「アンコールトム」カンボジア KT 目 次 随 想 糖尿病と私……………………………………………… <久米賢次>… … 654 解 説 シリーズ解説:米の話(第4回)米の成分(2)澱粉 ユニークな澱粉を貯める米の開発とその利用可能性 ……………………………… <藤田直子・阿久澤さゆり>… … 656 解 説 シリーズ解説:糖質素材の機能と利用(第3回) ラクトスクロース………………………………… <藤田孝輝> … 664 連載エッセー:食の遠近画法 ケとハレ……………………… <五明紀春>… … 672 海外技術・マーケット情報 デザイン変更のリスク……………………………………………………… 2010年,アメリカのスポーツ飲料 ……………………………………… 食品の自然度と消費者の認識 …………………………………………… 食品のシェルフライフの測定法 ………………………………………… 自然の食品に含まれる抗酸化物質 ……………………………………… リラクセーション飲料の開発 …………………………………………… PACKAGING NEWS … …………………………………………………… 〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰 674 676 679 681 684 686 688 〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰 〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰 特別解説:カムカム(Myrciaria dubia)果汁の肝炎抑制作用に関する研究 ……………………………………………………<赤地利幸>… 特別解説:加温処理によるソーセージの品質向上………………<坂田亮一>… 技術用語解説:生分解性プラスチック……………………………………………… 業界トピックス:缶コーヒー 終盤2カ月で巻き返しを………………………… 業界の話題 …………………………………………………………………………… 今月の統計 …………………………………………………………………………… 最近の技術雑誌から ………………………………………………………………… 野菜・果物を巡って(第二十三話)ドリアンとの出会い……… <吉田企世子>… 692 698 702 703 704 708 710 715 FOOD & PACKAGING 缶詰技術研究会 http://kangiken.net/ 随 想 糖尿病と私 く め けん じ 久 米 賢 次 食品品質保持技術研究会 会長 (㈶日本食品分析センター 常務理事 ) ○はじめに 私が会長をしている研究会は,名 ○体重の激減 翌年平成19年の正月1日,御節 前の通り食品の品質保持をメインテーマとしてい 料理を並べ食事の準備をし,兄から毎年送られて ます。その初期の段階では,今や種々の包装食品 くる年賀用の旨し酒を,新年の挨拶をしながら口 に封入され,どこでも見かける「脱酸素剤」の普 に運んだとき,自分の口から出た言葉に首を傾げ 及に努めました。「食品と容器」には,この話題 てしまいました。「今年の酒は出来が悪いのかま 提供が意に副っていると思いましたが,人の健康 ずくて飲めない」と言って猪口に口を付けただけ の維持も重要な品質保持的テーマと考えました。 で飲めませんでした。それが糖尿との関連があっ 平成18年の2月,風邪がなかなか抜けず医者に行 たとの認識もなく,元日から5日の間ずっと同じ ったところ,治りが悪いのはと,尿検査が追加さ 官能評価状態でした。一つだけの違いを除いて。 れました。結果は,診断紙の色が最大値真っ青を それは,体重が毎日1kgずつ減ったことです。 示し,医者からは「あなたの尿を舐めたら甘い筈 酒がまずくて飲めなかった事以外は,通常の食事 だよ」と脅されました。それまでの健康診断で特 をし,何も変わらない生活だったのに。結果,正 に悪く無かったので,医者が遊びで砂糖水を診断 月休みの間で77kgあった体重が5kg減少して72kg 紙に付けて誇張した位に思いました。 になりました。普通であれば,食べてやせるとい ○最初の異変 その後何も無く過ぎ,その年の う,こんな喜ばしいことはないダイエットであり 暮れの飲み会が始まり,毎日のように飲んでいま ます。 した。まず小さな異変は,傷が治りづらく,特に ○医者に行って 流石に,ここまで来ると,急 脚に受けた擦り傷や打撲は治りが悪く,市販の軟 激な変化をもたらす他の病気を疑い,正月休み明 膏をすり込んでいました。そのうち擦れるときに けに家族に内緒で医者に行きました。血糖値がな 「ひりっ」とした痛みを感じるようになり,軟膏 んと420(通常は100程度)で,急性糖尿病との診 の量,回数多く患部に塗りこみだしました。更に 断,即刻入院の手続きが必要と脅されました。担 体毛が抜け落ち始め,変調を意識し始めました。 当医からは,入院して病院食で食事管理をするの 皮膚,特に粘膜部分にヒリヒリ感が激しくなり, が良く,勤め先が近いから病院から通勤したらど 下半身の部品が取れてしまいそうな感覚に襲われ うかと勧められました。それでも,まだ糖尿とい るようになりました。過去に悪いことをした覚え う病名だけなのか,他の病気はないのか,あまり も無いのに,何が悪かったのかを思い起こしなが 納得していなかったので,通いで対応する自己管 ら。 理食事療法を選びました。 食品と容器 654 2010 VOL. 51 NO. 11 早速に,1日1,600kcalの食事をスタート。料理 分の父親と同じような数値なので飲酒量は問題な を目の前に並べてみると,結構貧相なメニューに しと,これについては大らかです。 なります。一つだけよかったのは,今まで太って ○医者の指導とそれへの対応 月1回金曜日の いたせいか,蓄積が多かったのか食べる量が減る 診察の指導の中で,朝,昼,夕の食事を主食,副 ことにあまり抵抗はありませんでした。それから 食,間食に分けて1日ごと記述提出用の用紙を渡 は,毎朝体重計に乗り,3ヶ月かけて更に5kg されました。食事記録と摂取した時間,歩数も記 体重を落としました。運動としては,事務系の従 録しました。朝食はご飯150g(茶碗半分程度に 事時間が多い人用として1日6,000歩以上を初期 縮緬雑魚1抓み),味噌汁,焼き魚(または肉), 目標に設定されました。その後もコントロールし 煮物,野菜(サラダまたは焼き),プレーンヨー て,最大に落ちた時は,14kg減で63kg台まで行 グルト,果物をベースのバリエーションで結構シ きました。この間,血液検査の数値は,見る見る ッカリ摂ります。更に,デジカメを使った記録も 内に全ての項目で正常範囲に入っていきました。 併用しました。朝は自宅なので献立が分かります ただし,ここまで短期に落としてしまうと,筋肉 が,昼食と夕方の不定期な食事はメモが直ぐにで 全体が落ち,お尻の骨が出てしまい,椅子に長時 きず,思い出すのに苦労したためです。外部の方 間座っていることもままならなくなりました。2 との食事の場合も話の合間をぬって記録をさせて 年過ぎたぐらいからは,痩せすぎて力が入らなく もらっています。意外と難しいのは,料理の具が ならない10kg減の67kgに目標値を設定していま 重なってしまい後で中身が分からなくなることが す。 あるので,さり気無く広げて全部の具材が分かる ○ダイエットの中心 私は烏賊中毒と思えるほ ようにして撮ります。これは,慣れると可能です。 ど,イカが好きで,イカ食品があれば,いくらで ○最後に 平成20年度患者調査の糖尿病の総患 も酒を飲んでいることが出来ました。それで,欠 者数は237万人で,入院患者の16%が糖尿病という かさず食べていたのが,裂きイカ(ブランデーに 結果が出ています。また,2007年の調査では,糖 浸してフランベするとおいしいお抓みに変身), 尿病が強く疑われる人や「予備群」はなんと2,210 イカ燻製でした。しかし,表示の中の原材料を見 万人といわれています。今年の7月には,糖尿病 ると何と,多い順に列記されている2番目が砂糖 学会からヘモグロビンA1c*という指標と3項目 でした。(表示は見ているつもりでしたが官能的 (空腹時血糖,OGTT2時間負荷試験,随時血 に甘さをそれほど感じないで旨さを感じてしまう 糖)のうち一つが絡んで糖尿病と診断されること と,量的な認識は薄らいでいたようです)そこで, になりました。万病の元糖尿病は軽い症状のうち 他のお抓みも表示を確認すると,ほとんどが2番 に対策を講じるのが大事であることを体験しまし 目に糖分が書かれていることが分かりました。そ た。体の品質保持のため早め早めに手を打ち,病 こからは,素干しするめを購入,自分で焼いて, 気に負けない運を呼び込んでおくことをお勧めし 糖分を使わないお抓みを用意し,「スルメダイエ ます。 ット」を励行することにしました。酒は,気分の * 糖がついたヘモグロビン(Hb)で,Hbの生体内に 問題ですが,日本酒は,酌み交わすので飲んだ量 おける平均寿命は約120日で,HbA1cのHbに対する割 が分かり辛いため減らし,ビールはカロリー面か 合は,過去1ヶ月~2ヶ月の血糖値の指標となる。正 ら発泡酒をコップ1杯に,中心はウイスキー,芋 常値は,4.3 ~ 5.8%で,6.5%以上であればほぼ糖尿病 焼酎のロックか水割りで2~3杯嗜んでいます。 と判断される。 担当医からは,健康診断の肝臓系の結果から,自 食品と容器 655 2010 VOL. 51 NO. 11 シリーズ解説:米の話(第4回) ●解説● でん 米の成分(2)澱粉 ユニークな澱粉を貯める米の開発とその利用可能性 ふ じ た ・ な お こ 大阪女子大学学芸学部基礎 理学科卒業。大阪府立大学 農学研究科園芸農学専攻博 士課程修了。科学技術特別 研究員,秋田県立大学生物 資源科学部助手,助教を経 て現在,同准教授。 博士(農学) あ く ざ わ ・ さ ゆ り 大妻女子大学家政学部卒業。 東京農業大学農学研究科修士 課程修了。東京農業大学農学 部 (現 応用生物科学部) 助 手,講師を経て現在,同准教 授。 博士(農芸化学) 藤 田 直 子 阿久澤 さゆり 防ぐために政府による生産調整をせざるを得なく ●1.これまでの米育種● なっているからである。そもそも,食事の西洋化 我々日本人にとって,米は欠かすことができな と多様化などが原因で現代の日本人の米を食べる い。「朝ご飯」,「夕ご飯」と,必ずしもお米を食 量が1960年代と比べて約半分にも低下している。 べるわけでもない時でさえ,「ご飯」と呼ぶのは, 一方で,約40%である我が国の食糧自給率を向 我が国において,「食事」イコール「お米」と言 上させるためにも,95%の自給率を誇る米の積 うくらい,昔から米が食事の代名詞であったから 極的な利用が切望されている。 であろう。 また,米は日本人にとって特別な農産物であり, 米の育種は,農水省や県の農業試験場等で盛ん その生産手法の経験的蓄積と品質における価値観 に行われ,食味,耐病性,育成のしやすさ等が改 は,諸外国に類をみないほどの高い基準を持って 善されてきた。現在は炊飯米の食味という点では, いる。米の収穫は,農耕民族として山と海に挟ま かなりのレベルに達しているように思われる。こ れたわずかな農地で,年に一度の雨季と水田の水 れらの多くは,有望品種同士を掛け合わせ,後代 位に注意を払い続けて得られた成果であった。 から育種目標にマッチした系統を選抜することで, 我々が米を利用する場合,「米粒の美しさと美味 選りすぐりの品種として誕生する。米には,タン しさ」を想定するが,炭水化物としての供給源で, パク質や脂質も含まれるが,成分の8割が澱粉で かつ低タンパク質食材という利点から,小麦アレ あるため,澱粉も食味,食感等に関与することは ルギーに対する代替素材にとどまらず,多くの利 明らかである。しかし,残念ながら,有望品種の 用性が開発されはじめた。最近は米が炊飯米のみ 食味等の向上の原因の多くは解明されないままで ならず,米粉パン,米粉麺などさまざまな用途に ある。 利用されている。既にインターネット等でも,米 日本の水田は,260万ヘクタールにものぼるが, 粉を用いた料理のレシピは容易に入手できるまで そのうち3割以上が休耕田であり,米を生産して になったが,これらのほとんどは,炊飯米用の通 いない(平成15年)。これは,米価格の下落を 常品種が用いられている。今後,さらに機能性等 食品と容器 お い めん 656 2010 VOL. 51 NO. 11 米の成分(2) 澱粉 を持ったさまざまな特徴のある米が開発されれば, クチンからなり,多くの作物の澱粉は,アミロー 米を用いた食品の多様化がすすめられ,食料自給 スが20~35%,残りがアミロペクチンの割合で 率の向上や,休耕田の有効利用,食品産業の活性 混っている。各分子のグルコース重合度や分岐頻 化につながるであろう。 度は一定ではなく,マルチな分子の集合体である 我々は,澱粉生合成関連酵素に着目し,これま のが澱粉の特徴でもある。特に,植物のアミロペ でに行われてきた育種方法とは全く異なる方法で, 機能性を持った,これまでにない性質の澱粉を蓄 積する米を開発し,米の炊飯米以外での利用や, 工業利用を目指している。食材としての開発と工 業利用としての開発に境界があるのかは分からな いが,我々が持っている米に対する文化的背景を 大切にしながら,機能性素材としての米の開発を さらに進めていきたい。 ●2.植物の澱粉生合成 メカニズム● 1)澱粉生合成に関与するアイソザイム まず,植物の澱粉合成メカニズムについて解説 したい。イネの種子のうち,我々が炊飯米として はい こ 食しているのは,胚と果皮,糊粉層を含む部分を 精米することで除去した胚乳部分である。胚乳に は,8割の澱粉が蓄積されている。特に種子の中 央部は,多角形の澱粉粒が高密度に詰め込まれ 第1図 米の澱粉粒の走査電子顕微鏡観察。米断片 の中央部分(上段)および精製澱粉粒(下段) ている(第1図)。ちなみに,澱粉粒の形や大き さは,植物種によって非常に多様性がある。 第1表 イネの澱粉合成関連酵素と そのアイソザイム 胚乳に蓄積された澱粉は,どのように合成され 機能 ているのだろうか。澱粉を作っているのは,「遺 酵素名 アイソザイム 基質供給 ADP グルコースピロフォ 大サブユニット 4 種類 スフォリラーゼ(AGPase) 小サブユニット 2 種類 伝子」にコードされた「酵素」である。澱粉生合 成に関与する酵素は,どの植物種でもほぼ共通し 直鎖伸長 スターチシンターゼ (SS) ており,少なくとも4種類の酵素が関与してい る(第1表)。 澱粉は,グルコースが多数重合した巨大分子で 枝作り あるが,それらの結合様式は,α1,4グルコシド 結合による直鎖とα1,6グルコシド結合による枝 枝切り 分かれ構造からなる。澱粉は,基本的に直鎖から SSI, SSIIa, SSIIb, SSIIc SSIIIa, SSIIIb SSIVa, SSIVb GBSSI, GBSSII ブランチングエンザイム BEI (BE) BEIIa, BEIIb デブランチングエンザイ ISA1, ISA2, ISA3 ム(DBE) PUL なるアミロースと,枝分かれ構造を含むアミロペ 食品と容器 657 2010 VOL. 51 NO. 11 シリーズ解説:米の話 クチンは,クラスター構造という一定の空間にで において,ユニークな澱粉を蓄積するメカニズム きるだけ多数のグルコースを詰め込むための独特 の中心となっており,高等植物の最大の特徴でも の構造をしている。このような超高分子を合成す ある。 るために,イネのような高等植物には,さらに異 2)イネの栽培種 なる遺伝子にコードされた多数の酵素(アイソザ イネの栽培種にはインディカ種とジャポニカ種 イム)が存在する。これらは,同じ触媒反応であ がある。インディカ米は,長粒米で,パサパサと るものの,基質特異性,組織特異性等が異なり, した食感が特徴である。一方,我々が通常,炊飯 役割分担することで複雑な構造をした澱粉を合成 米として食しているのは,ジャポニカ米であり, している。植物種によってアイソザイムの構成が お箸に固まりとして乗るように,炊飯した際に, 異なるため,あるいは,アイソザイムの構造も微 互いの米が接着する。食感もインディカ米と比べ 妙に異なることから機能も同一ではないため,作 るとネバネバしている。これらの特徴は,澱粉の られる澱粉の成分や構造は異なる。また,同一植 成分と構造の違いが原因である。 物(品種)においても,気候や栽培環境が異なれ インディカ米とジャポニカ米の澱粉の成分や構 ば,生産される澱粉の成分や構造は微妙に異なる。 造の違いに関与しているのは,大部分は澱粉生合 これは,登熟中の温度等に対する各アイソザイム 成に関与するアイソザイムのうち,二つの澱粉の の反応がそれぞれ異なることに起因すると考えら 鎖を伸長する酵素,スターチシンターゼ (SS) アイ れる。また,アイソザイムのいずれかが欠失した ソ ザ イ ム, 即 ち,GBSSIとSSIIaで あ る と 考 え 変異体や,人工的に特定の遺伝子を胚乳内で発現 られている(第2図)。 させた組換体では,澱粉の成分,構造が大きく変 GBSSIはアミロース合成に関与するアイソザ 化することが分かっている。一方で,多数のアイ イムで,このアイソザイムが完全に欠損すると, ソザイムの存在は,仮にいずれかが欠損しても他 アミロペクチン100%,即ち,アミロースが合成 のアイソザイムが相補して澱粉を合成するための されない(アミロースフリー),いわゆる「もち スペアと考えられるが,これが後に述べる変異体 米」となる。モチ性変異体は,イネのみならず, はし トウモロコシ,アワ,キビ,ソルガム等に も存在し1),また,人工的にコムギ2),ジ ャガイモ3) 等でもモチが育成されている。 即ち,いずれの植物種もGBSSI遺伝子を 持っていることを示す。GBSSI遺伝子に おいて,多くのインディカ米が野生型であ るのに対し,多くのジャポニカ米では,エ キソン1とイントロ1の境目に変異が生じ ている。このため,ジャポニカ米では完全 なmRNAが産生されにくくなり4),GBSSI 量が少なくなるため,インディカ米の約 第2図 イネ栽培品種(インディカ米および ジャポニカ米)の澱粉の特徴 食品と容器 25%のアミロース含量に対して,約20%と 低下している5)。従って,ジャポニカ米は, 658 2010 VOL. 51 NO. 11 米の成分(2) 澱粉 GBSSIのリーキー変異体(活性が低下した変異体) に相当するアイソザイムの活性低下が原因であ ということができる。一方,アミロースが全くで ることが,最近明らかになった11)。 きないモチ品種は,GBSSIのヌル変異体(完全欠 3)変異体とは? 損変異体)ということができる。アミロース含量 澱粉生合成メカニズムを解明するためには,こ 6) は,糊化澱粉の物性に大きな影響を与える 。ア れに関与する多くのアイソザイムの各機能を解明 ミロース含量の低下は,結果としてネバネバとし することが必要である。それには,特定のアイソ た食感が得られる。 ザイムをコードする遺伝子が変異することでその インディカ米,ジャポニカ米の澱粉構造に大き アイソザイムの活性を失った(あるいは低下した) な影響を与えるもう一つのアイソザイムはSSIIa 変異体を単離し,それが正常な野生型とどう違う である。SSIIa遺伝子においても,多くのインデ かを比較することが効果的である。 ィカ米は野生型である。SSIIaは,アミロペクチ 第3図に,イネの代表的な澱粉変異体の種子の ンの鎖の重合度(DP)が6~12のものを13~24 写真を示す。これらは,九州大学農学研究科の佐 7)8) 藤光教授のグループで単離された,いずれも澱粉 所の変異が生じている多くのジャポニカ米では, 生合成関連アイソザイムが欠損した代表的な変異 SSIIa活性が著しく低下しており,インディカ米 体である。これらは,ジャポニカ米を元にして, のアミロペクチン(L-アミロペクチン)のように, 化学突然変異源で処理した後代から選抜したもの 十分にDP13~24に鎖を伸長することができな であるため,GBSSIおよびSSIIaのリーキー変異 い。従って,DP6~12の鎖がインディカ米より 体がバックグラウンドになっていることはいう 豊富になり,このことが,S-アミロペクチンと呼 までもない。それらに加えて,各原因遺伝子が変 ばれる構造の原因となる。このインディカ米とジ 異を生じ,それらがコードするアイソザイムの活 ャポニカ米のアミロペクチンの構造の違いは,澱 性を失っている(低下している)ために,澱粉の 粉の糊化温度に多大な影響を与える。澱粉は,生 成分や構造が大きく変化している。野生型の種子 澱粉の時はアミロペクチンの近接した2本の鎖が は半透明であるのに対し,これらの変異体は,澱 互いに二重らせんを形成しているが,水と熱等を 粉成分および構造の変化から,白濁したり,しわ 加えて糊化した場合,このらせんがほどける。二 が寄るなど,特徴的な種子形態を示す。一方で, 重らせんが短ければ,低い温度でらせんがほどけ アイソザイムの活性が無くなっても,全く種子形 に伸長する機能を持つ 。SSIIa遺伝子に3カ るが,長いと高い温度が必要となる。DP 6~12の短い鎖が豊富なジャポニカ米は, 低い温度で糊化し,DP13~24の比較的長 い鎖が豊富なインディカ米は,高い温度を 与えないと糊化しないという特徴がある9)。 つまり,ジャポニカ米は,インディカ米よ り低い温度で煮えるということになる。最 近,サツマイモの低温で煮える品種「クイ ックスイート」が農水省沖縄九州試験場で 第3図 イネの代表的な澱粉変異体 育成された10)が,この品種もイネのSSIIa 食品と容器 659 2010 VOL. 51 NO. 11 シリーズ解説:米の話 態に影響を与えない変異体も存在する。我々のグ ループでは,SSI変異体 13) 変異体 ていることがあることから,品種等との戻し交配 12) やプルラナーゼ(PUL) によってさらに育種する必要がある。 などの,種子形態に全く影響を与えない ●3.変異体米の産業利用可能性● 変異体を単離した。これらの変異体は,(独)農 業生物資源研究所の廣近洋彦博士のグループで開 1)澱粉の産業利用の現状 発されたレトロトランスポゾンTos17の挿入に 澱粉は,食用作物として直接食する以外にも, よってさまざまな遺伝子発現がノックアウトさ 我々の身のまわりのさまざまなものに利用されて れたミュータントパネルからPCR法を用いて選抜 いる。酒類の原料としてコーンスターチ,パンや された。即ち,SSIやPUL遺伝子にTos17が挿入 パスタの原料として小麦粉,せんべい,おかき, されてその発現ができなくなったイネ系統を選 あられ,スナックなど菓子類にもトウモロコシ, 抜するという方法である。このような研究手法を, 小麦,米由来の澱粉が用いられている。また,ジ 種子等の表現型の原因酵素が何であるかを探る ュース等に添加されているブドウ糖果糖液糖は, 「正遺伝学的手法」に対して,「逆遺伝学的手法」 トウモロコシ澱粉から作られる。さらに澱粉は, という。これらの遺伝子がノックアウトされた種 食品類のみならず工業利用もされている。段ボー 子の胚乳澱粉の特徴を調べることで,これらのア ルの接着剤にはトウモロコシ澱粉が用いられ,室 イソザイムの役割が明らかになった。 内用壁紙の接着剤としては,カドミウム汚染米が このように劣性ホモの遺伝子型として単離され 用いられるという。また,コピー用紙の表面にも た変異体は,次世代もその性質を維持する。また, トウモロコシ澱粉が塗布されており,その出荷量 変異体は,遺伝子組換体とは異なり,外来遺伝子 は莫大な量である。ガラス繊維を生産する際にも を導入しているわけではないので(Tos17は,も 高アミローストウモロコシ澱粉が用いられる(第 ともと日本晴に2コピー存在していたため,外 4図)。さらに,石油や石炭など,化石燃料に替 来遺伝子には相当しない),その生育に制限はな わるバイオ燃料として,アメリカではトウモロコ く,一般水田で栽培も可能である。しかし,変異 シ澱粉が用いられ,トウモロコシの価格が高騰し 体の多くは,突然変異源で処理された際に,変異 た時期もあった。 の原因となった遺伝子以外の箇所にも変異が生じ 現在までのところ,これらの産業利用は,コス ばく ト面から多くが輸入されたトウモロコシ や小麦澱粉が用いられる。しかし,本来 は,用途にマッチした性質を持つ澱粉を 積極利用するのが理想であろう。我々は, 我々が開発したユニークな性質を持つ変 異体米の澱粉の産業利用を目指している。 2)変異体米の産業利用可能性 我々は,SSアイソザイムの一つであ るSSIIIaが欠損した変異体をミュータン トパネルから単離した14)。SSIIIaは,主 第4図 さまざまな用途に利用される澱粉 食品と容器 として登熟胚乳で発現する重要な酵素 660 2010 VOL. 51 NO. 11 米の成分(2) 澱粉 の一つであるが,このアイソザイムを欠失すると 連アイソザイムの欠損が,胚乳構造にも影響を及 アミロペクチンの長鎖が減少することから,アミ ぼしていることを示唆するものである。 ロペクチンのクラスターを連結する長鎖の伸長に 第6図に炊飯米の破断特性として,脆性破断を 機能していることが明らかになった。この変異体 示したインディカ米の破断曲線と延性破断を示し は,それ以外に,アミロース含量が野生型の1.5 た ジ ャ ポ ニ カ 米 の 破 断 曲 線 の 例 を 示 し た。 倍に増加すること,熱糊化粘度が劇的に低下する SSIIIa変異体米の炊飯米の物性は,ジャポニカ などの特徴があった。澱粉は,動物が食した場合, 米と異なり,インディカ米に見られる破断現象が 唾液,すい液の消化酵素によって最終的にグルコ 観察され,さらに,表面の付着性が低く米粒とし ースに分解され,小腸で吸収されるが,アミロー ての特徴はインディカ米と近似していた。これは スやアミロペクチンの長鎖の一部は,消化されず 「攪拌・調味料の噴霧」などの加工工程での機械 に高分子のまま大腸に到達する難消化性澱粉(レ 適性が期待でき,冷凍米飯やレトルト米飯として ジスタントスターチ:RS)となることがわかっ の利用形態が考えられる。 てきた。人がRSを摂取すると,ダイエット効果 また,米粉および分離澱粉の特徴は,ペースト を示したり,血糖値の上昇を防ぐほか,大腸の環 の粘度特性が極めて低く14),付着性が低い,すな 境を改善し,大腸癌予防にもなる。オーストラリ わち「切れがよいペースト」であることである。 ぜい だ かくはん がん ア等では,1日に20 ~25グ ラ ム のRSを 摂 取 す SSⅠⅠⅠ a 変異体 ることを奨励しているが,現在,RS添加剤とし て販売されているのは,高アミローストウモロ コ シ か ら 製 造 し た も の の み で あ る。 我 々 は, SSIIIa変異体米澱粉が,高アミロースで粘度が低 えん いことに着目し,RSの機能を持った高齢者や嚥 下機能低下者向けの大腸癌予防米を目指した開発 を行ってきた。 第5図 日 本晴およびSSIIIa変異体米の炊飯米の 形態および生米に対する大きさ 米の利用形状として,米粒,米粉,分離澱粉が 考えられる。まず,SSIIIa変異体の米粒として × 0.1[N] 15 の特徴は,通常の炊飯条件(重量の1.5倍の加水 量と加熱時間)で炊飯米として可食できることで 12 荷重(N) ある。インディカ米や高アミロース米などは加水 量や加熱時間の延長など炊飯条件を検討する必要 があるが,SSIIIa変異体米は,特定の条件設定 は不要であった。炊飯後の炊飯米の形状は,破損 9 6 3 もなく米粒の形を保っていたが,通常のジャポニ カ種のように,ふっくらとした形状というよりも, 0 0 20 40 60 80 100 × 1[%] 細長く縦に伸張し,インディカ種に近似した炊飯 歪率(%) 米の形状となっていた(第5図)。このメカニズ 第6図 脆 性破断または延性破断を示す炊飯米の 荷重-歪曲線の例 ムについては現在検討中であるが,澱粉生合成関 食品と容器 661 2010 VOL. 51 NO. 11 シリーズ解説:米の話 これは,かゆやリゾットなどある程度の流動性が 遺伝子も含めて,欠失していないアイソザイムが 要求される食品形態にも対応でき,さらに,RS 欠失したアイソザイムの澱粉合成能を相補してい などの機能を付加した低粘度食品としての利用特 ることを示している。あるいは,胚乳内で,残っ 性を備えていることを示唆している。従来は,米 たアイソザイムが最大限活性を発揮できる環境に 粉による小麦代替という用途が主であったが,新 なるような変化が起きている可能性もある。この しい品質・特性を持つ米の開発により,粒食を目 ような状況で働くアイソザイムは,野生型のもと 的とした米利用特性の検討から,新しい米の粉食 もと働いていたアイソザイムとは微妙に機能が異 文化への広がりや,さらに,天然資源としてのフ なるため,成分や構造がユニークな澱粉が蓄積さ ィルム性の利用などを視野に入れた研究開発が今 れることになる。 後の新たな展開となる。 今後,我々は,これらのユニークな二重変異体 さらに,我々は,既に単離された変異体米同士 の育種を推進するとともに,産業利用可能性につ を交配することで二重に澱粉生合成関連アイソザ いて,さらに検討していく予定である。 イムを欠損した二重変異体の開発を行っている。 