執筆以上に面白いことはない。 活躍する卒業生 『月のころはさらなり』が私のデビュー作になりますが、小説 は小さな頃から書き続けていました。もちろん読むのも大好 ヤマハリビングテック株式会社・小説家 きで、スティーブン・キングや宮部みゆき先生のファンです。 井口 ひろみさん 『月のころはさらなり』の選考委員がその宮部先生で、申し訳 ないくらいに高く評価していただけたのは、幸運としか言いよ うがありません。 1993年 愛知大学文学部西洋哲学科卒業 2007年 処女作「月のころはさらなり」で第三回新潮エンターテインメント大賞受賞 本作は2年ほどかけて書き上げました。実はその前8年間、 まったく書けない時期がありました。25歳の時に初めてコン クールの最 終 選考に残り、次回こそはという思いがプレッ シャーになっていたんです。でも「自分には小説を書く以上に 面白いことはない」とあらためて気づき、完成させることがで きました。つらいことの多い時期でしたが、賞は執筆中に他界 した妹が取らせてくれたのかな、 とも思います。 小説を書いていると精神的に安定するし、自分が今何を考 えているか、何を書きたいかという認識を新たにすることがで きます。精神科で箱庭療法というのがありますが、私にとって 執筆はまさに自分の箱庭を覗いているようなものです。 『月のころはさらなり』 母の故郷を訪れた少年が、そこで出会った少年少女と不思議な 体験を重ねつつ成長する物語。 新潮社刊 わ ら じ 小説家と会社員、二足の草鞋は悪くない。 小説の糧を求めて愛知大学へ。 小説家としてデビューして、 でも大学を出てからずっとこの会 社に勤めてきた自分がいて、まだ気持ちのバランス取りはうま くできていません。でも、これまでの会社勤めの経験は小説を 書く上で大きな財産になっているのは確かです。会社にはいろ いろな人がいて、ドラマよりも面白いネタにあふれていますか ら。またマスコミ等を通じて受賞を取り上げられた時に、周囲 の皆さんが祝福してくれたのには驚き、 勇気づけられました。 も ちろん執筆は仕事の気分転換にもなっています。 愛知大学へ入学したのも、 小説の糧となる勉強がしたかった から。 勉強もサークル活動もとても充実していて、 大学にはいい 思い出しかありません。 名古屋都心に進出したとしても、 真面目 でどこかのんびりしている校風は失わないでほしいと願います。 実は私と同じ2007年に小説すばる新人賞を受賞した天野 純希さんも愛知大学卒業生なんですよ。 大変才能のある方だと 思うので、負けていられないなと、次の目標としては職業作家 になりたいと考えてます。 私も2作目の長編をいま構想中です。 学生の皆さんへのメッセージ 学生の頃は社会人なんてしんどいだけと思っていたので すが、就職して経済的に独立することは、学生時代以上に 楽しくて自由なんです。期待してよいと思いますよ。
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