ポスト人口転換期における地域の結婚・夫婦出生の動向と 社会経済的

ポスト人口転換期における地域の結婚・夫婦出生の動向と
社会経済的指標との関連
An Analysis of Relationships among Regional Marriage/Marital Fertility and
Socioeconomic Environments at the Post Demographic Transition period
鎌田健司(国立社会保障・人口問題研究所)
KAMATA, Kenji(National Institute of Population and Social Security Research)
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本稿は,ポスト人口転換期における地域の結婚・夫婦の出生力について、社会経済
的指標との関連の地域格差を説明する要因を探ることを目的としている。日本におけ
る出生率の地域格差は人口転換以前においては「東高西低」の傾向であったものが、
人口転換後,工業化,都市化等の近代化の進展によりこの傾向は弱まり「大都市圏」
で合計出生率が低く、「非大都市圏」で高くなる傾向に変化した。1980 年以降の出生
力は「婚姻力」の低下に加えて,
「夫婦出生力」の低下が都市規模にかかわらず生じて
おり,さらにその「夫婦出生力」の変化は出生力の地域格差そのものに大きく寄与し
ていることが指摘されている。
本報告では結婚指標と夫婦出生力指標を作成し、1980 年から 2010 年までの期間に
おける各指標の動向と社会経済的指標との関連について、地域ごとに関係性が異なる
ことを許容するローカルモデルである地理空間加重回帰モデルを用いて推定すること
によって、結婚・夫婦出生力の地域格差の要因について考察する。
データは『社会・人口統計体系 市区町村基礎データファイル(1980-2011 年)』
(財
団法人 統計情報研究開発センター)である。市区町村別の結婚・出生力指標は標準化
法を用いて作成した。標準化のための標準人口は 2010 年全国の 5 歳階級別出生率・有
配偶率を用いた。
分析モデルは、標準化出生比・標準化有配偶比・標準化有配偶出生比それぞれの指
標について、1980 年・1990 年・2000 年・2010 年の 4 時点について GWR モデルを適用
した。標準化出生比と標準化有配偶比モデルの独立変数は、1)女性 30 代未婚割合(%)、
2)核家族世帯割合(%)
、3)転入超過率(%)
、4)女性 15-49 歳就業率(%)
、5)
男性失業率(%)
、6)外国人割合(%)を用いた。SMR モデルでは女性 30 代未婚率
を除き、20-34 歳未婚人口性比を用いた。
ローカルモデルの一つである地理空間加重回帰モデルを適用した結果、全てのモデ
ルにおいて OLS モデルよりもモデルフィットが改善し、各指標と社会経済的指標の間
の関係性は統計学的に地理的に差があることが示された。係数の地理的分布は 1980 年
から 2010 年の 4 時点においてほぼ同様の分布を示しており、地域格差は安定的である
ことが示された。係数の地域格差は都市圏と非都市圏、東北日本型・西南日本型など
家族形成に関する地理的分布に関連して分布していることが示唆される。