謝 辞 こ れ ら の 中 に は, さ ら に ア ミ ロ ー ス 含 量 が SSIIIa変 異 体 の1.5倍( 野 生 型 の 2 倍 以 上 ) に 本研究は,平成20年度JST地域イノベーショ も上昇した系統や,澱粉粒が大きさのそろった球 ン創出事業「シーズ発掘試験」,科学研究費基盤 形に変化した系統が得られた。驚くことに,これ 研究B19380007,生研センターイノベーション らの二重変異体は,ジャポニカ米がバックグラウ 創出基礎的研究推進事業,(財)浦上食品・食文 ンドであるため野生型であるインディカ米と比べ 化振興財団研究助成の支援で行われた。また,本 て,澱粉生合成関連酵素のうち,4種類もの酵素 研究の変異体選抜の際に(独)農業生物資源研究 活性が低下していることにもなる。それにもかか 所の廣近洋彦博士,宮尾安藝雄博士が開発された わらず,種子重量は,野生型の8割以上を維持し ミュータントパネルのご提供とご協力に感謝申し ている。これは,野生型では普段発現していない 上げます。 引 用 文 献 1)阪本寧男(1982) 穀類における貯蔵澱粉のウルチーモ naturally occurring functional allele of the rice waxy チ性とその地理的分布.澱粉科学 29: 41-55. locus has a GT to TT mutation at the 5' splice site of the first intron. Plant J. 15: 133-138. 2)Nakamura T, Yamamori M, Hirano H, Hidaka S, Nagamine T(1995)Production of waxy(amylase- 5)Sano Y(1984)Differential regulation of waxy gene free)wheats. Mol. Gen. Genet. 248: 253-259 expression in rice endosperm. Theor. Appl. Genet. 68: 3)Hovenkamp-Hermelink JHM, Jacobsen E, Ponstein 467-473. AS, Visser RGF, Vos-Scheperkeuter GH, Bijmolt EW, 6)Singh N, Inouchi N, Nishinari K.(2006)Structural, de Vries JN, Witholt B, Feenstra WJ(1987)Isolation thermal and viscoelastic characteristics of starches of an amylase-free starch mutant of the potato separated from normal, sugary and waxy maize. (Solanum tuberosum L.)Theor Appl Genet 75: 217- Food Hydrocolloids, 20: 923-935. 221. 7)Umemoto T, Yano M, Satoh H, Shomura A, Nakamura 4)Isshiki M, Morino K, Nakajima M, Okagaki RJ, Y(2002)Mapping of a gene responsible for the Wessler SR, Izawa T, Shimamoto K (1998)A difference in amylopectin structure between japonioca- 食品と容器 662 2010 VOL. 51 NO. 11 米の成分(2) 澱粉 sweetpotato starch. Plant Cell Rep. 29: 535-543. type and indica-type rice varieties. Theor. Appl. Genet. 104: 1-8 12)Fujita N, Yoshida M, Asakura N, Ohdan T, Miyao 8)Nakamura Y, Francisco PB Jr., Hosaka Y, Satoh A, A, Hirochika H, Nakamura Y(2006)Function and Sawada T, Kubo A, Fujita N(2005)Essential amino characterization of starch synthase I using mutants in rice. Plant Physiol. 140: 1070-1084. acids of starch synthase IIa differentiate amylopectin structure and starch quality between japonica and 13)Fujita N, Toyosawa Y, Utsumi Y, Higuchi T, Hanashiro indica rice varieties. Plant Mol. Biol. 58: 213-227 I, Ikegami A, Akuzawa S, Yoshida M, Mori A, Inomata 9)Nakamura Y, Sakurai A, Inaba Y, Kimura K, Iwasawa K, Itoh R, Miyao A, Hirochika H, Satoh H, Nakamura N, Nagamine T (2002) The fine structure of Y.(2009)Characterization of PUL-deficient mutants of amylopectin in endosperm from Asian cultivated rice(Oryza sativa L.)and the function of PUL on the rice can be largely classified into two classes. Starch/Stärke starch biosynthesis in the rice endosperm. J. Exp. Bot. 54: 117-131. 60:1009-1023 10)Katayama K, Komae K, Kohyama K, Kato T, Tamiya S, 14)Fujita N, Yoshida M, Kondo T, Saito K, Utsumi U, Komaki K(2002)New sweet potato line having low Tokunaga T, Nishi A, Satoh H, Park J-H, Jane J-L, gelatinization temperature and altered starch Miyao A, Hirochika H, Nakamura Y (2007) structure. Starch/Stärke 54: 51-57. Characterization of SSIIIa-deficient mutants of rice: 11)Takahata Y, Tanaka M, Otani M, Katayama K, the function of SSIIIa and pleiotropic effects by SSIIIa Kitahara K, Nakayachi O, Nakayama H, Yoshinaga deficiency in the rice endosperm. Plant Physiol. 144: M(2010)Inhibition of the expression of the starch 2009-2023. synthase II gene leads to lower pasting temperature in 「食品総合研究所研究成果展示会2010」のご案内 (独)農研機構食品総合研究所は,食品研究の専門機関として,食と健康の科学的解析,食料の安全性確保と革新 的な流通・加工技術の開発,生物機能の発掘とその利用など,食に係わる幅広い研究を行っています。当研究所の 全研究員(約100名)がパネルを展示し,研究者が直接,研究成果を説明する研究成果展示会2010を開催いた します。研究成果展示会と同時に,公開講演会(演題調整中) ,フード・フォラム・つくば主催の企業交流展示会, 「こ れはおいしいごはんぱん」,「グルテンなしで100%米粉パン」他二題のサテライトシンポジウムが,同時に開催し ます。つくば地域だけでなく全国における幅広い食品産業緒関係者との交流を深める場として,毎年700名程度の 方にご参加いただいています。 日 時:平成22年11月5日(金)9:30~16:00 会 場:つくば国際会議場 多目的ホール,中ホール 〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-3 参加費:無料 参加登録:不要 お問合せ先:食品総合研究所企画管理部連携共同推進室 TEL:029-838-7990・8017,FAX:029-838-7989 公開講演会・内容:平成22年11月5日(金)13:30~14:00 つくば国際会議場 中ホールにて ○「緑豆種子の効率的殺菌技術の開発と評価」 食品安全研究領域 食品衛生ユニット 根井大介 ○「微生物の物資生産能力増強に役立つ新規ストレプトマイシン耐性変異の発見とその利用」 食品バイオテクノロジー研究領域 生物機能解析ユニット 岡本 晋 ○「溶液X線散乱クロマトグラフィー法による食品に関連するタンパク質の特性解析」 食品バイオテクノロジー研究領域 生物機能制御ユニット 渡辺 康 ○「遺伝子組換え農産物検査の信頼性確保のための認証標準物質の生産・配付」 食品分析研究領域 GMO検知解析ユニット 橘田和美 食品と容器 663 2010 VOL. 51 NO. 11 シリーズ解説:糖質素材の機能と利用(第3回) ◆解説◆ ラクトスクロース ふじた・こうき 山形大学大学院 農学研究科修士課 程修了。 1985年塩水 港精糖 (株) 入社。 現 在, 理事, 技術部長。 理学博士 藤 田 孝 輝 寄与することが明らかになってきた 1,2)。食品成 ◆1.はじめに◆ 分の健康機能表示を世界で初めて制度化した特定 砂糖はその昔,薬として珍重され,その消費量 保健用食品制度を先導する役割を糖質が担ってき は文明のバロメーターとされていた。砂糖はショ た。本編では砂糖の有効利用を目的に開発された 糖を主成分とする甘味料と定義され,物理的特性 機能性糖質素材の1つであるラクトスクロースの (甘味質および加工適性)において他の糖質に比 製法,製品の特徴と今後の可能性について記述す べて非常に優れているため食品として多用されて る。*(砂糖年度:毎年 10 月1日から翌年9月 30 日ま きた。その砂糖消費量は 1973砂糖年度 * の318万 での期間) トンをピークに年々減少し,最近では 210 万トン ◆2.ラクトスクロースの 生産技術3)◆ を下回り,国民一人当たりの消費量も 17 kg 程度 である。この減少の原因は,異性化糖の飲料への 進出,ソルビトール・小豆・乳製品といった材料 ラクトスクロースは4 G‐galactosylsucrose と砂糖を海外で混合した加糖調製品の輸入量の増 (以下 LS と略す)とも呼ばれ,フラクトース,グル 加が大きな要因であるが,消費者の甘味離れも一 コース,ガラクトースからなり,その分子構造中 因である。近年のライフスタイルの変化と食生活 に植物由来のショ糖と動物由来の乳糖の部分構造 の欧米化にともなう食事内容の変化は,動物性タ を持つ3糖類である(第1図)。この LS はビフィ ンパク質,脂肪の過剰摂取をもたらし生活習慣病 ズス菌の選択的な餌となることが知られていた4)。 増加の原因となってきた。また,急速な高齢化社 また,牛乳に砂糖を添加してブルガリアヨーグル 会への移行と,健康志向の高まりから健康の維持・ ト菌で発酵したヨーグルト中に存在することが報 増進,疾病の予防と回復などにかかわる生体調節 告されていた5)。1957 年にイスラエルの Avigad 6) 機能が食品に求められるようになってきた。この がショ糖と乳糖にレバンスクラーゼを作用させて ような状況下で機能性食品が開発され,糖質にお 合成できることを報告した。それ以来,レバンス いても虫歯予防,低カロリー,整腸などの健康に クラーゼやβ-ガラクトシダーゼ7)を用いた合成方 食品と容器 えさ 664 2010 VOL. 51 NO. 11 ラクトスクロース 法が考案されたが,工業的生産には至らなかった。 する(炭酸飽充) 。さらに飲料や缶詰など液体状 筆者らは,1988 年から大阪市立工業研究所と共 態で長期保存するときに発生するにごり(おり) 同でショ糖を原料とする機能性糖質の開発に取り の原因となる高分子物質を限外濾過によって除去 組んでいた。土壌からショ糖を唯一の炭素源とす し,第2図に示す工程に従って製造される。 る培地に生育する微生物を拾い,その中からショ LSを固形分当たり55%以上含む製品 LS-55P は, 糖加水分解酵素ではあるが,キシロースや乳糖が 存在するとそれらの糖へ優先的にフラクトース転 移し,ヘテロオリゴ糖を生成することを特長とす る新たな Arthrobacter sp. K- 1株起源のβ-フラ クトフラノシダーゼを発見し,LS の工業化を可 能とした。 LS は,原料である乳糖とショ糖を約1:1の 重量比で濃度 40%に溶解し,Arthrobacter sp. K- 第1図 ラクトスクロースの化学構造 1株の産生するβ - フ ラクトフラノシダーゼ を作用さ せ て 合 成 す る。その際ショ糖分解 活性を持たない特殊な 酵母を同時に添加し, 30 ~ 35℃で反応する。 この反応工程では副生 するグルコースを特殊 な酵母に資化させて, 反 応 平 衡 を LS 生成側 に傾けることによって LS の収率を高 め て い る。この酵素・酵母同 時反応を加熱によって 停止したあと反応液に 消 石 灰 を 添 加 し 約 15 分間保持後,炭酸ガス を吹き込んで中和す る。この操作によって 糖質以外の不純物質は 不溶性の金属塩に吸着 ろ され濾過によって除去 食品と容器 第2図 各種乳果オリゴの製造フロー 665 2010 VOL. 51 NO. 11 シリーズ解説:糖質素材の機能と利用 仕込みの乳糖とショ糖の比率を 55:45 として反 して LS-40L,LS-55L を 20℃で評価した場合,く 応し,精製後,噴霧乾燥した粉末製品である。 せ,しつこさ,刺激のないまろやかな甘味であり LS-55L は,仕込みの乳糖とショ糖の比率を 45: グラニュ糖とよく似た味質を示す。 55 とし,乳糖含量を 10%以下に抑えた液状品で 2)加工特性 ある。LS-40L は,LS-55L にショ糖型液糖を添加 乳果オリゴ製品の粉末品の吸湿性は高く,取り し,LS 含量を固形分当たり 42%以上,乳糖含量 扱いに注意が必要である。液状品の水分保持能力 8%以下とした液状品である。さらに,擬似移動 はショ糖より優れている。水分活性,浸透圧はシ 層分画装置にて LS 純度を 88%以上に高め,噴霧 ョ糖と同程度であり,粘度はショ糖より若干高い 乾燥した粉末製品が LS-90P である。 値を示す。LS は中性域の pH で 100℃1時間程度 このラクトスクロースを主成分とする製品が の加熱ではほとんど分解はない。また,高純度の 「乳果オリゴ」であり,その製品中にはラクトス LS を 濃 度 50%,pH4.5 で 100,110,120 ℃ で 1 クロース以外に原料のショ糖と乳糖,副反応で生 時間加熱すると高温域では若干着色するがショ糖 ずるグルコース,フラクトース,ラクチュロース, より着色は少ない。しかし,還元糖が含まれる乳 1-ケストース,フラクトシルラクトスクロース 果オリゴ製品ではショ糖よりも着色が進行する。 などが含まれる。各乳果オリゴ製品の品質規格を 従 っ て LS-55P,LS-55L,LS-40L は タ ン パ ク 質 第1表に示した。原材料表示では「ラクトスクロ やアミノ酸存在下ではショ糖よりメイラード反応 ース」,「乳果オリゴ糖」,「乳糖果糖オリゴ糖」と は進行しやすい。 表示する。特に特定保健用食品では関与成分名と 酸 性 条 件 下 の 安 定 性 は pH3.0,4.0,5.0 で は して「乳果オリゴ糖」と表示することになってい 100℃で 30,60 分間加熱またはオートクレーブで る。 120℃,10 分間加熱した場合,pH が酸性域ほど LS の残存率は低下し,その分解の程度はショ糖 ◆3.物性と安定性8)◆ と同程度である。従って,食品加工や調理に使用 1)甘味度と甘味質 する際は pH 3前後の食品を加熱する場合には, LS の甘味度はショ糖を 100 とすると純品で 30 加熱温度および時間について注意する必要がある であり,乳果オリゴ製品は LS-40L で 79,LS-55L (第3図)。 および LS-55P では 50 ~ 55,LS-90P で約 30 に相 また pH3.0 ~ 6.0 に調整し,5~ 40℃で保管し 当する。また甘味質は 10%グラニュ糖を基準と た結果,LS は5℃では pH 3でも高い安定性を示 した。温度が高くなる 第1表 乳果オリゴ製品の品質規格 LS - 40L LS - 55P LS - 55L LS - 90P につれて酸性域で LS 無色透明,液状 白色粉末 無色透明,液状 白色粉末 の残存率は低下した。 固形分 72.0% 以上 95.0% 以上 75.0% 以上 95.0% 以上 着色度 0.100 以下 0.200 以下 0.100 以下 0.200 以下 糖組成 ラクトスクロース 42.0% 以上 55.0% 以上 55.0% 以上 88.0% 以上 安 定 で あ っ た。pH4.5 300 個 /g 以下 300 個 /g 以下 300 個 /g 以下 300 個 /g 以下 陰性 陰性 陰性 陰性 ~ 6.0 では保存期間が 5 個 /g 以下 5 個 /g 以下 5 個 /g 以下 5 個 /g 以下 商品名 形状 生菌数 大腸菌群 真菌数 食品と容器 666 保存温度が 40℃の場 合,pH3.5 以下では不 6カ月でも残存率は 60 %以上あり,pH4.5 以 2010 VOL. 51 NO. 11 ラクトスクロース せい 上での LS の安定性は高い。 ヒトの腸管内に棲息する細菌には,健康を維持 するために有効なビフィズス菌,乳酸菌や酪酸菌 ◆4.生理機能◆ のような有用菌と,有害物質を作り下痢や便秘な 1)難消化性 ど疾病を引き起こす有害菌が存在し,これらがバ LS は,人工的に調製した消化酵素による消化 ランスを保って菌叢を形成している。有用な腸内 試験では唾 液,膵 液で全く分解されず,胃液で 細菌は,難消化性糖質を代謝して酢酸 , プロピオ 1.5%,小腸粘膜酵素でもわずか 1.6%しか分解さ ン酸 , 酪酸など短鎖脂肪酸を生成し,腸の蠕 動運 れないことから,消化され難いすなわち難消化性 動や腸管からの水の分泌を促進するとともに腸管 だ すい ぜん 9) オリゴ糖であった 。また,消化・吸収されやす 内を酸性に保ち,その結果腸内菌叢改善,有害物 いブドウ糖やショ糖は摂取すると急激な血糖値お 質生産の抑制,便性,便通の改善効果をもたらす。 よびインスリン濃度の上昇が見ら れるが,LS を経口摂取した場合に は,急激な血糖値およびインスリン 濃度の上昇は見られず,消化・吸収 され難いことを示した 10)。消化さ れずに大腸に達した糖質は,腸内細 菌によって資化されるときに水素 ガスを発生する。この水素ガスは呼 気中に排出されるため,呼気中の水 素ガス排出挙動から難消化性糖質の 腸内細菌による資化の程度を知るこ 残存率(%) pH 3 pH 4 pH 5 100 100 100 80 80 80 60 60 60 40 40 40 20 20 20 0 とができる。LS 摂取後の呼気中水 0 30 60 0 0 30 60 0 0 30 60 加熱時間(分) 素ガスの排出挙動は難消化性の糖質 マルチトールと類似し,LS が難消 化性であり大腸に到達し,腸内細菌 残存率(%) pH 3 100 pH 4 100 によって代謝されていることを示し 80 80 80 た。難消化性オリゴ糖を含む食品の 60 60 60 40 40 40 年衛新 47 号)により求められ,LS 20 20 20 のエネルギー換算係数は2kcal/g 0 エネルギー値は「栄養表示基準」に 関する栄養成分等の分析法(平成8 である。各製品のエネルギー値は 0 LS-40L で 2.3kcal/g,LS-55L で 2.2 グラニュ糖 kcal/g,LS-55P で 2.8kcal/g,LS90P で 2.1kcal/g である。 そう 2)腸内細菌叢および便性状の改善 食品と容器 0 10 0 10 pH 5 100 0 0 10 加熱時間(分) ラクトスクロース 第3図 酸性条件での安定性 100℃で30分および60分加熱(a),120℃で10分加熱(b) 667 2010 VOL. 51 NO. 11 シリーズ解説:糖質素材の機能と利用 有用菌の中でも,ビフィズス菌は効果が高く,こ ル,クレゾール,スカトールなどの腐敗産物も減 の他にもビタミンB群を作ったり,病原菌の侵入 少した 12)。従って LS は1日当たり1g以上の摂 を防いだり,有害菌の繁殖を抑えたり,免疫力を 取によりビフィズス菌に選択的に資化され,酢酸, 高める作用がある。健康の維持・増進には有用菌 プロピオン酸や乳酸のような有機酸に代謝され, 優勢の菌叢を保つことが重要と考えられている。 有用菌優位な環境を作り,腐敗物質の生成を抑え, 健康な成人男性学生8名にLS1g/日を1週間, 便性状を改善されるものと考えられる。 次いで2g/日を1週間摂取させ,LS 非摂取を2 3)整腸効果 週間,さらに LS 3g/日を1週間摂取させ腸内菌 神奈川県と大阪府在住の 18 ~ 55 才の女性 13), 叢を分析した。LS 摂取期間はビフィズス菌の菌 兵庫県の女子学生 14) を対象とし,テーブルシュ 数が有意に増加し,バクテロイデス,レシチナー ガーを用い1日当たり LS 純品換算で2g~6g ゼ陽性クロストリジウムの菌数は減少した。また, 摂取してもらい,排便回数,排便日数,便性状お 第4図に示すようにビフィズス菌の占有率は LS よび排便感についてアンケート調査を実施した。 摂取前の 17.8 %に対して1g/日1週間の摂取で その結果,1 日当たり LS として2~6g摂取, 38.7%さらに2g / 日1週間の摂取で 45.9%とな いずれの場合も有意に排便回数および排便日数は り,摂取中止後2週間で 18.2%と摂取前のレベル 増加し,その効果は対照期の排便回数が1週間当 に戻り,3g / 日1週間の摂取では再び 43.9%に たり4回以下の便秘傾向者ほど顕著であった。 増加した せつ 11) 。また,成人男性学生8名に LS 3 この整腸効果は排泄機能が衰えてきた高齢者に g/日を1週間,次いで6g/日を1週間摂取させ 対しても有効であり,各種の老人ホームで利用さ たとき,糞便 pH は有意に低下し,便量は増加傾 れ,緩下剤や浣 腸の使用頻度の減少など老人の 向を示した。このときの便中の有機酸量,水分量 QOL を改善するとともに健康維持に有効であっ はともに増加傾向を示し,アンモニア,硫化物は た。また便性改善にともなう便臭の軽減,自然排 減少し,悪臭の原因であるインドール,フェノー 便の増加は介護者の負担も軽減している。 ふん かん 4) カ ル シ ウ ム(Ca) の 吸 38.7% 45.9% 56.2% 収促進と骨に及ぼす影響 Caの摂取不足が指摘されて 久しいが,その状況が変わっ ていないのは Caを摂取し難い 食環境に問題があり,そのよ 18.2% うな環境のなかでは Ca の吸収 率を高めることが重要である と考えられる。従来 Ca は小腸 45.7% から吸収されると考えられて いたが,難消化性オリゴ糖は 発酵により生じた有機酸が腸 管内の pH を低下させ Ca の溶 第4図 腸内細菌叢の構成に及ぼすラクトスクロース摂取の影響 食品と容器 668 解性を高め,大腸においても 2010 VOL. 51 NO. 11 ラクトスクロース たい Ca の吸収を促進することが明らかになった。 よび糞中の 45Ca は有意に低下し,大腿骨と脛骨中 LS に関しては 0.3% Ca の低 Ca 食の4週齢のラ の 45Ca は有意に高値であった。従って LS 投与に ットに 0.7% LS 摂取で明らかに Ca 吸収率および保 より消化管下部からの Ca の吸収が高まり,吸収 有率が高まり,脛骨および大腿骨の海綿骨の骨密 された Ca は骨に取り込まれることが明らかにな 度と Ca 含量の増加が認められ,さらに大腿骨お った 18)。 よび脛骨の破断強度が向上することを報告した 15)。 5)乳糖不耐症の症状の軽減 女子大学生においても1日当たり LS として 6.0 Ca の給源として優れている牛乳であるが,飲 gを 92 週間摂取した試験が実施され,LS 摂取に むとおなかがゴロゴロする,下痢,腹痛などを訴 よって糞便 pH が低下し,Ca 排泄量の減少するこ える乳糖を分解できない乳糖不耐症者は日本人に とから Ca の腸管吸収促進が示唆された。また, は多い。この様な乳糖不耐症者に LS を摂取させ 骨吸収マーカーである尿中ピリジノリン,デオキ ることによって症状が緩和されることが報告され シピリジノリンが LS 摂取によって低下した。こ ている 19)。 のマーカーは骨の分解に伴って骨の基盤となるコ 6)抗肥満効果 ラーゲンが分解し,尿中へ排泄されるものである HanらはICR 系雌性マウスに牛脂 40% を含む高 ことから,上記の結果は骨の分解が抑えられ,コ 脂肪食で誘導される肥満マウスに LS を投与する ラーゲンの分解も抑制されたものと考えられる。 と生殖器周囲脂肪組織重量および肝臓の中性脂肪 さらに出納試験も実施され,第2表に示すように の増加が有意に抑制されることを示した。脂肪は けい 16) Ca および Mg の吸収率が高まることを報告した 。 リパーゼで分解され,脂肪酸とβ - モノアシルグリ 腸管から吸収された Ca 量は尿中 Ca 排泄量に反 セロールとなり腸管から吸収されるが,LS によ 映されることが知られていることから,16 名の ってβ - モノアシルグリセロールの腸管吸収が阻害 成人健常男性に対して,LS 3.0 gと Ca 300 mg されるためと推定された 20)。Mizoe らは Wistar 系 摂取後2時間ごとに採尿および採血を行い,LS ラットを用い,通常食(AIN-93G)に5%LS を の腸管 Ca 吸収に及ぼす影響を検討した。LS 3.0 g 混合した餌を与えることによって腎臓周囲脂肪お じん 摂取時は対照であるマルトース 3.0 g 第2表 ミネラル出納試験 摂取時と比較して尿中 Ca 排泄量の 有意な増加とデオキシピリジノリン 値の有意な低下がみられ,LS 摂取 によって腸管での Ca 吸収が促進され ることが明らかとなった 17) 。 LS による骨強化のメカニズム解明 のため,LS を投与したラットに放射性 同位体 45Ca を投与し,吸収と骨への 取り込みについて検討した。その結 果,LS 群の盲腸,大腸ともに増大し,pH は盲腸,大腸ともに有意に低下した。 LS 群の盲腸内容物,大腸内容物中お 食品と容器 尿 みかけの 吸収率 (%) 保持率(%) 375 ± 14 316.0 ± 20 382 ± 9 256.0 ± 46a 136 ± 71 113 ± 23 16 ± 5 33 ± 12a -21 ± 18 3 ± 12a 140 ± 6 147 ± 5 62 ± 10 70 ± 7 14 ± 4 29 ± 5a -30 ± 8 -19 ± 10a 524 ± 97 676 ± 105 55 ± 3 58 ± 3 -22 ± 14 -37 ± 16 摂取量 排泄量 * 糞便 Ca Mal 群 LS 群 Mg Mal 群 LS 群 120.0 ± 5 105.0 ± 6a P Mal 群 LS 群 691 ± 40 337.0 ± 27 719 ± 35 305.0 ± 25 * 1 日当たりの排泄 mg 平均値 ± 標準偏差 ; Mal 群;n=6,LS 群;n=7 a Mal 群に対して有意差あり 669 2010 VOL. 51 NO. 11 シリーズ解説:糖質素材の機能と利用 よび精巣周囲脂肪の重量が有意に低下することか ◆6.乳果オリゴ糖の利用◆ ら,内臓脂肪蓄積抑制作用を示し,LS が脂肪と直 接相互作用して腸管からの吸収を抑制することを 示唆した LS は物性,味質がショ糖に似ていることから 21) 。定清らはさらにヒトにおいても1 高い評価を得 , 飲料,乳製品,菓子,デザート, 日当たり6gの LS 摂取で内臓脂肪低減の可能性 を示した スープ,調味料など幅広く利用されている。特に 22) 。 LS は特定保健用食品の素材であり,食品レベル 7)免疫増強および免疫調整機能 で安全性と有効性が確認された食品には , 消費者 久米村らは LS 摂取により消化管内のイムノグ 庁から「ビフィズス菌を適正に増加させ , お腹の ロブリン A(IgA)産生能亢進と貪食能および血 調子を整える働きを有する。」旨の整腸作用と 清トランスフェリンを増加させ感染防御能を高め 「カルシウムの吸収を促進する。 」旨の Ca 吸収促 ること,さらに血中好酸球を抑えアレルギー反応 進に関する2つの健康クレームが表示許可されて を抑える可能性を示唆した。