した上で、学校案内や学校広報誌の改善を図るなどの積極的な広報
活動が必要です。
今後も、体験授業を継続して実施し、更に出前授業を実施するなど、より多くの中学生に美原高校の教員
の授業力や施設・設備が充実していることを伝える機会を設けることも必要です。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■20年度の目標とその成果(概要)
①卒業生の進路決定率
②生徒の学校生活満足度
③推薦に基づく入学者選抜の実質倍率
④学力に基づく入学者選抜の実質倍率
重点目標(抜粋)
75%以上
80%以上
2.3倍以上
1.4倍以上
達成状況(20年度末)
94%
76.9%
1.87倍
1.20倍
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
今回の学校経営診断により、本校が全日制普通科の単位制高校として、特徴を明確に発信できてい
ないという課題が明らかになった。教職員に単位制の特徴を共通理解させ、学年制の高校にはない豊
富な選択科目の学習により多様な進路選択が可能な学校として、生徒の学校への帰属意識を高め、卒
業後も誇りに思える学校としたい。
今後、創立 10 周年を迎えるまでには、新学習指導要領に対応させながら教育課程を改善し充実さ
い
せ、単位制高校の特徴を活かし、生涯学習社会に対応できる生徒を育てる美原高校の礎を築いていく。
(美原高等学校長
五石 秀治)
- 71 -
№14 第三商業高校
学 校 経 営 診 断 書
― 第 三 商 業 高 校 ―
生徒一人ひとりが光り輝く学校 「SUN商」
所 在 地 東京都江東区越中島3-3-1
創
立 昭和3年1月
診断対象 全日制 課程(商業科)
生 徒 数
20年度
568名(男150名〔26.4%〕、女418名〔73.6%〕)
21年度
555名(男154名〔27.7%〕、女401名〔72.3%〕)
20・21年度
スクールカウンセラー配置校(21年度)
の主な指定等
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 昭和3年1月東京府立第三商業学校として設立され、創立80年を迎えた歴史と
伝統のある商業高校です。日本の経済社会を担う人材を育成するため、基礎学力をはじめ、実践的な専
門性を身に付けさせることにより、生徒一人一人の能力や適性を引き出すとともに、自ら主体的に判断
し行動できる生徒の育成を目指しています。また、開かれた学校づくりを推進するため、地域との連携
事業をはじめ、保護者や地域住民等を対象とした授業公開・公開講座や体験入学、出前授業・インター
ンシップ事業など、地域の教育力を活用した学校独自の取組を推進しています。
■特徴的な取組と成果 始業前に「国語、数学、英語」の小テストを継続的に実施するなど、基礎学力向
上のために、組織的な取組を行っています。さらに、規範意識の確立や3年間を見通したキャリア教育
を推進させるため、学校設定科目として「キャリアガイダンス」の設置や、2年生全員に2日間のイン
ターンシップを実施するなど、生徒への職業に対する認識や進路に対しての意識を高めさせていく実践
は、他校にも参考となる取組となっています。
キャリア教育全体計画に基づき、インターンシップをはじめとする体験的な活動や、調べ学習・発表
会など事前・事後の指導を通し、生徒一人一人の望ましい勤労観・職業観や主体的な進路選択に必要な
能力の育成を図っています。
■課題と改善の方策 校長のリーダーシップによって、学校改革が推進されていますが、主幹会議や企画
調整会議、各分掌会議等の連携が十分に行われていない面があることから、主幹教諭や主任教諭に対す
る管理職からの明確な指示のもと、正確・迅速に対応できる組織体制づくりが求められます。さらに、
規範意識の確立や3年間を見通したキャリア教育を推進していくために、学校が一体となった全校指導
体制を維持向上させていくことも必要です。
受験倍率の低迷や、学校の教育活動以外のことに興味を示す生徒が増えてきており、学校評価アンケ
ート結果においても、生徒の学校に対する満足度が下がってきています。今後は、特別活動の充実や授
業規律の確保、また、ビジネス等に関する専門学習を通し将来の進路選択につなげていく取組を継続す
ることで、生徒の学校への帰属意識の高まりが期待できます。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 基礎学力や専門性の深化と、高度な資格取得につなげる指導の充実
■取組内容と成果 3年生の就職・進学対策の一環として、
「三商検定」という学校独自の取組を行ってい
ます。基礎的な内容を中心とした国語・数学等の一般教養対策問題を作成して受験させ、学校独自に「級」
を与えるなど、工夫した取組となっています。また、1年生の簿記検定3級以上の合格率が19年度は
26%だったのに対し、20年度は63%に向上しています。また、2年生では簿記検定無級者が12
7名から15名に減少し、高度な資格取得につなげる指導体制が確立しつつあります。就職・進学等の
進路希望実現のため、国語総合、数学Ⅰ、英語Ⅰ、簿記では習熟度別授業を行い、また、放課後・土曜
- 72 -
№14 第三商業高校
日の補習等で、生徒の更なる基礎学力定着を図っています。
■課題と改善の方策 商業の基本である「簿記」や「情報処理」において、3級の合格率が低迷していま
す。1年生の簿記検定3級以上の取得率は、63%に回復したものの、まだ全国平均には及んでいませ
ん。商業科目の指導内容や指導方法、教材等を今まで以上に検討・改善し、日本商工会議所主催「簿記
検定」
、
「珠算能力検定」
、
「販売士検定」や、全国商業高等学校協会主催「簿記実務検定」
、
「珠算電卓実
務検定」
、
「情報処理検定」の高い合格率を目指し、更なる「教員の指導力向上」が求められます。
また、資格取得のための補講は、生徒の参加率が十分でない現状があります。より高度な資格取得を
目指し、放課後や土曜日の補習体制や生徒が講習に参加しやすい指導計画を再構築するなど、資格取得
に向けた指導の組織運営を推進していくことが求められます。さらに、商業科教員による校内研修会等
を実施して、生徒の実態にあった指導法について共通理解を図っていくことが必要です。
診断ポイント② 進路指導 3年間の指導計画に基づいた意図的・計画的なキャリア教育の推進
■取組内容と成果 1年生では
「幅広い教養と商業の基礎」
、
2年生では
「一般教養の深化と商業の専門性」
、
3年生では「興味と進路に合わせた多くの選択肢」として、意図的・計画的にキャリア教育を推進して
います。人間としての在り方生き方や、主体的に進路選択ができる生徒を組織的に育成するため、2年
生全員が参加する2日間のインターンシップを全校体制で実施しています。さらに、2年生から1年生
への「インターンシップ報告会」を実施することによって、次年度以降のインターンシップ事業の推進
につなげています。
20年度の進路状況の内訳として、就職58.9%、専門学校16.6%、四年制大学19.4%、
短期大学1.1%、その他4.0%、となっており、96%の生徒の進路先が決定しています。さらに、
進路指導部と各学年との連携が高まりつつあり、進路指導に対する共通理解を図り3年間を見通した進
路指導計画が着実に推進されてきています。
■課題と改善の方策 「キャリアガイダンス」や各種説明会の実施にあたり、企画・運営などの役割分担
が明確になっていないという課題が、生徒への指導における学年の温度差として現われています。学年
と進路指導部が綿密に事前の打ち合わせを行うなど、生徒の自己実現に向けた教育指導体制を構築して
いくことが求められます。
進路未決定者は4年連続で10%以内ですが、20年度も4.0%の生徒が未決定のまま卒業してお
り、卒業時における進路未決定者ゼロの実現には至っていません。早い時期からの「将来設計能力」の
育成や目的意識を高めさせるよう、
「キャリア教育」の視点から進路指導を見直し、指導内容・方法の
改善を図ることで、自己と社会を結びつけるための人生観や勤労観・職業観を身に付けさせることが期
待できます。
診断ポイント③ 生活指導 基本的生活習慣を定着させる指導体制の確立
■取組内容と成果 全教職員による、日々の遅刻指導、服装・頭髪指導、あいさつ励行指導、定期的な交
通安全指導が行われており、基本的生活習慣の定着及びマナーの遵守を多くの生徒が身に付けています。
服装・頭髪指導は、全学年を対象に年間 8 回実施しています。これらの指導の結果、進級・卒業率は1
学年84.5%(前年度84.5%)
、2学年91.1%(前年度94.1%)
、3学年99.4%(前
年度98.9%)であり、上級学年になるにつれ、自己管理能力や社会性が身に付いていることが確認
できます。
■課題と改善の方策 一部の生徒に、基本的生活習慣が十分に身に付いていない状況が見受けられ、今後
も学年と生活指導部・各教科担当者との連携に基づく生徒指導の充実が必要です。
学校運営連絡協議会のアンケートからも、
「生活規律がしっかりしている」という回答が、生徒49.
2%(前年度52.0%)
、保護者64.8%(前年度67.8%)であり、生活指導における指導方
法・内容及び体制の再構築もあわせて検討していくことが求められます。そのためには、生徒との人間
関係を築き「温かく厳しい指導」を徹底することによって、生徒に基本的な生活習慣や社会生活の基本
的なルールを身に付けさせることができます。
特別指導件数は、36件(32名)
(前年度28件40名)であり、生活指導面における学校経営目標
の実現に向け、生徒の自律意識への働きかけを行っていく指導など、より一層の改善を進めていく必要
があります。学年と教科担当者による拡大学年会を開催して、生徒との共通理解を図ることにより、授
業規律の確保がより一層推進されます。
- 73 -
№14 第三商業高校
診断ポイント④ 特別指導・部活動 特別活動、部活動の活性化と学習との両立
■取組内容と成果 学校運営連絡協議会のアンケートでは、
「部活動が充実している」と回答した生徒が4
8.7%(前年度52.9%)で、保護者は56.1%(前年度60.8%)でした。検定試験前の補
習と部活動を両立させている生徒が多い中、これらの数値を維持しているのは、部活動顧問の熱心な指
導をはじめ、運動部・文化部ともに部活動の活性化を目指して取り組んでいる成果です。
■課題と改善の方策 部活動加入率は前年度と比較して3.0%減少し、55.6%でした。特に1学年
の加入状況が52.8%と伸び悩んでおり、部活動加入率の向上を目指した改善をしていくことが求め
られます。検定試験と定期考査を考慮した部活動の年間計画を作成することにより、学習との両立が図
れます。また、文化・スポーツ等特別推薦を導入することによって、学校として組織的に部活動の活性
化を図ることが期待できます。
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 企画調整会議の充実による組織体制づくり
■取組内容と成果 企画調整会議は、毎週定期的に実
(図1)入学者選抜における応募倍率の変化
施していますが、主幹教諭のリーダーとしての自覚
(倍)
3.5
を更に高めるため、また、経営参画能力の向上を図
3.48
3.4
3.0
るために、不定期ではありますが、主幹会議も実施
しました。
2.5
推薦
一次
2.44
インターンシップ事業については、これまで学年
2.29
2.0
主導で企画運営してきましたが、実施内容の年度間
による温度差をなくすため、21年度からは進路指
1.5
1.17
1.13
1.09
1.08
導部主導で企画・運営する予定です。
1.0
入学者選抜の結果においては、21年度入学者選
(実施年度)
17年度
18年度
19年度
20年度
抜(20年度実施)から、推薦枠を20%から25%
に拡大し応募倍率は2.29倍を確保しています。
■課題と改善の方策 推薦応募倍率は2.29倍を示したものの、学力検査に基づく選抜の受験倍率の推
移(図1)では、1.08倍と低迷しています。さらに、生徒数の定員に対する充足率が昨年度に比べ
2%減の88%であることから、学校としても中途退学者の減少に向けた組織的な取組が求められます。
今年度は、主幹会議を定期的に開催し、主幹教諭に学校経営の一翼を担っているという自覚を持たせ
つつ、
「TCS(Third Commercial High-School)戦略会議」という名称
で学校運営の戦略会議として位置付け、募集対策、授業規律の確保、キャリア教育の内容充実等の検討
が始まりました。これらの方策により学校PR活動を一層充実し、生徒にとって更に魅力ある学校づく
りを推進することが期待できます。
診断ポイント⑥ 地域連携事業 地域連携事業及び奉仕体験活動の充実
■取組内容と成果 奉仕体験活動として、地域清掃や越中島小学校へ
のパソコン指導、深川第三中学校3学年に対する商業科目の体験学
習、また、地域(門前仲町商店街・砂町商店街他70事業所)と連
携したインターンシップ事業を行っています。
本校を会場として、620名の小学生選手と保護者等合計1600
名が来場した第33回「わんぱく相撲大会」
(図2)においては、白
鷺特別支援学校と、墨田工業高校全日制の生徒会、放送部、科目「課
題研究」の受講生徒及び第三商業高校定時制の生徒が連携し、運営
の補助や司会、駄菓子の販売実習(図3)など、大会の運営に参加
し地域から高い評価を受けました。
■課題と改善の方策 これらの取組が近隣の中学校にまだまだ認識さ
れていない現状があります。今後も生徒を積極的に地域に出して、
地域・社会に貢献する生徒の姿を見てもらうことにより、本校の教
育活動が理解され、より地域連携事業及び奉仕活動の充実が期待で
きます。また、商業科目で学んだ知識や技能を生かしたインターン
- 74 -
(図2)第33回「わんぱく相撲大会」
(図3)駄菓子の販売実習風景
№14 第三商業高校
シップを実現するために、教科としての商業科を連携事業推進組織の中心に位置づける等の特徴的な取
組の継続を期待します。
診断ポイント⑦ 安全・健康教育 安全教育、健康教育の推進
■取組内容と成果 多様化する家庭環境の中で、
「生徒の健康づくり」は、家庭の協力が必要不可欠です。
養護教諭と担任・保護者が連携しながら生徒の状況を把握し適切なアドバイスを行っています。
また、
「生徒同士の人間関係」に関する相談が多いことから、心の健康についても学校教育相談支援員と連携
して生徒の内面をケアしつつ、年間2回の校内研修会を実施し、多くの教職員が参加して生徒の心身の
健康の維持・増進に努めました。
■課題と改善の方策 都立学校における健康づくり推進計画に基づく学校保健委員会を中心とした健康
づくりの組織的・計画的取組、家庭の教育力の強化などが課題です。
心身共に健康な生徒を育成することを目指し、家庭との連携を深めながら、校内研修体制を確立して
いくことにより、安全・健康教育が推進されます。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■20年度の目標とその成果(概要)
重点目標
達成状況(20年度末)
基本的生活習慣
基本的生活習慣の定着
基本的生活習慣の日常的な定着を図った。
生活指導
問題行動0件
36件
生活規律の満足度
70%以上
49.2%
部活動加入率
70%以上
55.6%
1年次の簿記3級以上取得
70%以上
63.0%
高度な資格取得(日商簿記2級)
若干名
13名
高度な資格取得(全商3種目1級)
若干名
2名
四年制・短期大学進学者
20%以上
20.5%(36名)
専門学校進学者
20%以上
16.6%
就職内定者
55%以上
58.9%
進路未決定者
5%以内
4.00%
推薦応募倍率
3倍以上
2.29倍
学力検査応募倍率
1.3倍以上
1.10倍
学校説明会
5回以上
4回(254名)
体験入学
3回以上
3回(延べ184名)
中学校訪問
200校以上
159校
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
学校経営診断により、本校がこれまで取り組んできたことについて、成果と課題が明確になり、本校
の現状を客観的に把握することができた。
今後は、診断された課題を全教職員に浸透させ、改善の方策を学校経営に取り入れるとともに、全教
職員一丸となって改革に取り組み、生徒の進路希望の100%実現を目指していく。
また、地域から信頼される学校となるために、基本的生活習慣と学習の基礎・基本を習得させ、地域貢
献活動や外部との連携事業を充実させることにより、実践的な教育活動を展開し、ビジネススキルとビ
ジネスマナーの伸長と定着を図る。
(第三商業高等学校長 天野 光芳)
- 75 -
№15 芦花高校
学
校
経
営
診
断
書
―
芦
花
高
校
―
「文 武両道を推進 する進学形単 位制高校 」
所 在 地 世田谷区粕谷3-8-1
創
立 平成15年4月1日
診断対象 全日制課程(単位制普通科)
20年度
709名(男223名〔31.5%〕、女486名〔68.5%〕)
21年度
707名(男239名〔33.8%〕、女468名〔66.2%〕)
生 徒 数
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 平成15年4月に全日制普通科単位制高校として開校し、20年4月に6年目を迎
えました。
「自主」
・
「創造」
・
「誠実」を教育目標に、生徒が主体的に学び、一人一人が将来に対する明
確な目標をもち、進学等の進路希望が実現できる学校、また地域に開かれ、地域と一体になって発展す
ることを目指している学校です。
単位制高校のメリットを十分に生かし、生徒の進路希望、
興味・関心に沿って、数多くの選択科目を設定し、少人数授
業を展開するとともに、必修科目においても習熟度別編成や
少人数編成の授業を取り入れています。
ホームルーム活動・学校行事などの特別活動や、部活動(図
1)などの特別活動にも重点をおいて、学校活動が豊かなも
のになるよう取り組んでいます。部活動においては、70%
以上の生徒が加入しており、吹奏楽部や男子バスケットボー
ル部は、関東大会に出場するなど優秀な成績を残しています。
(図1)部活動の様子(ダンス部発表)
これらの教育活動を通して、社会性や人間性を培い、体力、
気力、知力の充実した生徒を育て、自らの目標に向かって主体的・積極的に立ち向かっていけるよう取
り組んでいる学校です。
■特徴的な取組と成果 家庭学習時間の確保に向けた取組や、基本的生活習慣の定着に向けた指導、生徒
自らの健康づくりの支援体制の充実などに成果が見られます。教育活動の課題を明確にし、家庭との連
携・協力を通して、課題解決に取り組んでいます。また東京都学校歯科医師会からは、
「学校歯科保健
優良校」として表彰されました。
■課題と改善の方策 課題を解決するために、より一層組織的な取組を行う必要があります。
「芦花高校の今後のビジョン」や「具体的な取組の方向性」を、より生徒や地域へ具現し、教職員一
人一人が「芦花ビジョン」の目指す学校像や育てる生徒像に向かって、一丸となり学校としての改革を
成し遂げることが期待されます。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 主体的な学びを支え、確かな学力の定着を図る学習指導
■取組内容と成果 生徒の「主体的な学び」を支え、
「確かな学力」の定着を図ることを目標に、
「分かる
授業」や「丁寧な授業」を実践しました。家庭での学習の習慣の定着を図るため、20年11月に、生
徒の家庭学習調査を実施し、実態を把握しました。その結果、生徒の70%が、家庭での学習時間が1
時間以内であることが分かり、各教科の授業(図2)では、宿題を課したり、小テストを実施したりし
ました。21年2月に再度、家庭学習調査を実施すると、僅かではありますが、生徒の家庭での学習時
- 76 -
№15 芦花高校
間が増加し、成果が見られるようになりました。
基礎学力の定着に向けた補習・補講は、放課後や定期考査前を中心に組織的に行われるようになり、
生徒の定期考査に臨む姿勢や学習意欲が高揚し、生徒が自ら休み時間に勉強する様子も見られるように
なりました。
■課題と改善の方策 家庭での学習の習慣の定着について
は、
各教科の取組によって成果が見られはじめています。
今後、生徒の習慣化をより図るためには、各教科での共
通理解や、教科間の情報交換を組織的に進める必要があ
ります。家庭での学習時間の増加や、生徒が放課後など
の空いている時間をどのように活用すればよいか提案し、
指導することが、生徒の基礎学力の定着につながります。
「確かな学力」を身に付けるためには、生徒が目標を
もって取り組めるようなスローガンを掲げたり、予習・
(図2)授業中の生徒の様子
復習を前提とした授業の展開をしたりすることや、生徒が積極的に参加する授業の工夫が必要です。
診断ポイント② 進路指導 自己実現に向けてキャリアガイダンスの充実を図る進路指導
■取組内容と成果 芦花高校のキャリアガイダンスの目的は、学習を通して生徒一人一人に「自分のキャ
リアプランを描くための力」を付けさせることです。このための取組として、生徒が進路(図3)を見
据えた科目選択ができるよう、履修指導を行いました。また、エントランスゼミでは、大学の教員によ
る専門分野別のガイダンスや、社会人による進路講演会を行い、生徒の進路選択の幅を広げるために役
立てることができました。
(図3)卒業生の進路先
(%)
キャリアガイダンス部を中心に、
60
進路実現に向けた学習能力・自己
50
48.7
表現能力の向上を図る学習を行い
46.5
44.9
40
ました。その結果、生徒は、小論
四年制大学
28.2
短期大学
30
文やプレゼンテーションを意欲的
専門学校等
22.0
21.5
就職
に作成・発表するようになり、よ
20
その他
19.3
17.5
り具体的なキャリアプランを思い
9.9 16.8
7.5
10
6.0
描く生徒が増えてきました。
2.6
3.4
5.3
0
■課題と改善の方策 翌年度の履修
18年度
19年度
20年度
登録の時期が早く、生徒がよく考
えたり担任が面談をしたりする時間が不足しています。今後は、履修登録の時期を変更することや、個
別の指導の充実を図る必要があります。
また、生徒の自己実現を図るため、エントランスゼミの実施時期を工夫したり、キャリアガイダンス
指導の充実を図ったりして、キャリアプランの意識を高めることが期待されます。
診断ポイント③ 生活指導 基本的生活習慣の定着を図り社会規範を身に付ける生活指導
■取組内容と成果 単位制の学校であり、ノーチャイム制をとっているため、生徒自らが時間の管理がで
きるように、全教職員で指導しています。特に、2・3年次生については、選択科目が増えることで登
校時間が不規則になるため、担任が、時間の自己管理の徹底や授業への取組姿勢の改善を促すとともに、
各教科担当者は、授業の定時開始を徹底しました。この結果、授業への遅刻者数が減少しました。
頭髪と服装指導では、生活指導部を中心に定期考査期間中や、集会を活用して指導を行いました。特
に服装については、保護者に分かりやすく事例を提示することで、家庭からの協力が得られるようにな
りました。
■課題と改善の方策 生活指導については、担任が中心に取り組んでいるため、年次ごとに取組や指導方
針に差が見られます。今後は、生活指導部が中心となり、指導方針を明らかにした上で、統一した基準
を設けるなど、教職員の共通理解を図りながら組織的に取り組む必要があります。
- 77 -
№15 芦花高校
診断ポイント④ 特別活動・部活動 生徒の主体的な取組を支援する学校行事・部活動の充実
■取組内容と成果 学校行事の体育祭(図4)や文化祭、合唱祭については、生徒会が中心となって企画・
運営ができるようにしました。各委員会の活動は、週に1~2回、更に開催日が近付くと毎日行いまし
た。その結果、生徒が達成感をもてるようになり、生徒による学校評価アンケートでは、文化祭の充実
について肯定的な評価が、19年度より7%上昇して59%となりました。
部活動では、吹奏楽部が活発に活動し、5年連続で金賞を受賞し、演劇部は地区大会を経て、東京都
高等学校演劇コンクールの中央発表会に出場しました。運動部では、男子バスケットボール部が関東大
会に出場しました。また、弓道部と陸上部においては関東大会に出場し、陸上部は全国大会にも出場し
ました。生徒は積極的に部活動に参加し、新入生の部活動加入率も85%を超えるなど、活発に活動し
ています。
■課題と改善の方策 生徒会活動では、中心となる生徒の多
くが部活動でも活躍する生徒であり、一部の生徒に負担が
かかる傾向があります。また年次が上がるごとに、アルバ
イトなどで退部する生徒が増える傾向があるため、学校生
活に集中するように、学校全体で部活動への参加意識の向
上を図る必要があります。
そのためには、生徒一人一人の役割分担を明確にし、よ
り一層、
生徒が積極的に参加できるような組織経営を行い、
退部傾向については、その原因をより分析し、生徒の生活
環境の改善の方策を立て、生徒の部活動への帰属意識を高
める取組が必要です。
(図4)体育祭の様子
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 「芦花ビジョン」を踏まえた教育活動及び学校運営の充実と改善
■取組内容と成果 単位制である芦花高校の教育活動のよさを分析し、学校の「強み(良さ・成果)」や「弱
み(問題点・課題)」を項目別に集計し、開校から5年間の教育活動を検証するとともに、教育活動の成
果と課題をまとめたものが「芦花ビジョン」です。
「芦花ビジョン」は、3本の柱からできています。
第1は、文武両道の推進、第2は、進学実現の支援、第3は、魅力ある教育活動の充実です。それぞれ
に具体的な取り組みの方向性も示しました。
「芦花ビジョン」を中心に、全教職員が共通理解のもとで教育活動を行い、単位制高校のメリットを
いかすことができるように取り組みました。
■課題と改善の方策 「芦花ビジョン」に基づく教育活動を中学生や地域に広報し、地域の理解を得るこ
とが課題です。そのためには、
「芦花ビジョン」に基づく教育活動について、地域の評価を受け、課題
を更に明らかにして、改善を図っていく必要があります。
診断ポイント⑥ 健康づくり 生徒の健康づくりを支援する指導体制・相談体制の充実
■取組内容と成果 生徒自らが心身の「健康づくり」に取り組めるよう、カウンセラー派遣による定期相
談を、年間9回(午後1時~5時)行い、延べ30人以上の生徒が相談を受けました。相談内容は、友
人関係や学校生活、進路など多岐に渡りました。多くの生徒は、カウンセラーに話を聞いてもらい、助
言されることで安心し、相談日を心待ちにしていました。生徒の悩み相談の体制は、保健部が中心に対
応しました。
また、カウンセラーを講師に招き、教職員を対象に年1回、研修会を実施しました。研修会の内容は、
「携帯電話依存症」や「定期相談日の利用状況」
、
「教職員の対応」など、カウンセラーからは生徒の現
状や教職員の生徒への対応について指導・助言を受けました。
■課題と改善の方策 学校保健安全計画に沿って、計画的で組織的な体制づくりが必要です。各分掌間の
連携や、年次間の連携を一層、密にするとともに、分掌や委員会が担当するケア会議をより多く実施す
ることが大切です。
- 78 -
№15 芦花高校
診断ポイント⑦ 募集・広報活動 特色ある教育活動を発信する広報活動
■取組内容と成果 単位制のよさである生徒一人一人の個性や適性に応じた教育活動を明確にし、学年制
の全日制普通科との差別化を図りました。授業公開は年2回、学校説明会は年3回、計画どおりに実施
し、更に学校の魅力を積極的にアピールしました。19年度の学校説明会の参加者は延べ863名でし
たが、20年度は、延べ1236名と増加し、説明会に参加する中学生が増えました。総務部が中心と
なって、見学会や説明会、中学校訪問に積極的に取り組むようになっています。
これらの取組から、入学選抜の応募者数が増加し、応募倍率が、20年度1.4倍から、21年度入試
では1.7倍に上げることができました。
■課題と改善の方策 最新の教育活動の情報が提供できるよう、
週1回のホームページ更新を目標に掲げ、
教育活動を積極的に発信することが必要です。訪問する中学校の地域拡大や、進学塾等の訪問にも取り
組み、学校の魅力を広い地域に伝え、特色ある教育活動を多くの人に知ってもらう必要があります。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■20年度の目標とその成果(概要)
重点目標(抜粋)
達成状況(20年度末)
生徒による授業評価
年2回
年2回
研究授業
4回以上
4回
補習の実施
15講座以上
実力テストの実施
2回以上
小論文テストの実施
1回以上
33講座
1年次 2回
2年次 3回
3年次 個別対応
1・2年次 1回
進路決定率
80%以上
大学教員や社会人による出前授
15講座以上
業・分野別説明会等
部活動の新入生の加入率
80%以上
81.4%
特色ある学校設定科目
39科目以上
39科目
授業公開の実施
年2回
年2回
学校説明会の実施
年3回
年3回
学校ホームページの更新
毎週 1 回以上
月 2 回程度
地域連携事業の実施
延べ5回以上
イングリッシュサマーキャンプ
40名以上
への参加者数
17講座
85%
体験入学 7回
44名
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
学校経営診断により、学習指導や進路指導、生活指導等の課題が明確にされ、「芦花ビジョン」を
実現するためには組織的な取組が不可欠だということが指摘された。
今後は、まず、基礎学力の定着のために、主体的な学びを引き出す授業展開と家庭での学習習慣の
確立を念頭においた教科指導を学校全体で推進する必要がある。部活動や学校行事に意欲的に取り組
む生徒たちなので、その意欲を学習にも拡大し、更に進路開拓に繋げていけるよう指導することが重
要である。生活指導においては、特に、頭髪や服装指導に関して教職員間の共通理解をすすめ、組織
的に取り組む必要がある。
(芦花高等学校長 柳 久美子)
- 79 -
№16 杉並高校
5
学
校
経
営
診
断
書
―
杉
並
高
校
―
「文武両道の進学校」
所 在 地 東京都杉並区成田西4-15-15
創
立 昭和28年4月1日
診断対象 全日制課程(普通科)
生 徒 数
20年度
832名(男398名〔47.8%〕、女434名〔52.2%〕)
21年度
840名(男407名〔48.5%〕、女433名〔51.5%〕)
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 昭和28年に開校し、平成21年で設立56年の伝統をもつ学校です。教育目標を
「自主・素直・気魄」とし、自分で考え正しく判断して行う、謙虚な心を持って知識を身に付ける、強
い意志で物事を成し遂げることのできる生徒の育成を目指している学校です。
確かな学力を身に付けさせ、生徒一人一人が希望進路の実現を図れるように学校を改革しています。
また、特別活動、部活動を充実させ、生徒が自主的に活動できるように教員が指導しています。
■特徴的な取組と成果 3年間のキャリア教育に基づき、進路指導部が、各学年と連携をとりながら進路
体験発表会等を充実させ、1年生の早い時期から進路指導の充実を図っています。19年度に全学年共
通で導入した、スタディサポート(学習達成度や学習状況を確認して、目標達成のための生活習慣改善
や学習法改善をサポートする)を活用し、その結果を生徒、保護者に提示するだけでなく、外部講師に
よる教員や保護者対象の進路講演会等を開催しています。また、長期休業日に補習・講習を実施するこ
とに加え、20年度から土曜講習を始めました。これらの取組を通して、一般受験で国公立大学や明治
大学、青山学院大学等の私立上位校に合格できるように指導しています。
■課題と改善の方策 校長の学校経営計画を基に、より一層教員が主体的に生徒にかかわり、指導してい
くことが必要です。また、教員個人の力量で指導していくのではなく、各分掌が中心となり、学年や担
当者と連携しながら組織的に指導することが求められています。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 「確かな学力」を身に付けさせるための学習活動
■取組内容と成果 確かな学力を身に付け、生徒一人一人が希望する
進路を実現するために、授業の進度を早めた年間指導計画を作成し
ました。さらに、年間指導計画をすべての生徒・保護者に配布し、
授業のねらいを伝えるとともに、講義中心の授業から生徒参加型の
授業へ変化し、基礎学力を定着させていこうとしています(図1)
。
また、19年度学校経営報告によると、家庭学習の平均時間が1
(図1)授業の様子
時間に満たないことから、1日2時間程度の家庭学習を定着させる
ため、各教科で対策を練りました。国語、数学、英語を中心に宿題を出すことにより予習の必要性を定
着させ、小テストを実施するなど、家庭学習の時間を伸ばすように学校として取り組んでいます。
これらの取組から、少しずつ家庭学習時間が伸びてきています。
■課題と改善の方策 学校評価アンケートの「授業が理解できているか。
」という問いに対して、生徒の6
1%が「理解できている。
」と回答しています。教員は、理解度をさらに向上させるとともに、基礎学
力を定着させることが課題です。そこで、机間指導をすることなどを通して生徒の理解度を確認すると
ともに、生徒参加型の授業を実施し、生徒が主体的に授業に参加できるようにする必要があります。I
CT機器をはじめ、適切な教材機器の活用、実験・実習やグループ学習などの授業を通じて、生徒が主
- 80 -
№16 杉並高校
体的に学習し、予習を前提とした授業を行うなどして家庭学習の定着を図ることが大切です。
診断ポイント② 進路指導 「進路意識」を高めるキャリア教育
■取組内容と成果 20年度、四年制大学へ進学した生徒は57.6%
でした。四年制大学へ進学した生徒のうち一般入試で進路を決定した
生徒が41.1%(図4)
、残りは推薦入試またはAO入試で進路を決
定しました。そこで、3年間を見据えたキャリアプランを基に、進路
指導部が、進路ガイダンスや進路講演会を企画しています。この取組
により、1年生の早い時期から自分の希望する進路を決定させるよう
にしています。
明治大学、青山学院大学等の私立上位校へ合
格できるようにするため、今年度から全学年で
スタディサポートを活用し、学習の達成度や学
習状況を確認しています。このことで、目標達
成のための生活習慣や学習方法を分析し、改善
に生かしています。
生徒が、空き時間を有効活用できるように、
図書室と書庫を整理し、図書室内の一部に自習
用の机をまとめることで自習コーナーを作りま
した(図2)
。そして、朝から自習コーナーを活
(図2)自習コーナーの様子
(図3)進路決定状況の推移
0.4
57.6
20年度
6.7
17.1
18.2
1.1
57.7
19年度
7.3
16.1
17.9
2.2
52.6
18年度
5.8
17.2
22.3
1.8
45.3
17年度
6.9
26.6
19.3
1.1
48.9
16年度
0%
20%
四年制大学
7.6
40%
短期大学
16.7
60%
専門学校
25.7
80%
就職
100%
浪人・その他
用できるように図書室を開放しています。さらに、図書室内には、パソコンを設置し、インターネット
を活用して大学情報を入手できるよう対応して
(図4)四年制大学進学 受験方法別の推移
います。
20年度
44.1
15.1
41.1
夏季休業日には補習・講習を25講座開き、
一般受験できるように指導しています。
さらに、 19年度
53.5
1 1 .3
35.4
基礎・基本の定着と応用力を付けさせるために、
46.3
18年度
8 .2
45.7
教員による土曜講習を導入しました。これらの
48.3
9.8
42.0
取組により、四年制大学の一般受験による現役 17年度
合格者が前年度より5.7%増加しました(図
53.3
6.5
40.4
16年度
3)
(図4)
。
0%
20%
40%
60%
80%
100%
■課題と改善の方策 生徒自身が、本当にやりた
推薦入試 AO入試 一般入試
いことに挑戦する態度を育てていくことが重要
です。そして、明治大学、青山学院大学等の私立上位大学に合格できるように学校としての取組を強化
していくことが課題です。そのためには、キャリア教育を一層充実させる必要があり、進路指導部が主
体となり、組織的に進路指導を行うことが大切です。また、AO入試や推薦入試で早い時期に進路を決
定したいという意識を転換させるため、生徒・保護者に対する進路懇談会や卒業生の進路体験発表を更
に工夫することが必要となります。進路指導部と各学年が連携し、学校として個人のデータを蓄積・整
理し、生徒・保護者に有益な進路情報を提供していくことが必要となります。
診断ポイント③ 生活指導 規範意識を養う生活指導
■取組内容と成果 19年度までは担任が主体となり、髪の染色・脱色や遅刻に対する指導をしていまし
た。20年度からは、学年と生活指導部が連携して指導しています。特に遅刻や欠席が多く、担任が指
導しても改善されない生徒は、校長が指導しています。授業遅刻、授業中の私語等の基本的生活習慣が
徹底されていないことを受け、チャイムと同時に授業を開始することや授業規律を確立することを決め
ました。これらの取組により、遅刻が改善されました。
20年の11月下旬に初めて、地域に200部の学校評価アンケートを配布し、葉書での回答を依頼
しました。回答の中で、自転車の乗り方に対して苦情があったことを受け、学年集会や全校集会で自転
車の乗り方を指導しました。これらのことを、地域に発信することで、近隣からの苦情は19年度の1
- 81 -
№16 杉並高校
3件から20年度には2件へと減少しました。
■課題と改善の方策 各学年により指導方法や指導基準が異ならないように、生活指導部が主体となり、
組織として基準やマニュアルを作ることが大切です。特に、授業規律の確立については、全教職員の共
通理解の基に、一致した指導を継続していくことが必要となります。
診断ポイント④ 特別活動・部活動 学校行事や部活動のより一層の活性化
■取組内容と成果 文化祭、体育祭、合唱祭の三
(図5)部活動加入率の推移
大行事は生徒会の各行事委員会が企画・運営を
(%)
100
100.0
99.3
しています。行事の運営については、生活指導
93.6
95
部が、各行事委員会の生徒が軸となるように、
90.7
90.3
仕事の流れや内容について指導しています。生
88.6
90
徒は主体的に活動し、各行事の運営を自主的に
8 4 .0 83.3
84.5
8 7 .5
85
行い成功させています。学校評価アンケートで
8 5 .0
は、
「学校行事(体育祭、文化祭、合唱祭等)は
80
楽しく充実しているか。
」
という問いに対して7
7 8 .9
75
1.6%の生徒が「満足している」と回答して
17年度
18年度
19年度
20年度
います。
部活動では、
20年度の全学年部活動加入率は87.
