第11章 古代・中世のキリスト教とユダヤ教 ★三位一体の教義 ・ニケア公会議…325年、教義統一のためコンスタンティヌス帝が招集 アタナシオスの説を正統教義とし、後に三位一体説が確立 ・三位一体説…父なる神、子なるイエス、精霊の三者は等質で不可分であるとする主張 キリストに神性を強く認めている ★キリスト教信仰のローマ的形態とギリシャ的形態> ・ローマの「西方教会」とコンスタンティノープルの「東方正教会」との分離化 ・修道院の活性化…政治的腐敗に対する教会内の自浄作用 ☆北ヨーロッパと東西教会の分裂 ・カールの戴冠…800年、教皇レオ3世がカールに西ローマ皇帝の帝冠を授与 →ローマ教会がビザンツ帝国から独立した地位を得る ・フィリオクェ問題…「聖霊は父なる神から発する」としていた使徒信条に、 ローマ教会が一方的に「子からも発する」と付け加えた。 →ローマ教皇が教義を制定する権力を簒奪 ☆東西キリスト教の諸次元 西方教会 東方正教会 組織 教皇を中心とする中央集権 「皇帝教皇主義」 有形物 バシリカ様式 ギリシャ風の十字の基礎 or …宗教目的に使用される バシリカ風の長方形の基礎 聖ソフィア大聖堂…ドーム状の構 造 破門→ 教義 イコンなどの聖像禁止→後に復活 アウグスティヌス …主著「神の国」「告白論」 原罪からの救済は神の恩寵のみ 「予定説」の基礎を築く キリストの死を強調 ⇔「受肉論―神格化論」を強調 物語 聖ペテロの役割を強調 →教皇の至高性を裏打ち 儀礼 礼拝の伝達手段…ラテン語 ギリシャ語 聖体祭儀…「神」から人間へ 人間から「神」へ 「復活日」の強調 宗教 修道生活の理想に傾倒 経験 倫理 「神」および「聖母マリア」の幻視(共通) 貞潔性と処女性を強調 ☆その他の「東方教会」と「東方世界への宣教」 ・ネストリオス派…コンスタンティノープル総大司教ネストリオスが主張した、 イエスの人性と神性を分離した説はエフェソス公会議で異端となる。 ササン朝に広まり、トルキスタンをへて、7C の中国に伝わる。 ・アルメニア…314年、キリスト教を公認宗教に 「東方正教会」型の典礼 ・エジプト・エチオピア…「コプト教会」が国教化 ☆西方教会の進出 ・ケルト教会…アイルランドからスコットランド、イングランドに広がる。 修道院制度は西ヨーロッパにも伝えられた。 ・ドイツの宣教…ボニファティウスによって進められる →11世紀には、ノルウェー、ポーランド、ハンガリー、ボヘミア、クロアチアなど、 ほとんどすべてのヨーロッパの国がキリスト教圏に ・キリスト教の宣教はトップからも起こった←政治的・軍事的に利用しやすい ☆東方への宣教とロシアの改宗 ・キュリロス・メトディデス兄弟による「ハザール族」 、 「バルカン諸族」に対する宣教 ・キエフ大公ウラジミールの受洗←「東方正教会」がロシアに根付くことに ★ユダヤ教の新生 ・様々な区分にも関わらず、ユダヤ教徒が金融業を支配→情報伝達網の発達 ・イスラームにおける、ユダヤ教徒の妥当な地位→ユダヤ文化の文学的・哲学的発展 ・マイモニデス…ユダヤ教信条「十三条」の編纂 ☆ユダヤ教徒の一年 ・安息日…金曜日の日没から土曜日の日没まで、仕事をしてはならない シナゴークでの集団礼拝の機会 ・「ローシュ・ハシャーナー」「贖いの日」「過越」「五旬説」 「仮庵の祭」 「ハーヌカー」 →自分たちの歴史と「神」との関係を再演 ・613の戒律、様々な慣習と義務→内的な意味や献身の自覚を感得 ☆ユダヤ教の神秘主義――カバラー ・反ユダヤ的敵意→ユダヤ教徒の虐殺、抑圧、追放など ・12世紀および13世紀に、プロヴァンス、スペインで神秘主義的な流れを復興した 「カバラー」として知られる運動が台頭 …瞑想と恍惚の技術を開発 人間の行為が神に影響を与える ☆ユダヤ教の諸次元 ・儀礼…「トーラー」によって日常生活が規制 多くの儀礼は家庭中心で ・倫理…「十戒」およびラビによる禁止条項の遵奉 ・教義…厳格な一神教 「マーシアー」の来臨を希求←キリスト教徒は否定的 ・宗教経験…時間のリズムによる公明と親睦 カバラーによる「聖なるもの」との融合 ・組織…ラビの裁判所による「法」解釈の集積→地方のユダヤ教徒に構造的な類似性を ・芸術…シナゴークおよび宗教的文献の飾りつけ ★中世のキリスト教 ☆東方正教会:外面的隠遁、内面的前進 ・十字軍…聖地エルサレムをセルジュク朝トルコの支配から奪還する目的で結成 第一回 聖地を回復 第四回 コンスタンティノープルにラテン帝国を樹立→ビザンツ帝国の弱体化 ・1453年、コンスタンティノープルの陥落→東方正教会の中心はモスクワに ・修道院運動の再活性化 グレゴリウス…遊行の聖者の原型に グレゴリウス・パラマス…「ヘシュカスム」 瞑想の探求 ☆西方教会の中世文化――新しい文明 ・修道院改革…クリュニー大修道院、シトー修道院 ・教会の階層的性格が激化→王権と教権の争いが激化 ・ドミニコ会…教育の面で広い役割を負う ・フランシスコ会…托鉢修道会の典型 「異端審問」の実践 ・軍事行動にキリスト教的な禁欲的価値を導入←十字軍の影響 ・学問の復活→総合的な考察への刺激 ・トマス・アクィナス…理性に基づく真理の探究は、神が創造した自然の秩序の探求 信仰の優位を前提として、理性と信仰の調和をはかる ・一般民衆…聖骨崇拝、聖体拝受、聖地巡礼に集約 キリスト教的熱狂→ユダヤ教や異端者の迫害に ・神秘主義の開花 ヨハンネス・エックハルト…被造物はその存在を神自信から得る 女性神秘主義者の時代…カタリーナ ⇔問題点 ・「ラテン語」との乖離→聖書の翻訳に疑問 ・「教皇庁」の壮麗さおよび枢機卿たちの贅沢さ←聖職者は清貧のはずでは? ・教会の建築物の費用 ・アルプスの北の諸王侯とローマの教皇庁との政治的な緊張 ★消滅した諸世界 ☆ケルト族の宗教 ・メルクリウス…ケルト族が最も礼拝した収穫の神 ・ドルイド…祭司的な階級の存在 聖なる王権の象徴 人々の供犠生活を主宰 ・蛇…豊穣の象徴 ・女神と聖人の同一視 ・洞窟など他界との接触点←キリスト教に簒奪、転換される ☆ヴァイキング ・キリスト教西欧の諸修道院に衝撃を与えるものの、キリスト教的イデオロギーに従う ・三柱の大神…オーディン すべてのものの父 トール 大気と雷の主 フロイ 豊穣を主宰 戦争の神 呪術王 法を操る冥界の支配者 酒好き ・「ハンドルの神話」…キリスト教的?異教的? ☆スラブ族の主題 ・インド−ヨーロッパ系以前の古代の女神…死と豊穣を司る ・二極対立…光と闇、昼と夜、生と死など ・祖先神が強力 ・北ヨーロッパの文化は、新しいキリスト教の中に吸収されていった… ★論点 ・ユダヤ教徒以外にキリストの神性を否定した人々は、キリストをどういう存在だと見な していたのか。また、その根拠が旧約聖書の中にあるのだろうか。 選民思想をもつユダヤ教徒が、 「信じるものは皆救われる」と説くキリストの神性を否 定するのは理解できる。しかし、ユダヤ教徒以外の人々で、キリストの神性を否定した 人々は、キリストをどういう存在だと見なしていたのだろうか。また、その根拠が旧約 聖書の中にあるのだろうか。 エホバの証人は、 「イエスは神である」と主張している聖書の箇所は一箇所もない と断言している。その根拠として、エホバの証人が最も力を入れて論じている箇所は、 ヨハネ1:1の「『ことば』は神であった」という第三文節である。ヨハネ1:1の すべての文節が意味あるものとなるには、第二文節の「神」と第三文節の「神」とは 同一ではありえない。エホバの証人は前者をエホバ神、後者をより低い神(a god)と 考える。ヨハネ 1:1 の第二文節の「神」には冠詞がある。しかし第三文節の「神」に は、冠詞がない。この違いこそ、エホバの証人が、第三文節の「神」を第二文節の神 (God、エホバ神)とは違う、より低い神(a god)と解する理由である。 ここに挙げたのはほんの一例で、エホバの証人が強調する箇所は他にもたくさんあ る。また、エホバの証人以外でキリストの神性を否定する人々も、その根拠を聖書の 中に求めていることがよくあった。私は今まで、こんなにも聖書の解釈が分かれてい ることや、キリストの神性をめぐる問題が聖書を基盤として起こっていることを知ら なかった。それぞれが真理として確信しているため、簡単にはいかないかもしれない が、自分と違う意見の人々を「異端」や「背教者」として簡単に退けることなく、相 手の主張に耳を傾け、さらなる真理の探究をしてほしい。
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