また LETO ラットお いる。現在 , 整腸作用に関しては卓上甘味料,果 よび OLETF ラットに LS を摂取させるとパイエル 汁着色炭酸飲料,キャンディー,ビスケット,ク 板リンパ球の培養においてインターフェロン ッキー,発酵乳,果汁飲料,粉末清涼飲料,菓子 こう どん (INF)-γの産生能が亢進することを示した そ 23) 。 パン,乳酸菌飲料,粉末味噌汁,錠菓,鉱水など また Taniguchらは LS を2%または5%含む餌 が許可され,LS は関与成分としてオリゴ糖のな で飼育したマウスに卵白アルブミン(OVA)で かでは最も多くの表示許可を得ている。2005 年 IgE を誘導し,血清中の OVA に対する IgE 量を測 2月に創設された規格基準型特定保健用食品は, 定すると LS 摂取によって有意に IgE の上昇が抑 これまでに許可実績が十分であり,科学的根拠が 制されること,スギ花粉症のアレルゲン (Cryj 1) 蓄積されている関与成分については,規格基準を に対する IgE も同様に抑制されることを示し,花 定め,審議会の個別審査は必要なく事務局で判断 粉症などのアレルギー症状の改善効果の可能性を し許可するものである。塩水港グループの製造す 示唆した 24) 。 る LS は成分規格に適合するものであり,これま でにオリゴ糖が許可された食品形態であれば他の ◆5.安全性◆ オリゴ糖と重複することなく1日摂取目安量2~ げっ歯類を用いた急性毒性試験,変異原性試験 8gを含めば有効性試験は不要であり,当該食品 (復帰変異,Rec-assay)では異常は認められな として摂取する量の3倍以上の過剰量摂取試験に かった。難消化性糖質では一般に緩下作用が見ら よる安全性が確認できれば従来と同様の特定保健 れるが,LS の場合成人男女共に体重1 kg 当たり 用食品として認められることになる。 LS として 0.6 g(体重 50 kg の場合 30 g)の摂 ◆7.今後の可能性◆ 取でも下痢の発生は見られなかった 25)。また,奥ら は女性の場合体重1 kg 当たり LS として 0.8 gの LS はビフィズス菌に選択的に資化されること 26) 摂取でも下痢の発生は見られないことを報告した 。 によって整腸機能を有するオリゴ糖として開発さ このように LS は下痢を起こしにくいオリゴ糖で れ,特定保健用食品をはじめとして多くの食品に ある。 使われている。LS は甘味が必要なときには LS-40 を,機能を重視する場合や食品の形態上少量しか 食品と容器 670 2010 VOL. 51 NO. 11 ラクトスクロース 配合できないときには高純度粉末品(LS-90 P) 腸内細菌叢とかかわる免疫調節機能と抗肥満 を選択することができる。また,新たな機能とし (メタボリックシンドローム)の研究は今後さら てビフィズス菌の増殖に起因すると思われる Ca に発展するものと考えられ,腸内菌叢をプロモー 吸収促進,乳糖不耐症の症状の軽減,抗肥満効果, トするラクトスクロース(乳果オリゴ糖)の利用 免疫調節機能について記述した。 はさらに拡大するものと考えられる。 参 考 文 献 1)中久喜輝夫:オリゴ糖の機能と利用,応用糖質科学, 42,275(1995). . 13)北岡久美子ほか:新薬と臨床,44,780(1995) 2)北畑寿美雄:転移酵素による糖質の合成,糖質エンジニ 14)緒方幸代ほか:食品化学学会誌,1,39(1995). アリングと製品化技術,畑中研一石原一彦編,サイエン 15)藤田孝輝ほか:栄食誌,52,343(1999). スフォーラム,pp.106-125(1993). 16)F. Teramoto et al:J Nutr Sci Vitaminol,52,337 3)藤田孝輝:ラクトスクロース(乳果オリゴ糖),「バ (2006) イオセパレーションプロセス便覧」 (社)化学工学会 17)藤田孝輝ほか:日本食品新素材研究会誌,9,46 「 生 物 分 離 工 学 特 別 研 究 会 」 編, 共 立 出 版( 東 (2007) 京),pp.196-201(1996). 18)E. Kishino et al:Biosci. Biotechnol. Biochem., 70(6),1485(2006) 4)Y.Minami et al:Chem.Pharm.Bull.,31,1688 (1983). 19)奥和之ほか:栄食誌,55,353(2002) 5)須山亨三ほか:第88回日本畜産学会大会講演要旨, p276,(1994). 20)Li-Kun Han et al:J.Traditional Madicines, 16,66 (1999) 6)G.Avigad:J.Biol.Chem.,229,121(1957). 21)A.Mizote et al:Biotechnol. Bioochem.,73(3),582 7)鈴木幸雄ら:特開公 昭64-85090. (2009). 22)定清剛ら: J.Appl. Glycosci., 55(Suppl.),40(2008) 8)藤田孝輝: 「オリゴ糖の新知識」早川幸男編著,食品 化学新聞社,東京,p.94(1998). 23)久米村ら:特開公 2001-64181 9)藤田孝輝ほか:精糖技術研究会誌,43,83(1995). 24)Y. Taniguchi et al:Biosci. Biotechnol. Bioochem., 71(11),2766(2007). 10)藤田孝輝ほか:澱粉科学,38,249(1991). 11)緒方幸代ほか:栄食誌,46,317(1993). 25)三国克彦ほか:澱粉科学,40,15(1993) 12)H.Hara et al:Bifidobact. Microflora, 13,51(1994) 26)奥恒行ほか:栄食誌,52,201(1999). 「食品と容器」年間予約購読申し込み受け付けについて 平成23年度の「食品と容器」の年間予約申し込みの受け付けをしております。 例年通り,本誌は前払い予約(1〜12月号)購読制となっております。新年号の発送を12月末に予定しており ますのでお申し込み,ご送金はお早目にお願いいたします。 〔平成23年度年間購読会費〕 年間12冊 8,000円(消費税・送料共) 缶詰技術研究会 〒103−0002 東京都中央区日本橋馬喰町1−8−4 TEL 03(3663)7251 FAX 03(3663)7253 食品と容器 671 2010 VOL. 51 NO. 11 食の遠近画法 ケとハレ ご みょう ○ ケは「日常」ハレは「非日常」である。節会, とし はる 入学式,卒業式,入社式,受賞式など,生活の折 五 明 紀 春 (女子栄養大学教授) り目,節目はハレである。忘年会,暑気払,送別 行きつけの駅前居酒屋のフロアを奇声を上げな 会,歓迎会もマイナーながらやはりハレと言えよ がら幼子が走り回るようになって,もうだいぶ経 う。職場同僚との「帰りの一杯」もハレと言えな つ。どうやらファミレス客たちが,日常的に一家 くもない。昼間と打って変わり,互いの肩を抱き を挙げて居酒屋に移動して来ているようなのだ。 合って涙したり,ネクタイを掴み合っての大声の 筆者と同じような視線で「定点観測」しておられ 口論になったりと,非日常的行為に及ぶことは決 る方も少なくないに違いない。 して珍しくはない。 何かとマナーに小うるさいファミレスから逃れ 一口に冠婚葬祭と言っても葬式はハレなのか, て,憚ることなく夜中まで宴会パーティーの大騒 そうでないのか,学会での論争には決着がついて ぎになる。むろん喫煙も歌声も自由である。底抜 いないらしい。ハレではなく,ケを通り越してケ けの明るさは,それが究極の一家団欒だからであ ガレとする説の一方,人の死はやはり「非日常」 ろう。ともすると数家族合同宴会であったりする。 なので葬式も立派なハレだとする理論もある。現 たしかに居酒屋は家族コミュニケーションには打 に葬式で赤飯を炊いて祝う民俗事例も知られてい ってつけの舞台でもある。 る。とすると「非日常」と「日常」の本質的な違 家で待ちわびる家族を忘れて,飲み呆けている いは何か,ということになる。 子育て世代の若い父親たちにとって,当今の居酒 人が亡くなると,勢い遺された人たち同士の関 屋は安住の場所ではなくなりつつある,とは筆者 係は再編成される。その空白は埋められなければ の観察である。後ろめたさに押されて,妻子の顔 ならないからだ。人の死は単なる不在や留守では を浮かべながら,そそくさと家路を急ぐ人もいる ない。その意味で,葬式は「終わり」ではなく, だろう。それが良いことなのか悪いことなのか, 新たな「出発」のための儀式と解釈される。とす にわかに判定できないのも悩ましいところだ。 れば葬式はハレとして門出の結婚式と本質は同じ 民俗学者柳田國男は,明治以降の庶民生活では ことなのかもしれない。 「褻(ケ)と晴(ハレ)の混乱,すなわちまれに出 「非日常」とは「日常」の連続性がいったんチ 現するところの昂奮というものの意義を,だんだ ャラになる時間帯であるから,そこには何がしか んに軽く見るようになった」としている。(『明治 の空白が生まれ,予期せぬ発見もあるかもしれな 大正史世相篇』講談社学術文庫,旧版1931)す い。新たな「日常」への再編成のためのどっちつ でに80年前のことである。件の居酒屋風景は, 「ケ かずの曖昧な状況,それが「非日常」と言えるだ とハレの混乱」どころか,その区別の消滅である。 ろう。この時,秩序(日常)が壊れて,混沌(非 偶々の家族一緒のつつましやかな外食では,人 日常)がそれにとって代わるわけである。 々はもう我慢できなくなっている。興奮の増幅を あらゆる可能性を秘めた混沌状況は,多かれ少 求めて毎日がお祭りである。庶民生活の変化が, なかれ人々の気持ちを熱く掻き立てる。祭りの喧 かほどとは,さすがの柳田先生も絶句するだろう。 騒や選挙運動だけではない。これがさらに大掛か 先生の予測をはるかに超えて,この時代は「興奮」 りになると革命勃発ということにもなろう。革命 に対して人々の感受性が麻痺しつつあるのかもし とは,根本からの社会の再編成には違いないから れない。 である。人類が繰り返してきた通りである。 食品と容器 672 2010 VOL. 51 NO. 11 ○ ○ トーマス・クーンは,特定の科学者集団が一定 パプア・ニューギニアでは祭事に豚肉のご馳走 期間,一定の過去の科学的業績を受け入れ,それ をたらふく食べる風習がある。このときしばしば を基礎として進行させる研究を「通常科学」と定 「豚腹」と呼ばれる腸炎を起こして大勢の人が死 義,教科書で扱われる科学としている。 (中山茂訳 ぬらしい。ふだん食べ馴れない物で,体調異変を 「科学革命の構造」みすず書房) 起こすのはいずこも同じである。 「通常科学」はいわば「ケの科学」である。一 御柱祭で死傷者が出るのは毎度のこと,珍しく 般に研究者と言われる人たちは,確立したパラダ もない。威勢よく御柱に乗っていた氏子の若者た イムの中で,「ケの科学」に勤しむ人たちと言っ ちが勢い余って落下したり,押しつぶされたりす てよい。所定の期日(納期)までに成果を挙げるた る。その荒々しさは,事故が起こらない方が不思 めには,ゴールの約束されているレールを走らざ 議な光景である。 るを得ない。さもなければ研究資金の命綱を断た その昔,神社初詣の参拝者が境内の石段で将棋 れてしまうからである。大学院生であれば,課程 倒しとなり100人以上圧死している。正月「福も 修了の見通しが立たない事態になる。 ち」を5000人の参拝客が奪い合っての事故である。 だからと言って「通常科学」が退屈な科学とい 近くは,「夏まつり」に押しかけた群衆になだれ うわけではない,とクーンは言う。一定のルール が発生して,歩道橋から転げ落ちて10人以上が死 (パラダイム)に則ったゲームは,科学者が一生 んでいる。 を賭けるほどに楽しい仕事である,とも言う。パ 大勢参加の行事につきものの仕出し弁当では, ズル解き,謎解きの面白さである。そのプロセス 食中毒事故が頻繁に発生している。せっかくの祝 で無数の発見があり,科学はほとんど自動的に発 祭や慶事が台無しになる。 展していく。それは日常生活(ケ)がさまざまの とかく「ハレの日」には大小の事故がつきもの 出来事に満ち満ちているのに似ている。生きる喜 である。その日は,危険や災難と背中合わせ,と びは,「ハレの日」に限らないのと同じである。 覚悟が必要のようだ。「非日常」の混沌,無秩序 筆者の乏しい経験もそれを教えている。 が危機的状況をつくり出すのであろう。「日常」 しかし,科学の世界にもやがて「ハレの日」が の秩序が担保していた「生活の安全装置」が解除 やってくる。つまり,「通常科学」を支えていた されてしまうためかもしれない。 パラダイムが瓦解し,日常が混沌に取って代わる ○ 時が来る。「ハレの科学」というものがあるとす 柳田先生見通しのように,「ケの日」を「ハレ れば,諸説が入り乱れて並立している危機的事態 の日」が侵食して久しい。日常生活の再編成を絶 であろう。パラダイムの再編成に直面した科学者 えず迫られているのが現代人なのであろう。 たちにとって,それは人間的危機でもある。 高名な哲学者カントは生涯「ケの日」を送った。 「歴史上に名前は残っていないが,パラダイム 自分の日課を厳格に守っていたので付近の人は, の危機状態に耐えられず,科学を放棄してしまっ それによって時計を合わせるほどだったと言う。 た人たちがかなりいたに違いない」。(同上) 名声は国外にまで達したが,本人は生涯ケーニヒ 相対性理論によって,多くの科学者たちを危機 スベルグの街から出ることはなかった。 に陥れたアインシュタインが,「神はサイコロを ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 投げない」と量子理論の核心「不確定性原理」を トーマス・クーン(1922-1996)米国の科学史家・ 最後まで受け入れなかったことは有名である。 科学哲学者。パラダイム理論の創始者。 食品と容器 673 2010 VOL. 51 NO. 11 デザイン変更のリスク Packaging Digest(U.S.A.)50(’10・5) 文献 №5587 慎重によく考えてパッケージを変更すれば, 伝統ブランドがブランドの無形財産をてこにし コアメッセージを強化することによって伝統ブラ て成功するためには,「消費期限」に応えられる ンドを蘇らすことができる。 無形財産を見つけ,懐かしいものとして思い出さ よみがえ 消費者の購買習慣が変化して,ロングラン商品 せなければならない。 には飽き飽きしている。さらに,PB商品がナシ 考慮すべき必須事項 ョナルブランドを閉め出し,かつてないほど売り ・顧客はブランドをどのように見ているか? 上 げ を 伸 ば し て い る。 小 売 業 界 で 世 界 最 大 の ・ブランドは顧客の期待に応えているか? Walmart社は最近,店頭からナショナルブランド ・機能的レベルや感情的レベルに対するニーズ のSKUs(Stock Keeping Units)を取り除き,メ にかなっているか? ーカーに警鐘を鳴らしている。マーケターは,過 ・顧客はブランドとのふれあいや,“体験”を 去への強いノスタルジアをぬぐい去れず,相変わ どのようにしているか? らずブランドの物語を語れば顧客を伝統ブランド ・顧客は,ブランドに対する期待がいつもかな に呼び戻せると思っている。 えられていると感じているか? マーケティングには効果的な反響と社会への適 ・ブランドや製品と消費者の接点として,パッ 合性のバランスが必要である。マーケターは絶え ケージは顧客に何を伝えているか? ずブランドに対する顧客の期待を実現し,ブラン ・パッケージは消費者のブランド体験を増やし ドのコア価値を強化し,形を変えて進化したブラ ているか?減らしているか? ンドの物語を物語らなければならない。 ・競合ブランドとの差別化がうまくできている 顧客はブランドをどう理解しているか,そして か? 顧客と断絶しているものがないかを常に調査する ・ブランドは消費者に適合性を伝えているか? ことが重要である。調査結果はどうであっても, ・もし伝えていなければ,エンドユーザーに対 良否を真剣に考察し,データに従って行動しなけ する適合性や意義を持たせるために,ブランド ればならない。当然ながら,ブランドに対する消 の位置づけをどうすべきか? 費者の認知はマーケターの努力に左右される。 伝統ブランドのマネジャーは,自ブランドの真 特にパッケージの場合,新しい戦略・戦術はそ のコア価値は何かを考え,伝統の影響力の発揮策 れから開発できる。時代に適合しないブランドは を考えるべきである。 最終的に淘汰される。Perception Research Services パッケージはブランドの価値存続に寄与する 社によると,パッケージデザインを変更した商品 以下に,現在通用する最も重要なトレンドの例 の10%は販売打ち切りになり,20%は販売減を と,パッケージがブランドの伝達にどのように寄 助長している。消費者との最も確実なコミュニケ 与しているかを示す。 ーション媒体であるパッケージによって,ブラン 簡素:我々の住む世界は複雑であり,人々は生 ドと顧客との関係をしっかり形成させることは非 活を単純化したいと思っている。Post Shreded 常に重要である。 Wheatはこれを訴求している。簡素で整然とした とうた 食品と容器 674 2010 VOL. 51 NO. 11 パッケージは色で製品区分されていて,スプーン に描かれた大きいビスケットが特徴で,中身の種 類が簡単に分かる。パッケージの側面には,一方 に素材リスト,他方にPostブランドの商標が見ら れる。Postの新しいパッケージは外形を画一化す るとともに,商品を分かりやすく区分している (写真1)。 素材数の少数化と純粋化(食品や飲料カテゴ リーでは特に) :例えば,Haagen-Dazsの“Five” アイスクリームは,5つの単純なオールナチュラ ルの素材が白地に甘美なグラフィックスで容器の 写真1 正面に整然とリストされていて,ブランドメッセ ージがパッケージから単純に伝えられている。 Häagen-Dazsは常にナチュラルのアイスクリームを 売り物にしているが,わずか5品目にしたことが ヒットにつながっているのは明白である。ヒン ト:消費者が識別し,判断できるノンケミカル素 材が勝者になる(写真2-①)。 消費者に権限を与える刷新:消費者の健康と幸 福に寄与するものが入っている。特に,消費者が 現在起きていることの多くは自分のコントロール 外だと感じている場合。例えば,Clorox Green Worksクリーナーは,ノーヒュームで有効性が高 く子供やペットに安全である。明るく黄色い花の ポップにソフトな青とグリーンは物語を語ってい る。Cloroxはまさに伝統ブランドだが,母親世代 のクリーナーではない(写真2-②)。 写真2 より健康によい選択:V8のV-Fusionジュース 題も改善された。また,新パッケージの画像はよ はしばらくの間市場にあったが,フルーツ味で8 り効果的に目立つ構成になった(写真2-③)。 オンスグラス1杯で1人前の野菜が完全に摂取で Heinzはシングルポーションの新ケチャップ容 きる製品に替わった。新鮮なフルーツと野菜を滝 器を上市した。頂部を引きちぎって中身を絞り出 のようにデザインした,明るい,色区画されたパ したり,底部の端部を引きはがすと浸しても使用 ッケージはおいしそうに見える。フロントパネル できる。真空密封容器の開封時や中身の使用時に は消費者が知りたい栄養表示を一目で伝えている。 散らかることもない。2つの使用法を選択できる ヒント:より機能的な要素を付加することによっ アイデアは素晴らしい(写真3)。 てヒットする。消費者の利益を伝えることによっ マイホーム主義の応援:経済がよくなっても, て,消費者はよりよい選択が可能になる。 内食やホームパーティーが増えている。消費者は より納得のいく体験を提供する:International おいしい満足な食事や,華やかなエンターテイン Delightコーヒークリームのパッケージはリフレ メント以外の,これまでにない経験を十分に楽し ッシュされた。構造を微妙に変え,よりスマート みたいと望んでいる。 に,よりエレガントになり,抽出口の潜在的な問 任天堂のWiiは完全にこの特性に合っている。 食品と容器 675 2010 VOL. 51 NO. 11 徴すべてがマスコミの高評価を得て,Appleから 歴史の1ページを奪い取った。見た目にさわやか できれいな現代風のパッケージで製品を提供する ことは,娯楽技術界にとっても大いに意味がある。 伝統ブランドの自然な老化プロセスは,将来を 見ているつもりでも,過去を振り返っている。特 にプライベートブランドの増加によって,昨今消 費者のブランド信奉が低下傾向にある。消費者文 化の変化の速さを理解して,ブランドと消費者と きずな の絆 をしっかり確保することはこれまで以上に 写真3 重要である。確立したブランドの価値が,消費者 これは家族や友人全体に対するエンターテインメ の価値と交差することによって,ブランドは新鮮 ントだけでなく,現在消費者が切望しているより さと活気,適合性を維持することができる。 ハイレベルな対話型を提供している。同社は他に (庭木美佳) 先駆けて最新のコンソールを創り,気の利いた特 2010年,アメリカのスポーツ飲料市場 Beverage Industry(U.S.A.)18(’10・5) 文献 №5594 「機能強化水やプロテインドリンクがスポー ト向けに二極化してきている。 ツドリンクの領域に本格的に侵入し始めている」 米国での過去1年間(2010年2月21日期)の非 と Mintel International社(シカゴ)のアナリスト, 無菌飲料の売上高は,前期比8.8%減の33億ドル。 S.THEODORE氏はこう語る。「長い間,スポーツド (SymphonyIRI Group(シカゴ)調べ) リンク=水分補給とされ,いかに速やかに体内に Mintel社によれば,2010年もスポーツドリンク 水分を取り込むかを考えた液体と糖質のバランス 部 門 の 大 幅 回 復 は 期 待 薄 で , T HEODORE氏 は にのみ重点が置かれていた」(同氏)。 「1%程度の伸び」と見る。2010~13年にかけて THEODORE氏によると,スポーツドリンク業界 の年間成長率も0.2~0.3%と同社は見ている。 食品と容器 は今やセグメン 全般的に見ると, 『Powerade』を有するCoca- ト化が進み,余 Cola社(アトランタ)の非無菌スポーツドリン 分なカロリー消 クの売上高は,横ばいの約6億5,380万ドル,スポ 費を望まない一 ー ツ ド リ ン ク 市 場 全 体 の80 % 近 く を 占 め る 般の運動愛好家 『Gatorade』を展開するPepsiCo 社(ニューヨー 向けと,タンパ ク州パーチェス)も10.7%の売り上げ減となって ク質による筋肉 いる。 (共に2010年2月21日期SymphonyIRI調べ) 増強を期待する スポーツドリンク市場でのGatoradeの優勢は, 本格的アスリー 市場参入が最も早かったことによるところが大き 676 2010 VOL. 51 NO. 11 いが,さまざまなスポーツのスター選手を起用し であったが,今回一般にも提 た強力なマーケティングも見逃せない要因と 供されることになった。 THEODORE氏は見る。 G Series Proに つ い て 「スポーツドリンクにおいては圧倒的な存在感」 Gatoradeの最高マーケティン とTHEODORE氏が言うGatoradeは,「コア・アスリ グ責任者 (CMO) S.R.O’ HAGAN氏 ート向けのブランド構築に余念がなく,スポーツ は, 「プロ向け,GNC顧客向 ドリンクにさまざまな効果を求める本格的アスリ けに両立する製品とわかり, ートに軸足を移すことを決めたようだ」(同氏)。 プロをめざす人々にも当然関 Gatoradeがダントツのマーケットリーダーであ 心を持ってもらえる商品と考 るとはいえ,Coca-Cola社のPoweradeも昨年新仕 えた」とその声明の中で述べ 様で発売したPowerade Ion4で攻勢をかけた。 た。 Coca-Cola社は,FIFAワールドカップ2010で同社 Euromonitor International社(シカゴ)の市場ア 初の全世界的なPoweradeオンライン販促キャンペ ナリストA.LIPSON氏は,G SeriesとG Series Proラ ーンを展開。 『Keep Playing』と銘打たれたこのキ インの発売は「強化飲料やプロテイン飲料と競合 ャンペーンでは,ワールドカップのピッチ側面で する上で,PepsiCo社にとって効果的」と言う。 Poweradeを広告,YouTubeではサッカーの試合中 同氏によれば,PepsiCo社は「引き続きマーケ に起こる人間の体とメンタルの変化についてのビ ティングに注力」しており,「今もって新製品を デオを流す。 投入することで消費者のスポーツドリンク回帰を スポーツドリンク革命 促し,アスリートやより本格的な運動をする人な 新しい販促キャンペーンに加え,メーカー各社 ど,成長維持に不可欠なコアユーザーにターゲッ は新機軸も導入している。PepsiCo社は3月,株 トを絞っている」と言う。 主総会でGatoradeワークアウト用ドリンクのレギ 昨年1年間,GatoradeはGやG2等のメイン商品 ュラーとプロフェッショナル両ラインでの改良プ を低カロリーブランドに再編したが,この再編は ラン,3段階システムを発表。これまで同社はG 消費者を困惑させ,結果的に収益を悪化させた。 Series Proのプレワークアウト,ポストワークア 「消費者の多くがGとG2の新ブランド戦略に混 ウト飲料はプロのアスリートにのみ提供していた。 乱し,尻込みし始めていたが,だからといって, プレワークアウト飲料のGatorade Prime 01シリ PepsiCo社がこの戦略を諦めたわけではないだろ ーズは,糖質を含む4オンスパウチ製品。運動中 う」とLIPSON氏は言う。「経済状況が悪い時ほど の 水 分 と 電 解 質 補 給 を 目 的 と す るGatorade 人々は変化を嫌う。そういう時にはより落ち着く Perform 02シリーズには,新たにG Seriesに組み込 ものより慣れ親しんだものが求められる」(同氏)。 まれたGatorade Thirst Quencherと低カロリーのG2 またGatoradeは,昨年暮れ,ブランドを縮小改 がある。また,タンパク質と糖質を含む16.9オン 編するとして,スポーツドリンク『Tiger Focus』 スボトル入りのGatorade Recover 03は,運動後の の販売を打ち切った。この製品はゴルファーのタ 筋肉回復を助ける(同社)と言う。 イガー・ウッズにちなんで名付けられ,約6,500 同社はさらにGatorade Thirst QuencherとG2に使 万ドルの累積売上高があったとしてSymphony IRI 用する甘味料を改良,これら2製品のナチュラル の『2009年の食品・飲料トップブランド』にも名 版を一部のWhole Foods Marketsで発売した。 を連ねていた。(同社調べ) こ の ほ か,G Seriesの さ ら に 強 力 な 新 製 品G 「一般の運動愛好家向け競合商品の増加が, Series Proを発表。今月からGNCの店舗限定で販 PepsiCo社にGatoradeラインの変更を促し,自分た 売を開始する。このプロ仕様製品は,かつてスー ちのターゲットは本格的なアスリートであると認 パーボウルに合わせて発売された際にはプロ限定 識した」とMintel社のTHEODORE氏は言う。 食品と容器 677 あきら 2010 VOL. 51 NO. 11 一方,スポーツドリンクの競合として,従来の 数年前と少し事情が異なるのは,非常に多くの新 スポーツドリンクと同様の水分補給特性と電解質 しい競合商品が存在する点である」。 を持つ,ココナツウオーターが浮上してきている, G2の売上高は15.8%増の3億6,830万ドルになっ と同氏は言う。 た が, 依然 と してPepsiCo社 の 旗艦 商 品 であ る One Natural Experience 社 (ロサンゼルス) は,コ Gatoradeラインの売上高12億ドルの一部にすぎな コナツウオーターベースのスポーツドリンク い。(2010年2月21日期,SymphonyIRI発表) 『Active』ラインを6月に発売予定。ココナツウ Powerade Zeroは9,860万ドルで約50%増(2010 オーターと自然のハーブ,ミネラルを含むこの製 年2月21日期,SymphonyIRI発表) ,またPowerade 品は,ツイストキャップ付きでそのまま飲める ラインの旗艦商品として仕様を新たにした 16.9オンス,テトラパック入り。グレープベリー, Powerade Ion4の売上高は4億1,660万ドルに跳ね上 レモンライム,クランベリーグレープフルーツの がった。 3フレーバーで発売される。 「体重を減らすこと,あるいは体重を維持する ココナツウオーターは「今年の飲料部門全般に ことが,人々がエクササイズをする最大の理由」 おいて話題のカテゴリーのひとつであり,従来の とセオドア氏は言う。「体重を維持するため,さ スポーツドリンクのユーザーにもアピールするだ らには落とすために真剣な人たちを追い求めるこ ろう」とTHEODORE氏は語る。 