タケプロン®製造販売後臨床試験

試験結果の概要
試験実施者(企業名)
武田薬品工業株式会社
商品名
AG-1749
有効成分名
ランソプラゾール
試験の名称
タケプロン® 製造販売後臨床試験-非びらん性胃食道逆流症
に対する臨床試験-
試験実施医療機関
40 医療機関
公表文献
未公表
(本試験結果の報告文献)
試験期間
2007 年 1 月 31 日~2008 年 8 月 10 日(最後の被験者の後観察
(最初の被験者の同意取得日~最
期用試験薬の投与終了日)
後の被験者の治療期終了日
試験のフェーズ
第 IV 相
試験の目的
非びらん性胃食道逆流症患者を対象に、AG-1749 の 1 日 1 回 15
mg、4 週間経口投与における有効性及び安全性を、プラセボを
対照とする二重盲検 2 群比較法により検討
試験の方法
プラセボ対照、2 群比較、内視鏡所見による層別無作為割付け、
二重盲検(後観察期は単盲検)、多施設共同試験
被験者数
計画時
(計画時・解析時)
登録被験者数:各群 180 例
計 360 例
無作為化された被験者数:各群 160 例
計 320 例
主要評価項目の評価可能被験者数:各群 150 例
計 300 例
解析時
組み入れられた被験者数:440 例
無作為化された被験者数:407 例
(プラセボ群 206 例、AG-1749 15 mg 群 201 例)
最大の解析対象集団:407 例
(プラセボ群 206 例、AG-1749 15 mg 群 201 例)
試験実施計画書に適合した解析対象集団:394 例
(プラセボ群 199 例、AG-1749 15 mg 群 195 例)
安全性データの解析対象集団:407 例
(プラセボ群 206 例、AG-1749 15 mg 群 201 例)
対象基準
<対象>
非びらん性胃食道逆流症患者
〔LA 分類(改変 2):Grade N 及び M〕
<主な選択基準>
1)一次選択基準:観察期開始に際しては、以下の基準をいず
れも満たす患者を対象とした。
① 観察期開始前 3 週間において、1 週間あたり 2 日以上の頻
度で酸逆流症状(胸やけ又は呑酸)を繰り返す患者
② 観察期開始前 3 週間において、酸逆流症状(胸やけ又は呑
酸)の程度*が中等度以上の患者
* 程度:高度(かなりつらい)
、中等度(つらい)
、軽度(あ
まりつらくない)
、なし(症状なし)
③ 内視鏡検査にてびらん又は潰瘍性の食道炎を認めない患者
〔LA 分類(改変 2):Grade N 及び M〕
④ 20 歳以上で、本試験への参加について文書による同意能力
のある患者
2)二次選択基準:治療期への移行に際しては、以下の基準を
満たす患者を対象とした。
① 観察期 1 週間に、制酸剤の服薬状況が良好(75%以上)か
つ「胸やけ」が 2 日以上認められる患者
なお、観察期開始直後、2 日間連続で胸やけがみられた場
合においても、7 日間の制酸剤投与(1 週間の観察期間)を
行う
② 観察期の患者日誌を適切に記載していることが確認できる
患者
<主な除外基準>
① 急性胃炎又は慢性胃炎の急性増悪期を合併する患者
② 開放性の胃潰瘍又は開放性の十二指腸潰瘍を合併する患者
③ Zollinger-Ellison 症候群、アカラジア・強皮症等の原発性食
道運動障害、穿孔・幽門狭窄、食道狭窄症、バレット食道
(バレット上皮 3 cm 以上)
、著しい食道の異形成性変化を
合併する患者
④ 胃酸分泌に影響を及ぼす手術(上部消化管切除術又は迷走
神経切離術等)の既往のある患者
⑤ うつ病で通院加療中の患者
⑥ 狭心症の既往又は合併のある患者、並びに狭心症の疑いの
ある患者
⑦ 観察期開始前 3 週間以内にプロトンポンプ阻害薬(PPI)を
使用した患者
⑧ 薬物療法の適応とならない患者
被験薬、用量・投与方法、ロット番
被験薬:AG-1749 15 mg カプセル
号
用量及び投与方法:
観察期では、観察期用制酸剤として提供したマーレッジ懸濁内
