Embargoed Advance Information from Science The Weekly Journal of the American Association for the Advancement of Science http://www.aaas.org/ SciPak の情報はこちらから Twitter:http://twitter.com/scipak Tumblr:http://scipak.tumblr.com 本部: 1200 New York Avenue, NW Washington, DC 20005 電話: +1-202-326-6440 ファックス: +1-202-789-0455 報道解禁日時: 米国東部標準時 2014 年 12 月 4 日(木)午後 2 時 問合せ先:Natasha Pinol +1-202-326-6440 [email protected] Science 2014 年 12 月 5 日号ハイライト 夏季就労は犯罪を減らす 電気ウナギは獲物を遠隔操作する 南極の棚氷の下で上昇する暖水 温室効果ガスによるアフリカの降水量の変化 細胞の大きさに関する研究が若い科学者の最高賞を受賞 Science は米国科学振興協会(AAAS)発行の国際的ジャーナル(週刊)です。以下に記載す る次号掲載予定論文に関する報道は、解禁日時まで禁止します。 論文を引用される際には出典が Science および AAAS であることを明記してください。 夏季就労は犯罪を減らす Summer Jobs Take a Bite Out of Crime 新しい研究によると、恵まれない若者にささやかな仕事を与えることにより、費用をかけず効果 的に若者の暴力を減らせる可能性があるという。この研究結果は、夏休みのあいだ最低賃金で週 に 25 時間就労するだけで、米国シカゴのティーンエイジャーのあいだの暴力が、16 週にわたっ て 43 パーセント減少したことを示している。先行研究では、時間と金を極めて大量に注ぎ込ん だ場合にのみ犯罪が減ることが示されていたが、こうした研究はたいてい、すでに学校を卒業し て労働市場で奮闘している若者を対象に行われてきた。Sara Heller が行ったこの研究は、夏季就 労が在学中の若者に与える影響に注目し、介入の重点を矯正から防止へ移した。Heller は、「ワ ン・サマー・プラス(One Summer Plus)」という夏季就労プログラムの参加者の中から、特に 暴力が多くて貧しい地域に住む、8~12 年生の生徒 1634 人を無作為に割り付けて研究した。この プログラムでは、若者は非営利の公共の仕事(サマーキャンプの指導員、公園の作業員、市会議 員の事務手伝いなど)を行い、生徒 10 人につき大人の指導者が 1 人つく。プログラムに参加し た若者の半数は「社会性と情動の学習」も受けた。この学習では、仕事の妨げとなるような感情 と行動を、理解しコントロールする方法を若者に教える。Heller は、シカゴの公立学校から管理 記録と出席記録を、そしてシカゴ市警察からは逮捕記録を入手して、ワン・サマー・プラス・プ ログラム終了後から 13 カ月間若者を追跡調査した。プログラムに参加した生徒は、参加しなか った生徒に比べて、暴力犯罪による逮捕者が 43 パーセント少なかった(しかし、別の種類の犯 罪は必ずしも減少したとは限らない)。暴力犯罪の減少は、ワン・サマー・プラス・プログラム 終了後に顕著になり、1 年以上も続いたことから、単に若者が犯罪を起こす機会が少なかったこ とが減少の理由ではない、と Heller は述べている。また、夏季就労だけの生徒と、夏季就労と 「社会性と情動の学習」の両方を体験した生徒とのあいだに、明らかな行動の違いは見られなか った。このことは、就労だけで犯罪の減少を十分に説明できることを示している。Heller はこう した研究結果を踏まえ、若者は夏季就労でも同様に、社会情報を処理し、感情をコントロールし、 うまく目標を達成することを学んでいる可能性があることを示唆している。本研究は、対象を絞 り込んだ低コストの雇用政策を行えば、特定の状況(若者の暴力のように有害で複雑な問題でさ え)にかなりの変化を生じさせられることを示している。 電気ウナギは獲物を遠隔操作する Electric Eels Use Remote Control on Prey 電気ウナギは 600 ボルトの電撃を生み出すことができる。それだけでも非常に印象的だが、この 力をいかに用いるかはむしろ……衝撃的である。ウナギは放電を利用して獲物の筋肉を遠隔操作 している。Kenneth Catania が行った実験で実証されたように、ウナギは環境センサーとして低電 圧のものや獲物を攻撃するための高電圧のものなど、様々なタイプの放電を行うことができる。 あるタイプの放電では魚の不随意筋を収縮させ、それによって魚の位置を突き止めて捕獲する。 