親学のすすめ - 大分県教育委員会

おおいた
す
すめ
の
学
」
親
「
読本
11月1日はおおいた教育の日
※この冊子は著作権フリーです。
大分県教育委員会
はじめに
子どもの健全育成のためには、学校のみならず、家庭がその役割と責任をしっかり
果たすことが重要でありますが、近年の核家族化・少子化等の影響により、過保護や過
干渉、育児不安やしつけへの自信の喪失、また、地域の子どもに対する地域の大人の無
関心の増大など、家庭や地域の教育力の低下が懸念されています。
このため、本県においては、明日の大分を担う心豊かでたくましい子どもたちを育
成するとともに、生涯にわたって自ら学び、郷土を愛し、地域社会の振興に主体的に参
加する人づくりを目指して、
「おおいた教育の日」条例を制定し、県内各地で教育の輪
を広げるとともに、大分県青少年育成県民会議による「大人が変われば子どもも変わ
る」運動等を実施しているところです。
また、国においても、教育基本法の改正により、第10条に「父母その他の保護者は、
子の教育について第一義的責任を有する」と新たに規定され、すべての教育の出発点
である家庭教育の重要性が明確にされたほか、
「早寝早起き朝ごはん」国民運動などを
通して、親の教育力の向上を図ることや大人自身の在り方を問い直しています。
大分県教育委員会では、
こうした運動等を「親や大人の学び」という生涯学習の視点
に立って一層推進するために、この度、親や地域の大人が子どもへの関わり方や大人
自身の規範意識・公共心を見つめ直し、大人としての在り方を積極的に学び、地域の教
育力を向上させることを目指して「おおいた『親学のすすめ』読本」を作成いたしまし
た。
この読本は、家庭教育に造詣の深い県内6名の有識者が、自らの貴重な経験の中で
得られた具体的な事例をまとめた大分県独自の冊子であり、
この読本の中にあるエッ
セイ集などから、子育て中の親のみならず、子どもに関わるすべての大人が多くのこ
とを学び、議論していただくことを期待しています。
この読本を、PTAの研修会や学級
懇談会、公民館講座等様々な場面で活用していただければ幸いです。
終わりに、
この読本作成に御尽力いただきました読本作成委員をはじめ関係者の皆
様方に厚く御礼申し上げますとともに、今後とも、本県教育の振興に引き続き御支援、
御協力を賜りますようお願い申し上げます。
平成20年3月
大分県教育委員会教育長 小矢 文則
1
「 親 学 の す す め 」読 本
はじめに
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Ⅰ
「親学」
のすすめ!
Ⅰ「親学」のすすめ!
1 大分県の子ども・大人の現状
2 大分県の「親学」
とは?
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エッセイ集
Ⅱ「親学」
1 子どもの姿からの気づき
①子どもとの生活を見直してみませんか
②
「任せる」
ことについて考えてみましょう
③きずなを結ぶということ
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④I T機器と上手につきあうために
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⑤子どもの可能性をのばすには待つことも必要
⑥つながっているということ
⑦子どもにごまかしは禁物
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2 親・大人の姿からの気づき
①大人の関わり方を見直してみませんか
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②子どもに全力で向き合うこと
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⑥PTA活動は
「出会い・ふれあい・学び合い」です
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⑦時には、大人のパワーを見せつけよう
③大人は子どもの鏡
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④挨拶はコミュニケーションの基本
⑤しつけの極意とは
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⑧地域行事に参加してみませんか
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3 まとめにかえて
ことわざには先人の知恵が入っています
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Ⅲ 大分県の取組例「大人が変われば子どもも変わる」県民運動
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Ⅳ 企業の取組例
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∼これから大人になるあなたへ伝えたいこと∼
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① 子どもの現状
子どもたちの現状というとどんなことを思いつきますか?