5%でした。
特に1年生女子の部活動加入率は100%です(図5)
。吹奏楽部は
約150名の部員が所属しており、全日本高等学校選抜吹奏楽大会
の常連校となっています(図6)
。その他の部活動も成果を上げつつ
あります。また、中学生への指導を通じて、意欲の向上を図る部活
動もあります。
1年男子
1年女子
全学年
■課題と改善の方策 多くの生徒が部活動に参加していますが、部活
動全体にわたって、より一層の活性化を図ることが課題です。その
(図6)吹奏楽部の活動の様子
ためには、活動場所や活動時間を調整するとともに部活動の内容や
方法を工夫していく必要があります。生徒で構成している部活動の部長会では、各部活動の大会や発表
せっさたくま
会の日程を連絡するとともに、その成果を発表し、切磋琢磨していくことが必要となります。
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 経営企画室の経営参画の推進
■取組内容と成果 経営企画室では、経営企画室内の業務分担を主・副担当制度を導入し、仕事の進行管
理と同時に人材育成、能力向上に努めています。毎朝の業務確認と進捗状況を確認し、業務の補完を行
いながら対応できるように打合せを行っています。この打合せに、副校長も参加し、指導・助言をしな
がら円滑で適正な業務を実施できるように心がけています。また、毎日、業務の記録を経営企画室日誌
に記録することで業務の進行管理にも役立てています。
特に、安心して学習できる環境を維持するために、経営企画室が、施設委員会に参加して定期的に施
設・設備を点検し、改修や修繕の要望をとりまとめています。それらを基に、早めに改修や修繕の計画
を立て、対応しています。長期休業日には管外研修に参加したり、経営企画室内研修を行ったりするな
どして、経営企画室のスキルアップを図っています。
■課題と改善の方策 経営企画室内の業務の効率化と、迅速な対応をするための工夫が課題です。経営企
画室長は、より一層業務内容を適切に把握・確認し、組織的に業務を行い、学校経営計画の実現のため
に企画、提案し、教職員に対し、提言していく必要があります。
診断ポイント⑥ 環境への取組 学校環境の整備と校内美化活動の推進
■取組内容と成果 担任は、ゴミの削減を目標に、各生徒にゴミを分別することとゴミを持ち込まないよ
うに指導しています。当番の生徒が、分別したゴミを指定された時間帯にゴミ回収場所に持って行きま
す。ゴミをもってきた生徒と生徒会の厚生委員会、保健厚生部の教員、経営企画室の職員で、再度、分
別しています。これらの徹底した分別によりリサイクル可能なゴミはリサイク資源とし、回収してもら
っています。これらの取組により、ゴミの処理費が前年度比に対して30.1%削減されました。
- 82 -
№16 杉並高校
■課題と改善の方策 生徒や教員のゴミの分別やリサイクルに対する意識を更に向上させることが課題で
す。そのために、C02削減アクション月間の活用や省エネ委員会の組織的運営により、ゴミのリサイ
クルに対する更なる意識の向上を図り、行動していくことが必要となります。そして、校内研修等を通
じて全教職員が理解し、ゴミの削減とリサイクルの推進をしていくことが必要です。
診断ポイント⑦ 広報活動 組織的な学校PRのための取組
■取組内容と成果 20年度から募集対策委員会を立ち上げま
(図7)学校説明会参加者数の推移
(人)
した。そして、募集対策委員会が中心となり、学校の公式ホ
3000
ームページを定期的に更新しています。公式ホームページで
2661
は、学校の基本情報を発信するばかりでなく、学校行事の実 2500
施報告や授業公開、学校説明会、中学校との合同練習の募集 2000
についての情報を発信しています。また、区市の教育委員会
1688
に働きかけて中学校へのPR活動を行っています。また、1 1500
学年の希望生徒による「中学校への里帰り(母校訪問)
」も 1000
1064
実施しています。
500
募集対策委員会、
管理職、
主幹教諭を中心に多くの教員が、
18年度
19年度
20年度
中学校訪問、出前授業の実施に協力しています。19年度は
学校見学会、学校説明会は3回でしたが、中学生とその保護者に杉並高校のことを詳しく知ってもらう
機会を増やすため、新たに10月と1月に学校説明会を企画・実施しました。これらの取組により、学
校説明会の参加者が19年度は1668名であったのに対し、20年度は2661名でした(図7)
。
■課題と改善の方策 中学生の募集活動を、管理職と主幹教諭、募集対策委員会が中心となり、組織的に
全教職員で取り組んでいくことが課題です。そのために、募集対策委員会が、中学校訪問、出前授業等
の計画を作成し、全教職員が協力する体制をつくることが大切です。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■20年度の目標とその成果(概要)
重点目標(抜粋)
達成状況(20年度末)
希望進路の実現率
80%
83%
四年制大学の現役進学率
55%
58%
長期休業中の補講、補習
12講座以上
30講座
評価アンケートによる生徒の授業理解度
60%
61%
長期休業中に運動部の中高連携による合同練習等
5校
4校
部活加入率
90%
88%
中学校訪問
100校
130校
学校説明会、学校見学会の参加人数
1500名以上
2661名
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
学習指導と部活動等の両立を基盤に、生徒の希望する進路実現を目指してきた。これまでの教職員
の努力の結果、生徒や保護者・地域から学校が一層信頼され、その評判が中学生とその保護者にも伝
わってきたことが今回の学校経営診断から実証され、教職員の励みとなった。
今後は、更に生徒が将来への目標をしっかりもち、日々の学習や部活動、学校行事に主体的に取り
組み、楽しく充実した学校生活が過ごせるよう、校長の学校経営計画に基づき、主幹教諭のリーダー
シップと主任教諭の役割とを機能させながら、教職員一人一人の持ち味を一層生かした組織的な学校
運営へと発展させていきたい。
(杉並高等学校長 星野 文男)
- 83 -
№17 大島高校
学
校
経
営
診
断
書
―
大
島
高
校
―
さと
郷土を敬愛し、自己の尊厳を覚り、真実を究明し、誠実をもって
とうと
事を達成し、常に健康明瞭で勤労を尚 ぶ人材を育成する。
所 在 地 大島町元町字八重の水127
創
立 昭和19年2月9日(当時:大島六ヵ村学校組合立大島農林学校)
診断対象 全日制課程(普通科)
20年度
136名(男78名〔57.4%〕、女58名〔42.6%〕)
21年度
127名(男74名〔58.3%〕、女53名〔41.7%〕)
生 徒 数
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 大島高校は、青い海を臨み、三原山を中
心にかがやく緑の豊かな自然の中にあり、創立65年目を迎
える伝統校です。都立高校では最大の校地を有し、施設や自
然が豊かで、この恵まれた環境の中、生徒は充実した学校生
活を送っています(図1)
。全日制課程には、普通科・農林
科・家政科を設置しています。人権尊重の精神の下、個性の
伸長と、自己の在り方生き方について考え、基本的生活習慣
を身に付けるとともに、社会との関わりのなかで自己実現を
図って行けるよう、教育活動全般を通して、生徒の意欲と能
(図1)広大な敷地を有する大島高校
力を高める教育の実現を目指しています。
■特徴的な取組と成果 郷土の自然や文化等を教育活動の中に取り入れ、地域に根ざした開かれた学校づ
くりを推進している学校です。地域の施設を活用した奉仕体験活動や広報誌「島高だより」を通じた情
報発信や学校開放等を通して、地域の人々との連携を深めながら特色ある教育活動を推進しています。
また、部活動も活発で、特に運動部の生徒を中心としたあいさつやマナー指導に取り組み、落ち着いて
学べる学習環境を維持しています。生徒の自己実現を図るために、基礎的な学力から大学入学試験に対
応できる応用力の定着を図った教科教育や、職業選択における情報収集能力、課題解決力及び判断力な
どの育成を主眼に置いた幅広いキャリア教育等、特色ある教育活動の充実に取り組み、常に90%以上
の進路決定率を維持しています。
■課題と改善の方策 心豊かな人間関係を育み、生徒の課題解決力を高め、生徒が主体的に活動する態度
を育成するためには、学校行事、生徒会活動及び部活動における指導体制を再点検し、組織的に指導に
取り組む体制に改善する必要があります。また、島の最高学府としての高等学校の教科指導を充実させ
るためには、課題を地域と共有し、地域の教育力を有効に活用して、積極的に課題解決に取り組むこと
が必要です。基礎学力の定着はもとより、中学生や保護者、地域などの進路希望に関する多様なニーズ
に対応した学習活動をより一層充実させなければなりません。さらに、国際交流や異文化理解などにつ
こた
いての教育活動も進め、グローバル化が進む社会の要請に応える必要もあります。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 基礎学力の定着
■取組内容と成果 大島高校では、島内の3つの中学校から、国公立大学を目指して入学する生徒がいる
一方、基礎学力の定着が十分でない生徒も入学しています。1年生の数学では2クラス3展開、1・2
年生の英語では3クラス4展開の習熟度別授業を実施し、生徒一人一人の学力や意欲等に応じたきめ細
かい学習指導を行っています。また、生徒の興味・関心を高め、学習への理解を深めるために、より多
- 84 -
№17 大島高校
くの実験・実習を取り入れています。
基礎・基本の学力定着と進路希望に応じた学力の向上を図るため、平成20年度は、大学入試や就職
に向けた講習・補習を、放課後、週休日及び長期休業日中に200時間以上実施しました。さらに、朝
のショート・ホームルームにおいて、全学年を対象とした漢字テストを毎週実施しました。
また、生徒が自ら学習に取り組む意欲・姿勢を引き出すために、自習室を設置し、土曜日の午前中は
全校生徒を対象に、日曜日の午前中は3年生を対象に開放しました。
■課題と改善の方策 各教科の年間授業計画を事前に生徒に配布し周知させることで、予習や復習に取り
組ませましたが、家庭学習に毎日取り組んでいる生徒は全体の10%でした。生徒の生活実態調査に基
づき、担任が三者面談などを通じて家庭学習時間帯を設定させ、指導するなど、意図的な取り組みが必
要です。また、生徒一人一人の基礎学力の定着のために実施している各教科における小テストや講習・
補習などは、進路指導部と教科とが連携し、組織的かつ意図的に充実させていくことが重要です。
さらに、生徒の学力に関しては、中学校における学習状況の把握に基づいて大島高校としての教科指
導方針を明確にしながら、各教科における指導計画を学力診断テスト結果から評価・改善し、教員の誰
もが生徒に適切な指導が行えるよう大島高校のシラバスとして発展させることも大切です。
診断ポイント② 進路指導 キャリア教育の充実と進路状況
■取組内容と成果 3年間を通した計画的・組織的な指
(図2)過去5年間の進路実績
(%)
導の充実を図るため、キャリア教育全体計画に基づい
45
39.7
て、在り方生き方を考えさせました。1年生では自己
39.0
40
36.6
理解と基礎学力の定着、2年生では進路ガイダンス等
35
34.1
29.0
による情報の収集と進路希望の決定、3年生では進路
30
27.6
27.1
29.0
の実現という段階的な指導を進めました。また、9月
25
23.0
には全学年の生徒を対象として面接週間を設定し、生
20
22.0
20.7
17.1
徒一人一人の進路希望の把握に努めました。
15
11.0
9.8
8.6
10
生徒の進路希望の実現のため、進学希望者に対して
6.8
8.0
5
は、進学対応の講習・補習を実施したり、サテライト
5.1
3.4
2.4
0
講座を導入したりしました。その結果、20年度は、
16年度
17年度
18年度
19年度
国公立大学への合格者も含めて四年制大学への進学者
が昨年度と比較して15.6%増加し、32.7%にまで伸びました(図2)
。
32.7
28.8
23.1
四年制大学
短期大学
専門学校
就職
その他
9.6
5.8
20年度
就職希望者に対しては、5月にハローワーク、進路指導部、担任、生徒及び保護者を交えた職業相談
を実施し、7月に外部講師を招いて進路セミナーを開催しました。また、学校設定科目を設置し、
「就
業体験」
、
「知識及び技能審査」
、
「ビジネスマナー」の学習や、商業科目の選択による資格取得指導(簿
記・ワープロ・情報処理・秘書検定等)を取り入れた指導を行っています。さらに、インターンシップ
の事前指導や面接指導などの就職試験対策について、きめ細かく丁寧な指導を行いました。その結果、
20年度の就職者数は15名で、就職先は、大島町役場3名をはじめ、銀行員、販売員など多岐にわた
りました。
■課題と改善の方策 生徒の希望進路実現のため、キャリア教育全体計画に基づいて、進路指導部と学年
や教科とが連携し、組織的な進路指導体制を強化していくことが必要です。
大学進学希望者に対しては、多様化している大学入試情報を収集・分析し、生徒及び保護者に提示す
ることや、生徒一人一人の学力や大学受験データに基づいた的確な進学指導に力を注ぐとともに、国公
立大学への進学へ向けた授業や講習の充実を図ることが重要です。
就職希望者に対しては、進路指導部を中心とした計画的・組織的な取組と指導により、インターンシ
ップやボランティア活動を積極的に推進し、生徒の興味・関心や進路希望に応じた系統的・発展的な学
習によって、勤労観・職業観の育成を図ることが大切です。
診断ポイント③ 生活指導 基本的生活習慣の確立
■取組内容と成果 大島高校の生活指導は、基本的生活習慣の確立と規範意識を育てる指導に重点を置い
ています。運動部員を中心とした全校生徒に対するあいさつ及びマナー指導が定着し、実績を上げてい
- 85 -
№17 大島高校
ます。また、頭髪・身だしなみ指導について、朝礼での指導、学年・担任指導、校長指導といった段階
的な指導の実践手順を明示して、指導にあたっています。さらに、授業規律の徹底を図るため、チャイ
ムと同時に授業を開始することを確実に実行し、落ち着いて学べる環境を維持することに努めました。
その結果、
「校則の遵守」についての肯定的評価は、学校運営連絡協議会の学校評価において生徒69%、
保護者60%でした。
■課題と改善の方策 生徒及び保護者に対するアンケート結果から、その肯定的評価の割合を更に引き上
げるために指導を継続していく必要があります。全校生徒に規律ある高校生活を送らせるため、全教職
員による組織的な指導体制づくりが重要です。学校の指導方針を明確にして、島しょ地区の学校の特性
を生かし、家庭の協力を得ながら、生徒の自律性を伸ばすことが大切です。
また、セーフティ教室を通じて、薬物乱用防止やインターネット・携帯電話による被害を未然に防ぐ
ための指導を進めることは、島しょ地区の学校においても大切な取り組みです。
診断ポイント④ 特別活動・部活動 学校行事と部活動を通した帰属意識の更なる向上
■取組内容と成果 11月上旬の「郷土芸能祭」は、地域に伝わる伝
統文化ともいうべき学校行事であり、
地域の方々を師匠として迎え、
約3週間にわたる練習の成果を発表します。地域の教育力を活用し
つつ、大島の郷土芸能の中心的な役割を果たしており、生徒の学校
に対する帰属意識の向上と、郷土愛の育成につながるとともに、大
きな感動体験となっています(図3)
。
部活動には在校生173名(農林科・家政科含)のうち、148
(図3)郷土芸能祭の様子
名の生徒が入部しており、部活動加入率は86%です。硬式野球部、
陸上部、女子バレーボール部など、運動系12団体と文化系6団体が活発に活動しています。硬式野球
部の全国高等学校野球選手権東東京大会3回戦進出、陸上部の東京都大会出場、バレーボール部の春季
リーグ戦2位をはじめ、少人数ながら積極的に公式戦に出場し、自己の心身を鍛錬しています。硬式野
球部では、定期考査の4週間前から練習時間を減らし、家庭学習や補講の時間を確保するなど、学習と
の両立を目指す取組も行っています。
■課題と改善の方策 部活動と学習の両立を図りながら、様々な学校行事の活性化を図っていくことも必
要です。郷土芸能祭の翌日に行われる学校祭でのクラス発表や展示内容の充実が期待されます。また、
スポーツ・文化行事の内容の充実、マラソン大会や球技大会の活性化、日ごろの学習の成果を発表する
学習成果発表会などの行事の実施を検討することも必要です。そのため、学校行事の企画運営組織を見
直したり、生徒が自主的に学校行事を運営し、充実させることができる指導体制を構築したりすること
が重要です。
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 課題解決に向けた組織づくり
■取組内容と成果 学校全体で生活指導に取り組み、生徒が落ち着いて学べる学習環境の維持に努めた結
果、学校運営連絡協議会の学校評価において、「授業が分かりやすい」、「学校満足度」、「進路相談」
の項目について、生徒及び保護者から高い評価を得ています。また、企画調整会議において、各主任か
ら各学期の現状を報告させるとともに、問題点を洗い出し、教職員の共通理解を深めました。さらに、
研究の活性化や教育実践の蓄積のために、15年ぶりに研究紀要を発行したことは評価できます。
■課題と改善の方策 組織的な学校経営を推進するためには、学校運営連絡協議会の学校評価を有効に活
用し、共通理解を図ることが必要です。また、企画調整会議において、主幹教諭だけではなく主任教諭
も有効に活用し、校長の学校経営計画に基づく各分掌の月ごと、学期ごとのマネジメントサイクルの実
践を通して、全教職員の経営参画意識を高めることが重要です。
さらに、自律経営推進予算の管理と執行を通して、教職員にコスト感覚を身に付けさせ、常に適正な
予算執行に裏付けられた教育活動を実践していくことが大切です。
診断ポイント⑥ 地域社会への貢献 地域に根ざした教育活動の実践
■取組内容と成果 「総合的な学習の時間」における奉仕体験活動では、社会福祉施設との交流活動や地
域の保育園の子供たちとの交流、大島社会福祉協議会の協力による「ごみの分別作業」など、体験活動
- 86 -
№17 大島高校
の実践を通して奉仕の意義を理解し、郷土での生活・文化を学習し、郷土を愛する心を育成しています。
また、20年度は、学校開放事業(テニス、バレーボール、バスケットボール、バドミントン、空手、
柔道等11種目)による団体登録が2団体増え、公開講座による利用を含めると施設利用者は19年度
と比較して延べ600名増加し、8000名近くの島民が大島高校を利用している状況となっています。
■課題と改善の方策 生徒が地域社会に貢献するとともに、学ぶ機会を拡充するため、地域の学校として
こた
の信頼を得て、その期待に応える教育活動を実践していくことが必要です。
こた
各種地域行事、ボランティア活動等への参加を推奨していくことが、地域社会からの要望に応える
ことになります。大島駅伝競走大会、カメリヤマラソン、福祉まつり、椿展等、大島町主催の行事に生
徒と教員とが共に積極的に参加していくことが大切です。
大島町は、25年度の国民体育大会(相撲競技)の開催地として決定しており、今後、地域と協力し、
共に準備を進めていくことに期待が寄せられています。
診断ポイント⑦ 募集対策活動 教育活動の情報発信の充実
■取組内容と成果 大島高校の広報誌「島高だより」を年間6回発行し、島内の中学3年生全員及び官公
庁、郵便局、学校等30ヶ所以上に配布しました。また、中学生とその保護者に対して、大島高校の教
育活動を理解していただくため、学校見学会や体験入学及び授業公開を実施したり、年間25回以上ホ
ームページの内容を更新したりしました。
伊豆・小笠原諸島唯一の地方紙「七島新聞」に学校祭の様子や部活動の活躍が取り上げられ、大島高
校の教育活動を広くPRすることにもつながりました。
■課題と改善の方策 大島にある3つの中学校の3年生と、その保護者のニーズを把握し、受検生の確保
に努めることが課題です。
「島高だより」に対して、島内の中学3年生全員にアンケートを実施したり、
島民からの声を把握する手段を講じたりするなど、発信した情報に対して意見を集約して募集対策活動
に生かし、改善を図っていくことが必要です。また、21年度入学者選抜で、島内の中学3年生の大島
高校全日制課程への志願者数が低下した要因について分析しておくことも重要です。大島高校の特色や
教育内容及び教育活動の実践に対する理解を促進するため、随時、ホームページの内容を充実・更新し
て継続的に情報を発信して行くことが大切です。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■20年度の目標とその成果(概要)
島内の中学校からの入学率
出席状況に課題のある生徒の割合
「高校生らしい身だしなみ」の生徒
及び保護者の肯定的評価の割合
卒業生の進路実現率
資格検定試験の受験率
生徒1人当たりの図書貸し出し冊数
生徒及び保護者の学校への満足度
重点目標(抜粋)
80%
5%以内
達成状況(20年度末)
68%
7.6%
70%以上
生徒69%・保護者60%
100%
全生徒の20%以上
4.5冊
80%
94%
68%
4.0冊
生徒67%・保護者91%
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
地域の自然や文化等を教育活動に取り入れての地域に根ざした学校づくり、きめ細かい生活指導を
通して落ち着いて学べる学習環境など、これまでの本校の取組が一定の評価をいただいた。一方、課
題と改善の方策で示されているように多くの課題が山積している。経営診断時に、今は落ち着いてい
るが、本校は上がるか下がるかの岐路に立っていると指摘された。このことを肝に銘じて、基礎学力
の定着はもとより、島の最高学府として指摘された課題の解決や地域の多様なニーズに対応した教育
活動を実践することにより、学校への信頼性を更に高めていく。 (大島高等学校長 五十嵐 和雄)
- 87 -
№18 北園高校
学
校
経
営
診
断
書
―
北
園
高
校
―
「私の夢をかなえる学校」
所 在 地 板橋区板橋4-14-1
創
立 昭和3年4月1日
診断対象 全日制課程(普通科)
生 徒 数
20年度
966名(男468名〔48.4%〕、女498名〔51.6%〕)
21年度
956名(男475名〔49.7%〕、女481名〔50.3%〕)
20・21年度
進学指導研究協議会参加校
の主な指定等
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 教育目標に「自由と責任を重んじ、自立の精神に満ちた、個性豊かな人間を育成する」
を掲げ、「わが国を背負って立ち、地球的な視野で物事を考え、行動できる有為な人材」「知・徳・体の
バランスのとれた良識あるリーダー」の育成を目指し、学校の特色として「第二外国語の設置や国際理解
教育の推進」「進学推進校として、生徒の第一志望を実現する進学指導」などに取り組んでいます。
■特徴的な取組と成果 授業の質の向上と充実を図るため、指導方法の工夫や生徒による授業評価を活用
した研修の実施、土曜授業や講習、勉強合宿の充実に、組織的に取り組んでいます。授業規律の確立や
家庭学習の習慣化を図ることなど、生徒と教員がともに第一志望の進路を最後まであきらめずに、実現
を目指す環境を作り上げています。また、
「信州北園プロジェクト」により、キャリア教育などの充実
や学校組織の活性化を図っています。第二外国語の設定など、学校の特色として国際理解教育に関する
様々な取組も行っており、関連する大学への進学など成果を生み出す取組に発展しています。
■課題と改善の方策 生徒の第一志望の進路を実現するため、現状の取組を検証、精査し、改善していく
ことが必要です。適正化された学校組織の更なる充実・活性化に向けて、
「信州北園プロジェクト」を
活用するなどして、学年や分掌などを横断する、総合的な組織力で学校経営の目標を実現していくこと
が求められます。授業の質の向上、進路指導の充実、授業規律の確立や充実した部活動などの個々の取
組を、企画調整会議を中心として各学年や分掌等の部署を相互に関連させていくことが大切です。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 授業の質の向上に取り組む学習指導
■取組内容と成果 平成18年度の診断では、
「生徒による授業評価を生かし、校内研修を活性化させ、授
業力向上を図る」ことを目標としましたが、更なる授業改善が課題として指摘されました。
20年度は授業の質を向上させるため、生徒による授業評価や外部の関係団体と連携した情報収集・
分析を基に開催した校内研修を経て、教科担当から、担当者間での研修の必要性が提案されました。ま
た、過去2年間の同校や他校の模試結果等と比較すると、数学においては「週末課題」の実施により基礎
学力が定着したことが明らかになりました。このことから、
「週末課題」の他教科への拡大に取り組ん
でいます。さらに、生徒自らが学習に取り組む姿勢をはぐくむため、
「自宅学習チェックシート」を生
徒自身に作成・ファイリングさせ、担任が取組状況を定期的に確認し指導に活かしています。
つな
■課題と改善の方策 引き続き、生徒による授業評価の分析などを基に、学習意欲の向上に繋がる具体的
な授業改善を行うことが大切です。生徒の授業満足度向上に向けて、教員が更に主体的に、生徒に適し
た指導方法の開発や、指導技術を向上する取組を進めていく必要があります。また、
「自宅学習チェッ
クシート」に加えて、
「学習カルテ」を作成するなどして、定期考査や模擬試験の結果から学習の課題
などを整理・分析することで、学校での指導内容の精選や家庭学習の質を上げていくことも大切です。
- 88 -
№18 北園高校
診断ポイント② 進路指導 生徒の第一志望を実現する進路指導
■取組内容と成果 18年度の診断では、課題として講習や勉強合宿等の充実が指摘されました。
20年度は、学年を中心に進められていた進路指導を進路
(図1)大学入試センター試験出願率
指導部に一元化し、模擬試験を組織的かつ体系的に実施する
(%)
85
などの改善を行いました。従来から取り組んできた、放課後
や長期休業中の特別講習や補習、夏季勉強合宿や土曜授業を 80
79.9
80.0
充実・拡大させる流れを作り、学力の向上を図っているほか、
75
外部の関係団体と連携した情報収集・分析を行い、現状と過
71.6
68.9
去のデータを比較しながら生徒と担任が面談を実施しまし 70
た。第一希望の進路実現のためにキャリアガイダンスや個別 65
65.0
指導を充実させ、安易に妥協しないよう指導した結果、大学
入試センター試験の出願率が80%に到達しました(図1)
。 60
16年度
17年度
18年度
19年度
20年度
また、現役進学実績として、国公立大学13名(前年比1.
(図2) 進路実績の推移
2倍)、早慶上智理科大15名(前年比1.7倍)
、MAR
区分
18 年度
19 年度
20 年度
CH53名(前年比1.1倍)を達成しました(図2)
。
国公立計
10
11
13
■課題と改善の方策 早期からのキャリア教育によって生徒
早稲田
4
4
5
慶應
0
0
1
自身が高く掲げた第一希望実現のため、学習・進路・生活そ
上智
1
0
2
れぞれの指導を連動させ、生徒の意欲や学力の向上を図るこ
東京理科
4
5
7
とで、19年度15.1%から20年度28.8%に増加し
上記難関私大計
9
9
15
明治
11
8
13
た進路未決定者を減らしていくことが求められます。例えば、
青山学院
5
5
5
教務部や進路指導部が中心となり、家庭学習の習慣化と学年
立教
5
7
6
+1時間の家庭学習時間実現を目指し、生徒が成果や課題を
中央
7
8
11
自覚して学習に取り組んでいけるよう指導していくことが
法政
19
20
18
MARCH計
47
48
53
考えられます。また、外部の関係団体と連携して収集した情
報を更に分析し、指導の内容に反映するなどその活用方法を改善していく必要があります。このように、
現在の取組に対し、一層の内容充実を図り、生徒と教員がともに進行管理しながら、組織的に第一希望
の進路を実現する環境に発展させていくことが望まれます。
診断ポイント③ 生活指導 授業規律を確立する生活指導
■取組内容と成果 18年度の診断では、
「基本的生活習慣の確立と自己管理能力の育成」を目標とし、
課題として、遅刻者への対応などの生活指導の必要性が指摘されました。
20年度は、遅刻指導に関して保護者へ取組の趣旨を説明して周知を図った上で、組織的に校門前で
の登校時指導を行うなどして、1・2年生の遅刻者の割合(遅刻者数/在籍数×日数)が、19年度の
7%から20年度は5%に減少するなど成果が出始めています。また、あわせて授業中にペットボトル
などを机上に放置していることへの指導にも取り組み、学習環境の整備を行いました。
■課題と改善の方策 北園高校の生徒は、
「指摘されなくても課題には自主的に取り組む伝統がある」と
言われてきました。
「自主性は育てるもの」との共通理解をもち、組織的な指導により授業規律を高め
ることで、教育目標にある「自由と責任」を生徒が自覚し、自ら考え行動をする力を育ていくことが求
められます。授業規律の確立は、生徒の第一志望の進路を実現する上で欠かすことの出来ないものです。
遅刻などは学習意欲の阻害要因でもあり、引き続き学校全体でその解消に取り組むことが大切です。
診断ポイント④ 特別活動・部活動 「規律ある自由」を基本とした特別活動・部活動の取組
■取組内容と成果 18年度の診断では、
「一人一部参加の奨励で高校生活を充実させる部活動」を目標
とし、その後も図3のように、部活動加入率は着実に上昇しました(図3)
。
1・2年生とも一部に兼部している生徒が含まれますが、20年度も全体では加入率の増加を継続し
ています。2年生で部活動加入率が上がることは、1年生で加入していない生徒にとって魅力的な活動
であると分析することができ、休部していた部活動も再開に向けて動き出すなど、活動内容の充実ぶり
が伺えます。
- 89 -
№18 北園高校
■課題と改善の方策 今後は、文武両道を目指
(図3)部活動加入率
(%)
し、積極的にコンテストや大会に出場して、 100
95
他の学校の生徒と切磋琢磨し、より高い目標
93
93
90
に向かって取り組んでいく指導も大切です。
85.6
85
1学年
85
ストリートパフォーマンス部など、特定の部
85
79.0
2学年
83 90 84
80
81.3
3学年
活動に加入者が集中する傾向がありますが、
79.0
78
全体
75
77
75
引き続き高い部活動加入率を維持することが
70
求められます。また、目標となる「規律ある
65
66
65
自由」を具現化するためには、部活動と勉強
60
18年度
19年度
20年度
21年度
にかける時間配分を生徒自身に考えさせるこ
とや、来客や対外活動時のあいさつ、集団での行動時のマナー、フェアプレーなど対外的な活動時の相
手への敬意の表出など、指導者がより具体的に示し実践していくことも必要です。
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 企画調整会議等の活性化による学校経営・組織体制の充実
■取組内容と成果 学校長のリーダーシップのもと、各分掌や学年で論議された内容を、企画調整会議で
協議・調整し、職員会議で周知し実現していく組織体制が確立しています。企画調整会議において、事
前に協議内容等の整理を行い、時間を有効に使い協議の質を高めるなど、具体的な活性化も図られてい
ます。例えば、学校長からのクラス合宿の時期に関する検討の指示に対し、学年から具体的な提案があ
がるなど、トップダウンとボトムアップの双方向で学校経営を推進しています。その他にも、管理職と
経営企画室の職員が協議し、行事等の精選や事業の合理化を図り、捻出した予算を教科予算に回すなど、
経営企画室の学校経営への参画も実現しています。新たに、キャリア教育などのための信州大学との高
大連携事業から、年度途中新規事業として「信州北園プロジェクト」を開始しました。企画調整会議メ
ンバーを中心としたプロジェクトチーム(6名)を設置し、組織的な取組により、信州大学や長野県な
ど外部との連携にも発展しています。
■課題と改善の方策 引き続き企画調整会議を中心とした学校経営により、学校組織の活性化を進めてい
くことが求められます。「信州北園プロジェクト」では、PTAや同窓会組織の協力を得ながら、信州大
学や長野県と連携し、
「開かれた学校」から「協働する学校」へ発展していくことが期待されます。こ
の取組は、信州の自然を活かした環境教育や、東京では得られない視点や体験を活かしたキャリア教育、
未来を切り開く「生きる力」の育成などに繋がると考えられます。この取組を進めることで、学年や分掌
が個々に実施してきたクラス合宿、勉強合宿を、横断的な組織的対応で整理・拡大する機会になります。
その他にも、教員から様々な提案を引き出す組織の活性化にも寄与します。学校の特色ある取組として
実現し、中長期的な取組として定着を図るため、内容の整理や組織での分担、学校内外の調整を、プロ
ジェクトを中心に確実に進められる組織作りが重要です。
診断ポイント⑥ 募集・広報活動 様々な学校と連携する募集・広報活動
■取組内容と成果 18年度の診断では、
「開かれた学校づくり」として、公開講座や公開セミナーの実
施等について取り上げ、様々な取組を学校全体で組織的に実施する必要性が課題として指摘されました。
20年度は、19年度から引き続き公開講座3講座25時間や、中学校への出前授業を2回実施しま
した。学校を会場とする学校見学会や学校説明会、進路説明会では、19・20年度とも2800名前
後が来校しており、見学した中学生や保護者から、学習指導や進路指導、部活動に対する好評価を得ま
した。
「私の夢をかなえる学校」をテーマに、新たに学校広報に関する資料を作成したことや、学習塾
との進路情報交換会で出された要望を考慮し、資料作成へ反映するなどして、募集・広報活動の充実に
努めています。
つな
■課題と改善の方策 北園高校の魅力を、更に外部に発信するため、学力向上に繋がる魅力的な授業を紹
介する出前授業や、小学生・中学生の地域学習への協力を増やすことが考えられます。また、生徒や卒
業生からの聞き取りなどにより北園高校選択の理由を整理し、
「私の夢をかなえる学校」としてホーム
ページに掲載されている内容に、実際に夢をかなえた生徒や卒業生の言葉を盛り込むなど、北園高校の
魅力をより具体的に発信していく必要があります。現在も一般入試1.57倍の応募倍率を有していま
- 90 -
№18 北園高校
すが、引き続き積極的な広報活動に取り組み、学校外への情報発信の充実を図ることが大切です。
「信
州北園プロジェクト」の実現も、北園高校の魅力の一つとして広報への活用が期待されます。
診断ポイント⑦ 国際交流 国際交流・外国語学習の積極的な推進
■取組内容と成果 国際理解教育の一環として様々な取
(図4)第二外国語履修者数
(人)
組を行っています。国際ロータリークラブ留学生連携 350
18
15
事業では、
フランスやメキシコから留学生を受け入れ、 300
10
11
11
97
118
ハンガリーやフランスへ留学生を派遣しました。
また、 250
102
ロシア語
96
87
海外語学研修で訪問したオーストラリアのスミス・ヒ 200
中国語
フランス語
150
94
ル・ハイスクールから、学校訪問を受け入れるなど学
78
ドイツ語
84
56
58
100
校間交流を行っています。第二外国語は、20年度に
102
50
101
96
96
93
合計310名が履修しました。16年度から20年度
0
の履修者は256名から310名を推移しており(図
16年度
17年度
18年度
19年度
20年度
4)
、生徒の高いニーズが伺えます。
■課題と改善の方策 国際ロータリークラブと10年間継続して交流している都内で唯一の都立学校で
あり、第二外国語も含め、国際理解教育を学校の特色として位置付けてきました。しかし、教育活動と
しての位置付けが必ずしも明確とはいえない面があります。毎年東京外国語大学を受験する生徒もおり、
20年度には1名合格者を出したことからも、外国語学部を指定校推薦・一般受験も含め進路指導上の
有望な入学先に位置付けることが考えられます。今後は、学んだ外国語をいかに活用するか、生徒の進
路やキャリアにどの様に反映していくかなど、第二外国語を含む国際理解教育を、中長期的な教育活動
の取組として位置付けていくための検討を行い、全教職員の共通理解のもと、経営の柱の一つに育てて
いくことが求められます。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■20年度の目標とその成果(概要)
重点目標(抜粋)
実践的な受験指導の強化
長期休業中、放課後の補習等
60講座以上
全国模擬試験全学年毎学期参加
達成状況(20年度末)
夏季休業中58講座、冬季休業中2講座、
土曜授業(年間17回)
、
放課後補習(古典・英語、数学、科学開催)
1学年;2回(7・1月)
、2学年;3回(7・1・
3月)
、3学年;34回(通年)
1学年;OBガイダンス6名、大学講師ガイダンス1
1名、2学年;教育実習生ガイダンス12名、大学講
師ガイダンス22名、国公立大学ガイダンス3回各O
B3名、3学年;大学進学ガイダンス3回、専門学校
ガイダンス3回、看護医療系ガイダンス2回
生徒の進路意識向上
キャリアガイダンスの充実
センター試験出願率
現役大学進学率
授業規律の確立
保健だよりの発行
80%以上
70%以上
遅刻指導の強化
年8回以上
80%
63%
学校説明会開催
年3回
校内研修
年3回
校内説明会3回874名参加、
夏季休業中学校見学会1259名参加
進路指導推進に向けて3回、授業規律の確立2回、
生徒による授業評価1回の全体研修実施
遅刻指導等について校内研修実施、遅刻者の減少
年12回発行
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
本校の教育活動について、定期的な学校経営診断を行うことの意義は大きいと考えます。特に、学
校経営診断書の課題と改善の方策で指摘されています具体的な内容については、今後、貴重な意見と
して具現化に向け検討したいと考えます。
本校は、特色化事業の一環として、信州大学、長野県との協議を重ね、キャリア教育、環境教育を
目的とした「信州北園プロジェクト」を進めています。また、ドイツ連邦政府から本プロジェクトに
ついて評価していただき、ドイツ語の普及と環境教育の充実を柱とした協定(日本から4校が対象)
を内定しています。毎年のドイツ留学(生徒3名・3週間)など各種支援事業が始まります。
(北園高等学校長 塩澤 幸雄)
- 91 -
№19 北豊島工業高校
学 校 経 営 診 断 書
― 北 豊 島 工 業 高 校 ―
『地域に愛され、地域に信頼される工業高校』
所 在 地 板橋区富士見町28-1
創
立 大正9年3月9日
診断対象 全日制課程(専門学科)
20年度
389名(男371名〔95.4%〕、女18名〔4.6%〕)
21年度
399名(男386名〔96.7%〕、女13名〔3.3%〕)
生 徒 数
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 創立89年の歴史と伝統をもち、平成5年度に都立工業高校で最初に認可された総
合技術科の学校です。校訓に「自治」を掲げ、
「誠実な匠・技術者を育む北豊島」を基盤とした教育活
動を実践し、生徒に自己の能力を充分発揮させることにより、生徒一人一人の自己実現を図っています。
また、工業技術の基礎・基本をしっかりと身に付け、資格取得を奨励するとともに、最先端の設備を
いかし地域に根ざした学校づくりを進めています。
■特徴的な取組と成果 工業教育に早くから興味・関心をもたせるため、専門教科において2年次から類
型選択を導入しました。また、生活指導部を中心に毎朝の校門指導などに取り組み、生活習慣の確立を
図ることで、授業に落ち着きが出てきました。さらに、各種資格・検定に受験者全員を合格させるため、
教員が積極的に補習などを行う一方、合格者を学校通信やホームページなどで紹介し、生徒の受験意欲
を喚起しています。その結果、ジュニアマイスターシルバーに認定されるなど顕著な成績を上げていま
す。また、環境教育を推進させるためにエコアクション21の認証取得に向けて取り組み、意識啓発を
行ってきました。その取組の成果として、21年7月には、エコアクション21が認証されました。
■課題と改善の方策 教職員の異動により、組織体制を再構築することが課題となっています。校長・副
校長の指導のもと、課題解決のために、主幹教諭・主任教諭を軸としたプロジェクトチームを立ち上げ
るなどして、ミドル・マネジメントを醸成していくことが必要です。チームリーダーに意欲的な若い教
職員を抜擢して、ボトムアップを図り意見を集約していく体制を作り、学校全体で課題に取り組むこと
が求められます。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 きめ細かい、わかる授業により基礎学力をつける学習指導
■取組内容と成果 18年度の診断では、基礎学力の定着が必ずしも十分でないことが課題として指摘さ
れました。
1学期に十分理解できなかった授業内容を補填するために、夏季休業期間中に実施する補習の講座数
を19年度14講座から20年度21講座と増やしてきました。さらに、工業の専門教科では、早期か
ら専門性を身につけさせるために、2・3年次で段階的に切り替えていた類型学習のシステムを、20
年度からは2年次から類型選択とするカリキュラム変更を行いました。その結果、生徒による授業評価
の「授業はわかりやすい」という項目に対しての肯定的評価が、18年度77.7%、19年度78.
