7.北陸支部報告 - JIA 公益社団法人日本建築家協会

[2009年度展望]
JIA北陸支部
越前和紙の産地である越前市(旧今立町)での勉強会を8月
「自然共生社会」に取組むとし、具体的な21世紀環境立国戦略
23日(土)に開催。和紙の里紙の文化博物館に集合し、展示
西川英治氏が就任予定となっており新役員のもと本年にもま
をたてている。このような中で北陸は地方の特性を生かしど
されている1000枚の手漉き・機械漉き和紙の現物を実際に漉
〒920-0347 石川県金沢市松村町ヌ215
TEL076-229-7207 FAX076-229-7208
http://www6.nsk.ne.jp/jia-hk/
して活発な活動が実施されることが期待されています。建築
のような目標と戦略を持つべきか自治体のトップと政策投資
いた職人さんから説明を受け、和紙に触れながら建築への応
家を取り巻く環境は建築基準法や建築士法の相次ぐ大改正に
のプロを交えて活発な討論が行われた。北陸の多くの都市は
用について話し合った。建築法規や実際の施工例にも触れ、
より設計業務の透明化と設計者責任の厳格化が求められてい
市域内に源流から河口までの河川を持ち、その流域に山岳・
和紙の持つ吸湿性能・空間的柔らかさの創造などの特性を活
事務局:向井淑美
ます。また、資格者団体としての建築士会と建築設計業団体
中山間・都市・農地・海岸のワンセットを抱えている。議論
かした取り組みの可能性を模索。また越前のみならず全国紙
地域会 福井/石川/富山
としての建築士事務所協会が法定団体として位置づけられた
を通し、
「持続可能な地域構築、低炭素・循環型・自然共生の
業界の総鎮守で、その複雑で美しい屋根を持つ国重文の大瀧
今JIAの建築界での役割を明確にすることが急がれています。
社会づくりに必要な要件がそろった地域として北陸を見直す
神社を拝観し、宮司からの説明、本・拝殿の見学を行った。
ことができるのではないか。
2)夏休み児童絵画コンクール
<支部長総括 2008年度>
JIA北陸支部長 稲葉 実
[総括]
このような環境の中で2009年は支部の20歳代の新しい歴史
の幕開けの年として位置づけし、①会員サービスの充実
潜在的な歴史、文化の溢れる
2002年から福井県下の小学校高学年
(CPDの量と質の充実)②市民との連携(市民団体や関連NPO
北陸の都市群にさらなる環境
(4∼6年)を対象に実施。パンフレット
との提携)③建築家教育への支援(インターンシップなど大
共生的な魅力を加え安心で美
を県下の全小学校に配布して作品を募集
本年は北陸支部創設20周年の節目の年に
学との連携、金沢工大の「JIA-KIT建築家アーカイヴス」へ
しく住みたい地域となること
し、夏休み明けの9月に会員による審査
当たり、20周年記念大会の開催やUIA世界
の協力支援)など今までにもまして地域との関係を深くして
ができるのではないか。
」と
大会への参加などの大きな企画を実施した
地域建築文化の中心的な役割を担っていきたいと思います。
の提言がなされた。
出江新会長と関わりの深い福井地域会に担当いただきました。
会を開催して優秀作品を決定している。
支部創設20周年記念大会(式典)
③記念式典+祝賀会 支部の歴史に残る年度となりました。まず年度開始の総会は、
今年度は“いっしょうけんめい(一生懸命)
”
をテーマとした。応募数は450点を超え、
第7回 夏休み児童絵画
コンクールパンフレット
が参加して世界の建築家との交流を深めるとともにヨーロッ
総会は例年支部大会と同時開催としてきたが、今年度は秋
パ建築の視察を通して建築文化の見識を深めてきました。後
に20周年記念大会が予定されており総会の単独開催とした。
半では9月に支部創立20周年記念大会を金沢で環境をテーマ
開催地は福井。総会終了後に会長就任間近の出江寛氏を招き
にして開催しました。洞爺湖サミットが開催された年に地球
記念講演をお願いした。日本の伝統文化に立脚した出江流建
温暖化問題から身近な環境問題までを北陸地域の風土と建築
築論を展開しながら現代社会における建築家の地位の低さを
会場:金沢ニューグランドホテル
来賓:谷本正憲(石川県知事)
能崎明夫(
