「我ら10代」

●トピックス
「我ら10 代」
(再録)
日刊建設工業新聞 平成11
年 2 月 22 日号の「月曜ぴー
ぷる」欄に,本学 3 年に在学
み
す
み
ともえ
する美寿見 知栄 さんが紹介
された。
次世紀を担う 10 代の若者
の生活意識を問うインタビュ
ーに,さわやかな対応でこた
え好評を博しました。ここに
再録いたします。
(編集委員)
◆親に感謝している
そのことをどう生かせるか
でも自分のことで必死です
「聞いて感動しました。
〈建築家は哲学者でなければ
ならない〉と言いました。すごいなと思いました。それ
に比べて自分の学生生活はこれでいいのかと思い,それ
から考えることに熱心になりました」
日大理工学部建築学科は1学年 300 人。うち3分の1
「いまの世の中,いいかげんとは思いません。いいか
を女性が占める。美寿見知栄さんは「物理や数学が大好
げんに見られている人も話してみると,しっかりといろ
き,そして美術も好き」だったそうだから,行く道は建
いろなことを考えています」
築というのは自然な方向だが,入学当時,
「建築家の名
前はテレビで見た安藤忠雄氏しか知らなかった」とい
う。
しかし今は,「社会に出て,いろいろな経験を積み,
自分の事務所を持って,有名な建築家になりたい。そし
て父と一緒に仕事をしたい」と夢を語る。
「建築に入ってよかった」と思っていることが二つあ
る。
「友だちがみんな気持ち的に豊かで,建築をやりたい
という人ばかりで刺激があること。父親の仕事のすごさ
がわかったこと」
父は 48 歳,インテリアデザイナーである。はためで
見ていた父親の仕事が,建築を学ぶことでわかってきた
のだ。
1年生の時,黒川紀章氏の講演を聞く。
6
3月半ばに 20 歳になる。まもなく 10 代も終わりだ。
「生活的には変わりません。20 歳になったら 10 年の
パスポートがとれるので,そうしたら期末休みに外国に
いきます。いまの自分の知識や考え方が物足りないの
で,視野を広げたいからです」
そして4月から3年生になる。意匠にするか構造にす
るか,また大学院にいくか悩んでいる。「できればみん
なやりたい」とどん欲だが,「親に大学に行かせてもら
っている」ことに感謝しているから,
「そのことを,ど
う生かせるか」も考えている。
しかし,「それらは親のためでなく,自分のためです」
と明快だ。だから「いまは自分のことで必死です」とい
う。すぐれた建築家になる予兆が伝わってくる。
文 ・神子久忠
写真・結城純一