5%、20年度81.3%と上昇しました。
■課題と改善の方策 生徒による授業評価については、各授業担当者が評価結果の集計及び分析を行い、
各教科で改善策を検討し、その上で全教員が参加した校内研修を行ってきました。しかし、各教科の成
果発表が主となり、授業改善に向けての具体的な改善策が十分に検討されていません。今後は、教務部
が中心となり、生徒による授業評価の数値データを集計し、生徒の授業満足度や授業への取組状況を整
- 92 -
№19 北豊島工業高校
理し分析していくことが必要です。さらに、分析結果に基づき、基礎・基本の定着を図る指導技術の向
上に向けて、教員相互で授業参観に取り組むとともに、外部専門家や指導主事に助言を依頼して研修会
を行うことが大切です。
また、成績不良者に対して、長期休業期間中に補習を行うだけでなく、放課後や定期考査前に補習や
小テストを行うなど日ごろからの基礎学力定着のための取組が求められます。
診断ポイント② 進路指導 資格取得と検定合格を目指す進路指導
(図1) ガス溶接技能講習会
■取組内容と成果 18年度は、
「卒業までに一人3つ以上の資格取得
合格率
人
100%
80
を目指す。
就職希望実現100%を目指す」
ことを目標とする一方、
90%
98.4%
70
インターンシップの充実を図ることが課題として指摘されました。
90.0%
80%
60
64
進路指導の一貫として、資格取得や検定試験を奨励し、受験者全
62 61
60
70%
50
54
員を合格させるために、自作テキストの作成を行い、放課後や週休
60%
62.5%
50%
40
日及び長期休業期間中に講習会を実施してきました。さらに、各種
40
40%
資格・検定合格者を学校通信やホームページなどで紹介することに
30
30%
より、生徒の検定合格に対する意欲を啓発してきました。
20
20%
その結果、20年度には全国工業高等学校長協会が制定したジュ
10
10%
ニアマイスター顕彰制度による、ジュニアマイスターシルバーに3
0%
0
年生(1名)が北豊島工業高校ではじめて認定されました。ガス溶
18年度
19年度
20年度
接技能講習会では年々合格者が増加しています(図1)
。また、計算
受験者
合格者
合格率
技術検定4級では1年生全員に受験を勧めたことにより、全校の合
格者が19年度28名から20年度212名と大幅に増加しました。さらに、第1種、第2種電気工事
士も、19年度3名から20年度14名と合格者数が増加しました。
■課題と改善の方策 資格取得や検定合格に向けた取組が充実している一方で、自分で進路選択ができな
いなどの理由から進路未決定者(19年度3名、20年度5名)が毎年出ている現状があります。
取得した資格がどのような形で進路に結びつくのかを生徒に説明するなど、職業選択に結びつける指
導が求められます。また、18年度に指摘されたインターンシップ事業(参加者、18年度8名、19
年度18名、20年度8名)を見直し、年次計画を策定して着実に実施することが大切です。今後は、
職業理解の啓発を図るために、生徒一人一人の進路ファイルを作成し、生徒に進路情報や個々のデータ
を整理させ生徒自らに進路計画を立てさせることが必要です。また、卒業後の就職先への定着を図るた
めに、卒業生の離職者の状況を分析するなどの追跡調査を行い、就職者のミスマッチをなくす取組が求
められます。
診断ポイント③ 生活指導 「基本的な生活習慣」等の規範意識を向上させる生活指導
■取組内容と成果 18年度は、
「基本的生活習慣を定着させ、自律に基づく行動力を育成する」ことが目
標とされ、毎朝の校門指導などを通して、
「しつけ教育」に取り組む一方、遅刻指導の見直しが課題と
して指摘されました。
数年間にわたり、生活指導部が中心となり、毎朝の校門指導において頭髪・服装指導やあいさつの励
行を実施し、各学期始めには生活指導週間を設定するなどの取組を行いました。また、1学年では担任
が教室で昼食をとる取組や休み時間の校内巡回などから生徒との信頼関係を深めてきました。
生活指導を充実させた結果、特別指導件数は、19年度30件45名から20年度14件23名と減
少しました。また、頭髪違反者がいなくなるなど指導が徹底され、授業などに落ち着きがでてきました。
■課題と改善の方策 朝の校門指導や実習の開始と終了の際などは、あいさつをしていますが、外部の人
へのあいさつの声が少ないなど、まだ十分徹底されているとはいえません。また、遅刻者数が毎年横ば
いであり、中途退学者数(18年度74名、19年度83名、20年度55名)も微減にとどまってい
ます。
あいさつの励行や時間の厳守は、社会人にとって必須条件です。今後は、生活指導部が中心となり、
入学当初から家庭と連携して基本的な生活習慣の改善に取り組むことが求められます。規範意識を向上
させるために、全教職員の共通理解のもと、すべての機会でのあいさつの励行や遅刻防止について強化
月間を設定するなどの組織的な取組が必要です。
- 93 -
№19 北豊島工業高校
診断ポイント④ 特別活動・部活動 工業高校としての特色ある特別活動・部活動の取組
■取組内容と成果 電力部、機械工作部、無線技術部など理工系部活動があり、放課後や夏季休業期間中
をはじめ早朝にも製作に取り組むなど、顧問の熱心な指導が行われてきました。その結果、
「高校生も
のづくりコンテスト」では7部門中2部門に参加し、電気工事部門において関東大会出場、自作スター
リングエンジンの性能とアイデアを競う「スターリングテクノラリー競技大会(宙返り耐久ミニクラ
ス:ループの通過回数を競う)
」において銀賞など多くの実績を上げてきました。さらに、部活動加入
率は19年度26%から20年度52%と大きく上がり、徐々に部活動全体が活気づいてきました。
■課題と改善の方策 今後は、
「高校生ものづくりコンテスト」において更に多くの部門に参加して、工業
高校の特色をいかした「匠の技」を磨ける部活動を充実させていく必要があります。自動車整備やロボ
ット製作など、生徒が興味・関心をもつ部活動を立ち上げ、生徒の活動意欲を喚起し、部活動全体の底
上げを図る取組が求められます。
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 企画調整会議を中心とした学校経営・組織体制の充実
■取組内容と成果 18年度の診断で、
「企画調整会議を軸として課題に取り組む」
ことが指摘されました。
20年度、組織改革を行い、学校の取組を積極的に発信するための広報部や、環境教育に取り組むた
めの環境部を新設して、校内組織を再編しました。その結果、中学校への訪問校数が19年度30校か
ら20年度160校へと大幅に増加するとともに、環境教育への取組が促進されるなどの成果があがり
ました。また、各分掌主任が事前に議題を整理し、企画調整会議の効率的な運営に取り組むようになり
ました。
■課題と改善の方策 組織改革が行われましたが、情報が一部の教員にしか伝わらないなど、
「報告・連絡・
相談」が十分でない面があります。また、主幹教諭を希望する教員が少なく、次代を担う人材の育成が
必要です。今後は、将来の北豊島工業高校の在り方について検討するために「未来構想委員会」を活性
ばってき
化させ、その委員会のメンバーに主任教諭や若い教諭を抜擢し、学校の課題を分析させたり、定期的に
主任会議を開催したりするなど、情報の共有化を図ることが求められます。さらに、主任教諭のミドル・
マネジメントとしての資質向上を図り、次の主幹教諭を育成することが大切です。
診断ポイント⑥ 環境教育 エコアクション21の取得を目指す環境教育
■取組内容と成果 現在の工業社会が直面している環境問題について理解を深めるため、新たに環境部を
発足させ環境教育に取り組み、エコアクション21の認
(図2) 可燃ごみの量
kg
3000
証取得に向けて、20年5月にキックオフ宣言をし、2
2500
1年7月に認証されました。
2000
新聞の切抜きを利用して環境問題を扱うなど、各教
1500
科・科目で1時間の環境に関する内容を取り入れた授業
1000
を実施しました。また、未使用教室の消灯や空調機オフ
500
などの取組を推奨してきました。さらに、電力消費量や
0
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
二酸化炭素排出量のデータを学校便りで示すなど省エネ
目標値 317.5 345.9 409.6 285.2 238.1 444.9 430.2
実績
2515 2165
230
215
120
385
ルギーの意識付けを行い、節電・節水・ゴミの分別など
(図3) 不燃ごみの量
kg
の定着を図ってきました。その結果、ごみの量(可燃・
800
700
不燃)が目標値を下回り環境教育の一つの成果をあげま
600
した(図2)
(図3)
。
500
■課題と改善の方策 設定した目標値をクリアしましたが、
400
300
エコアクション21認証を踏まえ、工業社会の中で環境
200
教育の必要性を意識し、広く社会に貢献できる生徒の育
100
0
成が求められます。今後は、環境教育に取り組んでいる
4月 5月 6月 7月 8月 9月
他校と連携を図り情報交換を行うなど、20年度にクリ
目標値 553.7 546.4 759.5 421.4 235.2 759.5
145 210 275 235 190 230
実績
アされた目標値について更にハードルを上げ、エコアク
ション21の取組を継続しながら、環境教育を充実していくことが求められます。
- 94 -
390
10月
725.2
680
№19 北豊島工業高校
診断ポイント⑦ 地域連携 地域の信頼を得る教育活動、社会貢献活動の推進
■取組内容と成果 工業高校としての特色ある教育活動
を社会に還元するため、20年度は小・中学生対象の
体験入学を6回、小・中学校の教員向けのパソコン研
修会を3回、夏季休業期間中の「わくわくどきどき夏
休み工作スタジオ」や「ものづくり教室」を実施しま
した(図4)
。夏休み工作スタジオでは、募集方法を改
善したため、
19年度49名から20年度165名
(4
00名を超える申し込み)と参加者が大幅に増加しま
した。さらに、学校便りを年14回発行し、地域の中
学校にも配布するとともに、板橋区、北区、新宿区の
(図4)わくわくどきどき夏休み工作スタジオ
中学校技術科教員とものづくり教育についての研修会
を開催し、学校の理解推進を図りました。さらに、
「い
たばし産業見本市」に加え、
「としまものづくりメッセ」に参加するなど、地元企業と連携して、もの
づくり教育をアピールしてきました。
■課題と改善の方策 学校運営連絡協議会では、
「個々の教員の取組と資質は高く評価されたが、外部に対
する一体となった取組が少ない」という指摘があり、学校の活動内容が十分伝わらないなど、情報発信
に課題があります。
また、工業高校としての資源を活用し、小学生にもものづくりの楽しみを理解してもらうため、出前
授業や体験学習を活性化することが必要です。また、
「ものづくり教室」など教員が中心となって行わ
れていたものを、生徒にも関わらせることで地域貢献を体験させていくことが大切です。さらに、地元
企業や区教育委員会と連携し、技術交流会を行うなど、ものづくり教育の推進を図り、中学校の技術科
教員だけでなく、進路担当教員との情報交換会を実施し募集活動に生かすなど、学校に対する更なる理
解促進のための取組が求められます。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■20年度の目標とその成果(概要)
重点目標(抜粋)
就職内定者数
大学進学者数
61名
8名
専門学校等進学者数
13名
453名
ガス溶接・・・・・・・60名
達成状況(20年度末)
60名
9名
年間皆勤者数
第2種電気工事士・・・18名
ワープロ検定3級・・・22名
危険物取扱者乙種4類・12名
60名
18名
361名
ガス溶接・・・・・・・61名
第1種電気工事士・・・・1名
第2種電気工事士・・・13名
ワープロ検定3級・・・20名
危険物取扱者乙種4類・・7名
42名
年間退学者数
30名
55名
資格取得者数
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
今回の学校経営診断を受けて再確認したことは、本校の特色を十分に中学生や都民に広報していな
いことと、課題解決に向けて組織で行動していない部分があることがわかった。
昨年度より立ち上げた広報部を主体に、組織全体で広報活動の強化を図り、入れる学校から入りた
い学校への脱皮を図り、不本意入学する生徒の減少をより進め、中途退学者数の減少と規範意識の向
上が図れる学校とする。そのために主幹教諭および主任教諭を中心に、組織全体が共通認識を保有し、
課題解決が図れる組織作りにすることが重要である。
(北豊島工業高等学校長 小林 薫)
- 95 -
№20 大泉桜高校
学
校
経
営
診
断
書
―
大
泉
桜
高
校
―
ひら
桜高校で開花する「豊かな感性、思いやりの心、未来を切り拓く力!」
所 在 地 練馬区大泉町3-5-7
創
立 平成17年4月1日
診断対象 全日制課程(単位制普通科)
20年度
704名(男127名〔18.0%〕、女577名〔82.0%〕)
21年度
705名(男124名〔17.6%〕、女581名〔82.4%〕)
生 徒 数
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 デザイン・美術系科目群、看護・福祉系科目群及び情報・コミュニケーション科目
群をはじめとする多様な選択科目を設置し、四年制大学・短期大学等への進学を中心とした生徒の進路
実現に努めている平成20年度で開校4年目を迎えた全日制課程普通科単位制高校です。基礎・基本を
重視した学習指導を通して、生徒一人一人の学習意欲を引き出すとともに、単位制の特色を生かした教
育課程を編成し、進路指導の充実を図っています。
■特徴的な取組と成果 デザイン・美術系や看護・福祉系専門の教員を配置するとともに、四年制大学・
短期大学等への進学のための自由選択講座を増設することで、少人数授業における専門性の高い授業を
実現し、進学実績を着実に上げています。また、開校当初から個に応じた生活指導をきめ細かく行って
きたため、落ち着いた秩序ある雰囲気が保たれており、日々の授業や学校行事が充実しています。さら
に、文化系部活動が中心となって積極的に地域の行事に参加するなど、大泉桜高校の特色を生かした教
育活動を展開しています。
■課題と改善の方策 デザイン・美術系や看護・福祉系の四年制大学・短期大学等に進学しようと目的意
識をもって入学して来る生徒が増えている反面、情報・コミュニケーション系の位置付けが明確になっ
ていなかったり、目的意識をもった生徒とそうでない生徒との間に学習に対する意欲の差が生じてきた
りしている状況があります。今後は、情報・コミュニケーション系についての検討を行い、必履修科目
における基礎・基本の定着を図った上で、多様な大学進学に対応できる学習指導体制の見直しや改善が
求められます。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 多様な進学に対応できる学習指導体制の確立
■取組内容と成果 基礎的な学力を身に付けさせるために、
「国語総合」
・
「数学Ⅰ」
・
「英語Ⅰ」の3科目で
2クラス3展開の習熟度別授業を実施しています。国語、数学、英語の3教科については、2年次及び
3年次で生徒の様々な興味や関心に応じた自由選択講座を設置しています。また、生徒の希望が多い「美
術」や「家庭総合」でも少人数授業を実施しています。特に、
「絵画」や「ビジュアルデザイン」にお
いては、東京国立博物館、国立西洋美術館、東京国立近代美術館との連携講座を実施し、専門家による
芸術作品の鑑賞指導や制作実習を通して、生徒の意欲の向上を図っています。看護・福祉系の選択講座
である「基礎介護」や「社会福祉援助技術」においては、市民講師を導入して教育内容の専門性を高め
ながら生徒の学習意欲を喚起し、進路実績の向上につなげています。
■課題と改善の方策 学校運営連絡協議会の学校評価アンケートによると、
「生徒の理解度に合わせた授業
が行われていると思う。
」の設問に対して「そう思う・ややそう思う」と回答した生徒は、1年次52%、
2年次41%、3年次46%であり、満足度は高くありません。今後は、
「生徒による授業評価」等の
結果についての検証を行うとともに、教員相互で授業参観を行うなど全教員で分かりやすい授業の実践
- 96 -
№20 大泉桜高校
に向けた授業改善に取り組んでいく必要があります。そして、基礎・基本の定着を図った上で、多様な
大学に進学できるよう、生徒に学習課題を提示するなどして自宅で学習する習慣を身に付けさせていく
ことが求められます。さらに、学習意欲のある生徒には、放課後の補講や勉強合宿を行うことで大学進
学率の向上が期待できます。
診断ポイント② 進路指導 各系科目群の特長を生かした進路指導の充実
■取組内容と成果 進路指導部と学年担任団が連携しなが
(図1)分野別進学者数
ら、1年次からキャリアガイダンスを充実させるととも 80 (人)
に、年間4回の実力テストや年間1回の適性検査などを
70
実施して、生徒一人一人に対して自己の適性や卒業後の
60
24
進路について考えさせる取組を行ってきました。また、
50
35
長期休業日には各系科目群の特長を生かした
「美大英語」
24
23
や「看護系数学」をはじめとする生徒の進路目標に合わ 40
せた講習を合計13講座開講しました。
30
その結果、第2期生のデザイン・美術系及び看護・福
46
19
20
10
36
32
31
祉系への進学者数が増加するとともに、その他の分野へ
10
15 13
の進学者数も増加しました(図1)
。
0
■課題と改善の方策 デザイン・美術系及び看護・福祉系 デザイン・美術系
看護・福祉系
その他
19年度 四年制大学・短期大学 19年度 専門学校
への進学に向けた指導体制や生徒の目的意識が明確化し
20年度 四年制大学・短期大学 20年度 専門学校
ている一方で、情報・コミュニケーション系への進学に
向けた指導が具体化されていない現状があります。その解決のために、英語などによる多彩な語学系科
目群を情報・コミュニケーション系科目群として明確に位置付け、語学系科目の設定を検討する必要が
あります。今後も、引き続き進路指導部が中心になってガイダンスの充実を図り、生徒ができるだけ早
く進路目標を設定できるよう指導していく必要があります。また、具体的な進路希望に合った講習に加
え、推薦入試などに対応する面接や小論文指導等をきめ細かく行い、生徒が高い目標と意欲をもって進
路に向けた準備を進めていけるよう進路指導体制を一層充実させていくことが求められます。
診断ポイント③ 生活指導 個に応じた生活指導による中途退学者の減少
■取組内容と成果 生活指導部を中心に全教員で遅刻指導や頭髪指導及び服装指導を行ってきたことによ
り、生徒が落ち着いて授業に取り組める秩序ある学習環境を維持することができました。開校以来、教
員が毎朝校門に立って、服装や自転車の乗り方などについて生徒に繰り返し声をかけて指導に当たって
きました。そして、生徒も一緒に校門に立ちあいさつをして声をかける取組は、生徒の一日の活力を生
み出すとともに、生徒の社会性をはぐくんできました。これらの地道な取組が皆勤生徒数の増加につな
がり、20年度の1年次の皆勤生徒数は19年度の24人を大幅に上回る44人となりました。さらに、
中途退学者数も減少しており、19年度の1年次の中途退学者数は11人でしたが、20年度の1年次
は全員進級を達成しました。
■課題と改善の方策 1年次の中途退学者数は大幅に減少しましたが、2年次は19年度の6人から1人
減って5人、3年次は19年度の3人から5人に増加した状況にあります。今後も、生活指導部が中心
になって朝のあいさつ指導をはじめとする生活指導に粘り強く取り組み、生徒が落ち着いて生活できる
雰囲気を保っていくことが必要です。また、2年次と3年次で中途退学となってしまった原因を究明す
るとともに、課題のある生徒に対して「個人指導記録票」を作成し、学力不振への支援だけでなく遅刻
の状況など個々の課題に応じたきめ細かな指導に努めていくことが必要です。さらに、
「個人指導記録
票」を基に教員が情報の共有化を図るとともに、学校と家庭が常に連携しながら、組織的に個別指導に
当たっていくことで一層の効果が期待できます。
診断ポイント④ 特別活動・部活動 地域連携を踏まえた特別活動・部活動の推進
■取組内容と成果 学校行事では、大泉学園ゆめりあギャラリーで開催したデザイン・美術系の3年次に
よる卒業制作展が、大泉桜高校の特色ある行事の1つになりました。美術館をモチーフにした文化祭で
は、実行委員会が積極的に活動し、一般公開日には、昨年度より約200人増の約2000人の来校者
- 97 -
№20 大泉桜高校
がありました。
部活動では、美術部が練馬区立美術館でのワークシ
ョップや「光が丘 j-city アート展」への出展とその開
催支援を行うとともに、吹奏楽部が近隣施設の夏祭り
や小・中学校との文化集会で演奏したり、ボランティ
ア部が高齢者施設でのボランティア活動を行ったりし
て地域に貢献しました。
ほかにも、イラスト部等が高校生マンガ・イラスト
コンクールで数々の賞を取ったり、手話部が手話技能
3級取得を目標に熱心に取り組んだりしています。こ
のようにデザイン・美術系の生徒や文化系部活動が中
心となり、多くの地域行事に参加して活動実績を上げ
(図2)第2期生卒業制作展の様子
ました。
■課題と改善の方策 部活動の加入率が目標の72%以上に届かず、昨年度より1%減の70%でした
(文化部44%、運動部26%)
。文化部への加入率は高く、かつ大会等で顕著な成績を収めている一
方、運動部への加入率は低い状況にあります。大泉桜高校を更に活気ある学校へと変えていくために、
運動部の活性化が重要です。そのために、女子サッカー部や女子ソフトボール部などの実績を上げてい
る部が、地域の小・中学生対象に体験入部を行ったり、生徒が小・中学校を訪問して技術指導したりす
るなどの取組が必要です。また、文化祭で招待試合を企画して、在校生をはじめ保護者や地域の方々に
日ごろの活動の成果を披露するような機会を作ったり、技術指導ができる教員のいない部には、積極的
に外部指導員を活用したりすることも効果が期待できます。
診断ポイント⑤ 健康づくり スクールカウンセラーを活用した教育相談体制の確立
■取組内容と成果 20年度に配置されたスクールカウンセラーへの生徒の相談件数は約150件を数え、
「家庭・家族」や「友人関係」などの悩みについて助言を行い、生徒の心の健康づくりに努めました。
また、スクールカウンセラーを特別支援委員会のメンバーに加え、生活指導部や保健部との連携の下、
スクールカウンセラーが生徒や保護者に対する教育相談を行うだけでなく、学級担任や生活指導部等の
教員への助言も行いました。このほか、拡大保健部会を年間4回開催し、スクールカウンセラーからカ
ウンセリングを受けた生徒や保護者についての情報を提供してもらい、全教員で情報の共有化を図るこ
とができました。
■課題と改善の方策 スクールカウンセラーが配置されたことによる成果を十分に検証し、必要に応じて
改善策を講じるとともに、校内における教育相談体制を一層活性化することが求められます。今後も、
校内研修を通じて教職員が教育相談に関する理解を深め、スキルの向上を図っていくことが必要です。
全教員が常に生徒一人一人の日々の行動や家庭での様子の把握に努めながら、きめ細かな配慮をもって
生徒や保護者に接していくことが重要です。また、スクールカウンセラーとの連携を強化するとともに、
学級担任だけでなく全教職員で情報を共有できるような機会を更に増やし、家庭の協力を得ながら組織
的な教育相談体制を築いていくことが求められます。
診断ポイント⑥ 募集・広報活動 特色ある単位制を広く発信する募集・広報活動の充実
■取組内容と成果 多様な選択科目から自由に選択し、自分の興味・関心のある分野を重点的に学ぶこと
ができることや、少人数によるきめ細かい教育が受けられることなど、単位制高校の魅力を多くの中学
生やその保護者に伝えるために、調査広報部が中心になって募集活動を展開しました。合同説明会以外
に見学会・説明会・相談会等を7回開催し、体験授業も21回実施するとともに、ホームページを毎日
更新して、様々な情報を中心として積極的にPRした結果、中学生及びその保護者の年 間 来 校 者 数 は
2662人と、目標の2500人を大きく上回りました。さらに、美術部や吹奏楽部等の部活動及び教
科「奉仕」の体験活動を中心として積極的に地域の活動に参加することで、大泉桜高校の活動を地域住
民にも広く知ってもらうことができました。
■課題と改善の方策 募集・広報活動は活発に行われましたが、応募倍率が推薦に基づく入試及び一般入
試ともに昨年度を下回る結果となりました。今後は、情報・コミュニケーション系の特色を具体的に示
- 98 -
№20 大泉桜高校
すなど、募集・広報を行う内容について検討して広く発信することにより、志願者を増やすことが求め
られます。そこで、ホームページに掲載する内容を、現在掲載している交通アクセス案内のように親切
できめ細かな内容になるようさらに工夫していくとともに、様々な教育活動における生徒の最新情報を
ビジュアルに掲載していくことも効果的です。さらに、過去にどの地域からどのくらい生徒が入学して
いるか調査・分析を行った上で訪問する中学校を選び、大泉桜高校の魅力や特色を熱意をもって分かり
やすく説明できるように、教職員対象の入念な打合せ会を開催することも必要です。
診断ポイント⑦ 学校経営・組織体制 各系科目群の特色化を充実させるカリキュラムの改善
■取組内容と成果 17年4月に開校して以来、管理職の指導の下、企画調整会議が適切に機能し、主幹
教諭を中心に組織的な学校経営が円滑に行える組織体制が構築されました。そのような中で、美術の教
員を多く配置するだけでなく、福祉実習室などの施設面の充実も図ってきました。さらに、デザイン・
美術系や看護・福祉系の科目群を整備しながら、四年制大学・短期大学等への進学に必要な講座を徐々
に増やしていった結果、デザイン・美術系や看護・福祉系への進学実績は着実に向上し、その他の分野
への進学者数も増加しました。
■課題と改善の方策 デザイン・美術系や看護・福祉系については進学実績を上げてきてはいるものの、
情報・コミュニケーション系では、成果が十分に出ていません。また、20年度の学校運営連絡協議会
において、協議委員から、情報・コミュニケーション系科目群がデザイン・美術系科目群や看護・福祉
系科目群に比べて特徴がなく、分かりにくいという指摘もありました。今後は、教育課程検討部会が中
心となり、新学習指導要領を見据えながら、多彩な語学系科目群を設定するなど情報・コミュニケーシ
ョン系の特色を明確に打ち出すことが必要です。また、教員の配置等を計画的に検討しながら、生徒の
進路希望を幅広く実現できる教育課程を編成し、各系科目群の特色化を一層図るために、カリキュラム
の改善を図っていくことが求められます。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■20年度の目標とその成果(概要)
年間皆勤者数
部活動加入率
重点目標(抜粋)
各年次20人以上
72%以上
第2期生の進路決定率
75%以上
デザイン・美術系
四年制大学進学者数
看護・福祉系進学実績の向上
入試倍率(推薦)
入試倍率(一般)
体験授業開催数と参加者数
年間来校者数
(中学生及びその保護者)
達成状況(20年度末)
1年次44人、2年次15人、3年次17人
70%
86.7%
(四年生大学36%、短期大学6.6%、
専門学校36.5%、就職7.6%)
30人以上
29人
数値目標設けず
2.3倍以上
1.25倍以上
20回以上、300人以上
32人(平成19年度25人)
2.03倍
1.10倍
21回、255人
2500人以上
2662人
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
今回の経営診断を受けて、単位制の特色をアピールしてきたPRのあり方や、普通科単位制の特色
を生かしたデザイン・美術系及び福祉系科目群の充実とそれに伴う様々な開校以来の取り組みが一定
の評価を得たことは、職員一同の励みとなります。ただ、情報・コミュニケーション系の科目群につ
いて、その位置付け、内容、組み立て等を見直す必要があることは、ご指摘のあった通りで、今後の
大きな課題であると考えます。他の改善策を含め、この診断を参考に、これまでの良いところを生か
しながら、
「大泉桜らしさ」を更に追求していきたいと思います。
(大泉桜高等学校長 山崎 茂)
- 99 -
№21 若葉総合高校
学 校 経 営 診 断 書
― 若 葉 総 合 高 校 ―
“To be ambitious, active, and attractive”「大志・実践・誇り」
所 在 地
東京都稲城市坂浜1434-3
創
平成17年4月1日
立
診断対象
全日制課程(総合学科)
20年度
717名(男203名〔28.3%〕、女514名〔71.7%〕)
21年度
713名(男189名〔26.5%〕、女524名〔73.5%〕)
生 徒 数
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状
多摩地区初、都立4校目の総合学科高校として、 平成17年4月に開校しました。
“To be ambitious,active,and attractive”「大志・実践・誇り」の理念を生徒に体得させていくこと
を目指しています。学力の確実な定着に取り組むとともに、総合学科高校としての特色を鮮明にして「産
業社会と人間」から「総合的な学習の時間」に至る計画的系統的な指導を行っています。幅広い選択科
目を設定して、生徒の学習意欲を向上させ、自己の未来をみつめるためのキャリア教育を行っています。
かんよう
多様な生徒のニーズに対応できる進路指導と社会で生き抜く力の涵養を目指す学校です。
■特徴的な取組と成果
希望進路の実現に向けた効果的な講習や入念な進路相談などにより、第2期生の
進路確定率は約90%を達成することができました。選択科目の授業評価では、生徒の満足度が85%
を示し、学習意欲を維持向上させるための授業の工夫が図られています。生徒による授業評価に基づく
委員会を年間4回、校内研修会を年間2回実施してきたことも、この結果に結び付いているといえます。
早めに次年度のシラバスを作成し、科目選択に活用してきました。大学等教育機関との連携へも力を注
ぎ、文科省のSPP(Science Partnership Project)事業で早稲田大学、首都大学東京との連携授業を、
前年度に引き続き実施しました。部活動を中心に中学校との連携も進めています。
■課題と改善の方策
開校から4年が経過し、既に卒業生を輩出した本校は第2ステージを迎えています。
ひょうぼう
第 1 期生の充実した進路結果は、「総合学科の王道」を標 榜 した特色ある教育の成果といえます。今後
も若葉総合高校としての経営方針を明確に示して、総合学科高校としての「王道」を着実に築き上げる
ことが学校への信頼を獲得することになります。具体的には、多様な選択肢のある授業内容を更に充実
させ、生徒が自己の進路に活用できるものにしていくことが必要です。また、多様な選択肢で生徒が悩
まないためのオリエンテーションを充実させ、スポーツや美術分野以外でも確実に進路希望をかなえら
れるような系列・分野ごとの進路の方向性を学校として生徒に示していくことが重要です。総合学科の
よき特色をおさえていくためにも、教員の共通理解が必要であり、同時に個々の教員の力を全体の力に
していくとともに、校内研修を計画的に実施し、学校全体でのレベルアップに向けた取組を推進してい
くことが必要です。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント①
学習指導
基礎学力定着と充実への指導と授業内容の改善・深化に向けた取組
■取組内容と成果 将来の進路に向けて、生徒が目的意識をもって学習できるよう指導してきました。
ノーチャイム制も生徒の学習面の規律の向上に効果を上げています。朝のショート・ホームルーム活動
(モーニングワーク)を通して基礎学力の定着を図り、1年次選択科目(ジャンプ・アップゼミ)、習熟
- 100 -
№21 若葉総合高校
度別授業、選択科目等における少人数授業・TT等の
(図1)生徒授業満足度
(%)
90
効果的な活用、自由選択科目では、あらゆる進路に対
応した科目が用意され、充実した学習が行われていま
す。3年次では徹底した受験指導を行う演習科目が多
85
86.3
86.0
数設けられ、前後期2学期制で学習時間を確保してい
84.5
ます。生徒による授業評価(図1)を受け止め、授業
80
内容の改善・深化を促進し、生徒による授業評価に基
78.0
づく委員会を4回、校内研修会を2回実施しました。
75
講習(補習・補講)等を計画的に実施し、長期休業日
17年度
18年度
19年度
20年度
等の補習・講習は40講座以上を開講しています。
「産業社会と人間」、選択科目、
「総合的な学習の時間」
等における調査・発表活動を推進しています。生徒・保護者に理解されやすいシラバスを作成し、その
活用を図っています。選択科目、特に学校設定科目を魅力あるものにするために指導内容の工夫に努め
ています。進んで授業を受ける態度なども含め、学習環境を整備する指導も組織的に行っています。校
外の教育機能の活用による授業の実施を通して、大学等関係教育機関との連携を図るよう努めています。
■課題と改善の方策 生徒による授業評価の回答は比較的高い満足度を示していますが、更に、これらの
授業評価の活用を通して、学習意欲を維持向上させるための授業の工夫や校内研修の充実を図っていく
ことが重要です。ICTを活用した授業などの取組が個人の取組だけで終わることのないよう、教員一
人一人が積極的に授業を公開する姿勢やお互いに授業を指摘し合える等の意見交換が常に行える状況を
構築し、教員全体が、総合学科高校への認識を更に高めていくことが課題です。
診断ポイント②
進路指導
生徒一人一人が自己の進路を開拓し、実現するための取組
■取組内容と成果 「産業社会と人間」から「総合的な学習の時間=マイ・プロジェクト」に至る計画的、
継続的な進路指導を実践しています。また、
「産業社会と人間」だけでなく、4系列(人間探究系列・芸
術表現系列・伝統継承系列・情報交流系列)14分野の総合選択科目も進路実現に向けた重要な科目と
して設定しています。進路指導の専門家であるキャリアカウンセラ-を中心に社会人講師等の活用によ
る相談・支援体制の充実を図っています。第3期生の進路を実現するために進路にかかわる情報を収集
し、講習等の支援体制の充実・強化を図っています。また、卒業生の進路実現体験の活用を図るため、
卒業生の進路結果を検証し、生徒の進路実現に資する授業改善を行っています。
■課題と改善の方策 第1期生の進路実績からは、スポーツ分野、美術分野などで、明確に得意とする専
門学科のある大学への進学など、方向性が見えてきています。進路実績が出ている分野についてはこれ
までの指導を継続・充実させていくとともに、すべての系列・分野にも、方向性を明確化して希望進路
を実現させるための指導を広げていくことが必要です。生徒が多様な選択肢に惑わされることのないよ
う、各授業を通して、総合学科高校としての方向性を生徒にきちんと示していくことが重要です。
診断ポイント③
■取組内容と成果
生活指導
基本的生活習慣の定着と自立心と主体性の育成に向けた取組
将来の進路を念頭に、自主的な生活態度を育てる生活指導を実践しています。あいさ
つの励行、服装・マナーの指導、ノーチャイム制による自律的な時間管理、放送によらない掲示板利用
かんよう
の諸連絡の徹底で自己責任感を涵養 し、基本的生活習慣の定着を図っています。生徒の「良さ」を認め、
伸ばす教育を実践し、教育のあらゆる場面における相談活動、支援体制を確立しています。特別活動・
部活動の活性化も図り、
「一歩でも大人に近づける」を目標に生徒の社会性を育成しています。そのため
に、服装、態度、言葉遣い、立ち居振る舞い等の指導を入念に行っています。丁寧な生活指導について
全教職員の共通理解を図り、全教職員が当事者として生徒の指導・支援に当たっています。そのために、
生活指導の在り方と生徒理解の校内研修会を実践しています。
■課題と改善の方策 生徒に学校生活の決まりを守ろうとする気運が見てとれます。生活指導部と学年の
連携により、基本的な生活習慣の定着化が確実に図られ、
生徒の自主的な規律向上につながっています。
今後も1年次からの組織的な指導体制を構築し、更に継続した指導を実践していくことと、心理面での
問題を抱えている生徒への相談体制の充実を図っていくことが重要です。
- 101 -
№21 若葉総合高校
診断ポイント④ 特別活動・部活動 生徒の活力と意欲の発揮、増進に向けた取組
■取組内容と成果 特別活動・部活動の活性化を図っています。創立期の実績を踏まえ、活動を充実させ
ていくために、ホームルーム活動・生徒会活動・学校行事・部活動等について、組織的かつ入念な指導