(社)石川県建築士会会長)
押田洋治(
(社)富山県建築士会会長)
髭右近外嘉(
(社)石川県建築士事務所協会会長)
近江吉郎(
(社)富山県建築士事務所協会会長)
山下憲三(
(協)石川県建築設計監理協会理事長)
仙坊幸治(
(協)福井県建築設計監理協会理事長)
大島 武(
(社)石川県建築業協会会長)
他各種関連団体、JIA各支部長等 を通しながら考える絶好の機会となりました。また、建築家
嘆き会長に就任後は建築家の地位の向上に少しでも役立てる
谷本石川県知事を始め多くの来賓に参加いただき、盛大に
大会2008東北に多くの会員が参加し、たくさんのセミナーや
ように頑張るとの力強い講演に会場は多いに盛り上がった。
記念式典と祝賀会を開催した。支部の20年の歩みを紹介する
ないことから、毎年2月に企画開始、
講演会を受講して自己研鑽に努めました。
2)UIAトリノ大会への参加
なつかしいスライドショーや歴代支部長への感謝状の贈呈、
年末に一般に開放して実施。08年12
大会宣言文「環境行動宣言」の紹介等が行われた。
月6日(土)に会員の千葉学氏を講
4)支部創設20周年記念誌発行 「北陸の建築家たち」
師として迎え、
「そこにしかない形式」の演題で講演していた
〈支部・地域会の年間活動トピックス〉
総会では出江新会長の所信表明講演をいただきJIAの今後を考
1.北陸支部活動
える機会としました。
1)通常総会
6月にはイタリアで行われたUIAトリノ大会に多くの有志
[会勢]
日時:2008年5月10日 会場:ユアーズホテル福井 日時:2008年6月27日∼7月4日 会勢は現時点の前年対比で正会員が3名の減、賛助会員は
イタリア、トリノで開
2社の増となっています。登録建築家は会員の62%までに達
催されたUIA世界大会に
しておりますが、全員が登録していただけるように今後とも
啓発に努めたいと考えています。
子ども達が力一杯純粋に表現した多くの
建築家の講演会を開催する機会が少
すばらしい作品を前にして、
“創造
的”なものづくりに関わる我々にと
って、久しぶりに新たな感動を得た。
また審査は楽しく有意義な時間とな
った。優秀作品16点について、12月
絵画コンクール表彰式
6日に本会主催で開催した建築文化講演会冒頭で表彰した。
3)建築文化講演会
規模の小さな地方都市では著名な
20周年の記念事業として会員有志88名
だいた。出席者は約150名。講演は氏の作品「日本盲導犬総合
会員9名、賛助会員1名、
の参加で記念誌を出版した。金沢市内の
センター」などの事例をもとに、敷地の読み取りから空間構
同伴者7名、事務局1名
出版社「金沢倶楽部」の協力を得て書店
成に至る設計プロセスを、建築という行為の持つ設計者とし
の合計18名が参加。大会
での販売も視野に入れた自費出版の形を
ての取り組みの姿勢を丁寧に解りやすく説明された。なぜこ
北陸支部は、福井、石川、富山の3県による地域会で構成
式典や講演、展覧会に参
取った。紙面のデザインから装丁、PRの
の空間となったかが理解でき、若い、これからの建築界を支
しています。福井会はその中で最も小規模かつ人口比率でみ
加し、国際建築家連合の
ページなどすべて記念誌委員会の会員の
える人たちには特に有益な講演となった。講演後は講師と会
ても会員数が少ないため会員増強が課題となっています。し
一員としての自覚と自信を付けることができた。ミラノ、フ
手づくりである。出版後の市民のみなさんからの反響も良く、
員有志での懇親会を開催し、様々な意見交換をした。
かしながら会員の連帯感は強く第7回となる夏休みを利用し
ィレンツェ等のイタリアの世界遺産都市を視察して帰国。
JIA建築家のPRとしての役割を果たすことができた。
ての児童絵画コンクールの事業は小学校を中心にして地域に
3)支部創設20周年記念大会 テーマ:「環境を育む」
5)JIA建築家大会2008東北 [地域会]
定着した感があります。
日時:2008年9月20日 会場:金沢文化ホール
10月17日, 18日、17年ぶりの開催となった仙台での大会に支
3.石川地域会
1)建築フォーラム
部会員が多数参加した。登録建築家制度のオープン化、UIA大
一般の方にも開いた建築フォ
