基礎物理Ⅱ/電磁気学 ガウスの法則 「数学を知らない物理学者」といわれるファラデー (大学で高等教育を受けていない,微分・積分ができない) ⇒ だから,電気力線の方法を発明 電気力線の作図・・・直感的にできる どうやって,電場の強さを求めるのか?(関係付けるのか?) 電気力線の本数 電場の強さ E が大きい場所ほど,電気力線の数を多く描くことにする。 電気力線に垂直な断面積 S [m2]を考える。 r E r E S S ファイ S を貫く電気力線の本数 Φ E の約束(定義) ΦE = E ⋅S [N・m2/C] =[本]と呼ぶことにする 注意: Φ E は 1[m2]あたりを貫く電気力線の数が, E に等しくなるよう 便宜的に決めた数なので,実際に1本,2本,・・・と数えられる 整数値ではない。 ただし,電気力線に平行に断面 S ′ をとった場合は,S ′ を貫く電気力線は0[本] Φ E′ = 0 E S′ S ′ // 電気力線 9 基礎物理Ⅱ/電磁気学 例:1 個の点電荷Q [C]から湧き出す電気力線の本数は? Q を中心とする半径 r [m]の球面 S を考える。 Q から湧き出す電気力線の本数 Φ E 球の表面積の公式 S = 4π r 2 = S から外へ出て行く電気力線の本数 S Q から r だけ離れた位置での電場の強さは Q E (r ) = k r r2 したがって, Φ E = E (r ) ⋅ S = k Q r 2 ⋅ 4π r 2 = 4π kQ [本] 点電荷 Q [C]から湧き出す電気力線の本数 Φ E は,Q に比例する。 比例係数は電荷が置かれている空間を満たしている物質によって異なる。 それを表す量 (真空,空気,水,樹脂, ・・・) イプシロン ε = 誘電率 1 4π k と呼ぶ。 ( ε はコンデンサーを考えるときにでてくる値) 真空の誘電率 ε0 = 1 1 = = 8.85 × 10 −12 [C 2 /N ⋅ m 2 ] 9 2 2 4π k 0 4π × (8.99 × 10 [N ⋅ m /C ]) × 点電荷 Q [C]から湧き出す電気力線の本数は ΦE = Q [本] ε である。 S r 負の点電荷 − Q [C]には Q [本]の電気力線が吸い込まれる ε −Q [本]の電気力線が湧き出す = ε (正負の電荷が多数ある場合の,正味の数を計算するときに便利) 10 基礎物理Ⅱ/電磁気学 電場に関するガウスの法則 クーロンの法則を用いてはっきりとしたことが言えるのは,点電荷の場合だけ であるが, ・・・ ⇒ 一般の場合に拡張(ガウスが証明) 1.正負の点電荷が多数ある場合 2.点電荷が集まって大きさがある電荷(帯電体)となっている場合 一般的な場合に,電荷のまわりにできる電場(電気力線)を表す法則は? すきな場所にすきな形の閉曲面 S を考える (閉曲面=ふうせんのように閉じた面) 閉曲面 S の内部に囲まれる全電気量がQ in [C]のとき, S から出ていく電気力線の本数は ΦE = Q in [本] ε である。 電場に関するガウスの法則 電気力線が入ってくるときは, Qin 『−1[本]出る』などと数える。 任意の閉曲面 S ガウスの法則の適用例 ① 一様な電場 正の平板電荷 Q [C]と負の平板電荷 − Q [C]を平行に向かい合わせる (コンデンサー) + = 内部は, (端の部分を除いて) 大きさも向きも一定の電場 11 基礎物理Ⅱ/電磁気学 内部の電場の強さを求めてみよう。 底面積 A [m2]の円筒形の閉曲面 S [m 2 ] − Q [C] − Q [C] E A A E + Q [C] + Q [C] 側面は電気力線と平行 → 側面を出て行く電気力線は0[本] 2枚の平板の外側は電気力線がない → 外側の底面を出て行く電気力線は0[本] 2枚の平板の内側は,強さ E で上向きの一様な電場 → 内側の底面を出て行く電気力線は E ⋅ A [本] (電気力線を描く約束より ↑) Φ E = 0 + 0 + E ⋅ A = E ⋅ A [本] 円筒が内部に囲んでいる電荷は, (Q in : Q = A : S ) A Q Q Q in = Q ⋅ [C] = ⋅ A [C] ;電荷面密度 [C/m2] 閉曲面を出て行く電気力線の本数 S S S ガウスの法則より ΦE = Q in QA , ∴E⋅ A = ε S ⋅ε ⇒ E= Q [N/C] εS 参考:ガウスの法則(電気力線の方法)を使わないとすれば,平板を細かく区切って 点電荷 dQ の集まりと考えて, k dQ を積分するという大変な計算になる。 r2 ② 半径 R の球の表面だけにQ [C]が一様に分布 球対称→電気力線は放射状にできる。 R Q 半径 r [m]の球面を閉曲面 S ⅰ)球の外側: S の内部に囲んでいる電荷はQ [C] r 球面 S 電気力線の本数は Φ E = E ⋅ S = E ⋅ 4π r 2 [本] ガウスの法則より E ⋅ 4π r 2 = ∴E = Q , ε Q 1 Q Q = =k 2 4π r 2ε 4π ε r 2 r Q ⅱ)球の内側: S の内部に囲んでいる電荷は 0[C] ガウスの法則より E ⋅ 4π r 2 = 0 ,∴ E = 0 12
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