を行っています。本年度も担任・副担任・学年付きのクラス指導3人体制で効果を上げています。毎朝
のモーニングワークも継続し、希望参加の3年生からは高い評価を得ました。部活動に関しては、陸上
競技部男子チームが全国高校駅伝東京都予選会において、6位に入賞し関東高校駅伝競走大会に初出場
しました。また、東京都高等学校文化祭中央大会において、美術部の生徒が東京都教育委員会賞(3名)、
東京都高等学校文化連盟会長賞(1名)を受賞し、21年夏に三重県で行われる全国大会に東京都推薦
作品として出品されることになり、目覚しい成果がありました。体育祭・若葉祭などの学校行事につい
ても組織的な運営と生徒の参加意識の高まりにより、外部からは高い評価となっています。
また、早朝部活動生徒の毎朝の通学路清掃、校内の毎日の空き缶回収など、自ら校内及び周辺環境を
整えようとする公共心、行動力が生徒の中に定着し地域住民などからも多数の賞賛を受けています。
■課題と改善の方策 生徒の学校行事への満足度は低い評価となっています。生徒が誇れる学校行事にす
るために取組体制を強化し、行事等の数を増やしていくよりも質の向上を目指し、生徒が積極的に参加
していくための指導体制を構築していくことが必要です。部活動に関しては、特定の部活動が上位の結
果を出していますが、全体的には加入率が低い状況にあります。生徒の加入促進を学校全体で働きかけ、
生徒の部活動に対する意識向上を図るためにも指導体制の確立が急務です。
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 生徒の授業評価等による授業改善・深化と地域等との連携強化
い
■取組内容と成果 企画調整会議の機動性を強化するとともに、主幹教諭等を活かした学校の組織的運営
を確立しています。保護者・地域・都民の信頼を確保するための教職員の服務・接遇等にかかわる意識
の向上を図り、学習・生活環境の整備・改善に向けて、自律経営推進予算を重点的・効果的に運用して
います。本校の基本コンセプト及び諸条件を勘案し、入学者選抜の方法について検討し、21年度入学
者選抜の状況を分析し22年度入学者選抜に備えていきます。また、PTA・同窓会との協力関係も強
化しています。
■課題と改善の方策 学年2巡目を迎え、生徒の学習・生活環境を整備し、学校PRにも資するため、大
規模改修の方向付けを適切に行い、大規模改修による環境に配慮したきれいでアメニティの高い校庭・
校舎等の実現を目指しています。ICT機器配備や教員用TAIMS端末の21年度末設置に向けて、
情報部の組織・所掌業務等を確定しています。また、23年度の重点支援校指定を目指し、若葉総合高
校の特徴を生かした構想を策定しています。ICT機器等の配備に対応するための校務分掌(情報部)
を設置して、重点支援校指定による学校PR・公募制人事等の促進を図ることが必要です。「研究紀要」
については、第4号が発行されたので、継続して第5号の発行へとつなげていくことが重要です。
診断ポイント⑥
健康づくり
特別支援教育コーディネーターやスクールカウンセラーとの連携を通した心の悩みへの対応
■取組内容と成果 養護教諭・特別支援教育コーディネーター・ホームルーム担任・スクールカウンセラ
ー間の連携による相談活動の充実を図っています。保健室便り及び相談室便りを定期的に発行し、保護
者・地域との連携の確立に努め、心の悩みに対応できるよう、組織的な取組を行っています。
■課題と改善の方策 数値目標を立てるなどして、心の健康づくりを推進していく指導体制を構築してい
くことが必要です。スクールカウンセラーの活用を図り、校内研修会等の実施を通して、生徒の相談体
制を充実させ、全教員による体制づくりを更に推進していくことも必要です。
診断ポイント⑦
募集・広報活動
保護者、地域、都民への広報活動の充実に向けた取組
■取組内容と成果 中学校・学習塾への訪問や、学校見学会・学校説明会・学習塾対象説明会等を開催し
ています。ホームページの随時更新や「学校広報誌」の年間10回以上の発行、配布等による情報提供
活動を積極的に展開しています。また、地域との連携を深めるため、地元市教育委員会や中学校等への
定期訪問、中学校へ出張しての「出前授業」や中学生の上級学校訪問受け入れ等の交流・情報交換を図
り、多摩地区の中学校を中心に総合学科高校としての若葉総合高校の特色と卒業生の進路実現の成果に
ついて広く理解を得ています(図2)。
- 102 -
№21 若葉総合高校
■課題と改善の方策 教員一人一人が総合学科高校に
対する理解を深め、中学校訪問時における説明の内
容の充実を図っていくことが必要です。そのために
も、校内の取組や進路実績の情報を常にホームペー
ジ等を通じて、外部へ発信していくことが重要です。
2.40
2.20
(図2)入学者選抜倍率
(倍)
2.24
2.14
2.05
2.00
1.88
1.80
1.60
1.43
1.44
1.43
1.40
推薦
学力検査
1.25
1.20
1.00
17年度
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
18年度
19年度
20年度
■20年度の目標とその成果(概要)
重点目標(抜粋)
達成状況(20年度末)
①第二期生の進路実現
90%以上
89%
②生徒の授業満足度
90%以上
③保護者の学校満足度
90%以上
1年次80%、2・3年次総合
選択92%、自由選択87%
94%
(学校評価アンケート調査による)
④部活動加入率
80%以上
60%
⑤入選応募倍率
1.7倍(推薦2.0倍、学力 1.82倍(推薦2.24倍、
1.4倍)以上
学力1.44倍)
⑥本校学校見学会・学校説明
延べ2000人以上
会等の参加者
⑦学習塾対象説明会への参
30以上
加塾数
⑧全教員による中学校及び
学習塾等への訪問(学習塾や
延べ500校以上
PTA主催の説明会を含む)
2515人
12
延べ400校以上
⑨学校説明会等開催
7回以上
12回
⑩ホームページのアクセス
数
年間80000以上
年間85765
40講座以上
48講座
⑪長期休業日等の補習・補講
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
本校は、平成17年4月の開校から今年で5年目、1期生、2期生の進路成果が表れるととも
に、落ち着いた校風も定着しつつある。
この度の学校経営診断で総合学科の特性を生かした本校の学習指導、進路指導のあり方をご評
価いただいたことは、本校教職員にとって、たいへんな励みとなるものである。
今後も、総合学科高校の最大の眼目である生徒の進路希望実現をめざして、学習指導、進路指
導の工夫を続けていく。また、たゆまぬ努力と様々な仕掛けにより、総合学科高校としての本校
の良さを地域や都民の皆様にPRし続けていく。
(若葉総合高等学校長 立石 武則)
- 103 -
№22 立川高校
学
校
経
営
診
断
書
―
立
川
高
校
―
「学力をつけ、人間を育む」
~生徒一人一人の高い志をもった進学希望の実現を図る~
所 在 地 立川市錦町2丁目13番5号
創
立 明治34年5月1日
診断対象 全日制課程(普通科)
生 徒 数
20年度
976 名(男 513 名〔52.6 %〕、女 463 名〔47.4 %〕)
21年度
971 名(男 512 名〔52.7%〕、 女 459 名〔47.3 %〕)
20・21年度
進学指導重点校
の主な指定等
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 立川高校は、府立第二中学校を前身とする都内有数の伝統校として、各界に多数の
卒業生を輩出してきたことで知られています。長い間、多摩地区随一の進学校としての地位を維持して
きましたが、近年では、伝統校としての立場を重視する一方で学校改革への取組が遅れ、人気、実績と
もに低迷する時期が続いていました。平成15年に進学指導重点校に指定されたことを契機として、学
校改革に向けた動きが始まると、校内に組織されたアドバンス委員会を中心に改革の動きが加速され、
65分授業の導入や進学指導の強化、積極的な広報活動の推進などが着実に実行されてきました。その
結果、現在では、国公立大学や難関私立大学への進学実績が安定的に上昇するとともに、入学志願者も
大幅に増加傾向を示すなど、多摩地区における人気進学校としての地位を確立しつつあります。
■特徴的な取組と成果 立川高校における特徴的な取組としては、①生徒がじっくりと学習に集中できる
1日5時限の65分授業、②難関大学への進学を見据えたきめ細やかな進路指導、③生徒の自主性・自
律性を重視した学校行事や部活動が挙げられます。
進学指導重点校として、いち早く他府県の先進的な事例をもとに65分授業を導入し、その効果的な
運用を進めるために教員相互の授業観察を実施して、65分授業の質の充実に向けた取組を継続的に実
行しています。進路指導については、進路指導部が「進路だより」を発行し、立川高校の生徒にとって
有用と思われる進路情報を随時提供しながら、学年と連携した進路行事を通じて、生徒の難関大学への
チャレンジを支援する指導を行っています。
学校行事では、1年生全員参加による館山での臨海教室が大きな特徴です。この合宿を通じて友情や
か
団結心を育むとともに、学校生活や大学受験における困難に打ち克つ心身の育成を図っています。伝統
的に盛んな合唱祭や文化祭においては、実行委員の生徒が中心となって企画・運営を担うなど、生徒の
自主・自律の精神を培うための指導がなされています。加熱気味との批判があった部活動についても、
現在では学習活動とのバランスを重視した取組が定着しつつあり、文武両道の実現に向けて成果を上げ
ています。
■課題と改善の方策 進学指導重点校として学校改革を進めてきた結果、大学進学実績や志願者倍率等に
き ぐ
おいて一定の成果を上げてきたことで、現状に満足する雰囲気が教員間に広がることが危惧されます。
教員相互の授業観察については、年に2回実施するというだけにとどまらず、主任教諭を活用してグル
ープ内での議論をより一層深めることによって、更なる相互研鑽の効果が期待できます。今後は、非常
勤教員や講師も含め全教員の授業力向上についての取組を進めていくことが課題です。生徒による授業
評価を活用して、その結果を各教員にフィードバックするとともに、管理職を中心に授業改善に向けた
取組を進めていくことが求められます。難関大学受験に向けた進学指導については、多摩地区の難関国
立大学にターゲットを絞った対策を徹底させていくなど、生徒の難関大学への挑戦をより具体的に支援
するための工夫が求められます。
特別活動等については、臨海教室における安全指導の徹底や、学習活動と部活動の高いレベルでの両
立を目指す指導の継続が課題です。学校全体における今後の方策としては、他の進学指導重点校と比べ
てどのような特色化、差別化が図れるかを十分に検討しながら、更なる学校改革の取組を促進していく
ことが望まれます。
- 104 -
№22 立川高校
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 65分授業の良さを生かした指導内容・指導方法の充実
■取組内容と成果 65分授業の導入以来、生徒や保
(図1) 65分授業に対する肯定的な評価の割合
(%)
護者からは継続して高い支持と肯定的な評価が得ら
100
れています。英語、数学、国語の主要教科は、65
分の中で講義と演習がバランスよく行えるため、生
90
90
88
88
90
徒の理解を定着させる上で高い学習効果があります。
生徒
88
87
保護者
86
65分授業を一層充実させるために他府県の65分
86
教職員
80
授業実施校への研究視察を行い、その1つの成果と
79
79
78
して、学習オリエンテーションの導入が決まりまし
76
た。学習オリエンテーションを通じて65分授業を
70
17年度
18年度
19年度
20年度
有効活用するための方法論を提示するとともに、具
体的な各教科の学習方法についてもアドバイスを行い、生徒が授業や家庭学習に主体的に取り組めるよ
うな工夫が行われるようになっています。
■課題と改善の方策 講義が中心になりがちな教科では、65分授業の良さが活用されにくいという課題
があります。講義中心の一方通行の授業ではなく、演習や研究発表など、生徒の「知」を深める学習活
動を促す授業を実現することが、65分授業を一層有効に活用するための方策といえるでしょう。また、
65分授業の質の充実を図るためには、教員相互の授業観察のような魅力ある授業づくりのための取組
を今後も組織的に継続していく必要があります。具体的には、主任教諭を活用して授業観察後の指導・
助言を行わせ、研究協議を活発化させるなどの工夫も考えられます。65分授業を最大限に生かすには、
授業内容の充実とともに、生徒の家庭学習の定着を図ることが欠かせません。その意味で、学習オリエ
ンテーションをうまく活用しながら、各教科が連携して適切な自習課題を生徒に提供していくことも今
後の課題になります。
診断ポイント② 進路指導 難関大学への進学を見据えた組織的な進路指導の推進
(図2)現役生の大学合格者数の推移
■取組内容と成果 進路結果報告会や模試分
(人)
250
分析会等の教員研修を年10回以上実施
213
209
194
し、教員間で情報の共有化を進めるなど、 200
進路指導力の向上を図りました。進路指導
137
150
部では「進路だより」を年34号発行して、
102
85
84
きめ細かい進路情報を生徒に提供しまし
100
75
71
71
56
56
た。また「進路の手引き」を大幅に刷新し
47 35
42
50
て大学・学部ごとに卒業生の校内成績と模
試成績のデータを詳細に示したことで、生
0
16年度
17年度
18年度
19年度
20年度
徒が卒業生の取組をもとに、これまで以上
国公立大学 早慶上智 MARCH
(卒業年度)
に高い目標を設定して大学進学を考える
ようになりました。その結果、難関国公立大学受験者数は、18年度卒業生の31名から20年度卒業
生では57名へと大幅に増加しました。さらに、11月を「進路充実期間」に設定し、各学年と進路指
導部が連携して進路ガイダンスや大学教員による模擬授業を実施するとともに、きめ細やかな個別面談
や三者面談を通じて、生徒の難関大学への挑戦を積極的にサポートすることができました。
■課題と改善の方策 現役合格率が約70%(男子65%・女子73%)と高く、生徒・保護者ともに安
全志向・現役志向が強いという傾向が見られます。国公立大学との併願者の場合、早稲田・慶應・上智
といった難関私立大学はもちろん、MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政の5大学)までな
らば現役での大学進学を決めてしまう生徒もいます。これまでは、学校での成績が優秀な生徒が一般入
試にチャレンジせずに指定校推薦に流れてしまうという課題もありましたが、この傾向は解消しつつあ
ります。一方で、難関国公立大学への現役合格者数が、10名を超えたラインで足踏みしている点は課
題です。難関国公立大学への挑戦を呼びかけるだけでなく、進学指導重点校として、その挑戦を実現可
能にする体制づくりが求められます。具体的には、文系数学の指導を一層充実させることによって、近
隣地域の文系難関国立大学への受験対策を強化していくなどの対策が考えられます。また、進路指導充
実に向けた校内研修に全教員の参加を促して、教員全体の進路指導力を向上させることも課題です。具
- 105 -
№22 立川高校
体的には、全教員が進路指導システムを活用した進路相談に応じられるような体制を整え、生徒からの
相談に対して客観的なデータに基づく迅速な指導・助言が行えるしくみを準備することが重要です。
診断ポイント③ 生活指導 生徒一人一人の実態や特性に応じた生活指導の充実
■取組内容と成果 スクールカウンセラーと養護教諭の連携を通じて、生徒からの様々な相談にきめ細か
く対応できるような相談体制を整えました。また、カウンセラーを講師として教員研修会を実施すると
ともに、生徒向けのメンタルヘルスに関する講演会を実施するなど、生徒の実態に合わせた組織的な相
談システムを構築するための取組を進めることができました。その結果、学校評価アンケートでは、
「先
生は生徒にきちんと関わっている」の項目で生徒の評価がはじめて80%を超えました。
■課題と改善の方策 最近の傾向として、学校生活や学校内での人間関係にうまく適応できないという悩
みを抱える生徒の増加が挙げられます。組織的なメンタルケアの更なる充実とともに、一人一人の生徒
の実態に応じた指導を一層充実させることが課題です。生活実態調査等を通じて生徒の生活実態や生活
環境にも目を配り、個人面談等を有効に活用しながら個に応じた指導を行うことが重要です。生徒の自
主・自律の精神を育むためにも、規則正しい生活習慣を確立させ、安定した人間関係の構築が図れるよ
う、心身の調和とバランスに配慮した生活指導を実現することが求められます。
診断ポイント④ 特別活動・部活動 けじめある部活動と学習活動の両立
■取組内容と成果 17時活動終了、17時20分完全下校
のルールを各部活動で徹底するとともに、定期考査1週間
前の活動中止、月4回の休みを設定するなど、文武両道を
実現するための環境整備を行うことができました。学校行
事と学習活動のバランスを図るため、生徒が熱心に取り組
む合唱祭や文化祭を前期に実施して、後期には集中して学
習に取り組めるような年間行事計画を策定、実施しました。
■課題と改善の方策 定時制課程が併置されており、施設使
(図3) 合唱祭の練習風景
用に時間的な制約があることから、従来は学校外の施設を
借りて夜間も活動をするようなことが見られました。こうした過熱気味の特別活動や部活動に対する指
導の徹底が図られ、現在では、限られた時間の中で活動を行う工夫が行われるようになっています。今
後は、けじめある部活動の実現によって生まれた自由時間が、生徒の自宅での学習時間の増加に結びつ
くかどうかが大きな課題です。生活実態調査等を活用して、その動向を注視しながら、生徒の家庭学習
時間の増加を図るための指導を継続的に行うことが必要です。
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 進学指導重点校としての改革への取組
■取組内容と成果 校長のリーダーシップの下、主幹教諭を中心に構成されたアドバンス委員会が中心と
なって、進学指導重点校としての改革への取組を推進してきました。65分授業導入を契機として、全
校一丸となった授業改善の取組が始まり、それと同時に難関大学進学に対する数値目標の達成に向けた
組織的な進路指導や広報・宣伝活動の積極化を進めてきました。こうした改革の成果として、現在、多
摩地域ではトップを争う進学校としての地位を確立しつつあります。
■課題と改善の方策 進学指導重点校では教員公募を実施していますが、立川高校では英語、数学、国語
の主要教科で、教員公募への応募者が非常に少ないという課題があります。この理由としては、65分
授業や自校問題作成に伴う業務が負担であると誤解されている部分があると思われます。教員公募説明
会等の機会を活用して、立川高校での指導経験が、授業力向上や教員としてのスキルアップに大いに役
立つことを積極的にアピールしていくことが重要です。また、進学指導重点校として、コンスタントに
前年度の数値を上回る進学実績を出してきましたが、今後は、現状維持にとどまらず次の新たな目標に
向けた取組が求められます。アドバンス委員会が主導してきた学校改革をさらに前進させるため、主任
教諭をミドルリーダーとして活用し、指導力のある若手教員の育成やベテラン層のモチベーション向上
を図るなどして、都立トップ校を目指すための組織体制を構築することが重要になってきます。
診断ポイント⑥ 募集・広報活動 学校説明会をはじめとした広報活動への取組
■取組内容と成果 中学校への訪問は、
教育情報部所属の教員だけでなく、
全教員で分担して行うことで、
合計183校への訪問を実施することができました。また、学校ホームページは迅速な内容更新に努め
た結果、総アクセス件数も15万件を突破し、前年比で1.25倍に増加しました。このように積極的
- 106 -
№22 立川高校
なPR活動を進めた結果、学校説明会には約900名、自校作成問題解説会には約800名、夏休み学
校見学会には約1000名の中学生が参加しました。学習塾等への広報活動を含め、一連のPR活動の
成果が、推薦で4.8倍、一般で1.9倍という入学者選抜での高倍率につながったと考えられます。
■課題と改善の方策 これまで、教育情報部が広報・宣伝活動を中心的に担い、中学校訪問件数やホーム
ページアクセス数を数値目標にして、その実現を図ってきました。今後の課題は、従来の広報・宣伝活
動による生徒募集の効果を詳細に分析した上で、広報・宣伝活動の目標を「数」から「質」の充実へと
転換させ、より一層効果的な募集対策につなげていくことです。教育の質の充実とともに、広報の質の
充実を図ることが、立川高校の魅力を浸透させる上できわめて重要な方策になると考えられます。
診断ポイント⑦ 施設・設備の改善 生徒の学習相談機能を強化するための施設・設備の充実
■取組内容と成果 生徒の学校内における自習スペースの確保、3
年生の空き時間の有効活用という課題を解決するため、懸案とな
っていた自習室を設置することができました。定時制課程の協力
で、19時まで校内における自習が可能になり、3年生を中心に
毎日30名前後の利用がなされています。さらに、職員室の配置
換えを行い、職員室内に相談コーナーを設置しました。従来は、
生徒が職員室へ質問や相談に訪れる機会は多くありませんでした
が、オープンスペースを設けることで、各教員が生徒の個別の学
こた
(図4) 新設された自習室
習相談にも応えられる体制づくりができました。
■課題と改善の方策 新設された自習室は、まだ稼働率が十分とは言えません。授業日はもとより、土日
こた
や長期休業中の利用に関しても、可能な限り生徒の要望に応えられる体制をつくることが重要です。相
談コーナーの設置によって学習相談機能の強化が図られましたが、今後は卒業生やOB、OGの活用等
を通じて、様々な角度から生徒の学習相談に応えるソフト面の充実も図られるべきでしょう。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■20年度の目標とその成果(概要)
重点目標(抜粋)
達成状況(20年度末)
教員相互による授業観察研修を
①65分授業の定着と授業 65分授業充実のための校内研修会
6月・11月に各2週間実施
内容の充実を図る
を年2回以上実施
模試分析による教科研修を3回実施
難関国公立大現役合格20名以上
難関国公立大現役合格12名
国公立大現役合格80名以上
国公立大現役合格71名
②国公立大学及び難関私立
早慶上智現役合格70名以上
早慶上智現役合格85名
大学への志望意識を強め
進学指導充実のための校内研修会を
校内研修は月2回のペースで実施(毎
る
年間12回実施
回の参加者数は10~15名)
進路だより年間30号以上発行
進路だよりを年間で34号発行
「学業と部活動との両立ができてい
③学習活動と部活動のバラ 生活実態調査において「学業と部活動
る」と回答する第1学年の生徒の割合
ンスを図る指導を徹底す との両立ができている」と回答する第
は51.2%だったが、両立に否定的
る
1学年の生徒の割合60%以上
な生徒は大幅に減少
全教員による中学校訪問の実施・外部
④本校の教育活動を積極的
学校説明会等参加中学生 2700名
の学校説明会への参加
自校問題解説会参加中学生 800名
にPRする
塾・中学生向け自校問題解説会の充実
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
進学指導重点校指定後、様々な学校改革を行ってきたが、改革の成果について高い評価をしていた
だき、次の改革のステージに向けて教職員の士気を高揚させることができた。指摘されたように、今
後は、進学校としての原点に回帰し、教科の本質を教える授業、生徒の知的好奇心を高める授業の実
現を目指すとともに、生徒の自己指導能力を鍛え、結果としてより高次な進学実績をあげることを目
標としたい。また、生徒がバランスよく成長できるような安定した環境をつくりあげ、社会のリーダ
ーを育てていきたい。
(立川高等学校長 内田 志づ子)
- 107 -
№23 多摩高校
学
校
経
営
診
断
書
―
多
摩
高
校
―
「キャリア教育で未来を拓く」
所 在 地 青梅市裏宿町580
創
立 大正12年4月10日
診断対象 全日制課程(普通科)
生 徒 数
20年度
516名(男247名〔47.9%〕、女269名〔52.1%〕)
503名(男248名〔49.3%〕、女255名〔50.7%〕)
20・21年度 高等学校におけるキャリア教育の在り方に関する調査研究推
の主な指定等 進校(19年度から3年間指定)
21年度
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 大正12年の創立以来90年近い歴史と1万数千人の卒業生を輩出している伝統校
です。現在は、
「キャリア教育で未来を拓く」をモットーに教育活動を展開し、入学した全ての生徒が
それぞれの夢を叶えることができる学校として、進路決定率100%を目指しています。
■特徴的な取組と成果 校長は、生徒・保護者・地域からの期待や要望、これからの教育の重要課題を充
分に把握して、キャリア教育を教育活動の中心にすえ、様々な取組に着手しています。在校生に対して
は、卒業生が進路説明会等の講師となり、進路決定に向けたメッセージを発信させています。また、卒
業生を対象とした支援として、卒業生ホームルームを年2回実施し、卒業生の離職防止のための取組を
行っています。これらの、キャリア教育の発展・充実に向けた取組が評価され、平成20年11月に文
部科学大臣賞を受賞しました。
このように在校中及び卒業後も実施される手厚い指導は、他校でも参考にできる取組です。
■課題と改善の方策 主幹教諭、主任は校長が示した学校経営計画に基づき、各々の分掌等で中心的な役
割を担っており、学習・進路・生活指導等を相互に連携させた組織的なキャリア教育の実践に取り組み
始めました。全校体制で組織的にキャリア教育を推進・充実させるために、今行われている経営戦略会
議、企画調整会議、主幹会議の役割を全教職員で改めて確認するとともに、ミドルリーダーの育成と組
織力の向上が一層期待されます。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導 基礎学力の向上に向けた取組
■取組内容と成果 基礎学力向上に向け、国語・数学・英語については習熟度別授業、少人数授業を実施
し、生徒個々の状況に応じた丁寧な指導を行っています。また、一部教科では基礎的・基本的事項の確
認のために、中学校段階の内容に遡り、生徒の習熟度を把握するとともに、授業の最初や最後に小テス
トを実施し、その日に学んだ内容を振り返り、定着を図る工夫も行っています。
地理歴史科では、課題レポートの作成や生徒による発表を通して、コミュニケーションに重点をおい
た指導を実践し、生徒の学習への意欲や興味・関心を喚起させる工夫を行っています。
また、数学科では、授業力の向上に向け、OJTを実践し、生徒の学習状況や授業の内容や進め方に
ついて意見交換や研修が行われ、授業改善に結び付きつつあります。
■課題と改善の方策 生徒による授業評価結果が個人単位ではなく教科・科目単位で検証されています。
個々の教員が授業評価を通して、自身の授業を振り返り、授業内容・方法の工夫にフィードバックさせ
ることが大切です。そのためには、多摩高校が育てたい生徒像を全教職員で再確認し、授業評価の質問
項目を精査・設定したうえで、組織的に授業評価を実施する必要があります。この評価結果を分析して
改善策を見出すことを目的とした全教職員による校内研修を実施するとともに、生徒、保護者、教職員
の三者による授業評価委員会を開催するなど、多摩高校の生徒の実態に応じた授業の在り方を導き出す
- 108 -
№23 多摩高校
取組が求められます。
若手教員による研究授業は実施されていますが、他教員の参加は少なく、全校的な授業改善の取組に
は、まだ至っていません。生徒の基礎学力を一層向上させる上で、生徒の学習への意欲や興味・関心を
より喚起することが大切です。そのためには日々の授業改善の取組が重要となります。例えば「発問の
仕方」
、
「ノート作りの指導方法」など、教職員が共通に語り合える研修テーマを設定した校内研修を実
施したり、定期考査の実施形態を工夫し、共通問題テストを全科目で行い、生徒の学力向上を組織的に
検証・分析したりするなど、授業改善の意識を全校的に高めることが求められています。
診断ポイント② 進路指導 系統的な進路指導の取組
■取組内容と成果 1学年では、年度当初に生徒の進路
(図1)大学等(四年制大学+短期大学)合格者の推移
希望調査と調査の事前・事後に担任が進路に係る講義
(人)
25
を行っています。また、夏期休業期間中の全生徒によ
23
19
る「仕事しらべ」を実施し、学校生活への適応を図り
20
14
ながら、進路について考える大切さを理解させる工夫
15
をしています。2学年では、先輩進路先訪問や体験活
10
動、キャリアカウンセラー等と連携したキャリアガイ
5
ダンスを実施し、職業観・勤労観を育成する工夫をし
0
ています。3学年では、卒業後を見据え、進学基礎力
18年度
19年度
20年度 (卒業年度)
補充講習、ハローワークと連携した企業情報提供、就
職内定者に対する離職防止講演会など、進路希望別の
(図2)就職内定者数の推移
(人)
指導を工夫しています。また、進路決定に消極的な生
70
9
徒には個別カウンセリングを実施しています。
60
5
12
50
系統的な進路指導により、将来を見据え目標をもっ
0
19
40
て学校生活に臨む生徒が増加した結果、大学等合格者
13
2月
12月
30
数(図1)や就職内定者数(図2)が増加するなど、
10月
45
20
37
卒業後の進路実績向上に結び付きました。
32
10
■課題と改善の方策 成果が出始めた系統的な進路指導
0
を更に充実させることが重要です。そのためには、現
18年度
19年度
20年度 (卒業年度)
在の指導や取組の有効性を常に検証し、見直そうとす
る姿勢が大切です。例えば、生徒の進路希望や進路意識についての3年間の記録の取り方を見直して、
生徒一人一人の変容をより的確に把握できるように作成した個人別カルテをより効果的なものとする
工夫もひとつです。複数の生徒を抽出し、個人別カルテに基づいて、行動観察や意識の変容を分析し、
学年毎の段階的な指導や進路実現に向けた様々な取組を検証するシステムを構築することも考えられ
ます。現在実施されている指導や取組の質的側面を一層発展・向上させることが期待されます。
診断ポイント③ 生活指導 基本的な生活習慣の確立に向けた取組
■取組内容と成果 キャリア教育の視点から、基本的な生活習慣を確立させる重要性や規律ある学校生活
を送る意味について、継続的に指導しています。前回の16年度学校経営診断では、
「落ち着いた学習
環境」の実現に向け、全教職員が授業の空き時間を利用し校内巡回を行いながら、気になる生徒を指導
する取組が評価されています。この取組は現在も継続されています。さらに、学年集会を定例化し、生
活指導部と学年が連携して、生徒に生活習慣の確立に向けたメッセージを発信し続けています。校内規
程も見直し、学年、生活指導部、スクールカウンセラー及び生徒相談担当職員等が連携を強め、生徒情
報の共有化を図りながら、面倒見のよい指導体制を整備した結果、問題行動の件数は18年度120件、
19年度88件、20年度78件と減少しました。
■課題と改善の方策 問題行動の件数は減少し、生徒の身だしなみ、化粧、頭髪、遅刻等の状況も改善は
図られていますが、課題は依然としてあります。今後、一層の改善を推し進めるために、面倒見の良い
指導体制を継続・充実させる必要があります。キャリア教育を指導の中心に据えている学校として、身
だしなみ等の課題や、あいさつ、言葉遣いなど、社会人としての基本的なマナーを全生徒に身に付けさ
せることを目標にした取組が求められます。改善の方策としては、全教職員がこの目標を常に意識し、
- 109 -
№23 多摩高校
学校生活のあらゆる場面を効果的に使って、生徒の指導を実践したり、より良好な学習環境づくりを目
指し、教職員一人一人が授業規律の確立に向けて工夫したりすることが重要です。担任と各授業担当者
等が更に連携を強め、生徒の様子や学校・教室内の状況を的確に把握するとともに、始業チャイムと同
時に授業を開始することや授業に関係ないものは机上に置かない指導を徹底するなど、全校的な指導体
制を確立することも挙げられます。
診断ポイント④ 特別活動・部活動 部活動の継続率向上の取組
■取組内容と成果 サイクルスポーツ部のインターハイ出場を筆頭に、バスケットボール部や硬式野球部
が熱心に活動しています。部活動の加入率は、全学年平均で18年度54.2%、19年度60.2%、
20年度65.8%と増加しています。このことは、各顧問が部活動の活性化を図るために地道に指導
を続けた成果と言えます。また、文化祭での成果発表や学校広報誌「多摩高ダイジェスト」での部活動
紹介は、生徒によい刺激となっています。
■課題と改善の方策 経済的な理由でアルバイトをしなければならず、部活動に所属できない生徒がいる
一方で、部活動に喜びを見出せないで退部する生徒がいます。18年度、19年度、20年度の1学年
の部活動加入率の平均は70%を超えていますが、高学年になるにしたがって加入率の低下傾向が見ら
れます。1学年時の加入率をそのまま維持できるように、生徒を部活動に引き付ける一層の工夫が期待
されます。例えば、生徒の目につきやすい場所に、部活動の公式戦、練習試合、発表会等の戦績・成績
や生徒の活動の様子を撮影した写真を発表・掲示したり、部活動に積極的に取り組む生徒に対し、学校
独自の表彰制度を設けたりしながら、生徒の取組を称賛し、部活動への意欲を高める工夫が必要です。
また、教員が部活動の意義を一層理解し、外部指導員の活用も視野に入れながら、部活動の活性化を図
ることも大切です。
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 主幹会議、企画調整会議の充実による組織体制づくり
■取組内容と成果 前回の16年度学校経営診断では、各主幹、主任が分掌業務の指導と進行管理を行っ
ているとは言えず、学校組織のライン化が遅れているという指摘がありました。20年度は、週1回以
上のペースで主幹会議を開催し、学校経営に関わる戦略の検討と学校経営計画遂行状況の点検と改善に
ついて議論を行いました。卒業時の進路決定率向上と中途退学者数減少を重点課題とし、議論を続け成
果を上げつつあります。さらに、主幹教諭が相互に各分掌等の動きを把握し、問題点を管理職や経営企
画室長と協議して対応する体制が整いつつあります。企画調整会議では、校長が学校経営に関する情報
提供、提言を行うとともに、円滑な学校運営ができるように各分掌間の調整を行い、その役割を改めて
明確にしたことにより、学校経営の充実に向けて機能する会議へと転換されつつあります。
■課題と改善の方策 重要課題である卒業時の進路決定率向上と中途退学者数減少は成果を上げつつあり
ますが、主幹会議はキャリア教育の推進役として、より一層の取組が求められます。
また、企画調整会議では、一部で意見の集約や決定事項の伝達が不十分であったため混乱も生じてお
り、一層の共通理解の徹底が課題となっています。目指す学校像と育てたい生徒像が全ての教職員の真
の目標となり、生徒の変容が喜びとなるように、ミドルリーダーが全ての教職員とどのように意思疎通
を図っていくかが重要です。PDCAサイクルを意識した取組経過の検証方法やその内容を更に工夫し、
教職員のモチベーションを向上させることが期待されます。
診断ポイント⑥ キャリア教育の取組 組織的なキャリア教育の取組
■取組内容と成果 キャリア教育推進委員会が企
画・立案・進行管理し、進路指導部を中心に、各
学年及び外部の組織等と協力して実務を行って
います。卒業後の早期退学(上級学校)や早期退
職を防止するための卒業生ホームルームは、特徴
的な取組です。さらに、キャリア教育推進委員会
外部推進委員の導入、保護者・地域向けキャリア
教育講演会及び外部講師による講演・相談「進路
のお姉さん」の実施、同窓会人材データベースの
- 110 -
(人)
(図3)中途退学者数の推移(年度末)
60
55
50
44
40
30
34
37
29
20
10
16
13
2
2
18年度
19年度
0
25
8
1
20年度
合計
1学年
2学年
3学年
№23 多摩高校
活用など、保護者・地域等と連携した取組を行っています。このような指導を通して、生徒の意識・行
動には変容が現れ、結果として、中途退学者数は18年度55名、19年度44名、20年度34名と
減少しています(図3)
。将来を見据え目標をもって学校生活に臨む生徒が増加していると言えます。
前回の16年度学校経営診断においても、中途退学者数減少の取組が報告され、カウンセリング体制の