とにこそ,スポーツドリンクメーカーの商機があ 低カロリー,高売り上げ ると思う」(同氏) 健康志向の消費者が,カロリーの高いスポーツ LIPSON氏によれば,カロリーに敏感な人たちが ドリンクからより健康的な飲料へ移行する中,今 増加しているという統計に基づき,GatoradeはG2 年勢いを増しているGatorade G2やPowerade Zero の1本当たりの含有カロリーを25から20に減らす のような低カロリー商品が,引き続き市場でのシ 計画と言う。G2はGatoradeにとっては明るい材料 ェアを伸ばすとアナリストは見ている。 であり,実際に売り上げ全体の底上げにも貢献し 「景気の悪化でスポーツドリンクから離れてい た。これは,G2が新しい製品であること,また ったであろう消費者を呼び戻すには,コア商品に 消費者が低カロリー・低糖質と同様,より健康的 再度フォーカスすることと健康志向を強調するこ で,活動に必要な成分を摂取できる商品を求めて とが重要」とLIPSON氏は言う。 いたからだ,とLIPSON氏は言う。その上で,「低 スポーツドリンクメーカーは,低カロリーの機 糖や低ナトリウムにこだわらない,コアなアスリ 能水との競合を警戒し,スポーツドリンクの利点 ート向けにこそマーケットがあるという考えに変 強調に努めている。 わりはないが,コア・アスリートではない平均的 同氏によれば,「メーカーは,製品に含有され ユーザー,つまり,単に好みの味や,変わった飲 ているビタミンについて,また電解質の効能につ み物などを探している人たちが,Powerade Zero いて,なぜそれが やG2といった低カロリーブランドの成長を支え 良いのか,または てくれるだろう」とも語る。 なぜそれがユーザ このような流れから,飲料に使う甘味料を変更 ーの要望に応える したり,より低ナトリウム,より低糖の商品を展 ものなのかを強調 開するスポーツドリンクメーカーもある。将来的 し,消費者が理解 には,ステビアやショ糖などの低カロリー甘味料 できるように努め で代用するメーカーも現れるだろうとLIPSON氏は ている。スポーツ 予測している。 ドリンクは十分に (常盤恭徳) 競 争 力 が あ る が, 食品と容器 678 2010 VOL. 51 NO. 11 食品の自然度と消費者の認識 Food Engineering & Ingredients(U.S.A.)20(’10・4/5) 文献 №5591 食品の内容物や加工の度合いなどが,その自然 果肉入りのフルーツジュースは,果肉入りのト さに対する消費者の観念にどのような影響を与え マトソースよりもより自然だと受け止められる。 るかということについて,最近の研究からいくつ 同様に,黒ニンジンエキス入りのニンジンスープ かの仮説が提唱されているが,以下その当否につ は,同じく黒ニンジンエキス入りのトマトソース いて見てみると,そこからは,より自然な感じを よりも自然だとされた。つまり,ひとつひとつの 抱かせる要素は,食品の化学的な組成の変更より ものは良しとされても,異種のものを混ぜ合わせ も形態的な変更,加工度の少なさ,よく知られた ると同種のものを混ぜたものより自然感を減ずる 成分の使用,といったものであることが窺える。 度合いが大きい。 Paul Rozin氏のグループが行った調査は,「自 仮説5:加工の度合いが高いほど自然感への影 然」に対する志向は人間の内的な自然への情愛や, 響は大きい。 自然は健康的で環境にも優しいという観念などと 調査結果から,加工度合いに比例して自然感の 結びついている,としている。 減少は大きくなるという結論が得られた。 一方で,自然さから乖離すると,それに対する 仮説6:同じものであっても,化学名で呼ぶと 反発はそれ以上に大きくなる,とも指摘している。 通称で呼ぶよりも自然感が減ずる。 仮説1:「添加」は自然さを減ずるが,その量は 化学記号などで表示すると,化学名や通称で表 関係ない。 示したときよりも自然感は減じた。ただ,「保存 ある製品に果実の粉末を2%加えると,その自 料」をその言葉で標記しようと化学名で標記しよ 然さに対するイメージは37.4%低下する。ただ, うと,男性の場合は大きな違いを感じないが,女 添加量が4%を超えてもそれ以上イメージが変わ 性はその保存料のもっと詳しい内容を求める傾向 ることはない。 があった。 仮説2:化学的な変更の方が物理的な変更より 仮説7:「添加」の方が「除去」よりも自然感へ もイメージへの影響が大きい。 の影響が大きい。 試みに化学的な変更を施したもの3アイテムと 増量剤の添加は,製品濃縮のための水分除去よ 物理的な変更を施したもの3アイテムを比較して りも自然さが失われるという調査結果が出た一方, みると,物理的な変更をしたものの方がいずれも 糖分の添加は「酸味を減らす」ことよりも自然感 化学的なそれよりもより自然な感じを抱かせると を減じないという結果もあることから,この仮説 いう結果が得られた。 の正否は決められず,さらなる研究が必要である。 仮説3:中身よりも加工プロセスの方がより重 仮説8:新奇な成分は既知の成分よりも自然感 要な影響を持つ。 への影響が大きい。 調査データからは中身の方がより重要であると 調査からはこの仮説を支持するような結果は得 の結果が出たことで,この仮説は否定された。 られなかった。例えば,果汁粉末とか黒ニンジン 仮説4:同種のものを混ぜ合わせても自然感に とかを新奇な成分として表示しても,それが食品 対する影響は小さい。 の自然さを増すためのものとして用いられている うかが かい 食品と容器 679 2010 VOL. 51 NO. 11 検証した仮説 アンケートサンプル (H 1~ H8) 95%信頼区間 下限 上限 基準モデル1 アンデス山脈の未踏峰 90.537 87.700 93.374 基準モデル2 プラスチック製モデルガン 17.932 14.020 21.843 基準モデル3 固ゆで玉子 87.511 85.007 90.014 H1 Orange juice 85.300 82.629 87.971 H1 Orange juice with 2% fruit powder 47.895 43.810 51.980 H1 Orange juice with 4% fruit powder 43.989 40.191 47.788 H1 Orange juice with 6% fruit powder 42.616 38.734 46.497 A soup 76.905 73.701 80.110 H2 A soup with ingredients that have been chopped and blended 80.847 77.861 83.834 H2 A soup with ingredients that have been pureed 79.311 76.274 82.347 H2 A soup with ingredients that have been dried and rehydrated 55.384 51.432 59.337 H2 A soup with pectin chemically extracted from plant sources 39.600 35.983 43.217 H2 A soup with gums chemically extracted from plant sources 39.916 36.327 43.505 H2 A soup with starch chemically extracted from plant sources 38.137 34.603 41.670 Chopped,dried and rehydrated fruit powder added to fruit juice 45.079 41.354 48.804 H3 Chopped,dried and rehydrated vegetable powder added to fruit juice 41.426 37.789 45.064 H3 Homogenized fruit pulp added to fruit juice 54.368 50.623 58.114 H3 Chopped,dried and rehydrated fruit powder added to yoghurt 46.042 42.377 49.707 H3 Chopped,dried and rehydrated vegetable powder added to yoghurt 43.053 39.206 46.900 H3 Homogenized fruit pulp added to yoghurt 54.863 51.067 58.659 Yoghurt 83.463 80.602 86.324 H3 Yoghurt with fruit powder 50.611 46.852 54.369 H3 Yoghurt with fruit pulp 73.321 69.953 76.689 H3 Yoghurt with vegetable powder 45.253 41.412 49.093 Fruit juice with fruit powder 48.842 44.990 52.694 H3 Fruit juice with fruit pulp 76.716 73.610 79.821 H3 Fruit juice with vegetable powder 44.368 40.592 48.145 H4 Tomato sauce with fruit pulp concentrates 51.195 47.356 55.033 Fruit juice with fruit pulp concentrates 63.300 59.686 66.914 H4 Tomato sauce with black carrot concentrate 45.442 41.553 49.332 H4 Carrot soup with black carrot concentrate 50.616 46.590 54.642 H5 Yoghurt with homogenised broccoli stem 50.058 46.168 53.948 H5 Broccoli soup with homogenised broccoli stem 58.637 55.139 62.135 H6 Cordial# with black carrot for colour 37.253 33.304 41.201 H6 Cordial with caramel and carotene colours 29.011 25.744 32.277 H6 Cordial with E-150d and E-160a colours 16.832 14.363 19.301 H6 Cordial with preservatives 23.495 20.404 26.585 H6 Cordial with preservatives Citric acid and Sodium citrates 28.284 24.929 31.639 H6 Cordial with preservatives E-330 and E-331 19.174 16.467 21.880 Cordial 36.074 31.861 40.286 H7 Tomato sauce with thickener 41.879 38.190 45.568 H7 Tomato sauce concentrated so as to remove water 54.205 50.035 58.375 H7 Tomato sauce with sugar 51.705 47.738 55.673 H7 Tomato sauce with reduced acidity 52.826 49.320 56.333 Tomato sauce 66.353 62.719 69.986 H8 Low fat yoghurt with fruit powder for creamy mouth-feel without calories 43.647 39.927 47.368 H8 Low fat yoghurt with starch and gum for creamy mouth-feel without calories 38.705 35.027 42.383 H8 Yoghurt with fruit powder 52.300 48.536 56.064 H8 Yoghurt with starch and gum 38.089 34.579 41.600 H8 Tomato sauce with black carrot 50.879 47.037 54.721 H8 Tomato sauce with starch and gum 35.147 31.711 38.583 H8 Cordial with black carrot 36.811 33.130 40.491 H8 Cordial with caramel and carotene 30.068 26.604 33.533 H2C H3/H5 H3C H3/H5 H4/H5 H6C H7C 平均 第1表 オーストラリアの消費者190名に対する食品の自然度イメージアンケート 食品と容器 680 2010 VOL. 51 NO. 11 とあまり大きな影響はないようであるが,これに ろは明らかで,性別や消費者の教育程度による違 ついてもさらに研究が必要であろう。 いはあるものの, (化学的でなく)物理的な変更を 全般的な結論としては,内容物や加工法をすべ 加えたもの,加工度合いの低いもの,同種の成分 て表示すると,単にその商品の名前だけを表示す から作ったもの,化学記号を表示しないものなど るよりも自然さに対する消費者の意識への影響が の方が,より自然なものとして受け止められると 大きくなる,といえる。 いうことがいえよう。 つまり,新しい食品についてその意味するとこ (大池静男) 食品のシェルフライフの測定法 Cereal Foods World(U.S.A.)132(’10・5/6) 文献 №5599 現 在 で は, 多 く の 製 品 が シ ェ ル フ ラ イ フ 注) ータに目を向けようとしない。しかし,あなたの (SL)試験の完了前に市場に出ている。SL試験 会社に類似製品がある場合には,消費者クレーム が完了するまでの間,市場での品質劣化リスクを データは市場でのリアルタイムのSL情報である。 最小限に止めることが可能な幾つかの方法がある。 消費者クレーム情報は,対処すべき範囲と品質劣 消費者クレーム,製品比較および加工と流通の情 化様式を推定するために役立つ。例えば,類似製 報から品質劣化様式や典型的なSLの推定が可能 品でのボール紙臭クレームは,劣化が初期酸化に である。予期せぬ製品の品質劣化を防ぐためにも, よる悪臭に起因し,抗酸化剤,キレート剤あるい SLを念頭に置いた製品設計すなわち早い段階で は脱酸素剤の必要性を示唆する。 の包装形態確定と,開始時のSL評価(可能であ ・既存製品は手がかりの宝庫 れば加速SL試験実施)を行うことが重要である。 新製品の劣化様式やSLは,特徴が類似した既 抄訳者注) 存食品データの調査や比較によりある程度推定で 欧米で使用されているself life (self-life) の英語表記 は,保管寿命,棚持ち,棚持ち期間,貯蔵寿命,貯蔵寿 きる。第1表に種々の食品のSLデータを示す。 命時間,貯蔵期間,貯蔵期限あるいは品質保持期間など ・ 品質劣化様式の理解:温度,pH,水分活性 (Aw) さまざまな日本語訳が付けられている。わが国の食品表 製品の流通経路の把握は,品質劣化様式を分類 示で使用される消費期限(use-by date:食品の衛生・安 おおむ 全面を考慮した期限で,製造日を含めて概ね5日以内で する上で重要である。製品が流通段階で暴露され 品質が急速に劣化する食品に表示)および賞味期限 る正確な温度把握は,適切な製品設計,加工,包 (best-before:品質保持面を考慮した期限で,製造日を 装および保存条件を決定する手助けとなる。 含めて概ね5日を超え,品質が比較的劣化しにくい食品 品質劣化は温度依存性であるため,加工工程は に表示)の両者の意味を含む用語がself-lifeであり,無 重要ポイントの一つである。例えば,加熱処理は 用の混乱をさけるために「シェルフライフ」のカタカナ 微生物や酵素活性を減少・除去可能であるが,耐 表記を用いた。 熱性の腐敗菌やSL中に発生する化学変化を阻止 データ収集 できない。実際には,加熱はほとんどの分解反応 ・消費者クレームがすべて悪いとは限らない を加速させ,一旦分解反応が開始するとSL期間 問題が発生するまで,我々は消費者クレームデ 中にわたって反応が継続する場合がある。SL延 食品と容器 681 2010 VOL. 51 NO. 11 長のためには,微生物安全性と要求される製品特 ③フレーバー安定性:発生源と食品マトリック 性が確保されるような最小限の加工処理を行うこ スに依存する。人工合成のフレーバー(そして色 とが重要である。 素)の方が天然のものより,一般的にSLが長く また品質劣化は水分活性に大きく依存する。低 なる。食品中の酸の種類とレベルによって果実フ 水分活性食品においては,吸湿,脂質酸化および レーバープロフィルと安定性を変えることができ フレーバー消失が重要な問題となる。水分活性の る(0.1%のクエン酸,酢酸あるいは酒石酸の添 高い食品においては,目標のSL達成のためには 加により,4種の異なった果実フレーバープロフ 何らかの抗菌性保存料を必要とする。 ィルを作り出すことができる)。高タンパク質含 製品設計-SL構築 量の食品では,フレーバーが弱くなる場合がある。 新製品のSLを決める上で以下の点を考慮する ④色調安定性:非酵素的な褐変反応(例えばメ 必要がある。 イラード褐変,カラメル化,ビタミンC分解) ①微生物安定性と安全性:微生物増殖制御法は も高い反応速度を有することから重要である。製 数多くあるが,製品の特性と保存条件に使用法は 品の褐変には,次の評価項目が挙げられる。タンパ 依存する。例えば,室温で6カ月の安定性が必要 ク質と糖類の由来(特に塩基性アミンと還元糖 な製品を想定する。水分活性制御,pH調整およ 類),pHと水分活性(両者とも低い方が良い), び保存料添加を設計開始時に考慮する必要がある。 触媒(銅や鉄などの金属元素)および酸素[メ 微生物制御方法の有効性検証のために,開発初期 イラード褐変およびカラメル化反応は嫌気条件で 段階での製品に対する微生物暴露試験の実施が望 起こるが,ビタミンンC分解物と同様に脂質酸 ましい。 化や酵素的酸化により生じる過酸化物イオン(ペル ②脂質酸化:反応速度は高く,異臭や悪臭の発 オキシドイオン)は褐変反応の触媒として働くた 生抑制の観点から,開発初期段階で考慮する必要 めに酸素は重要である]などである。 がある。加工温度と保存温度の低下は有効である。 ⑤テクスチャー:製品設計でテクスチャーを保 天然や人工の抗酸化剤や包埋型酸化防止剤の利用 つために成分添加をする場合がある。焼成品では, も有効である。また包装デザインチームとの連携 乳化剤や酵素のような鮮度低下防止成分,糖,ガ も重要である。 ムやデンプンなどの保水成分あるいは脂質などの 第1表 いろいろな食品の品質劣化様式の例 製品 アイスクリーム / 冷凍デザート 冷凍パン生地 冷蔵食品 ヨーグルト 飲料 焼き立てパン シリアル クッキーとクラッカー スナックチップス グラノーラバー 品質劣化様式 シェルフライフ 氷結晶の成長(内部構造),フリーザー焼け / 表面氷形成,ザラザラと粗いテクスチャー, 6-12 カ月 フレーバー消失,色調変化(黒ずみ) ふくらみの消失 (酵母生存率低下 / 生地のガス保持能低下) , 表面乾燥またはフリーザー焼 3-6 カ月 け (小売店での温度変動による表面乾燥が大きな問題) ,生地の色調変化 微生物増殖による酸生成・pH 低下・ガス発生等,異臭発生,シネレシスと粘性変化, 1 週間 -4 カ月 色調変化 微生物増殖による酸生成・pH 低下,タルトフレーバーの増強,悪臭発生,特徴的なフ 1-2 カ月 レーバー消失,シネレシスと凝結 色調消失,褐変,フレーバー消失,異臭(特にビタミン,ミネラル或いは栄養素が強 3 日 -12 カ月 ** 化されている場合),粘性増大 * 乾燥,フレーバー消失 / すえたフレーバー,老化,硬化 1-7 日 フレーバー消失,腐敗臭などの異臭発生,サクサク感の喪失 6-12 カ月 特徴的食感の消失,脂質酸化による異臭発生,特徴的なフレーバーの消失 / 変化,色 6-12 カ月 調変化 油酸化,悪臭の発生,特徴的食感の消失 2-3 カ月 クランチーバーでの特徴的食感の消失,歯ごたえのあるバーでの硬化,結着剤の分離(高 6-9 カ月 温),フレーバー消失 / 分解,異臭発生 * 高タンパク飲料は pH 依存性 ** シェルフライフは熱処理(低温充填、高温充填、無菌充填など),流通(冷蔵,常温など),包装(紙パック,ビン,テトラパックなど), pH などに依存 食品と容器 682 2010 VOL. 51 NO. 11 軟化成分などである。クリスピー(サクサク感の 第2表 仮想のシェルフライフ ある)食品では,低水分活性と適切な包装形態の 温度(℃) 40 30 20 両方が必要である。 包装の有効性 包装デザインチームと最初から連携して,製品 シェルフライフ(日) 50 100 200 の特長を保持する包装様式を決めることが大切で 通常条件でのSL試験が必須である。不幸なこと ある。例えば水蒸気透過率の異なるフィルムを用 にこの試験は長期間を要し,製品開発プロジェク いた製品包装試験で,時間経過に伴う水分消失が ト期間より長くなる場合がよくある。そのような どの程度製品のフレーバーとテクスチャーに影響 場合には,検証試験完了まで,類似製品のSL情 するかを知ることができる。ホイル裏打ち包装は, 報を入手し使用することが可能である。 製品の成分調整よりも効果的に特徴的な食感の消 SL検証試験から,いろいろの品質劣化に対し 失を防ぐことが可能な場合もある。また脂質酸化 て通常温度における劣化速度と加速温度での劣化 が劣化の主要因の場合は,成分調整よりも不透明 速度との数学的関係が導き出されている。この通 包装および/あるいは窒素ガス封入の方が効果的 常温度と加速温度での劣化速度の関係はQ10で表 に防止することができる場合がある。 記される。Q10は,10℃温度上昇に伴う品質劣化 早めの試験と評価 の速度変化である。 開発段階での製品サンプルの定期的な保存・評 第2表には,Q10値が2(幾つかの食品で典型 価試験により,品質劣化様式が早期に明らかにな 的 な 値 ) の 仮 想 製 品 で20 ℃( 常 温 ) で のSLが ることがよくある。例えば,微生物増殖を抑える 200日のものを示している。この値は,シリアル, ために水分活性とpHの両方を低く設計した食品 クラッカーあるいは棚持ちの良いほかの製品に当 において,初期のサンプルで不都合な非酵素的褐 てはまる。 変が観察されたとする。まだ十分に初期段階なの Q10値=2は,温度が10℃上昇するごとに劣化 で,褐変を防ぐために,糖やタンパク質成分の種 速度が2倍になることを意味する。例えば,品 類とレベルおよび/あるいは加工工程のパラメー 質劣化のうち悪臭について,製品バリエーション ターを変更可能である。棚持ちの良い食品には糖 が目標SLを達成あるいは超過するかを予測する 含量が高いものがあり,時折,保存中に硬化や結 には,40℃,50日の加速試験条件を選択すれば 晶析出が起こる。早期に把握できれば,糖の変更 よい。 またはグリセリンあるいはソルビトールのような 留意点:加速試験データは,品質劣化様式に試 湿潤剤添加などの対策をとる余裕ができる。 験温度範囲内で変化がない場合のみに正確である。 官能試験は,フレーバーのSLを予測し,フレ 例 え ば, 高 糖 含 量 の ク ッ キ ー で30 ℃ あ る い は ーバー変化を軽減・制御する方法を試す良い機会 20℃では変化がなく,40℃でテクスチャー変化 である。フレーバーが薄れていくようであれば, が起きるとすると,加速SL試験は中間温度で実 フレーバーレベルを増加するか,バニラのような 施する。タンパク質を含む甘味製品でメイラード フレーバー増強剤を添加する。嫌なフレーバーが 褐変と異臭が30℃と20℃では発生せず,40℃で 発生するようであれば,フレーバーマスク剤を添 発生すると想定する。この場合は,テクスチャー 加する。 のみについて速やかにより高温で加速SL試験を 加速SL試験-推定と真値 実施し,その後フレーバーと色調に関して加速 製品開発を早めるためには,検証済みの加速 SL試験を中間温度で実施する。結論として,加 SL試験方法を持つことが重要である。真のSL 速試験は実際条件で検証されかつ品質劣化様式が の1/4~1/10の値に収まるようなSL推定手法が 判明している場合のみ正確である。 望ましい。加速SL試験結果の検証のためには, 食品と容器 (川本伸一) 683 2010 VOL. 51 NO. 11 自然の食品に含まれる抗酸化物質 Food Engineering & Ingredients(U.S.A.)16(’10・4/5) 文献 №5590 食品添加物は食品安全の観点から最も議論さ れており,誤解もまねいている。食品添加物は, 微生物による腐敗や脂質酸化による変敗を防止し, 食品のシェルフライフ延長を目的に意識的に食品 に添加されている。添加物の濃度は,毒性を最小 限とするため特異的な濃度よりも常に低くなけれ ばならない。毒性は,化合物の起源(化学合成物 か天然物か)により異なる。一般に,化学合成物 には毒性があるが,すべての化学合成物に毒性が 第1図 超臨界流体抽出の過程 あるわけではない。消費者は,化学合成物ではな く天然物由来の添加物を好む。天然添加物は化学 超臨界流体抽出 合成物と類似した(場合によっては化学合成物よ 超臨界流体はガスと液体,両方の特性を示す。 りも優れた)保存効果を示し,体に良いものもあ 液体に比べ,超臨界流体では,圧力,あるいは圧 る。食品添加物として使用できる化合物のうちで 力と温度の併用により溶解力を調節できる。拡散 も,抗酸化物質が最もよく研究されている。抗酸 係数が高く,粘度と表面張力が低いことから,物 化物質は油脂の酸化防止に有効なことから食品産 質 移 動 に 適 し て い る。 二 酸 化 炭 素 は 臨 界 点 が 業にとってとりわけ重要である。また,果実や野 31℃,73.8気圧であり,安価で環境に悪影響を及 菜等の植物由来の抗酸化物質は冠状動脈性心疾患 ぼさず,FDA,EFSAでは安全であると認めてい やがんのリスクを低減することから,天然物由来 る。二酸化炭素のもう一つの利点は,常温,常圧 の抗酸化物質の探索に高い関心がもたれている。 で気体であり,抽出物の回収が容易で,抽出物中 抗酸化性が認められている化合物としてはフェノ に二酸化炭素が残留しないことである。二酸化炭 ール,カロテノイド,トコフェロールであり,こ 素抽出が低温で実施できることは食品や天然物抽 れらの成分は各種の野菜に含まれている。 出において有用な点であり,熱分解しやすい物質 抗酸化物質のクリーンな抽出 や酸化されやすい物質の抽出に適している。第1 従来の抗酸化物質の抽出法は,時間と労力を要 図に典型的な超臨界流体抽出の過程を示した。 し,選択性が低く,収率が悪いといった欠点があ 亜臨界抽出 る。さらに,従来法では有毒な有機溶媒を多量に 加圧液体抽出(PLE)においては,沸点より高 使用する。そこで,これらの問題点を克服する方 い温度において液体状態を維持するため,圧力が 法が検討されている。新手法では,超臨界流体抽 かけられている。いろいろの技術があるが,抗酸 出,加圧液体抽出,亜臨界水抽出等のように,抽 化物質抽出における最も有力な方法として,ソッ 出溶媒として圧縮溶媒を用いる。こうした抽出法 クスレー抽出装置に類似しているが,より高温・ では,選択性が高く,抽出時間が短く,有毒な有 高圧である高速溶媒抽出,亜臨界水抽出,近臨界 機溶媒が不要である。 流体抽出,流動性強化抽出がある。加圧液体抽出 食品と容器 684 2010 VOL. 51 NO. 11 は,通常20~200℃,100~150気圧の条件で行わ -6-スルホン酸)由来ラジカルの消化活性(ABTS), れる。抽出温度を上げると,抽出効率は向上し, ジフェニルピクリルヒドラジル由来ラジカルの消 時間が短縮され溶媒使用量が低下する。これは, 化活性 (DPPH) ,第二鉄の還元能力 (FRAP) ,活性酸 熱的運動エネルギーの増加,拡散性の強化,高温 素の吸収能力(ORAC)である。これらのうちでも, における表面張力減少の結果である。水を溶媒と 生物学的に適切なラジカル発生源を使用すること して用いる場合,誘電率を容易に変えることがで からORACアッセイが最も適している。これらす きる。すなわち,単に温度を20℃から200℃に上 べての試験法は,極性の溶液を使用しているが, げるだけで極性から非極性まで変えることができ カロテノイド等の脂溶性抗酸化物質を試験するに る。 は,溶媒を修正する必要がある。これ以外に,リ 化学組成と生物活性の特性 ノール酸抗酸化法やランシマット試験がある。 