ドイツ・ケルン市 ニッペス幼保統合施設 (多国籍の園児が在籍する施設) 1.視察日程 (1)日 時 平成 22 年 10 月 8 日(金) 14:30~15:30 (2)場 所 ケルン市 ニッペス地区 ニッペス幼保統合施設(KITA NIPPES) (3)対応者 運営者:リンク・ハンク氏他保育士のみなさん (4)通 訳 ノリコ 氏 2.施設の概要 ドイツでは、0 歳から 3 歳未満は保育園(Kinderkrippe)で、満 3 歳から小学校入学年齢までは、幼 稚園(Kindergarten)である。保育園には 0~1 歳児を対象とする乳児保育所(Lingekrippe)と、1~2 歳 児を対象とする幼児保育所(Laufkrippe)がある。地域によっては、保育園・幼稚園・学童保育所をひ とつにした乳幼児・児童保育センター(Kindertages-statte)が設置されている。 Kita は Kindertages-staette の略で、Kindergarten(幼稚 園保育園) 、Hort(学童保育) 、Krabelstube(幼児の預かり) の総称である。 ケルン市ニッペス地区にある KITA NIPPES は、幼保統合施 設で、2 歳から 6 歳までの子どもを預かっている。 外国の子ども達をドイツに同化することを目的とする協会 が設立し、25 年以上の歴史がある施設だった。 外国籍の園児が多数在籍し、ドイツ語を促進するのがテー マである。 門の前で、子ども達手作りのドイツと日本の国旗を振って 歓迎してくれた。 KITA NIPPES 手作りのドイツと日本の国旗を振って 元気よく迎えてくれた。 3.研修内容 (1)多彩な国籍 在園児は現在、2 歳から 6 歳の 44 人で、その半数が外国籍である。園児の国籍は、ドイツ、ト ルコ、スペイン、イタリア、シリア、メキシコ・・・と 12 か国にのぼる。 (2)園内の状況について 開園時間 7:30 から 16:30 朝食 → 自由時間 → 昼食 → 自由時間(小さい子は昼寝) → ティ-タイム → 迎え 園舎には世界地図が貼ってあり、園児の母国を印し、折りに触れ子ども達に世界の国々のこと を教えられていた。 室内は、創造的な絵を描く空間、静かにしたい空間等設けてあり、季節感がある飾り等がされ ていた。 また、親とのコンタクトも重要であるため、連絡方法も工夫されていた。 訪問した時は、自由時間で、その後ティ-タイムであった。ティ-タイムのあと子ども達と折 り紙で鶴を折ったり、紙飛行機を飛ばして楽しいひとときを過ごした。言葉はわからなくても、 手振り身振りで会話したり、遊んだりと言葉の壁を越えた交流ができた。 園内の様子 (3)ドイツ語教育 外国籍の親は母国語しか話せないことが多く、その子どもも母国語しかできない状況で入園し てくる。園の目標は、小学校に入学するまでにドイツ語を習得させることであり、先生も、コミ ュニケーションをとるために、ドイツ人ばかりでなく、トルコ、チュニジア人等勤務されていた。 週に 2 回、ことばの教育の時間を設け、ドイツ語で話しかけたときに理解しているか、ちゃん と答えがかえってくるかなど、遊びながらテストを行っている。園児 1 人 1 人に対して、カルテ を作成し記録されていた。また、6 ヶ月に 1 回は、ことばのみでなく、運動機能、生活態度等に ついても記録をされ、発育状況を観察されていた。 発育状況が遅れていると確認された場合は、その子どもの支援はもちろんのこと、施設や教育 者についても、市が再教育を行っているということである。 保育園・学校ではきちんとドイツ語を話す、家庭では母国語を話すということであった。 4.感想 今回の研修では、 「少子化対策」がテーマであったため、子育て支援に関する施策等しか目がいって いなかった。しかし、現地での研修で、少子化の抱える問題について違う観点からとらえることがで きた。 ドイツは国外からの移民が多いため、多文化・他人種のいろいろな問題をかかえているが、それを 肯定的にうけいれ、外国の子ども達を同化させるという施策をとってあった。 早期に 2 カ国語を話し、多言語を使うことは非常によいことであり、他文化に理解ある人材を生み 出し、地域社会の摩擦をなくす効果が期待できる。最初からドイツ人と一緒のクラスになることによ り、社会的に分離された状況に陥ることなく、外国人のより円滑なドイツ社会への統合が進むものと 思われる。 また、ドイツ人にとっても異文化への理解が進み、お互いに分離がない社会になることが期待され る。 私たち日本人は、島国であり、異文化、異民族と共生する習慣、経験が少ないため、このような施 策に驚いた。 近年日本では、少子高齢化が深刻化し、若く、安い労働力を確保するため移民の受け入れを求める 声が上がっている。しかし、若者の失業問題が深刻な日本で移民政策を推進することへの疑問や反対 意見も多くきかれる。 ドイツにおけるこのような同化させるための取り組みは、ドイツ語ができない、十分な教育を受け ていないなどの理由から就職できず、生活保護を受けて生活している移民が多いことからである。移 民がドイツで生活し、 「ドイツ人」と同じ機会を得て、社会に関与していくためには、ドイツ社会に統 合していく必要があり、それにはドイツ語の習得が必須となってくる。 親の収入が低いために、子どもが希望の学校に進学できず、低所得者の子どもは、同様に低い所得 になるケースが多くなっている。 このような状況を考えると、親の所得が子どもの教育、就職に大き く影響してくることになる。 養育費の面からも、子どもを産むか産まないかを考えれば、子どもがいない方が良いと考える女性、 夫婦が増えてくるのではないだろうか。 このようなドイツでの研修から、日本においても、景気の悪化から、若者の雇用が不安定になって おり、非正規社員が増大している。不安定な雇用のまま年齢を重ねれば、将来を展望できず、結婚・ 出産にも結びつかなくなる。晩婚化にも拍車をかけ、さらには妊娠・出産を控え、少子化が進み家族 の在り方も変化してくる。 雇用の不安定さ→所得の不安定さ→将来の不安が、 「結婚し、子どもを生む」ことに、ためらいをも たらしていることは否めない。 わが国の子育て世代男性の残業時間が長く、また帰宅時間が遅いことは、労働時間の少ない欧州と 比べて顕著である。雇用調整を労働時間延長で行うわが国の雇用慣行のもとでは、残業時間の短縮は 難しく、ワークライフバランス達成は困難であろう。 雇用問題が、少子化問題にもつながっていることを改めて感じ、 「社会に・家族にやさしい行政」こ そが、少子化対策に必要なものだと感じた。 子ども達との交流風景
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