服用(1.2g/1 包)を観察期開始日から 1 日 3 回、1 回 1 包、1
週間、食後に経口投与
治療期では、AG-1749 15 mg カプセルを治療期開始日から 1 日
1 回 1 カプセル、4 週間、朝食後に経口投与
後観察期では、後観察期用試験薬として提供したプラセボカプ
セルを後観察期開始日から 1 日 1 回 1 カプセル、1 週間、朝食
後に経口投与
ロット番号:Z528k031(観察期用)
、Z528d051(治療期 Grade N
用)、Z528d052(治療期 Grade M 用
)、Z528p013(後観察期用)
対照薬、用量・投与方法、ロット番
対照薬:プラセボカプセル
号
用量及び投与方法:
観察期では、観察期用制酸剤として提供したマーレッジ懸濁内
服用(1.2g/1 包)を観察期開始日から 1 日 3 回、1 回 1 包、1
週間、食後に経口投与
治療期では、プラセボカプセルを治療期開始日から 1 日 1 回 1
カプセル、4 週間、朝食後に経口投与
後観察期では、後観察期用試験薬として提供したプラセボカプ
セルを後観察期開始日から 1 日 1 回 1 カプセル、1 週間、朝食
後に経口投与
ロット番号:Z528k031(観察期用)
、Z528p011(治療期 Grade N
用
)、Z528p012(治療期 Grade M 用
)、Z528p013(後観察期用)
治療期間
観察期
エンドポイント
有効性
1 週間、治療期
4 週間、後観察期
1 週間
主要評価項目:治療期 4 週間における胸やけ症状
主たる評価指標:無症状日数の割合
副次評価指標:累積症状改善率(Kaplan-Meier 法)
その他の評価指標:胸やけの程度
副次評価項目:
① AG-1749 15mg 群を対象に、投与 2 週時の効果判定に基づ
き、改善例・非改善例に層別した主要評価項目
② 内視鏡所見別(Grade N 及び M)に層別した主要評価項目
及び副次評価項目の①
安全性
有害事象
統計手法
有効性
(1)主要評価項目:治療期 4 週間における胸やけ症状
「最大の解析対象集団」を対象として以下の解析を行った。
1) 主たる評価指標として治療期 4 週間における胸やけの無
症状日数の割合について、投与群別に要約統計量を算出
した。さらに、Hodges-Lehmann 型の推定方法により、中
央値に関する投与群間差の点推定値及び両側 95%信頼区
間を算出し、2 標本 Wilcoxon 検定を用いて、プラセボ群
と AG-1749 15 mg 群との群間比較を行った。
2) 副次評価指標として Kaplan-Meier 法により累積症状改善
率を投与群別に算出し図示した。さらに logrank 検定によ
りプラセボ群と AG-1749 15 mg 群との群間比較を行った。
3) その他の評価指標として治療期 4 週間の胸やけの程度の
期間内平均値について、1)と同様の解析を行った。
(2)副次評価項目
1) AG-1749 15mg 群を対象に、投与 2 週時の効果判定に基づ
き、改善例・非改善例に層別のうえ、改善例・非改善例ご
とにプラセボ群との比較について、主要評価項目の主解析
1)及び 2)と同様の解析を行った。
2) 胸やけ症状を内視鏡所見別に層別のうえ、主要評価項目の
主解析 1)及び 2)並びに副次評価項目 1)の解析と同様の解
析を行った。
安全性
有害事象については、安全性データの解析対象集団を対象と
して、有害事象の発現例数、発現件数及び発現頻度を求めた。
また、SOC 別、PT 別の治験薬との因果関係別の頻度集計を行
った。
要約・結論
有効性の結果
1. 主要評価項目
主たる評価指標である治療期 4 週間における胸やけの無症状
日数の割合(%)の中央値はAG-1749 15mg群(57.10)がプラ
セボ群(50.00)より高く、中央値に関する群間差(AG-1749
15mg群-プラセボ群)