天然添加物を取り扱う際,その抽出物の化学組 抗酸化性を設計するためのケモメトリックス 成,生物活性,ならびに両者の関係を知ることは 2成分以上を含む混合物の組成を最適化する等, 重要である。抗酸化物質の化学組成の分析には2 一度に複数のパラメータを同時に最適化すること つの方法がある。指標となる特定化合物(あるい は困難である。ケモメトリックスを適用すること は一連の化合物)の分析と,メタボローム,リピ により,化学組成と生物活性との相関にかかわる ドーム等のオミック手法を活用した抽出物の全体 情報が得られる。最初の段階では,例えば試料の 組成分析である。オミック手法はより完全な情報 特徴的な特性を与えるすべての化合物といったよ を提供するが,そこから有益な情報を得るために うに,抽出物中に含まれるすべての化合物をケモ は統計学やバイオインフォマティックスを活用 メトリックスの対象とすることができる。これは, し,多量の測定データを適切に処理する必要があ 想定される生物活性に対して化合物があらかじめ る。高速液体クロマトグラフィーなどのクロマト 選別されていないため,複雑な取り組みとなる。 分離に基づく分析手法は,天然の抗酸化物質の分 それにもかかわらず,全体としての生物学的な活 析では常法として使われている。ダイオードアレ 性(ここでは抗酸化活性)を備えた完全なデータ イのような検出器を備えた液体クロマトグラフィ を用いることが,解析の基盤である。抽出物中の ー (HPLC) では,フラボノイドやアントシアン等の 全体としての抗酸化活性に寄与する主要化合物を フェノール化合物の定性,定量分析が可能である。 決定するため,抗酸化活性と化学組成について統 芳香植物,藻類,微細藻類,飲料,果物,副産物 計的解析を実施する。前進法段階的多重線形回帰 などの多様な物質に含まれるカロテノイド,ビタ (FSMLR) と回帰分析 (PLS) の異なる2つの統計処 ミン類の定量も可能である。このほかの分析方法 理を用いることができる。 としては,質量分析計 (MS) をはじめさまざまな検 化学成分がどのように抗酸化活性に影響を及ぼ 出器を備えたガスクロマトグラフィー(GC)やキ すかを知ることは有益であるにもかかわらず,天 ャピラリー電気泳動 (CE) がある。スピルリナ抽出 然物由来の複雑な混合物を扱う際に,各成分を調 物 中 の 抗 酸 化 物 質 研 究 に お い て は,CE-MSや 整することはほとんど不可能である。この問題を HPLC-MSが利用されている。 解決する新たな手法は,混合物の方が添加物より 抗酸化活性を測定するin vitro試験は,論争とな も適しているかを見極める混合実験であろう。こ っている。標準的な手法が全くないため,体内に のような混合実験で重要な点は,個々の成分の量 おける抗酸化活性(生物活性)を知るためには数 ではなく割合に起因して,変化が認められること 種類のin vitro試験で測定した広範な情報が必要 である。いろいろな野菜抽出物を用いた肉製品用 である。新鮮果汁,野菜ならびにその加工品の抗 の抗酸化物質開発は,多様な方針のもとで実行さ 酸化能を推察するため,数種類の方法が報告され れた。 ている。アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン 食品と容器 (林 清) 685 2010 VOL. 51 NO. 11 リラクセーション飲料の開発 Beverage Industry(U.S.A.)16(’10・7) 文献 №5604 メラトニンは,不眠症と時差ぼけの治療に用い 経営陣と業界アナリストの間で暗黙の了解が存在 られているが,食品と飲料への安全性について し,エネルギー飲料と同様の経路をたどっている。 FDAの許可はまだ得られていない。FDAは年初 「今までリラクセーションを主張またはイメー に,メラトニンが食品添加物として使用できない ジできる飲料は,お茶類か若干のハーブ飲料に限 こ と を 説 明 し た 手 紙 を,Innovative Beverage られており,今日のリラクセーション飲料はエネ Group社(ヒューストン)に出した。しかし,メ ルギー飲料と密接な関連がある」とシカゴのアナ ラトニンを含有する物質は,サプリメントとして リストS.THEODORE氏は言う。カノコソウの根,バ は使用することができる。 ラの実,L-テアニンとメラトニンなどのリラクセ 元プロの音楽家で同社の最高経営責任者である ーション成分は体をリラックスさせることを目的 P.BIANCHI氏は,長年ステージに上がる前に神経を とするが,リラクセーション飲料はエネルギッシ 落ち着かせるため,メラトニン,カノコソウの根 ュで先端的なネーミングがされていると同氏は言 などを飲用した。また有効な製品の開発に,約3 う。またエネルギードリンク開発の初期のように, 年間取り組んだと言う。今春,リラクセーション リラクセーション飲料の分野では小規模で新しい 飲料“Drank”をサプリメントとしてラベル表示 会社が多く,独占的な会社はまだない。 の変更を行い,メラトニンを継続的に使用できる 「機能性飲料は,Gatorade,Red Bull,5-Hour ようにした。 とVitaminwaterによって市場に認知された」と, メラトニンが最も注目を集めているが,多くの B.S.SCHMELZ氏(RelaxZen社役員)は言う。「問題は, 飲料会社は自社の飲料にリラクセーション特性を 彼らがリラクセーションを機能と認めるかどうか 与えるため他の成分を使用している。L-テアニン ということだ」。また昨今の働きづめでストレス (天然アミノ酸)は,精神集中を助けるためによ の多いライフスタイルが,リラックスの必要性創 く用いられ,カノコソウの根は,ストレスを緩和 出に結びついたと言う。 させるハーブであると言う。またストレスを緩和 RelaxZenは,GABA,L-テアニン,L-トレオニ させるのにバラの実も含まれている。 ンとトケイソウで明確に述べられる一連の2.5オ しかし一部の飲料におけるメラトニンの使用で, ンスのリラクセーションショット飲料で展開した。 消費者にすべてのリラクセーション飲料がメラト GABAは,ベータ脳波を減らして,脳をリラック ニンを含んでいると思わせたと,テキサスの飲料 スさせる効果があるアミノ酸である。L-トレオニ 会社Funktional社のD.DUCHESNAU社長は言う。同社 ンは,健康な神経系を助成すると言われるアミノ はメラトニンを使わずに,Purple Stuff(カノコソ 酸で,ハーブ系サプリメントとして使用されてい ウの根の抽出物,バラの実とL-テアニンを含むソ るトケイソウには鎮静の効果がある。RelaxZenは ーダ)を作った。 昼,夜とあらゆる場合で利用されるが,同社の リラクセーションのルーツ Nightショット飲料は,メラトニンを含んでいる。 リラクセーション飲料会社は自社の飲物でメラ Duchesneau社はPurple Stuff飲料をただリラクセ トニンを使うことに同意しないかもしれないが, ーション飲料として分類するのではなく,リラク 食品と容器 686 2010 VOL. 51 NO. 11 セーション特性のある健康に良い炭酸飲料として 主なエネルギー飲料がショット形式を導入した いる。Purple Stuffはカノコソウの根とL-テアニン ように,リラクセーション飲料も同じ傾向をたど を含み,リラクセーション特性があり,ノンカフ るだろうと,Mintel社のTHEODORE氏は言う。 ェインで50カロリーであると同社は言う。 今年始め,Arizona社は,P.M.を含む3種類のシ 新しい製品 ョットを発売した。Stacker 2はカノコソウの根, リラクセーション飲料を取り巻くこのような活 トケイソウとカモミールが処方されていて,レス 気が続けば,この分野はリラクセーションを主張 ト&リラクセーションショット飲料として発売さ する新しい飲料として成長するだろう。 れた。Relax Fast ShotはカモミールとGABAを含 Frontier Beverage社は,シトラスオレンジ, んだ飲料である。 グレープ入りで,Pom Berry味かつ低カロリーの iChill Beverages社は,メラトニン,カノコソ リラクセーション飲料Unwindを発売した。 ウの根,バラの実とビタミンBをブレンドしたベ VIB Holdings社は,ザクロベリーとマンゴーラ リーフレーバーのリラクセーションショット飲料 イム入りのリラクセーション飲料を提供している を開発した。この飲料には,カロリーゼロの天然 が,リラクセーション特性を得るためL-テアニン 甘味料ステビアが使われている。 とL-トレオニンが処方されている。 2009年11月に,Innovative Beverage Group社は Neurobrands社は,14.5オンスのNeuroSleepリラ リラクセーション飲料Drankラインを強化するた クセーション飲料を発売した。製品にはメラトニ めに,Drank Deuceを発売した。 2オンスのショ ン,L-テアニンとマグネシウム(同社がリラクセ ット飲料は,ビタミンB,カノコソウの根,バラ ーションを促進するのを助けるという電解質)を の実とメラトニンを含んでいる。 (田嶋一雄) 含んでいる。 研究例会のご案内 食品膜・分離技術研究会(MRC)第22回秋季研究例会 ◇日 時:2010年11月12日(金)10:00~19:00 ◇場 所:川口総合文化センター(11階大会議室) 〒332-0015 川口市川口3-1-1 TEL 048-258-2000 (JR川口駅西口 徒歩1分) ◇主 催:食品膜・分離技術研究会(MRC) ◇参加費:民間会社・特例会員=30,000円/人,非会 員=40,000円/人。当会顧問・国公立研究機関・ 大学等教育機関:会員=20,000円/人、非会員= 28,000円/人(10月20日までの申し込みは早割扱い で、それぞれ5,000円引き) ◇申し込み締切 先着100名 ◇お申し込みおよびお問い合わせ先 食品膜・分離技術研究会(MRC) 〒332-0015 川口市川口1-1-3-3211 TEL/FAX 048-224-3336 e-mail [email protected] 食品と容器 ◇プログラム 挨拶 MRC会長 渡辺敦夫 ①食品産業における膜技術利用の変遷と現状 新技術開発院 院長 渡辺敦夫 ②陽電子消滅法による逆浸透膜細孔の測定 -陽電子消滅法の原理と測定精度- 産業技術総合研究所 大島永康 ③食品に関わるイオン交換膜プロセス AGCエンジニアリング(株)戸田 洋 ④大豆食品(豆腐・油揚)工業における膜利用技術 羽二重豆腐(株) 川嶋正男 ⑤食品工場の防虫防鼠対策とその科学 イカリ消毒(株) 邑井良守 ⑥次亜塩素酸ナトリウムの特性と洗浄・殺菌への効果 的な利用 岡山県工業技術センター 福崎智司 交流会 (1階:ラウンジリリア) 687 2010 VOL. 51 NO. 11 今月のPACKAGING NEWSは2010年のDuPont賞を 容器の内側は,再使用可能でリサイクルが可能な 受賞した容器を紹介する。DuPont賞は,コスト, Thermal-Lok断熱パネルがセットされている。こ 廃棄物削減,刷新性と持続可能性の3つのカテゴ れらのパネルは発泡スチロールの10倍の断熱特性を リーから,優れたパッケージと認められた製品に 持つ。 与えられる。世界中から160点がエントリーし, 金 賞 各受賞製品が選ばれた。 完全に堆肥化が可能なスナックバッグ(写真3) ダイヤモンド賞 Frito-Lay社の堆肥化可能なスナックバッグは, アルミニウムボトル(写真1) 3年の調査の後に開発された。SunChipブランドで Exal Corp.のCoil to Can (C2C) アルミニウムボ 採用され,バッグは砂糖から作られたNatureWorks’ トル製造技術は,リサイクル可能なアルミニウム 社のバイオポリマーであるPLAフィルムを外層と 合金から成形されるのが特徴であり,大スケール しており,フレキソ印刷が施されている。内層は, の飲料用途として検討することができる。このハ 製品の品質と完全性を維持するバリアーとして金 イブリッドプロセスは,DI飲料缶製缶技術による 属蒸着PPが用いられている。中間層のLDPEは内 製缶スピード,軽量特性,異型化技術を組み合わ 外層を接着する樹脂である。 せている。Exal社のC2C製造技術を使ったボトルは, パッケージ持続可能性の誇大表現を注意深く避 Alcoa 社のボトルストックシートを用いて成形し け,Frito-Lay社のROGERS氏は「パッケージの堆肥 ているが,このシートは材料の使用量が少なく, 化は堆積条件に応じて異なる。家庭用のコンポス 高速で成形でき,軽量化できるので,PETやガラ ターのような活性の低い条件では,分解に20 ~ スとコスト的に競合できると言われる。 30週を要する。標準的なテスト法(工業用コンポ C2Cアルミニウムボトルはインパクト押出成形 スト容器内テスト)では,パッケージは12 ~ 14 アルミニウムボトルより40%軽量で肉厚も薄いが, 週で確実に分解する」と説明している。 容器の変形に対する強度や破裂強度は高い。 植物から作られたPETボトル(写真4) 医薬品を安全に輸送するGreenbox(写真2) 包材の廃棄ゼロ戦略を支援するため,Coca-Cola Entropy Solution社の “Greenbox”と称する再使 社は30%植物ベースのPET樹脂を用いたPlantBottle 用可能な輸送用容器は,温度管理のトータルシス を製造した。新しいボトルの技術は,炭酸ガス保 テムへのアプローチであると評価されている。 持といった従来PETボトルと同等の重要な性能を達 Greenboxは内容物を適温で120時間以上保持でき 成し,再生不可資源への依存度を低減する。 る。Greenboxは緑色の再使用可能な容器で,外層 2009年の12月,デンマークで新発売されたPlant- のHDPE輸送用コンテナーは,湿気に強く,つぶ Bottle容器は,アメリカ,カナダ,日本,メキシコ, れにくく,傷つきにくいデザインとなっている。 ブラジル,ノルウエーで,同社の炭酸飲料と非炭 写真1 食品と容器 写真2 688 写真3 2010 VOL. 51 NO. 11 写真5 写真6 強柱付き(wicketed)PEバッグを連続フローラッ ピング技術に切り替えた。そのため,パッケージ とともに包装機械を再設計した。この新しい包装 写真4 酸飲料の複数の製品に用いられている。従来の は,PEの使用量を25%削減し,保管スペースを80 PET樹脂と同じように,これらの国では既存の %削減するものである。 リサイクル施設でリサイクルすることができる。 「いくつかの克服すべき技術的課題があった。 キャットリッター用フレキシブルバッグ(写真 例えば,われわれは新しい材料,新しい機械,新 5) しい方法を開発した。目標期間内に開発するため, Clorox社のキャットリッター(cat litter:猫 試作製造ラインの30%を再設計する必要があっ の排泄物用の箱に敷く吸湿粘土)ペール缶代替で た」とP&G社のA.HOCHWALT氏は言う。 あるフレキシブルバッグは,重量のある製品の収 その結果,より良いパレット適性,輸送や包材 納が可能で,包材を約80%削減した。この刷新的 製造にかかるエネルギーの削減および消費者にと なデザインは消費者にとって,取り扱い,注ぎ出 ってより魅力的デザインが得られたと同社は言う。 しと再封が容易で,貯蔵性はペール缶と同等であ 銀 賞 ると言われる。 新しい容器によるブランドの刷新(写真8) 医薬品の偽造防止対策(写真6) P&G社のパッケージ開発部門,マーケティング EZ Fusion社の2つの薬品をひとつに納めたバ 部門,デザイン部門,製品リサーチ部門,消費者 イアルびんは,刷新的なタンパーエビデントデザ 市場関連情報部門からなるクロスファンクショナ インを用い,消費者は容易に製品が本物であるこ ルチームは,Scope Outlast製品を巧みに作りだし とを確認でき,医薬品の偽造防止に役立つ。また, た。この目的は,既存のScope消費者を遠ざけるこ 汚染の機会が少なくなり,従来のガラス製のバイ となく,より若い層へScopeマウスウオッシュ製品 アルびんよりコスト効率が良い。 をアピールすることであった。 再デザインされたパッケージと包装機械 (写真7) P&G社は,同社のAlwaysフェミニン製品用の補 写真7 食品と容器 写真8 689 写真9 2010 VOL. 51 NO. 11 写真10 写真11 「これは非常に成功した形であるが,極端な形 状であるため,ブロー成形には問題があった。わ 写真12 れわれのパートナーと社内の技術チームがこの問 リサイクル材で作られた輸送用包装の緩衝材 題を克服した。非常にドラマチックなデザインで (写真10) 審美性があり,さらに構造的な完全性や人間工学 Austin Foam Plastics(AFP)社とSealed Air社の 的な利用しやすさがある」とP&G社のオーラルケ 電子部品包装用のPE発泡体は,Ethaform HRC厚板 アマネージャーのM.MAROTTI氏は言う。 を利用したものである。 ボトルとキャップのデザインにより構造的な強 独立気泡(closed-cell)型のPE発泡体は,65%が 度を保ち,PET樹脂は20%削減されている。 プレコンシューマーリサイクル(pre-consumer シングルサービスのワイングラス(写真9) recycled:消費者に達してなく,処分やリサイク フランスのCopa di Vino社のシングルサービス ルされていない製品から回収されたリサイクル材) バリアープラスチックグラスは,新しい市場を求 から製造され,以前に考えられていたものより軽 めるワインメーカーにアピールすることをコンセ 量である。このデザインは,輸送コストを低減す プトとしている。ワインは直接グラス形状の容器 る一方,電子部品用途の要求性能に十分に適合し に充填され,1年以上のシェルフライフを有する。 ている。 ボトルが不要なので,包装廃棄物が50%少なくな プロジェクトのひとつの課題はPE発泡体の調達 る。ガラスに比べて30%軽量であるため,カーボ であった。この課題を克服するため,Sealed Air ンフットプリントも低減する。DuPont社はRTDワイ 社とAFP社は共同で収集,選別,輸送,再処理を ン容器の課題は,ワインを劣化させずにワイング 可能にするクローズドループ回収計画を創出した。 ラスのリムにふたをシールすることであると説明 食肉の外観を新鮮に保つMA包装(写真11) している。 最初はヨーロッパ,現在はU.S.で発売された Sealed Air社のCryovac Mirabella包装は,フィル ムと食肉を接触させることができるので,肉の色 を変えることなくパック容量を低減できる。より 薄いパッケージは物流に加え,小売店での陳列ス ペースも低減する。 どん 防曇 (anti-fog)シュリンクパッケージのMA特性 により,新鮮な食肉の外観を長く保ち,食品の廃 棄を低減できる。 開封が容易なバッグ(写真12) Sealed Air社のCryovac Food Packaging Unitは, 写真13 食品と容器 690 2010 VOL. 51 NO. 11 写真14 写真15 Grip & Tear製品の品種を拡大した。これらには, 写真16 Grip & Tear Post Pasteurization Bagなど5品種 包装作業では,しばしば,従来の射出成形による が含まれる。製品は,従来の真空収縮包装にイー プラスチックパレットの低コストと発泡射出パレ ジーオープン機構を追加して,シュリンク性,強 ット(foam injection pallets)の長寿命との両立 靭性,酸素バリアー特性を組み合わせている。 が必要となると言われる。この問題を解決するた スキンタイプのパッケージの課題のひとつは, め,Sosa社はハイブリッドパレットを開発した。 バッグが製品を収縮させた場合に,製品をバッグ 内部射出発泡パレットは6年の寿命を生み出す。 から取り出すのが困難になることであった。 これは一般的な射出成形PPパレットの2倍,ほ Grip & Tearは,ユーザーがパッケージを簡単に とんどの木製パレットの3倍であると言われる。 開封するティアタブを導入することで,この課題 においの無いバリアーラミネート(写真15) を克服した。 シリアルメーカーにとって一般的な問題は,酸 分割トレー(写真13) 素バリアーとコーンフレークのガス抜きである。 Healthy Choice Fresh Mixersシングルサーブ調 Kellog社は,非常に湿度の高いインド市場で販 理食品用の常温流通パッケージは,調理の組成に 売されている製品に対しては,酸素バリアーを持 応じてトレー内を分割できる。射出成形された透 つ金属蒸着フィルムラミネートを用いることで, 明なPP容器の外側のタブ容器は,消費者が調理す この問題を解決した。パック内の湿気はPPシー るときの水の充填ラインとなり,内側のソースタ ラントに吸収される。この対策により,コスト削 ブ容器は熱成形プロセスで成形されている。 減と複雑な物流に対応できるようになった。 American Packaging Corp.がPETラミネーション 食器洗い洗剤のディスペンスシステム (写真16) のヒートシール材,ダイカットのピールオフふた Reckitt Benckiser社が製造するFinish Quantu- 材を製造している。Fort Dearborn社がラベルの印 matic洗剤ディスペンサーは,PETのブリスターパ 刷を担当し,パッケージはConAgra社とIdeo社の共 ックを利用しており,70%PCR PETを使用してい 同開発である。 る。また,再充填することなしに,自動的に12回 特別賞(Notable honorees) 分の洗剤を放出する。 じん この賞は刷新的な問題解決が認められたものに (十時正義) 与えられる賞である。 Packaging Digest(U.S.A)30(’ 10・6) 内部に射出発泡成形されたPPパレット (写真14) 文献No.5602 Sergio Sosa of Sosa Tech Advisorsによると, 食品と容器 691 2010 VOL. 51 NO. 11 特別解説 カムカム(Myrciaria dubia)果汁の 肝炎抑制作用に関する研究 あ か ち・ と し ゆ き 大和製罐(株)入社, 品質保証部に所属。 総合研究所に異動, 平 成21年 4 月 よ り, 第 4 研 究 室 長。 岐 阜大学連合大学院博 士課程修了。 博士(農学) 赤 地 利 幸 入手可能になった濃縮果汁原料を対象に,肝障害 1.はじめに 抑制効果のスクリーニングを行い,その結果,カ 野菜や果実の摂取は,現代人の食生活では摂取 ムカム果汁3)およびシイクワシャー果汁4)に極め 量が減少する傾向にあり,いくつかの栄養学的ガ て強い肝炎抑制活性を見いだした。 イドラインでは,疾病予防,健康維持のために, カムカム(Myrciaria dubia)はペルー原産の果 より多くの果実や野菜を摂取することを推奨して 実で,一般的な栄養成分組成の解析によってビタ 1) いる 。このような背景から,果汁飲料は果実の ミンCが豊富に含まれること5)や,抗酸化作用お 持つ栄養素を手軽に摂取できる飲料として広く利 よび抗炎症作用に関する研究6)があるものの,そ 用されるようになってきている。最近では,加工 の栄養機能に関する研究は十分に行われておらず, 技術,輸送技術,保存技術の発達によって,今ま まだまだ不明な点が多い。そこで,本研究ではカ では入手が困難だった南米や東南アジア原産を中 ムカムに見いだされた肝障害抑制作用の活性本体 心とする珍しい果実・果汁も市場に見られるよう を精製し,構造を明らかにすることを目的に研究 になった。しかし,果実の持つ栄養機能に関する を行った。 研究は比較的数多くなされているが,特に搾汁し 2.実験材料と方法 た果汁をターゲットにした栄養機能の研究はさほ ど多くはないのが現状である。 1)実験材料 一方,肝炎は現代の日本において最も注目さ 果汁は飲料原料として入手可能な原料用市販品 れている疾病の一つであり,ウイルスや化学物質 を用いた。果汁は,アセロラ,ブラックカラント, に起因するものもあるが,アルコールや薬害等に ブルーベリー,カムカム,クランベリー,ドラゴ より身近に起こりうる疾病である。さらに薬害C ンフルーツ(ピタヤ),ライチ,パッションフル 型肝炎訴訟問題などで社会問題となったことでさ ーツ,ザクロ,サジー,シイクワシャー,スター らに世間の関心を集めている。ラットにおける フルーツの12種を用いた。 D-ガラクトサミン(D-GalN)誘導性肝障害はヒ 2)飼料組成 トのウイルス性肝炎および劇症型肝不全に組織病 動物実験の飼料は25%カゼイン食を標準食と 理学的に類似しており,肝障害のメカニズムを研 した。標準食の詳細な組成は以下の通り(カゼイ 究するための動物実験モデルとしてよく用いられ ン25%; コ ー ン ス タ ー チ43.25%; ス ク ロ ー ス 2) ている 。そこで本研究では,D-GalN誘導性肝 20%;コーン油5.0%;ミネラル混合(AIN-93) 障害モデルを用いて,比較的最近,日本において 3.5%;ビタミン混合(AIN-93)1.0%;コリン酒 食品と容器 692 2010 VOL. 51 NO. 11 石酸塩0.25%;セルロース2.0%)。スクリーニン 経口投与にて500 mg/kg B.W.投与した(Control グに供する各果汁素材,ならびにカムカム果汁の 群は溶媒のみ)。実験5では,精製物2を単回強 各分画物・精製物は,コーンスターチを賦形剤と 制 経 口 投 与 に て そ れ ぞ れ0, 125, 250, 500, 1000 して添加し吸収させ,凍結乾燥処理した。得られ mg/kg B.W. 投与した。実験6では,リンゴ酸, た凍結乾燥粉末は,賦形剤として用いたコーンス クエン酸,酒石酸を単回強制経口投与にて500 ターチ分を差し引いて標準食のコーンスターチと mg/kg B.W.投与した。それぞれ,強制経口投与か 置き換えて添加した。 ら 4 時 間 後 に,D-GalNを 腹 腔 内 注 射 に て350 3)動物実験 mg/kg B.W.を投与した(Normal群は生理食塩水) 。 すべての動物実験は静岡大学農学部の実験施設 投与から24時間後にラットを断頭により屠殺し, を用いて行った。ラットは6週齢(体重120-130 血液を採取した。血漿は全血より4℃で2,000g× g)のWistar系雄ラット(日本SLC)を用いた。 20分の遠心分離によって分離し,分析まで-30℃ ラットは室温23-25℃,湿度50-60%に管理された で保管した。 飼育室で,ケージにて個別に飼育された。照明は 動物実験の計画は静岡大学農学部の動物実験委 12時間サイクル(7:00点灯,19:00消灯)とし 員会の承認の下で行われ,静岡大学動物実験規則 た。ラットは3-4日の馴 化期間を設け,標準食 にのっとって実施された。 と水を自由摂取させた。その後,ラットは各実験 4)カムカム果汁の抽出と分画 群に分け,各実験食を与えた。 まず濃縮カムカム果汁は酢酸エチル,n-ブタノ 実験1では,ラットは標準食もしくは各果汁の ール,70%エタノールによってそれぞれ溶媒分配 凍結乾燥粉末を果汁由来の固形分として10%添 により分画され,Fr. I-IVの4つの画分に分けら 加した実験食を与えられた。実験2では,ラット れた。Fr. I(酢酸エチル可溶画分)はさらに,シ は標準食もしくはカムカム果汁から分画された各 リカゲルカラム(φ80mm×575mm)に添加され, 画分(Fr. I-IV)を添加された食餌が与えられた。 それぞれn-ヘキサン/酢酸エチル(8:2,7: 各画分の添加は,各画分の分配比率に応じて,カ 3,5:5 and 0:10,v/v),酢酸エチル/アセ ムカム果汁の凍結乾燥粉末添加量10%に相当する トン(5:5 and 0:10,v/v)およびメタノー 量を添加した(Fr. I, 0.87%;Fr. II, 6.0%;Fr. III, ルで溶出され,Fr. I-1からFr. I-5の5つの画分に 2.6%;Fr. IV, 0.59%) 。実験3では,ラットは標準 分けられた。Fr. I-2はさらにODSカラムを用い 食もしくはFr. Iから分画された各画分(Fr. I-1-I- たHPLC(column, Capsellpak C18 AQ(資生堂) ; 5)を添加された食餌が与えられた。各画分の添 solvent,50% methanol;flow late, 5 ml/min.; 加量は実験2と同様に凍結乾燥粉末添加量10% detection;239nm)により精製され,3つの精製 に相当する量を添加した(Fr. I-1,0.054%;Fr. I-2, 物を得た。 0.18%;Fr. I-3, 0.34%; Fr. I-4, 0.042%;Fr. I-5, 5)精製物の同定 0.24%)。実験1-3を通じて,ラットは7日間の 得 ら れ た 精 製 物 の 同 定 は,NMR(JEOL 飼育期間後,8日目にD-GalNを腹腔 内注射にて lambda-500 spectrometer) , ESI-MS (JMS-T100LC 350 mg/kg B.W.投与した(Normal群は生理食塩 mass spectrometer) ,HPLC(JASCO Gulliver syst- 水)。