整備や学習指導の工夫について一定の評価を受けていますが、キャリア教育の取組は更に大きな成果を
上げつつあります。
■課題と改善の方策 校内の取組とともに、PTA、同窓会、外部の教育に関わる諸団体、地域産業界、
NPO等と連携した取組を行っています。生徒に多角的・多面的な刺激を与えるうえで、地域教育力の
活用は非常に効果的です。そのことを全教職員が理解した上で、各取組の事前・事中・事後に講師であ
る地域等の方々と教職員個々がどのように協力し合い、生徒の指導を行うか考えることは重要です。キ
ャリア教育推進委員会や校内研修等で検証・研究し、より一層効果的な指導に発展させていくことが期
待されます。
診断ポイント⑦ 環境教育の取組 地域と連携した環境美化の取組
■取組内容と成果 十数年前から、学期に1回学年毎に、地域の清掃活動を行っています。20年度はこ
の活動とともに、生徒の美化委員会が中心になって清掃キャンペーンを校内で展開し、月に 1 回2クラ
スで、学校から最寄り駅までの通学路を重点的に清掃する取組が始まりました。保護者からも賛同・協
力が得られているこの取組は、生徒の美化意識を啓発するとともに、地域との良好な関係作りに結び付
いています。
■課題と改善の方策 定着している地域と連携した環境美化活動をより発展させ、生徒の自主的な校内美
化・学習環境の改善につながることが期待されます。授業規律を確立させるための全教職員による指導
やクラス担任の教室掲示などを工夫し、校内美化を生徒に意識させるとともに、部活動や生徒委員会活
動にも働きかけを行い、美化活動を全校で推進していくことが期待されます。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■20年度の目標とその成果(概要)
重点目標(抜粋)
①授業改善の取組
②進路決定率の向上
③部活動加入率の向上
④中途退学者の減少
達成状況(20年度末)
教科ごとの研修は、10回以上行われ
学期に一回、教科ごとの研究授業
た。該当教科以外の教員の出席が少な
や教材研修を実施する。
く、今後組織的な取組が期待される。
卒業時の進路未決定者は、
20年度18名であった。
卒業時の進路未決定者を、
(平成20年の世界的な不況の影響大)
19年度18名から20年度10
なお、大学等進学者が23名、就職内定
名に減少させる。
者66名と、前年度からそれぞれ向上し
た。
過半数の生徒を部活動に参加させ 部活動の加入率は、
3学年平均で65.8%となった。
る。
中途退学者数を、19年度44名
から、20年度35名以下に減少 20年度34名に減少した。
させる。
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
学習指導について、生徒による授業評価を活用して学習意欲・興味関心を喚起する授業改善に取り
組むようにとの指摘を受けて、授業評価の結果を校内研修で検討することにより是非改善していきた
い。進路指導・キャリア教育について、本校の達成した成果や卒業生へのケアについて評価していた
だけたのは、懸命に努力してきた生徒・職員、支援していただいた地域の方のお陰であり、今後とも
推進していく。学校経営・組織体制では、先の診断時に比べ企画調整会議を主とした組織的な経営に
ついては一定の評価をいただいたが、ミドルリーダーを活用した運営についてはまだ課題が残る。今
後、マネジメントサイクルを用いて改善を図りたい。
(多摩高等学校長 大野 弘)
- 111 -
№24 上水高校
学
校
経
営
診
断
書
―
上
水
高
校
―
「基本はあいさつ!意欲を育て、夢を実現!世界にはばたく上水生」
所 在 地 武蔵村山市大南4-62-1
創
立 平成16年4月1日
診断対象 全日制課程(単位制普通科)
生 徒 数
20年度
714名(男248名〔34.7%〕、女466名〔65.3%〕)
21年度
722名(男261名〔36.1%〕、女461名〔63.9%〕)
20・21年度
部活動推進指定校(20・21年度)
の主な指定等
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状
平成16年度に開校した「高校生活の充実」と「進路希望の実現」を目指す「進学・特活型」の全日
制普通科単位制の学校です。創造・自律・信頼を教育目標にうたい、生徒の主体的な活動を支援すると
ともに、単位制高校の特徴を生かしながら「本当の学力」を、基礎学力、目標設定能力、継続学習能力、
人間関係能力、思考力と位置付けてその習得に取り組んでいます。
■特徴的な取組と成果
学習指導、進路指導、生活指導、部活動指導等について、主幹教諭や分掌の主任が高いモチベーショ
ンを発揮し、目標達成に向けて意欲的な取り組みがなされています。進路指導では、主に四年制大学や
短期大学への進路実現を目標に掲げ、進路指導部を中心に、1 年次からキャリア・ガイダンスブックを
活用した系統的な進路指導を実践し、上級学校への第一志望学部等の合格率90%を達成しました。ま
た、国際理解教育の推進と人間性豊かな人格の形成を目指し、国際理解にかかわる豊富な選択科目を設
定するとともに、アメリカンサマーキャンプ、小笠原アドベンチャースクール等の体験活動行事が活発
に行われています。さらに、学校設定教科「表現」を設置し、日本の伝統・文化の体験や実践を通して、
表現力や創作力の育成を図っています。
■課題と改善の方策
開校以来5年が経過し、更なる教育活動の充実に向けて、これまでの成果と課題を改めて検証する時
期に来ています。その上で、今後、どのような生徒を育てていくのかを教職員の意見交換を通して明確
にすることが求められています。そのために、主幹教諭や分掌の主任が主幹会議及び企画調整会議をリ
ードする学校運営を定着させるとともに、主幹・主任層が教職員のボトムアップに努め、教職員全体の
意欲をより一層向上させ、組織としての活力を高めていくことが大切です。
Ⅱ 経営診断結果
診断ポイント① 学習指導
基礎学力の定着と授業改善に向けた工夫
■取組内容と成果 基礎学力の定着を図るために、国語、数学、英語において、1年次に標準より授業時
間数を増やすとともに、各学年で少人数授業、習熟度別授業を展開しています。学校評価アンケートで
は、少人数授業は68%の生徒が、習熟度別授業は72%の生徒が、効果があると回答しました。
英語学力向上委員会を中心に、資格取得に向けた指導の充実を図り、年間を通じて英検受験に対応し
た講座を開講しています。その結果、英検合格者が増え、実用英語検定準2級以上合格者は、18年度
11名、19年度22名、20年度35名と着実に増加しました。英検受験生徒の要望にこたえ、その
学習の場として、イングリッシュルームを新設しています。
また、大学受験に対応できる学力を身に付けさせるために、8月に3泊4日の勉強合宿を行っていま
す。20年度より、従来の国語、数学、英語の3教科に理科・社会の講座を加え、学習意欲を高めるた
- 112 -
№24 上水高校
めの勉強合宿を充実させています。
一方、授業力向上に向けた取り組みとして、授業公開の機会を増やすとともに、生徒による授業評価
を活用した授業研究を行い、教員の意識を高めています。
■課題と改善の方策 生徒の自宅での自主学習時間は、
1年次で平日60分以上の目標に対し平均31分、
2年次で平日90分以上の目標に対し平均28分でした。また、学校評価アンケートでは、
「部活動と
勉強の両立ができている」と考えている生徒は、1年次で43%、2年次で40%、3年次で47%で
した。今後は、基礎学力の向上に向けて、学習と部活動を両立させ、自学自習を定着させるための工夫
と改善を図る必要があります。教務部から、予習復習課題の試行実施が提案されていますが、課題出題
と合わせて、生徒が取り組んだ予習や復習を的確に評価することが大切です。学習到達度をチェックす
るアンケートを活用するなど、予習復習課題の適正な評価に全教員で取り組むことが求められます。
授業力向上に向けては、全教員で空き時間を活用した相互授業参観を実施し、授業改善に生かすこと
が大切です。教務部を中心に検討されている教員自らが日々の授業を振り返るための「授業評価ミニア
ンケート(ミニッツペーパー)
」の早期導入も待たれます。
診断ポイント② 進路指導
進路実現に向けたキャリア・ガイダンスの充実
■取組内容と成果 3年次の7月までに生徒自らが具体的な目標校を設定することを目指し、
「総合的な学
習の時間(ブリッジ)
」を中心にすえ、キャリア・ガイダンスブックを作成し、継続的かつ段階的指導
を実践しています。1年次は自己理解、2年次は自己啓発、そして3年次の自己実現を目標に掲げ生徒
の意識を高めるために、1日大学体験入学
(図1)進路決定状況
(1年次全員)
、進路探索研修旅行(2年
(人)
(%)
100
200
次全員)、さらに、社会人講演会、志望校
180
決定進路相談会等を実施しました。また、
95.3
90.6
86.8
80
160
過去3年間の進路指導を追跡調査しまと
四年制大学進学
140
決定者数
めた進路動向拡大版を作成し、個に応じた
66.5
68.3
67.8
短期大学決定数
60
120
進路指導に活用するとともに、在校生には、
四年制大学・短大
100
進学決定率
個人カード(プランシート)を通して自ら
136
133
142
40
80
現役決定率
の取組を振り返らせました。学校評価アン
60
ケートでは、「学校は進路に関して必要な
20
40
情報や資料を提供している」と回答した生
20
25
19
13
徒は、1年次で83%、2年次で80%、
0
0
18年度
19年度
20年度 (卒業年度)
3年次で82%となっています。これらの
取組の結果、20年度卒業の3期生の第一志望学部等の合格率は、目標の55%を大きく上回る90%
を達成しました。現役決定率は2年連続で90%以上の高い成果が得られ、四年制大学の決定者は、1
9年度133名から142名に増加しました(図1)
。
■課題と改善の方策 進学指導の成果は着実に現れていますが、MARCHレベル以上の大学合格者は、
19年度14名から12名にやや減少しました。今後は、上位校へチャレンジする生徒を増やしていく
ことが求められます。そのためには、進路部を中心とする指導に、ホームルーム担任、学年担任団、さ
らに部活動顧問が今まで以上に加わり、生徒一人一人の興味・関心や能力・適正の把握に更に努める必
要があります。生徒が、自らの適性と希望に合った進学の可能性に挑戦するモチベーションを高めるこ
とが大切です。
診断ポイント③ 生活指導
基本的生活習慣の確立に向けた組織的な取組
■取組内容と成果 年度当初より、毎朝8時前から、生徒部を中心に全教員が交代で、最寄り駅から学校
までの登校路指導を行っています。さらに、頭髪や服装指導、身だしなみ指導を年間9回行うとともに、
校内美化の徹底に全教員が一体となって取り組んでいます。学校評価アンケートでは、
「学校は服装・
頭髪をしっかり指導している」と回答した生徒は82%、保護者は90%と高い回答が得られています。
生徒は落ち着いた学校生活を送り、教職員や来校者に対する生徒のあいさつは、校風として定着しつつ
あります。1年次・2年次の1日の合計平均遅刻数は、18年度1月の16.5人から、20年度1月
は3.8名と、大幅に減少しました。
- 113 -
№24 上水高校
■課題と改善の方策 基本的生活習慣の更なる確立に向けて、全教職員協働の指導体制を、維持・継続す
ることが重要です。保護者スクールボランティアの導入など、保護者との連携・協力をより一層推進す
るとともに、厳しく丁寧な生活指導方針の共通理解を図り、今後も、全教職員が当事者意識をもって取
り組んでいくことが重要となります。
診断ポイント④ 特別活動・部活動
生徒の個性を伸ばす部活動や学校行事の活性化
■取組内容と成果 部活動推進指定校として、部活動の活性化に意欲的に取り組み、部活動加入率は全校
生徒の84%となっています。毎週月曜日に部長会を開催するとともに、多くの部活動で保護者会が活
発に行われています。文化・スポーツ等特別推薦は、従来の5部に放送部が加わり、入学選抜の応募倍
率は19年度1.6倍から20年度2.2倍に増加しました。放送部は2年連続で全国大会に、文芸部
は4年連続、陸上競技部及び剣道部は2年連続で関東大会に出場するなど、着実に成果が表れています。
豊かな感性を育むために、文化祭、体育祭、合唱祭やアメリカンサマーキャンプ(1年次全員)
、小
笠原アドベンチャースクール(希望者)などの学校行事がさかんに行われています。文化祭、体育祭、
合唱祭の行事に対する生徒の満足度は、73%となっています。特に、文化祭は生徒が自主的に企画・
運営し、2400名を超える多くの参観者を集めており、生徒の満足度は81%を超えています。
■課題と改善の方策 学校行事が切れ目なく設定されているため、学習に集中して取り組む時間を確保す
ることが課題となっています。特色ある体験行事を継続しつつ、学習と部活動や学校行事との両立に向
けて効率的な準備期間を設定するなど、学校行事の活性化をより一層図ることが望まれます。
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制
企画調整会議を柱とする学校運営の充実
■取組内容と成果 19年度から主幹会議を週時程に位置付け毎週開催した結果、主幹教諭間の連携体制
が更に強固になり、主幹層の情報の共有化が高いレベルで実現しています。夏季休業中に、主幹会議を
3日間連続で集中的に開催し、上半期の教育活動について評価を行うとともに、下半期に向けた改善策
を討議しました。
また、研究部のリードにより、分掌、委員会等の成果と課題をまとめ、分掌の引継ぎや共通理解のた
めの資料として活用できる研究紀要を2月に発行しています。
■課題と改善の方策 「進学・特活型」の単位制高校として、充実した教育活動を推進し、課題を解決す
る方策を検討するなど、校長のリーダーシップの下で、副校長が調整役としての役割をより一層発揮し、
主幹会議及び企画調整会議を核とする学校運営を定着させることが重要です。
診断ポイント⑥ 募集・広報活動
組織的な生徒募集・広報活動の充実
■取組内容と成果 学校案内・ホームページ等の内容を充実させるとともに、年度当初に、学校の進学情
報をコンパクトにしたオープンハイスクールガイドを作成し、近隣中学校に配布しました。担当地区を
決めて、1人4校程度、教員全員で中学校を訪
(図2) 入試倍率と学校来校者の推移
問しています。
年2回実施した学校説明会には、
(人)
3.00 (倍)
延べ92名の生徒が参加し、生徒の日常の活動 2500
2334
2.66
2151
成果を披露しました。入学者選抜における推薦
2.50
2000
2.11
2.10
入試の応募倍率は、20年度は2.27倍で、
2.27
1700
2.00
学校説明会
1700
全都の普通科単位制高校の平均倍率を維持して 1500
参加者数
学校来校者
いますが、前年度と比べやや減少しました。学
数
1.50
1.48
一般入試の
1.25
1.47
1.43
力検査に基づく応募倍率は毎年上昇し(図2)
、 1000
倍率
推薦入試の
1.00
942
倍率
全都の普通高校の平均倍率を維持しています。
803
770
751
500
■課題と改善の方策 上水高校を訪問した中学
0.50
生・保護者は17年度の1700名から233
0
0.00
4名(文化祭を除く)に増加しましたが、学校
17年度
18年度
19年度
20年度
説明会の来校者は19年度の942名から75
1名に減少しました(図2)
。安定している生徒募集倍率を維持・向上するために、中学生や保護者に
対し、上水高校の特色のPRに更に組織的に取り組むことが大切です。市民祭や地域清掃活動への参加、
地域の小・中学生との交流等を通した地域に根ざした学校づくりの推進も効果的です。
- 114 -
№24 上水高校
診断ポイント⑦ 国際理解教育の推進
全校体制による国際理解教育の充実
■取組内容と成果 国際理解教育に力を注ぎ、英語は3年間で19単位(必履修科目)を習熟度別授業及
び少人数授業で実施するとともに、
「現代英語」
「多読入門」
「中国語」
「韓国語」
「ドイツ語」
「フランス
語」など国際理解にかかわる豊富な選択科目を設定しています。さらに、英語学力向上委員会が中心と
なり、スピーチコンテスト、アメリカ人との交流を図るアメリカンサマーキャンプ(1年次)を通して、
英語コミュニケーション能力の育成を図っています。学校評価アンケートでは、
「上水高校の国際理解
教育に関心があるか」の質問に対し、生徒の68%、保護者の85%から肯定的な回答が得られました。
■課題と改善の方策 国際理解教育推進のための交流事業は、企画・運営の基礎部分を構築しました。今
後は、生徒や保護者の要望や期待にこたえるために、英語学力向上委員会を中心に国際理解教育を更に
発展させることが望まれます。
Ⅲ 自律的改革の内容(概要)
■20年度の目標とその成果(概要)
① 基礎学力の定着
② 進路指導の充実
③ 生活指導の充実
④ 部活動・学校行事の活性化
⑤ 学校運営の充実
⑥ 生徒募集・広報活動の充実
⑦ 国際理解教育の充実
重点目標(抜粋)
自宅での自主学習時間 1年次平
日60分以上、2年次90分以上
授業公開参加者数220名以上、年
2回実施
3期生第一志望分野合格率55%
MARCHレベル以上の大学合格
者延べ数15名以上
センター試験受験者120名以上
年間9回の身だしなみ指導
1日平均遅刻者の減少 4月2名
以下、1月4名以下
部活動加入率10月段階9割以上
上水祭の入場者数2300名以上
夏季休業中に中長期的な課題につ
いて主幹会議を3日間開催
分掌・委員会等の成果と課題をまと
めた研究紀要を作成
本校を訪問する中学生・保護者の総
数2200名以上
学校説明会などで活躍する在校生
の数延べ80名以上
アメリカンサマーキャンプの満足
度85%以上
進路探索研修旅行の満足度80%
以上
達成状況(20年度末)
1年次平日31分、2年次平日28
分
参加者数162名
年2回実施
合格率90.1%
合格者12名
受験者126名
年間9回実施
1日平均遅刻者数 4月4.4名、
1月3.8名
部活動加入率84%
入場者数2488名
主幹会議を3日間連続で開催
研究部を中心に論文と各分掌等の成
果と課題をまとめた研究紀要作成
総数2334名(文化祭を除く)
2回の学校説明会で延べ92名
満足度83.4%
満足度72.5%
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
経営診断を受け、本校の目指す「進学・特活型」単位制高校に向けての取組の成果を再確認するこ
とができた。また、新設6年目を迎えた本校の新たな課題と改善すべき点がより明確になった。
今後は、より進化した「上水ブランド」の確立に向けて、学校一丸となって取り組んでいきたい。
そのために、開設当時の意気込みを感じさせる学校経営を可能にする重点支援校に応募して、教員の
士気をより一層高めたい。
(上水高等学校長 高橋 伯也)
- 115 -
外部委員の意見
(高等学校)
外部委員の意見[高等学校]
小松
郁夫
委員
(玉川大学教職大学院 教授)
今年度も学校経営診断事業に関わることができて、都立高等学校の現場でどのような教育実践
や学校経営活動が行われているかを拝見する機会に恵まれた。まずは、訪問した学校の関係者と
生徒諸君に感謝したい。ますます多忙になってきている公立学校で、数多くの資料を拝見しなが
ら、教育改革の進捗状況を確かめ、より質の高い教育の保証を目指して、日夜努力されている様
子などをかいま見ることができて、私自身が得られた示唆は貴重であった。
私はこの事業が開始された当初から参加しているが、年々、都立高校の教育活動や学校経営の
状況が改善されており、本事業が着実に進化を遂げているものと判断している。そうした全般的
な所見を最初に記述した上で、5点ほどの意義と課題を述べることとする。
第一は、なんと言っても、各学校がどのような特色を教育活動に具体化しているか、その成果
はどのようなものかという点を明確にする必要性を感じた。学校経営診断の対象校は、今年度も
重点支援校が中心であった。それゆえ、各学校が重点支援の内容を焦点化して、経営改善されて
いるかが診断の最重要ポイントである。それぞれの診断ポイントにおいて、具体的にどのような
取組がなされ、どの程度の成果と課題が明らかになったのかを、各学校は自覚的に抽出し、その
テーマを学校組織マネジメントのPDCAサイクルに組み込む必要がある。こうした経営的行為
が、徐々に経営管理層に理解され、浸透してきている様子がうかがえたのは収穫であった。
第二は、学校の自己評価活動が設置者である教育委員会の施策とどのように有機的に結びつい
ているかが重要と考える。今日、教育行政の分野でも、特色ある教育行政施策が展開されている。
そのような状況で、教育の現場として、各学校がどのように東京都全体の教育改革と連動してい
るかが重要なポイントとなる。学校教育法においても、設置者への評価の報告が義務的なものと
して規定された。設置者との連携や協働活動を通じて、都民から信頼され、生徒からは魅力ある
学校として評価されることが重要と考える。質の高い教育の保証を高校間の横の連携を強化して、
学校改善を図ることが期待される。そのためには、成果の普遍的な検証、課題の共通認識の上に、
組織間での学び合いのためのネットワーク構築なども工夫されて良いであろう。
第三は、依然として学校内や学校全体としての組織力の向上が課題として残っていることを感
じた。特に、若年層が組織的観点を獲得すると同時にベテラン層の一層の奮起を期待したい。若
手教員の模範として、学校全体をダイナミックに牽引していくベテランの教員の組織力向上が課
題である。
第四は、経営企画室の力量向上と組織改善の課題である。学校事務職の多忙化も深刻な問題だ
といわれている。企画力を向上させ、教授職員との連携を一層強化し、管理職との緊密なコミュ
ニケーションを図ることが重要と考える。
第五は、各教員の授業力の向上である。短い時間であるが、学校経営診断で学校訪問をする意
味は授業の改善状況を知ることである。当初と比較すると、かなりの授業改善が感じられたが、
授業力向上のための校内研究の充実などを期待したい。センターの日常の支援がますます重要と
なろう。
最後に、健康診断と同様、学校経営診断で活動が終わるのではないことを確認しておきたい。
結果を冷静に受け止め、成果を日々の実践に活かし、課題は戦略的に取り組むことが求められる。
- 119 -
外部委員の意見[高等学校]
桑田
耕太郎
委員
(首都大学東京都市教養学部 教授)
都立高校の重点支援政策や経営評価は、個々の高校レベルで行うとともに、都立高校全体のシ
ステムとしての成果へという段階にきていると感じました。
平成15年から毎年平均10校程度の重点支援をしてきたということは、既に70校以上にの
ぼるわけで、約200校の都立高校の30%近い数になっています。その意味では、今後重点支
援政策をどのように展開していくのかを検討する上で、これまでの重点支援策によって個々の高
校レベルで、さらに「都立高校全体の自律的改革」がどの程度、達成されてきたのかを評価すべ
き時期に来ているのではないでしょうか。こうした評価なしに今後も重点支援校の指定の枠を広
げていくことは、ただばらまき的な効果しかもたらさないだろうし、都立高校全体の底上げに対
する効果も薄れてきてしまうでしょう。場合によっては、既に一度重点支援した高校をあらため
て評価し、追加的に支援を行うような方策の方が、都立高校全体の自律的改革を促すには効果的
かもしれません。
今回、普通科、商業科、工業科と異なるタイプの都立高校を訪問しました。職業科が施設面な
どで普通科よりもコストがかかることは理解できるのですが、実習関連施設を除いて考えても、
教員一人当たりの学生比率や、教育施設(教室、グランド、その他)面で、普通科に比べてはる
かに恵まれていることは明らかでした。少人数で教育を受けることができるという恵まれた環境
にも関わらず、しかし一方で、生徒の不本意入学比率は高く、生徒のモチベーションも必ずしも
高いとは言えなかったのは残念でした。投入されたコストに見合った成果を上げているか、とい
う疑問が残った。資源配分の比率を見直して、普通科高校で職業科並の少人数教育が実現できれ
ば、その効果は非常に大きくなると思います。これは個々の高校の経営問題というよりは、都立
高校全体の資源配分政策を見直す必要があることを示しているのです。
今後の東京都立高校政策は、東京都の高等教育から、我が国の国際競争力を高めていくとい
う戦略的な視点が必要になると思います。多くの都立高校の重点目標が、ちょっとした大学進学
率の向上とか、遅刻者や染髪している学生を減らすといったレベルの目先の目標に始終している
現状を見ると、残念ながら国際的な競争力への貢献などという視点は全く伺うことはできません。
しかし、すでに都ではアジア人材の教育を重要な政策に上げ、国レベルでは留学生を30万人受
け入れる政策を進めている現状をみればわかるように、今後国際競争力を視野に入れない教育シ
ステムはほとんど意味をなさなくなります。ものづくりや商業の拠点が、日本から東南アジアへ
シフトしつつある現在、工業高校や商業高校はどのような教育をしていくべきなのだろうか。理
工学系はもちろん文科系でもどんどんと大学院修士レベルに進学を希望してくる外国人学生が増
加している現状で、特に何の目的もなくただ大学に進学することのみを考えている日本人学生は、
高校教育レベルで二流国の水準になりつつあるのではないだろうか。都立高校政策は、このよう
な意味で国際的な戦略性の中に位置づけられなければ、その効果は非常に限定的なものになって
しまうのではないでしょうか。現在は、
「都立高校全体の自律的改革」という目標をあらためてそ
の実質に踏み込んで有効化していく時期にきていると思います。
- 120 -
外部委員の意見[高等学校]
鵜川
正樹
委員
(株式会社ナカチ公会計研究所 代表取締役)
私は、今回が3年目であるが、雪谷高校と江戸川高校を視察した。過去2年は、困難校といわ
れる高校の視察だったので、それらに比較すると、両校とも中堅校という位置づけであり、生徒
は、生活態度が落ち着いているし、授業もきちんと聞いている。また、部活中心に活発な高校生
活を送っており、大学進学率も高い。そのような現状満足的な雰囲気の中にあって、両校とも文
武両道と上位校への進学を目標としている。
短時間の視察ではあるが、個人的な印象として、次の3点をあげることができる。
第1点は、校長の目指す目標と教職員が目指す目標には水準の差があることである。企業にお
いても、同じ経営目標を掲げていても、経営者と社員には目標意識の差があることが多い。これ
は、組織的な対応ができているかどうかということになるが、現実的には、校長の強いリーダー
シップとそれを支援する内外の体制が必要である。その意味では、校長主導による学校経営と教
職員の意識改革への取組み、学校経営支援センターによる支援体制はその役割をよく果たしてい
ると思われる。
第2点は、日々の積み重ねの大切さをいたるところで教員と生徒に投げかけていることである。
ある支援センターの方に、高校と中学校との大きな違いは、高校では授業内容が難しくなりスピ
ードも速くなるが、理解することの達成感を得られることであると言われて、個人的な経験から
も全くそう思うものである。日々の勉強の積み重ねが、克己心を養い、自信を生む。そのため、
自宅学習の時間をどのようにして増やすことができるか、いろいろと工夫をしている。文武両道
の精神のもと、部活の意欲を勉強に応用させる、あるいは、部活の時間を勉強時間に振り替える
ことが試みられている。また、授業力の向上のために、授業評価の仕組みを導入して授業改善に
努めているが、浸透度合いに差があるようである。進路指導に関する個人情報の集約化にも努め
ているが、どのように共有化できるか模索しているところである。
第3点は、都立高校の将来の姿について、もっと明確に示すことの必要性である。時間軸を将
来へ引き伸ばして、都立高校の姿を考えてみると、高校への多様なニーズに対して、都立高校全
こた
体として 応 えていくことが目標としてあるだろう。その中で、中堅校であれば、進学重点校を目
指すという道があるかもしれないが、むしろ、中堅校としての内実を深めていく道があるのでは
ないかと思われる。それは、上位進学を目指す中堅校と部活重視を目指す中堅校に分離していく
ことかもしれないが、入学から卒業までの3年間に何かしらの達成感を得られるものであれば、
それからの人生を生きていく力になるではないだろうか。都立高校全体としてどのような高校群
を構成していくのか、その中で、中堅校としてはどのような道を進んでいくか、教育委員会への
課題ではあるが、今後注視していきたい点である。
- 121 -
外部委員の意見[高等学校]
平松
享
委員
(安田教育研究所 副代表)
昨年までと比べて、今回もっとも印象に残った変化は、診断システムのレベルアップです。診
断の流れは、はじめに対象校の所属する学校経営支援センターの診断チームが診断項目を絞り込
み、会議で診断委員に内容の説明を行います。次に、委員がチームに引率されて対象校を訪問、
最後にチームがまとめた診断結果を会議で検討します。チームは一連の流れの舵取りを行うキー
マンですが、これまでは、項目の選択が不適切であったり、対象校と事前に打ち合わせた内容を
訪問でなぞったり、会議での応答が緩慢だったりという場面を見かけました。極端にいえば、経
営診断という仕事に戸惑いを覚えるメンバーもいたと思います。
診断チームのメンバーは、おもに若手の校長経験者や、最近まで現場で管理職を務めていた先
生で、経営診断を受ける側の直近の事情を知っています。そのことがマイナスに働く恐れもあり
ますが、今回のメンバーの姿勢からは、自分が学校経営で苦しんだ経験を対象校の経営改善に生
かしたいという、強い意気込みを感じました。
診断の時期が1ヵ月余り早まり、診断結果を次年度の経営計画作成に反映できるようになった
ことも大きいと思います。チームの側には、診断が今後の学校づくりにつながるという達成感を
もたらしました。会議でも、現実的な意見が増え、議論が高まりました。
レベルアップしたおかげで、各校の動きの悪い部分が明らかになりました。工夫の乏しい授業、
機能しない分掌組織、前例踏襲にこだわる管理職‥。こうした状況から、学校で教えるという仕
事が、常に惰性に陥る危険と隣り合わせであること、社会的変動の影響を受けやすい現場には、
進取の気性に富むタフな人材が必要であること、そして管理職には、経営診断に基づく合理的な
学校運営が求められることが分かりました。今後は診断の精度を高め、都立学校の一層の発展に
協力したいと思います。
- 122 -
外部委員の意見[高等学校]
平沢
茂
委員
(文教大学教育学部 教授)
この事業が始められた数年前、私が訪問した高校数校は、どこも、授業がまったく体をなして
いなかった。かなり驚いたと言うよりは呆気にとられたという表現が当たっていたのではないか。
教師の授業力のなさよりは、授業規律を確保する努力がなされていなかったことに驚いたのであ
る。
その後、徐々に授業規律の確保に努める様子が見られるようになってくると、次に気になった
のは教師の授業力である。
「偉そうな口をきくな」と叱られることを覚悟で言うと、私が学生であ
った頃の大学の授業さながらという光景なのである。この報告書で以前に触れたように、大学は
今、FD(ファカルティ・ディベロップメント)、特に授業改善に取り組むことが当たり前になっ
ており、研究授業という概念が大学でも知られる時代になっているのである。この点で最もおく
れをとっているのは高等学校だと思わざるを得なかった。
これに関しても、少しずつ歩みが始まろうとしている様子は感じられるようになった。しかし、
まだよちよち歩きと言うよりはつかまり立ちが見られるかという程度ではある。この歩みをさら
に加速させることが都立高校の今後に不可欠なことである。
ところで、授業以外で今年気になったことがある。校長、および教職員のビジョンである。都
立高校は多様な形態をつくって、生徒のニーズに応じる工夫を進めてきた。しかし、その工夫の
基にある理念を、当該の高校に在籍する校長以下教職員が理解していないのではないかと思われ
るのである。普通科、職業科の枠を超えて新たに構想された形態の高等学校には、設置の理念が
ある。なぜ、新たな形態の高校が設置されたのか、それを踏まえずに、従来の枠の中で培われた
ノウハウで教育を進めたのでは、新たな高校の意味はない。全ての高校が受験難関大学への進学
のみを目的とするなど、ありえないことである。
もっとも、この点に関しては、その背景に、世間一般の高校の評価が、卒業生の進路によって
いるという問題がある。確かに、世の中、相変わらず受験難関大学への入学という事実に拍手喝
采する風潮をぬぐえないでいる。だから、世間の自校への評価を高め、受験生を確保するために、
受験難関大学への進学者を増やそうとする校長・教職員のあせりは解らないわけではない。しか
し、それを断ち切って新しい時代の、新しい高校をつくる潮流をつくることが、新しい形態の高
校に課せられた使命である。東京都教育委員会もまた、こうした潮流を作るために、世間一般の
高校評価とは別の評価の視点をもっと積極的にアピールして欲しいものだ。
数学や物理、日本史や世界史、古文や漢文など、すべての高校生に必須だろうか。高校生にな
れば教科の好き嫌いもはっきりしてくるし、進路を考えた教科・科目の選択があって当然である。
選択は可能な限り大幅な方が好ましい。総合高校や単位制高校など、選択の自由度の高い高校は、
歓迎されて当然で、否定されるべきものではない。当事者が否定してどうするということである。
数年前、都立園芸高校で見た小動物の世話をする生徒、枝豆の収穫をする生徒の生き生きした
姿、教室での座学でもこの生徒達は生き生きした姿を見せてくれた。目的のある学習は楽しい。
学習が有意味か無意味かは、つまるところ、モチベーションの有無に係っているということであ
る。
た
か
受験難関大学への進学者数の 多寡 による高校評価はもうよしにしたい。多様な子どもたちのた
めの多様な高校、この課題の進展に期待したい。
- 123 -
(用語解説) ※( )は、初出ページ。
■ 進学指導研究協議会(参加校)(P.16)・進学指導推進校(P.46)
都教育庁指導部で実施している、進学指導に関する研究協議会。平成20年度は33校、平成21年度は32校が参加している。進学指導
研究協議会参加校のうち、進学指導重点校、進学指導特別推進校及び中高一貫教育校以外の学校を「進学指導推進校」と位置づけ、進
学実績の向上を目指す取組を強化している。
■ OJT研修(P.16)
On the Job Trainingの略で、日常的な職務を通して、必要な知識や技能、意欲、態度などを、意識的、計画的、継続的に高めてい
くための研修のこと。都教育委員会では、平成20年10月に「東京都教員人材育成方針」を策定し、学校内における人材育成の取組として、
「OJTガイドライン~学校におけるOJTの実践~」を作成して、OJTの推進を図っている。
■ MARCH(P.16)
大学受験における俗語。明治大学(M)
、青山学院大学(A)
、立教大学(R)
、中央大学(C)
、法政大学(H)を指す。
■ 学力向上拠点形成事業(指定校)(P.16)
文部科学省において、学力調査やそれまでの関連事業の成果等を踏まえ、さらに創意工夫を発揮して「確かな学力」を育成し、
公教育の質を向上させるため、①基礎基本の徹底や思考力・表現力・学習意欲等を含む「確かな学力」育成のため、各地域で「推
進協議会」を設け、地域の実情や課題をも踏まえた「学力向上推進計画」を策定し「拠点校」を中心とした実践研究を実施する、
②児童生徒の学習意欲や知識技能を活用する力の育成などの今日的な課題に対応して、教員の実践的教科指導力の向上を図ること
を目的に実施している。
■ 土曜日の授業・土曜授業(P.17)
長期休業中の弾力的な運用の一貫として土曜日に実施される授業。
■ 文化・スポーツ等特別推薦(P.21)
平成16年度から、都立高等学校入学者選抜に導入された、スポーツ等に卓越した能力を持つ生徒を積極的に受け入れることができる、
校長最良に基づく制度。
■ 日東駒専(P.22)
大学受験における俗語。日本大学、東洋大学、駒澤大学、専修大学を指す。
■ (トップ)アスリート派遣事業(P.23
国際大会等で活躍したアスリートを学校に招待し、児童・生徒と直接、交流することによって運動やスポーツにより一層親しみ、
健康増進や体力向上に努めるとともに、アスリートの考え方や生きざまに触れることによって、夢に向かって努力したり、困難に
立ち向かおうとしたりする意欲を培うことを目的として都教育委員会が実施している。
■ 部活動推進指定校(P.28)
文化部活動を含め、学校における部活動を活性化させ、生徒の個性の伸長や人間性の育成を図るとともに、学校の個性化・特色
化を一層進めるために部活動推進指定校を指定している。指定期間は、2年間である。なお、
「部活動推進指定校」は、17年度ま
で実施していた「運動部活動推進重点校」を文化部活動まで拡大して実施したものである。
■ 小中高夢のかけ橋推進事業(P.28)
(1)子供たちに異年齢交流の機会を増やすとともに、社会性や協働性、思いやりの心や豊かな人間性の育成を図ること、(2)「開
