メタモルフォーゼ② 投資家の先にあるもの 代表取締役社長 澤上 龍

2016.3.31
さわかみファンド 月次レポート
メタモルフォーゼ② 投資家の先にあるもの 代表取締役社長 澤上 龍
暴落時に株を買うのは危険だという意見は的外れ。逆
りました。所謂 投資家の責任 を受益者に対するものと
にそういう時こそ株を売るのは危険で、暴落は滅多にな
同じく投資先企業にも強く持ち始めたのです。それは投資
い投資チャンスなのだ。
先企業との関係が長期間に至ったことによる気づきもあ
◆
◆
良い企業に投資しているのであれば時間は味方。いつ
までも待てる。
◆
るのですが、むしろ金融バブル崩壊直後の投資家と企業
との関係を目の当たりにしたことが要因に思います。
しっかりと企業調査しているポートフォリオは長期的に
はどの金融商品より成績が良い。
企業は 5 年から 10 年先、長ければ 30 年先を見据えて
経営をします。目標に向かって日々コツコツと改善を重ね
相場はいつか暴落する。その時は普段から目を付けて
つつ業務を遂行しているのです。それにも関わらず、今を
いる企業を買う絶好の機会。欲しいと思っていたブランド
生きるほとんどの人が経験した世界的金融危機は、人や企
品を買い漁るバーゲンハンティングのチャンスだ。
業の毎日を完全に無視して経済に大混乱を与えました。そ
◆
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全ての銘柄で
ける必要はない。いくつかの大化けし
た銘柄のリターンが期待外れ銘柄の損を埋めてくれる。
してその時、投資家は自らの資産を保全すべく措置を講じ
ました。つまり売り逃げです。皆が我先にと逃げる、故に
企業に投資するのであって株価に投資するのではない。
株価は底を見出せなくなる。最も害を被ったのは逃げ遅れ
株価はファンダメンタルと逆の方向に動くこともあるが、
た投資家ではありません。市場から逃げることのできない
長期では株価は企業業績に収斂する。
企業です。投資資金を引き上げられても評価を半分にさせ
◆
られても、企業は日々の活動を止めることはできません。
上記は、弊社が以前のレポートや勉強会などで使って
活動の停止は死を意味し、そして企業の死は表裏関係にあ
いた言葉です。当時の「さわかみファンド」は言葉通りの
る消費者の首をも締めてしまうからです。
運用をしていました。100 年後も通用する長期運用の本
どのような環境でも生き残る努力をする企業、そんな
質たるそれらの言葉、実は弊社がオリジナルではござい
企業の利益成長に乗るのが投資であるならば、投資家が
ません。ある著名投資家の名言なのです。
自分の都合で乗り降りするのは無責任と言えるでしょう。
■世界一に倣う
投資家が企業を見捨てるのであれば、未来に対し誰が責
バフェット氏こそ世界一の長期投資家 という意見に
任を取るのでしょうか?
反対する人は少ないでしょう。長期投資一本やりの弊社に
■投資家からの羽化
はこれまで同氏を意識させる質問が数多く寄せられまし
かつての弊社は、財テク中心の投資業界において知的
た。しかし弊社運用の現場において意識していたのはバ
ゲームで応える運用野郎でした。しかしある時、鏡の中
フェットではなくリンチでした。投資信託である以上、同
に姿形が以前とは異なる弊社がいることに気づきました。
じミューチュアルファンドであるマゼランのピーター・リン
せっせとすべきことに取り組んでいた結果、時間経過や環
チがお手本になることは必然、バフェット氏の会社型投資
境変化、そして企業からいただいた信頼が弊社を投資家
会社とは根本が違うのです。
へと育ててくれたのです。まさに青虫が蛹化したかのよう
さて、冒頭の名言集はリンチ氏のものですが、かつて
な感覚で、リンチ師匠は弊社からいなくなっていました。
弊社はそれらを無意識に自らの言として放っていた記憶
さて、次の脱皮は自らの意思をもって起こそうと望んで
があります。徹底的に調査し安値を狙いにいく。テンバガー
います。長期投資は投資家と企業の間に存在する概念で
(10 倍)となりうる銘柄を擁するポートフォリオで勝負す
あり、長期投資家は企業を通じて社会に関与し未来をつく
る。弊社が参考にしていたのはリンチ氏であり、実践して
ることさえできるのです。弊社は、そのような長期投資の
いたのは長期 運用 でした。
概念を具現化するモデルとなりたい。投資はギャンブルで
■メタモルフォーゼ
はなく社会づくりだと皆が思えるような文化を根付かせた
運用野郎だった弊社は、投資運用は最高の知的ゲーム
だと考えていました。しかしある時期を境に 投資してい
い。今後は長期投資家として、更には投資家を超えて投
資文化をつくる蝶として羽ばたきたいと願っています。
る相手 の存在をこれまで以上に重く受けとめるようにな
※さわかみファンドにおけるリスク・手数料については、最終ページに記載の「ご留意事項」をご覧ください。
【2016 年 3 月 30 日記】
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