投与から24時間後にラットを断頭により屠 em): preparative column(Capsellpak C18 AQ(資 殺し,血液を採取した。血漿 は全血より4℃で 生堂))を用いて行った。 2,000g×20分の遠心分離によって分離し,分析ま 6)生化学分析 で-30℃で保管した。 肝炎発症の指標として,血中のトランスアミナ 実験4-6では,ラットは標準食を与えられ, ーゼ活性を測定した。血漿アラニンアミノトラン 7日間飼育した。8日目に,実験4では,カムカ スフェラーゼ(ALT),血漿アスパルテートアミ ム果汁から分画された各精製物1-3を単回強制 ノトランスフェラーゼ(AST)は市販のキット じゅん じ こう と しょう 食品と容器 693 2010 VOL. 51 NO. 11 (transaminase C II-test; 和光純薬工業)を用いて 測定した。また,実験4では血漿ラクテートデヒ ドロゲナーゼ(LDH)と血漿総ビリルビン量(tBIL)も測定した。LDHは市販のキット(LDHKainos;カイノス)を用いて測定した。t-BILは 市販のキット(Bilirubin Assay Kit QuantiChrom; BioAssay Systems)を用いて測定した。 7)統計解析 測定データはすべて平均値±標準誤差(SEM) で 表 し た。 有 意 差 判 定 は 一 元 配 置 分 散 分 析 (ANOVA)を行い,F値で有意と判定された場 合に,Scheffeの多重比較検定によって全群比較 を行い,危険率5%で有意差ありと判定した。検 定の結果は全群比較で実施したが,表示について はControl群との有意差のみをアスタリスク(*) で表示した。 3.実験結果 1)各種果汁の肝炎抑制作用に関するスクリーニ ング(実験1) 7日間の飼育期間中,飼料摂取量,体重増加量 は果汁ごとにばらついたものの,有意な差は見ら れなかった(データ未掲載)。血漿ALTおよび AST濃 度 は,D-GalNの 注 射 に よ っ てNormal群 に比べて顕著に上昇し,この実験モデルが十分に 肝炎を引き起こしていることを示した。実験食群 第1図 ラット血漿ALT(A),AST(B)活性に 及ぼす各種果汁投与の効果(実験1) 第3図 ラ ッ ト 血 漿 ALT(A),AST(B) 活性に及ぼすカムカム果汁溶媒分 画物投与の効果(実験2) 第2図 カ ムカム果汁の有機溶媒抽出 ならびに分画フロー 食品と容器 694 2010 VOL. 51 NO. 11 の う ち, カ ム カ ム 添 加 食 の み が, 血 漿ALT, ルの肝炎抑制効果の用量依存性を調べた。血漿 AST活性の上昇を有意に抑制していた(第1図)。 ALT,AST活性は,ともに250 mg/kg B.W. 以上 2)カムカム果汁の分画 (実験2,3) で有意な肝炎抑制効果を示した(第8図)。血漿 カムカム果汁は酢酸エチルで抽出され(Fr. I), ALT,AST活性はリンゴ酸-1-メチルの投与量の 残渣はさらにn-ブタノールで抽出された(Fr. II)。 増加に伴って低下し,肝炎発症が強く抑制されて 残渣に2.5倍量のエタノールを加え70%エタノー いた。 ル溶液とした後,ろ過にてエタノール可溶画分 5)一般的な有機酸の肝炎抑制効果(実験6) (Fr. III) ,不溶画分(Fr. IV)に分けられた(第2 果汁に含まれる代表的な有機酸として,リンゴ 図)。それぞれの画分を添加した食餌をラットに 酸,クエン酸,酒石酸を選び,リンゴ酸-1-メチ 与えたところ,Fr. I,IIIが血漿ALT,AST活性 ルと同様の効果が見られるかを確認した。各有機 を有意に抑制し,このうちFr. Iが最も強い活性 酸をリンゴ酸-1-メチルで十分な肝炎抑制効果が を示した(第3図)。 見られた500 mg/kg B.W.単回経口投与し,血漿 Fr. Iはさらにシリカゲルカラムクロマトグフ ALT,AST活性を調べたところ,これらの有機 ラィーによって,Fr. I-1からFr. I-5に分けられた 酸には有意な肝炎抑制効果は見られなかった(第 (第4図)。それぞれの画分を添加した食餌をラ 9図)。 さ ットに与えたところ,Fr. I-2が血漿ALT,AST 活性をともに有意に抑制した(第5図)。 3)カムカム果汁の肝炎抑制成分の同定(実験4) Fr. I-2はシリカゲルカラムクロマトグラフィー ならびにHPLCによってさらに精製され,精製物 1, 2を得た。精製物2はFr. I-2の主要成分であり, 精製物1はFr. I-1にも見られることからコンタミ成 分と考えられた。各精製物の収量が微量過ぎたた め,飼料に添加して動物実験を実施することがで きず,強制単回経口投与による実験を行った。2 つの精製物をそれぞれ500 mg/kg B.W. 経口投与 第4図 カ ムカム果汁酢酸エチル画分の カラムクロマト分画フロー して肝炎抑制効果を調べたところ,血漿ALT, AST活性は精製物2で有意に抑制された。精製 物1には同様の効果は見られなかった。精製物2 について,血漿LDH活性,血漿t-BILを測定した ところ,どちらもD-GalN投与によって有意に上 昇したが,精製物2投与によって上昇が有意に抑 制された(第6図)。 NMRおよびESI-MSによる同定の結果,活性 の無かった精製物1はリンゴ酸-1,4-ジメチル,活 性が見られた精製物2はリンゴ酸-1-メチルと同 定された(第7図)。 4)リンゴ酸-1-メチルの肝炎抑制効果の用量 依存性(実験5) 第5図 ラ ット血漿ALT(A),AST(B)活性に 及ぼすカムカム果汁カラムクロマト分画 物投与の効果(実験3) リ ン ゴ 酸-1-メ チ ル を0, 125, 250, 500, 1000 mg/kg B.W. で単回経口投与し,リンゴ酸-1-メチ 食品と容器 695 2010 VOL. 51 NO. 11 る抑制効果の活性成分を探索した結果,最も強い 4.考察 抑制効果を示した活性成分としてリンゴ酸-1-メ 本研究の結果,いくつかの果汁が凍結果汁粉末 チルを分離した。一般的に果汁はいくつかの有機 として飼料に10%添加された時に,カムカム果 酸を比較的多量に含んでいる。しかし,リンゴ酸, 汁がD-GalN誘導性肝障害の有効な指標である血 クエン酸,酒石酸のような一般的な有機酸,なら 漿ALTおよびAST活性の上昇を抑えられること びにリンゴ酸-1,4-ジメチルでは肝炎抑制作用が見 が分かった。この結果は,D-GalNによる誘導の られなかったことから,リンゴ酸-1-メチルの効 ようなある種の肝炎に対しては,カムカム果汁が 果は有機酸ならびにそのメチルエステルの中でも 発症を抑制する効果があることを示していた。 特異的なものと言える。リンゴ酸-1-メチルのよ カムカム果汁の持つD-GalN誘導性肝炎に対す うな比較的簡単な構造の物質に特異的な機能性が 存在することは興味深い。また,リンゴ酸-1-メ チルは血漿ALT,AST活性以外にも,血漿LDH 活性ならびに血漿t-BIL濃度の上昇も抑制してい 第8図 ラット血漿ALT (A) ,AST (B) 活性に及ぼす リンゴ酸-1-メチルの用量依存性効果(実験5) 第6図 ラット血漿ALT (A) , AST (B) , LDH (C)活性, ならびにt-BIL(D)に及ぼすカムカム由来の物質, 1,2の強制経口投与の効果(実験4) 第9図 ラット血漿ALT(A),AST(B)活性に及ぼ す各種有機酸の効果(実験6) 第7図 物質1,2の構造式 食品と容器 696 2010 VOL. 51 NO. 11 たことも分かった。このことから,リンゴ酸-1- ゴ酸-1-メチルの肝炎抑制のメカニズムについて メチルの効果が,例えばトランスアミナーゼ活性 はいまだ不明であり,この解明は今後の課題とし の阻害のような単純な酵素活性阻害を起こしてい て残っている。 る訳ではなく,D-GalN誘導性肝炎の発症自体を 5.今後の展望 抑制していることが証明された。 リンゴ酸-1-メチルの自然界での存在および生 カムカムはペルー原産の果実でありながら,そ 理活性に関する報告はいくつかある。Hanらはあ の輸出量の8~9割は日本向けの輸出に限られて る種のサボテン(Opunitia ficus-indica var. saboten) おり,とりわけ日本でその栄養機能に対する関心 からリンゴ酸-1-メチルを分離し,モノアミンオ が強い果実である。またペルー政府による保護政 キシダーゼ阻害活性を有することを初めて報告し 策もあって,果実や生木の持ち出しは厳しく制限 7) た 。さらに,Sugaらはヤマモモ(Myrica rubra) されている。近年,南米原産の農産物に対する機 から発見されたリンゴ酸-1-メチルがヒトの骨髄 能性素材の探求はかなり関心が高い。本研究によ 多核細胞においてリポポリサッカライドによって ってカムカムが持つ肝炎抑制作用のような新たな 誘導されるIL-10の生成を阻害し,IL-12の生成 機能が明らかとなり,新たな機能性食品・飲料へ と腫 瘍壊死因子TNF-αの生成を増幅することを の応用が進んでいくことを期待したい。 しゅよう 8) 報告した 。他にもリンゴ酸-1-メチルの存在と生 参 考 文 献 理活性を示した報告はいくつかあるが,肝炎に対 1)Nestle M, Nutr. Rev., 54, 255-257(1996). する保護作用を示した報告は本研究が初めてであ 2)Keppler D, Lesch R, Reutter W, and Decker K, Exp. Mol. る。 Pathol.,9,279-290(1968). カムカムが極めて高濃度にビタミンCを含んで 3)Akachi T, Shiina Y, Kawaguchi T, Kawagishi H, Morita T, and Sugiyama K, Biosci. Biotech. Biochem.,74, 573-578 いることは緒論でも述べた5)。また,Inoueらは (2010). ボランティアによるヒト試験で,カムカムは喫煙 4)Akachi T, Shiina Y, Ohishi Y, Kawaguchi T, Kawagishi H, によって高められた酸化ストレスに対する抗酸化 Morita T, Mori M, and Sugiyama K, J. Nutr. Sci. Vitaminol., 作用,抗炎症作用を有するが,この効果がカムカ 56, 60-67(2010). ム投与と同量のビタミンCをタブレットとして与 5)Justi KC, Visentainer JV, Evelazio de Souza N, and Matsushita M, Arch Latinoam Nutr.,50, 405-408(2000) . えた場合には見られないことを示した6)。彼らは 6)Inoue T, Komoda H, Uchida T, and Node K, J. Cardiol., 52, この結果から,カムカム果汁にはビタミンC以外 127-132(2008). に未知の抗酸化物質が存在している可能性を示唆 7)Han YN, Choo Y, Lee YC, Moon YI, Kim SD, and Choi している。本研究で見いだされたリンゴ酸-1-メ JW, Arch. Pharm. Res., 24, 51-54(2001). チルがこの抗酸化作用,抗炎症作用に関与してい 8)Suga A, Takaishi Y, Nakagawa H, Iwasa T, Sato M, and Okamoto M, Nat. Med.(Tokyo), 59, 70-75(2005) . るかは明らかではないが,その可能性は十分考え 9)Keppler D, Lesch R, Reutter W, and Decker K, Exp. Mol. られる。 Pathol.,9, 279-290(1968). 従来,D-GalN誘導性肝炎の発症メカニズムに 10)Decker K, and Keppler D, Rev. Physiol. Biochem. ついてはD-GalNの代謝によって引き起こされる Pharmacol., 71, 77-106(1974). 肝 臓UTP濃 度 の 減 少 を 通 じ てRNAや タ ン パ ク 11)Lozano JM, Padillo J, Montero JL, Pena J, De la Mata M, and Mutane J, Int. Immunopharmacol.,3, 197-207(2003) . 合成の阻害が肝障害を引き起こし,最終的に肝実 細胞の壊死を引き起こすと考えられていたが9,10), 最近の報告では数種のサイトカイン(インターロ 12)Izu H, Hizume K, Goto K, and Hirotsune M, Biosci. Biotechnol. Biochem., 71, 951-957(2007). 13)Komano T, Egashira Y, and Sanada H, Biochem. Biophys. イキン(IL)-1α11),IL-612),IL-1813),NO:一酸 Res. Commun., 372, 688-690(2008). 化窒素14) 等)が肝炎発症に関与している可能性 14)Siendones E, Fouad D, Abou-Elella AM, Quintero A, も示されている。しかし,本研究で示されたリン Barrera P, and Muntane J, Nitric Oxide, 8,133-143(2003) . 食品と容器 697 2010 VOL. 51 NO. 11 特別解説 加温処理によるソーセージの品質向上 さ か た・ り ょ う い ち 九州大学大学院農学研究科 博士取得。フンボルト財団 研究員としてドイツ国立食 肉研究所に留学。現在,麻 布大学獣医学部動物応用科 学科教授。Fleischwirtschaft 誌編集委員, DLGドイツ農 業協会ハム・ソーセージ品 質競技会審査員など歴任。 坂 田 亮 一 1.はじめに 2.本研究の目的 ソーセージなど食肉製品における品質評価で, 食肉製品製造技術のひとつである加温処理工程 色調などの理化学的パラメータ1),ならびに,微生 は,「赤み付け」と称されるほど食肉の赤色化に 物学的検査は保存上,安全上重要な検討項目であ 深く関わっている。そのことを,ドイツ国立食肉 2) る 。食肉製品製造技術のひとつである加温処理工 研究所との共同研究としてこれまでに報告した4)。 程は,製品表面の燻煙ムラをなくすことを目的と これらの研究成果に基づき,本研究では加温処理 し, 「熟成」あるいは「第一乾燥」と称し,製造工 した豚腸ソーセージを試作し,その理化学的およ 程で実施されている。我々は,加温処理でハム・ び微生物学的品質を調べ,非加温処理試料と比較 ソーセージの発色も良くなると経験的に言われて することを目的とした。 きたことに着目し,この処理による発色の程度を また羊腸に充填したソーセージを用い,50℃付 これまで調査した3)。その結果,加温処理が食肉の 近で30分,60分,90分間加温処理を行うことに 赤色化に深く関わることを見出した。この処理の よって,加熱ソーセージの色調や発色率,水分含 際に加熱前の食肉を一定の中温域に数時間置くこ 量などに非加温区とどのような差異があるのかを とになり,細菌数の増殖が懸念されるが,微生物 調べ,発色剤である亜硝酸塩量を低減できる可能 学的な面で加温処理していないものと比較した実 性があるのかどうか,また衛生面から,60分加 験や,検討された報告はこれまで見当たらない。 温処理における一般生菌数と乳酸菌数を調査した。 くん てん 従来から,加温処理が食肉製品製造現場で行わ 3.実験の概要 れているが,その効果や微生物が増殖しやすい温 度域に加熱前の食肉をさらすことへの安全性の検 1.豚腸ケーシングを用いた実験 討が必要である。加熱食肉製品においても,時折, 試料(実験用ソーセージ)の材料は,豚赤身挽肉 酸敗,ネト,膨張といった変敗が発生するが,そ 85%,植物油(食用大豆油,食用なたね油)5%, の主な原因は乳酸菌であることが知られている。 氷10%,塩漬剤として食塩2.5%,砂糖1.0%,発 この研究は,このような実際面での工程の安全性 色製剤(ネオキュアー75,千代田商工)0.2%, を裏づけ,また製品の保存性のための基礎データ アスコルビン酸ナトリウム0.1%,重合リン酸塩 を提供する実用的な研究であることを特徴とする。 食品と容器 698 ひき (ポリゴンC,千代田商工)0.1%で,一晩塩漬した 2010 VOL. 51 NO. 11 豚赤身挽肉に植物油と氷を加え,フリーザーの中 真空包装し冷蔵保存した。この加熱ソーセージ で冷やしておいたフードプロセッサー(National, についてクッキングロス,水分含量,pH,色調 MK-K48-W)で均一になるまでよくカッティング の測定,全ヘム色素とニトロシルヘム色素の定 した。これをボウルに移して粘りが強くなるよう 量から発色率の算出,残存亜硝酸塩の定量,お によく練った後,豚腸に充填した。作製したソー よび微生物学的検査を行った。 セージを加温区と非加温区に分け,加温区を加温 4.実験結果 し(燻煙機内温度50℃),中心温度が38℃に到達 したところで冷蔵保存しておいた非加温区を燻煙 1.豚腸ケーシングを用いた実験 機(東京晃線社製)内に入れ,乾燥(機内50℃, 両試験区の中心温度の変化を見てみると,加温 50分間)・燻煙(機内50℃,40分間,スモーク 区はゆるやかな曲線を描いて上昇し,一方で非加 チップは渡辺林産工業(株)サクラ100%C-C使 温区は急激に中心温度が上昇した。特に,加温区 用)・加熱(機内85℃まで上昇,湿度85%以上で と非加温区の中心温度が30℃台にある時間の長さ 蒸煮)した。試作したソーセージの見た目,色調, に 差 が あ り, 加 温 区 は60分 間 か け て30 ℃ か ら 発色率,残存亜硝酸塩量,および微生物検査(生 40℃になっているところを,非加温区は加温区の 菌数:標準寒天培地,乳酸菌数:MRS寒天培地 約3分の1の速さで通過した(第1図)。 とBCP加プレートカウント寒天培地)を行い, 色調や発色率では,両試験区の間に顕著な差は 試料作製の1日目と7日間真空冷蔵保存したもの 見られなかった (第1, 2表) が,残存亜硝酸塩量で について比較した。 は1日目と7日目の双方で加温区の方が高い値を 2.羊腸ケーシングを用いた実験 示した(第3表)。 上記1と同様に,ソーセージエマルジョンの 加温区について,亜硝酸塩の残存量が高いこと 混 合 比 率 は 豚 赤 身 挽 肉85 %, 植 物 油 5 %, 氷 は肉色の退色を緩和すること 5) から,本試験 10 %, 食 塩2.5%, 砂 糖1.0%, 発 色 製 剤0.2%, 結果より,加温することで退色がしにくくなった アスコルビン酸ナトリウム0.1%,重合リ あらかじ ン酸塩0.1%とした。豚赤身挽肉を予め乾 加温 乾燥 燻煙 加熱 塩漬し一晩真空包装で保存したものに植 物油と氷を混ぜ,冷やしておいたフード プロセッサーで均一になるまでカッティ ングした。さらにボウルに移して粘りが 出るまでゴムベラで練り混ぜた後,天然 羊腸ケーシングに充填した。ソーセージ を燻煙機内に吊るし,機内温度を50℃前 後に保ち湿度をMAX (80%以上) に設定し, 各 加 温 試 料 を30分,60分, な ら び に90 分加温した。機内の温度は自記温度計を 用い,試料の中心温度を10分毎に記録し 第1図 ソーセージ製造時の中心温度 た。加温終了後,低温室に保存しておい た非加温区を燻煙機内に吊るし,乾燥工程(機 第1表 試料調製後1日目の色調測定値(断面) 内50℃,50分間)・燻煙工程(機内50℃,40分 試 料 間)・加熱工程(機内90℃まで上昇,湿度85% 以上で蒸煮)を経て試料の中心温度が72℃に達 するまで加熱した。その後氷水に移し冷却後, 食品と容器 699 L* a* b* 加温区 63.38 10.2 10.13 非加温区 63.36 10.24 10.22 2010 VOL. 51 NO. 11 第2表 発色率(%) 第5表 乳酸菌数(MRS寒天培地)(log CFU/g) 試 料 1日目 7日目 加温区 76.84(± 3.41) 72.37(± 2.83) 非加温区 73.05(± 8.14) 77.75(± 3.49) 第3表 残存亜硝酸塩量(NO 試 料 1日目 7日目 エマルジョン 4.92 N.D. 加温区 4.85 6.34 非加温区 4.93 6.75 - 2 試 料 ppm) 1日目 7日目 加温区 54.85 48.48 非加温区 34.37 24.33 第6表 乳酸菌数(BCP加プレートカウント 寒天培地) (log CFU/g) 資料 第4表 一般生菌数(log CFU/g) 試 料 1日目 7日目 エマルジョン 5.00 N.D. 加温区 5.07 6.95 非加温区 5.19 7.18 1日目 7日目 エマルジョン 5.59 N.D. 加温区 5.61 6.22 2.羊腸ケーシングを用いた実験 非加温区 5.57 6.57 クッキングロスは加温時間が長いほど高くなる N.D.:Not detected(非検出)(第4,5,6,8表) 傾向が見られた(第7表)。これは加温処理で主に ことが示唆される。また,7日目の残存亜硝酸塩 試料中の水分が損失したためと考えられる。水分 量も高いことから,7日目以降もある程度の発色 含量,pHについては各試験区で大きな差は見ら を維持していくと考えられる。 れなかった。色調測定値について,1日目の測定 微生物検査の結果,試料作製当日において, 結果は加温時間が長くなるにつれて,L*値(明る 両試験区の一般生菌数と乳酸菌数のどちらもほ さ)が高くなるという傾向が見られた。一方,7 ぼ同等の細菌数が検出された(第4,5,6表の1 日目の測定値は各試料において明確な差が見られ 日目)。ソーセージ製造における加温処理工程で, なかった。 ソーセージ内が微生物の発育に好条件である 肉眼観察の結果,各加温区は燻煙色がムラなく 35℃前後の温度で長時間保たれることから,細 第7表 クッキングロス(%)および水分含量率(%) 菌数の増加が懸念されたが,本研究の結果から, 試 料 そのような現象は起こらないことが明らかとなっ た。 また,両試験区を7日間冷蔵保存後に再度細菌 数を測定した結果,両試験区において作製当日よ り細菌数が増加していた(第4,5,6表の1日目 クッキングロス 水分含量 非加温区 2.8 50.3 30 分加温区 3.0 51.2 60 分加温区 4.8 50.6 90 分加温区 4.2 51.2 と7日目)。しかし,加温区と非加温区で比べると, 一般生菌数と乳酸菌数のどちらにおいても,ほと んど差は見られなかった(第4,5,6表の7日目)。 加温区と非加温区で細菌数に差がなく,低温保 存中に細菌数が増加していることから,加温によ る低温細菌に対する影響が見られないことが推測 される。また,加温処理工程では細菌の発育に好 条件の温度状況にありながら,細菌の増殖が見ら れないのは,原料肉を塩漬する際に添加された亜 硝酸塩や食塩などが発育を抑制したと考えられる。 食品と容器 700 第2図 加熱後のそれぞれのソーセージ試験区 左から非加温区,30分加温区,60分加温区,90分加温区 2010 VOL. 51 NO. 11 全体的にきれいについていたのに対し,非加温区 は燻煙にムラがあり淡く仕上がっていた(第2図)。 全ヘム色素量は各加温区と非加温区を比較して 第8表 加 熱ソーセージの各処理段階における 一般生菌数と乳酸菌数(log CFU/g) 処理段階 も,両者に大きな違いは見られなかった。発色率 一般生菌数 乳酸菌数 標準平板 MRS BCP の7日目の測定では,非加温区よりも各加温区の 加温前 5.49 4.54 4.38 ほうが比較的高い値を示している(データ省略)。 加温終了直後 4.82 4.44 4.22 これは加温処理によって発色が促進された可能性 燻煙終了直後 4.70 3.98 4.56 がある。 加熱終了直後 N.D. N.D. N.D. 残存する亜硝酸塩の濃度はすべての試験区にお 5.おわりに いて1日目よりも7日目のほうが低くなっていた (データ省略)。この実験では,加温により残存 通常,食肉加工工程中での細菌増殖による品質 亜硝酸塩量が減少したが,それが発色促進につな 劣化,菌の生残などは,生産現場において食品の がったと考えられる。 危機管理上も十分に予測しておく必要性がある。 一般生菌数の結果では,エマルジョンよりも加 本研究では,加温中のこのような危害を想定した 温終了時のほうが低い値を示した。このことから が,得られた実験結果から,加温処理によりソー 加温中の40℃付近の温度条件でも微生物を増殖 セージの発色向上や退色抑制,さらに微生物制御 させるという結果は見られなかった。また乳酸菌 の面からもその効果を実証した。今後,食肉製品 数でも加温処理によって増殖が促進されるという 製造技術改善のための基礎研究として,特に食肉 結果は見られなかった(第8表)。これは用いた 加工業界と共同で進めることができるものと考え 亜硝酸塩によって,加温の際でも細菌の増殖が抑 られる。 制されたと考えられる。 参 考 文 献 1)永田致治.1995.食肉および食肉製品の色と変色. 食品の変色と化学,第1版,pp.395-402,木村 進, 中村俊郎,加藤博通編著.光琳.東京. 酸塩の効果.日本養豚学会誌 37,43-49. 4)Klettner PG, Sakata R. 2004. Bedeutung der Umrötung 2)濱崎芳活,綾木美津子,府中英高,三明清隆,坂 des Brätes bei einer Temperatur von 50℃ auf die Festigkeit und Farbe. Fleischwirtschaft 83 (5) , 221-223. 田 篤.2001.加熱食肉製品における乳酸菌による 変敗と低温増殖性.食肉の科学 42,95-96. 5)Pearson AM,Gillett TA.1999. Processed Meats, 3rd edn,p.59. An Aspen Publication,Maryland. 3)坂田亮一,森田英利,乗松 毅,塩見利紀.2000. 食品と容器 食肉製品の発色に及ぼす加温処理とエリソルビン 701 2010 VOL. 51 NO. 11 〜〜〜〜 技術用語解説:今月より『容器の事典』から抜粋 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 生分解性プラスチック 〔biodegradable plastics〕 することができ,各種織物,不織布,網,ロープ, ひも 紐,ネットなどが作られている。また,インフレ ーションフィルム,押出シート,延伸フィルムな 微生物の働きにより,分子レベルまで分解し, どが製造でき,農業資材用のフィルムや紙とのラ 最終的には二酸化炭素と水になって自然界へと循 環していく性質を持つプラスチックのことをいう。 グリーンプラともいう。 ミネート加工品なども上市されている。さらに成 形品としては,ヨーグルトカップなどの真空成形 品,洗剤用ボトルなどのブロー成形品,トレーや プラスチックは,軽量,加工が容易,低コスト 食器などの発泡成形品なども作られている。 などの理由から現在では広く世界中で使われてい 生分解性試験には,プラスチック-水系培養液 る。安定で変化しないプラスチックの特性は,使 中の好気的究極生分解度の求め方(閉鎖呼吸計を 用中はたいへん有用であるものの,使用後は,そ 用 い る 酸 素 消 費 量 の 測 定 に よ る 方 法 )(JIS K の耐久性ゆえに廃棄物問題が生じてしまう。プラ 6950(ISO 14851) ) ,プラスチック-水系培養液 スチック廃棄物は容積占有率が高く,処理場・埋 中の好気的究極生分解度の求め方(発生二酸化炭 素 量 の 測 定 に よ る 方 法 )(JIS K 6951(ISO 立地不足を加速する元凶と見られてきた。また, 14852)),プラスチック-制御されたコンポスト プラスチックが一度自然環境中に散逸してしまう と回収することが非常に困難なものも多く見られ, 環境汚染の元凶と見られることも多い。こうした 条件下の好気的究極生分解度及び崩壊度の求め方 (発生二酸化炭素量の測定による方法)(JIS K 6953(ISO 14855))などが定められている。ここ 状況を背景として,生分解性プラスチックの開発 で,コンポストとは,生ごみなどの有機性廃棄物 が始まった。 からつくる堆肥,または堆肥化手法のことをいう。 生分解プラスチックの種類には,微生物系(バ 生分解性プラスチックには,識別表示制度があ クテリアやカビなどの微生物が代謝の過程で体内 る。生分解性プラスチック研究会(現・日本バイオ に蓄積したポリエステルを利用して作られる。バ プラスチック協会)が,有害重金属類を基本的に イオポリエステルなどの脂肪族ポリエステル類, 含まず,生分解性と安全性が一定基準以上にある プルランやカードランなどの微生物多糖が含まれ ことが確認された材料だけから構成されるプラス る),天然物系(キトサン/セルロース,澱粉,酢 チック製品をグリーンプラ製品と認定し,製品に 酸セルロースなどを原料としたもの) ,化学合成系 シンボルマークをつけることを許可する制度である。 (化学的に合成されたモノマーを重合することに 現在このグリーンプラ取得製品は,ごみ袋・コ より得られるプラスチックを指す。