平成28年3月策定 愛知県土地開発公社(以下「公社」という。)は、公共事業の執行に不可欠な公共用地 の円滑な取得により、地域の秩序ある整備と公共の福祉の増進に資することを目的とした 「公有地の拡大の推進に関する法律」に基づき、昭和48年3月に愛知県(以下「県」と いう。)の全額出資により設立された特別法人である。 公社は、設立以来、一貫して県と一体となって、県内の社会基盤整備の根幹となる公共 事業の用に供するための土地(以下、「事業用地」という。)の円滑かつ安定的な取得を通 じて、地域の秩序ある整備と県民福祉の向上を目指す県政の一翼を担い、県行政を補完・ 代行する専門機関として、用地の先行取得を主な業務とした事業を展開してきた。 また、長年にわたり培ってきた用地取得の豊富な実績・専門知識・交渉ノウハウ等を活 かし、国が進める道路事業用地の取得といったプロジェクト事業等への協力、リニア中央 新幹線建設に係る用地取得業務への協力など、県事業に係る用地取得以外でも事業を展開 し、県内の社会資本整備に必要な事業用地取得の専門機関としての役割を担っているとこ ろである。 この間、公社は、健全な運営と効率性の確保に努め、平成15年度から平成27年度ま での期間に2度の経営改善計画を策定し、保有している事業用地等の処分、組織体制の見 直し、職員数の削減等の経営課題に取り組み、スリムでコンパクトな組織へと改善を進め てきた。 こうした中、県において平成25年1月に「愛知県土地開発公社のあり方に関する方針 <今後の方向性>」 (以下、 「あり方に関する方針」という。)が示され、 「今後の事業規模、 国のプロジェクト事業等への対応、保有土地の処分(再取得)を見極めつつ、固有職員の 処遇にも配慮のうえ、他団体との統合も視野に入れ、公社のスリム化を図る。」こととされ た。 この「あり方に関する方針」は、平成26年12月に公表された、県の「しなやか県庁 創造プラン(愛知県第六次行革大綱)」(以下、「第六次行革大綱」という。)における個別 取組事項で「土地開発公社保有土地の計画的削減」及び「地方三公社の統合の検討」とし て引き継がれており、 「第六次行革大綱」の実施期間である平成31年度までの取組期間に おいて、県は公社保有土地の計画的な再取得を行うと共に、公社は更なるスリム化を求め られることとなる。 これら県の取組を踏まえ、今後、公社は更なる事務の効率化と組織のスリム化を推進し ていくとともに、長年培ってきた用地取得能力の更なる向上に努め、引き続き、県内の社 - 1 - 会資本整備に必要な事業用地取得の専門機関としての役割を果たしていかなければなら ない。 こうした観点に立ち、新たな「愛知県土地開発公社経営改善計画」を策定し、より効率 的で安定的な公社運営を図るための取組を行うものである。 1.これまでの経営改善計画における取組状況 平成23年度から今年度までの前経営改善計画における主な取組状況は、以下のとおり である。 (1)保有土地の処分 過去、先行取得した事業用地は取得年度を含め5年で再取得するとされていたもの が、県の厳しい財政事情から再取得期限を15年とされたことや、一部の年度で再取 得期限が延長されたことにより、保有期間が5年以上の土地(以下「長期保有土地」 という。)が、平成21年度末における保有土地の総額782億円のうち、588億 円となっており、約75%を占める状態となっていた。 こうした保有土地の長期化は、社会資本整備における事業効果発現の遅延を生じさ せ、土地の取得に要した金融機関からの調達資金にかかる金利の増加ももたらすこと になるため、県に対して、路線毎の計画的再取得を、特に長期保有土地については早 急な再取得を要請してきた。 また、再取得期限の延長は長期保有土地を増加させる大きな要因となるため、債務 期限が到来するものについても確実な再取得を求めてきた。 この結果、県の財政状況は依然として厳しく社会資本整備のための投資的予算も制 約される状況であったが、県は「選択と集中」による事業効果発現に向け、供用開始 予定路線における保有土地の再取得を積極的に行なったことにより、保有土地の総額 は、平成22年度末時点の805億円から平成26年度末時点では613億円となり、 192億円縮減され、長期保有土地についても、平成22年度末時点の582億円か ら平成26年度末時点では507億円と、75億円縮減された。 (2)未利用代替地の処分 県の依頼に基づき事業用の代替地として取得した未利用代替地8箇所の早期処分 について、県と協議検討を行なった結果、県から処分方針が示されたことにより平成 23年度に時価への評価替えを実施し、一般競争入札等により8箇所すべてを処分す るに至った。 - 2 - (3)効率的な体制づくり 用地取得事務の経験が豊富で組織内の指導的立場にある職員の多くが定年退職を 迎え、公社として如何に用地取得能力を維持しつつ、効率的かつ機動的な業務執行体 制を構築していくかが大きな課題であったとともに、公共事業の縮減に伴う事業費の 減少から、将来的な人件費についてもできる限り抑制していく必要があった。 