かれた学校づくり」を進めることで、都民からの公立学校全体に対する理解を深め、信頼を高めること。を目的に、連携推進校を
指定し、近隣の小学校、中学校及び特別支援学校などとの間に、訪問授業、招待授業、部活動の交流、教員間の交流などを行う。
平成16年度から実施しており、平成20年度の連携推進校は、52校54課程である。
■ スーパーバイザー派遣事業(P.29)
都教育委員会のスポーツ試行施策に基づき、平成25年度の東京国民体育大会の開催及び平成 28 年度の東京オリンピック招致に向け、
中学生、高校生段階のスポーツの強化と普及をより一層一体的に推進するための取組として行っている事業のひとつ。
■ 部活動中の重大事故防止のためのガイドライン(P.29)
平成20年4月に、都立高校で発生した部活動中の事故を受け、事故の再発防止のために都教育委員会が策定したガイドライン。
学校において設置されている運動部活動の競技種目の中から、過去に重大事故が発生した競技種目、安全に行わないと事故が発生
する可能性が高いとされる競技種目、多くの都立学校において設置されている競技種目等を中心に、陸上競技や弓道などの15の
競技種目を選定し、それぞれについてのガイドラインを示した。ガイドラインでは、①各競技種目の魅力や特性を明らかにすると
ともに、学校で最低限行われるべき一般的な練習内容・方法と安全確認、②事故防止について一層注意を喚起するため、日常の練
習内容・方法に内在する危険性と過去の重大事故、③内在する危険性や過去の事故事例を踏まえた、重大事故防止のためのより具
体的な対策や安全指導を示している。
■ 学校設定科目「日本の伝統・文化」開設校(P.31)
学校教育において、我が国の伝統や文化について理解を深める教育を推進し、郷土や国に対する愛着や誇りをはぐくむとともに、
国際社会に生きる日本人としての自覚と多様な文化を尊重できる態度や資質を育てるために、都立高校及び特別支援学校42校で、
平成21年度から学校設定科目として「日本の伝統・文化」を開設している。
■ 高等学校におけるキャリア教育の在り方に関する調査研究事業(推進校)(P.36)
高校生の目的意識の醸成を図るために、大学入学後も視野に入れた高等学校、特に普通科高等学校におけるキャリア教育の推進
方策に関し、外部の有識者等の協力を得て、調査研究を行う。
- 124 -
■ アドバイザリースタッフ(派遣事業)(P.42)
幼児・児童・生徒にかかわる、いじめ、不登校、集団不適応等の問題を解決するため、学校や保護者等からの要請に基づき、医
師及び臨床心理の専門家や学生等を派遣し、相談等を行っている。
■ PDCA(マネジメント)サイクル(P.44)
Plan-Do-Check-Actionを順に行い、最後のActionを更に次のPDCAにつなげて、螺旋を描くようにスパイラスアップしながら継続
的な業務改善を行っていく仕組み。都立学校においても、都民に信頼され、魅力ある学校づくりを進めるために、PDCAサイクルを有効に
機能させて、継続的・発展的な業務改善を行っている。
■ トライ&チャレンジ事業(キャンペーン)(P.44)
奉仕活動や職場体験をはじめとする様々な体験活動を行うことで、社会の一員としての自覚を高め、健全で豊かな心をはぐくむ
ことをねらいとする。特に、11月を強化月間として取り組んでいる。
■ 学校経営支援センター(P.48)
校長がリーダーシップを発揮し、より自律的な学校経営を行っていくために、学校の身近な地域で学校の実態に応じた機動的で
きめ細かい支援を行い、学校経営の支援と教育の充実を図るために、平成18年度に都内6ヶ所(3所・3支所)設置された。学
校での業務を集約・集中化し、事務量の軽減と経営企画室(事務室)の経営面での機能強化を支えている。
■ 安全教育プログラム(P.53)
すべての子供たちに、危険を予測し回避する能力や他者や社会の安全に貢献できる資質・能力を身に付けさせる安全教育を推進
するため、全国初の総合的な指導資料として、都教育委員会で作成したもの。主な特色といて、①子供の発達段階に応じた具体的
な指導内容を明確にするため、子供たちが身に付ける「必ず指導する基本的事項」を示した。②安全教育の3領域(生活安全・交
通安全・災害安全)を系統的・計画的に進めるため、3領域を総合的に扱った年間指導計画を学校種ごとに示した。③指導方法の
改善を図り、必ず指導する基本的な事項を確実に身に付けることができるよう、教員が一声かける「日常的な安全指導」
、
「定期的
な安全指導」及び「特設する安全学習」を相互に関連させた安全教育の指導方法を示した。
■ 人権教育プログラム(P.53)
「人権教育プログラム(学校教育編)
」は、幼稚園や学校の教員等が人権教育を指導するための実践的な手引き。学校における人
権教育を推進するための考え方、人権課題等に関する実践・指導事例、人権教育についての関係資料を掲載している。
■ 運動部活動地域連携実践事業(P.54)
スポーツを通じて体力を向上するとともに、協調性や自立心をはぐくみ、心身ともにたくましい子どもを育成することを目的と
して、子どもたちのスポーツの場をより一層充実するため、地域の実態に応じて、複数校合同の運動部活動や地域のスポーツクラ
ブとの連携など、1校の枠を超え、地域のあらゆる資源を活用して、地域社会と連携する運動部活動について、47の市町村に中
心校を設け、モデル的な実践を行った。
■ 単位制高校(P.60)
決められた科目を学ぶだけでなく、多くの科目の中から、自分の興味・関心や進路希望に応じた科目を選んで学べる学校。学年
の枠にとらわれず、幅広い選択科目が設置され、自らの学習計画に基づいた主体的な学習が可能で、入学年次にかかわらない科目
の履修により異年齢間の交流ができることも特色である。
■ 目指せスペシャリスト(スーパー専門高校)(P.64)
平成15年度から、先端的な技術等を取り入れた教育や伝統的な産業に関する学習を重点的に行うなど、特色ある取組を行う専
門高校を、将来のスペシャリストの育成に係る教育課程等の改善に資する研究開発を行うために「目指せスペシャリストスーパー
専門校」として文部科学省が指定。農業、工業、商業などの専門高校において、将来のスペシャリストの育成に係る教育を重点的
に実施し、教育課程等の改善に資する実証的資料を得るために実施。
■ シラバス(P.85)
講義・授業の大まかな学習計画。生徒やその保護者に、学習計画を周知させる目的で作成され、科目名や取得単位、年間の授業時数、
学習の到達目標、各単元の大まかな内容、評価の観点や方法などが主な内容である。
■ エコアクション21(P.92)
広範な中小企業、学校、公共機関などが「環境への取組を効果的・効率的に行うシステムを構築・運用・維持し、環境への目標
を持ち、行動し、結果を取りまとめ、評価し、公表する」方法として環境省が策定した「エコアクション21環境経営システム・
環境活動レポートガイドライン2004年版」に基づく認証・登録制度。環境負荷や環境への取組を自己チェックし、これに基づ
いて環境方針及び環境活動計画を策定して、環境目標を達成するための取組を行う。1ヶ月ごとの環境負荷チェック、3ヶ月から
半年ごとの取組の評価・見直しを行い、環境活動レポートを作成、結果を公表できるようにする。
■ 進学指導重点校(P.104)
過去に難関大学への進学実績があり、更に難関大学への進学実績の向上を目指して、進学指導に組織的な取組が可能であること。
また、進学指導だけでなく、知・徳・体のバランスのとれた人格形成を目指しながら、高い学力を身に付けさせ、生徒の自己実現
を図れるよう進学実績の向上に取り組んでいくことが可能な学校を都教育委員会が指定している。
- 125 -
【 特 別 支 援 学 校 】
都立特別支援学校における学校経営診断の試行について
平成16年度から都立高等学校で実施している学校経営診断について、都立特別支援学校においても「平成2
1年度学校経営診断実施要綱」に基づき、平成20年度の教育活動について、以下のとおり学校経営診断を試行
実施しました。
今回の試行結果を踏まえて、今後、都立特別支援学校における学校経営診断の本格的な実施に向けて検討を行
う予定です。
1 特別支援学校における経営診断の意義
○ 平成19年4月に学校教育法の一部改正により、従来、障害種別ごとに設置されていた盲学校、ろう学校
及び養護学校が、複数の障害種別に対応した教育を行う特別支援学校として設置できるようになるとともに、
地域におけるセンター的機能を担うこととなった。
○ 都も、東京都特別支援教育推進計画第二次実施計画を策定(平成19年11月)し、
「障害の重度・重複
化、多様化に対応する個に応じた教育」を推進するとともに、
「自立と社会参加に向けた多様な進路希望に
こたえる後期中等教育」の充実を進めている。
○ 都立特別支援学校高等部を卒業した生徒たちは、在学中に身に付けた知識や技能を生かし、一般就労(企
業就労)や福祉就労(福祉作業所入所等)を通じて社会に貢献している。
今後、都立特別支援学校で学ぶ子供たちの自立と社会参加をより一層推進するためには、個に応じた指導
内容・方法の工夫・開発を図る「個別指導計画」や、乳幼児期から学校卒業後までの支援を視野に入れた「個
別の教育支援計画」に基づく、幼稚部又は小学部から高等部までの一貫性のある教育・生活支援の更なる充
実が必要である。
○ 経営診断の実施は、こうした状況を基にした学校の経営状況を外部委員も含め客観的に把握し、診断結果
を次年度以降の学校経営に反映し、改善を促すとともに、学校ごとに行われている特色ある取組を明らかに
することにより、特別支援教育の理念の実現と、保護者等の都民に特別支援学校に対する理解推進を図り、
都民の期待にこたえる学校づくりを目指すために意義のあるものである。
2 診断対象校の選定
(1)診断対象校選定の観点
試行実施校は、次年度以降の本格的な実施を視野に入れ、以下のような観点から選定した。
ア 設置校数の多い肢体不自由特別支援学校及び知的障害特別支援学校から各1校を選定する。
イ 特別支援学校の特色である一貫性のある教育の実際について把握できるよう、小学部から高等部までを
設置する学校から選定する。
ウ 地域特性と教育活動との関連性等を把握できるよう、区部及び市町村部に所在する学校から各1校を選
定する。
(2)診断対象校
ア 肢体不自由特別支援学校
都立城南特別支援学校(大田区)
イ 知的障害特別支援学校
都立羽村特別支援学校(羽村市)
3 診断の実施体制
経営診断を実施するに当たっては、以下のとおり「診断チーム」を編成した。なお、3名の外部専門委員は
いずれも都立特別支援学校の教育に精通した有識者に協力を依頼している。
(1)外部専門委員
小池敏英(東京学芸大学教授)
、飯野順子(東洋大学講師)
、箕輪優子(横河電機株式会社)
(2)教育庁職員
学校経営支援センター経営支援室・支援チーム職員、都立学校教育部職員、指導部職員
- 128 -
4 診断の方法
(1)診断方針の作成と具体的な診断観点の共通理解
各学校から提出された「学校経営計画」や「学校経営報告」等の書面に基づき、学校経営支援センターを
中心に、各学校の教育活動の特色や学校経営上の工夫点などを整理した「診断方針」を作成した。
「診断方針」は、学校が進める様々な教育活動の中で以下の主な4項目を抽出し整理した。
ア 教育活動(学習指導、生活指導、進路指導)の充実
イ 危機管理体制の整備(通学時の安全確保や施設・設
『魅力的な学校づくり』は、しっかりとした学校
の基盤(運営や体制)の上に成り立つ。
備の安全管理など)
ウ 合理的・効率的な組織編成・運営
エ 保護者や地域との連携
=学校の特色=
診断結果
なお、
「診断方針」は、事前に診断対象校に提示している。
魅力ある学校づくりの
Ⅰ・Ⅱ
ための取組の評価
また、診断に当たっては、
「診断チーム」のメンバーが評価
の観点について共通理解できるよう、
「具体的な診断観点」を
作成した。
=基礎項目=
診断結果
(2)診断の方法
学校経営の基盤となる
Ⅲ
組織の健全性の評価
診断は、
「診断方針」及び「具体的な診断観点」に基づき、
以下の3つの方法により行った。
ア 各学部の授業観察
イ 校長、副校長、経営企画室長、主幹教諭、主任教諭、経営企画室職員からのヒアリング
ウ 「個別指導計画」や「個別の教育支援計画」等の作成状況や内容確認
5 評価の方法及び評価結果の処理
(1)評価の方法
評価に当たっては、
「診断チーム」のメンバーが、
「具体的な診断観点」に基づいて各項目を5段階で評価
した。評価は「3」を標準として、各学校が自校の取組の成果(強み)や課題(弱み)を把握できるように
工夫した。
(2)数値による評価の考え方
以下の理由により、授業観察やヒアリング等で得た知見を多角的に検証した上で数値化を試みた。
ア 都立特別支援学校の場合、在籍する幼児・児童・生徒の障害の状態や教育的ニーズは一様ではない。例
えば、
「企業就労率の比較だけをもって各学校の職業教育の充実度を評価する」といった観点を設定する
ことが困難であるといった側面がある。
また、特別支援学校については、高等学校で掲げている「進学率」や「部活動加入率」のような、一般
的に見てその達成度が明確である数値目標が少ない。
イ 特別支援学校として行うべき教育活動等
(個別指導計画や個別教育支援計画の作成、
危機管理への対応、
副籍事業等)について、一定の水準に達することが求められている。
(3)評価結果の処理
各診断項目の結果数値は、
「診断チーム」のメンバー各人の評価点を合計し、単純平均して算出したもので
ある。算出された各項目の数値の妥当性については、
「診断チーム」で合議を行った上で確認している。なお、
評価結果は、
「教育活動の充実」
「危機管理」
「組織編制・運営」
「保護者・地域・関係機関との連携」の特別
支援学校における共通基礎項目(学校運営上必要な共通項目)ごと、及び総合評価のレーダーチャートを作
成し、自校の取組の成果(強み)や課題(弱み)を把握しやすくなるようにした。
(4)評価結果の取り扱いに当たっての留意事項
この評価結果は、その数値のみで学校経営の善し悪しを判断しようとするものではない。各学校が、在籍
する幼児・児童・生徒に対してよりよい教育を行うために、これまでの自校の経営実績や課題についてあら
ためて確認するとともに、これからの学校経営の方向性の策定に資することを意図したものであることに留
意する必要がある。
- 129 -
城南特別支援学校
・学校経営診断書
・外部委員の意見
№25 城南特別支援学校
学 校 経 営 診 断 書
― 城 南 特 別 支 援 学 校 ―
わかりやすい授業づくりを推進し、個に応じた指導を充実させます!
所 在 地 大田区東六郷2-18-19
創
立 昭和44年4月19日
障害種別 肢体不自由
設置学部 小学部、中学部、高等部
教職
員数
20年度
100名
21年度
99名
児 童 ・
20年度
133名(小:75名、中:27名、高31名)
生 徒 数
21年度
131名(小:70名、中:32名、高29名)
20・21 年度
の主な指定等
自立活動における外部専門家を導入した指導内容・方法の研究・開発事業指定校
安全教育プログラム開発事業推進校
障害の重い児童・生徒に対する小・中・高等部一貫した教育に関する研究指定校(20年度)
外部の教育資源を活用して特別支援学校を支援するしくみづくり事業指定校
歯の健康づくり健康推進校(21年度)
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 昭和44年に開校した小学部・中学部・高等部を設置する肢体不自由特別支援学校
です。平成21年度には創立40周年を迎えます。19・20年度には都教育委員会の「障害の重い児
童・生徒に対する小・中・高等部一貫した教育に関する研究指定校」に指定され、都立肢体不自由特別
支援学校の教育内容の充実に向けた牽引役を担っています。19年度には、都立肢体不自由特別支援学
校の教育課程の充実に関する実践研究の成果が認められ、都教育委員会の表彰(学校部門)を受けまし
た。また、東京都特別支援教育推進計画に基づき、20年4月から都立大塚ろう学校城南分教室が移転
し、校舎を共同使用しています。
■特徴的な取組と成果 学校の教育計画(年間指導計画や指導内容等)を「城南プラン」としてまとめる
とともに、同プランを反映して個別指導計画や学習指導案の内容の充実を図るなど、児童・生徒や保護
者にとってわかりやすい授業づくりを推進しています。
教育内容・方法の充実に向けて、外部専門家(理学療法士、作業療法士等)との連携による実態把握、
具体的な到達目標と手立ての設定に基づく指導、児童・生徒の成長・発達の客観的・科学的な評価・検
証を重視した「目標準拠評価に基づくわかりやすい授業づくり」に全校で取り組んでおり、教員の専門
性の向上に資するとともに、保護者からも概ね良好な評価を得ています。
また、将来の自立と社会参加を目指して望ましい勤労観や職業観を育成するために、小学部から高等
部までの一貫性のあるキャリア教育にも取り組んでいます。職業教育の充実を図るための実習室である
「オフィスルーム」の設置や、学習事例や教材・教具等をまとめた「キャリア教育プログラム集30」
の作成などの取組を始めたことは、他校の先駆けとなる教育実践として評価できます。
■課題と改善の方策 個別指導計画の内容の充実度やオフィスルームの活用状況等は、個々の教員や学部
間によって多少の差があります。今後は、小学部から高等部までの一貫性のある教育を行う観点から、
授業研究をより活性化するなどして教員個々の専門性・授業力の向上を図るとともに、キャリア教育プ
ログラム集30とオフィスルームを関連させた系統性のあるキャリア教育の展開などが課題です。
Ⅱ 経営診断結果(特色ある教育活動)
診断ポイント① 学習指導 城南プランによるわかりやすい授業の推進
■取組内容と成果 「目標準拠評価に基づくわかりやすい授業づくり」にあたっては、すべての児童・生
徒に対して、
「意欲」
「関心」
「技能」
「表現」の項目ごとに具体的到達目標を立て、指導と評価を行って
います。児童・生徒の指導にあたっては、外部専門家とも緊密な連携を図り、個に応じた教材・教具の
工夫や具体的で客観性のある実態把握や評価を行う体制が整えられています。
- 132 -
№25 城南特別支援学校
また、19・20年度は、都教育委員会の研究指定を受け、
(図1)城南プラン
障害が重い児童・生徒の個別指導計画の作成・評価や授業づく
りに活用できる「学習習得状況把握表」の開発に協力しました。
「学習習得状況把握表」は、城南特別支援学校においても、個
別指導計画の充実や授業づくりに活用されています。
こうした取組に基づいて、18年度からは、各年度の教育計
画を「城南プラン」(図1)としてまとめ、各授業のねらいや
指導内容等を保護者に公開し、説明責任を果たすことに努めて
います。その結果、学校評価アンケートでは、約80%
の保護者から良好な評価を得ています(図2)
。
70
■課題と改善の方策 ヒアリングの結果、
「目標準拠による
60
わかりやすい授業づくり」に関しては、障害が比較的軽
50
い児童・生徒に対しては効果が検証されている一方で、
40
障害が重い児童・生徒には指導内容・方法に工夫・改善
30
の余地のあることが指摘されています。
20
したがって、今後は、研究部が中心になって「学習習
10
得状況把握表」を活用した障害が重い児童・生徒に対す
0
(図2)「城南プラン」等の説明
(%)
58
49
38
保護者
教員
28
6
良い
まあ良い
10
3
やや良くない
4
1
0
良くない
分からない
る個別指導計画の作成や授業づくりに関する授業研究を
深めるなどして、指導内容・方法のより一層の充実を図るとともに、教員個々の専門性や授業力の維持・
向上に努めることが重要です。
「城南プラン」は年間指導計画や指導内容等の教育計画をまとめたものであり、このプランを実際の
授業において具現化していくためには、外部専門家との連携による児童・生徒のきめ細かな実態把握や、
「学習習得状況把握表」を活用した具体性のある個別指導計画の作成と評価が必要です。
診断ポイント② 生活指導 障害の状態を踏まえた基本的生活習慣の形成と安全教育の推進
■取組内容と成果 児童・生徒や教員が明るく元気よくあいさつする姿が見られ、望ましい生活習慣の確
立に向けた指導が、学校全体で行われていることがわかります。教室や廊下の整理・整頓、校内の清掃・
衛生管理等も概ね行き届いており、学校全体が明るい雰囲気に包まれています。
安全教育プログラム開発事業推進校の指定を契機として、公開によるセーフティ教室や避難訓練等を
通して、児童・生徒の防災意識を高める取組を積極的に進めています。なかでも、都立六郷工科高校と
の合同避難訓練は、被災時に地域の方々の助けや協力を得るための方法を体験的に学習させるとともに、
災害弱者と言われる障害のある人々への理解啓発を図るという点において、高く評価できる活動です。
また、都立大塚ろう学校城南分教室との校舎の共同使用についても、月1回の連絡会を開催するなど
して意思疎通を図ることにより、障害が異なる幼児・児童・生徒同士が、安全かつ円滑に学校生活を送
ることができています。
■課題と改善の方策 将来の自立と社会参加に向けては、あいさつの励行以外にも、個々の児童・生徒の障
害の状態に応じた基本的生活習慣の確立が重要です。今後は、生活指導部が中心になり、コミュニケーシ
ョン能力や身辺処理技能(着替え・食事・排せつ等)の向上、通学の自立など、肢体不自由のある児童・
生徒の社会参加に必要な生活習慣の育成の在り方について検討するとともに、一人一人の発達段階や生活
課題に基づき、個別指導計画や個別の教育支援計画に具体的に反映させていく必要があります。
診断ポイント③ 進路指導 オフィスルームの活用等によるキャリア教育の推進
■取組内容と成果 「オフィスルーム」
(図3)は、肢体不自由のある生徒の在宅就労も視野に入れ、パ
ソコンを利用した名刺づくりや文書作成、データ入力作業等などを体験的に学び、就労に必要な知識や
技能を育成するために設置されています。また、そこで学んだ知識や技能を実践的な場で活用できるよ
う、経営企画室における事務補助等の就業体験や企業における現場実習の機会を確保することに努めて
います。
- 133 -
№25 城南特別支援学校
「キャリア教育プログラム集30」
(図4)は、各教科や総合的な学
(図3)オフィスルーム
習の時間などにおける学習事例 や教材・教具等がわかりやすく示さ
れており、
「オフィスルーム」の有効活用にも役立つ内容となっていま
す。今後、キャリア教育の推進にあたって、小学部から高等部まで全
校で活用していくことが大切です。
20年度の進路状況は、高等部卒業生10名のうち、大学進学者1
名、企業就労者2名、通所授産施設入所者5名、在宅者2名でした。
20年度の都立肢体不自由特別支援学校高等部卒業生(162名)の
うち、企業就労者はわずか4名(2.5%)であり、そのうちの2名が
城南特別支援学校の卒業生です。企業就労希望を実現した成果として評
(図4)キャリア教育プログラム集30
価できます。
■課題と改善の方策 「オフィスルーム」の設置や「キャリア教育プログ
ラム集30」の作成は、小学部から高等部までの一貫性のあるキャリア
教育を進めるための具体的な取組として評価できます。しかしながら、
これらの取組がまだ緒についたばかりであることから、学校評価アンケ
ートでは、オフィスルームの活用状況について61%の保護者が「分か
らない」と答え、教員も肯定的に捉えているのは51%にとどまってい
ます。このことから、オフィスルーム活用が一部の児童・生徒に限られ
ていることや、保護者への情報提供が十分に行われていないといったこ
とが指摘できます。
今後は、教務部や研究部が中心となって、地域や企業との連携を視野に置いた教育課程改善や授業研
究などを行い、すべての児童・生徒が「キャリア教育プログラム集30」や「オフィスルーム」をより
有効に活用した学習ができるよう、全教職員で共通認識を持って取組を進めることが重要です。
また、保護者に対しても、保護者会や各種通信の発行などを通じて、
「オフィスルーム」の活用状況
や学習活動の成果等を、タイムリーにわかりやすく伝える工夫と努力が必要です。最新の進路情報や社
会の動向等についても適時・適切な情報提供を行い、小学部から高等部までの一貫性のあるキャリア教
育や、自立と社会参加を目指す進路指導についての意識を喚起していく必要があります。
診断ポイント④ 危機管理 専門機関と連携した危機管理と健康づくり
■取組内容と成果 肢体不自由特別支援学校の特性を踏まえた学校危機管理マニュアルが作成され、災害
や事故発生時の危機管理体制が整えられています。過去の事故を教訓とした緊急搬送訓練を定期的に実
施したり、事故につながる事例(ヒヤリ・ハット事例)の原因や再発防止策を検討する事例研究会(学
期1回)を全校で行ったりするなど、児童・生徒の安全で安心な学校生活を支える基盤の整備に努めて
いることは評価できます。
また、専門医との連携による健康観察(年30回)
、外部専門家と連携した摂食指導に関する研修会
(年3回)等を実施し、児童・生徒の健康管理や教員の摂食指導技術の向上に努めています。このほか、
「給食カード(摂食カード)
」を作成して個に応じた食事形態を工夫するなどの取組を進め、学校評価
アンケートでは、75%の保護者から、摂食指導や医療的ケアについての肯定的な評価を得ています。
■課題と改善の方策 安全・安心な学校づくりに向けた保護者の期待は大きなものがあります。そのため
には、経営企画室と協同し、全教職員が協力して月1回程度の校内安全点検を実施するなど、組織的な
安全管理体制を整備し、教職員の危機管理意識をより高めていく必要があります。
ごえん
また、誤嚥等の事故防止のために、摂食技術向上のための取組や医療的ケアの実施体制整備、研修の
こた
充実等を今後も継続し、保護者の期待により一層応えていくことが望まれます。
- 134 -
№25 城南特別支援学校
診断ポイント⑤ 学校経営・組織体制 主幹教諭、主任教諭を活用したOJTによる人材育成
■取組内容と成果 校務分掌組織を3つの系(教務系・生活指導系・相談支援系)に整理しました。また、
しんちょく
各分掌が主体的・効率的に業務の進行管理を行っていくとともに、各業務の進 捗 状況や今後の進行計
画等を校長・副校長がチェックするためのマネジメント・プログラムシートを開発するなどの工夫を行
っています。それにより、校長・副校長への報告・連絡・相談や、教員間の情報共有及び意思疎通が概
ね図られています。
また、各分掌には主幹教諭と主任教諭を意図的・計画的に配置し、若手教員に対してベテラン教員が
適時・適切なアドバイスを行うことができる体制整備を工夫しています。このことにより、若手教員の
育成が図られています。
■課題と改善の方策 ヒアリングの結果、授業改善のための教員間の打ち合わせの時間や、外部専門家を
交えた打ち合わせの時間が不足していると感じています。今後は、
「授業改善に専念できる環境づくり」
を経営の重点に掲げるなどして、教育内容・方法の充実のために教員同士が十分なコミュニケーション
を形成しながら、専門性の向上に関わるOJTをより充実させることのできる時間の確保が重要な課題
です。
肢体不自由特別支援学校の場合、児童・生徒の在校中に教員が教材研究や打ち合わせを行う時間を確
保することが難しいことから、今後は限られた時間を有効に活用できるよう、現在行っている組織改善
の実効性を検証していくことが大切です。
そのためには、企画調整会議が中心となって、各分掌及び学部が行う業務や、会議運営の問題点につ
いて整理し、ICT機器を活用した情報処理及び情報共有等も含めて、より合理的・効率的な組織運営
に向けた改善の方針と具体的な方策を企画・立案していく必要があります。
診断ポイント⑥ 地域等との連携 地域における肢体不自由教育のセンター的機能の充実
■取組内容と成果 約半数(49%)の児童・生徒が、それぞれの居住地(品川区、大田区、港区)の小・
中学校を地域指定校として副次的な籍を置く「副籍制度」を利用しています。交流の内容(間接交流ま
たは直接交流)も、保護者の要望に添って進めることができています。また、品川区立仲六郷小学校や
六郷南中学校、都立六郷工科高校との学校間交流も、地域における障害児の理解推進に成果を上げてお
り、障害のない子供との交流に関する保護者のニーズに概ね応えることができています。
学校公開や学校行事(運動会・文化祭等)
、PTA主催の夏祭りなどには多数の来校者が訪れ、児童・
生徒も地域の方々とのふれあいを楽しみにしています。地域の方々は学校の教育活動に理解があり、学
校も体育館等の施設開放を積極的に進めるなど、地域との良好な関係を築くことができています。
■課題と改善の方策 ヒアリングの結果、地域の方々は「もっと学校の教育活動に協力したい」という意
向があるようですが、学校が地域の社会資源を学習活動に十分に活用できていない実態があるようです。
学校評価の結果を見ても、地域との連携に関する評価は、保護者・教員ともに肯定的な回答は50%に
とどまっています。今後は、キャリア教育や安全教育の学習教材として地域の商店街や公共施設等を積
極的に取り入れ、共生社会の実現を目指す開かれた学校づくりを推進していく必要があります。
- 135 -
№25 城南特別支援学校
Ⅲ 経営診断結果(基礎項目)
1 教育活動の充実(学習指導、生活指導、進路指導等)
教育課程・学級編成・
指導計画
3.6
個別指導計画
個別の教育支援計画
3.1
特別活動
3.3
3.2
進路指導
授業づくり
3.3
3.4
生活指導
○学校の教育計画を「城南プラン」としてまとめ、保
護者に公開して良好な評価を得ています。
○外部専門家(理学療法士・作業療法士等)と連携し
た実態把握を行い、教育内容・方法の充実と教員の
専門性の向上を図っています。
○「目標準拠評価」により児童・生徒の成長や発達の
科学的検証・評価を行っています。
○オフィスルームの設置やキャリア教育プログラム集
30の作成等、キャリア教育推進のための具体策を
活用していくために、教職員の共通理解が必要です。
○大学進学や企業就労など、肢体不自由のある子供の
可能性を伸長する進路指導の成果が出ています。
○都立特別支援学校総合文化祭への参加など、特別活
動の充実に努めています。
○児童・生徒が元気よくあいさつでき、明るい雰囲気
のある学校です。
2 危機管理(リスクマネジメント)体制の整備(災害・事故対応、保健・衛生管理、情報・物品管理等)
災害や事故への対応
3.9
3.6
出張・年休処理簿
研修・点検の実施
スクールライフ
3.7
3.4
会計事故防止
3.4
保健・衛生管理
3.5
情報・物品等管理
○肢体不自由特別支援学校の特性を踏まえて「危機管
理マニュアル」を適切に作成したことにより、組織
体制が確立しています。
○ヒヤリ・ハット事例の対応の経過が、きちんと校
長・副校長に報告されています。また、全校で事例
検討(学期1回)を行うなど、組織的に再発防止に
取り組んでいます。
○隣接する都立六郷工科高校との合同避難訓練の実
施など、地域と連携した防災に努めています。
○校舎内は清掃が行き届き、教室や廊下の整理・整頓
状況も概ね良好です。
○専門医や外部専門家の協力を得て研修会や事例研
修会を行い、児童・生徒の健康・安全管理に努めて
います。
○会計事故の防止や個人情報の管理を組織的に行っ
ています。
3 合理的・効率的な組織編成・運営(学校経営、研究・研修、予算管理等)
学校経営計画
経営企画室
の参画
3.3
意思決定
3.4
3.4
3.4
予算
3.1
3.1
3.4
研究・研修
会議運営
校務分掌
○業務のスリム化、人材育成等の観点から、校務分掌
組織の編成の在り方を見直しています。
○教員と管理職の意思疎通の下で、校務分掌ごとに業
務の進行管理を行っています。
○各分掌部は、年間活動計画に基づいて円滑に業務を
推進するために、定期的な評価を行っています。
○主幹教諭や主任教諭といったミドルリーダーが、学
校経営計画の具現化や人材育成(OJT)に適切に
機能しています。
○各教員が、年1回以上の研究授業を行うなど、研
究・研修活動は比較的活発に行われています。
○都教育委員会の研究指定校として、数々の成果を上
げています。
○経営企画室が参画し、学校経営計画に基づいた適切
な予算編成と執行がなされています。
- 138 -
№25 城南特別支援学校
4 保護者・地域・関係機関等との連携(保護者との連携、地域との連携、センター的機能等)
保護者との連携
2.9
学校運営
連絡協議会
3.3
3.1
地域・関係機関
との連携
3.1
特別支援学校の
センター的機能
○学期1回の授業参観、月1回の保護者会の実施等を
通じて、保護者との連携を図っています。
○保護者のニーズをふまえ、副籍の充実(49%の児
童・生徒が利用)に努めています。
○地域の方々は学校に理解があり、積極的に協力を申
し出てくださっています。地域の社会資源を一層活
用するために、地域交流を推進していく必要があり
ます。
○年4回の学校公開を実施した結果、延べ156名の
参加があり、地域からの関心の高さが表れています。
○個別の教育支援計画に基づく支援会議を年36回実
施しました。
(総合評価)
全体としてバランスのとれた学校経営が行われて
いると評価できます。
教育活動の充実については、
「城南プラン」の作成
や「目標準拠によるわかりやすい授業づくり」など、
全教員が意思統一や共通理解を図ることのできる具体
的な方策が展開されており、保護者からも高い評価を
得ています。
その一方で、保護者に対する学校評価アンケートの
回収率が58%と低いことや、
「オフィスルームの活
用」
「個別の支援会議の充実への努力」
「地域、関係機
関との連携」等の項目で「わからない」と回答してい
る比率が高いことを見ると、学校が行っている様々な
活動が十分に保護者に伝わっていないと考えられます。
今後は、教育活動に関する内容以外にも、情報発信
の方法を工夫するなどして、保護者の理解と協力を求
めていく方策の充実が必要です。
教育活動の充実
3.3
保護者・地域等
との連携
3.1
3.6
危機管理
3.3
組織
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
ここ数年、授業改善を目指して、
「城南プラン」
「目標準拠評価に基づく授業」
「外部専門家との連携」
「キ
ャリア教育の推進」
「安全教育の推進」
「地域の特別支援教育のセンター的機能」
「学校組織体制整備」等、研
究しながら体制整備を図ってきた。そのことを評価いただいたことはありがたく、今後もそれらを有機的に
結びつけ定着できるように、教職員一同更に努力していく。また、そうした取組が、保護者に十分に伝わっ
ていないというご指摘も頂戴した。保護者に十分な理解と協力が得られることが、教育活動の充実にとって
不可欠である。
今回の経営診断を十分に活用し、より一層教育活動の充実を図っていきたい。
(城南特別支援学校長 佐藤 正一)
- 139 -
外部委員の意見[城南特別支援学校]
小池
敏英
委員
(東京学芸大学 教授)
肢体不自由特別支援学校は、現在、授業毎の教育活動の充実を通して、より専門性の高い教育
を推進することが求められています。都立城南特別支援学校は、20・21 年度に、
「自立活動」、
「安
全教育」、「小・中・高等部一貫した教育」、「外部の教育資源の活用」、「歯の健康づくり」という
テーマに関して指定を受け、研究・開発事業推進指定校、プログラム開発事業推進校、研究指定
校、事業指定校、健康推進校として社会的役割を果たしてきています。
私は、外部専門家として学校経営診断に加わりましたが、その際、私の専門である教育心理学、
発達心理学の立場を通して、研究・開発事業が、学校の指導内容の充実・促進にどのようにかか
わっているのか、検討・評価することにしました。具体的には、年間指導計画、指導内容の精選、
個別指導計画の作成、活用、評価、個別の教育支援計画といった、計画的側面と実際の授業実施
の関連性について、授業観察ならびに関連資料の検討に基づき検討しました。授業観察の結果、
MTとSTの役割が明確にされて、効果的な協働体制をとっている授業であるという印象を強く
受けました。特に、子どもに応じた教材・教具などがよく工夫し、準備されていることに強い印
象を受けました。授業を理解する上で役に立ったものとして、教育計画(シラバス)があげられ
ます。城南特別支援学校では、平成 18 年度よりシラバスが作成されており、教育活動のねらいと
各授業との関連が明確に示されています。特に、学年やグループの取り組みが具体的に載ってお
り、小学部、中学部、高等部の縦の関係を見るのにもわかりやすいことが指摘できます。授業の
ねらいや内容がわかりやすかったことは、シラバスによるところが大きいという感想を持ちまし
た。
このような学校の取り組みは、学校運営連絡協議会による学校評価アンケートにも表れており、
保護者の方の教育への満足度は、肯定的評価が 80%台と高いことが指摘できます。一方、学校評
価アンケートでは、
「通知表のわかりやすさ」に関しての肯定的評価は 60%台であり、
「パソコン
や視聴覚機器の活用」、「オフィスルームの活用、コミュニケーション支援の重視」、「個別の支援
会議の充実への努力」についての肯定的評価は 20%台と低いことが指摘できます。このような保
護者の方の評価の相違の原因はどこにあるのでしょうか?
