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☆SPECIAL REPORT(国際情勢)
テロ・リスク大幅減退の可能性
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<No.9166>
2003. 4. 11 (金)
―― 冷戦後減少=フセイン政権崩壊でダメ押し
米ブッシュ政権は今回のイラク戦争について、対テロ戦争の一環と位置付けていた。こ
のため、フセイン政権の事実上の崩壊がテロ・リスクにどう影響するかは注目されるとこ
ろだ。これについて、「国際テロ発生件数は、1980 年代後半をピークに減少傾向にあり、
明らかにソ連崩壊の影響と考えられる。その意味ではテロ支援国家の疑いのあったフセイ
ン政権崩壊で、テロ件数は一段と減少する」といった見方もある。
1980年代後半ピークで減少=ソ連崩壊の影響か
イラク戦争は、首都バグダット陥落により、フセイン政権の事実上崩壊となった。
ところで、このイラク戦争について、ブッシュ政権は 2001 年9月 11 日の同時多
発テロ事件を一つの起点とした、対テロ戦争の一環と位置付けていた。その意味で
は、今回の対イラク「戦勝」を受けて、テロ・リスクがどのように変化するかは注
目されるところだ。
これについて、金融市場の一部などでは、むしろテロ・リスクが再燃することを
警戒する見方もある。中東地域の反米感情拡大などを受け、「報復テロ」の可能性
を注目する見方がある。
しかし一方で、「テロ支援国家との疑いがあったイラク・フセイン政権の崩壊は、
むしろテロ発生を減少させる効果が期待できるのではないか」といった見方もある。
ある株式市場関係者は、国際テロ発生件数の推移といったデータに注目した。そ
れによると、国際テロ件数は、1980 年代後半をピークに減少傾向となっていた。
同データによると、テロ発生件数は、1980 年代後半のピーク時には 600 件を超え
ていたが、ここ数年は 300 件前後まで縮小している。つまりピーク時に比べて半減
となっているわけだ。
この理由について同筋は、冷戦終了、ソ連崩壊の影響が大きいのではないかと考
えている。国際テロリズムは、とくに大規模なものになると、当然資金的影響が大
きくなる。ソ連崩壊、冷戦終了で、国際テロリズムの資金的支援体制が弱体化し、
それがテロ発生件数の縮小をもたらしているのではないかというわけだ。
対テロ戦争の総決算=米の狙い一定の成果か
(件数)
700
600
500
400
300
200
100
0
80 81
このような観点に立てば、今回のイラク・フセイン政権の崩壊は、やはり国際テ
ロ発生件数を一段と減少させる効果が基本的に期待できると考えられるわけだ。国
際テロ・ネットワークを国家的に支援していたといった疑いのあるフセイン政権の
崩壊は、テロ組織支援体制をさらに弱体化させる可能性のあるものだからだ。
とくにそれは、「9・11」、2001 年9月に発
国際テ ロリズ ム 発生件数(1980−2001年)
生した米同時多発テロ事件のような、大規模テロ
計画にとっては影響が大きいと見られている。つ
まり、フセイン政権崩壊で、大規模テロ再発リス
クは大きく低下すると考えられる。その意味では、
まさに今回のイラク攻撃は、ブッシュ政権にとっ
て、対テロ戦争の総決算といった効果をもたらし
た可能性が高そうだ。
それはまた、中東においてはパレスチナ問題、
そして「残された冷戦」、朝鮮半島情勢の今後の
展開にも影響しそうだ。テロ支援体制の弱体化が、
パレスチナ紛争の緩和へ波及するかは注目され
るだろう。一方朝鮮半島では、北朝鮮による瀬戸
際外交が展開するなど、なお緊張状態が断続的に
展開しているが、米国による突出した「力の論
理」が確認されたことは、一定の影響がありそう
だ。(了)
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(年)
( 出典) U.S .De par t me n t o f S t at e . P at t e r n s o f Glo bal Te r r o r ism 各年度版よ り
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