第5回 石油精製

知っておきたい
石油精製
第 5 回
今回は、JX エネルギーの事業活動の「ベース」である石油精製について紹介します。
原油
原油は、LPガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油などの留
分を含む、炭化水素の混合物です。産出される油田ごとに含まれ
ている留分が異なり、ガソリン留分を多く含む軽質原油や、重油
留分を多く含む重質原油など、さまざまな種類が存在します。
混合物である原油からは、特定の石油製品のみを単品で生産
することは不可能であり、含まれている留分に応じ、さまざまな製
ガソリンやナフサを多く含む中東軽質原油
常温では固化する南方重質原油
品が連産されます。そのため使用する原油と各精製装置のオペレーションを調整し、製品の需要に合わせた最適な生産を行っています。
常圧蒸留装置(トッパー)
石油精製の最初の工程として、常圧蒸留装置(トッパー)で、原油に
含まれる各留分の沸点の違いを利用し、蒸留(分留)を行います。
原油は、加熱炉で約350℃に熱し、トッパーの蒸留塔の下部に投
入されます。蒸留塔内には、数十段のトレイ(棚段)が作られており、
トレイ各段の温度は、塔頂部に行くほど低くなるように制御されてい
「ENEOS わくわく環境教室」
より
常圧蒸留装置
(トッパー)
JX エネルギーでは、出張授業「ENEOS わ
くわく環境教室」で、安全な模擬原油を使
った実験を行い、子どもたちに「トッパーの
原理」を解説しています。
(13 ページ参照)
ます。投入された原油は、油の蒸気になって塔頂部を目指して上がっ
ていくものの、沸点の違いで途中で液体に戻り、トレイに回収されま
す。このようにして、原油は、LPガス、ガソリン・ナフサ、灯油、軽油
の各留分に分けられ、蒸気にならなかったものは蒸留塔内にボトム
留分として残されます。
精製工程のフロー
トッパーで蒸留され、大きく5つに分けられた各留分は、その後、下記のフロー図に代表されるさまざまな装置を経由して製品
としての精度を高め、不純物である硫黄なども除去し、最終的な石油製品となります。なお、昨今は、燃料油の国内需要の減少(特
に C 重油)が顕著である一方、アジアでは石化製品の需要が増加しています。そのため、ボトム留分から、価値の高い石化製品を
増産できるようにオペレーションを調整し、製油所のコスト競争力強化を進めています。特に流動接触分解装置(FCC)は、以前は
ガソリンの生産を最優先とした
運転を行っていましたが、現在
は、プロピレンなどの基礎化学
品の収率を大きくするようにし
ています。こうした取り組みを、
JX エネルギーでは「BtoC(ボト
ム to ケミカル)
」と呼び、
「国内最
強の競争力を有する製造・販売
体制構築」に向けた施策の一つ
としています。
「常圧蒸留装置」については、当社ウェブサイト
「ENEOS TV(
」http://www.eneos-tv.jp/)の
「ENEOS の扉(第二の扉)
」でも紹介しています。