少なくとも 5 人が危険を察知していたはず

★特集・見守りから一歩前進
日本人は隣人のゴミ出し手伝いさえやらなくなったのか?
支え合いマップづくりをしていて気になるのは、要援護者の見守りはどこでもある程度はな
されている一方で、困り事の解決ということになると、とたんに事例が出なくなることだ。し
かし私が直接、住民を相手にマップづくりをすると、確かにゴミ出しなどをしてくれている事
例は見つかる。それが住民の方はあまり見えていないということだ。
行政や事業所がサービスで要援護者のゴミ出しを引き受けている所があるが、「それはまず
い」と私は言っている。ゴミ出しまでやらなくなったら、住民はまったく助け合いをしなくな
るだろう。そうした日常の困り事を住民同士で解決してもらうには、
「助け合い」に関わる住民
の流儀、その公式に基づいて行う必要がある。
★特集・見守りから一歩前進
町内福祉委員会はこうして“一歩前進”に挑戦した
吉村了子(愛知県安城市社会福祉協議会)
安城市社会福祉協議会では、孤立死を未然に防ぎ、助け合いのまちづくりを進めるため、
「地
域見守り活動モデル事業」に取り組んでいます。地域住民による効果的な見守り活動の在り方
を検証していくため、地域性の異なる4町内をモデル地区とし、御幸福祉委員会には中心市街
地のモデルとして取り組んでいただきました。
まず訪問調査によって一人暮らし高齢者以外で課題を抱えた要援護者世帯の発掘に取り組
み、並行して、町内の3か所(高齢者の多い住宅地、外国人の多い賃貸マンションなど)をモ
デルブロックとして、支え合いマップづくりも実施。そこから出てきた困り事の解決にも取り
組み、「お買い物ツアー」や、ゴミが溜まってしまった家の片づけなどを行っています。
★やるべき者がやるべきことを
札幌市で「姉が急死、知的障害の妹が凍死」の悲劇
少なくとも 5 人が危険を察知していたはず
北海道白石区のマンションで知的障害のある妹とその姉が遺体で見つかった。妹の世話をし
ていた姉が脳内血腫で急死、残された妹が凍死。悲惨な事故がまた起きた。新聞記事をみると、
2人の危機的な状況がある程度分かっていたと思われる人や組織がかなりいたことがわかる。
「この人たちが2人を救うためになんらかの手を打つべきだった」という「筋合い」は今の社
会ではないが、このままでは孤独死や餓死は防げないと見るべきである。こんな危ういケース
にも住民や関係機関の手が入らないというのだから、本当に背筋が寒くなる話ではないか。
今の社会は、それぞれの機能に特化し、サービス拠点を設ける。サービスを求める人は、そ
の拠点まで行かなければならない。まずは、すべての機関を「待ち」の体制から「お出かけ」
型に変えねばどうしようもない。しかし、システムの問題ではなく人の資質の問題だとも言え
るのだ。
★企業の本業ボランティア
電気屋が草取りから爪切りまでやっちゃう
これぞ究極の「顧客サービス」
個人の事情に応じて臨機応変な対応をすることの苦手な日本人。「個別のニーズに徹底して
応じる」という意味での顧客サービスは、これまでなかなか行われてきませんでした。しかし
近年、「効率」よりも「顧客の事情」を優先し、「そこまでやっちゃうんですか?」と驚くよう
な顧客サービスに取り組む企業が知られてきました。その結果として利益がついてくる、とい
うケースが増えているのです。近年注目を集めているのが、いわゆる「まちの電気屋さん」と
呼ばれる小規模の電気屋さんで、東京・町田市にある「でんかのヤマグチ」では、犬の散歩か
ら庭木の剪定、さらには目の悪いおばあちゃんの爪切りまでしていました。社員が勝手に顧客
の困り事に応じ始めたのをきっかけに、社として乗ってしまったのです。
★支え合いマップづくり
中津川市で見つけたお世話焼きさん
平林美香(岐阜県中津川市地域包括支援センター)
中津川市の認知症対策「みまもりのわ事業」の1つとして「地域支え合いマップ」づくりに取
り組んだ地域の、その後の関わり合いをご紹介します。この地域には、お世話焼きさんの鈴木
さんがいます。
「人に、出しゃばり、お節介と言われても、気になると何かやりたい性分なのよ
