Ⅴ-4.中国の海洋進出動向調査

Ⅴ-4.中国の海洋進出動向調査
Study on Current Maritime Activity of China
キーワード
Key Word
中国、戦略、海洋戦略、
China Strategy , maritime ,South china Sea
1.調査の目的
中国が海洋における活動を活発化させ、最近 2~3 年では、人民解放軍海軍の活動に加えて、
海洋権益に関わりを持つ各関係諸機関の調査・法執行部隊による活動の活発化及びこれらの諸
部隊の連携といった新しい動きがみられる。これら諸機関及び部隊の活動について関係諸機関
が、それぞれどのような役割を担い、どのような活動を行っているのか体系的に把握し、以下
の項目の検討を行った。
(1)海洋発展戦略研究所が発表・刊行している「中国海洋発展報告」の分析
(2)海洋関係の法執行に関わる関係諸機関について。
(3) 上記 関係諸機関の連携及び上下関係の現状について
(4)海洋進出に関する中国の世論・主要論考について
これらの検討結果をもとに今後の海洋進出政策に関する検討を行った。
2.調査研究成果概要
1)海洋進出の基本戦略―海洋強国に向け
中国の現状は陸地大国であ り 、 経済発展に伴い陸地大国から 海洋強国に向かっ て 発展さ せる
こ と が一大重要課題であ る と 海洋進出の基本戦略が指摘さ れて いる 。 ま た 安全保障を 含めた観
点から 海上防衛政策に関する 政策目標を 第 1 は領土保全、 第 2 は管轄海域の環境・ 自然の安全
の確保、 第 3 は海上における 全ての活動の活動手段の安全、 第 4 は責任のあ る 大国と し ての義
務を 果た す( 海上の平和と 安定と 秩序を 保持) こ と と し て いる 。 宇宙開発に示さ れたよ う な中
国の基礎科学技術力を 背景に、 原子力潜水艦の航行、 空母建設、 ま た ソ マリ ア 沖の海賊対策な
ど で世界規模での海上展開能力を 誇示し た 。 海洋強国建設に求めら れる 国家海洋戦略は、 法執
行のための監視船など は近年、 竣工が相次ぎ 、 その配備状況は目覚ま し いも のがあ る 。
①管轄海域の拡大及び世界における 中国の海洋権益の維持を コ ア と する 海洋政治戦略、
②海洋経済強国の建設を 中心と し た海洋経済戦略、
③近海防御を 主と する 海洋防衛戦略、
④ハイ テク と 通常技術を 結びつけた海洋科学技術戦略
の 4 つの分野に分ける こ と ができ る が、 かかる 海洋強国建設に向けた動き は必然的に、 周辺国
と 摩擦や軋みが生じ さ せ特に南シ ナ海において は関係国のみな ら ず地域外大国、 米国、 日本、
イ ン ド が加わり 問題が複雑化する こ と を 予測し ている 戦略家も いる 。
中国の国内政治過程において は、 中国の各機関間でそれぞれ統制のと れて いな い動き ( 外交
部が把握でき な いケ ース ) が増え 紛争を 誘発する ケ ース も 予測さ れる 。 ま た 中国の積極的な海
外展開と し て 、 極地に対する 活動、 特に北極海航路の検討に関する 幾つかの長期的な施策も 注
目さ れている 。
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2)法執行機関の肥大化と総合的有機的連携の未成熟
海洋活動に関する中国の法執行機関とその活動は次のとおりである。
中国海警: 海上違法犯罪活動の予防、 制止、 捜査, 国家安全と 海域治安秩序を 守る こ と ; 海上
重要目標の安全警護を 担当し 密輸、 麻薬密売と 海上密航な ど の取り 締ま り 漁民に対する 入出国
人員の管理のほか国境における 国際協力の交渉
中国海監: 海洋権益( 領海) を 守り 、 海域使用を 管理し 、 海洋環境保護執行し 、 海上施設を 保
護し 、 海洋開発秩序を 守る こ と であ る 。
中国海巡: 船舶に対する 安全検査; 危険貨物運輸安全管理; 船舶の污染防止; 通航環境の防衛、
水上交通秩序; 交通事故調査; 船公司への安全監督及び関わる 海洋行政処罰等
中国漁政: 漁業行政監督、 漁労管理と 保護活動、
中国海関: 輸出入管理、 密輸、 密売取り 締ま り
中国の海洋法執行体制
人民解放軍
国務院
国土資源部
中国国家海洋局
公安部
海軍
中国公安辺
防海警部隊
中国海監総隊
(海警)
(海監)
交通運輸部
海事局
農業部
漁業局
××海
事局
中国漁政
×海総隊
(海巡)
(漁政)
中国海関
総署
(海関)
3)南シナ海と中国の核心的利益
米国やASEAN諸国の懸念によってしばしば「核心的利益」という考えは曖昧にされている。現在も外
交部がイニシアティブを失った動きも見られ始めている。中国の将来の政治過程を考慮し検討する必
要がある。中国国家海洋局が隷属する国土資源部は国有エネルギー企業と密接であり、法執行機関
を管轄する政法担当の政治局常務委員はここをバックにしており、また海軍など軍部と密接であり、次
期指導者習近平の政治基盤となっていることに留意せねばならない。
このような人民解放軍における一部の積極的展開の見解のなかには尖閣諸島問題への対応に関し
て鄧小平以来の政策の見直しを求めるものもある。これは 2010 年秋の日本の対応(前原国交相の従来
の日中コンセンサスの撤回)も彼らの主張を増幅させたと中国側の戦略研究者は指摘している。
中国海監 23
2010 年 12 月に国家海洋局の北海総隊に配備され海洋権益防護の役割を持つ長さ 77 m,排水量 1350 トン、
航速 20 ノットの巡視船。3 月 11 日発生した東日本大地震においては、放射線調査のため 3 月 13 日深夜 1 時に
青島を出港し 26 時間にわたり 400 海里を巡航し海水の採取と分析を行った。
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