とうもろこし ンポスト袋,包装用フィルム・ などの再生可能資源から作られる乳酸を原料とし シート,マルチフィルム,ロ て 作 ら れ る ポ リ 乳 酸 や, ポ リ カ ポ ロ ラ ク ト ン ープ・テープ・バンド類,食 (PCL),ポリブチレンサクシネート(PBS),ポ 器類,文具,緩衝材,繊維製 リブチレンサクシネートアジペート(PBSA)な 品 な ど1,000以 上 に も な っ て どなどがある)がある。 いる。 製品としては,溶融紡糸することにより繊維化 新刊のご案内 缶詰技術研究会創立50周年記念として『容器の事典』を出版しました。 ・容器(缶,プラスチック,紙,ガラス)に関する材料から製造方法まで広範囲に解説 ・見出し語:約1,300項目(文中語はゴシックで示し,邦語索引から検索可能) ・A5版246頁で手軽なハンディータイプ,販売価格 4,800円(送料:実費) ご購入希望の方は,巻末の通信カードよりお申し込み下さい。 食品と容器 702 2010 VOL. 51 NO. 11 業 界 ト ピ ッ ク ス ◇缶コーヒー 終盤2カ月で巻き返しを ら「直火豆1・5倍珈琲」を投入。CMには引き 缶コーヒー商戦が秋需本番を迎えている。7, 続き松井秀喜選手を起用した。 8月は歴史的な猛暑,9月は残暑でスタートが出 「ワンダ」のアサヒ飲料も「モーニングショッ 遅れたため,1~9月累計の出荷量は前年同期比 ト」を9月からリニューアル。8月から「ゼロマ 約4%減と大きく低迷。終盤2カ月の巻き返し ックス」は「ゼロマックスプレミアム」に改良し, が期待される。 「金の微糖」も一新。さらに10月からプレミア 昨年は,不況により工場や事務所など職域用自 ムシリーズ第3弾として「プライムショット」 販機販売が急減。しかし,景気回復の兆しが叫ば を発 売。11月 か ら コ ー ル ド・ ホ ッ ト 販 売 兼 用 れる中でインドア自販機のパーマシンが底を打っ の「ボディショットブラックボトル缶」も投入 たとの見方もあり,今秋冬商戦で復活の兆しをつ する。広告は引き続き唐沢寿明,GACKT,市原 かみたいところだ。 隼人,岸部一徳,戸田恵梨香ら豪華メンバーを起 タバコ値上げ仮需の反動により台所事情が厳し 用している。 いコンビニエンスストア。コーヒーの提案力には テレビCMも積極的に放映 大きな期待を抱いており,量販店も含めて9月か ダイドードリンコは,発売35周年を迎えた主 ら特売攻勢に突入した。 力商品「ダイドーブレンドコーヒー」をリニュー こうした期待に応えようとメーカーも積極的に アルし,シリーズ商品として,「スペシャル微 新製品や販促で応戦。9月までの第1弾に続き, 糖」も発売。これに伴いイメージキャラクターに 第2弾,第3弾と矢継ぎ早に新製品を発売。加 俳優の伊藤英明を起用して新作CMをオンエア。 糖,微糖,無糖,乳系を軸に飲用シーンや男女別, さらに「D-1なめらかカフェオレ」や「アメリカ 年齢別,時間帯別などキメ細かな提案が目立って ンコーヒー」「復刻堂侍エスプレッソ砂糖ゼロ」 おり,異型缶も登場し容器の進化も著しい。 なども順次発売している。ネスレ日本は,レギュ 各社が基盤ブランドをリニューアル ラーソリュブルコーヒーとして生まれ変わった新 コカ・コーラシステムは,8月から「ジョージ 「香味焙煎」の発売に合わせ,9月から缶コーヒ アヨーロピアンコクの微糖」を発売。10月から ーでも同一ブランドの製品を発売。 新フレーバーとして「ご褒美ブレイクとろけるカ ポッカは9月から「アロマックス」シリーズ フェオレ」も発売。ここでは小出恵介と「アフタ をリニューアル発売し,CMでは昨年に引き続き ヌーン娘δ」が共演するテレビCMを大々的に 大泉洋をイメージキャラクターに起用した新作を 放映し,需要回復を狙っている。 放映。微糖の「ポッカコーヒー厳選微糖」も8 8月から「レインボーマウンテンブレンド」 月から発売した。 「贅沢微糖」の中味,パッケージをリニューアル JTは, 発 売10周 年 を 迎 え た「 ル ー ツ 」 に お したサントリー食品の「ボス」は,9月から「シ いて,10月から「ルーツアロマインパクト」シ ンプルスタイル」をラインナップ。10月,11月 リ ー ズ と し て「Masters」「 微 糖SPECIAL」 と「ゴールドプレッソ」「濃いめの一服」もリニ 「BLACK」を発売。広告には布施明,石川さゆ ューアルし,品揃えを強化した。 り,鈴木雅之,杏里,松浦亜弥,堂珍嘉邦を起用 主力商品の「プレミアムブレンド火の恵み」 してコーラスジャパンを結成。過去最高のパフォ 「挽きたて微糖」「ブラック」をリニューアルし ーマンスを展開している。 ぞろ (業界誌記者 井上拓郎) た「ファイア」のキリンビバレッジは,10月か 食品と容器 703 2010 VOL. 51 NO. 11 業界の話題 日本食糧新聞社・食サーチ(http://news.nissyoku.co.jp/)より 業界の話題 日清オイリオグループ, 「CLA」に肥満予防・改善 時変化に有意差を認められなかった(開始時→7 効果を確認 (日食 2010/09/20 日付) 週 後, 体 重72.8kg→72.9kg, 腹 囲91.7cm→91.3 日清オイリオグループは11日,「CLA(共役リ cm)。一方,CLA群では,7週後の体重は試験開 ノール酸)」による体重減少効果を日本人を対象と 始時に比べて有意に低値を示し(開始時75.3kg した試験で確認し,第57回日本栄養改善学会学術 →7週後73.7kgp(0.05),腹囲は変化する傾向 総会(9月10 ∼ 12日,女子栄養大学坂戸キャンパ が み ら れ た( 開 始 時94.6cm→ 7 週 後92.0cm, スで開催)で発表した。 p=0.08)。また,試験期間中の試験食摂取,食 CLAは,植物油に含まれる脂肪酸の1つである 事指導の遵守,歩数に試験群による有意差はなか リノール酸の1種で,乳製品などにも微量含まれ った。 る成分。脂肪の分解を活発にする働きがあるとい 【考察】この結果から,過体重または肥満の健 われ,特に,欧米ではサプリメントや健康食品と 常成人に対する食事指導に伴うCLA摂取は,肥満 して広く利用されている。これまで同社は,従来 の予防や改善に有効であり,また,海外の報告 の脂肪酸タイプのCLAよりも風味が改善された食 (CLA3.4g摂取)にみられるより低い摂取量で 用油タイプのCLAを開発するとともに,CLAの 体重減少効果が認められる可能性が示された。 機能について長年にわたり研究を続けている。ま 缶詰市場, “第5の柱”に注目 キーワードは「活 た,CLAはサプリメントのみならず加工食品分野 用」 料理用途中心に話題 において機能性素材として提案している。 (日食 2010/09/24 日付) 日本栄養改善学会学術総会での発表の演題は レトルト分野への流出,国内パッカーの激減な 「健常な過体重者,肥満者におけるCLA摂取の有 ど厳しい環境下にある食品缶詰市場。国内生産量 用性」で,内容は次の通り。 は近年,過去最低水準の更新が続き,収益面でも 【背景・概要】肥満はメタボリックシンドロー 苦しい状況が続く。この中で,缶詰の新たな提案 ムにかかわる重大な健康障害要因となっている。 施策として注目を集めているのが, 「活用」をキー 肥満の改善に対し,近年CLAが注目されている。 ワードとする取組みだ。特に今年は代表格である 同研究では,BMI23kg/平方m以上の過体重者や 料理用途を中心に話題を喚起, 「個食」「即食」「栄 肥満者に対するCLA摂取の影響を検討した。 養価」 「保存性」に続く缶詰特性の“第5の柱”と 【方法】(1)平均BMI26.2kg/平方mの健常成 して期待が寄せられている。 人8人を対象に,二重盲検交差法で21週間の比較 国内缶詰市場は近年,インフルエンザなどの短 検討(2)普段の食事量よりエネルギー摂取量を約 期的な特需以外では通年での消費が低迷し,年々 260kcal減じる食事指導を行った上で,4人ずつ 市場規模が縮小している。かつて加工食品最大の 2つの試験群に割り付け,8粒24kcalのゼラチン ボリュームゾーンであった地位は,保冷・保温流 カプセル(大豆・菜種調合油含有・LCT群および 通の発達や,外食産業のジャンルの多岐化,レト CLA1.8g含有・CLA群)をそれぞれ7週間継続 ルト分野での多彩な商品開発により低下。平成に 摂取,7週間のウオッシュアウト(試験食摂取や 入ってからは大手を除く国内パッカーの大半が廃 食事指導無し)の後,もう一方の試験食を7週間 業し,市場規模も約半分にまで縮小している。 継続摂取(3)1日の歩数および早朝空腹時の体重 「活用」をキーワードとする市場のV字回復は, は試験開始時と期間中に毎日測定し,記録(4)腹 鍋需要で消費を喚起,その後,飲用需要を刺激し 囲は試験開始時,3,5,7週後の3日間に測定 た豆乳市場などで知られているが,缶詰における し,記録。 活性化提案は05年ごろから徐々に台頭,インター 【結果】LCT群では,体重,腹囲のいずれも経 ネット普及に伴う料理サイトの充実や内食化によ 食品と容器 704 2010 VOL. 51 NO. 11 業界の話題 るレシピニーズの高まりなどで認知を高めてきた。 た新たな科学的知見の収集(3)保健の機能を適切 代表的な取組みとしては昨年から日本缶詰協会が, に伝える表示・広告方法 -- の3点が示された。具 今年は「あけぼのさけ」が100周年を迎えているマ 体的には,試験デザインの枠組みや審査基準,再 ルハニチロがそれぞれ消費者を対象とするレシピ 審査手続きの判断基準,トクホ広告にかかわるガ 公募を実施,主婦層を中心に予想以上の反応を得 イドラインの作成などについて,引き続き消費者 ている。 委員会で議論し,具体策を策定する予定だ。当初 店頭における活性化策でも,大手卸の国分によ はトクホ制度は不要ではないかという意見もある る「缶つま」ラインアップを筆頭に業界内での注 中で開催されたが,結果としてトクホ制度を前向 目を集めている。口コミでの認知もここにきて急 きに改善,発展させていく検証が続けられること 上昇しており,少し手を加えることで格段に価値 となった。 が向上する用途性,通常の惣菜とは一線を画す保 また,健康食品については,虚偽・誇大広告や 存性など,購買心理をくすぐる提案が支持を受け 表示の取り締まりに向けた制度が拡充されること ているようだ。 となり,現行制度の「抜け穴」ともいえる内容を 8月終了までの缶詰市場の国内生産量は約7% 見直す方向だ。 減(本紙推定)と依然厳しく,通期での前年超え 一方では, 「一定の機能性表示を認める仕組みの は現実的には困難な状況にある。ただ,「個食」 研究」という一文が入り,健康食品の有効性を表 「即食」「栄養価」「保存性」をすべて満たす加工 示するための研究が今後進むことになった。適切 食品は,缶詰以外には存在せず,ここに素材的価 な有効性表示ができる時代になることが待たれる。 値を含んだ「活用」を加えることで,これまでの 食の機能を集積した食品を利用することの意義 潜伏していた潜在需要を取り込む可能性は高い。 は,消費者1人ひとりの健康保持・増進やQOL また,メーカーからの一方的な提案とは異なり, 向上はもちろん,高騰する医療費に歯止めをかけ 消費サイドによる工夫や情報収集が必須である特 ることにつながり,国にも個人にも経済面のメリ 性上,口コミ人気による新消費層の掘り起こしに ットが大きい。そうした経済効果の面からの研究 もつながる可能性も。これらのトライアルがリピ の促進と集積も重要だ。 ートにつながった場合, 「古くさい」といったマイ 日本の食の機能性研究は,かつて国際的に先行 ナスイメージを払拭する可能性も高く,市場特性 するものだったが,最近は産業としての勢いも含 そのものを劇的に変化させる可能性もあるといえ めて諸外国に追いつかれ,追い越されそうな状況 るだろう。 にある。健康と食の領域は奥深く,企業の研究や 消費者庁, 「健康食品の表示」論点整理 検討会委 開発には限度がある。事業仕分けが進む昨今だが, 員・太田明一氏に聞く (日食 2010/10/01 日付) 国家として健康や栄養関係の予算を効率的に重点 09年9月の消費者庁設立と期を同じくして持ち上 的に配分されることも大切だ。 がった「エコナ問題」から1年。消費者庁は8月2 委員の1人として参加した検討会を振り返ると, 7日,09年11月∼ 10年7月に開催してきた「健康食 限られた時間だったが意義のある討議だった。検 品の表示に関する検討会」での特定保健用食品 討会の委員は産学民の代表者たちで構成され,さ (トクホ)や健康食品の課題解決に向けた論点整 まざまな立場や考え方があることを再認識した。 理を公表した。検討会の委員を務めた健康と食品 消費者団体の代表らと話を詰めてみると, 「消費者 懇話会相談役の太田明一氏に経過と今後を聞いた。 が知りたい情報」と「企業や業界団体の伝えたい 検討会の論点整理では,まずトクホについて, 情報」に大差はないことがわかった。ただ,伝え (1)表示許可手続きの透明化(2)許可後に生じ 方や伝わり方には慎重な配慮が必要で,そのため 食品と容器 705 2010 VOL. 51 NO. 11 業界の話題 にも今回,広告や表示のガイドラインなどを作る まれる塩分を今後5年間で平均25%削減を目標 という結論に至った。 (2)5年間で市民の塩分摂取量20%削減を目標。 消費者がわかりやすく,誤認なく健康食品を利 ▽結果=(1)18の各種健康団体や30の他州市組 用するためには何が必要か。摂取方法や安全性に 織からも支持(2)食品関連16社が賛同。 関する情報が科学的根拠に基づいていることはも 〈ロンドン〉 ちろん,事業規模の大小にかかわらず業界全体で ▽主導=食品基準庁(FSA)が04年にスタート。 もっと積極的に検討を進めるべきだ。また,業界 ▽活動内容=05年に発表された「FSA戦略プラ 側も消費者側も双方で表示や広告のあり方につい ン2005-2010」で,10年までに平均塩分摂取量を1 て討議し認識しあい,利用を推進していくべきと 日6gにすると設定。 考える。 ▽結果=英国民の平均塩分摂取量が9.5g/日(00 「塩を減らそうプロジェクト」 政府主導・食品 年)から8.6g/日(08年)に減少。 業界参加・消費者教育の3本柱で展開 〈フィンランド〉 (日食 2010/10/06 日付) ▽主導=地方・国家機関,専門家,WHOなど 塩分の取り過ぎは高血圧の主な原因で,脳卒中 が1972年にスタート。 などを引き起こし,寝たきりにもつながる。高血 ▽活動内容=(1) 「北カレリアプロジェクト」 圧予防啓発のために活動している「塩を減らそう として減塩だけでなく,禁煙,食事,運動など包 プロジェクト」 (電話03・5719・8940)が減塩キャ 括的に開始されたヘルシー運動(2)その後,全国 ンペーンに取り組んでいる海外の3事例を調査し に広がるだけでなく,他国の減塩キャンペーンの た。 モデルケースとなる。 対象となった地域は,今年から減塩キャンペー ▽結果=(1)過去30年で加工食品に含まれる塩 ンを開始した米国・ニューヨーク,そしてその活 分量を20 ∼ 25%削減(2) 1日の平均的な塩分摂取 動モデルとなった英国・ロンドン,さらにその取 量が40%下がり,高血圧や心疾患にかかる人の割 組みの参考となったフィンランド。いずれも政府 合も減少。 機関が高血圧を原因とする脳卒中や心疾患などの ◆食品業界の参加 死亡率の高さを懸念し,医療費を削減するために 3地域の減塩キャンペーンに共通していたのは, も減塩キャンペーンをスタートさせた。この減塩 食品業界が商品の減塩化に協力したこと。消費者 先進国での調査では(1)政府主導(2)食品業界 が摂取する塩分のほとんどが加工食品や外食から の参加(3)消費者教育--という3つの共通点が見 であるため,食品業界が全体的に商品を減塩にし つかった。 ない限り,消費者の塩分摂取量を減らすのは難し ◆政府主導 いと考えられた。 減塩キャンペーンを成功させるために必要な要 〈ニューヨーク〉 素として第一に挙げられることは,政府機関が減 ▽クラフト社=10年4月,2年以内に北米にお 塩キャンペーンのイニシアチブを取り,具体的な ける自社製品の塩分を10%カットすると表明▽ハ 目標を設定することだった。 インツ社=10年5月,米国で販売するケチャップ 〈ニューヨーク〉 の塩分を15%削減。 ▽主導=NY市保健精神衛生局は“全国減塩運 〈ロンドン〉 動-ザ ナショナル ソルト リダクション イ ▽ケンタッキーフライドチキン社=05年からフ ニシアティブ”の名称で10年1月にスタート。 ライドポテトに塩の添加をやめる▽ピザハット社 ▽活動内容=(1)店頭やレストランの食品に含 =04年から塩分プログラムを実施し,09年までに 食品と容器 706 2010 VOL. 51 NO. 11 業界の話題 30%の削減に成功。 (日食 2010/10/18 日付) 〈フィンランド〉 スチール缶リサイクル協会は6日,東京・大手 ▽マクドナルド社=フライドポテトなど全メニ 町の経団連会館で09年度の同協会の活動を報告し ューに“パンソルト”と呼ばれる塩化ナトリウム た。それによると,スチール缶リサイクル率は産 が少ない塩を使用。現在,減塩は健康的な食事法 業構造審議会の目標「スチール缶リサイクル率85 の一部としてフィンランドで広く取り入れられて %以上」を9年連続で達成し,過去最高の89.1% おり,多くの食品メーカーは国の基準に準じて商 (前年比0.6%増)となった。リデュース率(軽量 品を提供している。 化)についても,自主行動計画目標の「04年度比 ◆消費者教育 (2010年に)1缶当たり2%の軽量化を目指す」 消費者教育は商品に分かりやすいラベル表示の について1缶当たり3.41%(1.21g)の軽量化を 導入や,徹底的に健康的な食事や生活習慣につい 前倒しで達成している。 て啓発し,継続的に消費者を教育したことが,減 リサイクル率は,経産省の産業構造審議会ガイ 塩キャンペーンの成功に寄与したもよう。 ドラインである「スチール缶のリサイクル率85% 四国化工機, 「レコカップ」供給開始 樹脂量25% 以上」の目標を9年連続で達成した。これまでの 削減の飲料用エコ容器 (日食 2010/10/08 日付) 過去最高は88.7%(05年)。 液体充填機器や外包装システムを扱う四国化工 リデュース率(軽量化)は目標年度の10年を1年 機は,従来品より樹脂量を25%削減した軽量タイ 前倒しで,1缶当たり3.41%(目標は04年度比2 プのチルド飲料用プラスチック容器「LECOカッ %)を実現した。リデュース推進対象の缶型は プ(レコカップ)」の供給を開始した。環境負荷低 202径の200㎖と250㎖,211径の280㎖と350㎖の缶。 減へのニーズに応える形で開発を進め,すでに乳 回収事業は個人と民間収集事業者の2者のみの 業メーカーで採用されている。初年度は1800万個 関係から,自治体が加わり民-民-官の事業として の販売を目指す。 発展してきた05年から5年間の調査・研究の集大 レコカップは従来品と同等の強度を保ちながら 成として,集団回収の仕組みを広く社会に知って 容器を薄肉化。使用樹脂量を25%削減した環境配 もらうために全国の自治体や市民団体向けに「集 慮型容器だ。樹脂量減によるリサイクル負担金を 団回収マニュアル」を発行した。今後,関東・関 削減できるため, “エコロジー&エコノミー容器” 西地区で「協働型集団回収セミナー」も開催する としても注目される。すでに守山乳業の新商品 予定だ。 「元祖珈琲オレ」への採用が決まり,9月末から また,普及啓発・広報活動として散乱防止・美 発売されている。 化キャンペーン,消費者向け冊子「よくわかるス 四国化工機は主要顧客である飲料業界の要望に チール缶の基礎知識」の配布,環境展への出展, 対応した製品を幅広く取り扱う。作業動線や構造 啓発ポスターコンクールなどを実施してきた。 を見直し,操作性やメンテナンス性を向上させた さらに,支援事業としてスチール缶の集団回収 アセプティックレンガ型紙容器充填機や,レンガ を実施している地域団体の支援や,環境学習に取 型紙容器に差し込んで使用する再封可能な外付け り組む小中学校の支援,WFP世界食糧計画を通 口栓「エクスキャップ」を展開。ヤクルト本社と じた世界の貧しい子供たちへの学校給食支援など 共同開発した「ジョア」容器は各包装賞を受賞す を行っている。 るなど,技術力が高く評価されている。 今年度も消費者・自治体・事業者の連携に資す スチール缶リサイクル協会,再生目標を9年連続 る3R推進活動を継続推進していく予定だ。 達成 リデュース率も前倒し 食品と容器 707 2010 VOL. 51 NO. 11 今月の統計 (℃) 30 平均気温の推移(1~9月・東京) 平年値 25 2009年 20 2008年 2010年 15 10 5 0 1月 2月 (千・) ㎘ 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 月別・ビール・発泡酒・新分野別課税数量推移 700 2009年 600 2008年 2010年 500 400 新分野 300 発泡酒 発泡酒 200 ビール 100 0 1月 (千・) ㎘ 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 ビールの月別・容器別課税数量推移(発泡酒・新分野込み) 700 2009年 600 2010年 2008年 500 ビン 大樽 400 300 缶 200 100 0 1月 食品と容器 2月 3月 4月 5月 708 6月 7月 8月 9月 2010 VOL. 51 NO. 11 今月の統計 (万箱) 清涼飲料缶の月別・主要品種別生産推移 6,000 2009年 5,000 2010年 その他 スポーツD. 紅茶 お茶類 果実飲料 炭酸飲料 2008年 4,000 3,000 2,000 コーヒー 1,000 0 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 2010年(1~9月)ビール課税数量の前期比・構成比,容量ベース(発泡酒・新分野込み) 前期比 構成比 前年構成比 前期比 構成比 前年構成比 合計 98 100.0 100.0 容 器 別 (% ) 缶 大樽 98 99 71.5 18.0 71.2 17.6 ビン 92 前期比 10.6 構成比 11.2 前年構成比 ビ ー ル ・ 発 泡 酒 ・ 新 分 野 別 (% ) 合計 ビール 発泡酒 新分野 98 97 82 110 100.0 49.4 17.4 33.2 100.0 49.9 20.7 29.4 2010年(1~9月)清涼飲料缶生産実績の前期比・構成比,箱数ベース 合計 99 100.0 100.0 コーヒー 99 57.7 57.3 品 種 別 (%) 炭酸飲料 果実飲料 103 91 20.5 5.8 19.6 6.3 お茶類 89 5.6 6.2 平 均 気 温,降 水 量, 日 照 時 間 平 均 気 温 (℃) 平年差 前年差 2009年10月 月間 19.0 +0.8 -0.4 11月 月間 13.5 +0.5 +0.4 12月 月間 9.0 +0.6 -0.8 2010年 1月 月間 7.0 +1.2 +0.2 2月 月間 6.5 +0.4 -1.3 3月 月間 9.1 +0.2 -0.9 4月 月間 12.4 -2.0 -3.3 5月 月間 19.0 +0.3 -1.1 6月 月間 23.6 +1.8 +1.1 7月 月間 28.0 +2.6 +1.7 8月 月間 29.6 +2.5 +3.0 9月 下旬 20.8 -0.7 -1.9 月間 25.1 +1.6 +2.1 10月 上旬 20.7 +0.8 +0.5 中旬 21.1 +2.8 +1.9 注)平年値は1971年~2000年の月,旬平均値 食品と容器 276.5 151.5 82.5 9.0 115.0 143.5 214.0 114.0 108.0 70.0 27.0 221.0 428.0 87.5 8.0 709 紅 茶 111 3.4 3.1 スポーツD. 93 3.0 3.2 その他 91 4.0 4.3 (10月中旬まで・東京) 降 水 量 (mm) 平年比(%) 前年比(%) 170 135 164 205 208 117 19 6 191 247 125 146 164 132 89 47 65 48 43 89 17 11 300 2105 205 808 135 46 14 50 日 照 時 間 (h) 平年比(%) 前年比(%) 153.3 118 109 124.0 88 87 181.0 106 95 221.9 123 127 118.3 73 90 139.8 88 86 139.9 85 62 198.8 110 129 162.5 135 164 182.7 124 177 222.6 125 164 38.1 120 109 165.3 146 121 38.3 107 144 28.9 72 41 2010 VOL. 51 NO. 11 最近の技術雑誌から 国 ਈ 内 ¶³ᶨ²±ᶩ·±᷾··ᶨ'²±ᶩᶮ 編 ဩ ɜព៥ɝ食品への異物混入 ᄑףдބᶺఖಢႾቿࠜϥ៕ᶬµ´ᶨ¶ᶩ´²µ᷾´²¹ ᶨ'²±¯²±ᶩᶮ ɜព៥ɝ教材研究 食中毒の予防 ᄢࠍᶺఖಢႾቿࠜϥ៕ᶬµ´ᶨ¶ᶩ´³³᷾´³¶ ᶨ'²±¯²±ᶩᶮ ခ ౸ ̡ ซ ɜព៥ɝ特集―おいしさと味の評価方法― ᯨقʇቿࠜᶬ¶³ᶨ²±ᶩ·´᷾¸¶ᶨ'²±ᶩᶮ Ⱦުʝʫʪ̍ءᰖʩ̍˜˅ˏ˗˹̎ʍ᥎ʍթ ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃࢡᨂٴฬ ȾءងࡄלϹʱԢᄍɶɾءʍើМఄຫ ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃఖͬᧅᝃࠍ̍ᙸຼͥᦿ ู̡݈ᆎ ɜព៥ɝ特集─ダウンサイズ効果も今ひとつ/価格志向 では限界もある/消費変化に迷うみそ業界─ Ᏼᯨقᶬ´µᶨ¶ᶩµ¶᷾¶·ᶨ'²±¯²±ᶩᶮ ۰ ᅋ ̡ ् ɜព៥ɝ咀嚼・嚥下障害に関する研究 ᵩᙸᇍᄒᶺఖಢႾቿࠜϥ៕ᶬµ´ᶨ¶ᶩ³¹²᷾³¹¶ ᶨ'²±¯²±ᶩᶮ ɜព៥ɝ植物工場の今後の推進方策 ࡷআहᶺᯨँقඋᶬ ¶´ᶨ³±ᶩ¸²᷾¸¹ᶨ'²±¯²±/´±ᶩᶮ ɜព៥ɝ―市場動向 ロコモティブシンドローム対応素 材の現状― ᐁᭂᧅᶺᯨقʇᆌᶬµ¶ᶨ²±ᶩ³¹᷾µ²ᶨ'²±ᶩᶮ ర ઍ ̡ ඟ ઍ ɜព៥ɝ総点検!! 食品企業のイノベーション/調理の 煩わしさの解消で魚消費を推進する日本水産の新提 案/本格煮魚をレンジ商品で簡便化図る ᡅࣽ আᶺᏴᯨقᶬ´µᶨ¶ᶩ³±᷾³´ᶨ'²±¯²±ᶩᶮ ɜព៥ɝ―健康素材シリーズⅠ 脳機能改善素材の開発― ᐁᭂᧅᶺᯨقʇᆌᶬµ¶ᶨ²±ᶩµ´᷾µºᶨ'²±ᶩᶮ ɜព៥ɝ―健康素材シリーズⅡ 口腔ケア食品素材の開 発動向― ᐁᭂᧅᶺᯨقʇᆌᶬµ¶ᶨ²±ᶩ¶±᷾¶²ᶨ'²±ᶩᶮ ௴ ࿁ ۹ ۄ ᆎ ̡ ௧ ഉ ɜព៥ɝ10年の家庭用Rコーヒー,厳しい中も堅調/秋冬 物の積極展開でプラス着地も ᧘ᯕᯨقᏎឞಏܫᶬ¶³ᶨ¹ᶩ³᷾¸ᶨ'²±¯ºᶩᶮ ౡ ɜព៥ɝ特集―食品安全技術Ⅱ― ᯨँقඋᶬ¶´ᶨ³±ᶩµ¶᷾·µᶨ'²±¯²±/´±ᶩᶮ Ⱦᯨقʍࠪӂ̍ࠪʊዒʃँܬиʍ˓˫˞ʇ˥̎˟ ʍ˳ʺ̉˞ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃᱝᢍቔ ȾִࠒΟʍϵ༜ʊɰʅƃƃƃƃƃƃƃƃƃ௲ᙸ କ Ⱦᯨͼقʍᄤ᥄ᙪʍթᶨ³±±¹शᶬ³±±ºशʍᄤ᥄ᙪ ൮ᏃೖΟАʱʡʇʊᶩƃƃƃƃƃƃƃƃೋಢভव ɜព៥ɝ【データでみる】異常な酷暑でも増えない夏場 のビール類消費∼ビール下げ止まり?・新ジャンル は減速∼ ᧘ᯕᯨقᏎឞಏܫᶬ¶³ᶨ¹ᶩ´´᷾´¶ᶨ'²±¯ºᶩᶮ ɜព៥ɝ上位寡占化進む清酒紙パック・PET市場/品質・ 機能性を訴求した商品開発が鍵に ᧘ᯕᯨقᏎឞಏܫᶬ¶³ᶨ¹ᶩ·²᷾·µᶨ'²±¯ºᶩᶮ ɜព៥ɝ特集1―ここがポイント!! 調理場の安全対策― ށᶄআᶺᯨʇѪ॓ᶬ¶µᶨ²±ᶩ·᷾²¸ᶨ'²±ᶩᶮ ɜព៥ɝ特集─未だに低価格から脱せない?!/清酒業界 の価値訴求販売/有力メーカーの商品政策を探る─ Ᏼᯨقᶬ´µᶨ¶ᶩ³µ᷾´´ᶨ'²±¯²±ᶩᶮ ɜព៥ɝ特集2―飲食店の衛生管理 食肉の提供に注意 しましょう!