高電圧の一斉放電では獲物である魚の不随意筋を大きく収縮させ、魚が逃げるのを防ぐ。Catania の実験により、この高電圧の放電は、魚の筋肉を制御する運動ニューロンに作用し、魚自身のニ ューロンが筋肉の動きを刺激するために送る電気パルスを模倣することで魚の神経経路を効果的 に遠隔操作、つまり乗っ取ることが示された。 南極の棚氷の下で上昇する暖水 Warmer Waters Moving Up Under Antarctic Ice Shelves 過去 40 年間、暖かい海洋水の流入によって南極大陸の棚氷(大陸の氷床が伸び、海中の大陸棚 の上に張り出している氷)下の海水が暖められてきた。一部の領域で暖められた海水が大陸棚の より高い場所に上昇すると、棚氷が下部から溶けはじめやすくなると、Sunke Schmidtko らは言 う。そして、南極の棚氷が溶ければ、その背後にある氷床がより急速に海へと移動する。そうな れば、地球上の海水面の著しい上昇につながる可能性がある。Sunke Schmidtko らは、大陸棚周 辺の主な水源の海水温と塩分濃度に関して長期傾向解析を行い、暖かい水の流入を明らかにした。 とくに周極底層水は、暖められ、風によって勢いがつき、一部の大陸棚のより高い場所へ流れこ む。こうして暖化され溶解している棚氷の一部が西南極大陸氷床の近くにある。Sarah Gille が関 連する Perspective で考察しているとおり、この氷床がすべて溶けると、地球上の海水面は 4.8 メ ートル上昇し、沿岸集団(coastal populations)に深刻な影響が及ぶ。 温室効果ガスによるアフリカの降水量の変化 Greenhouse Gases Caused Rainfall Change in Africa Bette Otto-Bliesner らが行った新しい研究によると、大気中の温室効果ガス濃度が増加したことが、 約 1 万 4700 年前の赤道アフリカに湿潤期をもたらした一因だという。彼らのモデルによって、 アフリカが突然その時期に湿潤期に入った理由を説明できるだけでなく、地球規模で温室効果ガ ス濃度が上がると、現在のアフリカの一部の国は今後湿潤な状態になりうる、という考えを裏付 けてもいる。降水量が変化すると、水資源や農業、さらには地元と国の対立などに関連して、こ の地域に大きな社会経済的影響が出かねないという。彼らの古気候モデルが示唆しているのは、 2 万 1000 年前の最終退氷期の終わりに、融雪氷水によって大西洋子午面循環(Atlantic Meridional Overturning Circulation:AMOC)と呼ばれる大規模な海流が弱められ、その結果、赤道アフリカ の北部および南東部で降水量が減少したということである。AMOC が回復すると、この地域は 湿潤な状態に戻った。降水量の増加をもたらしたのは、北部地域では夏の強い日差しと高い温室 効果ガス濃度だったが、南東部ではおもに高い温室効果ガス濃度だった。 細胞の大きさに関する研究が若い科学者の最高賞を受賞 Research on Cell Size Earns Top Prize for Young Scientists 哺乳類の細胞の大きさが環境にどのようにして影響を受けるかに関する新しい研究で、Liron Bar-Peled が 2014 年の Science & SciLifeLab Prize for Young Scientists の大賞を受賞した。大賞受賞 エッセイで Bar-Peled は、真核細胞の成長は環境にいかに制御されているか、という細胞・発生 生物学分野の基礎的な疑問に答えようとしている。Bar-Peled は、多細胞生物が細胞の大きさを決 定する環境からの手がかりにいかに依存しているかを取り上げ、mTORC1 シグナル伝達経路(真 核細胞の成長の主要制御因子)が環境中の刺激を感じ取る方法をどのように研究しているのか説 明している。Bar-Peled の研究チームは、原発性免疫疾患から神経膠芽腫や卵巣癌に至るさまざま な特定のヒト疾患で複数の mTORC1 構成要素が変異していることを明らかにした。彼らの知見 は、このような疾患の理解を深め、最終的にはこれらの診断・治療のための新しい方法の特定に 利用できるかもしれない。この賞の準受賞者は、Chelsea Wood(生態学と感染性疾患)、Simon Johnson(治療不可能なヒト疾患のための薬剤)、Dan Dominissini(ゲノミクスとプロテオミク ス)であった。Science & SciLifeLab Prize for Young Scientists は、若手研究者に授与する賞で、大 賞賞金は$25,000 であり、スウェーデンの 4 大学が共同運営している Science for Life Laboratory と Science 誌が後援している。
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