中学2年「哲学」テキスト 25

中学2
中学2年「哲学」
哲学」テキスト 25
テーマ 文章を
文章を読む、解く、理解する
理解する
2月15日(金)の校内実力テスト「国語」で竹田青嗣氏の哲学的な文章から出題されまし
た。内容的にかなり難しかったと思います。高校生でも簡単には理解できないものです。し
かし、開智未来生には、中学3年生になる皆さんには高みを目指してほしいと思います。
さて、なぜ私たちは国語の勉強をするのでしょう。国語のテストで点を取るためだけに勉
強するのでしょうか。なぜ本を読むのでしょうか。国語力をつけるためだけでしょうか。
そんな問題意識をもって今日のテーマを設定しました。
平成25年2月19日(火)
開智未来中学校・高等学校長
関
根
均
1
この世界というもの
この世界はわからないことばかりです。新聞を読んでも政治・経済のことがわからない。この
科学や科学技術の世界もわからないことばかりです。だから、今学校で様々な教科を学んでいる
わけです。
では、時間とは?私とは? これは「何であるか」という問いですがわかりません。
私は何のために生まれてきたのか。人間は何のために存在するのか。これは意味についての問
いですが、この種の問いは正解があるのかどうかも分かりません。
恐ろしくなるほどの「不明」(竹田氏の文章では「非知」と言っていましたね)世界の中で私た
ちは生きています。
面倒くさい。そんなことを考えなくても生きていける。「問い」を放棄して、ゲームを楽んで、
美味しいものを食べて、お笑い番組を見て笑って、温泉に入って、好きな人と一緒になって……。
それでも人間は楽しく生きていけます。
一方で、様々な問いを自らに投げかけ続け、新たに何かを知り、しかし、知ることでさらに不
明の世界を見つけ、また問い、考え……。そのように単純に楽しいとは言えませんが、自分の世
界を広げていく生き方もあります。
人間という存在はどちらの生き方をすべきなのでしょうか。少なくとも、この困難な世界を導
き担うリーダーはどちらを選ばなければならないのでしょうか。
◆人間は自分の理解できる範囲で世界を理解し、その世界で生きていく。
理解の道具となるのが「知識」であり「知性」です。だから、「知識」や「知性」のある人は
より広く深い世界を知っているのです。人間は皆同じ世界(精神世界)に住んでいるのではないの
です。
大人は分かったような顔をして働いていますが実は誰にもわからない問題はたくさんあります。
だから、氷を溶かすように、地面に穴を掘るように、自分が分かるところまで頑張って分かるよ
うにする。それが私の「知性」になるのです。
逃げないで、どこまで溶かせられるか。授業で学んだ論理エンジンや「もぎ取り」を使って掘
り進めていく。そういう姿勢や知性を開智未来は求めているのです。
2
竹田氏の文章で言っていること
対
象
私
原
因=非
選択、判断
↑
欲望・衝動
※「……したい」という気持ち(want)
知
- 1 -
3 文章を読む、解く、理解する
(1) 文章を書くということ、文章を読むということ
〈作
者〉
◇人間はすべてを理解していない。
不明な世界
◇私はわずかなことしか理解していない。
◇学ぶこと、生きることは理解した世界(明晰にできたこと)
↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑
を拡大していくことである。これを知性と言う。
理解した世界
※知性とは不明なものに怯えつつも逃げない力である
明晰にできたこと
↓
◆文章とは理解したこと(明晰にできたこと)を言葉で表現す
ることである。
文
章
◆書き手の文章力によって表現できることが制限される。
読
者
理解した世界
↓ ↓ ↓ ↓
不明な世界
↓
①完全に理解していないと知っているがはったりで書いている
②本人は完全に理解していると思って書いている
③完全に理解しているとは思っていないが書いている
④完全に理解していないことを自覚して誠実に書いている
※書き手は自分の書いた文章に責任を持たなければならない。
◆読者は自分の理解できる範囲で文章を理解する。
(2) 文章の構造
テ
ー
マ
トピックス
論が展開さ
れる場
主張(メインメニュー)
①結論=A
②論理=A→B
③具体例=A’
④引用=A’
⑤比喩=A’
(3) 文章の種類
①論文・論説文・説明文
②評論・評論文・文芸評論
③随筆・エッセイ
味わい
サイドメニュー
①レトリック
(修辞、文章技法)
②余韻
結論づけられないもの
敢えて結論づけないもの
①派生的テーマ
②テーマとは別の
こと
主張(メインメニュー)→正しく(客観的に)読む
主張(メインメニュー)+味わい(文学的要素)
→正しく(客観的に)読みつつ文章を味わう
弱い主張+味わい(文学的要素)+サイドメニュー
→読者のレベルで文章を理解し文章を楽しむ
(4) 読解のレベル(私はどこまで文章を理解したらよいのだろうか)
①未開のレベル 文字が読めない。文字は読めても言葉の意味は分からない。
②無知のレベル 文字は読めても(言葉の意味は分かっても)何を言っているかわからない。
③勝手のレベル 自分の理解できるところだけで理解する。自分勝手に理解する(誤読する)。
④試験のレベル 客観的に読み、出題者のレベルで文章の趣旨や論理構成を理解し、問題を解
くことができる。
⑤理解のレベル 文章の詳細を理解し、背景となる知識や教養を用いて、作者の考えを受け止
めて文章から学ぶことができる。
⑥対話のレベル ①批判のレベル 作者の不十分な点を指摘できる。
②創造のレベル 作者の考えを踏まえさらに深く考えることができる。
(5) 文章の読み方
①「論理エンジン」を用いて論理構成を把握する。
②言葉(キーワード)に反応する。
(6) 問題文を考え続ける
分からなくても問題は解ける。しかし、そこが君たちのスタートラインである。何度も読み返
し、考え続けて、氷を溶かすように地面に穴を掘るように、自分が分かる世界を拡大させよう。
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