K2BS/北九州市立大学大学院 マネジメント研究科(専門職大学院)

北九州市における国際環境協力研修員受入に関する研究
KITA を中心として
氏
名 (樊 素霞)
指導教員 (松永 裕己)
要旨
北九州市において、公益財団法人北九州国際技術協力協会(以下KITAと略称する)を
中心な実施機関として積極的な国際研修の受入がなされてきたことがある。また、国際研
修の土台となる、技術や人材の蓄積があることも挙げられる。1980年にはKITAが発足し、
1986年度から本格的に国際協力事業団(現:独立行政法人国際協力機構(以下JICAと略称)
の環境研修コースの受託が開始されている。2013年3月時点で、KITAの受け入れ研修員は、
146カ国7000名を超えている。平均年間260名を受け入れている経産になる。でも、日本
国内での財政事情が悪化したことに伴い、1990年代後半以降、ODA予算はほぼ毎年度
にわたって削減の対象とされ、北九州市・KITAもその影響を受けている。
本論文では KITA を中心とした海外からの環境研修を取り上げ、KITA や JICA などへ
のヒヤリング調査を行い、その課題を分析してきた。ここで指摘したのは、JICA と
KITA の強い結びつきから生まれる課題であり、KITA の事業を支えてきたコースリー
ダーを中心とした研修のあり方の限界である。日本の ODA 政策は大きな展開を見せて
おり、それにともなって KITA の研修事業も大きな曲がり角に来ている。長年にわた
って培われてきた北九州の海外研修のノウハウや知見の蓄積を今後に活かすために
は、KITA も新たな取り組みを行っていくことが必要である。本論文の考察がその一助
となれば幸いである。
なお、本論文の構成は、次の通りである。
第一章では、日本の国際環境協力の経緯を整理する。そして ODA による環境国際協
力、非政府組織による環境国際協力、地域政府環境国際協力という三つの国際環境協
力の形態を分けて分析し、自治体レベルの環境国際協力に焦点を当てる。
第二章では、北九州市における環境協力の経緯と形態と体制を整理し、北九州市の国
際環境協力において海外研修員受け入れという人材育成事業が国際環境協力の主体にな
っていること、そして北九州市での海外研修員受入事業は、KITAが実施体制の中心になっ
ていることを示す。
第三章では、KITAの研修内容や体制について分析する。研修員、研修内容、外部研修先、
研修成果などの具体的な分析を通じ、KITAの直面している課題を明らかにする。
第四章では、KITA、外部研修先、JICA九州それぞれの組織のへヒヤリングを通じ、それ
ぞれの現状を把握し、課題を明らかにする。
第五章では、第四章で明らかになった課題に対し、KITA のこれからの国際環境協力研
修員受入のあり方について提案する。