― ͼಳू௮ᶺᯨʇѪ॓ᶬ¶µᶨ²±ᶩ¶±᷾¶¹ᶨ'²±ᶩᶮ ɜព៥ɝ─NEWS FROM U.K. Beverage Innovation誌が 選ぶ世界の新製品から/Beverage Innovation Issue 77─ Beverage Japanᶬ Ɖ´µ¶ ²±±ᶨ'²±¯²±ᶩᶮ ɜព៥ɝわが国の食中毒はどこで多く発生するのか ᱝฬআ̍ᄑ ਚᶺˡ˻̎˫̎˟ʺ̉˖ˏ˞̀̎ᶬ 食品と容器 ઍ 710 2010 VOL. 51 NO. 11 最近の技術雑誌から ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃజ Ԣদ Ⱦ˫̎˟ʸˠ̀ˏ˞ʇంɶɣᯨʹ˝˷ܫʸʍಠಿ ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃීΥᝃΈ Ⱦɔ OisixᶨɩɣɶʂɮɸᶩɕɫЀʪˣ˙˞ˏ̎˧̎˩ ˎˣˏƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃށဍକݿ Ⱦ௶Ⴞʱᥱɶʅᶬዶᯐʇκɫʃʉɫʪ˩ˎˣˏᶡ Sorissoʍ࢘ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃҴฬේ Ⱦᯨقඋᄟʍˡ˻̎˩ˎˣˏƃƃƃƃƃƃƃƃƃᐁᭂᧅ ࠍѨ҈̡ӟһӞһ௴࿁ ɜព៥ɝレトルト1食入りが好調,ベビーフード市場/ メニューの偏り改善が今後の成長を左右 ᧘ᯕᯨقᏎឞಏܫᶬ¶³ᶨ¹ᶩ²³᷾²¶ᶨ'²±¯ºᶩᶮ ɜព៥ɝタイ産パイン缶詰原料,引き続き高値推移/天 候不順で収量低調・日本向け供給タイト ᧘ᯕᯨقᏎឞಏܫᶬ¶³ᶨ¹ᶩ´·᷾´ºᶨ'²±¯ºᶩᶮ ௴ ࿁ ڵ ɜព៥ɝ第59回技術大会研究発表論文要旨 ᑉ៊ీܫᶬ¹ºᶨ'²±ᶩº᷾³ºᶨ'²±ᶩᶮ ཥ ɜព៥ɝ特集―種から見直すこれからの食品開発― ᯨقʇᆌᶬµ¶ᶨ²±ᶩµ᷾²·ᶨ'²±ᶩᶮ Ⱦᓧ৷ʱପʃقኚᆌʍႻၤʇɼʍໍᄍƃƃ᮶ᄑᦽބ ȾᯨقᎫಲʇɶʅʍˋ˚˴ʺ˸ᶭంقኚᆌʊʧʪˬ̂ ̎˅ˏ́̎ᶭƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃࢡࣽ Ⴞ Ⱦంقኚʍˬ˿̉˟ጫႾʇᇽᆔᡦᄊƃƃƃƃƃ௲ᙸ и Ⱦᨂᗚᓧ৷ᓑኚʗʍכʩᎻʞƃƃƃƃƃƃƃӇធ٩ͥ ɜព៥ɝ2010年度酒類食品産業の設備投資∼プラスに反 転へ∼/09年度はプラス計画が一転マイナスに ᧘ᯕᯨقᏎឞಏܫᶬ¶³ᶨ¹ᶩ²¸᷾´³ᶨ'²±¯ºᶩᶮ ɜព៥ɝ即席めん,NBの露出強化でプラスへ/猛暑で失 速も,上期の貯金と秋需でフォロー ᧘ᯕᯨقᏎឞಏܫᶬ¶³ᶨ¹ᶩµº᷾¶·ᶨ'²±¯ºᶩᶮ ɜព៥ɝ―食品の機能性と安全性情報を一堂に!/食品 開発展2010/Hi&S-tecの見どころ― ᐁᭂᧅᶺᯨقʇᆌᶬµ¶ᶨ²±ᶩ¶´᷾·ºᶨ'²±ᶩᶮ ɜព៥ɝ特集1―パンのふっくら・もっちり感を究める― ˫̎˟ˇ˵ˁ́ᶬ³·ᶨºᶩ²¸᷾µ³ᶨ'²±ᶩᶮ ȾၔԠʺ̉˕˩˻̎ᶼࢡࣉᝒ˧̉©ª ͼއለኴᫎ ࢡᄑᭀ״ᶾంᯨʍᥟʇ٦قᆌ Ⱦɳʎʲ˧̉̍፥፫˧̉ʍᝒʇقᢑͫ૮ ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃޠౙه Ⱦ˰˅˗̉ʱᄍɣɾ˧̉ʍ˲̀˻̎˶ʸ˙˭̍ᯨᕩ ՞ೖƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃᄑͼઋͥ Ⱦɔణऑ᧦ɕʱᄍɣɾ˧̉̍፥፫˧̉ʍ˲̀˻̎˶ ͫƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃ࠽ࣃ֞ࡴ Ⱦ᧤Ꭻʊʧʪ˧̉ʍʣʮʨɪɴͫʇ˲̀˻̎˶ʸ˙˭ ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃͼࣨ॓Έ Ⱦ˧̉ʱɬʫɣʊᔚʨʝɺʪɾʠʍᎫಲ̍༐Ւၑ ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃᐁᭂᧅ ௴࿁݈ী̡ဲഇ ɜព៥ɝ特集―惣菜・米飯業界における技術開発― ˎ˹˧̉˫̎˟ˋʺʾ̉ˏᶬµºᶨ²±ᶩ³±᷾´ºᶨ'²±ᶩᶮ Ⱦᑬءɶɴʱ࠷Ⴛɸʪւᝀ፥ᯮˍˏ˜˶ʍᆌᶭՒ̍ۥ ˴ʺ˅̃າՒပ૮ʊʃɣʅᶭƃƃƃƃƃԳׄᝃΈ Ⱦʸ˴ˡຝʍѪ॓МђʇੇᗚʗʍԢᄍƃƃƃࡷᨂຟͪᦿ Ⱦᘛɶᄍ˲ʺ˿ɔMUSSY-³±±Gɕʍၔ৷ʇᄍᥬА ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃ ປΥծ Ⱦੇᗚ̍፥ᯮᝒقʍᎶς ધਯ̡ᅻ෭ ɜព៥ɝ特集2―米粉の新しい利用技術― ˫̎˟ˇ˵ˁ́ᶬ26ᶨºᶩµº᷾¸´ᶨ'²±ᶩᶮ Ⱦ፥፫˩ˎˣˏʗʍខƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃᗲᄑ ȾɴʝɵʝʉՒँᯨقʊড়ɷɾ፥፫ʍᝒ̍ᆌ ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃᙸΥᑵ௮ Ⱦ፥፫ׄ௶ʍՒँᯨقʗʍࡷᴹˆ́˜̉ʍԢᄍ ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃᡋᄑ֬ Ⱦಠಿʊʃʉɫʪ፥፫̍ᝒ፫ఄຫᶭɩɣɶɣ፥፫ᝒʍ ɾʠʍᝒ፫૮ᶭƃƃƃƃƃƃಳҮේ̍ށ ৗ Ⱦʍ፥፫ᝒ̍قګƃƃƃƃƃƃƃƃƃᐁᭂᧅ ɜព៥ɝ特集―食品業界の新潮流・新ビジネス― ᯨँقඋᶬ¶´ᶨ²ºᶩ´º᷾¸³ᶨ'²±¯²±/²¶ᶩᶮ Ⱦʺ̉˕˩˻̎ᶼॾϥɯʪʉʒ Ᏼጐ࠺ᫎ ࣃण໙ᶾɯʪʉʒዿᶲՄඋಜʊɰɾૌᄬ 食品と容器 ɜព៥ɝ平成22年度第1回「消費者動向等調査」/食志 向・国産品へのこだわり・食生活変化・価格水準 ఖಢጐᨅᛧӆॏᶺᑉ៊ీܫᶬ¹ºᶨ²±ᶩ´±᷾´µᶨ²±ᶩᶮ ' ' ࡀ ̡ ކಈ ྐ ɜព៥ɝ特集1―粉粒体機器― ᯨقീᝀᑝᶬµ¸ᶨ²±ᶩ·´᷾¹³ᶨ'²±ᶩᶮ Ⱦᯨق፫Ϲʍᝒँʊɩɰʪᄴၑᬐאʉʈᶬࠪӂ৷ ͫʍɾʠʍ૮ɩʧʒګʊʃɣʅƃƃƃಢ ݼᒾ ȾኣၑᕫনᦦԠʊʃɣʅƃƃƃƃƃƃƃƃƃࢡࣉቔͥ Ⱦˋˡ˕̀̎৷ʇЋɣపɴʱᥟɶɾ̃̎́ʊʃɣʅ ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃనຟീ©ª ᝒ፫ᄊඋᧅ Ⱦ፥፫ᄍ፫ሉʊʃɣʅƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃ Ҵన ቬ 711 2010 VOL. 51 NO. 11 最近の技術雑誌から ƃ˭˿ˏ˗˙˅ࡄګւᝀ̀ˋʺ˅́ୟ֩ᠳϥ̍ ఖಢ RPFँඋϥ̍ఖಢᝒᎧϥ Ⱦžঃɬዬſʍಐ՞ໍᄍʊ࢘ᶯۿށឮѹʊʧʪዬ˧ ́˭ʉʨʒʊዬᎧʱᆌݫƃƃƃƃƃͼᢳ˧́˭ँඋ ɜព៥ɝ特集2―冷凍冷蔵・鮮度保持機器― ᯨقീᝀᑝᶬµ¸ᶨ²±ᶩ¹´᷾¹·ᶨ'²±ᶩᶮ ȾᔵӲ߫ʱЋᄍɶɾӲᙀуॏ̀ˡ˻̎ʸ́ʍ࠷А ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃໄቬѪҺ ࠊ ᅬ ࡚ ɜព៥ɝ特集2―豊漁! シーフードと食品包装― ᯨقւᝀᶬ¶µᶨ²±ᶩ³¸᷾´±ᶨ'²±ᶩᶮ ȾžႾɶʣɸɴſӑ᭚ଞށʍˁ˄ɪᶯᄉໍᒓខʍݼ ኚݼපʉ٦ಲʊᱝʝʪಜহƃƃƃƃƃƃƃƃᐁᭂᧅ ȾᲝ्ʸ˙˭ʍւᝀᢁಲʡɪʨᶯՒँᯨقʎ˦̀ʾ ̎ˍ˽̉ݼප֊ɫʟƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃᐁᭂᧅ ୠ ɜព៥ɝ年間特集―食品の品質保証技術― ᯨقീᝀᑝᶬµ¸ᶨ²±ᶩ¶³᷾·³ᶨ'²±ᶩᶮ Ⱦᯨقւᝀಲ௶ʍقᢑвាƃƃƃƃƃƃƃƃށ᮶ আ ɜព៥ɝ特集―加工食品の包装工程管理― ˎ˹˧̉˫̎˟ˋʺʾ̉ˏᶬµºᶨ²±ᶩµ±᷾¶·ᶨ'²±ᶩᶮ ȾᤈXᏺ൮ʊʧʪᯨقւᝀ൮ƃƃƃƃƃᱝআᜓ Ⱦᄘ҈ˑ̉ˋʊʧʪᯨقւᝀʍִࠒ൮ƃƃƃ௲ᙸ କ Ⱦˀ̎˞˗ʽ˙ˁᶨᔵթᨁᨃᦦԠᶩʊʧʪᝒقጫႾ ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃᱝಢ ᙩ ȾʍւᝀँጫႾګ ɜព៥ɝ特集3―包装関係者も注目! 開催間近の国際 展示会― ᯨقւᝀᶬ¶µᶨ²±ᶩ´³᷾´ºᶨ'²±ᶩᶮ Ⱦᮉంᆔʉᯨق૮ʱᄍɣɾᝒ࢘قቌᶯ֤Ւँᝒقʇᯨ قീʍಢऐʡЇѻ ƃƃƃ SIAL³±²±ᶨ˧̀۔ᬫᯨقಢऐˍʸ́ᶩ Ⱦɔીᫎʍ˨̉˞ʎᶬւᝀʊɡʪɋɕᶯžւᝀɫʆɬʪ ɲʇſʍӂʅʱϽɸʇɲʬʉɮ᭭ɸʪ³´ۋᆾʍށ ಢऐ ƃ TOKYO PACK ³±²±ᶨ³±²±δ۔ᬫւᝀ࢘ᶩ Ⱦž˫˿̉ˏ˧˩̀ˀ̉ſʊ¸±ᶯᦞԕʉᎫಲᦦ૾ʍɾ ʠʍ˚̎́ʊʡᱝʝʪಜহ ƃ K³±²±©۔ᬫ˭˿ˏ˗˙˅̍ˊ˶ಢऐᶩ ȾK³±²±Ԏ࢘˥ʺ˿ʺ˞ ᱝᒗပPETूګࡄףʊၔ֊ᶯ ˂˿ˏɪʨʍԕಌ᭚႘ৃʗᆌ ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃఖᎃʾ̎̍ʾˏ̍˩̎ീ ȾK³±²±Ԏ࢘˥ʺ˿ʺ˞ ࡄګʉʈʍીথᄍ˱˙˞˿̉ ˠᶯूጳʉʸ˭̀ˇ̎ˍ˽̉ʊࡩড় ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃ˥ˏ˃̎ ȾւᝀʇՒँʍ˓̀˻̎ˍ˽̉ʊᶯ˧˙ˇ̎ˎִԨ ʊၔ֊ɶɾʺ˯̉˞ʡ់ᯌ ƃPACK EXPO Internationalᶨ˧˙˅ʾ˃ˏ˳ᶩ Ⱦ۔ӑށᝒᙪ˷̎ˁ̎ʡԎ࢘ᶯžˏ˰ˍ˹́˔̎̉ſ ʆʎւಲʱᭂͼ࢘ቌ ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃCHINA-PHARM ᶨዿ²¶ۋɔͼ۔۔ᬫ֚ᙪँඋ࢘ቌϥɕᶩ ᄵ ࠰ ̡ ၆ ɜព៥ɝ特集─機能性包装─ ւᝀ૮ᶬµ¹ᶨ²±ᶩ´᷾´¶ᶨ'²±ᶩᶮ Ⱦ¶±±mlPET˲˞́Ӂʩ᧦ᯯ௶ʗʍ˥ʺˬ̀˙˟˲˞ ́ࡶӁʊʃɣʅƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃීࢡକइ Ⱦˬ̃˙˅ၤ˭̃ˑˏ˗̎ːᄍւᝀ˫ʹ́˶ʍᆌ ƃƃƃƃƃƃƃƃᖏΥ࠰κ̍ೋᨂͥᦿ̍ᗒׄౙ Ⱦᱝᓧ৷ၔ˫ʹ́˶ɔፍపʍ˫ʹ́˶ᜫɕ ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃᗲᨂ᮵ͥ ȾᎧʇ˭˿ˏ˗˙˅ʍګࡄ˟˙̀ˬʺ˥ɔ˰˭˿ˁ ˙˭ɕʊʃɣʅƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃܺށᨃه Ⱦˉ̎˩˻̎)˧˙ˇ̎ˎ̉ˆʊʃɣʅᶭˋˏ˰̉ˍ˽ ̉ʇ̀˜̉ˍ˽̉˧˙ˇ̎ˎ̉ˆᶭƃƃƃ൛ᓫ௮ ȾᡪݫХᓧʱѹɧɾᤤᥡւᝀɖ˦̀˙˞˲˙˅ˏɗ ʊʃɣʅƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃӅಟᨂ Ⱦၑ໐ᄍുւಲʊɩɰʪშ݄ᡥᖻϵ༜ɩʧʒˉˏ˞༜ ᶯGreenEcoBolt EcoBizBeltƃƃƃƃƃƃྙۨҶన ɜព៥ɝ特集1―低炭素化時代の食品包装を考える― ᯨقւᝀᶬ¶µᶨ²±ᶩ²¸᷾³·ᶨ'²±ᶩᶮ ȾᏵᖭᯯ௶ʆ PET˲˞́ʍᤏᨃ֊ʱ࠷ႻᶯంҰܾఄॾ ࡶӁʇᜓᶬ˿˯́ᙙᒿ֊ʡీʊƃƃƃƃϟᙸ۞ Ⱦ፥۔ᄊᡐ˨̂ˬ̃˙˅ʆʡžˤ̉˞̂̎֊ſᶯࡄګʣ ւᝀথੳᇀɶʆˆ́̎˭ӂϹʍCOᶲ༜ʊࡉͮ ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃז Ⱦᯨقᄍᥬʗ࠷ᄍ֊ʍಜহᱝʝʪಟᢑ˦ʺˀւಲᶯఖಢ ᝒᎧᶬᕼႡʇʍӉᆌɫNEDOʆ૾ ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃԌ၅ִԨ Ⱦɔˋ̎˴́ɲɼɫͥᄰႾᆔɕᶯࡄ̀ຫ˭˿Ӗ٦֊ق ᡸϵ༜ʗRPFຫʍМђឱɧ 食品と容器 ɜព៥ɝ特別企画―「2010東京国際包装展」プレビュー ∼成長のヒントは,包装にある∼― ᐁᭂᧅᶺᯨقʇᆌᶬµ¶ᶨ²±ᶩ¸µ᷾¸¹ᶨ'²±ᶩᶮ ɜព៥ɝ特集─PETボトル2010[前編]─ Beverage Japanᶬ Ɖ´µ¶ ³·᷾·³ᶨ'²±¯²±ᶩᶮ ȾPET˲˞́ʱʠɯʪตͳϐʗʍ៨ᯌʇऑሃ ȾPET˲˞́ʍᤏᨃ֊Ο Ⱦ۔ӑPETේᓨˋ˭˿ʺ˺̎ʍૌᄬ Ⱦࡄ̎˺ʺ˿˭ˋګʍթ Ⱦીথ˷̎ˁ̎ʍంΟ ȾPET˲˞́ʇقᢑጫႾ 712 2010 VOL. 51 NO. 11 最近の技術雑誌から Ingredient Options for Weighty Formulations 海 外 C.D.O'Donnell… ……………… 19~20, 23~24, 26~28 編 ○減塩に関する消費者調査 Consumers and Sodium Reduction A.Bouchoux and K.Sollid… ……… 31~32, 34, 37~38 邦文の題名は内容に従って付けてありま すので,原題と異なる場合があります。 ○世界中の甘味料とセイボリーフレーバーを 用いたデザートの創出 Sweet and Savory Flavors From Around the World C.Baggs and K.Nicholas… …………… 41~42, 44, 47 ○エネルギー飲料の現状と将来 Energy Addiction W.A.Roberts Jr. and C.D.O'Donnell The World of Food Ingredients(Neth.) Jun.(2010) ………………………………… 51~52, 55~56, 58, 61 ○素材変更とそのリスク対応 E.Mannie… ………………………… 63~64, 66, 69~72 Taking on Reformulation ○グルテンフリー食品の最適な処方 R.Betts,C.Speirs & S.Chapman… …………… ○果実や野菜を用いた食品と機能性 Fruitful Bounty 12~16 Optimizing Gluten-free Foods… …………………… 17~22 Food & Beverage Packaging(U.S.A.) Vol.74 Aug.(2010) ○食品ハイドロコロイドの機能性 Necessary Additives R.Wyers…………………………………………… ○ガムおよびブレスミント用の新しいパッケージ ○砂糖代替甘味料と健康効能 Fresh Breath in a Fresh Package Sweet Alternatives P.Demetrakakes… ……………………………… J.Marcus… …………………………………… 23, 24, 26 検査システム Sauce Innovation Thrives Making the Smart Choice for Smart Inspection M.Hilliam… …………………………………… 28~30, 32 P.Demetrakakes… ……………………………… ○豆類の機能特性と用途展開 ○消費者の環境への関心と購買への影響 S.Potter……………………………………………… 36, 38 World Gone Green Fruit Processing(DEU.)Vol.20 Jul./Aug.(2010) K.Faron… ………………………………… 26~28, 31~33 ○エスニック素材とフレーバーによる食品の開発 ○スーパーフルーツと最大の可能性 Adding Ethnic Flair to Foods Super Fruit, Maximum Potential K.Nachay… ………………………… 34~36, 38, 40~42 154~156 ○加工食品の減塩戦略 Desalting the Food Grid Food Manufacture(U.K.)Vol.85 Aug.(2010) T.Tarver…………………………………… 44~46, 48~50 ○ハーブおよびスパイスの食塩代替機能と ○タンパク質の健康効能 抗菌特性 Powerful Proteins In search of the Holy Grail L.M.Ohr…………………………………… 67~68, 70~71 44~45 ○ダイズ油の改良 Improving Soybean Oil Prepared Foods(U.S.A.)Vol.179 Aug.(2010) N.H.Mermelstein………………………………… 72~76 ○超音波の食品加工への商業的応用 ○体重管理のための食品素材の選択 食品と容器 26~27 Food Technology (U.S.A.)Vol.64 Aug.(2010) Pulses on the Menu J.Dunn… ………………………………………… 24~25 ○カメラおよびセンサーによるパッケージ ○成長が続くソース市場 S.Nuijten… …………………………………… 76 713 2010 VOL. 51 NO. 11 最近の技術雑誌から Commercial Applications of Ultrasound in Foods Getting a Quick Energy Boost J.P.Clark… …………………………………… 78~79, 82 R.Rouan…………………………………………… ○製品の取り出しが便利な食品包装システム ○プロテイン飲料の進化 Food Packaging Systems Deliver the Goods A.L.Brody… ……………………………………… 19~20 Competitive by Nature J.Zegler………………………………………… 24~26, 28 80~82 ○血液の流れを良くする飲料 Journal of Food Science(U.S.A.)Vol.75 Aug.(2010) Heart Healthy Ingredients Get the Blood Flowing ○ホワイトおよびグリーンティーのフェノール, E.Fuhrman … ………………………………… 50, 52~53 メチルキサンチンと抗酸化物質のプロフィル ○柑橘系フレーバー飲料への期待 White and Green Teas(Camellia sinensis var. Consumers Crave Citrus sinensis):Variation in Phenolic,Methylxanthine, E.Fuhrman … …………………………………… 56~57 and Antioxidant Profiles The Canmaker Vol.23 Aug.(2010) U.J.Unachukwn et al. …………………… C541~C548 ○パルス電界処理を用いたレッドキャベツからの ○製缶の歴史:缶の製造と技術のグローバル展開 アントシアニンの抽出 Global Expansion Enhanced Anthocyanin Extraction from Red J.Nutting… ……………………………………… 33~35 Cabbage Using Pulsed Electric Field Processing Food Manufacture(U.K.)Vol.85 Sep.(2010) T.Gachovska et al.… ……………………… E323~E329 ○乳酸菌によるカンキツカビ病の抑制 ○魚資源減少に対する新しい加工法 Inhibition of Citrus Fungal Pathogens by Using Joined Up Thinking Lactic Acid Bacteria J.Dunn … ………………………………………… C.L.Gerez et al.… ………………………… 61~62 M354~359 Food Ingredients Health & Nutrition (U.K.) Sep.(2010) ○種々のレベルの機能性素材(カフェイン, チョウセンニンジン,タウリン)を用いた エネルギー飲料モデルの味の特徴 ○食品開発におけるファイバーの採用展開 Sensory Profile of a Model Energy Drink with The Incredible Bulk Varying Levels of Functional Ingredients R.Addy ………………………………………………45~46 -Caffeine,Ginseng,and Taurine- ○OMEGA-3機能表示に対する規制の動き L.C.Tamamoto et al.… …………………… S271~S278 One Claim Too Many ○エレクトロスプレー法でマイクロカプセル化 A.Bruce………………………………………… 49~50, 52 したオメガ3脂肪酸の安定化 ○健康志向の機能性飲料 Stabilization of a Nutraceutical Omega-3 Fatty Here’s to Your Health Acid by Encapsulation in Ultrathin Electrosprayed C.Ryan ………………………………………… 55, 57~58 Zein Prolamine Food Processing(U.S.A.) Vol.71 Sep.(2010) S.Torres-Giner et al.… ……………………… N69~N79 ○ポリフェノールおよび食物繊維源としての ○畜肉,魚肉タンパクの安全摂取 リンゴの皮を含む素材の開発 Keeping Animal Protein Natural_ _ _ Development of an Ingredient Containing Apple M.Anthony … ………………………… 36, 38, 40~41, 43 Peel, as a Source of Polyphenols and Dietary ○スナックフードの新しい加工法 Fiber Note to Snack Foods Processors: C.Henriquez ………………………………… H172~H181 Get Well Soon ! B.Sperber ……………………………… 48, 50, 52~53, 55 Beverage Industry(U.S.A.)Vol.101 Aug(2010) ○Kettle Foods社が「グリーン工場・オブ・ザ・ ○エネルギー飲料の市場動向 イヤー賞」を受賞 Leveling the Field Green Plant of the Year R.Rouan … …………………………………… 14, 16, 18 K.B.Connolly … ……………………………… 57~58, 60 ○小容量エネルギー飲料の売り上げ状況 食品と容器 714 2010 VOL. 51 NO. 11 た感じの果物である。ラグビーボール大の果実の 野菜・果物を巡って 一面には太めのトゲがいっぱい生えていて不気味 な感じである。書物によると強いアンモニア臭が あって食べにくい果物と記されていた。この臭い (第二十三話) 成分はイオウを含む硫化アリキル化合物とのこと ドリアンとの出会い である。しかし,特有のおいしさもあるのだろう と想像し,一度は味わってみたいと望んでいたが, 非常に高価なので(1個8,000円~1万円であっ たと記憶する),求める勇気はなかった。 チェンマイで市場をぶらぶら歩いていた折に, 半分に切断されたドリアンが吊るして売られてい るのを見つけたときには,是非味わってみようと いう気持を強くした。外観からは想像も出来ない ほど柔らかそうな淡黄色の果肉が見えて,いかに もおいしそうであった。半分でも価格は決して安 くはなかったが,欲しいだけの分量を切断して売 吉田 企世子 ってくれるので,チェンマイを案内してくれた知 (女子栄養大学名誉教授) 人と二人で適量を求め,その場で味わった。初め て口にする果物なので,ドキドキするような期待 感で口に入れたことを思い出す。はじめは香りに 初めてタイ国へ出掛けたのは1975年頃である。 少々抵抗があったが,書物に記されているような バンコクの主婦(消費者活動をしている方々)を 不快感は全くなかった。果物のジューシーさはな 対象に講演を依頼され,勿論日本語であるが,通 いが,滑らかな舌触りと甘味とが調和した濃厚な 訳つきなので,無事に終了し,質問もあり,盛り 味であり,甘いクリームチーズといった味わいで 上がった会となったことを記憶している。ついで あった。食べ進む内にますますおいしく感じる不 にチェンマイの方に足をのばし,小旅行を楽しん 思議な果物で,大変満足したことである。それ以 だ。タイ国のゆったりした雰囲気や寺院の美しい 来,日本でドリアンを味わう機会はなかったが, こと,食べ物のおいしいことなど,忘れられない 食べるなら,タイ国へ行ってと望んでいる。 旅となった。その後,仕事もかねて二度ほど出掛 ドリアンはパンヤ科に属する果実で原産地はイ けたが,初めての印象が最も強く心に残っている。 ンドからマレー半島,ボルネオ,スマトラ島など ホテルについて,先ず嬉しかったのは部屋の真ん の地域であると記されている。現在でも東南アジ 中のテーブルに各種のトロピカルフルーツが豊か ア以外には土着しないという不思議な果実である。 に盛り合わせて置かれ,客を待っていたこと。当 「ドリ」はマレー語でトゲ,「アン」は果実を意 時,どこに出掛けてもこのような歓迎のされ方は 味する。 経験なかったので,大いに感激したことである。 果樹は30mを超す大木となり,果実が熟すと その頃,トロピカルフルーツは殆どが冷凍で輸 高い樹上からドスーンと落ちてくるので,注意が 入されており,生鮮果実とし市場で扱われていた 必要とのこと。 のは僅かな種類であった。その頃もドリアンは有 その昔,大航海時代にアジアに渡ってきた西洋 名な果物専門店では売られていた。写真や絵など の冒険家達がドリアンを見て,「おお,これは果 でドリアンの外観は理解していたが,食欲をそそ 物の魔王(サタン)だ!」といったとか。それ以 るような形態ではなく,むしろグロテスクといっ 来ドリアンに「魔王」の異名がついたと伝えられ 食品と容器 715 2010 VOL. 51 NO. 11 ている。 66.4%で一般の果物よりかなり少ない。したがっ ド リ ア ン の 英 語 名 は シ ベ ッ ト・ フ ル ー ツ て, 他 の 成 分 は 濃 厚 で あ る。 エ ネ ル ギ ー が (civet fruit)。シベットは麝香(ジャコウ)の意 133kcalで 果 肉 の 舌 触 り が 似 て い る ア ボ ガ ド の 味であるが,香気があまりにも濃縮されると強烈 187kcalよりは少ない。果肉の状態や舌触りなど な悪臭に感じられる。麝香そのものは鼻持ちなら からはアボガドの方が水分が少ないように感じる ない悪臭であり,これを適当な溶媒で薄めること が,ドリアンの方が5%少ないのは果肉の状態か で,貴い香水に変身するのである。ドリアンの臭 らは予想外であった。タンパク質は2.3%でこれ 気もまさにこの麝香と同じで,二度目に接する時 は果物の中では最高位の量といってもよい。当然 は,その臭味という魅力のとりこになってしまう アミノ酸類も多いことであろうから,それだけに といわれている。 味が濃厚なのである。脂質が3.3%含有すること ドリアンの果実重量は1~3kgで果皮の厚さ も味を濃厚にしているのであろう。ミネラルとし は約1cmほど。中身は五つの部屋に分かれてい てはカリウムが非常に多く,これも野菜,果物の て,部屋ごとに種があり,その種のまわりにクリ 中では抜群である。ビタミン類も多く,特にB1, ーム色の果肉がついている。 B2 をはじめB群が多く,現在話題となっている 熟してくると果実の底が割れてくるので,そこ 葉酸(認知症の予防に役立つとされている)が多 に包丁やナタを入れて割ってから切り,五つの部 いことに特徴がある。 屋ごとに分けてそのまま食べるのが一般的である。 以上のように優れた栄養素を多く含有するドリ 現地では果肉を発酵させて副食としたり,塩漬け アンではあるが,その特有の風味を求めて食べる にして保存したり,羊羹のような砂糖菓子を作っ のが一般的である。しかし,結果として多くの栄 たりするようである。未熟果は野菜として利用す 養素が摂取できることは嬉しい。 るとのこと。種子もスライスしてヤシ油で揚げ, タイ国には各種のトロピカルフルーツが生育し 砂糖をまぶしてお菓子として活用したり,ゆでて ているので,果物好きとしては度々訪れたい国の 食べることもある。いずれにしても日本では高価 一つである。その他,各種の文化が豊かに伝承さ でくせのある果物なので,現在でもあまり一般的 れている点でも魅力的な国である。しかし,現在 ではないと想像していたのであるが,五訂増補日 は反政府デモの影響などにより治安が不安定な状 本食品標準成分表にドリアンが掲載されているこ 況にあるのは残念で,一日も早くかつての穏やか とを知った。改めて日本の食品成分表が充実して な国に戻ることを願っている。 い る こ と を 実 感 し た。 そ れ に よ る と 水 分 が インターネットでの検索は便利な 振り回されてもよくなく,難しいところです。 ものです。ネットで検索を繰り返す 先輩でそのような方がおられました,今は大変懐かし うちに,いつの間にか,最初の関心 い限りです。 (邦) 事とは異なった事柄を検索している 自分に気がつくことがあります。 食 品 と 容 器 第 51 巻 第11号 「アレ?自分は何を調べていたの FOOD & PACKAGING 平成22年11月 1 日発行 か?」こんな経験は読者諸兄もきっとあると思います。 発行所 缶 人間の思考は,その人の関心事から発散的に広がりを みせるようです。トニーブザン提唱の「マインドマッ 定 価 1部 800円 年間 8,000円 (送 料 共) プ」は,まさにここに着目した考え方の整理(主要な問 題と従的な問題を切り分けるなど)に役立つ思考技術と 思われます。 −禁無断転載− 打ち合わせのなかで,特定の参加者の関心時に振り回 されることがよくあります,押さえつけるのもよくなく, 食品と容器 716 詰 技 術 研 究 会 〒103−0002 東京都中央区日本橋馬喰町1−8−4 TEL 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1 FAX 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3 Eメール:[email protected] 郵便振替 0 0 1 5 0 −0− 4 2 2 1 5 編 集 人 発 行 人 印刷所 飯 田 塚 嶋 秀 一 夫 雄 大和サービス株式会社 乱丁・落丁本はお取り替えいたします。 2010 VOL. 51 NO. 11
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