(%)のHodges-Lehmann型点推定値(両
側 95%信頼区間)が 7.200(1.900~14.300)であり、さらに 2
標本Wilcoxon検定を用いて群間比較を行った結果、有意であ
った(p=0.0050)
。
副次評価指標である胸やけ症状の累積症状改善率について、
イベントの発現日を「その日以降、症状改善が見られる(後
観察期終了時まで持続している)最初の日」として算出した
本解析では、logrank検定で累積症状改善率に関する群間比較
を行ったところ、有意差はみられなかったが(p=0.6641)、「
そ
の日以降、症状改善が見られる(治療期用試験薬投与終了日ま
で持続している)最初の日」と定義し直して算出した追加解析
では、logrank検定で累積症状改善率に関する群間比較を行っ
たところ、有意差がみられた(p=0.0093)。
その他の評価指標である治療期 4 週間における胸やけの程度
(治療期間中の平均値)の中央値はAG-1749 15 mg群(0.40)
がプラセボ群(0.60 )より低く、中央値に関する群間差
(AG-1749 15mg群-プラセボ群)のHodges-Lehmann型点推定
値(両側 95%信頼区間)が -0.100(-2.000~0.000)であり、
さらに 2 標本Wilcoxon検定を用いて群間比較を行った結果、
有意であった(p=0.0063)。
2. 副次評価項目
投与 2 週時の効果判定に基づき、AG-1749 15mg 群の被験者を
「改善例」と「非改善例」に層別し、それぞれの層とプラセ
ボ群について治療期 4 週間における胸やけの無症状日数の割
合を比較した結果、
「改善例」ではプラセボ群との差がより顕
著になったのに対して、
「非改善例」では 2 週以降投与を継続
しても改善の傾向はみられなかった。
被験者を観察期開始時の内視鏡所見に基づいて Grade N 及び
M に層別し、それぞれの層について治療期 4 週間における胸
やけの無症状日数の割合を比較した結果、Grade N の集団で
は、胸やけの無症状日数の割合(%)の中央値は、AG-1749
15mg 群がプラセボ群を有意に上回り、中央値に関する群間差
の Hodges-Lehmann 型点推定値及び両側 95%信頼区間を算出
し、さらに 2 標本 Wilcoxon 検定を用いて群間比較を行った結
果、有意であった(p=0.0407)
。しかし、Grade M の集団では、
胸やけの無症状日数の割合(%)の中央値の平均値は、
AG-1749 15mg 群がプラセボ群を上回ったものの中央値に関
する群間差の Hodges-Lehmann 型点推定値及び両側 95%信頼
区間を算出し、さらに 2 標本 Wilcoxon 検定を用いて群間比較
を行った結果、有意ではなかった(p=0.0537)。
安全性の結果
試験中に発現した有害事象は AG-1749 15mg 群で 60/201 例
(29.9%)に 69 件、プラセボ群で 65/206 例(31.6%)に 82 件
で、両群の発現頻度はほぼ同様であった。
試験薬との因果関係が否定できない有害事象(副作用)は、
AG-1749 15mg 群で 15 例(7.5%)に 17 件、プラセボ群で 16
例(7.8%)に 21 件であった。
本試験において死亡例はなかったが、重篤な有害事象として
プラセボ群で急性心筋梗塞 1 件及び AG-1749 15mg 群で交通
事故 1 件の計 2 件が報告されたが、いずれも試験薬との因果
関係は否定された。
結論
非びらん性胃食道逆流症に対する AG-1749 の承認用量・用
法である 15 mg、1 日 1 回、4 週間投与での有効性が検証さ
れた。また、投与 2 週時の効果判定は、その後の投薬継続・
中止を判断する上で有用な指標となることが示された。ま
た、安全性に関して危惧すべき有害事象はみられなかった。
本概要の作成日
2010 年 9 月 24 日