No.5:子宮内膜症

豊田厚生病院
診療科等のご案内トピックス
産婦人科№5
子宮内膜症(良性腫瘍)
■どのような病気ですか?
月経は毎月子宮内腔にある子宮内膜という組織から出血して起こります。この子宮内膜が、本来あるべき子宮
内腔以外の場所に発生する病態を子宮内膜症といいます。子宮内膜症のうち、子宮筋層内に発生したものを
特に子宮腺筋症、卵巣に発生し古い血液が貯留したものをチョコレートのう胞と呼びます。珍しいケースとして
は、直腸に発生して月経のたびに下血したり、肺に発生して毎月月経のたびに気胸をおこすことが知られてい
ます。
■子宮内膜症の症状
頻度の高い症状としては、ひどい生理痛や性交時の腹痛などが挙げられます。また、子宮内膜症による骨盤
内の癒着が強い方では、慢性的な腹痛の原因となる場合があります。一方、不妊症で受診した患者様の 3 割
~4 割の方にこの病態があったという報告があることから、不妊症の原因になる場合も考えられます。
■どのような検査がありますか?
内診、超音波検査、MRI などの画像診断が中心となります。また、不妊症の方では、病状をより詳細に把握す
るために、腹腔鏡検査を行う場合があります。この場合、もし子宮内膜症の病変を発見した場合は、いっしょに
治療することも可能です。
■治療法は?
子宮筋腫同様、保存的治療と手術療法に大別されます。
〔保存的治療〕
①経過観察
半年に一度くらいの頻度で子宮腺筋症やチョコレートのう胞が大きくなっていないかチェックをします。また、
貧血がある場合には鉄剤を、生理痛や腰痛がある場合には、鎮痛剤を処方します。
②GnRH アナログによる偽閉経療法
上述のように、GnRH アナログを月一回皮下注射し、一時的に閉経に近いホルモン環境を作ります。ただし、
子宮筋腫同様、GnRH アナログは原則 6 ヶ月間しか使用できないため、投薬終了後に月経が再開すると、元
の大きさに戻ってしまう場合があります。
③経口避妊薬(ピル)
ピルが子宮内膜症に効果があるというデータが一部にあります。病変自体を治す効果はあまり期待できませ
んが、悪化を抑える作用があるといわれています。また、生理痛などの症状緩和にもつながることが知られ
ており、希望される方には処方しております。
〔外科的治療〕
①子宮全摘術
子宮腺筋症の方で、子供を産み終え、子宮温存の希望がない方が対象となります。術後は、月経がなくなる
ため生理痛や貧血が改善されます。
②チョコレートのう胞の摘出術
卵巣のチョコレートのう胞を摘出します。可能であれば、のう胞のみを摘出し、正常卵巣部分を温存します。
③子宮腺筋症核出術
子宮腺筋症により厚くなった子宮筋層を削りとり、薄くする手術法です。生理痛が軽くなるなど症状の改善が
見込まれます。子宮を温存するために行います。未婚ないしはまだ子供を産み終えていない方が対象となり
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ます。削り取る手法をとるため、出血量が多くなることがあります。よって、輸血を回避するために、自己血を
保存しておきます。術後は、約半年間避妊する必要があります。また、子宮筋層が深く削れた方では、次回
妊娠時に子宮破列のリスクが高まることが報告されているため、当院では原則帝王切開でのお産を薦めて
います。
④経膣的チョコレートのう胞穿刺吸引術
片側性であまり大きくないチョコレートのう胞において、適応となります。軽い麻酔をかけてから、経膣エコー
でみながら穿刺してチョコレートのう胞の内容液を吸引し、最後にアルコールで固定する方法です。手術に比
べ、侵襲が少ないため、日帰り入院できますが、再発する可能性があります。
上記外科的治療①~③においても、当院では積極的に腹腔鏡手術に取り組んでいますが、子宮の大きさや、
骨盤内の癒着の程度によっては、従来の開腹手術を選択せざるを得ない場合もあります。
豊田厚生病院産婦人科
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