講師:小林 光氏(環境省総合環境政策局長)
会2011東京の開催、めまぐるしく変わる建築関連法規への対
ーラムを3回開催した。08年4
でも、金沢市内の小学校に出向いて開催している「JIAこども
洞爺湖サミットにおける主要議題の一つである地球環境問
応などJIAの取組むべき諸問題に対して見識を深めることがで
月のフォーラム、1部は「伝統
出張講座」が好評でまちづくり意識の高揚や建築教育の啓蒙
題で中心となって活躍された小林氏から、地球温暖化対策の
きた。また全国の会員との交流を通して地域建築文化の固有
技術と建築」をテーマに、水野
に繋がっています。他に一般市民をも対象にしたセミナーや
世界的な合意事項と日本の役割と具体的なアクションプラン
性と共通性を考える機会になった。同時に支部役員会を開催。
一郎会員から金箔で建築を飾る
講習会を頻繁に開催しCPD取得機会を高め、会員サービスは
について、プレゼンテーションしていただいた。
もとより市民と建築家を繋ぐ役割を果たしています。また、
②パネルディスカッション
石川会は支部の事務局を設置している地域会でもあり支部
の中心としての役割を担い活発な活動を展開しています。中
準会員制度をつくり会員増強にも努めています。
富山会は、建築関連団体でつくっている「富山住まいとま
ちづくり推進懇話会」の中心団体として事業の企画や実施担
当として重要な役割を担っています。また、近年は若い年代
の会員が増加して新しい事業を企画実施するなど地域会活動
の活性化がみられます。
30
日本は持続可能な社会を目指し「低炭素社会」
「循環型社会」
2009年度は支部役員の改選期であり、支部長には石川会の
JIA 2008年度JIAアニュアルレポート
①基調講演
テーマ:「北陸の環境を育む」
パネリスト:小林 光氏(環境省総合環境政策局長)
山出 保氏(金沢市長)
中村直幸氏(日本政策投資銀行北陸支店長)
水野一郎氏(建築家/記念大会実行委員長)
コーディネイター:中村 勉氏(建築家/JIA環境行動委員
会委員長)
話と福井県和紙工業協同組合の方々から越前和紙を建築に生
2.福井地域会
会員数18名と小さな地域会だが、会員の増強を目指しなが
かす話を伺った。2部では佐川美術館・樂吉左衛門館の設計
者である竹中工務店の内海慎介氏をお迎えし、
「陶芸家とのコ
ら毎月の活動を継続し、月例会は毎回約7割の会員が出席し
ラボレーション」としての設計について語っていただいた。
ている。今年度は会員各自の企画を中心に、一般社会への貢
09年1月のフォーラムは建築関連3団体と共催とし開催。1
献・アピールの観点から、本地域会恒例の行事も実施した。
部には出江会長をお迎えし、支部総会や支部創立20周年事業
1)越前和紙の勉強会開催
などで充分語れなかった「伝統美と現代建築」についてタッ
昨年度から取り組んでいる地場産業の建築への応用の一つ、
プリご講演いただいた。2部は会長の「素材と材料」のお話
2008年度JIAアニュアルレポート JIA
31
を受け、建築材料を5つのグループに分け正・賛助・準会員
らしく社会に提示できる賞の設
全員によるテーブルディスカッションを開催した。強風によ
立を1年間検討し、今年度からい
る出江会長の遅参というハプニングもあり不完全燃焼の2部
よいよ実施に踏み切った。「JIA
の続きを、3月に賛助会員による技術フォーラム「材料は嘘
いしかわ建築大賞」の目的と意
つき?」と共に再度テーブルディスカッションを開催した。
義は、優れた建築デザインを社
2)JIAこども出張講座
会に提示することにより、建築家の職能や発想を市民に広め、
前年度から継続の事業だが、
会員全員で審査し、その審査プロセスを通して、時代が求め
今年度は科学技術振興機構の地
る優れた建築デザインとは何かについて全会員が議論し考察
域科学技術理解増進活動推進事
を深めるもの。一次審査で票決、現地審査を踏まえ二次審査
業に申請、受理されたこともあ
では全員で議論して決定した。また、賛助会員が一般の目で
り、6回開催できた。賛助会員
コメント付きで審査する賛助大賞も同時にスタートした。
の参加も多くなり正会員・準会員・賛助会員三位一体の活動
に発展した。8月には初めて公共スペース、金沢駅もてなし