このことから、前経営改善計画の期間中は、正規職員の新規採用を見合わせる一方、 定年退職者を積極的に再雇用することで、人件費の抑制と用地取得能力の維持を両立 してきた。 また、用地部門の機動的な運用を図るため、一部の事務所を他事務所との兼務体制 にするなど、管理・指揮機能を集約し、県から求められる用地取得事案や規模に応じ た人員配置を行なってきた。 (4)事務経費の縮減 本社賃借料、光熱水費及び消耗品類等の経費について、平成21年度実績 48, 111千円を、平成27年度末までの間に5%縮減する目標で、縮減に取り組んでき た。 この結果、平成26年度末実績は、本社事務室の縮小等、固定的経費の見直しを含 めた経費削減により 35,973千円となり、目標を大幅に上回る縮減を行った。 (5)県の将来負担額の解消 県は、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」に基づき健全化判断比率及び 資金不足比率の算定を行なっており、健全化判断比率のうち将来負担比率は、地方公 社や第三セクター等の財務内容を組み込み算定しているが、その中で、設立法人の負 債額等に係る一般会計等負担見込額として、公社に係る県の将来負担額が存する状況 であった。 そのため、前経営改善計画で「県の将来負担額の解消」を取組内容として挙げ、県 の将来負担の原因となっていた保有土地を売却することで解消し、公社の健全な財務 状況を維持するとともに県の財政健全化にも貢献しているところである。 - 3 - 2.経営方針 前経営改善計画は、その策定から5年が経過し今年度終了を迎えるが、引き続き県、国 等の業務委託者から信頼される用地取得の専門機関として、更なる県民福祉への貢献及び 事業運営の効率化を目指し、次の方針に従い、より一層の経営改善を進める。 ◇ 県政への支援 公共用地の取得の専門機関として、地域の秩序ある整備と県民福祉の向上を目指す 県政の一翼を担う。 ◇ 効率的な事業運営 組織体制から事務の進め方まで、業務運営全般において、継続的に見直しを行うこ とにより、効率的で安定的な事業運営を推進する。 3.経営改善の取組期間 前経営改善計画から引き続き取り組む必要のある事項及び新たに取り組む必要のある事 項を、今般の経営改善計画(以下「本経営改善計画」という。)で定め、平成28年度から 平成32年度までの5年間で経営改善に取り組む。 4.現状と課題及び取組内容 (1)長期保有土地の計画的処分 保有土地の処分については、これまでの経営改善計画においても重要課題として捉 え、県に対して要望を重ねてきたところであるが、県が再取得することにより保有総 額は減少したものの、長期保有土地は解消されるまでには至っていないのが現状であ り、依然として公社の経営環境は厳しいものとなっている。 こうした中、公社は、経営改善計画に沿って組織のスリム化等を継続的かつ着実に 進めているところであるが、県においては、 「第六次行革大綱」の個別取組事項で「土 地開発公社保有土地の計画的削減」を挙げ、取組期間である平成 31 年度までに長期 保有土地を計画的に再取得することとしている。なお、平成 27 年 6 月にはその再取 得の一部が実施され、公社経営の健全化が進められているところである。 この個別取組事項により、現在ある長期保有土地は、本経営改善計画期間中での解 消が期待されるが、平成 27 年度に引き続き、28 年度以降についても確実な処分が進 められるよう、公社は、県と連携、協働して進捗管理を行い、長期保有土地の減少と、 新たな長期保有土地が発生しないよう努める。 - 4 - (2)よりスリムで効率的な組織体制づくり これまで公社は、効率的かつスリムな組織体制の構築をめざし、正規職員の新規採 用を凍結しながら、用地取得業務に精通した定年退職者を積極的に再雇用することで、 用地取得能力を維持しつつ、事業継続可能な組織体制の確保と人件費抑制を両立して きた。 しかしながら、平成27年度以降、再雇用職員が任期満了を迎える一方で、定年退 職予定の職員はわずかであることから、定年退職者を再雇用することによる組織体制 の維持は困難な状況となる。 退職者の補充措置として職員の新規採用が望ましいと考えられるが、今般の「あり 方に関する方針」及び「第六次行革大綱」を受け、公社は組織の更なるスリム化を推 進していく必要があることから、職員の新規採用の凍結は継続せざるを得ない。 こうした状況において、今後、県、国等から依頼される用地取得業務を執行するに 際し、如何にして効率的かつ事業継続可能な組織体制を維持していくかが課題となっ ている。 このような状況下における取組として、 ① 事務局2課3グループ制の見直し(集約化)を検討し、管理部門の更なるスリム 化を目指す。 ② 用地部門における用地取得体制を見直し、事業規模に応じて職員を重点的に集中 配置するなど、機動的かつ効果的な体制を整備する。 ③ 減少する用地事務職員の補充措置として、再雇用期間が満了する職員を用地事務 嘱託員として積極的に雇用する。 上記の取組により、よりスリムで効率的かつ事業継続可能な組織体制を構築する。 (3)人材育成の強化 公社は、これまでの経営改善において、継続的な新規採用の凍結及び退職者不補充 により計画的な職員削減を実施し、着実に組織のスリム化を図ってきたが、今後「第 六次行革大綱」を踏まえた更なるスリム化の推進に伴い、公社組織は益々限られたマ ンパワーを最大限に活用することが求められている。 今後も県、国等から依頼される用地取得業務を効率的に執行していくためには、職 員一人ひとりの用地取得能力の更なる向上により公社組織力の強化に努め、引き続き、 用地取得分野における専門集団として社会資本整備の推進に貢献していかなければな らない。 - 5 - このための取組として、職員を全国建設研修センター等が開催する、より専門性の 高い用地研修へ積極的に参加させるとともに、平成27年度から実施しているプロジ ェクト事業への職員派遣を継続し、用地取得分野の専門集団としての能力向上・強化 に努め、今後も用地取得分野における県事業の補完・代行機能を有する唯一の専門機 関として、その役割を担う人材の育成に努める。 (4)県内プロジェクト事業への貢献 公社は、県事業を中心に、国からの依頼により用地取得等を行う国直轄事業や市町 村事業の用地取得等を行うことにより、県内社会資本整備の推進に貢献している。 平成27年度からは、大型プロジェクト事業である「リニア中央新幹線(品川・名 古屋間)」の建設に係る協力として、県が東海旅客鉄道株式会社(以下「JR東海」と いう。)から春日井市内の用地取得業務を受託したことに伴い、県からの要請により公 社がその実施主体として用地取得業務を行っているところである。 今後、プロジェクト事業の円滑かつ迅速な執行に向け、県との用地取得協定期間で ある平成31年度までの履行に努めるものとする。 【 目標 】 県との用地取得協定期間である平成 31 年度までに用地取得率 100%を達成 H28 目標 リニア中央新幹線 保守基地用地の 用地取得率(%) H29 目標 H30 目標 H31 目標 この間で、用地取得率100%を達成 なお、リニア事業に係る名古屋市内(名古屋駅周辺)の用地取得については、名古 屋市の外郭団体である「公益財団法人 名古屋まちづくり公社」(以下「名古屋まちづ くり公社」という。)がJR東海から用地取得事務を受託しているが、名古屋市から協 力依頼を受けた県からの要請により、当公社職員を名古屋まちづくり公社へ派遣する 人的支援を行っているところである。 (5)市町村用地取得業務の確保 新たな事業を受託した一方で、これまで国から継続して依頼されてきた国直轄事業 の用地取得業務については減少しつつあり、国からの事業量確保は不透明な状況とな っているが、今後も健全な経営基盤を維持していくためには、安定的に事業量を確保 - 6 - していかなければならない。 これまで公社は、県及び国からの依頼業務の遂行に支障のない範囲で、市町村事業 の用地取得業務等を受託してきたが、こうした現状を踏まえ、県内各市町村への情報 収集活動及び PR 活動により、継続的に市町村用地取得業務の受託を確保することで、 当該地域の社会資本の早期整備に貢献するとともに、公社の健全な経営基盤の維持を 図る。 【 目標 】 毎年度1件以上、市町村からの用地取得業務を受託 H26 実績 市町村用地取得 業務の受託(件) H28 目標 3件 H29 目標 H30 目標 H31 目標 H32 目標 毎年度1件以上、市町村からの用地取得業務を受託 (6)健全な財務状況の維持 公社は、これまでの経営改善において、事業用地等処分の促進、計画的な職員数の 削減による人件費抑制、また固定的経費の見直しによる事務経費の削減などの経営課 題に取り組み、効率的で健全な公社経営を推進してきた。 また、前経営改善計画策定時に生じていた県の将来負担額についても既に解消し、 健全な財務状況を維持するとともに、県の財政健全化にも貢献しているところである。 しかしながら、公社が代替地を自己資本(準備金)を超えて保有した場合には「県 の将来負担額」が生じることとなるため、今後、代替地を取得する場合は十分な自己 資本(準備金)を確保し、「県の将来負担額」を発生させない財務状況を維持する。 ※代替地:公有地の拡大の推進に関する法律第 17 条第 1 項に掲げる事業により取得される土地の所 有者等に対して、その土地に代わる土地として譲渡するために公社が取得した土地 【 目標 】 県の将来負担を発生させない健全な財務状況を維持 H26 実績 県の将来負担額 0 千円 H28 目標 0 千円 H29 目標 0 千円 - 7 - H30 目標 0 千円 H31 目標 0 千円 H32 目標 0 千円
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