まずは、パソコンやテレビゲーム、携帯電話の操作能力に優れていて、マニュアル本に頼らずと
も使いこなせることでしょう。また、ボランティア活動が学校教育活動にも取り入れられ、ボラン
ティア精神の育成ができていること等があげられます。さらには、
メディアの普及により、豊富な
知識(情報)を持っており、自己表現のために機器も合わせて使いこなせる能力を持つ子どもが増
えてきていること等でしょう。
反面、日常の生活体験不足のために、
生活に活かすべき知識・能力等の本来家庭で営むべき基本
的生活習慣の欠如が挙げられます。また、少子化により異年齢による集団活動の機会減少や川遊
びや昔遊びなどの体験活動の不足、日常的な人間関係が希薄なためにコミュニケーション能力に
欠け、言葉を介さずお互いを傷つけあうことや暴力的行為が見られるなど、相手の心情を読み取
る力が育っていないことなども挙げられます。
最近では、匿名性と言葉の暴力による「ネットいじめ」から自殺する児童・生徒が出てくるなど、
子どもたちを取り巻く環境は、深刻かつ複雑化しています。
②親・地域の大人の現状
核家族化、家族の個別化等の家庭の変化はかなり以前から言われてきていますが、昨今新たな
42
変化としてあげられるのは、親の意識の変化です。親の多忙化、少子化による少数精鋭意識、親自
44
身の倫理観・人生観・価値観の多様化等により、我が子さえよければいい「自子主義」という言葉が
登場したり、目先の事象に翻弄され自制できず学校等に過度と思えるような要求を寄せる大人の
Ⅴ「親学のすすめ」読本活用例
出現などが社会問題となっています。
この冊子を活用していただくために
「親学」エッセイ集の構成について
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「2-6 PTA活動は『出会い・ふれあい・学び合い』です」のPTA研修時活用例
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一方、地域社会ではどうでしょう。地域から子どもの声が消え、
I
T化により人と顔を合わせての
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コミュニケーションがとれない社会となっています。また、プライバシーの保護やいきすぎた個
人主義の浸透による匿名社会の進展、子どもに対する犯罪や不審者情報の急増等、社会が大きく
Ⅵ 資料
*家庭教育に関するデータ
*その他
1 大分県の子ども・大人の現状
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2
変化していると言えます。
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2 大分県の「親学」
とは?
①「親学」の基本的な考え方
Ⅱ
「親学」
エッセイ集
「親学」という言葉を聞いたことはありますか?
最近では、全国各地で保護者を対象とした「親学」研修会が開催されたり、
インターネット等で話
題になるなど、耳にする機会が増えてきました。
「親学」という言葉自体は、はっきりと定義付けされているわけではありませんが、大分県では
以下のように考えています。
「親自身が公共心・規範意識を身につけることや親
大分県の
「親学」
とは?
としての在り方、子育ての楽しさなどについて仲間
とともに学びながら、親としての責任を果たすため
の家庭教育を積極的に実践すること」です。
1 子どもの姿からの気づき
②「親学」読本のねらい
1の「子ども・大人の現状」を解決し、心豊かな子どもを育成するためには、子どもたちを取り巻
く環境を作っている親や、地域の親としての大人の成長が必要であると考えています。現在、資料
1からわかるように、
「道徳心や公共心のうすれ」
「地域参加の減少」など、地域の大人の姿が今、問
2 親・大人の姿からの気づき
われています。
資料1 最近気になる大人の姿
人
0 20 40 60 80 100 120
1 道徳心や公共心のうすれ
2 子どもへのかかわりの薄れ(地域の大人)
3 生活時間の深夜化
4 食生活の乱れ
5 社会参加の減少
6 コミュニケーション不足
7 その他
8 なし
(平成19年11月 県政モニター通信アンケート結果:大分県)
そこで、親を含めた全ての大人が子どもたちの健全育成にかかわっているとの視点に立ち、子
育て中の親のみならず、地域住民も含めて、大人として子どもにどう関わるのか、子どもにどんな
姿を見せるのかなど、読本内のエッセイ集を通して気づいたり、主体的に学んだりしていただきた
いと考えています。
また、
PTA研修や学級懇談会、公民館講座等において参加者同士が話し合い交流し合う中で、
親・地域の大人としての在り方や役割について、
この本を活用して考えるきっかけづくりになれば
と考えています。
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