4.富山地域会
ドームで開催し、一般の方々に「新聞紙ドーム」を知っても
1)会員作品講演会
らう機会にもなった。金沢アートプラットホームエクステン
昨年開催し好評を博し
ションやこどものまち「ミニいしかわ」といった公共事業に
た「地域会会員が講師に
も積極的に参加。また、同じ石川地域会の事業、作品展の会
なり建築への取り組みと
場でも地元小学生を対象に開催した。延べ240名を越えるこど
思想を発表してもらう」
もたちが参加。新聞紙ドームの出来上がったときのこどもた
企画を、今年は当地域会の核とも呼べる近江美郎、柴田裕弘、
ちの感動は忘れられない。
原英高の3氏にお願いした。コメンテーターの増山敏夫氏、
3)建築塾
貴志雅樹氏からは、中立な立場からの意見(講評や時には辛
建築に携わる若い世代の育成と準会員の研鑽並びに実務経
口の批評)をいただいた。また会員からも多数の質問や意見
験豊富な正会員のリフレッシュを目的に2回開催した。基調
が寄せられ、竣工した建物だけでは分からない、プロポーザ
講演と準会員によるディベート討議の2部構成。6月の講演
ルや基本設計から竣工までの経緯を仔細に解説頂けた。内容
は蜂谷俊雄会員「名著から学ぶ」
、討議のテーマは「建築メデ
も三者三様で大変面白く、聞き応えのある会となった。
ィアに秩序は残されているか」
。12月の講演は平口泰夫会員
2)サスティナブルデザインセミナー
「引き裂かれた自我」
、討議のテーマは「伊東豊雄の建築はこ
恒例となっているセ
れからの潮流になり得るか」
。肯定、否定に別れての討議はな
ミナーだが、今年度は
かなかおもしろいものとなった。
ものつくり大学名誉教
4)建築ウォッチング
授の中村勉氏をお招き
賛助会員の協力により日帰り
し、
「2050年の都市と建築のデザイン」と題して講演いただい
で毎年開催している県外視察。
た。氏は低炭素化社会に向けて二酸化炭素削減へ取り組むこ
今年度は建築フォーラムで設計
との重要性について、また第5世代の環境建築や自立循環型
者からお話を伺った佐川美術
住宅の実例を交えながら丁寧に解説して下さった。講演の終
館・樂吉左衛門館を中心に滋賀
わりに紹介された“Like A Giraffe”という言葉(キリンのよ
県をウォッチング。出江会長設
うに遠くを見通す頭、勇気ある心、大地をしっかり掴む足を
計のかわらミュージアムや長浜
持って行動しなければいけない)が強く心に響いた。聴講者
市街並保存散策を企画し、設計
一同、真摯な姿勢で受け止め、今後の活動に活かせるよう、
者の苦労話などを思い出しなが
日頃の取り組みを見直す良い契機になった。
らの施設見学は、ひと味違ったものになった。
3)オープンハウス
5)作品展/写真展「残したいもの」
恒例となってい
今年度の作品展は建築ではな
るオープンハウス
くアート性を表現する写真展を
の企画をこれまで
企画。テーマは「残したいもの」
の開催日限定方式
とし、自由な発想でまちを観察
から、建て主の都
し、心にとどまる風景を写真で
合に合わせての開催とした。今年度は近江美郎氏の「市野瀬
表現するもので、一般の方々や
SUGIの家」
(写真:左)
、水野行偉氏の「屋上庭園のある家」
こどもたちにも応募してもらった。会場は金沢市内に残る数
(中)
、
「竹林の見える家」
(右)の3作品について、個々にじ
少ない木造校舎のひとつ「金沢市立上平小学校」
。1998年に
っくり見ることができた。来年度以降も新方式で継続できれ
120年の幕を閉じた後も地域に愛され、用途を替えて今も使い
ばと考えている。
続けられている貴重な建物である。
「昔を知り、今を考え、明
日を創り出す」との思いからテーマを決定した。
6)JIAいしかわ建築大賞
前年度、既設のさまざまな建築に関する賞のある中で、JIA
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JIA 2008年度JIAアニュアルレポート
<会計報告>
当期収入合計
9,882,067
当期支出合計
前期繰越収支差額
3,312,692
当期収支差額 −1,662,989
収入合計
13,192,759
繰越収支差額
11,545,056
1,649,703