「通知表のわかりやすさ」や「個別の支援会議の充実への努力」についての肯定的評価の低さ
は、保護者の方への説明の実効性が、学校側が考えているよりも低い可能性が指摘できます。今
回の学校経営診断の際に、個別指導計画の内容を、子ども一人一人について見させていただきま
したが、クラスによっては、子ども一人一人の発達の把握の仕方が画一的で弱いという印象を持
ちました。子ども一人一人の、発達や学習状況についてその把握が弱いと、保護者の方への説明
が弱くなることが考えられます。その結果、
「授業改善と努力、教材開発」については、高く、肯
定的に評価されても、個別の説明に関して弱くなったことが考えられます。学校全体として、児
童・生徒の発達段階や到達度に基づく目標や手立ての設定のあり方に取り組んでいる最中である
ことから、この点について改善がなされ、
「保護者への説明」や「保護者との連携」がさらに進む
ことが、今後期待されます。
- 140 -
外部委員の意見[城南特別支援学校]
飯野
順子
委員
(東洋大学 講師)
特別支援教育の新たな取り組みが進み、今、学校は変わりつつあると実感しています。
「学校が
変わる」ことは、困難な命題ですが、城南特別支援学校に「学校経営診断」の一員として参加し、
学校のこれまでの流れや学校全体の動き等を見渡して、その変化を実感しました。
現在の教育活動の基盤は、これまでの流れの中で、培われてきています。城南特別支援学校の
場合は、シラバスの策定、目標準拠評価による分かりやすい授業の推進、オフィスルームの設定、
キャリア教育プログラム集30の作成等々、次々と繰り広げてきたプロジェクトが根づきつつあ
ると思いました。学校がある方向性を目指して歩んできた道筋が見える学校と感じました。
当日、指導案を全員が提出し、
「何でも、良くみてください」という先生達たちの姿勢が感じと
れる訪問となりました。その上で、次の点に言及したいと考えています。
1
教員の『多忙感』から、教職員が「生き生きと働いている学校」へ
校務分掌を「三系列」に整理するなど、円滑な学校運営上の工夫をしていますが、それでも
「教員には、『多忙感』がある」という言葉が、校長ヒヤリングの際に何回もでてきています。
教員のしごとに、際限の無さはつきものでもありますが、尚かつ質的にも量的にも多忙さを
感じていることを表現した言い方でした。
「生き生きと働いている学校」とは、城南特別支援学
校の目指す学校像です。先生が多忙で疲れていたのでは、良い授業ができません。多忙さは、
何によるものか、その分析をして、課題解決を図ることが必要です。
2
目標準拠評価による分かりやすい授業づくりの取り組みを実効性あるものに
「授業改善」に、多くの学校が取り組むようになりました。特に、
「評価」のあり方が課題で
す。実践研究の時と場の確保のために、今年度は下校時間を早めるなどの工夫も行うなど、そ
の意気込みが感じられます。また、パートⅤまで継続してきた「授業を熱く語ろう」で見せた
城南特別支援学校独自のパワーも、貴重な授業づくりの資源と考えられます。
「根拠に基づく授
業づくり」の研究によって、全都に発信するリーダーシップの更なる発揮を期待しています。
3
目標の具体化・明確化のための整理を
「学校経営計画」の今年度の取り組み目標と方策の中に、
「適正な教育課程の編成・実施・評
価に向け、全体計画、年間指導計画、個別指導計画、週ごとの指導計画をそれぞれ充実する」
とあります。このラインに系統性や整合性が図られない場合には、目標が洪水状態になり、溺
れてしまいそうなのは、先生自身です。目標設定にあたっては、更に、優先性・重点化などが
必要です。この点のシステムの開発も必要です。先の全体計画から始まる一連のラインの中で、
週ごとの指導計画は、他の目標を生かすような改善工夫が必要であると感じています。
4
専門性
特別支援学校で、最も求められているのは、専門性です。専門性の確保が困難になりつつあ
がいたん
る現状を、 慨嘆 する声をよく耳にします。特別支援教育の中でも、「肢体不自由教育」の専門
性は、医学の近接領域をも含み、幅広く奥深いなど、身に付けるには時間を要します。かつて、
東京都が障害の重い子どもの教育をリードしていた時代の誇りを復権できる環境づくりを願っ
ています。なお、校長支援の第一の方策は、専門性の高い経験豊かな人材を多く配置すること
と考えています。
- 141 -
羽村特別支援学校
・学校経営診断書
・外部委員の意見
№26 羽村特別支援学校
学 校 経 営 診 断 書
― 羽 村 特 別 支 援 学 校 ―
キャリア教育を推進し、生きる力を育てます!
所 在 地 羽村市五ノ神319-1
創
立 昭和49年4月1日
障害種別 知的障害
設置学部 小学部、中学部、高等部
教職
員数
20年度
134名
21年度
140名
児 童 ・
20年度
332名(小:82名、中:66名、高:184名)
生 徒 数
21年度
343名(小:81名、中:72名、高:190名)
20・21 年度 共生社会を目指した障害者理解の促進共同研究校(19・20年度文部科学省)
の主な指定等 都立特別支援学校における地域との連携による部活動振興実施校(21年度)
Ⅰ 経営診断結果(総括)
■学校の概要・現状 知的障害のある児童・生徒の障害の重度・重複化、多様化に対応した教育活動を推
進しています。基礎学力の向上や小・中学部に設置されている自閉症学級における指導の充実、将来の
自立と社会参加を目指す小学部からの一貫性のあるキャリア教育の推進、基本的な生活習慣の確立や通
学自立(一人通学)の推進などに積極的に取り組んでいます。また、児童・生徒の増加に対応するため、
平成22年度から校舎の改修工事が予定されています。
■特徴的な取組と成果 20年度は、高等部卒業生の企業就労率(32.7%)が、前年度に比べて10.
1%向上しました。また、一人通学の推進に関しても、20年度は中学部3年生の86%が一人通学を
開始するとともに、高等部生徒の一人通学も79%に増加(前年度71%)する成果を上げました。
教員の専門性の向上にも組織的に取り組んでいます。若手教員を中心とした授業研究を活性化させる
とともに、指導方法や授業づくりのヒントを盛り込んだ「授業改善のポイント集」などを作成し、授業
改善に役立てています。また、20年度は7年ぶりに公開授業研究会を開催し、実際の授業で使用して
いる教材・教具や指導事例等を紹介した「特別支援の学習支援集」を参加者に配布するなど、地域にお
ける特別支援教育の推進にも寄与しています。
■課題と改善の方策 個別指導計画の内容を見ると、児童・生徒の実態把握や、到達度等に応じた目標及
び手立ての設定などが具体性に欠けるものもみられます。今後は、言語面や行動面の発達のようすを客
観的・科学的に把握するために標準化された発達検査を実施し、その結果に基づいて具体性のある個別
指導計画を作成する必要があります。また、授業研究に重点を置き、具体的な指導の手だてや評価のあ
り方に関する研修を深めるなどして、教員一人一人の専門性と授業力の向上を図ることが重要です。
Ⅱ 経営診断結果(特色ある教育活動)
診断ポイント① 学習指導(小学部・中学部) 発達評価を生かした指導内容・方法の充実
■取組内容と成果 20年度は、個別指導計画の内容の充実に役立てるため、小・中学部に在籍する全児
童・生徒の知的発達の状態を客観的・科学的に把握する方法について研究しました。その結果、21年
度からは標準化された発達検査を導入することとし、個に応じた専門性の高い指導を実現するための取
組を着実に進めています。
また、20年度には、自閉症学級の「社会性の学習」等に関する指導内容を整理するとともに、基礎
学力の向上を図るために国語・算数(数学)の授業時間数を増やすことについても併せて検討し、21
年度はこれまでの週2時間から週4時間とするなどの改善を行っています。
この他、20年度には全教員が研究授業を行い、一人当たり10点の教材を開発し、教科別に計3冊
の教材集にまとめました。これは、日頃の教育実践を振り返り、互いに切磋琢磨しながら授業力の向上
を図ろうとする取組として評価できます。その結果、多くの授業で児童・生徒の障害特性や発達段階等
- 144 -
№26 羽村特別支援学校
に応じた教材・教具がよく工夫され、児童・生徒の興味や関心を大切にした学習指導が行われています。
視覚効果の高いICT機器を指導に活用することや、教材・教具の開発やプリント教材の充実の必要性
については教員間で共通理解が図られており、今後も更なる改善・充実が期待できます。
■課題と改善の方策 個に応じた指導を充実させていくためには、発達検査の結果に基づいて児童・生徒
一人一人の発達段階や学習到達度を客観的にとらえ、具体的な指導目標や指導の手立てを設定する必要
があります。
今後は、小学部から高等部までの系統性のある指導内容の整理、個別指導計画の様式及び記載内容の
見直し等を図り、より具体性の高い個別指導計画の作成に努める必要があります。特に、指導内容の整
理にあたっては、教務部等が中心になり、小学部入学から高等部卒業までの12年間を見通した「指導
内容一覧表」を作成するなどの試みが必要です。
加えて、学校行事の精選による授業時数の確保や、授業の開始時刻の統一による全校規模での学校生
活リズムの確立、小学部からの教育課程の類型化(自閉症学級、普通学級、重度・重複学級)などにつ
いても、併せて検討を進める必要があります。
診断ポイント② 学習指導(高等部) 地域・企業等と連携した作業学習の指導内容・方法の充実等
■取組内容と成果 20年度は、働くために必要な知識や技能を体験的に学ぶ作業学習の充実に向け、羽
村市や地域の民間企業との連携に努めました。なかでも、農園芸班が育てた草花を羽村市観光協会の協
力を得て学校周辺の歩道に植えたり、陶芸班が製作した製品を近隣の商店で展示即売したりするなどの
活動は、地域との連携を深める学習として評価できます。また、羽村市との連携は、同市の産業推進室
や教育委員会、市立動物園等における現場実習先の確保にもつながり、地域における障害者理解の推進
にも成果を上げています。
加えて、生徒の増加や新たな就労先の開拓に対応するために、作業種の新設に向けた研究にも取り組
み、21年度のビルクリーニング班と事務作業班の新設につなげました。ビルクリーニング班は、生徒
の資格取得(清掃技能検定)も視野に入れた特色ある取組と言えます。
この他、高等部では部活動の充実にも努めています。現在、運動系(マラソン部、サッカー部等)と
文化系(書道部等)を合わせて9つの部が活動しており、約70%の生徒が加入しています。なかでも、
ソフトボール部は、20年度の「関東ゆうあいソフトボール大会」で優勝するなどの輝かしい成績を上
げています。
■課題と改善の方策 各作業班では、生徒一人一人の職業能力の開発を目指した指導内容・方法の工夫が
課題です。今後は、すべての作業班で作業工程の分析や補助具の開発等を進め、生徒一人一人がより主
体的に学ぶことのできる学習環境を整備する必要があります。そのためには、障害者雇用の実績のある
企業等からアドバイスを得たり、先進的な教育実践を行っている学校の視察を行ったりするなど、研
究・研修の機会を拡充することが重要です。
診断ポイント③ 生活指導 社会参加・自立に向けた通学自立(一人通学)の推進
■取組内容と成果 一人通学の推進が着実な成果を上げた背景には、学校独自に保護者向けの手引き書
(
「一人通学のすすめ」
)を作成・配付したことや、外部人材を活用した講演会を実施して通学自立に対
する保護者の意識を喚起したこと、保護者と学級担任が協力して付き添い指導を継続したことなどがあ
ります。これは、学校経営計画に基づいて、学校と保護者が連携を図りながら成果を上げた取組として
高く評価できます。また、児童・生徒が安全に通学できるよう、通学路周辺の商店等に協力を依頼して
「通学路安全マップ」を作成・配布するといった取組も行っています。
■課題と改善の方策 通学自立に向けては、保護者の協力のもと、児童・生徒の障害の状態をふまえた計
画的・段階的な指導を行うことが大切です。今後は、これまでの成果を踏まえ、生活指導部が中心にな
り、保護者の理解と協力をより一層求めていくことが望まれます。また、通学途上で不測の実態が発生
した場合の対応等についても、全校的な危機管理体制や関係諸機関との連携について事例研究を深める
などして、即時対応ができる体制を構築しておく必要があります。
- 145 -
№26 羽村特別支援学校
診断ポイント④ 進路指導 キャリア教育の全体計画に基づく一貫性のある指導の充実
■取組内容と成果 20年度は、全教員が分担をして407事業所に対して、現場実習や就労の依頼を行
いました。高等部生徒の現場実習先や就労先の開拓に全教員で取り組んでいることは、小学部からのキ
ャリア教育を推進するうえで評価できます。
また、20年度は、高等部卒業生全員(52名)について、個別移行支援計画に基づく支援会議を実
施し、卒業後の支援の方策について進路先との共通
理解を図りました。
(図1)企業就労率の推移
(%)
■課題と改善の方策 今後は、児童・生徒の望ましい
50
勤労観・職業観を育てるキャリア教育を、学校全体
40
でより一層推進していくことが課題です。
そのためには、小・中学部における就業体験、高
32.7
30
等部とのつながりを考慮した中学部の作業学習、高
20
等部における現場実習に重点を置いた進路指導等の
10
22.6
15.6
充実を図る必要があります。
また、ヒアリングの結果、例えば高等部では、作
0
18年度
19年度
20年度
業学習の実施にあたって、生徒一人一人の情報が教
員間で十分に共有されていないことが明らかになりました。今後は、学級担任、作業班チーフ及び進路
指導担当教員の打ち合わせ時間を確保するなどの工夫を行い、関係教員が緊密な情報交換を行いながら、
生徒一人一人の進路希望や職業適性等を考慮した指導内容・方法の充実に努めていくことが重要です。
これらを通じて、東京都特別支援教育推進計画第二次実施計画において目標とする企業就労率40%
を目途に、企業就労を希望する生徒全員の就労を目指すとともに、福祉就労についても地域の関係機関
等と連携し、生活支援を含め生徒の実態やニーズに応じた進路指導を推進する必要があります。
診断ポイント⑤ 危機管理 「危機管理マニュアル」等の充実による危機管理体制の整備
■取組内容と成果 教員の危機管理意識を高め、安全・安心な学校生活の実現に向けて「危機管理マニュ
アル」を改訂し、校外での行方不明等に迅速かつ適切に対応するための対応策を整備しました。21年
度当初には、
「学校生活のきまり」を児童・生徒や保護者に配布し、安全意識を高める取組も行ってい
ます。ヒアリングにおいても、行方不明等の事故が発生した際の対応策が、教員に理解されていること
が確認できました。こうした取組の結果、20年度は、19年度に比べて事故発生件数が減少していま
す。
また、私費会計及び就学奨励費等の事務処理の適正化に向け、教員と経営企画室の円滑な連携を図る
ために、私費会計事務に関する連絡・調整を担当する教員を指名するとともに、マニュアルや書式の見
直し等を行いました。その結果、全教職員にとってわかりやすい事務手続きの流れが整備され、事務処
理の効率化やチェック機能の強化を図る体制を整えたことは評価できます。
■課題と改善の方策 高等部では知的障害の程度が軽い生徒も多いことから、校内外で発生する事故や生
活指導上の問題等について、関係諸機関との連携を図りながら組織的に対応できる体制を整備しておく
必要があります。具体的には、生活指導部を中心に定期的な通学指導や通学路の安全点検を実施するこ
と、個別の教育支援計画に基づく支援会議を充実させて福祉機関や公共交通機関及び地元警察署等との
日常的な連絡・情報交換体制を整えておくこと、事故発生時の管理職への迅速な報告を徹底させること
などが挙げられます。
この他、あらゆる機会を通じて私費会計の処理の適正化に向けた教員の意識を喚起すること、22年
度から始まる改修工事の際の安全管理体制の構築、経営企画室による私費会計事務に関する校内研修の
実施、生活指導部による児童・生徒に向けた安全指導の充実及び校内のルールづくり等が必要です。
- 146 -
№26 羽村特別支援学校
診断ポイント⑥ 組織編制・運営 授業改善に専念するための組織のスリム化
■取組内容と成果 教員一人一人が担う業務量の均衡化を図るため、21年度より校務分掌を10部から
7部に整理・統合し、各分掌の業務や配当人数の見直しを行いました。
また、校長が教科主任会、作業学習チーフ会、若手教員研修担当等のリーダーを指名し、業務推進案
の作成と進行管理を任せ、組織力の向上と人材育成を図っています。
■課題と改善の方策 ヒアリングの結果、教員は「授業改善のために児童・生徒の情報を共有する時間が
不足している」と感じています。特別支援学校の場合、児童・生徒の在校中に教員が教材研究や打ち合
わせを行う時間を確保することが難しいことから、今後は、限られた時間を有効に活用して教材研究や
ケース会議に専念できる時間を確保できるよう、現在行っている組織改善の実効性を検証していく必要
があります。
そのためには、企画調整会議が中心となって、各分掌や学部が行う業務の重複や諸会議を効率的に運
営する上での問題点等について把握・整理し、ICT機器の活用等も含めて、より合理的・効率的な組
織運営に向けた改善の方針と具体的な方策を企画・立案していくことが重要です。
診断ポイント⑦ 人材育成 若手教員の育成に重点を置いた授業改善
■取組内容と成果 採用後4年次までの若手教員を対象に、授業研究を年間72回実施し、そのうち26
回は学識経験者(大学教授等)を講師に招いて指導・助言を得ました。その際、全教員が授業研究の成
果を共有できるよう、講師からの助言等をまとめた「授業改善のポイント集」を作成・配付するなどの
工夫をしていることは、全校レベルで教員の授業力の向上を図る取組として評価できます。
■課題と改善の方策 今後は、若手教員の育成に重点を置いたOJT体制を整備することが課題です。具
体的には、研究主任(主任教諭)による授業観察や、教材開発に実績のある教員や指導主事等を講師と
して定期的な研修会を実施するなどの方法が考えられます。こうした研修会の開催にあたっては、若手
教員以外にも参加を呼びかけたり、地域の小・中学校にも公開したりするなどの工夫を行うことで成果
を共有し、教員の授業力向上につなげていくことが大切です。
診断ポイント⑧ 地域等との連携 特別支援教育のセンター的機能の拡充
■取組内容と成果 20年度は、通学区域内の6市2町の小・中学校等からの依頼に基づき、研修会への
講師の派遣(32回)
、教育相談への支援(5回)を行ったり、小・中学校の特別支援教育コーディネ
ーターとの連絡会(11回)を実施したりするなど、地域の特別支援教育の推進の資する支援を積極的
に行っています。
また、羽村特別支援学校の小・中学部に在籍する児童・生徒が、居住する地域の小・中学校を地域指
定校として副次的な籍を置く副籍制度は、147名中70名(48%)が利用しています。実施の内容
は、地域指定校の運動会参観や合唱発表会参加等の交流(直接交流)が5名、サポートフレンドによる
お便り交換や展覧会への出品等の交流(間接交流)が65名となっており、居住地における障害児の理
解推進に成果を上げています。
この他、19・20年度には、文部科学省指定の「共生社会を目指した障害者理解の促進共同研究校」
として、羽村市立松林小学校との共同研究に取り組みました。そこでは、障害のある児童と障害のない
児童がともに学ぶ共同学習のあり方に関する実践的な研究活動を進めました。
■課題と改善の方策 今後は、特別支援教育のセンター的機能の更なる充実が課題です。具体的には、羽
村特別支援学校における教育実践や研究活動の成果を、公開授業研究会の実施や指導事例集の作成・配
布等を通じて地域に発信することや、地域の小・中学校への講師派遣や教育相談支援等を継続的に行う
ことなどが考えられます。
また、地域の人材を学校の教育活動に積極的に活用することも課題です。例えば、高等部の部活動に
ついては、21年度に都教育委員会の「都立特別支援学校における地域との連携による部活動振興実施
校」に指定されたことを契機として、地域のスポーツクラブの人材を外部指導者として活用したり、都
立羽村高校との合同練習を企画したりするなど、児童・生徒の社会参加の可能性を伸長する地域交流の
一層の充実が期待されます。
- 147 -
№26 羽村特別支援学校
Ⅲ 経営診断結果
1 教育活動の充実(学習指導、生活指導、進路指導等)
○年間指導計画は適切に作成されています。
教育課程・学級編成・
指導計画
○個別指導計画の作成に当たっては、より児童・生徒
の発達段階や到達度に応じた具体的な目標や手立て
等を設定することが必要です。
3.3
個別指導計画
個別の教育支援計画
3.0
特別活動
○取組を進めている作業学習の改善のため、外部の専
門家からのアドバイスなどの導入が必要です。
2.5
○教材・教具の工夫など、わかりやすい授業づくりに
意欲的に取り組んでいます。
2.9
進路指導
○全教職員が連携し、高等部だけでなく小学部からの
授業づくり
3.3
一貫性のあるキャリア教育に取り組み始めました。
○一人通学や小学部からのキャリア教育などにおい
3.5
て、保護者の理解と協力を促進する働きかけの工夫
生活指導
が必要です。
2 危機管理(リスクマネジメント)体制の整備(災害・事故対応、保健・衛生管理、情報・物品管理等)
○事故対応のためのマニュアルが整備され、校外学習
の計画書なども改善されました。
災害や事故への対応
○関係機関との連携のもとで、日常的な連絡・情報交
出張・年休処理簿
研修・点検の実施
換体制を整備することが重要です。
3.3
3.8
スクールライフ
○一人通学について、不測の事態に備えた危機管理体
制を講じるとともに、日頃から児童・生徒に対する
3.4
通学指導など安全教育を推進することが必要です。
○教職員に対しては、
緊急時の管理職への迅速な報告、
4.0
会計事故防止
保健・衛生管理
3.3
日常的な安全点検など、日頃からの意識的な取組が
必要です。
3.2
○学校徴収金の取扱いについて、20年度中に課題を
検討したことで、21年度から教員の窓口一本化を
情報・物品等管理
図るなど、
会計事故防止の工夫に取り組んでいます。
3 合理的・効率的な組織編成・運営(学校経営、研究・研修、予算管理等)
○学校経営計画を実現するための具体的なプランが作
学校経営計画
経営企画室
の参画
成されるなど、計画的・組織的な学校経営を推進し
ています。
3.5
意思決定
3.1
○20年度からの組織改編、リーダーの指名など、校
長の働きかけが学校経営の改善に大きく寄与してい
3.4
ます。今後は、主幹・主任層が中心となって学校を
変えていくことが期待されます。
3.3
予算
3.2
2.7
○若手教員が多い中で、研修の回数や予算の確保に努
めていますが、今後は内容の充実を図るなど、より
活用度の高い研修の工夫が必要です。
3.1
研究・研修
校務分掌
○経営企画室も予算面などで学校経営の改善に寄与し
会議運営
ていますが、今後は校舎の改築も予定されているこ
とから、一層の経営参画が望まれます。
- 150 -
№26 羽村特別支援学校
4 保護者・地域・関係機関等との連携(保護者との連携、地域との連携、センター的機能等)
○特別支援教育コーディネーターが中心となり、地域
の特別支援教育の推進に積極的に貢献しています。
保護者との連携
○特別支援教育コーディネーターの校内での位置付
けや教員の理解推進を図る必要があります。
2.6
○副籍事業は、小・中学校の行事に参加するなど積極
学校運営
連絡協議会
2.6
3.0
的に活動が行われていますが、一層の地域交流が必
地域・関係機関
との連携
要です。
○関係機関との連携のために支援会議の実施を進め
ていく必要があります。また、保護者への個別指導
3.1
特別支援学校の
センター的機能
計画の周知と理解促進の工夫が必要です。
○諸教育活動等で、地域資源や人材の活用を推進する
必要があります。
○学校評価アンケートは適切に行われていますが、評
価が低かった項目を再アンケートするなど、改善状
況の把握を行うことも必要です。
(総合評価)
校長の学校経営計画に基づき、教育課程や指導計画の
教育活動の充実
作成、危機管理体制の整備などに積極的に取り組み、基
礎的な枠組みが出来上がったところです。今後は、主幹
3.1
・主任層の連携の強化を図るなど、枠組みを埋めていく
ための組織の強化と、内容の充実を図るための一層の工
夫が必要です。
羽村特別支援学校は、20年度の取組状況から様々な
保護者・地域等
との連携
2.8
3.5
危機管理
改善策を立案し、着々とその改善策を実行に移し始めた
ところです。今回の診断結果により、未だ改善に着手で
3.2
きていない事項を明らかにするとともに、21年度から
取り組み始めた改善策についても検証し、軌道修正が必
組織
要な点を見極めることが必要です。
Ⅳ 経営診断を受けての校長意見
児童・生徒の自立や社会参加を目指して、「羽村改善プラン」をもとに小学部・中学部・高等部が
一貫してキャリア教育の充実に取り組んでいる。今回の診断では、一人通学の推進など本校の改善意
欲と達成度について一定の評価をしていただけたと受け止めている。保護者や地域との連携など数値
の低かった点については、地域の人材と連携して作業学習の改善に取り組んでいく。今後は、学校経
営診断の手法を取り入れるなどして、教職員一体となって学校経営計画の達成を目指す。
(羽村特別支援学校長 山口 真佐子)
- 151 -
外部委員の意見[羽村特別支援学校]
小池
敏英
委員
(東京学芸大学 教授)
知的障害特別支援学校の高等部では、キャリア教育および企業就労の改善が大きな課題とされてい
ます。羽村特別支援学校は、小学部 81 名、中学部 72 名、高等部 190 名という児童・生徒数の多い学
校です。
「障害の重度重複化・多様化に対応した教育課程の累計化の推進」、
「自閉症等の障害特性に応
じた学習指導の充実」、「小学部からのキャリア教育」及び「企業就労率の向上」など、児童・生徒一
人一人の社会参加と自立を目指した取り組みを行っています。
私は、外部専門家として、私の専門である教育心理学、発達心理学の立場を通して、授業観察、な
らびに関連資料の検討を行いました。授業観察の結果、先生方は、効果的な協働体制をとって授業を
行っていることがわかりました。特に、子どもに応じた教材・教具などよく工夫し、子どもの注意・
興味を引きつけながら活発に授業展開しており、子どもの学習態度が能動的であることに強い印象を
受けました。また、学習集団の編成に関しても、障害の状態や、発達課題を踏まえた集団編成である
と思われます。しかしながら、指導内容の精選という観点からは、生活場面での力の形成につながる
ことに配慮された指導内容が少ないという印象を持ちました。また、個別指導計画の記載内容の一部
を閲覧した結果、児童・生徒の発達段階や到達度に応じた目標や手立ての設定が、不明確な計画を多
く認めました。NCプログラムによる発達評価の実施とその個別指導計画への反映、国語・算数(数
学)の授業時数の増加などの形で授業改善が取り組まれてきており、
「授業改善のポイント集」も作成
されましたが、指導内容の精選に十分生かしておらず、残念なところです。
この点については、学校運営連絡協議会による学校評価において、
「授業は、一人ひとりの課題にあ
った内容・方法で進められている」という設問や「障害特性などについて専門性のある指導を行って
いる」に対して、「思う」と答えた率は、中学部教員では、20%以下でした。また、
「個別指導計画の
内容について、課題や手立てなど、十分な説明をしている」という設問に対して、
「思う」と答えた率
は、高等部教員では、20%以下でした。
「児童・生徒の卒業後を視野に入れ、今必要な指導について十
分な話し合いがなされている」という設問に対して、
「思う」と答えた率は、小学部教員と、小学部保
護者、中学部保護者で、それぞれ 20%以下でした。小学部と中学部段階で、指導内容を卒後と直接関
係づけさせることが難しいのは事実です。しかし、指導内容が生活場面での力とどのように結びつく
か、それを踏まえて、指導課題や手立てを保護者の方に説明することは、個別指導計画の説明の改善
につながると思われます。特に、国語と算数(数学)の授業時数を増加させているため、これらの授
業課題と生活面での力との関連については、教員相互の間で合意形成を図ることが必要かと思われま
す。
学校全体として、
「一人通学」の実施を推進しており、キャリア教育の重視を目標として掲げていま
す。児童・生徒の発達段階を踏まえた指導内容や課題を、生活場面や作業学習場面で、生かした形で
設定することによって、保護者に対して「今、必要な指導についての説明」が可能になると考えられ、
今後の展開を期待します。
- 152 -
外部委員の意見[羽村特別支援学校]
箕輪
優子
委員
(横河電機株式会社)
【羽村特別支援学校の作業学習について】
東京都では比較的求人の多い「事務」や「清掃」の作業種目を導入し、
「清掃」においては外部の専
門家も活用していますので、他校の参考になる点が多いと思います。
「窯業」
「農園芸」
「縫製」
「木工」
の担当教員に作業種導入の理由をたずねると、いずれも「以前から取り組んでいるから」という回答
で、
「生徒はどのような仕事を希望しているか」をたずねると「進路担当ではないのでわからない」と
いう回答が殆どでした。進路担当と作業学習担当とは、より一層連携をとり、地域社会のニーズや生
徒の希望を充分に把握したうえで、作業種目の抜本的な見直しも視野にいれつつ、引き続き改善活動
に取り組んでいただきたいです。重度の生徒が多い「リサイクル班」をはじめ、生徒が“自分ででき
ること”を増やしていただくと、さらに可能性がひろがると思います。2008年度は「現状把握」
と「気づき」の年であり、その結果をもとに2009年度は多くの改善に取り組んでいるとのことで
した。校長、主幹には熱い思いがあり、方向性も一致していますので、全教職員が一致団結し、同じ
方向性で取り組んでいくことで、生徒にとっても、教職員にとってもより良い教育環境になることを
期待しています。
【学校経営診断の活用について】
学校経営診断は「診断すること」が目的ではなく、第三者の客観的な評価を参考に、対象校の教職
員一人ひとりがあらためて自校の教育環境を様々な視点で振り返り、より良い教育環境になるよう整
備していくことを期待するものです。
そのためには、学校長のリーダーシップのもと、全教職員が同じ目的意識をもち、組織的に取り組
むことが大切です。
全教職員は、経営診断の結果をもとに、それぞれの職務内容に関して
① 実情を充分に把握し、学校経営計画など(あるべき姿)との比較をして自己評価をし、課題(改
善すべき内容)とその対策を明確にする。
② 明確になった課題への対策について、いつまでに、誰が、どのように取り組むかなどの計画を、
短期、中期、長期にわけて計画をたてる。また、個人で取り組むこと、組織として取り組むこと、
他の関係機関等との連携により取り組むこと、なども具体的に計画をたてる。
③ 一人ひとりでたてた計画の内容について、複数の関係者で意見交換をすることで、より効果的な
改善活動につなげる。
④ 明確になった課題および計画を全教職員に明示し、学校全体で共通認識をする。
⑤ 改善活動の効果をみながら、必要に応じて随時計画の見直しをする。
というように、継続的なPDCAサイクルを実施することは必要不可欠です。そして、大きな成果
を生むためには、教職員一人ひとりが「学校経営診断結果を効果的に活用し、児童・生徒はもちろ
んのこと、教職員にとってもより良い教育環境にしていこう」という意識を持つことが重要です。
【診断時の留意点】
「チーム編成」について
診断項目が多岐にわたっているため、それぞれの専門家によるチームで診断をする必要があります。
「授業観察」について
1つの授業を始終観ることができ、
さらに、授業後に教員にヒアリングをできると良いと思います。
授業観察は、場合によっては、学校長・主幹・主任のヒアリングとは別の日程にするなどの工夫も必
要ではないでしょうか。
また、診断するメンバーは、授業観察の日程が診断対象の翌年度である(前年度の取り組みを診断
する)ことを留意する必要があります。
「学校経営診断ヒアリング」について
今回実施したように、専門分野ごとに少数(2~3人)のメンバーで構成し、質疑応答の時間を十
分に確保する必要があります。また、質疑応答時は、書記担当の方を配置していただけると良いと思
います。
「評価」の仕方について
詳細な診断項目に対して大きなくくりで評価をするため、採点が難しかったです。診断項目ごとに
点数をつけ、その理由も明記するようにした方が、診断チームによる診断結果調整協議や、対象校へ
のフィードバックもし易いのではないでしょうか。
- 153 -
(用語解説) ※( )は初出ページ
■ 個別指導計画(P.132)
幼児・児童・生徒の障害に応じたこめ細かな指導を行うために、一人一人の障害の状態や発達段階等の把握に基づき、指導目標
や指導内容、指導の手だて等を示した指導計画のこと。
■ 学習指導案(P.132)
1単位時間分の具体的な指導の目標、内容、順序、方法、使用教材、指導上の留意事項等を定めた計画のこと。
■ 理学療法士(P.132)
医師の処方に基づき、身体に障害のある者に対して、具体的な活動や作業を行わせるなどして、日常生活能力や社会適応能力
の向上や回復を図ることを行う専門家のこと。
■ 作業療法士(P.132)
医師の指示の下で、身体や精神に障害のある又はそれが予測される者に対して、機能の回復や維持、発達を促して応用的動作
能力や社会的適応能力の回復を図るため、手芸や工芸などの作業を行わせる専門家のこと。
■ キャリア教育(P.132)
児童・生徒一人一人の勤労観・職業観を育てる教育のこと。
■ 安全教育プログラム(P.133)
すべての子供たちに、危険を予測し回避する能力や他者や社会の安全に貢献できる資質・能力を身に付けさせる安全教育を推
進するため、全国初の総合的な指導資料として、都教育委員会で作成したもの。主な特色といて、①子供の発達段階に応じた具体
的な指導内容を明確にするため、子供たちが身に付ける「必ず指導する基本的事項」を示した。②安全教育の3領域(生活安全・交
通安全・災害安全)を系統的・計画的に進めるため、3領域を総合的に扱った年間指導計画を学校種ごとに示した。③指導方法の
改善を図り、必ず指導する基本的な事項を確実に身に付けることができるよう、教員が一声かける「日常的な安全指導」、「定期的な