」と言われる方。先日も自分の通院のついでに、知人の娘さんが難病なので様子を伺いに行こ
うと、アズキ飯を炊き、豆や芋を煮て、バスに乗って尋ねて行きました。最近元気のない気に
なる人には、何かよい誘い出し先はないかと、相手の得意なものをよく観察しています。
「マッ
プづくりから人と関わることの大事さが分かり、気兼ねなくできるよ」。
★支え合いマップづくり
支え合いマップづくりは宝探しだった
そのご近所の面白い活動を掘り起こし、生かし方を考える
マップづくりの目的は、そのご近所がよりよい福祉の地域になるための取り組み課題を抽出
することだ。取り組み課題を考えるのはマップづくりが終わって、事務所に帰ってからと考え
るのが一般的だが、取り組み課題のヒントさがしも、マップづくりの場でやらねばならない。
地域住民の誰かが、そのご近所の問題の解決行動を取っている可能性が高いのだ。だから一方
で問題を抽出しつつ、その問題に誰がどんな活動でチャレンジしているかを探さねばならない。
この順序を変えることもできる。まずその地域でどんな面白い活動があるかをさがすのだ。
「面白い」とは、興味深い活動、ご近所の特定の問題解決につながる活動である。そこでまず
「面白い」活動を見つけて、ご近所の問題解決にこれを使えないかと考えるのだ。
★支え合いマップづくり
マップづくりに社協職員の命を賭けた!
青澤学(岩手県洋野町社会福祉協議会 事務局長)
平成 20 年度はマップづくりが中心だったが、平成 21 年度からは課題検討会や実際の支援活
動等へ取り組みも増やし、小さなことでも活動へ結びつけようと呼びかけた。
「社協は 24 時間、
365 日 いつでもどこでも対応します」と呼びかけ、声が掛かれば土日、祝祭日、夜 9 時頃ま
で地域へ出かけるなど、住民の要望に応えマップづくりを推進した。徐々にマップづくりが浸
透し、何回か課題検討した地区では世話焼きなども積極的に鉛筆を握りマップを作るようにな
ってきた。22 年度も引続きマップづくりに取り組み、特に課題検討、実際の支援活動に移行す
る地区が増え始めてきた。マップを作ることにより、地域の実情、要援護者の状態、住民の営
みを始め、地域の課題が見えてくることにより、
「これでは大変だ、なんとしなければ」との思
いがどこの地区でも感じられるようになってきた。
★動物福祉
警戒区域への民間保護団体の立ち入り、再び禁止に
精神を崩し始めたボランティア
福島原発警戒区域には飢餓、病、事故で命を落とした数多くの動物の遺骸や遺骸の一部、白
骨遺体が散乱し、農場には朽ち果てた家畜の亡骸が折り重なっている。まさに「この世の地獄」。
昨年12月、民間団体が立入許可を受け、332 匹の犬猫を保護したが再び立入禁止に。1月末
から、強い影響力を持つ大手海外メディア、ロイター通信、米CNN、英BBCを皮切りに世
界中でこの現状が報じられた。しかし政府は動物の命には目もくれず、刻一刻と命が消えてゆ
く。どんなに声を上げても一向に変わらない状況に、ボランティアの中には精神状態を崩す人
も出てきている。事態打開のカギは、海外からの外圧、そして当事者である飼い主や福島県民
の方々の強い声ではないだろうか。私たち第三者に比べ、当事者の声にはさらなる力がある。
★施設福祉
インテリ入所者の老健施設生活レポート
<4>医師はいらない?
冨永 祐一
入所したての頃、外出のことで医師から許可を得たくて、控え室から出てきたところを捕まえま
した。すると私が先生と呼びかけただけで、まだ何も言わないうちに、腕をとり、相談係という女
性に引き合わせて、医師自身はスタスタ向こうへ行ってしまいました。へぇ、そんな係があったの
かとビックリ、さいわい若い聡明そうな女性でしたから、私も腹を立てずにすみました。身内の付
き添いがなければ、外出を認めないという内規があることも、はじめて彼女から知らされました。
ここから一刻も早く逃げ出したいという気持ちも、彼女には理解できるようでした。そんな危険
な話をするときは、彼女の居場所の相談室を出て、食堂の片隅にあるテレビの脇のコーナーで、ソ
ファーに掛けながら話しました。