安全指導」及び「特設する安全学習」を相互に関連させた安全教育の指導方法を示した。
■ 災害弱者(P.133)
災害時、次の条件に一つでも当てはまる人を指す(平成 3 年度版防災白書)。
・自分の身に危険が差し迫った時、それを察知する能力がない、または困難な者
・自分の身に危険が差し迫った時、それを察知しても適切な行動をとることができない、または困難な者
・危険を知らせる情報を受け取ることができない、または困難な者
・危険を知らせる情報を受け取ることができても、それに対して適切な行動をとることができない、又は困難な者
具体的には、障害者、傷病者、高齢者、妊婦、乳幼児などが挙げられる。防災行政上は、災害時要援護者と言う。
■ 個別の教育支援計画(P.133)
教育のみならず、保健・医療、福祉、労働等の関係機関との連携に基づき、長期的な視点に立って障害のある子供のライフステ
ージに応じた適時・適切な支援を実現するための計画のこと。
■ 経営企画室(P.133)
平成18年4月から、都立学校の事務室を、校長の学校経営を支援する経営企画型事務室として、経営企画機能を充実及び強化
して「経営企画室」とした。
■ 企業就労(P.134)
一般の事業所(会社や工場、商店等)に就労すること。一般就労という場合もある。
■ 授産施設(P.134)
重荷軽作業を用意して作業訓練を行い、毎月、工賃(給料)を支給している施設である。就労可能な者や希望する者には、一般
就労(企業就労)を目指した作業訓練を行っている。また、作業だけでなく、創作活動や生活力の向上・余暇活動にも積極的に取り
組んでいる施設もある。
■ 医療的ケア(P.134)
たんの吸引、経管栄養、導尿など、日常的に行う医療的行為のこと。
■ OJT(P.135)
On the Job Trainingの略で、日常的な職務を通して、必要な知識や技能、意欲、態度などを、意識的、計画的、継続的に高
めていくこと。都教育委員会では、平成20年10月に「東京都教員人材育成方針」を策定し、学校内における人材育成の取組として、
「OJTガイドライン~学校におけるOJTの実践~」を作成して、OJTの推進を図っている。
■ 企画調整会議(P.135)
校長の補助機関として、校長の学校運営方針に基づき、学校全体の業務に関する企画立案及び連絡調整、各分掌組織間の連
絡調整、職員会議における議題の整理、その他校長が必要と認める事項を行い、円滑かつ効果的な学校運営を推進するものとす
る。管理運営規定に定められている。
■ ICT機器(P.135)
ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)に使用する機器のこと。都教育委員会では、平成20年度に都
立学校ICT計画を策定し、平成21年度末までに都立学校全校にLAN配線を整備するとともに、ノート型パソコン、プロジェクター等
のICT機器を設置する。
- 154 -
■ センター的機能(P.135)
学校教育法の一部改正により、特別支援学校が、地域の特別支援教育のセンター的機能をもち、小・中学校に在籍する障害のあ
る児童・生徒等の教育について助言・援助をする。
■ 共生社会(P.135)
障害の有無に関わらず、誰もが互いに人格と個性を尊重し支え合う我が国が目指すべき社会のこと。障害の有無やその他の
個々の違いを認識しつつ、様々な人々が生き生きと活躍できる社会のこと。
■ 学 校 経 営 計 画 (P.138)
校長が、学校のビジョンを明らかにし、中期的目標をたて、各年度における学習指導、生活指導、進路指導、学校運営等の教育
活動の目標と、これを達成するための具体的方策及び数値目標を示すもの。学校経営計画は、各学校のホームページなどにより
都民に広く公表し、説明責任を果たすとともに、中学校生徒の進路選択や地域社会とのつながりに寄与する。
■ 支援会議(P.139)
児童・生徒が在籍する特別支援学校と、当該の児童・生徒が受けている支援の関係機関や関係者との間で支援内容について確
認し、支援を実施するための話し合いのこと。
■ 発達検査(P.144)
主に、幼児・児童・生徒の発達の度合いを調べ、発達の状態に応じた教育をするために行う検査。知能検査、性格検査などととも
に、心理検査の一種である。
■ 社会性の学習(P.144)
都立知的障害特別支援学校小・中学部において、領域・教科を合わせた指導の形態として位置付けられた自閉症の障害特性に
応じた教育課程のこと。東京都で独自に開発した教育課程である。
■ 関東ゆうあいソフトボール大会(P.145)
知的障害者を対象としたソフトボールの関東大会で、社会人の部と高校生の部がある。
■ 就業体験(P.146)
児童・生徒が自分にとってふさわしい進路を主体的に選択し、その後の職業生活の中で自己実現を図るために必要な知識・技
能・態度・価値観などを醸成するために、在学中に行う職業体験のこと。
■ 福祉就労(P.146)
企業就労(一般就労)することが難しい障害者の働く場として、「授産施設」や「作業所」がある。これを「企業就労(一般就労)」に対
して「福祉就労」という。
■ 私費会計(P.146)
学校の教育活動に必要な経費で、生徒が個人負担する経費のこと。
■ 就学奨励費(P.146)
特別支援学校に在籍する幼児・児童・生徒の保護者等が負担する経費の一部又は全部を、世帯の経済状況に応じて補助する制
度のこと。
■ 特別支援教育コーディネーター(P.147)
学校内の関係者や福祉・医療等の関係機関や専門家等との連絡調整及び保護者に対する学校の窓口として、校内における特
別支援教育に関するコーディネーター的な役割を担う者。校務分掌に位置付けられており、「特別支援教育コーディネーター」とし
て学校長が指名する。
■ サポートフレンド(P.147)
副籍制度により指定された地域指定校との間接的な交流として実施している「学校便り」や「学年便り」の交換に際して、そのお便
りを届けてくれる地域指定校に在籍する児童・生徒のこと。羽村特別支援学校では、「サポートフレンド」と称している。
■ 学校徴収金(P.150)
学校の教育活動に必要な経費で、生徒が個人負担する経費(私費)のうち、学校が各生徒から徴収して管理する経費。具体的に
は、修学旅行や教材費の購入に必要な経費を積み立てる積立金会計、給食会計、生徒会会計、PTA会計などがある。
- 155 -
資
料
資料1
平成21年度
第1
学校経営診断
実施要綱
診断の目的
学校経営診断は、東京都教育委員会が、都立学校の教育活動を評価・検証し、その結果得られた
成果及び課題を基に個々の学校に対して適切な支援・指導を行い、魅力的な学校づくりに資するこ
とを目的として行う。
第2
診断対象校
平成21年度の学校経営診断は、重点支援校指定2年目校を含めた高等学校24校程度を対象と
して実施する。また、特別支援学校2校程度を対象として試行実施する。なお、対象校の選定は、
別紙「平成21年度学校経営診断
第3
実施対象校の選定について」に基づいて行う。
診断の実施体制
1
学校経営診断は、都立学校経営支援委員会が実施する。
2
都立学校経営支援委員会の下に、学校経営診断部会を設置する。
3
学校経営診断部会は、診断の実施方法や診断項目、診断スケジュールの調整及び診断書の作
成を行う。
4
学校経営診断部会に、診断チームを編成する。診断チームは学校経営支援センターの支援チ
ームを中心として、所管の学校の診断を行う。ただし、特別支援学校に対する診断チームの編
成は、別に定める。
5
学校経営診断の専門性と客観性を担保するため、学校経営診断部会には、外部の有識者を加
える。
第4
診断方法
学校経営診断は、各学校から提出される自己評価に関する書面、各学校へのヒアリング及び授業
参観等に基づいて実施する。
1 診断方針及び診断ポイントの決定
高等学校については、学校の自己評価等による「平成20年度学校経営報告」、「平成20年
度学校運営連絡協議会報告」、「平成21年度学校経営計画」等を基に診断方針及び診断ポイン
トを決定する。重点支援指定2年目校については、これに「平成20年度重点支援校改革推進状
況資料」及び重点支援校に対する東京都教育委員会の支援策を加えるものとする。なお、学校経
営計画に掲げた項目以外に、学校の特色を打ち出している取組内容(環境への取組、地域との連
携等)があれば、積極的に診断内容に含めるとともに、成果が顕著ではなくても積極的な取組内
容については、プロセス評価の観点で診断を行う。
特別支援学校については、高等学校に準じて診断方針及びポイントを定める。
2
診断方針及び診断ポイントの提示
学校経営診断部会は、ヒアリング前に各学校に対して診断方針及び診断ポイントを提示する。
3 診断項目
(1)
活動の成果
ア
目標の設定は適切であったか。
イ
数値目標は達成されたか。
(2)
学校経営の組織体制
ア
組織が適切に機能しているか。
イ
活動状況や問題点を把握し、改善に結びつけるための組織が機能しているか。
- 158 -
資料1
(3)
ア
(4)
活動の内容及び方法
活動の内容及び方法は、目標を達成するための方策として適切か。
設置者による支援
ア
設置者の支援策を活用できたか。
イ
設置者の支援は有効であったか。
4 ヒアリング及び授業参観等
各学校の自己評価に関する書面の内容の確認及び教育活動の実施状況を把握するため、対象校ご
との診断項目に基づいてヒアリング及び授業参観等を行う。
5 学校経営診断案の作成
対象校ごとのヒアリング等を基に、学校経営診断書案を作成し、対象校に内示する。
第5
意見の申立て
学校経営診断のプロセスの透明性及び結果の公正性を確保するため、対象校による診断結果に対
する意見申立ての機会を設ける。意見申立てがあった事項については、学校経営診断部会において
再度審議を行う。
第6
学校経営診断書の作成
学校経営診断書は、対象校からの意見の申立て等を踏まえて作成する。診断書には、対象校の意
見申立て内容を記載する。
第7
学校経営診断書の公表
学校経営診断書は、各学校に提示するとともに、東京都教育委員会のホームページ等を通じて広
く都民に公表する。
第8
その他
その他学校経営診断に関する必要な事項は別に定める。
附則
この要綱は平成21年3月6日から施行する。
- 159 -
資料2
都立学校経営支援委員会
委員名簿
平成21年9月10日現在
区
分
委員長
職
務
名
氏
名
教育庁次長
松田
芳和
都立学校教育部長
森口
純
委員
参事(教育政策担当)
中島
毅
委員
参事(特別支援教育推進担当)
前田
哲
委員
人事部長
直原
裕
委員
教職員服務・特命担当部長
岡﨑
義隆
委員
参事(人事企画担当)
高畑
崇久
委員
指導部長
高野
敬三
委員
地域教育支援部長
松山
英幸
委員
教職員研修センター企画部長
高橋
貞美
委員
東部学校経営支援センター所長
廣瀬
丈久
委員
中部学校経営支援センター所長
舟橋
淳
西部学校経営支援センター所長
桐山
靖彦
副委員長
委員
- 160 -
資料3
都立学校経営支援委員会 幹事会名簿
平成21年9月10日現在
職
務
名
氏
《幹事長》
都立学校教育部高等学校教育課長
《副幹事長》
都立学校教育部特別支援教育課長
総務部教育政策室予算担当課長
名
加藤
裕之
野原
永子
浅野
直樹
総務部教育政策室副参事(企画担当)
小笠原
総務部副参事(人事担当)
小林
雄一
千佳子
都立学校教育部学校経営指導担当課長
古川
誠
都立学校教育部副参事(学校経営指導担当)
藤井
常光
人事部人事計画課長
奥野
正幸
人事部職員課長
初宿
和夫
人事部勤労課長
柴田
義之
人事部副参事(教職員任用担当)
鈴木
正一
指導部管理課長
黒田
則明
指導部指導企画課長
金子
一彦
指導部副参事(特別支援学校教育担当)
太田
裕子
指導部高等学校教育指導課長
宮本
久也
東部学校経営支援センター経営支援室長
月山
良明
東部学校経営支援センター支所長兼経営支援室長
森田
英二
中部学校経営支援センター経営支援室長
北内
康夫
中部学校経営支援センター支所長兼経営支援室長
小山
利一
西部学校経営支援センター経営支援室長
鈴木
友幸
西部学校経営支援センター支所長兼経営支援室長
倉田
朋保
- 161 -
資料4 都立学校経営支援委員会 学校経営診断部会名簿
所属・役職
区分
氏 名
玉川大学教職大学院教授
小 松
首都大学東京都市教養学部経営学系教授
桑 田
株式会社ナカチ公会計研究所代表取締役
専
門 安田教育研究所副代表
委 文教大学教育学部教授
員
東京学芸大学教育学部教授
区分
平成21年9月10日現在
郁 夫
耕 太 郎
鵜 川
正 樹
平
松
享
平
沢
茂
小 池
敏 英
東洋大学講師
飯 野
順 子
横河電機株式会社
箕 輪
優 子
所属・役職
氏 名
都立学校教育部学校経営指導担当課長
古
都立学校教育部特別支援教育課長
野 原
永 子
都立学校教育部副参事(学校経営指導担当)
藤 井
常 光
都立学校教育部特別支援教育課統括指導主事
山
都立学校教育部高等学校教育課学校経営指導担当係長(課長補佐)
水 野
誠 悟
都立学校教育部高等学校教育課学校経営指導担当主事
大城戸
三奈子
東部学校経営支援センター学校経営支援担当副参事
小 林
洋 司
東部学校経営支援センター統括学校経営支援主事
金 田
裕 治
東部学校経営支援センター学校経営支援主事
木 村
利 男
東部学校経営支援センター学校経営支援主事
田 川
健 太
東部学校経営支援センター経営支援担当係長
松 坂
秀 美
東部学校経営支援センター学校経営支援担当副参事
戸 田
弘 美
東部学校経営支援センター統括学校経営支援主事
教
育 東部学校経営支援センター学校経営支援主事
庁
東部学校経営支援センター学校経営支援主事
関
係 東部学校経営支援センター経営支援担当係長(課長補佐)
者
東部学校経営支援センター支所学校経営支援担当副参事
武
川
本
優
内
中 井
石
誠
彰
良 和
野
隆
小 熊
裕 幸
井 上
正 直
東部学校経営支援センター支所統括学校経営支援主事
善 本
久 子
東部学校経営支援センター支所学校経営支援主事
和 田
慎 也
東部学校経営支援センター支所学校経営支援主事
鈴 木
康 司
東部学校経営支援センター支所経営支援担当係長(課長補佐)
阿 久 津 友 子
東部学校経営支援センター支所学校経営支援担当副参事
大 井
東部学校経営支援センター支所統括学校経営支援主事
中
東部学校経営支援センター支所学校経営支援主事
竹 内
東部学校経営支援センター支所学校経営支援主事
堀
東部学校経営支援センター支所経営支援担当係長(課長補佐)
種 岡
中部学校経営支援センター学校経営支援担当副参事
上
中部学校経営支援センター統括学校経営支援主事
野 村
公 郎
中部学校経営支援センター学校経営支援主事
原 田
能 成
-162-
山
川
村
俊 博
博
之
藤 夫
勝
史
恵 子
肇
中部学校経営支援センター学校経営支援主事
関 根
中部学校経営支援センター経営支援担当係長
岩
崎
裕
中部学校経営支援センター経営支援担当副参事
柴
田
哲
中部学校経営支援センター統括学校経営支援主事
堀 江
中部学校経営支援センター学校経営支援主事
山 本
中部学校経営支援センター学校経営支援主事
山 崎
中部学校経営支援センター経営支援担当係長(課長補佐)
岡 田
中部学校経営支援センター経営支援担当係長
吉 川
幸 治
中部学校経営支援センター経営支援担当係長
高 橋
聡 美
中部学校経営支援センター学校経営支援担当副参事
引 間
宗 人
中部学校経営支援センター支所統括学校経営支援主事
大
中部学校経営支援センター支所学校経営支援主事
加 藤
瑞 樹
中部学校経営支援センター支所学校経営支援主事
深 谷
純 一
中部学校経営支援センター支所経営支援担当係長(課長補佐)
木 村
信 一
中部学校経営支援センター支所学校経営支援担当副参事
北
中部学校経営支援センター支所統括学校経営支援主事
林
中部学校経営支援センター支所学校経営支援主事
川 口
中部学校経営支援センター支所学校経営支援主事
教
育 中部学校経営支援センター支所経営支援担当係長(課長補佐)
庁
西部学校経営支援センター学校経営支援担当副参事
関
係 西部学校経営支援センター統括学校経営支援主事
者
西部学校経営支援センター学校経営支援主事
黒
和 広
浩 子
一 之 介
秀 樹
誠 一 郎
場
充
林
敬
修
元 三
後
佐 藤
茂
真 弓
芝
尾
仁
諏
訪
肇
森 田
正 男
西部学校経営支援センター学校経営支援主事
伴
西部学校経営支援センター経営支援担当係長
加 藤
西部学校経営支援センター学校経営支援担当副参事
松 野 下
健
西部学校経営支援センター統括学校経営支援主事
荻
勉
西部学校経営支援センター学校経営支援主事
南
西部学校経営支援センター学校経営支援主事
山
西部学校経営支援センター経営支援担当係長(課長補佐)
土 子
西部学校経営支援センター支所学校経営支援担当副参事
杉
西部学校経営支援センター支所統括学校経営支援主事
藤 野
泰 郎
西部学校経営支援センター支所学校経営支援主事
長 嶋
浩 一
西部学校経営支援センター支所学校経営支援主事
金
西部学校経営支援センター支所経営支援担当係長
恩 田
西部学校経営支援センター支所学校経営支援担当副参事
大 田 原
西部学校経営支援センター支所統括学校経営支援主事
高
西部学校経営支援センター支所学校経営支援主事
河 野
西部学校経営支援センター支所学校経営支援主事
渡
西部学校経営支援センター支所経営支援担当係長(課長補佐)
原
-163-
光
明
敬 一
野
和
本
男
勇
由 利 子
野
学
子
猛
政 宏
弘 幸
橋
豊
浩 二
邉
誠
隆
一
資料5
年度
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
最近の都における主な教育改革
学校経営
人事
・都立高校改革推進計画
(第二次実施計画)
・全日制の学力検査問題の自校作成
指導内容
・国旗国歌実施通達
・道徳授業地区公開講座
・人事考課の導入
・教育管理職選考の改正
・民間人校長の導入
・教員採用候補者選考へ社会人特別選考
枠の設置
・指導力不足等教員の対応→ステップアップ研修
・学校運営連絡協議会
・進学指導重点校の指定
・教頭複数制の導入
・通年の授業公開(実施)
・教育管理職希望降任申請制度導入
・基礎基本学力調査
・懲戒処分基準の公表
・都立高校改革推進計画(新たな実施計画) ・教員の公募制人事の導入
・学区の撤廃
・都立学校バランスシートの試行作成
・重点支援校の指定
・都立学校経営支援委員会の設置
・国旗国歌適正実施通達
・学校経営計画の策定→都立学校の自己評価 ・主幹制度
・教員人事異動要綱の改定
・生徒による授業評価(試行)
・自律経営推進予算制度の導入
・学力向上のための調査
・心身障害教育改善検討委員会報告
・新しい教員研修体系確立
・耐震補強第二次実施計画の策定
10年経験者研修、キャリアプラン作成
・東京教師養成塾の設置
・教頭を副校長に名称変更
・実業意欲向上プログラム
・東京未来塾の設置
・教育管理職降任制度導入
・学校経営診断の実施
・セーフティー教室
・教育管理職の異動方針策定
・都立学校バランスシートの全校作成
・授業力向上の検討報告
・教育職員職務実績記録導入
・東京都特別支援教育推進計画策定
・生徒による授業評価全校実施(高校)
・校長任用審査の改正
・健康づくり推進計画策定
・授業力向上実施計画策定
・都立高等専門学校改革検討委員会報告
・都立学校の自己評価指針の策定
・進路指導研修会の実施
・都立学校経営支援センター開設準備室 ・校長選考の改正
・日本の伝統・文化理解教育の推進
設置
・普通昇給の延伸(告知)
・都立高校におけるキャリア教育及び奉
仕体験活動の推進
・業績評価結果の一部開示(非常勤職員含む)
・健康づくりフォーラムの実施
・全都立学校の進学指導の充実に向けて ・業績評価結果の一部開示に係る苦情相 ・中学校の職場体験
(進学指導重点校の取組状況報告)
談の実施
・授業力向上に向けた取組(2,3年次授業研究等)
・東京教師道場の設置
・教員任用制度在り方検討委員会報告
・東京都学校経営支援センターの開設
・日本の伝統文化に関する教育推進会議
・懲戒処分基準の見直し
・事務室を経営企画室に変更
報告
・教員の職の在り方検討委員会報告
・学校経営診断の対象拡大
・課外活動振興協議会の設置
・都立高校教育環境改善検討委員会報告
・公立学校における食育に関する検討委
員会報告
・都立学校における食育に関する指針策定
・特別支援教育体制・副籍モデル事業等
最終報告
・懲戒処分基準の見直し
・部活動進行基本計画の策定
・進学指導特別推進校の指定
・東京都設定教科・科目「奉仕」の必修化
・新しいタイプの高校における成果検討
委員会報告
・ものづくり教育推進検討委員会報告
・東京都特別支援教育推進計画 第二次
実施計画
・都立学校の自己評価指針の改訂
・教育管理職等の任用・育成のあり方検 ・東京都公立学校教職員の研修制度検討
委員会報告
・都立学校ICT計画の策定
討委員会最終報告
・東京都教員人材育成基本方針、OJT ・東京都公立学校教員研修体系の再編・
整備に係る基本方針の策定
ガイドライン、校長・副校長等育成指
針の策定
・児童・生徒のつまずきを防ぐ指導基準
(東京ミニマム)の策定
・学校経営シート(試行)
・統括校長・主任教諭の任用開始
・生活指導改善検討委員会報告
・特別支援学校学校経営診断(試行)
・学校問題解決サポートセンター開設
- 164 -
資料6 都立学校における学校経営診断に関するPDCAサイクル
Plan
学校経営計画の策定
公表
学校経営 4月
計画
学校経営計画による組織目標設定
分掌ごとの組織目標設定
、
次
年
度
に
個人の目標設定
Do
教育活動の実施
、
発
展
的
に
改
善
し
学校経営計画(組織目標)による
目標の管理
、
分掌ごとの組織目標と実践
個人の目標と実践
Check
。
自
律
的
な
経
営
を
促
進
す
る
個
別
の
教
育
活
動
な
ど
学校の自己評価
高く評価された
項目
低く評価された
項目
更に伸ばすべ
き取組
新たな課題
短
い
ス
パ
ン
で
の
P
D
C
A
サ
イ
ク
ル
1
年
間
の
P
公表
D
学校経営
診断書
C
A
サ
《その他の評価》
・生徒による授業
評価(都立高校)
※1
・学校運営連絡協
議会のアンケート
※2
等
イ
ク
ル
公表
学校経営報告
学校経営
報告
Action
3月
(確定は5月)
学校の自己評価
次年度ヘ向けた改善
発展
新規導入
※1 生徒による授業評価
平成16年度より、全都立高校において、生徒による授業評価を実施し、評価を集計・分析した結果に
基づいた校内研修を実施している。
※2 学校運営連絡協議会のアンケート
平成13年度より、全都立学校において、学校運営連絡協議会を設置し、保護者・生徒・地域住民等を
対象としたアンケートを実施し、その結果に基づいた評価活動を実施している。
-165-
9月
学校経営支援センター
経営支援顧問の意見
東部学校経営支援センター 経営支援顧問
松﨑 昭雄 氏 (森永製菓株式会社 顧問)
東京都立高等学校を訪問して感じたこと、及び私の意見
1 感じたこと
(1) 評価できる点
z 校長先生に経営者という意識が出てきた。
z 学校毎の役割が明確になっている。
z 各学校とも役割を理解し、特長を活かして教育・経営に真剣に取組んでいる。
z 中高一貫校・チャレンジスクール・エンカレッジスクール・3部制の高校等新しい試みが
定着してきた。
z 部活動、特に運動部が活発で体力・活力・技術の習得・チームワークという面でも勉強に
良い影響を与えていると感じる。
z
各校とも礼儀、規律にも気を配っている。
z
東京都学校経営支援センターがきめ細かい計画の下に学校を支援している役割は大き
い。
(2) 改善するべき点
z 経営がまだ本当には理解できていない。校長先生は会社でいえば社長。まだまだ十分に
役割を果たしていない。
z 校長先生の任期が2~3年程度では本当の経営はできない。最低5年は必要。
z 優秀な校長先生が定年で退職するのは東京都にとって損害。
z 民間から経営のできる校長先生をもっと積極的に採用するべき。
z 学校の予算を効率的・効果的に使うのも校長先生の責任。
z 経営を数字でしっかり管理できる仕組みを作ることが重要。
z 都立高校は良いことを実行しているのに、世間ではあまり知られていない。学校の良い
点を大いにPRをするべき。
z 学校は都の予算を少しでも多く確保しようとしているが、まだまだ予算を効率的・合理的
に使う余地はある。
z まだ書類が多い。一層のICT化を進めるべき。
2
私の意見
z 経営管理表を作成して目標を明確にして実績をフォローするべき。
① 社会に対する貢献度。卒業生・進学先の学校・就職先企業等のアンケートで評価する。卒
業の翌年と 10 年後に行う。
② 一人当たりコスト。実績は行政コスト計算書の生徒一人当たりコストとする。
③ この2つの数字を組み合わせて総合評価数値を決定する。
z 校長先生が先生達を処遇するための職位であってはならない。あくまでも、学校を良く
し世の中のためになる人材を送り出すことが校長先生の仕事。校長先生は少なくても5
年は一つの学校で務めるべき。そのために校長先生になれる人数は減るのはやむをえな
い。
z 校長先生の報酬は他の先生と比べて大幅に高額にする。ただし、成績の上がらない校長
先生には退職してもらう(会社の社長と同じ)
。
z 保護者・卒業生・地域住民で後援会を作って基金を集めてその運用益を学校に寄付する。
投資組合を作るのも一つの方法。
3
今後の活動についての提言
学校経営支援センターの活動を東京都の中学、小学校に広げる。更に全国に広げる。
そのためにも新聞雑誌テレビでPRをする。
- 169 -
中部学校経営支援センター 経営支援顧問
同前 雅弘 氏 (株式会社大和証券グループ本社 顧問)
ここ3年間強の学校経営改革と支援センター制度導入の成果は着実に実績を上げてきております。
校長主導による学校経営に対する確固たる自信がその言動に伺え、また、学校要覧、学校案内、ホー
ムページ等の内容の充実と共に夫々学校目標達成への全校的な意欲も高まり始めていることを実感
いたしております。
以下、私が常に問題意識を持ち、学校経営の今後の課題と思っております事につき述べてみます。
1)ICTシステムの導入と対策
来年度から、ほとんどの教員にパソコンが配布されること及び各教室にパソコン及びスクリーン
が設置されると聞きました。業務能率の改善、合理化とICT利用授業の推進の為ですが、この対
応は如何に素早く実用化が出来るか否かが経営最大の課題だと思います。あらゆる人的、物的、財
務的能力と時間を集中的に投入して対策、準備を講ずるべきと思います。一昨年、英国で高校のI
CT化モデル校を訪問した時の業務、授業の実際は既に驚異的なレベルに達し、特にICTのシス
テムを活用しての教員相互の授業教材、授業内容の公開、共有、レベルルアップへのシステム化に
素晴らしい成果を挙げておりました。
2)学校の知的資産の認識、管理、活用と組織化
情報化、グローバル化の進展の中で、企業の利潤向上に占める知的資産の重要度は益々高まり、
所謂、企業価値に占める知的資産価値の比率は既に 8 割を超えており、また、企業の投資総額に占
める研究開発、人材投資、ブランド関連投資等の知的資産関連投資も既に8割を超えております。
学校はまさしく知的資産の宝庫であり、素晴らしい伝統、校風、信頼の基礎的資産の上に教育力、
指導力のノウハウ、経験持つ人的資産、保護者、同窓会、地域に代表される対外関連資産等々とま
さしく知的資産そのものです。これからの学校経営はその知的資産の活性化と組織化が問われてお
ります。知的資産経営とはまず学校の内外にある知的実体を把握、認識、評価し、経営のミッショ
ン、戦略に沿って各分掌、学年、委員会の中で何を如何に組織の知的資産として活用、活性化させ
るべきかを検討することです。そして、その努力、経験、実績は教職員各自の個人資産として蓄積、
評価されると共に夫々のグループの知的資産として蓄積、評価され、モデル化され、所謂学校ブラ
ンドにまで発展、存続されることが大切と思います。
3)教育力、授業力の更なる向上と分掌組織
校長及び幹部との経営推進検討会の中で、未だ一般教員の参加意識が充分でないことの問題提起
があります。もっと、活発に現場からの前向きのアイディアや企画発案、意見、感想が出てきて欲
しいとの期待が出されます。これは経営の意思の徹底と相互理解の問題ではありますが、同時に又、
謙虚に考えれば、教員各位の自己実現意欲、本来的な資質の生かされ方との間に相互に高めあい、
協調しあえる有効な組織、即ち、分掌、学年、教科の組織編成の問題でもあろうと考えます。教育
力、授業力の向上は、生徒たちの個性、感性、才能に一番近いところでの教科、担任の教員を底辺
とするグループから目指して欲しいと思います。各校長の夫々経営の意思のもと、最適の主幹、主
任により組織化された個人及びグループがお互いに切磋琢磨し、研修の実を上げ、その共有された
現場感覚から、各分掌、委員会の担当を受け持ってゆける組織はどうあるべきか?縦糸、横糸の組
み合わせで織られる妙なる織物の仕上がりは組織のあり方と同時のその運営のやり方にも関わっ
てくるものと思います。
4)経営企画室の現状と活性化の問題
以下のことが、今後の検討課題だと思います。
a)企画調整会議の議事録及び各重要会議の議事録はその相互の整合性、公平性、一貫性の立場
から記録、報告、承認、保管に責任を持つこと。
b)予算調整会議の運営や予算の設定、承認、実行だけでなく、予算の執行のチェック、検証、
監査まで各関係部署とタイアップして柔軟性、効率性の確保に協力すること。
c)ICTシステムの採用による業務関連事務の効率化を中心となって企画、推進すること。
d)教員部門との協働性を高めるため、業務、財務能力を発揮し、積極的企画を提案、協力、サ
ポートすること。
e)経営機能の更なるレベルアップの為、民間の専門家を含め人材を投入し、校長の財務、総務、
対外業務の経営企画ブレーンとしての専門性を高めること
- 170 -
西部学校経営支援センター 経営支援顧問
横山 善太 氏 (株式会社JALUX 特別顧問)
学校運営全般については、校長の指導力を充実すべく、体制(管理職制度の進展)、環境(校長の
サポート体制、意見聴取等)作りに努力されてきており、改善しつつあると思う。
然し、本質的な部分の課題が多くて取り残されている状況にあり、今後も改革を継続すべきである。
課題とは、次の通りである。
① 学校改革の考え方が産業社会を模倣するが如き「市場原理競争社会型」発想が見受けられるが、
学校運営には全く馴染むものではない。
改革派学校教育に於ける生徒の学力、人間力の向上を如何に前進させていくかと云うことであ
り「経営」ではない。
② 生徒の指導を担う教員の質と志の向上を図る仕組みが不十分であると思う。教員の多くは自ら
もと
望んで教職の仕事に携わっており、その原点に悖 る教員は殆ど無いと思うが、教育に取り組む考
え方は多様であるとの認識を持つべきだと思う。
なぞら
(普通の教員一般は、学校運営を民間経営に 准 えることに抵抗感がある、と思う)
③ 学校の組織運営は難しいことではあるが、たとえば教科別等ラインの括りを強化しない限り、
企画調整会議(名称変更すべきと思うが…)と職員会議の併存は解消されない。
④ 校長の官房組織である「経営企画室」(名称変更すべし→例えば校長室)が「事務室」から脱
却するには一般管理業務に偏らず、教育業務もイニシアティブを執れるようにすること(教育系
スタッフの配置も必要)
⑤ 校長の権限集約もある程度必要であるが、教員全員の意見を良く聴取の上判断すること。現状
はやや独断専行的であり、一方で校長の負担も重い(②③項関連)
⑥ 本庁→支援センター→学校(長)→学校内の関係ラインの意見、判断の流れはトップダウン事
実が多く、教育現場からのボトムアップ意見に風通し良くすべきと思う。
⑦ 教育そのものの課題は「教員の授業力の向上」と「生徒の人間力の向上」に有ると思う。そこ
でこの二点については以下に詳述することとした。
「授業力の向上」
1
授業指導力の向上は教育が取組む基本であり、現場の教室も往時に比べれば一方通行方型は
少なく、生徒の理解を促しつつ対応している例が多い。各学校各教科に授業力に優れた教員が
配置されている状況に有るが、教員の授業力向上は主として研修で学ぶことが通例の様である。
むしろ学校内で授業力の優れた教員によるOJTを研修以上に積極的に実施し、そして当該教
員を指導教員として担当する教科の代表存在に据えれば、適材適所配置となり組織運営にも役
立つのではないかと思う。
2 授業力の向上及び生徒の総合力向上のために新たな教科として「ゼミナール」を設けること
を検討してはどうかと思う。一部の学校で自由課題として取組んでいる例も有り、現行時間割
の中で取り組めるのではないかと思う。
例えば自然科学系では「気候変動」、「環境問題」、「資源問題」等、社会科学系では「民主主
義の今後」「経済システムの行方」等々。2~3年掛けて取り組む課題をテーマとする。そし
まと
て高校生なりの研究を行い議論することにより、自分の考えを纏 めて行く能力、また物事を深
く掘り下げる集中力が必ずや養成されると思うのである。
「人間力の向上評価」
高校生にとって高等学校は、基本的には社会人としての基礎学力を身につけることであるが、特
に現代では人格形成と云うか、人間力を磨く場でもあると思う。
学業を学ぶ努力と試練が、人間力を養うと云う伝統的な考え方の時代には、一方で家庭教育ある
いは社会環境が人間的成長を遂げる機会を与えて呉れていたのではないかと思う。従って学校教育
- 171 -
は本分である学業指導中心の運営で充分であったのであろう。然し現代では人格形成に於ける家庭、
社会環境の役割は過去の時代に比べて薄れてきている状況にあるのではないかと思う。
従って結果として学校は学業指導と、同時に人格形成も担うこととなったと受け止めるべきだ
と思うのである。
「18 歳成人」を迎える今日、より喫緊の課題であると考える。
具体的には学業成績だけでなく、生徒の人間的成長を測る評価を行うことである。方法は研究の
必要はあるが一般的には年に1~2回の面接評価により測ることになると思う。学業成績、進路で
充分に能力が発揮できない生徒でも、人間的成長の面では、
「18才成人社会」に自信を持って送
り出すことが出来るのではないかと思うのである。更にこのことは教員の志に係わることにもなる
と思う。
生徒の成長を評価すると云うことは、学業成績、希望進路に主として対応する教員にとって、数
値目標達成状況が、結果として自信の評価判断とされることに比べ、生徒の人間的成長を促す指導
蓄積を、合わせて評価される方が教員の志には適うことだと思うのである。
- 172 -